科学技術・学術審議会測地学分科会地震部会（第19回）/火山部会（第22回）合同会議配付資料［資料3］

（全体）

■　1次2次と計画を推進し、基本的な考えとしては、これを継続する方向。新計画になって、内部的には大きな変化があったが、それが外部に伝わっているかどうかは疑問であり、広報が足りない。また、地殻活動シミュレーターを作るのが出発点だったが、3次ではこれまでの方針を見直すことも必要。（濱野）
■　基本的な考え方についてはこのままでよい。基礎的な調査研究の重要性を忘れてはいけない。シミュレーションを推進すると必然的に基礎研究の重要性が明らかになる。（大竹）

（シミュレーション、データ同化、海底地殻変動）

■　2次計画からシミュレーションとモニタリングを組み合わせて予測に結びつける試みが行われているが、シミュレーションとデータの同化までは行っていない。総合予測システムの構築を目指して3次計画は策定するべき。シミュレーションに用いる構造モデルのプロトタイプを共有すること、地震カタログの不備を整備すること、海底の地殻変動観測を進めることが東南海の予測には重要であること等、10年位を見越して全体的に調和のとれた計画になるような視点が必要。計画には実施できるものだけでなく、萌芽的なものを含めることによって若手育成につなげる。（松浦）
■　海底の地殻変動観測として、宮城県沖では陸上の基盤観測に近いような集中的観測を実施。また、東南海・南海では、海底調査によりデータを長期的に頻度多くとり、シミュレーションに活用できるよう計画中。（西澤）
■　海底地殻変動については、観測密度が重要であり、技術開発も必要。次期計画では海底地殻変動に重点を置くべきと思うが、シミュレーションのデータ同化は簡単ではない。観測データをシミュレーションに使うところまで行っていない。（金沢）
■　固体地球分野でのデータ同化は気象のデータ同化のレベルまではほど遠く、モデルの逐次改訂を行っている状態。このまま観測を続けていても予測には結びつかない。全ての機関が協力してバーチャルな地震庁を作り、シミュレーターのコミュニティモデルを柱として、多く研究グループが独自の改良を加えていく計画が必要（松浦）
■　5年前も同じような議論。モデル及び必要なデータを取る体制が整備されてきた。次期計画検討シンポジウムでもデータ同化について取り組んでいくべきとの意見があった。地震予知研究は推本がやっている基盤的観測と密接に連携しており、Hi-net、GEONETと大学の基盤観測網がうまく連携している。データ同化するプラットフォームをコミュニティモデルで作りモニタリングすることは、予知計画というより推本が国として調査すべきものが含まれるのでは。推本でやることと学術研究として地震予知研究でやることの役割分担は議論すべき。（平田）
■　モニタリングとシミュレーションの同化についてはいろいろな時間スケールで議論されるべき。総合的にいろいろなスケールで提案することによって地震予知計画全体をモニタリングとシミュレーションの同化として位置づけられるのではないか。（入倉）
■　今後10年さらにシミュレーターを頑張れば、日本海溝の東北沖については中期予測ができるのではないか。南海トラフも10年でできると考えている研究者もいる。（松浦）
■　東北沖では可能かもしれないが、10年ではできないと考える研究者も多いのではないか。（長谷川）
■　データ同化とモニタリングとシミュレーションの関係は重要。各機関の、各分野の研究者がいろいろなシミュレーションの結果を出し、それを共通のデータを使って判断しなければ、データ同化の仕方が悪いのかどこが悪いのか分からない。プロトタイプ的なものをベースに、各機関の得意とするところは精緻化したモデルを加えることによって評価することが必要。外部評価にもあるが、海溝型地震については、海底観測データを取り込まないと、10年スケールの評価は難しい。（金田）
■　デクラスターをしないでETASで活動度を定量化する必要がある。相似地震の解析で、例えば東北日本のエリアである時点の応力場の不均一な状態を提示できれば、それを基にスタートできる。（松浦）
■　現在欠けているのは、海溝域でのすべりの情報。小繰り返し地震の活動でもGPS観測でも不十分なため、海底地殻変動観測、あるいは海底傾斜計等が重要。（松澤）
■　シミュレーターを作ってデータ同化を行うこととアスペリティの実体を物理的化学的に解明するという両方の観点が研究には必要。（平田）
■　現計画の基礎研究を進め新しいものを取り込みながら地震発生予測に役立てるという基本路線は、変えるべきではない。その中でシミュレーションを通じた予測に対する意欲が高まっている。それを組織的にやるかどうかは、推本との仕分けも必要。（山岡）
■　シミュレーターにとっても素過程は重要。地震発生には幅があり、ミクロにどうなっているかを解明することはシミュレーターの構造に必須。（松浦）
■　シミュレーションについては、実際の地震現象の時間スケールの長さを検討することが必要。現在の観測データとシミュレーションの同化は意味があるが、長期的なデータではうまくいかないケースがあり、長いスタンスで見ないと今のシミュレーター技術の向上だけがメインになってしまう危険性がある。（笠原）

（人材養成）

■　人材養成の問題は、将来を左右する根本的な問題。予算の仕組みとも密接に絡み合っており、新計画の策定では具体的に掘り下げた提案が必要。（大竹）
■　大学院にたくさんの学生が集まり、優秀な学生を採用するためには、学問分野として魅力的なだけなく、養成した学生の活躍の場を考慮することが必要。地震予知研究を通した人材が、様々な分野で活躍できないと将来に繋がらない。（入倉）
■　地震及び火山噴火予知に留まらず、固体地球物理に共通する課題。（長谷川）
■　現在参画している研究機関以外に幅広く研究者の参画を求めることが必要。広く人材を集めることによって、育成した人材が様々な分野で活躍することになる。（平田）
■　外部評価でも人材養成のことが指摘。優れた研究をしても若手がいなければ限界がある。現場では、博士課程まで来る学生が減少。構造的にどう考えればいいのか、学会等と解析した上で解決策を盛り込むべき。（野津）
■　地震予知研究計画に閉じた問題ではない。いろいろなレベルで議論されているが、即効の解決策はなかなかない。育成した人材をどこに出せるかも問題。（長谷川）
■　魅力的な学問にすることは当然だが、地球惑星科学という狭い分野だけを教えるのではだめ。シミュレーションの話も幅広い知識、学問体系が必要であり、地震予知に必要な学問体系は何かを考えながら、そこで学んだ人は地震学だけでなく様々な分野で活躍できるというプランを立てることが重要。（入倉）
■　博士課程を出てもポスドクにしかなれない、という状況は深刻。きちんと対策を立てることが必要。（山岡）
■　研究者になるためにはポスドクになることが必須という大きなハードルができてしまった。しかし期限付きポスドクは、異動が多く不安定な状態が目の前にあるため研究の道をあきらめるという実例が出ている。（長谷川）

（実施体制・予算）

■　実施体制は、必ずしも法人化等を考えると適切な体制ではない。大学間の仕分けなど様々な問題があり、全国共同利用の在り方について検討が必要。（金沢）
■　地震予知のための研究を大学の運営費で行うという問題、大型の設備要求が通らない現状。法人化により、各法人が個性をもって運営しているのに対し、みんなで一つのことを計画することは、研究としては大事だが法人化の精神には反する。地震予知計画の予算の在り方について議論が必要。特別教育研究経費の枠組みだけではだめ。（入倉）

（社会との関わり）

■　外部評価では、研究と社会との関わりが十分でない、とのことであるが、各機関や個人も努力している。組織的には政府の後押しが必要であり、次期計画では是非取り上げてほしい。設備が付き難い状況についても、地域社会を味方に付ける努力が必要。（梅田）
■　文部科学省では、防災教育支援に関する懇談会にて検討中。今までの防災教育は特定の人、地域で行われており、全国的な広がりの必要性や教育委員会と地方公共団体の防災担当者との連携、防災教育に関わる人材等について議論されている。地震・防災分野での社会との関わりについては、本部会でも次期計画で検討願いたい。地震調査研究推進本部においては、次期総合基本施策の議論が始まり、社会との関わりが重要な論点。（土橋）
■　本部会、推本それぞれが連携して社会に発信していくことが必要。（長谷川）

（火山活動との連携）

■　内陸地震については、プレート境界におけるアスペリティモデルに匹敵するものがもうすぐできると思う。内陸地震の発生メカニズムの理解のためには火山研究者との連携が重要。計画として一緒にやるという観点もある。（平田）
■　地震と火山とばらばらではなく、固体地球物理という広い視点で考えてはどうか。そういうことで幅広い分野を学ぶことになり、学生の獲得にもつながるのではないか。社会一般には幅広い見方をできる人材が求められている。（板谷）

（以上）

地震部会（平成19年7月3日）における次期計画に関する主な意見

（全体）

（シミュレーション、データ同化、海底地殻変動）

（人材養成）

（実施体制・予算）

（社会との関わり）

（火山活動との連携）