資料5-1 学術研究における研究力強化に向けて(案)

学術研究における研究力強化に向けて(案)

(現状認識)
○学術研究を取り巻く状況は、第7期学術分科会でとりまとめた「学術研究の総合的な推進方策について(最終報告)」(平成27年1月)で指摘の通り、知のフロンティアの拡大に伴う新領域創出等に向けた熾烈な国際競争が進む中、我が国の大学の研究環境は悪化。このことに伴い、我が国の学術研究の衰退や人材育成メカニズムの崩壊が懸念され、ひいては「高度知的国家」としての存在感や我が国全体の教養の低下など、日本の強みの喪失の危機。

○科学技術・学術政策研究所等の調査等を踏まえると、以下の課題が存在

  • 学術研究の成果を示す指標の一つである論文指標(総論文数や高被引用度論文数のシェア)は国際的・相対的に低下傾向。特に、その構造を大学別に見た際に、日本の研究活動をけん引している大学群よりも、その層の厚みを増加させる潜在力を持つ大学群が著しく弱体化。
  • 世界で国際共著論文数の増加など、研究活動の国際化が進む中で、日本の存在感が後退。国際的に注目を集める研究領域への参画状況も、英国・ドイツは増加する中、日本は上手く参画できていない。
  • 若手人材についても、博士課程進学者数の減少や望ましい能力を持つ人材が博士課程を目指していないという認識が継続。学術研究の中核を担う優秀な若手人材の育成・確保が急務。

○学術研究は日本の新たな強みを創出するなど、イノベーションの源泉。学術研究による知の創出力と人材育成力の回復・強化を図るためにも、学術研究の現代的要請(挑戦性、総合性、融合性、国際性)に着目しつつ、国・学術界が一体となった学術研究の推進が急務。こうした状況等を踏まえ、第5期科学技術基本計画においても学術研究の推進に向けた改革・強化が求められているところ。


(今後の方向性)
○今後、学術研究が社会における役割を十分に発揮していくために、本分科会最終報告で掲げる改革のための基本的考え方を踏まえつつ、具体的な取組の方向性(1.デュアルサポートシステムの再生(基盤的経費の意義の最大化、科研費大幅改革等)、2.若手研究者の育成・活躍促進、3.女性研究者の活躍促進、4.研究推進に係る人材の充実・育成、5.国際的な学術研究ネットワーク活動の促進、6.共同利用・共同研究体制の改革・強化等、7.学術情報基盤の充実等、8.人文学・社会科学の振興、9.学術界のコミットメント)に関し、それらの取組を一層推進していくことを基本としつつ、特に以下の点について重点的な取組を進めていくことが必要。


【各部会等において審議中の取組】
1)科研費改革の推進
科研費の改革・強化を図るため、科研費改革の実施方針(平成27年9月学術分科会了承)等を踏まえ、引き続き、科学研究費補助金審査部会において、平成30年度に新たな審査システムへ円滑に移行することを目指し、審査システムの抜本的な改革を進めるとともに、研究種目・枠組みの見直しについても研究費部会において平成30年度を目指して検討を進めている。

2)共同利用・共同研究体制の強化
  研究環境基盤部会において、共同利用・共同研究体制における組織的流動性確保に向けた改革など、共同利用・共同研究体制の構造的課題を解決するための方策について、速やかに一定の結論を得るよう検討を進めている。

3)学術情報のオープン化の推進
  「学術情報のオープン化の推進(審議まとめ)」(平成28年2月学術情報委員会)を踏まえた取組を促進するとともに、その施策の実施状況を踏まえて、学術情報委員会においてフォローアップを行い、更に研究データの共有及び利活用を促進するための検討を進めていく。


【今後さらに審議を要する取組】
4)トップレベルの研究拠点群の厚層化
  「第6期学術分科会における主な審議経過及び今後の検討課題」(平成25年1月)において指摘されているように、研究面で国際競争力を有する大学の層を厚くし、我が国の学術研究の研究力を強化するためにも、世界トップレベルの層の研究力を引き続き高めていくとともに、その手法・成果を活用し、トップに伍する潜在力を有する層を対象に特定分野で優れた国際的研究拠点の形成を図るべき。その際、若手人材の育成の観点からも各人材施策等とも連携を図っていくべきではないか。

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研究振興局振興企画課学術企画室

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