深海掘削委員会(第14回) 議事録

海洋開発分科会 深海掘削委員会(第14回)が、以下のとおり開催されました。

1.日時

平成26年6月17日(火曜日) 9時45分~17時30分

2.場所

文部科学省 東館15F特別会議室

3.議題

  1. 深海掘削委員会について
  2. IODP「南海トラフ地震発生帯掘削計画」について
  3. 今後の掘削計画案について

4.出席者

委員

斎藤主査、石渡委員、井上委員、鎌形委員、川幡委員、竹山委員、佃委員、平田委員、増田委員、益田委員、森田委員

文部科学省

文部科学省研究開発局海洋地球課 清浦課長、木村企画官、担当者

5.議事録

会議経過

【斎藤主査】  ただいまより第14回科学技術・学術審議会、海洋開発分科会の深海掘削委員会を開催したいと思います。
本日は皆さん、お忙しい中、御出席くださいましてありがとうございます。
所用により松本委員と横山委員が今日は欠席でございます。それから、竹山委員が午前中で御退席ということになっていますので、よろしくお願いいたします。佃委員から電車が遅れているという連絡が入っていますが、いずれ到着されると思いますので始めたいと思います。
それでは、最初に海洋地球課の清浦課長から御挨拶を頂きます。

【海洋地球課清浦課長】  海洋地球課長の清浦と申します。前任の井上課長の後に1月から着任しています。どうぞよろしくお願いいたします。
深海掘削委員会におきまして昨年お取りまとめいただきました第二次中間評価報告書、こちらが海洋開発分科会で承認されまして、文科省としましても報告書に基づきながら関係部署と連携して進めていきたいと思っているところでございます。今回のテーマについては、南海掘削の話に特化したものを御議論いただきたいと思っております。担当の方から詳しい状況について御説明しますが、今、第3ステージで少し難航しているという状況ですので、この先どのように進めていくかというところについて忌憚のない御意見を頂きたいと思っております。本日は大変長丁場ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします。

【斎藤主査】  ありがとうございました。それでは、事務局から今日のスケジュールと資料の確認をお願いしたいと思います。

【事務局】  (議事次第にそって、スケジュールと配布資料の確認)

【斎藤主査】  よろしゅうございますか。それでは、もし何かまた後でお気付きになりましたら事務局の方へ言ってください。
それでは、議題に入ります。最初は議題(1)「深海掘削委員会について」、これを議題といたします。まず、深海掘削委員会の目的、運営方針、それから今回の委員会の進め方、それから審議の対象及び観点について事務局からの御説明をお願いいたします。

【事務局】  (資料1-1にそって本委員会の目的、運営規則、公開について説明。参考資料1-3にそって「南海トラフ地震発生帯掘削計画の進め方に関する提言(案)」における利益相反の考え方について説明)

【斎藤主査】  よろしいでしょうか。ありがとうございました。
では、事務局から御説明がありましたとおり、本委員会の目的、運営については海洋開発分科会で既に決定されておりますので、また、公開、利益相反の考え方といった規則につきましては事務局からの説明があったとおりでございます。前回同様、委員会は公開となります。このことに関してほかに何か御意見、御質問等ございますでしょうか。
もし特にございませんようでしたら、事務局から説明のあったとおり公開と利益相反の考え方は、今、御説明いただいたとおりにさせていただくことにいたします。
それでは、そのように決定するということでお願いします。
それから、次に本委員会の進め方、審議の対象及び審議の観点について事務局の方から御説明をお願いいたします。

【事務局】  (資料1-2にそって、本委員会の進め方について説明。資料1-3にそって、審議の対象及び審議の観点(案)について説明)

【斎藤主査】  それでは、資料1-2、それから1-3についての御説明につきまして、何か御質問、御意見等ございますでしょうか。

【川幡委員】  最近、IODPやJ-DESCに関わっていないので、少し私が失念しているだけかもしれませんが、7月10日あたりにCIBの国際会議をやられますよね。その時もこの案件が出るかもしれないと思います。それで、両方とも同じ場合には全然問題ないのですが、もしも何かちょっと内容が違うなとか、観点が違うなといった場合には、どちらを優先するのでしょうとか。この辺は曖昧にしておいて、CIBでも議論はしますといったようにするのでしょうか。その仕分けとか協力関係とかいうのはどうなっているのでしょうか。

【海洋地球課木村企画官】  位置付けとしましては当然、文部科学省の科学技術・学術審議会海洋開発分科会ですので、こちらが優先でありまして、CIB、「ちきゅう」IODPボードの方につきましては、JAMSTECの運営する委員会という位置付けになると考えております。CIBにつきましては、前IODPの枠組みでサイエンスのアドバイスをもらうという枠組みをそのままプラットフォームごとに移し替えたものというふうに理解しております。逆に、この深海掘削委員会で個別の審議をするというのは、旧IODPで言えば、IODP-MIのボード・オブ・ガバナーがアニュアルワークプラン等を最終的に政策判断したというものに近いのかなというふうに考えております。

【斎藤主査】  よろしいですか。

【川幡委員】  じゃあ、もう一つ。ここの説明のスケジュールから見てみると、ちょうど7月10日は、この7月8日の後辺りですよね。その時には、ここでの話し合われた内容はサマリーとしてCIBの方に報告するのでしょうか。報告じゃなくてメールでもいいのですが、今の話ですと文科省を優先するとおっしゃっいましたが、その時にCIBに対して、こういうお話が進んでいますよとかいう発言があるのでしょうか。僕の心配は、外国の委員が質問した時に、どの様にお答えになるのですかというのが本当の質問です。

【海洋地球課木村企画官】  次の7月8日の委員会の中で、相当の動きがあれば「ちきゅう」IODPボードの方にも報告をさせていただくつもりです。

【斎藤主査】  これそのものが公開という前提ですから。

【海洋地球課木村企画官】  そうですね。私も「ちきゅう」IODPボードのメンバーでございますし、あと、説明責任がありますので、この場での内容について、まだその段階では報告書が固まった状態ではありませんので、報告書を説明するという形にはならないと思いますが、もし大きな動きがあれば、その動きを説明する責任は私にあると考えております。

【斎藤主査】  よろしいでしょうか。

【川幡委員】  はい。

【斎藤主査】  それでは、ただいまの川幡委員の方からの御質問、御意見を含めて対応してくださいますようお願いしたいと思います。

【海洋地球課木村企画官】  はい。

【斎藤主査】  ほかにございませんでしょうか。
もしなければ、そのことを含めてそういうことで行きたいという具合に決定いたします。
じゃあ、次に議題(2)に入りたいと思います。「IODPの『南海トラフ地震発生帯掘削計画』について」に移ります。初めに事務局の方から御説明をお願いいたします。

【事務局】  (議題(2)の「IODP『南海トラフ地震発生帯掘削計画』について」の報告順序について説明)

【海洋地球課木村企画官】  (資料2-1にそって、「『南海トラフ地震発生帯掘削計画』の必要性」について説明)

【斎藤主査】  ただいま木村企画官から南海トラフの掘削とその後のモニタリングが科学上、それから防災上、いかに重要かという意味についてお話しいただきました。それから、さらに社会的な波及効果についても触れていただきましたが、御質問、御意見等ございますでしょうか。

【平田委員】  今の御説明はよく分かりました。特に防災に貢献するということが強調されて大変結構なことだと私は思いますが、それをやるためには、今の御説明にもありますように、孔内計測というか、ボアホールの中に地震計などを設置するということが不可欠ですね。だから、それは計画を立てる上で十分考慮されており、長期にわたって維持して防災に役立てるだけのデータを供給し続けるということだから、掘削そのもの以外の、つまりもっとはっきり言えばDONETの運用も含めてこの計画で規定するというふうに理解していいですか。

【海洋地球課木村企画官】  ボアホールモニタリングと、それからそれをDONETにつなげるということは非常に重要だというふうに認識しております。委員御承知のとおり、ボアホールモニタリング、後で詳細な説明があると思いますけれども、オーダーメードになりますので、孔を掘りました、設置します、というふうな簡単な、すぐにできるというものではないわけでして、そこは掘削の進捗を見ながら、また何回も見直しをしながら進めていかざるを得ないというふうには考えていますが、非常に重要な項目であるということは認識しております。

【平田委員】  もう閣議決定されているからいいと思いますけれども、DONETの運用はJAMSTECから防災科研に移りますよね。だから、ある意味、それも含めてこの審議の範疇だと思っていいのですか。

【海洋地球課木村企画官】  そうですね、はい。

【斎藤主査】  今のは次のフェーズの計画と、それから、次に発展させることにつながる非常に大事なことなので、そのことを十分に踏まえていきたいと思います。

【海洋地球課木村企画官】  ありがとうございます。

【斎藤主査】  ほかに。はい、佃委員。

【佃委員】  コメントですけれども、防災に資するというのは非常に重要なことで、多分、いろいろな予算を使う意味で、科学的な研究を進める上でどれだけ効果があるかという時に何らかの試算をする上で非常に重要なことであると思います。それは合意します。その上で、説明として、もっと強調していただきたいのは、口頭で言われましたが、東北だと地震動が発生してから数十分余裕がある場所であの様な状態になってしまったのですが、やはり東南海・南海だと、そんなに時間的猶予はありません。その上で先ほど3つほど出ていたと思うのですけど、それぞれ防災効果として挙げられておりましたが、最初に5ページ目、スライドで防災効果というところでありましたが、より精密な発生可能性の推定をするために、最初のところはそこでさらに科学的根拠、どういう指標を出せるのか、今、出すレベルにあるのかというところも十分併せて説明する必要があります。どれだけひずみの蓄積、切迫度がこれで推定できますと、精密に推定できるという、その科学的根拠というのもちゃんと見据えていく必要があると思います。2番目のところは全体のシステムの中で、そこでピンポイントにやることがどんな意味があるかというのとシステムがちゃんと機能するという、先ほど平田先生よりDONETとの連携というのがありましたけれども、そのことをちゃんと説明する必要があると思います。
最後のところは、やはり全体の発生モデルというのがどれだけ科学的根拠があるかということも含めて、これも数時間、1日前に、かつては予知と言っていますけど、直前予測ができるのだと。その可能性があるのだと。そこで観測することによってその可能性が非常に高くなるみたいなところを言うためのモデル、そこもちゃんと説明できるものにしておくことで、社会的な理解が得られるのだと思いますので、よろしくお願いします。

【斎藤主査】  ありがとうございました。かなり難しいポイントだと思うのですけど。

【海洋地球課木村企画官】  このあとその説明が予定されておりまして、そこはしっかり説明できるかどうかの部分も含めて、現段階の最先端というのがどういうものかというのを説明させていただく予定にしております。

【斎藤主査】  ですから、平田委員、佃委員の指摘なさったことは大事なことなので、是非それはここで踏まえていかないといけないと思いますのでよろしくお願いいたします。

【海洋地球課木村企画官】  はい。

【斎藤主査】  ありがとうございました。
それでは、続きまして、今度は資料2-2に基づきまして、これは東京大学の木村学先生と、それから井出先生から説明をお願いしたいと思います。特に木村先生には、南海掘削の科学的な意義について御説明をお願いし、井出先生には、これまでの南海掘削から得られた最新の知見などについて解説していただければありがたいです。よろしくお願いいたします。

【東京大学(木村教授、井出教授)】  (資料2-2にそって、「『南海トラフ地震発生帯掘削計画』によって期待される成果」について説明)

【斎藤主査】  ありがとうございました。非常におもしろいお話をお聞きしましたけど、何かここで御質問ありますでしょうか。特にないようでしたら、続きまして、今度はJAMSTECのCDEXの方の倉本センター長代理より説明をお願いしたいと思います。

【平田委員】  ちょっと一言だけいいですか。

【斎藤主査】  どうぞ。

【平田委員】  DONETのデータは公開される予定であり、公開されつつあって、私はDONETの運用委員会の委員長をさせていただいて、毎回、委員会のたびに、そうなりますねって、JAMSTECにも文科省にも確認して、そうですと言われているから、今、公開されていないのは、ある意味、過渡期であると、そう御理解していただいた方が。

【東京大学(井出教授)】  そういうものがよりオープンになればいいと思いますので。

【平田委員】  少なくともDONETのデータは公開を前提に。

【東京大学(井出教授)】  いや、もちろん……。

【JAMSTEC(担当者)】  済みません、それでは正確に申し上げますと、海底面上に敷設したものについては、去年から公開しています。おととしからは気象庁にリアルタイムで提供していますけれども、去年から研究者向けも公開していまして、これは登録制で登録していただけるとどなたでも使っていただけます。
ただ、おっしゃっているボアホールについては、これは2年前から私も担当者を急かしているのですけど、多分、半年後ぐらいには公開できるように、今、最終的なアルゴリズム、データの発信するところがうまくいっていないので、そこを業者と今ずっと詰めているところです。技術的な問題で、済みませんが、しばらく遅れているというのが現状です。

【東京大学(井出教授)】  ですから、実際に公開できる、できないということと、公開ポリシーみたいなものがはっきりしていないという問題があると思います。それがそもそもどういうロードマップで出ていくのかということが明らかになっていないという辺りをもうちょっと普通の研究者に分かるようにしていただければと思います。

【斎藤主査】  個々の事例というよりも、全体としてですよね。

【東京大学(井出教授)】  全体的な。はい。

【斎藤主査】  じゃあ、そういうことで御了解していただけますでしょうか。

【海洋地球課木村企画官】  事務局としても地震防災課の方とも話し合っていきたいと思います。

【斎藤主査】  よろしくお願いいたします。
それでは、倉本さんの方からお願いいたします。

【JAMSTEC(倉本CDEXセンター長代理)】  (資料2-3にそって、「『南海トラフ地震発生帯掘削計画』の全体計画とこれまでの経緯」について説明)

【斎藤主査】  ありがとうございました。
大分内容があるのですけれども、かなり急いでやっていただきました。竹山先生、御退席なさる前に何か感想がございましたら一言。

【竹山委員】  まだ中間報告的な感じを受けますので、もう少し成果がまとまってきてからということなのかなとは思っております。後半の方のお話の中では、今までいろいろとコメントがそちらに向けて発信されているものに関しては一応考慮されているのかなという気はしているのですけれども。
全体的にサイエンスだけじゃなくて若手の育成とか、複合的にやらなければいけない現状が結構大変だなというのは理解しました。

【斎藤主査】  ありがとうございました。
あと、やっぱり、何か盛大なフィールドサイエンスという、ちょっと予測のつかない部分も出てきているので、その辺の大変さというものも御理解いただければという感じがします。
大変長いことずっと続けてやってきましたのでお疲れかもしれませんけれども、午後もありますから、早いですけれども、ここでお昼の休みとしたいと思いますが、よろしゅうございますか。じゃあ、済みませんが、午後、よろしくお願いいたします。

( 休憩 )

【斎藤主査】  時間が参りましたので再開いたします。
それでは、さっきの南海トラフの地震発生帯掘削計画についてを引き続きやっていきますけれども、まず、CDEXの方からの御説明でよろしゅうございますか。それでは、済みません、引き続き御説明よろしくお願いいたします。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長)】  (資料2-4にそって、「『南海トラフ地震発生帯掘削計画』の第348次研究航海の結果」について説明)

【斎藤主査】  ただいまJAMSTECの澤田さんの方から作業の詳細を御報告いただきました。いろいろな問題点もあるのと、将来的に考慮すべき対策も含めて御紹介いただいたわけですけれども、ここで何か御質問、その他ございましたら。

【石渡委員】  横に孔を掘って、どんどん深いところに掘り進めていくというお話でしたけれども、実際、横に枝を出す時って、どれぐらいの角度で出すのですか。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長)】  2度です。最大5度まで上げて、30メートルで2度のレートで上げ下げしております。

【石渡委員】  分かりました。

【斎藤主査】  いいですか。
例えば、さっき、循環システムを沖縄でテストしたいとおっしゃっていましたが、沖縄トラフですか。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長)】  沖縄トラフです。目的は別なところにありまして、熱水を掘るために同じようなLWDツールを下げるのですけれども、温度が熱水に当たると350度になるということで、絶えず循環しておけば90数度ぐらいで収まるということで、LWDツールが下げられる限界よりも下の温度と。

【佃委員】  掘削技術は詳しくはないのですけれども、2つ聞きたいのですが、一つは、今回の検討の中で、掘削の前にある程度いろいろなことを想定されて当然プランニングされていたのであったのが、そのプラン自体に問題があったということなのか、具体的なオペレーションの現場での判断、いろいろな判断をされて次々手を打たれたと思うのですけど、その判断がどうだったのかというような点。いろいろな技術的な提案が後のところに出ていますけれども、ちょっと気になるのは、いろいろなことを提案があって、それをやるにしろ、最終的には船の上でその現場で判断しなきゃいけないと思います。その時に、今後そういうことをうまくするためには、そういうことをやって、いろいろな現象が起こった時にすぐ判断するとか、今までもずっと経験されているので、いろいろなジオロジーの条件や地層が立っていた可能性も含めて、想像の範囲内で想定できたことだとは思うのですけど。午前中に見ていた褶曲構造とかいろいろなところを見るとですね。そういうこともあったので、それなりに想定してやられていた時に、つまり技術的なノウハウが未熟であって今回の提案になったのかとか、ちょっと全体像が余り分かっていなくて、技術的なことも分かっていないまま質問しているので、ちょっととんちんかんかもしれませんけれども、お聞きしたいのは、今後新しい提案があって、的確な判断でちゃんとうまくできるということをどう確認するのでしょうかと。むしろ、どなたか掘削技術の専門家の方に聞いたらいいのかもしれませんが。

【斎藤主査】  確かに予測内だったか、それを超えていたかっていうのは難しいところだと思いますが。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長)】  想定外のところは多々ございました。それで、掘削専門委員会でも指摘されているマネジメントに関する部分ですが、実際のところ掘削に関わる人間は事務所には2人しかおりませんでした。もちろん僕らはドリリングの人間ですけれども、全部のものに対応するというのはなかなか不可能なことでして、いろいろなサービス会社を使うということが必要になってきます。今、我々が考えているのは、マネジメントということでいくと、さらにエクスパティーを例えば地層ジオメカニクスに関する人、あるいはLWDのデータを見て分かる人、あるいは泥の専門家、会社に頼らず別の、外から見られる泥の専門家、そういう人たちを雇う形で今、考えております。ですから、雇ってチームを組んで、何かの時にはすぐ対応できる体制を整えようと考えておりますが、あるいは今、ネットも十分ありますので、いろいろなこういうデータをロギングのデータとか、あるいはマッドログっていういろいろなパラメーターを見ながら、リアルタイムで見ながら、話し合いながら、ほかの場所にいても一つのプロジェクトチームができるのではないかと考えております。ただ、ディテールに関してはまだ確立はしておりませんが、エクスパティーをもっと入れて、その場で話し合いができる状況を作っていこうと思っております。

【佃委員】  どこかの電力会社の事故みたいに、いろいろなサービス会社というか、下請け会社を使っていて、なかなかディシジョンメーキングが結局できなかったりとか、すごく遅い対応になったりすることが、多分その辺のマネジメントが私自身も非常に大事だと思いますので、是非よろしく検討されたらいいと思います。

【斎藤主査】  確かに、特に地質体の場合には、そこの個性があって、その個性で縦割りしているところでどれだけの、どういう泥水が一番理想的なのか、そういう試行錯誤も多分、現場でやって、その結果、エクスパンダブルを使わないといけないみたいになってくるのだと思うのですけど、エクスパンダブルケーシングなんかはどこかでテストやれるような状況ってありますかね。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長)】  実際のテストはちょっと無理ですけれども、実績としてはもう千数例あります。世の中で。オフショアに関してどのぐらいあるかっていうのは、まだ数はつかめておりませんが、去年の時点で1,400例、特にアメリカのガルフオブメキシコ辺りではかなり使われているということで、技術的にはもう確立されていると考えております。

【石渡委員】  もう一つよろしいですか。お話の中で、台風が6つぐらい続けて来たので40日ぐらい天候待機をしたというお話がございましたね。一方で寒冷前線が通過する時に風向きが逆になったので、船がコントロールできなくなってぶつけてしまったというようなこともございました。寒冷前線が通る時にどういうことになるかっていうのは、大体常識の範囲で分かることだと思うのですけれども、それは予想ができなかったのかということと、今後、じゃあ、寒冷前線が通過するということが分かっていても作業を続けるのかどうか。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長)】  そこはスタディーしました。弱い寒冷前線だったら問題ありません。ちょっと数字忘れてしまいましたけれども、風速が強くて、なおかつ風向きが変わる寒冷前線、そこにターゲットを絞って、そこにクライテリアを設けて作業の中断方法を考えて、348はそれで行っております。348の場合は特に問題なく作業を行っております。
台風に関しても、BOPを上げなきゃいけないものですから、その作業に1週間ぐらい掛かあります。1週間先を見なきゃいけないので、そこもウエザーニュースと天気予報会社と密に連絡を取り合って、台風がこっちに向かうのかあっちに向かうのかというところは相談しながら行っております。

【斎藤主査】  はい、どうぞ、増田さん。

【増田委員】  これは掘る対策をいろいろ考えられているわけですけれども、これから今後というのはもっと深いところをターゲットにして掘ろうとしているわけですよね。そうすると、さらに条件が悪くなれば、例えば地圧も格段に大きくなるし、それから、もう断層帯に入っているわけですよね。そういった時に、今までの事故というか、そういうものに対してはいいかもしれないけど、さらに条件が悪化した時に大丈夫なのかという御心配があるのではと思います。その辺はどういうふうにお考えでしょうか。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長)】  その辺に関してはトラブルのあった時にケーシングがセットできる状態にしておく。普通であると予定の深度まで、大体それに近いところまで掘っていかなきゃいけない状態ですけれども、エクスパンダブルケーシングを使うと、トラブルがあったところをカバーできる。その下にまたトラブルがどんどんあると、これまたきりがないのですが、ある程度トラブルに遭遇したら、すぐにケーシングをセットしてしまおうというのが今考えているコンセプトです。
地圧に対しては、通常、泥水比重をどんどん上げていくという方法がとられるのですけれども、そこは適正な比重を見付けていかなければいけないというのは、リークオフテスト等を使って、次の掘るための泥水比重の上限値を調べていくと。そうすると、状況によってどんどん比重を上げていかなければいけない場合には、ある程度上限値を決めていますから、そこまで行ったらケーシングをセットしてしまうという方向で、ケーシングの数を増やすという手法で対処せざるを得ないと考えています。

【増田委員】  その場合は最終形が細くなっていくということになるのですか。最終形はケーシングを何段にも入れれば、だんだん細くしなきゃならないですね。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長)】  御説明をこれからいたしますけれども、エクスパンダブルケーシングの利点というのはそこにあります。普通のサイズよりも中に入れるケーシングが大きめのサイズであることによって枚数を増やすことができます。それはクリアランスがちょっと少なくなりますが、そういうことで使われている技術なので、いろいろな場所で掘っている時に同じような現象で崩れたり、あるいはいろいろな逸泥して泥の循環ができなくなったりという状況の時に予備ケーシングとしてエクスパンダブルケーシングというのは存在しているので、それで対応していこうと考えております。

【益田委員】  簡単な質問ですが、こういう、本当に誰もやったことがないところをやるというのは、やっぱりいろいろ予測のできないことがあって大変だと思います。例えば理論的に考えて、今まで起こってきたような問題が何も起こらないような状態であれば、今ここでおっしゃられたような対応の組み合わせで予定の深度まで問題なく掘り進めるっていう、そういうふうな対応策ですか。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長)】  絶対行けるとは申し上げられないのが実情です。私的にはというか、皆さんそうだと思うのですけれども、この技術を使って必ずそこに到達できるかと言われますと、100%とは言い切れません。ただ、今までの技術よりは一歩進んだバックアップを持って作業ができるということです。自然相手ですから、この下がどうなっているかというのはサイエンティストの方々も相当困っていらっしゃるというか。

【益田委員】  実際に何が起こるかはやってみないと分からないので、それはもちろん分かっているのですけど。できるかどうか分からないというのは。ただ、今まで起こってきたようなことが仮に起こらないとして、通常の、先ほど増田先生が言われたような土圧を想定するとか、通常の堆積物を相手にした場合であったならば、理想的に進めば、行けるものなのか、それでもやはり困難な部分があるのかっていうのをちょっとお尋ねしたかったのですが。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長)】  ちょっと理解不足ですけれども、今の南海ではなくて、普通の状態のフィールドということですか。普通の状態フィールドであって、最終ホールサイズを気にしなければ、いろいろな手が打てると思います。あと、お金と時間を掛ければ相当なことができるかと思うのですが、現実的に今の南海とほかのフィールドを比べると、南海というのは相当高度な技術も必要ですし、下が読めないので、同じようにはちょっと考えられないとは思います。ただ、ターゲットに行くということに関しては、かなり今回スタディーしたことによって原因が、今までのところではありますけれども、今まで掘ったことと同じような状況であるとすれば、泥水対策を打つなり、ケーシングをセットするなりということでかなりの技術的なハードルをクリアしているとは思います。

【斎藤主査】  確かに最初から、国際的に南海トラフという案が出た時から、多分、難しいだろうという、恐らく皆さんそういうことは皆、考えていたと思います。ですから、どこまで挑戦して「ちきゅう」がやれるかという、そこの期待も含めてずっと見てこられた一つの計画ですよね。ですから、現在、これがベストであろうということで挑戦しようということなので、是非期待をしていきたいと思うのですが、ここで森田先生、何か。

【森田委員】  私は、この中で一番いいのはやはりエクスパンダブルケーシングを導入するというのは、ちょっと今のところ高価なようですけれども、とてもいい方法で、最終まで到達可能な一番いい方法だと思うから、高いけれども導入すべきだと思いますが、1つだけ問題は、これをやはり日本のテクノロジーとして、常に日本は世界に鋼管を売っています。それを何とか絡める方法はあり得まいか。つまり、これ、永久にコンサルタントに頼んで、ほかの会社から鉄管を買ってエクスパンダブルでやると、永久に頼りきりだと、やはり日本の技術としては。そこら辺はどうやって考えているのか。そこら辺を何とかしてほしいです。
というのは、そうすれば、このテクノロジーでやればこれから「ちきゅう」はどんどん深いところを掘りにくので、本当にいいと思います。でも、幾らお金をつぎ込んでもいいということになっちゃって、どんどん高くなると思います、やっぱり。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長)】  やはりノウハウがネックになってきます。現在調査した中ではEnventure、ウエザーフォードとベーカー社など、メジャーな会社を幾つか調べましたが、ほかのメーカーはノウハウで負けているわけですよね。ベーカーにしろウエザーフォードにしろ、ここのノウハウに負けてしまうと。ただ、鉄管自体は恐らく日本製も入るところはあると思います。ただ、エクスパンダブルさせるシステムがEnventureのノウハウであり、それを日本の会社がそういうふうには難しいかなっていう気はします。

【森田委員】  何とかできないかな。そうすればいいと思います。というのは、これからここでうまくいくと、次の頻度がどんどん高くなってくると思います。深くなれば深くなるほど使うだろうから、そうすると文科省はもうバジェットをぼんぼん増やしていって、もうパンクしちゃうと思います、いつか。払いきれないと。その時に……いやあ、難しいね。

【斎藤主査】  確かに最初の投資としては仕方がないかもしれませんが、そこで日本の、例えば民間でもいいのですけど、何かの形で波及効果があればいいんですけどね。

【森田委員】  それでしかも安くなっていけばね。これ、いいとなるとどんどん高くなっていくような感じがしますね。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長)】  逆に、数が増えれば値段が安くなるっていうのはあるかもしれないですが。

【森田委員】  まあ、それはそうだけど、いやあ、それでもすごい高くなるのでは。

【斎藤主査】  ただ、ここで成果が出ると、恐らく世界中が狙ってくると思います。使い方としてはね。

【森田委員】  船のコストがすごく高いから。デイリーコストが。ですから、これ、多分、かなりいいと思います。トラブルが少なくて、もう1個掘るよりは、それに比べればずっと安いと。だとは思いますが、それでも将来は、マントルまで掘っていく時にこれをしょっちゅう使うとなると、もう膨大なお金が予測されるので、それだけ心配です。

【鎌形委員】  運航に関する別な本質的な話で、「ちきゅう」をどこまでもたせるかというのが一番大きなあれじゃないですか。それをどういう形で延命させていくのか、あるいは新しい「ちきゅう」を、「ちきゅう」2号を造るのかというのは、そこの根幹の部分が結構重要で、もちろんこの掘削技術の部分も重要だと思いますが、そこら辺をJAMSTECとか文科省の皆さんはどういうふうに考えておられるのか。

【森田委員】  あと40年ぐらい、テクノロジー高めていけば、結果的にはいい方向に向かうはずですよね。

【海洋地球課木村企画官】  船の運航の専門家ではないのであれですけれども、まず、中身みたいなもの、例えばコンピューター関係ですよね。それは船の本体よりも陳腐化が早いので、あるタイミングで一斉に入れ換えをするといったことが、アメリカなんかでも行われています。ですから、まず「ちきゅう」もそういったタイミングが次に来ると思います。その次、それを1回やるか2回やるかして、初めて次の船という話なので、まだ「ちきゅう」のことだけを言えば、まだそういう話ではないのかなとは思います。ただ、深海掘削を行う船が日本で1台だけでいいのかっていうと、それはまた文部科学省だけでなくて、いろいろな各省庁も含めた判断が必要になってくる話かなと思っております。

【斎藤主査】  確かに、次の船のことも考えないと多分だめな時期に来ているとは思います。ただ、南海トラフを掘って、それもなおかつ「ちきゅう」が掘っているという、その大事なことは、これが恐らく近隣でいけば、例えば同じような船を造ったとしても、他国に真似できない。例えば、地震との絡みで、日本でないとできないという部分を担っているという、一番、「ちきゅう」を考える上で物すごく大事なところを今、握っているはずですよね。だから、そういう点でこの計画は是非決着をつけてほしいという気持ちがあります。
ほかにございませんか。もしなければ、休憩を挟んで、次の計画に行きたいと思います。それでは45分から始めたいと思いますので、それまで休憩といたします。

( 休憩 )

【斎藤主査】  それでは、再開したいと思います。
今後の掘削計画の案ということで、これもやはりJAMSTECの方から御説明をお願いしたいと思います。じゃあ、よろしくお願いいたします。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長、倉本CDEXセンター長代理)】  (資料3-1にそって、「『南海トラフ地震発生帯掘削計画』の今後の掘削計画案」について説明)

【斎藤主査】  ありがとうございました。
今、今後の掘削計画案について説明していただきましたけれども、ここで確認しておきたいこと、それから聞いておきたいこと等ございましたら。

【川幡委員】  現実的にはBで3年ぐらい掛かる可能性がある。まあ、2年でいければ良いのですが、先ほども南海トラフ及び関連のプロジェクトですばらしい成果が出ているということを認めて、1個目。それから2個目として、日本にとってやっぱり減災、これはもう命が懸かっているので重要かなと思います。だから、3番目としてBでやるという、この案に関しては賛成しますが、一方でIODPを始める時に国際公約として外に出しますというのを言っておきながら15年もやらないというのは少なくとも外国人から見たら、日本は嘘をついているという疑念がずっと続いている中で十何年もやってきちゃったわけですよ。いろいろな公式な場面でも「CHIKYU+10」の時でも理事長を含めて、外に持っていくとかいうのを言っているわけですよ。それで、これをやるとまた、2年と言っているけど、2年でできるかどうか分からないから。というのは、掘ったけど、また何かトラブルが絶対普通あるから。僕たちみたいな簡単なピストンコアやったって100%取れないのだから、こんな難しいことをやって100%行くなんて考える方がよっぽど無理なことでね、それは倉本さんがよく分かっていると思いますが。
そうすると、私は、少なくとも90%賛成はしているけど、やっぱり国際公約という信用に関わる部分についてケアしないと、南海トラフはサンプル取れて、サイエンティフィックな成果は上がって減災はされましたと。ただ、日本は信用をなくしましたというのではね、先進国で一流の国家だったらやっぱりまずいかなという危惧がありますので、CIBの時も含めて、その説明、誠意ある説明を世界の人に対してきちんとして、次は外に持っていくと、そういうのをきちんとしてもらいたいなと思います。
国際に対して外に持っていくと言ってしまったので、国連の会場に行って、僕たちがみんな外に持っていくと叫んだのと同じでね、そのケアのところを十分やっていただきたいなというのをちょっと附帯事項で付け足しておく。
以上です。

【斎藤主査】  ありがとうございました。
川幡委員がおっしゃったことは、もう前からの約束事になっているわけですので、私たちもたまにやっぱり聞かれたりすることもありますので、それはたしかなことですので、そこは意識していただきたいという具合に思います。

【石渡委員】  このBの案とAの案の違いですけれども、途中から枝分かれさせるということのメリットが余りよく理解できませんでした。それはコストが増加するわけですよね。それに見合うだけのメリットがあるのですか。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長)】  メリットと言えるかどうか分かりませんけれども、先ほど申しましたように、今まで掘った部分に関して、既に知見があるわけですね。知見をクリアさせて、1枚増える5枚目のケーシングに関してはもっと下に行けると。そうすると、次の下の部分に関しては、ケーシングに対する余裕が出てくるという意味でいくと、お金に見合うデザインかどうかは何ともはっきりとは言えないのですが、チャンスとしてケーシングをできるだけ下にセットすることが可能になるというのがBのメリットです。

【斎藤主査】  1航海、2航海という場合の違いはどうでしょう。1航海でいいか、やはり2航海で行くという時の違いというものもちょっと説明していただけると。

【JAMSTEC(倉本CDEXセンター長代理)】  作業全体が連続してできるという意味では1航海の方が時間と予算が少なくなります。ただ、2航海に分けるというのは、予算の問題もありますが、メリットとしては、例えば途中で説明のあったVSPをやると。要するに、A、B、C、どの例をとっても、今まで掘った3,000メートルより下の2,000メートルちょっとの部分は未知の部分なるので、いろいろな計画を立てる上でも、基本的にデータというのは反射法のデータから導いた速度データしかないと。その速度データをうまく精度よくしてあげたいわけですけれども、プロファイル上は非常に反射面が見えない。一つは構造が複雑ということもあると思いますが、それによってかなり精度の悪いデータで基本的には泥水比重のコントロール計画を立てなければならないということになります。ですから、なるべく対象に近付いたところでハイドロフォンを入れて、VSPをやって、より詳細なデータを取るということも、まあ、これもちょっと予算も絡むことですけれども、できればこの2航海の間にやるということも一応、今、検討をしている最中です。

【森田委員】  1つだけ、もしもAとBが両方ともケーシング、リスクのところが両方とも同じだったらどちらを取るのですか。Aを取るのですか、Bを取るのですか。もしもリスクが同じなら。リスクがAは高いって書いてありますよね。

【JAMSTEC(倉本CDEXセンター長代理)】  はい。

【森田委員】  というのも、私が懸念するのは、以前、3,000メートルまで一応行ったことは行ったのですよね。それで、結果的に2,000メートルぐらいまでケーシングセットしたのは、3,000メートルのあそこら辺でトラブルがありましたよね。ですから、そこの3,000メートルまで、次のBのあれだと、エクスパンダブルケーシングをセットしなきゃいけないのですよね。そのときにエクスパンダブルケーシング、この前のあれだと1日ちょっとぐらいでもうブレークアウトがどんどん生じているでしょう。そうすると、そこでエクスパンダブルケーシングがセットできない可能性がかなり出てきます。我々、いつもエクスパンダブルケーシングじゃなくて、エクスパンダブルスクリーンをしょっちゅう用いていますが、そのトラブルがしょっちゅうあります。結果的に突っ込めなくなっちゃう。エクスパンダブルではね。それを心配しています。
そうすると、リスクはAとBで同じぐらいになる可能性があります。そのときにはどちらを取るかと。要するに、Aの方は少なくとも2,000メートルまでは掘ってあって、そこからは小さい孔ですから、小さい孔だとやっぱり安定性が非常によくて、リスクはそんなに高くならないと思います。ところが、Bの方は、少なくともエクスパンダブルスクリーンを掘るまで、セットするまでは、ある程度リスクがあります。3,000メートルまでセットするまで。セットできればいいのですが。そこからはいいと思いますが。そうすると、私は、ちょっともう1回、AとBのリスクを検討してほしいです。そちらにとっては余り変わらないと思いますので。AとBは、最後のところの孔の大きさが余り変わらないだろうから、どちらを選ぼうかって迷うところだと思います。そこで私は2,000メートルまでは確保したからAの方を選ぶという可能性もあるし、そこから孔は小さくなるかもしれないけれども、孔が小さくなると安定性は今までの経験からいいし、しかしBの方は2,000メートルが3,000メートルのところ、結構トラブルがありましたよね。だから、エクスパンダブルスクリーンがセットできるかどうかというのがちょっと心配です。そこら辺、ちょっと検討してください。

【JAMSTEC(倉本CDEXセンター長代理)】  はい、分かりました。ありがとうございます。

【井上委員】  私はこれまでの経緯を全く知らないに等しいので、ちょっとよく分からなかったのですが、これまでに3,000メートルぐらいまで来て、もっと行くはずだったのが何らかのトラブルでそこで止まったというふうに私は理解しました。そういう種類の、予定していたことに対して、トラブルが起きて途中までしか行けなかった時、プラスにやるとしたらこれぐらい予算が余計に掛かるはずだというような学習がこれからの計画に反映されるべきだと思います。これはまた新たに、例えばC案などというものを最初から新たにやるというと、これまでどういう計画で来たということを私は知らないので、それとの関連がどういうことになるのだろうっていうのがちょっと分からなくなります。だから、これまで掛かった費用が予定に比べてどれぐらい膨らんでしまった、あるいはその予定どおりにやろうとするならどれぐらい掛かるはずということも一緒に考えないと、次の計画が立てられないのではないかというのが、ちょっと受けた印象ですけれども。違っているかもしれません。

【JAMSTEC(倉本CDEXセンター長代理)】  まさに御指摘されているところはマネジメントのところでも共通しているのですけれども、実は南海トラフのこの計画の全体の計画に掛ける日数とか予算とか、そういうのが初めはありませんでした。サイエンスのターゲットだけがあって、それに対してどういう技術的に対応するかということで掘削計画を作ってきて、毎年毎年の予算を頂くようなことをやってきたわけですけれども、もともとそういったものがないところに、後からですけれども、ちょっとまずいやり方、要するにプロジェクトとしてちょっと一般的なプロジェクトのやり方と違ったと思います。まさに井上委員の指摘されるとおりであると。
ですから、今まで掛けてきたお金というのは幾らというのは計算すればすぐ分かりますけれども、それが幾らで頭打ちなのか、あと日数を幾ら掛けるべきプロジェクトなのかというのは全くなくて、要するにサイエンスのターゲットを完遂するというところでやってきたので、いろいろな要素もありますけれども、長い時間を掛けてきてしまったということなので、ちょっとその御質問に対して今、的確にお答えすることができないのですけれども、プロジェクトとしてはそういうふうにこれまでやってきたと。

【井上委員】  私の質問の趣旨には2つそういう意味ではあって、一つはおっしゃったように、最初からどういうふうに考えてきて、これが現時点でどう位置付けられるかという計画自身の問題と、もう一つはコンティンジェンシーみたいな部分をこれに対してどれだけ見ていったらいいかというところに、学習した部分が反映されるべきではないかというのがもう1点です。いろいろな部分でうまくいかないことが、これからもきっと間違いなく起こってくる。その部分をどれぐらい見ていくかというのが、例えばC案の方がずっと吸収幅が大きくて、結果としていいっていうこともあり得るのではと思いますが、これまでの学習から見て、どれぐらいそういう部分を見ておかなきゃいけないかと思っておられるかという辺りがすごく気になるところです。

【JAMSTEC(倉本CDEXセンター長代理)】  要するに、一つは、今まで経験したトラブル、様々御紹介しました中にも出ていたと思いますが、それを含めて対応できるようにということで、それはA、B、C、どれにも含まれているわけです。オペレーション自身も日数は全部コンティンジェンシー、技術的なコンティンジェンシーも全部含まれています。ですから、この提案している作業をやるのには、今考えられる、あるいはこれまで経験したことも含めて、天候も組めて、技術的トラブルも含めて、日数のコンティンジェンシーとしては全部含まれた状況で御提案しています。

【JAMSTEC(担当者)】  コンティンジェンシーという面で言えば、ケーシング、通常、複数の堆積岩のものであれば、残りあと2,200メートルであれば、2枚のケーシングで到達できます。実績として。オイル&ガスであれば。ただし、こういう付加体のところであれば、今回はそれを5枚にしようと。Bの案であればですね。しかも、インターバル、ルールオブサムのケーシングのインターバルは約1,000メートルがルールオブサムで、どんどんそういったことに出ていく。それは地層の間隙水圧とかフラクチャー圧力で変わってくることはありますけれども、ルールオブサムとして1,000メートルごとで、そうすると2,200メートルにあと2枚で到達できそうだ。でも、この付加体の複雑なジオメカの構造の中では、このエクスパンダブルケーシングを使って、それをコンティンジェンシーとしてさらに5枚、さらに3枚の追加のケーシングを1,000メートルのところは400メートルとか300メートルのインターバルで、早め早めに壊れてこないうちに入れましょうという意味で、コンティンジェンシーとして入っています。
あと、日数的には、台風退避のこと等も反映して、この日数の中には、日数のコンティンジェンシーという面でも入っているというところで、前回のレビューしたことが今回の新しい計画には反映していると思います。

【海洋地球課木村企画官】  多分、井上委員が気にされているのは、なぜCが出てきたのかということなのかなと思います。技術者が15通りも選んだ中でわざわざなぜここの場所にCが出ているのか。それはそれなりに相当こちらの方がいいというものもいっぱいあった上で出しているのだと思うので、その辺を説明していただければいいのかなと思います。

【JAMSTEC(澤田CDEX部長)】  ニューホールを掘るということは、Bと同じ考え方からいくと、知見があるというのが一番のメリットですけれども、2012年のExp338というときに、寒冷前線に見舞われたということで、孔の形状自体が既にいびつな構造をしているわけですね。できればまっすぐ掘ることがベストで、まっすぐ掘ることによってケーシングも下に下げることができるのではないかと。
なおかつ、何度も申しておりますけれども、エクスパンダブルケーシングという新しい技術が出てきたことによって、A、Bに比べるとかなりの余裕、技術的な余裕というのが幅広いというのが正直なところでございます。ただ、デメリットとして相当大きいのは、日数であり、コストであるということです。
技術面に関して言えば、新しく孔を掘るということはディファレンスの井戸として今の孔があるわけですから、相当掘りやすくはなるというのが、ほかの一般的に掘る石油の掘り方もそうですけれども、リファレンスの井戸があるということは非常にメリットではあります。

【井上委員】  僕がよく理解ができていないので確認ですが、今回、3,000メートルぐらいのところまで掘っていったときにトラブルが起こって、3,600まで行こうということが、できなかったわけですよね。3,600ということが目的だったときに、プラスに必ず何かをやらなきゃいけなくて、今言っているようなことを、結局次にやらないと先へ進めなくなっているわけですよね。
だから、僕の言いたかったのは、ちょっと学習して、ここの5,200とか何とかに行くときに、必ずこの種のことはまた起こるだろうと。そうすると、思っていたのと違うことをもう1回やらなきゃいけないようなことが起こるとする。そうすると、今回学習したこととして、そういうようなことがあったときに、結果としてどれぐらい費用が掛かると。そこまで含められているという御説明ならもうそれでいいのですけど、そこまで検討がされて、コンティンジェンシーが入った予算範囲で、それでAがいいというなら、もうAが一番いいに決まっているわけですよね。そこまで含めて一番安くやれると判断されているなら。でも、そこはやっぱりかなりの別のリスクを持っていると思っておられるので、BとかCとかを考えられたということだと思うので、そこに何かの評価を出していただく必要が。我々素人にとってはAで本当に大丈夫なのだろうかというところが一番気になるわけですね。
それは非常に難しいことを聞いていることになるのだと思うのですけど、でも、兎角こういうプロジェクトって必ず結果としてCがよかったというようなことがあり得るのだと思います。だから、何か評価があってほしいと思いますが。

【斎藤主査】  そうですね。
よろしいですか。今、おっしゃったようなこと。

【井上委員】  量的に出すのがすごく難しい。

【斎藤主査】  確かにね。また確かに同じようなことって出てくるわけですから、そこのところを非常に量的に出すのは難しいと思います、やはりどのようにそのことを評価したかということですよね。確かに難しいかもしれません。
ほかにどなたか御意見ある方はいらっしゃいませんか。

【佃委員】  多分、先のことだと思いますが、実際にやっぱりそうはいっても想定外のことがいっぱい起きてできなかったと。自分がこれをオペレートしたときに一番悩むだろうと思うのは、これがラストチャンスで、お金もなく、日数もないというときに、例えば4,000メートルまで行きましたと。そこでもうやめざるを得ないみたいなときに、じゃあ、どういうサイエンティフィックな目標を、どういうプライオリティー付けでやっておくかというのは検討されているのですね。例えば、このセンサーを置いて、そこの意味があるから置くとか、コアだけ、そこまで取れたら何%の成功だと思ってやめるのかとか、いろいろな目的のところで、うまくいかなかったときにどこでここをやって引き揚げるとか、そういう検討っていうのはされているのでしょうか。

【JAMSTEC(担当者)】  我々オペレーション側でカウンターパートとして国際のサイエンス側のグループがいます。そのうちのリーダーが先ほどいらした木村学さんですけれども、最終的なターゲットは5,200かどうかはともかく、メガスプレーでそこのロギングをして、そこのコアを取ってくると。そこまでたどり着けなかったときに、どんどん浅くなってくるわけですね。その間でどういうサイエンスができて、何が成果として出せるかという検討は今、行っているところです。まだそれに関しては今ここでコメントできませんけれども、それは検討しています。

【JAMSTEC(倉本CDEXセンター長代理)】  要するに、5,200と言っている数字も正確じゃないわけですね。要するに、プレート境界断層だと言っているだけで、50メートル浅いかもしれない、50メートル深いかもしれないけれども、その辺も少しマージンを取っていまして、ただ、そこに到達しないと何もできないということになってしまうと、全て到達できないと失敗になってしまうので、その間のところでも、要するにLWDは取りますし、そのほか、もしもどこかでアバンダンしなくちゃいけないときに観測孔としてちゃんと使えるようにしておくとか、そういういろいろなアイデアがあって、それは今まさに議論している最中ですけれども、オール・オア・ナッシングにはならないようにしたいというふうに考えています。

【井上委員】  今の点と絡むのだと思いますが、私は門外漢なので、正直、最初に何人かの方が、地震とは何かとか、あるいはその発生と南海地震の地震対策に結び付くというような話をされましたけれども、その話と、今回、5,200メートルに達する、この具体的な掘削計画とがどこまで、どういうふうに答えを出せるかということについては、僕は正直分かりませんでした。地震がなぜ起こるかというようなことは、素人なのでよくもともと分かりませんけれども、深く掘ることでいろいろな新しいことが出て、これまでの掘削のことが非常にサイエンスとして新しいものを出している、それ自身僕は大変すばらしいと思うし、これもやった方がいいと思います。ただ、それが地震というものを理解する上の、ちょっとさっき主査が「決着をつけたい」とおっしゃったところが、僕はすごく引っ掛かったのですけれども、これが何か決着をつけるという種類のものではあり得ないのだと思います。だから、そこのところは、今の話でも、どんどん深く掘っていく、それに応じたサイエンスが出てくるのは、これは多分、そのとおりだと思うので、やっただけのことってきっとあるのだと思うのですけれども、今回の掘削計画が何を目標としているかというところはちょっと気を付けた言い方をしないと、逆に世間からすると、「何だ」って思わざるを得ない部分があるような気がするのですが。

【斎藤主査】  ちょっと言い訳しておきますと、さっき言ったのは、やはりこのままずるずる、とにかくどこまで掘るか、今、5,000ちょっと目指しているけれども、実際に5,000まで行けるかどうか分からないと思います。ただ、行かないとしても、今回のあるフェーズでもって行ったところまでの孔を利用して、そこを観測孔として利用していくという段階では、多分、DONETという地震観測につながるモニタリングができることで、これは将来的に使える観測孔になっていくと思います。
だから、決着をつけるという意味は、例えば今回思っていたところまで行かなかったからもうちょっとやりたいというようにずるずる延ばすのではなくて、ある意味ではやはりこの南海トラフの掘削というのはどこかで止めるというか、ここまでやってここまで分かったということと、それから、将来的にこれをモニタリングして、こういうことに使えるということを対外的に示さないといけないというようなことです。そういう意味では、さっき川幡さんがおっしゃったような、世界に対する説明も果たさないといけないという部分があるので。

【井上委員】  その部分は理解いたしました。ただ、先ほど森田委員もおっしゃったと思いますけど、もっと深く行きたい、もっとやりたいと、きっとこれを基にどんどん調べたいことって広がっていく、多分そうなるのが当たり前のような気がします。そういうもうちょっと長いスパンでの、具体的に予算を取ってくるときってそういう言い方は難しいのは分かるのですけれど、背景にはそういうものが当然あって物事が考えられて、例えば、先ほどの技術的にももっと先に使えていくようなものというのを頭の中に置いて考えていくような種類のものなんじゃないかと思うのですけが、いかがでしょうか。

【JAMSTEC(倉本CDEXセンター長代理)】  もちろんそのとおりで、南海トラフを今やっていますけれども、南海トラフ以外に、冒頭にちょっとお話が出ましたけれども、「CHIKYU+10」という400名の国際的なワークショップをやりまして、この「ちきゅう」の持っている一番の特徴である大水深、大深度でライザー掘削を行う、それは将来計画として水深4,000メートル級でできるようにするというのがもう建造当時からの目標でした。そこに背後にあるのは科学計画で、今、巨大地震をやっていますけれども、もう一つはマントル掘削であり、それから、リミッツ・オブ・ライフということで生命科学の問題という大きな3つの柱でこの「ちきゅう」を建造し、運用するということでやってまいりました。
ですから、今現在、南海トラフをやっていますけれども、これを無事終えた段階では次のチャレンジングな掘削、それからチャレンジングなサイエンスということを目指してやっているということは当初からあったことで、それは変わらないというふうに考えています。

【井上委員】  先ほど、身の丈に合った、継続的にやっていける計画というような位置付けでこれが考えられる方が将来的にいいというようなことをおっしゃったような気がします。僕もそれに大いに賛成で、これが何か特別のことで、これに特別に予算をかけて、何か特別な区切りを付けると言わない方が、むしろいいのではないかと思ったもので、少しこだわった意見を言わせていただきました。

【斎藤主査】  非常にありがたい御意見だと。

【井上委員】  うまくいくかどうか、文科省さんの作戦があるでしょうから分からないですけど。

【斎藤主査】  確かにそういう点では予算を取ったり、国際的に何か言ったりするときにその辺が非常に難しい場合がありますね。ですから、確かにいい御意見なので、是非考えていただきたいと思いますけど。

【平田委員】  それはいい意見ではあるけれども、やはり今まで掘っていた、つまりこれは地震発生帯掘削で、発生帯というときに、地震のある領域の掘削をしたというのであればいいけれども、やっぱり当初思っていたのは本当にメガスラストの地震が起きるところを掘り抜いて、そこからコアを取ってくるというのが目標だったわけです。次善の策として本当にそこに書いてあるメガスプレー。今はどこで巨大地震が起きる場所なのかというのは当初考えていたのとは変わったので、そこではメガスプレーと書いてありますけれども、地震発生帯というのは昔風で言えばデコルマとかプレート境界だったわけだから、そこに到達するかしないかというのはやっぱり明確な境界で、だから非常に分かりやすく言えば、そこで岩石が取れるのか取れないのかでこの計画が成功したか、まあ、失敗したとは言わないけれども、100%の成功をしたかどうかがあると思います。だから、あくまでここの岩石を取るということがサイエンティフィックターゲットとしてはファーストプライオリティーだと私は思います。
けれども、テクノロジーの技術もあるし、お金の技術もあるし、お金がないということもあってできないから、次善のターゲットを設定するということはもちろん反対はいたしませんけれども、井上委員がおっしゃられたことで重要なのは、リスクがあるけれども、AでできるのであればAでやればいいわけですね。B、Cを考えたのは、Aではできそうもないという恐れを技術的にお持ちだからもっといっぱい考えたと思います。だけど、Aであればできるというのであれば、そもそも物すごくお金が掛かっているのだから少しでも安い方がいいということはあって、やっぱりそこで言っているメガスプレーまで行くというこが最も重要なことで、お金を掛けたけど結局あと100万円と言えなかったというのは、これはかなり本来の目的ではないと。もちろんそうするとオール・オア・ナッシングで全くサイエンスでないということはもちろんないと思いますけれども、きょう午前中、木村先生のお話があったように、これは科学なので予想外のことが出て、全く違うサイエンスターゲットができるというのは当然あっていいことだと思いますけれども、この段階であそこまで掘り抜けなくても成功だという理屈を考えるのはまだちょっと撤退するのには早過ぎると思います。
それで、このAでもやっぱりお金が足りないという御説明でしたから、それは何とか頑張って、結局はお金を出すのは国民ですから、国民がお金を出してもいいというものにするため知恵を絞って、何とか当初の目的まで行った方がいいと、私は聞いていて思いました。ただ、井上委員がおっしゃられた、Aが持っているリスクをもっと詰めていただいて、結局、Aで行けなかったと、Aを始めたけれども掘り抜けなかったというのであれば、これはやっぱりCを大分お金が掛かってもやっていくという効果があるかなと思います。
今まで多くの科学成果が上がってきて、それから東北のJFASTでも上がってきたと私は思いますので、やっぱり南海トラフでその本体の断層を掘り抜くことができることは地震学にとっては極めて重要な貢献だと思いますので、これは非常にお金が掛かって、非常に時間と労力が掛かることだけれども、やる価値が私はあると思います。それで地震が全て分かるわけではないです。井出先生が言ったのは、地震は非常に複雑なので、何か分かったら全部予知できるわけではないということを彼は強調したけれども、しかし、南海トラフで大きな津波が出るような地震の物質科学的な実態をちゃんと理解するためには、やっぱり掘ると。その技術はもうちょっとのところまで手に持っているのだから頑張る必要が今の段階では大いにあると私は思います。

【益田委員】  基本的には平田先生に賛成ですけど、やはり区切りの問題っていうのは結構重要だと思います。以前に、例えばコスタリカリミットを掘ったときも、随分といろいろな障害に当たって、やっぱり掘削技術の進歩を待って、再度掘削に挑戦するっていうようなことをやって時間を掛けてやっていたということもあるわけですよね。そうしたら、ここのところでやっぱりとにかく到達するまでやり続けるということをずっと続けていくのが本当にいいのかどうかっていうところで、やっぱりある程度見切りをつけるということも大事なんじゃないかなと思います。
特に今の「ちきゅう」を使って掘りたい計画ってほかにもあるわけですよね。今さっきおっしゃったような生命圏の問題もあるし、モホール計画もある。そういうのはここで経験してきたことを生かしてやれることでもあるし、外国に対する約束でもあるし、やはりそういうもののプライオリティーも認めてあげないといけないと思います。
そうすると、私はやっぱり一つは、平田先生がおっしゃったように、とにかくここでお金を掛けてでも何でもいいからやれるだけやってみると。だけど、1回やってだめだったら、一旦休止して、技術が進歩するのを待って、あるいは並行して自分たちが技術的な開発努力を進めるとかして、その間は船を別の場所に持っていこうと、そういう決断をするということも大切なのかなと、今日の話を聞いていて思いました。私は、できたらやはりここで悔いのない方法を使ってやる努力をみんなでやった方がいいなと思います。お金を掛けられないからAとかっていうのではなく、一番確実に到達できる方法は、今この3つの中でどれなのかということを考えて、みんなで何とか頑張る。だけれども、もうそれでだめだったら一旦撤退して、ちょっと考えようというやり方もいいかなと私は思います。

【平田委員】  私もそういう考え方は賛成します。だけど、そうするとやっぱり所期の目的は到達できなかったということをはっきり言って、一旦撤退して、再度のチャレンジをして、だから何となく、あと50メートルまで行ったから、これで大体98%成功だっていうような言い方はしない方がやっぱりいいと思います。あそこでメガスラストフォールトのところで要は取ってくるか取ってこないかというのは、やっぱりこの計画の中で占める割合は非常に大きいですから、到達できなかったからゼロに、なんていうことは決してないので、いろいろな技術的な開発もしたし、サイエンティフィックな結果も出たと思うので、もし撤退するのであれば、目標まで行かなったということを明確にした上で一旦撤退して、皆さんがおっしゃっているように、新しい技術が開発したときにもう1回再度チャレンジする。あるいはもう1回行ったときにチャレンジしやすいような形で撤退するというようなことも考えられる必要があるかなと思っています。

【益田委員】  こういう最先端を走っていると、どうしても技術的な壁にぶつかって失敗することだってあると思います。それは仕方ない。それは先端の仕事をやっている宿命で、常に成功できるとは限らない。そこのところは後追いじゃないのだから、諦めざるを得ない部分もあるというふうに思います。
再度チャレンジすればいいと思いますが、やっぱりずるずるといつまでも続けていると、道義的な責任もあるし、国際的なコミュニティーに関する問題も、それから、国民の税金を使っているということに対する説明責任もやっぱりあるので、その辺の判断は1回した方がいいだろうなと思います。

【斎藤主査】  非常に大事な御意見を頂いておりますが、そうするとますます掘削計画案、どれを取るかというのは非常に大事であって、A案、B案、C案って簡単に言うのではなくて、ここのどれで行けるかということ、それを恐らく決めていくには、これまでやった経験が物すごく大事なわけで、そこを本当にきちんとやっぱり議論していただくというのが一番大事なことになるかと思います。
ほかにあれですかね。

【川幡委員】  このAとBとCを決めるのは誰ですか。

【海洋地球課木村企画官】  それを今、言わなければいけないかなと思いまして。
基本的にオプションを提示して、委員の先生方にどれにしますかというようなことをするというのは正しいことではないというふうに考えております。もともと当初、この掘削委員会を開催する段階で考えていたのは、こういうオプションを検討した結果、これをやりたいですということで、それでいかがでしょうかということをお諮りするというのが本来あるべきかなと思って進めてきたわけですけれども、実は掘削の検討を進めて、きょうもお聞きいただいて御理解いただけたかなと思いますけれども、そんなに簡単にすっぱりと、これで行きますというようなものではなくて、検討を進めれば進めるほどオプションがどんどん出てくるという、そういう作業に入っているということであります。ですので、この中でこういうポイントを基にしっかり判断して進めるべきだというような意見を頂くというのがいいのかなと考えております。
ですから、今日まさに非常に貴重な御意見を頂きまして、AにするのかBにするのか、リスクをしっかり突き詰めるべきだということと、それから、平田委員のメガスラストフォールトをとるというのが、非常にこれは重要で、これができるかできないかでこのプロジェクトが成功するかしないかの判断になるわけだから、それに向けた、それが到達できる最善の策を選ぶべきだという御意見。あとは到達できなかった場合はそれを明確にして、一旦休止して再挑戦するなどの判断をちゃんとするべきという御意見ということで、そういう整理にさせていただければと考えております。
もう一遍申し上げますけれども、このオプションに対してはリスクを突き詰めるということと、それから目的を明確にして、それに一番近道な方法を選ぶことという御意見を頂いたということで整理させていただければと思っております。

【川幡委員】  今のリスクの中で、もちろん触れられていますけれども、お金がもしかしたら最大のリスクかもしれないので。僕は実はお金じゃないかと思っていて、なぜならば20億足りないから増やせばとかいう、そういうグラデュアルじゃないじゃないですか。1年で例えば100億。100億単位、その中で選ばなければいけないから、実は、済みませんけれども、そのリスクの中に天候も入れたお金だと思います。これが一番多分最後になって効いてきて、やった年に非常に海流が強いとか台風が来るとか、じゃあ最後、20億円分だけちょっと伸ばしたらいいかって言われたら、実はもう天気が悪くてできなかったとか。いや、前だって黒潮がすごく強くてできなかった年があったじゃないですか。それも含めてだから、結構厳しい判断をするのじゃないかと思いますけど。
私、平田先生の言われたように、これは最初にSPCのときにこのプロポーザルが出てきたから、みんな日本がせっかく掘削船を造ってくれたからというのがあったけど、そこのバンダリーを掘るか掘らないか、そんなすごい船を日本が造ったのだっていうから、頑張ってくださいよっていうのがあったので、やっぱり是非ともそこは貫いてほしいなと。それは小惑星から試料を取ってきたのと全く同じで、取ってくるか取ってこないかで結構決まっちゃって、その後で『ネイチャー』だか『サイエンス』だか、特集号で出ていましたけど、やっぱりあれは取ってきたからすごい価値があるので、これも同じなのでそう思って一世一代の決意をしてもらってほしいなと思います。応援として。

【海洋地球課木村企画官】  リスクには、天候を含めたお金、それから多分時間もあるのかなと思いますので、そういったものも含めて判断をするというふうに御意見を頂いたということと思います。

【斎藤主査】  ほかにもし。

【鎌形委員】  お金の話なので、やっぱりこのA、B、C、どれを選ぶかというのは結構大きな話ですけれども、こんな大きなお金のプロジェクトの予算要求のプロセスが私はちょっとよく分からないのでお聞きしますが。

【海洋地球課木村企画官】  Cを選んだ場合、これ、2航海ということになっていますけれども、3航海とか4航海で割るという考えもあるかもしれません。でも、まさにそんなことをしたら、それこそ「ちきゅう」はどこへ行くのだというふうに言われるかもしれない。

【鎌形委員】  それでどこに折り合いをつけるとか、ちゃんとそういうストラテジーを考えながら文科省はやるのですね。結構難しいだろうなというのが想像に難くないのですが。それだけです。

【斎藤主査】  何か済みません、難しいコメント。
ほかに何かございませんか。もしないようであれば、また次回もありますから、今後の進め方について事務局の方から。

【事務局】  本日はありがとうございました。本日頂いた御意見、御指摘を踏まえまして報告書案を作成していく予定でございます。
本日以降でも、また追加で御指摘、御意見がございましたら、済みません、急で申し訳ないですが、今週の金曜日締め切りで、メールべた打ちでも構いませんので、事務局の安藤まで御連絡をよろしくお願いいたします。御意見用のフォームを今日中に送らせていただきますので、そこに記載の上、私に返信をお願いします。
次回の委員会ですけれども、7月8日、火曜日、13時半を予定しておりまして、場所は文科省、こちらの東館の、今度は3階になります。3F1特別会議室で開催する予定でございまして、終了時間は17時半を予定しております。
先ほど御説明しましたとおり、次回委員会では、本日及び本日以降に頂きました御意見、御指摘をもとに事務局の方で報告書案を作成いたしますので、まず、次回委員会前の6月27日を目標にいたしまして、事前に報告書案を皆様に送付させていただきます。当日は報告書案を皆様に説明させていただきまして、また御意見があれば頂くということになります。
その後につきましては、メールでのやりとりを経まして、今度は7月22日を目標に報告書案を完成させたいと考えております。
次回の委員会については以上でございます。
あと、事務連絡でございますけれども、今回使用いたしました資料は机上に置いていただければまた後ほど皆様の方に郵送いたしますので、よろしくお願いいたします。
また、机上の諸手当の請求についても必要事項を御記入の上、机上に置いておいていただければと思います。
事務連絡は以上です。

【斎藤主査】  ありがとうございました。あと、事務局の方からもし何かありましたら、またメールでやりとりしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
じゃあ、これで第14回の深海掘削委員会を終了させていただきますが、課長、もしありましたら。

【海洋地球課清浦課長】  今、予算の話が出ましたけれども、まさに7月というのは予算の取りまとめをする時期でございます。今日頂きました御意見を基に、我々の方でやはりベストなものというのを決めて、それで要求していくということだと考えておりますので、そこでまた次の回の意見も踏まえてやっていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

【斎藤主査】  ありがとうございました。
それでは、これで閉会といたします。きょうは1日御苦労さまでした。ありがとうございました。

以上

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