【資料2-2】東北マリンサイエンス拠点形成事業「海洋生態系の調査研究」 中間評価結果


東北マリンサイエンス拠点形成事業「海洋生態系の調査研究」 中間評価結果

平成28年9月
東北マリンサイエンス拠点委員会


東北マリンサイエンス拠点形成事業(海洋生態系の調査研究)全体へのコメント

・今後、放射性物質の問題をどのように位置づけ、いかに対応するかについて他機関・他事業との役割分担も含めて検討が不可欠である。
・本事業を通じた漁業や養殖業の復活と、より持続的な振興の道を拓くために、社会・経済・人文科学的なアプローチが不可欠であり、後半5年間には、このような文系分野との連携をどのように進めるかが重要である。
・10年間の事業終了後にどのような「拠点」が形成されるかについてのイメージを想定し、そのイメージアップを重ねていく必要がある。
・国内的には東北太平洋沿岸域の漁業振興のみならず、近い将来予想される東海・東南海地震への備えの指針にするための普及活動が求められる一方、国際的には、各国への情報発信と連携が求められる。
・今後の5年間は、ある程度モデル海域に焦点を合わせた「統合的調査研究」を目指す段階であり、モデル海域的な調査研究について、多様な海域特性を持つ三陸沿岸の多くの海域に応用するための工夫が必要であるともに、参画機関の研究グループがより統合的に融合すべきである。
・防潮堤の設置等多くの復興事業がなされており、そういった事業による海洋生態系や水産業への影響という視点も重要である。
・各漁協で策定している浜プランとリンクするなど、事業全体としてより自治体・漁業者のニーズをくみ上げるべきである。



研究代表者名:東北大学大学院農学研究科 木島 明博
研究課題名: 1.漁場環境の変化プロセスの解明

総合評価:A

●調査研究計画の達成状況
・多面的調査研究が進められており、多くの論文が執筆されている点について評価できる。
・漁場環境の調査・その成果を活用した地元漁業復興への支援は良く行われている。
・研究の幅が広いが、徐々に的が絞られてきており、着実に成果がでている。

●運営体制について
・学部生・大学院生を教育しているメリットを活用し、人材育成に一層努力すべきである。

●研究成果の還元
・漁業復興への貢献については、どれも漁業現場のニーズに基づいており、大変有益であるが、漁協への情報提供だけでは十分でなく、一般の漁業者への提供も検討するべきである。

●今後の展開について
・漁場環境のモニタリングは重要で継続すべきであり、震災前の状態への回復だけでなく、新たな環境・生態系の形成についても配慮すべきである。
・成果の統合化とそれによる漁業のあり方を探る目標は、多くの人材育成の視点もあり期待される。
・東北太平洋域の基幹産業である、カキ・ホタテ・ホヤ・コンブ・ワカメ養殖業への震災による影響評価・回復過程に関する取組に課題がある。
・陸域との関わりが重要であり、この視点での調査研究を期待する。


研究代表者名:東京大学大気海洋研究所 木暮 一啓
研究課題名: 2.海洋生態系変動メカニズムの解明

総合評価:A

●調査研究計画の達成状況
・ALL JAPANの威力を発揮して計画を実施し、成果が上がっている。実施されている震災前後の調査は非常に有益である。

●運営体制について
・共同利用・共同研究拠点としての実績を持つ機関であり、確実な体制となっている。

●研究成果の還元
・大槌湾の漁業者の要望として、湧水が水産生物の育成等に果たす役割の解明がある。
・研究者コミュニティへの発信は強力であるが、一般社会への還元に向けても努力するべきである。
・科学的データに基づいた研究成果により、漁業の現場に対して説得力のある説明が出来ており、有益である。
・研究成果を湾内の養殖施設配置、漁業計画に反映できるように、関係機関とより協力するべきである。

●今後の展開について
・東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センターの設立からのデータの蓄積、最新技術の導入など今後も統合的な研究が期待される。
・主要な湾において物理プロセスを反映した生態系モデルの構築が出来れば、養殖等への貢献が大きい。
・他の研究機関の資源を最大限活用すべきである。
・生態系モデルについて、高次生産者まで繋ぐ努力をするべきである。
・大槌湾の漁業者の要望として湧水が漁業生産に与える影響があり、陸域の復興事業の影響等もより検討すべきである。


研究代表者名:海洋研究開発機構 北里 洋
研究課題名: 3.沖合底層生態系の変動メカニズムの解明

総合評価:A

●調査研究計画の達成状況
・ガレキ分布や詳細な海底地形など、空白情報の把握は評価出来る。
・海底谷へのガレキの集積は、魚礁効果の点で有益である。
・海底地形図を早期に完成させるべきである。

●運営体制について

●研究成果の還元
・沖合漁業者との連携や情報提供、要望を聞くことをより一層期待する。
・水産資源に関する成果の出し方には留意すべきである。
・漁業者の努力で、ガレキが減少している様子を示したことは、素晴らしく発信もうまい。

●今後の展開について
・沿岸から沖へのつながりと同時に、沖合での水平的なつながりについても情報を取得することを期待する。
・新たな手法の開発が進み、その成果が問われる今後5年間に期待する。
・がれきの調査結果をどのようにまとめるのか、また魚礁効果をどう評価するのか、検討が必要である。
・ランダーのデータ転送が速やかに行われると、より価値が上がる。
・底生生物資源のハビタットマップを作成する際は、資源保全との関係を検討するべき。
・ハビタットマップは、資源管理の点で有益であり、展開するべきである。
・沖合資源は復興にとって重要であり、合理的な利活用の方向性を漁業者に示すべきである。


研究代表者名:海洋研究開発機構 北里 洋
研究課題名: 4.データ共有・公開機能の整備運用

総合評価:A

●調査研究計画の達成状況
・軽視されがちな課題だが、速やかなデータ公開が行われており、評価できる。

●運営体制について
・東北マリンサイエンス拠点形成事業全体の意見を取り込むことが重要である。

●研究成果の還元
・本事業のみならず、多くの研究機関(他事業)の参加が可能ではないか。

●今後の展開について
・マリンサイエンスの拠点形成にとって極めて重要な課題であり、展開を大いに期待する。
・研究者のみではなく、広く一般の人が使えるようにするための工夫が必要である。
・事業終了後のデータベースの管理について検討が必要であり、アーカイブとして残す必要がある。



お問合せ先

研究開発局海洋地球課

-- 登録:平成30年02月 --