地震火山部会 地震及び火山噴火予知のための観測研究計画再検討委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成23年12月20日(火曜日) 13時~15時

2.場所

新霞ヶ関ビル LB階201D号室

3.出席者

委員

(委員)平田
(臨時委員)今給黎、宇平、久家、佐藤、清水、関口、松澤
(専門委員)小泉、宍倉、谷岡、西澤、三浦、宮澤

文部科学省

寺田地震・防災研究課長、南山防災科学技術推進室長、北川地震調査管理官、迫田地震・防災研究課長補佐、安藤地震火山専門官、山岡科学官、飯高学術調査官

4.議事録

[委員の出欠状況、議事次第について事務局から説明]

[議題1.地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」の一部見直しについて

(参考資料1、2および3、資料1、2-1、2-2および3を用いて事務局から個々に説明。なお、参考資料3は会議後回収の旨周知)

【佐藤主査】  まず、資料2-1の2頁目から3頁にかけて検討します。

【清水臨時委員】  27行目から30行目にかけては、本来はレビューで議論をして評価をするべきことではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【佐藤主査】  これにつきましては、今回の現行計画の見直し作業にあたり、大枠を維持した形で進めるかどうかということの議論がありました。草案ではそれを反映した形の文章になっています。平田委員、補足をお願いできますか。

【平田委員】  現行の計画の残り2年間についての基本方針がここに書いてあります。つまり、現行計画の見直し作業をするときに、基本的な考え方について変更あれば、この部分で変更すべき方針を書かなければいけませんが、それについては前回の委員会時に特にご異論はありませんでしたので、このように書かせていただいています。

【清水臨時委員】  わかりました。次期計画の方向性を拘束するものではないと思ってよろしいですか。

【平田委員】  ありません。現行の計画を5年間続けて良いが、不足した研究項目があったという基本的な姿勢をはっきりさせるためにここに書いてあるわけです。おっしゃっているとおり、27行目から30行目についてはそういう評価をして、この見直し計画作業を行っているということですね。重要な観点だと思います。

【清水臨時委員】  現行の計画の基本柱については変更をしないという前提で新しく5章を追加したということを明記したということですか。

【平田委員】  はい。ですから残りの2年間については現行の計画が有効であるということです。次の計画まで拘束するものではありません。

 これは平成7年の見直し計画(建議)でも似たようなフレーズがあり、進行中の計画については基本的に有効であるというようなニュアンスの表現がありました。

【小泉専門委員】  基本方針とは現行計画の4項目ということでしょうか。

【平田委員】  そうです。「予測のための研究」、「解明のための研究」、「技術開発」と「体制の強化」という4本の柱でやっていくということです。また、地震と火山と一緒に研究計画を進めることについて、現時点でも有効であるという意味です。

【小泉専門委員】  これについての意見は特にレビュー作業でも今のところ出ていないので、よろしいのではないですか。 あと、「予測のための研究」、「解明のための研究」の順番については、今後意見があるかもしれませんが、とりあえずはここでは優劣をつけていないので、問題ないと思います。

【平田委員】  蛇足ですが、27行目までは歴史的事実が、31行目の段落も建議及びレビュー、それから外部評価で頂いた事実について書いてあります。37行目の「しかし」以降は、この見直し作業をナゼ行うかについて書いてある所なので、特に下線部分についてはご意見もあったところであり、ここで確認していただきたいと思います。

【佐藤主査】  本日の委員会では文章の細部にわたっても修正を進めていただきますので、特に37行目以降については、ご一読ください。

【平田委員】  ここは金田委員のご指摘を取り入れた表現に変わっていると思います。また、「追究されておらず」という表現については、地震火山部会と測地学分科会における議論での表現を採用しています。それからアスペリティモデルの再考が必要になったという観点は、前委員会後のメールでの議論を受けて、久家委員の意見を取り入れて修正した箇所ですので、ここについてもご確認ください。

【三浦主査代理】  字句の修正ですが、2頁目の一番下の「地震性滑りをしない」という表現は「地震性滑りを起こさない」と修正してください。それから、次頁の1行目の「沈み込み帯浅部が数十メートル程度大きく滑った」を「プレート境界浅部が数十メートル程度大きく滑った」ではいかがでしょうか。

【平田委員】  「沈み込み帯」を「プレート境界」に変えるということですね。

【小泉専門委員】  海溝型以外のプレート境界地震については浅部では滑らないと思われているのでしょうか。

【平田委員】  いや、あまねく浅いところはそれほど滑らないと思っていますが、ひょっとして内陸の活断層のことですか。

【小泉専門委員】  そうです。北アナトリア断層とか。それからサンアンドレアス断層もありますね。

【平田委員】  ここは少なくとも東北のこの場所ということに限定したいですね。

【小泉専門委員】  いや。どこにも沈み込み帯という言葉がこの段落に出てこないので、気になります。どこかで出ていればいいですけれども。

【佐藤主査】  現行の計画ではプレート境界地震のそれについては云々っていう形で、前文がありますから、プレート境界の話は。この節はプレート境界の話を記載していると私は理解していましたが。

【小泉専門委員】  いや、少し気になっただけで、皆さんよろしいのであれば別に。日本近辺なら大体この話で大丈夫だと思います。

【清水臨時委員】  プレート境界が沈み込むって、そもそも、いわゆる海溝型プレート境界の地震で浅部ということですよね。何かただ浅部というと、いわゆる普通の深さ30キロぐらいをイメージします。ここでの意味は、従来我々が考えていたところよりもっと浅部ということですよね。

【平田委員】  海溝軸付近のプレート境界浅部ではいかがでしょうか。

【佐藤主査】  「これまで地震性滑りを起こさないと考えられていた海溝軸付近のプレート境界浅部が数十メートル程度と大きく滑ったことなど」と修正するということではいかがでしょうか。

【久家臨時委員】  今のところですが、その後の「この結果」と続く表現に抵抗があります。沈み込み帯の浅部のところで大きく滑ったということがわからないということは私も同意しますが、その結果アスペリティモデルの再考が必要ということは違うと思います。

【松澤臨時委員】  おそらく執筆者は3頁目の1行目にある「など」に含まれる事項をイメージしたのではないでしょうか。

【佐藤主査】  前の頁、38行目の「マグニチュード9クラスの超巨大地震の発生の可能性については十分追究されておらず」も含んで、そして「大きく滑ったことなど」と受けて、これまでの考え方で説明できない現象が発生した。それで、その全体を受けてこの結果と私は理解しました。浅いところが滑ったことがアスペリティモデルの破綻であるということではないと思います。

【平田委員】  最初に作成した文章を読むと、東北地方太平洋沖地震については、超巨大地震を発生させるアスペリティを事前に指摘することができる。さらにこれまでM7から8程度の地震を発生させていたアスペリティが通常の滑りより1けた大きく滑ったことなど、これまでの考えでは説明できない現象が発生した。この結果、これまで提唱されてきたアスペリティの点検が必要となった。これは一応それなりに完結的には書いてあって、それに対して金田委員は浅いところがたくさん滑ったということが重要だからそれも書けというご指摘で、そっくり入れ替えた訳です。

 論点は、浅いところが滑ったということをどのぐらい強調すべきかですが...。

【久家臨時委員】  なぜ後半部分を削られたのですか。

【平田委員】  大した意味はありません。両論併記でいいと思ったけれども、文章の流れとしてこうなりました。復活させてもいいと言うなら復活させてもよいと思います。どうしてこうなっちゃったかというのは、資料3にあります。

【安藤地震火山専門官】  申しわけありません。事務局の不手際で、配布した資料3について落丁があるようです。この後、再配布しますが、今の箇所については、金田専門委員からいただいた修正理由を読み上げさせていただきます。

 修正理由としましては、「アスペリティが通常の滑りより1けた程度大きく滑ることは、Hori and Miyazaki (2010)をはじめ、階層アスペリティモデルで説明できることは、本研究計画の成果として今回の地震前から示されていたこと。もちろん、これはまだ仮説であり、今回の地震前から後のデータでより詳細に検証されるべきである。しかし、これまでの考え方では説明できないという意味では、浅いところでの高速と大きな滑りが問題であって、それが生じるメカニズムを解明することが、超巨大地震やそれに起因する大きな津波を理解・予測する上で極めて重要」です。

【平田委員】  それは、ほんとうは正しくなくて、Hori and Miyazaki (2010)は宮城沖のM6とM7の話ですよね。だから決して9のことは言っていなくて、その後の堀さんと宮崎さんの論文ではM9のことも触れていますが。だから、もともとはというか、私の意見としては、M7やM8のいわゆるアスペリティというものがM9のときにもっと大きく滑ったということが、ここで言っている従来の考えではあまり説明できなかったということをきっかけに、アスペリティモデルを再考すべきであるという論理のほうがわかりやすいとは思います。そこはこの専門家の宮澤委員、いかがでしょうか。

【宮澤専門委員】  先ほど松澤委員が言われたように、もし「など」の部分に必要事項が含まれるなら、正確に記載してはいかがでしょうか。つまり、最初の原案をもう一度復活することになりますが、それでも「海溝軸付近での大きな滑り」という部分は残るので、問題ないのではないでしょうか。

【平田委員】  つまり両方書いてしまえばいいということでいいですね。

【松澤臨時委員】  Hori and Miyazakiのモデルについては、確かに平田委員が言われたとおりで、さらに上の階層のアスペリティを考えなければいけません。また、金田委員が言われたことは、金森先生が指摘された「海溝近くが大きく滑ったのが一番のなぞだ」ということを踏襲していると思います。だから、その1点だけで破綻したというわけではないので、それを複数点出しておくということが良いと思います。

【平田委員】  では、この3頁目の1行目の「滑ったことなど」の「など」については元の文章に再修文します。具体的には、「マグニチュード7から8程度の地震を発生させていたアスペリティが、通常の滑りより1けた大きく滑ったこと」ですね。整理すると、浅いところが滑ったということと、それからマグニチュード7から8程度の地震の滑りがこれまでは数メートルだったのが、それよりも1けた大きい滑りがあったということ、になります。

【谷岡専門委員】  さきほど三浦委員が言われた「地震性滑りは発生しない」というところですが、実際には明治三陸地震が起きていた訳で、津波地震についてもその辺で起こると言われていたので、このように言い切ってしまうと全然地震が発生しないような話になってしまうので、金田委員が言うように、「高速の地震性滑りが発生しないと考えられていた」というように書くべきと思います。どこまでが高速かという議論はありますが。

【小泉専門委員】  地震性滑りを高速にするわけですか。高速じゃないと地震性滑りであるとは言えないのではないでしょうか。

【谷岡専門委員】  だからゆっくり地震。

【小泉専門委員】  ああ、ゆっくり滑りということですね。

【松澤臨時委員】  ということは、地震性滑りを起こすか起こさないかではなくて、数十メートル以上の滑りが重要だということですか。

【谷岡専門委員】  そう思います。だから「地震性滑りは発生しない」がなければいいのですが。

【佐藤主査】  では、「これまで地震性滑りをしないと考えられてきた」までを削除して、「海溝軸付近のプレート境界浅部が数十メートル程度と大きく滑ったことや、・・・など、」としてはいかがでしょうか。

【平田委員】  いいですね。

【谷岡専門委員】  はい。

【小泉専門委員】  文章もすっきりしますね。

【佐藤主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

【小泉専門委員】  2頁目の39行目「十分追究されておらず」は、「十分追究されていなかった」で一度句点を入れてはいかがでしょうか。

【平田委員】  うん。切ったほうがいいですね。長文になるので。

【佐藤主査】  それではこの下線部分について、今、提案されたことを取り入れて、修文させていただきます。次に3頁の4行目から11行目までについてお願いします。

【平田委員】  これは久家委員がわりと主張されていた緊急にやるべきというニュアンスを入れるために書いた文章ですが、この程度でよろしいでしょうか。また、地震火山部会の鍵山委員のご指摘により、「緊急」という言葉は使わず、「すみやかに」という言葉に置きかえています。ここの論理は、現在進行中の計画については総括的自己点検評価をやっており、そちらでは本格的な議論をしているということ。しかし、この東北地方太平洋沖地震については巨大地震の発生機構の解明を行うために早急に観測研究を開始する。しかも現在進行中の事象を的確にとらえるために、速やかに実施するように現行の計画を一部見直して、追加して実施するという論理で書かれています。草案は長文ですが、事実を明確に言う必要がありこのような形になっています。

【宮澤専門委員】  ちょっと細かいところですが、7行目に「見直し計画」とあります。一方、この資料の表紙を見ると「計画の見直し」となっています。これは、「見直しをするための計画」なのか、それとも「計画の見直し」なのか問われた場合、「計画の見直し」のような気がしますが、それともこれはもう既に「見直し計画」という名前で決められているものなのでしょうか。

【平田委員】  それはむしろ事務局に聞いていただきたい。例えば「本計画」はと言ったときに、「本計画」が何を指すのか定義しておかないと混乱します。宮澤委員が言われたとおり、現在5年計画で実施中のものと、残りの2年で行う計画とがあって、「計画の見直し」を「見直し計画」と定義するのかどう整理しますか。

【寺田地震・防災研究課長】  「行っている作業」は「計画の見直し」ですが、見直された結果が「見直し計画」になるわけです。通常では、原文に追記する部分は、「見直しを追加します」という書き方でよいのですが、今回は完全溶け込み版のため、本来ならば「本計画は」と言い切れなければいけないはずです。それを、ここでは「ここの見直した部分は」というところを表現したくて、「本見直し計画では」と書かれていますが、ご指摘のとおり不明確なので、少し考えてみます。

【宮澤専門委員】  はい。わかりました。

【平田委員】  ここは事務的に整理していただきたい。

【寺田地震・防災研究課長】  この言葉については事務的に整理させていただきます。

【小泉専門委員】  文章の流れがあまりよくないですね。一読して何が言いたいのかよくわかりません。特に最後の4行は修正が必要ですね。

【平田委員】  そうですね。

【小泉専門委員】  例えば最後の「一部見直し」の後にある「超巨大地震に関する観測研究について」は、すでに上から2行目に「超巨大地震の発生の解明を行うための研究を開始するために」と書かれているので、消してはいかがでしょうか。整理すると、10行目移行は「できるように現行の計画を一部見直し、実施する」だけで僕はいいと思います。

【平田委員】  5章を書くというためにこの文章を入れているのですが。

【小泉専門委員】  くどいような気がします。8行目に「超巨大地震の発生の解明を行うための研究を早急に開始するために」って書いているわけですから。

【平田委員】  確かに「ため」が多過ぎますね。

【寺田地震・防災研究課長】  7行目の接続詞「このため、」が要らないですね。

【平田委員】  「このため」削除しましょう。

【寺田地震・防災研究課長】  8行目後半部分は、「早急に開始し、現在進行中の事象を的確にとらえる研究をすみやかに実施できるよう」でいいのかもしれません。

【小泉専門委員】  「一部見直す」で句点終了としていいかもしれませんね。

【平田委員】  「追加して実施する」がポイントですが。

【山岡科学官】  「見直し、追加して実施する」でもいいですね。

【小泉専門委員】  ああ、追加を言いたいわけですね。

【佐藤主査】  7行目から読みます。「本見直し計画では、平成23年東北地方太平洋沖地震のような超巨大地震の発生機構の解明を行うための研究を早急に開始し、現在進行中の事象を的確にとらえる観測研究をすみやかに実施できるよう、現行の計画を一部見直して実施する」。

【小泉専門委員】  わりとすっきりしましたが、まだ長文ですね。初めてこの計画を読む人は「追加した」ということが分からないのですね。

(その後、事務局の判断で「追加して」を付加した)

【佐藤主査】  次に、資料2-1の6頁上段、アスペリティの部分です。ここは、宮澤委員、松澤委員に修文案を作成いただき、その後、久家委員からのコメントなどにより、修正を行っています。もう一度皆さん、ご一読ください。ここは従来計画の中では一番重要な変更点になります。

【平田委員】  まず、宮澤委員からご説明いただいたほうがよいと思います。

【宮澤専門委員】  前回の委員会で議論されたのは、まずプレート境界のアスペリティに関して、地震性滑りを起こす場所と非地震性滑りを起こす、そういった二元論的なアスペリティモデルの考え方が妥当ではないということで、そういった二元論を脱却するようなモデルに発展させようという内容がまず1点です。

 もう1点は、今までこういったプレート境界で起こる地震に関して、アスペリティモデルという概念を使って地震発生予測をしようとしていましたが、それ以外のモデルも入る余地があるだろうという内容で、この2点について研究が推進されるような内容で修文しました。

 次に、メールでの議論についてですが、久家委員の意見の一部が実はここでは再度削除されております。8行目に「包括的な地震発生モデルの構築に向けた研究を進める」とありますが、最初に出した案はここに書いてあるような内容でした。その後、久家委員からはいわゆる現行のアスペリティモデルをさらに発展させていく、それとは別に全く新しいモデルをつくるというといった提案があり、我々もそれを考えていましたが、さらにその上にそれらをすべて包括するようなモデルまで考えるというのが目指すところではないかと思って書きました。

 ただ実際に残り2年少しでそういった包括的なモデルの実施までできるかどうかというのは、モデルの作成までできるかどうかは、非常に未知数なので、久家委員が言われたように、あくまで現行のアスペリティモデルとその発展版とそれとは全く独立になるかもしれないそういったモデルを推進するというので、包括するというのはさらにおそらく次期計画の中で進めていったほうが現実的であると思いましたし、あるいはもう既にそういったアイデアが存在し、研究が進んで包括するようなモデルに関する研究が進んでいるようでしたら、こういった書き方でもいいのかと思っています。その点についてはメールの議論では、他の方から意見をいただいていなかったので、現在の草案は、山岡科学官の意見が反映されたものになっていると思います。

【平田委員】  資料3の5~6頁に対応している話だと思います。

【山岡科学官】  ここまで多様性、多様性と言ってしまうと、ちょっとやっぱり混乱をする。またカオスになるという感じで、結局何をやりたいのかよくわからないというところもあるので、ここではもう少し希望を持って、「包括的な地震発生モデルの構築に向けた」という言い方でいいのかなと思いました。要するに心はこういう方向であるということです。その中にそのプロセスとして多様なモデルをつくるということは当然あるけれども、そういう単に多様であって、場所ごとに違うモデルを作るというわけではなくて、やはりすべてを説明するようなものに向かうというのが正しい考え方だなというところで、こういう表現にしました。

【久家臨時委員】  私が一番気になったのは、やはりいろいろな可能性を含めてほしいという、1点だけです。だから、できるだけ今まで1つのモデルにとらわれていたというのを外したいというのが一番の私の希望です。

【佐藤主査】  現行計画のパラダイムがアスペリティモデルで組み立てられていますからね。

【久家臨時委員】  ただ幾つかメールの中でも議論がありましたが、現行計画の中で書かれているアスペリティモデルというのは実は非常に不明瞭というか、何をモデルとしているのかわかりません。しかしやはり方向性として、あるモデルにとらわれたということを、少しでも取り除きたいというのが私の意見の意図でした。

 それで、包括的という言葉が残っていますが、やはり私は、まだ少し抵抗があります。包括的がほんとうにできるのかどうかということと、それとともにほんとうに包括的なものを目指すことでいいのかということについては、今の段階で断言していいのかという疑問がまだ私の中であります。それはあいまいだと言われますが、今の段階では少しあいまいでもいいから自由性を残したほうがいいのではないかなと私は思っています。それは皆さんのご意見にもよると思いますが。

【平田委員】  メールの議論では、私は短いコメントをしましたが、アスペリティモデルはあいまいではありますが、少なくとも現行計画の中ではどういうものをアスペリティモデルと言うかについてきちんと書いてあります。それは資料2-1の2頁目31行目から33行目に再掲してありますが、「プレート境界の地震については、非地震性滑りの進行により固着領域(アスペリティ)に応力が集中し、やがて地震発生に至るというモデル(アスペリティモデル)」と、非常に大ざっぱな概念で定義されています。

 だからこれがよく言えば発展して、悪く言えば拡大解釈されているといえます。その後、実際に理論が肉づけされたときに、その方向がある特定のモデルになって。もちろんこれだけでは何の意味もなくて、このときにアスペリティが保存するとか、それからアスペリティがほぼ同じ繰り返しの大きさで滑るとかってそういうことがあるから、予測に役に立つと当然思ったけれども、そこが少し違う可能性をまさに追及できなかったという意見が。とも私は思います。

 ですから、少なくとも現行計画で書かれている「アスペリティモデル」はその程度の意味しかない。ただそれを肉づけされたある種のアスペリティモデルというのが実際にあったことは事実だと思いますけれども。もう1度この宮澤委員が書いた草案について検討すると、資料3の6頁にまとめられた「アスペリティモデルを精査する」、「他の複数のモデルも検討する」、「他のモデルは(あっても)現段階では具体性に乏しいので、それ以上言わない」という点については、書き方は別として、コンセンサスできる内容と思いますがいかがでしょうか。

【久家臨時委員】  異論ありません。

【平田委員】  だからこれらの点が草案に素直に表現されれば問題ないと思います。

【佐藤主査】  久家委員が引っかかっているのは、資料2-1の6頁8行目の「より包括的な」というキーワードだろうと思いますが、違いますか。

【久家臨時委員】  そうです。今、引っかかっているのはそこだけですね。

【佐藤主査】  山岡科学官のおっしゃっているのは“希望”としてはわかりますが、前回の会議のときにもアスペリティモデルの検証や再検討という形がいいというコンセンサスがありました。ただし、対抗する別のモデルが具体的に提案されているわけではない。だけれども、やはり2年間の中で包括的なモデルというのは踏み込み過ぎの印象があって、今の研究の方向性で言えば多様なモデル構築を促すというようなニュアンスのほうがいいのではないかという印象があります、ですから、ここでは「より包括的な」というのを削除してはどうかと思います。

 1つはアスペリティモデルを育てていくという考え方で、モデルを鍛えていくというのが1つありますよね。でも違った方向性のものもやはり建議ではエンカレッジするというスタンスを見せるという……。

【山岡科学官】  そこを明確にしたいということですね。

【久家臨時委員】  私はそう思っていました。

【山岡科学官】  もちろんそれで良いと思いますけれども、ただサイエンスはやっぱりできるだけ1つのもので説明する方向に進むというのがサイエンスだと僕は思います。

 だから、「向けた」と書いてあるのはそこを表しているつもりです。ただこれがこの2年間でここでは2年間ではちょっと言い過ぎであるというであるならば、削除してもいいかなと思います。やっぱりいろいろなものが林立しつつ、できるだけ統一的な説明をしていくのがやっぱりサイエンスの考え方であるし、これはサイエンスの計画なのだから、そういうスタンスは崩さないであろうと僕は思っています。ただ、そのプロセスとして、この2年間では少し多様なモデルを促すということを主張するということであれば、それでもいいかなと思います。だから、包括はまあ次期以降に回すと言うんだら、それもありかもしれないです。

【佐藤主査】  多様なモデルは提案にはありません。多様性の理解を深めるけれども、多様なモデルをつくっていくという意味ではなくて、包括的というのはそれを全部取り込んで、1つのスキームをつくり上げたいという夢ですよね。それは皆さん、基本では理解されていると思うけれども、2年間の見直し目標としてでは、やっぱり1つのアスペリティモデルで動いてきたことに対する反動みたいなものとして...。

【平田委員】  でも、そのアスペリティモデルというのは、第1次計画と第2次計画では固着領域と、それと完全に滑っている領域のほかに、準静的に滑る領域があって、それが応力集中してアスペリティが破壊されるという、それをアスペリティモデルと言っただけで、それ以上ではないのです。その点はご理解いただかないと。少なくとも建議で定義したのはそこだけなので、今までは二元論的に固着しているところと滑っているところ以外なかったけれども、準静的な滑り、ゆっくり滑りがあって、ゆっくり滑りの伝播によって、固着領域に応力が集中する、ローディングされるというそこが重要だったわけですね。だけれどもそれを進化させるときに、アスペリティが保存するということは1つ重要な要素だけれども、アスペリティモデルの中にアスペリティが保存するという概念は、もちろん内包はされていますが、個人的には、必ずしもそれが保存されなくなって、アスペリティモデルになるのですね。もちろん、この考えは極端過ぎるという意見があるのは知っていますが、例えばそのときのアスペリティは、保存するアスペリティモデルや保存しないアスペリティモデルを含めたような形になるので、多様なモデルでも私はいいと思いますけれども、それではだめなのでしょうか。「包括的なモデル」でなく「多様なモデルの構築に向けた研究を進める」や「多様なモデルを検討する」など。

【山岡科学官】  「多様なモデルを検討する」であればよろしいかと思います。

【小泉専門委員】  私もそのほうがいいと思います。この文章をそのまま読むと、前半に「アスペリティ」の言葉が3つぐらい出てきて、アスペリティの分布、アスペリティ間の相互、その後、多様性についてという書き方をするとどうしてもアスペリティモデルの発展のほうに普通読めると思います。そうしたら多様性についてのという言い方じゃなくて、多様なモデルという言われ方がよいと思います。資料3の6頁目にある宮澤委員の3つが非常にわかりやすい。「アスペリティモデルを精査する」。「他の複数モデルも検討する」。その2つを反映するとすれば今、平田委員が言われたように「多様なモデルも検討する」という書き方のほうがすっきりして良いと私は思います。

 山岡科学官の方向性も非常によくわかりますが、この2点を書くのであれば、「多様なモデルも検討する」と書かれたほうがいい。接続詞は「また」じゃなく「一方」がいいかもしれません。

【佐藤主査】  「また」のところ。「一方」。

【小泉専門委員】  4、5から7行目までですね。「モデルを再検討する」までありますよね。「また」のところを「一方」。

【平田委員】  「地震発生メカニズムについての多様なモデルを検討する」。

【小泉専門委員】  「モデルも検討する」。あるいはその検討の中身の研究を進めるでもいいですけれども。

【谷岡専門委員】  アスペリティを用いた地震発生モデルを再検討するのに、地震発生メカニズムの多様性を取り込んだ再検討をしなさいよってここは言いたいのだと思います。多様性の多様なモデルの話ではなくて、ここは地震の発生の多様性をアスペリティモデルに取り入れなさいよということを言いたいのだと思います。

【小泉専門委員】  そういう意味ですか。

【谷岡専門委員】  ですよね、この文章は。

【小泉専門委員】  それだとほとんど全部、アスペリティモデルの精査になってしまうような気がしたので。

【谷岡専門委員】  だからそれはその後の部分に入れるのではないですか。発生メカニズムの多様性はいいと。その後、この地震発生モデルの多様性をきちんと取り入れなさいという、2段階にする必要があると思います。

【松澤臨時委員】  それが宮澤委員の2番目の案。

【佐藤主査】  やっぱりアスペリティモデルを再吟味するということは重要である。だけれども、その後でやっぱり「また」と続く必要がある気がします。やっぱり文章の流れとしては「より包括的な」を取るだけのほうがよいのではないでしょうか。

【小泉専門委員】  わかりました。固執しません。

【松澤臨時委員】  宮澤委員の2回目の案(資料3の5頁)のほうが、多様が2つ出てきて、最初のほうで多様性について理解を深めて、その特性を組み込んだ多様な地震発生モデルの研究を進めるとなっています。私も山岡科学官と同じで将来的には包括的であるべきだということは全く同感ですが、それを残り2年間でやるか、目標としてやるかの判断の違いだけのような気がします。それで、地震予知研究の流れとして、今回特に予測を前面に出した以上、モデルを立てない限りそういうことができないので、それで絞り込んできたという経緯があります。それを今回はもう少しもう1回広げようということです。ローカルミニマムを見ている可能性があるから、真のミニマムを探しましょうということだと思います。なので、ここでは「多様な地震発生モデルを進める」にして、その中でよりよいモデルを将来的には探すというニュアンスではいかがでしょうか。

【平田委員】  「多様な地震発生モデル」ですね。

【佐藤主査】  「より包括的な」を止めて「多様な」になっているのですね。

【松澤臨時委員】  これが出た時点では、私も山岡科学官と同じ意見でしたが、今日のいろいろな議論を伺って、「多様な」がよいと思いました。

【佐藤主査】  後半部分に「多様な」は必要でしょうか。

【平田委員】  いや、だからモデルをいっぱい作るということですよ。

【佐藤主査】  それを明示的に書く必要があるのかという。

【山岡科学官】  明示的にしなくてもいいと思う。

【平田委員】  書いたほうがいいという意見は今日の議論では結構出ましたね。

【松澤臨時委員】  エンカレッジすべきというのが、趣旨だと理解したので。

【平田委員】  だから少なくとも残り2年間はいろいろなモデルを検討しろと。

【佐藤主査】  そうではなくて、アスペリティモデルはそれなりに掘り下げていく作業が必要ということと、それだけではなくて、多様性を反映するようなモデルの検討も頑張りましょうということだと理解していたのですが...。

【松澤臨時委員】  私自身の方向性はアスペリティモデルの延長で、いろいろな地震発生、イベントを起こせるということがわかっているので、地震の多様性は多分再現できます。ただ、今の議論はそうではない。

【佐藤主査】  違うものをという意味ですか。

【松澤臨時委員】  ええ。違うモデルから同じように多様なものをつくり出せるのではないかということだと理解しました。

【平田委員】  同じ現象を説明する複数のモデルがあってもいいという考えがあるということですね。

【佐藤主査】  分かりました。それでは7行目から読みます。「また、地震発生メカニズムの多様性についての理解を深め、その特性を組み込んだ多様な地震発生モデルの構築に向けた研究を進める」とします。

【小泉専門委員】  「研究を進める」は「研究も進める」ですね。

【平田委員】  「多様性」と「多様な」という同類の言葉が同一文章に2回出てくるので、これを違う言葉にしたほうがほんとうはいいですけれども。

【小泉専門委員】  では、「多様な」を「複数の」ではいかがですか。

【平田委員】  「複数の」、「いろいろな」、「さまざまな」とか。あとは主査一任で。

【佐藤主査】  それでは、そのように修正させてください。

【三浦主査代理】  9行目の「構造」という言葉についても少し説明が必要と思いますが。 「地下構造」なのか「モデル構造」なのか。

【小泉専門委員】  おそらく「地下構造」だと思います。固着域を規定するものは何かということだと。

【松澤臨時委員】  構造探査をやっている人は普通に構造という言葉を使いますが。

【平田委員】  「分子構造」もあるし、 速度分布もある。 それともジオメトリーも含んでいるっていうことですかね。

【松澤臨時委員】  ジオメトリーも含むのでしょうね。

【佐藤主査】  その下の地域に対応したということの前文だから、幅広い意味で構造にしたのだろうと私は理解しました。

【平田委員】  資料2-2の対照表には「アスペリティ域に固有な地殻やマントルの性質の研究」と書いてあるので、原文をなるべく生かしましょう。

【山岡科学官】  プレート境界に関しては地域に対応した地震発生予測モデルを構築するわけですね。

【平田委員】  ここは解明のための研究なので、予測モデルをここで構築する必要はない。削除を提案します。

【宮澤専門委員】  これは削除していただいて構いません。

【平田委員】  ただ、元の文章で書いてあることは、やっぱりもれなく書いておかないと、今やっている人たちがはしごを外される感じになるので、気をつける必要があります。

【宮澤専門委員】  その点については、「構造と滑りとの関係」については残すべきですが、「地震発生予測モデルの構築を検討する」というのは書き過ぎと思います。

【平田委員】  それでは「構造と滑り特性」を復活させ……。

【松澤臨時委員】  「構造」を「地殻やマントルの性質」を何かに変えればいい。

【平田委員】  「アスペリティ域に固有な地殻やマントルの性質の研究を進める」という一文を生かすような方向で修正しましょう。

【松澤臨時委員】  「構造」のかわりに「地殻やマントルの性質」と入れ替えてはどうでしょうか。

【三浦主査代理】  ジオメトリーは入っていますか。

【平田委員】  それを気にするなら、「地殻やマントルの性質や境界面の形状」としてはいかがでしょうか。

【佐藤主査】  「さらに構造と滑り特性との関係の調査も進め、」を「さらに地殻やマントルの性質や境界面の形状と滑り特性との関係の調査も進める」と変更します。

【佐藤主査】  6頁の最下部、「津波の生成過程」を「津波の生成・伝播過程」と変更します。これは前回の委員会で検討されたところです。

【松澤臨時委員】  これまでは強震動というのは伝播を含んでいるというイメージで特に入れていなかったのでしょうか。

【佐藤主査】  生成ばかり強調されていたので、伝播を明示的に入れたということです。

【松澤臨時委員】  実際にやっていることは波動伝播も含まれるので、誤解を招くようであれば、明示的に入れたほうがいいかもしれませんね。

【佐藤主査】  実はサブタイトル変更についての議論もありましたが、既存の計画については基本的には変更しない方針でいきます。

 それでは、次に9頁の35行目、ここからが大きな追加項目になります。前回の委員会で提示したタイトルから微修正がありましたので、ご確認ください。また、10頁の7行目、20行目、28行目の中項目についても一部修正されています。それから10頁の12行目、「震源減域」は「震源域」に修正をお願いします。

【平田委員】  まず、中項目のタイトルについてですが、地震部会と測地学分科会で、不十分だった項目が4つ出されておりまして、そのタイトルをできる限り生かす方向で原案を作成したので、「超巨大地震の発生サイクルの解明」や、「超巨大地震の震源過程の解明」という言葉を中項目のタイトルにしていました。その後の議論で、内容に即した形にすべきというご意見をいただきましたので明示的に書きかえました。具体的には「超巨大地震とそれに起因する現象の」という枕詞で統一しました。

【三浦主査代理】  10頁の22行目の後半ですが、「超巨大地震の発生予測は、低頻度の現象のため」という表現がありますが、主語と合っていません。 対案は「超巨大地震は低頻度の現象のため、その発生予測は過去の地震履歴に頼った従来の手法では必ずしも十分ではない」でいかがでしょうか。

【平田委員】  良いと思います。

【佐藤主査】  私もちょっとここは1つ気になることがあって、過去の地震履歴に頼った従来の手法というのは少し補ったほうがいいと思います。

【小泉専門委員】  これは古文書ではなく地質学的手法も全部含む履歴ですか。

【平田委員】  だからこれはわかっている履歴ということですね。

【小泉専門委員】  わかっているというのは。

【平田委員】  過去の低頻度現象は必ずしも正しくサンプリングされていないので、正しくサンプリングするということ。また、そもそも正しくサンプリングされていない低頻度現象の予測についても含まれています。しかし、その前に先ほどご指摘のとおり、前後の文章を修文したほうがよいと思います。

 その上で、「過去の」という意味は「ある地震の起きる場所の過去の知られている発生履歴」というのが正解ですね。

 それと似たような文章が12頁の27行目にも出てきますので、同じように修正したほうがよいですね。 それで、「過去の」を「特定の地域の」と修正してください。

【佐藤主査】  「超巨大地震の発生は、低頻度の現象であるため、その発生予測は特定の地域の地震履歴に頼った手法では十分ではない」。

【山岡科学官】  正確に言うと、地震の繰り返し履歴ではないですか。

【寺田地震・防災研究課長】  おそらく、小泉先生が言われているのは、調べればいろいろなことがわかるから、その手法そのものは間違っていないけれども、今持っているデータ量が不十分であるということではないですか。

【小泉専門委員】  つまり具体的にやるのは今後例えば津波対策の調査や、海底の堆積物の調査をやって発生履歴をもっとよく調べましょうということが1つの目玉になるはずなのに、このように書くと発生履歴の研究は、1つの大きな目玉のはずだけど、自ら否定していると思ったので。

【山岡科学官】  発生履歴はもちろん使うけれども、従来とは違った手法でより低頻度であるものも予測する手法を開発するということだと思いました。そういうふうに書いたらいかがでしょうか。

【小泉専門委員】  うん、そう読めるならいいのですが。

【平田委員】  もう1つは、低頻度だから、原理的にサンプルが足りないということがありますね。そういう場合でもそれを予測する手法は考えなければいけない。

【山岡科学官】  どういう新しい手法かよくわかりませんけれども、おそらく繰り返し履歴に頼った手法ではない手法を考えているのではないですか。

【平田委員】  そうです。例えば大水が出る確率や非常にまれにしか発生しないような現象の統計は、極値理論あるいは、漸近性について研究する分野ですが、それらは地震の統計にはほとんど取り入れられていないわけですね。だからそういった研究をする必要があるということ。過去の履歴をたくさん集めるという研究だけではないということが趣旨です。あまり細かく各必要はないので、「過去の履歴に頼った従来の手法」をやめましょうか。

【山岡科学官】  これは地震の繰り返しに頼った手法のことですね。

【松澤臨時委員】  単に過去の地震履歴を明らかにすることに対して一層の努力をすると同時に、ほかの手法も組み入れるということですね。

【平田委員】  では、そう素直に書いたほうがいいですね。 超巨大地震の発生は低頻度の現象であるため、過去の地震発生履歴をこれまで以上に調べると同時に。

【小泉専門委員】  でその後、新しい統計の手法もしたというのを続ければよいのではないでしょうか。

【松澤臨時委員】  それは、後ろの方で書いてあるので、それを読めるような文章にすればよいと思います。ただ、新しい統計的な手法というのは少し漠としているなという印象はありますが。

【佐藤主査】  確認します。「超巨大地震の発生は低頻度の現象のため、その発生予測には地震履歴をこれまで以上に精査するとともに、新しい統計的な手法を用いた予測手法の開発が必要である」。

【松澤臨時委員】  あと、「て・に・を・は」を修正いただければ。

【平田委員】  「て・に・を・は」は主査一任で。

【宮澤専門委員】  これに対応する文章が12頁の27行目から29行目にありますが、今、議論している10頁目の過去の巨大地震発生とかの履歴に関するそういった研究は、5章(1)に対応すると思います。つまり10頁の7~18行目に入る内容だと思いますが、それを現象の予測のほうの文章に入れてよいでしょうか。

【平田委員】  そうですね。だから、「とともに」というふうに忘れないために書いてあって、具体的にやることは書いていないのですが。

【谷岡専門委員】  「とともに」ではなく「以外に」がよいのではないでしょうか。

【平田委員】  宮澤委員は、過去の地震履歴の部分はサイクルの解明のところに入っているというご指摘です。

【谷岡専門委員】  だから「ともに」ってここで書くと、ここでそれについても書かなければいけないので、「以外に」と書けばよいのではないでしょうか。

【小泉専門委員】  もう一度書き直す必要がありますね。

【松澤臨時委員】  ここはむしろ書かないほうがいいのではないでしょうか。

【佐藤主査】  いや、後でさらに具体案として出てきているのもやっぱり統計的な手法の開発だけしか、書かれていないので、むしろここでは単に、低頻度の現象のため、新しい統計的な手法を用いた予測手法の開発を行うと書いた方がよいのではないでしょうか。

【松澤臨時委員】  そのほうがいいと思います。

【平田委員】  それでは、10頁も12頁も同じように修正しましょう。

【佐藤主査】  12頁の27行目、過去の地震履歴に頼った云々のところを削除します。

【小泉専門委員】  そうすれば具体的に何をするか書いてあるのではっきりしますね。

【佐藤主査】  ありがとうございます。 次、11頁平田委員説明をお願いします。

【平田委員】  はい。11頁の(1)について、当初は小項目として、「ア:地震発生サイクル」、「イ:震源過程」、「ウ:誘発された内陸地震や火山活動」としていましたが、「地震発生サイクル」と「震源過程」の中間として、「準備過程」と「先行過程」と「地震の直後の余効」についての研究テーマがあり、事前調査の結果でも内容について混同がありました。例えば、「前震の研究」は「地震発生サイクル」で、「余効変動の研究」については「地震発生サイクル」あるいは「震源過程」で報告されていました。そこで、これらをはっきりさせるために「イ:超巨大地震の準備・先行・震源・余効過程の解明」として区別してみました。タイトル名についてはご検討いただくとして、地震を1サイクルとして考える研究はアに入り、「前震の研究」、「先行過程の研究」、「余効過程の研究」はイに入るということです。

【松澤臨時委員】  余効変動は理解の項目か、モニタリングの項目かどちらに入るのか東北大で議論になりました。

【平田委員】  ここでいう「モニタリング」の項目は、あくまでも「予測のためのモニタリング」です。

【松澤臨時委員】  東北大における余効滑りの研究は、それが次の最大余震の予測を目的に行っています。その位置づけの場合は...。

【平田委員】  それであれば、モニタリングの項目ですね。

【松澤臨時委員】  わかりました。

【佐藤主査】  「ウ:超巨大地震に誘発された内陸地震や火山活動等の解明」の実施内容では「火山活動」等のキーワードは全然入ってこないので、少し気になるのですがいかがでしょうか。

【平田委員】  事前調査において、明示的に火山活動の変化を研究するという提案がなかったので、あまりはっきり書いていません。ただし、研究計画としては入れるべきと思いますので、折衷案として、例えば12頁の18行目「プレート境界の超巨大地震による内陸域の応力変化」というところに「内陸域の活構造や火山周辺等の応力変化」としてはいかがでしょうか。

 つまり、ひずみ集中帯についての研究として火山のキーワードを入れるということです。火山はひずみや応力のある種特異点になっていますので、このような整理は1つの考え方だと思います。ただ、ほんとうは火山に関連するような項目を積極的に入れる方がよいのですが、清水委員、何か提案ありますでしょうか。

【清水臨時委員】  私も気になりましたが、ただ具体的に課題が出てきていないので難しいです。逆に明示すると残り2年間で具体的な成果を出さなければいけないので、今の平田委員の案には賛成です。

【小泉専門委員】  M9の地震が起こると火山噴火が誘発されるという話で、先日国会決議もありました。残り2年間で何ができるかという整理も確かにありますが、本見直し計画の中で何か書くとすればここの部分しかないのですが、それについては火山研究のコミュニティの中ではどういう考えなのでしょうか。

【清水臨時委員】  実際、火山活動において何か変化があれば観測研究を行うけども、現時点で残り2年間を見据えて計画をする困難さはあると思います。ただし、現行の計画においても、地震と火山が一緒になったことで、「相互作用」という項目があります。だから、その項目で観測研究をすることは可能です。ただおっしゃる意味はよくわかっていて、何かしらもう少し明示的に書くべきというご意見はよくわかります。

【小泉専門委員】  火山の国会決議については、いろいろとかなり具体的に書かれてあるようですが、事前に研究者に根回しした上であのような話が出たわけではないのですか。

【清水臨時委員】  ないと思います。

【平田委員】  事務局は何か情報をお持ちですか。

【寺田地震・防災研究課長】  事務局も理事会から連絡をいただくまで知りませんでした。

【佐藤主査】  見直し計画の中でも、火山活動の活性化等が書かれていて、さらに実施計画のタイトルとしても挙がっているので、何か項目として書かれた方が良いと思いますね。

【清水臨時委員】  それでは別項目としてひとつ書きましょうか。

【平田委員】  火山がひずみの集中域ということで、おそらく、ひずみ集中帯の研究においては成果があると思います。実際に、3月11日の直後に火山体直下において地震活動が活発になりました。噴火に至るかどうかはまだわかりませんが、これらの観測結果をまとめることは重要です。先ほど修正案を発言しましたが、それでは文章も長いので、内容を変えない範囲で2文に分けましょう。例えば、「日本列島の地殻の応力状態の変化を解明する」ということと、「日本列島全体の変化と、それぞれの領域の変化」として、活構造、火山、ひずみ集中帯について読めるような修文を提案します。

【佐藤主査】  それでは、修文案については預からせていただけますか。

【平田委員】  そうですね。

【清水臨時委員】  現行の計画にも、モニタリングの項目で「日本列島域」と「地震発生・火山噴火の可能性の高い地域」がありましたね。だから分けて書くことは可能と思います。

【今給黎臨時委員】  全国の観測はおそらく国土地理院の分野と思いますので、草案の「大学は」という主語は削除がよいかと思います。

【平田委員】  削除しましょう。

【三浦主査代理】  16行目の書き出し部分は、余効変動だけではないので、「東北地方太平洋沖地震とその余効的な地殻変動」にしてはいかがでしょうか。

【平田委員】  そうですね。本震も入れないといけませんね。

【佐藤主査】  では、“大学”という主語を除いて、活火山、活構造等に周辺での応力変化等のモニタリングをやるという概念を入れて、修文するということで、主査預かりにさせてください。

【宇平臨時委員】  30行目だけ“超”がありませんが、意図的ですか。

【平田委員】  特に意図はありません。30行目は“超”を追記します。あと大津波の「大」は削除します。

【宇平臨時委員】  超巨大地震だから大津波が出るとは限らないですからね。

【宍倉専門委員】  11頁の33行目の超巨大地震サイクルの中で、この「大学は」と明示されている部分については、産総研も重点的にやっていく内容なので、「大学は」というのを削除してください。

【平田委員】  逆に産業技術総合研究所と追記してはいかがですか。

【宍倉専門委員】  それでは似たようなところで、12頁の12行目もそうですね。追記してください。 14頁の3行目については、産総研単体でできるものではありません。つまり連動する地震の履歴は、例えば南海トラフだったら駿河トラフから日向灘まで広域に履歴を見た上で、その中でどの履歴が一致するとか割れている範囲がどこかとか、そのように見ていくしかありません。ただ、このような手法は、産総研だけではとても手に負えないなという観点があります。

【平田委員】  ここは現行計画の研究課題5006で行われている連動海溝型地震の履歴とメカニズムの解明に対応すると思い、このような草案にしたのですが、技術開発には対応しないというのであれば、削除がよろしいのではないでしょうか。

【宍倉専門委員】  そうですね。確かに内容的には12頁の12行目とダブっているので、そういう意味では削除がよいかもしれません。

【佐藤主査】  それでは12頁12行目に「大学と産総研は」を付記、14頁の3、4、5行目は削除します。

【今給黎臨時委員】  12頁の10から11行目で、水準測量の話を入れていただきましたが、主語として「国土地理院は」と書いていません。これは、観測については、地震直後からすでに東北地方をかなり広域に水準測量しましたが、ここで明示されているような“解明”までは至っていないのが理由です。

【平田委員】  そうすると、12頁の35行目についても「大学は」を削除した方がよいですね。

【今給黎臨時委員】  確かにそうですね。地震、地殻変動のモニタリングの中にはGPSが含まれると読めますので。

【佐藤主査】  12頁35行目の主語、「大学は」を削除する。

【今給黎臨時委員】  国土地理院としては、とにかく基盤的な観測という点でGPSの観測や地図測量を行うので、これらは超巨大地震のためだけではないという意識が非常に強くあります。ですから、新しく個別課題を出しづらいという立場です。

【三浦主査代理】  11頁の33行目は、「千島海溝沿い」が必要ですね。

【佐藤主査】  「北海道地方太平洋沖の千島海溝沿い」と修正します。

【平田委員】  「イ」のタイトルはこれでよろしいですか。

【三浦主査代理】  「余効過程」はあまり使われない言葉ですよね。

【小泉専門委員】  過程を取ってはいかがですか。

【佐藤主査】  そうすると、準備・先行・震源・余効の解明ではやっぱりおかしい。

【平田委員】  12頁の8行目に「大規模に進行している余効滑りを含む超巨大地震の余効的地殻変動とそれに伴う応力の再配分に関する研究」と中身が書かれています。この実態は余効滑りと、余効滑り以外の余効的地殻変動ということですね。

【今給黎臨時委員】  余効過程という言葉はないと思います。Postseismicという現象すべてを“余効過程”という言葉にしたということですよね。

【平田委員】  そのとおりです。確かに聞き慣れない言葉ですが。

【三浦主査代理】  超巨大地震の発生とその前後のプロセスの解明」ではいかがでしょうか。

【佐藤主査】  それでは、「超巨大地震の発生とその前後の過程の解明」としましょう。

 それでは4計画推進のための体制の強化について、まず、事務局から説明をお願いします。

【安藤地震火山専門官】  現行の計画では、4章として6項目の中項目が挙げられています。現行計画の見直し草案では、5章として超巨大地震に関する項目を特出しするという構成について、前回の委員会で決定しました。これによって、元々計画のすべてを受ける形の章であるべき“体制の強化”について、このままでは超巨大地震に関することの“体制の強化”について読めなくなるというご意見を複数の方からいただきました。具体的な意見については資料3の7頁の中ほどから挙げさせていただいていますが、主査ほかと相談した結果、超巨大地震に関する体制の強化については、資料2-1の14頁の7行目以降に書いてあるように、“なお”書きで付記しました。

(原稿の読み上げ)

以上です。

【平田委員】  当初、現行の計画の4章については、今回の見直し計画では特に触れない予定でしたが、追記すべきというご意見が幾つかあったので、事務局から説明があったように整理しました。基本的には現行の計画の4章に書かれてある内容でよいと思いますが、あえて超巨大地震に関連して考慮しなければいけないということをここに記載するように事務局と相談いたしました。

 それで、書く順番については、まず社会への還元について書いて、それから国際共同研究・共同計画、それから予算で、推進する体制。体制というのは具体的に言うと、地震調査研究推進本部とこの研究計画の関係という意味です。

 気象庁や久家委員などいろいろな方のご意見を入れて文章を作成しました。つまり、研究成果を社会にすみやかに伝える必要があるということを重要なメッセージとして最初に書きました。ただし、今もう1度読み直してみると、「平成23年度東北地方太平洋沖地震のような甚大な自然災害」は「東日本大震災のような甚大な自然災害」と修正した方がよいかもしれません。

【佐藤主査】  ありがとうございます。最初は4章の書く中項目の最後に付加した形を取りましたが、やはり5章を特出しするという最初の方針にあわせて、項目としては現れてきませんが、“なお”書きの形で末尾に付加する形で整理させていただいたということです。よろしいでしょうか。

【小泉専門委員】  文章に“巨大噴火”が入っていますが、14頁の16行目には地震調査研究推進本部としか書かれていません。清水委員これでよろしいですか。

【清水臨時委員】  そうですね。今までのやり方でいけば、火山噴火予知連絡会を追記してほしいですね。ただし、気象庁のご意見も聞いた方が。

【宇平臨時委員】  受け止めるものがあればよいのですが、自ら実施して自分で受けとめるような感じがするので、少し違和感がありますが...。

【平田委員】  現行計画の4章には書かれているので、あえてここで書く必要は無いと考えました、もし書いたほうがいいというご意見が強ければ火山の関係者の方に修文案を出していただいて。

【山岡科学官】  地震調査研究推進本部はむしろ新しい総合基本施策で動いているけれども、火山噴火予知連絡会は、建議に沿って活動していますよね。

【宇平臨時委員】  そうですね。むしろ火山噴火予知連絡会は建議と一体的に動いているという感じが強いのでわざわざ書く必要は無いかもしれませんね。

【山岡科学官】  地震予知連絡会も火山噴火予知連絡会もこの建議によって動いているけれども...。

【佐藤主査】  地震調査研究推進本部はこれらとは異なるから、それをきちんと書く理由があるということですね。

【山岡科学官】  地震調査研究推進本部については、新総合基本施策というものを作成して動いているので、ここに書く意味があるということではないでしょうか。

【平田委員】  実際には、地震調査研究推進本部が東北地方太平洋沖地震を受けて、いろいろな施策を打ち出します。つまり、海底ケーブルや海底の地殻構造や海底地形や津波の調査などを行う。そのような計画についても、この見直し計画で出てきた研究成果を取り入れてやってほしいということが具体的な内容で、それであえてここに入れてあります。だから、火山についてもここでの成果について火山噴火予知連絡会が策定する研究計画に反映されるという具体的な見通しがあるのであれば書いたほうがいいけれども、とりあえずなければ書かなくてもいいと思います。

【今給黎臨時委員】  火山噴火予知連絡会と地震調査推進本部の大きな違いは、その組織自体でお金を持っているか否かですよね。 火山噴火予知連絡会はrecommendするけれども、自ら施策を立てて実行するわけではない。

【小泉専門委員】  火山噴火予知連絡会は防災には近いですけど。

【宇平臨時委員】  火山噴火予知連絡会は、構成メンバーが研究者の主体なので、ここの部分でわざわざ書く必要ないと思います。

【佐藤主査】  わかりました。それではこの部分は変更しないということにします。

 これでひと通り現行計画の見直し案の草案についての議論が終わりました。幾つか文章を直さないといけない箇所については主査預かりとさせていただき、草案を確定したいと思います。よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

(事務局から前回の議事録の確認、今後の審議日程(案)について説明。さらに参考資料3について回収する旨周知して終了。)

 

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研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)