海洋開発分科会(第66回) 議事録

1.日時

令和4年3月29日(火曜日)9時30分~12時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 海洋開発に係る最近の動向について
  2. 研究開発課題の評価等について
  3. 海洋開発分科会における今後の検討について
  4. その他

4.出席者

委員

藤井輝夫分科会長、小原分科会長代理、榎本委員、川合委員、河野委員、川辺委員、河村委員、窪川委員、後藤委員、阪口委員、田中委員、谷委員、中川委員、廣川委員、藤井徹生委員、前川委員、見延委員

文部科学省

原大臣官房審議官、大土井海洋地球課長、戸谷極域科学企画官、廣瀬海洋地球課課長補佐、宮原専門官 ほか

5.議事録

【藤井(輝)分科会長】    ただ今より、第66回科学技術・学術審議会海洋開発分科会を開催いたします。本日は、御多用中にもかかわらず、委員の皆様に御出席いただき、誠にありがとうございます。まずは、事務局より定足数の確認及び配布資料の確認をお願いいたします。
【事務局】  本日は、全委員に御出席いただいておりまして、定足数を満たしておりますため、会議は成立しておりますことを御報告いたします。
また、事務局に人事異動がございました。本日は所用により欠席でございますが、本年1月より研究開発局長に真先が、昨年7月より研究開発局担当審議官に原が着任しております。その他、本日は、事務局として、文部科学省研究開発局海洋地球課の課長の大土井のほか、海洋地球課の関係者が出席しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして配付資料の確認をさせていただきます。資料につきましては昨日事務局の方からお送りさせていただきましたが、資料1-1から6-2、また参考資料として3種類の資料を送付させていただいております。ご不明な点、不備等ございましたら、事務局まで、議事の途中でも問題ございませんので、お申しつけください。どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
【藤井(輝)分科会長】  ありがとうございます。それでは続きまして、冒頭、文部科学省から事務局を代表して、原審議官に御挨拶をいただきたいと思います。原審議官よろしくお願いいたします。
【原大臣官房審議官】  ありがとうございます。先ほどご紹介いただきましたが、昨年の7月から、研究開発局担当の大臣官房審議官に着任いたしました原でございます。委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、この分科会に御参画いただきまして、誠にありがとうございます。
私から言うまでもないことではございますけれども、昨年から、持続可能な開発のための国連海洋科学の10年というものがスタートいたしました。海洋の重要性が改めて国際的に認識され、各国でも様々な取組が強化されているところでございます。海洋科学あるいは技術が進展していく中で、持続可能かつ、安全・安心な社会の構築に向けまして、様々な地球規模での社会的課題の解決に資する海洋科学技術の重要性は、ますます高まっていると感じているところでございます。
先週、令和4年度の予算が成立いたしました。文部科学省では、海洋観測体制の強化や北極域研究船の建造などに向け、海洋関係の予算を増額してきているところでございます。引き続き、必要とされる研究開発を着実に進めていきたいと我々としても思っているところでございます。
 また、今年度から第6期の科学技術・イノベーション基本計画というものが開始されてございます。海洋分野におきましても、総合知の創出・活用ということが求められていることに加え、海洋基本計画については、次期の計画の策定に向けた議論が内閣府においても進んでいるところでございます。
 委員の皆様方におかれましては、こういった状況を踏まえまして、次期海洋基本計画の策定に向けて、我が国が取るべき今後の海洋科学技術の在り方を、御議論いただきまして、御示唆を頂ければと考えているところでございます。
 いろいろお忙しい中、しかも、コロナ禍で普段の研究や業務などにもより時間が取られているという状況と存じ上げますが、我々の議論にご協力いただくことを改めてお願いいたしまして、私からの御挨拶とさせていただきます。
 今日はどうもありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。大きく三つ議題を予定しております。まずは事務局からの御報告、それから研究開発課題の評価等について審議と報告、そして、本分科会の下に置きました各委員会における検討についての議論、でございます。
 それでは、早速議題1「海洋開発に係る最近の動向について」、事務局から御説明をお願いできればと思います。
【事務局】  事務局でございます。
 資料1-1を御覧ください。こちらは令和4年度の予算についてでございます。
 令和4年度予算でございますが、先ほど審議官の原から申し上げたとおり、先週成立いたしました。令和4年度予算は、文部科学省の海洋・極域の研究開発に関する予算としまして、393億円を計上してございます。また、令和3年度の補正予算といたしまして、101億円を計上しております。このページは、その予算の主なものを取り上げてございます。
 まず初めに、地球環境の状況把握と変動予測のための研究開発でございます。こちらはJAMSTECに27.7億円を計上しております。漂流フロート、係留ブイ、船舶等による観測等を組み合わせまして、グローバルな海洋観測網を構築するということと、得られたデータを活用して精緻な予測技術の開発や、海洋地球環境の状況把握・将来予測を行い、地球規模の環境保全とSDGsに貢献するための予算でございます。昨年度比で減少はしておりますが、これは国際連携による海洋観測が来年度予め予定をされていなかったためであり、アルゴフロート等の投入量を増やす等、中身の充実を図っております。
 続いて、海域で発生する地震及び火山活動に関する研究開発でございます。こちらは22.3億円を計上しております。海底地殻変動を連続かつリアルタイムに観測するシステムを開発・整備するとともに、「ちきゅう」「かいめい」等を活用しまして、南海トラフ地震発生帯等に広域かつ高精度な調査を実施していきます。さらに、地殻変動・津波シミュレーションの高精度化も図っていくということを考えております。また、加えて、海域の火山活動把握のための観測等も行っていく予定です。
 続きまして、北極域研究に関する戦略的推進です。こちらは46.9億円を計上してございます。今年度より着手しました砕氷機能を有する北極域研究船の建造を着実に進めるとともに、昨年度から開始しましたArCSⅡ、こちら、榎本先生にPDをお務めいただいておりますが、引き続き観測研究や予測に取り組むとともに、昨年度5月に開催されましたASM3を踏まえまして、人材の育成・交流、また先住民との協働を強化していきたいと考えてございます。
 続いて、最後に、南極地域観測事業でございます。こちらは43億円を計上しております。引き続き、計画に基づきまして、地球の諸現象に関する多様な研究・観測を推進してまいりたいと考えております。
 このほか、一番下のところにございますが、海洋資源に関する研究やAUV、海洋科学技術のプラットフォームとしての研究船の運用等々に関しましても、必要な経費を計上してございます。本日は時間の関係で割愛しますが、こちらの資料の後ろに詳細の資料がついておりますので、3ページ以降をお時間あるときに御覧いただければ幸いです。
 また、口頭のみで恐縮ですが、研究費の関係で2点報告がございます。
 1点目が、経済安全保障重要技術育成プログラムに関してです。こちらは今年度の補正予算において、JSTと経産省のNEDOに各1,250億円ずつ措置された基金です。本プログラムは、経済安全保障の強化・推進の観点から、先端的な重要技術を迅速かつ機動的に育てることを目的にし、内閣府において研究開発ビジョンを作成し、その実現に資するような研究開発を実施するというプログラムでございます。現在、詳細な制度設計につきまして内閣府を中心に議論が行われているということでありますが、海洋分野におきましても、こういった動きを念頭に、何ができるかの検討を文部科学省としても行っていきたいと考えてございます。
 また、内閣府関連でもう1点、SIPについても情報提供させていただければと思っております。第2期SIPが来年度末で終了することに伴いまして、第3期のSIPでどのような研究開発を実施するかを検討するため、次期SIPの課題候補に係る研究開発テーマの情報提供の募集を、この1月から2月に内閣府で実施しておりました。第3期のSIPの課題候補は、現在内閣府で全部で15個挙げております。そのうち一つに海洋関係として、海洋安全保障プラットフォームの構築というものがございます。内閣府に集まった情報は、来年度、フィージビリティスタディにおいて検討し、課題の詳細な内容を検討していくと聞いており、こちらも海洋関係の動向として、今後も何か情報ありましたら情報提供させていただければと思ってございます。
 続いて、こちらも口頭のみとなってしまいますが、第4期海洋基本計画策定に向けた動向でございます。こちら、再来年度夏の閣議決定を目指しまして、現在、内閣府の総合海洋政策本部参与会議におきまして、計画作成に向けた検討体制や計画の構成等について検討がなされていると聞いております。こちらも今後方針等が決まりましたら、分科会において御報告させていただきたいと思ってございます。
 次に、資料1-2を御覧ください。こちらはGIGAスクール特別講座に関してでございます。文部科学省ではGIGAスクール構想というものを掲げまして、一人1台端末など、学校におけるICT環境の整備を行ってまいりました。GIGAスクール特別講座は、この環境活用の促進の一環として行っているものになっております。これまで文部科学省は3回この特別講座を実施しているのですけれども、うち2回がGIGA×南極、GIGA×深海ということで、海洋関係の話題を取り上げてまいりました。実施に当たっては、極地研やJAMSTECに多大な御協力を頂いたところであり、感謝しております。
 YouTubeにおきまして各特別講座の様子はまだ視聴することができると思いますので、ぜひ、この機会に御覧いただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 最後になりますが、JAMSTECの松永理事長が、今年度末で任期満了に伴い退任することになってございます。それに伴いまして、来年4月1日より、現在一般財団法人次世代環境船舶開発センターの大和裕幸代表理事が次期JAMSTECの理事長として御就任いただくことが、先週の閣議決定で決まりましたので、御報告いたしたいと思ってございます。
 長くなりましたが、事務局からの報告事項、以上になります。
【藤井(輝)分科会長】  ありがとうございます。
 ただいまの御説明に関して御質問等ございますでしょうか。
 谷委員、お願いします。
【谷委員】  ありがとうございます。谷でございます。
 一番冒頭の予算の説明のところなのですけれども、前も申し上げましたが、この分科会は文科省の設置法で何が書いてあるかと言いますと、文部科学大臣又は関係各大臣の諮問に応じて海洋の開発に関する総合的かつ基本的な事項を調査・審議することという、科学技術・学術審議会の担務を担っておるのです。ですので、予算に関して御説明、御報告いただくときに、文部科学省の予算だけではなくて、関係するいろんな予算を全部御報告いただかないと、我々が俯瞰的にものを議論することはできないのではないかと思うのです。決して文部科学省だけの審議をするということではないし、ここに書かれている地球環境だとか、海域に関する災害に関する事項というのは、ほかの役所でもやっております。そういったあたり、毎度申し上げているのですけれども、我々の視点を文科省だけに向けないように、ぜひお願いしたいと思います。
 以上です。
【事務局】  大変申し訳ございませんでした。
 もしよろしければ、また後で谷先生はじめ委員の先生方には、運営本部のほうでも、海洋科学技術ではなくて、海洋予算の科学技術の関係を取りまとめた資料がございますので、お送りさせていただければと思います。大変申し訳ございません。
【藤井(輝)分科会長】  よろしいでしょうか。
 海洋に関わる情報が俯瞰的に見られるように、今おっしゃったような形で補足資料を拡充していただければと思います。
【事務局】  承知いたしました。
【藤井(輝)分科会長】  阪口委員、お願いします。
【阪口委員】  一番最後のJAMSTECの理事長の交代の話について、ちょっとお尋ねします。中長期計画は7年のうちの3年目が終わって、次は4年目に入るところだと思います。7年のうちの前半で理事長を3人がやるというのは、これ、ちょっと異常だと思うのですね。普通は、中長期計画に沿って、理事長の方針で一つの独立行政法人が運営されていくべきことだと私は思います。
 例として、農研機構などは、現中長期計画に入るときに久間先生が理事長になられて、そのリーダーシップの下で大きく変化しました。ところがJAMSTECは、中長期計画の前半だけで理事長が二人交代して3人目になるということで、この大方針というものが非常に分かりにくく、また、沈没船みたいになるのではないかという危惧が周りからされています。今後どういう方針で中長期計画と理事長の任期というものを同期させていこうとされているのか。わざわざさっき報告がありましたので、一つお伺いしたいところでございます。ありがとうございます。
【大土井海洋地球課長】  海洋地球課長の大土井でございます。人事の関係なので、私から御説明差し上げますが、人事の関係なので、我々事務局側は関与しておりませんというのが現状でございます。
 恐らく松永理事長は、年齢の関係ではなかろうかなと勝手に推測しておりますけれども、海洋地球課としましては、JAMSTECを所管しておりますので、何があってもJAMSTECの研究開発をしっかりと進め、それを中長期目標にしっかり反映させて、なおかつ、次年度は、中間評価がございますので、その中間評価を機に、新しい理事長の御意向も踏まえながら、必要があれば目標を改定するなど全力でサポートしたいと思っております。
 一期全て同じ理事長というのが理想というご意見はわかりますが、今般交代されましたので、新しい体制で全く支障がないように、しっかりサポートしていくということをまずはお誓いしたいと思っております。
 以上でございます。
【藤井(輝)分科会長】  よろしいでしょうか。
 それでは、川辺委員、お願いします。
【川辺委員】  ありがとうございます。
 最後に御説明ありましたGIGAスクール特別講座についてお伺いしたいのですけれども。これはICTを活用して、教育と科学をつなげていくということと理解してはいるのですけれども、この方向性として、南極と深海と二つの動画を作られて、アクセスや質問がありました、というふうになっているのですが、これでゴールが達成されたことになるのでしょうか。
 つまり、このGIGAスクールの方向性というのは、どんどん動画を作って発信していくというお話なのか、試しにこういうことをやってみて、うまくいきました、ということで終わりなのか、そのあたりについて教えていただければと思いました。よろしくお願いします。
【大土井海洋地球課長】  ありがとうございます。大土井でございます。
 どちらかというと、GIGAスクールというのは、こういう特別講座だけで構成するものでは絶対なくて、例えば、各地の教育委員会で、地元にある工場とつなげてみるとか、あまり普通の教室の中では見られないもの、聞けない話をインタラクティブにリアルタイムで双方向でできるというのが一番の売りでございます。
 今回、、南極、深海など、普通行けないところの情報を生徒さんに見てもらったのですけれども、これは文科省が主催し、フラッグシップとしてやっています。例えば、第1回目はISS国際宇宙ステーションとの連携をやりました。が、本来的には、各学校、各教育委員会において、地元などですばらしいコンテンツがあったら、それをリアルタイムでGIGAで届けるというのが目的でございますので、文部科学省が主催しているのは、フラッグシップ的な取組というふうに御理解いただければなと思っております。
【藤井(輝)分科会長】  よろしいでしょうか。
【川辺委員】 地域の各自治体の教育委員会にお任せするような方向だということは分かりました。それで、本当に発展していけるのかなという懸念はちょっと持っております。
【藤井(輝)分科会長】  いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 今幾つかコメントいただきました。一つ確認ですが、第4期の海洋基本計画は23年夏ですよね。
【事務局】  さようでございます。
【藤井(輝)分科会長】  でも、再来年度とおっしゃったので、来年の夏に決定ということでよろしいでしょうか。
【事務局】  はい、来年の夏になります。
【藤井(輝)分科会長】  再来年度ということですね。
【事務局】  はい。
【藤井(輝)分科会長】  もう間もなく来年度に入るということで、確認でした。
【事務局】  ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】  それから、最初の谷委員の分は資料を追加で少しお配りいただくということと、JAMSTECの理事長の件は、7年計画の途中で3人目に替わったということですが、継続性という意味では海洋地球課のほうでもしっかり担保していただけるということだと理解しました。今後、むしろ中長期計画と理事長の任期との在り方は少し考えていく必要があるという理解でよろしいでしょうか。人事のことなので、なかなか難しいところもあるかと思いますが。
 それから、GIGAスクールについては、一人1台端末で学校の教育をどのようにやっていくか、各所で議論が行われておりますので、これでおしまいということではなく、そして、それぞれの教育委員会にお任せして全て何とかなるものでもないということで、国のほうでもしかるべき場所、複数の場所で今議論が行われているという理解でよろしいでしょうか。
 それでは、次の議題に行かせていただきます。
 次の議題2は、「研究開発課題の評価等について」ということで、本日は2件の事後評価について審議を行う予定であります。それぞれの課題について、まず研究を実施していただいた方から課題の内容、成果の概要について御説明いただいて、質疑応答を行います。その後、研究実施者の方には御退席いただいた上で、事後評価案について審議を行うという段取りにさせていただきたいと思います。
 事後評価案については、第64回海洋開発分科会で決定を既にしております。「令和3年度海洋開発分科会における評価の実施について」に沿って作成をしていただいているというところであります。これは今日の参考資料2に添付しておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 それでは、まず1件目、マル1 ですが、「東北マリンサイエンス拠点形成事業」についてです。河村委員につきましては、参考資料2の4ポツの留意事項の利益相反事由に該当するということで、評価には加わらないということでお願いしたいと思います。
 ほかに、この利益相反関係に該当する委員の方はいらっしゃらないという理解ですが、よろしいでしょうか。ほかにも、もしかして自分がという方がいらっしゃいましたら、お知らせいただければと思います。
 よろしいでしょうか。
 それでは、河村委員におかれましては、本件の審議には参画されないということにさせていただきたいと思います。
 もうこの時点で外れていただくという段取りでよろしかったでしょうか。事務局のほうで確認をお願いします。
【事務局】  課題の御説明のところまではおいでいただいても大丈夫です。
【藤井(輝)分科会長】  分かりました。
 では、まずは課題の御説明を頂いて、その後、河村先生には一時御退席いただくという形にさせていただきます。
 それでは、まず研究実施者の木島明博先生から、本事業の概要・成果について御説明いただきたいと思います。木島先生、よろしくお願いいたします。
【木島研究代表】  ただいま御紹介いただきました木島でございます。本日は時間の制限が非常に強いので、活動概略を本当に簡単に説明したいと思っております。
 すみません、パワーポイントのところで書いていないところがあるのですけれども、2011年3月11日に発生した東日本大震災、これを思い出しますけれども、その影響について、非常に大変な事態になりました。特に、その地震の後の極めて大きな津波が襲ってきまして、このようにまちは壊滅状態になってございます。これは発生後50日後に自衛隊のヘリコプターで、私が研究室のある女川町の状況を見たときの写真でございます。特に海の状況を見ていきたいと思います。女川町のまちの中に海水が浸入してきている。つまり、地盤沈下が起こっているということも分かるかと思います。
 その中で、浮遊する養殖施設等はもう完全にばらばらになってしまって、壊れて浮遊しているという状況です。
 こういうことが、岩手、宮城、福島を中心に、日本全国の海岸沿い全てに起こっていったというのが現状でございます。
 
 そういう最も被害が大きかった、被害のことは御存じだと思いますが、海の状況を見てみると、海はもう水がいっぱいになってしまうので、中の被害がどうなっていったかということが非常に分かりにくい。陸では一見して分かるのですけれども。そういうときに海の状態を見なければいけない。海の被害状況を知ってこそ、初めてその復興計画ができるというような状況だったと感じておりました。
 そこで、我々は、特に被害があった宮城県の女川町、大槌町に研究所を持っている我々、東北大学と東京大学大気海洋研究所、そして、その当時、もう既に沖合いの状況を調べていた海洋研究開発機構との3者が中心になって、そのプロジェクトを立ち上げていこうということで、この東北マリンサイエンス拠点形成事業(海洋生態系調査研究)というものを立ち上げていったわけです。
 ただ、我々だけではとてもこの広い海域、大変な情況を把握することはできないということで、我々のほかに、組織として岩手大学、東京海洋大学、北里大学、東海大学の参画を得て、この組織ができたというところです。
 その組織というのは、まず前半期と後半期の2期に分かれて活動を行いました。前半期は、政府が出しました集中復興期間であるというところ、後半は復興・創生期間であるというところです。政府方針に従いまして、集中復興期間のときには、先ほど申しましたように、海洋環境がどうなったのか、海洋生態系がどうなったのか分からなければならないということで、それを中心に行ってきました。そして、後半の復興・創生期間は、そのデータをもとに、どうやったら実際の復興に寄与できるのかというところを中心に詰めていったところでございます。
 その中で、後半は組織を変えていって、漁業復興支援委員会をつくり、漁業復興支援に向けた取組を行ったというところでございます。
 その中で、前半は調査でいろいろデータが得られたのですが、特に後半になりまして、ここに書いてありますように、3中核機関が一体となって、この復興研究に取り組むという形を取らせていただきました。縦軸に書いてあります被災海域における漁業復興支援、モニタリング調査の実施、それから、生態系モデルの構築、データベースの充実と展開、活動成果の広報と人材育成の支援という形で縦軸に、横軸には、各大学が中心となって行った課題を置きまして、それぞれ横串・縦串を入れまして、みんなで協力してやったというところでございます。特に、そういう成果を、一番下の活動成果の広報と人材育成というところに力を入れてまいりました。
 実際にどういうことをやっていったのかという具体的なところをお話しいたしたいと思いますけれども、こういう復興というのは、もう各湾・各地域で全然方向性も違うし、漁業も違うし、構造が違う。それを全て一度全部調べた上で、それぞれに合った対策を取っていこうということで、かなり広範囲にわたって調査を行いました。また、それだけではなくて、大槌湾と女川湾では、それを中心的にいろいろな研究を集中して行ったというところでございます。
 その大槌湾も女川湾もそうなのですが、そういう観測機器を常設させまして、リアルタイムで行ったというところでございます。
 その成果の一つとして、このように今まで希薄だった海底地形の調査を行いまして、その成果が出て、精密な海底地形地図ができたというところでございます。
 実際にがれきの分布などというのは、一様に全部行くのではなくて、海底谷に集中するとか、落ちる部分が違うということも明らかにすることができました。
 また、地震前と地震後で河口などが違って、アサリだとかシジミだとかの漁業が壊滅したのを、モニタリングしながら、漁業者とともにそれを復興すると同時に、国土交通省などにもこういう状況を知らせて、浚渫工事をしてもらうという活動も行いました。
 漁業に対する一例ですけれども、ホッキ貝は桁びきによるのですが、こういうコンクリートブロックが落っこちてきて漁具が壊れるという状況で、壊滅状態になったのですが、そこで国土交通省のデータに独自のがれき地図を作って、復興を成し遂げたというところでございます。特に漁具の改良も行いました。
 さらに、女川町とは共同研究でやったのですけれども、新しい漁業ということで、三陸のナマコの増殖活動にも新しい知見を入れて、漁業者とともにこういうのを行っていったというところでございます。
 また、TACOpiというカメラを装置して、タコの生態を明らかにしながら、効率的な漁業を考えるということも行いました。
 そして、SDGs、将来の持続可能な漁業のために、得られたデータを使ってモデルを作って、その将来予測をしようという活動も行ったところでございます。
 それらを国内・国際的に様々な場所で報告を行っていったということもやりました。
 もちろん、一般市民も学生たちも、それをそういう形で行いました。これは未来科学館で行ったセミナーでございます。
 これは日本学術会議とともに行ったセミナーでございます。
 全体をまとめますと、このような形で道筋を立てながら、確実にこれを見ていきながら進めていったという事業でございました。
 そういうものの結果を論文や総説、その他の科学的なことだけではなくて、この一冊にまとめて御報告を申し上げました。驚いたことに、これがネットで売られていたのですけれども、もう全体を買う必要がないのです。実は、これのデータは全て我々のホームページに載せてございます。
 そのホームページを開いていただくと、一括ダウンロードできて、女川ハビタットマッピングもそうなのですが、全てダウンロードできるように作っております。
 甚だ簡単でございましたけれども、全体の概要を御説明申し上げました。どうも御清聴ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】  御説明ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に対して御質問等ございましたら、委員の皆さんからお願いいたします。
 谷委員、お願いします。
【谷委員】  ありがとうございます。谷です。
 今拝見いたした、少し前に、2050年はこうなるという比較の絵があったと思うのですが。これは何がどうなるということを書いてあるのでしょうか。
【木島研究代表】  これは地球温暖化の影響も含めて考えていって、この右側のところ、ちょっと分かりにくいかと思いますが、北のほうに養殖適地が動いているという予測を立てたということでございます。
【谷委員】  そうですか。分かりました。ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】  それでは、藤井委員、お願いします。
【藤井(徹)委員】  御指名ありがとうございます。水産研究・教育機構の藤井でございます。木島先生、お久しぶりでございます。
【木島研究代表】  お久しぶりでございます。
【藤井(徹)委員】  長い間のプロジェクト、お疲れ様でした。ありがとうございました。
 一つ、今の御報告で気になったところがあったのですけれど。このプロジェクトの成果というのですが、そういうものがネットで販売されていたというふうなことをおっしゃったと思うのですけれど、これはどういうことが起こっていたのでしょうか。
【木島研究代表】  いや、我々の成果報告書を全ての都道府県に配布したり、研究者に配布したり、全て配布したのですが、それのうち、ネットでこの報告書がオークションみたいな形で出されていたのですね。それは、誰かが勝手にやってしまったということだと思うのですけれども。
 ただ、その必要はなくて、我々はこれは全て公開していますので、誰でもダウンロードして手に入れることができるという形にもともとしてございましたので、そのことを申し上げたところでございます。
【藤井(徹)委員】  なるほど。適切にそうやってデータを公開しておれば、そういう海賊行為と言いましょうか、不正というのですか、そういう行為も防除できるという、そういう理解でいいのでしょうかね。
【木島研究代表】  そういうふうに考えております。
【藤井(徹)委員】  安心しました。ありがとうございます。
 それで、あと二つくらいお願いします。
 東北の水産業、これが私の印象で、やはり思いのほか早く復興したなと。また、新しい動きが始まって、最近時々三陸のほうへ行くこともあるのですが、当時のことを思えば、新しい活気が生まれているなとも思うのですが。やはりこれに関しまして、東北マリンサイエンスでの取組、成果が貢献したところ大きいと思うのです。そのあたり、ここでPRできることがあったら、何かお一つ二つ聞かせていただきたいです。
【木島研究代表】  最も大きいのは、復興のためには、我々科学者が結果を出すだけではなくて、それをきちっと漁業者、地方自治体、漁協などに伝えていって、御理解いただく、そして、一緒に次の海を考えるということができたからだと考えております。
 実際に、震災前は、大学の先生が幾ら海に行っても、捕るな捕るなと言って邪魔するんだというようなイメージがあったのですが、このプロジェクトのおかげで、漁業者がいろいろ聞いてきてくれる、また、先の話もしてもらえるというか、一緒にできるような、そういう関係ができたという。それが、私、一つ、このプロジェクトで、科学的な知見だけではなくて、効果があったのかなと思っております。
【藤井(徹)委員】  ありがとうございます。
 恐らく、そこのところ大丈夫ですかということを、私、審査委員としていろいろ意地悪な質問をさせていただいたと思うのですが、期待以上の成果が上がったようで、とてもうれしく思います。
【木島研究代表】  ありがとうございます。
【藤井(徹)委員】  それで、もう一つなのですけれど、産業の復興に関しては、人がこうやって手助けしてあげられるわけなのですが、生態系が津波で大けがを負ってしまったもの、これはやっぱり自然治癒といいますか、回復するのを見守るしかないと思うのですが、ちょうど2010年過ぎた頃から気候変動の影響もありまして、東北の海の様子も随分変わっていると思うのですよね。その中で、生態系の回復具合といいますのはどうだったかというあたりをお聞かせいただければと思います。
【木島研究代表】  簡単に申し上げますと、前の状態に変わっていく、非常に早く変わったところと、いまだにまだ変わる途上であるという部分がございます。
 ただ、この震災だけの影響ではなくて、地球温暖化の影響もあって漁業がうまくいかないということもございましたけれども、そのことに関しましても、いろいろと漁業者が自ら話を聞くし、自ら何かをしようという気になっているというところが大きかったかなと思っております。
 特に、漁業で、もうそんなに捕るなと言っていたのが、なぜそういうふうに言っていたかということを実感として持っている漁業者が増えてきて、養殖の密度を変えたり、あるいは、漁業の捕る量を変えたり、あるいは、時期を変えたり、いろいろ考えていってくれているのだなというのを身をもって感じているところでございます。
 生態系に関しては、どうしても人間ができるところとできないところはありますけれども、そういうことも、人間があまりやり過ぎているということを感じているのではないかなというふうに思います。
【藤井(徹)委員】  ありがとうございます。長くなりまして失礼しました。どうもありがとうございました。
 以上です。
【藤井(輝)分科会長】  では、窪川委員、お願いいたします。
【窪川委員】  窪川です。木島先生、どうも御説明ありがとうございました。
 今御質問がありました藤井先生と大分かぶってしまったのですけれども。
 新しい漁業の展開という御説明を頂いたのですが、それまでの漁業の復興と、新しい漁業の展開と、その両立というのもなかなか難しかったと思います。IT化も一つ重点に置かれていますけれども、漁師の方々は、従来どおりの復興と、新しいことへの取組と、どのような割合と言ったらおかしいのですけれども、反応だったのか質問したいと思いました。
【木島研究代表】  大変難しい御質問だと思うのですけれども。最初の5年間は、お互いそんなに信頼関係を持つことがなかったと思うのですが、後半になりまして、やはり10年のプロジェクトをやらせていただいたおかげだと思うのですが、皆さんが理解をしてくれた。理解をしてくれると、徐々に徐々に全体を理解しようという気風が生まれた。今、生態系だけ守ろうというようなことはもちろん我々も言いませんけれども、向こうはそういう気になってくれたので、今後いろいろ進められていくのではないかなと考えているところであります。
 割合というのはちょっと分からないですが。
【窪川委員】  すみません、表現が悪くて申し訳ありません。今の御回答は期待しているとおりでした。ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】  ありがとうございました。
 では、川辺委員、お願いします。それぞれ、少し手短にお願いできればと思います。
【川辺委員】  私こちらのフィールドとして、どうして福島は入っていなかったのか疑問に思ったものですから、教えていただければと思います。
【木島研究代表】  これも簡単に申し上げます。福島は別のプロジェクト、放射能というプロジェクトで、特別な海域になっていましたので、我々のところからは、文科省との話し合いの中で、そこには中心ではなくて、三陸、特に岩手、宮城を中心に行うということで進めさせていただきました。
【川辺委員】  分かりました。ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】  それでは、阪口委員、お願いします。
【阪口委員】  10年でとりあえず一区切りはついたということですが、例えば、がれきマッピングなどは非常に貴重なデータなので、大がかりには無理でしょうが、次の10年に一回とか、そういうふうなことをやれという遺言状のようなものをぜひ残していただきたいなと思うのですが、いかがでしょうか。
【木島研究代表】  まさに一番申し上げたいところでございます。せっかくここまで来たので、こういう調査なり関係を、もう細々でいいから続けていかせてもらいたいというふうには考えております。
【阪口委員】  ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】  それでは、小原委員、お願いします。
【小原分科会長代理】  阪口委員と同じ趣旨と思いますけれども。まずは復興支援を大分されているというところですけれども、その復興がもう既に十分なのか、今後もその復興に対して何かすべきことがあるのかということ。
 それと、あとは、このプロジェクト、拠点形成事業という名前ですけれども、その拠点ができたということで、今後の展開はどのように予定されているかということをお伺いしたいと思いました。
【木島研究代表】  拠点のほうを先に申し上げますと、私のいた女川のところには、このプロジェクトを中心的にやってきた人間が残って、これも予算がないので細々ですが、続けております。また、JAMSTECも、それから、東大も、いろいろな対応で組織を作って、その拠点を継続しているというのが実際のところです。
 すみません、一番最初の御質問は。
【小原分科会長代理】  復興についての今後の協力というか。
【木島研究代表】  現実には、復興は100%戻ったというのではなくて、地球温暖化等の影響、環境の変化の影響もあって、なかなか苦戦している部分がございます。ただ、そのことに関して漁業者が、じゃ、どうしたらいいんだということを非常によく考え出してきているので、引き続き、今、研究者と漁協、地方自治の壁が低くなったので、お互いに話し合っていってもらえればいいなと考えているところでございます。
【小原分科会長代理】  なるほど。ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】  谷委員、お願いします。
【谷委員】  ありがとうございます。
 1点、今28だと思いますが、18ページに海底地形図の絵がございました。これ、ちょっとミスリーディングなので申し上げておきますけれども、TEAMSが始まる以前でも、ちゃんと地形は分かっておりました。TEAMSでハイレゾのデータが入ったという点は確かなのですが、ご説明では何もなかったところに地形図ができたみたいに聞こえました。実はこれはもっと内在する深い問題がありまして、海底地形データというのがどういう具合に管理されていて、誰がどう知っているかということが明らかになっていないという、この分科会で議論しないといけない問題があります。
 すみません。この今の議題には関係ないのですけれども、こんなに何もなかったということはありませんので、申し上げておきます。
【木島研究代表】  ありがとうございます。これ、JAMSTECから頂いた、自分の専門ではないものですから、そのまま伝えてしまいました。私の説明不足でございました。失礼いたしました。
【谷委員】  申し訳ございません。決して木島先生の話ではなくて、そもそも地形データの管理がどうなっているかという、そっちのもっと本質的な問題だと思いましたので。失礼いたしました。
【木島研究代表】  とんでもございません。ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】  それでは、川合委員、お願いします。
【川合委員】  東京海洋大学の川合です。
 生態系のモニタリングとかモデルの構築をされて、それを漁業に生かすというお話だったと思うのですけれども。実際にこの漁業者の方がデータにアクセスして、それを簡単に分かるようなサイトを作ったとか、そういうような例がありましたら教えてください。
【木島研究代表】  期間中は、リアルタイムで取れたデータを、例えば、我々のホームページもそうでしたが、水産庁のやっています海洋環境のデータに載せて、皆さんが携帯で見られるようにさせていただいておりました。ただ、今現在は、携帯で見られるところの財力がないので、それはできていないというふうに聞いております。よろしいでしょうか。
【川合委員】  はい。ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】  よろしいでしょうか。
 すみません、時間が押している中ですが、一つだけお伺いしたいです。
 人を育てるということも同時に大事だと思うのですが、若い人たち、例えば、学生あるいは所謂ポスドククラスの研究者などが、どれぐらいの人数関わったか、定量的に把握していらっしゃいますでしょうか。
【木島研究代表】  人数の把握は今すぐ出てこないのですけれども、報告書の中には書かせていただきました。かなりの学生さん、かなりの大学生、大学院生が、このプロジェクトに関わってくれまして、卒論、修論、D論に、全体で少なくとも10や20は関わっていると思います。
 また、このプロジェクトで採用させていただいた若手研究者が、そのままパーマネントの職に就いているというか、研究職、大学の中に残っているという方も多くいらっしゃいます。
 もう一つ、高校生対象のオープンキャンパスで、こういう話を全てやっていたものですから、それを聞いて大学に入ってくれる、うちの研究室にも入ってくれる学生がいたというのは、大変うれしいなと思っているところでございます。
【藤井(輝)分科会長】  ありがとうございます。それも、非常に重要な成果の一つではないかなと思います。
 それでは、河野委員、御質問ございますか。
【河野委員】  申し訳ございません。一つだけなのですけれども、これだけの御成果、素晴らしいと思います。国際的にはどういう形で発信しておられるのでしょうかを教えていただければと思います。できれば、国際的に広く発信する方が良いと思いますので。
【木島研究代表】  国際的には、国連防災世界会議とか、そういうチャンスには、我々の活動、我々の成果を発表させていただいております。
 また、このプロジェクトをやっていましたら、例えば、タイとかインドネシアとかいうところからも大変興味を持たれたので、そちらに行って講演会、あるいは、向こうの大学と共同でセミナーを開く、さらには、中国、今問題になっていますが、ロシアなんかにも要請があって行かせていただいて説明をするというような形で、かなり講演のチャンスがございました。
 特にAPECの会議のときにも、この状況を説明させていただいたところでございます。よろしいでしょうか。
【藤井(輝)分科会長】  よろしいでしょうか。
 では、説明はこれでお終いにさせていただきまして、木島先生には、恐縮ですが、御退席いただきたいと思います。どうもありがとうございました。
【木島研究代表】  どうもありがとうございました。失礼いたします。
【藤井(輝)分科会長】  それから、先ほどお話しいたしました河村委員も、ここで一旦御退席ということでよろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。
 
(河村委員退席)
【藤井(輝)分科会長】  それでは、事後評価案、審議を行いたいと思います。
 ここまで有識者会議「東北マリンサイエンス拠点委員会」で主査をしていらっしゃいました松田治先生に御出席いただいております。この事後評価案の内容について御説明をお願いいたします。
 松田先生、よろしくお願いします。
【松田主査】  ただいま御紹介いただきましたマリンサイエンス拠点委員会の主査を務めておりました松田と申します。よろしくお願いいたします。
 事後評価案について、これから御説明しますけれども、時間が5分ということで限られておりますので、多少駆け足になることをお許しください。
 拠点委員会というのは、研究計画、あるいは、この事業への助言や評価を目的としている委員会でございまして、公募要領の策定も行いました。
 拠点委員会の構成は、例えば、東京大学の小池名誉教授、東京海洋大学の竹内学長をはじめとして、国の水産研究所、あるいは、宮城県、岩手県の海洋科学関係者、科学ジャーナリストなどとなっております。
 拠点委員会で当初から強調されてきた点が2点ございます。
 一つは、この事業は研究予算による研究事業ではなく、復興予算による拠点形成事業ということであります。したがいまして、従来の研究では、一部には「研究論文の完成をもって一段落」という側面もございましたが、本事業では、成果が直接復興につながることが求められております。
 次に、2点目として、拠点は必ずしも箱物やハードを意味するものではなく、拠点形成とは事業の成果が持続的に活用される仕組みづくりのことであります。したがいまして、このプロジェクトは事業期間をもって役割を終えるのではなく、事業の終了後も機能を発揮し続ける必要がございます。つまりは、この成果はむしろこれから問われるということでございます。
 これは先ほど木島代表からのお話にもありましたが、したがいまして、事業の全体構想では、事業の終了後にも事業の展開が想定された形になっております。
 課題の概要・目的、問題構成等については、お手元の資料2-3の2ページ、あるいは3ページにございますので、御参照いただければと思います。
 研究開発計画との関係、あるいは、施策の目標につきましては、資料の4ページから6ページにありますけれども、ここで紹介したい点は、先ほども議論がありましたが、この蓄積されたデータベースへのアクセスの多さでございます。国内外に提供されましたデータに対して、アクセス数は、事業終了時点の過去3年間で約760万件、全期間では1,600万件というような非常に多数になっておりまして、諸外国からも187か国という、国連の全加盟国数に近いような多くの国々から、当時で460万件以上のアクセスがございました。その後もアクセス数が増えていることと思います。
 時間がございませんので、総合評価から紹介させていただきます。拠点委員会としての総合評価といたしましては、全国の多くの研究者の参画を得て、漁業者・自治体のニーズなどに対応した研究が展開されまして、研究機関が漁業者と直接対話を進めながら、漁場環境・生態系の調査研究を10年間続けたことで、人材養成の促進・外部機関との連携が非常に進んだということで、生態系・生物多様性の回復が可能なレジリエントな沿岸域構築へ貢献したというふうに評価されました。さらに、事業開始後の2015年に国連で採択されまして、今大きな動きとなっておりますSDGsの動きを先取りした取組と言えるものと考えております。
 下のほうですが、評価の概要としましては、したがいまして、学術的な成果を被災地域に還元し、事業終了後も研究拠点・復興支援拠点機能を引き続き発揮できる体制構築を概ね実現したというふうに評価されました。したがいまして、全体として計画を上回る成果を上げたと評価できるということでございます。また、本事業で得られた科学的知見・データをまとめ共有・公開した点も含めて、本事業の意義は大きいものと認められました。
 各論的な研究評価については詳しく触れられませんけれども、資料の8ページから11ページのところに、必要性、有効性、有効性(つづき)、さらに、人材の養成等、さらに、効率性などについて書かれておりますので、詳しくはお手元の資料を御参照いただければと思います。
 今後の展望ですけれども、これは資料の12~13ページに書かれているものを抜粋いたしましたが、本事業により大学等の研究機関と地元地域との関係が構築されたことで、今後、漁業以外の面においても、地域での絆がより強固になることが期待されるということであります。さらに、本事業により得られた、地域の問題の解決に向けた協働のモデルを、他の地域、海域を含めて、広く普及させていくことが望まれております。
 あと、拠点委員会としてかなり重要だと考えた点は、下のほうの赤枠の中ですけれども、本事業で得られた成果は、10年間という長期の研究期間によるものが非常に大きいと認められました。海洋環境・生態系研究では、適切な期間を確保した今後の事業計画が望まれるところであります。
 さらに、本事業は、震災からの復興に対して、科学的なアプローチに基づいてソフト面からの貢献をしたものでございます。震災復興のような事業に対しては、インフラ整備等のハード面だけでなく、ソフト面での貢献も必要で、したがいまして、今後起こり得る震災からの復興の際におきましても、こうした両側面からの対応が期待されると考えております。
 したがいまして、研究成果の全体像を拠点委員会で俯瞰した上では、次の2点が重要であります。
 一つは、組織やセクター間の分野横断的な連携が従来に比べて著しく進んだという点でございます。
 さらに、研究者の世代交代、あるいは、多くの若手研究者が育ったということでございまして、先ほど議論がありました点について一部だけ触れますと、例えば、今から1年半ぐらい前の時点で、学位取得者の数は、課題1、東大の大気海洋研グループだけでも、修士43名、博士19名が生まれました。
 したがいまして、分野・組織間の広大な横のつながりと、世代的な縦のつながりが、今後の事業終了後の展開にも最大限活かすことが大切だと考えております。
 最後に、課題と展望といたしましては、成果報告書のほうにも、今回得られた多様な連携推進のモデルになるだろうということ、それから、このTEAMSの成果の幅広い活用への期待が書かれておりますので、こういったことも含めて、今後が期待されるのではないかと思います。
 御清聴、大変ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】  御説明ありがとうございました。
 この事後評価案につきまして、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。
 それでは、榎本委員、お願いします。また、時間が押しているので、それぞれ手短にお願いします。
【榎本委員】  ありがとうございます。
 10年間の長い活動で、それで、最初の5年間で現状の把握、後半のほうで提案、そして、発信というふうに、10年間活発に活動されてきたのですけれども。今回の資料の中でも、ロードマップ的な5年間、10年間、そして、最後の発信とあったのですけれども、こういったものは、最初の予定どおり、5年、10年で目標がきちんとできていくものなのか、あるいは、もうちょっと時間をかけたほうがよかった、あるいは、早めにできたので次に移ったほうがよかったみたいなところの評価とか御意見とかはあったのでしょうか。
【松田主査】  ありがとうございます。
 いろいろな議論にありましたように、10年間が結果的に重要だったということは確かでございまして、さらに、最初の5年間と後半の5年間は随分事情といいますか、意味合いが違うのではないかというような議論になったと思います。
 最初の5年間が終わった時点では、最終的な成果まで必ずしも十分に見通しが立っておりませんでしたけれども、さらに、全体のメンバーはかなり多いということもありますので、この拠点形成事業の趣旨が全ての研究者の末端まで十分伝わるかということが心配されておりましたが、各課題のリーダー層の人たちが非常に頑張っていただいて、後半5年間には随分成果の達成に対する貢献が進んだのではないかと感じております。
【榎本委員】  ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】  よろしいでしょうか。
 それでは、前川委員、お願いいたします。
【前川委員】  海洋政策研究所の前川でございます。ありがとうございます。
 松田先生、大変包括的な御発表ありがとうございました。
 この大変重要な事業について、今後の持続可能性、地域の拠点の継続性という点においても高く評価をされていたと理解いたしました。このような取組の継続性を担保する仕組みのようなもの、特に地域においての資金的な手当てを今後どうしていくのかというのが、一つ重要な課題になるのではないかと思われます。さらにその点に関しては、人を育てるというのも非常に大きな要素かと思います。それに加えて、その地域の拠点を継続していくために、既存の仕組みにある程度新しい機能を取り込んでいくであるとか、地域で資金的なものが循環するというようなことも非常に大切かと思うのですけれども、このような視点でもし何か教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
【松田主査】  前川さん、大変ありがとうございました。
 このような成果を今後どのように持続させていくかという御趣旨だというふうに理解しましたけれども、一つは、各地域の公的な協議会とか委員会にかなりTEAMSの関係者、メンバーが加わっておりまして、そういった活動は一種の地域の事業として続いている部分がございます。
 それから、よく研究者の間から出た意見としては、研究者と現場の生産者の間の信頼関係がやっぱり以前とは全然違うという、そのつながりはかなり財産として大きいのではないかと感じておりまして、そういったものが今後もバックグラウンド的には非常に生きてくるのではないかと思います。
 それから、これを継続するための直接的な予算措置については、私、すぐにはお答えできませんけれども、様々な復興の継続をするための事業、予算を執行していく上で、この成果は様々な形で反映されていくのではないかと感じております。
 全体のお答えにはなっておりませんが、とりあえず以上です。
【藤井(輝)分科会長】  それでは、中川委員、お願いします。
【中川委員】  日立製作所の中川です。私は情報系の者ですので、データベースについて質問させてください。
 今後も、この今後の運用にデータの公開の範囲の規則化とか、そういうものが非常に重要であるということが、総合評価のところに書いてあったかと思います。この10年間の研究で得られたデータというのは、もちろん、こういった漁業ですとか海洋生物に関わるものだけではなくて、先ほども防衛等、安全保障に関わるような重要なデータもあるかと思います。例えば、同じ文科省ですけれども、HPCインフラみたいなところで、DIAS、データのインテグレーションのシステムというのもございますけれども、そういった、ここで得られた貴重なデータを今後どういうふうに活用していくかというところについて、今後の展望とか希望とか、そういうところがありましたら、ぜひ教えてください。
【松田主査】  ありがとうございました。
 このデータベースが事業終了後も一応システムとして続けられるということは、一つ大きな成果ですが、それを、今お話ありましたように、いかに活用していくか、有効に使っていくかということは、かなり大きな問題です。先ほど紹介しましたように、世界の非常に多くの国からたくさんのアクセスがあったということは、一般にこの東日本大震災や津波等に関する関心が非常に強いのではないかと思っております。
 それで、拠点委員会で出た議論としては、どうしてそんなにデータベースへのアクセスが多いのか、その原因究明のようなことをやる必要があるということまで出ておりますけれども、一応1年前に拠点委員会としては活動を終了しましたので、そのところはまだ今後の宿題のような形になっていると思います。
 それで、それを検討する中で、先ほどの安全保障ですとか、あるいは、公開の制限とか、そういったことを具体化していくのがよろしいのではないかというふうに私自身は考えております。
【中川委員】  なるほど。議論はされて、今後まだ分析も必要だけれども、活かしていくというところは合意されているということですね。
【松田主査】  そうですね。
【中川委員】  ありがとうございました。
【松田主査】  ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】  藤井委員、お願いします。
【藤井(徹)委員】  ありがとうございます。
 松田先生、ありがとうございました。
 ほぼ感想なのですが、この10年にわたって、生態系のすごく充実したデータが取れたことと、それに関わったたくさんの学生さんたちが成長したことというのは、ここに載っている成果に加えて、将来に向けたすごく大きな財産になるというふうに御説明を聞いて感じました。
 それから、もう1点、やっぱりこういうことができたのは、10年間という長いスパンで充実したプロジェクトができたというのがすごく大きかったと思いますので、これは文科省さんへのお願いになるのですが、やはりこれくらいのスパンの大型のプロジェクトをこれからも計画していただきたいと思います。
 以上です。
【松田主査】  ありがとうございました。藤井先生の御意見に全く賛成でございます。
 特に、実際にやってみて、この頃、どちらかと言いますと、研究期間が短縮する方向にありますので、この10年間という意味は大きかったのではないかということが、拠点委員会での非常に強い意見となりましたので、本日も多少紹介させていただいた次第でございます。
【藤井(輝)分科会長】  よろしいでしょうか。
 では、谷委員。時間が30分ぐらい押しているので、手短にお願いします。
【谷委員】  ありがとうございます。谷です。
 全くかぶりますが、10年という期間が研究系では非常に大事だということを認識させてもらったということをきちっとレポートされたのは、大変良かったと思います。
 それから、一つ、これは我々の課題でしょうけれども、組織間、セクター間の壁をどうやったら取れたのか。これは10年という時間が大きかったと思うのですが、これはほかの分野でもある話で、あるいは、ほかの地域でもある話ですので、そういったものを、この経験をもとに、ほかの分野、ほかの地域でも、こういった方法で垣根を下げていくということについて、我々自身、分科会として、そのノウハウを生かしていきたいなと思いました。
 大変いいレポート、ありがとうございました。
【松田主査】  ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】  ほか、よろしいでしょうか。
 私から一つだけ質問なのですが、今後の対応について、公的な資金を確保して、データベースの運用を含めて進めていくということはあると思うのですが、もう少し地域の中で持続的に、しっかり民間の資金も入って、この活動がフォローアップされるようなことが期待されると思います。そのあたりについては、評価の中では議論になりましたでしょうか。
【松田主査】  全体のトーンとしては、今後もこれを活かしていくことが一番初めからの目的でございましたし、必要だということは強調されましたけれども、非常に細かい具体的な、どういう仕組みでどうするということは、特別議論になったわけではございません。
 しかしながら、先ほど申し上げましたような人材養成が進んだということで、それぞれの東北大学ですとか、あるいは東大の大槌(大槌沿岸センター)ですとか、JAMSTEC等に様々な人材がこの研究の経験を持っておりますので、そういったものも今後いろいろな形で活かされるのではないかというふうに期待しております。
 以上でございます。
【藤井(輝)分科会長】  ありがとうございます。
 よろしいでしょうか。
 それでは、ほかに御意見はありませんでしょうか。
 今御提出いただいている評価案という形で決めさせていただいてよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【藤井(輝)分科会長】  よろしければ、この形で当分科会としての評価ということで決定させていただきます。
 どうもありがとうございました。
【松田主査】  ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】  それでは、このタイミングで、河村先生に戻っていただくのでしょうかね。
【事務局】  お電話かけますので、少々お待ちください。
【藤井(輝)分科会長】  10年間で非常に良い成果が上がったということでありますので、これをしっかり持続していくような、何らかの仕組みを、民間資金を含めて考えていく必要があるのかなと感じました。ここで集積されたデータには相当価値があるということが、その御報告からも見てとれます。
【河野委員】  すみません、発言させていただいてよろしいでしょうか。河野でございます。
 伺っていまして、10年時間をかけて一つのプロジェクトとしてこれだけの成果が出せたものを、今後細切れにそれぞれの担当の方たちで続けていくというのですと、その成果がなかなか継続していかないように思います。できれば、何らかの形でこれを継承できるような後継プロジェクトみたいなのを立ち上げる可能性があればなと、個人的に希望いたしました。申し訳ございません。
【藤井(輝)分科会長】  もちろん公的な資金もそうなのですけれども、やはり民間資金がちゃんと入って持続するという形も含めて、うまく仕組みを考えていただくのがよろしいのではないかと思いますが。今御指摘いただいた点についても、ぜひ海洋地球課のほうでも御検討頂きたいと思います。
(河村委員参加)
【藤井(輝)分科会長】  それでは、次の案件に参りたいと思います。繰り返し申しておりますが、大分時間が押していますので、皆さん、活発に御意見いただいて非常に良いことだと思うのですけれども、一つ一つをできるだけ短めにお願いできればと思います。
 2件目は、「海洋生物資源確保技術高度化」についてであります。こちらは、見延委員が利益相反に該当しているということですが、これも御説明が終わってから御退室いただくという段取りでお願いできればと思います。
 それでは、まず本事業のプログラムディレクターである西田睦先生から御説明いただきたいと思います。
 西田先生、よろしくお願いいたします。
【西田プログラムディレクター】  琉球大学の西田でございます。よろしくお願いいたします。
 今画面に出ております、この海洋生物資源確保技術高度化というプログラムのプログラムディレクターをしてまいりました、その立場から、この成果の概要を10分で御説明させていただこうと思います。資料に沿って説明いたします。
 では、カラー刷り1ページ目、まず事業概要です。簡単に背景を御説明いたします。上の四角に囲まれたところですけれども、気候変動、あるいは乱獲等による海洋生物資源の枯渇が懸念される中で、第5期科学技術基本計画、あるいは、第3期海洋基本計画においても、食料の安定的供給や海洋生態系の総合的な理解の重要性が強く指摘されているところです。このプログラムは、それを受けて、上の四角の最後のところに書いておりますけれども、海洋生物資源の新たな生産手法の開発、あるいは、海洋生態系の構造・機能の解明を行うための研究開発を実施して、危惧されている問題に重要な知見を提供するということを目的にいたしました。
 評価いただくのは、この下の左右二つの研究課題ということになります。やや性格は違うのですが、今申し上げた二つの目標をそれぞれ担っているというものになります。
 左側は、生殖幹細胞操作によるクロマグロ等の新たな受精卵供給法の開発。いわゆる借り腹という技術を使って、大型で飼育が大変、そして、成熟するまでにすごく時間がかかるクロマグロ、マグロ類について、小さな別種の魚のおなかを借りてマグロを産ませるという技術を確立していこうという、そういう課題であります。研究代表者は、東京海洋大学の吉崎悟朗教授ということになります。この課題が目指すところを一番下の行に書いてあります。
 右側、二つ目は、我が国の魚類生産を支える黒潮生態系の変動機構の解明ということであります。これは水産研究・教育機構の研究所の高橋素光さんが代表でしたが、人の異動で代表者が替わりましたけれども、最終的にこの高橋さんが代表ということで。
 黒潮域、これは日本の漁業にとって重要なのは言うまでもないのですけれども、黒潮という根拠になるように、水がきれいなのですね。ということは、生物生産ということでは、そう高くないものではないか。しかし、重要と。これ、一種のパラドックスだなということで、黒潮のパラドックスというふうに位置づけて、そのメカニズムを解明しよう。そして、解明したところをベースに、生態系全体の理解に基づく漁業管理へのモデルを使った展開を狙うという、そういう課題であります。
 一つ目の課題のほうの主な成果です。これは生殖幹細胞プログラムというふうに申し上げますが、その主な成果。大きくクロマグロを生産する小型代理親魚の作出というところ、同じレベルであと三つ書いてありますが、大きく四つの課題を並行して行ってきて、それぞれ大きな成果を上げたというのが結論になります。
 まず代理親魚です。小型のものをいろいろ試みて、相当な試みをやった中で、最後の行に書いてありますように、スマの雌とタイセイヨウヤイトの雄の雑種から、完全なクロマグロの精子の生産に成功したということです。これはもう少し時間があったら、雌のほうも恐らくできるでありましょうが、これからに期待しますが、ここまで来たということ。
 それから、二つ目に、さらに基礎技術として、生殖幹細胞を培養し凍結ということで、これも大きな成果を上げた。特にモデルとしては、ニジマスにおいて大きな成果が出まして、Nature系のジャーナル、あるいは、アメリカ科学アカデミー紀要等に非常に注目される論文が出されております。
 下の二つも(音声途絶)
【藤井(輝)分科会長】  西田先生のほうが止まったのでしょうか。
【大土井海洋地球課長】  西田先生、止まっていらっしゃいます。ちょっと復旧を、別途連絡します。ちょっとだけお待ちくださいませ。
【西田プログラムディレクター】  失礼しました。途切れましたでしょうか。
【事務局】  西田先生、聞こえております。途切れておりましたが、現在は、聞こえております。
【西田プログラムディレクター】  すみません、続けさせていただきます。
 二つ目の黒潮生態系のプロジェクトのほうの主な成果です。左上を見ていただきますと、四つレベルがあります。それぞれ進めてきたのですが、一つ目、基礎生産力の推定を頑張ってやったのですが、普通、珪藻類が光合成をして、第1次生産を支えるわけですけれども、黒潮域の場合は、ハプト藻類が重要ということ、そして、そのハプト藻類を、カイアシ類も使うのですけれども、三つ目に書かれていますように、Tunicate Food Chainと名づけたのですけれども、オタマボヤ、小さなホヤの仲間が食べて、そして、それが小さな魚、イワシ類等に行くという、こういう新たなフードチェーンが見つかり、これが重要だということが分かったという画期的な成果を上げました。そういう新たな知見をもとに、黒潮系の魚類生産の由来を解明し、相当なレベルで、特に仔稚魚、これの生産に大きな貢献をしているということが明らかになったというところです。最初掲げた黒潮のパラドックスもまず解けたというところで、大きな成果です。一番下に書きましたように、多様な生物からなる黒潮生態系全体の生産力の持続的な利用への基礎的知識とモデルの構築というところで、大きく貢献できる成果が得られたと考えております。
 研究実施体制・計画の状況ですが、左右二つそれぞれ書きましたけれども、これ、二つのプロジェクト、ちょっとおもしろいのは、左側は、吉崎教授が中心になって、強いリーダーシップで、その中にこの四つのチームを作って動かしていったということであります。それぞれ大きな成果を出していると。
 一番下に書かれておりますけれども、生物、特に大型の生物を飼育して、いろいろ操作し研究していくというのは、1サイクル当たり3~5年かかります。途中で大きな台風が来たりして大変なことになるということも含めて、やはり10年やれたということが極めて大きかったということが言えます。
 さて、右側ですが、黒潮のほうは、上のほうの真ん中あたりに書かれている、1系から5系という班をつくって取り組まれたということです。研究実施体制というところに随分大学の名前が挙がっておりますが、基本的には水産研究所、複数の研究所の連動、そこに大学が加わって、大きなチームで取り組んだということで、この二つ、やや対照的ですけれども、それぞれ工夫をして有効に展開されたというふうに考えております。
 右下にも書いておりますが、これは、特に前半は海洋に出てのフィールド調査に集中いたしましたが、御承知のように、いろんな長周期で海洋は動いておりますので、これの情報を取るのに10年は必要だったということで、大きな効果があったと考えております。
 研究成果は先ほどちょっと述べましたけれども、アウトリーチ、人材育成等も重視いたしました。
 左側、生殖幹細胞のほうですけれども、査読付きの論文数、一番上ですが、88点です。いろんな学会等で積極的なアウトリーチをしている。著書も12冊。
 そして、人材育成ですけれども、真ん中あたりちょっと下、修士論文40編、卒論37、博士論文7、合計84の学位論文が出されているということです。そういう若い方々が、就職先に書かれておりますが、いろいろと関連するところに展開しているということです。
 特許等も多く取っておりますし、水産試験場等への技術移転は、もう既に100件を超える形で求められてしているというところです。
 右側の黒潮生態系ですが、やはり研究論文、100に近い論文を出しております。それから、国内、あるいは国際のシンポジウムを積極的にやり、書籍、そして、特集、国際ジャーナル等も作っていっております。ちょっと文字は小さいですけれども、教育の面で、やはり学位論文をたくさん出しておりまして、合計76という形で、これも若い人を育てるのに大きな成果があったと考えております。
 これは最後のスライドですが、プログラム全体の運営について、私、プログラムディレクターとして、幾つか述べておきたいと思います。
 ポツ四つありますが、一番上、私としては、研究課題ごとに年に基本的に2度開催される運営委員会に同席、あるいはオンライン参加して、あるいは、参加できないときには、プレゼンテーション資料を送ってもらって、研究進捗、計画の点検を行いました。必要な助言を行う。また、事務局と相談して、進捗状況等に応じた予算の配分等、これ、なかなかじわじわと減ってきますので、つらいところはありましたけれども、的確にできたのではないかと思っております。
 二つ目、中間の節目等には、外部評価委員会による進捗状況の確認がございます。そういうところにオブザーバー、ディレクターとして報告させていただくということをやり、そこで出されたいろいろな助言をプロジェクトのほうにフィードバックするということができました。
 三つ目、PDとして、私、幸い、この全期間を通して、10年間を通して担当させていただきました。したがって、立ち上げのときのいろいろな課題とか、経緯だとか、代表者が替わるときのケア、こういうことがしっかりできたかなと思っております。
 最後のポツです。先ほども言いましたけれども、海洋生態系の変動メカニズムの解明、あるいは、大型生物を飼育して育種的な研究をするという、これは時間がかかります。数年単位では明らかに短すぎるということで、これは10年をしっかり活かそうということでやってきましたが、まさにそれは十分な10年を活かす成果が得られたと思います。
 さっきちょっと言いましたけれども、台風のような本当に予想外のアクシデントも乗り越えて、良い成果を上げるということができましたが、これはまさにその10年という実施期間が非常に有効であったということを最後に強調して、私からの話を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】  御説明ありがとうございました。
 それでは、委員の皆さんから御質問等ございましたら、お願いします。
 繰り返しになりますが、全体的に手短にお願いします。
 では、谷委員、お願いします。
【谷委員】  谷です。ありがとうございます。
 西田先生、大変良い御報告ありがとうございました。2点お伺いします。
 1点目ですが、今後、世界は食糧難になると言われております。このマル1 のほうですけれども、それに対する答えを出してくれたのかなと思います。そうすると、このテクノロジーというのは、ノウハウの提供という点で、日本国の資金源になると思うのですが、知財のセキュアはどうされておりますかというのが1点目。
 それから、2点目ですけれども、冒頭、卵のほうはもうちょっと時間があればとおっしゃったのは、非常にもったいない話なのですけれども。これはどれぐらいの時間があれば、あるいは、どういう措置があれば実現するのでしょうか。これさえあれば、日本の資金源の確保というのは完璧になると思ってございます。
 以上です。
【西田プログラムディレクター】  ありがとうございます。非常に重要なポイントを御質問いただきました。
 一つ目、これ、最初申しましたけれど、吉崎先生が先頭に立って非常に頑張っておられる。ただ、これ、相当幅広く、また奥深い課題をやっておられるので、まさに先生おっしゃるように、いろんなことに目配りをして手を打っていかないといけない。それで、やはり大学として、東京海洋大学として、しっかりサポートをまずはしていただきたいなということで申しておりました。ありがたいことに、2020年10月に、この吉崎教授を所長にして、東京海洋大学が水圏生殖工学研究所というのを立ち上げてくれました。それで、そこの体制は大分充実いたしました。それで、海洋大学には、いわゆるURA(University Research Administrator)という高度専門職人材もおられて、知財なんかもかなりしっかりと考える手立てが整っているというふうに理解しております。
 そういうところと、まずは大学にしっかりやっていただき、先生おっしゃったように、それをオールジャパンで稼いでいくところに展開していくところ。これはもう少し幅広く、文科省なんかのサポートもさらに必要になってくるのかなとは思いますけれども、まずは海洋大学がそういう手を打って動き始めてくれたというのは、私、希望を持っております。
 2点目、卵にまで成功させるというところも、これはぜひやってほしいということで、それは教授とも話しておりますが、これも今、最初に申した新たな研究所が立ち上がりましたので、そして、育った若い人が准教授になったりとかしてくれています。ですから、必ずやそこでやってもらえるものと思っています。そこへの資金サポートは、またいろんな形でやっていければ、必ずや実現できると思っています。
 ありがとうございます。
【谷委員】  ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】  ほかにございますでしょうか。
 阪口委員、お願いします。
【阪口委員】  一つ質問があります。代理親魚技法はすばらしいのですけれども、たしか東京海洋大学では、そこに加えて、超早熟の代理親魚を作ることによって、さらに加速するという研究が進んでいるという話を私は聞いているのですが。この研究には、その超早熟宿主の話は入っていないのかということが一つと、それから、もう一つが、これらの技法を作った後、養殖業者に技術移転をして、どんどん進めていっていただければと思うのですが、養殖業者への技術移転というのは、今どのぐらいのレベルにあるのかということをお聞きしたいです。
 以上です。
【西田プログラムディレクター】  どうもありがとうございます。
 一つ目の点、時間がなくて詳しく申し上げられませんでしたが、今ちょうどスライドを示していただいていますけれども、おっしゃった点は、全くこれにしっかりと含まれた重要課題で、随分取り組んでいます。
 特に一番上でも申し上げましたけれども、スマ雌とタイセイヨウヤイト雄の雑種、その形容しているところに、高生残、高成長と書いております。つまり、高成長、速い成長ということも意味しておりまして、まさにそういうものを探ってきました。課題に入っているということで、これは一つの到達点であります。
 それから、実用化に向けての取組、これ、当然、そこの出口が極めて重要です。それで、ここにも少し書いておりますが、先ほど、いろんな試験場に技術移転というようなページがありました。もう100以上ですね。これはしっかり連携をして、本当に実用に持っていくには、まだまだ詰めないといけないことがたくさんありますので、それを共同研究、共同実験で詰めていく、実用化に向けての段取りを踏んでいることになろうと思っております。
 最終的に、谷先生の最初の点とも絡むのでしょうけれども、しっかり稼げるというのでしょうか、本当に効果のある、そして、不具合が生じないようなシステムを構築して、実用に向けていくというところに向けて、例えば、それはもう少し本格的にやらないといけないフェーズになるのだろうと思っております。それは確実に想定されていると御理解いただいていいと思います。
【阪口委員】  ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】  ほかによろしいでしょうか。
 すみません、私からも手短に。
 一つは、移植効率を20倍改善と言っているのですが、胚移植なのか、幹細胞移植なのか、どこからどこへの移植のことを示しているのかという質問です。
【西田プログラムディレクター】  胚の時代の生殖細胞になるべき幹細胞を注入します。稚魚、仔魚の段階で。
【藤井(輝)分科会長】  幹細胞移植ということですね。
【西田プログラムディレクター】  そうです。そして、そのホストのほうが自分で生殖細胞を作れるようになりますと、移植したものはまだ移動しますので、移動して生殖巣に行くのですけれども、本体のほうが多ければ、効率が悪いわけです。本体が雑種で生殖能がなければ、その生殖巣できるものは全て移植したものになるということで、実質的に、それで20倍というような。
【藤井(輝)分科会長】  ありがとうございます。
 もう一つ、谷委員がおっしゃったように、これは資金源になるのだとすると、やはり民間資金をかなり入れてサポートすることが大事になってくると思うのですが、そのあたり、今後の見通しとしてはいかがでしょうか。
【西田プログラムディレクター】  ありがとうございます。
 この10年のプロジェクトでは、そこまで、社会実装というところまで、まだ考えておりませんでした。それは、この難しさですね。方向性は見えているんだけれども、まさに成長が早い代理親をどう作り出すのか。それが自分の生殖巣のないようにしないといけない等々、基礎技術をまだまだ開発しないといけなかった。それをしっかりやるというのをこの10年の課題にしておりましたので、次のフェーズが、まさに今おっしゃっているあたりに、もう一歩で来るところかなと思っていますので、次またこういうプログラムをぜひ立ち上げていただければ、完成をさせて、実際にそこに持っていくというようなプログラムを作れるのではないかというのが私の見方です。
【藤井(輝)分科会長】  分かりました。ありがとうございました。
 皆様、よろしいでしょうか。
 それでは、西田先生、どうも御説明ありがとうございました。ここで、恐縮ですが、御退席をいただきたいと思います。
【西田プログラムディレクター】  どうもありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】  ありがとうございました。
 それから、併せて、見延委員が利益相反に関係するということで、御退席をお願いいたします。よろしいでしょうか。
(見延委員退席)
【藤井(輝)分科会長】  それでは、ただいまの御説明を踏まえまして、事後評価案について審議を行いたいと思います。
 こちら、外部評価委員会の主査をされていた北里洋先生に御出席いただいていますので、この評価案について御説明をお願いできればと思います。
 北里先生、お願いいたします。
【北里主査】  外部評価委員会の主査を務めさせていただきました北里でございます。
 ただいまの西田先生の非常に詳細な御説明がありまして、それを受けまして外部評価を行ったわけでございます。二つの課題、それぞれ非常に異なった研究体制を持っているということがありましたけれども、それを踏まえて、横串を刺す形で評価をしていったということでございます。
 これが評価委員です。利益相反があったりするので、項目によっては退室をお願いした方もございます。
 個々の項目につきまして、事後評価結果案としてまとめたものを、(ア)(イ)(ウ)の順で示しております。
 (ア)というのは、その評価の必要性ということでありまして、評価項目としては、科学的あるいは技術的な意義がどうであるのか、2番目としては、社会的・経済的な意義がどうであるかということであります。
 マル1 の生殖幹細胞につきましては、先ほどありましたように、非常に独創的なアイデアを進展させて、クロマグロ系のものをサバを代理親として使ってやりましょうということで、代理親による配偶子生産など新たな視点を導入したという点、それから、人工種苗を量産するための様々な技術を確立した点という、非常に先進的なものを評価しております。
 一方で、黒潮変動のほうにつきましては、主に海洋観測・調査というのが主体になってくるわけでありますが、まず黒潮流域における低次の食物連鎖網の構造として、従来の食物連鎖にプラスして、Tunicateというものを頂点とする食物連鎖が黒潮域ではあるということを明らかにしたということで、新しい視点を与えたということと、その衛星画像の分析などによって、それぞれの光合成速度、つまり、生産量につながるようなことについて理解をしていったというような科学技術的な意義があったとしております。その成果は、物理モデル、それから、生態系のモデルに流し込んで、黒潮パラドックスに関する議論を組み立てていったということで、科学技術的な意義があったと考えます。
 それから、社会的な意味としては、生殖幹細胞のほうでは、得られた技術を水産試験場、あるいは、民間企業との共同研究を行うなどして、社会に流していくというところの入口をつくっているという点が評価できると思いますし、黒潮生態系につきましては、水産経済学分野の研究者を導入して、要するに、流通経路に関する生産の金額に試算するということをやった。これは、恐らくその先には、社会がどういうふうに食料生産に関わってくるかということで、いわゆるトランスディシプリナリーな分野にも発展するような内容の入口に達しているのではないかというふうに理解をしていることでございます。
 次に、(イ)の有効性がございますけれども、有効性というのは、海洋生物資源の持続的・安定的な確保の技術であるかどうか、新しい概念、基礎技術があるかどうか、それから、関連省庁、産業界、国民のニーズを踏まえた上で実用的になり得るかどうか、それと人材育成の点でございます。
 羅列的に書いておりますが、上のほうから、生殖幹細胞のほうでは、安定的な人工生産や効率的な養殖生産に不可欠な育種に要する時間を短縮化するということを可能にして、海洋生物資源の持続的かつ安定的な確保に資する実用的な技術が確立されたというふうに評価をしております。
 また、その個々の技術につきましては、今後の水産有用種への応用とか、系統保存などにもつながるということで、新しい基盤的な技術がほかの学問分野にも発展しうるというふうに理解をしたことでございます。
 一方で、黒潮系でございますけれども、先ほども言いましたけれども、黒潮海域におけるプランクトンの優占種の違い、珪藻とハプト藻というのが明示的にすみ分けているといったようなこと、それと、カツオ・イワシなどの生息魚種の違いとの関係など、かなり細かい点も含めて理解が進んだということ。それを用いて、新しい黒潮像が見えてきているということが評価されたと思います。
 10年間という非常に広範で多様な研究成果を行ったという点で、それはこの先の出口として、学術会議の提言として出ております「バックキャストをベースとする生態系アプローチ型の持続可能な資源管理」というものを組み立てる際の非常に貴重なベースのデータ研究になるというふうに理解をしているところであります。
 そういう点で、いずれも高く評価することができるということです。人材育成に関しても、論文等につきまして、一定の成果が得られていると理解しています。
 次の(ウ)、これは効率性ということで、研究開発の進め方とか、計画や実施体制、それから、経費の妥当性があるかどうかという、全体のマネジメントのことでございます。
 海洋大学の生殖幹細胞につきましては、吉崎先生というリーダーの強いリーダーシップをもって研究をされているという点で、非常にコンパクトであり、非常に求心力の強い研究体制で成果を出し続けていたという点で、うまく機能したなというふうに理解しています。
 それから、黒潮生態系のほうは、水産研究・教育機構という非常に大きな国研を中心として、幾つかの大学が絡むということで、東北マリンサイエンスなんかと似たような形のプロジェクト型に近いとは思うのですけれども、プロジェクトリーダーや、それぞれのグループの長が非常にうまく連携をしてデータをまとめて、成果につなげていったというふうに理解をしているところであります。
 そういった二つの課題ともに、それぞれ特徴が違うし、目指すところも違ってはいるのですけれども、先ほどの西田PDが10年間を通じて見続けていたという点で、両方が発散することなく、非常に適切なデータを得ることができて、プロジェクト自体が有効に機能したというふうに、私ども、評価をしているところでございます。
 これらの個別な情報を含めて、総合評価というのをまとめたわけでございますけれども、ここにスライドにはしておりませんけれども、今の要素的なものを集めたものが総合評価ということになります。二つのテーマも、それぞれ十分な成果が得られていて、海洋生物資源の持続的かつ安定的な確保に資するという本事業の目的は概ね達成できたというふうに評価しています。
 そういったような成果でございますけれども、これが10年経って、これで終わるということではなくて、恐らく今後につなげるべきものだと考えております。
 ここに書いてあることは、基礎科学を推進するとか、長期観測とかいうようなことが書いてあるだけでございますけれども、非常に応用につながるようなたくさんの成果が出ているということもあり、もともと生殖幹細胞のテーマであるとか、それから、黒潮系の変動、それが生物生産にどうつながるかという話というのは、割と水産に関わるような分野のみならず、海洋学、あるいは、最近の生物科学にも十分につながって発展すべき内容を含んでいると理解しておりますので、ぜひ、こういったような基礎科学を推進することを通じて得られたデータを、他分野を含めた科学研究とジョイントするような方向も考えていただければいいなと思っているところでございます。ここには文章としては書いておりません。
 それから、社会実装も見据えたことをやるべきだということについては、言うまでもございません。
 もう1点、一番最初のところで海地課から御紹介ありました経済安全保障に関する問題でございますけれども、ロシアがウクライナに侵入したということで、様々な制裁が起こり、流通系に非常に大きな影響が出ている。生物資源に関しても、同じだと思います。だから、生物資源というのも経済安全保障の重要なテーマであると考えるべきだろうと思います。
 そういう視点も加えまして、10年間行いました海洋生物資源確保技術高度化という研究事業、それの継続するものとして、さらに成果を踏まえて次のプロジェクトに展開していただけるとありがたいというふうに、評価委員会でも意見が一致しております。
 以上でございます。
【藤井(輝)分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、委員の皆さんから御意見、御質問等ございましたらお願いします。これまた手短にお願いします。
 谷委員、お願いします。
【谷委員】  谷です。ありがとうございます。
 御報告、大変ありがとうございました。非常に的確にまとめられたと思います。その上で、短く3点申し上げます。
 一つ目ですけれども、効率性を議論している下から2枚目のスライドですが、これは一番下のところによくまとめられて、一人のPDがされたとか、このとおりだと思いますが。一つ書いていただきたいのは、10年という期間が効率性に貢献したということを書いていただきたいと思うんです。
 何も知らない人だと、10年もかけて効率悪かったじゃないかというふうに思われるのですが、これ、10年あったからここまでの成果ができたので、10年という時間をかけたことで効率性が急遽良くなった、そんなふうに書いておかないと、もっと効率を上げるために5年にさせろ、3年にさせろとなりかねないと思うものですから、明示的に10年が良かったというのが欲しいなと思います。
 それから、全く議論されていませんけれども、これは日本の食料資源に関するノウハウで生きていく知財として非常に重要なので、知財の管理という点でどうかというところがどこかにないといけないのではないかなと思います。
 それから、3点目ですけれども、これは本文のほうですけれども、本文、資料3-3の9ページだったと思いますが、読んだ感じで申し上げて申し訳ないのですが、評価項目、課題1の「当初に」で始まるところの1行目、2行目、「必ずしも適していないなど想定外の状況もあったが」という、この文章が何か否定的に見えるのですが、これはそうではなくて、想定外の状況にもかかわらず、こうしてこうしてうまくやったというふうに書いていただきたいなと思います。私はこれを最初読んだときにネガティブな印象を受けたのですけれども、決してネガティブな話ではなくて、もう想定外の状況があるのは当然想定すべきなのですけれども、その中でちゃんと戦って勝ってきたんだという、そういうふうな表現に変わるといいなと思います。具体的な提案としては、「状況の中で」というふうに書き換えるということでございます。
 以上です。ありがとうございます。
【北里主査】  谷委員、いろいろありがとうございます。まさにそのとおりだと思います。10年かけたことで達することができた成果だと思っております。
 それから、知財についても、きちっとやらなければ。今、データサイエンスというものはものすごく発展しておりまして、幾つかの国というのは、国策でデータを集めるということをやったりしておりますので、そういうものに対する日本としての対応というのを考えるべきだろうと思います。
 想定外のことにつきましても、3.11のときに地震予知ができなかったというのを想定外と言ったことで、非常にネガティブな印象を与えてしまっておりますけれども、そうならないような書き方をすべきだろうなと思っております。ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】  では、先ほどの文章のところは、先ほど御指摘あったような書き方でよろしいのですかね。
【事務局】  事務局でございます。
 また、こちらのほう、外部評価委員のほうでも確認をしまして、問題ないと思いますので、反映する方向で調整させていただきます。
【藤井(輝)分科会長】  確認していただければ。
 それから、知財に関しては、マル1 の吉崎先生のところの知財のアウトプットはどこかに書かれているのでしょうか。
【事務局】  事務局でございます。
 技術移転の話、あるいは、水産研究所、試験場等々の技術移転の話は記載をさせていただいておりますが、特許等に関しましては、記載が漏れておりますので、確認の上、記載したいと思います。
【藤井(輝)分科会長】  もし出ているのであれば、確認していただくということで。
 ありがとうございます。
 それでは、藤井委員、お願いします。
【藤井(徹)委員】  水産研究・教育機構の藤井でございます。すばらしい御報告をありがとうございました。
 一つ感想と一つ御質問をお願いします。
 感想としましては、先ほどの東北マリンサイエンスのときも申しましたけれども、やっぱり10年間という期間がすごく大事だったなというのと、もう一つ、これも東北マリンサイエンスと共通するのですが、その10年間を一人の代表者、PDの方が責任を持って見られた。木島先生も西田先生も、この業界ではもう有名な、研究者としてもマネージャーとしても立派な方なのですが、そういう方が一貫して見られたと。これが非常に大きかったのだと思います。なので、期間だけでなくて、そういう体制も含めて、そういう建付けのプロジェクトがこれからもいろいろ展開されればいいなと感じました。
 それで、御質問なのですけれど、借り腹のほう、実用化にもう一歩のところまで来ているなというのは感じるのですけれども。その最後の一押しのところ、民間企業との共同研究も進められておりということなのですけれど、ここのところが、このプロジェクトが終わった後、予算が切れて失速しないかというのが、私、とても心配なのですが、そのあたりのところ、委員会等で議論がありましたら教えていただきたいのですけれど。
【北里主査】  評価委員会のところでは、民間の方が一人入っておりまして、海洋大の吉崎先生のプロジェクトに実は関係している方なのですね。非常に密接に共同研究をされているということが分かっておりますので、それを踏まえて、うまくつながるだろうなという感じはした。ただ、1社でいいのかどうかとか、もっともっとたくさんの企業が絡んでもいいかなというふうにも思ったりいたしております。話はいたします。
【藤井(徹)委員】  ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】  よろしいでしょうか。
 では、榎本委員、お願いします。
【榎本委員】  ありがとうございます。榎本です。
 先ほど谷委員が指摘されました10年というところの価値というところは、本文を見ますと、81ページのところに、10年ならではの効果があったといったところは本文に出ていますので、ああいったところを書いていただければ、強調していただければいいのかなと思いました。
 もう一つ、今度は質問なのですけれども、二つのそれぞれの課題の成果がきちんとよくまとめられているのですけれども、これはやはり二つそれぞれが別個に成果を上げられれば評価ということで、相互の関わりというところは最後まで触れられていないのですけれども、そこは、この二つが立ったことが重要であったとか、そういったところの視点は、別にこの評価には関係ないのでしょうか。その関係、あるいは、二つならではの重要性みたいなことがありましたら。
【北里主査】  私の意見としては、二つ、かなり目指すところが違っている。生態系の要素というか、それであるというふうに捉えれば、両方つながるのですけれども、基本的には、それぞれかなり別の領域と手法を使った研究をしておりますので、特にどこかで合わせるということはせずに、それぞれが成果を上げる。
 ただ、評価をするときに、評価軸としては、横串を刺して、それぞれの評価軸から見えるようにしてあるというようなやり方しかしておりません。
【榎本委員】  分かりました。
【藤井(輝)分科会長】  よろしいでしょうか。
 では、阪口委員、お願いします。
【阪口委員】  北里さん、お久しぶりです。今は笹川平和財団におります阪口です。
 代理親魚法と細胞凍結というのは、簡単に考えると、絶滅種の保存などにもつながるし、それから、環境が悪いからすみにくくなっている間、環境がまた良くなるまでの間保存しておいて、借り腹でもう一度戻すことができる技術だということを教えていただいきました。
 そうすると、環境の問題と一つ目の借り腹の技術の問題というのは、実はそういう関係でもつながり、借り腹と細胞凍結の話は、両方一つ目のほうに入っているので、環境激変に対する種の保存などにも大いに役立つということで、私はすばらしい研究だなと思っていました。そういうアドオンの評価というのもつけていただけたら、さらに評価も良くなるかなと。それから、環境問題に対しての関係性も、無理矢理つけないでいいと北里さん、さっきおっしゃられたのですが、無理矢理というか、そういう考えの評価もありかなと思ったので、もし付け加える余地があったら、付け加えていただければなと思いました。
【北里主査】  いや、阪口さんの口からそういう話が出るとは思わなかったのですけれども、非常にすばらしい視点というか、まさにそのとおりだと思います。何らかの形で入れることができれば、今後の方向性として非常に幅が広がると考えております。ありがとうございます。
【阪口委員】  よろしくお願いします。
【藤井(輝)分科会長】  ありがとうございます。
 この技術の波及効果という意味で、非常に大きな貢献が期待できるというところを少し含められれば、そうしていただくということでしょうか。
 それでは、この評価の案については、この形で分科会の案として決めさせていただいてよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【藤井(輝)分科会長】  よろしいですね。
 それでは、この件はこの形で、今の幾つかコメントありましたので外部評価委員に確認して修正していただくということで、決定はさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 北里さん、どうもありがとうございました。
【北里主査】  どうもありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】  それでは、見延委員にお戻りいただくということで、御連絡をお願いします。
【事務局】  今、御連絡差し上げますので、少々お待ちください。
(見延委員参加)
【藤井(輝)分科会長】  それでは、残り20分を切ってしまいましたが、次の議題に進みたいと思います。
 次は報告案件でございます。「海洋研究開発機構における業務の実績に関する評価結果について」ということで、事務局より、これも手短にお願いいたします。
【事務局】  それでは、事務局でございます。資料4を御覧いただければと思います。
 こちらは、毎年分科会のほうに御報告させていただいておりますけれども、海洋研究開発機構の令和2年度における業務の実績に関する評価の結果について、昨年8月に取りまとめて、ホームページで公表しているものでございます。
 本体は大分分厚いものでございますけれども、時間の関係もございまして、総合評価の部分のみ抜粋して配付させていただいております。
 1枚めくっていただきまして、86ページでございます。評価の概要ということで、例年どおりでございますけれども、独法通則法に基づきまして、国立研究開発法人審議会、それから、その下に設置されております海洋研究開発機構部会で審議いただきまして、御意見、御助言などを頂きまして、評価結果を最終的に取りまとめたものでございます。
 1枚めくっていただきまして、今年の評定の結果でございます。令和2年度は、第4期中長期目標期間の2年目に当たる年度でございましたけれども、評定はBということで評価しております。下のほうに、その評定に至った理由ということで書いてございますけれども、研究成果としては、非常に優れた顕著な成果が上がっているということが確認できております。また、新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、感染予防の徹底や調査計画の再構築などにより、研究船の研究航海への影響を最小限に抑えており、研究開発成果の最大化に資する適切な対応が図られたということは評価できるとしております。
 これらの点で、JAMSTECは自己評価をA評定としており、それは妥当であると考えられるところでございましたけれども、この後述べますとおり、法人全体の信用を失墜させる事象が二点発生しております。こちらの改善に向けた体制整備等は既に行われつつあるところでございますけれども、組織全体のマネジメントの改善が求められるということで、結果的にB評定となったということでございます。
 法人全体の信用を失墜させる事象ということで二点記載してございます。一点目が、観測機器の4年間にわたる製作契約において、監督及び完了検査が適正に行われていなかったという事案がございます。こちらは、令和2年11月に会計検査院の令和元年度決算検査報告で不当事項としても指摘されてございます。こちらについては、機構のマネジメントが不適切であり、内部統制、リスクマネジメントが機能していなかったということが認められるとしてございます。
 もう一点は、情報セキュリティインシデントが、令和3年3月に発生しております。個人情報の流出、それから、そのインシデントによってネットワークが遮断したことによって、研究活動等に多大な影響が生じたということをもって、今後、早期復旧とリスクマネジメントも含めた再発防止に向けた対策を講じていくことが求められるということでございます。この二点を勘案いたしまして、今年度の評価はBということでございます。
 次のページからは、先生方から頂きました御意見等をまとめたものでございますので、お時間のあるときに御覧いただければと思います。
 91ページに項目別評価が記載してございます。こちらに関しましては、それぞれの研究成果の詳細などホームページに掲載してございますので、こちらもお時間あるときに御覧いただければと思います。
なお、今申し上げた事案につきましては、項目別評価にも反映しているところでございます。
 以上でございます。
【藤井(輝)分科会長】  よろしいでしょうか。御質問等ございましたら、これも手短にですが、お願いいたします。
 よろしいでしょうか。谷委員、お願いします。
【谷委員】  谷です。ありがとうございます。
 最後の先生方のコメントというところは、かなり深刻なことが書いてございますけれども、これは、例えば、構造的な問題ではないかとか、そもそも資源配分が間違っているのではないかというようなことが書いてございます。これは私どもは、ただ報告を受けるというだけでよろしいのでしょうか。
【事務局】  基本的には、こちらは主務大臣評価ということで、既に決定したものを報告させていただいたという位置づけになりますが、こちらに頂いております様々な御意見は機構にも十分伝えておりまして、今、その改善を図っていると聞いております。
 こちらへの対応につきましては、次年度の評価で、どのように改善されているか確認していくこととしております。
【谷委員】  ありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】  よろしいでしょうか。
 これは報告事項でございますので、では、この部分は、皆さん、この後にお読みいただければということでございます。よろしいでしょうか。
 それでは、次の議題に参ります。
 次の3の議題ですね。時間もあと残り10分強になってしまいました。「海洋開発分科会における今後の検討について」であります。分科会の下に置いた二つ委員会があるわけですが、この二つの委員会について一通り御説明いただいた後に、皆さんで御議論いただくという形にできればと思います。まずは、事務局から御説明をお願いいたします。
【事務局】  事務局でございます。資料5-1を御覧ください。
 令和4年3月15日付で、海洋開発分科会として、海洋分科会運営規則第3条第1項に基づき、海洋開発分科会に海洋科学掘削委員会を置くことを決定したというものです。
 資料5-2を御覧ください。
 海洋科学掘削委員会の設置の決定に併せて、同委員会での議論における主な調査・検討項目として決定したものです。説明時間が押しており、前段及び小項目は省略させていただきます。
 調査・検討事項として、1、我が国における海洋科学掘削の現状及び課題について、2、我が国の海洋科学掘削を取り巻く動向、3、今後の海洋科学掘削を利用した地球惑星科学分野の研究開発の考え方、4、国内外の研究資源を用いた今後の海洋科学掘削の方策、以上です。
 続いて、資料5-3を御覧ください。
 書面審議で開催されました第65回海洋開発分科会の議事要旨でございます。
 令和4年2月9日(水曜日)~2月16日(水曜日)まで、「海洋開発分科会における委員会の設置について」を議題として、書面審議により開催されました。
 議事要旨といたしまして、3月15日付で委員会の設置を決定するまでを記載し、以下、委員から頂いた御意見を記載いたしました。委員には先だってお送りして御確認いただいておりますので、読み上げは省略させていただきます。
 海洋科学掘削委員会については、以上でございます。
【事務局】  続きまして、事務局より、海洋科学技術委員会の検討状況につきまして御報告申し上げます。
 第64回の海洋開発分科会において設置いただきました本委員会ですけれども、同分科会で議論していただきました、海洋開発分科会における検討の主な論点を踏まえまして議論をしてまいりました。
 第1回は昨年11月に開催しまして、これまでに4回、ヒアリングを中心にしまして議論をしていただいてきているというところになっております。
 今後につきましては、第5回以降につきましては、来年度行う予定になっておりまして、現在、検討の主な論点で挙げられたもので、まだ未着手のものを中心にヒアリングを行っていきたいと考えております。
 御参加いただいている委員につきましては、今こちらの画面で表示させていただいている先生方でして、分科会のほうから9名の先生に御参加いただくとともに、新しく河野理事と須賀先生に入っていただいているという形になっております。
 資料6-2は、これまでの4回行ってきたヒアリングと議論を踏まえた、議論のまとめの骨子案になってございます。こちらをもとに、第5回以降もヒアリングを踏まえたものを入れつつ、中間取りまとめ、最終取りまとめというふうな形で進んでいきたいと考えております。
 現在のところ、まだヒアリングが終わっていないものに関しては、取りまとめの骨子は記載しておりませんので、今終わっているところを中心に、簡単に御説明させていただきたいと思います。
 次のページをおめくりください。
 まず初めに、気候変動への対応の在り方というところをまとめております。こちら、気候変動に対して、海洋科学技術分野が大きく貢献していることは、皆様もう御承知おきのことかと思っておりますが、こちらの気候変動問題に対してどういった貢献が海洋科学技術分野であり得るのか、また、それを貢献していくに当たっての課題と方策を簡単にまとめさせていただいております。
 課題と方策のところは、観測とモデリング、その他という形でまとめておりまして、観測の重要性でありましたり、モデリングにつきましては、例えば、予測技術の高度化が必要なときに、国内外のモデルの話であったり、日本周辺の領域の詳細な気候変動評価みたいなところも必要だというような話を記載させていただいております。また、その他のところで、気候変動の緩和策として注目されているようなネガティブエミッション技術についても、取組の強化が必要ではないのかみたいなところも記載させていただいているという形になっております。
 3ポツのところが、安全・安心な社会の構築に資する海洋科学技術の在り方としまして、初めには、防災・減災等への貢献についてということを記載させていただいております。こちらも先ほどの気候変動と同じように、海洋科学技術がこのような分野にどう貢献するのかということを記載させていただいた上で、課題と方策を記載させていただいてございます。
 課題と方策のところでは、地震・津波の予測・評価の高度化のために、災害の頻度や規模に応じた観測間隔の実現が求められると同時に、自動無人航行とかオンライン化による高頻度化・リアルタイム化が必要だと。それに関しての具体的なものとして、どういったことが考えられるのかみたいなことを記載させていただいているという形になります。
 安全・安心のほう、この地震防災に続きまして、(2)としまして、海底地形調査や海底資源探査の促進というところでもまとめさせていただいております。
 初めに、海底地形調査について、海底地形情報等の必要性ということでまとめさせていただくとともに、こういった地形情報を調査するに当たっての課題や方策というところをまとめさせていただいているという形にしてございます。
 次は、海底資源探査につきましても、同じように、必要性と課題と方策という形でまとめさせていただいているという形になってございます。
 次に、海洋生態系の理解及び持続可能な利用への貢献の在り方という形で、こちらもまとめさせていただいておりまして、こちらも、こういったものに対しての貢献はどういったものがあるのか、それを推進するための課題と方策に何があるのかというところで、海洋生態系の理解の深化の観点と、持続可能な利用という観点でまとめさせていただいているというものになってございます。
 最後に、海洋分野における総合知及び市民参加の取組の在り方としまして、第6期科学技術・イノベーション計画の中でも強く打ち出されております、こういった総合知や、市民参加型の取組に関して、海洋科学技術という分野において何が必要か、それによって、この取組を進めることによって期待されるような効果、行うために留意すべきようなことについてまとめさせていただいているということになります。
 この次のページ、最後になりますが、その他としまして、今までのところ、どちらかというと、分野、気候変動とか地震とか、そういった縦のことの記載を多くさせていただいておりましたが、その他としまして、海洋科学技術分野全体に共通する課題としまして、研究体制の在り方として、観測・予測とデータの利活用の利用の話であったり、長期的な観測基盤的な研究等々に関して記載を取りまとめさせていただいているというものになっております。
 先ほども申し上げましたとおり、こういったものを今まとめておりまして、来年度以降も引き続きヒアリング、議論を行って、中間取りまとめ、取りまとめに向けた議論をしていきたいと考えております。
 以上でございます。
【藤井(輝)分科会長】  恐れ入ります。大分もう時間が迫っていますが、この件、二つの委員会での検討の方向性ということで御意見頂戴したいと思いますので、それぞれ手短にお願いできればと思います。いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 海洋科学技術委員会のほうは、この分科会ともメンバーとしてはかなり重なっているということでございますが、よろしいでしょうか。
 それでは、掘削のほうはいかがですか。特にございませんでしょうか。
 では、榎本委員、お願いします。
【榎本委員】  ありがとうございます。
 資料の中に氷上と、氷の上という言葉が書かれてありましたので、ここはちょっと気になりまして。私ども、南極大陸ですとかグリーンランド氷床で氷の上の掘削をやっていますもので、最初、こういう海底掘削との関係は私たちも確認していなかったのですけれども。この分野、氷床掘削のほうは、たかだかというか、100万年を今目指して取っているところで、ただし、海底掘削などで得られない大気の成分そのものを取り出すとかということができています。そのほかにも、氷床の縁辺部の海底掘削というのがありまして、それは氷の現象と、その地域の環境、あと、氷の上の部分を見れば大気の成分が分かるということで、研究者としては、そこら辺をつないでいきたいという意見を何人かからよく聞かされていまして、ここに氷上というところがどこかに書かれていたので。
【藤井(輝)分科会長】  96ページです。
【榎本委員】  氷の上というところを指摘していただきまして、これは重要だなと思ったところです。
 以上です。
【藤井(輝)分科会長】  ありがとうございます。
 掘削は、海洋の掘削だけではなくて、氷床、グリーンランドなど、それから陸上掘削もありますので、全体を俯瞰して議論したほうがいいのではないかという論点だと思います。よろしいでしょうか。
 そのほか、よろしいでしょうか。
 ここに様々意見が出ていますので、これはぜひ委員会の中の議論に反映していただければ。資料2に対する意見ということですが、反映していただければと思います。よろしいですか。
 よろしいでしょうか。海洋科学技術委員会のほうも、今日お示しいただいたような流れで議論をぜひ進めていただければと思います。
 今日は時間が大分押してしまいまして、私の不手際もありまして恐縮でございます。
 もちろん、この後、この各委員会で検討を進めていただくということになりますので、委員の皆様におかれましては、今後も何かお気づきの点ありましたら、事務局までお知らせいただいて、その御意見を各委員会での議論に反映していくということにさせていただければと思います。今日のところは、この概要を御覧いただいたということにさせていただきます。ありがとうございました。
 それでは、その他ですけれども、私から一つだけ御紹介したいことがございます。画面共有できるでしょうか。
【事務局】  先生からできます。
【藤井(輝)分科会長】  ありがとうございます。
 これを御覧いただければと思うのですが、先ほど海洋科学技術委員会のほうでの論点として市民参加型の話がありました。UN Ocean Decadeの中でもインスパイアリングあるいはエンゲージメントということが言われています。私が所属している工学アカデミーでの取組なのですけれども、海洋プロジェクトとして、海洋研究の戦略的推進ということで、「海洋テロワール」という提言をまとめたところです。その中で、特に市民参加型の海洋プロジェクトというのを進めていくのが大事だろうということ、それから、海洋観測の民主化ということも、大きくこのプロジェクトの中でうたっています。海洋空間と市民とをしっかりとつないで、市民それぞれが自分事として海のことに関わっていっていただくという取組を前に進めようということで、プロジェクトをやってから1年ぐらい経っています。具体的には、5月13日にこのシンポジウムを今計画しているところです。これはまだ未定稿で(案)がついておりますので、ここだけでお示しすることにさせていただきたいと思います。
 海洋テロワールの実現なのですが、やはり多くの市民を巻き込んで、市民型のプラットフォームを作るということと、それから、今日少し申しましたけれども、民間資金をどう活用していくか、あるいは、地域が主導するという形をどう作っていくか、というようなことも含めて、東京大学の大気海洋研究所の先生方や、サイバーインフラが重要という観点から東京大学の中尾先生や、長崎県での取組、政策投資銀行の方からのお話なども含めまして少し議論したいと考えております。5月13日の3時から5時ということになっています。今後、詳細が決まりましたら、工学アカデミーのホームページなりでアナウンスをすることになっておりますので、皆様へのアナウンスとしてお知らせをしたく、この場をお借りしてお知らせを申し上げました。よろしいでしょうか。
 見延先生。
【見延委員】  北海道大学の見延です。関連する情報の提供で。
 私、JAMSTECの付加価値情報創生部門の評価助言委員会委員長を務めているのですけれど、先日そのヒアリングで、JAMSTECがプラごみの市民参加型、大変優れた取組をして、民間企業とも連携、地方自治体とも連携しているということがありましたので、関連する情報として、藤井先生にお伝えいたします。
【藤井(輝)分科会長】  ありがとうございます。
 私からの情報提供としては、以上でございます。よろしいでしょうか。また、皆様にはお知らせが届くようにしたいと考えております。
 もう少し時間が過ぎてしまいましたが、本日の議事としては、以上でございます。先生方から何かございますでしょうか。よろしいですか。
 特にないようでしたら、最後に、事務局から連絡事項等ございましたら、お願いいたします。
【事務局】  先生、すみません、谷先生が先ほど手を挙げて。
【藤井(輝)分科会長】  谷委員、お願いします。
【谷委員】  時間がない中、申し訳ございません。
 さっき時間がなかったので遠慮して言わなかったのですが、三陸のほうの評価で、やはりちょっと後ろ向きに書かれているところがあって、そこはコメントがしたかったところなので、これ、どうしましょう。
【事務局】  事務局でございます。谷先生、そうしましたら、事務局のほうにこの後メール等で頂ければと思いますので、それを踏まえまして、東北マリンの委員会の先生等々と御相談をさせていただいて、反映するほうを調整させていただきたいと思います。
【谷委員】  お願いします。ちょっと見たところ、後ろ向きに書いてあるものですから、もったいないので、何とかしたいなと思いました。ありがとうございます。
【事務局】  承知しました。ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】  ありがとうございます。
 では、その点も、評価の先生方、それから、この分科会の委員の皆さんに後ほど共有していただければと思います。
【事務局】  はい、承知いたしました。
【藤井(輝)分科会長】  そのほかはよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。
 それでは、事務局からは特にございませんでしょうか。
【事務局】  事務局でございます。本日も長時間にわたりまして、ありがとうございました。
 本日の議事録案につきましては、またメールのほうで照会させていただきますので、御確認のほど、よろしくお願いいたします。
 また、次回日程につきましては、また後ほど調整させていただきます。どうもありがとうございました。
【藤井(輝)分科会長】  本日はどうもありがとうございました。これにて第66回の海洋開発分科会、終了したいと思います。
【事務局】  藤井先生、すみません。事務局のほうから申し訳ございません。
 先ほどの東北マリンサイエンスの事後評価案についてなのですけれども、谷先生のほうから、先ほどの議事では原案どおり了承だったのですけれども、御意見を踏まえて、一度検討いたしますので、その結果をまた藤井先生のほうに御相談させていただきまして、生物資源確保と同じように、分科会長一任のような形で最終的な決定というところを手続きを取らせていただければと思いますが、皆様、藤井分科会長、よろしいでしょうか。
【藤井(輝)分科会長】  皆様、そのような形でよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【藤井(輝)分科会長】  では、そのような対応でお願いいたします。
【事務局】  ありがとうございます。
【藤井(輝)分科会長】  そのほか、ございますでしょうか。よろしいですか。
 では、本日の海洋開発分科会はおしまいにしたいと思います。
 どうもありがとうございました。

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