学術分科会(第86回) 議事録

1.日時

令和4年11月9日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 令和5年度概算要求について
  2. 第11期学術分科会の調査審議の現状について意見交換
  3. 今後の学術研究の推進について意見交換

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
大野分科会長、須藤分科会長代理、梶原委員、小長谷委員、仲委員、長谷山委員、福田委員、観山委員、井関委員、尾辻委員、尾上委員、加藤委員、神谷委員、岸村委員、小林委員、城山委員、新福委員、武内委員、戸田山委員、中野委員、中山委員、長谷部委員、原田委員、山本佳世子委員
(科学官)
森口科学官、恒吉科学官、磯科学官、松田科学官、野崎科学官、黒橋科学官、北川科学官、上川内科学官、藤森科学官、加藤科学官、外田科学官、近藤科学官、長壁科学官

文部科学省

森研究振興局長、木村大臣官房審議官(研究振興局担当)、仙波振興企画課長、黒沼大学研究基盤整備課長、永田学術研究推進課長、梅原産業連携・地域振興課 拠点形成・地域振興室長、河村学術企画室長、二瓶学術企画室室長補佐

5.議事録

【二瓶学術企画室室長補佐】  事務局でございます。まだ一部、御出席の予定の先生で入られていない先生もいらっしゃるようでございますが、時間になりましたので、大野分科会長、開会のほうをよろしくお願いいたします。
【大野分科会長】  皆様、おはようございます。それでは、定刻となりましたので、ただいまより第86回の科学技術・学術審議会学術分科会を開催いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、本日の分科会のオンライン開催に当たって、事務局から注意事項と、本日の出席状況についての報告をお願いいたします。
【二瓶学術企画室室長補佐】  事務局でございます。本日もオンラインでの開催となりますので、事前にお送りしておりますマニュアルに記載のとおり、御発言の際には「手を挙げる」ボタンをクリックしていただきまして、指名を受けましたらマイクをオンにし、お名前を言っていただいた上で、ゆっくり御発言いただければと思います。
 なお、分科会長以外の委員の皆様は、御発言されるとき以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 機材の不具合等ございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。
 また、本日は、勝委員、白波瀬委員、井野瀬委員、松岡委員、山本智委員が御欠席予定でございます。
 29名中、現時点で御出席の御回答をいただいている24名の御出席予定でございます。以上で定足数を満たしておりますので、御報告いたします。
 なお、本日の会議は傍聴者を登録の上、公開としております。
 事務局からは以上でございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 事務局の異動もあったということですので、そちらの御報告もお願いします。
【二瓶学術企画室室長補佐】  事務局の異動につきまして御報告いたします。
 9月1日付で、研究振興局長に森晃憲が、大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)に木村直人が着任しております。
 まず、森局長から一言御挨拶を申し上げます。その後に木村審議官にお願いいたします。
 よろしくお願いいたします。
【森研究振興局長】  研究振興局長に参りました森でございます。先生方、よろしくお願いいたします。
【木村大臣官房審議官】  研究振興局担当の審議官で参りました木村でございます。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。
【大野分科会長】  森局長、木村審議官、ご挨拶ありがとうございました。
 それでは続けて、事務局より配付資料の確認をお願いしたいと思います。
【二瓶学術企画室室長補佐】  本日の資料は、委員の皆様へ事前に電子媒体にてお送りさせていただいております。
 本日の主な議題に係る資料に関しましては、議事次第のとおり資料1から資料3、及び参考資料としてお配りしております。不足等ございましたら事務局まで御連絡願います。
 資料の御確認は以上でございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入ります。本日の議題は議事次第、今御説明があったとおりであります。まず議題の(1)令和5年度概算要求について御報告をいただきます。なお、報告の後、質疑応答の時間を確保したいと思います。
 それでは、令和5年度の概算要求について、仙波振興企画課長より御報告をお願いします。
【仙波振興企画課長】  文部科学省、仙波でございます。資料1を使って説明させていただきます。ただ、現在、資料1の内容で概算要求しているところですが、参考資料としてお配りしてます二次補正予算が、昨日午後、閣議決定され、幾つかの概算要求は、先に国会審議へと向かう予定になってございます。その点に触れながら、資料1に基づいて簡単に説明をさせていただきます。
 資料1、1ページ目をめくりまして、文部科学省概算要求のポイント(科学技術関係)という資料がございます。
 この資料、科学技術関係をまとめた資料になってございまして、4つの柱、左上から「我が国の抜本的な研究力向上と優秀な人材の育成」、それから左下の「イノベーション創出を支える基盤の強化」、それから右上に参りまして「重点分野の研究開発」、さらに右下、「国民の安全・安心やフロンティアの開拓に資する課題解決型研究開発の推進」という4本柱に基づいて、今回概算要求をさせていただいてございます。
 幾つかのポイントについて、この後、資料の2ページ目から、簡単に説明している資料を抜粋してございますので、その資料に基づいて説明させていただきます。
 2ページ目は、研究力の向上についての施策の一覧表になってございます。
 左側の柱の科学研究費助成事業、科研費と言われる事業、それから戦略的創造研究推進事業、創発的研究支援事業。それから右側に参りまして地域中核・特色ある研究大学強化促進事業、さらにはWPIや共同利用・共同研究システム。そして一番右側の下にあります学術フロンティアを先導する大規模プロジェクトの推進。これらについては、それぞれポンチ絵を3ページ以降につけさせていただいてございますので、順次説明してまいります。
 3ページは、地域中核・特色ある研究大学総合パッケージの全体像でございまして、これの中に、先ほどの資料の内容を簡単にまとめさせていただいてございます。
 4ページのほうが、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業の概要でございまして、令和5年度、56億円の要求をしてございますが、こちらのほう、補正予算で2,000億という形で、これから国会審議に行く予定になってございますので、そういった形のものを、併せて考えていただければというふうに考えてございます。
 実際に、この資料の中における、強みや特色のある拠点等を有する大学がステップアップする費用として1,498億円。それから別途、施設等の設備の支援として502億円の補正予算になってございます。
 5ページ目に参りますと、共同利用・共同研究システム形成事業、こちら27億円の概算要求をさせていただいてございます。こちらは、学際領域展開ハブ形成プログラムという形で、異分野の研究を行う学際共同研究の提案を支援する制度として、大幅拡充して要求させていただいているところでございます。
 6ページ目はWPIの概要でございます。こちらは、左側の真ん中の辺りに令和5年度概算要求のポイントをまとめさせていただいてございますが、「WPI2.0」という形で連携してアライアンスを組んで提案していただく方式のものを新たに追加すること。それから、「WPI CORE」という形で、これまでよりも、少し要件を緩和した形で、まだ拠点として成長途上のものも拾える形の提案を受け入れさせていただくものを、追加で要求させていただいてございます。
 そのほかに、一定額を継続的に、終了後も支援できる仕組みを構築するという形で、合わせて92億円の要求をさせていただいているところでございます。
 それから7ページのほうは、共創の場形成支援でございまして、こちらのほう、一番下の紫色のところにあります「育成型」、こちらを今年度新規4件のところを新規10件に拡充したり、「本格型」も5件のところを10件に拡充したりするなど、全体として163億円の要求をさせていただいているところでございます。
 8ページ目は人材の全体像でございますが、9ページ目のほうに、まず、人材の中で博士号後期課程学生の処遇向上と研究環境確保という形で、令和4年度よりも約1,000人増の要求をさせていただき、49億円の要求をしているところでございます。
 10ページは科研費でございまして、こちらのほうも今回の補正予算に計上させていただいているところでございまして、下側の枠の中、令和5年度概算要求の骨子の1ポツにあります国際共同研究の強化という形で、国際先導研究の拡充、こちらのほうも補正予算で110億。それからアカデミアのキャリアパスを支える切れ目ない支援、こちらの特別研究員の基金化を進める経費として46億円の補正予算という形で、補正予算のほうの審議に入ろうとしているところでございます。
 その他、科研費その他の要求も、本予算のほうで着実に進めていければというふうに考えてございます。
 11ページ目のほうは創発的研究支援事業でございまして、こちらのほうも補正予算で553億円のものが認められて、750件程度の基金積み増しという形になってございます。
 12ページ目の戦略的創造研究推進事業、こちらは研究領域数の拡充等で455億円の拡充要求をさせていただいているところでございます。
 13ページ目は先端国際共同研究推進事業という形で、さきの科研費の「国際先導」がボトムアップ型の国際頭脳循環を支える制度でございましたが、こちらは、ある意味でのトップダウン型で頭脳循環を支える制度として要求させていただいてございまして、こちらも新しい基金を創設するという形で、補正予算でJSTに440億、AMEDに61億、合わせて501億の補正予算という形になってございます。
 14ページ目は、世界の学術フロンティアを先導する大規模プロジェクトの推進という形になってございまして、こちらのほうも補正予算で、ハイパーカミオカンデやすばる望遠鏡といった81億円の補正が認められているところでございます。
 資料としては、この後16ページ以降で国際卓越研究大学の資料も補足させていただいてございます。簡単に言うと、16ページの左側の国際卓越研究大学の申請と認定、それから計画の申請と認可という手続が、今年末から行えるように様々な準備を進めさせていただいているところでございます。17ページにありますとおり、基本方針を策定し、それに基づいて公募を行う段階になってございます。その資料をつけさせていただいているところでございまして、御参照いただければと考えてございます。
 私からの説明は以上になります。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 ただいま、議題の1の令和5年度概算要求について、補正予算も含めた形で御報告をいただきました。本件について御質問あるいは御意見がありましたら、「手を挙げる」のボタンを押して挙手いただければと思います。手の挙がっている委員の皆様から、順番に指名をさせていただきます。いかがでしょうか。
 岸村委員、お願いいたします。
【岸村委員】  どうもありがとうございます。私からは、コメントになるかもしれないですけれども、資料9ページのほうで、博士後期課程学生を中心とした支援というのがあったと思いますが、またさらに1,000人増ということで、支援を追加していただいて非常にありがたい限りで、こちらは生活費だけでなく研究費もついてくるようなプログラムで、非常にすばらしい内容だと思っております。
 ただ一方で、これ、まだ始まったばかりですのであれなんですけども、何年か継続していったときに、日本の若者あるいは日本社会にどのぐらいのインパクトがあったかというのも何か継続して見ていただけると良いかと思います。
 よく言われるのが、私の大学でもそうなんですけど、やはり留学生が非常に多くて、それを支援すること自体は私は全然いいとは思うのですが、やはり日本の博士学生を増やすというのも、日本社会にとってもそうですし、実際のところは、研究室の運営という意味でも日本人の博士学生を確保するというのは結構大事なところでもありますので、仮にあまりそこに響かなかったとして、少子化の影響とかもあるとは思うのですが、このプログラムが悪かったから打切り、みたいな話になってしまうと困るなと思っていまして、何か別の要因、例えば社会側が結局のところ受け入れないから、学生さんにはあまり進学が魅力的に見えないとか、そういったことがもしも問題としてあるのであれば、明らかにしていただくのもいいと思います。
 また、留学生の観点では、もちろん博士課程において支援していただくのも大事なんですけれども、よく聞くのは、修士から日本に来て大学院に入ろうとしても、その時点でなかなか支援がなくて、実際、国費留学の奨学金ぐらいしかなくて、民間もそれほど多いわけでもないですし、その段階から継続して支援が可能ですと、国際的に人材を確保することにもつながるかなと思いますので、またちょっと別の枠組みになるのかもしれませんが、その辺りも御検討いただければ非常にありがたいかなと思っております。
 一旦以上です。
【大野分科会長】  事務局、いかがでしょうか。
【仙波振興企画課長】  まず、コメントのほう、確かに日本人学生の博士進学を支援するという形のことがうまくつながるよう、検証していきたいと思います。
 後者の、修士からという形については、修士に対する学費の支援、奨学金というものも拡充されていこうとしておりますので、そういったところを見ながら、何らかの形で我々としても、博士後期課程だけではない施策を、省を挙げて、高等局とも相談しながら考えていければ考えてございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。私も今、岸村委員が御指摘になった点は極めて重要なポイントが含まれていると思います。
 まず日本の社会にドクターが受け入れられるかどうかというのは、受け入れられるドクターを育成していない大学の問題だと、これまで整理されてきた面がありますけれども、社会全体としてドクターが活用されるような社会をつくっていこうというふうに、流れが今、変わりつつあると思います。
 そういう意味で、社会全体で、様々な高度な人材を活用する社会へ変わっていこうということが重要かなと思います。
 また、研究室の運営に関しては確かにそのとおりで、非常に重要なポイントです。日本の大学がこれから国際的に伍していけるようになるためには、大学の国際化も非常に重要になってくるかと思います。
 修士に関しても、そのとおりです。海外では多くのドクターコースは5年一貫ですので、その5年一貫をまとめてサポートするという仕組みを見据える必要もあろうかと思います。
 すみません、私も非常にその点に関しては発言をしたかったというところですので、割って入らせていただきました。ありがとうございました。
 それでは仲委員、お願いいたします。
【仲委員】  どうもありがとうございます。私は8ページにありますダイバーシティーの推進、科学技術・イノベーション人材の育成・確保の右側のオレンジ色のところにあります、女性研究者の活躍促進のところについて意見を申します。
 こういったことを強調してくださって、大変ありがたい限りです。
 ただ、一番下に、女子中高生の理系進路選択支援プログラムとありますけれども、思うに、中学校・高校のところで理系・文系と分けてしまうというのが、なかなか理系に女性が進んでいきにくい一つの原因になっているのではないかと思うところです。
 ですので、インターディシプリナリーな教育の推進とか、そのような形で、いわゆる文系であっても理科系の素質は必要ですし、また逆も真ですので、そういうインターディシプリナリー教育の推進というような形になると、さらに嬉しいと思ったところです。
 以上です。
【大野分科会長】  ありがとうございます。事務局からは後で何かありましたら御発言いただきたいと思います。今はコメントということで受け取らせていただきます。
 それでは尾辻委員、お願いいたします。
【尾辻委員】  ありがとうございます。尾辻でございます。御説明ありがとうございました。
 まず、10ページの科研費事業に対する予算要求について、2点ほど。
 まず、国際先導研究が補正予算として単発的に新設されたことが、非常に心配していたんですけれども、今回予算の措置ができて、持続的な、定着する方向で運営できるということを大変うれしく、ありがたく思っています。
 一方で、特別研究員奨励費のほうの若手支援のところにつきましても、今回初めて、これまで身分がどこにも保障されていなかった特別研究員に、機関雇用の機会を予算措置と共に与えていただけたことが、本当に大きな改革だと思っています。
 先ほど分科会長の大野先生が言われたとおり、この事業をさらに我が国の博士課程学生の進学の機会をもっとエンカレッジすることと、社会が受け入れられるシステムにするためには、ぜひ5年一貫の修士と博士が、言わば分離した形から、諸外国に倣って一貫した大学院課程の在り方というものを、ぜひ文科省様には、今後具体的に検討していただきたいというのが次です。
 それから、13ページになるんですけれども、今コメントさせていただいた国際先導研究がボトムアップに対しまして、こちらがトップダウン型の大型の先端国際共同研究推進に支援をいただけたことを確認したところで、これはぜひ必要だと思っているのですが、少し具体的にお聞きしたいのは、従前ですとJSTのSICORPがこの一番大きな部分を占めているのではないかと考えているんですけれども、具体的にこの事業として、新しい種目ですとか事業が創設されるのか、それとも従前の、今申し上げたようなJSTのSICORP等の枠組みを拡充・補強する形でお考えになっておられるのか、その辺を少し聞かせていただければありがたいです。
 以上です。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 それでは事務局、お願いいたします。
【仙波振興企画課長】  科研費については、永田課長から。
【永田学術研究推進課長】  はい。それでは私のほうから。
 尾辻先生、どうも御意見ありがとうございました。まず、科研費の国際先導研究の関係でございます。こちらのほうは当初予算で要求していたところでございますけれども、現在、1回目の公募審査中というところで、継続性を担保するという観点から、引き続き年度内の公募もさらに続けていくとともに、定着を図ってまいりたいと考え、今回の補正にも計上させていただきました。規模感としても110億円、前回と同規模で要求させていただきました。
 また、特別研究員奨励費につきましても、一部の基金化を当初予算で要求していたところでございますけれども、今回の補正予算案では、現在採択されている方の残りの研究費、従来補助金で措置する部分を基金化するということになりました。特別研究員奨励費自体を基金化するということで、今回、道筋がちょっと見えてきたと思っております。
 また、先ほどのトップダウンの国際共同研究でございますけど、こちらのほうはちょっと所管が違いますが、先ほど言われた、既に事業をやっている欧米と先進国を対象とした部分を強化するということで、今回枠組みを新たにつくることから新たな基金化をして制度を立ち上げるため、今回要求をすることになったと伺っております。
 トップダウン、ボトムアップ併せて、国際共同研究、頭脳循環を図ってまいりたいと思ってございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【尾辻委員】  ありがとうございました。よく分かりました。
【大野分科会長】  よろしいですか。それでは、続きまして中山委員、お願いいたします。
【中山委員】  千葉大の中山です。今回4ページの、いわゆる地域中核・特色ある研究大学強化促進事業、56億円の要求が、2,000億円の基金という形で補正予算で計画されているということを伺って、非常に大幅な進歩かなと思ってございます。
 4ページを見てください。先ほどちょっと御説明があった、2,000億のうちの1,500億と500億程度ですかね、これ、例えば基金なので、来年度以降、どういった予算規模でこれが公募なり措置されるという予定なのかということをお伺いできればと思います。
【大野分科会長】  事務局、よろしくお願いします。
梅原産業連携・地域振興課拠点形成・地域振興室長】  産業連携・地域振興課の梅原でございます。
 本事業につきましては、事業総額2,000億円ということで、「地域中核・特色ある研究大学の連携による産学官連携・共同研究の施設整備事業」として、500億円の施設整備の予算と、「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」として、1,498億円で、設備の整備、URAの配置等のソフト面の支援に使っていただく予算の内容にしてございます。
 「地域中核・特色ある研究大学の連携による産学官連携・共同研究の施設整備事業」につきましては文部科学省の執行になりますので、恐らく年度内に、25件程度の採択を見込んでおりますけれども、公募をかけることになろうかと思います。
 また、「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」は基金化しておりますので、恐らく来年度以降、4月以降のスケジュールで、公募をかけていくということを考えております。
 一度で全て採択することになるかもしれませんが、一方で複数回実施することも想定しておりますので、その場合は年度をまたいで、何度か採択の機会を設けて、25件を採っていくことになろうかと思っております。
【中山委員】  もともと最長10年の事業実施ということだったので、それがこの基金である程度担保されるという、そういう理解でいいですかね。
【梅原産業連携・地域振興課拠点形成・地域振興室長】  はい。基金の部分につきましては、まずは5年度分の予算を計上しております。その後、もしその取組がさらに進むというようなことがあれば、評価を経て10年に延ばすことも視野に入れて、今後、財務省等と協議していきたいと考えております。
【中山委員】  ありがとうございました。
【大野分科会長】  ぜひ、その事業内容が分かった時点で、また御報告いただきたいと思いますし、事業内容に対して、本分科会で出た意見も反映していただければと思います。ありがとうございました。
 それでは、続きまして長谷山委員、お願いいたします。
【長谷山委員】  ありがとうございます。私のほうからは、ちょっと具体論というよりも感想のようなものになってしまって申し訳ないです、8ページの、先ほども話題になりました科学技術・イノベーション人材の育成・確保というところで、若手研究者の育成・活躍促進とあります。
 博士の後期課程学生の処遇を向上するとか、特別研究員制度、また、世界で活躍できる研究者の戦略育成事業、それぞれは大変ありがたい、すばらしいもので、感謝したいと思いますけれども、全体として大学の現場で感じていることから言えば、例えばここに言う3つをつなぐものといいますか、一貫してキャリア形成につながるような、そういう仕組みをつくっていくということが重要じゃないかと思います。
 例えば、博士の後期学生は、もちろん経済支援も重要なんですけれども、やはりこれはもう学生というよりも1人の研究者ですので、単独の研究費をもらえるかどうかというのは一つポイントだと思うんです。
 つまり、理系の学生ですと、それぞれの研究室に入って、プロジェクト単位で研究を始めていると。なかなか、自分自身で何か気がついたときに、こういう研究してみたいというものを単独で取り組むということはできないような仕組みになっていると思います。
 そういう意味で、博士後期ぐらいになりますと、研究支援というようなところをも強化してほしいというのもあるでしょうし、もう少し先に、9ページのほうにあるようなキャリア形成支援というものが、産学官連携でできればそれはそれでいいと思いますが、実情に合った、次のキャリアパスが見える形で安心して研究に専念できるような、一気通貫の制度といいますか、そういう設計が必要じゃないかと思います。
 その3つ目の、「世界で活躍できる若手研究者」もそうで、実際には中堅といいますか、若手の研究者は、世界で活躍したいと、例えば在外研究とか留学とかいう形で出たくても、今入っているプロジェクト内での遅れが出ると。1年いないことでですね。それから、次のキャリア形成で遅れをとるんじゃないかということで、なかなか外へ出ていきたがらないという現状があると思います。
 ですから、こういうところは、経済的な支援も必要なんですけれども、例えば今、世界の主要な大学というのは、やはりオンラインを活用した研究交流とかを進めていますので、若手の研究者が単独で、そうしたオンラインを利用した、研究者がつくっているコンソーシアム、プロジェクトに、日本にいながら入れるような支援――これは要するに施設整備、システムの支援になりますので、もちろんそういう方向の施設設備の補助事業とかはつくってくださっているんですけれども、それと、こちらの経済的な支援というものがうまくセットになったような、そういう、ここでも一貫性のある、一体性のある事業、支援の仕方というものを工夫していく必要があるんじゃないかというふうに感じました。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。大変重要なポイントだと思います。
 先ほど仲委員が御発言になられた女子中高生の理系、文・理ということが、いつから分けるのか、分けないのかということも含めて、今はドクターの出口のほうに視点を置いていただきましたけれども、全体を見てきちんと施策をつないでいくということが極めて重要だという御指摘だと思います。
 コメントとして承り、後でもし何かありましたら事務局のほうからお話もしていただきたいと思います。
 少し手が挙がってまいりましたので、先に進みたいと思います。
 原田委員、お願いいたします。
【原田委員】  ありがとうございます。私も、同じページで2点ほどコメントさせていただきたいと思います。
 1つ目は、このページの下のほうの枠にあります国際科学技術コンテストです。こちらは従来、様々なコンテストに御支援いただいていて、大変すばらしい取組だなと思っていますが、最近人材不足が言われている情報工学の分野、この分野にも若手向けのコンテストが、世界でいろいろあるようですので、ぜひともインフォマティクス分野に多くの高校生たちが挑戦する環境を整える観点から、参加の支援をお願いします。
 それから2点目ですが、先ほどの仲委員からのコメントもありましたが、女性研究者の活躍促進、こちらも令和5年度に支援の規模を充実、拡充させていただいて大変ありがたいところです。
 ダイバーシティー研究環境実現イニシアチブについて、育児に関しては必ずしも若手女性研究者だけが担っていくべきものではないはずですので、若手の男性研究者も同じようにこういった支援を受けられるよう文科省から各大学の取り組みについてフォローアップをお願いします。
 それからもう1点、まだまだあらゆるポストに女性の研究者の数が少ない現実を改善するために、恐らくこの令和5年度、女性リーダー育成型の支援規模拡充を御検討いただいているのだと思います。学生にとってみると、女性教員を含む多様な指導者から学ぶ権利がありますのでそういう観点で、ぜひとも指導陣の多様性を高める、そういう観点での女性リーダー育成、あるいは女性研究者活躍の促進、そういう効果的な事業の推進をお願いします。
 各大学で企画している取り組みについて、現場の女性研究者のニーズにマッチしているのかどうか、より効果的な取組内容で実施していただきたく、各大学に働きかけをお願いします。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。まずは皆様から御発言をいただこうと思います。
 それでは、続きまして中野委員、お願いいたします。
【中野委員】  5ページの、共同利用・共同研究システム形成事業についてです。
 大学共同利用機関、それから共同利用・共同研究拠点というのは、日本に非常に特徴的なシステムで、研究力向上に非常に大きな貢献をしていると思います。
 それで、この形成事業のシステム、新しいシステム形成事業なのですが、そのポテンシャルをさらに引き出すという意味ですばらしいんですけれども、内容で、大学共同利用機関または共同利用・共同研究拠点がハブとなって、新しい機能を満たすためのこういう新しいシステムをつくるのか、それとも、大学共同利用機関と共同利用共同研究拠点が協力して、一緒になって一つのハブを形成して、新しい機能を切り開いていってもいいのかというところが、少し明確でないので、そのどちらかということをお答えいただきたいということと、もし前者であれば、後者の道も開いていただきたいというのが要望です。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。これは質問ですので、事務局、簡単に答えられますか。
【黒沼大学研究基盤整備課長】  大学研究基盤整備課でございます。御質問ありがとうございます。
 どちらもありというふうに思っています。というのも、まだ公募要領とかを策定している段階ではございませんので、いろいろ御相談なり、大学から来ておりますので、その構想を見ながら、幅広い構想を拾っていけるように柔軟に対応していきたいと思っております。
 以上でございます。
【中野委員】  ありがとうございます。
【大野分科会長】  それでは、続きまして山本委員、お願いいたします。
【山本佳世子委員】  山本です。私が伺いますのは、これは補正による形だと思うんですけれども、基金の形が随分たくさん出てきていると耳にしています。概算で出していたもののうち、科技大学系ではどのあたりが対象になっているのかというところを教えていただければと思います。
【大野分科会長】  こちらも質問ですので、事務局、お願いいたします。
【仙波振興企画課長】  対象と申しますと、基金を造成する法人の名前ということでしょうか。
【山本佳世子委員】  事業の形で。概算で紹介されたものの中から、補正で前倒しにできるものは前倒しになりますし、それで大きなものについては基金で、単年度でない形で対応するということだと思いますので、どのあたりの事業なのかということなのですが。
【仙波振興企画課長】  そうしますと、参考資料でお配りをさせていただいてございます補正予算、これでいうと、すみません、科学技術に間接的にしか関係ないんですけども、1ページ目に、大学・高専の機能強化に向けた支援ということで基金というのが、隅付き括弧、黒いちょっと太い形の括弧で「基金創設」と書かれているのが分かると思うんですけども、これが基金になってございまして、2ページ目のほうの科学技術でいくと、地域中核・特色ある研究大学、こちらのほうが基金という形。それから国際頭脳循環のトップダウン型、これが基金創設。それで、科研費の国際先導、これが既存の基金への積み増し。創発的研究支援事業、これも既存の基金への積み増しという形になってございます。
 それから3ページ目のほうに行きますと、革新的GX技術創出事業という、カーボンニュートラルに向けた研究開発を支援する、こちらのほうが基金になってございまして、今見えている一番下になるのですが、経済安全保障重要技術育成プログラム、これは昨年度、基金ができているものですが、これに1,250億の積み増しというふうな形になってございます。
 それから、この下のほうにスタートアップに関する支援、こちらが基金創設することになってございます。
 基金になるのが以上と聞いてございます。
【山本佳世子委員】  すみません、ちょっと追加で、基金の形にするというのは、もちろん、使うほうとしては単年度でなくて安心して何年かということでできますし、補正などのチャンスにそういった安定した形にするという目的で基金化するという――すみません、一般的なものとして、文科省の事業を基金化するものというのはどういうふうな判断をされているのでしょうか。
【仙波振興企画課長】  長期にかかる取組が必要になるもの――普通の補正予算ですと、年度中に執行し、その事業を終わらせないといけないので、補正予算が成立してから年度内、今からですと数か月程度で終わる事業を超える事業だと、基金で要求をさせていただくというふうな形になってございます。
【山本佳世子委員】  ありがとうございました。
【大野分科会長】  それでは新福委員、お願いいたします。
【新福委員】  これまでの長谷山委員ですとか原田委員のおっしゃっていたこととつながる内容になります。
 8ページの、若手研究者の育成・活躍促進の部分になるんですけれども、やはり世界で活躍できる研究者戦略育成事業で、たくさん、周りの研究者も含めて支援をいただいていて、大変ありがたいと思っております。
 日本にいながら世界で活躍する、世界とつながるというところへのサポートというのは充実してきているように思うんですけれども、では実際、一定期間海外に行って、そこで様々な能力を身につけて日本に帰ってくるというところが、まだやはり支援が足りないというようなことを研究者間で聞いておりまして、やはり日本の研究者コミュニティーとのつながりが、一旦出てしまうと薄れてしまったり、また、帰ってくるとき、なかなかポストを得られないというような問題があるというふうに伺っています。
 また、30代以降で、若手から中堅で渡航するというときには、家族をどうするかという問題も出てきて、なかなか家族を帯同することへの支援ですとか、また、パートナーが研究者である場合、そのパートナーもできれば、優秀な人材であろうと思いますので、そういった方がどういうふうにキャリアを継続できるか等も非常に難しいということを聞いておりますので、将来的には、日本から世界に一定期間行って能力を身につけた人がちゃんと帰ってこられる、その辺りのつながりが促進されるといいなというふうに思っております。これが1点目です。
 もう一つは、女性リーダー育成のお話がありましたけれども、これまでの支援は、若いうちにお子さんを産んで、その後キャリアに復帰するという時点の支援がかなり充実してきたと思います。
 ただ、ある程度のポストについた後に子供を産んだりとか、女性が子供を産むことに関しても多様化してきているのですが、そういった場合にポストがある、もしくは科研費を持っているというふうなある一定の条件があると、支援が受けられないということが往々にしてございます。
 ただ、子育てしている大変さというのは同じなので、そういった違うようなタイプの研究者にも支援があるといいなというふうに思いましたし、また、私も小さい子がいる女性研究者として、例えばなんですけど、内閣府のクーポンでシッターさんを雇えたりするんですけれども、それも内閣府から、施設がまず、私の場合は広島大学がそのクーポンを扱うということの認定を受けていなくてはいけなくて、それが最初なかったので、広島大学に取っていただいたんですけども、でも結局、そのシッターの事業者自体も内閣府に認定されてなくちゃいけなくて、昨今のコロナで、認定されているところが閉まってしまって、結局そのクーポンが使えない事業者にお願いするしかないとかいうことで、これも本当にたくさんある一例なんですけれども、本当に若手で小さい子のいる研究者は非常に困っている部分がまだたくさんありますので、研究者のキャリアが中断して復帰するという方以外にも、サポートが広がっていくといいなというふうに思います。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。今の点も含めて、人材に関しては多くの委員が御発言されていますので、まず一通り御発言が終わってから、文科省のほうからお答え、あるいは考えを発言いただきたいと思います。
 それでは、続きまして加藤委員、お願いいたします。
【加藤委員】  今ちょうど映っている8ページの下の方の国際科学技術コンテストは、初等中等教育段階ということだと思いますが。私は、情報工学が専門ですが、情報分野では大学レベルにおいて、世界的にプログラミングコンテストというものが確立しています。例えば、ACMのICPCというコンテストが有名です。予選段階で5万人参加で、3,200大学で110か国が参加するような大きな大会です。日本も参加しています。
 日本は文科省等、国からのサポートが薄くて、かなり自主性に、学生の自主性とか大学の自主性に頼ってやっていると思います。出来ましたら、将来的に、中高生だけではなく、大学生における世界的なコンテストも支援の対象としてお考え下さるとよいんじゃないかなと思いました。
 もう一点です。次のページに、何度も話題になりましたが博士課程の学生の支援に関することです。少なくとも情報分野についてですが、日本とアメリカを比較したときの違いは、アメリカでは社会がドクターの学生を社会が欲しているというか、産業界が欲していることが明らかです。著名国際会議に行くと、引く手あまたで、有名企業、GAFAと呼ばれる企業を中心に、お金の寄附も盛んですし、それからブースを開いて博士学生の獲得合戦をやっています。
 日本はそれに比べるとはるかに遅れをとっています。見比べて思うに、日本では、産業界側と大学側との間のよいエコシステムがまだできていないと思います。これは文科省のサポートする範囲だけでは難しいのかもしれず、経産省あたりと組まないといけないかもしれませんが、博士学生、博士号取得者を大学と企業でもっと循環させる世界を作って、産業界がこぞって博士を欲しくなるような、そういう人材のエコシステムを社会的に構築していく必要があると思います。
【大野分科会長】  ありがとうございます。少し時間が押してまいりましたので、まずは御発言をいただきたいと思います。
 須藤委員、お願いします。
【須藤委員】  どうもありがとうございます。7ページの共創の場の支援の件なんですけど、今回育成型、それから本格型、いずれもかなり拡充していただいていて、非常にありがたいなと思っております。
 中身なんですけども、特に7ページによく書かれているんですけど、社会課題の解決を目指して、産業界と大学あるいは自治体が一緒になって拠点をつくると。
 それはそれで非常にいいことだと思いますし、やっていただきたいんですけど、最近あまりにも社会課題の解決が前面に出てしまって、マイナスからゼロに持っていくような話ですけども、むしろゼロをプラスに持っていくような、新しい価値をどんどんつくっていくという取組も必要じゃないかなと思っています。
 特にここにある育成型については、ビジョンをつくってちゃんと進んでいくということですので、なるべく新しいものをどんどんつくっていく、世の中にないようなものをどんどんつくっていくというようなことを念頭に置いた拠点づくりというのにも、結構注力していただければなと思いました。
 以上です。
【大野分科会長】  社会課題解決に加えて、価値創造が重要だということだと思います。ありがとうございます。
 それでは松田委員、お願いいたします。
【松田科学官】  どうもありがとうございます。時間がないということなので簡単にコメントさせていただけたらと思います。
 1ページ目のところに、Society5.0を実現し未来を切り開くイノベーション創出というところに、例えば世界最高水準の大型研究設備の整備と成果創出の促進というものがございます。
 我が国の研究の最先端というところに、実はこの大型研究施設というのがありまして、これが先頭になっていて、ここで研究するということが我が国の研究を、常にトップを維持するということがあります。
 なので、ここでの人材育成ということが大事で、今どういうことが起きているかというと、海外からこの技術を学びたいという人がたくさん集まってきて、学んで戻っていくということをしていきますので、ここの層にもちゃんと日本の層を厚くしていくということも大事じゃないかなということをコメントしておきます。
 以上です。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、人材育成全般で様々な御発言をいただきました。事務局から何かまとめて御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。
【仙波振興企画課長】  ありがとうございます。人材育成、幾つかコメントをいただいてございます。
 科学技術コンテストは、情報分野、おっしゃるとおり情報学オリンピックの支援しか今はなされていないはずでございますので、様々な形の取組に関して、もっと幅広く目配りをしたほうがいいんじゃないかというコメントをいただいたり、もしくは大学生、現在、おっしゃるとおり中学・高校生のオリンピック等を中心に支援してございますが、それが大学生といった学生まで対象を広げていってはどうかという提起をいただいたこと、これは内部でも共有して、議論を続けていければというふうに考えてございます。
 ダイバーシティーに関しては、幾つかの制度で様々で、取扱いが違うという部分がなかなか難しいところでございますけども、一般的に研究の中断というふうな形であれば、ライフイベントという形で、これは出産・育児以外にも、介護とか様々な形のライフイベントで停止をすることは男性・女性を問わず使える形になってございまして、そういった形で利用いただける制度のほうが一般的には多い形になってございますが、おっしゃるとおり、もしかすると女性だけに限っているというふうな制度がまだ残っているとすれば、そういったところを丁寧に見ながら取り組んでいかないといけないのではないかと考えてございます。
 博士課程修了者、もしくは博士号取得者の活躍促進に関しましては、皆様と同じ問題意識で、国会議員の先生方も同じ問題意識を持っていて、自民党の中の立国調査会のほうでも、まさにこの博士課程人材を、文部科学省、経済産業省を含め、どのように取り組んでいくのかということを拡充していかなければならないという議論がまさに始まったところでございます。この取組に関しても、文部科学省という枠を超えて、様々な形で、産業界と手を組みながら、何らかの形で改善していければと考えてございます。
 そういった形で、いただいたコメントを内部でも共有しながら進めさせていただければと考えてございますが、いかがでございましょうか。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。様々な制度があるのですけれども、その制度の使い勝手というのは必ずしもよくないというところもあります。ぜひ、そういうところにも配慮して、制度の趣旨を生かした運営し、皆さんがその制度の恩恵を受けたと感じられるようにしていただければと、私からもお願いいたしたいと思います。
 すみません、大分時間が超過いたしましたので、この議題は以上とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 次に、議題の2でございます。第11期学術分科会の調査・審議の現状について、河村学術企画室長より御説明をお願いいたします。
【河村学術企画室長】  学術企画室長の河村です。資料2を御覧ください。第11期の学術分科会各部会等の検討状況ということで、3つの部会、委員会、研究環境基盤部会、研究費部会、人文学・社会科学特別委員会の審議・議論の状況をまとめた資料となっております。
 簡単に御説明いたしますが、まず1つ目、研究環境基盤部会につきましては、共同利用・共同研究拠点について中間評価を行う。また、期末評価及び令和5年度からの認定についても審議中といった状況でございます。
 また、大型プロジェクトにつきましても、5計画の事業移行評価等に係る審議を行うとともに、また3計画の評価に係る審議を行った状況でございます。
 また、次期ロードマップの策定についての議論を開始し、今期中に策定方針の取りまとめを行う予定ということ、これにつきましては後ほど黒沼課長のほうから別添資料に基づいて御説明をいただくことになっております。
 また、運営費交付金についての配分等の審議もあった状況でございます。
 研究費部会につきましては、科研費の制度改善に向けた検討を進めるとともに、今期は特に国際共同研究及び若手研究者支援の改善・充実、基盤研究の在り方について、今期の取りまとめに向けて審議を実施ということでございます。
 最後に、人文学・社会科学特別委員会でございますが、人文学・社会科学に関連する指標の検討を継続して、これまで6回審議を行っている。前回の審議では素案について議論を行ったということで、今後は取りまとめに向けてさらに議論を実施する予定でございます。
 引き続き、別紙の次期ロードマップの今後の検討について、黒沼大学研究基盤整備課長より御説明をお願いしたいと思います。
【黒沼大学研究基盤整備課長】  ありがとうございます。次のページをおめくりいただけますでしょうか。
 今、河村室長のほうから、研究環境基盤部会の審議状況について言及がございましたけれども、いわゆる学術の大型研究プロジェクトの優先順位などを明らかにしていますロードマップにつきまして、前回2020に策定をしておりますけれども、おおむねこれまで3年ごとに改定をしてきたということでございまして、その周期ごとで行けば改定の時期が迫っているということでございます。
 これまでは、日本学術会議が策定するマスタープランというものを参考にしつつ策定をしてきたわけでございますけども、御案内の方も多いかと思いますけれども、今年の6月に日本学術会議のほうで公募がかけられているものは「未来の学術振興構想」という名前でして、そこの中では、もう従来のようなマスタープランを策定しないということが言及されているところでございます。
 従来のマスタープランについては、分野の偏りがあるのではないか等々の指摘があったということで、日本学術会議のほうで構想を練り直して、より大きな形で、20年後30年後の学術の姿を描くようなものにしていこうということだそうでございます。
 ですので、我々のほうの大型学術研究プロジェクトの優先順位をつけるというか、優先順位の高いものを選ぶというものに対して、ちょっと路線が違う形になってきているのかなということもございまして、それを待たずに我々のほうで――我々のほうでというか、失礼いたしました、学術分科会のほうで検討を進めていただかなければ、2023の周期ごとの改定に間に合わないかなということで、今回検討を始めさせていただこうということでございます。
 審議スケジュールにつきましては、今日この後、午後にも作業部会のほうを開催させていただきまして、12月中には策定方針というものの原案を御議論いただければと考えているところでございます。
 実際に募集を始めていくのはもうちょっと先になろうかと思いますけれども、そのような形で、評価の観点ですとか、どういうものを対象とするかですとか、そういった論点について策定方針を議論していただく予定でございます。
 簡単でございますけども、検討状況の補足でございました。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、今の御説明に関して、御意見あるいは御質問がございましたら挙手でお願いいたします。
 尾上委員、お願いいたします。
【尾上委員】  尾上でございます。ありがとうございます。最後のロードマップの策定のところなんですけども、これ、この状況を踏まえということで、作業部会で方針等が議論されるということは、ここの学術会議の「未来の学術振興構想」については一切加味されないという認識でよろしいのでしょうか。あるいは、一応、見はされるという、そういうところなのでしょうか。
【黒沼大学研究基盤整備課長】  ありがとうございます。見るというか、実際にはそれぞれの研究所の中では、二、三十年後の学術構想も踏まえながら、それぞれの個別研究プロジェクトの具体の計画を詰められていくのだとは思いますけれども、この日本学術会議のほうの取りまとめは来年夏ということですので、正直言いますとスケジュール感の違いとかがあるかなと思っておりまして、並行して、それぞれの様子を見ながら、着地点も違うということもありますけども、様子を見ながらということにはなるのかなと思っております。
【尾上委員】  ありがとうございます。
【大野分科会長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 長谷山委員、お願いいたします。
【長谷山委員】  これもコメントでございますが、人文学・社会科学特別委員会で、今、指標の検討をしているということで、もちろん、この人文・社会科学の分野を正確に把握し評価するという意味で指標の検討は必要ですし、次に、これが進んでいって、一応の指標等もできた次のことについて、この分科会あるいは審議会として、その意識の共有といいますか、すり合わせが必要じゃないかと思います。
 というのは、もともとこの前の期で、科学技術の振興ということで始まったときに、私も委員を仰せつかっていて発言したのですが、科学技術振興ということのその背景といいますか、裾野を広げるためには科学と人文学の対立というものを超えて、融合的な発想が必要だと。
 例えば学生にしても、理系の学生が創造性とか感性とか、定性的に物事を見るという発想も必要だし、逆に文系の学生には数理的な思考とか、論理的に物を見る、あるいはデータサイエンスとかを含めた思考が必要で、研究においてもそうした融合的な発想が必要になる。それを身につけた人材の裾野を広げることが重要だということを申し上げました。
 ですので、いわゆる人文科学・社会科学・自然科学というふうに分類するという次元とは違う、もう少し高い次元での科学と人文学の融合とかいうものを、次の段階ではどういうふうに日本の学術研究に反映していくのかという、そういう検討が必要になるんじゃないかと思いますので、その辺の、次を見据えて、この人文学・社会科学特別委員会の今後といいますか、次をどうしていくのかというのをだんだんと考えていく必要があるんじゃないかなというふうに感じましたので。これも感想でございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。そのとおりだと思います。
 特別委員会の議論を受けた形になるかもしれませんけれども、今日も次の議題として今後の学術研究の推進についての意見交換もございますし、ここで、継続した形で取組を進める、あるいはさらに発展させる形でやっていかなければいけないということは、おっしゃるとおりでございます。
 これは事務局とも相談しながら、まとめて方向性を出していくべきかと思います。ありがとうございます。
 それでは梶原委員、お願いいたします。
【梶原委員】  ありがとうございます。私も長谷山委員とほとんど同じコメントになりますが、第6期科学技術・イノベーション計画で「総合知」という表現を使って、社会実装に対してはあらゆる知が融合していく、あるいは総合的に進める必要があるということをうたっています。その総合知とはどういうものかというところ、そしてそれはどのような形で評価がなされるのか等の検討課題がありますので、ぜひこの委員会の中で、人文学・社会科学だけではなく、総合知というような視点で検討を進めていただきたいと思います。あと、今後に向けてさらに議論ということですが、大まかなスケジュール感をお持ちでしたらお伺いしたいと思います。
【大野分科会長】  これは事務局案になると思いますが、事務局、何か発言はありますか。
【河村学術企画室長】  学術企画室長、河村でございます。
 人文学・社会科学特別委員会、城山主査にお務めいただいているのですが、スケジュールにつきましては、先ほど、案の取りまとめに向けての議論を実施ということなのですが、年内または年明けすぐに、そろそろまとめたいというのは事務局としては考えているところではございますが、また学術分科会に向けても御報告ということは、考えているところでございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。総合知というと、特別委員会のマターもありますけれども、それ以外のところもある、そこをどう進めていくかということが重要だというのが梶原委員の発言の御趣旨だったかと思いますので、それらも併せてスケジュール感をつくっていかなければいけないと思います。
 御関係の城山委員、お願いいたします。
【城山委員】  今、言及していただきましたので、若干、私の観点から補足させていただければと思います。
 この人・社特別委員会で指標の検討、モニタリングをしている背景は、ここにも書かれているように第6期の科学技術基本計画、その中で総合知の話と人・社の話もちゃんとモニタリングしてくださいねと書かれていることにあります。23年からモニタリングしてくださいねというのが書かれていて、それを受けてやっている作業ということになります。
 そう見ると、この委員会自身は人・社が対象なのですが、並行して総合知のモニタリングについても議論がされているという、そういう状況だろうというふうに考えています。
 その中で、若干総合知のほうの議論なども、この特別委員会の中でも参照させていただいていて、結構そこはつながってくるなというのを若干実感として感じているのは、例えば社会的インパクトの話です。従来のアカデミックな成果というだけではなくて、社会的インパクトというのが総合知にとっても大事ですし、実は人・社の世界というのは比較的、ある意味で古典的なものも含めて実は社会的課題設定をするとか、ある種の啓蒙機能なども含めて、ある種の社会的機能というところがあるので、多分、社会的インパクトの評価みたいなところは、総合知と人・社の話はかなり重なってくるところだろうというふうに思っています。
 ただ、じゃあ、そこについてすぐ簡単に結論が出るかというと、なかなか難しいところがあって、多分そこは引き続きやっていく必要があるのかなと考えています。
 今、河村室長がおっしゃっていただいたように、取りあえず23年からモニタリングを始めなきゃいけないという、取りあえずの要請があるので、多分、まずそこで何をやるかということはスペシフィックに答えを出さなきゃいけない話なのですが、今お話しさせていただいたような社会的インパクトだとか、それこそ人・社の話と総合知の話をどうつなげていくかだとか、その辺りは来年度からすぐやるというのではなくて、もうちょっと、それを踏まえた後の段階の話としてそういうことを詰めていく必要があるのかなと。
 大体そんな感じで考えているところでございます。よろしくお願いします。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。これから、分科会としても総合知をきちんと捉えていかなければいけないと思います。言い方が適切ではないかもしれませんが、その先兵となって、今、特別委員会に御議論いただいているということだろうと思います。
 ほかにもしなければ、次の議題に移りたいと思いますけれどもよろしゅうございますか。
 ありがとうございます。それでは、これが最後の議題になりますが、議題の3、今後の学術研究の推進について。こちらも河村学術企画室長から御説明をお願いいたします。
【河村学術企画室長】  議題3について御説明をいたします。資料3の1ページを御覧ください。
 昨年3月に、学術分科会は第11期が任期2年で始まっておりますが、昨年の本分科会の冒頭で、学術分科会の今後の調査審議事項を御議論いただきました。
 そのうち大学共同利用機関や研究費制度、人文学・社会科学については各部会等で御議論をいただいているところですが、学術研究の振興方策のような総括的な事項については、十分な御議論をいただく機会を設けておりませんでした。
 来年の第12期の学術分科会に向けまして、最近の科学技術・学術の現状のデータや、各部会等での御議論を踏まえまして、学術政策の振興に関する、まずは検討の方向性を御議論いただきたいと思いまして、事務局にて論点を提示させていただいているところでございます。
 抽象的な論点でありますので、この論点以外も含めまして、本日の委員の皆様の御意見を踏まえ、今後の具体的な論点をまとめていければと考えております。
 簡単に御説明いたします。1ポツ目でございます。
 1ポツ目は、日本の研究力低下の要因分析のために、どのようなエビデンスが必要で、どのような方法で集めるべきかについてでございます。
 2ページ目以降に、様々なエビデンスのデータを紹介しておりますが、これら以外で、例えば研究室当たりの必要な研究費の規模、基盤的経費と競争的資金の適切なバランス、大学の設備・機器の全体などの観点について、データが必要なのか、必要な場合は、どのように集めるかといった論点でございます。
 2ポツ目でございます。2ポツ目は、現在の学術振興に不足している観点は何かについてです。大学間格差、共同利用体制の見直し、研究時間の確保や人材育成、役割分担などについての論点です。
 研究時間の確保などは既に各方面で検討が進んでおりますが、例えば中国では、報道情報になるのですが、本年8月に、若手研究者は5分の4以上を研究に費やすようにという通知が出されているといった情報もございます。中国のこういった情報もあるという、世界的にこういう動きがあるということもございます。
 3ポツ目でございます。3ポツ目は、日本の学術研究の強みは何か。世界の研究コミュニティーの中で、日本はどのように見られているのか。日本の学術研究の将来像をどのように設定するかについてでございます。日本の強みとして多様性などがある中で、世界の中での日本についての論点でございます。
 ここで、論の参考に、EUで実施されております「ホライズン・ヨーロッパ」の取組を、口頭で恐縮でございますが御紹介をさせていただきたいと思います。
 JSTのCRDSという部門が2021年の12月に公表しておりますホライズン・ヨーロッパの報告書から、少し口頭でこの際、御紹介をさせていただければと思います。
 御案内の先生方もいらっしゃるかと思いますが、ホライズン・ヨーロッパにつきましては、欧州連合の研究イノベーション枠組みプログラムを指しておりまして、第1の柱として「卓越した科学」、第2の柱として「グローバルチャレンジ、欧州の産業競争力」、第3の柱として「イノベーティブ・ヨーロッパ」などから構成をされておりまして、2021年から2027年までの7年間が対象となっているところでございます。
 第1の柱「卓越した科学」では、EUのグローバルな科学的競争力強化を目的として、第一線の科学者による最先端の研究プロジェクトに対する助成ということになっております。
 そして第2の柱の「グローバルチャレンジ、欧州産業競争力」につきまして、ここが先ほど、これまでの御議論につながる部分にあるかと思いますが、健康、文化、デジタルなどの6つの社会的課題群というのを具体的に設けて、社会的課題の解決、または技術・産業的能力強化を図るということで、社会的課題の解決というのを目標にしつつ、予算につきましてもホライズン・ヨーロッパの半分以上の予算を充てているということで、非常に重点的に実施をされているということでございます。
 ここで、欧州の特色としてですが、責任ある研究・イノベーションが科学政策の一つとして取り組まれ、研究成果を社会の中に具体化し、イノベーションを実現するということで、この観点からいうと人文・社会科学の統合、自然科学の分野に関しての統合というものが重要視されているということが、その報告書には記載がございました。
 ホライズン・ヨーロッパにおきましても、特に第2の柱の全クラスターにおいて、人文学・社会科学の自然科学との統合が重要な横断的事項として位置づけられているというところで、この統合の目的としては、グリーン、デジタルなどの複雑な社会的問題への評価というものを改善していくことの対応が記載されておりました。
 また、ホライズン・ヨーロッパの全体のプログラム評価の方法といたしまして、特にインパクトを補足するためには、キー・インパクト・パスウェイ、KIPというものを幾つか設定されているそうです。
 短期・中期・長期の各フェーズで、例えば論文の観点ですと、短期は論文数、中期は論文引用数、長期は世界クラスの論文数の割合というものであったり、オープンアクセスの観点ですと、短期は研究成果の共有の割合、中期は引用された研究成果の割合、そして長期になりますと、そのオープンアクセスの利用者と新しい学際的協力を発展した受益者、この2つの組合せの割合といった、短期・中期・長期という観点でも非常に明確なキー・インパクト・パスウェイというものを設定して、インパクトのほうをはかっているという状況でございます。
 また、御参考でございますが、ホライズン・ヨーロッパにおきまして、公募においては様々な研究形態が用意されているところですが、特に「研究イノベーション・アクション」という形態があるのですが、これは研究開発を対象としている。そこで、「異なるEU加盟国から最低3法人以上が組むコンソーシアムを必要とする」ということになっておりますので、応募段階から多国籍というか、国際共同的というか、そういったものが条件となっているものもございます。
 そして、これは対象額の100%がホライズン・ヨーロッパから助成されることになっているそうでございます。口頭で恐縮ですけれども、ホライズン・ヨーロッパの様々な取組、先行的事例かと思います。事務局から参考として、御説明させていただいた次第でございます。
 事務局の説明は以上となります。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。大変示唆に富む、ホライズン・ヨーロッパの取組などを御紹介いただきました。
 これまで私どもが議論してまいりましたこととも大きくオーバーラップをしていると思いますので、ぜひ御発言、これからの我が国の学術に対しての御発言をいただきたいと思います。
 それでは観山委員、お願いいたします。
【観山委員】  指名ありがとうございます。日本は研究力が非常に下がったわけではないけども、ほかに国にどんどん抜かれているという状況に対して、危惧するものでございます。その中で注意すべき指標として私が思うのは、基本的に大学や研究所の先生方の研究時間の確保です。
 反対に言うと、FTEでどれぐらいの人が、各大学、各研究所におられるのか。FTE当たりの研究経費がどうなっているのか。それから、FTE当たりの研究補助員、それからFTE当たりの外国人の共同研究者がどれぐらいいるのかということを、一つの指標にしてみたらどうかなと思います。
 なかなかカウントが難しいと思いますし、大学院生に関しても、博士課程の大学院生については十分それにカウントしたらいいと思います。私が思うのは、様々な競争的経費がありますけども、経費によっては調整のために時間が随分取られてしまって、実際に研究時間が減っているということはないのか気をつけたいところです。
 その一方で、私の感想ではWPIというのは結構うまくいった政策だと思います。
 そこでの努力はどういうふうにされているかというと、学際的な研究者を集めて、それから外国人も集めてなのですが、基本、アンダー・ザ・ワンルーフという形で一つのところに入れて、そして研究者が違う分野とか外国人研究者と一緒に働くという状況になっているわけです。
 多くの競争経費もそういうことを推奨しているのですけれども、なかなか、うまくいっていない場合もあります。例えば複数の学部が一緒に組む場合とかそれから外国と日本との連携とかいうと、調整に物すごく時間がかかって、会議を増やしてしまう。
 つまり、一つの機関や研究所でやるのだったらもう全然要らないようなことを、随分時間を取って調整していかなければならないということがあります。、やはり、同じところに、まあ言ったら押し込めて、そして自然と状況ができるような形で、調整がなかなか進まないようなところも、もうとにかく研究者同士なので、そういうところで、つまり、経費のかけ方をもうちょっとうまく考えないと、せっかく競争的経費、非常に大きなウエイトになっているんだけれど、なかなかその効果が少なくなっているのではないかと心配します。
 ですから、FTE当たりどういう形になっているのか。業務だとか教育だとかいうところにたくさんお金をつけても、実際に研究に使えないということもあるので、そこら辺をちょっと考えていただければと思いました。
 以上です。
【大野分科会長】  大変重要な御指摘だと思います。資料にも、専従換算の時間で日本の研究者数が増えていないということもありますし、プロジェクトによっては、申請・評価などに非常にたくさんの時間がかかるということもありますので、そこをストリームライン化できると、随分違った景色が見えるのだろうと、私自身も思っているところであります。ありがとうございました。
 それでは、続きまして仲委員、お願いします。
【仲委員】  すみません、どうもありがとうございます。2つあります。1つは、先ほどホライズン・ヨーロッパのお話があったと思うのですけれども、これというのは、ホライズン・ヨーロッパのアソシエイト[A1] となり、そこに入っていると応募がしやすいという仕組みではなかったかと思います。私が間違っているかもしれないのですけれども、日本はそういうアソシエイトになっていないんじゃなかったかと思うんです。違っていたらすみません。
 なっていればいいですし、なっていないということでしたら、こういった基盤的な研究推進のシステムに積極的に日本が参加していくということが必要かなと思いました。
 これが一つと、先ほど、どういう要件を調べていったらいいかという問いがありましたけれども、例えば、総務省の統計局の資料*だったと思うんですけれども(*後日確認したところ、第8期研究費部会(第8回)配布資料)、ちょっと以前調べたので違っているかもしれないのですが、研究者の数が、この10年ぐらいで全体として1割(7%)ぐらい、大学でも2割ぐらい減っているということだったんです。
 予算は、いろいろな資料で出てくるように、欧米に比べて格段に日本は少ないというようなことがあり、やっぱりお金を出して人を育てるということがないと、科学力は上がらないんじゃないかというふうに思います。
 後者の人材に関しては、今、小学校高学年・中学生である人たちが、7、8年たてば大学に入る。その人たちが5年ぐらいたてば学位を取る、というような形になるので、100年の計と言わなくても、10年、どーんと支援すると、ずっと向上するのではないかなと思うわけです。
 ですので、その辺りを戦略的に重点化していくのが有益かと思いました。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。すごくたくさん手が挙がっています。まずは1回目の御発言を優先させていただきたいと思います。まず順番から言うと長谷部委員、お願いいたします。
【長谷部委員】  長谷部です。本日も人材育成について議論されておりますが、非常に重要な問題だと思います。
 博士課程の学生が減っているというグラフがよく出るのですが、特に現場の実感として、優秀なトップレベルの学生の数が著しく減っているなという感じを持っております。
 それで、学部の学生と話をしていますと、驚くほど研究のキャリアパスについて知らないんです。確かに我々も、研究者になると一体、例えば企業に入った場合と比べて年収がどれぐらい変わるとか、生涯賃金がどのぐらい変わるとか、あるいは何%ぐらいがきちんとその後、職を持てるのかという情報を、あまりエビデンスベースで持っていないような気がするんです。個々の研究分野については、自分の研究室の周りは分かりますけれども。
 そういう点で、学部の学生に対して、研究者のキャリアパスという、ある意味でエビデンスを提供できるような仕組みを文科省の中でつくっていただけると、学生が例えばどこかのホームページに行けばきちんと、研究者になったときにどういう未来が描けるのかというのが分かるようなものをつくっていただけると、学生の選択肢が広がるんじゃないかと思います。
 もう1点は、エビデンスということで、しばしば研究者育成に対して、我々教える立場の意見聴取というのはあるのですが、学生の意見聴取というのをあまり聞いたことがなくて、一体学生自身がどうして研究者にならないのかというエビデンスを集めていただけると、その後の対策に役立つのではないかと思います。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 続きまして小長谷委員、お願いいたします。
【小長谷委員】  ありがとうございます。数々の切り口をまとめて議論するためのキーワードとして、「チームサイエンス」と「ビッグサイエンス」の2つを述べておきたいと思います。
 「チームサイエンス」も「ビッグサイエンス」も、いずれも理系にとっては当然の概念であると思われますけれども、人文系はそうしたスタイルになじみがないものですから、人文系においてもこれからは重要なのだという意味で、これらをキーワードに掲げておいていただきたいと思います。人文系のこれまでの学術スタイルも維持しながら、しかしそれを決して聖域化せずに、すでにご指摘のあったように理系と区別なく進めていく上でも必要なことではないかと思います。
 先ほどご紹介のあったホライズンのように、社会的課題に応じたイノベーションをする上でも必要ですが、すぐに役立つのではなくゆっくり役立つような、学術の指向性が強い課題に対応するときにも必要になっています。「チームサイエンス」と「ビッグサイエンス」を掲げておいていただければ、例えば、研究における役割分担とか、人材も総合的に育てるとか、研究するときの学際性、国際性、それから産業界との連携など、個別の課題に統合的に対応しうるキーワードではないかと思います。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして神谷委員、お願いいたします。
【神谷委員】  どうもありがとうございます。2番目の不足している観点ということから一つお話しさせていただきたいと思います。大きく言いますと大学の財政的基盤の話で、これが全ての元になりますので、それについてお話ししたいと思います。
 教育研究組織改革分というのがありまして、組織改革に支援をしているわけなのですが、この資料の26ページ、国立大学法人運営費交付金の推移というのを見ていただくと分かると思うのですが、そこに書いてあるとおり、平成27年度以降は同額程度を確保ということになっております。
 したがって、総額はあまり27年度以降は変わっていないのですが、中身について、私は問題があるというふうに思っております。
 今申し上げたとおり、教育研究組織改革分ということで組織改革に支援をしているわけでして、これは大変すばらしいことだというふうに思います。
 その財源というのは、係数を掛けて、大学への配分額を減らして財源にしているということでございますので、このグラフにありますように、同額を確保しているのですが中身は徐々に変わっている。
 簡単に言いますと、事項指定がない財源から事項指定がある財源に移っている、そういうことでございます。そうすると、経常的な事業に対する支出を、大学としては減らさざるを得ないということです。
 既存事業で非効率な部分を削減していけばよいというお考えなのかもしれないのですが、大学運営上、不可能ではないとは思いますが非常に時間がかかりますし、なかなか難しい問題であるという点があります。
 したがいまして、係数による削減ではなくて、別途財源を用意するべきではないかというふうに私は思います。
 政府の成長戦略におきましても、大学というのは非常に重要です。したがいまして、ぜひこれは別途財源を用意していただいて実施するというほうがよろしいかというふうに思います。
 さらに加えますと、かなり長い間、係数がかかっておりまして、基盤の部分でかなり疲弊しているというのが私の感想です。
 以上でございます。
【大野分科会長】  ありがとうございます。高さが一定でも、中に係数がかかっているということも認識しておく必要があろうかと思います。どうもありがとうございます。
 続きまして井関委員、お願いいたします。
【井関委員】  ありがとうございます。私も2点目の、小さいことだとは思うのですが、先ほども第2次補正予算のところで、外国人留学生呼び込みということで、最初の議題のところでもありましたけれども、日本のシステムという――これ、私がもしかしたら勘違いしているかもしれませんけれども、ポスドクというのがうまく使われてないのではないかなというふうに考えております。
 科研費ですと、基盤A以上でないと十分な形でのポスドクというのは雇えないと思っております。科研費というのは非常に研究の多様性を維持するのに役立っていると思っていますけれども、そういった形で、そこに本当はポスドクが入ってきて一緒に研究すると、すごく研究の多様性を持った、いろんな人材が育成できると思うんです。
 その時に、外国人の留学生もいいんですけれども、学位を取得している方をポスドクとして入れると、もともと研究がある程度以上できるはずですので、非常にその研究がスムーズに進むのではないかと。
 学生をたくさん抱え込めば抱え込むほど、やはり学生に教育が必要なので大変です。もちろん、ポスドクも若手なので教育しなきゃいけないんですけれども、全然そこはもう段違いに違うと思うんです。
 ですので、もちろん外国人留学生、いわゆる大学院生の呼び込みも大事なんですけれども、ポスドクも大事だと思います。日本に慣れたら、そこで外国人教員として雇うことも可能だと思いますし、そうしますと、教員というか大学研究機関の多様性も増していくのではないかというふうに考えております。
 ですから、日本人が外へ出ていくということも大事ですが、外国人を日本に迎え入れていく。そのレベルもいろいろあって、というふうに考えていただくのがいいかなというふうに考えております。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして福田委員、お願いいたします。
【福田委員】  福田でございます。よろしくお願いします。
 何点かあるんですけど、まず1点目は、コロナのことをやっぱり考えざるを得ないと思います。かなり学生の質というのか、学生の大学でのありようが変わってきているような気がしています。今、コロナ禍の中、新たに大学に入っている子たちは高校生活をほとんどコロナの中で過ごしていて、コミュニケーションが非常に取れないという子たちが増えていると感じます。大学に来ていてもコミュニケーションを取らずにすぐに帰ってしまうみたいな、そういうようなことがあるので、ここに対する対策は、長期的ではないんですけれども、考えないといけないんじゃないでしょうか。研究力は、よほど優れた人は別ですけれど、基本的にはコミュニケーションの中で生まれると思っていて、今の学生のコミニュケーション力の向上を少し戦略的に考える必要があるだろうというのが1点目です。
 2点目は、今中心になって活躍している研究者たちは、これまで徒弟制度みたいに、ボスがいて、その下のチームの一員としてやってきたにもかかわらず、ある程度のモチベーションの中で研究を続けられたのだけれど、先ほど長谷部先生が言ったように、若い人のモチベーションのない中では、仕組みそのものを変える必要があって、教授がいて、スタッフがいて、その下にポスドクがいるというようなヒエラルキー的な組織構造をやっぱり変えざるを得ないんじゃないかと思います。
 場合によっては自治区みたいな、若い人たちだけでグループを組んで、そこに新しい外国人みたいな、違う視点の人たちを入れて、その中で自由にディスカッションしながら新しい領域をつくっていくというような仕組みというか、そういう制度を導入する必要があるのではないかと思っています。例えば、先ほど観山先生がWPIのことをおっしゃっていましたけど、幾つかのWPIでは、ワンルーフの下で違う分野の若い人たちが自主的にいろいろやる中で新しいことが生まれているということがあるので、これを先例としながらできないかなというのが2点目です。
 3点目は、国際性をどうやって担保するかです。外国人たちと一緒に、台湾の研究所のレビューをこの前したんですけれど、その中でいみじくも外国の方々は、国内にとどまらず多様な優れた研究者と共同研究をやらない限り、レベルの高い研究は出ないと言い切っていたんです。
 そういう意味で、国際共同研究は極めて大事であると。新たに始まった国際先導研究は、一つのいい試みだと思うんですけれど、これは極めて限られた層のグループだけでやることなので、もう少し一般的な研究者たちも国際的なグループ研究ができるような仕組み、これをつくり上げる必要があると思っています。一旦、研究のコミュニケーションの相手をつくることができれば、あとはウェブを使っても交流できるので、最初のところの相互交流のきっかけを誘導する方策を考える必要があると思いました。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 挙手をされている皆様がほとんど、2回目の方々なのですが、御出席されている委員でまだ発言いただいていない小林委員、戸田山委員からは、御発言ございますでしょうか。
【小林委員】  よろしいでしょうか。頂いた資料を拝見しますと、基本的には日本人の論文の数自体が減っているわけではなくて、ほかの国に大きく抜かれているということが問題だと思います。
 そこで重要なのは、やはりほかの国との比較ということになります。例えば一例を挙げますと、トップ10%論文も韓国に抜かれています。欧米だけではなくて韓国からも抜かれている。これは研究者1人当たりの研究費が日本の3倍、逆に言うと、日本は韓国の3分の1であることが原因になります。
 また、先ほど台湾のお話が出ましたが、私もそういう台湾の国際プロジェクトの、向こうの政府の審査をやらせていただいていますが、これは大きなプロジェクトだけではなくて、基本的には3か国の、つまり台湾以外のほかの2か国が集まって申請をしないと駄目だという部門が多くなっています。
 そこの審査を海外の人間がやるという形で、日本で言えば科研費に相当する部分の、かなり上のほうの部分、具体的に言うと基盤S以上のところは大体そういう形で進めているということがあります。
 それから冒頭の話に戻りますと、やはり海外の場合、サイエンスの物価上昇というインデックスをつくっています。アメリカでもそれは、通常の物価上昇よりもかなり上のレベルの物価上昇になっています。それを常に要求しているということになります。
 そのベースで比べると、かなり日本のサイエンス、研究に関する予算というのが、相対的に著しく落ちていることになります。そのことと、先ほどのトップ10%の論文の比率の落ち方が、個人的にはグラフをつくって重ねてみると、かなり似ているということになります。
 ですから、研究機材、あるいは全てそういうものが高騰化している中で、結果的にはどうしても人件費を削るという方向になり、定年で辞めた方の不補充、あるいは有期でしか雇えない、そういうところで地盤がかなり弱ってきています。国際比較の指標として日本におけるサイエンスの物価指数という指標が必要ではないかと思います。
 以上です。
【大野分科会長】  非常に重要な御指摘ありがとうございました。
 それでは、続きまして戸田山委員、お願いいたします。
【戸田山委員】  まず一つは、日本の学術とか日本の科学技術という総体を想定して、それが弱まっているということを問題として、それを高めるにはどういう施策が、それをはかるにはどういう指標が、という議論の仕方がいいのかなという、結構根本的な疑問があります。
 それぞれの分野で弱まっているようなんですけど、要因は分野によって大分違うだろうという気がしています。例えば、最近新聞に載ったので、コロナワクチンが国産のがない、それからコロナに関する研究が、論文数が伸びていないというか、国際的順位が悪いとか、そういうのが報道されていましたけれども、それはいろんな要因があって、一番大きいのは感染症に関する国立の研究所の人員が少ないとか、そういう要因でしょう。
 それと、例えば、何でもいいんですけども、日本のシェイクスピア研究があんまり海外で評価されてないよね、みたいなのって全然違うので、一緒くたに論じられるのかというのが一つあります。
 それからもう一つは、日本という国の科学技術研究・学術研究を推進するステークホルダーといいますか、その主体がまず大学になっちゃうというのも何か変な感じがします。
 大学は研究機関でもあるのだけれども、教育機関でもあって、教育機関でもあるということは、研究をしていくという点では非常に能率の悪い組織だと思うんです。
 なので、国総体として科学技術研究力を高めていくといったときに、企業、それから国立の様々な研究所、それから大学という3つのバランスが取れたような施策でないと、伸びないよなと思うんです。
 大学にお金をいろんな仕方でぶっ込んで、お尻をたたけば大学の先生が頑張って研究成果を出してくれるだろうというモデルでやってきたけれど、それが破綻しているのが今の状況じゃないかなというふうに思います。
 それから、博士号取得者のキャリアパスがなかなかつくれないでいるというのを大学の教育のせいにしていたし、それから企業が博士人材をきちんと評価してくれなくて採用してくれないからという、それも2つももちろんあるわけですけども、まずは省庁からやったらどうかと思います。
 科学技術政策を立案し研究を推進するという、最も知的な能力が必要な、そして研究を自分でした、そういう経験がやはり非常に重要である。そして、国際的な学術組織に人的つながりを持っている人がやったほうがいいと思うんですよね。
 そういう観点からすれば、例えば文科省は、今後博士号取得者しか採用しないということで、まずは隗より始めよというのはどうでしょうか。
 という、非常に乱暴な意見ですけども、私の意見はこんなんです。
【大野分科会長】  省庁の採用は、今年から増やすということが始まっていると聞いています。どうもありがとうございます。
 あと8人の皆様に、14分の時間でお話しいただくということで、申し訳ありません、私の全くの不手際で。お一人2分、できれば2分を切る格好でコメントいただければ、御発言いただければと思います。
 それでは中野委員、お願いいたします。
【中野委員】  まず、基盤的経費と競争的資金のバランスというのは崩れていると思います。それに伴ってデュアルサポートシステムというのが健全性を失っているんじゃないかというふうに考えています。
 健全なデュアルサポートシステムというのを達成するには、それをはかるきちんとした指標がないといけないわけで、それをどういうふうにはかるかということを考えるべきではないかと思います。
 ポストについても、人件費自体はそんなに減っていない、あるいは伸びているんですけれどもパーマネントのコストが下がっているというのは、これは現場にいて一番研究力の低下に響いているのではないかと思います。
 以上です。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 それでは梶原委員、お願いいたします。
【梶原委員】  ありがとうございます。私も戸田山委員がおっしゃったように、マクロ的な見方ばかりではなく、もう少しミクロに見て、伸びているところは何が要因なのかをしっかり見極めていくと、打ち手の効果が高められるのではないかと思っています。
 もう一つ、研究時間の話についてです。日本ではデジタル化が遅れていると言われますが、プロセスイノベーションをしたり、デジタルを使って生産性を高めたり、研究力の効率性を高めたりということは当然有効だと思っていますので、その進捗がどういう状況にあるのかということも一つの要素であり、そこで研究時間を生むことができるのではないかと考えます。教育活動や社会サービス活動の割合が伸びている反面、研究時間が減っているということに対して、研究力と教育がどういう分担なのか等の議論もあるかもしれませんが、教育の切り口で鑑みたときに、学部間で同じような教育をそれぞれ別々にそれぞれの先生が分担している、実は共通的にやるともう少し省力化できるのではないかというような話もよく聞きます。そこは大学運営の問題なのかもしれませんけれども、そういう今までと違う発想の中でのイノベーションといいましょうか、プロセスを変えていかないと、そこのところは大きく変わらないと思うので、時間を捻出するやり方としてのデジタルの活用、教育での共通的にできるような要素を入れていくというのは重要なのではないかと思います。
最後に、長谷部委員がおっしゃったように、そもそも研究者の観点が抜けているのではないかと感じます。今、日本の企業の中で何が一番重要かというと、「人的資本経営」といって、人に注力することをやっています。今までと違って、個人個人がどんなことを考えて、どういう意見を持っているのかというのを聞いた上で経営しないと、実際の生産性、やりがい、働きがい等も向上しませんので、ぜひ研究者の観点を入れて頂ければと思います。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは松田科学官、お願いいたします。
【松田科学官】  どうもありがとうございます。松田でございます。
 私、科学官になってから、現場の声をよく聞こうということで、週に1回、老若男女問わず、教授、准教授、企業のグループリーダー、国の研究機関のマネージャーとか、そして若手助教・学生に順番順番にインタビューしていって、日本の国力についてどうかということを聞いて回りました。
 今日は時間がないということなので、実は科学ミーティング第2回のほうで20分ぐらい僕、語ったんですけれども、ちょっと語ることができないので、これはそこに書いてあるということで、ちょっとだけお話ししたいと思います。
 まず、関心のポイントが、少子化が進んで大学院の数が減っていると。修士・博士に進学する人材を取りこぼさないようにすることが大事であって、その上で優秀な人材を育成し、その人がすばらしい研究が実施できる環境をつくることが大事だと。
 次から、研究の成果から人物の評価というのが大事だよと。若手をPIとして独立させても、実はどうしていいか分かっていない者が多くて、それが組織的に支援・教育が必要だということも考える必要があります。
 一方、共同利用装置の設備が重要であるんですけども、こちらの老朽化に対する維持とか継続的な高度化に対して、支援がちゃんと必要じゃないかなと。基本的に日本はスクラップ・アンド・ビルドが好きなので、まず壊したがるんですけども、そうではなくて維持することと、その高度化という観点が今後必要ですよということです。
 どんな人材が必要かということについては、タイプが2つありまして、1つは広い視野を持ち何でもできる人材。好奇心のあるところを突き詰めることができて、仮に余裕のある環境でも手を動かす人物。タイプBが、研究には基礎と骨幹が必要であり、それを院生にしっかり見つけてもらう指導ができる人材。砂上の楼閣にさせない、基礎を教えられる人材というふうになっています。
 どうやって育成していくかについては、国・産学・人文科学や自然科学など分野を超えた交流が必要であることと、研究の芽を見つけた人材に対して、科研費が取れなくても別の外部資金や運営費交付金など、組織がほかの財源から支援する。そして研究を深く掘り下げ、さらに全体や周辺を見渡す余裕を行う、などなど、いろいろとあったんですけども、あとは、第2回から更新した情報として、選択と集中で――実は僕、日本の教育研究はよくないという話があるのですけども、実は台湾に呼ばれて、どうやったらそういういい研究ができるんですかという講演をしたりとか、あと逆に、先ほど出てきたヨーロッパから僕のところに来て、どうやったらいい研究ができるんだと聞いてくる人もいるんですよ。
 そういう意味で、どこがいけないのかなと思うところがあったり、あと、逆にうちの学生、どんどん海外に引き抜かれていって、彼に聞いてみると、「今と昔どっちがいい?」と言うと、「いや、日本のほうがよかったですよ」ということを聞いて、どこがよかったのと聞くと、「実は自由な発想を持って研究させていただきましたから」という言い方をするんですよね。
 そういう意味で、成果とかそういうことではなくて、自由にこうしたいというところに対して、例えば僕の場合、指導教官として幾らでも時間を費やす、一緒に実験をずっと続けるということは、実は大事ということが分かってきました。
 台湾のほうでは、いろいろと聞いてみると、日本は科研費採択率20%なんですけども、台湾のほうは採択率50%ぐらいで、非常に確率が高いと。その代わり数百万円程度はもらえるということで、そこに重要な発想をつくるチャンスがもらえているわけです。
 そういう意味で考えると、自由な発想を持って研究を行う環境としては、数百万円、年間もらうことが手頃かもしれないと。
 でも、これが手堅く割り振れたとして、その内訳、どう使用したいのかということを聞いて回ってくると、研究者としては……。
【大野分科会長】  先生、そろそろまとめてください。
【松田科学官】  分かりました。調査したほうがいいのは、研究時間について、教育学内活動の内訳として、講義・広報というところがあるので、その研究以外の内訳のところをちゃんと見ることによって、先ほど議論がありましたが、連携して補えるところがあるんじゃないかということを考える観点。
 そして、研究費を数百万円割り当てたときに、テクニシャンを雇うとか、秘書を雇うとか、具体的にどう使いたいのかということを調べたほうがいいんじゃないでしょうか。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして城山委員、お願いいたします。
【城山委員】  ありがとうございます。最初の御紹介の部分では、ホライゾンの中で人・社統合という話があったんですけど、多分、どう統合するのかとか、どうつなげていくのかみたいなことを具体的に探ることというのが、今後重要になってくるんだろうなと思います。
 これは、これまでもなかったわけではなくて、ある意味では狭い、ELSIみたいな観点で、科学技術での話をする最後の段階で、ある種、若干下請け的にという感じもするんですけども、倫理的課題がないかとか、社会的課題がないか、法的課題がないか、そういう話はあったのですが、むしろ共通の価値をつくり上げていくというような局面から、どういう形での連携なり協働なりが可能なのかといったことを具体的に考えていくような作業というのは重要になるんだろうなと思います。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 続きまして尾辻委員、お願いいたします。
【尾辻委員】  尾辻でございます。ありがとうございます。手短に申し上げたいと思います。
 皆さん、多くの委員がおっしゃられたとおり、様々な観点で、特に国立大学法人化されて以降、強烈な負のスパイラルが多方面で働いた結果が今に至っていると思います。
 その一つは、研究時間の縮小化というのは、これはもうもちろん、評価疲れがその裏側にはあるわけで、私はそれはDX化の抜本的な、予算を投じた上でのDX化で、これは解決できるであろうというふうに思います。
 一方で、神谷委員、それから福田委員をはじめ多くの方々が言われていたことが、基盤的研究費がもうほとんど地方大学ではないと。これは、財源の担保がないままに大学にガバナンス強化を求めたと。そうすると、特別事業に予算を投じる反面、広く薄く配分していた各研究室の研究基盤研究費は、もうほとんどないと。
 そうすると結果的には、科研費の例えば基盤研究C、それからグループ研究を強化しているところでは若手研究も、そのデュアルサポートの肩代わりとして崩れていってしまうと。もう、全て負のスパイラルなんです。
 そういった足腰を、ちゃんと財源を投与してしっかりとつくっていくことから始めていかないと、まず、人材育成も中途半端だと。
 そうしたことをやった上で、分科会長の大野先生が言われたとおり、大学院の改革を修士・博士一貫の6年のコースとして再構築し直すということで、博士課程の学生にもっと夢と希望と光を当てるような教育政策を図っていくということが、ひいては各技術の発展、基盤研究の充実、国際的な首位の座の奪還みたいなことにつながるのではなかろうかなというふうに思います。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして岸村委員、お願いいたします。
【岸村委員】  ありがとうございます。まずはちょっとマイナーなことから申しますけど、研究時間確保に関係して、現場的に言うと、いろんな大学でサバティカルの制度ってあると思うんですけど、なかなか取れないという現状もありますので、それをどうやったらみんな取得しやすくなるのかというのは、これは文科省の政策の問題じゃないかもしれないんですが、研究者コミュニティー全体で意識改革というか、どうしたらいいかというのを考え直さなきゃいけないのかなとも思います。
 もちろん、基盤的経費が足りていないとか、プロジェクト申請が継ぎはぎで、次々に回さなきゃいけないから取りづらい点もあるとは思うんですけど、何か全体で一遍にやらないと、徐々に増やそうとしてもなかなか増えないんじゃないかというのが実感としてあります。
 もう一点は、資料3で頂いているもので、16ページですかね、修士号・博士号の取得者数が外国と比較して少ないというところで、これ、毎年このデータが出続けているんですけども、大学院設置の問題と関係あるのかもしれませんが、修士が少ないというのがやっぱり博士の数も少ないというのに連動してしまいますので、この修士の数が少ないという問題も解決しなきゃいけないんじゃないかと思います。
 というのも、先ほど人・社との自然科学の統合みたい話もありましたけど、やっぱりある程度大学院で研究経験がある人じゃないと、一緒に話を統合したり融合したりというのは難しいと思いますので、必ずしも博士まで取らないとしても、社会全体での人材確保、あるいは裾野を広げていくという点で、修士取得者を増やすのは非常に大事なことだと思います。
 もう一点は、このグラフを見てもらうと分かるんですけども、特に日本は人・社系の修士取得者数が物すごく少ないというのもあって、ちょっと私の知り合いの人・社系の方にも聞いたんですけど、「そんなもんじゃないの」というか、あまり危機感がないような気配もあって。まあ、聞いた相手が悪いのかもしれませんが。
 今後、こういうところのリカレントとかを充実させる場合にも非常に大きく効いてくるところじゃないかなと思いますので、例えば理工系の人が人・社系に入るパスというのも確保していく上で、なかなか受け入れられないというのでは問題もあります。逆に理工系に分かれるのが早過ぎるという指摘も先ほどありましたけど、人・社系を卒業した方が新たに理工系でというときに、リカレントで大学院に入ろうとしても、もともと大学院での研究経験がないと入り直すのも難しい点もありますので、リカレントを拡充する上でも、この修士の問題というのは解決しなきゃいけないんじゃないかなと個人的には思います。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは加藤委員、お願いいたします。
【加藤委員】  先に言いたいことから言いますけれども、言いたい結論は、若手の研究時間を確保せよ、です。
 文科省の方の冒頭の話で、中国が若手の5分の4の研究時間を確保したという紹介がありました。これって勤務時間の8割なんです。今、ネットで調べましたけど、勤務時間の8割を研究に充てるようにというふうに、何か政策を打っているようです。
 私が研究者のキャリアを始めたのは35年か40年前で、東大で5年ほど助手をやっていましたが、その時は、科研費では海外出張に行けませんでした。なので、論文を国際会議に投稿すると同時に、必ず財団への応募を出しておきなさいと上の先生に言われていて、その通りにしていました。その後どんどん国の制度が整備されて、科研費で海外に行けるし、あと文科省の方々がいろんな政策を出して下さるようになって、大学が取れるお金がどんどん増えていったんですけども、それと共にどんどん、教育と研究以外の時間が増えていったような気がいたします。若いときほど、お金がないんだけど、不思議なことに教育と研究に時間を割くことができた。
 若手に研究時間を確保することが重要だと言うのは、特に情報分野で顕著なんですけども、情報分野は昔から、「徒弟制度」がほとんどなかったように思います。それはなぜかというと、技術革新が早いので、年上の人が昔やったことがどんどん役に立たなくなるのです。だから、若い人が新しいことを学んで、どんどんやっていかなきゃいけない。その最近のいい例が量子コンピューターです。
 分野は違いますけれども新型コロナウィルスに関する論文が日本は少ないということが最近、話題になっていますが、もしかしたら新型コロナウィルス研究にも同様の現象があるのかもしれない。ということで、ぜひ、若手の研究時間ということを意識していただいて、例えばですけども、運営費交付金の傾斜配分をするときに、若手研究者比率というのが今、使われていますけれども、もういっそのこと、若手の研究時間がどれほど取れていますかというのをKPIにしたらいかがですかというのを提言したいぐらいな気持ちでございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 これで全員の方に御発言いただきましたし、大変申し訳ございませんが、多分、話し足りなかった方も、御発言したかった方もいらっしゃると思いますけれども、時間となりましたので、本日の議題はこれで終了させていただきます。
 もし、これ以上言わなければいけないということがございましたらば、事務局にメールで御連絡をいただくと、今後の議論の中に反映させていただくことができますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、最後に事務局より連絡事項をお願いいたします。
【二瓶学術企画室室長補佐】  本日は御議論ありがとうございました。
 次回の学術分科会の日程につきましては、日程調整の上、改めて御連絡をさせていただきます。
 また、本日の議事録につきましては後日メールにてお送りいたしますので、御確認をお願いいたします。
 御退席の際には画面下の赤色のバツのボタンから御退席ください。
 本日はどうもありがとうございました。
 以上でございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。座長の不手際で少し延びてしまいましたし、御発言も十分できませんでしたが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。今日はどうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

 

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