資料5 主な意見(第1回+第2回)

科学技術・学術審議会 海洋開発分科会
北極研究戦略委員会(第1回、第2回)における主な意見等(○第1回、◎第2回)


【北極域研究の意義】
○ 世界的な視点の中で、我が国の北極研究の位置がどこにあるのか不明確。国際共同研究等について、日本の観測でカバーできている部分、欠落している部分、更には、日本がリードしていく部分が示されると、我が国の立ち位置が見えてくる。

○ 我が国が利用国の視点からアジア諸国を取りまとめて北極評議会(AC)に対して意見を出せる余地はあると思う。今後、研究・観測の部分ではなく、北極域利用の視点からどういう戦略を取っていくのか、産学官の産は誰なのかというところまで意識した問題提起が必要。

◎ 北極域に関し我が国は直接的な権利を有していない。領有権問題や海洋境界策定問題など北極圏諸国の領域や利益にとらわれない北極圏の持続的な発展・利用のため、非北極圏国である我が国が科学技術の優位性を活かして、国際的な意思決定やルール策定等の政策形成過程へコミットしていくなど、国際社会においてどのような働きかけができるのかを考えることが重要。

◎ 諸外国が科学技術を外交に利用することを明確に打ち出している。この現状を鑑みれば、我が国の科学技術力の強みを踏まえた北極域研究の推進も、我が国外交の強みとして位置づけてもよいのではないか。

◎ これまで個々の研究者は、“立ち位置”や“北極全体を通した政策”を意識して研究を行ってきたわけではない。短期間に結論を導くのは困難かもしれないが、北極域研究全体を俯瞰的に示すことによって、大きな目的と研究の関係を示すことができるのではないか。

◎ 北極域研究全体を俯瞰し、中長期的な課題や短期的な課題が明確になれば、研究者コミュニティとしても、政策判断・課題解決に資する研究を戦略的に進めることが可能となるのではないか。

◎ 北極域における我が国の国際的な研究をしっかり進めることはもとより、オープンデータサイエンスというようなポリシーを明確に打ち出すことが重要。


【研究・観測】
○ 温暖化等の観測データの取得は非常に時間を要する。観測等については、中長期の計画の下、実施されていると思うので、その状況が示されると理解が進むし、今後何を実施することが必要かという検討も実施しやすい。

◎ これまで得てきた知見を、大陸スケール、10年単位の時間スケール等で、今、どのような変化が、どこで起こりつつあるかといった点で取りまとめ、全体が見えるようにする必要がある。その結果、特定の原因によって環境変化等が発生していると考えられるのであれば、直近5年間は集中的にそれを観測するとか、その課題を解決するための技術開発に集中して取り組む等の戦略が立てられるのではないか。

◎ 自然科学分野で得られた知見等を参考にして、様々な法的枠組みは、国際社会で形成されてきた。日本でしか得られない知見が、枠組み形成に不可欠なものであれば、枠組み形成の場における日本の発言権が増すのではないか。

◎ これまでの研究成果により、北極研究は北極域に閉じるものではなく、地球環境全体に大きな影響を与える地域であり、今後の地球環境の変動を考える際の重要なケーススタディを実施する場所として取り組む必要がある。

◎ 北極海海底地形図作成プログラムについては、日本で関与している研究者がいないため、この俯瞰図に記載されていない。他国が実施しているので、日本が行う必要性は低いと思うが、全体を俯瞰する際には、目を配る必要がある。

◎ 海洋、特に海洋生物に関する変化のスピードは、陸上に比べてはるかに早い。今後の計画を考える際には、分野によって時間軸が異なることへの留意が必要。

◎ 分野によっては、10年、20年といった長期の観測が必要。現在多く見られる5年を区切りとするプロジェクト型の研究では、人材の確保や観測機器の整備など、継続性に課題がある。

(GREEN、ArCSから)
○ 基本的にArCSは科学者コミュニティ。研究・観測結果の利用の面に関し、どのようなスタンスを持つのか明確化しておくことが必要。

○ 北極域研究について、中長期的にどのような課題があり、今、どの部分の観測・研究を実施し、どこが欠けているのかの認識が必要。国際的な研究動向の柱も踏まえ、GRENEで実施してきたこと、それを受けArCSで実施すること、ArCSでも未着手のものが見渡せると、今後の研究計画が立てやすい。

○ GRENEからArCSへの発展は、自然科学だけに重点が置かれていたものに人文・社会科学を加えることにより、より総合的な取組として戦略的に実施するということ。航路の利用等に関し、沿岸国の法令整備等に我が国がどの程度関与することが可能かということは、相当な戦略な必要となるが、人的、時間的制約も念頭に議論することが必要。

◎ GRENEの成果としては、北極研究に関するおおよその俯瞰図を取りまとめることができた点。ArCSでは、日本が国際社会の中でどの部分を担って、どのような部分で強みを発揮していくべきかという最終目標に向け、研究を進める必要がある。

◎ GREEN、ArCSを経験することにより、研究者も他分野との協働を意識しはじめた。日本の強みを活かして、各分野の研究者が協働することが、北極研究での日本の存在感の強化につながるのではないか。

◎ ArCSでは、個別の研究が総合的な知に繋がっていくというストーリー性が必要。個別の研究が徐々に発展し、この5年間でさらに研究を加速することによって、社会的ニーズを踏まえた一歩先の知見に結びつくといったストーリー性が必要。

【観測データ】
○ 気候変動に係る将来予測を行うためには、観測手法の標準化や各国のデータシェアリングのシステムなどが必要。このような国際連携システムに日本が参加していくためには、今後どのような取組を進めるべきか。

○ データの標準化について、具体的に誰がイニシアティブを取るのかということも含めた議論が必要。提言ができればよい。

○ 必ずしも日本だけが観測データを有しているわけではない。データをメタデータで繋ぎ、使いやすく一元化するというような計画もある。ArCSで得た成果の蓄積と国立極地研究所固有のデータ蓄積機能の位置関係を明らかにさせながら、今後の取組について議論、提言できればよい。

◎ 大気、陸域、海洋といった個別の研究のデータの共有等によって、総合的な知見が生み出されるのではないか。共有されたデータを使用したモデル比較等によって、これまでの研究を一歩進めた知見を得られることができるのではないか。

◎ 国際的な観測データのワンストップサービスについて、直接的な利害関係を有しない非北極圏国である日本がリーダーシップをとってまとめていくというメッセージを出すことは、大きな意味があるのではないか。

【技術】
◎ 観測を実施するためには、そのための技術が必要。この技術がないと今後の北極域における研究開発の進展はないというものもある。必須な技術のリストアップ等、技術維持・育成の観点が必要であるとともに、技術開発を含めた長期的な計画を作成することが重要。

◎ 海氷下での調査技術等、環境に悪影響を与えない調査、探査技術の開発を通じて、日本が北極域の持続可能な発展に貢献することは可能。

【ステークホルダーへの情報発信、産業界との関係】
○ 北極圏国では、科学的な予測やモニタリングが現地社会にどのような意味を有するのかというところに関心がある。人文・社会科学からのアプローチには、国際法などのルール形成面と現地に密着し、発生している課題を明らかにしていくという2つの側面がある。ArCSはその2つを組み込んでいるが、国際的なルール形成への貢献まで行けば、日本の利益等の課題とも絡んでくる。社会科学はルール形成等をつうじて政策課題をカバーできるが、多様な人間社会で起こっている課題を、どうカバーしていくかということをArCSで考えられれば良い。

◎ 科学、技術、産業という分野がある。出口を見据えたとき、市場性がないと民間企業は参入してこない。そうなると、研究、調査だけで終了してしまう。そのためには、民間が研究資金を投入するような、魅力的な枠組みをつくることが必要。

◎ 長期的な視点からは、研究・観測の成果が産業に結びつくまでには10年程度、また、構造物の寿命も20年、30年であるので、それだけの投資をするか否かという点についての議論も必要。

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