海洋開発分科会(第70回) 議事録

1.日時

令和5年8月29日(火曜日)15時00分~16時30分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 令和5年度の海洋開発分科会における評価の実施について
  2. 海洋開発分科会における委員会の設置について
  3. その他

4.出席者

委員

藤井輝夫分科会長、日野分科会長代理、榎本委員、川合委員、河野健委員、河野真理子委員、川辺委員、後藤委員、阪口委員、谷委員、中川委員、兵藤委員、廣川委員、藤井徹生委員、前川委員、松本委員、見延委員、吉田委員

文部科学省

千原研究開発局長、原大臣官房審議官、山之内海洋地球課長、伊藤海洋地球課課長補佐 ほか

5.議事録

【藤井(輝)分科会長】 それでは、これより科学技術・学術審議会の第70回の海洋開発分科会を開催いたします。本日はご多忙中にもかかわらず、委員の皆様全員がご出席と聞いております。誠にありがとうございます。
 まず初めに、今回谷伸委員に新たに加わっていただくことになりましたので、一言ご挨拶をお願いできればと思います。
【谷委員】 よろしくお願いいたします。
【藤井(輝)分科会長】 よろしくお願いいたします。
 では、続きまして、事務局から参加者定足数および配布資料の確認をお願いいたします。
【事務局】 本日は、全員にご出席いただいておりますので、科学技術・学術審議会令の第1条に定める、定足数の過半数を満たしておりますことをご報告いたします。
 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。こちらの議事次第にございます通り、資料1-1から資料2-2までと、参考資料1から参考資料の11までを配付しております。ご不明な点、不備等ございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。以上となります。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。
 それでは、早速議題に入りたいと思います。本日は、お手元の議事次第にもありますように、3つございます。議題の(1)と(2)は審議案件で、(3)は事務局からの報告案件です。
 まずは、議題(1)「令和5年度の海洋開発分科会における評価の実施について」につきまして、事務局から説明をお願いします。
【事務局】 事務局でございます。
 資料1-1をご覧いただければと思います。分科会では、毎年研究開発課題の評価を行っておりますけれども、今年度の実施方針についてまとめた資料がこちらです。これまでも同様の資料で、この分科会にお諮りしているものでして、基本的には内容はほぼ変わっておりませんので、簡単にご説明させていただきます。
 まず、1.の評価区分でございます。評価は事前評価・中間評価・事後評価の3つです。このうち、この資料に記載してある課題を対象とするということで定めております。
2.が評価の対象課題でございます。今年は、(1)の事前評価と(2)の中間評価につきまして、今年度は該当がございません。(3)の事後評価は、今年度は、海洋情報把握技術開発事業というものが該当しております。こちらは、評価をした後に皆様にお諮りするということになってございます。
 次に3.の評価方法でございます。こちらの記載の観点から評価をいただくということにしておりまして、後ろに別添といたしまして、事前・中間・事後評価の様式がございます。こちらも例年と変わらず、いつもの様式でございます。こちらに詳細な観点の方も記載しておりますので、これを踏まえて評価を実施していただけたらという風に思っております。
 最後に4.の留意事項でございます。こちらの利益相反等々にあたる場合については、評価に加わらないものとすると書いております。こちら全ていつも通りですので、非常に簡単ではございますが、評価の実施方法についてご説明させていただきました。今年度の事後評価につきまして、準備してございますので、評価がまとまりましたら、今年度中に今後の分科会において、ご審議いただければと思います。事務局からは以上となります。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。
 評価のやり方についてこれでよろしいか、という審議でございます。ただいまの説明について、ご意見、ご質問等ありましたらお願いいたします。資料1-2にあります通り、海洋情報把握技術開発にかかる3つの課題の事後評価の方法についてお諮りするものです。
 分科会として決定させていただければと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、このかたちで事後評価を進めさせていただきます。どうもありがとうございました。
 続きまして、2番目の議題に入りたいと思います。議題(2)「海洋開発分科会における委員会の設置について」です。
この設置する委員会についてご審議をいただきます。まずは事務局から説明をお願いいたします。
【事務局】 事務局でございます。
 まずは、資料2-1をご覧いただければと思います。海洋開発分科会運営規則に基づきまして、海洋開発分科会に深海探査システム委員会調査事項として、深海探査システムの在り方や推進方策について調査を行うということで、こちらを設置させていただきたく、ご審議いただければと思います。
 資料2-2に設置趣旨をまとめております。現状と課題と委員会の設置についての主な検討事項ということで、3ページをご覧いただければと思うのですが、図と共に分かりやすくまとめておりますので、こちらを用いまして、ご説明させていただければと思います。
 昨年8月の海洋開発分科会において取りまとめられた提言におきまして、広く且つ深い海洋を包括的に理解するためには、海洋調査データを格段に増やす必要があります。そのためのフロートですとか、海底設置型観測機器、係留系探査機等を用いた海洋調査観測の拡充を図るとともに、技術の改良・高度化を進めることの重要性をご指摘いただいたところでございます。
 下の絵に書いてございますけれども、海洋を調査するには様々な手法があるのですが、この赤枠で囲っております、深海探査において、喫緊の課題があるということで、今回はこのHOV、ROV、AUVにフォーカスをした深海探査のシステムや、観測の方策というものをご審議いただきたいという風に考えているところでございます。
 まず一つ目の理由といたしまして、日本は深度別のEEZ体積で、5,000m以深は世界一ということになってございます。そのため、我が国の様々な課題といたしまして、例えば海域地震ですとか、また安全保障の関係も深海域が大きく関与しているという現状がございます。
 二つ目といたしまして、深海探査に使われるAUVやROVの状況でございますけれども、近年海外では、アメリカや中国の状況にございますとおり、AUVやROVの技術が大幅に進展しておりまして、AUVは6,000m級もございますし、1万m級のHOVというものも開発をされているところでございます。一方日本では、AUVは4,000m級、ROVは4,500m級ということになってございまして、太平洋域を観測できる探査機や、深海を観測できる探査機を見ましても、他の海域に比べて、探査能力が弱い状況にあるということになってございます。
 また3つ目といたしまして、HOVである「しんかい6500」は、我が国が所有する6,000m以深の調査作業が可能な唯一の探査機であるという現状であり、完成から30年以上が経過しておりまして、老朽化により、近い将来使用できなくなるという懸念もございます。
 以上3点を踏まえ、我が国の深海域における調査・作業能力を維持・強化するためにも、AUV、ROV、HOVの研究開発および整備に早急に取り組む必要があるという風に考えております。この深海探査システムの在り方について検討を行うため、分科会の下に委員会を設置することをご審議いただきたいと考えているところでございます。
 次のページは、今後の流れということですけども、本日の分科会で委員会の設置を、設置しても良いという風にご審議いただきましたら、下の委員会の方で、9月から12月にかけて審議を行い、中間取りまとめを年内目処に行いまして、それを分科会の先生方にもう一度報告、ご審議いただき、そのご意見を踏まえた審議をして、報告書の取りまとめを年度内に行うということで、スケジュールを検討しているところでございます。事務局からのご説明は以上となります。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。
 ただいまのご説明につきまして、ご質問等ございますでしょうか。
【谷委員】 質問よろしいでしょうか。
【藤井(輝)分科会長】 谷委員、お願いします。
【谷委員】 今ご説明いただいた資料の中で、各国のHOV、ROV、何がある、どこの国というものが書いてあり、アメリカのAUVとHOVのところに、米国企業製造と書いてありますけど、他のものには、誰が製造と書いていないのですか。これは何か意味あるのでしょうか。
【事務局】 事務局でございます。
 この右下の注釈に、小さな字で書いてあるのですけれども、基本的には、各国の大学や研究機関が所有するROVやHOVを対象にしてはいますが、非常に有名ですとか、もう販売しているというものにつきましては、米国企業製造というかたちで、こちらにも記載させていただいているというところでございます。オープンソースのみに基づいて情報収集しておりますので、全てを網羅できてはいないのかなと感じているところでございます。
【谷委員】 ご主旨理解いたしました。ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】 それでは、廣川委員お願いします。
【廣川委員】 廣川です。この委員会の趣旨は、一つはAUV、ROV、HOVによる深海探査能力を整理すると理解しています。一方で、国産なのか、海外製なのか、これもご承知とは思いますが、6,000mのAUVを第2期のSIPで買われています。これはアメリカ製であり、ついこの間納入されたというようなことも聞いております。ですから、探査能力としては、使用しているAUVはアメリカ製でありますけど、それは持っている。一方で、国産で開発する必要性を強調しないと、この整理にならないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
【藤井(輝)分科会長】 いかがでしょうか。SIPは「REMUS6000」ですよね。
【事務局】 はい、おっしゃるとおりでございます。
 SIPで購入しているのは、こちらに書いております、「REMUS6000」でございますけれども、SIPではアメリカの6,000m級AUVを購入したところですが、物は持っているのですけれども、廣川委員のおっしゃるとおり、日本としてそれを開発する能力を持っているというところも重要だという風に感じております。こちらはまた肉付けをさせていただきたいという風に思います。
【廣川委員】 ぜひ、その辺もちゃんと整理された方が、より明確になるのではないかと思います。
 「しんかい6500」の代替に関しても、国産で、という趣旨だと理解しています。もちろん、海外にはこれより深い潜水艇もあると思うのですけど、それを買うのではなくて、やっぱり国産で、という趣旨で、この整理をされるのではないかと思いますので、その点をちゃんと明記されたらと思います。以上です。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。
【事務局】 ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】 続きまして、藤井(徹)委員、お願いします。
【藤井(徹)委員】 ありがとうございます。水産研究・教育機構の藤井でございます。
 この委員会の設置そのものについて異論はないのですけれど、一つ確認しておきたいのは、総合海洋政策本部ですね。そちらの方で、AUVの戦略プロジェクトチームを持って議論もされていると思うのですけど、そことの仕分けであったり、連携というのですかね。関係性はどういう風なことを想定されているかというのを教えていただきたいと思います。
【事務局】 ありがとうございます。
 おっしゃるとおりでして、内閣府の方で、AUV戦略プロジェクトチームが動いておりますことを我々も承知しております。委員会の方では、深海の探査能力として求められるものは何か、今後どういったものを開発していくのか、というところにフォーカスをして、ご審議いただいた上で、AUV戦略PTにも、国産で深海に特化したようなかたちだとか、こういったところが重要ということをフィードバックしつつ、今後連携を相談させていただきたいという風に考えているところでございます。内閣府の方では、特に深海に限ったようなかたちではなく、審議が進んでいるものと承知しております。
【藤井(徹)委員】 分かりました。ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】 榎本委員、お願いします。
【榎本委員】 榎本です。
 先ほども指摘されていましたけれども、「しんかい6500」が建造30年を経過し、ということが理由として書かれているのですけれども、資料の2-2の本文の文章の方には、30年というものに加え、さらにメーカーの撤退により部品調達が困難ということで、メーカーがなくなってしまうということも書かれておりまして、国産で必要性が出た時に、どうやって生産できるのか、というところも、見通しとか、あるいは推奨、応援、そういったところがあるのかなというのを、この文章の方で、2ページのところに、5行目くらいにありますけれども、メーカーの撤退、ここら辺は大丈夫なのかなと、ちょっと気になったところでした。以上です。
【藤井(輝)分科会長】 はい、ありがとうございます。
 建造能力はむしろ技術的により新しくなっていきますので、どのようにUp-to-dateな建造能力を維持するか、どのようにCutting-edgeについていくかということは、重要なポイントではないかと思います。ついていくというよりは、本当はリードしたいところですが。この点については事務局からは何かございますか。
【事務局】 ありがとうございます。
 おっしゃるとおりでして、部品をそのまま旧来のものを使うというのは、調達が困難になってきているという現状もございます。部品は、例えば代替して使えるのかですとか、そういったような視点からの議論や、分科会長にも仰っていただいたような、どういう風にアップデートをして技術を維持していくかというところの観点も重要と考えております。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。前川委員、お願いします。
【前川委員】 笹川平和財団の前川でございます。ご説明ありがとうございました。
 この委員会設置について、特に異論はございません。一点質問です。資料の中で、我が国のEEZへの言及がございましたけれども、この委員会では、公海域における海洋科学調査の可能性についても検討をするのでしょうか。よろしくお願いいたします。
【事務局】 ありがとうございます。
 我が国の周りに深海域が多いという特徴をこちらでは強調したのですけれども、特に公海域の観測を妨げたり、排除したりというものではないかなと思います。
【藤井(輝)分科会長】 EEZ域内に深いところが多いことが日本のEEZの特徴でもありますので、とりわけ、深海域の調査観測技術を自前で持っておくことが重要だろうという趣旨かと思います。その他、ございますでしょうか。阪口委員、お願いします。
【阪口委員】 笹川平和財団の阪口です。
 委員会の設置は皆さん異論がないと、割とさらっとおっしゃいますが、私にはちょっと引っかかるところがあって、この委員会を作って議論したところで、この委員会の結果は、藤井(輝)分科会長にお渡しするということが目的なのか、どこにその出口があるのかという話は、全然説明がなく、その次のステップがどういうところに狙いがあるのかということの説明も今のところなかったと思うのですよね。我が国の深海域における云々という、これに関しては、もう20年近く有人船が必要か、無人船が必要かという議論が、色々な場でなされてきました。「深海の研究の意義は何だ?」という話も、当然深海の研究者は必要だと言うし、いや、そんな深いところには何も無いから要らないという意見や、資源とか、そういう観点からいくと、8,000mくらいで十分だという議論もあり、それぞれの目的に対して、それぞれの見解があり過ぎてまとまらず、そういう焦点の定まらない議論が、過去20年間ずっとなされた結果、沢山の重要なことのアップデートが遅れてしまいました。その結果、先ほど榎本委員と藤井(徹)委員がおっしゃったとおり、メーカーの技術がなくなっちゃったので、お金をどれだけ積んでも、今できませんという答えが返ってきちゃうという、今ここ4、5年の証拠付きの事実ですよね。
 今回、この委員会で議論されることが、着地点がどこで、その次どこに持っていくのか、ということの説明がないと、話し合うのは良いですねって、それは話し合わないよりは、話し合う方がよっぽど良いのですが、同じような議論が、色々なところでされているのにもかかわらず、全く前に進んでいないのはなぜか、ということを踏まえて立ち止まるべきです。なので、この委員会の本来の目的、何度も繰り返しますように、どこに着地点があって、それを次どこに持っていって、何をどうするのかということを明確に示していただくというか、それを事務局に押し付けるのも何かと思いますけども、この場でこれだけの識者が集まっているのだったら、そこはちゃんとやっぱり考えるべきではないでしょうか、というのが、私の意見でございます。以上です。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。事務局からご発言ございますか。
【山之内海洋地球課長】 阪口委員がおっしゃることは、本当にごもっともだと思います。
先ほど、ご説明が足りなかったかもしれないのですが、着地点といたしましては、深海の重要性、それを踏まえて、日本としてどうやっていくのか、それをまず決めていただくと。それに向かって、結局お金が必要になりますので、再来年度の予算要求に間に合うように提言というかたちになるのかなと思っております。いかがでしょうか。
【藤井(輝)分科会長】 来年度に予算要求して、再来年度予算ということでしょうか。
【山之内海洋地球課長】 そうです。そのために、今年度中にひとまずまとめていただいて、来年度行う概算要求に間に合わせるというようなイメージでございます。
【藤井(輝)分科会長】 阪口委員よろしいでしょうか。
 一言だけ付け加えさせていただくと、阪口委員がおっしゃるように、20年くらいずっとこの議論をしてきたにもかかわらず、具体のアクションになかなか繋がらない中で、グローバルな状況を見ると、新しい技術が続々と出てきており、特に深い海域については、新たな調査が次々に行われているという状況になっているというのが現状だと思います。
 その1つのドライビングフォースになっているのは、もちろん一番深いところは、本来は国がやるべきなのですが、かなりの部分が民間資金の導入が活発に行われるようになったことによると思います。それは、所謂、冒険家に対してのフィランソロピーが大きなお金を出してやっていくということもありますし、ナショナルジオグラフィックなどのノンプロフィットのファウンデーションがドライブするということもあります。また、特に米国を中心に、テック系の大企業の起業家が、次々と、海洋に関わるインスティテュートなどを自らの資金で作っています。このような現状における一つの議論の取っ掛かりとしては、概算要求をして、国に予算立てをしてもらうというのももちろんですが、科学技術のコンテキストでの深海の探査ということを考えた時に、もう少し民間の資金やアクティビティをどう活用していくか、その部分をどう浮揚していくかということについては、そろそろ真剣に考えなければいけない時期に来ているのだろうと思います。
 そのために、深海の探査で、一体どういうことをやっているのかがちゃんと分かるような探査システムを作らなければいけないと考えています。これは私自身が20年くらい言い続けていることです。あまり分科会長の立場で意見を述べるべきではないと思いますが、この委員会で議論していただければと考えています。
 では、中川委員お願いいたします。
【中川委員】 今、藤井(輝)分科会長がおっしゃったように、民間企業の立場、私は日立製作所に所属しておりますので、申し上げますと、アカデミアとしての学術探査効果というのが、目的の第一に置かれるというのは、もちろんそれはアグリーですけど、そのために予算を取るというだけでは、かなり今厳しいのではないかと思います。
 理由は、やはり色々な意味で、経済安全保障ですとか、EEZの周りは色々な脅威もありますし、逆に資源はどうかというところはあると思うのですが、話題性みたいなところは非常にあるのかなと。所謂、工学的な、技術的な波及効果という意味でいうと、リモート探査でありますとか、ほとんどこういったものは無人になっていくと思いますので、例えば、宇宙探査にも使えるような技術というものが、こういう身近なところで実験ができますと。実績が、日本は積みやすい環境にありますといったようなところで、所謂、経済波及効果とまでは言いませんが、産業的な波及効果というところも可能性がどういうところに展開できるかを、この委員会でご議論いただき、結果的には予算をとって、その結果としてどれぐらい経済効果があるかみたいなところまで調査いただけると、かなり再来年の計画に向けては、ポテンシャルを示すという意味で効果があるのではないかなと思います。
 民間の立場からすると、やはり宇宙と深海、あるいは極地というようなところは、どうしても、こういうリモート探査技術ですとか、リモートコントロールの技術、それが今だいぶできるようになってきているという中で、日本としてのメリットが出しやすい分野なのかなというところで、この目的のところに書いてあると思うのですけど、主な検討事項に、少し経済波及効果ですとか、他分野への技術展開の可能性ですとか、そういうところも入れていただくと非常にありがたいかなと思います。以上です。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。
 経済波及効果を十分に考えて、宇宙は既に民間企業が打ち上げをし始めているわけですので、その意味でも必要ですね。
【谷委員】 すみません、谷です。
【藤井(輝)分科会長】 はい、谷委員、どうぞ。
【谷委員】 今、藤井(輝)分科会長から、民間資金がこの分野にも投入されるようになってきたというお話でございました。
 実際、アメリカの深いところに潜っているのは、民間の大金持ちがやっているのですが、日本に同様の大金持ちがいるか。いるのでしょうけど、なかなか深海探査にお金を出そうとか、自らが船に乗り込もうという風にいったことはないような気もします。
 ただ、私が気にしておりますのは、日本には確かに深いところがあります。東京からほんの200km行ったところに水深9,000mのところがあり、国内に水深9,800m近いところがあり、そこは我が国のEEZであるのですが、そこに行ってどうなっているかを調べる道具を日本は持っていないというのは、これは大変に問題だと思うのです。
 これは、科学の問題ではなくて、敷地を持っている日本という、国家主権を持っている国の責務みたいなもので、そういった深いところの現状をきちんとマップにするということができて、実際に定期的に海底がどうなっているかというのを見てあげることができるようにしておかないといけないと思っております。
 経済効果というのを前提にしたら、止まってしまう可能性があるのですけども、そうではない。経済安全保障というお話を中川委員が仰いましたけれども、安全保障だと思う。あるいはその前の、国家が持っている財産の管理である。これは安全保障以前の話ですが。そのために、その能力を我が国が持っている必要がある、よその国は何千mに行けています、というのは関係なしで。今のところ、日本で一番深いと思っているのは、小笠原海溝の北東側に9,780mのところがあります。もっと深いところがあるかもしれませんけれども、そこが、自分で測れるようになっていないといけないなという風に私は思っています。ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。その通りです。
 まさにいま、谷委員がおっしゃった領域は、本来、やはり国がやるべきものであろうと思います。いずれにしましても、この委員会で、このような議論をしっかりやっていただくということになるのだろうと思います。この委員会設置の提案についてはよろしいでしょうか。出口イメージも明確にしながらというのも重要な観点だったと思いますので、その辺りは委員会を動かす中で、ぜひ留意いただきたいと思います。よろしければ、当分科会としては、この委員会を設置するということで、決定させていただければと思います。
 委員会にご参画いただく委員は、分科会長一任とさせていただき、私が事務局とも相談しながら、決定させていただきたいと考えております。いかがでしょうか。
 (「異議なし」の声あり)
 では、そのかたちで進めさせていただければと思います。
 それでは、最後の3番目の議題「その他」です。事務局から報告事項がいくつかございます。
【事務局】 ありがとうございます。事務局でございます。
 それでは、参考資料の4から、昨今の海洋科学技術に関する動きについて、ご説明させていただければと思います。まず参考資料4ですけれども、第4期海洋基本計画が令和5年の4月28日に閣議決定されました。こちらの黄色いハイライト部分が、文部科学省の関係部分という風になってございます。
 最初のところは、こちら海洋基本計画が第4期になりましたということで、これまでの海洋基本計画は、総合的な海洋の安全保障というものが柱になっており、それに加えて、持続可能な海洋の構築というものも柱に掲げて、こちらを進めようと定められたところでございます。
 第1部の海洋政策のあり方で、文科省が関係しますところは、気候変動や自然災害への対応、海洋人材の育成確保が重要という風にされているところでございます。
 次のページが、総合的な海洋の安全保障ということで、海洋情報収集体制の強化ですとか、海域で発生する自然災害の防災・減災、海洋科学技術の振興について掲げられているところでございます。持続可能な海洋の構築の部分では、北極・南極を含めた全球観測の実施ですとか、海洋生態系の理解等に関する研究の推進・強化というものが掲げられているところでございます。
 これらの2つの柱を踏まえまして、着実に推進すべき7つの主要施策ということで、1から7まで定められており、文部科学省が関係するのは、特に(2)、(3)、(4)、(6)ということで、海洋調査・観測体制の強化ですとか、情報インフラおよびデータ解析技術の整備、北極政策の推進、海洋人材の育成というものが掲げられているところでございます。
続きまして、参考資料5でございますけれども、今年の6月9日に、統合イノベーション戦略2023というものが閣議決定されました。これは、その中で海洋科学技術関係のところを抜粋したものになっております。
 第1章が総論になっていて、科学技術・イノベーション政策の3つの基軸ということで、「これら分野はもとより~」の段落ですけれども、海洋も重要分野という風に掲げられているところでございます。(1)マル1、戦略的な推進のところにも「海洋」ということで、海洋の章が設けられておりまして、海洋基本計画に基づいて、以下の取り組みを強力に推進するということで、AUVの重要技術の育成ですとか、大深度AUVの開発。次のページになっておりますけれども、上から4行目でございますが、海域で発生する自然災害の防災・減災に資する取組として、ゆっくりすべりやプレート間固着状況把握のための海底地殻変動観測。その下のポツですけれども、海洋環境の保全・再生・維持に資する取組として、というところで、気候変動予測の高度化に必要な北極・南極を含めた全球観測の実施、海洋分野の市民参加型研究による総合知の創出、「海洋のデジタルツイン」の構築、海洋生態系の理解等に資する研究の推進、そういったようなことが掲げられているところでございます。この他にも、Kプロですとか、SIPというものも同様に取り上げられているところです。第2章からは、ちょっと細かくなりますので、ご説明は割愛させていただければと思います。
 参考資料6に移らせていただければと思います。こちらは、6月16日に閣議決定をされた、経済財政運営と改革の基本方針、所謂、骨太の方針でございます。
 こちらにも、第2章の2.のところですけれども、北極を含む海洋分野の取組の強化を図るとされております。脚注の2文目でございますけれども、北極域研究船の着実な建造、海洋のデジタルツインの構築に向けた全球観測を推進するとされているところでございます。
 続きまして、参考資料7でございますけれども、同日に、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画というものも閣議決定されました。こちらも海洋部分を抜粋しておりますが、2.の「海洋」というところで、「また、~」以降でございますけれども、海洋デジタルツインの構築に向けた全球観測の実施や(海洋環境等の)シミュレーション技術の高度化等を行う。北極域研究船については、着実な建造を進めるとともに、就航後の国際連携観測に向けた検討を進めるという風にされているところでございます。以上が、閣議決定となっております。
 続きまして、参考資料8でございますけれども、先ほどのご議論の中でも話題に上りましたが、今の総合海洋政策本部のところで、AUV戦略プロジェクトチームというものを設置して、様々な議論が進められているところでございます。委員の構成メンバーは左のようになってございまして、スケジュールは今年の1月から3月まで議論がされ、中間取りまとめが4月にされました。次のページが、中間取りまとめでございますけれども、AUVの国産化・産業化に向けた戦略を策定するということで、戦略の方向性として、七つ掲げられておりまして、官民プラットフォーム形成ですとか、技術マップの作成というものもございますし、研究開発の推進というものも取り上げられているところでございます。近い将来のAUVの利用イメージなども検討されながら、AUV戦略の検討スケジュールということで、この4月に取りまとめられた中間取りまとめを踏まえ、その下に官民プラットフォーム設置という、緑色の枠があると思うのですけれども、そこで全体会議・作業部会ということで、様々な議論がされた上で、今年の秋ごろにはその提言を取りまとめて、またPTの方に提言されると聞いております。その後、PT報告書がAUV戦略の素案となって出てきて、本部決定をされるとお伺いしております。
 参考資料の9は、AUV官民プラットフォームの経過報告です。3ページ目は構成員ということで、共同議長の他にも、民間企業ですとか、関連団体、公的機関、地方公共団体と様々な方が、このAUV官民プラットフォームに入って議論をしているところでございます。
 次のページは、体制とスケジュールということで、全体会議の下に、技術部会と利用部会という二つの部会を設置しまして検討が進められているところでございます。これまでの全体会議、利用部会の結果というのが5ページ目にございまして、今後、AUVを国産化するにあたって、どういう風な技術が必要なのか、どういう風な利用が見込まれるのか、ということが様々議論されているところと聞いております。
 続きまして、参考資料の10でございます。こちらIOC議長の選出ということで、今年6月の第32回、IOCの総会におきまして、道田先生が日本人初のIOC議長に選出されました。IOCでの様々な活動に文部科学省としても関わっていきたいという風に考えております。
 続きまして、国際関係の最新動向ということで、二つ目はG7仙台科技大臣会合に係る動向をご報告させていただきます。今年の5月にG7仙台科技大臣会合が開催されまして、共同声明の海洋部分の要点を、この赤枠のところにまとめております。
 一つ目が、全球海洋観測と海洋デジタルツインの構築で、これを着実に連携しつつ進めるということとともに、二つ目として、北極・南極研究船を含む国際観測プラットフォームを通じた北極・南極観測の強化ということで、極域研究分野における国際協力を支援ということも掲げられているところでございます。
 最後に、参考資料の11でございます。市民参加による海洋総合知創出手法構築プロジェクトの公募について、昨年議論いただきました、8月の提言等も踏まえて、市民参加のプロジェクトが今年度から新しく始まっているところでございます。
 2つございまして、中核推進機関とエリア研究実施チームということで、中核推進機関の方は先に公募が始まっておりまして、7月21日に東京大学の大気海洋研究所が採択されるというところが決まっております。エリア研究実施チームの方は、今実際公募が締め切られて審査中というところですので、また進捗がございましたら、分科会の先生方にご報告させていただければと思います。事務局からは以上となります。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。
 ただいまの説明について、委員の皆様からご質問などございますか。藤井(徹)委員、お願いいたします。
【藤井(徹)委員】 水産研究・教育機構の藤井でございます。ご説明ありがとうございました。
 先ほど、AUVにつきまして、内閣府の海本部のAUV戦略との関係性についてご質問させていただいたのですけれど、今改めてAUV戦略の方のスケジュールと、今こちらで設置する委員会のスケジュールを合わせて見てみたのですけれど、深海について、どういう技術が必要か議論して提言していくにしても、今想定されているスケジュールだと間に合わないのではないかという風な気もするのですね。AUV戦略は、もう今年度中には戦略の素案まで、多分かなり早い段階でいきそうな気がするので、おそらくAUV戦略では、国産化・産業化に向けた戦略という前提で議論しているとは聞いていますけれど、それは、そこそこな深さのことで、深海については、お金と手間ばっかりかかるし、技術も追いつかないから、国産ではなくていいや、という話になってしてしまうと、ちょっと我々の議論が宙に浮いてしまいますので、そこのところ、しっかりとスケジュール感を合わせて、必要なところは提言していけるようなことを考えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。この点いかがでしょうか。
【事務局】 ありがとうございます。
 藤井(徹)委員がおっしゃるとおりです。ただ、秋頃に確かに官民プラットフォームから提言はあると聞いているのですけれども、それ以降のスケジュールは、内閣府と色々と相談をしながら、我々の議論が遅れていくことのないように、きちんと連携をするように努めてまいりたいと思います。ありがとうございます。
【藤井(徹)委員】 よろしくお願いします。
【藤井(輝)分科会長】 阪口委員、お願いします。
【阪口委員】 AUV戦略と、ここで考える深海探査システムは、関係ないということはあり得ないのですけども、ただ先ほど谷委員と藤井分科会長がおっしゃったように、要は深海を広く有する我が国が、深海のことを調べる道具立てがなっていないので、どうしましょうかということがメインであって、必ずしもAUVである必要性はなく、必ずしも国産でなければいけないという必要性もないわけで、被っている部分はもちろんたくさんあります。だから関係ないとは言いませんが、このAUV戦略というのは、国産のAUVを別に深海に限らず、しっかり持ちましょうということがメインなので、絶対的にこっちに最終的に吸収されなければならないということでもないと思うのですよね。だからこそ私は、この海洋開発分科会の中に置かれる委員会の位置づけというものを、もう少し明確にした方が良いのではないかということを先ほど提案させていただいたわけで、この海本部で求めているAUV戦略というものと、今海洋開発分科会の下に置かれる委員会で置かれる深海探査システムというのは、やっぱりちょっと目的が違うわけなので、そこは両方併存であり、且つゴールのタイミングが必ずしも一致しなくても私は良いと思っています。それよりは、むしろ置き去りにされてしまう深海探査というものを、我が国がどう捉えていくかということを、科学技術面からしっかりと打ち込み、例えば中国では、ごく最近コロナの間に、自然資源部の下に国家深海基地管理センターという立派なものが新たにできて、国家をあげて深海探査を行うということをスタートさせていますよね。そういうところから、大幅に我が国が遅れてしまっている現状をちゃんと見極めて、深海探査システムのあり方というものを、腰を据えて提言を作って、予算要求、それは文科省からの予算要求もあるし、藤井(徹)委員がおっしゃったように、民間からの力というものもフルに取り入れて、深海を多く有する我が国が縦横無尽に深海探査を行い、深海の状況をきちんと把握し、そこに何があり、何が進んでいるのかということをきちんと理解を進めるという、そこに基軸を置くのが私は良いのではないかと思っております。委員会の目指すものというものをボワッとせずに、きちんと明記した上で委員会を立てて進めていけば、藤井(徹)委員がおっしゃったご懸念というものも、少し解消されつつ進めていけるのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。いかがでしょうか。
【山之内海洋地球課長】 事務局でございます。
 阪口委員のおっしゃるとおりだと思います。主軸としては当然、AUVをどうこうするというよりも、まずは深海探査をどうしていくべきかというところがあって、その上で道具としてAUV、ROV、HOVというものがあると、そういう風に理解しております。そこのところは間違えがないように、委員会の方でも議論できればと思っています。ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。
 その中で必要なことがあれば、このAUV戦略にインプットしていくということでよいかと思います。あとは、やはりAUV戦略は、ある意味海本部ですので、安全保障領域も含めてということになります。そうなると、すぐに使えるもので何かを作るという話になりがちだと思うのですが、実をいうと、AUVを支える技術領域は非常に広い領域で、そこを本当はボトムから幅広くやっていかないと、新しいものは生まれてこないわけです。海の領域におけるツール開発についても、もっとイノベーティブなものが出てくる素地を作るべきだと思っております。それを議論するとすればこの海洋開発分科会で議論すべきと思います。特にAUVは、教育面でも非常に良い題材であり、技術的にも非常に幅広いものが必要とされますので、色々なイノベーティブなアイディアを出せる分野だという風に思います。それが、すぐヘビーデューティーに使えるとは限りませんが、本日も議論になりましたように、国産技術という観点で言うと、よりもっと幅広い部分をカバーするものとして、このAUV技術、あるいは深海、もっと広く言えば深海探査、そういうものを捉えて、人材育成も含めて、議論をしていくべきだろうと思います。人材育成は、この委員会の議論のスコープにも入っておりますので、その意味で少し幅広い技術領域を見ていくということ、さらに、そこを底上げしていくということも含めて議論いただくのがいいかと思いました。
 その他、ございますでしょうか。よろしければ、本日準備した議事は以上でございます。事務局から、これ以外に連絡事項等ございますでしょうか。
【事務局】 本日は長時間にわたり、ありがとうございました。
 議事録につきましては、事務局にて案を作成しまして、後日委員の皆様にメールにて確認していただきます。
次回以降の開催日程につきましては、事務局より後日改めてご連絡させていただきますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
【藤井(輝)分科会長】 ありがとうございます。
 それでは、先ほどの委員会の件は、これを設置して議論を進めてまいりたいと思います。
 では、第70回の海洋開発分科会は、これをもって終了したいと思います。本日はどうもありがとうございました。
 

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