課題番号:5003

平成18年度年次報告

(1)実施機関名

独立行政法人産業技術総合研究所

(2)研究課題(または観測項目)名

海溝型地震及び海域活断層の履歴解明

(3)最も関連の深い建議の項目

(4)その他関連する建議の項目

(5)本課題の平成16年度からの5ヵ年の到達目標と、それに対する平成18年度実施計画の位置付け

 日本周辺の主要な海溝で発生する海溝型地震の発生履歴とその規模や発生間隔の多様性を明らかにすることを5年間の到達目標とし、18年度は仙台平野、南海トラフの東部で、海溝型地震の多様性と連動型地震の頻度を解明する。また、比較のため、インド洋東部のアンダマン島とミヤンマー西海岸でも古地震調査を実施する。

(6)平成18年度実施計画の概要

 仙台平野では、869年貞観の津波の浸水域を明らかにし、さらに同規模の津波の発生頻度を解明する。南海トラフでは、静岡県における津波堆積物と地殻変動の履歴を明らかにするとともに、紀伊半島での古地震調査に着手する。北海道東部では、連動型地震の地震サイクルに伴う地殻変動の解明を試みる。インド洋東部のアンダマン島とミヤンマー西海岸でも古地震調査を実施する。

(7)平成18年度成果の概要

 仙台平野及び石巻平野で,西暦869年の貞観の津波が当時の海岸線から3キロメートル以上内陸まで侵入したこと,同じ規模の津波がおおよそ1,000年間隔で発生していることなどを明らかにした(図1,2).静岡県の富士川低地では,駿河トラフの破壊に関連したと考えられる沈降イベントは見つけたが,その発生間隔については検討中.三重県の志摩半島では,津波堆積物の分布域を新たに見つけたが,紀伊半島では津波堆積物を見つけることはできなかった.北海道東部では、連動型地震の地震サイクルに伴う地殻変動が浜堤列として記録されていることを明らかにし,インド洋東部のアンダマン島(図3)とミヤンマー西海岸(図4)では,最近の地震発生履歴が隆起サンゴ礁や海成段丘として保存されていることを明らかにした.

(8)平成18年度の成果に関連の深いもので、平成18年度に公表された主な成果物(論文・報告書等)

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名

独立行政法人 産業技術総合研究所 活断層研究センター

他機関との共同研究の有無


東京大学(3名)、ミヤンマー(4名)やインド(1名)等の研究機関。

(10)問い合わせ先

図1 仙台平野に分布する貞観の津波堆積物(赤丸が堆積物確認地点)

貞観津波の遡上範囲
図2 宮城県山元町の地質断面図.灰色の泥炭層中に津波堆積物が砂層として数枚認められる.青線が貞観津波の堆積物で,黒線はそれより古い津波堆積物.赤線は西暦915年前の広域火山灰十和田.ここでは過去約4,000年間に4枚の砂層が認められる.数字は14C(放射性炭素)年代値で,単位は千年。

図3 アンダマン諸島北西部のNorth Reef島で観察された隆起サンゴ礁。

図4 ミヤンマー西海岸で見つかった海成段丘.人が立っている斜面は最上面前面の斜面で,サンゴの破片が多数転がっている