地震火山部会 観測研究計画推進委員会(第9回) 議事録

1.日時

平成23年8月4日(木曜日)10時~12時

2.場所

新霞ヶ関ビルLB階 201D号室

3.出席者

委員

(委員)	平田、藤井
(臨時委員)	清水、松澤、森田
(専門委員)	市原、小泉、齋藤、鷺谷、棚田、飛田、西澤、三浦

文部科学省

寺田地震・防災研究課課長、南山防災科学技術推進室長、北川地震調査管理官、高木地震火山専門官、飯高学術調査官、山岡科学官

オブザーバー

尾鼻

4.議事録

[地震・防災研究課長の着任あいさつ、及び「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点」について]

 事務局に人事異動があり、新たに着任した寺田地震・防災研究課長の挨拶があった。また、科学技術・学術審議会総会(第36回)において取りまとめられた「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点」について事務局から説明があり、測地学分科会の会議では、今後のこの取りまとめを踏まえて議論していくことが確認された。

 

【清水主査】 ただいまより測地学分科会地震火山部会観測研究計画推進委員会(第9回)を開催いたします。

 事務局に異動があったということですので、報告をお願いします。

【高木地震火山専門官】 今年の8月1日付で、鈴木良典前地震・防災研究課長にかわりまして、寺田博幹課長が着任しました。

【清水主査】それでは、寺田課長からごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【寺田地震・防災研究課長】 ただいまご紹介にあずかりました寺田でございます。地震・防災研究課長を拝命いたしました。本日はほんとうにお忙しい中、観測研究計画推進委員会の第9回の審議のためにわざわざお集まりいただき、まことにありがとうございます。

 実は私、昭和の時代、科学技術政策局の調整課というところで2年間仕事をさせていただいておりました。その後はサイエンスとは全然関係のない、テクノロジーだとかテクニックのほうの仕事ばかりしておりましたので、皆様方のお話を聞かせていただき、勉強させていただいて、今後いかに我々行政側ができることをやっていけるかというところにつなげていきたいと思っております。

 本日のこの委員会では、地震及び火山噴火のための観測研究計画が着実に推進するよう、皆様方から具体的なご検討をいただくために開かれるものと聞いております。本年度は特に、5年に一度の自己点検評価の年ということでございますし、3月には甚大な災害を伴う東北地方太平洋沖地震も発生しておりますので、この巨大地震がいかに発生したかも含めて、皆様方、専門の知識をもって、しっかりとご審議、ご検討いただきたいと思っております。

 私どもとしましては、皆様方のいろんなお話を聞いた上で、ご審議の結果を受け、観測研究計画の着実な推進のために、しっかりと施策の展開を図っていきたいと思っておりますので、何とぞよろしくご審議をお願いいたします。

【清水主査】 ありがとうございました。寺田課長には、今後、予知計画の全面的にバックアップをぜひお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【清水主査】 それでは、これから1番目の議題に入る前に、「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点」について、科学技術・学術審議会の総会で決定したと聞いております。これについて事務局から説明をお願いします。

【高木地震火山専門官】 (参考資料1-1を用いて以下の通り説明。)

  • 5月31日の科学技術・学術審議会総会にて、「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点」を取りまとめた。
  • 野依会長より、各分科会においてもこの検討の視点を踏まえ、今後、各会議で審議してほしいという旨の発言があった。
  • 今後の予定は、今年の秋から冬にかけて行う基本計画推進委員会において、分科会の会長から報告を行う予定であるので、こういう視点を持って今後議論を頂きたい。

【清水主査】 事務局の説明に対して、質問等ありましたらお願いします。

【山岡科学官】 学術分科会に出たとき、これについて幾つか説明がありました。2ページの最後に「我が国の地学的状況を踏まえることが必要である」とあります。こういう文章に「地学」という言葉が出てきたのは非常に画期的ではないかと思っております。国土の地学的現状を踏まえて、科学技術の発展を図るということが書いてあると思っています。そういう解釈をしたほうがいいのではないかと思うのですが、どんなものでしょうか。

【藤井委員】 今、山岡さんが言われた点は非常に重要な点だと思います。先進国の中で、日本だけが国土の全体が地震や火山噴火、あるいは津波に襲われる危険性を持っているわけです。イタリアの一部もそうですけれども、それ以外の国はみんな、安泰なところに政治的中心も経済的中心もある。だから、日本は地震予知あるいは火山噴火予知に対して、世界のトップになるような研究を進めなくてはいけない宿命を担っていることを、ここでは認識していると理解をしています。そのために、この「地学的状況」という言葉を入れてもらっているので、それを受けとめて、今回の大震災をどう評価するかということと、今後、何をやるべきかということをきちんと議論していただければと思います。

【平田委員】 私もこの時の総会に出ていたのですが、そういうポジティブな言い方もできますが、総会では原子力のことについては議論されていますが、地学とか環境についてはほとんど議論されていないです。それで、藤井先生と私があえて発言したのです。地震そのものについての議論はほとんどされていませんので、ぜひ測地学分科会からの強力な提案を行い、ここがサポートしていく必要があると思っております。それほど楽観的ではないです。

【山岡科学官】 学術分科会でも、これについて議論されたのですが、皆さんの頭の中は復興と原子力災害の問題でいっぱいで、例えば、同じような災害をもたらすような東海、東南海、南海地震が起こったときに、やはり広域災害になるのですよということを発言しても、あまりぴんとこないような感じです。だから、ほんとうに大事なことは何なのかは、測地学分科会できちんと主張していく必要があると思っています。

【清水主査】 ありがとうございました。

 当委員会で、これからレビューの作業を行うわけでして、それをこの上の地震火山部会、さらにその上の測地学分科会で、今後このことについて議論されるはずですので、そういう結果を藤井分科会長からは上げていただき、きちっと主張していただくということでお願いしたいと思います。

 

 

[議題1 「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」平成22年度年次報告【成果の概要】について]

 平成22年度年次報告【成果の概要】について、事前に委員に送付した資料とそれに対する修正意見を取りまとめた資料をもとに、事務局が委員修正意見と対応案を説明した。その他の指摘事項も含め、意見交換を行った。取りまとめができなかった一部の箇所については、主査一任となったが、基本的には了承された。

 

【清水主査】 平成22年度の年次報告【成果の概要】について取りまとめ委員である三浦委員、森田委員を中心に原稿を作成していただきました。本日はこの審議を行います。最初に、事務局から説明をお願いします。

【高木地震火山専門官】 (資料1-1、1-2、参考資料1-2を用いて以下の通り説明。)

  • 取りまとめ委員の森田委員、三浦委員、また地震・火山噴火予知研究協議会の企画部を中心に、事務局とともに2回の取りまとめ委員会を開催。
  • 本編(資料1-1)は、第1稿を委員会委員に意見照会を行い反映させたもの。さらにそれを最終意見照会した。委員からいただいた修正意見の取りまとめは資料1-2。この資料1-1,1-2を中心にご審議いただきたい。
  • 本編は昨年同様、専門家以外にもなるべくわかりやすくという趣旨のもと作成。
  • 前年度までは代表的な成果という章で、建議の項目の中の進捗のあった成果を報告していたが、平成22年度は大きな現象が2つ、東北地方太平洋沖地震、霧島山新燃岳噴火があったので、この現象に対する成果について、一部平成23年度の成果も含めて、取りまとめている。
  • 参考資料1-2は、この年次報告【成果の概要】の中の参考編ということで、地震・火山噴火予知研究協議会の計画推進部会長を中心に各建議の中項目毎に成果の取りまとめを執筆いただいたもの。参考資料という位置づけなのでこの内容についての審議は行わないが、これをもとに資料1-1の本編を作成しているので、この参考資料も参照していただきたい。

【清水主査】 事務局から、平成22年度年次報告【成果の概要】の作成の経緯、【成果の概要】の概要について簡単に説明がありました。ここまでのところで質問等なければ、内容、中身について、修正意見等について引き続き検討したいと思います。

【高木地震火山専門官】 (資料1-1、1-2に基づき、個々の委員修正意見23か所について、原案、修正案、修正理由、及び対応案をひととおり説明。)

【清水主査】 どうもありがとうございました。事務局から一通り修正意見とそれに対する対応を説明いただきました。それでは、委員の皆さんから、今の修正案についてご意見をお願いします。

【平田委員】 修正意見(19)ですが、図3のアスペリティの配置に上にガイドを入れてくださいとコメントしたのですが、この図を見てアスペリティの配置が2列あるとわかるのであったら必要ないのですが、私のコメントの意図は、本文の中で2列という表現を出さないで書いていただいたほうがよいのではないか、ということです。この2列という意味が、実はいま初めてわかったのですが、これを2列というのはとても苦しいと思います。だから、本文のほうを単に「宮城県沿岸に近い側ともう少し沖側の2つのアスペリティ」のように変えられればいいと思うのです。それで、この部分の趣旨が変わらないのであれば。

【三浦専門委員】 確かにご指摘のように、列と言うには1個か2個しかないので、2列と表現を改めたほうがいいかもしれません。

【清水主査】ちょっと考えていただいて、もし可能であれば、図よりも文章のほうで対応するということでしたいと思います。

【藤井委員】 6ページの新燃岳のところですが、「小さな噴石」というのはまずいですね。つまり、山頂付近では巨大な噴石が常に噴出していたので、噴石を飛ばすという意味で「ブルカノ式噴火」という用語を使用しているのであれば、「2月1日以降は間欠的に噴石を飛ばす」でいいのではないでしょうか。4月でなっても、山頂付近は数mの噴石が斜面を転がっていますので、2月1日を2月2日と変える必要はないと思います。

【清水主査】 私も個人的にそう思います。2月2日以降がブルカノ式とする対応案では、2月1日はブルカノ式噴火ではないととれますが、2月1日もブルカノ式だと思うので、「1日以降は」は生かして、「小さな」を抜くほうがいいのではないかと思うのですが。

【森田臨時委員】 活動が小さくなったことを全体として表現したかったのですが、1日の噴火は規模が大きかったので、1日を外せば、事実関係として間違いがない文章なると思って2日にしました。そのように皆さんがおっしゃるのであれば、私はこだわりません。

【清水主査】 それでは、そのように「1日」は残して「小さな」を抜くという形にさせていただきたいと思います。

【西澤専門委員】 海溝軸の固着について確認したいのですが、この記載ですと、海溝軸のそばは、今まで固着してないと思っていたけれども固着していたというふうに、ほとんど結論づけられているように読めるのです。ここでの固着というのは、海溝軸の下のプレート境界において沈み込む海のプレートと固着しているということを言っているわけですよね。そうかもしれないですけれども、そうではなく、そこはまだ固着してなくて、陸側のプレートと単に一緒に動いただけという考え方はあまり現実的ではないと皆さん思っているのかどうかを確認したいのですが。

【清水主査】 これは、今日の3番目の議題に関係した重要なご指摘だと思います。今のご意見は、5ページ目の真ん中より下のところの「現時点ではまだその理由はよく分かっていないが」に対して、平田委員から出された修正案(8)で、浅い部分が固着しているので、深いところは滑り残りがあるという考え方を、よりかみ砕いて説明したものですが、それを入れることによって、今度はその考え方は研究者の間で合意ができていることなのか、という確認ですね。どうでしょうか。

【平田委員】 そういうつもりではなく、並列で表現したつもりだったのですが、強過ぎるのであれば、もっと弱めて、両方の考え方があるという感じにしたほうがいいですね。原案だと、浅いところは固着してないとはっきり書いてあるから、少なくとも地震が起きる前はそう考えられていたけれども、今は両方の考えが出ているというつもりです。原案だと、浅いところは固着してないとも読めますけれども。

【山岡科学官】 浅いところというのがどのぐらいのあたりかという定量的な記述がされていない。平田委員は、Kato and Yoshida (2011)の論文をある程度根拠にして書いているのだと思うのです。だから、浅いところをどの辺りとイメージするか。完全に海溝あたりを浅いと言うのか、もうちょっと深いところも浅いと言うかというぐらいの問題だと僕は思うのです。

【西澤専門委員】 今回の地震は海溝軸のそばの大きな滑りが特徴的だと言われているので、その大きな滑りがあったところが固着していたのかどうかというのが、もう今、わかっているのかどうかということです。そこは、皆さん、どう思っていらっしゃいますか。コンセンサスみたいのがあれば。

修正案だとかなり固着している可能性が高いと書いてありますし、先ほどの修正案だと固化していないと考えられていたとなりますから、どっちかというと固着していたのほうが強いのかなと。

【平田委員】 私はそう思いますが、そうじゃないと思う人がいるかもしれません。

【森田臨時委員】 取りまとめ委員としては、わかっていなかったというふうに最初は書いたのです。西澤委員の言われた2つの意見は、今後、明らかにされようとしている。これは、今一番大事な研究のターゲットだと思います。平田委員の意見を取り入れてもいいと思ったのは、「可能性がある」というところで文章が切れているからです。可能性なので、幾つも可能性があるうちの1つであるということです。わかってないというよりは、努力して、こういった考え方も提案されているということを入れることで、努力して研究したことが見えてくる、という考え方で入れました。しかし、表現が強いというのであれば、弱くするということはやぶさかではございません。

【清水主査】 多分、これはこの後の自由討論のかなり重要なテーマになると思います。その後に判断するということでもいいですが、平田委員から並列でもいいというお考えでしたので、もうちょっと並列で読めるように。

【平田委員】 修正案では並列にしてあるつもりでした。その後に、「断層面にはたらく摩擦力が、段階的に低下した」とかいう表現で、サーマルプレシャリゼーションのことがここに書いてあるので、私としては並列したつもりです。そう読めないのであれば、浅いところが強く固着していたのか、してなかったのかについては、現時点では議論が分かれるなどというように、バランスをとって書いていただけばいいと思います。

【松澤主査代理】 もしそうであるならば、今、平田委員が指摘された1つ前のパラグラフの最後の4行あたりも、「しっかり固着する理由については」という言い方をしているので、「固着している可能性が高い」とするなど、ここも少しトーンダウンする必要があるかと思います。

【小泉専門委員】 ここのところはわりと微妙で、例えば、浅いところのプレート境界がほんとうに滑ったのかどうかについては、プレート境界ではなく分岐断層が滑ったのだとおっしゃる方もおられるわけですね。

【平田委員】 いや、それはないですよ。滑ったことは事実です。

【高木地震火山専門官】 これは、多分、今日の議題の3番目のところで議論いただいたほうがいいと思います。とりあえずペンディングにして、3番目の議題の意見交換を踏まえて、主査預かりで取りまとめ委員とともに修文するということでいかがでしょうか。

【清水主査】 はい。時間がないので、それ以外の修正案に対してどうでしょう。

【松澤主査代理】 語句だけなのですが、4ページの最初のパラグラフの最後のところ、ちょっと見落としていたのですが、十勝沖地震の場合は、「地震発生後20秒以内に断層の滑りは止まっている」と言い切っていますが、その後、「一方、東北地方太平洋沖地震では、その後も断層が滑り続けたと思われる」と弱めているのは、何か理由があるのですか。

【森田臨時委員】 「その後も断層が滑り続けた」と言い切れということですか。

【松澤主査代理】 十勝沖地震を言い切るのであったら、ここも「断層が滑り続けた」で言い切っていいと思います。7メートルしか滑ってないとおっしゃる人は、多分だれもいないと思います。

【山岡科学官】 資料1-2の7ページの小泉委員の修正意見(11)ですが、「今後数年間」が「数十年間」と1けた大きくなる理由は、必ずしも根拠が明確だとは思わないのですが。「今後数年間」というのは短いかもしれないけれども、それが1けた大きくなる理由も僕にはよくわからない。数十年、二、三十年なのか、10年なのか5年なのか、そこら辺はあまりコンセンサスがないと思われるので。

【小泉専門委員】私も修正意見の照会のとき、数年から数十年と最初書いていたのですが、それもどうかと思って、数十年という書き方をいたしました。「数十年」にはこだわりません。「数年は」と言い切るのは短過ぎると思ったのです。島崎先生の1978年の論文では,東北地方太平洋沖でM8クラスの地震が起きたときは、前後20年ぐらい東北地方の内陸の地震活動が活発化すると書かれています。査読論文で認められている以上は、「数年」というのはおかしいでしょうということです。

【清水主査】 そうですね。それでは、数年から数十年に延ばすことにします。

 ほかにはありますでしょうか。

【鷺谷専門委員】 資料1-1の28ページの図は自分の関係するところで、もっと早くきちんとチェックしておくべきだったのですが、2点指摘があります。1つは、ここにあるのは概念図であって、研究の成果がそのままの形では含まれていないのですが、それでいいかどうかが1つ。

 あと、それでも一応、研究の成果がそのままの形ではわかりにくいから、わかりやすい形で示しましょうということであればなのですが、上の時系列のグラフのデータとモデルの線が逆になっているような気がしています。1つの点であれば地殻変動のデータは1件しかなくて、いろいろなモデルについて、それをシミュレーションするといろんなケースが出てきますので、ある程度、誤差範囲から外れたところで×がつくわけで、データのほうに×がつくのではなく、モデルに×がつかなくてはいけません。

【清水主査】 そうですね。今の2番目のご指摘はそのとおりだと思います。それから、最初の点の、この絵が全くの概念図ですが、それでもいいかということですが、これは一般の方にもわかりやすくということなのですよね。

【森田臨時委員】 これは、昨年の年次報告【成果の概要】をまとめるときに、参考資料にあるような論文タイプの絵では、普通の人にはなかなかわからないとなりました。かみ砕いてわかるようにつくったものです。科学的に極めておかしいとか、あるいは、例えば、予測実験の話ではもう少しこうしたほうが、もっと専門外の方々にわかりやすいという点があれば、何とかそういう格好に修正したいと思います。

【平田委員】 これのもとのデータは何なのですか。

【森田臨時委員】 参考資料1-2の69ページの下の図4です。図4の絵だけでは、何にもわからないです。これを解釈して、どういうことをやったかというのを、想像をたくましくして、この絵のほうが普通の方にはわかりやすいだろうと。

【鷺谷専門委員】 ほかの絵については、多分、もともとの図がそれなりに使われているのでギャップがないでしょうが、これは、あまりにそれが大き過ぎるのが、ちょっと見ていて心配になったのですけれども。

【森田臨時委員】 例えば、これは鷺谷委員の課題なので、鷺谷委員自身が、この絵は科学的に誤解を与えるとお考えであれば、改変はやぶさかではございません。

【鷺谷専門委員】 実力以上の成果があるように伝わってしまうかなというのを懸念はします。というのは、南海トラフを想定したこういうシミュレーションをやってはいるのですが、実際には、海底地殻変動のたしか2点ぐらいのデータでやっている推定なのです。実際には、最初の段階では、参考資料の69ページの図で言うと、いろんなケースがあり得る中で、絞れるのは結構直前になってからなんです。アピールするという意味ではいいと思いますが、そのあたりを、当事者でない人が見たときにどう思うかということです。

【平田委員】 資料1-1の図7下の絵は何なのでしょうか。日本地図の赤とか青の滑り分布です。これの背景がないとすれば、概念図のもとになったものを聞かれたときに、これを漫画化したと言えるものがないというのはまずいと思う。ほかの火山の絵だって、一応、単なる想像図じゃなくて、論文の絵があるわけで、それに対応する。鷺谷委員が言うとおり、何か計算して、こういうものがある程度出て、わかりにくいのをもっとわかりやすく、これは非常にわかりやすくて気持ちはわかるけど、ここまでできてないのにこれを出すのはちょっと。

【森田臨時委員】 最後の滑り分布というのは、正解は合っているのです。間違いの、つまり×をしたものが、要するに明らかに正解とはずれるものを書いているということなのですけども。

【平田委員】 ここになくても、鷺谷委員の頭の中にあるなら別に反対しませんが。

【森田臨時委員】 最終的に◎で正解、南海地震というのはこれが正解です。だから、それ以外に、明らかに普通の人が見て、ああ、これは外れているとわかります。

【鷺谷専門委員】 これは明らかに、いかにもこういう元図があって、わかりやすく書いたように見えてしまうので、それはやり過ぎにならないかなと思うのです。

【小泉専門委員】 私は、この図を見て、ほんとに苦労して書かれたなと感じています。以前の報告書では論文の図だけしか出ていなかったので、一般の人だけでなく、我々専門の人間が見てもわからなかったので、このようにわかりやすい図を作るという方針は非常にいいと思いました。基本的に説明のところをちょっと緩めて、この図は残したほうがいいと私は思います。説明の最後、「残されたモデルから東南海地震と南海地震の発生間隔を予測することができることが示された」というのは言い過ぎだと思うので、あくまでも概念図と書いてあるのだから、「他のモデルは棄却される」で切っておけばいいと思います。自分がこういう図をつくるのはものすごく苦手だということもあるのですが、この図を捨てるのはあまりにも惜しいという気がします。

【山岡科学官】 概念図としては非常によくできた図なので、一番上も、「地震発生予測実験」じゃなくて、予測実験のあくまでも概念図であるというところを明確にして、誤解のないようにするというのがいいのではないかと思います。

【小泉専門委員】 この上のグラフだけだと、やはりわからなくて、下の絵があって初めてわかることだと思いますから、あくまでも概念図ということでとどめておけばいいと思います。

【森田臨時委員】 鷺谷委員のおっしゃられるところは、多分シミュレーションをやっている方の感覚と合わないところが根本にあるのではないかと思います。ここは少し、後で鷺谷委員と相談させていただいて、納得できる範囲で、一般の方にもわかるような絵に、つくり直すということにいたします。

【清水主査】 それでは、森田委員、鷺谷委員、よろしくお願いします。

 最後に私からですが、この報告書の中に、「巨大地震」と「超巨大地震」が両方出てきます。東北地方太平洋沖地震については超巨大地震であったと書いてあるのですが、例えば、5ページの下から2段落目の「超巨大地震の発生機構解明に向けて」のところの最後のところですが、「何らかの原因によりさらにもう1段階低下すると、巨大地震となるという考えで」のところでは、「巨大地震」となっていますね。「超巨大」と「巨大」が混在していますけれども、特に定義はないのですよね。

【平田委員】 定義はないですが、3月11日の地震を超巨大地震と言おうと単に決意しただけですから、ここは、「1段階低下すると超巨大地震になる」のほうがいいかもしれません。

【松澤主査代理】 小泉委員は修正意見(9)で、そう指摘されています。

【清水主査】 はい、わかりました。

【平田委員】 ほかの地震では、「超巨大」は使わないほうがいいと思います。東北地方太平洋沖地震のことを暗に指しているときは「超巨大」と言って、そうじゃない一般的な大きな地震については「巨大地震」でいいと思いますけど。

【松澤主査代理】 「超巨大地震」という言葉は、わりとインフレ的な感覚がして、嫌だとおっしゃる方もいらっしゃるので、念のため確認ですけど、超巨大地震は市民権を得たということでしょうか。

【平田委員】 いえ、ここでの業界用語です。限定的にこの建議の報告書関係では、東北地方太平洋沖地震及びそれより大きい地震は超巨大としたいと考えています。

【小泉専門委員】 今までM8クラスを巨大地震と読んでいたわけですから、それを超えるものが超巨大地震ですね。

【森田臨時委員】 今回の地震はその概念を超えたということです。巨大地震の概念を超えたものを超巨大地震だという使い分けです。

【清水主査】 わかりました。私も個人的には、この報告書を読んでいて、そういうことかなと。だから、大地震連動で説明できる範囲は巨大地震ということですね。それを超えたのが超巨大地震というような漠然とした考えをしていました。

【藤井委員】 今、巨大で思い出したのですが、資料1-1の29ページの図8で、桜島の噴火シナリオの中に、「極大噴火」と書いてあるのですね。これは、巨大噴火の間違いじゃないですか。巨大噴火、超巨大噴火というのは使いますが。

【清水主査】 本文の中にも、確かに「極大」が何か所か出てきますが、「極大」は「巨大」に置きかえるということにします。

【松澤主査代理】 本文の中には「極小噴火」という言葉もありますが、これはいいのですか。

【清水主査】読むときに誤解を招くので直すということで、お願いします。

【清水主査】基本的には大筋了承いただけたものと思います。地震発生予測実験の図をどうするかということも含め、今日、皆さん、もう一度見直していただいて、気づいた点がありましたら、事務局までご連絡下さい。取りまとめ委員と私と事務局で最終的に判断を一任させていただきたいと思います。

 

 

[議題2 「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」の新たな個別課題について]

東北地方太平洋沖地震の発生を受けて、「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」を進めるにあたり、新たな個別課題を設定する準備があるかについて調査を行った資料2-1について、9つの提案された課題を個別に説明し紹介した。意見交換のあと、これらは、本計画の新たな個別課題としてふさわしいことが確認された。今後、課題間の具体的な調整を行い、次回委員会において正式な個別課題としてあらためて提案書を取りまとめることとなった。

 

【清水主査】 それでは、次の議題に移ります。「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」の新たな個別課題について、まず事務局から説明をお願いします。

【高木地震火山専門官】 前回の委員会で、東北地方太平洋沖地震の発生を受けて、新たな個別課題を設定する必要があるかどうかについて意見交換を行いました。新たな個別課題を設定するには、建議の実施機関同士の情報共有がまず必要であるということになりました。新たな課題を設定するということを踏まえながら、各実施機関に対して調査を行ったところです。資料2-1をごらんください。

 このように6つの実施機関から9つの課題が提案されております。本日は、この資料に基づき、意見をいただいて、本計画の新たな課題として、内容がふさわしいかどうかについて、まずご検討いただきたいと考えております。

(以下、資料2-1をもとに個別に説明。)

【清水主査】 事務局から、合計9つの課題について、新たな提案の紹介をいただきました。この委員会では、これを決定するのではなくて、これがふさわしいかどうかを審議いただきまして、親の部会である地震火山部会に上げまして認められればいいのですね。今期の予知計画における個別の課題として、最終的に承認するという形になると思います。

 今説明いただきましたけれども、今の9つの提案の幾つかの実施機関の方が、今日はこちらに委員としておられますが、実施機関から、もし補足があれば補足をいただきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。特にないでしょうか。

 もしなければ、意見、質問があればお願いしたいのですが、一応、ふさわしいとして認めてよろしいでしょうか。例えば、重複とか統合したほうがいいというのがあればですけれども、今、説明を拝見した限りにおいては、著しい重複はないようには思いましたが、いかがでしょうか。

 例えば、課題の提案の5番と6番の関係というのは、どうでしょうか。建議の項目は違いますね。5番も6番もひずみ集中帯ですね。ちょっと似ていて、実施者も重複していますね。

【三浦専門委員】 その5は活断層のカタログを作成するのが目的です。その6は、今起きている誘発地震などを使って応力変化などを調べるので、少し違うのです。

【清水主査】 わかりました。よろしいでしょうか。もし特にご意見がなければ、一応、個別の課題としてふさわしいとご了承いただけますでしょうか。

【森田臨時委員】 予知研究全体のバランスを考える側の立場から少し質問させていただくと、この地震を受けて、ボトムアップでこういう研究をしたいという計画が出てきたという認識ですよね。そのときに、例えば、既存の課題と、ある意味では既存の課題の目的を少し変更して、こちらのほうに近づけるというようなことも多分あり得るとは思うのですね。具体的に、最終的な課題の項目がどうなるかというのは、これをスタート点として、いろいろ関係者間で調整し、最終的な形はもう少し時間をいただくというような認識でよろしいですか。

【高木地震火山専門官】 たしか前回の会議で森田委員からの提案として、新たな課題についての情報共有を行うという機能もこの会議はあるということで、この調査を行いました。今日は、いただいた内容がふさわしいかどうかだけをご検討いただき、実際にこの後、このような提案者同士で調整をいただいて、最終的には正式な課題提案書を次の会議で用意し、そこで最終的にこの委員会として了承されるものと考えております。ですから、調整時間がまだあると考えております。

【森田臨時委員】 誤解はありませんでした。私の理解と差がありませんでした。

【清水主査】 よろしいでしょうか。それでは、今説明がありました9つの課題を、本計画の新たな個別課題としてふさわしいものであるとしまして、今後、必要があれば、関係機関等で個別に研究内容を調整、あるいは企画部のほうで調整をしていただきたいと思います。

 今後の事務的な手続について、事務局から説明お願いします。

【高木地震火山専門官】 今後、この9つの課題担当者に対して調整を行いまして、最終的に新たな課題として出す場合に対しては、正式な提案書をつくってもらって、次の会議までに提出していただきます。そして、次のこの会議で正式に了承いただき、地震火山部会に報告したいと考えております。

 ちなみに、これらがすべて承認された場合、これらの課題はこの資料2-2の一覧表に示すような位置づけになりまして、192あった課題が201に増えることになります。当然、抜けた建議の中項目というものはなくて、アスペリティの実体を解明するという部分が、今回の追加でかなり厚くなるというような見込みでございます。

 

 

[議題3 「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画の実施状況等のレビューについて」の東北地方太平洋沖地震に関する意見交換]

資料3、参考資料3-1を用いて、東北地方太平洋沖地震に関する自由な意見交換を行った。

 

【清水主査】 それでは、3つ目の議題「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画の実施状況等のレビューについて」の東北地方太平洋沖地震に関する意見交換をしたいと思います。これは、前回の当委員会で平田委員から、一度、科学的な議論をこの場で自由にしたほうがいいというご提案を受けまして、設定したということでございます。事務局から簡単な説明をお願いします。

【高木地震火山専門官】 (資料3、参考資料3-1を用いて以下の通り説明。)

  • レビューの資料は、6月15日に平田地震火山部会長名で収集の依頼を行い、委員の皆様等に協力いただき、1か月程度で資料を提出いただいた。
  • そのうち、特に東北地方太平洋沖地震に関する平成23年度報告の追加分だけを取りまとめたものが、参考資料3-1。全部で60課題が報告されている。
  • 特別にレビュー報告書の中で章立てした第3章「平成23年東北地方太平洋沖地震」の執筆担当者、あるいはそれ以外の各項目の執筆担当者の執筆にも貢献できるよう、参考資料3-1を参考にしながら、東北地方太平洋沖地震に関して科学的な議論を行っていただきたい。
  • 資料3-1が、意見交換のためのレジュメ。
  • 参考資料3-2は、前回の会議で決定しました各項目の執筆担当者。

【清水主査】 それでは、これから、自由な議論をしたいと思います。先ほどの【成果の概要】の東北地方太平洋沖地震のところで、いくつか項目がありました。例えば、何が起こったのか。これは、今回の地震の地震像、これまでにわかっていたこと、わかっていなかったこと、今までの研究の延長でマグニチュード9の地震が想定できたかということも含むと思います。それから、今後の解明に向けての課題というようこともあります。まず、何が起こったのかということでいかがでしょうか。

 先ほど、今回の地震像について、海溝沿いの比較的浅い部分の挙動の解釈について、まだいろんな意見があるように思いました。その辺はいかがでしょうか。

【平田委員】 浅い部分の固着域と言ったときに、厳密にプレート境界から、海溝軸から西のほうに何キロまでとか、あるいは深さは何キロまでが浅いとか、そういうことをきっちり言わない限り、この議論は不毛です。例えば、資料1-1の25ページの図3では、種々のデータ解析により推定されたものです。これは一応、ほんとうのデータに基づいて書かれているのですね。

【森田臨時委員】 そうです。同じプレート断面というか、形状を使って、それぞれ独立したほんとうのデータで作った絵です。

【平田委員】 この太い軸は海溝軸だと思いますが、モデル領域が海溝軸までいってないわけです。だから、モデル領域の一番右の端までいっても、これを浅いところと言ってもいいのかどうかわかりません。だけど、IODPで掘削しようとしているところは、ほんとうに海溝軸のすぐそばですよね。

【尾鼻オブザーバー】 そうです。

【平田委員】 空間スケールを議論しない限り、ほとんど意味がないのですが、この図3に書いてある程度だったら、これは浅いところが滑ったと言い切っていいと思います。さっきは、浅いところが滑ったかどうかはまだ解明されてないと言いましたが、私のイメージの浅いところというのは、1キロとか2キロという意味じゃなくて、この空間スケールでいうと海溝軸から100キロぐらいですか。

【森田臨時委員】 海溝軸から50キロぐらいまでが断層の端になっています。

【平田委員】 津波のモデルだけがかなり東まであるのですね。それは1つの論点だと思うので、それをちゃんとレビューしていただく。例えば、深さで言ってもいいし、あるいは海溝軸から内側何キロぐらいまでは大きく滑ったと。大きく滑ったという意味は、普通だったら5メートル滑れば大きく滑ったと言ってもいいわけです。だけど、50メートル滑らないと大きく滑ったと言わないのであったら、それは定量的に言わないといけないですね。違いがあるというのは、みんな違うことを思いながら言っていて違いがあるのであって、事実としては1つしかないはずです。

【飛田専門委員】 今の議論をするに当たって、時間的な関係を把握しておきたいのですが、資料1-1は、平成22年度の年次報告の資料だったので、私の理解では、海上保安庁の海底地殻変動の5点のデータがまだ入ってないから、こういう25ページの図になっていると理解しています。国土地理院の資料なのですが、参考資料3-1の78ページ右側の図、これが5月に海上保安庁からいただいた海底地殻変動の5点の水平と上下も全部入れて解析した結果で、かなり海溝寄りまで滑り域が出てきています。その左側の図1というのが陸域のGPSだけなのですが、これでもちょっと足りないですが、資料1-1の25ページの図よりもまだ海溝寄りにいっていて、さほど離れてはいないかなと感じます。平成22年度の段階としてはそういう感じだったのかなと理解して納得していました。

【清水主査】 そうすると、何キロまでというのはともかくとして、非常に浅いところが大きく滑ったということはよろしいのでしょうかね。例えば、分岐断層みたいなものはもう考えなくていいのか。

【鷺谷専門委員】 分岐断層であれは、全く津波を説明できないものだと思うので、扱う必要がないと思います。

【山岡科学官】 データとして、分岐断層を積極的に支持するのが、今のところ、見当たらないということ。

【鷺谷専門委員】 参考資料3-1の6ページの北大の谷岡さんの津波解析の結果がありますが、これでも海溝軸まで滑り域がいっていて、津波のデータとの比較も押さえてあります。

【森田臨時委員】 使っているデータによって異なり、津波だとか地殻変動、GPSの解析では海溝寄りに滑りが大きく推定されてしまう。一方、遠地地震をや強震記録を使うと、やや陸側に滑りのピークが来る。使っているデータの違いによって、随分分布が違うというのが、取りまとめ側の認識です。確かに、これが実際どうであったかということを突き詰めるというのがまず第一歩でしょう。

【清水主査】 そうすると、今、鷺谷委員からの意見ももありましたが、とりあえず分岐断層は考えないことにして、海溝地殻が非常に大きく滑ったということはどうも確からしいと。ただ、それは滑ったのだけど、平田委員が言ったように、ほんとうに海溝の地殻の浅いところがものすごく固着していたのかどうかということについては、固着していなければ滑らないという考えもあるかもしれません。森田委員から意見があったように、例えば強震動の解析によると、もうちょっと深い陸寄りのところから大きな加速度の波を出しているわけですよね。ということを考えると、ほんとうに海溝沿いの浅いところまでがっちり固着して、巨大なアスペリティになっていたのかということについてはどうなのでしょうか。変位量が大きかったのは事実でしょうけど。

【小泉専門委員】 固着というイメージですが、それはつまり、強震動のエネルギーを出すという意味の固着ということでしょう。

【清水主査】 要するに、ラプチャーベロシティが非常に大きいということ。

【山岡科学官】 摩擦強度が大きいという意味の固着だと理解したほうがいいと思います。

【小泉専門委員】 緩くくっついていても固着。摩擦強度が大きいという意味で「強い固着」ということなのですね。わかりました。

【山岡科学官】 だけど、原理的には、海溝沿いまで強く固着していなくても、それよりも深いところで非常に強く固着してさえいれば、滑るときには一緒に滑る。

【清水主査】 応力降下量が極端に大きかったのはもっと深いところでという意味。

【山岡科学官】 そう。応力降下というか、ひずみエネルギーの解放が大きかったのは深いところであっても構わない。

【清水主査】 構わないのか構うのかというところが重要。

【松澤主査代理】 少なくとも浅いところで短周期の地震動を出したという報告はないです。ただ、強震動は結構海溝近くで決まっているやつもあるので一概には言えないのかもしれないですけど、今、一般的に考えられているのは、浅いところが低周波のエネルギーで、深いところで高周波を出していたということ。浅いところで、そんなに大きかったとは思えないですね。滑り量はかなり大きいですけど。

【小泉専門委員】 そこも気になっています。短周期の地震動は、単純に考えると、遠くまで届きませんよね。だから、別に浅いところを滑らせなくていい、深いところを滑らせたら出るということも考えられます。そういう理解でよろしいですか。

【松澤主査代理】 ただ、強震動の話ですが、遠地の地震波は浅いほうも深いほうも全部真下に波が出てきますから、それで、井出さんの研究成果で短周期は深くなるという話になっていますので、多分いいと思います。

 あと、短周期の話を言うと、地殻変動での解析だと滑り量の大きな領域のひとつの目玉がありますが、つくばなどでは結構地震被害が出たわけなので、南側に高周波のエネルギーを出す領域がなくてはいけないんと思うのです。それをレビューでどうまとめるかは、ちょっと悩ましいところがあります。

【小泉専門委員】 つくばの被害というのは、最大余震による思っているのですが、本震でも出たということで大丈夫なのでしょうか。

【松澤主査代理】 私はそう理解しているのですが。

【山岡科学官】 僕も、本震のほうで被害が大きくて、最大余震はそれよりは小さかったと、つくばの研究者のだれかから聞いています。

【松澤主査代理】 ただ、おっしゃるとおりに、仙台も4月7日の被害というのは結構大きかったですし、余震との区別はかなり難しいことは確かですので、どこまでレビューで書くか難しいところがありますね。

【清水主査】 どうしましょうかね。その辺、決着がついているのかどうか。

【平田委員】 もし決着がつかないのだったら、それが地震学、測地学の実力なのだから、両論併記で決着がつかないということを書くべきです。

【森田臨時委員】 私も、その考え方に賛成です。先ほど、資料1-1の年次報告の5ページの下のところで、ちょっと議論になりましたけど、この地震像の考え方には2つあって、多分、この何か月かで決着はつかないだろうと思っています。でも、こういう両論がきっちり出てきたということは、科学としては非常に立派なことだという気がするのです。どちらが正しいか突き詰めていくということを、早くやらなくてはいけないけど、やっぱり時間がかかってしまうかもしれない。しかし、こういうふうに2つの考え方が明瞭に出てきたということはきっちり書けば、それは1つの到達点だと思います。

【山岡科学官】 それと、もう一つは、明らかになった課題をきちんと書くということが非常に重要です。両論併記というのもその1つの考え方かもしれないけれども、幾つかの案が出てきた結果、こういうことを解決しなければいけないと。それは今、わからないけれども、今後の研究でそれを解明するというようなことを、レビューにきちんと書くということ。課題がわかったということだけでも非常に重要だと僕は思います。

【小泉専門委員】 とりあえずわかったことを、両論併記でもよいからきちっと書いていくということでいいと僕は思います。その後で、それがどれぐらいわかりやすいかということを、考えたほうがいいということを言ったのです。今の方針でよろしいのではないかと思います。

【平田委員】 GPSがあって、強震観測のネットワークがあって、それは世界中で最も観測網の発達しているところにもかかわらず、ここまでしかわからないということがあれば、これはもっと必要であるという理屈にもなる。でも、もっとやっても結局はわからないのだと、本質的にわからないことがあるということなのかもしれません。だから、異なる見解があったら、なぜ異なる見解があるかを書く。データが足りなくて、原理的に分解能がないのか、それとも、データにはあるが、やり方が未熟だからだめなのかというぐらいは見解を書くべきだと思います。

【鷺谷専門委員】 観測事実と言えるものと解釈の部分とを明確に分ける必要があります。分岐断層を100%否定するわけではないですが、観測事実としては、95%ぐらいは海溝軸のところまで大きな滑りがあったということでいいとは思うのです。ただ、それがどうして起きたかについては現時点では答えは出ないと思います。1つには、地震前に海溝軸付近で、上盤側のプレートが引きずり込まれたかどうかは、今となっては我々はわからないので、そこが固着していたかどうかについては十分な証拠がないわけですから、そういう意味では何があってもおかしくない。

 ただ、大事なことは、固着があろうがなかろうがそんなこと関係なく、海溝軸まで大きく滑って巨大な津波を起こすことがあるのだという事実だけは残って、それは海溝型の沈み込みのプレート境界であればどこでも、起きる可能性が出てきてしまったことです。これは、海溝まで滑ったという事実認定から非常にインパクトの大きい内容ですので、なぜかはわからないけれどもという条件つきですが、アピールしていくべきかなと思います。

【清水主査】 それに対して異論はないけれども、今後、例えば、同じような超巨大地震を予測することを考えたときに、浅いところはずるずると滑っているけれども今回は大きく滑ったのか、そこはほんとに固着して引きずり込まれていたのかというのは、今後の予測の戦略上は結構重要だと思いますが。

【鷺谷専門委員】 何をすれば、そこが固着しているかどうかを言えるかですが、例えば、IODPで掘削するのは、ほんとうに今回動いたかどうかを見るためでしょうが、例えば、今回動いていないところを同じように掘ってみれば、もしかするとわかるのではないかとか、そんな戦略が幾つか出せればいいと思います。単に陸上で観測点を増やしても、多分見えないとは思います。

【平田委員】 それには賛成です。ただ、IODPは、滑ったかどうかをはっきりさせるためではなくて、確実に滑ったところで何が起こったかを調べるというのが今回のプロポーザルですから、そこは若干難しい。だけど、実際にどこが滑ったかどうかというのを現場で調べるという調査は必要だと思います。

【松澤主査代理】 真の意味で応力降下をもたらすほどの固着があったかどうかはわからないかもしれないですが、深部が固着していれば、そこもつき合いでくっついてしまうわけですよね。それは大きな違いなのですが、地震が起こったときの反応を見れば、津波に関しては大きな差はなくて、例えば1896年の明治三陸地震にしても、こんな海溝近くでプレート境界がそんなに大きく滑るはずないから、みんな、高角の断層を動かすモデルを考えていたわけです。その考えにいまだに引っ張られちゃう人たちもいるわけですが、今回わかったことは、プレート境界が非常に大きく動くということだから、1896年の地震のモデルも見直さなくてはいけなくなってくるわけですね。このようにいろいろな方面に波及してくる話だと思いますし、世界的にも波及してくる話だと思います。

 分岐断層について1点だけ補足させてください。東北大で分岐断層が動くという話をすることがあります。それは誤解を招くかもしれないので、一応補足しますが、海底地殻変動観測でやると、上盤側のひずみ量が10のマイナス4乗を超ええしまうのです。これは弾性的なひずみでは考えにくいので、あそこに結構大きな正断層があるので、それが動いたかもしれないと話すことがあります。東北大が分岐断層が動いたという場合は、そういう意味で言っており、高角の逆断層が動いたという意味ではありません。実際、余震を見ていても、上盤側で正断層型地震がかなり起きているのですよね。下盤側の海溝近くで正断層型の地震が起こるなら理解できるのですが、上盤側で海溝の近くで、かつ正断層型の地震がいっぱい起きているというのは、やっぱり滑り過ぎたようなイメージがありますね。

【清水主査】 今起きているということですね、地震後に。

【松澤主査代理】 浅野さんの論文にありますけど、東北地方太平洋沖地震の後、猛烈な数の余震が起きていますね。

【清水主査】 あと、東西方向に引っ張っている。

【松澤主査代理】 東西方向に引っ張っているのは、やはり滑り過ぎたのではないかとおっしゃる方がおりますがが、何かありそうな話だなという気はしています。

【平田委員】 だけど、それは余震活動だけではなくて、反射波の記録を見ると、正断層型の断層がいっぱいありことがわかります。いま動いているわけではないですがね。だから、松澤さんは不思議だと言ったけれども、それはローカルな応力分布としてはそういうものがあること自体不思議ではないと思います。

わかってないことはいっぱいあるわけでが、マグニチュード9が起きたということだけははっきりしていて、それは非常に重要な境界条件なので、なぜ起きたかとか、どうしたら予見できたかということを議論するのは別に反対ではないけれども、むしろ起きたということに伴って、考え方の何を変えなくてはいけないかとか、どういう研究の方向をとらなくてはいけないかということをどこかにちゃんと書く必要があると思います。

【小泉専門委員】 2つ確認したいことがあって、1つは、今まで海溝軸付近の固着が弱いという積極的な証拠というのは、地震活動が低調であったからという理解でよろしいですか。

【松澤主査代理】 まあ、そうですね。

【小泉専門委員】 つまり、小さい地震で遠いから、あまり検知能力なかったと思いますが、小さい地震は起こらないけれども、固着が強かったというのが東北地方太平洋沖地震後の解釈。

【松澤主査代理】 平田先生の結果ですが、水深4,000メートルぐらいまで、地震は起こってないわけですよね。我々はずっと思い込みがあったわけです。沈み込んだときには、海底堆積物がそこに残っているのも見えないですし、一緒に沈み込んでいるはずだから、そんな弱いものが入っているのに、そこの固着が強いはずがないという思い込みがありました。そこで低いとなったら、これはずるずる滑っていると思い込んできたということです。

【小泉専門委員】 もう1点は、今回の地震のようなマグニチュード9の地震はそんなに起こってないですが、2004年のスマトラ地震に比べると、震源域が狭いわりには滑り量が大きいということで違うわけですよね。

【松澤主査代理】 今回の地震のほうがM9のサイズにふさわしい滑り量であって、むしろ単純なスケーリング測を考えていくと、スマトラ地震の1,000キロもという震源域は大き過ぎるのです。僕ら、何となく、M9の地震というのはスマトラ地震というイメージがあって、M8が次々と連鎖破壊していってM9をつくるのだという、これもまた思い込み過ぎてしまって、今回の地震がこういったことを想定できなかったというのはあると思うのです。

【山岡科学官】 スマトラの地震も、海溝沿いの滑りが非常に大きいというのは、ちゃんと論文で出ているから、共通点はかなりあるのですよね。一番大きく滑ったところの共通点はやっぱりある。

【鷺谷専門委員】 今回の地震でも、滑り量が50mとか60mというのは、海底地殻変動の観測があって初めて出てくる数値で、陸上だけだったら、多分20mとか30mで済んでしまうのです。だから、スマトラ地震が小さかったとは必ずしも言えないのではないかと思うのですけどね。

【小泉専門委員】 それに関連して、なかなか言いづらいことですが、規模予測は間違ったけど、宮城県沖を注意していたから、我々はあそこに観測点を置いたわけですよね。そのことはやっぱりきちんと書くべきだと私は思いますね。

【松澤主査代理】 どこのレベルでどこに書くかというのはありますけどね。

【清水主査】 そうすると、例えば、最後の「今後に向けて」なんですが、これはレビューの書き方にも関係してくるわけですが、まだわかってないものを言えないということになるかもしれませんが、例えば、巨大地震、超巨大地震の予測に向けて、どういう方向の研究が必要かという意見をお願いしたいのですが。

【市原専門委員】 この地震の影響が数年か数十年かという議論があったのですが、それが今後に向けては非常に大事で、つまり、さっきの審議会総会の取りまとめのSTIRのRを加えるという意味でも。

【清水主査】 復旧ということですね。

【市原専門委員】 今後数十年いろんなことが起こるのか、数年ぐらい待てば、またそれまでの状況と同じになると考えられるのか、これは非常に大事なわりに、その年数が1けたではないだろうと、非常にいいかげんな議論で終わった気がするのですね。もし書くのであったら、どういう根拠で、どこまでわかって、この年数を書いたのかを、もっと慎重にやったほうがいいと思うのですけど。

 特に、平安の10世紀は非常にいろんなことが起きていて、特に巨大噴火というのも、貞観地震の発生から50年ぐらいの範囲で起こっているのですね。それが関係あるのかないのかも理解していないのですけど、そのあたりはどうでしょうか。

【平田委員】 最大の根拠は、アラスカ地震の余効変動がまだ続いているという報告はあったのですね、地震予知連絡会でやりました。だから、余効滑りは10年よりは長く、数十年は続くだろうということです。この例が一番の根拠だと私は思います。余効滑りが続くことによって、日本列島の応力分布が変わっていて、それによって内陸の地震とか火山が影響を受ける可能性はある。ただし、日本にはその経験がないので、全くよそから借りてきた話を適用するので、それは可能性でしかない。

【松澤主査代理】 もう一つは、今回の地震で海岸が沈降したのですが、今の隆起レベルを考えると、やっぱり数十年ぐらいは必要そうですよね。

【飛田専門委員】 そうですね。さっきの資料1-1の6ページのところの議論では、数年から数十年となったのですが、5ページの下から3行目、余効滑りのほうは数十年のままだと思います。地震のほうは数年から数十年になっているのですが、余効滑りは数十年というのは妥当かなと思うのですけど。

【市原専門委員】 でも、歴史の範囲でも、平安期というのがどのぐらい特異だったか。平安期に特に大きな噴火が、平安の貞観地震のあとに。

【藤井委員】 その時代はそうだけど、それがどこまで影響を及ぼされた事象なのかということはいまだに検証できてないですよね。さっき、アラスカの例を言われたけど、アラスカでも一部とか、比較的観測データのそろっているところでは、いまだに数十年のレベルで物事が続いているようだから、今後何が起こるか、ほんとうはよくわからないですね。

【市原専門委員】 だから、心積もりとして、50年ぐらいは気をつけるつもりでやるのかやらないのかはどうなのでしょう。

【松澤主査代理】 個人的な意見を言わせていただくと、1896年と1933年の地震はお互いに関係しているという考え方もありますので、数十年は注意すべきだと思います。それをどこまで書くかというのはありますが。

【藤井委員】 市原委員の意見で思い出したのですが、誘発地震のことは書いているけど、火山噴火のことは一切書いてない。M9の地震が起こると、例外なく火山が噴火します。すぐに噴く場合から数年たって噴く場合までいろいろあるのですが。そのことはどっかで言っておかないといけないという気はします。

【小泉専門委員】 せっかく火山と地震、一緒にやっているのですからね。

【清水主査】 非常に重要なご指摘ありがとうございます。それは、今後の重要な課題です。また、10年続くのか20年続くのか、市原委員の質問にすぐには答えられないけれども、今回は地震のパラメーターとしてわかっていますので、それがどのぐらい影響を及ぼすのかということも、日本全体がそういう研究のフィールドになっているわけですから、これからそれをちゃんと検証していくことが必要になってくると思います。

 もう時間なのですが、今日のところはここでやめさせていただいて、必要であれば、また場所を設けてということにさせていただきたいと思います。

 それでは、事務局から今後の予定をお願いします。

【高木地震火山専門官】 各執筆担当の委員の皆様には、収集しましたレビュー資料をメール等で送っております。これから具体的な執筆をお願いすることになります。本編部分の草稿を作成いただくことになります。

 執筆担当者は参考資料3-2のとおりですが、このうちの少なくとも、第1原稿としては、ローマ数字3章「平成23年東北地方太平洋沖地震」と、ローマ数字4章「近年発生した地震火山現象に関する研究成果」、それから、建議の項目について取りまとめるローマ数字5章「観測研究計画の実施状況」ついては、早速執筆いただきたいと考えております。

 具体的には、前回、前々回の委員会の基本的な作成方針で確認したとおりですが、基本的には、平成19年1月に作成しました前回の地震のレビューの様式に従って書いていただきたいと思います。

(参考資料3-2、過去のレビュー報告書をもとに説明)

【清水主査】 どうもありがとうございました。今、事務局から口頭で説明したことを、後日メールか何かで周知願います。

 一応、9月いっぱいをめどに、まず、先ほどの執筆担当者にたたき台を書いていただくということになると思います。

 ちょっと時間的に厳しいのではないかというご意見もあるかもしれませんが、ただ、これからその後の調整作業が、前回に比べて倍かかるとお考えください。前は、地震と火山のレビューを別々に行っていましたので、委員会を2つ並行してやっていて、地震と火山を調整する必要はありませんでした。今度はすべてこの委員会でやらなくてはならないので、その後の時間かかるので、なるべく原稿のたたき台は早目にお願いしたいということです。

 よろしいでしょうか。一応、本日準備した議題は以上ですが、ほかの議題がありますでしょうか。

【三浦専門委員】 東北地方太平洋沖地震に関する成果報告シンポジウムというものを、8月20日に仙台で計画しています。これは、4月に地震・火山噴火予知研究協議会の長期・広域部会と地震準備過程部会の合同の研究会をやりましたが、その後、さらにいろいろ研究が進んでわかったことが増えてきたかと思いますので、この機会にこのシンポジウムの中で報告していただいて、我々からは、レビューを進める上で役立てていこうということで企画しております。

【森田臨時委員】 このシンポジウムは文部科学省から後援をいただき、公開で行うことになりました。毎年3月のシンポジウム同様、この委員会の委員がメンバーとなるシンポジウム実行委員会が主催するという格好をとりますので、皆さんが主催者になっていただくということをご了承いただければと思います。事後報告になりますが、よろしくお願いいたします。

【清水主査】 それでは、よろしいですか。以上をもちまして、本日、終了したいと思います。どうもありがとうございました。

 

(以 上)

 

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(研究開発局地震・防災研究課)