地震部会(第17回) 議事要旨

1.日時

平成19年4月16日(火曜日) 10時30分~12時10分

2.場所

三田共用会議所 4階 第4特別会議室

3.出席者

委員

 石原、長谷川
臨時委員
 大竹、笠原、清水、平田、松浦、浦塚、堀、村上、濱田、春日
専門委員
 梅田、大久保、小川、金沢、金田、西澤、野津、松澤、山岡

文部科学省

 板谷大臣官房審議官(研究開発局担当)、土橋地震・防災研究課長、橋本地震調査管理官、加藤学術調査官、他関係官

オブザーバー

 小泉〔産業技術総合研究所〕

4.議事要旨

(1)科学技術・学術審議会測地学分科会地震部会長及び地震部会長代理の選任について

 資料1に基づき、地震部会の委員が紹介された後、部会長の選出が行われ、長谷川委員が互選により選出された。また、部会長代理として石原委員が長谷川部会長より指名された。

(2)議事運営等について

 資料2‐1~2‐3に基づき事務局より説明後、本部会における公開の手続きについて、測地学分科会決定を準用することが決定された。
 続いて資料3‐1~3‐4及び参考資料1に基づき、第3期における地震部会の審議状況等を事務局より説明後、前期に引き続き、地震部会の下に観測研究計画推進委員会を設置することが決定された。
 主な意見は以下のとおり。

【大竹委員】
 所掌事務について、地震調査研究推進本部の事項は含まれるのでしょうか。

【永田専門官】
 地震調査研究推進本部については、法律に基づき設置された政府機関であり、地震部会においては、学術的な観点から地震に関する調査研究についてご議論いただくこととなっている。

【土橋課長】
 組織体系としては別組織である。平成11年に推本が策定した「地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策」においては、地震予知の建議について触れられている。これまで地震部会で議論いただいたことについては、推本との連携等が言われている。外部評価においても推本との連携について触れられている。一方推本においては、次期総合基本施策の策定について議論がされている。6月末及び8月の推本政策委員会で議論がなされる予定。来年6月に中間取りまとめ、再来年決定というスケジュールで考えている。次期建議及び推本の次期総合基本施策が同じ局面で議論できるので、連携あるいは協力したいと考えている。地震部会にも推本の検討状況をご報告したいと考えている。日本の地震調査研究について基盤的基礎的な部分も含め、今後10年20年後を踏まえて考えていきたい。

【大竹委員】
 所掌事務については、別組織であるから別であるということか。

【土橋課長】
 別組織なので、議論すべき点は当然異なる。ご意見いただくのは全く構わない。

【大竹委員】
 推本の活動に対するレビューについて参考にお聞きしたい。

【土橋課長】
 昨年度、推本の活動に対し中間のレビューが行われた。東京海上日動の樋口先生に主査を務めていただき、推本の全体的なレビューを行った。推本の活動の細かい点について具体的にレビューをしたことはないが、次期総合基本施策を作る際には必要ではないかと考えている。第3期科学技術基本計画を作るときに、第1期・第2期について総合科学技術会議が様々な視点からレビューを行っている。推本についても政府機関でもあり、何らかの形でいろんな視点で行わなければならない。推本の本部会議及び政策委員会等で今後の方向性が決まると考えている。

(3)平成18年度研究成果について

 資料3‐2、参考資料2~4に基づき、本年1月15日にまとめられた地震予知研究計画のレビュー結果及び平成18年度の研究成果について、平田委員より報告があり、その後意見交換を行った。
 主な意見は以下のとおり。

【石原部会長代理】
 平田委員の説明の、「現段階における予知研究の到達度」のうち、プレート境界地震については、直前予知は別にして、3要素について見通しが立ったと理解して良いか。

【平田委員】
 時期については、過去の平均の発生間隔と直近の地震発生時期の割合で算出している。統計的なモデルを作って発生確率を計算している。くり返しのばらつきが小さければ確率は上がるが、実際には地震の発生間隔はばらつきがあり、最終的に発生確率だけを使っていては、30年で99パーセントの発生確率でも、10年間で100パーセントとはいえないので、現実に起きている地震をモニタリングしつつ、将来を予測するという考えを導入しなければ、地震モデルに基づいた発生確率は上がらない。長期的、統計的には発生確率を予測する技術はあるが、社会に役立つ、我々が目指す地震予知にはまだ足りない。

【長谷川部会長】
 補足だが、時期については、複数のアスペリティが相互作用しながら起きており、次世代のモデル作成が必要になってきていると考える。平成18年度研究成果の内陸地震について細かいことだが説明させていただく。プレート境界地震について、何が分かっているかというと、プレートの境界で地震が起きており、その内部がどうなっているかというとアスペリティという部分があるということが言われている。内陸地震は内陸のどこで地震が起きているかというと、それが理解されていない。それが内陸のアスペリティであるというのは早急だが、次は内陸のどこで何が起きているかの理解を推進していかなければならない。

【松浦委員】
 5年の計画の宿命であるが、2年の研究成果でレビューを行っており、3次の計画については、今年度の成果も踏まえて作成することをお願いしたい。

【山岡委員】
 観測研究計画推進委員会で委員をしており、本レビューの案を作った。どこまでできて、何ができないかについては、真摯に向き合って作ったが、ご意見を伺うと、認識の甘さを感じる。研究が少しでも前進してほしいと思っている。松浦委員のご指摘の点について、本レビュー報告書は、過去5年の研究成果についてレビューを行っている。つまり、前回のレビュー報告書から5年間の研究成果をみている。この10年間で大きな成果がでたので、この勢いで研究を進めたいと思っている。

【松澤委員】
 私も本レビュー報告書の作成に携わった。この10年で大きく理解が進んだ。その背景としては、Hi‐netの整備等があるが、1970年の地震予知計画を受けた基盤観測網整備の後に研究が活動的になったのと同じ印象である。その後は落ち着いたので、プレート境界地震についても、今までの10年間と同じ進展は難しいかもしれないと危惧している。そのためには、現在の観測網を維持するとともに、新たな観測網をどのように整備するか、新たなフィールドはどう考えるのかについて検討が必要である。内陸地震においては、もしかしたら次の10年で非常に進むかもしれない。今注目されている地殻内流体について、内陸、プレート境界全てにおいて理解が進むのではないかと思っており、プレート境界地震のみならず、他の地域における地震についても研究の進展があればいいと思っている。

【春日委員】
 地震予知連等には主に海域の調査を担当している機関として出席している。平田委員の報告のうち、新たな観測・実験技術の開発の部分で、GPS音響結合方式により、海底地殻変動の観測技術が実用化について、成果として言及していただいた。プレート境界地震については様々な現象が分かってきており、これから特に震源域の近傍における海底観測の高度化が重要になってきていると認識している。海上保安庁の海底地殻変動観測の精度も上がってきているが、精密化小型化という高度化、観測の頻度も工夫して増やさなければならないと考えている。現在の方向では、観測船が観測に赴くのは年に数回となってしまっているが、観測の手法を工夫して頻度を上げ、微細な現象を観測できるように努力したい。これまでも東北大学、東京大学等と共同研究で技術開発を進めてきているが、今後とも連携を深めて技術の向上を目指したいと考えている。

【土橋課長】
 私から一言お願いがある。レビュー報告書に対し、現在外部評価が行われている。そこでも言われているが、基礎研究、学術ということで、社会への発信、研究成果の発信ということが、必ずしも行われてきていないのではないかということがあり、ぜひこれから地震部会の先生におかれては、そういう視点を考慮しつつ議論していただき、個別でもそういう活動を進めていただきたい。

【山岡委員】
 説明責任ということは重要で、この10年で非常に成果は上がったが、その成果の説明はうまくできていないという反省があり、地震学会のメンバーで「地震予知の科学」という本を作り、レビューの説明という色彩が強いのだが、5月に発売した。できるだけ分かりやすく説明することをいろんなところでやっていくことはいいことで、批判があれば、きちんと対応するということも必要である。

【土橋課長】
 山岡先生は、本日サイエンスカフェが日本橋で90分行われるが、そこで説明をしていただく。今年度から科学技術週間で地震・防災分野も入れてそういう取組をしている。先生方からご提案をいただき、防災教育に関する懇談会を文部科学省に設置し、その中で成果を社会に発信すること、人材育成、社会教育等々、議論していただいて、文部科学省でも積極的に取り組んで行こうと考えている。先生方からも問題点を教えていただいて、首都直下や東海東南海の切迫性も高まっていることを考えると、社会に科学技術の成果を発信するということを盛り上げたいと思っているので、ご支援よろしくお願いいたします。

【長谷川部会長】
 日本学術会議でも、社会貢献について議論がされている。地震学会は地球惑星学会の一部だが、小さな各学会が独立してあって、それぞれが自分の分野で活動しており、地球惑星学会全体としては弱い。みんなが役割分担をして、きちんと成果を説明していく必要があるのかなと思っている。本計画についても、外部評価委員会で指摘されたことであるが、学問として研究が進展したのは分かるが、それがどう社会に役立っているのかという視点がないのではないか、という指摘があった。こういう観点は極めて重要である。

【石原部会長代理】
 地震・防災研究課として、積極的に成果の還元に対して支援していく、取り組んでいくというご発言ということか。

【土橋課長】
 3、4年前に、成果普及事業として、東北大学、名古屋大学及び民間等関係機関が連携して取り組んでいるが、今年度は防災教育支援の懇談会を立ち上げたので、学術の成果や推本の成果も含めて、教育や社会とのつながりを十分踏まえ、防災教育支援でいい方向性がでたら、来年度概算要求に盛り込みたいと考えている。

【板谷審議官】
 科学技術全般で社会貢献が求められており、現段階で外からどう見られているか評価が変わってくる。それは予算の配分であるとか、その分野にどれだけいい人材が入ってくるかということに繋がってくる。それぞれの分野が社会に対して大事であると主張している現状である。それに対し、相対的にどうかというのが社会の評価である。地震分野は、災害が頻発していること、現在の安倍総理の方針で「安全・安心」があるといったことを踏まえれば、注目されているといえる。そういう意味では、それぞれの分野が今何をやっているのか、社会に何を還元しているのかという説明が求められている。今、注目されているので、うまく発信していくことが重要である。それが予算に反映され、地震分野を担う人材が増える。人材が増えるということは、その分野が注目されている証拠であり、大事だと考える。私は別の分野も所管しているが、それぞれがPRの仕方を工夫し、アピールしていく。産業活動と同じであり、同じ製品を作っている会社が、それぞれ自社の製品の良さをアピールする、それが買われる。社会貢献はそれと同じで、PRをして、成果を見てもらうということが大事。地震課長はアピールを頑張っており、ご支援ご協力を賜ればと思う。

【長谷川部会長】
 地震は防災という観点で、社会貢献が考えられるが、一方で地震科学の視点では、後継者養成が非常に大事。その意味で、サイエンスカフェといった活動に移していくということは非常に重要だと思う。こういった活動を継続するようお願いしたい。役割分担をして、それぞれがどのようにアピールするか、という認識を持っていただけたのではないか。

【平田委員】
 社会に対して説明責任を果たすということは重要であるということは分かっているが、一つ検討していただきたいのは、測地学分科会の計画としてアピールする必要があるのか。コミュニティの存在意義をアピールすることは必要だが、地震・防災において一元的にやっているのだから、その中の仕組みとしてやればいいのか、狭い意味で測地学分科会地震部会でアピールする必要があると言われると、大学等各機関がそれぞれやらなければならないので、公式の場で方針を出すのであれば、全体の中で、どのように位置づけるのか、どういうスタンスでやるのか、定義が必要ではないかと思う。

【長谷川部会長】
 地震予知研究計画とか地震学会といった単位でやるのではなく、それぞれが連携して役割分担をするという方向でどうできるかを検討するということだと思う。

【土橋課長】
 それぞれがそういう意識を持ってやることが重要。測地学分科会だけそういうことをやらなくていいというわけではない。立場が重なっていることはある。いろいろな分野、いろいろな地域、いろいろな個人の立場で積極的に取り組んで頂きたい。

【笠原委員】
 実際いろいろな枠組みがある。博物館で地域を限定してシリーズで毎年行うものについては、当然地域に関連する地震・火山については説明するし、サイエンスカフェについても、初年度12回やったが更に発展させるために、もっと地元密着型にならなければならない。その場合、相手側からの要望もなければならない。今年は津波について地方公共団体や地元住民との会話を何回かしようと考えており、いろんなチャンスを使おうとしている。数年前にあった成果普及事業は地域というような支援母体というしっかりしたものがないと研究者が現役のままやるというのは荷が重い。数年見据えて自治体との関係を築きながらしっかりした本部を作ってもらえると、かなり進むと思う。日本全国どこでも地震は発生しているので、地域に根ざした中央集権的でないシステムを構築してくれたら成果は上がると思う。

【山岡委員】
 建議があるということは誇るべきことである。他の分野と議論するとき、地震予知に関する研究はこういう方針でやっていると研究者の意識が共有されていることはいいことで、それを強く主張していく。外から聞かれたら説明できる。そのために学術的にきちんとした建議を作ってきたということは誇りだと思うことが大事だと感じる。

【清水委員】
 笠原委員が言及されたように、防災という観点から地域密着でやっていくのは重要である。平田委員が説明したような成果というのは、地域社会というより、社会のオピニオンリーダーに理解頂くような機会を得られないか。地震予知でも成果報告会は行っているが、参加者は身内である。世の中のオピニオンリーダーに聞いて頂く機会を作ることが必要ではないかと考える。

【土橋課長】
 自民党に議連が3つあり、勉強会を行っており、そこで成果をアピールしている。産業界においては、経団連の中に昨年防災委員会が設置されており、普及活動をしている。経済同友会は個人だが定期的に勉強会を行っており、働きかけをしている。商工会にも働きかけており、地震・防災分野は国がやることという意識があり、こういう分野は産業界とのつながりがなかったので新たな視点でやっていきたいと思っている。

【長谷川部会長】
 さまざまな視点で連携して役割分担をしていくということだと思う。小中校生にも、地震がどこまで分かっているか説明して、わくわくしてもらえるように、計画が始まって40年でやっとなったと思っている。いろいろなレベルで努力が必要であり、先生方もそのような意識を持って頂ければと思う。

(以上)

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研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)