海洋生物委員会(第12回) 議事要旨

1.日時

令和元年9月4日(水曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省18階研究開発局会議室1

3.出席者

委員

中田主査、藤倉主査代理、川辺委員、河村委員、後藤委員、山下委員

文部科学省

海洋地球課 福井課長、鈴木課長補佐、西部技術参与、日比野地球科学技術係長

4.議事要旨

(1)検討の進め方について
・委員会の位置付け及び海洋生物委員会運営規則(案)について、資料1-1、参考資料2、参考資料3に基づき事務局より説明を行った。海洋生物委員会運営規則を案のとおり全会一致で決定した。
・検討の進め方及び文部科学省等における海洋生物関連事業について、資料1-2-1、資料1-2-2に基づき事務局より説明を行った。


(2)海洋生物に関する研究開発のあり方について
海洋生物研究のあり方(論点)について、資料2に基づき事務局より説明を行った。委員の主な意見は次のとおり。


○海洋生物に対する総合的な視点について
・この10年で、特に沿岸の水産資源の落ち込みが激しく、今後も減っていくことが危ぶまれる。(川辺委員、後藤委員)
・新しい分析技術を使いながら、生態系に基づく管理(エコシステムマネジメント)を目指すべきではないか。植物プランクトンから上位のものまで把握することが重要。(川辺委員)
・沿岸域の海洋生態系の解明・保全と人による適切な管理は、SDG14の達成に貢献するため重要。その際、地域毎に異なる生態系をどのように解明し、どのように保全・利用するかは難しい課題であるが、これに取り組むことが重要。(川辺委員、河村委員)
・まず、着手しやすい場所の狭い領域の生態系をモデル化する技術を開発して、その技術の汎用化を目指すと良いのではないか。(川辺委員、藤倉主査代理)
・近年の技術面の進展は著しいが、平成23年、27年の生物委員会の報告書で指摘されてきた課題自体はこれまでに変化しているわけではなく、引き続き取り組むことが必要。(河村委員)
・この10年で、生態系に関して陸域と海域のつながりが注目され、森里海連環学が作られた。生態系の理解には、陸と海の両方を見ることが重要。(河村委員)
・日本の魚食文化は周辺海域の生物多様性に裏打ちされたものであるので、文化の維持、地域振興という観点からも、海洋生態系の理解が欠かせず、また地元の人々と科学者が共に考えていくことが重要。(河村委員、後藤委員)
・復興事業で造られた海岸構造物の生態系への影響は、十分な調査がなされていないので、研究分野からの発信が重要。(後藤委員)
・技術的に定量的な魚種把握が可能になれば、環境DNA を用いてCRESTで行われたような、全国各地でのサンプリングを行うと良い。(中田主査)
・日本の沿岸は、生態系が地域ごとに異なる。全国同じ部分と地域差の部分とを整理できると良い。(中田主査、河村委員)
・水産庁や水産研究所が必ずしも対応しきれていない、生態系という観点からの資源の評価や、近年生じている魚種交代の現象など、生態系の変動を捉えるという視点も重要。(中田主査)


○モニタリング体制の構築について
・東北マリンサイエンス事業での経験から、巨大災害後に水産業を含めた海洋生態系の回復を進めるためには、災害前のデータが必要。巨大災害を想定して、今のうちからデータを集めることが重要。(藤倉主査代理)
・都道府県の水産試験場が所有する船舶を、モニタリングを含む多面的な利用をすることで、地域での船の有用性の認識につながるのではないか。(後藤委員)
・公的機関に所属する船舶のシップタイムの制約がある中で、モニタリングに民間船を活用していくことが重要。その際、メンテナンスの必要の無い、取り付けるだけの観測機器を開発する必要がある。(藤倉主査代理)
・モニタリングデータを流通させるために、例えば海洋情報把握(MDA)の仕組みの中に上手く組み入れていくと良いのではないか。(中田主査)
・モニタリングには面的なものと時系列の二種類が必要。少ない情報を時系列モニタリングするには、漁業者などとの協力が有効。また、面的で詳細なモニタリングについては、大きなプロジェクトに位置付ける形で行うと良い。(川辺委員、後藤委員)
・短期間で必ずしも結果が出ないモニタリングも含め、継続して実施するための基盤が重要。(河村委員)


○水産分野の将来を見据えた人材育成について
・大学等においてIoT、AIの技術を応用した海洋生物の研究を行うことが、将来の水産業に携わる情報技術者の養成につながる。(山下委員)
・最先端のIT技術を求めると、海洋分野単独では投資を回収できない恐れがあるので、ある程度ノウハウが培われたIT技術を海洋分野へ導入する研究を行うのも良いのではないか。(藤倉主査代理)
・養殖設備を持つ大学が限られており、養殖技術に触れる学生が非常に少ない。魚を飼う研究を行える大学が増えれば、将来の水産業の発展、あるいは魚を知るということに大きく資する。(山下委員)


○SDGsを意識したイノベーションについて
・最新の知見や技術を用いて、沖合での養殖に関する技術開発を先駆けて行うことはできないか。(藤倉主査代理)
・10年後、20年後を考えて、無給餌養殖等の養殖技術のイノベーションを今のうちから考えていくことが重要。(山下委員、中田主査)


○異分野連携について
・工学などの異分野の研究者と共同研究を行うと、海洋分野の課題に、従来とは全く異なるアプローチで解決法を見出そうとすることがある。海洋分野での課題を異分野の研究者と共有する仕組みを作ることが重要。(中田主査、藤倉主査代理)


(3)戦略目標(案)について
戦略目標(案)ついて、資料3に基づき事務局より説明を行った。


(4)その他
次回の海洋生物委員会を10月11日(金曜日)に開催することを確認した。


以上

お問合せ先

研究開発局海洋地球課