海洋生物委員会(第14回) 議事要旨

1.日時

令和元年11月11日(月曜日) 14時00分~16時10分

2.場所

文部科学省16階会議室1

3.出席者

委員

中田主査、藤倉主査代理、川辺委員、河村委員、木村委員、窪川委員、山下委員

文部科学省

海洋地球課 福井課長、鈴木課長補佐、西部技術参与、日比野地球科学技術係長

オブザーバー

吉崎悟朗 東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科教授、藤井徹生 水産庁増殖推進部参事官、木村麻里子 環境省自然環境局自然環境計画課課長補佐

4.議事要旨

(1)海洋生物関連事業等ヒアリング
○海洋生物資源確保技術高度化「生殖幹細胞操作によるクロマグロ等の新たな受精卵供給法の開発」について、資料1に基づき吉崎氏よりヒアリングを行った。今後の海洋生物研究についての主な意見は次のとおり。
・他の生物には無い、魚類の生理の特殊性(生残率・繁殖回数の種による差異、死ぬまで成長を続ける生理)を調べることで、ヒトを含む生物全般の生理の理解へとつながる可能性がある。(吉崎氏)
・地球環境の変動と生理学とを結び付けた研究は非常に限定的なので、環境適応の生理学が重要になるのではないか。(吉崎氏)
・地球温暖化などの研究に関して、現在と比較可能な過去の情報が少ないことが問題になっている。無脊椎動物も含めた多様な海洋生物の遺伝子をバンク化していくことが、将来起こる新たな問題の比較検証データとして重要。(吉崎氏)

 ○水産庁における取組について、資料2に基づき藤井氏よりヒアリングを行った。今後の海洋生物研究についての主な意見は次のとおり。
・農林水産省と文部科学省の事業・プロジェクトの中で水産庁と文部科学省が適切に役割分担しながら連携していくことが重要。(藤井氏)
・以下のような共通基盤的な研究開発を文部科学省に期待。(藤井氏)
 1)生態系の構造や機能、変動メカニズム解明、気候変動による生態系応答
 2)物理、化学、生理、工学等の基礎科学の海洋科学への応用
 3)水産資源や水産資源の餌をとりまく生態系から海の生態系全体
 4)既存技術にはない革新的技術の開発
・関係省庁が連携して、研究船・調査船を有効活用していく必要がある。(藤井氏)
・国研、大学、民間企業の研究人材の交流を促進することで、機関の連携が進み、大きな研究成果につながる。(藤井氏)

○環境省における取組について、資料3に基づき木村氏よりヒアリングを行った。今後の海洋生物研究についての主な意見は次のとおり。
・文科省の事業として、海洋生物に関する基礎的な知見の充実を期待。特に、沖合域に関して知見不足を感じている。(木村氏)
・今後の生物多様性の観点から重要度の高い海域(EBSA)選出のために、モニタリングによるデータの蓄積が重要。(中田主査)
・保全すべき海域と利用する海域を区別するために基本的な情報が不足しているので、モニタリングの継続と詳細な調査が必要。(河村委員)

○日本水産株式会社における取組について、資料4に基づき山下委員より説明を行った。今後の海洋生物研究についての主な意見は次のとおり。
・環境改善をしていくための素地として沿岸環境の劣化を生態学的に指標化する研究が重要。魚にとって沿岸域は非常に重要な産卵場所なので、国際基準となるような指標を作ることによって企業の環境保全に向けた取組みが可能となる。(山下委員、木村委員)
・スマート養殖に利用され始めたAI技術を、漁業や海洋全体の環境の変化のモニタリングに広げていくことが重要。(窪川委員、川辺委員)

(2)その他
○海洋生物に関する研究開発のあり方について、主な意見は次のとおり。
・データが無い海域のデータを推定する手法を開発することで、海洋生態系の現状を可視化して、海をどう利用するかにつなげる基本的な情報を生み出す研究があると良いのではないか。(藤倉主査代理、中田主査)
・日本近海の生物多様性は世界的に見ても極めて高く、沿岸と沖合を一元化した議論では複雑過ぎるので、小さい系から理解を始めるべき。(河村委員、藤倉主査代理)
・科学的な養殖最適度の数値化は、養殖海域の選定時などに地域での合意形成に貢献するため、限られた資源の日本にとって重要。(河村委員、山下委員)
・養殖の現場で得られた知見から海洋生態系研究での新たな発見が生まれる可能性がある。(木村委員、山下委員)
・世界人口の増加に必要な水産資源の問題に対して、日本として貢献するための技術と輸出戦略が必要。(中田主査、藤井氏)
・日本の魚食文化を支える水産業の維持という面でも、海洋生態系の理解が欠かせない。(河村委員、中田主査)

 ○次回の海洋生物委員会を令和2年1月20日(月曜日)に開催することを確認した。

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研究開発局海洋地球課