海洋開発分科会(第58回) 議事録

1.日時

平成30年7月9日(月曜日) 14時00分~15時59分

2.場所

中央合同庁舎4号館 全省庁共用1214特別会議室

3.議題

  1. 平成30年度海洋開発分科会における評価の実施について
  2. 「海洋資源利用促進技術開発プログラム 海洋情報把握技術開発」の実施状況について
  3. 各国の北極政策について
  4. 国立研究開発法人海洋研究開発機構の次期中長期目標・計画の策定に向けて(非公開)

4.出席者

委員

浦辺分科会長、長澤分科会長代理、石田委員、宇都委員、浦委員、榎本委員、窪川委員、阪口委員、谷委員、津田委員、中川委員、中田委員、平田委員、廣川委員、藤井輝夫委員、藤井良広委員

文部科学省

佐伯研究開発局長、大山大臣官房審議官、阿蘇海洋地球課長、小酒井極域科学企画官 ほか

5.議事録

【浦辺分科会長】  第58回科学技術・学術審議会海洋開発分科会を開催したいと思います。
 最近は、西日本の豪雨で被災された方が出ているということで、一刻も早い復旧を祈っております。当地も大変東京と同じく暑いということで、余りこちらのほうで暑い、暑いと言うのは控えられますけれども、この暑い中、皆さん御多用中にもかかわらず、御出席いただきましてありがとうございます。
 それでは、早速ですけれども、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【事務局】  それでは、資料の確認をさせていただきたいと思います。
 まず、資料1といたしまして、縦型の少し分厚い資料でございますけれども、平成30年度海洋開発分科会における評価の実施について(案)というものでございます。資料2として、1枚紙の横型のものです。「海洋資源利用促進技術開発プログラム 海洋情報把握技術開発」の実施状況について、資料の3といたしまして、同じく横型の資料でございます。各国の北極政策について。
 続きまして、資料4-1、4-2、こちらも横型の資料でございます。4-1が海洋研究開発機構を取り巻く状況と期待するミッション、4-2が次期中長期目標・計画に向けた取組方針(案)でございます。そのほか、参考資料1から参考資料4といたしまして、本分科会の名簿、前回開催の議事録、海洋研究開発機構の第3期中期目標と中期計画、それぞれの資料でございます。
 不足や乱丁等ございましたら、事務局のほうまでお申し出いただきますようお願いいたします。
【浦辺分科会長】  ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 本日はお手元の議事次第にありますように、4つの議題を予定しております。このうち、4つ目の議題、国立研究開発法人海洋研究開発機構の次期中長期目標・計画の策定に向けてという議題については、国立研究開発法人審議会海洋開発機構部会で検討が行われている段階でありますので、海洋開発分科会運営規則第3条第3号及び4号に基づいて、当該部分の議事及び議事録を非公開にしたいというふうに思いますけれども、よろしいでしょうか。
 それでは、そのようにさせていただきます。
 それでは議題1、平成30年度海洋開発分科会における評価の実施について、事務局より説明をお願いいたします。
【事務局】  それでは、資料1を御覧いただければと思います。
 平成30年度海洋開発分科会における評価の実施について(案)の資料でございます。こちらにつきましては、本分科会における今年度の研究開発課題の評価、実施方針についてまとめた資料でございます。本分科会の委員の皆様の御意見を受けまして、今年度行う評価、実施方針について、分科会として決定をしたいと考えている資料でございます。
 ちょうど昨年、1年ほど前になりますけれども、昨年度も同様の資料をお諮りしておりまして、資料上の大きな変更はないということをあらかじめ申し上げたいと思います。
 それでは、下の内容につきまして、簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、1ポツ目の評価の区分でございます。事前評価、中間評価、事後評価の3つ評価がございます。まず(1)の事前評価につきましては、海洋科学技術等に関する研究開発課題、こちらにつきましては国立研究開発法人の事業を含むと整理してございますけれども、その研究開発課題のうち、総額が10億円以上を要することが見込まれる新規・拡充課題。また、分科会において評価することが適当と判断されるもの。この2つのものに該当するものについて評価を行うものでございます。
 2つ目の中間評価につきましては、事前評価を実施した課題のうち、中間評価実施時期に当たるものについて実施すると定めてございます。一般的には具体例を申しますと、5年事業であれば、大体事業の3年目に中間評価を行うことが一般的には通例となっているものでございます。
 3つ目といたしまして、事後評価でございます。事前評価を実施した課題のうち、事後評価実施時期に当たるものについて実施する。一般的には、事業終了後の翌年度に事後評価を実施するということが通例となってございます。
 その下に、米印が注釈として2つ記載してございます。1つ目の注釈でございます。国立研究開発法人の事業として行われる課題の中間評価・事後評価については、原則として独立行政法人の通則法に基づく主務大臣による業績の実績に対する評価として別途行ってございます。そのため、この本分科会においては評価結果について報告を受けるという形にしてございます。
 2つ目の注釈でございます。南極地域観測事業の中間評価・事後評価については、文部科学大臣を本部長といたします南極地域観測統合推進本部、こちらのもとで、こちらも別途評価を実施してございますので、分科会においては評価結果について報告を受けるものとすると書かれてございます。
 2ポツ目、評価の対象課題でございます。1つ目の事前評価のものでございますけれども、平成31年度新規の予算要求の課題のうち、1ポツの(1)に該当するもの、具体的には総額が10億円以上要することが見込まれる新規拡充課題とか、分科会において評価することが適当と判断される。こちらにつきましては現状、どの課題が該当するということがまだ申し上げられる状況にない段階でございまして、今後の予算の調整状況を見ながら決定をしていくということを考えてございます。2つ目の中間評価につきましては、今年度につきましては該当が無いというものでございます。
 ページをおめくりいただきまして、3ポツの事後評価でございます。こちらは1課題、該当がございます。「海洋資源利用促進技術開発プログラム 海洋鉱物資源広域探査システム開発」。こちらは平成29年度で終了した事業でございます。今のところのスケジュールとしては、こちらの評価、事後評価について10月、11月にこちらの事業の評価委員会において評価をした上で、本分科会には来年度、翌年1月をめどに報告をしたいと考えているものでございます。
 3ポツ目の評価方法でございます。まず、1つ目は事前評価でございますが、本分科会において、必要性、有効性、効率性の観点から、事前評価票の記載の各項目に基づき評価を実施するとしてございます。こちら、事前評価票には、研究開発計画やそこに書かれている重点的に推進すべき研究開発の取組の達成に向けた個々の課題の位置づけや意義、課題間の相互関係、達成状況の把握のための指標などを簡潔に示すこととしまして、その後の中間評価・事後評価に際して、研究開発計画に定める中期目標の達成状況に係るフォローアップ等に適宜活用するというふうに定めてございます。
 2つ目の中間評価・事後評価の部分でございますけれども、本分科会において、同じく必要性、有効性、効率性の観点から、中間評価票及び事後評価票、それぞれを用いまして評価を実施することとしております。分科会とは別の有識者による合議体の評価をもとに、この分科会におきまして評価を決定するとしてございます。その際に、事前評価票に示しました指標などを用いまして、課題の進捗度合い、また、研究開発計画に定める中期目標の達成状況を把握するという形に定めてございます。
 ページをおめくりいただきまして、3ページ目以降に、別添様式1から3といたしまして、研究開発課題の事前評価、中間評価、事後評価のそれぞれの様式を添付させてございます。こちらの様式につきましては、昨年度と大きな変更はないという状況でございます。
 ページを戻っていただきまして、2ページ目のところで1点すみません、誤植がございましたので、この場で訂正をさせていただきます。3ポツの(2)のところで、中間評価・事後評価の項目で、「別添様式1~2」と書いてございますけれども、こちらは「2~3」の誤りでございます。おわびして訂正をさせていただきたいと思います。
 続きまして、4ポツ目の留意事項でございます。まず、利益相反として、評価の対象課題に参画している方、または被評価者と親族関係にある者など、こういったところに該当する委員につきましては評価に加わらないものとする。また、(2)、(3)といたしまして、評価に係る負担軽減や課題の予算規模の明示といったことを記載してございます。
 説明は以上でございます。
【浦辺分科会長】  どうもありがとうございました。
 ただいまの説明について、御質問おありでしょうか。なお、議事録をつくるので、きょうはちょっと違うんですけれども、お名前をおっしゃっていただくときに、このボタンをポンと押していただいてから御発言ください。
 では、谷委員。
【谷委員】  ありがとうございます。御説明ありがとうございました。
 質問なんですけれども、今の資料の1ページ目の事後評価の米印のところで、主務大臣による業務実績に対する評価がされて、分科会は報告を受けるものとすると書いてございますね。2ページ目の中間評価・事後評価のところでは、別の有識者による合議体による評価が行われているかで、これがその主務大臣のということだと思うんですが、もしそうだとすると、それをもとに分科会において評価を決定するとありますね。報告を受けるのと、決定をするというのは違うことのような気がするんですけれども、これはどちらなんでしょうか。
【事務局】  すみません。私の説明が不足しておりまして、申しわけございません。
 丁寧に説明させていただきますと、1ページ目のポツの米印のところは、こちらは国立研究開発法人の評価というもので、こちらは独立行政法人の通則法に基づきまして、別の会議体、国立研究開発法人審議会海洋研究開発機構部会におきまして、別途評価をしておるものでございますので、こちらにつきましては別の会議体が主体となって評価をして決定をするものでございますので、こちらの分科会については報告をさせていただくというものでございます。
 先ほど谷委員から御指摘のありました点、具体的に申し上げますと、例えば今後行う予定でございます事後評価のところで、海洋鉱物資源広域探査システム開発、この事業につきましては、本分科会とは別の会議体において、まずはその会議体において外部評価、外部有識者から評価をいただきます。その結果をこの分科会において、今のところ年明けを予定しておりますけれども、報告をさせていただいて、その評価結果を最終的に分科会で決定するという形になってございます。
【浦辺分科会長】  よろしいでしょうか。
 きょうここで決めようとしていることですが、きょう何か評価を実施するわけではなくて、こういうふうな評価のシステムを主務大臣、文科大臣の下に置いてあるほかの評価ボディーがないものについて、評価をこの分科会で行うことについてよろしいですかということと、それから、ここについています別添様式、その他、この仕組みでよろしいかということを我々は問われているのだと思います。
 これは昨年度も事前評価を実施いたしましたので、ほとんど内容的には変わっていませんが、特に中間評価だとか、事後評価の書式等が新たにつけ加わっているということかと思います。
 何かほかにございませんか。特によろしいでしょうか。
 特に御意見がないようですので、それではこれを、本案をもって当分科会の決定としたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 では、そのようにさせていただきます。
 それでは、続いて議題2、「海洋資源利用促進技術開発プログラム 海洋情報把握技術開発」の実施状況について、事務局より説明をお願いいたします。
【事務局】  それでは、資料2「海洋資源利用促進技術開発プログラム 海洋情報把握技術開発」の実施状況についての資料を御覧いただければと思います。
 前回の分科会におきまして、ちょうどスケジュールを簡単に御説明をさせていただいたところでございますけれども、このたび審査を踏まえて、課題が決定いたしましたので、改めてその内容につきまして簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
 まず事業の概要でございます。大学などが有する高度な技術、知見を幅広く活用いたしまして、海洋情報をより効率的かつ高精度に把握する革新的な観測・計測技術を開発するとともに、そういった得られた成果を民間企業等へ技術移転することで、海洋観測を促進することを目指すと、こういった事業でございます。具体的には、そちらの2ポツのところに括弧書きで書かれておりますけれども、海洋酸性化・地球温暖化、生物多様性、マイクロプラスチック、この3つの観点から、こういったところの海洋情報を効率的かつ高精度に収集取得する観測計測技術の開発を行うというような事業でございます。
 2ポツ目の経緯でございます。約30日間公募を行ったところ、応募件数として8件ございました。その後、3ポツのところですけれども、外部評価委員会による審査を行いまして、最終的に、こちらには記載はございませんけれども、7月4日に最終的に3つの課題を公表いたしました。一番下のところに外部評価委員と書いてございますけれども、琉球大学の顧問でいらっしゃいます小池先生を主査とする外部評価委員会において、課題を決定したというものでございます。
 ページをおめくりいただきまして、別紙というところに採択課題3つございますけれども、採択課題の概要を記載してございます。
 まず1つ目、海洋酸性化・地球温暖化に関わる情報取得のための技術開発、こちらは左側のところでございます。こちらにつきましては、BGC-Argo搭載自動連続炭酸系計測システムの開発というもので、東京大学大学院理学系研究科の茅根先生を中心とするグループの課題が採択されたものでございます。アルカリ度を自動連続かつ高い精確さで、フロートに搭載して計測できるシステムを開発するといったものでございます。
 真ん中のところでございます。生物多様性に関わる情報取得のための技術開発、こちらは、海洋生物の遺伝子情報の自動的に取得するといったところの基盤技術の開発と実用化を目指した事業でございます。東京大学の大気海洋研究所の濵﨑先生のグループの課題が採択されたものでございます。船上や実海域におきまして、DNAのサンプルを採取し、データ解析までを自動で行う装置を開発するというものでございます。 3つ目の一番右側のものでございます。マイクロプラスチックに関わる情報取得のための技術開発、こちらはハイパースペクトルカメラによるマイクロプラスチック自動分析手法の開発というもので、海洋研究開発機構の藤倉先生を中心とする課題が採択されたというものでございます。こちらは船上におきまして、マイクロプラスチックの材質や形状、サイズ、個数を、迅速かつ自動で分析できるシステムを開発するというものでございます。こちらは一応5年間の事業でございますので、これから各課題におきまして研究開発を今年度から進めていただくというものでございます。
 説明は以上でございます。
【浦辺分科会長】  どうもありがとうございました。
 この件について、何か御質問、コメントはございますでしょうか。
 中田先生がこの委員になっておられる。何か追加の御説明がありますか。
【中田委員】  結構おもしろい提案があったんですけれども、5年間で社会実装をしなければいけないというところで、そういう確実性みたいなものがかなり高い判断の理由として選ばれてきているという実情がございました。
 以上でございます。
【浦辺分科会長】  どうも御説明ありがとうございます。何か。石田委員。
【石田委員】  海洋酸性化のところで、目標のところで、アルカリ度を自動連続かつ高い精確さって、これでよかったんですか。精度ではないのか。
【浦辺分科会長】  こういう書き方もあるかもしれません。
【石田委員】  精度と確からしさということですか。
【事務局】  そういうことです。
【石田委員】  どうもありがとうございます。
【事務局】  事務局ですけれども、ここの目標のところにつきましては、申請書であったものを、そこから記載しておりますので、ここは申請書にそのような記載ぶりがあったということでございます。
【石田委員】  わかりました。
【浦辺分科会長】  石田委員はこういう分野の御専門でいらっしゃいますけれども、何か内容的にはコメントがございますか。
【石田委員】  炭酸系の項目の分析は非常に神経を使ってやらなければいけないので、自動計測することによって人間の手による誤差がなくなって、高精度にできるようになるので、非常に茅根先生には期待するところでございますが、難しい部分があるので簡単にはいかないと思います。
【浦辺分科会長】  どうもありがとうございます。
 ほかに。じゃ、津田委員、お願いします。
【津田委員】  津田です。
 これは去年の今ぐらいの時期だったと思いますけれども、事前評価をして、結構高い評価をいただいたと思います。8件の応募ということで、これは予想に比べて多かったのか、少なかったのかということで、実はこういういい提案だと僕も伺っていて、少し出すほうがどういうふうに出したらいいかというのを少し迷われたような気がします。
 今後もこういうのがコンスタントに公募があると、よりよい提案がかなり集まるというふうに私としては実感していますので、ぜひこういう枠で広く公募するということが続くことを希望いたします。
 この8件に関して、予想よりは多かったんだろうか、少なかったんだろうかというのは、感想としては聞いてみたいなと思いましたので、質問させていただきました。
【事務局】  ありがとうございました。
 ちょうどこの事業につきましては、先ほど御決定いただきました評価方針に基づきまして、昨年度、事前評価をしていただいたところです。それで、昨年度の概算要求からは減額に、残念ながらなってしまいまして、今年度は9,200万円という予算でございました。
 先ほど中田先生からお話がありましたけれども、5年で実用と、しかも、この予算規模という観点から、先ほどもありましたけれども、中には革新的な技術ではないかというようなところもあったんですが、割と実現性という観点で御評価をいただいたというふうに事務局として考えてございます。
 津田先生からありましたけれども、そのような厳しい制限の中ではこれだけ8件という応募をしていただいた、この予算規模と実現という制約の中で8件もの応募をいただいたということで、事務局として非常にありがたいと思いますし、また、前回の委員会で御説明させていただきましたけれども、第3期海洋基本計画、それから、その同日にMDAの基本方針という形、また、あるいはSDGs、こういった状況の中で非常にタイムリーな施策ではないかというふうに事務局では考えておりますので、こちらは引き続き、今年度も厳しい予算の状況ではありますけれども、充実したプログラムになるように務めております。
 どうもありがとうございます。
【浦辺分科会長】  どうもありがとうございました。
 では、谷委員。
【谷委員】  谷でございます。
 余り、けしからんことを申し上げるので言いにくいんですが、外部有識者って普通、何か中立的なにおいがするんですが、これはしようがないんですけれども、外部評価委員の中のお二人の組織から当選しているのが2つあって、これはもっと外の世界から見たときに中立性をどうやって保証する仕掛けをお考えですかね。
 これはしようがないと思うんですけれども、海洋研とJAMSTECの専門家なしに世の中は成り立たないので当然入られるし、そのことによって海洋研とJAMSTECを応募するなと言えないから、どうしようもないと思うんですけれども、メカニズムとして中立性を維持するための仕掛けというのは、どのようにお考えですか。
【事務局】  ありがとうございます。
 ちょうどこの外部評価委員なんですけれども、当然のことながら、公募をする前に、この先生方にお願いして、我々も、結果として東京大学、それからJAMSTECの提案を採択することになりましたけれども、まずは事前の段階ではどこが上ってくるとか予期していない。結果論ということでございました。
 それで、先ほども御審議いただいたんですが、基本的には利益相反という観点から評価の対象課題に参画しているもの、あるいは被評価者と親族関係にある者、この利害関係といった観点から、該当する提案に対する評価というのはそこから外して、評価から外した上で審査をしていただいて、それで決定したということで公平公正な審査となるように、事務局としては努めているところでございます。
【浦辺分科会長】  ありがとうございました。よろしいでしょうか。では、宇都委員、お願いします。
【宇都委員】  海上技術安全研究所の宇都でございます。
 1つお伺いしたいんですけれども、この事業は開発された成果を民間企業等へ技術移転するという、社会実装を明示しているというところが1つのポイントかと思うんですが、研究開発の体制の中で、例えば民間企業の方を協力機関のような形で取り込んでいくというようなお考えは実際されているのか。あるいは、されていないとすると、そういうお考えはあるのかということをお聞きしたいんですが。
【事務局】  ありがとうございます。
 御指摘のとおり、こちらは最終的な成果を、実用化を、民間企業等に技術移転をいただくということを念頭に置いておる事業でございますので、もともと公募の段階から、公募要領のところにそういったことも明記してございますので、実態としてもそれぞれの課題の研究開発体制の中に民間企業とか、あとは、実際に実海域で実証できるような体制をつくると、そういったことをきちんと中に組み入れた体制になっているというものでございます。
【浦辺分科会長】  ほかにございますでしょうか。
 こういう機器開発も含んで、トータルの予算が9,200万円というのは、相当やるほうにとっては予算的には大変厳しい感じがするんですけれども、このお三方のグループでは、予算額を聞いて、こんなんならやめるとか、そういうことはなく、やれるということなんでしょうか。
【事務局】  ありがとうございます。
 この公募をする段階で、予算の総額というのがもう決まっておりますので、上限はこれこれですという形の上で公募をしたという経緯でございます。
【浦辺分科会長】  それでは、本当にこの限られた予算の中で、大変おもしろそうな機械が具体的に書かれているので、ぜひうまくいくことを願っております。
 ほかになければ、次の議題に行きたいと思います。
 次の議題3は、各国の北極政策についてということで、事務局より説明をお願いいたします。
【事務局】  それでは、資料の3を御用意いただければと思います。まずは、この資料3の構成なんですけれども、1ページ、2ページにつきましては、全体の会議の資料1のほうで示させていただいておりました資料から、この北極政策という部分だけ取り出しまして、その上で、前回質問がございましたロシアと中国についての動向につきまして、赤字で示させていただいておるというところでございます。その上で、3ページ目、4ページ目で関連の説明資料ということで構成させていただいております。
 資料3、1ページ目のロシアでございますけれども、2014年に、「2022年までのロシア連邦北極圏社会経済発展」国家プログラムを設定されたというところでございましたが、2017年にこちらを改定しまして、プログラム名に「2022年までの」というのがあったんですが、それを消した形で2025年まで期間を延長したということでございます。また、ことしに入りまして、天然資源・環境省に新しく北極関係の部署の設立を公表されているというような状況でございます。
 2ページ目に移らせていただきますと、一番最後のほうの中国でございますが、こちらは前回の資料でもお示しさせていただいておりますが、本年1月に、中国の北極政策白書を公表しているということでございます。
 3ページ目でございますが、ロシア連邦北極圏社会経済発展国家プログラムについて、簡単でございますが、説明させていただきますと、こちらはプログラムの目標としましては、ロシア連邦北極圏の社会経済発展レベルの引き上げという目標のもとで、3つのサブプログラムを立ち上げて、現在プログラムを推進しているというような状況のようでございます。
 このプログラム、工程としては3つのステージに分けて記載されておりまして、現在は第2ステージということでございます。2018年から2022年ということでございまして、今はコアとなる開発分野の創成に向けた試行プロジェクトの実施、また、自律型プラットフォームNorth Pole、これは北極海の研究船のようでございますが、こちらの就役に向けて推進をされているということと、サハ共和国における先端的造船所の設立ということで、こちらについては3年間で120億ルーブル、これは約200億円でございますが、こちらをファンディングするということが明記されている状況でございます。こちらにつきましては、ロシアの大使館のほうに確認をさせていただきながら、現在、説明をさせていただいているというような状況でございます。
 また、最後のページでございますが、中国の北極政策につきまして簡単に説明をさせていただきます。まず、中国の北極政策の中におきまして、中国みずからを地理的に北極圏に最も近い大陸国家の一つと。いわゆる近北極国家という位置づけをみずからして、北極に関する重要なステークホルダーだというような位置づけのもと、政策目標等を位置づけているというような状況でございます。
 政策目標としましては、世界共通の利益を守り、北極の持続可能な開発を推進するということで、北極の理解ですとか、保護、開発、またガバナンスへの関与というようなことを目指しているということでございます。
 その上で基本原則として4つ掲げておりまして、まず1つは尊重であると。また、協力、また、ウイン・ウインの関係を築くということ、あと、持続可能ということ、これらの4つの原則のもとで、各政策を進めていくというふうにうたっているところでございます。
 下のほうの政策でございますが、大きく5つ書いてございまして、まず1つ目は北極の調査と理解の深化ということで、中国はこれまでは北極の調査隊というのを派遣しているんですが、こちらを充実するということと、北極の研究力、あるいはレベル、または基地といった研究プラットフォームの強化、また、北極砕氷船の建設の推進というようなことですとか、技術開発の促進に向けて各種取り組みを実施していくということ。
 また、生態環境の保護と気候変動への取り組みですとか、合法的・合理的な北極資源の利用ということで、こちらにつきましては北極の航路開発を通じて、関係国等と協働で、いわゆる氷上シルクロードというものを建設していく。
 また、非生物資源、また、観光資源の開発ですとか、利用ということを行っていくということでございます。
 また、北極のガバナンスと国際協力への積極的な関与、北極の平和と安定の促進というようなことを政策として掲げているというような状況でございます。
 各国の北極政策につきましては、引き続き、できるだけ、可能な限り速やかにフォローをして、また、適宜この会議等で報告をさせていただければというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 説明は、簡単ですが以上でございます。
【浦辺分科会長】  どうもありがとうございました。これは本分科会で、委員の方からの御質問に答えていただけたということで、大変ありがたく思っております。これについて何か御質問。じゃ、どうぞ。
【榎本委員】  極地研究所の榎本です。
 ロシア連邦の社会経済発展国家プログラムの情報をありがとうございました。この第2ステージというところで、今まさに2018年から2022年というところで、North Poleということが書かれているんですけれども、これは実は研究者の間では以前、話題になっていたのですが、すっと情報が来なくなってしまいました、その後、いろんな国際会議にこの件に関するロシア代表が来なくなったので、どうなったのかなというのを気にしていたところです。
 North Poleというのは1937年から、ソビエト連邦が氷上にキャンプを設置しまして、氷が割れてなくなるまでずっと観測を続けて、割れたらまた北極圏の中央部分にキャンプを移してということを、ずっと1937年からやってきました。それが、ソビエトがロシアになったところで一旦中断されまして、最近また再開していたんですけれども、今度は氷がすぐ割れてしまうので、そういうキャンプはもう維持できないということで、大変重要なデータを出していたんですけれども、空白になっていたところです。
 それで、ロシアがドリフティングステーション、自分で航行できないけれども、浮遊できるタイプのステーションをつくるんだというところを、2014年あたりにちらっと言っていたんですけれども、その後、最近は計画が見えなくなってしまっていました。これが実際に動き出したというのは大変大きな情報で、北極圏の真ん中を埋める観測の情報として、大変ありがとうございました。
【浦辺分科会長】  どうも追加説明、ありがとうございました。では、藤井良広委員、お願いします。
【藤井(良)委員】  ありがとうございました。
 前回お願いした件について、詳細に御報告いただきありがとうございます。
 1点、中国のほうの論調が、日本に協力を求めているということなんですね。ロシアと中国、それぞれの政権にいろいろ思惑があると思うのですけれども、日ロというものは北極において何らかの協力関係というものが出てきそうなのか。中国は原則的にうたっているだけで、具体的なことはまだ出していないわけですけれども、今後の可能性とか、その辺は何かございますか。
【事務局】  なかなか具体的なところまで詳細に把握していないんですけれども、特に一帯一路の関係ですと、経済的な枠組みのもとでやられるということが大きい中で、ロシアと中国というのは氷上のシルクロードという上で多分タッグを組まれていくような、多分もう既にそういう方向性でもって、話は決まっているかというふうに思っていますが、今後、研究だけじゃなくて、そういった分野でもどういう、二国間なり多国間の関係性というのが構築されていくかというところも把握するように努めていきたいというふうに思います。
【藤井(良)委員】  この氷上のシルクロードというのが、何をしたいのかがよくわからない。実際に航路を活用して、極東というか、シベリアの東側を開発しようということだと思うのです。そうすると明らかに日本も絡んでくる。経済的にもですね。中国、ロシアなどの動きには、政治的な部分も当然あるのですけれども、経済的、あるいは研究開発、両面において協力できるものはしたほうがいいなと思います。ただ、どうしても政治的な要素が絡んでくるので、そこの辺を今後よく掘り下げて対応されたほうがいいような気がいたします。
 中国の場合、「一帯一路」というすごい大きな風呂敷があって、本当にどこまで実現するのかという疑問の一方で、実際にはヨーロッパ内部にまでつながって動いているので、これもどこまでつかみ切れるかというか部分はありますが、その辺も踏まえながらフォローしていただければなと思います。
【浦辺分科会長】  どうもありがとうございました。ほかにございますか。では、榎本委員、お願いします。
【榎本委員】  もう1点。中国なんですけれども、ちょうど1カ月前、6月8日に、日中韓3カ国の北極担当大使を中心とした、外務省が中心となった会合が上海で開かれまして、そのときに私も同行させていただきまして、3カ国で協力して、これは科学に関するところが中心の会合だったので、観測や科学の協力、あと、研究者の交流とか若手の教育なども協力していきたいと。あと、データの交換なども、これは日本から言ったんですけれども、公開に向けてというところはあったんですが。議題の中には、経済と社会というところはまだ入ってきていなくて、今後どういうふうに。中国のほうはそこら辺も扱いたかったような雰囲気もあるんですけれども、今回は科学が中心でいきました。
 現地に行って、上海の研究基盤をいろいろ見学したのですが、国家としてすごく力を入れているというのは大変なものがありまして、港の近くに研究所が移りまして、そのままコンテナの積み込みができるような形になりましたし、次の砕氷船もかなり大きなものを建造中と。観測隊がちょうど南極から帰ってきたところだったんですが、南極、北極、両方行けるようにということで、これまで北極の観測は、以前は5年に1回だったものが、今は毎年出かけるようになってきたということを、現地の研究所の所長から聞きました。国民へのアピールもそこで一緒に担うような感じで、テーマパーク風な研究エリアをつくろうとしているというふうなところもありました。
 あと、研究の中身については、それほど深く議論はできなかったというか、新しい情報は特に入ってこなかったんですが、そういった国としてのバックアップというところは大変印象深くて、特に国家海洋研究所、第一、第二研究所とかありますけれども、そこが総出でその観測を支援しているような、観測隊のメンバーとかも200人以上のスタッフがずらっと名前が書かれていまして、極地研究所ではなくて、国家海洋第一研究所、第二研究所のスタッフ、そちらのほうの数がずらっと並んでいるような、そういった資料もいただいてきました。すごい勢いで活動を進めているなというところです。
【浦辺分科会長】  どうもありがとうございました。
 ほかに。ちょうどこういう追加資料を出していただいて大変ありがたいんですけれども、6月のScience誌を見ていますと、アメリカのトランプ大統領が、海洋政策をがらっと変えるということが書かれていて、北極のことはその中では書いていなかったですけれども、環境から資源開発へということで、アメリカの北極政策もまた極端に変わっていくのではないかと思いますので、そういうところもあわせてウオッチしていただければというふうに思います。よろしくお願いします。
 それでは、ほかになければ、次の議題に移りたいと思います。
 議題4、次期中長期目標・計画の策定に向けてに移りますけれども、最初に申し上げましたように、ここからは非公開となりますので、取材、傍聴の方におかれましては御退室をお願いいたします。
(取材・傍聴者退席、議題4は非公開)


【浦辺分科会長】最後に、事務局のほうから連絡がありましたら、お願いいたします。
【事務局】  事務局から連絡事項を申し上げます。
 次回の海洋開発分科会につきましては8月の上旬の開催を予定しておりますが、議題といたしまして、平成31年度の海洋科学技術関連施策の事前評価を行う予定でございます。ただ、事前評価、どの課題が該当するのかというところが、まだ、今予算編成過程の段階でございますので、決まりましたら日程も含めまして、また改めて委員の皆様のほうに御連絡をさせていただきたいと思います。
 以上でございます。
【浦辺分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、本日の海洋開発分科会をこれにて終了したいと思います。皆さん、どうもお忙しいところを、ありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局海洋地球課