深海地球ドリリング計画第2次中間評価報告書について

平成25年10月
科学技術・学術審議会・海洋開発分科会

序文

 平成15年10月に統合国際深海掘削計画(IODP:Integrated Ocean Drilling Program)が、日米の主導により開始され、また平成17年7月には、IODPの主力掘削船となる地球深部探査船「ちきゅう」が完成し、以来、深海掘削の国際共同研究は加速化され、南海トラフと日本海溝の巨大地震発生帯掘削や沖縄トラフの海底熱水域、更には下北八戸沖における深部石炭層の掘削を成功させてきた。その成果は、海底下生命圏として特徴づけられるアーキアワールドの発見という新たな科学的展開のみならず、地震予測システム改善や金属鉱物資源探査といった社会貢献として実を結んできている。
 IODPは間もなく第1期の10年間が満了し、平成25年10月より新たなフェーズへと移行する。すでに新たな研究計画(New Science Plan)が策定されており、また共同研究の枠組み(Framework of International Ocean Discovery Program)も国際的に合意されている。更には、平成25年4月には「ちきゅう」による地球深部探査に特化した国際ワークショップ「CHIKYU+10」が日本で開催され、今後の「ちきゅう」による探査ミッションの在り方について国際的に科学的議論が行われた。
 日本は、「ちきゅう」や「高知コアセンター」というIODP国際共同研究にとって重要な基礎基盤を擁しており、新たな枠組みの中でも引き続き中心的な役割を果たしていくことが期待されている。
 本中間評価は、このような節目において実施され、本計画が我が国にとって科学的及び社会的に意義が高いものであり、本計画に関する取組は、科学的、社会的ニーズなどを踏まえ、関係各機関により適切に行なわれてきたと認められた。一方、いくつかの課題も指摘された。特に、研究体制の整備及び人材育成については、老朽化に備えた計画的な機材更新や若手研究者の新規参入促進などの課題があり、引き続き改善に向けて努力が必要であるという議論が行なわれた。
 今後は、本計画の成果が最大限に引き出され、社会に大きく貢献していくために、関係者が更に協力し、本報告書の評価結果に適切に配慮した計画推進により一層取り組むことが必要である。本計画は多くの省庁、大学・試験研究機関、参加各国との協力のもとに進められることが不可欠であることから、関係行政機関などにおいても、海洋科学技術及び地球科学技術を総合的に推進するために必要な措置が講じられることを改めて要請したい。
 また、本計画の推進により、関連分野の科学技術にも飛躍的発展をもたらすとともに、次世代の研究者及び技術者に新たな活躍の場を提供していくことを期待したい。

平成25年9月
科学技術・学術審議会海洋開発分科会
深海掘削委員会 主査
斎藤 靖二

目次

2.評価の実施体制と方針
2.1 評価の実施体制
2.2 評価の観点
2.3 評価結果などの扱い
3.深海掘削の経緯
3.1 深海掘削の歩み
3.2 統合国際深海掘削計画(IODP)
4.航空・電子等技術審議会による事前評価について
4.1 航空・電子等技術審議会による評価の内容
4.2 航空・電子等技術審議会評価についての確認
5.科学技術・学術審議会による前回中間評価について
5.1 深海地球ドリリング計画に対する評価
5.1.1 地球深部探査船に関する取組について
5.1.2 IODPの構造と我が国の取組について
5.1.3 人材の育成について
5.1.4 国民への説明について
5.2 総合評価
5.3 科学技術・学術審議会による前回中間評価についての確認
6.前回中間評価後の深海地球ドリリング計画に対する評価
6.1 深海地球ドリリング計画に対する評価
6.1.1 IODPの構造と我が国の取組について
(1)IODPの意義
(2)IODP主導国としての我が国の取組
(3)国内におけるIODP関連研究の推進体制
6.1.2 地球深部探査船「ちきゅう」に関する取組について
(1)「ちきゅう」の性能と研究者・運航者などの技術提案の反映状況
(2)「ちきゅう」及び関連施設の運用環境
6.1.3 人材の育成について
(1)研究者の育成
(2)技術者の育成
(3)計画推進実務者の育成
6.1.4 国民への情報発信及び交流について
6.2 総合評価
(参考資料)
参考資料1-1 科学技術・学術審議会海洋開発分科会名簿
参考資料1-2 海洋開発分科会深海掘削委員会名簿
参考資料1-3 深海地球ドリリング計画中間評価について
参考資料1-4 委員会開催経緯
参考資料2 深海地球ドリリング計画に関する我が国の取組
参考資料3 IODP関連略語集

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研究開発局海洋地球課