学術分科会(第90回) 議事録

1.日時

令和6年2月2日(金曜日)15時00分~17時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 令和5年度補正予算および令和6年度予算案の報告
  2. 他委員会からの情報提供
  3. 各部会における審議状況報告及び各部会の審議経過を踏まえ俯瞰的な検討を進める論点について
  4. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
大野分科会長、五十嵐委員、勝委員、白波瀬委員、鷹野委員、観山委員、井野瀬委員、尾辻委員、小野委員、尾上委員、加藤委員、神谷委員、北本委員、木部委員、治部委員、城山委員、関沢委員、戸田山委員、中野委員、長谷川委員、長谷部委員、松岡委員、水本委員、安田委員

(科学官)
森口科学官、恒吉科学官、磯科学官、松田科学官、野崎科学官、原田科学官、北川科学官、上川内科学官、柳田科学官、藤森科学官、加藤科学官、長壁科学官

文部科学省

奥野大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、坂下振興企画課長、柳澤大学研究基盤整備課長、田畑学術研究推進課長、藤澤参事官(情報担当)付学術基盤整備室長、滝川人材政策課長補佐、山本大学研究基盤整備課長補佐、名子学術企画室長、髙田学術企画室室長補佐

5.議事録


 
【大野分科会長】  それでは、委員の皆様がおそろいになりましたので、定刻になっていますので、ただいまより、第90回科学技術・学術審議会学術分科会を開催いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず初めに、事務局から、配付資料の確認等をお願いします。
【髙田学術企画室室長補佐】  事務局でございます。事前に電子媒体でお送りさせていただいておりますが、議事次第に記載のとおり、資料は資料1から資料3-2、それから、参考資料は参考資料1-1から4をお配りしております。資料の不足等ございましたら、事務局まで御連絡をお願いいたします。
 それから、御発言の際は、「手を挙げる」というボタンをクリックしていただきまして、分科会長より指名を受けましたら、マイクをオンにして、お名前のほうから御発言をお願いいたします。終わりましたら、ミュートにしていただきますようお願いいたします。
 不具合等ございましたら、マニュアル記載の事務局連絡先まで御連絡をお願いいたします。
 また、本日は、委員29名中、現時点で22名の御参加をいただいておりますので、本分科会の定足数を満たしておりますことを御報告させていただきます。
 それから、本日は、事務局より、坂下振興企画課長、柳澤大学研究基盤整備課長、田畑学術研究推進課長、名子振興企画課学術企画室長、藤澤参事官(情報担当)付学術基盤整備室長が参加しております。
 なお、本日の会議は、傍聴者を登録の上、公開といたしております。
 説明は以上でございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思います。
 まず、議題(1)ですが、令和5年度補正予算及び令和6年度予算案について、御報告いただきたいと思います。なお、御報告の後、質疑応答の時間を設けておりますので、よろしくお願いします。
 それでは、坂下振興企画課長、お願いします。
【坂下振興企画課長】  それでは、令和5年度補正予算と令和6年度予算案のポイントにつきまして、説明をさせていただきます。資料をおめくりいただければと思います。
 こちらは全体像になっておりますので、次をお願いいたします。
 まず、科学技術・イノベーション人材の育成・確保でございます。
 初めに、全体につきまして、9月の学術分科会で概算要求について一度御説明をさせていただきましたので、今回は、主な変更点といいますか、ポイントのみ簡潔に御説明させていただくこととしたいと思っております。
 ここにつきましては、令和6年度予算案は240億円ということで、前年度から少し減ったような形に見えておりますけれども、右上の小さい文字で、令和5年度補正予算額722億円となっております。具体的には、この資料の真ん中、博士後期課程学生の処遇向上と研究環境確保で、令和5年度補正予算額499億円が措置されてございます。令和6年度は、全体で約1万800人、令和5年度より約1,800人増の博士後期課程学生の支援を実施する予定となってございます。
 それから、その下、国家戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成で、令和5年度補正予算額としまして、213億円となってございます。これは主にAI分野及びAI分野における新興・融合領域を設定して、当該分野の人材育成や先端的な研究開発を推進するというものでございます。
 それから、補正予算につきまして、もう一つ、一番下の未来共創推進事業のところで、10億円となってございます。初等中等教育段階における先進的な理数系教育実施等への支援や、日本科学未来館等におけるSTEAM教育機能を強化するというところでございます。
 では、次、お願いいたします。
 科学研究費助成事業、科研費でございます。令和6年度の予算額は前年同となってございますけれども、こちらも補正予算額として654億円を計上してございます。
 真ん中の辺りでございますけれども、大きく2つございまして、一つは、若手・子育て世代の研究者を含む研究者延べ約4万人が参画する「基盤研究(B)」におきまして、研究の進捗に応じた研究費の柔軟な使用により研究の質を高める基金化の推進が、この補正予算において実現できる運びとなってございます。もう一点は、制度の見直しですけれども、「研究活動スタート支援」の応募要件の緩和・支援の充実が図られることとなっております。
 2つ目としまして、国際共同研究をさらに強化していくという内容となっております。
 では、次、お願いいたします。JSTの戦略的創造研究推進事業でございます。こちらも令和6年度の予算額としましては、前年同額ということになっております。内容につきましては、ここでは省略をさせていただきます。
 次をお願いいたします。こちらが、戦略的創造研究推進事業ではあるんですけれども、先ほどのページにありましたCRESTや「さきがけ」とは違った新しい領域としまして、新規で9億円の事業を新たに令和6年度予算案としております。
 情報通信科学・イノベーション基盤創出ということで、Society5.0以降の未来社会における大きな社会変革を実現可能とするような革新的なICT技術の創出と、その革新的な構想力を有した高度研究人材の育成に取り組み、我が国の情報通信科学の強化を実現していくことを目的としてございます。この未来社会の大胆なビジョンとそれに挑戦するICT技術をグランドチャレンジと設定をしまして、その実現に向けた研究開発を推進していくという新たな取組になっております。
 次、お願いいたします。こちらは国際関係で、予算額は前年同額ですけれども、真ん中の右側半分のほうにある先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)は、令和4年度の第2次補正予算でスタートしまして、昨年末に第1回目の採択が既に公表されております。令和5年度の補正予算額で、左側のほう、新たに146億円が計上されまして、日ASEAN科学技術・イノベーション協働連携という取組が、これから始まる予定でございます。ASEAN諸国とは、これまで長年にわたって国際共同研究・研究人材交流が行われてきておりますので、こういった取組を基盤としながら、さらに国際共同研究、人材育成、交流などの幅広い取組を通じた、持続可能な研究協力関係をさらに強化していくということを目的としているものでございます。
 では、次、お願いいたします。科学技術イノベーション・システムの構築でございます。こちらもあまり大きな変更はございませんけれども、令和5年度の補正予算としまして、152億円が計上されております。大学を中心としたスタートアップ・エコシステム形成の推進の中の一番最後の※で説明しておりますけれども、大学発の医療系のスタートアップ支援プログラム、AMEDの事業になりますが、こちらが強化される見込みでございます。
 では、次、お願いいたします。創発的研究支援事業でございます。こちらも予算額が非常に少額のように見えてしまいますけれども、令和4年度の補正予算で既に553億円が計上されておりまして、今後の採択予定件数合計750件程度で必要な経費は、令和4年度の補正予算で計上されております。来年度要求につきましては、令和5年度の補正予算と令和6年度の予算額を合わせまして、創発研究者をリサーチアシスタントとして支える博士学生等に対する支援分ということで、予算案を計上しております。
 では、次、お願いいたします。WPI、こちらも継続ですので、省略いたします。
 次、お願いします。共同利用・共同研究システム形成事業でございます。令和6年度予算額につきましては、7億円で変わっておりませんけれども、令和6年度については、2件の新規採択を予定する予算案として計上してございます。
 では、次、お願いいたします。世界の学術フロンティアを先導する大規模プロジェクトの推進でございます。こちらも令和6年度予算案につきましては、前年度と同額で、学術分野の大規模なプロジェクトの推進を継続して進めていきたいと考えております。
 では、次、お願いいたします。これは、国立大学全体の予算の資料ですので、御参考でございます。
 次、お願いいたします。人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業でございます。こちらは新規で概算要求をしておりまして、令和6年度予算案としまして、1億円を計上してございます。
 この学術分科会でも御議論いただきました人文・社会科学の推進方策に基づいて進めていく事業になっておりますけれども、大きく2つの柱がございまして、一つ目は、国内の諸機関で共同体制を構築しまして、データ基盤の開発に向けたデジタル・ヒューマニティーズ・コンソーシアムというものを運営していくというものでございます。こちらは、人文諸分野のデータに係る国際規格対応ですとか、モデルガイドライン策定、データ駆動型研究の事例創出、また、若手研究者等を対象とした人文諸学の特性に応じたデータ構築、AI利活用研究等に関する人材育成プログラムの開発・実証などを実施する予定になってございます。
 2つ目の柱が、人文学・社会科学研究におけるデータ分析による成果の可視化に向けた研究開発、いわゆるモニタリング指標の開発に向けた調査・分析でございます。
 これら2つの取組を新たに開始していくということで、1億円を計上しております。
 次、最後でございます。こちら、補正予算の御紹介ですけれども、100億円を計上しておりまして、オープンアクセス加速化事業です。2023年5月のG7の科学技術大臣のコミュニケにおきまして、公的資金による学術出版物及び科学データへの即時オープンアクセスを支援するという旨が明記されてございます。これを受けまして、2025年度の新規公募分からの学術論文等の即時OAの実現に向けた国の方針を策定すること等となっております。この方針に基づいて、大学による研究成果の管理・公開に関する体制の充実・強化を図り、また、産業界等へも開かれた知のアクセスを担保することで、研究成果の発信力を強化して、我が国の競争力を高めるということを目的としてございます。
 こちらにつきましては、この次の議題でオープンアクセス関係の話題がございますので、御議論はそちらのほうで詳細にしていただいたほうがいいかもしれませんけれども、各大学の研究成果の管理・利活用システムの開発・高度化に係る研究開発費ですとか、その運用・体制強化に係る経費、様々な論文掲載公開料等の支援を行うということが予定されてございます。
 説明は以上になります。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に関して、御質問、あるいは、御意見を頂戴できればと思います。いかがでしょうか。
 神谷委員、お願いいたします。
【神谷委員】  神谷でございます。どうも御説明ありがとうございます。
 14ページの共同利用・共同研究システム形成事業についてでございますが、異分野の連携ということで、非常に重要な事業だというふうに理解いたしました。
 それで、お伺いしたいことは、かつて共共拠点が連携する場合、効率化されて、総予算が減らされてしまうと、これによって連携のインセンティブがそがれるということがあったというふうに記憶しております。この点、この分科会で私、指摘したところでございますが、この点、連携した場合に、こういったインセンティブがそがれるという効果は改善されているのでしょうかということをお伺いしたいと思います。
【大野分科会長】  お願いします。
【山本大学研究基盤整備課課長補佐】  御質問ありがとうございます。大学研究基盤整備課の課長補佐、山本でございます。
 システム形成事業ではないですけれども、今の御質問については、ネットワーク型拠点等で共同利用・共同研究拠点の認定をした際に、運営費交付金の支援をしているところでございますが、その点において、ネットワークの中核になるところと連携機関で、予算の差異があるというお話についての御質問と理解した上で、お答えさせていただきます。
 現在は、4期に向けて既に認定をしておるところでございますが、この点につきましては、ネットワーク機関間の違いということを今はなくした形で、それぞれの規模に応じた形で、適切に予算支援するような仕組みに変更しているところでございます。
 以上でございます。
【神谷委員】  どうもありがとうございます。改善されたというふうに理解いたしました。どうもありがとうございました。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 よろしいですか。今、全員の皆様は見えていないので、「手を挙げる」というボタンを押していただいて発言の意思をお示しいただければと思いますが、よろしゅうございますか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 続きまして、次の議題に移らせていただきます。
 議題(2)でございますが、他委員会からの報告をお受けしたいと思います。
 まず、藤澤学術基盤整備室長より、情報委員会の報告事項について御説明をお願いします。
【藤澤学術基盤整備室長】  藤澤でございます。では、私のほうから御説明させていただければと思います。資料も一応共有しながら説明させていただきます。
 こちら、オープンサイエンスの推進について、一次まとめということでございます。
 こちらは、研究成果の共有・公開を進め、研究の加速化や新たな知識の創造などを促すオープンサイエンスにつきましては、この科学技術・学術審議会の下でも、これまで審議されてまいりました。昨年3月に出された第11期科学技術・学術審議会総会における主な意見でも、オープンアクセス時代における論文等の利活用について言及され、また、5月のG7科学技術大臣会合でも、オープンサイエンスを推進することが合意されるなど、社会の関心や国際的な機運の高まりなどを踏まえ、今回改めて、このオープンサイエンスの実現に向けた現状と課題の整理ということを情報委員会のほうでまとめたものでございます。
 最初の第1項、「はじめに」の部分でございます。こちら、オープンサイエンスを取り巻く国内外の議論・動向について記載しております。
 最近の状況といたしましては、昨年10月、総合科学技術・イノベーション会議において、2025年度以降に新たに公募を行う競争的研究費制度を受給する者に対し、論文及び根拠データを学術誌への掲載後、すぐに各大学の機関リポジトリ等へ掲載することの義務づけ、あるいは、購読料等による経済的負担の適正化に向けた大学と海外出版社との交渉体制の支援等について言及するなど、我が国のオープンアクセスの実現に向けた方針が引き続き検討されておるというところでございます。
 続きまして、第2項のところでございますけれども、こちら、オープンサイエンスが持つ2つの意義について記載しております。
 まず一つ目でございますけれども、「研究活動そのものの変容」で、国際的な商業誌等の価格が高騰する中でも研究者が必要な知識、研究資源に効果的にアクセスすることが可能となり、新たな協働による知の創出や高付加価値な研究の加速等につながるということが述べられております。
 もう一つでございますけれども、「社会に対する貢献・使命」ということでありまして、研究プロセスの透明性の確保や、社会に対する研究成果の早期還元、シチズンサイエンス等、多様な主体の研究参画など、社会貢献にもつながるものというふうに考えております。
 続きまして、第3項でございます。こちら、オープンサイエンスのプロセスの明確化ということで、オープンサイエンスを実現する手段としては、主に「論文のオープンアクセス化」と「研究データの共有・公開」の2つでございます。こちらの2つについて記載しておるということでございます。
 また、研究データの共有・公開につきましては、その保管場所につきましては、コスト面、セキュリティなどの観点で検討することが必要でございまして、研究機関で整備するサーバや、NIIが整備するストレージ領域などが考えられること、また、論文に掲載されなかったデータにつきましては、研究機関における研究データに関するポリシーとオープン・アンド・クローズ戦略を踏まえ、安全性、効率性、科学全体への貢献等の観点で扱いを検討する必要があり、その検討に応じて、機関リポジトリ等への掲載や、共同研究者へのデータ提供などを判断することになるということを指摘しておるところでございます。
 第4項でございます。こちら、オープンサイエンスの実装のための取組ということでございます。この実現に向けては、各機関がポリシーを策定し、所属する研究者等の認識の共通化及び運用体制の整備を図るとともに、研究成果のプラットフォームを整え、共通的な事項に係る負担を軽減するなど、オープンサイエンスを支える体制を検討することが必要であるということを述べております。
 第4項につきましては、こちら、研究機関としての基本的な考え方が示されるということでございます。
 まず、1点目でございますけれども、研究機関としての基本的な考え方が示されるということで、研究者の手間を軽減するということとともに、論文の公開プロセス、データの管理方法等の共通化を進め、支援を充実させるということでございます。そのための研究機関のポリシーの策定の重要性を述べているということでございます。
 4項の2点目でございますけれども、NIIやJSTが研究成果プラットフォームの整備において、研究者の利便性や有効性を向上させるための支援を拡充させるとともに、役割分担や利用者へのアプローチの方向を再確認し、相互に補完するよう整備を進めることが必要ということを記載しておるところでございます。
 3点目でございますが、こちら、オープンサイエンスは研究者の取組のみだけではなく、それを支える関係者があって実現できるものということで、特に、大学図書館におきましては、これまでも学術研究活動全般を支える学術情報基盤としての機能・役割を担っていることから、引き続き、重要な役割が期待されているということを明記しておるところでございます。
 5項目でございますが、こちら、情報委員会の中でこの御指摘があったんですが、プレプリントの利活用についてということでまとめさせておるところでございます。プレプリントにつきましては、様々な利点もあり、その世界的な潮流も念頭に、プレプリントをどのように位置づけるかという戦略を持ち、JSTのJxivなどの基盤がどのような機能を有すべきか等を検討する必要があるということを述べておるところでございます。
 最後に、第6項で、オープンサイエンス推進に当たっての留意点ということにも触れております。こちら、オープンサイエンスには、先ほど述べた意味や利点がある一方、現場にとって負担が増すという状況も想定されるため、負担感の解消や支援が求められるとともに、成功事例の周知や、適切な評価の仕組みの構築によって、オープンサイエンスに対する研究者の意欲を高めるということが重要な点であるということを指摘しております。今後、具体的な取組の検討と実践を進め、我が国の方針に沿ったオープンサイエンスの推進を加速させるということが必要でございます。
 一旦、こちらは7月の会合までの情報を一次まとめとして公表させていただきました。
 その後、先日、ちょうど科学審の総会でも御報告させていただいたんですけれども、オープンサイエンスにおきましては、様々な動きがございます。
 例えば、内閣府では、学術論文とそれにひもづく根拠データの即時オープンアクセスを踏まえた方針が今検討されておるというところで、文部科学省でも、令和5年度補正予算において、オープンアクセス加速化事業の予算を確保しておるところでございまして、各大学のオープンアクセス体制整備支援の準備をしているということでございます。
 また、国の即時オープンアクセスを踏まえた方針についても、ここで議論、追記すべきかという話もございました。ただ、現在検討中となっておりますので、本件は、これまで行われたオープンサイエンスに関する議論を、繰り返しになりますが、7月の時点で情報委員会で取りまとめさせていただいたというものでございます。
 このような状況を踏まえまして、今後、内閣府においてオープンサイエンス方針が策定・公表された後、必要に応じて、こちら情報委員会において改めてオープンサイエンスに関する議論を行い、状況をアップデートした文書を取りまとめる予定でございます。引き続き、御助言、御支援のほどよろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 いかがでしょうか。御質問、御意見をお受けしたいと思います。
 今お話がありましたように、あくまでも暫定的だということでございますけれども、きっちり決まってしまうと、今度は意見が反映されにくくなる面もありますので、よろしくお願いします。
 水本委員、お願いします。
【水本委員】  御説明ありがとうございます。
 いろいろなところからこの情報は入ってきていて、25年度から採択された課題等が多分かなり対象になるというふうに聞いています。その割には、あと1年ちょっとしかないけれど、切迫感がないというか、スピーディーに進んでいないなという気が、私自身、しています。
 質問は2つあります。
 一つは、もう既にいろんな雑誌等で、例えばいわゆるサイエンスやネイチャーなどの商業誌、それから、特に欧米等の学会で出しているいわゆる学術誌でも、データアベイラビリティという項目があって、そこで、その論文で使われた研究データをどこで公開するかということを表示できるようになっているようです。こういった方法を使ってデータの公開をするので十分というふうに今検討が進んでいるのかどうかということ。これでやると、比較的研究者も手間をかけずにできることではないかなと思うのが、それが1点です。
 もう一つは、先ほど即時公開という言葉が出たと思うんですけれど、この即時というのはどれくらいの即時性を念頭に置いて検討がなされているのかという、この2点について、情報があれば教えていただきたいと思います。
 以上です。
【藤澤学術基盤整備室長】  ありがとうございます。
 最初に、2025年度の公募分からということですので、実際これが関わってくるのは、その成果が出る26年度以降になるのかなというふうに考えております。まず、それが1点です。
 機関リポジトリへの登載というところでございますけれども、今、NIIのシステムを通じて登録できるという形のところを、今、内閣府とともに検討しておるところでございますので、今の水本委員の御意見も、また内閣府のほうへ伝えていきたいと思っております。
 また、今、即時という話が出ましたけれども、オープンアクセス方針が出た後、関係府省連絡会議というのを設けて、そこでさらに具体的に、じゃ、どこまで即時なのかという議論がなされるというふうに我々は認識しております。
 我々としても、この即時については、実は、事務的にも、そこはどこまでなんだというのはある程度決めていかなければいけないなと思っておりますので、またそこは関係府省、内閣府とともに、いろいろ議論を踏まえ、もちろん先生方の意見を踏まえて、分野によってもまた違うと思いますので、また検討させていただければと考えております。
 以上です。
【水本委員】  ありがとうございます。
 現場の研究者の負担をできるだけ軽減する方向で、ぜひ検討をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
【藤澤学術基盤整備室長】  はい。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、長谷部委員、お願いします。
【長谷部委員】  長谷部です。オープンアクセス等の加速化事業で、今、補正予算案で予算がついていますけれども、これ、各機関で個々にオープンアクセスの、例えば、サーバですとか、いろいろなシステムをつくっていきますと、この後の継続性、その各機関の予算が大変だと思うんですけれども。あとは、そのサーバ以外にも、人件費の問題も出てくると思うんですが、国で一括してこれをやるのではなくて、各機関で行うような方針にいくのか、あるいは、今後は国で一括して行うような方向でいくのか、そこら辺の方針を教えていただけますか。
【藤澤学術基盤整備室長】  ありがとうございます。
 今回の予算につきましては、単年度予算ということでございますので、まず人件費はちょっと使える話ではないというのがまず一つございます。
 あと、こちら、大学と書いていますけれども、大学共同利用機関も出せる方向で今動いております。そういう形であれば、例えば、そういったところでも、あとは連携して出せる方向も今ちょっと考えていますので、ということがまず一つございます。
 国として今後どうしていくかというところなんですけれども、まずは、それぞれ、もちろんNIIを通じて、いろいろ、JAIRO Cloud等ございますし、あとは、中でのそれぞれの各オープンアクセス義務化となったときに、それぞれのシステム、多分、いろいろ不備なところというのは出てくるものと思われますので、そこをいかに補強していくのか。
 あと、この予算の我々のメッセージが、これはえてして大体図書館に全て行っちゃうというところが正直ありまして、オープンアクセスは図書館やれよということになるかと思うんですけれども、我々がここに込めているメッセージは、図書館だけではなく、研究推進部門・情報部門を大学としてしっかりやってほしい、そういうメッセージを込めた予算でございます。ということだけはお伝えしたいと思います。
 以上です。
【長谷部委員】  すみません。ちょっと質問の仕方が悪かったかもしれないんですけれども、各機関で行うと、多分、各機関でそれぞれいろいろな努力をしなければいけなくなるので、どっちかというと国で一括して行うとか、国で一括したシステムをつくるほうが効率的ではないのかなと思ったんですけれども。
【藤澤学術基盤整備室長】  そういう意味では、今、国立情報学研究所のほうに、例えばJAIRO Cloudとかというのは実際ございますし、あと、そういったいろんなものがNIIの関係でございます。そこをうまく活用いただいてというのは、今の実態のところでございます。
【長谷部委員】  各機関の負担は、これ、かなり大きくなると思うので、ぜひいろいろ御検討よろしくお願いいたします。
【藤澤学術基盤整備室長】  ありがとうございます。
 我々としても、先生方の負担、特に、先生方だけではなく、事務方の負担も極力減らしたいというふうに考えております。
 以上です。
【大野分科会長】  それでは、原田委員、お願いします。
【原田委員】  御説明ありがとうございました。
 今の回答の中で、今回のこのオープンアクセス加速化事業は、主に図書館に配分されていく予算であると受け取ったのですが、それでよろしいでしょうか。
【藤澤学術基盤整備室長】  図書館ではなくて、こちらは、主に、多分大学であれば、こういったものが来ると、図書館だけにやれというふうに来るということがえてして多いと。そうではなくて、あくまでもこれはオープンアクセスの加速化ということで、これは大学として考えてほしいというメッセージです。
 ですので、このプランを立てるときには、図書館だけに全てを押しつけるのではなく、研究推進部門なり情報部門が一体となって考えてほしい、そういうメッセージの予算でございます。
【原田委員】  分かりました。ここで期待される効果に記載があるように、例えば、国際競争力の強化に結びつけるためには、オープンアクセスの仕方、グリーンOAなどゴールドOA、幾つかありますが、より競争力を高めるようなOAの仕方、どちらかというとゴールドOAかと思うんですが、そういったことも含めて、期待される効果をしっかりと反映させるような取組をしてください、そういうことをメッセージとして伝えていくんですね。
【藤澤学術基盤整備室長】  はい。一応この予算の中では、いわゆるAPCについても、ある程度そこは措置できるという形になってはおるんですけれども、ただ、その前提となるのは、やはり中のシステム、これがしっかりできていて、大学の中で、先ほどの繰り返しになりますけれども、研究者、事務の負担がなるべく減るようなシステムをつくっていただくというところが大きいかと思っております。
 以上です。
【原田委員】  分かりました。ありがとうございます。
【大野分科会長】  ほかにいかがでしょうか。
 今のお三方の御質問で尽きていると思うんですけれども、オープンサイエンスを推進するのは、もうどなたも反対はないんだろうと思いますが、これを実際にやろうとするときに、各機関が持続可能な形で仕組みをつくることはできるようにする、ということは極めて重要だと思います。
 今お話がありましたように、補正予算で基盤をつくるわけですけれども、この仕組み自身は、これから持続可能な形で維持していかなければいけませんので、システムの構築も含めて、大きな負担が各機関にかからないような設計を、ぜひ予算の段階できちんとしていただきたいなと思います。
 よろしいでしょうか。
【藤澤学術基盤整備室長】  ありがとうございます。
【大野分科会長】  ほかにいかがでしょうか。
 よろしければ、次の議題に入りたいと思います。
 3番目でございます。学術分科会の下に設置されている各部会における今年度の審議状況を簡潔に御報告いただいた後、第11期の科学技術・学術審議会総会での議論、あるいは、各部会の今年度の審議経過等を踏まえて、本分科会において俯瞰的に議論しておきたい論点について、意見交換をしたいということでございます。
 なお、本件につきましては、今期の「意見のまとめ」を想定して、今後議論を継続的に行いたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。そのために、個々の論点に加えて、学術研究の現代的な意義やその推進方策といった大きな観点からの御意見も伺って、最後の意見のまとめとしたく思います。
 それでは、まず、名子学術企画室長から、資料3について説明をお願いいたします。
【名子学術企画室長】  学術企画室長の名子でございます。それでは、私のほうから御説明させていただきます。
 まず、資料3-1でございます。第12期科学技術・学術審議会学術分科会の各部会等における審議状況と検討課題につきまして、先に御説明させていただきます。
 まず、研究環境基盤部会でございます。こちら研究環境基盤部会のほうでは、まず、これまでの主な審議内容といたしまして、昨年の6月、中規模研究設備の「整備等に関する論点整理」を取りまとめていただいておりますが、こちらは学術研究の進展や国際的な研究動向に応じて、全国的な観点から推進すべき学術基盤の整備について御議論をいただいたものでございまして、こちら、9月の分科会のほうでも御報告いただいたかと思います。参考資料2-1として載せております。
 それ以降、国立大学の共同利用・共同研究拠点及び国際共同利用・共同研究についての第4期中期目標期間の中間評価要項ですとか、令和7年度からの新規認定要項に関する審議、また、公私立大学の共同利用・共同研究拠点についての中間評価、また、令和7年度からの新規認定要項についての審議を行ってございます。
 加えまして、昨年の12月かと思いますが、学術研究の大型プロジェクト、こちら、「ロードマップ2023」というのを策定しております。こちら、参考資料の31、32ページのほうに記載してございます。
 これに関連して、運営費交付金についての配分等に関する審議を行ったということでございます。
 続きまして、(2)検討事項・課題及び今後の方向性等でございますけれども、引き続き、中規模研究設備の観点ですけれども、引き続き検討を行うということでございます。
 また、先ほど申しました第4期中期目標期間における中間評価につきまして、これは引き続き実施していく。公私立大学の共同利用・共同研究拠点の中間評価、また、期末評価の実施であるとか、令和7年度からの新規認定について審議を行うということでございます。
 続きまして、学術研究の大型プロジェクトにつきましては、年次計画に基づく評価等を通じて各プロジェクトの進捗管理を行っていくということでございます。
 あとは、運営費交付金につきまして、配分等に関する審議を行うということでございます。
 続きまして、研究費部会でございますが、審議内容につきましては、「第11期研究費部会における審議のまとめ」、これは令和5年2月、こちらを踏まえまして、科研費の更なる制度改善に向けて審議を行ったということで、具体的には、若手・子育て世代の研究者がより挑戦的・独創的な研究に取り組める環境を整備するため、研究の進捗に応じた研究費の柔軟な使用によって研究の質を抜本的に高める基金化の推進について審議を行ったということで、こちらについては、先ほどの予算の説明等であったかと思いますが、そういった議論を進めていただいております。
 次のページでございます。また、研究者コミュニティの持続的発展や男女共同参画の推進に向けて、「研究活動スタート支援」・「若手研究」の応募要件の緩和といったところの審議を行っていただいております。
 そのほか、基盤研究の助成の在り方や持続可能な審査システムの構築等に係る審議を行ったということでございます。
 今後の検討課題でございますが、この持続可能な審査システムの構築に向けまして、1課題当たりの充足率の向上や研究時間確保等の観点に基づく研究種目の整理・統合についての議論、また、基盤研究の助成の在り方を含む研究費の枠組みについての検討を行っていくと。
 あわせて、科研費予算の規模といった制度全体の在り方、質・量の改善・充実方策に関する検討を行っていくということでございまして、こちらにつきましては、参考資料3として、今後の検討事項等に関する資料については掲載してございます。
 続きまして、人文学・社会科学特別委員会でございますが、(1)でございます。まず主な審議内容といたしまして、資料上前後いたしますが、8月に、簡単に当面の施策の方向性ということで、振興の方向性のまとめを行いまして、予算につきまして、先ほど御説明させていただいたものにまとめておりますが、そういう対応をさせていただいております。その後の状況ということでございますが、人文学・社会科学を軸とした共創による共同研究で、こうしたものの多様な意義ですとか、共同研究を推進するための方法・体制・仕組み、また、研究者のキャリアパスに与える影響、成果把握と評価の方法に関する議論を行ってございます。
 続きまして、人文学・社会科学のデータ基盤の整備に関連しましては、研究データの利活用、データ規格に関する考え方、その整備、オープンサイエンスへの対応、研究データの作成・保存を行い研究者を支援する人材の必要性、また、その育成、そういったところの議論を行ってございます。
 あと、人文学・社会科学の研究成果のモニタリングに関連してということになるんですが、これは先ほど予算でも御説明させていただきましたし、前期の委員会のまとめを受けての対応ということでございまして、その進捗ということになるんですが、例えば、国際ジャーナル論文・国内ジャーナル論文の分析に今着手し出したところですので、そういったところの報告ですとか、また、書籍・SNS等を活用した新たなモニタリング指標、これは予算の対応になりますけれども、そういったところについての進捗の説明を行ったというところでございます。
 あと、次の丸でございますが、戦略性を持った人文学・社会科学の研究成果の国際発信をどう考えるかといったところ、あと、人文学・社会科学の発信力の強化ということで、もう少し広報、そういったところの重要性、そのための機能強化と、そんなところについての議論、意見交換を行ったところでございます。
 (2)で、検討事項、今後の方向性ということで、今言ったような内容を議論いたしまして、第12期のこれまでの議論を、論点を整理しながらまとめをしていく。それを踏まえた必要な方策というのも考えていくといったところを、次年度の辺りで進めていくということでございます。
 まず、これまで各部会等の審議状況につきましては、以上のとおりでございます。
 続きまして、資料3-2のほうの御説明でよろしいですかね。
【大野分科会長】  お願いします。
【名子学術企画室長】  今、各部会等の審議経過等をお話しさせていただきましたが、こういったようなことも踏まえながら、学術分科会、こちらの分科会のほうで俯瞰的な検討を進めていただきたい論点ということで、資料を作成しております。
 資料3-2でございますが、こちら、分科会の下の各部会におきまして、学術の振興に向けて、それぞれの部会のミッションに基づきまして、研究環境の整備・評価ですとか研究費制度、そういったところの精力的な検討が進められているところでございます。その中で、割と共通してといいますか、お互いのことに関連してというか、部会を超えて共通するようなこととか言われているようなことというのも出てきておりますので、そういった観点で議論を進めていただけないか、必要な推進方策の検討を進めていけないかということで、大きく2つ論点をまず記載させていただいております。
 一つ目でございます。まず、第11期科学技術・学術審議会総会におきまして、我が国の研究力を底上げするために、先端的な設備の組織を超えた整備・利用及び共同利用・共同研究システムを活用した機関間の連携促進、学際領域研究の支援強化の必要性というのが挙げられてございます。これを踏まえまして、先ほど簡単に御紹介いたしました研究環境基盤部会におきまして、中規模研究設備の整備や運用の在り方に関する調査・検討が進められているところでございます。
 こちら、こういった整備の運用の在り方、中規模設備ということの議論ではございますが、そういったものを整備していく前提としても、こういった組織を超えた研究の活性化だとか、組織間を連携するネットワーク型研究拠点といったところの重要性が議論されているかと思いますが、そういったことがあるということでございます。
 あわせまして、研究費部会のほうでも、今、科研費の助成の在り方枠組みの議論が進められておりますが、中長期的な検討課題として、こうした大学間の連携、共同利用・共同研究等の組織的な取組との連携方策といったところが提示されております。
 こうしたそれぞれ部会におきまして、大学間の連携ですとか、組織の枠を超えた全国的な学術の振興の観点からの議論が行われているということを踏まえまして、この分科会におきましても、こうした研究組織と研究基盤、これらと研究費制度といったところの施策間の連携の在り方について、支援の仕組みも含めて検討してはどうかということで設定させていただいております。
 これは、先ほど言いましたネットワーク型の研究拠点みたいな考え方といったところもありますし、それを進めるにはどうしたらいいかというところがございます。支援の仕組みとしては、例えば、既存の研究費ですとか予算の仕組みなんかを活用してということもありますでしょうし、もう少し進んだものというのもあるかと思いますが、こういったところで、いろいろと御意見をいただければと思っているところでございます。
 次の2つ目の論点でございます。丸2でございますが、こちら、国際の観点にはなるんですけれども、我が国の学術を振興し研究力を向上させていくためには、多様な主体との知的交流を図り研究の卓越性を高める「国際頭脳循環」を積極的に推進していくことが重要であると。このため、海外の研究者や学術振興機関との国際的なネットワークの構築など、国際共同研究を促進する更なる推進方策について考えていくことが必要ということで、その際、特に研究費制度の改善・充実の観点も含めて検討してはどうかということで、どちらかというと研究費部会の所掌というところに大きくなってくるとは思うんですが、こういったところの論点について御議論、踏み込んでいただければと思います。
 また、最後という形でございますが、以上の論点や各部会の議論と並行しまして、先ほど大野会長のほうからもお話しいただきましたとおり、学術研究の現代的意義と推進方策について改めて確認を行ってはどうかということを書かせていただいております。
 これは、第6期科学技術・イノベーション基本計画では、いわゆる「総合知」というところが打ち出されて、今後の政策の方向性というのが示されておりますし、また、これは大分前の分科会の報告ということになるんですが、平成27年1月に学術分科会の報告というのがまとめられておりまして、そこでは、学術研究というものが「国力の源」、「イノベーションの源泉」という位置づけであったり、学術研究の現代的要請として、挑戦性、総合性、融合性、国際性が必要であるといったような提言をいただいております。
 この後、学術分科会のほうで、提言ですとか、コロナ禍の対応における意見のまとめというところはいただいているんですが、これは学術そのものの認識ということで言いますと、学術分科会の27年のものが大きな考え方を示したものというふうになるかと思います。
 そう踏まえますと、まさにAIなど先端技術の急速な発展ですとか、国際情勢の変化、少子化など社会構造の変化というのが今非常にある中で、こうした新しい時代における学術研究の意義や推進方策について検討していく必要があるのではないかということでございます。
 こちら、先ほど会長のほうからもお話しいただきましたとおり、第12期のほうで、今後の推進方策といった大きな観点でのまとめ的なものをもイメージして御議論を、今日でということではないんですが、継続してしていってはどうかということの御提案も含めて、このような論点を設定させていただいた次第でございます。
 私からは以上でございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 今お話がありましたように、各部会はそれぞれで御審議をいただいているところですけれども、この分科会では、全体を俯瞰した形で、基盤部会であったり、研究費部会であったり、あるいは、人文学・社会科学の特別委員会であったりというところを見ながら、我が国の学術研究の推進をどうあるべきかということをお話しいただければいいと考えています。
 特に、今最後の論点のところ、28ページにありましたけれども、国際情勢も変化し、我が国はもう人口が減るということは分かっていますので、その中で、「国力の源」、「イノベーションの源泉」と平成27年に位置づけられた学術研究がどうあるべきなのかということを、改めて考えておく必要があるのではないかと、私自身、思っています。
 ということで、ぜひ活発な御議論いただきたいと思いますが、4時に御退室という御連絡を受けている委員のお二人に最初に御発言いただいてから、皆様からのお声で御自由な御意見を頂戴したいと思います。
 最初は、観山委員、御発言いただけますでしょうか。
【観山委員】  ありがとうございます。
 私、研究環境部会の部会長をしておりますけれども、先ほど挙げられましたように、様々な論点を議論しておりますが、前期からもそうなんですけれども、最近とみに、国の中で一つ推進すべき大きな装置というのは、大型装置の検討を進めて、日本が非常に大規模加速器だとか、望遠鏡だとか、そのような形で推進して、非常に輝かしい成果を上げてきているということは、大きな成功であったのではないかと思いますが。
 ここに来て、例えば、ヘリウムの発生装置だとか、科研費ではちょっと購入はできないけれども、一つだけあったらいいというようなものでもないという部分が、中規模設備と申しますけれども、それについて、各大学がそれぞれ持つのではなかなかちょっと、近隣の大学が共同して運営して、そして、維持費や技術職員をうまく活用するような仕組みが何とかできないかということを考えております。
 これを法人化して、一つの方向性として、各大学が一番欲しいものについて予算要求をして設置するということでありましたけれども、先ほど申しましたようなもの、中規模計画については、複数の大学が協力して、例えば、ヘリウムの発生装置だとすると、近畿圏だとか、関東エリアだとか、いろんな形で協力して維持、それから、技術職員等々もやれば、もうちょっと効率的になるのではないかなということがありますが、なかなか各大学から出てくる予算上は、ほかの大学のためにもなるよと言うと、ちょっと競争力が各大学で落ちているんじゃないかというような懸念もありまして、何とかうまくそういう設備を取り込めないかということで、調査をまず始めようとしております。
 中規模と言ったら、物すごくたくさんの種類があると思うんですけれども、うまく系統立てて、各大学の方々、それから、共共拠点等にも協力いただいて、どういう形でうまく設備すると日本の競争力がさらに発展するのかということを考えておりますので、大学とか各研究所の方々については、ぜひ御協力いただいて、調査に協力いただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 すみません。早く退出するもので、申し訳ありません。失礼します。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 続きまして、小野委員でしょうか。
【小野委員】  ありがとうございます。
 私からは、一つ論点として、今の観山先生のお話にも出てきた技術職員の方、それから、URAの方の話というのは、もう少し解像度をここでも上げていく必要があるのではないかなと感じています。
 若手アカデミーから昨年発出した見解「2040年の科学・学術と社会を見据えていま取り組むべき10の課題」においても、研究支援人材の拡充・増強が非常に重要であるとしています。特に、最近、若手の研究者は割と早いうちにPIにならせていただいたりする傾向もありますが、サポートがない中で独り立ちするのは非常に厳しい。サポートありきの独り立ちというところで、特に若手研究者にとっては重要だと認識しています。
 URAは比較的新しい職種になると思いますけれども、技術職員の方は、これまで研究室付だったのが、予算の関係で大学の中央に集められるようになっていっていますけれども、技能と役割が非常に多様で、なかなか見えづらくて、技術職員の中でも連携が取りづらいというような、そういう課題感を聞いております。
 ですので、そういった技術職員の方、URAの方が、研究者、事務方とワンチームで研究の振興に取り組んでいけるような、雇用費の問題ですとか、キャリアパスとか、あるいは、組織内における位置づけ、それから、組織間でのそういった方々の連携の在り方とか、そういったことをもう少し議論していけたらいいなというふうに考えております。
 以上になります。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
【小野委員】  ありがとうございます。
【大野分科会長】  それでは、皆様から改めて御意見をお伺いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
 城山委員、お願いいたします。
【城山委員】  どうもありがとうございました。
 若干のコメントと質問なんですけれども、一つ目は、私が担当させていただいている人文学・社会科学との関係のところでも、一つ目の論点ですかね。どうやって機関間連携なり、それを支援する仕組みをつくっていくかということがすごく重要だと思います。
 例えば、今までの施策として、ある種の異分野横断型の学術創成のプロジェクトをやりましょうみたいなことは既にやってきているわけですが、そういうアドホックな試みをある程度きちっと制度化するということも大事で、かつ、恐らく一つの研究機関に全てを抱え込むことはできないので、そういう意味で言うと、異分野の先ほど御議論あったような共共拠点的なものを支援していくとか、そういうことを考えて、あるいは、それをサポートするような人社版のある種のURAみたいなものをきちっと位置づけていくということは、すごく大事なのかなというふうに思っています。それが一つ目です。
 その丸1に関する若干の質問は、この書き方は、ベースは連携のところに多分いろんな意味で焦点を当てているんだと思いますが、他方、下の線を引いていただいているところを見ると、研究組織、研究基盤や研究費制度等の施策間の連携みたいな、ちょっと違った意味での連携の話が入っていて、これは、例えば、研究費部会なんかで常に議論されている基盤的研究経費と競争的資金との関係をどう考えるんですかという、常に議論されてきている話がありますが、そういう話も含めて、この丸1の中の枠組みで議論しようということなのかどうなのかというのは、ちょっと確認させていただければというのが、関連して御質問です。
 もう一つは、大野先生が先ほどお話しいただいた最後の学術的研究の現代的意義というのを再確認するというところは、すごく大事なんだと思うんですが。その全体の構造としてのこれは確認なんですけれども、恐らくある種の全体の枠組みの議論として、学術研究の現代的意義と推進方策みたいな話がメタレベルであって、その中の各論として、丸1の連携施策の話と、2の国際化支援みたいなものが、具体論としては当面位置づけられていますと。しかし、もうちょっと幅広い話が、全体の最後のところには来るということなのかなという感じがしましたけれども、そういう認識でいいのかというのを少し確認させていただきたいというのがあります。
 あと、中身に即して言うと、これも最後、大野先生からお話ありましたけれども、最後の文章で、現代的意義とか、現代的要請とか、推進方策とか、幾つかの言葉が並んでいるんですが、大きなところで言うと、「国力の源」、「イノベーションの源泉」というところからは、もうちょっと、それこそ少子高齢化なんかも含めて、社会的課題みたいなところが意義として明確になってくるのかという話と、逆に、推進方策は、挑戦性、総合性、融合性、国際性ということの展開だと思いますが、国際性と総合性、融合性みたいなところは、多分、丸1、丸2の施策で拾えるところなので、そうすると、その挑戦性あたりをどうやって担保していくんですかみたいなところが、推進方策の具体論としては今後課題になるのかなという、そんな感じの印象を受けましたので、こういう認識でいいのかというところが少し確認させていただければなと思った次第です。
 以上です。どうもありがとうございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 どういう認識で我々はこれを考えるべきかということ自身、分科会に任されているんだと思います。そういう意味で、城山先生おっしゃられたように、メタレベルの話と、具体的な方策や今抱えている課題などを、要は、行ったり来たりしながら高めていくようなイメージを私は持っています。皆様が、いや、そうじゃなくて、こうすべきだということであれば、ぜひ御発言いただいて、分科会として共有していきたいと思います。
 城山先生が、今おっしゃられたことに尽きるのかなと思いますけれども、今進めている推進方策から非常に大きく外れるというか、突然変わるわけにもいきませんけれども、一方で、現代的課題というのは、我々がひしひしと感じていることですので、そこをどう整合させるかというのも含めて、学術の現代的意義が明らかになっていくのかなと私自身は考えています。
 もちろん、いろんな御意見があると思いますので、そこは、どうぞ、私自身も意見を変えることもあるかもしれませんし、あのときお前はこう言ったじゃないかと言わないでいただきたいとは思いますけれども、よろしくお願いします。
 城山先生、それでよろしゅうございますかね。
【城山委員】  はい。どうもありがとうございました。
【大野分科会長】  それでは、次は、尾辻委員、お願いいたします。
【尾辻委員】  ただいま城山先生が御発言された内容と非常に近いところでございます。今回の俯瞰的な検討を進める論点としておまとめいただきました内容、そのとおりと存じます。例えば、総合知を最大限活かすような今後の方策、資産を最大化・効率化するための組織間連携、それから、共共拠点の強化等、あるいは、マスタープランに基づく大型プログラムの更なる推進、その辺は全くそのとおりなんですけれども、やはり城山先生も御指摘された基盤的経費と競争的資金の両輪が成り立って初めてそういったものが全て有機的なリンクがされて、うまく回り始める。そこの一番根源的な部分が、この文章からはオブラートに包まれて、エクスプリシットに見えてこないんですね。
 各研究費部会ですとか補助金審査部会等での議論は、そこのところが必ず問題視されて、結局、詰まるところは、基盤的経費が、そういう大型の予算ですとか、ガバナンスのための総長裁量とかに削られてしまっているところ。ですから、そこの部分を、ぜひ研究者個人のレベルに一定額戻していただくための基盤的経費の予算増というのがないことには、なかなかここで書いてあることが回らないというのが私の問題意識で、それを何とかエクスプリシットにもう少し表現していただけると大変結構だというところを御検討いただければありがたいです。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、続いて、勝委員、お願いいたします。
【勝委員】  ありがとうございます。
 先ほど観山委員からも御指摘があった中規模設備についてなんですけれども。その部会がつい最近あって、そこで発言しなかったので、ここで発言させていただこうかなと思ったんですが。
 ここの論点の1番のところ、これ、端的に書かれているんですけれども、参考資料2-1の18枚目、こちらで見ると、明らかに近年、中規模設備というものが非常に少額になっていると。中規模設備でも、大型のプロジェクト分のものがほとんどになっていて、90年代に見られたような形での規模にはなっていないと。
 これについて、そのときの部会で、研究大学コンソーシアムの方々が、やはりそのトレンドを捉える、それから、トレンドをつくる、それから、トレンドを支えると。つまり、トレンドを捉えるとつくるというのは最先端の部分のことを言っていらっしゃると思うんですけれども、そこでは企業の連携であるとか、大学との連携というところもおっしゃられていたんですが、ただ、そういったところは、やはり企業にしても、自分たちにとって非常にプラスであれば、当然連携してくるだろうと。そうすると、やはり中規模設備については、もう少し公共財として、基礎研究を支えるというところ、あるいは、基礎的な大学院教育を支えるという部分で考えていく必要があるのかなと。ここの部分がやはり企業との連携とか、他大学との連携というふうになってしまうと、少し薄まってしまう懸念があるのかなというのが、一つ目の意見です。
 それから、2番目として、国際的な共同研究を非常に強化する。まさにそのとおりだと思います。これは特に人文社会において、人文の部分は、やはり国際的なといいますか、日本の国内の学会というものが主体になってくるとは思うんですけれども、やはり経済学であるとか、経営学であるとか、国際化が進んでいる学問分野においては、科研費においても、そういったものの比率を高めるとか、そういったことが必要なのではないかなというふうに思いました。
 以上2点でございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、続いて、水本委員、お願いいたします。
【水本委員】  実は、先ほど尾辻委員がおっしゃった内容とほぼかぶるんですけれど、私のほうからも一言お願いしたいと思います。
 論点1の中では、設備も含めてですけれど、いわゆる研究の推進、あるいは、高度化のためにこういう論点が必要であるということが述べられていて、大変ありがたいと思います。しかし、そもそも大学の研究者、大学だけではないと思いますけれど、研究機関としての成り立ちが少し揺らぎつつあるのではないかと。つまり、本来であれば、基盤的な研究環境の整備として各研究者に渡るべきお金が、実は十分に渡らなくなってしまって、基礎研究や、本当に自分の学術的な関心から進めるために獲得した研究費が、そちらのほうに回っちゃっていると。言葉を選ばず言えば、生活費になっちゃっていると。そういう実態が見え隠れしています。そういう状態をぜひ改善する必要があるのではないかということを、この論点の中で、先ほど尾辻委員がおっしゃったように、少し陽に分かるような形でぜひ反映させていただければと思います。
 以上です。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、白波瀬委員、お願いいたします。
【白波瀬委員】  どうかよろしくお願いいたします。
 いろいろ御説明ありがとうございました。論点のところで、私、一応研究費部会というところで担当させていただいているんですけれども、若干やっぱり中規模研究設備というか、そっちのほうの議論に寄った形の位置づけになっているような気がいたしまして、やっぱり俯瞰的に見るということでありますと、今、尾辻先生がおっしゃったように、まず基盤的というところなんですけれど、やっぱり一番重要なのは、学術の国際競争力をどういうふうにするのか。少子高齢化というのは、もちろん一つの現象なんですけれども、それは、学術というところの次の急展開、次の新しいカードというところをつくるに当たって、どう位置づけるのかということになってくると思うんですね。その中身の解決というわけではやっぱりないわけですから。
 そういう意味で、どちらかというと、予算的にも、政策的な、どっちかというとトップダウンというか、テーマを与えて、これでやっていただきたいと。あるいは、そのための設備、あるいは、総合知とはという条件付の下での議論展開のような気がしていて、やっぱり本家本元の人を育てる、学術の外支えと、国際展開の中で競争力を強めていくという、本家本元の大きな柱をまず立てていただきながら、ここで研究費部会というのは競争的資金、競争的資金ということになると、競争的ではなくて、基盤ということになるんですけれども、そこで、研究そのものの学術というところと、人材というか、キャリアパスというところの人へ投資、そして、それのための設備、この辺りのめり張り感がちょっと見えにくいというか、ぺちゃっとしているような感じがするので、一応学術分科会のところで大きな俯瞰的な前提を出していただくというのが、いろんな意味で説得力を増すのではないかというような感想をいただきました。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、鷹野委員、お願いいたします。
【鷹野委員】  ありがとうございます。
 私のほうからは2点申し上げたいと思います。
 1点は、科学研究費補助金審査部会で御紹介があった件なんですけれども、少子化の中で、若手研究者の育成ということに論点がありまして、そういった視点で、科研費の審査で、若手の審査員の育成システムというのを始めたということの御紹介がありました。私はそれを聞いて、とてもよい取組だなと思いました。少子化に向かう中で、日本の科学技術力を高めるというためには、やはり若手の力が必要だと思います。そういった既に始まった取組が、先日お話を伺ったわけなんですけれども、それ以外の取組について、具体的な案が、それほど強い案があるわけではないんですけれども、例えば、国際的な経験をさらに充実させるような、そういった形で若手研究者を育成するということを国としてやるということが必要なのではないかと感じております。
 もう一点なんですけれども、全く違うことなんですが、共同利用施設間の連携というものがどの程度進んでいるかということについて、私は実は存じ上げませんけれども、似たような共同利用施設もあったり、それから、関係するような、近接したような分野の共同利用施設などあると思うんですけれども、そういったところの資源を、設備等を有効に活用するような仕組みというのがもう既にあればいいんですけれども、もしまだ十分でないようでしたら、その辺りも検討いただければというふうに思った次第です。
 以上でございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 まずは御発言を皆様にしていただいてから、事務局のほうから何か発言があれば、それを受けたいと思います。
 続きまして、戸田山委員、お願いします。
【戸田山委員】  ありがとうございます。
 大分重なることになってしまうんですけれども、まず、議論が向かっていく方向が、資源配分をどういうふうにしていこうかというところに最後は落ちるというところが、ちょっと俯瞰的な議論をする際に足かせになってしまっているなという気がしています。
 日本の研究力を高めていくというときに、もちろんお金も重要なんですけれども、研究資源といったら、あと時間と、やはり人なんですね。研究者人口の動向がとても私は心配です。人口1万人当たりの研究者数で、FTE数値ですけれども、ドイツに抜かれました。日本はこれから少子高齢化が進んでいくこともあって、研究者人口の確保そのものが大変難しくなってきているだろうと思います。ですから、今いる研究者とか、今いる研究者志望の若者にどう資源を配分していくかということも重要なんだけれども、そもそも研究者という職に就こうかなと思う人たちをどうやって増やしていくかということが、中長期的には大きな課題になってくるのではないかなと思います。
 少子高齢化だから数が伸びないのはしようがないじゃないかというふうにおっしゃる方もいらっしゃるかもしれないんですけれども、日本以上に少子高齢化が進んでいる韓国が、もう飛躍的に研究者数を増やしているんですよね。人口1万人当たりです。人口が減ると分母が減るので、数字上伸びたりもするんですけれども。どういうふうにして研究者人口を今後確保していくかということも考えたほうがいいかなと思って。
 そうなってくると、もう文教政策の問題だけではなくて、労働政策の問題でもあるのかなというふうに思います。どういうふうにして研究者という職を確保して広げていくかということを考えなければいけないのかなと。今いる研究者のお尻をたたくのはもうちょっと無理かなというような気がしております。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、中野委員、お願いいたします。
【中野委員】  今回、「ロードマップ2023」の作成に携わる機会をいただき、いろいろな計画を拝見させていただきました。大規模な計画がいきなり実現するわけではなく、基本的には科研費による研究や中規模設備で行われていた研究が徐々に発展し、大型計画に繋がっていくという例をたくさん見ました。
 トップダウンで大規模な取り組みのみを実施しても、日本の学術が振興するとは考えにくいです。むしろ、基盤を広げ、活性化することが非常に重要だと感じます。
 その際に、人材育成と設備・施設の維持は密接に関連しており、これらが連携しなければ、次なる大計画の種が枯れてしまのではないかと危惧しています。その防止策として、大学間の連携が提案されていますが、大学レベルでの直接的な連携は困難です。コミュニティに根差した共同利用・共同研究拠点や大学共同利用機関を通じたプラットフォームやコンソーシアムの構築が、この課題を乗り越える鍵だと感じています。科研費を活用した研究にも、中規模施設や共同利用・共同研究拠点を使った研究がたくさんあります。そのため、科研費を有効に使うためにも、競争的資金と基盤経費のどちらも伸ばしていかないといけないというふうに感じております。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、長谷川委員、お願いいたします。
【長谷川委員】  ありがとうございます。長谷川でございます。
 種々の取りまとめ等、大変ありがとうございます。御説明、大変よく分かりました。
 私からは2点ございます。皆様のお話にもありましたけれども、若手育成と国際化における、そこの長期的な連携ということに非常に重要な点があるということが改めて言いたいかなと思ったところです。
 特に、例えば、全ての分野を存じ上げているわけではないんですが、私が関連する分野の国際的なジャーナルのエディターに日本人がもっといてもいいという思っているんですけれども、そこでの割合というのが、圧倒的に実は隣国の中国に押されているという印象があります。だからどうしようということではないし、お互いやはり高めていくという意味では、国間で競争するものではないかもしれないんですけれども、やっぱり見える化ということでは、若手育成の国際化ということと、若手が伸び伸びと、科研費ですとか、そういったシステムを使いながらいい研究をしていくということは非常に重要なのではないかと思いますので、国際化、あるいは、国際交流、人の交流というのは、これから、またますます重要化しているかと思います。
 いろいろな災害もあったり、コロナだったり、円安だったり、物価の違いだったりで、今なかなか人もモノも国際的に動きにくいというのも非常に実感しているんですけれども、ぜひそこを後押しするというシステムは残しておいていただきたいというふうに強く思います。
 それから、もう一つが、関連して、先ほど皆様おっしゃっていた共同利用・共同研究システムなんですけれども、こちらも、この物価高に加えて、半導体が足りなくて高くなったりとかしているので、装置に関しては本当に価格が変わってきているし、装置だけではなくて、それに付随している数々のものが非常に手に入りにくいだけではなくて、価格が上がっているということだというのを皆様実感しているのではないかと思います。
 これ、何を言っているかというと、例えば、話が少しずれてしまうかもしれないんですけれども、一つの考え方としては、各ユニットの規模をもう少しゆったりとさせてもいいのかなと。1.5倍まではいきませんけれども、例えば、科研費の一つの費目に関する見直しなどというのも、今後の一つの国際戦略とか、そういったものも含めた基盤研究の強さのためにも、時代に即した形というのは必要なのかなという気はしております。
 以上になります。どうもありがとうございました。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、木部委員、お願いいたします。
【木部委員】  論点を要領よくまとめてくださって、ありがとうございます。
 私は人文学・社会科学特別委員会に所属していまして、人文学・社会科学に関して意見を述べさせていただきます。
 私の専門は人文学ですが、人文学というのは、社会的な競争という考えにはなじまなくて、むしろ資料3-2の国際的な共同研究とか、連携とか、それから、総合知ですね。今、この辺に深く関わるステージに入ってきていると思うんです。それについて、確かに今まで広報とか宣伝力が不足していて、これは私どもも認めるところで、これからどんどん世界、あるいは、国内に対しても人文学の意義を発信していかなければいけないというふうに感じているところです。人文学とか社会科学というのは発信力が足りなかったけれども、既に非常にいいものを、いい成果を持っているんですね。ただ、それが発信されていなかった。
 ですから、非常に成果を上げていいものを持っている、それを国際競争という形ではなくて、国際的な協働とか、連携とか、そういうことを推進するという視点、それから、総合知のために、いろんな分野との総合という視点を少し取り込んでいただければありがたいというふうに思いました。
 以上です。
【大野分科会長】  ありがとうございます。今、学内でも同様の議論を実はしているところです。
 続きまして、井野瀬委員、お願いいたします。
【井野瀬委員】  ありがとうございます。
 御説明、本当によく分かるお話で、うなずいて聞いておりました。
 今、木部先生はじめ、ほかの人文学・社会科学特別委員会に参加しているメンバー、あるいは、研究環境基盤部会等々、私も参加させていただいていますが、やはり大野分科会長が前回言われましたが、国際共同研究を取り巻く国際情勢の変化、社会環境の変化などで、現代的な研究の意義がどうなっているかを整理して、研究者、研究機関に広く共有してもらうことが大事だと思っています。
 過日、少し違う集まりでしたが、日本からの発信が期待される「国際日本研究」という分野では、近年、北米大陸での関心が減っているというお話を聞きました。それに対して、ヨーロッパやアジアでは別の反応もあるとのことです。国際社会において求められる研究、いわば我々がベースにする見方や考え方自体が、激変する世界のなかでどんどん変わっていっているわけです。ですから、それを整理し、新たな見取図のようなものを提供する必要があるのではないかと思いました。
 大きく動き続ける世界のなかで我々の研究が持つ現代的な意義を、我々はどれぐらい意識し、理解しているのでしょうか。日本研究は私の専門分野ではございませんが、本日ご紹介した話にとても心動かされ、動揺しました。新たな人文学・社会科学研究の見取図の整理が必要だと思った次第です。
 以上です。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 私も、日本研究の人口が特に北米で今すごい勢いで減りつつあるということを伺って、どうしたものだろうかということを過日考えたところです。ありがとうございます。
 それでは、続きまして、治部委員、お願いいたします。
【治部委員】  ありがとうございました。いつも、こちらの会議、大変勉強になっております。どうもありがとうございました。
 私は、白波瀬委員がおっしゃっていた、そもそも一番大事なことは何なのか、国際競争力、研究力、研究成果の発信等々ということに関連しまして、長谷川委員のお話が非常に共感しましたので、意見を述べさせていただきたいと思います。
 私、現在、東京工業大学に勤務しておるんですけれども、一番長いキャリアが経済誌の記者でして、言わば企業で専門職として20年近く働いてきたという経験がございます。というところで申し上げますと、大学をある種、外から見るような立場にもなるんですけれども、ちょっと感じるのは、大学の先生はやはり非常に忙しいということです。多分、皆さんも忙しいということは主観的にお感じになっていると思うんですけれども。これ、企業人から見て、過度に忙しいなというところがあるかと思います。
 と申しますのは、研究者の方というのは、実は仕事がお出来になるものですから、本来研究者がやる仕事ではないことであっても、自分の元にアサインされたら、かなり真面目にクオリティ高く仕上げてしまうというところがあると思うんですね。
 これ、私、記者時代、記者というのはかなりKPIがはっきりしておりますので、とにかくインパクトのある面白い記事を書け、以上みたいなところがありますので、それ以外の業務は基本的にはほとんどやらないですし、自分たちの仕事とは思っておりませんでした。場合によっては、これは私の仕事じゃないみたいな、そういうこともやって、社内でネゴシエーションをしたんですが、そういうややわがままな会社員が長かった者からしますと、現在、大学の先生、いわゆる研究者の方が研究以外でやらなくてはいけないとされている仕事があまりにも多過ぎる。また、研究に付随したような事務的なお仕事が、バジェットの管理されている先生方、皆さんお忙しいと思うんですが、非常にお忙し過ぎて、やはりその状況というのは、幾ら頑張っても、今ここで皆さんお話しされているとか、目指しているような、本来最もやるべきことに時間を割くことができないというところをもう少し考えたほうがいいのかなというふうに思います。
 やはりこれ、全体として組織というふうに考えますと、どこに注力すべきなのか、それぞれの方の時間をどこに使うべきなのかということを考えたほうがいいと思いますので、やっぱり研究者の方は研究者にしかできない仕事をするようにする、それ以外のことをほかの人たちが仕事をするようにして、やっぱり分担していく、比較優位ということを考えていかないと、頑張るにも限度があるかなというふうに思うので、ちょっと外部の者として申し上げたいと思いました。
 以上です。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 FTEに関わるところですし、人口が減るということにも関連しますけれども、研究者が研究にかけられる時間というのがじわじわっと減ってきているのは、もう間違いありません。現在、全国では30%近くまで減っていますから、そこを50にするだけで、本当はもっと高めたいわけですけれども、研究力が向上するんだろうと私自身は考えています。
 続きまして、関沢委員、お願いします。
【関沢委員】  ありがとうございます。
 私は、今年度、環境基盤部会に参加させていただいてまいりましたけれども、そこで「特色ある」のほうの共共拠点の審査であるとか、ほかの審査などに関わりましても、どうしても理系、自然科学系と同じ土俵に乗ると、人文系の申請につきましては、なかなか評価が難しいところがあることを非常に痛感してまいりました。
 それで、今回の28ページの資料にございますように、総合知であるとか、あと、学術研究の現代的要請、総合性、学際性といったところで、人文学の力がやはり必要なんだということを何か、書き加えられたらと考えております。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 こういうところの書きぶりというのは、ぜひ皆様の御意見をいただきたいと思います。特に、人間を理解しようとしている方々にとって、外部の要請で研究がされるということ自身が違和感を持つ第一歩だったりしますので、その表現ぶりというのはどうあればいいのかというのは、ぜひ御意見をいただければと思います。
 五十嵐委員、お願いいたします。
【五十嵐委員】  五十嵐です。いろいろ説明ありがとうございました。
 今出ているこのページですけれども、こういったことを学術審議会の方々がいろいろお話ししてくださるというのは、私、産業界から出ておりますけれども、大変うれしく思います。
 ついこの間も、私も経団連とか産業競争力懇談会で企業トップの意見をまとめる立場にいるんですけれども、ちょうどこの話題が出まして、この総合知と人への投資の好循環の前のところの、そもそも我々がどういう社会を目指すのかという、Society5.0ですけれども、一つが国民の安全・安心と、もう一つが一人一人の多様な幸せ、ウェルビーイングですね。このウェルビーイングのところが、これ、今、企業トップの間でも、そもそもこの3年間、こういった第6期で活動してきて、このウェルビーイングを目指すための総合知がどこにどう活用されているのか、これがなかなか見えないというような話がありまして。
 ただし、我々産業界も、先ほどから話が出ている新しい産業を興すであるとか、あるいは社会変革という中では、やはり大きなキーワードが、この一人一人の多様な幸せ、ウェルビーイングだというふうに感じています。これ、別にお金もうけ云々の話では全くなくて、社会変革として、こういうふうになるんだろうなと。そのためには、人文・社会科学と科学技術をどう融合するかというところだと思うんですけど、それが総合知かもしれないんですが、そこがなかなかうまく見えてこないと。
 先ほど先生から、人文・社会科学はいい成果を持っているけれども、広報や宣伝力、これが足りていないんじゃないかと。産業界からも、もっと我々自身が取りにいけばいいんですけれども、やはり我々、そんなにコンタクトがあるわけではありませんから、ぜひこのところのアピールをしていただきたいと。
 あと、我々自身も、産学連携を深めると、今までの産学連携は、大型連携といっても、科学技術、要するに、技術を基礎から、理工系の技術、そこをどうするかというのが多かったんですが、これからは人文・社会科学も含めた深い産学連携をしていきたいと考えています。
 その点も、ぜひとも、どこをどう見たら深い人文・社会科学の研究があるのか、それが分かるようにしていただけると大変ありがたいなというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 議論が深められそうな方向になってきているかなと思いますが、北本委員、お願いいたします。
【北本委員】  ありがとうございます。
 こちらで出ている論点自体については、私、全くそのとおりだと思っているんですけれども、ちょっと違う観点から、この検討というのをどのようにするのかというところで、ちょっとお聞きしたいと思っています。
 もちろん、こういったビジョンを示すというのは、このような大きな視点から言葉で書くということが大事だと思うんですけれども、具体的に方策として検討するというときに、エビデンスのようなものを活用して検討するということはどのぐらいされているのかというところで、ちょっとお聞きしたいです。
 つまり、データを使って、こういう状況になっているから、次こうしたいというような、そういう検討をするというときに、やはりエビデンスというか、データが実際にあるかどうかということがまず一つ問題になってきて、例えば、必要なデータが採られてないというようなこともあると思いますので、そういった形で、意思決定をする際に、どういうデータで現状を把握できているのかというところが、ちょっと気になるところです。
 もう一つは、やはりデータといっても、基本的には過去のことを観測しているので、過去のことを観測して未来を予測できるのかということで言えば、やはり状況自体が変わっているので、そのまま外挿することはできないというのは当然あり得ると思うんですけれども、そういったときに、エビデンスをどうやって使えるのかなというような辺りで、これまでどういうふうにやっていたかということと、今後どのぐらい活用できるかというところで、ちょっと気になったところです。
 以上です。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 これは事務局に後で答えていただくような格好でよろしいでしょうかね。
【北本委員】  はい。
【大野分科会長】  それでは、まずは皆様の御意見を頂戴したいと思います。
 安田委員、お願いいたします。
【安田委員】  どうもありがとうございました。
 私から主に3点ありまして、今まで出た御意見ともかぶる部分があるんですけれども。
 1点目が、これから少子化によって科学技術、研究者の人材というのが減っていくという点なんですけれども、これから社会人とか、いろんな経験をした方が博士として入っていくこともすごく大事だと思うんですけれども、今の日本の現状だと、高齢博士を取るともう職がないというか、アカデミアの中で、私もどちらかというと若手で優遇していただいた立場だったので、言いにくいんですけれども、やっぱり若いということに重きが置かれ過ぎていて、一度、会社とかでちょっと研究に近いことをやって、興味を持って学び直しした後に、職場が担保されていないというケースが結構多いかなと思っておりまして、そういうときには、やっぱり制度の中で、若手若手というよりは、博士を取ってからどのくらいの期間あるのかというので区切ってあげるというのも、非常に重要かなと思います。
 大学の中の人事にもさんざん関わらせていただいていて、やっぱり高齢で博士を取った方というのは、年齢に対しての業績が小さいので、すごく取りにくいというか、一般的に言うと、何か不自然な人事に見えちゃうから結局選べないとかというようなところもありまして、多様な人材がいろんな能力を生かしていくという面では、そうした政策というか、配慮というのが結構必要かなというふうに最近考えております。
 あともう一つは、先ほどから何度も出ていたんですけれども、私も若手アカデミーのほうで小野さんと一緒に前回からやっておりまして、その中で一つ重要な核として、基盤経費がそもそもないことによって、外から取ってきた研究費も生かせないだとか、研究の持続性とか、一度負のスパイラルに入ってしまうと、もう二度と戻れないみたいな悪循環が起きてしまうという、これはある意味、研究者人口がさらに死んでしまうとか、能力が生かせなくなるような事態だと思いますので、やっぱりそういう意味で考えると、競争的資金とのバランスというのはすごく考えなければいけないところかなと思います。
 個人的にも、先ほどから時間がないという話があったんですけれども、研究費の申請書を書いている時間というのは非常に長くて、この時間に研究をしたりだとか、論文をまとめたりだとかすることができればもっといいのにと思うんですけれども、やっぱりどうしても研究費を取るために割いている時間がすごく大きくて、しかも、当然ですけれども、審査も依頼がいっぱい来ますので、審査が細かいと、その審査にもすごく時間が取られてということで、物すごく労力としては無駄になって、重要なんですけれども、無駄になっている部分もあって、そういうところの軽減化というのもすごく重要かなと思っております。
 あともう一点が、今映っているAIなど先端技術の急速な発展や国際情勢の変化、これって、大体イノベーションだとか、国力の反映であるということを考えたときに、トップジャーナルでどのぐらいなのかとか、ノーベル賞だとかというところもすごく重要だと思って、インパクトファクターの高い雑誌にいっぱい出るとかというところも大事だと思うんですけれども。今の国内、国際的、両方の情勢を見てみますと、やっぱり地域と都市との分断だとか、その下だとか、いろんな中で、研究者が、そうした問題が起きている場のところに入っていって、いろんな分野の研究者が研究していくというような研究が、すごく地味なんですけれども、すごく重要になってくると思っております。
 こうした研究というのはそんなに物すごいお金がかかるわけではないと思うんですけれども、やっぱり成果が出るまでに時間がかかったりだとか、長期的なサポートがないと、細くて長いお金がないと持続しにくいとか、そういう側面が結構あると思います。
 特に私、生物多様性とかに関係する分野に関わっておりまして、私自身ではないんですけれども、同じ専攻の中の教員の研究を見ておりますと、例えば、地域の中に東京大学から学生が入っていって、初めは信頼関係を築くまではすごく長いんですけれども、生物多様性に関する地元の研究を地道にやっていくと、地域の人たちの意識も変わってきて、今度は町長さんを、環境に配慮した自分たちの里を大事にするような方向での人が選ばれたりとか、そういった学術とか研究を通じて人が入っていくことによって、今まで見えなかったというか、できなかったようなことが改善されたりとか、社会の、それこそ先ほど言っていたウェルビーイングにつながるような研究とか学術の貢献というものが見えるんだなということを最近改めて強く思っておりまして、こうした華やかな競争力という意味での学術も進めつつ、やっぱりそうした地域社会に対しての、企業連携もそうなんですけれども、こうした人と人のつながりから出てくる研究とかも長期的にサポートできるような、そんなに大きな額ではなくてもいいんですけれども、そういったものに価値を置いて、国も大事にしていくことによって、国全体が学術を通じてすごくいい方向に行くのではないかなというふうに個人的に考えております。
 ありがとうございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 時間があれば、後でもう少し今挙げられた論点を深めたいなと思います。
 続きまして、松岡委員、お願いいたします。
【松岡委員】  どうもありがとうございます。
 私、これまで委員の皆様の御意見を伺って、もう全部、非常にもっともだと思って聞いておりました。私からは、重ならないように、少し異なる意見を一つ述べさせていただきたいと思います。
 国際頭脳循環というのが今日出てきていました。研究とか学術、非常に国際化が進んでおりまして、今やもう国境はないと言ってもいいように思います。それには、海外の研究者との国際的なネットワークと、この論点にも書かれておりますけれども、外国の優秀な研究者に日本に来て交流してもらうということ、非常に大事だと思いますが、それだけではなく、ぜひ日本でリーダーシップを発揮してもらうような、そういうところにまで進む、そういう段階に来ているのではないかと、将来的には進むべきではないかというふうに私は考えております。
 大型プロジェクトの作業部会とかに参加させていただいています。そこではプロジェクトの審査などに関わらせていただいているんですけれども、そういうプロジェクトの進捗など、責任を持った立場で説明される先生方、なかなか日本以外の国を出身とされている方はあまり多くないというか、ほとんどいらっしゃらないと思います。これは、国際交流はもうかなり進んでいるんだけれども、外国の優秀な研究者の方が、日本で基盤を持って研究するというところまでは、なかなかまだいっていないのではないかなというふうに思います。
 日本の学生を大事に育てて、優秀な研究者、社会人に育ってもらうということも非常に大事なんですけれども、少子化という話もありましたし、海外の優秀な研究者に来てもらって、日本の中で彼ら彼女らの研究基盤をつくってもらって、日本の中でキャリアパスをつなげてもらう、そういうことも必要になってくるのではないかというふうにちょっと思ったりもしております。
 私も今大学におりまして、事務的なことなどは全部日本語なので、そういう環境を整えるというのは難しいだろうというふうなことは思いますけれども、そこを何とか工夫で、そういうことも可能なような日本の学術界になっていくほうがいいのではないかというふうに思います。
 非常に時間のかかることで、長期的な視点に立ったものだと思います。ですので、ここにこういうことも書いてくださいというものではないんですけれども、そういうことも必要ではないかなと思って、意見を述べさせていただきました。
 ありがとうございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 言語の問題というのは、これまで非常にありましたけれども、AIの進歩で、書くものに関しては、日本語も英語も自由自在に行き来できるような格好になっていますので、今おっしゃられたことは、あまり遠くない将来に非常にスムーズに実現できるのではないかと思ったりもしています。
 加藤委員お願いします。
【加藤委員】  ありがとうございます。加藤でございます。
 資料3-2の最後、「AIなど」と書いてあるパラグラフの書きぶりについてコメントしたいと思います。
 私、研究分野が情報工学分野で、AIそのものではありませんけれども、情報のことを40年以上にわたってやってきています。ここの書きぶりは、AIなど、そういう情勢の変化があるから、学術研究の意義や推進方策について検討しておく必要があるのではないかとなっていて、これはこれで全く否定するものではないのですが、私はもうちょっとドラスティックなイメージを描いています。コンピュータが出現したことによって、あるいは、プログラミングというものが出現したことによって、学術の世界は大きく変わったと思います。コンピュータ出現のはるか昔から、学術はあるわけですが、恐らくコンピュータ、あるいはプログラミングというものが出現することによって、それらが大きく加速し、進化したと言っていいと思います。これは理系に限らず、文系もそうではないかと思います。
 昨今話題になっているAI技術、特に生成系AIですが、最近私は、コンピュータがかつて学術を変えたように、生成系AIもまた学術を変えてしまう可能性について考えています。変えるといっても、本質的に変わるかは分かりません。ですが、コンピュータが学術を加速、あるいは進化させたように、生成系AIがまた一段、学術を加速・進化させる可能性はあるのではないかと考えています。
 学生さんがよく言う言い方に、「Google先生」という言い方があります。疑問に思ったことをGoogleに聞くとすぐに分かりやすく答えてくれるということで、実は、検索したことについて要領よく説明しているページが見つかりやすいということなのですが、生成系AIは、ある意味それをはるかに凌駕していて、大規模に学習した情報をうまく編集して回答をつくり出す能力を持っています。
 これが学門で何を意味するかというと、例えば、以前だったら論文をたくさん読み込まなければ頭に入らなかった、あるいは、サーベイできなかった膨大な知識の取りまとめを、AIがやってくれるということです。「プロンプト」と呼ばれる、生成系AIへの問い合わせ文をうまく書くのがポイントですが、膨大な情報をうまくまとめて編集してくれる訳です。これによって、理系においても文系においても、学術の進歩・進化が加速される可能性がある。
 別の例です。コンピュータのプログラミングというのは結構難しくて、プログラミングが上手く出来るということは、喩えれば、楽器がうまく弾けるようなことに相当します。職人芸のような奥深さもある。生成系AIがあると、プログラムを書けなくても、我々が日常使う言葉でプロンプトを書けば、人間に成り代わってプログラムを書いてくれます。
 コンピュータが発明され、世に普及したときのようなことが、今また、起きつつある。それが学術界をも変える可能性について、我々はもっと意識してもいいんじゃないかと思っています。
 もう一つ指摘しておきたいことは、ちょっと悲観的な話になって恐縮ですけれども、日本はDXが遅れているという話はよく聞くと思いますが、今年1月16日の日経新聞に、AI研究の質と量が、中国・米国が突出して、日本はそれに比べて大幅に引き離されているという記事がでました。それから、JETROの昨年12月5日のニュース配信で、日本の世界デジタル競争力は、一昨年より3位後退して、今、世界32位であるという、結構悲しい話が出ています。
 もしかしたら、社会全般だけではなくて、日本の学術界全体が実はDX化が遅れているところがあって、今こうしている間も、生成系AI等を使って学術界に革新を起こしてやろうという研究グループが、世界各地で活動を進めている気がします。
 最後にまとめますけれども、AI研究とその利用に関して、我が国は今、世界に遅れをとっていると言わざるを得ないところがあります。キャッチアップをして遅れを取り戻すことをもっと積極的に進めていくべきではないかと考えています。
 以上です。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 生成系AIの登場によって、我々、世界が大きく変わるのはもう間違いないので、そこの危機感と言うとちょっと簡単過ぎるような大きな変化が今起きつつありますから、学術分科会だけではなくて、社会全体がそういうことをきちんと認識できるようにならないといけないなと、私も強く思っています。
 すみません。だんだん時間がいつものようになくなってきてしまいました。
 原田委員、お願いいたします。
【原田委員】  ありがとうございます。
 私からは、29ページにあります濵口前科学技術・学術審議会会長の所感の言葉の中にある、研究基盤を支える専門技術人材の整備ですとか、それから、その下のほうにありますその他の検討事項のところで、博士人材のキャリアパスの多様化、この人材への投資のところをもう少し強く検討点として見せることはできないかなと思いました。
 アカデミアを支えるポストとして、どうしても研究者ばかりクローズアップされがちですが、例えば、様々な装置の開発者ですとか、技術者、ラボマネージャー、モデルの開発者、エンジニア、こういった多様な人材がアカデミア全体を支えている。そういったところがなかなか見えにくいことを問題視しています。、それから、予算の配分も、どうしても装置、あるいは研究者への配分は充実させられるけれども、基盤を支える研究者以外の人材への予算の配分が手薄になっていると思います。
 ですので、アカデミアで活躍しているのは研究者に限らないということを可視化・アピールしながら、企業等へ流れていってしまう若者たちを何とかアカデミアに引きつけることが大事なのではないかと考えます。
 海外に行くと、大学には、研究者ではないポジションの技術者、ラボマネージャーが生き生きと活躍している姿がすごく印象的なんですね。学生たちはそういう人たちに支えられながら、あるいは、若手の研究者たちもそういう人材に支えられながら、しっかりと研究にエフォートを割くことができている。
 ですので、そういった研究基盤を支える人材分野をより多様化、リッチにしていただくということが、最終的には、研究者の研究に配分できるエフォートを充実させるということにもなる。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、長谷部委員、お願いします。
【長谷部委員】  ありがとうございます。
 オープンサイエンスについて、少し違う視点からのことをお話ししたいんですけれども。私、最近小学生用の科学読みものの監修を頼まれてお手伝いしているんですけれども、そのときに、ライターさん、専門家ではない方、そういう方が書かれたものを読みまして、彼ら、インターネットから情報を得ているんですが、すごく本当らしいんですが、ほとんど間違った情報なんですね。例えば、ChatGPTで情報を得ても、やはり間違ったものが集まってくるんですね。これ、科学論文、我々がやっている科学の成果というのが、多分正しく社会に伝わっていないというところに問題があると思うんです。なので、そのオープンサイエンスの問題を国として考える場合に、国民に正しい科学がきちんと伝わるような方策というのも一緒に検討されていただくと非常にありがたいかなと思いました。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 私が把握している限りは、今日御出席した委員の皆様は一通り御発言いただいたかなと思うんですけれども、私はまだだという方は手を挙げていただけますか。
 どうもありがとうございます。
 もう時間にほぼなっていますので、ここでまとめるということはいたしません。非常に活発な御意見を頂戴した分科会になったと思います。
 やはりFTEというんですか、研究者が研究できる時間を確保するということは重要で、それが今お話にもありましたような、支援するエコシステムを確立するということでもあろうかと思います。
 また、新たなアーリーキャリア、ミッドキャリアの人たちを受け入れて、研究者が生き生きと過ごせるようにするためにも必要なのかなと思います。
 また、基盤経費と競争的研究費の問題ということは、これも引き続き、きちんとここで表現していかなければいけないと思います。
 一方で、基盤的経費というのは、国立大学にしかないんだと思いますので、基盤的経費の概念を広げればいいだけかもしれませんけれども、もう少しユニバーサルな、国公私立全体の研究者に当てはまるような表現をしていくべきなのかなと、前からこの議論はそういうふうに感じています。そうじゃないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんので、ぜひ御意見をいただけたらと思います。
 あとは、評価のエコシステムですね。地域と都市という課題もあるというふうにおっしゃっていただきましたし、そこで、地域で行う研究をどう評価していくのか、地域にスペシフィックな課題を研究する方々もいらっしゃるわけです。それと、サイテーションなどで測られるインパクトとは必ずしも両立しない場合があると。そういうサイテーションで測ったインパクトが基準になって、大学のランキングなどが決まり、それがマスコミに取り上げられて、日本の大学はどうしているんだろうかということにもなっているわけです。そういう評価のエコシステムを変革していくというのは重要なことかなと。
 一方で、ランキング等は、国民とのコミュニケーションのツールであるとも言えますので、それが低いままでいいかどうかというのは、また別に考えなければいけないなと思います。
 また、日本で活躍する外国出身の研究者の皆さんも増えていっていただきたいというお話しもありました。
今日皆様から非常に多くの御意見をいただいて、これで十分かどうかというのは、また皆様と一緒に議論していきたいと思いますけれども、一通りの基盤といいますか、議論のアイテムというのは、おかげさまで出そろったのではないかと私は判断いたします。
 ということで、いかがでしょうか。最後にぜひ発言をしたいという方はいらっしゃいますか。よろしいですか。
 本分科会での議論は、このようにして続けてまいりたいと思います。また、各部会に関係する論点については、今回の議論を踏まえて、各部会のほうでも議論を深めていただければと思います。
 それでは、本日の議題は以上となりますので、最後に事務局から連絡事項があれば、お願いいたします。
【髙田学術企画室室長補佐】  本日は、どうもありがとうございました。
 次回の学術分科会の日程につきましては、日程調整の上、改めて御連絡を差し上げる予定でございます。
 また、本日の議事録につきましては、後日メールにてお送りいたしますので、御確認のほうをよろしくお願いいたします。
 連絡事項は以上となります。
【名子学術企画室長】  すみません。1点補足です。事務局でございます。
 今後の進め方のところは、今日、ちょっとキックオフ的な形で、今日いただいた御意見を踏まえながら、論点を示しながら、また、エビデンスのお話もありましたが、多分、あるものとか、ないものとか、いろいろありますので、それに関わる論点のもののデータなどもまたお示ししながら、議論を深めていただけるようにしていきたいと思います。
 また、今日お話しいただいて、いろいろとまた改めて出さなければいけない資料とかあるかと思いますので、そういったところをうまく進めていければと思っているところでございます。
 今日の論点は、あくまで個別論点の中で出てきた俯瞰する論点ということで整理したものと、当然、あと各部会の論点等ありますので、そういったもので、もう少し見たほうがいいかなといったものを示させていただいて、あとは、総合的なものをちょっと入れていただいたということでございますので、具体的な推進方策も含めたお話などは、また引き続き議論しながら進めていくことになるかと思っているところでございます。
 すみません。補足でございますが、以上でございます。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 北本先生への回答をお願いするのを忘れていました。名子室長、ありがとうございました。
 いずれにせよ、後に続くたくさんの論点を出していただいたことを深く感謝申し上げます。
 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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