課題番号:1421

平成18年度年次報告

(1)実施機関名

東京大学地震研究所

(2)研究課題(または観測項目)名

宇宙技術の応用の高度化

(3)最も関連の深い建議の項目

(4)その他関連する建議の項目

(5)本課題の平成16年度からの5ヵ年の到達目標と、それに対する平成18年度実施計画の位置づけ

(6)平成18年度実施計画の概要

  1. ALOSの干渉画像と、大気の情報(数値気象モデル、GPS気象学の手法で得られる遅延データ、衛星観測による高密度水蒸気データなど)と地殻変動の情報(GEONETのGPSデータ等)を組み合わせることで、長期間のデータ蓄積に依らずに、干渉画像に含まれる地殻変動シグナルと非地殻変動シグナルの分離を試みる。
  2. 低消費電力かつ周波数帯域利用効率の高いVSAT化地震テレメータシステムとして、ナノメトリクス・システムおよびSAOシステムの試験運用を継続し、実際の観測フィールドにおいて評価を行う。
  3. 世界標準規格に準拠し、低価格の受信装置で利用可能な衛星データ配信システムとしてのDVB衛星配信システムの試験運用を継続し、その有効性を検証するとともに問題点を明らかにする。

(7)平成18年度成果の概要

  1. ALOSそのものは期待通りの性能を示していることが分かり,伊豆大島,三宅島等では恐らく「地殻変動」と思しきシグナルが見えている.ただし、分解能の高さと基線長が予想外に長かったため、干渉画像の作成に予想外に手間がかかったこともあり,非地殻変動との分離はまだ研究途上にある.
  2. 消費電力かつ周波数帯域利用効率の高いVSAT化地震テレメータシステムの開発
     平成12年度に試験導入を開始した低消費電力・高周波数利用効率のカナダ・Nanometrics社製地震観測用衛星VSATシステムは、平成17年度までに計85局となった。平成18年度には引き続きこれらを主として跡津川断層周辺地域および浅間山周辺地域の集中観測における実運用を通じて評価した。その結果、強度・特性・取り扱いの点で0.75メートル径のアンテナが最適であること、ヒーター貼り付け式の融雪装置が有効であること等がわかった。平成16年度から評価しているイスラエル・Gilat社製VSATによるSNET社SAOサービスについては、伊豆諸島神津島の観測は継続中であり、沖縄県硫黄鳥島は2006年7月に観測終了・撤収した。このサービスは自前のハブ局が不要であるので簡便性に優れ消費電力も小さいが、筐体が野外観測にはやや不向きであり、アンテナ金属部分の耐蝕性にも問題があった。平成18年度には新たに白山工業株式会社製の観測用VSATシステム(ハブ2局とVSAT19台)を導入した。これは従来のNEC製やNanometrics、SAOの長所を取り入れつつ欠点を解消することを念頭に開発された、観測用に特化した新世代のVSATシステムであるので、実用性は高いと期待できる。VSATのアンテナ径は0.75メートルである。平成19年度以降運用しながら評価を行う。

    図.地震研究所小諸VSATテストサイトでのVSAT試作機の試験風景(2006年8月)

  3. 世界標準規格に準拠し、低価格の受信装置で利用可能な衛星データ配信システムの開発
     欧州のディジタルテレビ放送標準規格であるDVBに準拠した衛星データ配信実験を平成14年度より開始し、気象庁・防災科研の協力を得て、全国リアルタイム地震波形データと4種類のリアルタイム地震情報コンテンツを、全国約20大学の実験参加者に向けて配信してきた。衛星帯域使用期限のために実験は2006年12月で終了したが、約4年間の実証実験により、安価な受信機で容易に大量のデータを一斉配信できるDVB衛星配信の有効性は十分検証できた。

(8)平成18年度の成果に関連の深いもので、平成18年度に公表された主な成果物(論文・報告書等)

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名

大久保修平、卜部卓、鶴岡弘、古屋正人

他機関との共同研究の有無

  • 宇宙航空研究開発機構地球観測利用推進センター(代表者:島田政信)
  • 白山工業株式会社(高原穆之)

(10)問い合わせ先