海洋開発分科会(第68回) 議事録

1.日時

令和4年12月7日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 今後の海洋科学掘削の在り方について
  2. 今後の海洋科学掘削の在り方について
  3. 第11期海洋開発分科会の活動実績について
  4. その他

4.出席者

委員

藤井輝夫分科会長、小原分科会長代理、榎本委員、川合委員、河野委員、川辺委員、河村委員、窪川委員、阪口委員、田中委員、谷委員、中川委員、廣川委員、藤井徹生委員、前川委員、見延委員

文部科学省

千原研究開発局長、原大臣官房審議官、山之内海洋地球課長、戸谷深海地球探査企画官、吉野極域科学企画官、伊藤海洋地球課課長補佐、川﨑海洋地球課課長補佐、細野海洋地球課課長補佐 ほか

5.議事録

【藤井分科会長】  それでは、ただいまより科学技術・学術審議会、第68回海洋開発分科会を開催したいと思います。
 まずは皆さん、お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日は、文部科学省局長に来ていただいておりますので、事務局を代表いたしまして、千原研究開発局長より御挨拶をいただきたいと思います。
 千原局長、お願いいたします。
【千原局長】  恐れ入ります、ありがとうございます。研究開発局長、千原でございます。9月1日に着任いたしまして、今期の海洋開発分科会には初めて参加させていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 委員の先生方におかれましては、本日は大変お忙しい中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。会議の開催に当たりまして、一言、御挨拶をさせていただきます。
 海洋開発分科会は、先生方御案内のとおりでございますけれども、海洋科学技術に関する大規模事業の評価の実施ですとか、政策提言を取りまとめていただくなど、これまで非常に精力的に御議論をしていただいてきているところでございます。改めて御礼を申し上げます。
 文部科学省におきましては、科学技術・学術審議会 海洋開発分科会による評価や提言を基にしまして、時代の変化や社会ニーズ等を捉えつつ、各種政策を進めてまいりました。具体的には、北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)でございますとか、海洋生物ビッグデータ活用技術高度化事業の実施、あるいはJAMSTECにおきます深海探査をはじめとした基礎的・基盤的な研究開発などを実施しておりまして、今後とも着実に実施してまいりたいと思ってございます。
 また、次年度に向けて、8月に取りまとめをいただきました分科会の提言「今後の海洋科学技術の在り方について」を踏まえまして、海洋の市民参加型研究のプロジェクト実施に必要な経費を概算要求に新たに計上させていただくことができました。海洋立国である我が国の研究を進めるための新たな仕組みとなることを実現していきたいと考えてございます。
 このような中、世界に目を向けますと、現在、温室効果ガスの削減等に当たりまして、海洋分野への期待、関心がますます高まっていると認識しております。そのために、地球規模課題の解決に資する持続可能な海洋利用に向けた研究開発を着実に進めていく必要がございます。文部科学省といたしまして、関係省庁とも連携しながら、海洋政策の基礎・基盤となる海洋科学技術のさらなる発展に向けて鋭意取組を進めていきたいと考えてございますので、引き続き先生方の御指導を賜れればと思っております。
 本日も先生方の忌憚のない御議論をお願い申し上げまして、簡単でございますが御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【藤井分科会長】  千原局長、ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
【千原局長】  よろしくお願いいたします。
【藤井分科会長】  それでは、議事に入ってまいりたいと思いますが、まずは事務局より参加者及び定足数の確認、それから配付資料の御確認をお願いいたします。
【事務局】  それでは、事務局の川﨑より御説明させていただきます。
 本日は後藤委員より御欠席の御連絡をいただいております。また、河野真理子委員も少し遅れるという御連絡をいただいております。
 現在、17名中15名の委員に御出席いただいておりまして、科学技術・学術審議会令第8条に定める定足数の過半数を満たしておりますことを、まず御報告させていただきます。
 また、事務局としましては、今、御挨拶いたしました研究開発局長の千原、また少し遅れて参加しますが、大臣官房審議官の原、そして、海洋地球課から課長の山之内及び深海地球探査企画官の戸谷のほか、海洋地球課の関係者が出席しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、本日使う配付資料等の確認をさせていただきます。オンライン会議なので、画面に投影させていただきます。
 改めて、こちらが議事次第となっております。本日の議題は主に4件予定しておりまして、議題1、2、3、4、それに合わせる形で資料1-1、1-2から資料4まで用意させていただいております。その他、参考資料等も用意しております。
 オンライン会議ですので配付という形ではないですが、事前に先生方にはメールで資料をお送りしているとともに、既に文部科学省のホームページに掲載しておりますので、後ほど、チャットのほうにもURLを記載させていただきます。
 御不明な点、不備等ございましたら、事務局までお願いいたします。
 事務局からは以上となります。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 資料等は、デジタルで配付されていますのでよろしいかと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
 今、御説明がありましたように、4件の議事がございます。議題1と2は審議、意見交換になっております。3と4は報告でございます。
 まず、議題1ですけれども、これは本分科会の下に設置をいたしました海洋科学掘削委員会における検討結果についてです。中間報告は前回の分科会でしていただきましたが、最終検討結果を御報告いただいた上で審議を行いたいと考えております。
 それから、議題2のほうですが、こちらは今期設置した二つの調査委員会の議論を一旦、本日でまとめるということになります。次期、第12期以降の海洋開発分科会での議論の内容について意見交換ができればと考えております。
 では、まず、議題1からまいります。
 今後の海洋科学掘削の在り方についてということで、本日も川幡先生にお越しいただいていると思います。海洋科学掘削委員会の主査をお務めいただいております。まずは川幡主査より、この検討結果について御報告をいただきたいと思います。その上で議論をさせていただければと思います。
【川幡主査】  川幡と申します。よろしくお願いいたします。
 私のZoomなのですが、週末から私の顔のビデオが出なくなってしまっています。Zoomのソフトを入れ直すことも可能でしたが、本委員会は重要なので、もしつながらなくなると困りますので、申し訳ございませんが、今日はこのまま発表させていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 まずは、この委員会の設置などに関して、文科省のほうから二、三分でちょっと御説明いただければと思います。その後、私が本題をお話しして、文科省がまとめると、そんな感じで進められたらと思います。
 文科省、お願いします。
【戸谷深海地球探査企画官】  承知いたしました。
 深海地球探査企画官の戸谷でございます。川幡主査から海洋科学掘削委員会の取りまとめ案について御説明いただく前に、委員会立ち上げの経緯等について事務局から簡単に御説明いたします。
 我が国は、海底を掘削しコア試料の採取を行う科学掘削船と掘削船等によって採取されたコア試料を保管・管理するコアリポジトリー施設を国際コミュニティーに提供し、2003年に開始され2013年に新たなフェーズに移行した多国間の海洋科学掘削共同プログラムであるIODPを主導してまいりました。
 これまで海洋科学掘削では数々の科学的成果の創出、社会的課題への貢献、技術の確立に寄与してきましたが、目標に掲げていたものの未達成となった取組もございました。主要な科学掘削船として提供してきた地球深部探査船「ちきゅう」は、就航から17年が経過する中、そうした未達成の取組を含む実績を振り返りつつ、社会的ニーズを加味し、今後の海洋科学掘削の在り方を検討する必要があるとして、本分科会の下に海洋科学掘削委員会が設置されたところです。
 本年2月に設置が決定されてからの検討経緯につきましては、資料1-1の別紙1に記載がございます。通算6回開催し、委員も含め13名の方から海洋科学掘削とその周辺の地球惑星科学についてヒアリングし、調査・検討を進め、目次を含め14ページの提言案として取りまとめられました。
 委員構成につきましては、資料1-1の別紙2のとおりでございます。
 それでは、川幡主査、よろしくお願いいたします。
【川幡主査】  はい。私のほうから10分程度でお話しします。
 海洋科学掘削は、これまで地球惑星科学の発展に寄与してきました。今回、今後5年から10年を対象期間として、我が国における海洋科学掘削の在り方について検討を行い、提言をまとめましたので、その概要を御報告いたします。
 まず、「ちきゅう」を用いた海洋科学掘削の現状に関して。
 長期孔内観測装置の設置や東北地方太平洋沖地震の緊急掘削、海底下生命圏解明のための掘削などで様々な科学成果が「ちきゅう」により創出されました。防災・減災など社会的な課題に貢献する成果も出されてきました。
 技術の確立、人材の育成にも「ちきゅう」は大きく寄与しましたが、当初目標としていたマントル掘削や南海トラフ地震発生帯掘削の一部などは実現できず、プロジェクトの管理体制や技術開発に問題があったと考えています。
 一方、コアリポジトリーの施設に関しましては、半世紀にわたって採取したコアを高知コアセンターにて保管・管理し、新たな科学的知見の創出に貢献してきたと考えています。
 また、研究船「かいめい」は数十メートル程度の掘削も行える機器を搭載可能です。ヨーロッパの研究者との協力の下、日本海溝地震履歴の研究が進行していて、既に試料を採取済みで、今後重要な成果が見込まれています。
 地球惑星科学全体の中での海洋科学掘削の現状の位置づけを把握するため、海洋科学掘削に関わる国内外の周辺動向を調べました。特に、古環境・古気候研究、極限環境生命圏研究、火山・火成活動研究、地震研究、マントルダイナミクス研究の5分野及び海底観測技術の最近の動向についてヒアリングを行いました。
 マル1 として、海洋科学掘削による地球惑星科学の進展ということに関しましては、重要な点を二つ申し上げます。
 自然を深く理解することや社会に直接関わる地球の諸問題の本質を理解することを目指す地球惑星科学では、サンプリング、観測データ、シミュレーション、室内実験、理論など、様々な研究手法が採用されてきました。研究の発展には分野ごとに特有の仕様、手法が要求され、古代地球の火山活動やプレート沈み込みの地球科学的証拠の取得などについては、掘削によるサンプリングでしかデータの取得、解析などができない重要な研究分野があることが確認されました。
 国際深海科学掘削計画(IODP)は、日米欧主導の下、世界の22か国が参画する大規模な国際共同プログラムですが、IODPに関しましては2024年9月で終了という点がポイントです。10月以降の取組は不透明な状況で、各国が現在検討しています。
 これらを踏まえて、今後の我が国の海洋科学掘削の在り方を議論しました。
 (1)社会的な課題への対応という観点からは、今後5~10年において高い成果が見込まれ、その期間内での完遂が見込まれ、かつ掘削が不可欠な取組を優先順位をつけて実施することを束縛条件として委員会は今後の科学掘削について議論しました。
 その結果、第1番目のテーマは、防災・減災をはじめとする安全・安心な社会の構築に関する取組です。
 活動型大陸縁辺部に位置し、地震とか火山が多い我が国において、安全・安心な社会を構築するために高度な防災・減災対策が必須であり、この防災・減災に資する海洋由来の災害の理解に関する掘削を優先して実施すべきと考えます。
 2番目と3番目が気候変動の解決に資する取組と海底下生命圏の理解に資する取組となります。これはマル1 の取組を優先した上で、「ちきゅう」の船齢、世界的な情勢、予算状況などを総合的に勘案し、社会ニーズがあり、実現性が高い掘削から実現することが推奨されます。
 この中で、海底下生命に関する取組については、生命の生存限界の解明により地球外生命の探査の研究にも貢献すると考えられます。さらに、これは太陽系の探査研究とともに、次世代の若者に対して科学で夢を与える研究と我々は位置づけています。
 海洋科学掘削を進める上で重要な事項として、プロジェクト管理体制の改善は必須です。意思決定プロセス、決定者の明確化、現場の声を取り入れる体制づくりなど、一部のプロジェクトに対して、全ての委員より厳しい指摘が相次ぎました。これはプロジェクトマネジメントとオペレーションマネジメントに関連します。
 運用主体であるJAMSTECは、本議論を踏まえ、プロジェクト管理体制の抜本的な改善を行い、科学コミュニティーや社会との広い共感を得るべく、不断の努力とそれに応える運用実現を期待します。
 国際協調の戦略的検討に関しましては、見通しが不透明であると述べましたが、これまで培ってきたものを土台としつつ、協調の在り方を検討することとしています。
 現在、日欧の掘削科学コミュニティーを含めた関係者で共同プログラムの検討が開始されており、米国との協調も含めて多様な可能性を検討していますが、今後、日本が提供できるもの、享受できるもの、いろいろ両方を精査して、国際協調の在り方を検討していくことが戦略的に重要と考えます。
 技術の継承・人材の育成に関しましては、技術的な観点で見ると、操船技術や掘削技術など、「ちきゅう」で培われた掘削関連技術は確実に維持・継承されるべきと考えます。これらを他分野へ適用することにより、さらなる発展が期待されます。長期的な観点に立った人材育成も重要であります。
 これらは、日本が海洋科学掘削を通じて世界をリードしつつ、社会の問題に資する科学技術を発展させることにつながると考えます。
 最後になりますが、海洋開発分科会第67回の対応について御説明いたします。
 数名の先生から御意見、御質問をいただきました。これに対し真摯に対処したつもりです。
 まず、見延先生から御指摘の「実際の投入額」を報告書に具体的に記入しました。
 見延先生と廣川先生御指摘のマントル掘削については、「マントル掘削をめぐる課題」として、当初の計画、途中経過、現在の検討状況について詳述しました。
 谷先生から御指摘がありました高知コアセンターについては、国際貢献も含め、将来の活躍も継続される期待があるとの記述となっています。
 谷先生と廣川先生からのコメントにあった資源関係の掘削については、一部削除及びトーンダウンとしました。
 藤井先生御指摘の長期孔内観測についても、実施できた事項、今後期待されることについて追記しました。さらに、定点保持技術のクオリティーについても付記しました。
 川辺先生より御質問いただきましたオペレーションマネジメント体制の問題点についても詳述しました。JAMSTECの第三者有識者委員会、通称南海トラフ掘削助言委員会、これは2019年に開催されています。そして助言を受けながら、現時点でもJAMSTECは具体的な改善策の策定には至っていないということを記すとともに、「海洋科学掘削を進める上で必要な事項」という章において、具体的な改善策の策定を早急に進めるべきとの考えを記述しました。ここの事項は、第67回分科会の阪口先生のコメントにも対応しています。
 最後になりますが、今後も日本が海洋立国及び技術立国として、また災害大国として防災取組の観点から、海洋科学掘削を通じて世界をリードし、社会課題の解決に資する科学技術を発展させていくことが期待されます。このためには、掘削科学コミュニティー、JAMSTEC、関係省庁が連携して取り組むことが不可欠であることを最後に強調したいと思います。よろしくお願いいたします。
 では、文科省、最後にまとめていただければと思います。
【戸谷深海地球探査企画官】  深海地球探査企画官の戸谷でございます。
 若干補足いたします。
 我が国は、地球深部探査船「ちきゅう」を保有しておりますが、「ちきゅう」の活用ありきとならないよう、海洋科学掘削でこそできることは何か、そのためには「ちきゅう」に限らず「かいめい」や他国の掘削船、コア試料等々を活用し、今後5~10年で海洋科学掘削で何をやるべきかという構成になっております。
 他方、巨額の予算を投じた「ちきゅう」について、何ができ、何ができなかったかをしっかりレビューすべきとの分科会、委員会双方の御意見から、過去の実績や課題については「ちきゅう」にやや重点を置いた記載となっております。
 また、「ちきゅう」と「かいめい」等その他の研究資源では機能が大きく異なりますので、今後の取組についても、そこはある程度分けて記載しているところです。
 今回、委員会の総意として、今後の海洋科学掘削は、安全・安心な社会の構築のために防災・減災に資する取組を優先する。そのためにはプロジェクト管理体制の改善や国際協調の戦略的検討などを行う必要があると整理していただけたと認識しております。
 事務局からは以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、ここからは自由に意見交換をしたいと思います。まずはどなたからでも結構ですので、御意見いただければと思います。いかがでしょうか。
 それでは、見延先生、お願いいたします。
【見延委員】  北海道大学の見延です。
 川幡先生、難しいまとめをしていただき、どうもありがとうございました。いろいろな指摘にも応えていただき、深く感謝いたします。
 さて、この今出ております資料1-2で、今後5~10年において掘削が不可欠という課題で、2番目に気候変動問題が取り上げられておりまして、これは本文を読みますと、百年から数百年の時間スケールをターゲットとすると書かれていますが、これは、実現は非常に難しいのではないかと気候科学の専門家としては考えます。
 どういうことかといいますと、そのような百年から数百年の気候復元をするには、非常に堆積速度が速いことと、また、生物擾乱がないこと、つまり海底付近が無酸素になっていて、そこに生物が存在しないということが必要です。この二つの条件を満たす場所というのは世界的にも非常に少なく、なかなかそこで掘削を実際に行うのは難しいのではないかというのが一つ。
 もう一つは、これまでの会で、「ちきゅう」のそういった実績は、この提言資料のまとめにも見られないので、そういう実績のないところを、今後難しい掘削を5年、10年でやるのは実現可能性は低いのではないかと考えています。
 強い意見ではありませんけど、御考慮いただけると幸いです。
 以上です。
【川幡主査】  お答えしてもよろしいですか、背景とか。
【藤井分科会長】  お願いいたします。
【川幡主査】  川幡です。
 見延先生の今の御指摘は、非常に合理的なお考えと思います。まず、私も基本的にはそう思っています。私も古気候・古環境も研究しているからよく分かっています。
 そこで、まず現状というか、これまでの活動報告というところでは、「ちきゅう」に関しては、地震の部分と生命の部分しか書いてございません。気候変動についてはやっていませんので書いてきませんでした。
 ただし、この報告書は、「ちきゅう」というのを使って、実は「ちきゅう」自体が世界のIODP、掘削科学の一つのコマといいますか、それをきっかけに日本人もほかの船に乗れるというのがありまして、特にヨーロッパがやっているIODPの中の特別のプログラムで、サンゴとか、ロシアのウクライナ侵攻で駄目になってしまいましたが、北極で掘削を行うというプロジェクトなどがあります。
 それで、気候変動に関しましては、「ちきゅう」で直接というのも、高知沖辺りは結構堆積速度が速いところがありますので、できたらやればいいと思いますが、そこをやるか、もう一つは、これを利用して、北極とか別の海域でチャンスが得られればということがまず第1番にあります。
 第2番といたしましては、まとめのところで、防災・減災と書きましたが、地震・火山、気候に関しては気候災害という感じでまとめようということでマル2 に入っています。
 というわけで、見延先生のおっしゃることはよく分かっておりますので、無理やり「ちきゅう」で無駄なことをやるということはやめたほうがいいと思いますが、それを利用して、もっと別のよい機会があったら、これから日本でも北極船を造るということなので、それを過去に戻して評価するというのも重要かなと思っています。
 ちょっと長くなりますが、もう一つ言わせていただくと、そこに「イベント」と書いてあります。イベントというのは、非常に短い時間、普通数百年で終わるようなイベントが、これまでもIODPのほかのサイトでも研究されておりまして、イベントだと100年とか、そのくらいで終わるのを調べてきたという経緯がありますので、そういう特殊な堆積物といったものは気候変動の解析にも役立つと思います。
 というわけで、まとめますと、見延先生のおっしゃることはよく理解しておりますので、それをきちんと反映させて、もし「ちきゅう」を運行する際には、勘案して優先順位を決めたらと考える次第です。
 これでよろしいでしょうか、お答えは。
【見延委員】  ありがとうございます。大変納得いたしました。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 そのほか、御意見、御質問等ございますでしょうか。
 では、榎本委員、その後、谷委員の順番でお願いします。
【榎本委員】  極地研究所の榎本です。よろしくお願いします。
 今、見延委員のほうから気候変動に関することをおっしゃったので、大変大事な指摘かと思いました。
 気候変動に関する大きな活動として、IPCCレポートが去年から今年にかけて出版されたんですけれども、その中で、その成果報告の紹介がいろいろと行われているところですが、その中で、古環境のデータがそろって、それを検証に使えたので、IPCCの将来の予測モデルが向上したという話が結構出ています。気候変動、将来というところで、百年、数百年といったところはチャレンジかもしれないですけれども、古環境からの将来の気候変動への貢献というところは、最近非常にフォーカスされていますので、こういったテーマに取り組むことを書いていただくのは大変いいかと思いました。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 これはコメントということでよろしいですか。
 では、谷委員、お願いいたします。その後、河野委員、お願いします。
【谷委員】  ありがとうございます。委員会においては非常に精力的な検討をされて、難しいお話をよくおまとめになったと敬服しております。
 今の御発表のほうはよく分かったんですが、報告書を見ていて分からないところがありましたので幾つか御質問したいのですが、一つ目の質問ですけれども、2ページ、最初のページに「かいめい」は掘削船ではないと書いてありますね。掘削船以外でも「かいめい」があってどうのこうのというくだりが47行目にあって、その後「かいめい」が幾つも出てきて掘削するようなことが書いてあるんですが、これは掘削船のデフィニションがどうなっていて、「かいめい」はどういう扱いになっているかをまず教えていただきたいのですが、いかがでしょうか。
【川幡主査】  私も乗ったことはないので間違えるかもしれませんが、私の理解では、まず、掘削専用船ではないというのが1個目。掘削の装置を載せて、海底で掘削できるというのが「かいめい」ですよと。「ちきゅう」は掘削しかやらない専用船なので、あとIODPのほかのジョイデス・レゾリューション号なども掘削専用船ですが、「かいめい」はいろいろな用途に使えますよというのが位置づけとして違うと思います。実際に、日本海溝のところで採った試料は、掘削で採ったというよりはピストンコアで採りました。
 皆さんが誤解を受けるとよくないので、掘削専用船と書かなかったということになります。
【谷委員】  御趣旨は分かりました。
 二つ目ですが、5ページの163行目、コストが抑えられるけれども、技術リスクの高い方法を採用したから失敗したという書き方になっておりますが、では、コストのかかる方法だったら成功したのかというところについてはメンションがないですが、これはどのようにお考えなのでしょうか。
【川幡主査】  ここは事務局のほうから、もし答えられたら答えていただいて、私が捕捉するのでもいいですか。
【戸谷深海地球探査企画官】  事務局、深海地球探査企画官の戸谷でございます。
 ここのIODP第358次研究航海「南海トラフ地震発生帯掘削計画」のときは、3通りのシナリオが示されておりまして、その中で、コスト、期間がかかるもの、そして成功確率が高いもの、低いものという中で、このコストが抑えられる反面、技術リスクが高い掘削方法というのが選ばれております。
 そして、今、谷先生より御指摘ありました、より技術的リスクが低い方法だったらできたのかということになりますと、実際それはできなかったので、できたかどうかというのは難しいところですが、コスト的にちょっと見合わず、その手段は取り得なかったという状況であったと理解しております。
【谷委員】  コスト的なことを考えずに、技術的なことをお伺いしたいんですが、技術的にはできたという委員会の御判断でしょうか。
【事務局】  より成功の確率は……。
 今、阪口先生が挙手されていらっしゃいますが、その当時、JAMSTECの経営にいらっしゃったので、御存じかと思いますが、阪口先生に御発言いただければ。
【阪口委員】  補足説明させていただきます。
 孔内の壁面の崩壊が起こったために、その直上で分岐をさせて、そこから掘るということを繰り返したために、最終的に崩壊が継続し、掘削を断念しました。
 もし、ここにコストと、あと「時間」という言葉が抜けているのですが、イコールと考えていただきたいです。別の場所からストレートに堀り直せば、恐らくいけたであろうという分析もなされております。しかし、そうすると、また掘削深度ゼロから始めるため、コストも時間もかかるということで、そのような選択肢は取られずに、ある深さまで掘ったところから分岐をさせて、曲がるケーシングを入れて進めた結果、崩壊が進んだと、そのように解釈していただければと思います。
 それから、先ほどの1個目の質問も、「ちきゅう」はDrilling Vessel、DVという略称がついていて、「かいめい」はResearch Vessel、RVという略称がついておりまして、川幡先生の御説明のとおり、掘削専用船とマルチパーパスの研究船という位置づけで「かいめい」はみなされていますので、そこのところは注意して書いたということです。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 いかがでしょうか。
【谷委員】  1点目については再度クリアな御説明をいただき、ありがとうございました。素人目に読んで、「掘削船」と「掘削船以外の掘削」、というのが分かりやすいかなというところは非常に疑問があるのですが、阪口委員のご説明で理解はできました。2点目の背景の御説明もありがとうございます。
 あと9ページですけれども、286行目の一番最後のところに「掘削以外の観測」と書いてあるんですが、これは掘削の話が全然出てこないんですが、掘削はしないという前提で書いてあるということでしょうか。
【川幡主査】  286ですか。
【藤井分科会長】  286の一番後ろぐらいですね。
【川幡主査】  これは、現在のマントルダイナミクスをレビューしたときの発表の中では、もちろんオマーンで陸上掘削していますから、陸上掘削も含めてこんな研究がありますというお話でしたけれども、ここで言うマントルは、海洋掘削で海底から6キロメートルのところにモホ面があって、それより下がマントルと言っていますが、このマントルダイナミクスは、3,000キロメートルのマントル全体を理解しようという観点の中でという発表をしていただいて、その中で、掘削するとどんな意義がありますか、どんな貢献ができますかといったので話しましたので、これは何千キロメートルのマントルを扱った、そんなレビューだと解釈していただければと思います。
【谷委員】  分かりました。
 11ページ、下から3行目、390行目、南海トラフの地震発生帯の深部掘削は、いろいろなことを考えるべきであるということが書いてあります。何を考えるかは書いてあるんですが、これは非常に重要な事業だと思うんですけれども、考えると書いていますが、やる・やらないというのは誰が決めるという整理をされているのでしょうか。
【川幡主査】  これは、まず南海トラフの研究は、今まで深掘りしますよと言って、地震が起こるプレートの断面まで掘削しましょうということで深掘りをずっとやってきて、結局、深掘りでやったけれども到達できなかったというのが現状です。
 それで、今後に関しましては、そういう方法以外にも、ここにDONETとかいろいろ書いてありますけれども、穴ぼこを、もうちょっと浅いけれどもたくさん空けて、そこに地震計を入れて研究したほうがいいのではないかという意見もありまして、これも合理的です。
 委員会では、そういうのを決める手だてを、今、谷先生が言われましたが、どうやってやるのかをきちんと決めてくださいというのを提言しています。ただし、どこでやるとかいうのは、ここでは述べていません。
【谷委員】  防災・減災というところに注力するのは、国民目線で見て、非常にありがたいお話だと思っております。その上で、南海トラフは喫緊の課題だろうと思うんですけれども、そこを理解するのに、深掘りをするというのは、非常に有効ではないかと素人考えで思うのですが、その割に、これから考えるとしか書いてなくて、しかも、やる・やらないというのを誰が決めるというのも書いてない。
 先ほど私が質問しましたのは、技術的には本当は可能なのかどうかということで、それは、先ほどの御説明では、幾つもトライして、ちゃんと上から掘れば、一つぐらいはいけるだろうということでしたので、だったら、技術的に可能であれば、つまり今の技術でどうやったって掘れないという話ではないということであれば、いろいろな可能性の中で、目的に対して難しさとか困難さがどうかという議論になるのではないかと思うのですが、そういう議論も、この深い議論の中に含まれるということでしょうか。そして、それは「関係者」と書いてますけれども、掘削を推進する関係者ではなくて、もっと大きなステークホルダーの中で議論される話ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
【川幡主査】  まず、できるかできないかということに関しては、専門家の間でも意見は分かれています。先ほど阪口先生が言われたように、ほかのところを一からきちっと掘ったら、壁面崩壊が防げて到達できたかもしれないという意見もありますが、一方で、地層が結構立っていて壁面が崩れてくるものですから、難しいんじゃないかというのも非常に説得力があるかと思っています。
 というわけで、これに関しては、片方の意見を取れば、100%そうであるということが誰にも言えないというのが1番の問題です。
 2番目は、地震に役立つという面からいくと、最近、地震波の解析も進んできましたので、モニタリングの地点をもっと増やす、面的に横に広げるほうが、実際の防災と減災に役立つのではないかという話もありまして、それだったら、何も深いところを1本掘るよりも、例えば4地点とか5地点とか、宮崎のほうに向かって幾つか穴ぼこを掘って、そこに地震計を入れて観測したほうが実際に役立つのではないかとありますが、いずれにしても、その方向性が、まだ可能性が検討されている段階で煮詰まっていないので、煮詰めるための方策委員会、そういうのをきちっと作ってくださいというのが最後の提言として入っています。
 お答えとして十分ではないですが、現状はこうだったので、正直に申し上げたいと思います。
 阪口先生、詳しいので、もし何か御意見があればお願いします。
【阪口委員】  今の川幡先生の説明でほぼカバーされていますが、392行目に書いてあります、「今後5~10年で実現可能性について」ですよね。ここは結構重要で、1年当たりの与えられるであろう予算というのもここに入っています。なので、「所与の予算の範囲内で、5~10年の間での実現可能性を考えて」ということが非常に重要で、ここにリミッターを外すような議論がちょっと昔はあったわけで、そういうことではなく、5~10年内で実現できる範囲ということを考えると、深掘り1本を考えるよりも、今、川幡先生が述べられた方法等々を総合的に考えて、この南海トラフの地震に対する情報を得る、それをしっかり考え直してくださいという提言です。
 以上です。
【藤井分科会長】  いかがでしょうか。時間が迫ってきたので、少しかいつまんでお願いします。
【谷委員】  あります。ちょっと気になるところを申し上げます。
 12ページ目、411行目、海底の掘削はゼロエミッション、ネガティブエミッションに役に立つと、これはCCSを考えて書いてあるのではないかなと思うのですが、これは、この分科会としての考え方ですけれども、海底掘削というのがこういう役に立つというのは、それはそうなんでしょうけれども、ここは海洋の科学掘削を議論しているところで、CCSの話は科学掘削ではないと思うので、こんなのを書くのかなと思うのですが、いかがでしょうか。
【川幡主査】  これは、パイロットスタディとして、二酸化炭素が吸収されるかどうかを調べておくのは大事かなと考えています。
 すなわち、岩盤の鉱物が二酸化炭素とどのくらい反応するかとか、そういう部分は科学者が興味を持っていることで、実際にどのくらいのスピードで反応するのかというのを現場でやった例があまりないですから、あと鉱物が違うと反応速度も違いますよと。そういうのを応用すれば、パイロットスタディとしての研究はできるかなという意味で書いています。
 本格的にやるときには、また考えてくださいというのは、委員会の議事録にも載っていますが、私たちの範疇ではないと考えています。
【谷委員】  すみません、最後の質問です。14ページ、最後から2行目、495行目です。すごく感動的な言葉が並んでいます。「海洋科学掘削を通じて、世界をリードし、科学技術を発展させるために」と、非常に感動的ですけれども、これは世界の何をリードしたいのか、一体どうしたいのか、よく分からないのですが、これは世界の何をリードするんですか。
【川幡主査】  世界の科学技術。
【谷委員】  世界の科学技術をリードする。
【川幡主査】  はい。
【谷委員】  海洋科学掘削を通じて、世界の科学技術を。
【川幡主査】  はい。地球惑星科学の中の科学技術の領域をリードすると、そういう意味です。
【谷委員】  そういう意味ですか、分かりました。ありがとうございました。
 すみません、時間を取りました。
【藤井分科会長】  議論としてはおおむねよろしいでしょうか。ここは大きな修正には至ってないという理解でよろしいですかね。
 では、河野委員、お願いします。
【河野委員】  すみません、遅くなりまして申し訳ございません。
 気候変動の402行目からの記述に関して、一言だけ感想めいたことを述べさせていただきます。
 この報告書を拝見したときに、素人的にも、気候変動問題について、掘削が大事な意味を持つのだろうなということを、何となく想像ができます。とはいえ、このマル2 に書いておられることと、この記述よりも前の、これまで「ちきゅう」が何をやってきたかとか、掘削によって気候変動に関してどのような意味がある研究ができるのかということが、必ずしも明確でない気がします。ほかの防災・減災ですとか、それからマル3 の海底下生命圏とか、この辺りは具体的に、その前までの記述と結びつくのですが、マル2 の記述の場合必ずしもそこがよく分からないのかなと感じます。
 先ほど、見延先生のコメントに対しての御説明を伺って、なるほどと思ったのですが、私のように技術が分からない者がそう感じるということは、もう少し具体的な説明が必要だということではないかと思います。
 ありがとうございました。
【川幡主査】  基本的には、見延先生の御質問、コメントが非常にそのとおりと思いまして、それにお答えしたとおりであります。
【河野委員】  ありがとうございました。
【藤井分科会長】  ありがとうございました。今の件は、榎本委員の御指摘のように、例えばIPCCのレポートでも古環境データの存在が重要であったというようなこともありましたので、その辺を一言、二言、書き加えられるのであれば、より明確になるかなと思います。いかがでしょう。
【川幡主査】  それは可能です。1行か2行、加筆みたいな感じで。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、よろしいでしょうか。そのほかないようでしたら、この辺りでこの取りまとめの議論は終わりにしたいと思います。よろしいでしょうか。
(「なし」の声あり)
【藤井分科会長】  
 谷委員、何かございますか。
【谷委員】  どの段階でファイナルになるのかなという質問です。細かい「てにをは」の間違いを見つけていますので、そういったものも含めて最終的な確認がもう1回あるのでしょうか。
【藤井分科会長】  その「てにをは」のところについては、別途、事務局にお知らせいただければと思います。
 そういう軽微な修正や、今お話がありました気候変動関係の加筆等々は、一旦私のほうで預からせていただいて、川幡主査及び事務局とも御相談して、最終形を固めるという形にさせていただければと思いますが、いかがでしょうか。
【谷委員】  ありがとうございます。
【藤井分科会長】  皆様、ということで、分科会長一任にさせていただければと思います。よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【藤井分科会長】  では、一旦、この案をもって分科会の決定とし、軽微な修正、それから今の気候変動のところを少し加筆という形で、仕上げさせていただければと思います。よろしいですか。
(「異議なし」の声あり)
【藤井分科会長】  どうもありがとうございました。
 まず、ここまで大変丁寧に御検討いただきました川幡主査はじめとする委員会の皆様、半年以上にわたって御議論いただきまして、大変ありがとうございました。感謝申し上げます。
【川幡主査】  失礼します。
【藤井分科会長】  
 それでは、次の議題に入りたいと思います。
 議題2でございます。海洋開発分科会における検討の主な論点についてでございます。
 この分科会では、会期ごとに主な議論の予定について委員の皆様からも御提案をいただいて、意見交換を行ってきたところであります。11期については、この間、幾つかの論点について検討を進めてきましたが、前回の分科会で決定した「今後の海洋科学技術の在り方について」という提言をもって一区切りということに現状なっていますので、今後どういう形で議論を進めていくかについて改めて考えていく必要があります。
 まず、事務局から論点の案を少しお示しいただいて、それも踏まえて意見交換・御議論していただければと思います。
 事務局から御説明をお願いします。
【事務局】  分科会長、ありがとうございます。事務局、川﨑から説明させていただきます。
 まず、参考資料2から簡単に御紹介をいたします。
 こちらは振り返りになりますけれども、ただ今、分科会長から御紹介いただいた第11期海洋開発分科会の最初に提示した論点の案となっております。こちらの個別の検討事項等を中心に、河村委員が主査を務めていただいた海洋科学技術員会を中心に議論を進めまして、8月に一旦提言を取りまとめていただいたところでございます。提言自体は、投影はしませんが、参考資料3にございます。
 そして、今回資料2として御用意しておりますが、端的に言うと、参考資料2を更新したいと考えて、本日は提案させていただきます。
 記載のとおり、分科会でまとめた提言の推進方策の中には、もちろん文部科学省とか行政機関だけではなく、研究者、アカデミア側や産業界と連携・分担して取り組んでいく事項が多数存在します。
 詳細な記載は別紙のほうに幾つか書いておりますが、例えば、ここで書いてあるAUV、ASVといったところは、まさに量産化を見据えて産学官連携で技術開発をしていくべきであるとか、AUVには、従前の技術もありますので、新たな開発だけでなく、改良も含めて全体的にどう進めていくかが必要な視点と考えています。また、国際協力、国際協調という文脈では、世界に先駆けて超深海の研究調査を進めてること、項目は異なりますが、安全・安心な社会の実現に向けて、津波の調査、海底地形調査を国際協調の下、主導的に進めていくことが重要となり、これは、国際枠組みづくりの提案という文脈にも引っかかってくると思いますが、この辺りがまさに観測や、安全・安心な社会に向けた国内・国際機関の連携、分担が必要となる部分と考えております。
 また、気候変動問題対策の関係では、まさにESG活動をはじめ産業界でもいろいろな取組が行われています。こういった動向を踏まえながら、我が国が国際的役割を果たすために、例えば、長期的に海洋のネガティブエミッション技術を進めていく必要があるとか、また、持続可能な海洋利用に向けた海洋生態系の理解に資する取組というところで、社会・経済活動がもたらした影響評価をステークホルダーと一緒に行っていくべきであるということで、ステークホルダーを含めていろいろな機関が連携、分担してやっていくべき事項についても提言をいただいたところでございます。
 5ポツの総合知、市民参加の部分は、まさにステークホルダーとの連携そのものですけれども、冒頭、千早局長から紹介させていただきましたとおり、次年度概算要求でもいろいろ考えているところでございますので、これは一旦据え置かせていただければと考えております。
 以上、提言のところから幾つか、国内外の関係機関の連携・分担というところを基に、今回、事務局から論点例を作らせていただきました。
 それでは、1枚目に戻りますが、論点例は大きく分けて三つございます。
 まずマル1 ですけれども、端的に言いますと、我が国が保持しておく深海探査能力は何かということです。
 我が国の深海探査機、例えばJAMSTECでは「しんかい6500」とか有人探査機等もございますが、深海探査における我が国のポジションをどう考えて、どのように探査機を整備していくか、また、先ほどAUVにも触れたのですが、AUVについては産業利用の促進に向けて、どのように技術開発を進めていくか、というような論点を出しています。
 マル2 ですけれども、2050年という長期スパンのネガティブエミッション技術の研究開発を行うに当たって、産業界の取組や動向もどんどん変革していくと考えられますので、どのように取り込んでいくか、表現は悪いですが、巻き込んでいくか、を意識しながら研究開発を進めていくか。
 また、マル3 の海洋生態系については、社会・経済活動についていろいろな知見が散在しているところをどのように統合していくか、上のポツは、現在行われている様々な活動を意識しております。また、下のポツは、今後想定される新たな海洋開発に向けて、どのように影響評価手法を確立していくか、そういったところも論点であると考えているところでございます。
 以上、事務局が8月の分科会の提言を基に考えた論点として、一旦お示しさせていただきました。ただ、8月の提言は、あくまで国の行動計画となる海洋基本計画に向けてという意図が強かったので、産学官連携、国際機関連携・分担という視点では、まだまだ視点は多数あると思います。事務局案によらず、次期海洋開発分科会、第12期に向けて、今後議論すべき論点のアイデアを、ぜひ本日はいろいろいただければと思っております。
 なお、恐らく本日が第11期最後の分科会になると思いますので、本日いただいた御意見等を踏まえて、次回の第12期分科会に改めて論点案として提示したいと思います。
 以上、事務局からの説明とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、ここからはフリーディスカッションでお願いしたいと思います。
 今後、来年2月から12期ということで、そこから2年にわたって検討ができます。そのうえでの論点について御意見いただければと思います。
 どなたからでも結構ですので、お願いいたします。
 では、見延先生、お願いします。その後、阪口さん、お願いします。
【見延委員】  北海道大学の見延です。論点案ありがとうございます。
 この論点案で、気候変動、温暖化というのが大事になってくると思うんですが、気候変動が、今、2と3の二つ、そこに入っておりまして、3のほうには生態系に関わる気候変動、温暖化の影響を全部入れることができると思いますが、それ以外に、海洋については、やはり海面上昇が非常に大きな問題なのですが、その海面上昇について、何か検討していく、あるいはその情報を取りまとめていくことが、この論点案では見えないので、それが分かるように少し表現を入れてはどうかと思います。
 マル2 のほうには、どちらかというと解決をするためのネガティブエミッションに焦点が当たっていますが、多分、海面上昇を完全に解決することはできなくて、社会がそれに適応していくことも必要かと思いますので、御検討いただければ幸いです。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。一つの気候変動に関係する論点として、海面上昇について、しっかり把握していくということになるんでしょうかね。
【見延委員】  そうですね。日本では周辺の海面上昇のしっかりした予測を取りまとめていないので、例えば昨年の読売新聞の記事などはアメリカのNOAAのサイトに依拠して、ちょっと間違った情報を社会に広めてしまうというようなことがありますので、やはり日本としても海面上昇の将来予測をしっかり取りまとめていく必要があるんだろうと思います。我が国周辺及び沿岸ですね。
【藤井分科会長】  分かりました。ありがとうございます。
 では阪口委員、お願いいたします。
【阪口委員】  論点ということなので、ここに示していただいているものを包含する方向性について意見させていただきます。
 まず、一つ目は、我が国の海洋科学技術で世界に飛び抜けているものは何だということを一つきっちり把握しておくことは、今後の政策決定にすごく重要なことであるので、まずそれをきちんと出しておくということと、二つ目は、国内及び国外、国内というのは納税者も含めて、国外から我が国の海洋科学技術に期待されていることは何かということを明らかにした上で各論に入っていくべきではないかという考え方があると思います。
 三つ目が、必要なのに遅れている、遅れているというのは比較相手がいないと遅れているか進んでいるかは分からないと思うんですが、国外と比べて、必要であるのに遅れているポイントは何なのかということを明確にすることが大事です。
 ただ、今の三つの考え方だけでいくと、今後重要なことや基礎的なことが忘れ去られてしまいます。もう過去20年ぐらいの我が国の科学技術政策で間違えたやり方ですよね。今流行していることだけに投資すればいいという考え方、これが我が国の基礎科学力を大幅に遅れさせた一つの失敗だったと思いますので、海洋においては、財源とかシップタイム、船そのもの、あと観測機器そのものを、今後、今までの在り方ではなく、しっかり共有できる部分は共有し、財源も財務省のみに頼らない方法が幾つかあると思います、国外ではそういうこと一生懸命やっています。そういうものも含めて、海洋に関する基礎的な研究を捨てない、見捨てない、ある範囲できちんと維持していくことが重要だと思いますので、私が述べた、得意分野と期待されていることと遅れていることと基礎をしっかり保つため、それから観測を充実させるための包含的な財源と手法と機器そのものの共有しながら、この4点を考えていただければと思います。よろしくお願いします。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。海洋科学技術を支える、ある種のエコシステムのようなリソースも含めて、どのようにしていくべきかという議論が論点として重要ということになるんでしょうかね。ありがとうございます。
【藤井分科会長】  では、中川委員お願いします。
【中川委員】  中川でございます。ありがとうございます。企業系ということで、意見させていただきたいと思います。
 この提言で言うと、一番上の観測技術というところに関わるかなと思うんですけれども、どうしても観測に関して言うと、今まで船とか、そういういわゆる固定資産的なものが中心になってきたと思うんですが、ここに書いてあるように、やはりAUVやASVといった自律的な割に小型な機器でデータを観測することが非常に重要になってきているのかなと思います。
 こういったところの情報系に関しては、AUV、ASVの技術は、例えば工場内の搬送ロボットだとか、そういうものと実は基盤の技術、ミドルウエアのところは同じものを使います。具体的にはROS――ロボットオペレーティングシステムと言われているようなものが使われていて、こういったところは既にコミュニティーがあり、先ほどの国際協力、国際協調みたいなところでも話が少し出てたと思うんですが、海洋が対象であるけれども、基盤技術としてほかにも展開できるということで、そういったところの検討も、海洋ならでは実証できるというところを生かしていただきたいというのが一つございます。
 もう一つは、得られたデータの分析ですけれども、ここにMDAと書いてあって、海洋状況把握が目的なので、どうしても海洋で採取したデータになるかとは思うんですけれども、最近、衛星ですとかドローンも含めて、そういった上空からの観測技術も発達しております。それも含めた複合的分析を、いわゆる学際的な地球環境把握という意味で、この海洋のデータを、ほかの上空からのデータとの複合分析みたいなところで生かしていくといったところも考慮に入れていただければなと思います。
 具体的なそのときの適用先になりますけれども、今、一次産業、海洋の漁業とか水産資源が非常に今枯渇しつつある中で、どうやって環境を保全していけばいいのかといったところに議論が向けられて、持続的な一次産業に資するために、そういったデータが生かせるといいのではないかなと思います。
 企業の目線から言うと、先ほどの基礎的なところの基礎科学に対してというところがちょっと抜けてしまうかなとは思うんですけれども、やはり市民参加と一番下にもありますけれども、一次産業に依存している自治体から見ると、こういったデータは非常に重要だと思いますので、コミュニティーを市民にも広げるという意味からいっても、身近な一次産業、農業・漁業といったところに、こういった海洋観測技術やデータの分析結果が生かされることを期待します。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。ロボティクスの技術は相当部分共有できると思いますし、そういうプラットフォーム間の統合、データの統合というのも非常に重要だと思います。それから、市民参加を含めて第一次産業について、もしかすると先ほどの海面上昇の件なども関係してくるかもしれませんが、非常に重要な論点と思いました。ありがとうございます。
 それでは、廣川委員お願いいたします。
【廣川委員】  ありがとうございます。
 今後の海洋開発分科会で議論される具体的な論点をまとめられておりますけれども、大きな視点で、特にマル1 とマル3 に関連しますが、MDAを推進する、一方で、社会・経済活動を推進する、あるいは海洋の利用を進めるためには、海洋空間利用の在り方が非常に大事ではないかと思っています。
 特にヨーロッパではこの考え方がもう何十年も前から進められていて、海洋の空間利用が何十年も議論されて、政府機関だけではなくて、利害関係者も含めて、こういった議論が非常に浸透しています。日本では、こういった考えがまだまだ浸透していないし、まず、具体的な議論が進んでないような気がしますので、先ほど阪口委員が言われたように、データの共有化も含めて、海洋空間利用をどのように進めるかという議論を、大きな分科会の場で議論していただければありがたいなと思います。
 その中で、海洋生態系の理解との、具体的なアクション、どのように進めるか決まってくるのではないかと思いますので、その点も併せてお願いしたいと思います。
 それから、もう1点、AUV等の無人探査機の開発に関してはJAMSTECでも委員会を設けていまして、私もその委員になっていますが、その中でも別途議論がされています。JAMSTECの中では、どの深度までAUVを開発していくかなど、様々な議論もあるので、この分科会との関係をどう整理するのかというのがちょっと気になるところではあります。
 私からは以上です。
【藤井分科会長】ありがとうございます。Marine Spatial Planningは非常に重要でありながら、今まであまりハイライトはされてこなかったということだと思います。これも一つ大事な論点かと思います。
 それから、AUVについてはJAMSTECでも議論は進んでいると思いますが、少し俯瞰的な視点でAUV技術はどうあるべしということを議論していくべきだろうと考えますので、そういう形で、ここでも議論をしていただければと思います。
 それでは、河野委員、お願いいたします。
【河野委員】  ありがとうございます。
 教えていただきたいのですが、この文書のタイトル、論点となっています。これから議論をしていくべき特定の分野という意味での文書を作ることを念頭に置いておられるのでしょうか。
 先ほど来、ほかの先生方のコメントを伺っておりましても、一つは、海洋に関する調査あるいは研究の全体を見据えたこと、例えば予算の獲得や海洋全体の捉え方といったような広い視点からの部分があって、それとは別に、個々の重要な分野、あるいは研究の目的もあるように思われます。
 この文書を拝見していると、そういういろいろな要素について、在り方とか能力は何かみたいな書き方になっています。その全体を見たときに、アプローチとしてどういう手法を取るのかとか、海洋に関する研究の全体を見据えて何が必要なのかということは、あまり論点にはなり得ないのでしょうか。そうした問題意識が全体としてあって、その上で個別の重要な論点があるというふうに議論してもいいのかなと感じました。
 以上でございます。
【藤井分科会長】  そのとおりだと思います。これは特別こういう粒度で今議論しましょうということではなくて、むしろ次の12期の2年間にわたって、どういうポイントにフォーカスして、この場で検討を進めるべきかということです。その上で、では何をやりましょうということは、また別の議論になると思いますので、御理解いただければと思います。
 それでは、榎本委員、その次に谷委員、田中委員、川辺委員、窪川委員の順番で、できるだけかいつまんでお願いできればと思います。
【榎本委員】  ありがとうございます。極地研究所の榎本です。コンパクトにお話ししたいと思います。
 前回の議論、2020年ということで、この2年間の間の推進があって、来年からまた2年間というところでお話が始まるかと思いますが、2年ごとという時間の進み方と、あと、ここに取り上げられている技術、もう既にある程度出来上がってきて、これから2年間の間にも飛躍的発展をしそうなもの、あるいはまだまだ技術開発が必要なもの、いろいろな時間スケールのものが混じっているかと思いますので、どの時間スケールでどこまでの達成を見込むのかということを次の議論の中で気にされたらいいのかなと思いました。
 あと、これまでの2年間では、コロナの話題という当初考えてなかったものが入ってきまして、あと今年になってからロシアというものが入ってきました。こういった突発的なところに何が耐えることができて何が耐えることができないか、多分観測している現場ではいろいろとあるかと思います。そういった突発的なことでいろいろなキャンペーンはキャンセルされましたけれども、オペレーショナルなWがつく活動、WMOとかWTO、WHO、そういったものは維持されるように皆さん苦労されています。あと無人で観測できる技術、移動なく現地で活動できる観測などはコロナ禍でも維持されたりしていましたので、そういった緊急事態にどう対応できるかを考えておくという、この2年間で経験したことからの展望もどこかで入れたらいいのではないかと思います。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。少し時間スケールが違うものを見るとすると、ロードマップ的なものを用意しておくことが必要になることと、今の突発事態にどのように対応してきたのか、あるいは今後対応すべきか、という論点でしょうか。ありがとうございます。
 それでは、谷委員、お願いします。
【谷委員】  ありがとうございます。谷です。
 これから10年を見据えたときに、海洋に人々の目が集まるのは何かというと、恐らく地震、それからすごい台風だろうと思うんですが、これは置いておいて、もう一つは、セキュリティーだろうと思います。海運と経済の関係は、残念ながらウクライナを引き金に意識されるようになりましたけれども、海洋に関するセキュリティーということで、MDA――海域の状況の把握はもっと大事になっていくと思っています。
 この中で、2点申し上げておきたいことがあります。
 一つは「測る」ということです。日本の海が今どうなっているかを知ることが非常に大事です。特に沿岸部の地形が実は全然分かってないので、これをきちんと測るべきだと思っておりましたら、日本財団で今後10年ぐらいかけてきちんと日本の周りを精密に測るという事業を開始されましたので、これは政府としても手を出す必要なくなったので、そこはめでたいのですが、あともう一つ分かってないことがあって、海の表面で一体誰が何をやっているかというのを把握できてない。それがサイエンスかとおっしゃる方がおられるかもしれませんが、日本にとって必要なことです。
 先ほど中川委員から御提言ございましたけれども、宇宙との連携を含めて、詳細な海域での活動を把握する。その中にはフリークウェーブみたいなでっかい海面の変化も詳細な海域の把握をすれば分かるので、そういった詳細な海面の把握が必要であろうと思います。
 それから、テクノロジーももちろん重要で、表面ということになると特にASVですが、ASV、AUVを含め、残念ながら日本は世界のトップランナーではありません。ただ、この分野は省力化とか自動化とか、それから常時測るということを考えたときに非常に重要ですので、ここに注力することも重要だと思います。
 以上が「測る」に関して申し上げました。
 もう一つは、分析をするほうです。MDAでは測るほうばかりよく言っているんですけれども、測った後どうするかということについては、測った機関がそれぞれの目的のために使用するだけ、ということになってしまっています。一例を申し上げます。海にはリアルタイムのセンサーがいっぱいありますが、このセンサーをじっくり見ていて変化に気がついた人がおられます。何かというと、どこかで海面に衝撃があったというのを水圧センサーのデータの変化で気付いた。これは実は自衛隊機が海に落ちた瞬間をつかまえていたんです。が、その組織の観測目的ではないのでリポートはされませんでした。リアルタイムのいろいろなデータを複合的・総合的に解釈・解析することによって、広い海で今何か起きたか、起きていなかったかということが分かるという良い例だったのですが、この場合は使われることがなかったいう悪い例です。音響センサーとかを使いますと、例えば、どこかで隕石が落ちた、ではその場所はどこだったということが粗々でも分かりますので、そういうリアルタイムデータを基に、実際の理解、アウェアを行なう機能が必要だと思います。どこの役所がとかを言い出すときりがないですが、そういったアウェアを行なう仕掛けが政府のどこかに必要であるということを我々が提言することが必要ではないかと思います。
 以上です。ありがとうございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 では、田中委員、お願いします。
【田中委員】  日本郵船の田中でございます。ありがとうございます。
 今の谷さんの話とちょっと関連するかもしれません、それからアカデミックのほうのメインの課題とはちょっと離れたサブの話かもしれませんが、今までのデータとかで、ひとつ海洋の通信の話です。
 一応いろいろなデータが飛んできたりしていますけれども、例えばいろいろなものをリモコンでコントロールするときの通信量とか、それからいろいろなデータを受けるほうも、洋上での大容量、高速通信システムの開発に力を入れていただきたい。これは文科省の仕事ではないですけれども、アカデミックのほうからも押していただきたいなと。低軌道衛星とかには我々海運会社もいろいろ期待するところはありますけれども、もっとそういうものを海洋に向けて頑張るべしというような話をしていただければと思います。
 それから、実際に大きなプロジェクトを実施するためには、EEZの法の問題がいろいろ出ていまして、これも文科省の仕事ではなく海本部の話かもしれませんが、そういうところに対してもアカデミックなほうから意見したらどうかと思っております。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。ただ、通信については開発要素もまだまだあると思いますので、その意味ではアカデミックでやるべきことはたくさんあるのかなと思いました。ありがとうございます。
 それでは、川辺委員、お願いします。
【川辺委員】  分かりました。
 拝見して、対象というか、問題とアプローチがちょっと混在しているかなと思いました。今ほかの委員の方たちがおっしゃったことと重なってしまうかもしれませんが、海洋に関わる、解決すべき問題として、ここに挙げられているのが気象や生態系の劣化、災害、あともう一つ、海洋利用の拮抗に伴うコンフリクトとかセキュリティーをどうするのか、こういった四つの問題があるかと思います。それが2以下に示されていますが、それらに対して、どういう時空間スケールでアプローチしていくのかということを、その一番上の海洋調査観測で考える形にするとすっきりするかと思いました。今の書き方ですと、その辺りが分かりにくいと思いますので、お考えいただけるとありがたいです。
【藤井分科会長】  分かりました。全体の整理の仕方として、課題の部分とアプローチの中身と、ちゃんと仕分をして整理すべきだということでしょうか。
【川辺委員】  はい、そのとおりです。お願いします。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 では、窪川委員、お願いいたします。
【窪川委員】  漠然とした言い方で申し訳ないですが、まず一つは、EEZ内の海洋空間計画、海洋空間利用について明らかにすると明確に出すことが重要だと思いました。
 二つ目は、環境あるいは生態系という言葉をたくさん使っているわけですが、どのようなデータを取り、どのように評価し、どういうふうに集約し、それを比較しといったような、明確な基準を日本がどのようにリードしていくか分科会で話し合っていくことが重要だと思いました。それによって日本の位置づけを明確に議論できるのではないかと思いました。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。日本発で生態系あるいは環境に係るある種のスタンダード的なものを議論してはどうかということでしょうか。
【窪川委員】  はい。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、前川委員、お願いいたします。
【前川委員】  ありがとうございます。私から4点、なるべく短く申し上げます。海洋政策研究所の前川でございます。
 1点目は、マル3 の生態系の部分ですけれども、本日からカナダのモントリオールで生物多様性条約の締約国会議が開催されますが、その場で今後の中長期的な生物多様性の対策のための国際的な目標が合意されることになっており、恐らく海域の30%を海洋保護区(MPA)として設置をするという目標も採択されるのではないかと思います。こういった状況下で、日本海域のMPAをさらに拡大していく上で、科学に基づいたMPAについての検討、設置の仕方、管理の仕方ということが非常に重要になると思います。加えて、海洋モニタリングをあまねく行うというのはなかなか難しいと思いますので、そういった生物学的、生態学的に重要な海域をしっかりMPAとして選定して、その海域については予算も人も厚くあてて、モニタリング等、より丁寧に行っていくことが大切ではないかと思います。
 2点目は、日本における海面上昇の精緻な予測が必要というのは、まさにそのとおりだと思います。さらに一歩進んで、その予測に基づく沿岸域における適応策をどうしていくのかということも重要な点ではないかと思います。
 3点目ですが、本日のトピックで、国際機関との連携ということがございましたので、
国連海洋科学の10年という枠組みを日本がリードし、かつ活用していくべきという点でも、キーワードとして入れていただけるとよろしいかと思いました。
 最後に、国際機関との連携につきましては、さきに述べた生物多様性条約や国連気候変動枠組条約の事務局には、実は海洋担当が一人ずつしかいないそうです。大切な国際交渉の場で、海洋の科学技術の活用を促すという意味でも、これらの国際機関の組織的な能力強化も非常に重要であるということ、それは日本人のスタッフを送り込むという視点もあるのかもしれませんが、国際機関の組織的能力の向上という点についてもここで指摘させて頂きたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。いずれも重要な御指摘で、30by30との関係で海洋保護区の件が出てくるだろうということと、UN Ocean Decade、UNFCCCの海洋担当や、海洋に関わる組織に対して、日本からの関与を強めるようなことも考えてはどうかという論点でしょうか。ありがとうございます。
 それでは、続きまして藤井委員、お願いいたします。
【藤井委員】  ありがとうございます。水産研究・教育機構の藤井でございます。
 私の専門分野から申しますと、論点のマル3 の一つ目のポツ、これが非常に大事だと感じております。先ほど中川委員からも御指摘ありましたけれども、水産資源の保全と、これまでは社会・経済活動をどう両立させるかというところを考えてきましたけれども、これからはネガティブエミッションとかゼロエミッション、CCSや洋上風力発電とどう折り合いをつけていくかというところも考えていかなければなりません。
 なので、海洋生態系全体の包括的な理解にとどまらず、水産資源、すなわち国民への安定的な食糧供給との両立、そういう視点から、この先議論させていただければと思います。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。水産資源関係の保全から一歩踏み込んで、ネガティブエミッション含めて、もう少し包括的なアプローチを考えてはどうか。これも重要な論点かと思います。
 それでは、川合委員、お願いいたします。
【川合委員】  東京海洋大学の川合です。
 個別の意見になるかもしれませんが、私は、日本の特徴として、小さくていろいろな沿岸域を持つというのが一番の特徴だと思いますので、日本ならではの、国内の沿岸のモニタリングのネットワークづくりというのがとても大事ではないかと思っておりまして、そういったモニタリングは、先ほど話に出ました洋上発電の影響を調べるとか、あと漁業への温暖化や酸性化の影響を調べるとか、そういったものの基礎になるので、非常に大事ではないかと思っております。
 今回の提言を見ましても、国内の連携が重要とは書いてありますが、実際にどうやってつないでいくのか、違う場所のネットワークづくりみたいなものが視点としてあったほうがよいと思いました。そのためには、高度化したセンサーを作るというよりも、頑丈で安いセンサー作りといった観点も大事ではないかと思っております。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。今の論点も非常に重要だと思いますし、市民参加の論点とも関係してくるところかなと思います。
 大体皆さんに発言いただけましたでしょうか。まだ御発言いただいてない方がいれば、お願いしたいと思いますが。
小原先生、よろしくお願いいたします。
【小原分科会長代理】  すみません、遅くなって。
 私のほうは、専門的な話で言うと、1番、安全・安心な社会の構築という部分に関わってくるんですけれども、この安全・安心な社会の構築の例示の中で、地震・津波等の予測研究とありますけれども、もちろんそれも重要ですが、その予測研究につながる国の観測モニタリング体制、そこに大きく貢献してくると思いますので、そういった日本全国的な観測モニタリング体制の構築という視点も重要かと思います。
 あともう一つ、この観測・調査を行うことによってデータが生産されることになりますので、そのデータの共有化を、もうある程度図られているとは思いますけれども、それもより徹底するような形でのデータの共有を論点に加えておいてはいかがかと思いました。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 今日、皆様から出た御意見、整理の仕方についても御指摘いただきましたので、それも踏まえて事務局のほうで整理をさせていただければと思います。
 私から1点、海洋科学技術をめぐるエコシステムをどのように強化していくか、これは阪口委員からも御指摘ありましたけれども、例えば先ほどの水産資源とエミッションの関係であるとか、AUVのテクノロジーもそうですが、国全体の動きとして見ると、海洋の分野でスタートアップはどれくらいできているか見たときに、まだまだそういう活動を活性化する必要があると考えています。国内もそうですし、グローバルに見ても、日本発で海洋に関わるスタートアップで、気候変動の問題含めて、世界に貢献するようなものが日本からどんどん出ていくことは、海洋の科学技術、この分科会のスコープとしても非常に重要です。その部分が活性化すると、若い人たちがどんどんこの分野に入ってきて、皆さんが志をもっていろいろなことに取り組んでいき、全体としての大きな動きができていくと思います。その辺りは、可能であればぜひ御議論いただけるとよいのではないかと思います。
 そこでは当然、海洋の科学技術分野への投資、どのように資金を入れていくか、あるいは入れていただくかということについても、一つの重要な論点だと思います。それがなければベースの活動もままならなくなりますので、海洋科学技術全体を分科会でどのようにしっかりとした形で動かしていくかは重要な論点だろうと思っております。
 いずれにしましても、論点案として、事務局のほうで少し整理をして、お示ししていただくことにできればと思います。大変貴重な御意見をありがとうございました。
 それでは、次の議題にまいります。
 御報告ということで、まず、第11期海洋開発分科会の活動実績について、事務局から御説明をお願いいたします。
【事務局】  事務局の川﨑です。時間もないので端的に御説明します。
 こちら、次回の科学技術・学術審議会総会において報告させていただく資料として、資料3を用意しております。
 経緯としましては、科学審総会の濵口会長より各分科会に対して今期の最後の総会で実績を報告してほしいという御依頼がありまして、総会事務局の科学技術・学術政策局から様式が示されたところでございます。
 書いてある内容は、本分科会の活動の事実関係になりますけれども、大きく三つございます。
 まず、第4期海洋基本計画に向けた提言を8月におまとめいただいたことを書いております。「なお」以降は、参考資料3の提言の「はじめに」の部分を転記させていただいております。「また」以降は、4月に、東日本大震災を契機に開始した大規模プロジェクトの事後評価も実施していただきましたことを書かせていただいており、「さらに」以降で、本日、議題1でも御議論いただきましたけれども、今後の海洋科学掘削の在り方の提言も、おまとめいただいたところでございます。
 こちらはあくまで事実関係の取りまとめの資料になっております。本資料をもって、科学技術・学術審議会総会のほうに報告を行っていきたいと考えております。
 以上となります。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 この資料の内容を親委員会であります審議会で報告するということですが、何か御意見ございますでしょうか。
 活動の実績を淡々と御報告することになろうかと思います。よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【藤井分科会長】  それでは、この件は、この形で科学技術・学術審議会で報告することにさせていただきます。
 それでは、その他ということで、令和5年度の概算要求、それから令和4年度補正予算関係の内容、それから第4期の海洋基本計画の検討状況等々につきまして、事務局から御報告をお願いいたします。
【事務局】  事務局の伊藤です。令和5年度の概算要求及び令和4年度の第2次補正予算について報告いたします。
 最初に、資料4を御覧ください。1ページ目に概算要求の全体像を載せております。
 令和5年度の要求・要望額といたしまして、海洋・極域で416億円計上しております。
 左上になりますが、地球環境の状況把握と観測データによる付加価値情報の創生ということで207億円計上しております。フロートによる全球観測、そのデータを用いた気候変動、異常気象に関わる解析、また、生物ビッグデータの活用ですとか、後ほど詳しく御説明しますが、海洋研究への市民参加等を計上しております。
 続いて、右側になりますけれども、海洋科学技術の発展による国民の安全・安心への貢献といたしまして46億円を計上しております。スロースリップ等の海底地殻変動のリアルタイム観測、海域地震・火山活動の現状評価と推移予測の高度化のための観測・技術開発、また、AUVをはじめとする海洋観測技術の開発を進めて、我が国のMDAに貢献するとしております。
 左下になりますけれども、北極域研究の戦略的推進といたしまして48億円を計上しております。北極域研究船の建造とともに、北極域研究加速プロジェクト(ArCS ローマ数字2 )において北極域の環境変化の実態把握とプロセス解明ということで計上しております。
 続きまして、その右側、南極ですけれども、南極地域観測事業といたしまして49億円を計上しております。南極地域観測計画に基づきまして、南極における地球環境の変動の解明に向けた研究・観測を推進するとしております。
 それぞれの細かい事業の説明につきましては、その後ろに資料をつけておりまして、ここでは時間の関係で説明を割愛いたします。
 ただ、資料の5ページ目にございますが、海洋科学技術委員会の報告書を踏まえまして、冒頭、局長の千原も御挨拶で触れましたけれども、市民参加による海洋総合知創出手法構築プロジェクトというものを新しく計上しているところでございます。
 各エリアでの市民参加型研究手法の構築に加えまして、その横展開、総合知創出の手法構築のために、中核機関を設置してプロジェクトを進めることを考えています。
 続きまして、6ページ目以降ですけれども、12月2日に成立いたしました第2次補正予算についての資料です。北極域研究船ですとか大深度AUVの開発ということで、合計39億円の補正予算がついております。
 また、参考資料4が、総合海洋政策本部の事務局がまとめております令和5年度海洋関連予算の概算要求の全体像となっております。ここでは細かい説明は省きますが、海洋全体としては、こういった概算予算要求がされております。
 補正予算に関する海洋全体の資料については、総合海洋政策本部のほうでこれからとりまとめると聞いておりますので、まとまりましたら分科会に報告したいと考えております。
 以上となります。
【事務局】  事務局の川﨑です。では、続きまして、次期海洋基本計画の状況について、御説明いたします。
 参考資料5、6として、こちらは今年7月の総合海洋政策本部参与会議の資料をお配りしております。
 参考資料5については、次期海洋基本計画の検討体制として、参与会議の下に基本計画委員会を設置するという設置紙になっております。
 また、参考資料6は検討のスケジュールという形で示されているものでございます。
 8月から基本計画委員会が開催されていますが、今回、参考資料3で出している提言「今後の海洋科学技術の在り方」についても紹介する機会をいただきまして、事務局から御紹介いたしましたことを、まず御報告させていただきます。
 現在、次期海洋基本計画に向けた意見書については、内閣府等々で議論している最中だと認識しておりますので、また公開されたタイミングで委員の先生方にも御報告をさせていただければと思います。
 以上、事務局から次期海洋基本計画に関する経過報告でした。よろしくお願いいたします。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 ただいまの御説明、予算関係、それから海洋基本計画第4期のプロセスにつきまして御質問等ございますでしょうか。
(「なし」の声あり)
【藤井分科会長】  よろしければ、御用意した議事は以上でございますが、委員の皆様から何かございますでしょうか。。
(「なし」の声あり)
【藤井分科会長】  それでは、議事としては以上でございます。
 事務局から連絡事項等ございましたら、お願いいたします。
【事務局】  ありがとうございます。
 本日も活発な御議論、ありがとうございました。この後、事務局で本日の議事録の案を作成させていただきまして、また先生方にメール等で確認をお願いすると思いますので、御多用のところ恐縮ですが御協力をお願いいたします。
 また、次回の日程に関しですけれども、今、3月に開催できるように調整しているところですので、引き続きよろしくお願いいたします。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。以上をもちまして第68回の海洋開発分科会を終了いたします。
 本日をもって、第11期の海洋開発分科会としては最後ということでございます。まずは2年間にわたりお付き合いいただきまして、ありがとうございます。感謝申し上げます。
 これにておしまいにしたいと思います。どうもありがとうございました。

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