資料1-1 大学等の研究力強化に関する論点例とこれまでの主な意見

(1)我が国の研究力が、国際的に見ると相対的に低下している要因分析について

(論点例)
○国内外における研究現場の状況
○諸外国の研究支援施策
○大学等の研究力を適切に評価する指標等

これまでの主な意見(●:前回(9月28日)の主な意見)

(研究現場の状況)
○大学は、新しい募集が出てくるたびにそのために用意をして、どんどん研究する時間がなくなっている。新しい制度に振り回されている。
○大学に求められる評価や報告書の量が多く、研究時間が奪われている。
●我が国の工学分野の研究の中には、多様化する傾向が見られず、世界の研究変化・トレンドと乖離が進んでいると指摘されている分野もある。
●我が国では、世界の研究者ネットワークに入っていかない人が増加している。
●海外の研究者は、サバティカルを大切にしている。我が国においても、国内の研究者がサバティカルを利用して研究の質を高めることへの支援や、サバティカル中の海外研究者が日本に来て、共同研究につなげていけるような環境を整備することが必要。
●世界の研究動向では、国際共著論文が非常に増加している。また、国際共著論文は引用度が高くなる傾向にある。


(諸外国の研究支援)
○ヨーロッパで国際共著論文が出ているのは、お金を全部ブリュッセルに集め、国際共同研究に交付しているため。
●ドイツでは、エリート・ユニバーシティ支援として、特定の大学への資源の集中を行っている。
○中国は、国策で特定の機関に大金を投じて頑張らせる、あるいは論文を1本書けば給料を上げるなどの政策を講じて論文を書かせている。日本の研究者数はドイツ・フランス・英国より多いのに、論文数はそれほど変わらない。研究者一人当たりの論文数などを検証して、対策を考えることが大事。
●米国における生物系の研究には、政府からだけでなく様々な投資があり、寄附制度と民間投資が充実している。

(研究力の評価指標)
○「社会を変革するエンジン」として大学に必要な改革について、一定の分析の上に立った検討が必要。その際、単に論文数の増加というだけではない評価を検討することも重要。

(2)要因の分析を踏まえて、国際水準の研究力を強化するために、大学等に求められる改革・取組について

(論点例)
○競争力のある研究の加速化促進のための研究環境整備
・ 研究支援人材の配置などトップクラス研究者に対する研究専念のための環境整備
○研究の潜在力を伸ばす研究環境整備
・ 研究指導アドバイザーの設置、学内ワークショップの開催や萌芽的研究支援など、若手研究者への研究奨励
・ 女性研究者の積極的登用やライフイベントに配慮した研究体制・環境の整備
・ 学長のリーダーシップによる部局の垣根を超えた戦略的なマネジメント改革(部局横断的な(学外研究者も含む)分野連携の推進、組織・人事改革等)
○国際共同研究推進のための環境整備など、研究の国際化の推進
○外部資金獲得に向けた戦略立案、マネジメント体制の整備等

これまでの主な意見(●:前回(9月28日)の主な意見)

(競争力のある研究の加速化促進のための研究環境整備)
●研究者の研究時間をいかに増加・確保するかということが重要であり、そのために、書類作成等の事務負担や機械的な講義負担等の在り方についての検討も必要。
●研究資源が限られる中、水準の高い研究を維持するためには、国際水準の研究体制・環境整備による人材確保の促進が必要。

○国際的に優れた人材を集めるには、教員の処遇の在り方をも含めて考える必要がある。

(研究の潜在力を伸ばす研究環境整備)
○定年間近の教員が、知識や経験を生かして、現役の教員を助け、様々な問題の解決への対応策とすることができないか。一旦ポジションと切り離した上で、研究教育の危機的な状況を支え助けることができる仕組を考えることが必要。
○女性研究者の割合がますます低くなっている。いわゆるマイノリティ採用というものをもう少し考えねばいけない時期になっている。大学で優秀な成績をとる女性は多く、その一部を少しでも大学の中にとどめておきたいと考えるのならば、もう少し女性研究者の割合の低さに危機感を持つべき。
●日本の大学は女性が意志決定に参画することが少ない。アメリカのアイビーリーグでは8大学中5大学の学長が女性。

(研究の国際化の推進)
○優れた魅力的な研究を日本からもっと発信していくことが大事。日本の先生方に触れたい、最先端の研究をしたいと思わせるような、優れた研究室、拠点をどんどん進めていくことが最終的にグローバル化になるのではないか。

(研究マネジメントの在り方等)
○予算措置のみならず、人的な組織をいかにまとめ上げていくかということは、人材育成、及び研究達成のために大事。
●日本の大学には、技術研究者が少ない。研究成果の創出のためには、技術研究者という人材の確保が重要。
○大学の研究力を強化するために、例えば、新しい分野を創設することや新しい人材を登用することなどが考えられるが、その際、従来から継続されてきたものも含めて、どのように取捨選択を行うべきかについての議論が必要。
○産学連携において大学は貢献していることを強調すべき。ベンチャー育成、特許数の増加など、産業に対して大学がかなり基盤的な力を発揮している。
○大学が応えるべきニーズの増加に対して、学術研究からはどれくらいの成果を出すのかというような、もう一歩、広い分析が必要ではないか。

(3)厳しい財政状況のもとで、国に求められる大学等の改革・取組に対する支援の在り方について

(論点例)
○従来のデュアル・サポート体制に加えた戦略的な支援
・客観的なエビデンスに基づき、アウトカムを評価して行う支援
・大学が研究力の強化に向けて切磋琢磨する環境の醸成等

これまでの主な意見(●:前回(9月28日)の主な意見)

(大学の取組に対する支援の在り方)
○教育・研究が活発な研究者ほどアドミニストレーションの負担も大きくなる傾向があるので、研究力を強化するための改善の方向性をしっかりと示す必要がある。
●数大学が世界級の研究をやっているというだけでは不十分であり、分厚い層を育てていく必要がある。
○大学のあるべき姿を考えたときに、基盤的な多様性はキープしなければいけないが、その中で日本の強みを発揮していくためには、「量より質」を追求すべき。膨大なコストがかかる量勝負の土俵は、日本が得意かといわれるとはなはだ疑問。
○特化した分野においては日本の大学は強い。それを把握した上で、全体を見て政策を考える必要がある。
○根本的な改革というのを考えてみるいい時期ではないか。大学間での研究費配分に過度の傾斜があるという議論もあるし、GCOEをやめてさらに特定化した拠点の形成がいいのか疑問もある。

(研究助成、研究支援の在り方)
●科学は、新たなパラダイムの変遷を繰り返しながら非連続的に進化するものであり、一見役に立たない研究こそが新しいパラダイムを生み出し、研究や開発の原動力となってきた。そういう経験を無視して、特定の部分に政策的に選択・集中すれば良くなると考えるのは、非常に危険な側面がある。
○文系の研究には、文化に根差したちゃんとしたものができるのかということが非常に重要。先端研究の重要性はわかるが、文系については、そういう熟成する可能性の芽を摘まないような施策も必要。
○融合研究の促進のために、分野横断的なファンディング・スキームが必要。
●イノベーションは様々な分野が融合して起きる。科研費の分科・細目表の改訂も進んでいるが、従来の学問のくくりで細目が改訂されていれば、それにしたがって審査がなされてしまう。
●小規模でもいいので、国際共著論文を増加させるためのインセンティブを与えるファンディングが必要。
●ノーベル賞を取るような研究は30~40歳代に行われていることが多く、若手・中堅層をサポートする自由度の高い研究費が重要。
●研究の継続について、次のプロポーザルにつながるかどうかの評価を厳しくしたコンペティティブ・リニューアルという考え方がある。優れた研究が中期的なタームでの継続になるように、次に向けたインセンティブと厳しい評価による包括的なファンディング・スキームを検討することも重要。

○大学院に幾ら投資するとか、大型研究資金を出すことも必要だが、足腰を鍛える教育をしっかりやっておく必要がある。運営費交付金の確保が重要。
○学術研究の国際化の中で、個人レベルでできることに限界がある施策もある。(ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムでは、国レベルでの方向性を議論しなければ進まない部分がある。)
科学技術外交という概念を基本にして、理系の研究者個人だけではなく、社会科学、人文科学の研究者や、政府関係の方々も含めた広い範囲が協働して取り組む国際事業を推進してほしい。
○新たな施策のみならず、施策を育てる視点が重要。これまでの施策の中で優れたものは、さらに補強してもっと良い施策にする。あるいは改善によって大きな発展が期待される施策は育てる。目新しい施策が次から次へと現れるだけでは、現場が混乱をきたすのみである。

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-- 登録:平成24年11月 --