海洋開発分科会(第63回) 議事録

1.日時

令和3年1月29日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 海洋開発に係る最近の動向について
  2. 海洋研究開発機構における業務の実績に関する評価結果について
  3. 海洋生物研究に関する今後の在り方等について
  4. 北極域研究推進プロジェクト(ArCS)に関する事後評価について
  5. その他

4.出席者

委員

藤井輝夫分科会長、中田分科会長代理、石田委員、榎本委員、沖野委員、川辺委員、河村委員、窪川委員、阪口委員、田中委員、谷委員、中川委員、西村委員、平田委員、廣川委員、藤井良広委員、見延委員

文部科学省

三谷大臣政務官、松尾文部科学審議官、行松サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、生川研究開発局長、長野大臣官房審議官、大土井海洋地球課長、河野極域科学企画官 ほか

5.議事録

【藤井分科会長】  それでは、ただいまより第63回科学技術・学術審議会海洋開発分科会を開会いたします。
 本日は全員出席ということで、これもある意味オンラインならではなのかもしれませんが、すばらしいことだと思っております。委員の皆様におかれましては、御多用の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。それから、本日は三谷大臣政務官も国会対応が終わり次第、御出席いただけると聞いております。
 それでは、まずは文部科学省から事務局を代表いたしまして、生川研究開発局長より御挨拶を頂きたいと思います。生川局長、よろしくお願いいたします。
【生川研究開発局長】  藤井先生、ありがとうございます。研究開発局長の生川でございます。第63回科学技術・学術審議会海洋開発分科会の開催に当たりまして、事務局を代表して一言御挨拶を申し上げます。
 海洋国家日本としては、我が国の強みである科学技術を生かして、海洋分野における研究開発を着実に推進していく必要があると考えております。後ほど説明させていただきますけれども、文部科学省としては、長年の懸案でありました北極域研究船の建造のための経費を、来年度予算案に計上させていただくことができました。
 その着実な建造の実施や、本年5月に予定されております北極科学大臣会合の我が国での開催、これはアジアで初の開催になりますけれども、これらを通じて、世界的にも注目を集める北極域の研究を、更に強力に推進していきたいと考えております。そのほかにも、「白鳳丸」をはじめとした研究船や海洋研究のデジタルトランスフォーメーションなど、海洋科学技術の発展のために、鋭意取組を進めていきたいと考えております。
 現在、第6期科学技術・イノベーション基本計画についての議論が進められているところでありますけれども、海洋科学技術をしっかりその中で位置づけるとともに、その内容も踏まえながら、今後は第4期の海洋基本計画の策定に向けた検討を進めていく必要があります。委員の皆様におかれましては、こうした状況も踏まえて、今後の海洋科学技術の在り方や政策について御議論いただき、これからの我が国の海洋開発の方向性についての御示唆をいただけますようお願い申し上げます。
 委員各位の忌憚(きたん)のない御意見や活発な御議論をお願い申し上げまして、簡単ではございますが、冒頭の私からの御挨拶に代えさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。
【藤井分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして事務局の御紹介をお願いします。
【事務局】  本日は、先ほど座長からお話しいただきましたけれども、三谷大臣政務官が後ほど参加いたします。また、文部科学審議官の松尾、サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官の行松も遅れて参加させていただきます。現在は、研究開発局長の生川のほか、海洋地球課の関係者が出席しております。
 なお、前回、一昨年10月の海洋開発分科会の開催以降、人事異動がありましたので御紹介させていただきます。
 大臣官房審議官(研究開発局担当)の長野でございます。
 それから、海洋地球課長の大土井でございます。
【事務局】  大土井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【事務局】  事務局からは以上でございます。
【藤井分科会長】  それでは、続きまして事務局より配付資料の確認と、それからこのオンライン会議の注意事項について御説明をお願いします。
【事務局】  本日お配りしている資料は、議事次第に記載のとおりでございます。議事次第・資料一式で1つに本体資料をまとめてございます。それから参考資料を、容量の関係で2分割させていただいておりまして、参考資料一式(1)、(2)とさせていただいております。先生方に事前にお送りした資料にはしおり等がついてございますので、適宜御活用いただければと思います。
 続きまして、オンライン会議の開催に当たりまして、委員の先生方に幾つかお願いがございます。
 まず、御発言時以外は音声をミュートにしていただき、御発言時のみミュート解除を御選択いただきますようよろしくお願いいたします。
 御発言の際には、挙手ボタンを押してください。藤井分科会長におかれましては、参加者一覧の画面を常に開いておいていただき、手のアイコンが表示されている委員を指名していただくようにお願いいたします。万が一挙手ボタンがうまく押せない場合は、実際に手を挙げていただくようお願いいたします。御発言後は、再度挙手ボタンを押してしていただきまして、挙手を取り消していただきますようお願いいたします。
 本審議会には、議事録作成のため速記者が参加しております。速記者のために、御発言の際はお名前から御発言いただけますようお願いいたします。
 また、通信状態に不具合が生じるなど、続行できなかった場合、審議会を一時中断する可能性がございます。この場合、委員の皆様には御迷惑をおかけいたしますが、接続を切らずにお待ちいただけますと幸いです。
 最後でございますが、御発言の際におきましては、資料を参照する際、資料番号、特に右下に通しでページ番号を打ってございますので、そちらを分かりやすくお示しいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 なお、委員の皆様におかれましては、チャット機能も適宜御活用いただければと思います。傍聴者の方々におかれましては、チャット機能を使用しないように御留意ください。
 以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、早速本日の議事に入りたいと思います。
 お手元の議事次第にありますように、本日は議題1から議題5の、5つの議題を予定しております。議題の1から3は事務局からの報告案件でありまして、議題4が審議案件となっております。その後、時間の許す範囲で自由討議をしたいと考えております。本日が今期の最終回ですので、自由討議の際には、今期の振り返りと、今後の海洋分野における研究開発について、次期に向けた見通しや期待などについて、お一言ずついただければと考えております。
 それでは、早速ですが、議題1、海洋開発に係る最近の動向について、事務局より御説明をお願いします。
【事務局】  事務局、海洋地球課の鈴木でございます。よろしくお願いいたします。それでは、事務局から最近の海洋開発、海洋科学技術関係の動向につきまして、簡単に御説明をさせていただきます。時間もございますので少々駆け足になるかもしれませんけれども、御容赦いただければと思います。
 まず、令和3年度予算案でございます。こちらは令和3年度の文部科学省の海洋極域の研究開発に関する予算として、374億円を計上しております。また、昨日成立いたしましたが、令和2年度第3次補正予算として7億円を計上しております。
 このペーパーでは、そのうち主なものを挙げてございます。まず、地球環境の状況把握と変動のための研究開発として、JAMSTECに30.5億円を計上しております。漂流フロート、係留ブイ、船舶による観測など組み合わせまして、グローバルな海洋観測網を構築するとともに、得られたデータを活用して、海洋地球環境の状況把握及び将来予測を行い、もってSDGs等に貢献をしていくというものでございます。
 また、先ほど生川の挨拶にもありましたけれども、地球環境に関する様々な研究を含めた学術研究に貢献をしてまいりました「白鳳丸」につきましては、建造から30年経過したことに伴う老朽化対策工事を行うために、令和2年度補正で3億円、令和3年度当初で19億円を計上しております。これによって、今後20年程度引き続き御利用いただけるようにしてまいる予定でございます。
 続いて、海域で発生する地震及び火山活動に関する研究開発でございます。19.4億円を計上いたしております。海底地殻変動を連続かつリアルタイムに観測するシステムを開発・整備するとともに、「かいめい」等を活用し、南海トラフ地震発生帯等の広域かつ高精度な調査を実施いたします。更に地殻変動・津波シミュレーションの高精度化も図っていきます。それに加えて、海域火山活動把握のための観測等も行っていく予定です。
 続いて、北極域研究の戦略的推進には15.4億円を計上してございます。北極域の研究プラットフォームとして、砕氷機能を有し、北極域の海氷域において観測が可能な北極域研究船、こちらにつきましては令和3年度にいよいよ建造に着手をいたします。建造期間は5年程度、総額335億円の計画でございます。
 こちらについて、少し補足をいたしますと、北極域研究船につきましては、平成29年の海洋開発分科会におきまして、建造が妥当である旨、事前評価を頂いておりました。その後、JAMSTECにおいてもシステム開発や基本設計を先行して行いまして、また文科省においても今年度検討会を開催いたしまして、利活用方策、費用対効果等について分析を取りまとめたところでございます。その間、アカデミアにおきましても北極環境研究コンソーシアム(JCAR)などにおきまして、具体の観測研究計画を検討いただいておりました。
 関連資料につきましては、船の予定スペックなどを含めて参考資料2に入れておりますので、お時間のある際に、御覧いただければと思います。
 また、北極関係におきましては、今年度から開始いたしました北極域研究加速プロジェクト(ArCSⅡ)、榎本先生にPDをお務めいただいておりますけれども、こちらは引き続き、観測研究や予測の高度化・精緻化、人材育成や情報発信に戦略的に取り組むために必要な経費を計上しております。
 続いて、南極地域観測事業でございます。引き続き計画に基づいて、地球環境変動の解明に向け、研究観測を行っていきます。また、南極(昭和基地)への観測隊員・物資等の輸送を実施するために必要な「しらせ」やヘリの保守・管理等を着実に実施するための経費を計上してございます。
 このほかJAMSTECでは、海洋資源に関する研究やAUV開発、海洋科学技術のプラットフォームとしての研究船舶の運航に必要な経費などを措置しております。加えて、海洋のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるために、データや地球シミュレータ等の計算資源をリモートで供用できる環境整備に必要な経費も、補正予算で計上しております。
 また文部科学省では、後ほど議題3で御説明をいたしますけれども、海洋生物に関する新たな事業や、既存の事業におきましても、海洋酸性化や環境DNA、マイクロプラスチックなどの海洋情報を効率的に捉えるための技術開発の予算についても計上しております。
 令和3年度予算、令和2年度補正予算の主な予算事業の詳細は、次のページ以降につけておりますけれども、本日は割愛させていただければと思います。
 続いて、資料1-2、第3回北極科学大臣会合の開催でございます。これについては、アイスランドとの共催により、アジアで初となる東京開催を予定しております。5月8日、9日の予定でございます。
 テーマは「持続可能な北極のための知識」でございまして、観測、理解、対応、強化の4本の柱で議論を行い、共同声明を取りまとめる予定です。北極圏国、非北極圏国、先住民団体を招待しておりまして、そうした中で、我が国の北極における国際プレゼンスの強化につなげていければと考えております。
 続きまして、資料1-3、海洋政策の司令塔でございます総合海洋政策本部の参与会議につきまして、昨年度新たな参与の任命がございましたので、御紹介させていただきます。
 座長は、前期から引き続きまして政策研究大学院大学学長の田中参与、座長代理が日本郵船会長の内藤参与でございます。本日御出席の委員では、中田先生が新たに参与に就任されていらっしゃいます。また、海洋防災・工学の専門家としては、東北大学の今村先生、海洋科学技術等の観点では、東京大学の佐藤先生や、JAMSTECの原田センター長が新たに任命されております。
 参与会議では毎年度、プロジェクトチーム(PT)、スタディグループ(SG)を開催いたしまして、議論がなされております。今年度はこちらにありますように、国際連携に関するPT、気候変動に関するPT、海洋産業の競争力強化に関するPT、海洋科学技術・イノベーションに関するSGが開催されております。それぞれこちらに記載の事項につきまして、有識者や各省からのヒアリングなどを基に議論が進められているところでございます。
 参与会議のスケジュールでございますが、各PT、SGの議論については今後取りまとめの上、4月にかけて参与会議に報告がなされます。参与会議としての意見書は、5月頃の海洋本部において内閣総理大臣に手交されることになっておりまして、その後骨太の方針などの政府方針に反映されることになっております。
 なお、海洋本部が取りまとめる海洋基本計画につきましては、平成30年度に閣議決定されました現行の第3期海洋基本計画が、今年は3年目、折り返しの年になりましたので、先ほど生川の挨拶にありましたけれども、今後、第4期海洋基本計画策定を見据えた議論というものも始まっていくものと考えております。
 続きまして、資料1-4、持続可能な開発のための国連海洋科学の10年でございます。海洋科学の推進により、持続可能な開発目標を達成するため、2021年から30年の10年間に、国際的に集中的に取組を実施するものでございます。2018年から20年までの準備期間を終え、実施計画が昨年12月の国連総会で決議されております。今年から10年が開始しているところです。
 この10年の取組で目指す社会的目標、成果といたしまして、きれいな海、健全で回復力のある海など、7つのアウトカムが掲げられているところです。こうしたアウトカムの実現に資する日本の貢献については、国内で検討を続けているところでございます。
 全体のスケジュールや国内の準備状況などを後ろにつけておりますけれども、こちらについては割愛をいたします。
 続いて、資料1-5でございます。第6期科学技術・イノベーション基本計画の検討状況でございます。こちらは総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)におきまして検討が続けられておりまして、先日答申素案が公表されましたので、海洋関係を抜粋して御紹介させていただきます。
 まず、宇宙・海洋分野等の安全・安心への脅威への対応を進めること。また、海洋を含めて府省横断的に推進するべき各分野について、国家戦略に基づき着実に研究開発等を推進していくこと。また、先ほどの海洋のDXを進める事業についても御紹介いたしましたが、基本計画におきましても、海洋・防災分野においてデータ駆動型研究を進行していくことも盛り込まれているところです。
 第2章はこうした横串的な記述が中心でありますけれども、第3章では、各分野の記載をそれぞれ十数行程度にまとめておりまして、海洋分野の記載を簡単に御紹介します。四方を海に囲まれて、世界有数の広大な管轄海域を有する我が国として、海を守る、海を生かす、海を子孫に継承するということが求められる。また、生物資源、生態系保全、エネルギー・鉱物資源の確保、温暖化や海プラなどの地球規模課題への対応、地震等の脅威への対応、北極域の持続的な利活用などにおいて、科学的知見の収集・活用は不可欠、とされております。そして21年からの国連海洋科学の10年でも、我が国が世界に貢献していくことが必要であると。
 このため海洋基本計画に基づき対応する。特に海洋観測は最重要な基盤であり、MDAの能力強化やカーボンニュートラル実現に向けた海洋環境の把握能力を高めていくために、氷海域、深海部、海底下を含む海洋の調査・観測技術の向上を目指し、研究船のほか、ROV、AUV、海底光ファイバーケーブル、無人観測艇等の観測技術を進めていくとされております。さらに、観測データの徹底的な活用、そして海洋観測のInternet of Laboratoryの実現により、データ駆動型研究を推進していく、また海洋分野のイノベーション創出を目指していく等、まとめられているところでございます。
 各種の観測技術の開発向上や、海洋観測のInternet of Laboratoryといったコンセプトについては、一昨年に海洋開発分科会で御提言を頂きました内容が盛り込まれているところかと考えております。
 この第6期基本計画につきましては、現在パブリックコメントにかけられておりまして、来年度から5か年の計画として策定される予定でございます。
 簡単でございますけれども、海洋開発に係る最近の動向として、5点ほど御紹介させていただきました。
 説明は以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。ただいまの説明について、委員の先生方から御質問等ございますか。よろしいですか。
【藤井(良)委員】  よろしいでしょうか。
【藤井分科会長】  藤井先生、お願いいたします。
【藤井(良)委員】  海洋のデータの把握のところで、カーボンニュートラルの議論に絡めると、浮体式の洋上風力の開発が求められるわけですが、その場合、海面上の例えば200メートルから300メートルぐらいの上空の風況データが必要になるわけですよね。今の御説明のところだと、海底のデータはあるけれども、海面上のデータの観測体制はどのようになっておられるのでしょうか。
【藤井分科会長】  この辺はいかがでしょうか。
【事務局】  すみません、先生、どちらの資料への御指摘でしょうか。
【藤井(良)委員】  今のこれは海洋と書いていますよね、丸7の。「氷海域、深海部、海底下を含む海洋の調査・観測技術の向上を目指し」と書いていますね。この範囲の中に、海面上、海の上、このデータというのも入ってくるでしょうかという確認です。
【事務局】  失礼いたしました。「海洋」には海上も入ると考えています。
【藤井(良)委員】  それはどのような体制になりますか。データの把握というのは。つまり船舶によって基本的には把握するわけでしょうけれども、課題とすれば、例えば台風時などの激変時のデータも要るわけですよね。そういうところまで含めて、観測データの把握体制というのは準備されているということでしょうか。
【事務局】  もし詳しい先生がいらっしゃいましたら補足をいただければと思いますけれども、船舶観測では、例えばJAMSTECの研究船「みらい」にはドップラーレーダなども積んでおりまして、大気の観測なども行っているところです。今後建造します北極域研究船にも、同じようにドップラーレーダもつけまして、海洋上、大気の観測など含めて海洋の調査を進めていくものと認識しております。
【藤井(良)委員】  了解いたしました。
【見延委員】  少し補足させていただいてよろしいでしょうか。今、事務局の方から御説明のありました、船舶による観測というのは非常に頻度が少ないもので、台風のときなどに観測できるものではございません。台風のときなどの風況の情報というのは、基本的にはデータ同化という手段を使いまして、これを日本の周辺で稠密につくっているのは気象庁になります。またNEDOでは、この海上風速を風力発電用の参考のデータとして高解像でダウンスケーリングしたデータセットである局所風況マップを代表的な年についてつくっておりまして、そういうものを業者が参考にしております。
 ただ、おっしゃったような、台風のような非常に被害を及ぼすような風況のときに実際どうなるのかというのは、NEDOでもまだつくれておりませんので、ちょっとこれは多分日本では、今どこの機関も取り扱っていないのではないかと思います。
 以上です。
【藤井(良)委員】  了解いたしました。
【藤井分科会長】  よろしいでしょうか。少し関連しますけど、これは衛星のデータやDIASではカバーしていないですか。
【見延委員】  衛星で風を観測する手段もありますが、24時間全面を観測することはできません。衛星で風を観測できるのは非常にまだ高価で、限られた極軌道衛星で観測しておりますので、ある地点での観測は1日2回ほどできるぐらいです。
 また衛星は表面の風しか測れません。代表的な高度として高度10メートルにおいて推定値が出ておりますけれど。今お話があったような高度200メートル、300メートルの風を直接衛星で測る手段というのは、現在ございません。
【藤井分科会長】  ありがとうございました。モデル計算も含めて、DIASではカバーしていないですか。
【見延委員】  DIASでニアリアルタイムのようなデータはないのでは思いますが。
【藤井分科会長】  分かりました。よろしいでしょうか。
【見延委員】  北大の見延ですけど、1つ聞かせていただいてよろしいでしょうか。Ocean Decade、国連海洋10年の準備が日本でも進んでいると伺い、大変心強く思っております。私も中国でそのプランニングの会議などに呼ばれまして、2019年の冬でしたけれど、日本でなかなか動きがないなと心配しておりました。大変心強いですが、実際に走らせていこうとすると、それなりの予算措置が必要になるかと思いますが、そういうこともお考えいただいていると理解してよろしいでしょうか。
【事務局】  事務局でございます。海洋・極域の関係予算はかなりの割合がSDGsへの貢献を目指しておりますので、御指摘踏まえて取組を進めてまいる予定です。
【見延委員】  ありがとうございます。
【藤井分科会長】  ほかにございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、議題2に進みたいと思います。海洋研究開発機構における業務の実績に関する評価結果ということで、これも事務局からの御説明をお願いします。
【事務局】  それでは、資料2でございます。
 こちらは毎年分科会に御報告させていただいておりますけれども、国立研究開発法人海洋研究開発機構の令和元年度における業務実績評価の結果について、昨年9月末に取りまとめたものでございます。本体は全体で100ページを超える分厚いものですけれども、総論の総合評定のところだけ抜粋して、抄ということで配付させていただいております。
 1枚めくっていただきまして、こちらが、例年どおりでございますけれども、主務大臣評価をこのような形で行っておりまして、独立行政法人通則法に基づきまして、国立研究開発法人審議会という有識者の集まりが文科省に設置されておりまして、その下に海洋研究開発機構に関する評価を議論していただく部会がございます。そちらで、御意見、御助言などを頂きまして、評価結果を最終的に取りまとめたというものでございます。
 1枚めくっていただきまして、こちらが令和元年度の業務実績に関しまして、総合評定を記載したところでございます。令和元年度は、海洋研究開発機構の第4期中長期目標期間の初年度となりましたけれども、そちらの総合評定はA評定となってございます。こちらの評定も例年どおり、Bが標準、目標や計画に定められた事項を着実に実施したというのがBでございまして、それと比較して顕著な成果が出ているとA、特に顕著だとS、逆に計画どおりいかなかったというと、その程度に応じてC、Dという区分になってございます。
 こちらの内容の前に24ページを御覧いただければと思いますが、令和元年度の項目別評価の評定でございます。こちらは第4期の中長期目標を策定するに当たって、大きく研究開発の柱を2つ立てておりまして、海洋科学技術に関する基盤的研究開発の推進と、海洋科学技術における中核的機関の形成ということで、前期、第3期に比しまして大くくり化した形で、評価を行っております。大くくり化して、必要に応じて細分化した評定を付すということで、括弧書きにしているものが補助評定ということで付しているものでございます。
 こちらの研究開発の柱は2つともA評定でございまして、その下の細分化した評定は、こちらの記載のとおりになっているということでございます。
 戻っていただきまして、法人全体に対する評価としまして、顕著な成果や将来的な成果の創出の期待等が認められるということで、こちらに記載のとおり具体的な内容を記載しております。全て御紹介するのは、時間の関係もございますので割愛させていただきますけれども、地球環境の状況把握と変動予測のための研究開発、それから海洋資源の持続的有効利用に資する研究開発、海域で発生する地震に関する研究開発に関しまして、こちらに記載のとおりの顕著な成果が出ているということで評価をしております。
 その下の4つ目の丸ですけれども、挑戦的・独創的な研究開発ということで、こちらは真核生物誕生の鍵を握るアーキアの培養・分離に成功し、Nature誌の表紙を飾るとともにScience誌において2019年の十大科学ニュースの一つに選出されるなど、世界的に大きなインパクトのある成果が複数創出され、年度計画を大きく上回る顕著な研究成果が得られたと認められるということで、他の研究開発につきましても、計画を前倒しする研究進展が見られたということで、こちらについては補助評定ですけれども、Sという形で評価をしております。
 そのほか、中核的機関としての機能につきましても高く評価できるということで、全体としてA評定とさせていただいております。
 長くなってしまって申し訳ありませんが、説明は以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。ただいまの御説明について御質問等ございますか。全体の評定Aということで、一部顕著にすばらしい結果も出ていて、S評価も出ているということであります。よろしいでしょうか。
【谷委員】  藤井先生。
【藤井分科会長】  谷さん、お願いします。
【谷委員】  コメントですけど、今、最後に御紹介のあったアーキアに関する研究というのは、12年間我慢して我慢して、深海で取ってきたアーキアと呼ばれる古生物を育てて、ようやく成果を出されたというので、これは組織力の勝利だと思います。よくそこまで我慢して研究を続けさせたなという、その懐の深さに非常に感動いたしました。JAMSTECのような体力のあるところでもなかなか難しい研究だと思いますけれども、これはノーベル賞級の賞賛に値する成果だと思いますので、一言申し上げます。ありがとうございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 ほかにございますか。榎本委員、お願いします。
【榎本委員】  榎本です。すばらしい成果がたくさん紹介されていて、ビッグサイエンスや、進んだ科学の話が含まれていますけれども、最初の法人全体に対する評価のところに、「北極研究に関連した市民向け学習ツールの開発」というのがありまして、これは前も少し触れたことがありますが、こういった人材育成に関するものはなかなか成果が出てこなくて、令和元年のものが今これで出てきていますけれども、先週ノルウェーの国際的な情報誌にこれが出まして、ハイノースニュースというもので、世界的に今流れています。
 当時は日本語だけでしたが、今英語版も作られていて、小さな努力ですけれども、世界にすごく大きな波及効果があり、これは市民向け学習ツールということで、中高生を対象としているように見えますが、実は中身はすごく深くて、行政官や、産業に関わる方など、この分野の方は、多分一、二時間の間に北極で遭遇する全てのプレーヤー、誰がいて、どういう考えをしていて、どんな場面に遭遇するかということをシミュレーションできてしまう、大変有効なツールで、海外でもそれが認められたのだなということが、2年経ってそういったものも見えてきましたことを御紹介します。
【藤井分科会長】 ありがとうございます。北極研究に関連した市民向け学習ツールの開発ということで、大変よい成果が上がっているということであります。
【榎本委員】  市民だけでなく、多分政府関係者なども使えるものだと。
【藤井分科会長】  ということですね。ある意味、様々なステークホルダーが関わることができるような、そういう機会を与えることになったということでしょうか。
【榎本委員】  そうです。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。ほかにございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、次、議題3に進ませていただきたいと思います。議題3は、海洋生物研究に関する今後の在り方についてということになります。
 これも事務局から御説明をお願いいたします。
【事務局】  事務局の鈴木でございます。資料3-1の御説明をさせていただきます。
 こちらは海洋開発分科会に設置いたしました海洋生物委員会におきまして、海洋生物研究に関する今後の在り方について御議論を頂き、昨年3月に報告書をおまとめいただきました。もともと生物委員会では平成27年にも報告をまとめていただいておりましたけれども、昨今の情報科学の進展や、国際的なSDGsの推進の流れなども踏まえつつ、改めて海洋生物研究の在り方を御議論いただいたものでございます。
 委員会では中田先生に主査をお務めいただきまして、本日御参加の委員では、川辺先生、河村先生、窪川先生にも入っていただきまして御議論いただきました。こちらのペーパーでは、報告書記載の御提言の7つのポイントについて簡単にまとめております。簡単に御紹介します。
 1つ目は、海洋の持続可能な利用、保全に向けて、海洋生態系の変化をデータに基づいて科学的に理解し、得られた知見を発信していくことが重要であるということ。
 2点目、海洋生物研究は、持続可能な利用・保全に関する国際的ルールづくり直結していくことから、10年などの枠組みを積極的に活用した国際連携による推進が必要であるということ。
 3つ目、海洋生物資源の持続的な利用・保全には、生態系に基づく管理(エコシステムマネジメント)を目指すことが重要であり、そのためには複雑な生態系を支える様々な要素の間の相互関係の理解が重要であるということ。
 4点目には、そうした知見を得るためにモニタリングを継続するとともに、「海しる」の活用など、データを蓄積、公開する仕組みが必要であるということ、そしてAI・ビッグデータ解析技術などの情報科学技術を活用して、複合的なストレスを受ける海洋生態系について情報の充実が必要であるということ。
 5つ目は、そうしたデータを共有し、複雑な海洋生態系に関する多様なデータの重層化や統合・解析をすることが必要。またAIやモデリング技術の高度化による統合的解析を基に、海洋生態系の将来予測精度を向上させ、バランスの取れた海洋生物資源管理を実現していくことが重要であるということ。
 6点目は、キャパシティービルディングの観点ですが、海洋科学の将来を担う若手、女性、国際、情報人材の育成が必要であるということ、また地域等へのアウトリーチ・協働が必要であるということ。
 そして7点目ですけれども、10年から20年後の社会実装を見据えて、SDGsを意識したイノベーションの創出が重要であって、多分野・異分野連携、多機関連携などによってオープンサイエンスを推進することが必要であること。というような形で、7点の御提言をまとめていただいております。
 報告書本文については参考資料につけさせていただきましたので、またお時間がある際にお読みいただければと思います。
 次の資料3-2でございます。この委員会報告も踏まえまして、令和3年度予算に新たに計上した事業について、現在の検討状況を御説明させていただければと思います。
 海洋生物ビッグデータ活用技術高度化という事業名でございまして、令和3年度予算に九千万円を計上しております。本事業は、近年一層の環境ストレスにさらされて、持続可能性が脅かされている海洋生態系につきまして、ビッグデータを活用して知見を創出して、その社会実装を通じて持続可能な保全・利用を目指していくという事業でございます。
 これまでの各種の技術開発の進展によって、環境情報を含めて、海洋生態系を取り巻く情報は膨大な量が蓄積されるようになってまいりました。またAI技術など情報科学の進展なども合わせれば、多様で複雑な海洋生態系を理解していくという技術的な土壌が成熟してきたと言える状況でございます。また、今は誰もがスマートフォンを持ってデータが取れますので、市民科学も取り入れやすい環境になっております。
 そうした背景も踏まえまして、海洋生物・生態系研究と情報科学を融合し、AI技術等を用いたデータ収集・選別技術やビッグデータ解析技術の高度化を図っていく。その成果の社会実装を通じて、10年のアウトカム実現にも貢献していくということを目指しております。
 この具体の制度設計につきましては、現在、専門家の先生方にもヒアリングを重ねておりまして、検討中でございますが、概要を申し上げますと、国連海洋科学の10年の期間にも合わせて、最長10年間の研究開発を行う。前半5年は基礎的な研究開発、後半5年はその成果の社会実現に向けた取組を中心にして、途中ステージゲートも挟みながら、質の高い取組を継続的に実証していく予定でございます。
 今後3月から4月頃に公募ができればと考えておりますけれども、それによって課題を選定いたしまして、本格的に実施する場合は1課題最大三千万円程度、またそこまでの水準には至らないけれども、磨けば光るようなものについては、FSとして数百万円以下で取組に着手するということも考えております。
 主な要件はこちらに書いてあるとおりでございますが、ビッグデータを活用して新たな知見を創出する、海洋生物・生態系研究と情報科学の融合による研究であること、また、社会実装のためにステークホルダー(地域、市民、事業者等)と連携を図っていくもの、そうしたものを通じて10年のアウトカムの実現にも貢献していくものと考えております。
 具体の研究開発課題につきましては、公募によりますので、あらかじめ特定するということは現時点では考えておりませんが、例えば市民や漁業者、船員さんなどから集めた画像データなどを基に、海洋の汚染状況や絶滅危惧種の分布などの実態を把握するというような、海洋観測に市民科学を取り込んでいくという取組などが考えられるかと思いますし、また海洋生物のゲノム情報のビッグデータを用いて遺伝資源を探索する取組など、様々な例が想定されるかというふうに考えております。今後公募に向けて、具体の制度設計を決めていければと思っております。
 事務局からの説明以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。海洋生物委員会の主査は中田先生がお務めだったと思いますが、何か補足はございますか。
【中田分科会長代理】  大体尽くしていただいたと思いますけれども、海洋生物がビッグデータになるという発想が、過去にはそれほどなかったと思います。生物をサンプリングして初めて研究が進む。それが、ちょうどこの委員会を立ち上げる前に、藤井先生なども加わっていただいていたCRESTの海洋生物多様性領域などで、生物の情報もビッグデータ化できる、特にゲノムの情報などを含めて、生物、それからその機能も把握できるというようなことができるようになったことが、大きな端緒になっていると思います。いろんな分野の人が集まって、新たな分野、10年ですから、じっくりと育てていけると思うので、期待しています。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。ただいまの海洋生物関係につきまして、御質問等ございますか。
では、見延先生からお願いします。
【見延委員】  ありがとうございます。見延です。今、国連海洋10年にも貢献ということをおっしゃっていましたけれど、国連海洋10年に貢献するとなると、国連海洋10年のアクションとして認定を得る必要があると思いますが、そこはどうお考えでしょうか。
【事務局】  今後そういったことも含めて検討してまいりたいと思います。
【見延委員】  よろしくお願いいたします。アクションに応募するということになると、それなりの仕組みがないと、単に採択された人になるべく応募してくださいというのだと、なかなか結びつかないのではないかなと思うので、どうぞよろしくお願いいたします。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。そこは積極的にその方向で進めていくということかと思います。
 それでは、窪川先生、お願いします。
【窪川委員】  私の質問は、実は見延先生と全く同じでしたけれども、それに補足させていただきます。国連海洋科学の10年のアクションの募集というのは、第1回は今ほとんど終わっていると聞いています。第2回、第3回とこれから続いていくと思いますが、今回の海洋生物学として出てきているビッグプロジェクトというのは非常に貴重な機会でして、しかも情報科学との融合及び、恐らく社会実装がかなり強調されるプロジェクトだと思いますので、国連海洋科学の10年に対する日本のアクティビティーという視点も是非入れていただいて、かつその10年へのインターナショナルな貢献も、この文科省の公募のところで取り入れることも考えていただけるとよいと思います。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。是非その辺り考慮しながらかと思います。
 谷委員、お願いします。
【谷委員】  ありがとうございます。谷です。これはもちろん生物の話で、少し違う話を申し上げますけど、生物のサンプリングのためのネットと同じものを、プラスチックのモニタリングに使っております。生物データを取るときにプラスチックも取れたりすると思いますが、せっかく同じサンプリングアクションの中でプラスチックが取れてくるので、それを何かうまい具合にプラスチックの探索をやっている方とシェアするなど、考慮されているのかなということをお伺いしたく手を挙げました。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。この辺りはいかがでしょうか。考慮されているというのはどうですかね。
【事務局】  御説明させていただいた新事業については、公募による課題選定になりますので、具体的に何の研究開発をやるかというのをあらかじめ国から具体的にお示しするわけではございません。ただし、もし先生がおっしゃるような提案が出てきた場合には、そうした生物だけではなくて、プラスチックの方に広げていくなど、そういった形で実施内容の改良を図るというようなこともありうるかと思います。
【谷委員】  海に出る機会というのは非常に貴重ですし、プラスチックはプラスチックで非常に大きな問題ですので、本筋を曲げる必要はないと思いますが、スピンアウトしたものをうまくそのプラスチックの研究や、対策に使えるような仕掛けというのは、むしろその応募するサイドで意識しておいていただかないといけないのかなと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございました。ビッグデータは、そもそも発想としてはそういうことでありまして、つまり積極的にインテンショナルにデータを取るというのももちろんですけれども、それと同時に取れてきているデータをいかにうまく使うかというのが、もう一つのビッグデータの観点だと思いますので、そういう意味では、今お話があったことは、現実に現場では既に行っているケースもあると思いますが、ある意味事業を進めるに当たっての工夫かと思います。
 どういう形で配慮すればよいのか少し分からないですけれども、理解としてはそういうことかなと思います。限られたリソースの中で最大の効果を上げようとすると、両にらみでもちろんよいですよということになるのかなと思います。ありがとうございます。
 それでは、石田委員、お願いします。
【石田委員】  石田です。よろしくお願いします。前の開発分科会のときに発言させてもらいましたけれども、ビッグデータのうち機器で観測したり、衛星で観測したり、DNAのデータというのは、ある程度クオリティーがしっかりしていると思いますけれども、化学データや生物の形態による同定データのようなDNAを使わないものはクオリティーがばらばらなので、是非こういうときにはクオリティーコントロールというのを念頭に置いて、またその仕組みも組み込むようにお願いします。
 化学データでしたら標準物質の充実などを進め、それでクロスチェックしながらデータを出していくなど、無駄なデータをたくさん重ねてもよい成果が得られないので、そういうところの考慮をお願いしたいと思います。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。これはまたどういう提案が来るかによってということかと思いますが、クオリティーコントロールは大事なことだと思います。
 それでは、川辺委員、お願いします。
【川辺委員】  東京海洋大学の川辺です。よろしくお願いします。今御紹介いただいたこのプロジェクトは、とても面白そうだなと思って期待しております。「国連 海洋科学の10年」なので、御説明の中にも出てきましたけれども、市民科学というものを生かしていこうというのが中にあるのかなと思います。
 ただ、今までの市民科学というと、何となく市民が研究者の方の研究をサポートするための科学みたいな印象がまだあって、そのためにビッグデータを取るところが期待されているのかなと思います。しかし、「国連 海洋科学の10年」の趣旨としては、科学の変革を目指す、あるいは市民参加を目指すといったところが大きいと思うので、もしその趣旨でこういうプロジェクトをお進めになるのであれば、文科省さんとして何かガイドをしていただきたいなと思います。
 どういうガイドかというと、今、石田委員からもありました、データの質の保証をどうするのかというような課題、いわゆる市民科学の課題というものにどう応えるのかというところと、あともう一つ、この参加の在り方というものを、研究者に貢献するというだけではなくて、もう少し主体的な、例えば海洋管理や沿岸域管理などに市民が参画していく土台をつくる、そして市民参加の在り方というものを求めていく、是非そのためのガイドもしていただけたらと考えております。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。これはとても大事な観点でありまして、やはり市民科学といったときに、ある種のこれまでのイメージが比較的強くあるので、それとは少し違う、海洋科学の10年の最後の7つ目、Inspiring & Engagingというところがやはり大事で、市民を巻き込んでいくという、まさに今、市民参加型とおっしゃいましたけれども、ある意味市民参加型をどうつくっていくかというのもかなり大事なポイントだと思いますので、是非上手に設定をしていっていただくのがよいのかなと思います。ありがとうございました。
 あとは、榎本委員ですか、お願いします。
【榎本委員】  極地研究所の榎本です。私もこの資料の中で、市民科学という言葉が数か所出てきていたので、そこに興味を持ちまして、発言させていただきました。今、大事なポイントもおっしゃられましたが、多分無意識のうちに大事なデータを市民の方が取っているというのもあるかと思います。少し啓蒙(けいもう)することによって、さっとそういったものが集まってくるような、よい仕組みをこの中で実現されるとよいかと思いました。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。今の市民参加の観点は本当にこれから重要になってくると思いますので、是非いろいろまた御検討をお願いしたいと思います。知らないうちに大事なデータを取っているというのもありますし、またこれは後で議論すればよいですけど、市民参加型にすることによって、市民それぞれがある意味自分事として海に関わってくれるような形になるというのは、非常に我が国の海洋分野全体にとっても大事なことだと思いますので、是非御検討いただければと思います。
 それでは、次の議題に進ませていただきたいと思います。少し時間も押してしまいましたので、議題4であります。北極域研究推進プロジェクト(ArCS)の事後評価で、これは審議となるかと思います。まず分科会としての今年度の評価の対象と評価方法について決定したいと思います。
 事務局より御説明をお願いします。
【事務局】  資料は4-1でございます。こちらは例年夏に事前評価を行う前にお諮りしている資料でございますけれども、今年度、事前評価、それから中間評価の対象となる課題がございませんでしたので、本日の事後評価の前にこちらを決定させていただいて、この後事後評価をさせていただければと考えております。
 まず1ポツでございますけれども、今年度の評価の対象といたしましては、北極域研究推進プロジェクト(ArCS)の事後評価ということでございます。
 それから2ポツの評価方法でございますけれども、こちらに記載の観点から、後ろに別添といたしまして事後評価票をつけてございますけれども、こちらの様式で基本的には評価を実施するということを記載してございます。
 それから、3ポツ留意事項(利益相反)でございますけれども、こちらに記載の方は評価には加わっていただかないようにするということで記載してございます。
 簡単でございますが、この資料につきましては以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。ただいまの御説明につきまして、何か御質問等ございますか。よろしいでしょうか。
【榎本委員】  極地研究所の榎本ですけれども、今の留意事項の中の「評価対象課題に参画しているもの」に、私は多分該当すると思うのですけれども、この報告、あるいはこれからのプロセスについては、どういった形で参加すればよろしいですか。
【藤井分科会長】  それは次の具体的な中身に入るときに申し上げたいと思いますが、一旦このやり方でよろしいかということについてはよろしいでしょうか。
【榎本委員】  分かりました。
【藤井分科会長】  つまり利益相反が起こり得る方については評価に加わらないものとするという形で進めさせていただいて、具体的に申しますと、プロジェクトに参画されている方は評価に加わらないということになるかと思います。
 ほかにこのやり方について、御質問等ございますか。よろしいですか。
【見延委員】  北海道大学の見延です。私はプロジェクトには関わっていないのですけど、事前に事務局に伺ったところ、プロジェクト推進機関に所属しているので、評価には関わらないようにしてくださいと指示を受けましたので、評価には関わらないことにしたいと思います。
【藤井分科会長】  分かりました。
それでは、まずこの評価の方法については、この分科会の案として決めさせていただいたという形にしてよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【藤井分科会長】  ありがとうございます。それでは、具体的にこのArCSの事後評価についてということで審議に入りたいと思います。
今お話に出ましたけれども、榎本委員、それから見延委員が、御本人若しくは所属機関が本プロジェクトに参加されているということですので、ただいまの留意事項と。
【事務局】  すみません。阪口委員も所属機関が参画されておりますので。
【藤井分科会長】  阪口委員ですか。失礼しました。榎本委員、阪口委員、見延委員については、所属機関がプロジェクトに参画されているということで、先ほどの留意事項のとおり評価には加わらないということでございます。
 そのほかに、自分が関係するという方はいらっしゃらないという理解ですが、よろしいですか。よろしいですね。
 今お名前を挙げました榎本委員、阪口委員、見延委員につきましては、この評価には参画されないということで進めさせていただきたいと思います。
それでは、具体的な説明に入りたいと思いますけれども、まずプロジェクト実施に当たって、研究計画、評価等の助言を行う有識者会議、北極域研究推進プロジェクト推進委員会というのがございまして、この座長をしておられます池島先生に御出席を頂いております。まずこの事後評価案の内容につきまして、池島先生と事務局より御説明をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【池島委員長】  北極域研究推進プロジェクト推進委員会の委員長を務めております早稲田大学の池島でございます。よろしくお願いします。本日は、北極域研究推進プロジェクト事後評価結果の概要につきまして、私から説明させていただきます。資料4-2を御覧ください。
 北極域研究推進プロジェクトは、平成27年度から昨年度、令和2年3月までの5年間実施した事業であり、国立極地研究所が代表機関、海洋研究開発機構及び北海道大学が副代表機関となっていました。
 その目的は、北極域における環境変動と地球全体へ及ぼす影響の包括的な把握や予測を行うことにより、その社会・経済的影響を明らかにし、政策決定上適正な判断の課題解決のための情報を内外のステークホルダーに伝えることでありまして、国際連携拠点の整備、国際共同研究の推進、若手研究者の育成等を実施し、北極域の持続的発展に貢献することでありました。今回、中間評価に引き続き、北極域研究推進プロジェクト推進委員会におきまして、事業評価を実施いたしました。
 今回の事業評価におきましては、中間評価時と同様に、北極域研究推進プロジェクト推進委員会において評価方針等を決定後、課題実施機関において自己点検を実施し、自己点検等に基づき、委員会の各委員が書面評価を実施し、当該書面評価等を踏まえ、本評価結果を取りまとめたものであります。
 事業評価結果としては、まず必要性、有効性、効率性の観点で評価し、全てがあったということで、(2)総合評価に記載のとおり、本プロジェクトは、当初の目的を達成したとして評価しております。
 なお、皆様御存じのとおり、既に本年度より、後継プロジェクトの北極域研究加速プロジェクト(ArCSⅡ)が開始されている点も踏まえ、同じく(3)今後の展望におきまして課題点等を挙げるとともに、今後も引き続きフォローアップをすべきとしております。評価結果の概要につきましては以上です。
 評価結果等の詳細につきましては、事務局より説明をさせていただきます。
【藤井分科会長】  お願いします。
【事務局】  事務局、河野でございます。続きまして、ただいま池島先生から御報告のございました評価結果の詳細について御説明させていただきます。
 42ページのところでございます。評価結果につきましては、それぞれ必要性、有効性、効率性の評価となってございますが、必要性のところでございます。
 (ア)必要性、評価項目として、科学的・技術的意義、社会的・経済的意義の部分でございます。中段に書いてございます、これまでのArCSでの結果を御覧いただきまして、特に挙げるべきものとしては、例えば、国際的に認知された科学的成果を上げたということ、その結果、北極評議会作業部会等での国際的な議論のリードに寄与したということがございます。
 また中段でございますが、ロシア、グリーンランド等の北極圏5か国に計10拠点、国際連携拠点を設置し、大学・研究所での研究を進めるための整備が進んだということが評価できる。
 それにあわせまして、北極域のデータアーカイブシステム、ADSと称してございますが、データのアクセスのための整備ということで、オープンサイエンスの実施、ステークホルダーへの情報発信も成果を上げたといった点から、本プロジェクトについては、科学的・技術的、社会的・経済的の意義の観点から必要性があったと、委員会において評価いただきました。
 次の有効性の部分でございます。評価項目としては、新しい知の創出への貢献でございます。
 この点に関しましては、中段に書いてございます1つ目のポツでございますけれども、ロシア永久凍土地域への温暖化の影響が従来の牧畜に与える影響など、自然科学系と人文・社会科学系が連携した成果が、新たな知の創出に貢献しているということ、また高精度のブラックカーボン観測技術が世界のブラックカーボンの観測の基準となる観測装置を開発した。そういった点でも国際的な研究成果への貢献ということで、新たな知の創出につながっていると評価いただいております。
 加えてIPCCの特別報告書等、また北極圏の監視評価プログラム等への執筆者・査読者としての貢献と、国際科学コミュニティへ貢献した点も評価いただいてございます。
 以上の点から、新しい知の創出への貢献の観点としては有効性があったと評価いただいております。
 43ページ下段のところで、評価項目として人材の養成でございます。次のページの上段に書いてございますけれども、ArCS事業におきましては、若手研究者、大学院生等にも研究に参加していただいた。その38名のうち10名以上が、その後研究者としてのキャリアアップをした。またそのうち3割程度は女性であるということで、ArCS事業については、若手人材育成といった点でも特筆に値するという評価を頂いてございます。そういった面で人材育成の観点から有効性があったと評価をいただいてございます。
 中段、効率性でございます。計画・実施体制の妥当性の部分でございます。下段のところで、日本としては非北極圏国ではございますが、その科学的貢献が国際的にも評価され、全体として妥当な研究計画・実際体制であったと評価できる。そういったものを評価していただきまして、計画・実施体制の妥当性の観点から、効率性があったということを評価していただいています。
 次の45ページ、総合評価についてでございます。北極域研究の科学的成果については、論文発表、あとは学術集会などにより、量、質ともに十分出されていると評価をいただいてございます。また人材育成にも積極的に取り組み、成果を出したということで、高く評価できると記載されております。こういった点から総合評価としても、当初の目標を達成したと評価いただいております。
 また、(3)今後の展望のところでございますけれども、丸1で記載してございますが、ArCS事業においては、研究拠点、又は観測拠点、研究船、データベースなどの研究基盤の長期的・安定的な運用が必須である。加えて人材の育成が必要不可欠というところで、発展的な人材育成を進めるべき。
 丸3でございますけれども、研究成果の社会還元というところ。実施体制の在り方も含めた具体的な検討が望まれるということでございます。
 丸4のところでございますが、同じく社会実装の取組も必要であるということでございます。
 46ページのところでございますが、丸6として、人文・社会系と自然科学系の協働、実社会への成果の普及、企業・自治体・地域社会との協働といったところ、そういった点を一層強化することで次につなげていくという評価でございましたので、事務局からの補足説明でございました。
 以上でございます。御審議よろしくお願いいたします。
【藤井分科会長】  ありがとうございました。それではただいまの御説明につきまして、委員の皆様から御意見をいただければと思います。いかがでございましょうか。これが一応評価の案ということでありますので。
【川辺委員】  すみません、東京海洋大学の川辺です。お尋ねしてもよろしいでしょうか。
【藤井分科会長】  はい。どうぞ。
【川辺委員】  今お話をお伺いして、非常に成果がたくさんあってよかったという評価で、すごいなと思って伺っていましたが、特に関心あるところが、自然科学系研究と人文・社会系研究の協働でたくさん論文を出されたというところです。私は知らなくて申し訳ないですけれども、どういったテーマでこういう共同研究というのがなされたのか、もしお分かりでしたら教えていただけると有り難いです。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。これについてはいかがでしょうか。事務局、分かりますか。
【池島委員長】  説明は事務局からさせていただきます。
【事務局】  事務局から御説明させていただきます。自然科学系と人文・社会系の共同研究につきましては、例えばプロジェクトでグリーンランドの研究など地域の研究というところで、現地の災害や、又は雪氷などの研究を現地の先住民の方と協力して行った研究、そういったものを社会的還元されるということで、いわゆる自然科学系と人文・社会系のある意味融合した研究を行っているというものでございます。
 又は過去の氷床の掘削等で、いわゆる現地の自然科学の状況と、そこの地域での歴史との関係などを研究した成果。具体的にはホームページ等に掲載されてございますので、改めてまた先生には別途お知らせしたいと思います。
 概要となりますが以上でございます。
【川辺委員】  ありがとうございます。北極の環境変化や開発による地域への社会影響評価というような共同研究とお伺いいたしました。また詳しく教えていただけると有り難いです。よろしくお願いいたします。
【事務局】  分かりました。よろしくお願いいたします。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、谷委員、お願いします。
【谷委員】  ありがとうございます。谷です。我が国の北極政策では、我が国の強い科学、技術を通じて北極に貢献するとなっておりまして、その意味で、いろんな論文発表がされたということは非常に結構なことだと思います。中でも、論文ではないですけれども、ADS(Arctic Data archive System)ですか、北極のデータシステムが皆さんに使われているのは非常によいことだと思います。なかなか微妙な関係にある国もある中で、ちょっとその微妙な関係から離れた我が国が、全体のデータを永続的にアーカイブして供給できるというのは、表立って言われているかどうかは知りませんけれども、きっと大変感謝されているのだと思います。
 それから、人材がきちっとつくられてきているという御報告を頂きました。これは非常にめでたいことだと思います。人材というのは、今つくればよいというものではなくて、この後も継続してつくっていく必要があると思いますが、そういう意味では、第2期が今動いているというのも非常に結構な話で、この第1期というのは非常に成功されたものと思います。ありがとうございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、廣川委員、お願いします。
【廣川委員】  ありがとうございます。このプロジェクトの研究成果はすごくすばらしいもので、非常に成果もたくさん出ているという理解をさせていただきました。
 1点教えていただきたいのですけど、2ページ目の当初の課題の目的のところで、こういった「政策決定、適正な判断の課題解決のための情報を内外のステークホルダーに伝えることを目的として」と書いてございます。この内外のステークホルダーというのはどういう人を想定されたのかというのが1点と、あとは45ページの今後の展望のところで、ステークホルダーへの情報提供についてはまだ課題も残されていると書かれてございますけれども、この辺はどういう課題が残っているかというところを教えていただきたいと思います。お願いいたします。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。いかがでしょうか。
【事務局】  事務局でございます。ステークホルダーは多様でございますが、先ほど説明しました、いわゆる国際機関への情報提供というより、国際的な研究者の集まり、又は北極評議会などへの研究成果の提供や発表でございます。
 また国の政策への提言というところでは、北極に関する関係省庁の会議がございまして、当該会議へ参加いただいて、成果の発表等、また北極海航路に関しては関連の省庁への情報提供、あとは民間等企業といった様々なステークホルダーを想定して情報提供している。必要なところ、又は一般の国民の方々への提供情報というところは、今後更に進めようかと思っております。
 簡単ではございますが、以上のようなことでよろしいでしょうか。
【藤井分科会長】  いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
【廣川委員】  そうすると、一般の方への情報提供はまだちょっと足らなかったと理解してよろしいでしょうか。
【事務局】  今後は、これはArCSⅡに体制を引き継いでございますけれども、いわゆる社会実装というところで、民間への情報提供だけではなくて、更に一歩進んで、それを活用して社会へという活用方法を、プロジェクトとしても進めるべきだという観点から、今後進めていくということでございます。
【廣川委員】  了解いたしました。ありがとうございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、中川委員、お願いします。
【中川委員】  日立の中川でございます。今の御質問に近い質問ですけれども、39ページの上の方に、商船三井が北極海航路で、要はLNG船だと思いますが、北回り航路で一応航海が成功したということが書いてございます。これは非常に画期的なことだと私自身は感じました。理由は、やはりスエズ運河等中近東というのは、いろいろな問題が起きたときに通れなくなるというリスクがありますので、日本のエネルギーは、もちろん原子力もありますけれども、火力の依存度はまだまだ高いですので、北極海航路が使えるというのは非常に社会的影響が大きいのかなと思いました。
 質問の内容は、もちろん論文の数や学術貢献も重要だというのは分かるのですが、こういった国民に分かりやすい成果をもう少しアピールして、例えばArCSⅡではそういったところ、ここにもウェザーニュース等で実運用に向けた検証を実施と書いてございますけれども、もっと数を増やすなど、そういった計画に反映して、国民に分かりやすい成果というのでこういうのを出していただけるとよいかと思いましたが、そういう計画があるのかというところを質問させてください。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。いかがでしょうか。
【事務局】  事務局でございます。国民への分かりやすいアピールというところで御指摘ありがとうございます。更に国民へのアピールという点では、ArCSⅡでは、新たに社会実装の担当を設置する、又はADSを更に活用して、データを抽出して国民から見えやすくするというところ、又は世界的な発信をすることで世界への貢献、その3点を強化していくという方向で考えてございます。
 先ほどの商船三井の件についても、様々な船で活用できるような形での北極海の運航支援サービスもArCSにおいて開発しましたので、そういったものの今後の進展というところも進めていただければと思います。
 以上でございます。
【中川委員】  ありがとうございます。そういう活用が進むと、単なるアーカイブではなくて、ある程度リアルタイムな配信や、情報系の整備も必要になるのかなと思います。そういうところを期待しております。
【事務局】  ありがとうございました。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、河村委員、お願いします。
【河村委員】  東京大学の河村です。いろんな成果が出てきたということはよく分かりましたけれども、今、中川委員の方からもお話がありました、具体的な成果というのがこの報告書からはあまり見えにくいというところで、例えばサイエンスであったら何が明らかになったのか、何が課題なのかというところを、もう少し分かりやすくまとめていただけるとよいかなという気がいたしました。
 人文・社会科学系の話も最初に出ましたけれども、例えば、43ページの下の方に人文・科学系のことが書いてありますが、この表現がよく分からない。「今後、国家プロジェクトとして実施されていることを踏まえ、事業目的をより一層理解して取り組むことが求められる」とありますけれども、これは一体何を意味しているのか。こういうよく意味が取れない表現が結構多いなという印象を持ちました。感想です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。43ページのもう少し上ですね。最後の段落、評価項目の上ですね。
【河村委員】  この表現だけ見ると、人文・社会科学系としては成果が出なかったと読めるわけですけれども、一体何を意味しているのかというところを教えていただければと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。いかがでしょう。ここのところはどういうふうな。
【事務局】  事務局でございます。御指摘ありがとうございました。ArCSでは、自然科学系と人文・社会科学系をプロジェクトとしても進めようということでおったわけでございますけれども、まだ多少十分ではなかったというような評価がなされたと思っております。そういった意味では、引き続きArCSⅡでもそういった点を踏まえて、社会への対応というところで、人文・社会科学系係の先生方にも更に協力いただくということで進めていきたいと思います。
 ArCSⅡでは戦略目標を立ててございまして、そのうちの4番目に、社会実装の試行と法政策的対応という目標を立ててございます。その点、人文・社会科学の先生方にも入っていただいて、今協働してプロジェクトを進めているという状況でございますので、先生、また御支援のほどよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【河村委員】  承知いたしました。
【藤井分科会長】  ここはこの表現としては、今そういう趣旨だということですが、よろしいでしょうか。
【河村委員】  例えばこの委員会でどういうことを求められているのかよく分からないですけれども、印象としては、表現として分かりにくいところが多いという感想でした。
【藤井分科会長】  分かりました。頂いたコメントは少しお預かりさせていただいて、より分かりやすくできるようであれば、そのようにしたいと思いますということで、一旦この部分はよろしいでしょうか。
【河村委員】  ありがとうございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、西村委員、お願いします。
【西村委員】  幾つかうかがいたかった点については既にほかの委員がご発言されたので、些末(さまつ)な点だけ1点お伺いします。報告書38ページ中央の中目標(概要)の3行目にある「南極域の継続的な観測を実施し」というのは、北極域ではなくて、これはこのままで正しいのでしょうか。両極を見るということなのかもしれないですけど、確認させていただきたいと思いました。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。この点はいかがでしょう。
【事務局】  事務局でございます。この中目標については、当初委員会の方で設定されたものを表記してございますが、意味合いとしては、北極とともに南極の観測についても、地球環境変動の解明に貢献するというような表現のことかと思います。その点御了解いただければと思います。
 以上でございます。
【西村委員】  承知しました。ありがとうございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、沖野委員、お願いします。
【沖野委員】  事業概要の最初のところに出てくる国際拠点ですけれども、事業概要の最初に出てきて図まで出ている割に、後の評価の方にその部分の割合が少ないような印象を受けました。アウトプットのところに10拠点造ったと。拠点の利用人数や共同研究17件って、10拠点あって5年で17件が多いのか少ないのか、私には判断し難いですけれども、そういうのも含めて、そもそも拠点を造るということが一つ割と大きな柱だったら、どういう拠点でどういう運営がなされているのかみたいなものが、もう少し何か評価されるべきと感じました。
 更にそれに対して、今後の拠点や船が長期的・安定的運用が必須であると書かれていますけれども、その辺りをもう少し強調してほしいと思いました。特に極地の観測だと、長期的にデータを取るというのはすごく大事なベーシックな部分なので、その辺をもう少し何か押せるような形になったらよいかという感じを受けました。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
【事務局】  事務局でございます。御指摘ありがとうございました。例えば若手人材の育成なども、拠点への派遣で波及効果があるというところでございます。それぞれの個別の研究で拠点での観測活動もございますし、そこが今回あまり見えてこなかったというところではございますけれども、拠点についてはArCS事業としてしっかり整備・運用したという評価はいただいておりますので、御指摘いただいた点を踏まえて、引き続き推進してまいりたいと思います。
 以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございました。今の点はよろしいでしょうか。
 それでは、次に行ってよろしいですか。平田委員ですか、お願いします。
【平田委員】  私も皆さんが既に指摘されているので、違うところを御指摘します。ポンチ絵のところで、主な成果でまとめていただいたページがございます。36ページです。
 ここの左下に4つ四角が主な成果だと思いまして、もう一回読ませていただきましたけど、これは何か予測分布図をウェブで公開したなど、あとは次世代の若手のことはあるんですけれども、内容として、氷河の融解水の増加が生態系に影響を与えるのを示唆するなど、ブラックカーボンの測定方法が従来は過大であったといって、そこの部分を見ると、測定が過大評価であったので前の論文を直したことがアウトカムになっています。これが主な成果だとすると、もう少し内容を書いていただいた方がよいのではないかなと、そういう感想でございます。
 私は専門家ではございませんので、これで十分な成果であるという御判断であればよろしいかなと思います。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。この点は何かございますか。お願いします。
【事務局】  事務局でございます。主な成果につきまして御指摘の点、事業としての直接の成果の箇所で書かせていただきました。ブラックカーボンにつきましては、各国でやっていた観測結果が少し過大だと。日本のものが過大だったというわけではなくて、日本で開発した観測装置が世界標準に貢献したということでございますので、今後発表する場合にそういった表現等を注意して、主な成果として示していきたいと思います。
 以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 あとはよろしいですか。川辺委員ですか。では、これで最後にしたいと思います。
【川辺委員】  ありがとうございます。ほかの委員の方々がおっしゃっていることと重なってしまいますけれども、この36ページのポンチ絵を拝見すると、北極海域における環境変動と、それが地球環境全体にどういう影響を与えるのかという課題設定があったかと思いますが、成果がこれらの課題に対応して書かれていないので、あれっという感じは確かにありました。紙面の都合で書き切れないのかもしれないですけれども、そういうところを充実させていただけるとよいなと思いました。
 以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
【事務局】  事務局でございます。ArCSの成果については確かに、この紙面だけでは書き切れないという御指摘、ありがとうございました。このプロジェクトの成果についてはホームページにも詳細に記載ございますので、そういった点も今後周知したいと思います。
 以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございました。
 それではいろいろな御意見を頂戴しましたが、少し分かりにくいというような御指摘もあったようですので、その辺りは少し、お預かりさせていただいて、事務局とも相談の上、必要があれば修正させていただくという形にさせていただければと思いますが、そのようなことでよろしいでしょうか。
【事務局】  事務局として承りました。どうもありがとうございました。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 では、この議題につきましてはこれでおしまいにしたいと思います。
【石田委員】  すみません、4-3の意見というのはこれから説明があるのですか。2020年からのプロジェクトの説明というのは。これは今回の議題にはない話ですか。
【藤井分科会長】  4-3の部分については。
【石田委員】  資料4-3の2020年から。
【事務局】  事務局でございます。4-3につきましては先ほど触れさせていただきましたが、今回簡単にお示しさせていただきました。時間も押してございますので、先生方、また御確認いただき、また個別の質問等ございましたらお知らせいただければと思います。
 以上でございます。
【石田委員】  了解しました。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、最後の議題でありますけど、冒頭に申しましたが、今期の振り返りと次期に向けた期待といったようなことで、委員の先生方にはお一言ずつ頂きたいと思いますが、最初にこの資料の説明だけ、事務局よりさっと御説明いただけますでしょうか。
【事務局】  事務局、大土井でございます。最後の資料、通しの49ページ目、資料5でございます。簡単に説明いたします。
 今期の先生方の最後の会議でございますし、次期への申し送り事項として、日本の海洋科学、あるいは文部科学省の海洋科学はどういう政策をやるべきだということについて、御意見いただきたいと思っております。そのために、一部の先生ではございますが、いろいろ先生方の話を聞きながら事務方で、取りあえずのイメージとして例示をさせてもらったのが資料5でございます。ですので、これにはあまりこだわらずに、文部科学省の海洋政策としてこういうことを議論するべきだということを、是非御意見いただければなと思っております。
 以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。これを見ながら、少し御意見をお願いしたいと思います。時間が限られていますので、1人当たり1分半から2分以内ほどで御準備をいただければと思います。順番に私から指名させていただくということでよろしいですか。
【事務局】  よろしくお願いします。
【藤井分科会長】  そのようにさせていただきます。
 それでは、まず、中田委員からお願いできますでしょうか。
【中田分科会長代理】  今まで例えば海洋の沿岸というと、私の所属、担当する水産や漁業などが占有していた場所が多かったわけですけれども、ここにあるような海洋のイノベーション、あるいはグリーンイノベーションといったことを考えますと、もっといろんな分野と海洋を分け合って使っていくことがこれから出てくると思います。そのときに、やはり海洋の科学的なデータというのは非常に重要になってくると思うので、それをきっちり取っていってみんなで共有していくということが、ますます重要になってくるので、そういったことを議論していただければなと思います。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。他の領域との協働部分ということでしょうか。
 それでは、続きまして平田委員、お願いします。
【平田委員】  平田でございます。ここにはちょっと書いていないですけれども、来年度というか、令和3年度の予算や、それから海洋基本計画の中にも、防災のことが書かれてございます。それで我が国で、もう既に10年前になりますけれども、東日本大震災を起こした東北地方太平洋沖地震というマグニチュード9の地震は海域で起きまして、基本的に非常に大きな地震は海域で起きます。
 東北だけではなくて、南海トラフでもマグニチュード9に近い、あるいは9を超える地震が起きる。それから北海道の沖合でも起きる。日本列島の太平洋の沖合ではそういった地震が起きますので、これについてJAMSTECなどが、海底での観測、特に海底ケーブルを使った観測、それから海底のボアホールを使った地震、津波の観測をするということを精力的に進められております。今後の海洋開発の中でも防災に是非力を注いでいただきたいと思いますので、是非今後ともそういった観点の議論を進めていただきたいと思います。
 特に南海トラフでは、JAMSTECとそれから防災科研が協力して、N-netという海底ケーブルを今作成というか、建設中でございます。まだ二、三年かかると思いますけれども、これができて、国民の命、安全で安心な社会をつくるということに貢献できると思いますので、科学技術の進展とともに、防災という観点からも御審議いただけると幸いでございます。
 以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、石田委員、お願いします。
【石田委員】  石田です。文科省の研究としては、利用するためのメリットだけではなくて、デメリットも明らかにするようなところをしっかりした方がよいのではと思います。先ほど言いかけたArCSⅡの方の計画の中で、「北極域の持続的可能な利用のための対応を実施」と書いてありました。資料3-1の海洋生物委員会のところでは「海洋の持続可能な利用と保全」と、保全の言葉が入っている。
 ここにも利用することだけではなくて、保全というのもきちっと言葉を入れて、デメリット、それに必要な研究も視野に入ることを示した方が良いと思います。やはり利用すると何か悪影響が出てきますので、保全へ向けた研究や提言もするような方向性を持っていた方がよいのではないかなと、私は思います。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。利用だけでなくて保全という観点も考えた方がよいということだと理解しました。
 では続きまして、榎本委員、お願いします。
【榎本委員】  榎本です。この資料では大分下の方に書かれていますが、人材育成・理解増進のための取組というところで、今回コロナのために、いろいろな観測活動ができなくなる、制限されるなど、大変なことが起きました。一方で情報の伝え方というところで、今回のテレビ会議も含めて、いろんなネットワークがつくられつつあります。
 今後コロナがどうなるか何か分からないですけれども、今回のような情報伝達の方法を、このリアルタイムコンテンツの利用にうまく結んでいただいて、そのためには多分一番てっぺんにあります大容量データの転送というのも必要になってくると思いますけれども、そんなところがうまく人材育成につながるようなところは期待したいと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。これも非常に重要な御指摘だと思います。
 それでは、続きまして沖野委員、お願いします。
【沖野委員】  沖野です。これをざっと見て、ほかに思いついたのは、平田さんがおっしゃった防災というか、自然災害に関してというのが1つ論点かなと思いました。
 あとは最後に書いてある国際連携は、やはり考えないといけないと考えています。特に海はつながっていますし、この後、日本だけで何かできるものでもないということを非常に強く感じております。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、続きまして川辺委員、お願いします。
【川辺委員】  このページの上の段から申します。4つあります。
 まず、一番上の将来的な調査観測システム・データリンクのあり方の3つ目で、「市民参加型・市民生活を通じた各種データの収集体制の構築」と書いてありますが、先ほど国連海洋科学の10年について申し上げましたとおり、今までのような研究者対市民という形ではなくて、地域の海について、その住民の人たちが主体的に管理に関わっていけるような、そういう海洋科学というものを構築していくという方向に持っていっていただければよいと思います。
 2番目ですけれども、その下の海洋生命科学のあり方の2番目で、「海洋生物の構造・機能の科学的理解」がございますが、海洋生態系の保全というのに関しまして、これから利用と保護の在り方というものを、もう少し具体的に行っていただけるとよいと思っております。
 それから3番目としまして、深海探査に限らないですけれども、今新たな海洋利用、海底資源開発もありますし、洋上風力発電の開発というのが盛んに行われている。こういったものが地球環境保全の「錦の御旗」の下に行われているところがありますが、やはり新たな海洋利用を行うことによって社会影響が起きる。影響を受ける人たちというのは必ずいるわけで、それがよかったり悪かったりもします。開発に伴う環境影響評価だけではなくて、社会経済的な影響評価についてもきっちり行える、科学的な手法の開発というのが必要ではないかと思います。
 それから4番目、最後ですけれども、下の方に人材育成・理解増進のための取組があります。「国連 海洋科学の10年」というのが始まるわけですけれども、かつて2005年から「国連 持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」というのが10年間行われて、グローバル・アクション・プログラム(GAP)という形で継続されています。そういうものと組み合わせて、海のESD、海洋ESDというものを推進していくような取組も行っていただけたらよいと思います。
 以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。大変重要な御指摘を頂いたと思います。
 続きまして、河村委員、お願いします。
【河村委員】  河村です。今年から海洋科学の10年が始まって、非常によい機会だと思いますので、海洋科学全体の発展ということを我々は考えなくてはいけなくて、海洋国家日本としては、オールジャパンで世界にプレゼンスを示していくべきだと思います。
 それを考えると我々研究者の側も、学際的な取組を考えながら協調関係を築く必要があるわけですけれども、利用と保全、あるいは災害の防止、それから文理融合など、いろんな分野のことが必要ということもありますので、文科省の皆さんにも是非お願いですけれども、省庁間の縦割りをなくしていただいて、水産庁、文科省、それから環境省、国交省、この辺りはいろんなことをそれぞれ行っておられますので、是非一緒に取り組んでいただければと思います。研究者側もそうですが、行政としても御理解いただいて、そういう努力をしていただければと思います。よろしくお願いします。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。これもまた大変重要な観点だと思います。ありがとうございました。
 続きまして、窪川委員、お願いします。
【窪川委員】  今まで皆さんが御意見をおっしゃったことと近いですけれども、私もやはり国連海洋科学の10年は、海洋にとって大変重要な10年になることは明らかなので、1つは、それを皆さんに知っていただく努力をすることも大事だと思います。
 国連のホームページに飛びますと、アンケートがまず出てくる期間がありました。そのアンケート結果で、日本人は気候変動に対する関心が世界で3番目に高いという結果が出たのですけれども、いろいろな環境問題に対する意識は急激に高くなってきています。それに海がどのように関係しているか、どのような解決策があるかということを、これから海洋科学の調査研究を基盤にして市民が知っていくことは、すごく大事だと思います。
 そのときにグローバルオーシャンサイエンスレポート2020がユネスコから出ていますけれども、その調査に関しましては文部科学省が非常に大きな協力をなされたと聞いております。貴重なデータがたくさん出ておりまして、日本は、沿岸の臨海施設が世界で一番多いです。これは大きな特色で、それだけ海に関する関心が高い。それから海と言ったときに、沿岸を思い浮かべる国民がもちろん多いわけです。沿岸及び遠洋、全海洋をどのようにこれから科学し、環境保全や持続可能に持っていくか、日本はすごく重要な位置になると思います。
 国連海洋科学の10年はちょうどインプリメンテーションプランのサマリーも出ておりますので、それらを参考に海に関する関心を高めていくことが、この分科会でも議論されていくとよいと思います。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、阪口委員、お願いします。
【阪口委員】  私からは、大きく3つほどちょっと考えることがあります。
 1つは、ここに書いてありますAUV、ROV、ウェーブグライダー、光ファイバー等、無人観測ですけれども、日本は圧倒的に遅れています。大概お買物になる状況で、すごく予算がかかります。国交省と深く議論を重ねて、この無人観測が早く進むようにするべきだと思います。
 そうすると、2つ目は、船舶による観測が徐々に減ってくるのかと申しますと、これはここにも書いてありますように、船舶の共同利用というものを、そろそろ本気で進めるべきではないかと私は思います。例えばヨーロッパでEUのHorizon 2020の供託金で進めておられますユーロフリートのシステムなどと比較しますと、我が国は非常に効率が悪いです。あと、我が国だけではなく、近隣諸国とももう少し連携して、船舶の有効利用というものを、まず国レベル、そして近隣諸国レベル、アジアレベルで本気で取り組んでいかないと、どの国も予算が少ないわけですから、より稠密な観測を行うためには、この船舶の利用体制というものをしっかり整えることが非常に重要かと思います。
 最後は、この海洋生命科学のあり方ですけれども、翻ってみますと、我々人類はまだ海洋の生命に対して、たかだか2%や5%ぐらいしか知らないと言われております。なので、まずはそれが何のために役に立つのか、そういうことを問わずに、もっとしっかり海洋生命に対して理解を深めるということが非常に重要で、過去20年ぐらい我々は研究者に対して、必ずそれが何の役に立つ、どこのどれに応用できるということを問い過ぎたのではないかと思います。
 当然そういう問いに対する答えが用意できているというのは重要なことでありますが、すぐに社会応用できる問題と、本当の基礎科学の問題をあまりにもごちゃまぜにして、基礎科学の研究者にまで応用のことを問い過ぎたということが一つ、失敗だったと思います。
 本日冒頭、谷委員の方から、12年間アーキアの培養方法にトライして、それを世界で初めて見いだして、培養方法が分かるということはアーキアの中身が分かったということなのですが、そういう基礎研究の方も少し重視した取り組み方というのが必要ではないかと思います。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。その辺りも是非議論ができるとよいかなと思います。
 それでは、続きまして、田中委員、お願いします。全体にちょっと急ぎめでお願いします。
【田中委員】  私から3点言わせていただきます。郵船の田中でございます。
 まずは、中田先生や河村先生がもうおっしゃったので、簡単にしますけれども、こういう成果の実装には、やはり他省庁との協働や連絡というのは欠くことはできないと思いますので、特にデータの取扱い含めて、その点は是非お願いしたいと思います。
 それから2番目、先ほど阪口さんがちょっとおっしゃったばかりの船舶の共同利用ということで、我々も会社の業務で一部お手伝いさせていただいているところ、船のライフも30年、50年と長いものなので、これはやっぱり中長期的に今のうちから考えて、先ほど諸外国との協力がありましたけど、そういう体制も一朝一夕にはできませんので、長い視点で検討していくべきものかなと。予算はある程度限られている中で、環境系のことや、期待されている成果というのはどんどん広がっているように思いますので、これは非常に大事な話かなと。
 それから3つ目、リストの下の方にある人材育成ですけれども、我々の産業界も海洋人材育成などを行っていますが、結構重なるところがありまして、我々も海洋系のことに関してはシミュレーションが大事だと思って、工学的なシミュレーションもそうですけど、先ほどから話が出ている環境系のシミュレーションなども、何か事業を行うときには多分すぐに要求されてくるだろうなと思いまして、この辺も、私なんか工学部出身ですけれども、そういう実業界の人材育成と研究者とミックスにやるような方法、ノルウェー辺りは行っているのですけど、そういうことも検討いただいたらと思います。
 以上です。ちょっと長くなりました。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、続きまして谷委員、お願いいたします。
【谷委員】  ありがとうございます。谷です。4点申し上げます。
 最初の2点は、私のGEBCOという組織に所属する立場から申し上げます。資料5の一番下の国際連携に関係しますが、日本の海洋科学や、あるいは海洋技術ですけれども、これの国際連携がどうなっているかというレビューをしないといけないのではないかなと思います。いろいろあるのでしょうけれども、ここの分科会でレビュー、資料を見せていただいたことはないわけですが、一方でいろんなところで国際連携があって、あるいは各国の海洋調査、私の場合は海底地形ですけれども、それを見ていますと、各国いろんな範囲で調査をされている。
 ただそこの裏には下心があるわけです。なぜフランスがここで調査するのか、なぜ中国はここに行くのか。なぜロシアはここまで出てくるのか。そういう何か実は腹黒い下心があるけれども、きれいなオブラートにかぶせて国際連携をやっておるわけです。我が国はどういう戦略があって、なぜここをやるのか、やらないのかというところについて、恐らく全然検討されていないと思います。もちろんEEZの中も測られていないですけれども、外も測るべきでないか、あるいはなぜ測るのか、そこら辺の頭の整理をした上で、国際連携というのを考えていく必要があるだろうと思います。
 2点目。1つ目の丸の一番下の海底地形です。今シーベッド2030という、2030年までに世界中の海底を明らかにしようというプロジェクトが動いています。メインプロモーターはGEBCO、私の組織、それから国際水路機関、国連海洋学委員会、ユネスコのIOCです。それと日本財団、この4者が動かしています。海底地形データというのは、国連海洋科学の10年の中の基盤的な部分だとユネスコIOCは思っています。
 アクションというのが始まりますけれども、その中にも当然に入っておりまして、日本はどうかというと非常にお粗末です。JAMSTECで一生懸命行っていますが、諸外国は国家規模で行っています。日本はJAMSTECだけです。これはかなり恥ずかしいと思います。オーストラリア、アメリカ、フランス、ヨーロッパはEU全体ですけれども、海底地形がまだ16%しか分かっていないのを100%にするという目標を立てて、国際事業が動いている中で、なぜ日本は何もしないのかというところは非常にじくじたるものがあります。
 あと2点申し上げます。人材育成ですが、ここに海洋のプロモーションと書いていますけれども、そもそも海を目指す学生、海に関心を持つ小学生、中学生、高校生がどれだけいるのかと思うと、何か暗たんとした気持ちになります。ここは海洋のプロモーションということではなくて、どうやって海に若い人たちが目を向けて、どういう具合に育てていくのかという議論を、誰かがしないといけなくて、海洋開発分科会がやってもおかしくないなと思っています。
 最後です。今回実は資料を拝見して、随分がっかりしました。例えば最初の予算案ですけれども、この予算案は、言い方は悪いですけれども、海洋地球課が御覧になった予算案であって、例えば最初に地球環境みたいなことを書いていますけれども、ここに出てくる予算というのは文科省の予算ですよね。
 しかし海洋開発分科会というのは、文科大臣の諮問だけではなくて、他大臣の諮問も受けることになっている。そういう立場なものですから、事務局として整理していただきたいのは、例えば地球環境に関して、全体としてどういう構成になっているのかというところもお示しいただきたい。何か基本的にJAMSTECの予算と、あとは欄外に海洋研がこうだと書いてある感じがしますけれども、そうではないだろうと思います。
 海域の防災関係でも、今日議論の中で防災科学技術研究所が出てきましたけれども、海上保安庁、気象庁も一生懸命調査をして、予算を取って、いろいろ行っているんですが、そういったところを整理した上で、文科省としてはこうだという話なら分かりますけれども、全然それが言及されていない。
 これは予算案といっても、「予算案(文科省の)」という話にすぎず、これはよろしくないと思います。ここの分科会は文科大臣だけの組織ではなくて、他大臣に対しても御意見を申し上げる立場なものですから、ここは何とかしていただきたいなと思います。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。あと5名の委員の方がいらっしゃいますので、もうちょっとお付き合いください。
 続きまして、中川委員、お願いします。
【中川委員】  中川でございます。時間もないようですので、簡単に2点申し上げたいと思います。
 私は情報系の分野の人間ですので、この海洋科学というものがここまで社会に及ぼす影響が大きいのかというのを勉強させていただいた、よい機会であったと思っております。今後に対する期待としては、やはり総合的な分野、先ほど出ておりますけれども、例えば防災というのはあります。海底地滑りが大地震につながり、社会への影響が大きいこと、海水の温度が気象、気候に及ぼす影響が大きいことなど、日本はやはり、海洋科学が社会に及ぼす影響が大きいと考えております。それがもっと広く世の中に知られてほしいなと思っております。
 先ほども申し上げましたけれども、この海洋科学の研究成果や、社会にどういう影響があるのかといったところをもっとアピールするような、研究成果を述べるときなどでもよいと思いますけれども、御披露していただきたいということと、あとはもう一つ無人観測の話がさっきより出ています。
 ドローンなどではやはり中国が先行していて、それは空中権ですか、日本の場合には、土地所有者の方が上空権を持っているというところが大きいわけですが、海洋はそういったところがないので、できれば何か独自の技術を、例えばそういう自律AUV、無線観測ドローンなどがこの海洋の分野で培われて、産業などにフィードバックできるような、民生に対応可能な技術に育っていくというのも、すごく期待されるのではと思います。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 続きまして、西村委員、お願いします。
【西村委員】  最後の点の国際連携ですけれども、国際連携の形はいろいろあると思いますが、国連海洋科学の10年というのは、海洋科学を国際的に推進していく上でめったにない機会だと思います。日本ではまだ国内委員会が発足していなくて、現在準備中と先ほどスライドにもありましたけれども、国内委員会を通して国際的貢献をしていくために、どういったメンバーでどういった形であれば効果的かという、その体制づくりや、それから出来上がった国内委員会と様々な国内アクターとの連携をうまく取っていく仕組みをつくっていただければと思います。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 続きまして、廣川委員、お願いします。
【廣川委員】  ありがとうございます。私からは、この海洋の利用と、最近国際的にもやはり注目を浴びる環境保全という視点から、2つ申し上げたいと思います。
 1点は、これまでの委員とも重なるところがございますけれども、この開発と利用を進めるに当たっては、海洋のエンジニアリング、これを日本の技術でもって進めなくてはいけないと思います。
 陸上ではデジタルトランスフォーメーションなどがはやっていますけれども、日本の持つセンサーやロボットなどの技術、これを是非海洋に適用して、海洋開発あるいは保全を進めるという視点は重要かと思います。最近ある民間企業から、海中での光通信についてこういうものを開発しましたけど、どこで使ってよいか分からないという問合せを受けたことがございます。そういったところの連携、いわゆるそういうセンサー技術を持っている会社との連携というのは重要かと思います。
 あともう一点は、これも少し重なるところがございますけど、やはり海底、あるいは海洋のベースマップというのが、EEZ内にはできていないというところ。これはまたほかの省庁との横連携が必要かと思いますけれども、やはり海底の地形、それから地質、生態系、この辺のベースマップが、少なくとも日本のEEZ内では絶対必要だと思います。これが今後の海底、あるいは海洋の利用、一方では保全のときのベースライン、ベースのマップになると、私は理解しております。
 生態系自身は公海上とつながっているものでございますので、公海上の話とそのEEZの話がつながっているので、そこは連携しながら行わなくてはいけないと思いますけれども、いずれにしろ、こういったベースアップがあってこそ海洋の利用と保全ということが実現できるのではないかと思います。この点を私から申し上げたいと思います。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 続きまして、藤井委員、お願いします。
【藤井(良)委員】  ありがとうございます。私は冒頭の質問でお聞きしましたように、海洋上のデータ把握のシステムがないということを今回確認できて、大変残念ですね。これでカーボンニュートラルの洋上風力をあっちこっちつくっていくというのは、その計画の中で観測していけばよいのでしょうけれども、実際には既に経済産業省が銚子沖でNEDOの協力で実証実験をやった日立等の風車が、全部駄目だったという実例があるわけです。データも取らずに行っているという、このお粗末さというのが、開発の議論をしながらできない。
 そのベースのところには、先ほども御議論がありましたけれども、基礎科学と応用科学の議論が混在しているわけです。ここを分けなくてはいけないと思います。基礎科学の重要性は当然あるわけです。それがないとまた応用もできないのは当たり前ですが、私はこの分野は専門ではないですけれども、やはりそこの基礎科学を重視しなくてはいけない部分と、その中からピックアップして、中期、短期、あるいは長期の応用の部分、開発、利用の部門にどう持っていくのか。
 そのチャート、ロードマップを示した上で、研究開発の費用を投ずるということにしていかないと、それぞれの研究の成果は当然あるわけですけれども、その開発という視点にどれがマッチするのか、そこを整理しないと。かつ地球温暖化の議論というのは本当にもうスピードアップして。今現在IPCCのワーストシナリオで進んでいるわけです。我が国は早くこれに対応する技術開発を手にしないと、我が国だけではないですが、人類は後れていく、そのように感じております。その辺の整理をお願いしたいと思います。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは最後ですか、見延先生、お願いします。
【見延委員】  見延です。私からは海洋の予測について申し上げたいと思います。
 海上の予測が新しいフェーズに入ってきており、これをどのように日本で行っていくかが重要だと考えます。国連海洋10年でも目的は、「Ocean We Want」です。海は変わる、変えていくことを前提にしています。そのためには海洋、海洋環境の予測ができなくてはなりません。海洋の予測は、気候システムの一部としても物理的な海洋である海洋循環、海洋熱波、海洋貧酸素化、更にそれと結びつけて、海洋生態系の予測を行っていかなくてなりません。この結びつけるところは、データ量も多いために今は目詰まりしていますが、欧米、そして中国では既に取組を始めているので、今後必ず連携が必要になります。
 また、海洋風力発電でも地球温暖化によって風が北上するということが予想されています。今私のいる北海道沖というのは適地と考えられていますが、これが北上すると適地ではなくなってしまうかもしれません。では、どのように具体的に日本周辺で変わるのかというのはよく分かっていないので、現在当研究室でも研究をしているところですが、やはり日本全体として取組が必要かと思います。
 しかし、予測は既に1か国で行う時代ではなくなっています。最近JAMSTECでは海洋の超高解像の海洋予測を行っていただきました。それも大事ですけど、将来予測はモデルによって違うということが分かっておりますので、同時に1つのテーマに適切な数のモデル、10や30のモデル、多数の国のモデルを使って評価する時代になっております。
 したがって今後10年、必ず大きく進むであろう海洋予測について、本委員会、そして文部科学省には、枠組みの設計などをお願いできればと思います。私も国際機関であるWCRPやPICESでそういった活動に関わっておりますので、もし必要あれば情報提供させていただきます。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございました。少し私の不手際もありまして、時間が過ぎてしまって、急いでいただいてありがとうございました。
 全体として一言だけ、もう本当に30秒ぐらいだけ申し上げますと、今のもそうですけれども、国際的な連携や、それから省庁間という話、船舶の共同利用、あとは、学問領域間のオーバーラップのようなことも含めて、やはり海洋分野もほかの領域にしみ出す部分が増えてきているということがあると思いますので、少し意識して議論できるとよいのかなと感じました。
 時間が過ぎてしまいましたので、この辺りで本日の議論としては終了したいと思います。
 最後に、今日冒頭申し上げましたように、三谷大臣政務官にお越しいただいていますので、一言御挨拶をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【三谷大臣政務官】  よろしくお願いいたします。文部科学大臣政務官の三谷英弘でございます。遅れての参加となり申し訳ありません。
 委員の皆様におかれましては、様々な角度から大変活発な御議論を頂きまして、誠にありがとうございました。先生方の御意見をしっかりと受け止めさせていただきまして、今後の政策に生かしてまいりたいと考えております。
 さて、第10期海洋開発分科会の閉会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと思います。
 政府として、海洋の果たす役割は極めて重要であると認識しています。本日事務局から紹介がありました議論の中にも取り上げていただいておりましたけれども、本年から国連海洋科学の10年がスタートしており、我が国としても、海洋立国の基盤となる海洋科学技術を発展させていかねばなりません。また、北極域は海氷の減少をはじめとした地球規模の気候変動状況が顕著に現れる地域ですが、地球上に残された数少ない空白域、フロンティアになっています。
 我が国としても北極域における科学的プレゼンス向上を目指し、令和3年度から北極域研究船の建造に着手するとともに、本年5月にアジアで初となる第3回北極科学大臣会合を開催させていただきます。これらを通じまして、世界の北極域研究に貢献してまいりたいと思います。
 今後政府においては、第4期海洋基本計画の策定に向けた議論が加速してまいります。委員の皆様におかれましては、引き続き我が国の海洋研究開発の在り方について御示唆をいただき、変わらぬお力添えを頂きますようお願い申し上げて、閉会の御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
【藤井分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、最後に事務局から連絡事項をお願いいたします。
【事務局】  本日はどうもありがとうございました。本日の議事録の案につきましては、後日、事務局からメールで先生方に確認させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 これをもちまして、本日の海洋開発分科会、それから、第10期の分科会はこれで終了となります。2年間にわたりお付き合いを頂きましてありがとうございました。これにて終了としたいと思います。

 

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局海洋地球課