地震火山部会 観測研究計画推進委員会(第7回) 議事録

1.日時

平成23年4月28日(木曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省3階3F2特別会議室

3.出席者

委員

(委員)	平田、藤井
(臨時委員)	清水、松澤、森田
(専門委員)	市原、小泉、鷺谷、棚田、飛田、西澤、三浦

文部科学省

鈴木地震・防災研究課課長、南山防災科学技術推進室長、北川地震調査管理官、迫田課長補佐、高木地震火山専門官、山岡科学官、飯高学術調査官

オブザーバー

齋藤、小平

4.議事録

[議題1 議事運営等について]

 

測地学分科会運営規則第3条第7項の規定に基づき、松澤臨時委員が清水主査から主査代理に指名された。測地学分科会運営規則(参考資料1-2)等により、議事運営について事務局より説明があり、了承された。

 

以降、測地学分科会運営規則第4条の規定に基づき公開。

 

【高木地震火山専門官】第6期の観測研究計画推進委員会の開催に当たりまして、清水主査からごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【清水主査】当委員会の主査を仰せつかりました清水です。第6期の最初ですので、簡単にあいさつさせていただきます。大半の委員の方は、前期から引き続きということで、改めて言うまでもないことですが、新しく委員になられた方もいらっしゃいますので、当委員会の役割をご理解いただいて、予知研究の効果的な推進に協力をいただきたいと思います。それをまず皆さんにお願いをしたいと思います。

 今回の3月の巨大地震発生について、皆さん、恐らくそれぞれいろいろお思いになるところがあると思います。私自身も非常にショックを受けたわけですが、その被害の実態が明らかになるにつれて、今まで自分たちがしてきた地震や火山の観測研究が、人の命を救うということにおいてどれだけ役に立ったんだろうかということを考え、非常につらい思いになるわけでございます。

 ただ、それと同時に、ここにお集まりの方はほとんど理学の見地から地震火山の研究をしている方だと思いますが、我々は、まずは今回起きた現象を総力を上げてきちんと理解をして、その理解に基づいて将来の減災に向けていく道筋を、このコミュニティとして提案をしていくということが、今、求められていると思います。

 この委員会、当面の一番大きな任務としては、予知計画のレビューの起草がございます。このレビューというのは、当然、建議の各項目に基づいて、それぞれについて自己点検評価をするわけですが、今回の地震を受けて、今までどおり与えられた項目に従ってレビューすることはもちろん必要ですが、それに加えて、今回の地震について、このコミュニティとしてきちんと自己点検評価をすることが必要です。そして、時間的余裕はないですが、これまでに頑張ってわかったことをきちんと整理をし、評価をして、将来こういった超巨大地震の予測の可能性があるのなら、それに向けた戦略なり方針・方策というものを提案していくことを、ぜひそのレビューの中にとり入れていく必要があるのではないかと思いまして、今回、皆さんに事前に私のほうから意見照会をさせていただいております。

 きょうは、この会議の最後のところで少し時間をとって、そのことについて議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 この後、鈴木課長からもごあいさつをいただきたいのですが、まだお見えではないので、課長がお見えになったらあいさつをいただくことにしたいと思います。

 

 

[議題2 今後の調査検討について]

 

事務局から、第6期における観測研究計画推進委員会における主な検討事項(、レビューの実施、年次報告の取りまとめ等)の説明があり、了承された

 

【清水主査】次の議題であります、当委員会における今後の調査検討について、事務局から説明をお願いします。

【高木地震火山専門官】(資料2、参考資料1-4、2を用い、観測研究計画推進委員会において検討すべき事項を確認した。)

【清水主査】事務局から今後の検討予定について説明がありました。こういう予定で審議を続けていきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 

(「了承」の声あり)

 

【清水主査】ありがとうございました。

 

 

[議題3 「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」の平成22年度年次報告について]

 

事務局から、平成22年度年次報告【機関別】(案)の説明があり、各実施機関の代表の委員から特に進捗のあった成果等について報告があった。意見交換のあと、了承された。

また、平成22年度年次報告【成果の概要】の作成方針(案)が了承され、とりまとめ委員が選出された。

 

【清水主査】次の議題に移りたいと思います。「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」の平成22年度年次報告です。事務局から説明をお願いします。

【高木地震火山専門官】(資料3-1を用いて、平成22年度年次報告【機関別】の説明を行った。)

【清水主査】説明がありましたとおり、今年度も昨年度に引き続き、厚い報告書ができました。このとりまとめに協力いただいた企画部にお礼を申し上げます。

 本日は、これを全部報告いただくと時間が足りませんので、この中から特に進捗のあった成果について、それぞれの機関から説明をいただきたいと思います。

 参考資料3が抜粋になっておりますので、これを主に使用しながら、それぞれの機関から説明をいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

【森田臨時委員】(国立大学法人の成果を説明。)

【棚田専門委員】(防災科学技術研究所の成果を説明。)

【小平オブザーバー】(海洋研究開発機構の成果を説明。)

【小泉専門委員】(産業技術総合研究所の成果を説明。)

【飛田専門委員】(国土地理院の成果を説明。)

【齋藤オブザーバー】(気象庁の成果を説明。)

【西澤専門委員】(海上保安庁の成果を説明。)

【清水主査】どうもありがとうございました。

 質問あるいはご意見がありましたら、お願いしたいと思います。

【松澤主査代理】合成開口レーダーはすごく成果を上げていると思うのですが、今後の衛星の見通し等をどなたか、お聞かせ願えればと思うのですが。

【飛田専門委員】私が聞いている情報もみなさんとほとんど変わりないと思いますが、電源がほぼだめなようです。設計寿命を過ぎているので仕方ないかと思います。

 国土地理院の研究計画も、設計寿命が5年ということは覚悟しておりましたが、希望を言えば次の衛星のALOS-2が打ち上がるあと2年頑張ってもらえれば本当にありがたかったのですが、それでも十分な成果があったと思っています。

 研究のほうは、今まで蓄積したデータがあり、それは宝の山ですから、さかのぼって解析したいと思っています。それから、ALOSはLバンドSARを搭載した唯一の地球観測衛星で、植生の多い日本の地殻変動を監視するのに重要な役割を担っていたため、今後約2年間はモニタリングに支障はあります。しかし、ALOSには及ばないものの外国の衛星を使うこと等で、研究が全く進捗しなくなるということはないと思っております。

【清水主査】それでは、ちょっと私のほうから。小泉委員から説明いただいた貞観の津波と今回の地震の比較ですが、この研究は、今後、産総研として計画的に、より調査領域を広げ、より詳しく進めるとか、現段階での計画はあるのでしょうか。

【小泉専門委員】とりあえずは、今回の津波について調査を進めているところです。ただ、なかなか調査に入れない場所もあります。

 あと規模についてですが、今回の地震に伴う津波に関しては、砂に比べて泥はもう少し内陸まで入って、さらに水は軽いのでもっと内陸まで入ってきます。過去の地震の津波堆積物調査では砂の範囲しかわかっていませんので、砂の到達域を比較することによって、過去の津波と今回の津波の規模の比較をすることが可能で、そういうことを今後重点的にやっていきたいとは思っています。しかし、多分、つくばの研究機関は全部そうだと思うのですが、被災しており予算的な問題もありまして、どれくらい調査を進められるかについてはやや不透明なところがあります。このような予算上の問題点はありますが、今回の地震・津波を十分研究し、きちんと過去と比較して、将来の地震予測につなげるための調査を進めていく予定です。

【清水主査】どうもありがとうございます。

 もし他に質問などなければ、この平成22年度の年次報告【機関別】については、このとおり決定をさせていただきたいと思いますがよろしいでしょうか。

 

(「了承」の声あり)

 

【清水主査】ありがとうございました。

それでは、今後の年次報告の予定について、事務局からお願いします。

【高木地震火山専門官】(資料3-2を用いて、平成22年度年次報告【成果の概要】の今後の作成方針と進め方について説明。)

【清水主査】事務局から年次報告【成果の概要】の取りまとめの方針について案が示されました。この方向でよろしいでしょうか。

 

(「了承」の声あり)

 

【清水主査】ありがとうございました。昨年と同じやり方で進めるということで了承いただきました。このように進めさせていただきたいと思います。

 それでは、これから、この成果の概要を取りまとめるわけですが、これも昨年と同じなのですが、ここで委員全員が集まってゼロから作成するのではなくて、素案をまず何人かにお願いをして、それをこの委員会で議論をしながらまとめるという形にしていきたいと思います。この素案を取りまとめていただく方を、この場で決めたいと思います。もしご意見がありましたら、推薦あるいはもちろん立候補でも結構なのですが、お願いしたいと思います。ご意見はありますでしょうか。

 では、飛田委員、お願いします。

【飛田専門委員】やはり、研究課題を多く出している大学法人を束ねていらっしゃる予知協議会の委員を中心に、取りまとめをお願いできればと思います。この報告書というのは、この委員会が作成するというわけですので、当然、任せきりにするのではなくて、各関係機関の委員も協力するということになるとは思います。

【清水主査】飛田委員から、予知協議会に属する委員を中心に素案をつくっていただけたらというご提案がありましたが、いかがでしょうか。もしなければ、今、そういう提案がありましたが。

 それでは森田委員。

【森田臨時委員】指名にあずかりましたので、予知協議会企画部の私と三浦委員のほうで素案をつくらせていただこうと思います。この委員会の皆様に全面的なご協力をいただくということで、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

【清水主査】ありがとうございます。森田委員から、取りまとめ委員を受けてくださるという意思表示がございました。三浦委員も、よろしいでしょうか。

【三浦専門委員】はい、承知いたしました。

【清水主査】どうもありがとうございます。大変な作業だとは思いますけれども、ここにいる委員みな、もちろん責任があるわけですので、きちんとサポートするということを条件に、お2人にまず素案の作成をお願いしたいと思います。

 それでは、森田委員、何か一言ありましたら、どうぞ。

【森田臨時委員】私が取りまとめ委員を引き受けたと言いましても、例えば昨年度の成果の概要の後ろの参考資料にありますけれども、予知協議会の各計画推進部会の部会長の努力が相当大きいものでございます。その努力なしには、この最終的な文科省のこの資料、年次報告【成果の概要】がまとめ切れないということを、この委員会でぜひご確認いただきたいと思います。この委員会ではそのすべては見えないかもしれませんけど、この委員会の中にも松澤委員や鷺谷委員のように実際に部会長であられる方もおり、そういった方々のご協力をいただきながらまとめているということをご了解いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【清水主査】この委員も兼ねておられる鷺谷委員とか松澤委員は、問題ないと思いますけれども、きょうこの場におられない計画部会の部会長さんもおられますので、予知協議会企画部、三浦委員のほうからぜひ調整をして、資料の作成をお願いしたいと思います。三浦委員、一言お願いします。

【三浦専門委員】先ほど森田委員からありましたように、皆様のご協力の上にこういうものができ上がっていくかと思いますので、繰り返しになりますけれども、ご協力のほどをよろしくお願いいたします。

【清水主査】皆さん、よろしくお願いいたします。

 それでは、成果の概要については、この後、取りまとめの作業に入るということで、それをご了承いただいたということで、次に進みたいと思います。

 

 

[議題4 「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」の実施計画(個別課題)の修正について]

 

事務局から、実施計画(個別課題)の平成23年度における軽微な修正点について報告があり、了承された。

 

【清水主査】次の議題は、「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」の実施計画、その個別の課題ですが、若干の修正事項がありますので、それについて確認及び了承をしたいと思います。まず事務局、お願いします。

【高木地震火山専門官】(資料4-1、4-2を用い、個別課題の修正事項について説明。)

【齋藤オブザーバー】気象庁の7019番の課題名等が変更になった点については、気象研究所の研究計画の更新による研究の発展的な題名とか内容の修正ということでございます。

【清水主査】どうもありがとうございました。今、個別課題の修正事項について説明がありましたけれども、いずれも軽微なもので、今の気象庁の課題についても、タイトルは変わりますけれども実質的には中身は変わらないということですので、特に問題はないのではないかと思います

 昨年は課題の終了等、やや大きな修正があったので、この場でも若干ご議論いただいたのですが、ことしは、基本的に全部軽微なものです。課題の増減もなくこれまでどおり、すべての中項目に対してすべて課題が対応しているということです。

 それでは、特にご質問等がなければ、この課題の修正は認めていただいたというふうにしたいと思いますがいかがでしょうか。

 

(「了承」の声あり)

 

【清水主査】ありがとうございました。

 

 

[議題5 「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」のレビューの実施について]

 

【清水主査】次は「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」のレビューの実施についてです。まず、事務局のほうから説明をお願いします。

【高木地震火山専門官】(資料5、参考資料5を用いて、レビューの実施について説明。)

【清水主査】事務局から説明がありましたが、少し補足しますと、今期、測地学分科会においてレビューが一番大きな審議事項と決定されているわけです。2月16日の地震火山部会において、そのレビューの実施について正式に決定されまして、当委員会で、その起草をするよう依頼がありました。

 その後、皆さん御存じのように3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生し、非常に規模の大きな地震で被害も大きかったわけです。この委員会は、本来、地震火山部会で決定されたレビューの作成方針に従って進めるべきですが、こういう状況で、既定路線でそのままレビューを実施して、それで済むのだろうかということを私自身も疑問に思いました。関係する方や、他の委員の何人かにご相談させていただきましたが、皆さん、やはりもう1回議論して、検討をしたほうがいいのではないかというご意見をちょうだいしました。そこで、私のほうから、先日、皆さんにメールで意見照会をさせていただきました。

 本日は、皆さんからいただいた意見をもとに意見交換をします。当委員会はレビューを実施する委員会なのですが、意見交換でいただいた意見を、再度、この上の会議である地震火山部会のほうに意見を上げて、必要であればレビューの方針についても若干の改定、あるいは必要であれば建議そのものも見直し等ということを、我々、この委員会として意見を上げたいというふうに思います。

 多くの委員から意見を事前にメールでいただいて、皆さんもお読みになっていると思います。それを前提に進めていきたいと思います。私のほうから皆さんに幾つか質問事項をあげておりましたので、これに沿って、ご意見をいただきます。

 最初に、今まで我々が行ってきた予知計画の観測研究の基本方針あるいは戦略が、それは正しいと再評価、再確認してよいかどうかということです。これについてはいろいろ意見がございまして、まだそんなのはすぐにはわからない、もうちょっときちんと時間をかけて吟味しなければわからないという意見をいただきました。それはそのとおりだと思います。

 ただ、大方の委員の意見としては、今の予知計画のやり方、これは阪神大震災の地震を受けてそれまでの地震予知計画の方針が大きく変わったわけですが、特に今期の予知計画では、基本的にはきちんと基礎研究をやって、その現象をきちんと理解するというものです。物理科学法則に立脚したモデルをつくるということです。

 それから、その両輪のもう一方がモニタリングです。きちんとモニタリングをして、モニタリングとモデリングを両輪として予測を行う。その精度を高度化していくという戦略をとっているわけです。

 戦略については、今度の地震でいろいろと細かいところでは見直しはあるかもしれませんが、ほとんどの委員の方は大きな基本方針としてはそのままでよいし、少なくとも現時点で我々が考え得る最良のアプローチではないかと思っておられるようです。この委員会として、そういうことでいいか確認したいのですが、もし、いや、違うという方がおられたら少し意見をお願いしたいのですが。

 まず、これを確認しないと、もし本当に全然だめという結論になったら、全面的な改革とか、あるいはもうやめるとかというような話も出てくるわけですが、この基本方針、基本戦略が、それ自体は間違っていないということであれば、あとは、どの部分を直し、どの部分を足したらいいのかを、これから議論すればいいわけですので、まず、そこの認識を確認させていただきたいと思います。

【鷺谷専門委員】今、とっている方針自体がどうというところでは、科学的な戦略としては、多分、一番有力で、それしかないのかなとは思っており、そういう回答をしたのですけれども、ここでこういう話を持ち出すのが適当かどうかわからないのですが、この地震の直前に『中央公論』に書かれていることは、多くの方が御存じかと思いますが、そういう方針自体に対して批判的な意見を持っておられる方もいるわけです。この場にはそういう意見の方がいらっしゃらないのかもしれませんが、そこに対する回答はきちんと用意しておく必要があると思います。

【清水主査】ありがとうございます。おっしゃるとおりで、それ以外の別の考えもあると思います。逆に、もうやめろという意見もあるとは思うので、いろいろな意見や考えに対して、我々としてはきちんと回答をしていくことは、当然だと思います。ですから、次のレビューでは、そこもきちんと書くことになると思うのです。

【松澤主査代理】火山じゃなくて地震のほうは、新たな研究計画という形で、神戸の地震の後、切りかえてきて、物理モデルに基づいたものにしようとやってきたわけです。だけど、そのときに、鷺谷委員がおっしゃられたように、短期予知よりは、どちらかというとポテンシャル評価に軸足を置いたような形でやってきたと思うのです。にもかかわらず、マグニチュード9のポテンシャル評価に我々は失敗したわけで、それはやっぱり重たいと思うのですね。

 ですので、単なる今回の計画のレビューということだけでなくて、地震予知に関しては、今までの新たな計画以降を含めたレビューとせざるを得ないのではないかという気はします。

 神戸以降、観測網が展開され、モニタリングも充実してきて、私自身は、もし今回の地震が10年後であったならば、マグニチュード9の想定もできたのではないかという希望的な考えを持っています。しかし、それが本当にそうであったかは、きちんと述べないと、我々がやってきたことを、周りの人にはなかなか理解してもらえないのではないかと危惧します。

【清水主査】松澤委員の意見は、結構大きいことだと思います。レビュー自体は、過去5か年分の我々の研究成果について、自己点検評価をするということになっているわけですが、今の意見は、それだけでなく、それ以前の神戸以降の我々のやってきた研究の方向性や、成果等についても、もう1回、総点検をすべきではないかということです。もしそうなると、これは、かなり大きなことですが、やはりそのくらいをする必要があるという考えは、もっともかもしれません。

【山岡科学官】さっきポテンシャル評価とおっしゃったけど、例えばそういうところに焦点を当てて、過去13年間ぐらいの研究計画をもう1回見直すという意味ですか。あまり広く漠然としていると大変なので、もし長くやるとしたら、少しターゲットを絞ってやることも考えなければならないと思ったのですけど。

【松澤主査代理】おっしゃるとおりです。今回の地震でショックだったのは、世界で一番よくわかっていると自負していた東北日本沈み込み帯でマグニチュード9の地震が起こってしまったということが、重たいと思うのです。

 そこで、私自身はどこで間違えたのだろうと考えていくと、かなりの思い込みがあったと思うのです。多くの方が書いていらっしゃることで、私らが学生のころから言われていたことが、実は間違っていたということで、30年何していたんだろうという思いは実はあります。

 結局、わかりやすいストーリーで説明されていて、それで理屈ができているから、それを信じ込んでしまったというところはあると思うのです。単なる理屈とか仮説とかモデルじゃなくて、観測の上からきちんと検証すべきであったというところを反省点にしていかないと、次のステップに進めないと思うのです。

 ポテンシャル評価として私自身がアスペリティモデルを推進してきて、あのアスペリティモデルは何が大きかったかというと、あのモデルに従う限り、過去の履歴を見ていけば長期予測は可能であるという仮説だったわけです。それがM9に関しては不十分であった。それに関しては、ちゃんと真摯に検討すべきだと思います。

【山岡科学官】だから、今回の地震に関係して過去の研究計画をもう1回点検し直すということは、例えば特出しで1つ項目をつくると理解していいのですかね。

【松澤主査代理】私自身の考えとしては、ここに書かれている作成方針と進め方を大きく変えなくても、「近年発生した地震及び火山現象に関する重要な観測研究成果」のところ及び総括的評価のところで特出しをすれば、構成そのものは大きく変える必要はないと思います。ただ、どうしても総括的評価に関しては、もうちょっと掘り下げないといけないだろうという思いです。

【山岡科学官】だから、今回の地震に関してはかなり掘り下げて、発生の仕組み等を含む根本まで含めて考える。これまではどういう地震が起きるかということをある程度事前にわかった上で、発生時期の予測をするということが、何となく全体の流れだったところ、その根幹が崩れた可能性もあるので、そこは、もう1回、きちんと見直す必要があるということですね。

 清水主査の言うように、すごく変えるわけではないけれども、枠組みは維持しつつ、そこをかなり集中的に扱うという感じだと思ったのですが、それでいいですね。

【清水主査】そうですね。松澤委員、山岡科学官から意見がありましたが、今のような方向で進めるのであれば、全面改定ではなく、神戸以降をもう1回総点検することで、その総括的評価はもうちょっと掘り下げられると。あとは、近年発生したイベントの中でも、特に今回の地震、非常に大規模な現象について項目を設けて、とにかく、きちんと現時点での評価をするということであれば、全くゼロからというわけじゃないので、このままの方向である程度やれるとは思いますが。

【小泉専門委員】このレビューは、その後の建議にもつながる話です。今、出ています阪神・淡路大震災のときに、ある意味、パラダイム転換があったのですが、今回は、それよりも、大きなパラダイム転換になるかもしれません。次に、我々が何を打ち出すかということは、大変な作業ですけど、それを意識ししながらレビューをしなくてはいけないと思うのです。

 阪神の後に第7次地震予知計画のレビューがあり、当時の方は総点検をされたと思います。覚えていらっしゃる方は多いと思いますが、あのレビューをしたときに、これで日本の地震予知は終わりというように読まれてしまったのですね。レビューの中ではそうは書かれなかったが、そういうふうに読める文章であったがために、「日本の地震予知は終わり」という趣旨で報道され、そういう風潮が広まってしまった。結局、はそれは何となくうやむやになってしまったのですが。

 何を言いたいかというと、その次に何をすべきか、ということも考えながらレビューをしていかないと、我々にとってはわかる文章であっても、外に対して誤ったメッセージを与える可能性があるので、気をつける必要があるということです。

 それから、新たなパラダイムを出すというのは、口で言うのは簡単ですけれども、大変だとは思います。しかし、やるべきでしょう。地震予測に関する研究は、どうしたって地震発生が低頻度ですから限界があります。我々がいろいろな仮説を持って予測したときに、それはときどき間違うわけですよね。また、それをもとに新たな仮説を出していけばいいわけです。そういう立場に立ってレビューができたらいいのではないかなと思います。

【清水主査】どうもありがとうございました。最初の私からの質問は(1)の基本方針、戦略の確認だったのですが、もう既に議論のほうは、私の質問の(3)、(4)、レビューはどのようなスタンスでとか、レビューの中で今回の地震をどう扱うかという議論に、移行しております。これは非常にいいことなのですが。

 その意見交換をさらに進めたいのですが、今、課長がようやく来られましたので、まず課長からごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【鈴木地震・防災研究課課長】どうしても外せない会議がありまして遅くなりまして申しわけございません。地震・防災研究課長の鈴木でございます。

 まず、第6期の科学技術・学術審議会の委員をお引き受けいただきまして、本当にありがとうございます。測地学分科会、地震火山部会、そしてこの観測研究計画推進委員会における審議のほうを、よろしくお願いしたいと思います。

 もう既に、会議室に入ってきた段階で、私のあいさつ文にかかわる部分が小泉委員のご発言の中にございましたけれども、観測研究計画推進委員会は、今の計画に従って行われている研究が、きちんと進捗しているかということをチェックをし、きちんと見ていただく委員会ということでありますけれども、まさしく東北地方太平洋沖地震を受けまして、今期の重点的な課題である、今の計画のレビューをどういうふうに進めていくのかというのが非常に大きな任務だと思っております。

 私自身の立場も、地震調査研究推進本部の事務局から、本測地学分科会の事務局までございまして、東海地震を除いては予知ができないという立場の事務局から、この予知計画というところまでかなりウィングが広い課長でございまして、先生方のご議論がどうなっていくのか、これは今後の私どもの業務にとっても非常に大事なポイントになることだと思っておりますので、ぜひとも忌憚のないご意見を頂いた上で、今後どういうふうに進むべきかについてご議論をいただき、さらには委員会からは部会、部会からは分科会のほうへ上げていただくということだと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

【清水主査】どうもありがとうございました。課長のお話の中にもありましたが、現状は東海地震を除いては予知できないと言っているけど、予知計画ということを言われました。この呼び方については、以前からかなり議論があると私は承知しておりますが、過去のいきさつがあって、ずっとそれを引きずっているわけです。

 今回も、レビューのことで事前にご意見をいただいた中に、市原委員も指摘されているのですが、「予知」という言葉は非常に誤解を与えるので、そもそも我々がやろうとしていることをきちんと表現するなら「予測」という言葉を使うべきであるというようなご意見をいただいています。同じ考えを持っている他の委員も多分おられると思いますが、その問題は、今、この委員会ではあまり詳しく議論をしません。ただ、この上の地震火山部会あるいは測地学分科会では、そこについてもきちんともう1回、議論をしていただきたいと思いますので、私のほうから、上の部会のほうには、皆さんからいただいた意見を集約し整理をしてご報告させていただきたいと思います。予知か予測かということについては、きょうは少し置いておきたいと思っております。

 戻りますが、基本方針、戦略については、いろいろ問題はあり、思い込みもあったし反省すべき点はあるけれども、基本的な方針としては、この方法しかないという意見であったと思います。

 ただ、レビューをどういうスタンスでつくるのか、あるいはそのレビューの中で今回の地震をどう扱うのかについては、いろいろ意見がありました。さらにご意見をいただきたいと思うのですが、皆さんから事前にいただいている意見を簡単に要約すれば、まずは今回の地震の発生の仕組みをとにかく知ることで、これをすることは今を置いて他にないわけです。まだ現在進行形で余震活動もあるのですが、この機を逃さず、総力を挙げて、今回の大規模現象をきちんと理解すべく努力をする。そして、その結果をレビューにも反映させる。

 現在取り組んでいる、またこれから取り組む研究成果を踏まえ、このような非常に低頻度な大規模現象の規模と時期の予測を、どのようにしたらできるのか。その可能性について検討し、可能性があるのであれば、基本的には、その予測に向けた今後の観測研究の戦略、方針を示す方向でレビューを書くということです。

 小泉委員の意見も、基本的にはそういうご趣旨だったと思います。

【平田委員】皆さんにお聞きしたいのは、今の建議に書いてあるとおりに100%進めていたら、東北地方太平洋沖でマグニチュード9の地震発生を予測する結論に至ったのかどうか。そこがポイントだと思うのです。書いてあるとおりに進めても予測できない現象であったのなら、その計画自体が足らなかったということですね。これはどこかで議論する必要があるけれども、阪神・淡路大震災後の第1次、第2次の新たな観測計画、それから地震と火山が統合された今の計画、この15年分の新たな地震予知計画の中にスコープとして入っていたのかということを皆さんに聞きたいのですが、いかがでしょうか。

【清水主査】どうもありがとうございます。今の平田委員からの質問というか意見ですが、どなたか。はい、森田委員。

【森田臨時委員】平田委員の考え方と私もちょっと近いのです。例えば実際に、資料5にある、「ローマ数字2.観測研究計画の基本的考え方」というものを書くときに、前回のレビューを見て、この建議というのはこういう考え方で組み立てられて、こういうやり方で進めていったのだとあらためてわかります。成果が上がっているという書き方をするときには、このような構成と基本的な考え方でいいのであろうと思います。しかしながら、小泉委員にしても、松澤委員にしても、鷺谷委員にしても、やはり足りないところがあったという指摘だったわけで、そうすると、こういう構成ではやっていけないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

【清水主査】レビューの、「ローマ数字2.基本的考え方」では、今までは建議に書いてある基本的な考え方をここに書き並べ、それに従って、それぞれの項目に従って点検をするというのが今までのレビューのやり方でした。おっしゃるとおり、そういう意味では、今回はそのとおりいかないかもしれない。

 現在の建議をもう1回読み直してみると、こういう大規模な地震に関しての記述はほとんどないです。東海・東南海・南海については、モニタリングのところで小項目として取り上げられておりますけれども、それ以外にはないし、アスペリティの連動とかというのも、いわゆる地震発生間隔の揺らぎみたいなことで議論する考えで、その辺を調べ明らかにするということでは書かれていますが、残念ながら今回のような超巨大地震が、どのくらいまでの規模になるかなんていうことは書いていない。むしろ、現在の建議のこれまでの成果と今後の展望の項を読むと、プレート境界型の地震の位置と規模の予測については一定の見通しが得られたと書いてあるのですよ。これは、皆さんも御存じのように、アスペリティモデルや固有地震の考え方があり、そういったものに基づいて、それは連動してもせいぜい2個、3個とかということなのでした。そういう意味での規模の予想はある程度ついており、あとは、長期的な評価とか時間予測というようなところを、これから詰めていくという書き方をしてあったと思うのですね。

 ですから、こんなに大規模の地震を予測するということは、そもそも今回の建議の課題には入っていなかったのです。だから、基本的な考え方のところも、そういうことを書いていなかったということをレビューしないといけないのかもしれません。そこも含めて、森田委員、こうすべきだという提案があれば。

【森田臨時委員】前回のレビューの「ローマ数字2.基本的考え方」を読んでみると、清水主査がおっしゃるとおり、ここで2年前に建議を策定したときの考え方について、それを肯定して、これだけ進んだという書きぶりしかできないのですよね。

 ですから、その方向性はよかったということは賛成するのですが、構成そのものを少し考えないといけないと思いますが、提案と言われると、そこまでは考えていなかったというのが正直なところで、申しわけございません。

【清水主査】わかりました。ご指摘は本当にそのとおりで、実際に我々がこれからレビューを起草するわけですが、我々が書くということを考えたときに、このままではちょっと書きにくいので、今後考えていかないといけないと思います。

【藤井委員】さっき平田委員が言われましたが、この5年次の建議が終われば、海溝型の地震に関しては予知ができると考えて建議をつくったわけではなかったと思うのですね。だから、平田委員が言われたのはちょっと言い過ぎじゃないかという気がするのです。これでできるのか、そうでなかったらつくり変えなくちゃいけないというのは、ちょっとおかしい。

 清水主査が紹介された部分は、基本的考え方というところの中に書かれてあることで、プレート境界の大地震の場所と規模の予測については、一定の見通しが得られた段階ではあるが、時間の予測については長期予測の段階にすぎないという意味で書いてあるわけですね。

 まだまだ、プレート境界の地震に関しても完全ではない評価のもとで、マグニチュード9を予知するということを約束しているわけではないし、そもそもできないと思っていたのではないかと私は理解していたのですが、違うのですかね。そうだとすると、建議にそう書くべきだったのであって、そこまで書かれていない。地震予知計画の「予知」という言葉、先ほど課長が言われたけど、「予知」という言葉があるということは、「予知をする」と言っているわけではなく、今の時点ではまだそのレベルにはないということを、ある意味では95年の段階で認めて、基礎研究が必要だというところで観測研究計画の1次、2次が始まったわけですね。

 我々、まだ最終到達点に来ているわけではないという認識だったと私は理解をしていて、これは噴火予知のほうも同じです。予知ができないと言いつつ、予知をやることが実際には人命を救う最大の方策になるから、それに向けての基礎研究をやろうというのが、この測地学分科会の中で続けてきた建議だったので、何かちょっと論点が違うような気がしています。

【平田委員】誤解を生むような言い方をしてしまいました。わざと、ちょっと議論を挑発したつもりだったのですけれども、何しろこの建議の策定に携わった私も責任がありますので。10年前、15年前に考えたことは、かなり包括的に基礎研究を全部やるようなプログラムにしたわけですね。そのために、長期・広域の地震現象という概念と、それから地震準備過程という概念をつくった。長期・広域というのはプレートの動きから地殻活動を決めて、それによって起きる地震発生の準備過程までやろうということであったので、例えばオホーツクプレートが本当にあるのかとかいう話まで取り込んだはずなのですね。だから、当然、その概念の中には、プレート境界で起きる最大規模の地震がどのくらいであるということが、スコープの中には入っているべきではあったけれど、実態としては、それはほとんど議論されていなかったのです。それで、わりと手近に実証的なデータが得られるマグニチュード7クラスの地震についての知見はふえたから、それについては、位置と規模の予測の一定の見通しが得られた段階としただけで、それが全部できたとも言っていないのだから、地震発生予測についてはまだまだなのです。今から思えば、その建議のつくり方自体が不足している部分が結構あったということだと思います。

 だから、このことをまじめにレビューし始めるのなら、まず計画が進捗したかどうかのレビューをするのだと思うのです。レビュー自体を批判することは、なかなか大変かもしれません、やってもいいのですかね。

【藤井委員】建議自体を、ですか。

【平田委員】建議自体をです。建議のレビューをするのに、建議自体を批判するというのはなかなか難しいですね。それは、別に項目を立ててやらざるを得なくなると思います。その議論は、いま行おうとしているレビューの進め方の議論と一緒くたにすることはできない。建議で設定したことが研究としてちゃんと進捗したかどうかというレビューと、あと建議の理論構成自体が今から見て合理的だったかどうかというレビューは、どこかでする必要がある。それが、ここで行うのが適当かどうかは、議論があると思いますけれども。

 ポイントは、計画の中でプレート境界の最大規模の地震について理解することを課題として考えていたかどうかです。つまり、予測するという以前に理解していなかったわけだから、その理解する枠組みが、この計画の中にちゃんとつくられていたかというところ確認することが、その計画自体をもし議論するのであれば必要だと思うのです。それは、別に建議の計画だけではなくて、課長がいるから言いにくいけれども、地震調査研究推進本部自体のスコープの中にちゃんと入っていたかどうかというところも、両方あると思う。それは、この建議をつくるときに、この建議の計画と地震本部の計画との役割分担ということは、かなり注意深く行ったわけですが、それはどっちがどっちというわけではなくて、両方完全にリンクしていますから、そういう議論が必要だと思います。

 それで藤井委員に言われたのは、5年でできるという意味ではなくて、この路線でずっと進めたときに、ちゃんと最後までできるかというと、できてほしいと思って建議の計画をつくったわけですけれども、なかなか難しいかなという気がして、そういうふうに発言いたしました。

【清水主査】どうもありがとうございました。

 今の平田委員の意見の最初のほうにあった建議の批判についてですが、このレビューの中でできるものなのかというご発言でしたが、多分、外部評価もあると思います。しかし、このレビューは自己点検評価だから、自分たちが当面の課題として上げた建議について足らないことがあれば、やはりレビューで指摘してもいいのではないかと個人的には思うのですが、これは事務局、いかがでしょうか。

【高木地震火山専門官】レビューの目的は、今、行っている5年間の予知計画がちゃんと進められていて、その半分のところまで来て何が足りないかということも含めて総括するわけです。その自己点検に基づいて、次の建議を立てるときに、どの部分が足りないかなどを含めて組み立てていくということですので、建議自体には触れざるを得ない。もし足りないところがあれば、次期の策定を視野に入れてレビューをするわけですから、それを議論することは可能ではあると思いますけれども、レビューをする役割と、例えば建議を部分的に見直すべきかを議論する役割を一緒にしてしまうことは、できないと思います。

 ただ、レビューの中では、その足りない部分というのを、言及することは可能だとは考えております。

【清水主査】そうですね。ここで建議の中身を議論するのではなくて、やっぱり足らなかったところというのは指摘することはできるはずだと思うのですが。

【藤井委員】それは全然問題ないのです。多分、平田委員が言おうとしたのは、阪神大震災の後で、方針が誤っていたということで、レビューではなくて建議そのものをつくり変えたのです。だから、もし今の方針が間違っているということになればつくり変えざるを得ないのです。だけど、今、皆さんは、方向は間違っていないとおっしゃっていて、それで、しかもこの5年が最終到達ではないということであれば、今回のレビューの段階で基本的方針に足りないところを指摘する。その上で、その足りないところが、この5年間の途中で建議をつくりかえるほどのものであるならば、その作業に入らなくてはならない。そうでなければ、今、高木専門官が言われたように、次の建議に反映させるということになる。次の建議に向けてその方向性は、レビューの中で出すことになるのでしょうが、どこまでやれるかですね。

 清水主査がまとめられたことから察すると、多分、方針としてはそれほど間違っていない。どうやってもこの方針で進める以外にはなかったけど、M9みたいなものを想定もしなかったということは、それは地球科学の研究者としてはやっぱり手落ちであるという、これはある種の反省ではあります。それでは、どうすればいいかということですが、今、ここでやるとなるとかなりの時間がかかる。まず今回の地震をかなりきちんと見なくてはならないと思うのですね。そうすると、レビューを作成する委員会だけで済まないと思うので、レビューとしてはやっぱり足りないところを指摘するというところにとどまるのではないかという気がします。

【山岡科学官】今回の地震は、一言で「マグニチュード9」と言っているけれども、その具体的なイメージはやっと最近わかり始めてきたのです。だから、何が足りなかったかは、まだ現段階では確定的なことは言えないので、レビューでやるとしたら、かなり仕組みが明確になってきたことを踏まえて、何が足りなかったかを議論すべきであるというような流れだと思います。

 もしそれを反映するのであれば、次の建議で反映することを目指して、今回の地震は一体どういうものであったかを、もうとにかく今後数年間、徹底的に研究をして、それで足りないところを取り込むのではないでしょうか。

 マグニチュード9を想定できなかったというのは、3月11日から最初の1週間ぐらいまではその表現でいいかもしれないけど、現段階では、それではあまりにもアバウト過ぎるので、問題点をもう少し正確に具体的に表現すべきです。例えば、海溝沿いの地震発生に対する私たちの理解が足りなかったというように。

 だから、M9が想定できなかったというよりも、むしろ我々の理解で何が足りなかったかということを、このレビューの中で少し議論をしつつ、残りの時間、2年半でさらに解明を進めて、次の建議の中に反映させることを考えるというのがいいのかなと思うのですね。

 あまりM9が想定できなかったという表現というよりは、むしろ我々は何が足りなかったということまで掘り下げないと、科学的ではないという気がします。

【松澤主査代理】先ほど、「10年後であれば」と言ったのは、平田委員がおっしゃったのと全く同じことで、我々のやり方をそのまま続けたときに、もし10年後に地震が起こったなら、そのときまでにはM9は想定できたかどうかという見方で、レビューするのがいいのではないかなと思います。もし、それでもできないと思うのであれば、何が足りなかったということが、見えてくるだろうと思います。

 私、二つ感じていることがあります。一番やらなくてはいけないのは、長期・広域のほうの地震発生サイクルと長期地殻ひずみの項目で、ここではある程度、あの当時言っていた連動型地震というものを想定して、この項がつくられていたはずです。実際、東南海・南海とか、北海道の海溝型地震ではこれを想定していたし、あるいは貞観地震もここに入っていた。これからは、ここをもっと膨らませて取り組まねばならないだろうなというのは、前向きな意見としてあります。

 もう一つ、最近、ここ1カ月でわかってきたことは、超巨大地震を単なるM8の連動として理解していいのかというのが、一番問題となっていることだと思うのですね。そこに関しては、大きな方向性を模索しなくてはいけないかなと思います。今、提案されている加藤尚之さんのモデル、あれはガリバー型とでも言うべき超巨大なアスペリティがあれば説明できるというモデルと、あとは堀高峰さんに代表されるような階層アスペリティのようなモデル。多分、そのどちらかが正しくて、単純な連動では今回の地震は説明できないだろうと考えています。そこら辺がクリアになってくれば、少なくともサイエンスとしては一歩進んだということで、前向きな方向にはいけるのではないかと思います。

【清水主査】例えば今の松澤委員の意見であれば、性急に建議を書きかえるというよりも、例えば今の長期・広域の中項目をもうちょっと重点的にてレビューするとか、あるいはアスペリティの考え方をもうちょっと広げ、階層構造も考えるとか、そういう対応をすれば、今の建議を直さなくても、今の枠組みの中で今回の地震を踏まえてある程度進めることができるとお考えなのでしょうか。

【松澤主査代理】もし足りないところが見えてくれば、新たな研究者を迎え入れるとかいうことは、必要になってくるかもしれないと思います。

 この、オ.地震発生サイクルと長期地殻ひずみの項目に携わる研究者はそんなにいるわけでもないし、予算もない。これ、実際やろうとするとすごく予算がかかる計画ばかりですが、研究費がないと言われているところでもあるのですね。結局、予知計画とは別のところの予算を使いながら、皆さん一生懸命やってこられているところであります。

 あと、先ほど、「もし10年後であれば」と私が申し上げたのは、階層アスペリティに関しては、東南海・南海のほうで既に堀さんがそういうアイデアを出されていて、今回は、単にそれを東北に置きかえると説明できますよという話です。それは、単なる連動じゃなくて、海溝近くまで速度弱化域を持つことによって非常に大きな津波も起こせるモデルですし、また単なる連動の足し算じゃなくて、もっと大きなモーメントが開放されるということを説明するモデルでもあります。

 観測のほうでは、海底地殻変動観測が進んでいるのですが、残念ながら私自身が見誤ったのは、福島県沖のプレート境界の固着は弱いという結果が出ていて、それが我々の常識とあまりにもぴったりはまったので、なるほど、そういう場所なのだと理解してしまった。だけど、それはもしかしたらここ5年とか10年ぐらいの異常な時間帯だけを見ていたのかもしれない。もし定常状態のデータが10年あって、その後、異常な時間帯が5年あれば、何か変だぞということが言えたのではないかと思うのですね。その思いが、「あと10年あれば」との発言に至ったのです。そういったことをきちんと説明するようなレビューにできれば、次の建議に向けて進んでいけると思うのですが、それに全く触れないで、建議に書かれていたことだけですべてが説明できたかのようなレビューは、とてもできないと思います。

【平田委員】やっぱりここで内容に踏み込まざるを得なくなりましたので、具体的な内容に触れますが、今、まさに松澤委員が言った、この長期・広域の(1)オ.地震発生サイクルと長期地殻ひずみというのが、小項目に置かれているということ自体が、間違っていたと思うのです。これは、いろいろな事情でここになったのです。さらに言うならば、発生サイクルとか、古地震とか、そういう項目がなくなってしまったので、ここに入れたという事情もあります。

 我々は物理を重視したために、要素還元型というか、積み上げていくと全部できるという指導原理がかなり強かったのですが、プレートテクトニクスがあって、大局を理解して、長い地質学的時間スケールの中で、我々は、地震サイクルの中のある一部しか見ていないという、そういう視点がかなり抜け落ちてきたのにもかかわらず、それを気づかないままに進めていたのではないか、そこは路線を少し間違えたのではないかと、私は反省するのです。

 東北大学がやってきた研究成果こそが、この15年の地震予知計画を支えていたのは事実です。そこで松澤委員が真剣に反省されているのを見ると大変気の毒なので、それは、少しはどこか間違ったところはあるかもしれないけれども、基本的にはそれが原動力だったのです。やっぱり、大局を見るという観点が、我々は少し欠けていたのかもしれない。つまり、東北沖というのは、単なるテストフィールドみたいな感じで理解していたのだけど、やっぱり日本列島全体をちゃんとシステムとして理解することが必要かと。太平洋プレートがあって、フィリピン海プレートがあって、オホーツクプレートがあって、アムールプレートがあり、それとそれぞれの海溝域のセグメントの全体の収支決算がどうなっているかという観点は、かなり抜け落ちていたのですね。その理由は、地質学やテクトニクスが、相当弱かったからのような気がします。それは内容なので次の議論とします。

 例えばそういうことがあるので、やっぱりこの建議のつくり方を議論し、構造的な問題を取り扱わなければ、いくら個別のことを精緻に積み上げていってもいけません。松澤委員は、10年たてばできたかもしれないとおっしゃいました。松澤委員が「できた」と言うのだからきっとできるとは思いますが、システム全体を理解しないで、個別のことだけをいくら精緻に積み上げていっても理解できないことはあるのではないかと思います。

 この建議のおおもとをつくった、15年前は画期的な考えだったのですが、それに引きずられているような気がするので、その点検はする必要がある。

 その帰結として、今の建議を修正する必要があるのか、次の建議をつくるときにやればいいというのが藤井委員のご意見だとは思いますけれども、どのタイミングでやるにせよ、やっぱり考え直すところはかなりあると私は思います。

【清水主査】ありがとうございます。

 でも、今の平田委員の意見ですが、これはここの場でやるのでしょうかね。

レビューするにあたり、地震発生サイクルと長期地殻ひずみ、これがこの長期・広域の(1)オ.という小項目のところに入っていること自体が間違いだったとおっしゃいましたけど、その意見をもっと前面に出し、今後は、これをもっと重点的にやるべきだという考えを仮にレビューで書いたとしても、そこまでは書けるけれども、では、建議を組みかえるとどうでしょう。これをもっと大きな項目にするように建議を組みかえるなんていうことの議論というのは、もっと上の、例えば地震火山部会の場ということでよろしいのではないでしょうかね。

 ただ、何人かの方から、今の建議の項目立てのままでは、今回の地震のことも含めてレビューが書けないところがあるという移管がありましたので、この委員会の意見として、上の部会のほうに報告はさせていただきますが、それは建議の組みかえまで必要かどうかということについては、この後、多分、地震火山部会に上がると思います。そこでもまた議論をいただければと思います。平田地震火山部会長に、その辺はよろしくお願いしたいと思います。

【小泉専門委員】15年前の建議見直しの時は、濱野先生と菊地先生が自然発生的に素案みたいなものをつくってくれて、それをもとに進めればよかったので、あの時は非常に恵まれていましたが、それをもう1回期待するのは甘い話で、やっぱりこの中の人間の少なくとも何人かが携わってつくらざるを得ないわけですよね。

 それから、一番の問題は、我々は東北日本の太平洋沖で、あんなに大きい地震は起こらないと、学生の時代から思っていたわけです。その思っていた人間が建議を書いたわけですから、それが入るわけはないのですが、一方で、松澤委員もおっしゃいましたけど、起こってみたらいろいろな問題が理解できた。つまり、我々は問題点を知っていたわけですよね。問題点は知っていたけれども、過去の思い込みとすり込みが邪魔をして、それを見ることができなくて、例えばバックスリップを素直に見れば、非常に短い期間ですが、この地震のあの規模は予測できていたわけですね。

 ですから、結局、今回の地震をきっちり検証していく作業とレビュー作業は並行せざるを得ないのです。

 レビューでどう書くかですけれども、レビューのいろいろな形式的なことは置いておいて、やっぱりM9が予測できなかった一番の原因については、素直に書いたほうがいいのではないかなと思います。その上で、どう進めていくかということに関しては、基本的には今までやってきたことの延長になりますが、どこに重点を置くかということの違いだろうと思います。

【藤井委員】今、小泉委員が言われたのと、平田委員が主張していたのは、ちょっとタイミングがずれていて、平田委員が言おうとしているのは、多分、第7次地震予知計画の建議の見直しのことなのですよね。濱野、菊地先生は、その後のレビューに基づいて8次をつくろうとしたときのことなので、ちょっと違うと思います。

 いずれにしろ、今やるべきことは、小泉委員が言われたように、ここの委員会でともかくレビューを実施する。そこでは、基本的方針で足りなかったことも含めて指摘をしなければいけないと思うのですよね。その上で次はどうするか、建議をつくりかえるのか、あるいは次の建議に反映させるのかということは、それをやった上で行うのではないかという気がします。

 平田委員は、どうももう既に見えているように思われているけど、それが本当にコンセンサスを得るのかどうか、ここは研究者のボトムアップでなりたってきたところですから、その理解がもう少し進んだ上で考えたほうがいいと思うのですね。しかし、やったことだけをレビューするというのではなくて、基本的な考え方まで含めてレビューの中できちんと議論をした上で、それをどう持ってくるかは、さらに上の会議のレベルで考えればいいのではないかと思うのですけど。

【清水主査】ありがとうございます。ということですので、基本的にこの委員会としては、とにかくレビューをするわけですので、建議が一部書きかわるか、書きかわらないかは別として、今期の各項目のレビューと同時に、この東北の地震についても徹底的に検証し、足らないところ、あるいは今後進むべき方向があれば、そういったものをレビューしてきちんと示すこと。その結果として建議が書きかわるかどうか、それはまた別なのですが。とりあえず、当委員会としては、そういう方針でとにかくレビューをするということでよろしいでしょうか。

 あと時間がなくなってしまったのですが、あと、体制についての質問もありましたし、今回は巨大地震の議論でしたけれども、同じように低頻度大規模の現象としてカルデラ噴火というのが実はあり、これも、今までの予知計画の対象外だったのですね。そういう低頻度大規模現象について、今後、予知計画ではどう取り組むのかというようなこともあります。この低頻度大規模現象についても、体制についても、いずれも皆さんにいただいた意見を見ていますと、大体、似たようなことが書かれていて、どちらにも共通しているのは、やはり少し総合的に取り組むということです。特に地質学分野の研究者を取り込み、共同研究を行うことを、今後より推進するというものです。実は、今期の予知計画では、以前よりもいわゆる物質科学系の研究者は大分入っているのですね。そういう意味では、そういう方向にはあると思うのですが、さらにそういった努力がいっそう必要だというものです。

 あとは、今期から地震と火山は一緒になった計画になっていますが、例えば今回のような大きな現象が起こると、当然、これは火山活動にも影響を及ぼすわけでして、そういう意味では、その部分では先取りしていたわけですが、やっぱり地震火山を一緒にとらえて、その相互作用の研究というのも、今後、より積極的に行うというようなことです。

 事前にいただいた意見は、大体そのようなことでしたが、あともう一つ、非常に重要だと思ったのは、その体制のところでも、低頻度大規模現象のところでも書いてあったのですが、何人かの委員からいただいた意見で、ボトムアップ型ということへのこだわりということです。少なくともボトムアップ型の研究というのを残すということが、非常に重要であるという意見をいただいて、これは私もそのとおりだと思っております。

 非常に低頻度でなかなか経験できない事象については、やはりいろんな分野の連携が必要で、つまりモニタリングだけでは解決しないわけです。発生間隔も非常に長いので、多様な分野、理論も実験も、さらには異分野のいろいろな考えを取り込みつつ、それぞれの研究者の自由な発想に基づく研究というのが保証されていないと、なかなか成果も出ないだろうと思います。この予知計画はボトムアップだと思っているのですが、そういったものもとにかく今後もきちんと続けていけるような形でのレビューをしていきたいとは思います。これは、私の個人的な意見ですが。

 だいぶ時間がなくなっちゃったのですが、どなたか、他に意見ないでしょうか。

【市原専門委員】今回、東北の地震について議論がずっとあったのですけど、火山噴火に関しては、まだ今回のような大規模イベントが起こっていません。火山噴火予知研究のほうでは、そういったような抜け落ちはないのかという視点とか、あと今回の地震が何で予測できなかったかという視点が、そのまま火山に生きるかどうかはわからないので、そこの違いも含め、火山噴火のほうで同じようなことが起こった時、何が足りなかったという反省を繰り返さないために、いま何をしたらいいかという視点が必要かなと思います。

【清水主査】そうですね。火山のほうは、いわゆるカルデラ噴火みたいなことは予知計画としては全く取り上げていないと思います。

 ただ、起こってしまってからその反省が出てくることもありうるので、今の段階から、これまでの噴火予知研究の方針の延長上で、カルデラ噴火の予測もそのままでいいのかどうか。あるいは、もっと別なことを何かしないといけないのかどうかということも含めて少し議論をして、それも次の建議には反映できるようにできたらいいなと思います。市原委員、ぜひ、いろいろとお願いしたいと思います。

【鷺谷専門委員】ボトムアップというのは、サイエンスをやる上では非常に重要だとは思うのですが、その一方で、こういう場を与えられているというのは、日本が世界有数の地震火山国であり、今回のような大きな被害を伴う自然災害を我々が相手にしているからこそだと思うのです。そこは、しっかり自覚しなくてはいけなくて、基礎研究も大事ですが、通常の基礎研究の枠と何で違うところを我々は与えられているのかということ、これはみずからへの戒めでもあるのですが、自覚して、そこだけはしっかり切り分けをしておかなくてはいけないと思います。

【清水主査】どうもありがとうございます。

 今度、この上の地震火山部会では、本日の議論を私のほうで少しまとめて報告をしたいと思います。地震火山部会への報告の文案をつくりましたので、ちょっとこの場で読み上げまして、もしご意見があれば、それをいただいて、修正をして地震火山部会に上げたいと思います。読みます。

 地震及び火山噴火予知のための観測研究計画のレビュー実施内容の再点検について(案)。

 平成23年度は、「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画の推進について」(平成20年7月科学技術・学術審議会建議)の5か年計画の3年目にあたる。そこで、測地学分科会(第22回)において、次期の建議策定を視野に入れ本計画のレビューを実施し、総括的自己点検評価を行うことが決定され、そのとりまとめを当観測研究計画推進委員会で行うことが地震火山部会(第4回)で了承されている。

 その後、平成23年3月11日にマグニチュード9.0の巨大地震である東北地方太平洋沖地震が発生し、地震と津波により多くの犠牲者、甚大な被害が発生した。

 本計画では、日本及びその周辺で発生する超巨大地震の発生の仕組みと、それに基づいた地震の最大規模の予測に関する学術的研究の推進が不足しており、このままでは東北地方太平洋沖地震の発生をふまえた、十分な自己点検評価を実施することはできない。

 したがって、レビューの実施内容の再点検、あるいは本計画の部分的な見直しも検討しなければならないと考えられる。

 よって、レビューの実施内容や本計画の進め方について、地震火山部会において、再度審議いただきたい。

以上です。これはまだ案ですが、地震火山部会のほうに私のほうから報告をさせていただきたいと思います。これをもとにきょうみなさんからいただいた意見も地震火山部会で伝え、もう1度、レビューの実施内容とか本計画の進め方について、審議をお願いしたいと伝えます。つまり、このままの既定路線でレビューはできないのでということで、上の地震火山部会のほうに上げさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 

(「了承」の声あり)

 

 ありがとうございます。それでは、地震火山部会に報告させていただきます。

 

 

[議題5 その他]

 

【清水主査】それでは、事務局のほうから、その他議題は何かありますでしょうか。

【高木地震火山専門官】(資料6を用いて、今後の審議の日程を説明。参考資料6-1を用いて、東北地方太平洋沖地震の緊急研究への対応を説明。資料6-2、3を用いて、霧島火山新燃岳の緊急研究への対応を説明。資料6-4を用いて、東京大学地震研究所が取りまとめた浅間山に関する成果報告書について紹介。)

【清水主査】本日の会議の議事録は、本分科会運営規則第4条第1号により、主査代理選任の人事に係る案件等を非公開といたします。

 それでは、これで本日の議事を終了いたします。本日はお忙しい中、時間を超過しまして申しわけございませんでした。どうもありがとうございました。

 

(以上)

 

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)