資料2 主な意見(第1回+第2回+第3回+第4回)

これまでの北極研究戦略委員会における主な意見等
(○第1回、◎第2回、◇第3回、□第4回)


【北極域研究の意義】
○ 世界的な視点の中で、我が国の北極研究の位置がどこにあるのか不明確。国際共同研究等について、日本の観測でカバーできている部分、欠落している部分、更には、日本がリードしていく部分が示されると、我が国の立ち位置が見えてくる。

○ 我が国が利用国の視点からアジア諸国を取りまとめて北極評議会(AC)に対して意見を出せる余地はあると思う。今後、研究・観測の部分ではなく、北極域利用の視点からどういう戦略を取っていくのか、産学官の産は誰なのかというところまで意識した問題提起が必要。

◎ 北極域に関し我が国は直接的な権利を有していない。領有権問題や海洋境界策定問題など北極圏諸国の領域や利益にとらわれない北極圏の持続的な発展・利用のため、非北極圏国である我が国が科学技術の優位性を活かして、国際的な意思決定やルール策定等の政策形成過程へコミットしていくなど、国際社会においてどのような働きかけができるのかを考えることが重要。

◎ 諸外国が科学技術を外交に利用することを明確に打ち出している。この現状を鑑みれば、我が国の科学技術力の強みを踏まえた北極域研究の推進も、我が国外交の強みとして位置づけてもよいのではないか。

◎ これまで個々の研究者は、“立ち位置”や“北極全体を通した政策”を意識して研究を行ってきたわけではない。短期間に結論を導くのは困難かもしれないが、北極域研究全体を俯瞰的に示すことによって、大きな目的と研究の関係を示すことができるのではないか。

◎ 北極域研究全体を俯瞰し、中長期的な課題や短期的な課題が明確になれば、研究者コミュニティとしても、政策判断・課題解決に資する研究を戦略的に進めることが可能となるのではないか。

◎ 北極域における我が国の国際的な研究をしっかり進めることはもとより、オープンデータサイエンスというようなポリシーを明確に打ち出すことが重要。

□ 国際貢献に加え、北極域研究を行うことによる我が国への裨益、国益への寄与という観点もあるのではないか。

□ 北極域研究には、長期の研究観測及び喫緊の課題への対応という二面性がある。喫緊の課題については、臨機応変な対応が必要ではないか。

【研究・観測】
○ 温暖化等の観測データの取得は非常に時間を要する。観測等については、中長期の計画の下、実施されていると思うので、その状況が示されると理解が進むし、今後何を実施することが必要かという検討も実施しやすい。

◎ これまで得てきた知見を、大陸スケール、10年単位の時間スケール等で、今、どのような変化が、どこで起こりつつあるかといった点で取りまとめ、全体が見えるようにする必要がある。その結果、特定の原因によって環境変化等が発生していると考えられるのであれば、直近5年間は集中的にそれを観測するとか、その課題を解決するための技術開発に集中して取り組む等の戦略が立てられるのではないか。

◎ 自然科学分野で得られた知見等を参考にして、様々な法的枠組みは、国際社会で形成されてきた。日本でしか得られない知見が、枠組み形成に不可欠なものであれば、枠組み形成の場における日本の発言権が増すのではないか。

◎ これまでの研究成果により、北極研究は北極域に閉じるものではなく、地球環境全体に大きな影響を与える地域であり、今後の地球環境の変動を考える際の重要なケーススタディを実施する場所として取り組む必要がある。

◎ 北極海海底地形図作成プログラムについては、日本で関与している研究者がいないため、この俯瞰図に記載されていない。他国が実施しているので、日本が行う必要性は低いと思うが、全体を俯瞰する際には、目を配る必要がある。

◎ 海洋、特に海洋生物に関する変化のスピードは、陸上に比べてはるかに早い。今後の計画を考える際には、分野によって時間軸が異なることへの留意が必要。

◎ 分野によっては、10年、20年といった長期の観測が必要。現在多く見られる5年を区切りとするプロジェクト型の研究では、人材の確保や観測機器の整備など、継続性に課題がある。

◇ 北極域における人文・社会科学の研究分野の現状としては、経済学、文化人類学、ガバナンス(法学・政治学)などの学問分野を中心に行われており、実態論的なアプローチと制度論的アプローチによる研究が進められている。また、個々の研究は、国や地域を対象に行われており、今後、それらを統合していくことが最も大切なことではないか。

◇ 人文・社会科学における現状分析の研究は大変重要であるが、現地の教育や行政(農業政策など)等の未来設計に資するような研究が国際的にチャレンジングな領域であるとともに、国際的にも求められているのではないか。

◇ 北極域の持続可能な資源開発や人間社会そのものの総合的理解のためには、人文科学と社会科学の間で学際的研究を進める必要がある。その上で文理融合というものが非常に重要な役割を担ってくる。国際的にも文理融合といった研究の進め方への関心は高まってきている。

◇ 経済的な開発資源や人間社会への対応などに関しては、安全保障の観点が重要であるが、現状では個別の国や地域を対象に研究者ベースで行われていることが多い。このため、国・地域を越えた研究者の連携等を進める仕組みがあってもよいのではないか。


【プラットフォーム】
◇ インドのように自国で船を保有していなくても、南極、北極での研究観測を実施している国がある。観測船の建造となれば多額の建造費、運用費が必要。このため、何を観測するために、どの程度の規模の観測船が必要となるのか。また、観測船の運用形態として、保有・傭船のどちらが効果的・効率的となるのかといった検討が必要。

◇ 傭船は、貸し主の意向が全てに優先されるし、手続き上も非常に大変。実際の問題として、いつ乗船が可能になるのかも分からなかったりするので、観測計画が立てづらい等、使用しにくい。

◇ 海氷予測に関する研究では、冬期の観測データも使用しているが冬期の情報が不足している。衛星である程度のデータ取得は可能であるが、現地で本格的に観測できる体制がない。

◇ 観測船については、科学的ニーズが存するか等のボトムアップの議論も重要。

◇ ソフト的なプラットフォームとしては、北極域に存在する大学とのネットワークの活用が考えられる。人材育成を含めた研究を推進していくための枠組み構築が重要。

□ 各国の研究者が利用する国際的なプラットフォームは、それを保有する国のプレゼンスの発揮に直結するとともに、長期の研究観測体制を確保するための、施設・設備の整備など、具体的な取組を検討することが必要。

□ 「しずく」の運用終了後も継続的にデータを取得する必要があり、北極域における気候変動の観測のためには、衛星は必須である。

(GREEN、ArCSから)
○ 基本的にArCSは科学者コミュニティ。研究・観測結果の利用の面に関し、どのようなスタンスを持つのか明確化しておくことが必要。

○ 北極域研究について、中長期的にどのような課題があり、今、どの部分の観測・研究を実施し、どこが欠けているのかの認識が必要。国際的な研究動向の柱も踏まえ、GRENEで実施してきたこと、それを受けArCSで実施すること、ArCSでも未着手のものが見渡せると、今後の研究計画が立てやすい。

○ GRENEからArCSへの発展は、自然科学だけに重点が置かれていたものに人文・社会科学を加えることにより、より総合的な取組として戦略的に実施するということ。航路の利用等に関し、沿岸国の法令整備等に我が国がどの程度関与することが可能かということは、相当な戦略な必要となるが、人的、時間的制約も念頭に議論することが必要。

◎ GRENEの成果としては、北極研究に関するおおよその俯瞰図を取りまとめることができた点。ArCSでは、日本が国際社会の中でどの部分を担って、どのような部分で強みを発揮していくべきかという最終目標に向け、研究を進める必要がある。

◎ GREEN、ArCSを経験することにより、研究者も他分野との協働を意識しはじめた。日本の強みを活かして、各分野の研究者が協働することが、北極研究での日本の存在感の強化につながるのではないか。

◎ ArCSでは、個別の研究が総合的な知に繋がっていくというストーリー性が必要。個別の研究が徐々に発展し、この5年間でさらに研究を加速することによって、社会的ニーズを踏まえた一歩先の知見に結びつくといったストーリー性が必要。

【観測データ】
○ 気候変動に係る将来予測を行うためには、観測手法の標準化や各国のデータシェアリングのシステムなどが必要。このような国際連携システムに日本が参加していくためには、今後どのような取組を進めるべきか。

○ データの標準化について、具体的に誰がイニシアティブを取るのかということも含めた議論が必要。提言ができればよい。

○ 必ずしも日本だけが観測データを有しているわけではない。データをメタデータで繋ぎ、使いやすく一元化するというような計画もある。ArCSで得た成果の蓄積と国立極地研究所固有のデータ蓄積機能の位置関係を明らかにさせながら、今後の取組について議論、提言できればよい。

◎ 大気、陸域、海洋といった個別の研究のデータの共有等によって、総合的な知見が生み出されるのではないか。共有されたデータを使用したモデル比較等によって、これまでの研究を一歩進めた知見を得られることができるのではないか。

◎ 国際的な観測データのワンストップサービスについて、直接的な利害関係を有しない非北極圏国である日本がリーダーシップをとってまとめていくというメッセージを出すことは、大きな意味があるのではないか。

◇ 極域の変化の全球的な影響については、全球を専門的に取り組んでいる研究者が中心となって横断的なネットワークを形成し、実施していくことが効果的。モデリングやシミュレーションが中心となって全球を理解するという取組手法もその一例として考えられるのではないか。また、農業生産や水循環、水資源、森林対策問題など人間生活に関わる将来予測に資するデータを提供していくという戦略作りは時宜を得たものになるのではないか。

◇ 研究データの共有等については進めるべき。“何”を“いつまでに”実施するといったロードマップが必要。

【技術】
◎ 観測を実施するためには、そのための技術が必要。この技術がないと今後の北極域における研究開発の進展はないというものもある。必須な技術のリストアップ等、技術維持・育成の観点が必要であるとともに、技術開発を含めた長期的な計画を作成することが重要。

◎ 海氷下での調査技術等、環境に悪影響を与えない調査、探査技術の開発を通じて、日本が北極域の持続可能な発展に貢献することは可能。

【ステークホルダーへの情報発信、産業界との関係】
○ 北極圏国では、科学的な予測やモニタリングが現地社会にどのような意味を有するのかというところに関心がある。人文・社会科学からのアプローチには、国際法などのルール形成面と現地に密着し、発生している課題を明らかにしていくという2つの側面がある。ArCSはその2つを組み込んでいるが、国際的なルール形成への貢献まで行けば、日本の利益等の課題とも絡んでくる。社会科学はルール形成等をつうじて政策課題をカバーできるが、多様な人間社会で起こっている課題を、どうカバーしていくかということをArCSで考えられれば良い。

◎ 科学、技術、産業という分野がある。出口を見据えたとき、市場性がないと民間企業は参入してこない。そうなると、研究、調査だけで終了してしまう。そのためには、民間が研究資金を投入するような、魅力的な枠組みをつくることが必要。

◎ 長期的な視点からは、研究・観測の成果が産業に結びつくまでには10年程度、また、構造物の寿命も20年、30年であるので、それだけの投資をするか否かという点についての議論も必要。

□ 北極域研究に対する国民や政策決定者等、ステークホルダーの理解を得るためには、積極的なアウトリーチ活動が必要。

【人材育成】
□ 人材育成の必要性については自明のことであるが、それを如何にして実現していくのか、具体的な検討が必要。

□ 大学や研究機関等、北極域研究に取り組んでいる組織が増加せず、時限のプロジェクトがあるだけでは若手も不安。若手研究者に対して北極域研究者としてのキャリアパスを見せる必要があるのではないか。

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