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今後の大学等における火山観測研究の当面の進め方について(案)

平成20年12月15日
測地学分科会火山部会

 

今後の大学等における火山観測研究の当面の進め方について(案)

 

1.観測研究体制の検討と整備の考え方

 国立大学法人は、主として学術的視点から火山の観測研究を行っている。また、防災科学技術研究所等の研究機関は「火山災害による被害の軽減に資する研究開発等の推進」等の視点から観測研究を行っている。一方、気象庁は、火山活動に関する警報・情報を発表する等、災害予防のための火山現象に関する観測網を確立・維持している。

 それぞれ直接的な目的は異なるものの、いずれも火山現象による災害の軽減に資するものであり、有機的連携を図ることが国民の期待にこたえるものであることは言うまでもない。

 また、現実的に火山の観測監視は、火山噴火予知計画による観測体制の整備などの歴史的な経緯や、火山噴火予知連絡会における情報交換等により、大学や研究機関は気象庁の観測監視に寄与してきた面があったといえる。

 しかしながら、国立大学の法人化等に伴い財政事情が厳しくなり、観測点等の維持管理が困難となりつつあること、また、火山観測研究に携わる人材確保も極めて厳しくなりつつあるという現状がある。そもそも、大学の設置、運営する観測点は、マグマ蓄積過程の多様性を理解するための長期継続観測の必要性や火山の存在する地域への社会貢献的観点に配慮しつつも、学術論文や火山噴火予知高度化のための研究に資する等の学術的観点から整備すべきものである。

 今一度、大学における本質的使命である教育・研究の原点に立ち返り、今後、大学においては、学術的に重要と考えられる火山についての観測研究に重点化しつつ、さらに独立行政法人等の研究機関が開発する新技術や新たに整備される観測データを利用することにより、今後の観測研究体制を強化していく。

 このため、当面は以下の方向で検討を進めることとする。

 

2.検討の方向性

1)重点的に強化すべき火山について

 今後、大学においては、活動度が高い火山や、現時点では活動度が低いものの潜在的爆発活力が高いなど、研究的価値の大きい火山を重点的な研究対象とし、その上で特定の機関が支援することとする。

(1) 大学の観測施設等の老朽化が進んでおり、このままでは観測研究に支障が出るおそれが高く、緊急に支援すべき必要がある火山。

(案 阿蘇山、霧島山)

→早急に観測施設等の更新計画を作成し、防災科学技術研究所等の支援による観測施設の整備を検討する。

(2) 現状においては、大学単独では観測施設の維持管理が困難で、支援を受けて観測を継続すべきもの。

(案 樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、草津白根山、浅間山、口永良部島)

→防災科学技術研究所等が大学と連携して、地震観測網の整備と合わせ、効率的に観測研究のための観測網の整備を図ることを検討する。

今後、具体的な観測施設等の整備計画を作成し、防災科学技術研究所等の支援により計画的に整備を行う。

(3) 大学や研究機関による観測施設が比較的整備されており、当面は大学の研究資源を集中させることにより、その維持管理が可能であるが、将来的には支援を検討すべきもの。

(案 岩手山、富士山、伊豆大島、三宅島、雲仙岳、桜島)

→当面は、大学の観測施設については、大学において維持管理に努め、将来的には観測研究の高度化を図るための支援策を検討する。

(4) 地理的条件等が厳しく、観測網の維持管理が困難と思われる火山。

(案 十勝岳、諏訪之瀬島)

→大学の観測施設については、大学において維持管理を進めつつ、将来に向けて関係機関において支援策を検討する。

 なお、防災科学技術研究所は、現在、連続観測の対象としている富士山、三宅島、伊豆大島、那須岳及び硫黄島についての研究を強化しつつ、観測施設の着実な維持管理を行う。

2)その他の火山について

 今回案として示した「重点的に強化すべき火山」以外の火山にある大学の観測施設については、気象庁の観測監視に寄与してきたことを踏まえ、火山噴火予知連絡会火山観測体制等に関する検討会において、気象庁の支援・協力を念頭におき、火山防災対応に支障のないよう検討されることを期待する。

 なお、大学は、必要に応じ気象庁等からのデータ提供を受け、専門家の視点からデータを分析し噴火の可能性などにつきアドバイスを行うとともに、火山活動が活発化し噴火が予想される場合には、多項目の集中観測の実施により噴火予測に貢献するなど、全体として、観測による火山防災が維持・発展するよう配慮する。

 

 以上の基本的な区分により検討を進めることとするが、火山観測はこれ以外にも研究機関等、国土地理院、海上保安庁、地方公共団体等様々な機関で実施されており、個々の火山により、また一つの火山の中でも様々な事情があることが想定されるので、その点に配慮しつつ、関係機関が一致協力・連携することにより、今後の我が国の火山観測研究が強化されるように、総合的かつ具体的に進めることとする。

3)火山観測データの流通について

 我が国の火山においては基盤的観測網が未整備のため、現在火山観測データの流通は火山防災目的での気象庁等へのデータ提供やデータ交換に限定されている。火山研究の更なる発展のためには、基盤的観測網の整備や大学の観測施設への支援とともに火山観測データの流通を促進する必要がある。このため、教育研究と火山防災の双方に資することを目的として、今後、火山の観測データを気象庁及び防災科学技術研究所等のデータ流通設備を活用して、大学、研究機関及び気象庁等の間でリアルタイムに流通できるようなシステムを早急に検討する。検討に当たっては情報流通に伴う問題点等を検証して、情報の取り扱いルール等を取りまとめ、維持費用等の確保も考慮の上、現実に即した関係機関間でのデータの共有と教育研究、防災等への活用の方策を検討する。

4)火山観測研究人材の養成について

 火山観測研究は長期継続的な観測が基本となるため、長期的な視野に立った人材の養成が不可欠とされる分野である。しかしながら、ポストの減少やキャリアパスの不明確さ等により、近年火山研究者は減少の一途をたどりつつある。今後の観測研究体制を強化していくためにも、火山観測研究人材の養成は喫緊の課題である。

 このような状況を踏まえ、特に若手人材の養成に資するため、防災科学技術研究所等の研究機関の協力を得て、例えば国外機関と包括的な共同観測研究協定の締結により、観測研究の機会を確保するなど、若手研究者に国内外の活発な火山において観測研究を行う機会を提供する等の方策を検討する。

 また、火山観測研究に従事する研究者の拡大を期待するとともに、火山研究の画期的なレベル向上を図るため、科学技術ODA予算等の活用による国際科学技術協力の推進や、例えば国外の常時噴火火山に独自の国際的常設観測拠点を設置する等の方策を検討する。

 さらに、地域における火山観測研究の高度化に係る要望や観測研究人材のスキルアップ等の要望に対応するため、必要に応じ、大学は地方自治体、関係機関等からの人材、受託研究、寄附等を積極的に受け入れ、地域における火山観測研究人材の養成を図るための方策を検討する。

 

3.今後について

 今後の検討は火山噴火予知連絡会火山観測体制等に関する検討会において進められることとなるが、火山部会としてもその検討状況を注視するとともに、その結果を踏まえて、今後の大学等における火山観測研究や火山観測データ流通についての方針を決定することとする。

 

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

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