課題番号:6024

平成18年度年次報告

(1)実施機関名

国土地理院

(2)研究課題(または観測項目)名

有限要素法およびその拡張によるプレート境界域周辺の地殻変動シミュレーション

(3)最も関連の深い建議の項目

(4)その他関連する建議の項目

(5)本課題の平成16年度からの5ヵ年の到達目標と、それに対する平成18年度実施計画の位置付け

 定常的なプレート運動の中で、地震発生に至る準備過程において、東海地方のスロースリップ、および短期的なスロースリップのような現象が誘発される過程を、有限要素法及びその拡張によるシミュレーションによって再現する。

(6)平成18年度実施計画の概要

 平成17年度までに行ったシミュレーション計算で作成したモデルをもとに、東海地方の地震サイクルに2000年の伊豆諸島の活動が及ぼす影響を調べた。

(7)平成18年度成果の概要

 昨年度までのモデルをもとに、2000年の伊豆諸島の火山活動と東海地域のゆっくり地震の関係を調べる数値シミュレーションを行った。第一に東海地方で起きる地震モデルを求める解析を行い、地震の周期、地震時のすべり速度が再現できるモデルを摩擦係数の最適化で求めた。ルイナ&デイートリッヒの摩擦係数に関するパラメーターのうち、A3-A2は、本研究のモデルでは、0.0006-0.0007の範囲が推定されている。東海地方の地震モデルと伊豆諸島の火山活動による変形量を用いて、ゆっくり地震の再現を試み、いくつかのケースにおいて、ゆっくり地震が再現されたが、観測された特性とは少し異なる結果が得られた。

(8)平成18年度の成果に関連の深いもので、平成18年度に公表された主な成果物(論文・報告書等)

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名

地理地殻活動研究センター 地殻変動研究室

他機関との共同研究の有無

(10)問い合わせ先

図1 東海地域の3次元構造モデル。青が地殻、赤がフィリピン海プレート。矢印で示したプレート速度をフィリピン海プレートに与えて、東海地震の発生サイクルをコンピュータ上でシミュレートした。摩擦構成則はルイナ&デイートリッヒの式を使用している。

図2 最大変位速度と平均摩擦。最大変位速度にピークが現れたところで地震発生が起きている。150年ほどの周期が示されている。

図3 伊豆諸島と東海地方を含んだ構造モデル。このモデルを使用して2000年の伊豆諸島の活動の東海地域への影響を見積もった。

図4 東海地震の発生後、2000年の伊豆諸島の活動が何年経ってから起きたとした場合の地震サイクルの変化。赤丸はスロースリップの発生を示している。白い逆三角の時期に次の東海地震が発生している。黒い逆三角は、伊豆諸島の活動がない場合に起きる東海地震の時期を示す。マグマの貫入などの火山活動は、地震の周期を短くしたり、長くする原因のひとつと考えられる。マグマの貫入が地震を誘発する現象も現れている(l,m)。