ビッグサイエンスの在り方について(報告)概要

2003年10月2日
科学技術・学術審議会

 総合科学技術会議の平成16年度資源配分方針では、基礎研究におけるビッグサイエンス(大きな資源の投入を必要とするプロジェクト)について、競争的研究資金も含めた基礎研究全体の中でのバランスへの配意、専門家的立場、国民的観点からの判断に基づく効果的・効率的な推進が指摘されている。
 大学共同利用機関等で実施される大規模プロジェクトについては、研究手法の高度化や研究装置の大型化に伴い研究プロジェクトがますます巨大化する傾向にあり、その意義、優先度等を厳しく評価するなど効果的・効率的な推進が求められている。
 本分科会では、これらを踏まえ、ビッグサイエンスの意義、推進の在り方などについてその考え方を以下のとおりとりまとめた。

1.「ビッグサイエンス」の定義

○ 「ビックサイエンス」の定義は、資源配分方針でも必ずしも明確にされていないが、本分科会では、「ビッグサイエンス」を基礎研究のうち
 大学共同利用機関等で行われる大型の施設・装置を用いた研究プロジェクト、及び分散型であっても一定の目標管理の下に資源を集中投入して大規模かつ計画的に進められるゲノム解析などの研究プロジェクト
   と捉えることとした。

2.「ビッグサイエンス」の意義及び必要性

 ビッグサイエンスは、以下のような意義を有しており、その積極的な推進が、科学技術創造立国の実現を図る上で極めて重要である。

(1)学術上の観点

○ 1975年以降のノーベル物理学賞受賞者のうち、大型施設に関連した研究者が11人にのぼるなど、基礎科学分野における独創的・画期的な成果の創出に有効。

○ 資源の重点投資につながり、研究成果が効率的・効果的に生み出されること。

○ 新たな応用分野の創出や他の研究分野への大きな波及効果が生じること。

(2)国際的な観点

○ 世界一を目指したサイエンスとしての我が国の独自性の追求、及び国際的リーダーシップの発揮。

○ 世界の学術研究の発展に積極的に貢献していく観点から、国際協調・国際共同による推進が図られていること。

(3)社会的・経済的効果の観点

○ 広く国民一般、とりわけ青少年に夢やロマンを与え、学術・科学技術に対する関心と理解を高めること。

○ 革新的技術などのブレークスルーをもたらし、産業技術力の向上、国際競争力の強化に大きく貢献。

3.「ビッグサイエンス」の推進の在り方

 ビッグサイエンスについては、必要な研究を着実に推進していくことが重要であるが、各プロジェクトの投入資源の大きさ、期間の長さを考慮し、その実施に当たって以下の点に留意する必要がある。

(1)研究開発全体におけるバランスへの配慮

○ 基礎的・基盤的研究開発分野における予算額の推移をみる限りにおいては、ビッグサイエンス、スモールサイエンスともに着実な推進が図られてきており、一方が他方を圧迫する状況は特にうかがわれない。(図参照 PDF:9KB)(※下記参照)

○ ビッグサイエンスについては、他の研究活動を圧迫することがないよう我が国の研究開発全体における資源配分の適正なバランスに配慮しつつ着実に推進すべき。

(2)ビッグサイエンスの多目的化、国際化

○ 施設・装置の多目的利用について考慮し、計画上、運用上の工夫が図られるべき。

○ 国際プロジェクトの大型化に鑑み、その推進に当たっては、我が国の役割分担や学術・科学技術上の意義の明確化、参加のタイミングに留意することが必要。

(3)ビッグサイエンスの評価

○ ビッグサイエンスについては、他分野の研究の推進や社会・経済に対する影響が大きいことから、事前・中間・事後にわたる厳格な評価が必要。

○ 評価に外部の幅広い意見を反映させるなど、公正性、客観性、透明性を一層高めるよう工夫が必要。

(4)ビッグサイエンスの評価及び推進に係る審議体制の充実・強化

○ ビッグサイエンスの推進に当たっては、個々のプロジェクトの評価に加えて、各プロジェクト間の優先付けや研究開発全体の中でのバランスの配慮など全体調整を行うことが必要。

○ 評価については、研究者集団の発意が十分に活かされるよう、学術的な意義について専門的で自律的な検討が行われることが重要。

○ これらの課題に対して、十分かつ機動的な検討を行うことができるよう、学術分科会の審議体制の充実・強化を図ることが必要。

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研究振興局振興企画課学術企画室

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