「学術研究の推進方策に関する総合的な審議について」中間報告のポイント

1.失われる日本の強み-危機に立つ我が国の学術研究-

 ○天然資源に乏しい我が国では、学術研究により生み出される知や人材が国としての強み
  これまで、国際社会における存在感の伸張に貢献 ⇒学術研究は「国力の源」

 ○大学の研究環境の悪化 ⇒学術研究衰退・人材育成メカニズム崩壊
  ⇒「高度知的国家」としての存在感の低下・我が国全体の教養の低下⇒日本の強みの喪失の危機

 ○学術研究による知の創出力と人材育成力の回復・強化が喫緊の課題
  ⇒国・学術界一体での学術研究の推進が急務

2.持続可能なイノベーションの源泉としての学術研究

 ○「科学技術イノベーション」=学術研究による知の創出を基盤とし、経済的、社会的・公共的価値の創造に結びつける革新(第4期科学技術基本計画)

 ○学術研究はイノベーションの源泉:現在の強みを生かすにとどまらず、日本の新たな強みを創出   
  ⇒多様で質の高い知の蓄積、研究成果の幅広い提供、イノベーションを支える知的人材の育成

3.社会における学術研究の様々な役割

 ○学術研究が社会から期待されている主な役割((1)~(4)は相互に連携・作用)
 (1)知的・文化的価値の創出・蓄積・継承・発展、(2)実際的な経済的・社会的・公共的価値の創出
 (3)人材の養成・輩出の基盤、(4)(1)~(3)を通じた知の形成や価値の創出等による国際貢献
  ⇒学術研究の現代的要請=挑戦性、総合性、融合性、国際性 

 ○特に、次代を担う若手研究者の海外での研究機会を拡充し、国際的リーダーに育てることが重要

4.我が国の学術研究の現状と直面する課題

 ○現状・・・「挑戦性、総合性、融合性、国際性」が脆弱
  ・学術研究は、これまで多くの優れた成果を生み出し、我が国の強みの形成に寄与
  ・一方、近年、論文指標の相対的低下と投資効果への疑義、資源配分の固定化、異分野融合の弱さ、社会との繋がりの不十分さ等に関し厳しい指摘

 ○課題・・・国と学術界双方の資源配分における戦略不足 ⇒研究現場の疲弊、短期的・内向き志向
  【国】学術政策・大学政策・科学技術政策の役割分担の明確化や連携が不足
  【大学】戦略に基づく強みの明確化や学内外の資源の柔軟な再配分・共有が不足
  【学術コミュニティ-】分野や国境を越えた知への挑戦や若手育成等のための戦略的対策が不足

5.学術研究が社会における役割を十分に発揮するために

 ○改革のための基本的な考え方
  (1)上記3.の「学術研究の現代的要請」に着目し資源配分を思い切って見直し、
  (2)学術政策・大学政策・科学技術政策の連携、(3)若手人材育成・教養形成、(4)社会との連携強化

 ○具体的な取組の方向性
  (1)デュアルサポートシステムの再構築(基盤的経費の意義の最大化、科研費大幅改革等)
  (2)若手研究者の育成・活躍促進、(3)女性等多様な人材の活躍促進、
  (4)共同利用・共同研究の充実、(5)学術情報基盤の充実、(6)学術界のコミットメント

学術研究が社会における役割を十分に発揮するために =具体的な取組の方向性=

(1)デュアルサポートシステムの再構築

基盤的経費:
   大学は、明確なビジョンや戦略に基づく配分により、基盤的経費の意義の最大化を推進
   ⇒国は、大学の取組と相まって基盤的経費の確保・充実
 
競争的資金:
 ○科研費:大幅改革
    ・研究分野の融合・創出等に資する仕組みへ(応募区分や審査方式の見直し)
    ・グローバル化への支援シフト(国際共同研究や海外ネットワークの拠点の整備強化)
    ・質の高い研究に向けた多様な研究者の支援(若手・女性・外国人・在外日本人等支援)
    ・成果情報の提供充実(技術革新への可能性の発見・活用に資するデータベース構築)
    *これらの成果の最大化を図る観点から「基金方式」を充実
  
 ○科研費以外の競争的資金:
    総合科学技術・イノベーション会議において全体バランスに配慮した改革の検討
       〔参考〕文科省関連については、新技術シーズ創出の観点から「戦略的な基礎研究」として展開
             (専門家会合で実務的検討を開始(4月~))

 ○間接経費:競争的資金の拡充とともに確保・充実し、大学において一層効果的に活用

(2)若手研究者の育成・活躍促進

 ○若手研究者の自立をサポートする体制の構築・強化

 ○国際的な研究コミュニティーにおけるリーダー養成のための海外研究機会の充実

 ○シニア研究者を含む人材の流動性の促進と若手研究者の安定的なポストの確保、キャリア開発

(3)多様な人材の活躍促進

 ○女性研究者活躍促進のためのシステム改革の推進

 ○海外の優秀な日本人・外国人研究者の戦略的受入れ等による国際的な頭脳循環のハブの形成

(4)共同利用・共同研究の充実等

 ○ネットワーク型研究拠点の推進、国際共同研究推進体制の整備

 ○「学術の大型プロジェクト」の推進

(5)学術情報基盤の充実等

 ○学術情報ネットワークの強化、海外との情報受発信を強化するための学術雑誌の支援

(6)学術界のコミットメント

 *改革の推進には学術界の積極的なコミットメントが不可欠
 
 ○分野の利害を越え、学術振興施策の制度設計や審査、評価等への責任ある参画
  
 ○研究倫理の徹底等による質の保証、社会との対話の重視
  
 ○発展可能性等の未来志向の観点による評価制度を確立し、優秀な研究者を積極登用
  
 ○研究者に係るメリハリある処遇や資源配分を実施

 

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