資料4

「地震・火山噴火予知研究計画(仮称)」に盛り込むべき事項(地震・火山両部会長私案)

平成19年11月6日

1.基本認識

2.具体的に盛り込むべき事項(案)

1地震・火山噴火予知研究計画を実施するための予算的措置への配慮

  •  本計画を着実に実行していくためには、各研究機関のみならず、国、大学本部等が必要な予算措置等を講じていくことが必要であるが、国の財政事情の厳しい状況や国立大学の法人化の影響等もあり、これらの研究に対して必ずしも十分な予算が確保できていないのが現状である。その点、原案においては、地震予知研究及び火山噴火予知研究を着実に推進するために必要な予算措置等に関する記述が含まれておらず、本計画に盛り込まれている観測研究を着実に進める上で、例えば予算面での配慮など、具体的にどのような方策が必要となるのかが明らかではない。
  •  このため、本計画の「建議」としての位置づけに鑑み、例えば、「国及び各大学、研究機関等においては、地震予知研究及び火山噴火予知研究が、本計画に則って着実に推進されるよう、予算・人材面での適切な措置を講じるべきである。」、さらに、「本研究は、短期間で目標を達成できるようなものではなく、研究者の自由な発想に基づく個々の研究の着実な積み重ねにより、より長期間を見通しつつ、実現を目指すものである。このため、本計画のうち、特に萌芽的な研究や基礎基盤的な研究等に対して、国として支援を行うための研究資金制度等の充実を期待する。」等の記述を盛り込むことを検討してはどうか。

2火山観測研究の充実と火山監視観測網の整備、さらに火山噴火予知連絡会の機能強化

  •  火山噴火予知研究については、実施機関や地震部会・火山部会委員等に対して行ったアンケート調査結果において、気象庁が監視観測網の整備を積極的に進めるべき、大学の観測研究の充実を図るため、地震調査研究推進本部のような体制の下で観測網の整備を図るべき、さらに観測資源の重点化を図るべき、等の意見が提出されている。実際、今国会で気象業務法が改正され、気象庁等の予報業務に火山現象が明確に位置づけられること等を踏まえ、今後、国(気象庁)が責任を持って、常時監視観測網の整備を進めていくことが必要となる。さらに、大学の火山関係の予算が減少傾向にある中、特に観測機器等の維持管理が課題となっており、今後の観測体制の在り方について検討が求められている。しかしながら、原案では現在の監視観測あるいは研究体制を引き続き維持するという記述内容にとどまっている。
  •  このため、例えば、「国民の安全・安心を確保することは国の基本的な責務であり、国(気象庁)において、現在30火山程度にとどまっている常時監視観測網の整備を着実に進めていくべきである。その上で、各大学、研究機関は、火山研究予算の厳しい状況等も直視し、観測機器等の研究資源を特定の火山に集中するなど、観測研究の効率化・重点化を図ることを検討すべきである。さらに、このような重点化を受け、例えば防災科学技術研究所等の研究機関において、大学の観測研究の支援を目的とした共通基盤的な観測体制を整備すること等についても検討すべきである。」、さらに、「その際、観測点数や観測項目等を含む整備計画の立案に関して、火山噴火予知連絡会が積極的な役割を果たしていくことを期待する。」等の記述を盛り込むことを検討してはどうか。

3地震調査研究推進本部が策定する新しい総合的かつ基本的な施策との関係の明確化

  •  地震調査研究推進本部においては、本計画の策定作業と並行して、「新しい総合的かつ基本的な施策」の策定に向けた検討を行っているが、両者の関係が分かりづらいという指摘や、本計画の内容がどのように地震調査研究推進本部の検討に反映されるのかといった指摘・疑問等が出されている。
  •  このため、地震調査研究推進本部と測地学分科会との役割分担を明確にし、本計画と新しい総合的かつ基本的な施策との関係を整理する観点から、例えば、「地震・火山噴火予知研究計画(仮称)は、研究者の自由な発想に基づく地震予知研究、火山噴火予知研究を大学や研究機関が整合性をもって推進するためのボトムアップ型の計画であるのに対して、地震調査研究推進本部が策定作業を進めている「新しい総合的かつ基本的な施策」は、政府として今後10年間に推進すべき地震調査研究の基本を定めるトップダウン型の計画である。」、その上で、「本計画に盛り込まれる実施内容が、「新しい総合的かつ基本的な施策」の策定に際して、十分に反映されることを期待する。」等の記述を盛り込むことを検討してはどうか。

4地震・火山噴火予知のための研究計画推進委員会及び地震予知連絡会の役割の明確化

  •  原案においては、観測研究計画推進委員会の充実として、本計画に基づく研究の定期的な進捗状況の把握、実施計画及び研究成果の取りまとめ、研究の評価を実施すること等が記述されており、本計画の実施を着実に担保する上で、このような取組は極めて重要であると考える。一方で、本委員会において、計画の進捗状況を把握するための情報交換等を積極的に行うこととする場合、現在、地震予知連絡会が担っている地震予知に関する学術研究の情報交換との関係を、改めて整理しておく必要がある。
  •  このため、地震予知連絡会の役割をより明確化する観点から、例えば、「地震予知連絡会については、設立当初からのこれまでの活動を積極的に評価しつつ、今後は、観測研究計画推進委員会との適切な役割分担の下、本計画の筆頭に掲げられているモニタリングシステムの高度化、具体的には地殻活動の現状把握や今後のモニタリング体制強化のための方策等を検討する場として、その役割を特化すべきである。」等の記述を盛り込むことを検討してはどうか。

5人材の確保、特に若手研究者の養成

  •  本計画に基づき、地震予知研究及び火山噴火予知研究を着実に推進するとともに、今後、これらの研究をより一層発展させていくためにも、研究に携わる人材の確保、特に若手の研究者の養成が極めて重要な問題であることは論を待たない。前述したアンケート調査結果においても、中・高等教育段階での教育内容、就職先の見通し等のキャリアパス、若手研究者に対する研究費支援等、様々な問題が指摘されている。一方で、原案においては、学生数増加に努力する、関係省庁等は研究者の育成に努める等の抽象的表現にとどまっており、より具体的方策を提示していくことが必要である。
  •  このため、例えば、「大学や研究機関等においては、地震予知研究、火山噴火予知研究に携わる研究者のキャリアパスを確保するため、若手の准教授、助教等のポストの確保や、ポストドクターの年齢制限等採用要件の臨時的緩和、民間企業等との共同研究を通じた就職先支援等の具体策を講じるべきである。」、また、「若手研究者の研究資金を確保するため、国において、特に若手研究者を対象とした競争的研究資金制度等の充実を期待する。」、さらに、「地震予知研究、火山噴火予知研究の裾野を拡大し、これらの研究に携わる次世代の研究者を確保するため、国、大学、研究機関、さらには研究者自身が、高等学校や大学学部段階等での地学等関連する教育の充実・強化に努めていくことが重要である。」等の記述を盛り込むことを検討してはどうか。