学術分科会(第75回) 議事録

1.日時

令和元年10月8日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

東海大学校友会館「阿蘇の間」
(東京都千代田区霞が関3-2-5霞が関ビル35階)

3.議題

  1. 学術研究の最近の状況について
  2. 学術の振興に係る論点について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
西尾分科会長、須藤分科会長代理、甲斐委員、勝委員、栗原委員、小長谷委員、白波瀬委員、辻委員、観山委員、家委員、井関委員、岡部委員、川添委員、岸村委員、喜連川委員、小林傳司委員、小林良彰委員、小安委員、城山委員、武内委員、永原委員、鍋倉委員、松岡委員、山本佳世子委員
(科学官)
頼住科学官、三原科学官、鹿野田科学官、寺﨑科学官、上田科学官、林科学官

文部科学省

山脇文部科学審議官、田口大臣官房サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、村田研究振興局長、増子大臣官房審議官、原振興企画課長、梶山学術研究助成課長、前田学術企画室長、堀江競争的資金調整室長、岡本学術研究助成課企画室長、丸山学術基盤整備室長、藤川学術企画室長補佐、磯谷科学技術・学術政策研究所長、伊神科学技術・学術基盤調査研究室長

5.議事録


【西尾分科会長】  ただいまより第75回科学技術・学術審議会学術分科会を開催いたします。
 冒頭のみカメラ撮影を行いますので,御了承いただければと思います。
 初めに,前回まで御欠席の委員で本日御出席いただいている委員につきまして,事務局から御紹介をお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  御紹介させていただきます。
 甲斐知惠子委員でございます。
 川添信介委員でございます。

【川添委員】  川添です。よろしくお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  どうもありがとうございました。どうかよろしくお願いいたします。
 事務局の異動がありましたので,紹介をお願いいたします。

【西尾分科会長】  前回5月の学術分科会以降,事務局に異動がございましたので,紹介させていただきます。
 若干用務で遅れておりますが,研究振興局長に村田が着任しております。
 大臣官房サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官,田口でございます。

【田口サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官】  田口でございます。よろしくお願いします。

【藤川学術企画室長補佐】  振興企画課学術企画室長,前田でございます。

【前田学術企画室長】  前田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  科学技術・学術政策研究所長,磯谷でございます。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  磯谷です。どうぞよろしくお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。どうかよろしくお願いいたします。
 次に,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  資料につきましては,お手元の配付資料一覧のとおり配付しておりますが,欠落等ございましたら,近くの職員にお声掛けください。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  ありがとうございました。
 それでは,議事に入ります。本日の議題は議事次第に示しておりますが,本日途中で御退席される予定の方がいらっしゃいましたら,意見交換の際は優先的に御発言いただこうと思っておりますので,早めに手を挙げていただければと。どうかよろしくお願いいたします。
 それでは,1番目でございますが,人文学・社会科学特別委員会の審議の中間まとめについて,委員会主査の城山委員より御報告いただきます。何とぞよろしくお願いいたします。

【城山委員】  人文学・社会科学特別委員会主査の城山でございます。よろしくお願いいたします。
 昨年12月に本分科会の下に設置されました人文学・社会科学振興の在り方に関するワーキンググループにおいて取りまとめられました人文学・社会科学が先導する未来社会の共創に向けて,いわゆる審議まとめを受けまして,本特別委員会は設置されました。
 委員会におきましては,本日御出席の委員の方々も含めまして,7月から9月にかけまして計4回,大変精力的に熱のこもった議論をさせていただきました。
 本日は,この委員会における主な御意見について御紹介しながら,別途配付させていただいております本報告書の概要について御報告させていただきたいと思います。
 まず,検討の背景でございますが,1ページ目を御覧ください。二つ目の丸において,ワーキンググループでの審議のまとめで指摘をされておりました人社が直面する諸課題といたしまして,研究分野が過度に細分化している,個々の専門的な研究がマクロな知の体系との関連付けを得ることが難しくなっている,あるいは,自然科学による問題設定が主導する形となっており,人文学・社会科学の研究者が専門性との関連でインセンティブを持ちにくいといった点を指摘しております。
 2ページ目では,一つ目の丸におきまして,そうした諸課題を克服するために,人文学・社会科学に固有の本質的・根源的に大きなテーマを設定して行う共創型プロジェクトの有効性,また,そのための組織体制の整備の必要性などについて記述しております。
 こうした経緯を踏まえまして,本委員会では,以下ローマ数字のⅡ以降で事業の実施に関しての基本的な事項を取りまとめたところでございます。
 まずローマ数字Ⅱ,目的でありますけれども,委員会では,通常の共同研究では出会うことのない人々が共に大きな課題に取り組める環境整備が必要であること。従来の学際とは異なることを示すために,多様なステークホルダーを巻き込む必要があること。日本の人文学・社会科学からパラダイムシフトを起こすような知の創出を可能にする仕組みづくりが必要であること。事業の大きな特徴は,共創のプロセスを創ることと,新たな人文学・社会科学の学術知を創るということであり,研究実践をする中で,人文学・社会科学の具体的な学術レベルの発展を見据える必要があることといった御意見をいただきました。
 これらの御意見を踏まえまして,2ページの最後の丸から3ページの一つ目の丸にかけてでございますが,本事業が目指すべきものとしては,現状において解決方策が十分に探究されていない,あるいは問題は顕在化していないが,来るべく未来社会を見据え,その社会の構想のために,我が国の人文学・社会科学の知がどのように貢献でき,何をなし得るかを考察するプロセスの体系化を試みることを行ってはどうか。また,その上で具体の研究実践を通じ,学術研究の振興,ひいては科学技術イノベーションの創出へとつなげていく取組が求められるとしております。
 このような考え方に立ちまして,3ページ目の二つ目の丸のところでありますが,本事業の目的は,未来の持続可能な社会の姿を想定し,そこで求められる新しい考え方や技術,社会的課題を提示するとともに,人文学・社会科学の新たな学術知を共創することとするのが適当であるといたしまして,これを達成するための具体的取組として,マル1からマル4を記載しているわけでございます。
 マル1といたしまして,人文学・社会科学の研究者がイニシアチブを持ちつつ,未来社会の構想に能動的に参画するためのプラットフォーム,すなわち共創の場を提供する。
 マル2といたしまして,共創の場においては,大きなテーマの下に,自然科学の研究者はもとより,社会の多様なステークホルダーも関与する形で知を共創しながら,未来の社会課題と向き合うための考察のプロセスを体系化する。
 マル3といたしまして,それぞれの研究チームが,新たな知識基盤を構築することや,人文学・社会科学の双方を俯瞰できる人材の育成,世代間の協働等に意識的に取り組むことを通じ,従来の学術評価だけではない新たな評価の在り方についても検討する。
 マル4といたしまして,共創の場で創り込まれた研究体制を基に,具体の研究実践を行うというように整理いたしました。
 次に,具体的に大きなテーマについてでありますけれども,3ページの下の部分から6ページにかけての部分を御覧いただければと思います。
 大きなテーマの設定に関しましては,委員会では,根源的な問いへの探究に当たって期待されるテーマであって,かつ人文学・社会科学に固有のリフレクティブ・キャパシティ,価値や意味について代替的な見方を提示するという能力でありますが,それを生かせるテーマを考えてはどうか。30年から50年先を見越したテーマ設定を行ってはどうか。大きなテーマに対しては様々な角度から共創することが重要であり,背景や社会状況など,これらはあくまでも例示的な取り扱いとするのが望ましいのではないかといった御意見をいただきました。
 これらを踏まえまして,3ページ最後の丸のところでありますが,本事業では,Society5.0やSDGsなど国レベルや国際社会レベルで推進されているテーマ等を参考にしつつ,現状ある諸課題やそれに対する取組を強化しながら,解決方策が十分に探究されていない,あるいは問題が顕在化していない30~50年先の国際社会や我が国社会を見据えた長期的な視座が必要なもので,かつ人文学・社会科学分野が中心になって取り組むことが適当と考えられる大きなテーマを三つほど提示するというふうにいたしました。
 このテーマにつきましては,委員会が設定するのではなく,これ自身を共創を通じて決めていってはどうかといった意見もございましたけれども,共創を始めるに当たりまして何らかの足場は必要だろうということで,同時に,人社系としてはこれらが最重要の課題だと認定しているわけではないという認識も共有した上で,今回三つのテーマを設定させていただいたところでございます。
 このため,それぞれ太字になっているテーマ,1行あるいは数文字でありますのがここでいうテーマであり,太字となっているテーマにぶら下がっている背景だとか社会状況あるいは研究課題のキーワードというのは,大きなテーマに対して様々な角度から多くの研究者あるいは社会の多様なステークホルダーによって研究課題が創出されることを期待する,そのためのあくまでも例示であるという位置付けにしているわけでございます。
 また,当分の間は本テーマの設定に基づいた事業の運営を求めておりますが,事業の進捗あるいは社会的な要請等を踏まえまして,今後必要なテーマを追加していくなどの措置を講ずることが適当だということも示しております。
 具体的な大きなテーマといたしましては,三つ提示しているところでございます。一つ目が,将来の人口動態を見据えた社会・人間の在り方。二つ目が,分断社会の超克。三つ目が,新たな人類社会を形成する価値の創造といたしております。
 人社の観点から見た学問分野のざっくりしたイメージとして申し上げると,(1)は経済学,経営学等を中心とした分野,(2)は政治学,法学,社会学系を中心にしたような分野,(3)は(1)も(2)も包含しつつ,倫理や哲学あるいは歴史学といったものを軸に加えたようなものになろうかと思っております。
 この点,今回の事業では自然科学の研究者の方にも何らかの形で参加を求めるものでありますので,それぞれの課題のキーワードの例におきましては,情報基盤あるいは人工知能・ロボット,情報技術,シチズンサイエンス,地球・宇宙環境あるいは生命科学技術といった言葉もキーワードとして示させていただいております。
 次に,事業体制についてでございますが,6ページを御覧ください。
 まず,実施機関といたしましては,研究資金を配分する独立行政法人又は大学,大学共同利用機関など学術研究を実施する研究機関というふうにここではいたしております。この点は委員会の中でも議論がございまして,研究機関が実施機関になるよりも,利益相反等の観点から,むしろファンディングエージェンシーの方が適当ではないかといった御意見もございました。今後,文部科学省において機関を選定していく際には,このようなことも含めて検討していただくことが必要だと考えております。
 二つ目の組織でございますけれども,事業運営委員会,事業総括者,テーマ代表者という3者を項目立ていたしまして,それぞれの必要性,それから役割について示しております。最初にこれら3者の定義について御説明いたします。
 6ページの下から二つ目の丸のところにありますように,まず事業運営委員会につきましては,本事業の運営に対して指導・助言を行うために,実施機関に,事業総括者及び各テーマに関する有識者で構成される事業運営委員会を設置するといたしております。
 それから7ページに行っていただきまして,(2)事業総括者は,事業運営委員会に所属するとともに,研究体制の構築に係るテーマ代表者への指導・助言及び各テーマ間の調整など,事業の総括的責任を担うといたしております。
 それからテーマ代表者につきましては,8ページ目になりますが,二つ目の丸のところでありますが,テーマ代表者は,共創の場の参加者の意見集約・調整や研究代表者への指導・助言などのほか,テーマごとの研究体制及びテーマ全体として予想される成果について責任を担うといたしております。
 全体構造につきましては,9ページ目にございますスキーム図を御覧ください。この中で,マル1からマル8というのが事業運営の流れを示しておりますけれども,事業運営委員会の役割という視点から少し説明をさせていただきたいと思います。
 まず,実施機関の中に事業運営委員会が設置されることになりますが,事業運営委員会には主たる役割が三つございます。一つ目が,事業総括責任を担う事業総括者と,三つのテーマごとに共創の場の参加者の意見集約や調整等を行うテーマ代表者の任命ということになります。任命の部分がマル2となっております。
 二つ目が,研究者や社会の多様なステークホルダーの共創の場への参加を公募していただくということでございます。これはこの図で言いますとマル3ということになります。
 三つ目が,共創の場で構築された研究体制について,事業総括者からの提案についての指導・助言を行うということになります。
 特にこの全体のスキームの中で,事業総括者及びテーマ代表者が事業全体の成否の鍵を握るものであると考えまして,ちょっと戻りますが,報告書の6ページ目の最後の3行になりますけれども,文部科学省においても,事業の円滑かつ効果的な実施を図るため,それぞれの者に求められる資質や経験等について検討することが必要であるということで,具体的な人選に関わる点も含めまして文部科学省で検討していただきたいということを述べております。
 それから7ページ目の下の注の4になりますけれども,どういう研究提案を受け取るのかということでありますが,既存の競争的資金制度に求められているような詳細な研究計画調書ではなく,提案する研究の趣旨・目的だとか,どういう人が参加することが期待されるのか,あるいはどういう分野の研究者,研究分野と協力することが期待されるのかといったことで,詳細なものというよりは,実施する研究が想定できる程度のものを提案書としては記載を想定しているところであります。
 また,7ページの本文にありますように,人文学・社会科学研究者だけではなくて,自然科学の研究者だとか,研究者以外のステークホルダーからも一定の提案,研究のアイデアのようなものを受け付けることを想定しております。
 最後に,継続的な検討が必要な点についてでございますけれども,8ページ目を御覧ください。ここでは,今後の本委員会での検討事項として,最後の丸におきまして,研究実践というステージに移行するに当たっては,共創により構築された個々の研究体制の内容・性質等を踏まえながら,本事業による研究支援も含め,どのような支援方策が適切かについて,改めて検討することが求められるとしております。
 趣旨といたしましては,この共創のプロセスの中から出てくる研究課題の数だとか内容あるいはスケール感などは,恐らく様々なものが出てくるだろうということが予想されます。この点,全ての研究課題をこの事業で拾うことが可能かという点については柔軟に考える必要があると思いますし,あるいは,ここで出てきた研究課題の一部は,別のいろいろな競争的資金等の枠組みを使ってやることが可能なものもあるかと思います。
 いずれにしても,どういう形でつないでいくのかということについては,引き続き本委員会として検討していくということでございます。
 以上が本委員会として取りまとめました中間まとめの概要となります。
 私といたしましては,今回の事業の試みは,これまでの研究事業にはない,人社系と自然科学系の研究者あるいは社会の多様なステークホルダーの三者が,それぞれの知見を寄せ合いまして研究チームと研究課題を創り上げていくという斬新な試みであり,人文学・社会科学を軸とした新たな学術知を目指すというチャレンジングなものになると考えております。
 来年度からの事業開始に向けまして,予算の確保等,いろいろ課題がございますが,事務局の調整に期待させていただきたいと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 前の期の学術分科会の下に,人文学・社会科学振興の在り方に関するワーキンググループが設置されまして,その下で人文学・社会科学が先導する未来社会の共創に向けてという審議まとめがなされました。その中で今後の方向性として打ち出されました共創型のプロジェクトをどういうふうに実装するかということで,資料の10ページから11ページ,12ページにわたる資料に書かれてあります特別委員会が設置され,そこで審議された結果を城山先生から,今,御報告いただきました。4回にわたり精力的に御審議を行っていただきまして,どうもありがとうございました。
 それでは,この報告についての御意見や,プロジェクトを事業化していくに当たりまして留意すべきことなどの御意見等がありましたら,是非ともお願いいたします。
 どうぞ。

【甲斐委員】  このように人社と自然科学系も協働して大きなテーマに取り組んでいくことを見える化するというのは,非常にいい試みだと思って聞いておりました。
 最初に質問なのですけれども,この事業運営委員会がテーマを公募して応募を募るというのはいいと思うのですけれども,規模感と,その原資というか,お金の元とかはどういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。

【西尾分科会長】  こちらは事務局からお願いいたします。

【前田学術企画室長】  失礼いたします。今御質問いただいた件でございますけれども,まず原資でございますが,現在,来年度に向けての要求をしているところでございまして,後ほど次の議題で事務局から予算の御説明をさせていただきますけれども,そこでこの事業,共創の場を創るという予算を要求しております。ですので,そこを使ってこういった事業スキームを展開していきたいと思っております。
 それからもう一つ,規模感でございますけれども,これまた最終まとめに向けて特別委員会の先生方とも御議論したいと思いますが,テーマ代表者が3名ということでございます。ですので,1人の方でどれくらいの人数を見られるかということも関係してくるかと思いますけれども,規模感としては,1テーマごとに20名から30名ぐらいの方をお持ちいただいて,全体で60名から90名ぐらいの方々にお集まりいただくのかなというイメージでおります。

【甲斐委員】  すいません,規模は,人数じゃなくて,金額を教えていただけますか。

【前田学術企画室長】  金額は,すいません,9,600万円を要求しているところでございます。

【甲斐委員】  全体でですか。

【前田学術企画室長】  はい。

【甲斐委員】  分かりました。
 最初としてはよいかと思うのですけれども,今お聞きしている中には非常に大きなテーマも含まれているなと感じたのです。例えば人類等の活動と環境となると非常に大きな問題で,それは諸外国では省単位で考えているところもありますし,かなり巨額なお金がおりています。もしそういうところまで日本が踏み込んでいってくださるのであれば,将来的にはすごく大規模な資金を用意しないといけないと思うのです。
 私たち,自然科学の研究をしていると,人社の方々の協力は物すごく必要で,特に海外との国際的な共同研究を行う際に参加されると貴重な意見が得られます。外国では一緒に動いているので,そういうことを日本でも実際に動かしてリーディングすることができれば,すごくいいなとずっと思っていました。でも,私が国際共同研究をするときに人社の方に協力を求めても,自分の専門分野と違うと言われたこともあり,今まではこういうテーマが動いていなかったと思うんですね。
 それで,非常にいいと思います。ただ,これは皮切りなのでしょうけど,将来的にそういう大きなものも動かせるようなことを構想していただけるといいなと思いました。

【西尾分科会長】  甲斐先生,本当に貴重なコメントをありがとうございました。私も全く同感でございます。
 先ほど室長から金額が出ましたけれども,これはとにかく体制整備の段階のものであるということで,今後,額的にも大きくしてほしいと思っておりますので,どうかよろしくお願いいたします。
 ほかにございますか。どうぞ。

【武内委員】  武内でございます。私は日本学術会議の副会長をやっておりまして,その関係でこの議論についてコメントさせていただきたいと思います。
 国際的にも人文学・社会科学と自然科学をどのように融合させていくのかというのは非常に大きな課題です。御承知のように,2年前に,従来の社会科学評議会とICSUと呼ばれている国際科学者会議が統合されまして,国際学術会議,International Science Councilという形になって,国際的にもこの二つをどのよfうに融合させていくかというのは非常に大きな課題ですが,むしろ我々日本学術会議としては,当初から人文学・社会科学と自然科学を包括した組織として運営しているということを,今,かなり強調して言っております。
 そのような流れの中で,やはり人文学・社会科学の議論を今まで以上に強化していきたいと考えておりまして,毎年,持続会議という,持続可能な社会に対する科学と技術の役割ということでシンポジウムをやっているのですが,次回については人文学・社会科学を中心に企画をしていただくということで,社会的包摂性,インクルーシブネスというのを大きなテーマにしております。これが自然科学の人たちには扱うことが非常に困難なテーマで,まさに人文学・社会科学の人たちに御活躍いただきたいということで,今,この委員でもあります白波瀬先生が中心になって企画を取りまとめていただいております。そういうことで,国際社会を見ながらこの議論をしていただくと良いのではないかと申し上げたいと思います。
 日本が遅れているというよりも,むしろ逆に,今まで学術会議をはじめとして,一緒になってやってきたという実績をベースにして,この問題を取り扱っていくのが良いのではないでしょうか。

【西尾分科会長】  どうも貴重なコメント,また,情報をありがとうございました。国際性というところのポイントをこのプロジェクトの中でどう考えていただくかということ,その中で,日本が遅れているという立ち位置ではないということを十分認識して進めていただきたいということだと思います。どうも本当にありがとうございました。
 どうぞ。

【勝委員】  ありがとうございました。先ほど分科会長が言われたように,早めに退席するので早めに発言させていただきたいと思うのですけれども,私もこの委員会のメンバーとして議論に参加して,かなり活発な議論がなされたと思っています。
 何回か欠席したのですけれども,議事録を見ると熱い議論が伝わってきますので,是非皆さんも議事録を見ていただければと思うのですが,1点だけ。今,複数の委員から御意見がありましたけれども,そういったものを聞いていて,それから先ほど城山主査の御説明を聞いていて,やはりこのプロジェクトにおいては,プラットフォームを創る,場を創るということが非常に重要なんだろうと。
 成果として考えると,例えば最初のページの注のところにもありますように,今までもこういった試みというのは学術会議等をはじめとしていろいろあったわけですが,それらは著作を作ったというようなことが大きな成果であったわけですけれども,今回は場を創る,先ほど甲斐委員が言われたようにそれぞれ非常に大きなテーマですし,規模感というものについては非常に小さいかもしれないのですが,様々なステークホルダーが参加する場を創っていく。それぞれの研究あるいは公開シンポジウムなど様々な成果をウエブサイトでどんどん発信していく。それによって更に「学術知」を大きくしていくというような形でこのプロジェクトがワークしていくことになれば,これは非常にすばらしいこと,将来的な発展性も見込めることになると思います。先ほど来,御指摘があった国際的な発信というものもそこではかなえられると思われるので,この辺も是非,実施に移す段階では考えていただければと思います。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  何かお答えはございますか。よろしいですか。
 それでは,今の件も是非御考慮いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 どうぞ。

【山本佳世子委員】  山本です。私も今回特別委員会のメンバーとして参加させていただきました。それで,まず感想を一つ,皆様にもお伝えしたい感想です。
 というのは,自然科学と人文学・社会科学の間の視点の違いがこんなにも大きいのかということにそれまで気付きませんで,もちろん私も取材でいろいろなところを回っているつもりでしたが,これは一般社会が思う以上に大きな違いなんだと実感いたしました。それは,こんなにも視点が違うのか,でも,その視点の違いを今まで生かせていないんだという,よい意味での期待感につながると感じました。
 ですので,今回の取組が進む上で,理解し合って成果を出すというのはちょっと山だと思います。難しいとは感じます。ですけれども,是非やり遂げたいなと感じました。
 特に大学改革の方で,人文学・社会科学がどう実社会に関わってくるか,特に人材育成でどんな人を出すのかという視点で,一般社会の期待は大きいと思います。こちらは学術研究が中心ではありますけれども,そういった存在意義,人文学・社会科学に是非やってもらいたいという気持ちは社会で持っていると思いますので,これに応えるという意味でも,是非取組を頑張っていきたいなと思いました。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。貴重な御意見をいただきました。
 どうぞ。

【観山委員】  人文学・社会科学について,こういうことで進めていただきたいという期待感を込めて申したいのですが,3ページのマル3に少しだけ書かれているんですが,学術評価,新たな評価の在り方について検討するとちょっとだけ書いてあるんですが,自然科学から考えると,こういうプロジェクトを進めていって,何がどういうふうに進んだのかということは,ある程度評価の基準をスタンダードに持っていないと,当事者のある種の満足感で終わってしまうのではないかなと思います。広い場で共通の評価の基準をやっぱり設定していただけないかなというのが,すごい期待であります。
 これがないと,日本の学術の中で人文学・社会科学というのは大きなウエートを占めていて,それがどういう,さっきありましたが,国際的な評価とかいう形もありますけども,評価の指針をみずから提示していただいて,その提示の中でどれだけの成果があったのかということをしっかりと社会に示していただくことが重要ではないかなと思っております。
 なかなか難しいことはよく分かるんですけども,やっぱり人文学・社会科学,の先生方に指標を作っていただいて,この中でどれだけの成果ができたということが非常に重要なことではないかと思いまして,非常に期待しておりますのでよろしくお願いいたします。

【西尾分科会長】  城山委員,何かございますか。本当に重要なポイントだと思います。

【城山委員】  御指摘ありがとうございました。この点,委員会の中でも若干は議論できておりますが,まさに詰めなきゃいけないなと考えたところですので,是非考えていきたいと思っています。
 委員会の中で議論していたのは,恐らくこのプログラムを通してやろうとするのは,単なる人文学・社会科学の振興だけではないだろう,つまり,これらの分野でもジャーナルアーティクルはありますが,このプログラムの目的はその査読付きの論文が増えましたとかいうことだけでは恐らくないだろうと。恐らく両面あって,一つは,実際の社会にインパクトを与える理系の研究とセットになって社会課題に取り組むというのが一つの目的として必要ですし,もう一つは,恐らくこのことをやることを通して,インクルメンタルな変化ではない,ある種の人文学・社会科学をベースにした学術の革新みたいなもの,イノベーションみたいなものがあり得て,やっぱりそういうものを目指すプログラムがあってもいいのではないかという意識がありました。
 そういう意味で,これはアカデミックな意味でのイノベーションを求めるんだけども,プラス,論文がどれだけ増えましたというよりは,もうちょっと,ある種のブレークスルーみたいなものを生み出す場として期待するという,二つの,もしかすると若干相反するかもしれない目的があるかなと思っています。
 そのときに,いずれの観点からも,恐らく何を評価基準にするのかということをちゃんと最初に議論しておかないと,おっしゃったように自己満足で終わってしまうという可能性はありますので,それについては引き続き検討していきたいと思っております。

【西尾分科会長】  是非,その点,よろしくお願いいたします。
 どうぞ,栗原先生。

【栗原委員】  私もこのように人文学・社会科学が前に出てくる提案が,非常にクリアな形で出てきたのは大変結構なことだと,大変期待をして拝見しております。
 それで2点ほどありまして,一つは,もし人文学・社会科学の目的が意味や価値を生み出す,議論するということであると,それには非常に多様性があるのではないかと思うのですけれども,そういうようなものと,どちらかと言うと客観性を求めていく自然科学というものをどのようにつないでいくのかということは,随分慎重になるべき点がいろいろあるのではないかと思うので,非常に幅広い研究課題のキーワードが出ておりますけれども,適切なものと比較的難しいものもあるのかなと思いますので,そのあたりについてどういう議論がなされているのかということを少し思いました。
 特に共創といいますが,実際には人文学・社会科学系の先生方の共創ももしかするとそのような意味では大事なのかもしれないなと感じるところと,もし自然科学との共創が目的であれば,やはり課題の選び方は少し考えるべきところがあるのかなというのが感想です。
 あともう1点は,従来から自然科学と人文学・社会科学の接点になっているような科学哲学とか,それから心理学と医療というような分野では,かなりキャッチボールされているような活動もあるのではないかと思うのですが,そういう分野の方々の従来からの課題とか,あるいはこういうところが難しいのだとかいうような視点は,もしかすると取り上げられると比較的スタートがスムーズかとも思うのですが,そういう点に関してはいかがでしょうか。

【西尾分科会長】  どうぞ。

【城山委員】  御意見ありがとうございました。いずれも極めて重要な点かなと思っております。
 まず一つ目の点ですが,途中ちょっと御示唆されましたけども,理系と文系はこんなに違うのかという山本委員からのお話がありましたが,文系のなかも極めて多様なんだろうと思います。そういう意味で,文系の中でもきちんとデータをとって,データに基づいて何が言えるかというところにかなり重点を置いている分野もあれば,リクレクティブ・キャパシティという話に関連した,意味だとか価値だとか,それが代替的なものとしてどういうふうにあり得るかというところに重点を置いている分野もあり,どういう重み付けかというのは多分いろいろなバリエーションがあるんだと思うんですね。
 そういう意味でいうと,一体どういう課題が理文問わず連携してやっていくために適切な課題なのかというのは,確かに慎重に考えないと,特に限定的なプロジェクトをやっていくということなので,いけないかなと思いますので,その点は是非留意していきたいと思っております。
 それから二つ目の点は,確かにおっしゃったように,私自身は直接接点が余りないんですが,心理学と哲学だとか,あの辺りには確かにいろいろな技術の話とも関連して,意思決定の自律性はあるのかみたいな論点があるので,そういうのは一つおもしろい領域かと思います。またこの委員会の中でいうと,若手の理系の先生にも入っていただきました。新福先生とかですね。例えば新福先生の場合,公衆衛生という分野ですが,ああいう分野はまさに現場に入っていく中で人文学・社会科学と理系の間の,まさに接合しているような分野であって,おっしゃるように,そういうのが幾つかあるんだと思うんですね。
 だから,そういうところを一つの取っ掛かりにして,今までやられた分野じゃないところについても,こういうことができるのだというころでワンステップ進めるようなことができれば,すごく意味があるのかなと思っております。

【西尾分科会長】  どうぞ。

【栗原委員】  私は多様性が大事だと思っているので,人文系の方々のある意味の闊達さをいいなとうらやましく思っています。

【城山委員】  そういう意味では,理文もありますが,文系の中の多様性というのも,恐らく参加していただいた方は感じられたんではないかなと思います。

【小林良彰委員】  特別委員会にも出ていましたし,今もお話を伺っていて,やはり文系と理系の違いをますます感じています。
 理系の方から見ると,人文学・社会科学といっても,多分社会科学はほとんど念頭に置いていないのかなという気がします。価値,意味,何となく人文学,特に文学部のことがまず念頭にあって,社会科学はいつの時代も忘れられているような気がします。次に生まれてきたら,社会科学は絶対やめておこうと思うのですけど。
 このプロジェクトは非常に画期的なアイデアだと思うのですが,単なる文理融合の研究をやるためにやっているのでは多分ないと思います。一番重要なのは,そのことを通して,従来の人文学・社会科学がやはりどこか持っていた限界があって,これは日本の人文学・社会科学が持っている限界でもあるけれども,同時にアメリカ型人文学・社会科学が持っている限界をどこかで反映してきた部分があったと思います。
 それを,やはりそのままでは現在のいろいろな諸課題には応えられなくなってきていると。ですから,文理融合の形もかりながら,現代の諸課題を解決に向かうことで,実は本当の目的としては,日本の人文学・社会科学をパラダイムシフトしていく,もっとブレークスルーする,そこに本来的な目的があると私は理解をしています。
 そういう意味で一番重要なのは,冒頭,甲斐委員が言われたスケール感の問題になりまして,1テーマ当たり20人から30人集めてくると。そうすると,一体本当にこれからの人文学・社会科学を背負っていくような若手中堅がどれくらいのエフォート率をこのことにかけてくれるのかです。
 要するに,JSPSの科研費に申し込んでやる方がやりなれていますし,結果は何を求められるかはっきりしていますが,それも考えながらやっていくというと,物すごく時間をとると思います。
 そのことに見合うエフォート率をかけていただける人が本当に100人も集まってくれるのかというスケール感が,あるかないかです。ここが実は一番これが成功するかどうか,つまり,JSPSの科研費に申し込まないでこちらをやってくれるかどうか。多分そこに懸かっていると思っています。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。我々,人文学・社会科学のことは常に念頭に置いております。小林先生からもいろいろと力強い御意見をありがとうございました。よく分かりました。
 永原先生。

【永原委員】  御説明のあった目的,それからテーマは,本当に社会が今まさに求めていることで,是非強力に進めていただきたいと思うのですけれども,挙げられたテーマの3点では極めて本質的であり,かつ短期的に議論して答えを出すものではなく,将来にわたっていつまでも,つまり,学術として常に考え続けなくては,これをターゲットにしなくて何をやるのだというぐらい重要な問題ばかりが3点挙げられているわけです。
 ですが,他方で,2番の目的に書かれているところを見ますと,マルの1,2,3,4とありますけれども,今の日本の中には,大きな目的をやるこの1,2,3,4のことが欠けているというわけです。欠けているからといって,非常に具体的な提案として,プロジェクトという形で,金額もきわめて大きいというわけでもなく,研究期間も限られています。このポンチ絵の本事業のスキームを見ますと,つまるところ,このようなテーマで提案を集め,その中から課題を選択してやっていただくと想像されます。それでは結局科研費と似たような答えが出てくるだけで,この事業で求めている目的の1,2,3,4の本質に関わるような答えに至らないのではないかという懸念を持たざるを得ません。
 本当は,急いで,実際に,例えば分断社会の超克のために具体的なディスカッションをすることよりも,そういうことをこの分野が議論できる,この分野だけじゃないですね,ありとあらゆる分野が本当に考えることができる仕組みというのは何なのか。もしかしたら大学の教育体制かもしれないし研究体制かもしれないし,そういう点をもう少し意図的に求めて,単に科研費的のようにこのテーマで具体的研究計画を手を挙げさせるよりは,目的で求めていることそのものを議論していただいて,それをベースに次のステップで実際の提案,課題を議論するというようなことをしないと,短期的にこの分野にお金を少しまいて,科研費で進学率でちょっとモディファイしたような形のものがなされて終わってしまうのではないかという危惧を持ちます。それでは余りにもったいないというか,いえ,もっと深刻に社会のニーズがあるので,それに応えられるような工夫をされるといいのではないかという感想を持ちました。

【西尾分科会長】  本当に大事な御指摘をありがとうございました。
 どうぞ。

【城山委員】  御指摘ありがとうございます。おっしゃるように,そこは一番の肝だと思っています。
 当初はこれ,新しいプログラムということで,具体的に来年度からプログラムを動かすという提案をしようというのが当初案だったと思うんですが,ここはあえてそこを1回切断して,あくまでもこれは,まさにおっしゃったように,提案を出してもらって採択するのではなくて,むしろ提案を作るプロセスを意識的に少なくとも1年間はやってみようということがこのプロジェクトの趣旨になったんだと思います。
 そういう意味では,これも比較的委員会の中で議論したんですが,例えば7ページあたりに,提案はどういう単位でやるのかという話があって,一つのアイデアはやはり個人単位で提案をすると。ただし,もちろんこれは共同研究なので,私はこういう人と本当は研究してみたかったんだとか,そういうことを言ってもらった上で,むしろそこで議論しながらプロジェクトを作っていくというようなことを想定しています。ですから,完結した提案が出てきて,これらを比較してとろうというのはなるべく避けたいというか,それはあってはいけませんねというのは多分共通理解だと思います。
 恐らく理系の方が文系との提案をするときには,スペシフィックな提案まではいかないと思いますが,そういうのも受け付けたいですし,社会のステークホルダーがこういうことを考えてもらいというのも受け付ける。その上で,まさにこのプロセスの中でプロジェクトを作り上げていくということがこのプログラムの目的だろうと思っています。
 具体的にいうと,事務局と多少議論しているのは,提案が出てきた後にどうやってやるんだという具体的なイメージです。当初,5日間ぐらい合宿をやったらどうだという話があって,でも,6月に5日間,本当にみんな集まってくれるのかというのは,かなり厳しいような気はしますが,どういうやり方をするかはいろいろ考えると思います。多分従来型のプロセスではなくて,むしろここで何かやりたいといって集まってきた人が,相互にこういうことをやったらおもしろそうだよねという,ただでは自発的には出てこないような提案を作り上げるということは是非やりたいと思っています。
 ただ,そのときに,先ほど小林先生が言われたように,それだけのコミットをするだけのインセンティブを与えられるだけのですね,次のステップというのをどれだけちゃんと見せられるかということは,コミットメントを得る上では極めて重要だと思います。それから,ある意味ではこういう提案をどの段階で明らかにしていくかというときに,例えば次年度の概算要求のときに具体的な研究テーマをベースに,規模も含めて要求しようということであると,多分来年の8月には新しいアイデアがなきゃいけないので,そうすると,4月から8月という4カ月の限られた間に本当にそれができるのかとか,そのあたりは実践的には多分相当課題があろうかと思いますが,そのあたりは引き続き,プロセスの設計は留意して進めていきたいと思っております。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 どうぞ。須藤委員の御発言で,大体予定の時間が来ますのでよろしくお願いします。

【須藤分科会長代理】  ありがとうございます。私もこの委員会にメンバーとして参加させていただいたんですけれども,先ほどから議論になっている大きなテーマ,とりあえず三つ,今,設定しているんですが,やっぱりどのテーマも非常に大きくて重要だと私ども認識しています。
 ただ,議論しなきゃいけないテーマじゃないかなと思っていますので,特に個人的には3番目の新たな人類社会を形成する価値の創造というのは,これは非常に興味ありますし,是非やりたいなと思っているテーマであります。
 これを進めるに当たって,委員会の中でも,私,発言したり,気になっていたんですけど,このスキームの中で,やはり主体は人文学・社会科学の方だと思うんですが,逆にどうやって自然科学のメンバーをこのスキームの中に入れていくかというのが重要かなと思っていまして,いっぱい入ってきちゃうと趣旨と違っちゃうような気もしますし,かと言って,このままだと何となく入りづらいと。自然科学のメンバーが果たして本当に募集にかかってくるのかなという懸念もありますし,ましてや私,産業界なので,産業界の研究者とか,場合によっては技術者がいると思うんですけど,何をやるか分からない,多分ほとんど手を挙げられないんじゃないかなという懸念があります。
 なので,最初の段階が大事だと思いますので,後で考えるんじゃなくて,今の段階で自然科学のいろいろな分野のメンバーをどうやってこの中にバランスよく入れていくかということを考える必要があるのではないかなという気がします。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 では最後ということで,JSPSの家先生,どうぞ。

【家委員】  今のディスカッションを聞いてだんだん分からなくなってきたのですが,来年度の概算要求が首尾よく認められれば,この事業がスタートすることになるわけですけれども,先ほどおっしゃった9,600万で9ページのスキームのどこまでをやるつもりでいらっしゃるんでしょうか。
 今のお話を聞くと,それで制度設計をして,本格的にはもっと大きな規模感のものを考えておられるのか,あるいは9,600万でこのスキームをスタートさせるという感じなのか。

【西尾分科会長】  事務局からお願いします。

【前田学術企画室長】  本事業のスキーム図にございますけれども,9,600万と申し上げているのは,研究開始と点々とちょっと薄い文字がありますが,それを除く部分でございますので,実際ここで創り込まれた研究チーム,研究課題で研究実践をするというのはまた別の,つまり,令和3年度の概算要求ということを想定しておりますので,9,600万というのは,この研究チームの研究課題を創るところまでというイメージでございます。

【家委員】  そうですか。先ほどから議論がありましたように,これは普通の科研費あるいは領域型の科研費とどこが違うかということが大事だと思うんですけども,そこのキーポイントは,左下のところにある社会の多様なステークホルダーの参画だと思うんですね。普通の研究者が集まってやるものであればあまり変わりがないわけで,それをどのようにうまく取り込んでいくかが大事になると思います。研究者は個人あるいはグループで入ると思うんですけども,このステークホルダーというのは,組織で入ることを考えておられるのか,その中の個々人が入ることを考えておられるのか。それをテーマごとの代表者に任せておいたら,科研費の大型種目の研究代表者になるような研究者がいつもディスカッションしているような人たちを連れてきてグループを創るということに終わってしまうような気もしないでもありません。
 広く多様性をどうやって担保するかというところの制度設計が非常に大事になるのではないかと思って聞いておりました。

【西尾分科会長】  どうも貴重な御意見をありがとうございました。
 永原先生,須藤委員,それから今の家先生から御指摘いただいている点が,今後,このプロジェクトを具体的にどう実装していくかという点で,非常に重要な御指摘をいただいていると思っております。
 また,それ以前にもいただいたいろいろな意見がございますけども,全て重要な意見だと私は思っておりますので,是非ともそれらの意見をもう一度よく考慮いただきまして,皆様方から大きな期待を寄せていただいております,この事業が円滑に推進されるように事務局でも御尽力いただきたいと思います。
 その中で,今,何回か言葉で出ておりますが,科学研究費補助金との違いをどうするのかとか,そのあたりも明確にしておくことが概算要求上も重要かと思っておりますので,何とぞよろしくお願いいたします。
 いろいろ貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。城山委員をはじめ,特別委員会の委員の皆様におかれましては,本日出ました御意見なども踏まえていただきながら,今後とも事業化に向けて御尽力をいただきますように,何とぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
 それでは,学術研究を取り巻く最近の状況ということで,令和2年度の文部科学省の概算要求の状況と,科学技術・学術政策研究所の調査報告であります科学技術指標2019と科学研究のベンチマーキング2019について御報告をいただきます。
 なお,御質問は,二つの報告をいただきました後で時間を確保いたしておりますので,そのときにお願いいたします。
 まず,令和2年度の概算要求について,原課長より御説明いただきたく,お願いいたします。

【原振興企画課長】  原でございます。資料2-1を御覧いただければと思います。
 前回のこの分科会,開催していただいた以降,概算要求を文部科学省として提出してございます。今,財務省と折衝,交渉中でございます。その状況について,ポイントだけ説明させていただければと思います。
 1ページめくっていただきまして,右下のページ番号1番,文部科学省全体では6兆円ほどの概算要求を出してございますが,その中で科学技術・学術関係,左上に数字が書いてございますけれども,1兆2,000億円ほど要求させていただいてございます。
 その1ページ目の右側は,分野別の研究開発ということで,健康・医療分野から右下の原子力分野まで様々な分野の研究開発,それから左下は,Society5.0を実現するということで,産学連携ですとかAI,それから大型の研究施設ということで要求させていただいてございます。
 時間の関係もありますので,きょうは左上の研究「人材」,「資金」,「環境」といったところで我々が要求している内容に絞って御説明させていただきたいと思います。
 2ページ目を御覧いただければと思います。これは,前回のこの分科会で御報告させていただきましたが,今年の4月に文部科学省が,我々研究振興局,それから人材育成政策を主に担当している科学技術・学術政策局,それから研究開発局,それから高等教育局,4局が一体となって研究力向上改革2019を取りまとめたことを前回御報告させていただきました。
 この中身は,緑色の枠で書いてございますけども,研究人材を育成する様々な制度の改革をするということ,それから真ん中にあります資金の改革,下にあります研究環境の改革,それと大学改革とを一体的に行うことによって,我が国の研究力をV字回復させていこうということで取り組んでいくということを御報告させていただきました。
 これに基づきまして,3ページ目以降に,今,概算要求も含めて我々がどう取り組んでいるのかということを,人材と資金と環境,それぞれ1ページにまとめさせていただいてございます。
 3ページ目が人材の部分でございます。上の方,左から順に見ていただきますと,修士課程の学生から始まって,シニア研究者まで簡単に取り組みの方向性を書いております。その下に黄色のマーカーで塗ってある部分が予算要求事項でございますけれども,例えば特別研究員(DC)の拡充ですとか卓越研究員事業の強化といったものに取り組むということを考えております。それと並行して,予算要求事項では必ずしもございませんけども,大学改革,例えば大学院における三つの方針の義務化ですとかファイナンシャルプランの提示の努力義務化といったようなこと,それから競争的研究費の制度の改革ということで,専従義務を緩和するなどの取組を進めているということを考えているところでございます。
 それ以外にも,チーム型研究体制の構築とか研究者のキャリアパスの多様化あるいは流動化を促進するということで,その下に書いてあるような予算事業をはじめとして,一番右下に大学改革とありますけども,海外からの応募の負担軽減といったようなことも併せて取り組んでいくということを考えているところでございます。
 それから,その次の4ページ目でございますけども,資金面での取組として,これは富士山型の資金制度を確立していくということを念頭に実施してございますが。表の左側にありますのは,これはどちらかと言うとファンディングでございますが,科研費をはじめとして,若手あるいは新興・融合領域といったようなことを念頭に置きながら予算要求をしているということでございます。
 それから右側は,拠点を形成するということで,世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)をはじめとして,研究拠点の育成のための概算要求も実施してございます。
 それと併せて,大学改革というのが下にございますけども,経営基盤の強化等をはじめとした大学改革,それからその下の競争的研究費の一体的見直しといったようなものに併せて取り組んでいくということを予定しているところでございます。
 それから5ページ目でございますけれども,環境につきましては,国内有数のスパコンですとかSINETといったような研究設備の戦略的なあるいは計画的な更新をしていくということ,それから様々な施設を共用していただくための取組を中心とした概算要求をしているという状況でございます。
 今申し上げた中でも,研究資金と人材のところだけ,それぞれの概算要求が今どのようなものを要求しているかといったことを簡単に御紹介させていただければと思いまして,次のページ以降を付けさせていただいてございます。
 6ページ目が,研究資金で概算要求としてどのようなメニューを要求しているかといったようなものを,全体をまとめたものになってございます。
 そのうちの主なものを次ページ以降に付けてございます。7ページ目を御覧いただきますと,科研費ということで,これは右上のグラフを見ていただきますと,2018年度,それから19年度と,予算額としては伸ばすことができている状況でございます。要求としては今年も大きく増要求ということで出させていただいてございますけれども,左下にございますように,今年の要求の骨子といたしましては,学術変革領域研究を新しく創設するということ,それから若手研究者への重点支援を念頭に置きながら,要求させていただいてございます。
 8ページ目でございますけれども,こちらはJSTの戦略的創造研究推進事業ということで,真ん中にございますCREST,さきがけ,それから右側のERATOとございますが,2019年度からはそれに付け加えてACT-Xというプログラムを新設しました。
 左下に令和2年度概算要求の主なポイントとありますけれども,これは科研費等と同じように新興領域の開拓をしていくということ,それから若手研究者への支援の強化ということを念頭に置きながら,基本的には領域の数を増やすといったようなことで要求させていただいてございます。
 それから9ページ目でございます。これは制度としては全くの新規ということで要求させていただいてございますが,創発的研究支援事業といったものを新たに要求させていただいてございます。
 これは,概略のところに書いてございますけれども,大学等における挑戦的・融合的な研究構想を公募して,それを実施していただく研究者の裁量を最大限確保するという制度にしたいと考えてございます。
 予算あるいは研究の期間でございますけれども,1人当たり数百万から数千万程度を,ほかの制度とは違って最長10年間支援すると。この10年の中で独創的な研究を進めていただくということを考えているところでございます。
 この研究費を出すのと併せて,それぞれの研究者が所属する研究機関で,その研究者が創発的な研究を進めるにふさわしい研究環境を整備していただくということで,研究費とそのための環境の整備を併せて支援するといったようなことで考えているところでございます。
 これは文部科学省としては30億円で要求させていただいてございますが,内閣府も同種の制度を20億円で要求してございまして,両府省合わせて50億円規模の事業ということで,今,財務省と交渉しているところでございます。
 それから10ページ目でございます。これは今,城山先生から御報告いただきました報告書に基づいて様々議論いただきましたけれども,これが9,600万円で要求している人文学・社会科学を軸とした学術知統合プロジェクトということで,今御報告いただいた報告書に基づいて,お話しいただいたスキームの下で支援していくということで,当初3年間を予定しているところでございます。
 それから11ページでございます。これからが,研究拠点を作るということでございますが,WPI,世界トップレベルの国際頭脳循環の拠点を作ろうということで,左下に地図があって,現在支援中の拠点というものがございます。そのうち,一番右上の九州大学の拠点が今年度で卒業ということですので,来年度の予算としては若干減っているところでございますけれども,引き続き既存の支援を実施していくということでございます。ちなみに来年度は新規の拠点を公募する予定はないということでございます。
 それから12ページでございます。学術フロンティアということで,これまでマスタープランあるいはロードマップに基づいて13のプロジェクトを支援したところでございますけれども,右側に黄色の背景でございますように,来年度はハイパーカミオカンデに新たに着手するということで,この部分,18億円を含めた概算要求をさせていただいてございます。
 それから13ページ目以降が,今度は人材についての概算要求の状況ということで,13ページは全体を総括するような表になってございます。下の方から見ていただきますと,高校,中学といった,初等中等教育の人材育成,それから上に行くにしたがって,大学,大学院,ポスト研究者に対する支援ということでまとめさせていただいてございます。
 幾つか代表的な事業をその次のページ以降で紹介させていただきますが,まず14ページの卓越研究員事業ということで,若手研究者と産学の研究機関のマッチングを通じて,自立した研究環境を提供するということを目標にやっている事業でございます。左の方の事業スキームで人数のところを見ていただきますと,来年度は,今,要求中でございますけれども,新規で100名程度採用するといったところで引き続きこの事業を進めていくということでございます。
 それから,済みません,時間の関係もありますので若干早めに御説明させていただきますが,15ページ目,世界で活躍できる研究者戦略育成事業ということでございます。これは,世界トップクラスの研究者の育成に向けたプログラムを開発して,組織的な研究者育成システムを構築するような大学あるいは研究機関を支援するということで実施しているものでございます。
 真ん中,左側の事業スキームのところに書いてございますけれども,支援機関として,新規で4機関程度,新たに来年度は採択するということを予定してございます。
 それからその次の16ページのデータ関連人材育成プログラムということでございます。これはデータサイエンティストを産学連携で育成するといったものでございますが,左下に支援拠点数というものがございますけれども,新規で4拠点,新たに採択したいということで予算要求してございます。
 それから17ページ,特別研究員事業でございます。これは既存のDC,PD,SPD,RPDとありますけれども,支援人数を増やすということ,それから消費増税がありましたので,それに見合った研究奨励金の拡充をそれぞれの種目ごとにやるといったことを予定しているところでございます。
 それから18ページ目,EDGE-NEXTと言っておりますが,アントレプレナー育成事業ということで,これは引き続き採択コンソーシアムへの支援を実施していくことを予定しているところでございます。
 時間の関係もありまして駆け足で雑駁でございましたけれども,引き続き予算要求,予算の確保に向けて,我々として今全力で取り組んでおりますので,状況を報告させていただきました。以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,科学技術・学術政策研究所より御説明をお願いいたします。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  ありがとうございます。科学技術・学術政策研究所,私どもNISTEPと呼んでおりますけど,そこの所長を7月からしております磯谷です。よろしくお願いします。
 資料2-2を御覧いただきたいと思いますが,私どもNISTEPでは,様々な科学技術・学術に関連する調査研究,データの提供・分析,そして将来予測などもしておりますが,きょう取り上げますのは,科学技術指標2019とベンチマーキング2019。これは,8月9日に公表した報告書のポイントを御説明します。既に総政特とか人材政策委員会あるいはライフサイエンス委員会で御説明しておりますので,二度,三度もお聞きになった方がいらっしゃるかもしれませんので,恐縮でございます。
 2ページをお開きください。「はじめに」とございまして,科学技術指標でございますが,これは日本と主要国の科学技術の活動を体系的に把握するための基礎資料ということで,最近では毎年公表しておりまして,研究開発費ですとか人材等のカテゴリー,180の指標がございます。
 それからベンチマークにつきましては,特に論文についてピックアップしまして,おおむね2年に一度公表しております。よく出ますTOP10%論文シェアとか国際共著論文数等について出しているものでございます。
 3ページ以降,具体的には4ページからですけれども,担当の学術基盤調査研究室長の伊神室長から説明いたします。

【伊神科学技術・学術基盤調査研究室長】  では,4ページを御覧ください。ここでポイントを3点書いてございますが,きょうは主要な指標における動向と,特に知識集約型社会への移行ということで,博士人材の育成・活用,3番目は動きの見られる指標ということで御説明していきたいと思います。
 まず主要な指標ですが,ここは産業全体も含んだ形で示しておりますが,日本の研究開発費は世界で第3位,研究者数も第3位,論文数に関しましては,論文数は4位,注目度が高いものは9位ということです。ここに関しては,前年度から順位の変化はございません。ただ,他国と比べて伸びが小さいという特徴が見えてございます。
 続いて,8ページを御覧ください。これは博士人材ということでデータを示しております。スライド8は,主要国の人口100万人当たりの博士号取得者数の推移を示しております。左の赤い線が日本ですが,左の方の2000年初めを見ていただきますと,実は日米仏韓で人口当たりの博士号取得者の数は余り変わりませんでした。ただ,今現在になりますと,米国や韓国には倍ぐらい差をつけられているという状況でございます。ドイツ,英国に関してはもともと高いレベルで,さらに数が増えているというような状況が見えてございます。
 スライドの9を御覧ください。これは博士人材の産業での活用ということで指標を示したものです。データの関係で日米比較を示しておりますが,左の図,日本を注目していただきますと,横軸が従業員に占める研究者の割合,縦軸が研究者に占める博士号保持者の割合です。これを見ていただきますと,日本ですと,医薬品製造業で博士の割合が非常に高いということです。他方,博士の割合が5%未満の産業が非常に多くなっています。
 右,アメリカを見ていただきますと,主要な産業では博士の割合が5%以上のところが多いということで,このあたりに日米の違いが見えているということになります。
 続いて,スライド10と11では動きのある指標を御紹介しますが,時間の都合上,スライド11を御覧ください。これは指標の中で一番動きがあるところです。これは日本の大学等に関して,民間企業との共同研究の数や受け入れ額を示しておりますが,一番左が共同研究の数,金額ですが,2015年度から毎年10%以上の増加ということで,ここに関しては非常に動きがある指標だと思います。
 続いて,スライド12以降に関しましては,科学研究のベンチマークということで,論文分析の詳細を御説明しますが,ここの分析は自然科学系に限って分析をしておりますので,その点は御承知おきください。
 スライド13にポイント四つを示しております。きょう御紹介するのは,日本のポジションのお話,研究の国際化のお話,あと,もう少し大きく見て,地理区分で論文を分析しましたので,その結果のお話,あと,日本に特に限りまして,部門別・大学グループ別の論文産出構造ということで,日本の細かい構造について御紹介したいと思います。
 スライド14を御覧ください。スライド14は,主要国の,左から論文数,真ん中が被引用数がTop10%の論文数,右はTop1%における主要国の過去30年にわたる順位です。赤い線が日本ですが,日本は論文数では4位,Top10%では9位,Top1%では9位ということですが,近年は順位は横ばいな状況であるということが分かります。
 15ページですが,横ばいということで,論文数も微減か横ばいということなんですが,分野によってかなり状況が違うというのが,毎回御紹介しておりますが,見えてございます。左から論文数Top10%,Top1%ですが,化学,材料,物理に関しましては,分数カウントで見ると,いずれの論文に関しても10年前と比べて減少しています。一方,環境・地球科学,臨床医学に関しては増えているということで,分野によってかなり状況が違うということが,こういう分析からは見えてございます。
 このあたりをもう少し詳細にお示ししたのがスライド16です。スライド16ですが,分野別で,左が論文,右がTop10%で,どの部門やセクターが主要な論文,知識生産を担っている部分になっているかというところと,あと,過去10年からの変化を示しております。
 論文数を見ますと,いずれの分野もやはり国立大学が一番になっておりまして,第二は私立大学です。全体では私立大学ですが,分野によっては国立研究開発法人が上位に来ています。一方,右のTop10%論文になりますと,1位は国立大学で,2位に国研が分野によっては上がってくるものが多いということです。
 矢印を見ていただきますと,これは過去10年間の比較をお示ししているのですが,実は化学,材料,物理というのは上位3のいずれの部門も論文数が落ちています。一方,環境,臨床に関しては増えているということで,このあたりはやはり分野としてこういう動きが生じているのではないかということを,我々,分析を見て感じてございます。
 スライド17は,国際化ということでデータを一つ御紹介しますが,日本の最新の国際共著率は全分野で32.9%です。10年前からの比較を見ますと,9.4ポイント増加ということで,確実に国際化は進んでいるということです。この国際共著率は,下の中韓に比べて大きいですが,ヨーロッパに比べては小さいということです。
 スライド18は飛んでいただきまして,スライド19を御覧ください。論文数,分数カウントは微減の中,国際共著は進んでいるという状況で,結果としてどのような論文産出構造になっているかということを見るために,スライド19では,日本とドイツのTop10%論文に関して,共著形態別の時系列変化をお示ししております。
 左の日本を見てもらいますと,青い部分が国内論文です。オレンジより上は国際共著論文です。これを見ますと,国際共著論文,日本は確実に増えているのですが,国内論文が減っています。これが全体の減の要因になっています。一方,ドイツを見ますと,国内論文は維持したまま,国際論文を増やしている。そして,全体的には増えているということで,こういうような構造の違いがあるということです。
 なぜこの日独の違いがあるかというところで,少し大きなフレームワークで見てみますと,スライド20を御覧ください。スライド20は,個別の国ではなくて,国際連合による地理区分で,地域別に論文数を集計したものです。これを見ますと,実は今,アジア地域は,地域でみると一番の地域で,これにヨーロッパ,アメリカが続くような構造になっております。
 地域内の論文数を見てみると,5,000件以上の地域は,アジアでは13ある一方,ヨーロッパは19です。なので,ヨーロッパは突出した国はないのですけども,そこそこ大きい国が多いということです。
 なぜこういうことになっているかというのが,ここからは一部類推も入りますが,スライド21を御覧ください。スライド21は,論文数が最新値で上位100の国・地域に関しまして,共著関係を,右が最新年,左が10年前でお示ししております。左の絵の緑で描いてある部分がヨーロッパですが,この緑の線を見ていただきますと,10年前と今と比べると,ヨーロッパ内の共著関係が増えているということです。
 この間,何が起きたかといいますと,フレームワークプログラムで欧州内の連携をやっていますので,要するに国際連携というときに,国の中だけでなくて,一段上のフレームワークで国際連携をしているのが分かってくると思います。
 今は国際連携でしたが,最後,日本の論文産出構造について,詳しく22ページ,23ページでお示しします。スライド22ページの左は,日本の論文を部門別に分けております。なおかつ大学に関しては自然化学系の論文数シェアで1,2,3,4に,機械的に大学グループを分類してございます。
 これを見ますと,日本の論文の7割は大学部門が作っております。左の図を,長期的に見てみますと,公的部門が増える一方,企業部門が減っているという構造です。
 大学部門の中を論文数シェアで見ると,第1から4グループが一定数の,同じぐらいの割合を持っていることが分かります。一方,右のTop10%を見ていただきますと,1グループの割合が高いということで,全体としては第1から4グループで180ぐらいの大学群が作っていて,Top10%は1グループが多いという構造になっています。
 ただ,これを見ていただきますと,1グループは最近やや論文数が減っているということで,ここあたりは我々も注視していかないとだめだと思っている点でございます。
 ですので,こういうような構造を踏まえて日本全体の論文を見ていく必要があるかなと考えてございます。
 ここで私のご説明は終わりです。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  最後にちょっとまとめますが,今後ですけど,今御覧いただいたように,科学技術指標2019の中にはいわゆる研究費ですとか研究者数とか研究時間といったインプットの情報,それから一部論文のアウトプットみたいなものがあります。それからベンチマークの方は論文を中心としたアウトプットです。
 それで,それぞれインプット,アウトプットの分野別とか大学種別みたいな,もう少し詳細にみる必要がありますし,それからやはり,なぜ日本の研究力がこれだけ停滞して,どこにどういう問題があるのかというのをもう少し浮き彫りにしないといけないと思っていて,インプット・アウトプット分析をトータルで進めております。
 これはあくまでマクロの分析なんです。それで,ミクロでも,研究室単位あたりで,どういう資金の状況になっているかというのも調べる必要があって,これはやや中長期的に調べる予定にしています。
 それからさらに付け加えますと,これ以外に定点調査ということで,御案内のように,先生方の意識調査もしておりますので,そういったことも含めて,トータルで研究力向上に資する情報について分析をしていきたいと思っておりますので,御指導をよろしくお願いいたします。

【西尾分科会長】  原課長には,概算要求の内容を御説明いただきまして,どうもありがとうございました。また,磯谷所長,それから伊神室長には,最近の我々の研究に関する実績等についての非常に重要な情報を御提供いただきまして,心より御礼申し上げます。
 それでは,今の2点の報告につきまして,御質問とか何か気付かれた点等ございましたら。
 小安委員,どうぞ。

【小安委員】  予算のことで原さんに伺いたいのですが,創発的研究支援事業,これは私,議論をよく知らないので教えていただきたいのですが,これは科研費あるいは戦略的創造研究推進事業とどこが違うのか。
 挑戦的・融合的な研究というキーワードは,我々,学術変革研究種目群でも使ってきた言葉で,これを読むと,何が違うのか良く分かりません。研究環境の整備と一体的に支援と書いてありますが,この中身の説明が何もなかったので,一体これがほかの研究費と何が違うのかというのが私には理解できませんでした。もうちょっと説明いただければありがたいのですが。

【西尾分科会長】  よろしくお願いいたします。

【原振興企画課長】  ありがとうございます。財務省にもその点,よく詰められてございますので,御説明させていただければと思います。
 挑戦的・融合的というところは共通でございます。それで,小安先生に言っていただいたように,研究費を出すだけじゃなくて,研究者が所属する研究機関に創発的研究をしていただくにふさわしい研究環境を整えていただこうということで,例えばその研究環境の中には,それは所属する研究機関ごとにいろいろなバリエーションを許容し得るような制度にしたいと考えてございますけれども,例えば様々な大学の研究以外の業務を免除して,研究に専念していただくとか,あるいは若い研究者の方がこれに採択された場合には,独立して一つ研究室を構えられるような仕組みにしていただくとか,あるいは実験装置がないということであれば,余り巨大なものを当初から整備することは考えてございませんけれども,研究設備あるいは研究機器みたいなものも措置できるようなことを考えているということで,今,鋭意検討させていただいてございます。
 それからもう一つ,研究期間の長さが最長10年間ということで,その10年の間に余り細かい評価はしないで,研究者の方が熱意を持って研究に取り組んでいただいているか,それからそれを支える研究機関の側がきちんとそれをサポートしていただいているかというようなことを10年の間に何回か確認するということで,できるだけ評価,評価ということを言わずに,研究に打ち込んでいただくというような制度にしたいということで,今,様々な方面と調整してございます。

【小安委員】  恐らく一番欲しい環境は,研究に集中できるためにほかの仕事を全部辞めさせてくれということではないでしょうか。多分一番大きな希望として出てくると思います。それに関しては具体的に役所の側から大学に対してこうやったらそれが実現できるという勝算はあるのですか。

【原振興企画課長】  そういうことを約束している大学に支援させていただく,鶏と卵かもしれませんけれども,我々としても,そういう環境を整えていただくように,大学の執行部の方々と事業が実現する暁には,相談させていただきたいと思っております。

【小安委員】  研究者には専念義務を課すのですか。そこまで考えていますか。

【原振興企画課長】  そこまでは考えていないです。これだけに専念してくれということではなくて,これも詳細な設計はこれからになると思いますけれども,ほかの研究費を取りながら,小規模なものであれば,この研究にも同時に参加していただくということも含めて,考えてはおります。
 ただ,詳細についてはこれからでございますので,あくまでも今の段階の意気込みということで御理解いただければと思います。

【西尾分科会長】  小安先生,よろしいですか。

【小安委員】  いや,意気込みと言われたら……。

【西尾分科会長】  松岡委員,どうぞ。

【松岡委員】  松岡です。ありがとうございます。私も創発的研究支援事業について伺いたかったので,関連して質問させていただきます。
 今お答えになったような,研究者がほかの仕事は無くしてこれに専念するとか,そういう環境を整えることも大変大事なんですけれども,ここにある破壊的イノベーションの創出という非常に刺激的な言葉に表されるものに出す研究費という特徴を出すためには,例えばテーマ設定とか,選考のプロセスであるとか,あと評価軸というのがありますけれども,どうやって評価していくか。やっぱりそういうところで何か特色を出さないと,破壊的イノベーションというものに見合うような結果がついてこない気がするんですけれども,そういうことでアイデアとか何かありますでしょうか。

【西尾分科会長】  原課長,お願いいたします。

【原振興企画課長】  あくまでも創発的な研究,それぞれの研究者の方の比較的自由なアイデアを基に研究をしていただきながら,それぞれの研究者の間でのコミュニケーションで,さらに新たなアイデアを生み出していただくというようなことをコンセプトとしては考えてございます。
 行く行くは破壊的イノベーションにつながるような研究成果が出てほしいというのはございますけれども,研究機関のゴールとしてこのような解を出してくださいということではない形で運営していくということでございまして,それをどう評価するかというのは実は大きな問題でございます。それは今議論しながら詰めているという段階でございます。

【松岡委員】  テクニカルなことでもう1点だけ。これを申請するのは,機関なのか研究者なのか,これはどちらなのでしょうか。

【原振興企画課長】  今のところ,研究者の方に手を挙げていただくということを考えております。
 ただ,先ほど申し上げましたように,研究機関に協力していただかないと研究環境の改善は進みませんので,審査の過程の中で,研究機関に御相談させていただくようなプロセスを盛り込むのが一番いいんじゃないかと考えてございます。

【松岡委員】  ありがとうございました。

【西尾分科会長】  よろしいですか。
 どうぞ,観山先生,それから栗原先生。

【観山委員】  NISTEPの方への質問というか,指摘でよろしいでしょうか。資料2-2,いつも非常に感心して,よくまとめられるなという感想を持っております。特に前回も申したことなんですけども,8ページ,9ページ,それから14ページを見て思うことは,まず8ページ,人口に対する博士号取得者,要するに博士課程の研究者が少なくなっているということですね。日本とフランスは横ばい状態になっていて,それを14ページで見ると,基本的に日本が下がってきているということもありますが,もう一つ下がっているところで顕著なのがフランスなわけですよね。
 だから,いや,それだけではないと思いますけれども,やっぱり博士課程の研究者というのは,相当の研究のボリュームだとか,そういう中で大きなウエートを占めているということはここで顕著に出ていると思うんですよね。
 その際に,結局,前回申しましたけれども,9ページにあるように,今,日本の大学で,一部のところは違いますけれども,大学院を出て,博士課程を出て,社会の間口がやっぱり非常に少ないということが,将来展望を望めないということで,問題ではないでしょうか。例えばマスターとか大学院に行かない学生が増えているという日本の状況です。これはアメリカしかありませんけども,ほかの国はどうなっているのか分かりませんが,やっぱり圧倒的に企業の中で博士を持っている方が少ないという状況は,一つの日本の現状で,やっぱりこれを上げていただきたいと思います。前回も言いましたけども,日本の大学の国際的競争力も落ちていますが,企業の国際的競争力も落ちているという現状があります。これはどういうところに問題があるかというと,やっぱりだんだん知的集約型の企業が世界で伸びていっている現状です。以前から博士課程に行っていると,企業の中で使い物にならないんじゃないかとの心配があったと聞きます。ある分野に非常に視野が狭くなっているという心配もあるかもしれませんけども,ただ,企業の中で,クリエイティブな訓練をされている研究者を人材として確保していただいて,そして活躍していただくことが重要なんじゃないかなと思います。
 最近,随分努力が進んでいますけれども,普通に聞くと,企業の中でマスターコースから入った人と,ドクターコースで入った人の給料の差が3階級しかないと。要するにドクターの価値を全然認めていないということです。それから例えばたくさんの奨学金をもらっているわけで,それをドクターで返さなきゃいけない。そういう問題を企業の中で解決して,例えば奨学金は全部企業から払うというような形で将来展望を,博士課程の大学院生に与えてはどうでしょう。大学院生にいろいろなケアをするということも重要ですが,将来を創ってあげないと,博士課程の研究者というか学生は増えませんので,こういう指標から,やっぱり社会全体として考えなきゃいけない問題ではないかなと,前回も申したんですけども,もう1回お話しさせていただきました。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 そうしたら,きょう今まで御発言なさっていない人を先に。

【井関委員】  すいません,井関です。観山委員のことに引き続いてなんですけれども,もちろんキャリアパスが見えないから大学院に入らないということもありますし,大学院における研究費の確保が重要です。国立大学ですと,運営費交付金が減ってきた中で,例えば複数の大学院生がいたときに,もちろん科研費ですとかほかのところから一生懸命研究費を取ってくる努力をするわけですけれども,でも,それにしても,そういう競争的資金を取り続けないと大学院生に研究させられないというところは,問題なのではないかと。
 いわゆる博士課程の大学院生を教育するのであれば,最低限の研究費を確保しないと,それは何を意味するかと言いますと,研究の多様性もなくなります。すなわち何が言いたいかといいますと,いわゆる非常にメジャーではない,はやりでない研究をしているかもしれませんけど,それは基礎的に非常に重要である場合があります。でも,そこには競争的資金は行きにくいといったときに,大学院生でも,あそこに行っても研究費はそんなにないよということになれば,当然ですけれどもマイノリティのところに大学院生は行かなくなる。そうすると研究の多様性が失われるわけです。
 いざ,そのマイノリティの領域が大きくなってくる,何かしらファッションみたいなものが変わってきて大きくなってきたときに,さあといったときに,研究者がいないというようなことになりかねないわけです。
 もちろん研究費のみならず,大学院生の生活費,奨学金とかそういったことも併せて考えていかないと,今,観山委員のおっしゃったように,なかなかこの先,難しいのかなという気がしております。
 以上です。

【西尾分科会長】  ありがとうございました。喜連川先生,どうぞ。

【喜連川委員】  ありがとうございます。NISTEPの資料に関しまして,16ページで自分のところで分かるのは計算機・数学というところなんですけれども,計算機・数学は,論文数全体はあんまり芳しくないように見えますが,Top10%の公立大学というのが213%と,非常にアノーマリーなビヘイビアを示していると思うんですね。
 それで,多分これも先ほどの観山先生と同じで私も3回以上申し上げているような気がするんですけれども,やっぱり分かるのは自分の領域が一番よく分かるものですから,自分の領域をもうちょっとドリルダウンできるような,そういうユーザーインターフェースのシステムを何か出してほしいと,何回か申し上げております。そうすることによって,自分の領域をどういうふうに誘導すればいいかというインサイトを得られるんじゃないかなという気がします。これは情報研としてもそうですし,西尾先生もそうですけど,情報処理学会としても,そういう立場で感じる次第であります。
 アナリシスできますと,一番よく分かりますのは,実はコンピュータ業界は博士号取得者の割合が必ずしも多くないというのが出ていて,これはなかなかシュールだなと思っております。グーグルもフェイスブックもそんなに大したドクター学生は必要ないということを言っており,これは逆で,ある意味でいうと,ユーザー企業サイドに入っているんですよね。この現象は以前から言われておりまして,この統計はしたがって非常に正しく出ているなということが,背景知識があると,理解できるんですけれども,そういうものを理解できるシステムがあるといいなという気がします。
 最後に,ITは,例えばマテリアルゲノムですと,材料系の先生と一緒に論文を書く。我々ですと,医師とランセットの論文を一緒に書くのですが,相手サイドに入るわけですね。そうしますと,先ほど前の研究の概算要求のところで,融合領域のプロモーションという話があったわけですが,それを一体どうやってこういう中で補足していくのかとかが今後非常に重要になると考えます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 まず観山先生にお伺いしたいのは,NISTEPから博士の問題について,何か情報発信というか,NISTEPからも何か訴えてほしいという意味の御発言と考えてよろしいですか。

【観山委員】  特に,例えば8ページ,それから論文のボリューム,Top10%の減少,いろいろな今の日本の研究論文の減少とか,それから本当に質が下がっているのかどうか分かりませんけども,私が言っているのは一つの側面だと思うんですが,その原因をもうちょっと分析していただいて,それもやっぱりエビデンスベースで示していただいて,何をどうしなきゃいけないのかということを鋭く指摘していただくということが非常に大きな役目じゃないかと思います。

【西尾分科会長】  磯谷所長,お願いできますか。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  いいですか,済みません,先生方,まだ御発言されたい方がいらっしゃると思いますが,喜連川先生と観山先生のおっしゃったとおりで,私,ちょっと申し上げましたけれども,従来のNISTEP,ここまでで大体終わっていたんです。ですから,やっぱりアウトプットの中で,さっき,喜連川先生おっしゃったように,分野別でそういうものはどうなのかとか,あとインプットとアウトプットがどういう連関しているのかということを今進めております。
 ですから,確実にそれはやっていきたいと思っておりますし,観山先生のおっしゃったことについても,我々もできるだけ分かりやすい形で示していきたいと思いますし,また,むしろデータをきちんと見せることによって,日本学術会議とか経団連,経済同友会にもいろいろ御理解いただいて,社会的なムーブメントにしていくためのお手伝いはしていきたいと思っております。

【西尾分科会長】  前にNISTEPのある種のアドバイザリーボード的な役目を務めさせていただいたときに,NISTEPが単なるデータの調査機関からもう一歩踏み出して,観山先生のおっしゃったようなことをどんどん積極的に社会に対して提言していただく役目も何とかお願いできないでしょうかと,申し上げました。そういう観点から,学術研究のこの現況,博士課程の問題に対して,より強く社会に対して発言していただけたら,いろいろな意味で好転していくのではないかと思いますので,是非よろしくお願いします。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  はい,先生の御発言を承っておりまして,3局,高等局とも相談しながら対応します。

【西尾分科会長】  また,喜連川先生も3度おっしゃったことはいかがですか。

【伊神科学技術・学術基盤調査研究室長】  データ公表に関しましては,我々もできる範囲では進めております。主要なデータを出していますし,あと論文も,論文のIDと名寄せ結果の対応表までは出していますが,そこから一歩先は,契約上の問題がいろいろあったりするので,ただ,なるべく進めていきたいと思います。

【西尾分科会長】  井関委員のおっしゃったのは根源的な大きな問題でして,これはむしろ文部科学省で,先ほどおっしゃった問題をどう捉えて概算要求に反映するかということを是非とも考えていただければと思います。
 小林傳司先生,発言しておられないのですが,どうぞ。

【小林傳司委員】  ありがとうございます。2点申し上げたいんですけれども,特にNISTEPの調査分析についてなんですが,博士の問題は先ほどから各委員おっしゃっているとおり,危機的な状態が21世紀になってから続いているわけです。これ,大学で見ていますと,優秀な修士を,大学と産業界が取り合うわけです。そして大学が敗北するという構造がずっと続いているわけです。
 これで,キャリアパスと経済支援というのが解決策ではないかという議論がされているのですが,それはそのとおりだと思うんですが,もう一つ,日本の修士を成功と見るか,それとも,ある種,促成栽培の博士をやってきたんだという意味で,グローバルな基準とずれているんだという見方と,2種類あり得るのかなという気がします。
 多分日本の修士教育というのは非常に研究力を持った修士学生を生み出してきたわけですが,海外の場合には修士はコースワークが中心で研究はそれほどしないなんて議論がよくありますね。ということは,日本の修士は非常に博士もどきになっているというのでネガティブに評価するのか,それともこれこそが日本の大学院教育の成功の秘密だったのだと考えるのかというのが論点になるだろうと思います。
 今はどちらかと言うと,グローバルな方向に博士を合わせましょうということで,リーディングとか卓越大学院のようなプログラムを展開はしていますが,依然として,具体の現場で見ると,日本の大学は,修士は過去のモデルで動いているわけです。そうすると,卓越とかリーディングは上乗せのエクストラプログラムにどうしてもなってしまう。
 この矛盾というか,ここをどう覚悟するかという議論をしないと,お金だけの支援とかキャリアパスでも,企業から見れば今の修士卒採用で別にいいんだという議論になってしまう可能性があるんじゃないかと。ここを1回考えた方がいいんじゃないか。これが一つです。
 もう一つは,様々な指標,これは科学研究のアクティビティの成果,指標ですね,これは非常によく分かるんですが,研究力という言葉は,未定義語で動いているような気がするんですね。そして,指標だけがどんどんと自己運動していって,指標すなわち研究力みたいな議論になっているんですが,本当にこれだけで研究力を測れるのかというところは余り議論されていないような気がする。
 例えば,イノベーションを生むというのは,論文が出ることとイコールではなくて,産業界にイノベーションを起こすことなんですね。それから,SDGsとか社会課題に貢献するということは,論文数が増えるということとイコールではないはずなんですね。そういうイノベーションとか社会課題への貢献を強調した施策を打ちながら,指標の場面では伝統的なピアレビューによる指標だけを出していくというやり方では,どうも研究力全体をうまく捉えられないんじゃないかという気がするんですが,そのあたりの問題意識というか,どう考えたらいいのかというのを教えていただきたい。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  きょうはNISTEPの顧問会議をしていただいているような気がします。
 小林先生のおっしゃるとおりで,きょうはたまたまというか,基礎研究,大学を特に中心とした,学術というところだったものですから,論文のベンチマーク等を強調したのですが,先ほど御紹介したように,指標全体を見ていただくと,イノベーションとか民間の研究開発力のことについてもちゃんと書いてあって,あと論文と特許,特許にどれぐらい引用されているか,そんな分析もしています。
 きょうは時間がなかったものですからあえてしなかったので,それはまたさせていただきたいのと,あと,研究力という言葉と指標のひとり歩きみたいな話は確かにそのとおりで,よく我々もこれを言うと,論文指標ばっかりじゃないか,だからひとり歩きさせないようにしなさいとなるので,出し方については十分気を付けていきたいということと,小林先生おっしゃったように,果たして論文以外に基礎研究力なり,そういったものをどういうもので測るのがあり得るのかということについては,我々としても検討を続けていきたいと思います。繰り返しになりますが,科学技術指標として論文だけを出しているわけじゃなくて,実は幾つも項目がございます。

【小林傳司委員】  是非そのあたり複合的に,と言いますのは,やはりかなりメディアなどを通じて,サイテーションなどの指標によるランキングだけで議論されてしまうような傾向があって,確かに基礎研究のところで問題があるのは事実だとは思いますけれども,私は博士人材の減少の方が深刻だと思っています。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  それからもう一つ,喜連川先生の話とリンクされていると思うんですが,修士の話ですよね,それはやっぱり企業との関係とか分野とかもありますし,おっしゃるように,大学全体としての今の修士システムがどうなるかという話もあるので,これは高等教育局あるいは3局とも相談しながら対応していきたい。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,あと一つか二つというところで,もう時間が来ていますので。
 どうぞ。

【岸村委員】  ありがとうございます。今の修士の議論に関係してですけども,日本の修士がいいというのは,ある意味,現場にいる者としてはありがたい側面はあるのかもしれませんけど,さらにネガティブなことを言うと,最近,修士の学生は就職活動に専念し過ぎていて,昔の修士ほど生産性が上がっていない気がするんですね。昔なら論文になったものがうまく論文にならない面もあって,たとえばそのような研究テーマがせっかく軌道に乗ってきてさらに加速して続けたい,というときに,担当学生が修士を卒業して大学院を出てしまう,そのあとで人が替わるとそれだけでロスになりますので,そういう接続性の悪さというのも現場の生産性を落としているんじゃないかなと思うところがあります。
 修士のお話でいうと,結局博士にも進まないというのには,先ほどから議論もあるように,実際に雇ってもらえるところもあるかもしれないですが,キャリアパスが不透明だとかいうのは大きい問題です。しかし,ここで別のお話をさせていただくと,初等中等での,将来研究者になる人じゃない人というにとって,サイエンスとか科学者って何かというのも大事なのかなと思っていまして,例えばちょっと前のOECDの調査によると,日本のサイエンス・リテラシー,大学卒程度ですと,それなりに高いレベルにはあるという話なんですが,興味だとか楽しさという観点で見ると,かなり最下位に近い方にいってしまうというのがありまして,この点を何とかしないと,正しく人材を活用してもらえないことになるのではないかなと思います。
 大事なのは,私個人の体験も入りますけど,初等中等でうまく体験というんですか,例えば実験だったりディスカッションだったりをうまく交えて,サイエンスってどういう活動で,どういうところに魅力があるのか,単に教科書の知識を覚えるというんじゃないところの魅力を伝えるのが大事なんじゃないかと思っているんですが,どうやったら解決するのかなと思ったので,個人的に文部科学省に意見を聞きにいったりとかしたんですけど,彼らに聞くと,今度指導要領が変わるという。だから,安心してくれ,とまでは言ってませんでしたけど,例えば探究活動を充実させるとか言うんですけど,いろいろ話を聞くと,それを現場でどのぐらい担えるのかというのがまだ分かっていない面もあるという話なんですね。是非大学の先生,お手伝いくださいみたいなことをおっしゃるんですが,それは我々のところに来る人材もいるかもしれませんので,積極的に協力はしたいと思うんですが,現実的に現場でどのくらいそれを受け止められるのかというのは結構大事でして,要はサイエンスのスキルとか科学者の営みが分かっている人が,中学・高校の教員として行ってくれるといいんだと思うんですね。実際,今の中学,高校,教員が足りないという話もある中で,そういう人をどう確保できるのかというのも一つ問題なのかなと思います。
 また,特に中等教育等で,先ほどの修士の課程でもいいんですが,博士の課程でもいいんですが,一通りサイエンスのやり方が分かっている人がそういう現場で教えていくのが大事だと思うんですが,現状の仕組みですと,例えば工学系のところで教育免状とか取った場合,教職の免許を取った場合に,どこでも教えられる状況になっていない科目,つまり教えられる学校に限定がある場合も多くございますので,うまくそういう人材を活用して,現場というんですか,若いうちから,親御さん含めて,サイエンティストというのがどこでどう役に立つのかというのを肌で実感していただけるような場を創っていくのも大事なんじゃないかなと思いました。
 また,私,九州にいるんですけど,九州で,例えば全国の高校が集まる文化祭,高校総文だとか,地域の科学部とかがいろいろ発表会をするというときに支援があるとよい,という状況があります。そういうとき,学協会というんですか,学会ベースで次世代の人材を育成するというので,いろいろ彼らの活動をサポートしていくというのも大事だと思うんですが,この間,私個人で関わったものですと,そういうところに実際にサポートに回っている学協会ってそんなに多くなくて,私,化学ですけど,化学の学会である日本化学会は割と絡んで,いろいろお金とか人を出してサポートしたりとかもやっているんですが,そういう活動をもっと学協会の中でも大きく位置付けていただいて,そういうところの若い,すごく幼いときにそういう先生と触れ合って,学会が何だか分からない時点で接触しておいて,先々に理解が進んだ時点で,こういうときにお世話になったなとかやるのも,また将来的な進路を決めていく上でも大事だと思います。
 要はキャリア教育で,もっと我々科学者も,初等中等から関われる面もあるんじゃないかと思いますので,是非そういうところも今後,ここで議論するのかふさわしいのか,私も分からないんですが,必要なんじゃないかと思います。
 どうもありがとうございます。

【西尾分科会長】  そうしたら,小林先生と栗原先生に発言いただくところで,きょうは,お時間がございませんので,申し訳ありませんが手短にお願いいたします。

【小林良彰委員】  NISTEPについて2点,それから概算要求について1点,議論したいと思います。
 まずNISTEPは,非常に貴重な資料をありがとうございます。パワーポイントの8ページ目を拝見すると,博士号取得者,日本人が減ってきているということですが,きょうはお出しいただけませんでしたけど,多分院生の内訳の数もいろいろお持ちだと思います。単に大学院生が減っているというだけではなくて,大学院生の内訳が全然昔とは変わっていると思います。今は,留学生と社会人留学を合わせると,学卒から直接上がった数と同じか,むしろ留学生プラス社会人が多いぐらいになってきています。ですから,数だけで見ると微減ぐらいですが,留学生が悪いというわけではもちろんないのですけども,真水的に見ると,物すごく減ってきています。
 特に理系の場合は,修士から博士に行かなくなって,これはやはり奨学金の問題であります。では,なぜ修士に行くのかというと,今,20ぐらいの県が,修士課程,理系に限って,授業料を全額負担したり,あるいは奨学金を出しています。
 一番最初に初めたのは福井県です。これは私が行政評価委員長だったので始めてもらったのですが,福井県は第二次産業で成り立っているので,県内県外を問わず,理系の大学院に行った人の授業料は,卒業後7年間,福井県で勤めることを条件に,県が全部払っています。富山県は薬学に関してです。20の県がそれぞれの県で必要な人材について払っています。
 秋田県だけは分野を問わずということになっています。
 ですので,院生の内訳を見ると,多分原因がもっとはっきりしてくる。
 それから韓国が伸びていますが,人文学・社会科学についてしか分からないのですが,実はソウル大は論文博士号をやめました。課程博士号だけにしました。つまり,もちろんそれでも韓国では今博士号を持っていなくては応募すらできませんけども,論文博士号がなくなった時点で,将来いつか取ればいいやみたいのはもう通じないということが,ソウル大に限らず,幾つかの大学がそれに追随していますが,ソウル大に関してはかなり博士号の輩出が増えてきているという原因の一つではあります。
 あと余計なことですが,喜連川先生にコメントすると,計算機が公立で上がった,これは横浜市大がデータサイエンス学部を作ったことが主な原因の一つだと思います。
 概算要求について,12ページ目の学術フロンティアについてなんですが,概算要求が前年度より増えているのは大変ありがたいのですが,状況は,やはり日本の大型研究の単価がどんどん高くなってきています。カミオカンデよりスーパーカミオカンデ,スーパーカミオカンデよりハイパーカミオカンデと高くなっています。
 これは,どうしてもライバルがいるわけです。ハイパーだったらDUNEがある。大型望遠鏡だったらELTがある。ESPRITやNSFの総予算が増えていく中で,日本の予算が増えていかないと,やはり競争力がどうしても追いついていかなくなる。あるいは,作ったとしても時期が遅れる。そうすると,どうしても第一発見者になれなくなるということになるわけで,是非ここは死守していただきたいということをお願いして,終わりにします。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 栗原先生,最後に,できるだけ短くお願いします。

【栗原委員】  女性研究者のことについて一言申し上げたいと思います。新規採用研究者に占める女性の割合の方が全体に比べると高いというのは,これはやはり当然のことで,男女共同参画推進における女性研究者採用の目標が,新規採用者に占める割合ということで設定されているので当然だと思います。私がもしそういう調査をしていただけるならと思うのは,職位における接続です。例えば学部生に占める女子学生の割合に対して,修士における,先ほど小林先生も進学のことをおっしゃいましたけど,その進学者の中の女性の割合とか,さらに,大学院生に比べての助教の中の採用数の割合とか,助教から准教授とか,接続のところの,やはり前職の割合にかなり比例してプロモーションされるか,それ以上にプロモーションされないと,これは増えていかないと思いますので,是非そのあたりのことに御配慮いただいて,やはり今の研究力向上の一つの大きな鍵だと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。

【西尾分科会長】  今の件,重要な観点だと思いますので,日本のダイバーシティ関連の強化をする意味でも,是非,その評価をしてください。お願いいたします。
 実を言いますと,きょう,もう一つ議題があったのですが,これは宿題にさせていただきます。参考資料2を見てください。第10期学術分科会の調査審議事項ということで,どういうことをこの期で議論するかということで,今までいろいろと考えてきました。一つは,第6期科学技術基本計画の策定に向けた検討というのがございます。これは参考資料3-2に,この学術分科会から意見をきっちり出させていただきまして,そのことも踏まえて,基本計画の議論が総政特でなされていると伺っております。
 もう一つが,2ページで,人文学・社会科学分野の学術研究に関する検討ということで,これにつきまして,特別委員会で議論していただいていること等の報告をいただきました。そこで,その他の論点というところで,学術分科会で日本の科学技術・学術の振興のために,この委員会できっちり議論しておかなければならないことが多々あると思います。例えば検討課題の例ということで,一つ目が,先ほど観山先生がおっしゃった課題がございます。また,二つ目の丸で書かれていますように,データというものを基に,どうやって学術基盤をより高度化するかということのテーマも考えられます。
 それで,10期で今後さらに議論を深めていくべきことについて,皆様からいろいろと御意見をいただきたいと思います。これは事務局から電子メールで皆様にお伺いさせていただきますので,どうかそれに対して皆様の思うところの御意見等コメント等をいただければと思いますので何とぞよろしくお願いいたします。
 事務局には,そういう形で対応してください。お願いいたします。
 それでは,本日いろいろいただきました御意見,事務局と相談した上で,今後の学術分科会の進め方に反映させていただきます。
 きょうは,磯谷所長,伊神室長からもいろいろ貴重な御報告をいただきまして,誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。
 それでは時間ですので,事務局にバトンを渡します。よろしくお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  次回の学術分科会の日程につきましては,日程調整の上,改めて御連絡させていただきます。
 また,本日の議事録につきまして,後日メールにてお送りいたしますので,御確認をお願いいたします。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  本日は皆様方から貴重な御意見等,多々いただきまして誠にありがとうございました。これにて会議を終了させていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――
 

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