学術分科会(第85回) 議事録

1.日時

令和4年4月12日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 大学研究力強化に向けた取組について
  2. 第11期学術分科会の各部会の検討状況について

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
大野分科会長、須藤分科会長代理、勝委員、小長谷委員、仲委員、長谷山委員、福田委員、観山委員、井関委員、尾辻委員、尾上委員、加藤委員、神谷委員、岸村委員、小林委員、城山委員、新福委員、武内委員、中野委員、中山委員、原田委員、山本佳世子委員、山本智委員
(科学官)
森口科学官、恒吉科学官、磯科学官、松田科学官、野崎科学官、渡慶次科学官、黒橋科学官、北川科学官、上川内科学官、藤森科学官、外田科学官、近藤科学官、深川科学官、長壁科学官

文部科学省

池田研究振興局長、坂本大臣官房審議官(研究振興局担当)、仙波振興企画課長、黒沼大学研究基盤整備課長、永田学術研究推進課長、寺門科学技術・学術総括官、河村学術企画室長、二瓶学術企画室室長補佐

5.議事録

【大野分科会長】  ただいまより、第85回科学技術・学術審議会の学術分科会を開催いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、オンライン開催に当たって、事務局から注意事項などがございますので、お願いいたします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】  本日もオンラインでの開催となりますので、事前にお送りしておりますマニュアルに記載のとおり、御発言の際には「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、指名を受けましたら、マイクをオンにし、お名前を言っていただいた上で、ゆっくり御発言いただければと思います。
 なお、分科会長以外の委員の皆様は、御発言されるとき以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 機材の不具合等ございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。
 また、本日、梶原委員、白波瀬委員、井野瀬委員、戸田山委員、長谷部委員、松岡委員が御欠席でございます。また、城山委員、新福委員、観山委員が少し遅れて御参加の予定と御連絡を受けております。本日は23名の御出席の予定であり、定足数を満たしておりますことを御報告いたします。
 なお、4月に役職等替わられた方がいらっしゃいますので、委員の皆様のお手元には、参考までに名簿をお送りしておりますので、御参照ください。
 なお、本日の会議は傍聴者を登録の上、公開としております。
 以上でございます。
 
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 続けて、事務局の異動がありましたので、御報告をお願いします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】  事務局でございます。事務局の異動につきまして、御報告をさせていただきます。
 4月1日付で振興企画課長に仙波秀志が着任してございます。
 
【仙波振興企画課長】  振興企画課長の仙波でございます。よろしくお願いいたします。
 
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。仙波課長でございました。
 それでは、続けて配付資料の確認をお願いいたします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】  本日の資料は委員の皆様へ事前に電子媒体にてお送りさせていただいております。
 本日の主な議題に係る資料に関しましては、議事次第のとおり、資料1から資料2-3としてお送りしております。資料不足等ございましたら、事務局までお知らせください。
 資料の確認は以上でございます。
 
【大野分科会長】  ありがとうございました。
 それでは議事に入ります。本日の議題は議事次第のとおりで、まず議題の(1)でございますが、大学研究力強化に向けた取組について御報告をいただきます。
 なお、報告の後、質疑応答の時間を確保させていただいています。
 それでは、議題の(1)大学研究力強化に向けた取組について、1.世界と伍する研究大学の実現に向けた大学ファンドの創設及び、2.科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会の設置について黒沼課長から、また、3.地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージを寺門総括官から御説明をお願いします。
 
黒沼大学研究基盤整備課長】  ありがとうございます。大学研究基盤整備課長、黒沼でございます。画面表示されているかと思いますけれども、資料1に基づきまして、大学研究力強化に向けた取組の状況について、御説明をさせていただきたいと思います。
 本日、3点、その中で御説明させていただこうと思っていますので、スライドをお願いします。
 1点目が、10兆円の大学ファンドの状況につきまして、それから2点目が、ファンドと地域中核大学、それから特色ある研究大学の総合的な振興をしていって我が国の研究力の厚みをつけることを検討している大学研究力強化委員会の検討状況についての御報告でございます。3点目は、別途、科学技術・学術政策局のほうから、総合振興パッケージの状況について御説明させていただきたいと思っております。
 では、1点目の大学ファンドから御説明いたします。
 令和3年9月12日の前回の分科会で予算要求の状況についてだけ御説明したところですけれども、今回、ファンドの予算の確保できましたので、遡って、もともとの背景から御説明させていただきたいと思っております。
 御案内のように、米国、欧州、中国などで科学技術研究開発投資がどんどん資金が増えているという状況もございまして、その中で、我が国の研究力、論文数の順位などにおきましても、相対的に順位を下げているところでございます。伸びてはいるんですけれども、他が伸びているということで、相対的に順位が下がっている状況があるということですとか、博士課程の博士号取得者数も伸びていないというような状況の中で、産業競争力の低下も見られているというような状況がございます。
 次のページ、めくっていただきまして、これは大学ごとの状況で見てみましても同様で、世界のトップ大学と比べると、我が国の大学も事業規模が伸びているんですけれども、諸外国の大学はそれ以上に伸びているということもありまして、その差が非常に開いている状況にございます。
 その背景にあるのは、右端のグラフですけれども、諸外国のトップ大学には、実は各大学の固有の基金というものを設けまして、その運用益、これを研究資金あるいは若手研究者への支援などに充てているということでございまして、ここら辺が大きな資金力の差につながっているというところでございます。
 こちらの棒グラフの中で、東京大学の数字を載せておりますけれども、桁が2つ違うという状況になっておりまして、我が国の大学も大学基金のようなものを積み上げていく努力を重ねていかなければならないところではございますけれども、ちょっと上にありますケンブリッジ、オックスフォードは、1兆円程度の基金が積み上がっていますけれども、イギリスも米国の様子を見習って、2000年代ぐらいから卒業生から寄附集めなどの体制を組んで自己資金の拡充に努めてきて、20年かけてこの規模の自己大学基金を積み上げたということですので、我が国の大学が今から卒業生の寄附集めなどの体制をつくって自己資金を拡充していったとしても、あと20年。これを放っておくということになると、ますます差が開いていってしまう状況が出てきてしまうだろうということで、それまでの間といいますか、そのつなぎとして政府の出資により10兆円規模の大学ファンドをつくりまして、それによって、このページ下にあるような人材・知恵、資金が循環していくような、欧米のトップ大学と同様な仕組みをつくっていきたいというのが10兆円ファンドの狙いでございます。
 その次のページ、御覧いただけますでしょうか。ファンドの運用益をどのような大学に支援をしていくのかということです。右上にあるのが目指す大学でございますけれども、世界のトップ大学、すなわち人材・知、資金が好循環していくような大学でして、新たな知のイノベーションの創出の中核になっているということだけではなくて、強固な大学基盤、あるいは高度なガバナンス体制を持っている、独自の基金を持っているというような大学を目指していくわけでございます。ファンドからの支援対象については、その右上の大学になれるようなポテンシャルのあるような大学を選んで、そこに投資をしていこうということでございます。
 その条件としまして、左下に3つの要件を書いておりますけれども、研究力、それから3%成長していくようなポテンシャル。この3%というのは、右上のオレンジの大学は、大体、年間3%ぐらいの事業成長続けているということもありまして、左下の大学を選ぶ対象として、3%成長するポテンシャルを持っているところということでございます。それから、ガバナンスがあるところということでございまして、そういう大学を認定していって、その大学に事業成長していく計画を立てていただいて、そこに対して大学ファンドからの助成を入れていって、そのファンドからの支援も入れながら、右上のような世界と伍する大学を目指していくというのが、この大学ファンドの全体像でございます。
 次のページをお願いできますでしょうか。
 昨年の1月に、ファンドの運用を行う科学技術振興機構に運用体制をつくるという法律改正をしまして、その後、先ほどの制度設計について検討してきまして、現在、上段の真ん中にあります関連法案ということで、このファンドからの運用益をどこの大学に配るのかという大学の指定の枠組みを決める法律案を提出しているところでございます。これが今国会で成立をしていただくようであれば、夏・秋までに基本方針を策定していって、その後、具体に公募申請を受け付けるというプロセスに入ってまいります。
 支援開始をするのは令和6年度からというのを予定しております。運用益を積み上げてから支援を開始することになりまして、運用を開始しているのが令和3年度末からになっていますので、その運用益が積み上がってくるのが令和6年度ぐらいだろうという見込みでございまして、その間に公募・選定をしていくわけですけれども、ガバナンス改革というのも要件にしておりますので、その間に、公私立大学であれば寄附行為、定款など、国立大学では法律を多少改正をして、ガバナンスを整えていく必要が、その間に出てくるだろうと考えているところでございます。
 次のページをお願いいたします。こちらは現在提出している法律案の骨子でございまして、詳細は後で御覧いただければと思いますけれども、1ポツで基本方針の中身として、認定、認可の基準、それから助成の基本方針を定めるということ。それから2ポツで大学の認定と書いていますけれども、それが先ほど申し上げたポテンシャルを持っている大学かどうかというところでございまして、研究と研究成果活用の実績・体制、あるいは運営体制などについて審査をさせていただいて、そこで世界と伍する大学としてポテンシャルがあると認められた大学が、3ポツのように、大学を実際に事業成長させていく計画を立てていただいて、その計画に対して助成をしていく。そういうスキームでございます。
 次のページはちょっと飛ばしていただきまして、以上が大学ファンドの骨子でございます。現在、法律の審議をこれから国会にお願いするという段階でございますけれども、終わりましたら、その先の基本方針に向けて詳細を詰めていく予定となってございます。
 2点目でございます。今度は大学ファンドだけではなく、地域の中核となるような大学の振興も含めて検討していくための委員会としまして、昨年設置された大学研究力強化委員会についてでございます。次のページ、お願いします。
 御覧のようなメンバーで、分科会長でいらっしゃいます大野総長に主査をしていただきまして、このようなメンバーで設置をしているところでございます。昨年の12月から既に3回ほど開催しておりますけれども、国公私立の研究人材、資金、環境に関する施策を総合的に検討することになってございます。
 主な検討課題としては、次のページでございますけれども、我が国全体の研究力を上げていく上では、中堅大学、こちらの研究力が非常に重要でございます。トップ大学だけではなくて、多様な研究大学があることが我が国の研究力の強みだということもございますので、そこら辺をいかに伸ばしていくのかが主な検討課題でございます。詳細は省略しますけれども、この左下の図にあるように、イギリス、ドイツの大学に比べて、赤い色の引用論文等がトップの層が上位大学に集中しているというのが我が国の今の状況でございますので、いかに中堅の大学を伸ばしていくのかが課題でございます。
 次のスライド、お願いいたします。
 この委員会では、地元と組んでいろいろと研究計画をつくって人材のマッチングなどをしている大学ですとか、若手に独立した研究環境を与えている大学などの事例も合わせ見ながら、何が研究力強化の課題なのかを様々な事例を踏まえて取り出していこうということで、ヒアリングをしながら検討しているところでございます。
 次のページ、お願いいたします。
 現在、今後の取組の方向性のところに書いてある①、②、③の3つの論点で、それぞれ検討を進めているところでございます。
 1つは、魅力ある研究拠点の形成、②として、研究基盤、設備あるいは施設の整備、③として、個別の大学ではなくて、共同利用・共同研究体制などについても併せて検討していくということと、②の一番下に、米印でちょっと書いたんですけれども、それと基盤的経費との連動についても併せて検討していくということと、あと、ページの上のほうにありますけれども、これら①から③の前提として、大学の全学的な研究マネジメント体制の構築も併せて考えていかなければと、このような視点で、それぞれの論点を深掘りして検討しているところでございます。
 次のページ、お願いいたします。
 そのような個別の大学の強みを伸ばしていくことによりまして、左上のA大学、B大学、C大学と書いてありますけれども、それぞれのタイプの個性・強みを伸ばす。そのような大学と、右上にある大学ファンドの対象になるような世界と伍する研究大学が、切磋琢磨しながらやっていく環境を整える。併せて、下にある共同利用・共同研究体制も含めた基盤、基盤的経費も含めた大学の基盤強化。この3本柱で、それぞれバランスを取りながら進めていきたいと考えているところでございます。
 後ほど科学技術・学術政策局のほうから御説明がある総合振興パッケージの改訂についても、この委員会で併せて検討していきたいと考えているところでございます。
 次から20ページまで事例ですので省略をいたしまして、寺門総括官のほうにお譲りしたいと思います。以上でございます。どうぞよろしくお願いします。
 
寺門科学技術・学術総括官】  続きまして、地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージについて、科学技術・学術総括官の寺門より御説明いたします。時間の関係がございますので、資料の26ページをまず御覧いただきたいと思います。
 この総合振興パッケージにつきまして、まず背景でございますけれども、昨年の8月に開催されましたCSTI、総合科学技術・イノベーション会議において総理から指示がございました。地域の中核大学が特色ある研究成果を基に新しい産業を生み出せるように、必要な政策パッケージを今年度中にまとめてほしいとございました。そのまとまった成果が、今御覧いただいているページでございまして、今年の2月に施策のカタログとしてまとまったのが、このパッケージでございます。
 さらに背景としては、改めて申すまでもなく、先生方、御高承のとおり、我が国の研究力全体を強化するためには、従前、説明ございました大学ファンドによるトップレベルの研究大学の支援のみならず、地域の大学をさらに強化していくことが喫緊の課題であることは論をまたないところでございます。このためにつくられましたのが、この御覧いただいているパッケージでございます。
 予算ベースで申しますと、そこにございますとおり、人材育成・社会実装、研究といったような、そういった機能というものを、それぞれ大学が自分の持っている強み、特色を生かして伸ばしていく、いわゆる競争的資金がここでは主でございますけれども、令和3年度に比較いたしますと、令和3年度の補正予算、4年度の予算ということに対すると、1.5倍の予算額でございまして、こういった予算をさらに充実させながら、意欲のある多様な大学が、それぞれの強みを発揮できるように、文科省としても、大学と引き続き一層きめ細かく対話をしながら、支援の充実を図ってまいりたいと考えてございます。
 こういった支援を通じまして、地域の中核大学、特定の分野に強みのある大学が、トップレベルの研究大学ともお互いに切磋琢磨できる、そういう関係を構築し、研究力の向上というのを図ってまいりたいと考えてございます。
 また、このパッケージは、これで終わりではございませんで、従前、黒沼課長に御説明いただきましたとおり、改訂をしていきます。この改訂につきましては、大野先生に主査を務めていただいております大学研究の強化委員会での御議論を踏まえて改訂をすることになっておりまして、来年度の概算要求等を見越して、さらに充実を図ってまいりたいと存じます。委員の皆様方にも御指導を賜れればと思ってございます。
 私のほうからは以上でございます。
 
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 御報告をいただいたわけですけれども、これから少し時間を取りまして、意見交換、あるいは御質問を受けたいと思います。皆様方、いかがでしょうか。
 中野委員からお願いいたします。
 
【中野委員】  このページと、それから16ページもそうなんですが、大学ファンドで支援する大学と、それからこのパッケージで支援する大学があるということなんですけれども、それは二者択一なんでしょうか。
 支援内容を見ますと、WPIであるとか、共創の場であるとか、大学ファンドの対象となるような大学でも行われているようなことも入っていますが、大学ファンドが走り始めたら、もうそちらに選ばれた大学は一本化するのでしょうか。
 
【大野分科会長】  いかがでしょうか。
 
【寺門科学技術・学術総括官】  寺門でございます。
 中野先生、御指摘、そういった御議論ございます。ファンドはこれから運用を始めていくわけですが、将来的に申し上げれば、基本的に貴重な国民の皆様の税金でございますので、重複がない形で予算を活用していただくということが大事だろうと思ってございますが、いずれにしろ、既にWPIにしろ、様々な事業、走っているところがございますし、また、ファンドのその状況もございますので、既に行われている取組とも丁寧に各アカデミアの先生方の御意見も聞きながら、対応を検討してまいりたいと思っているところでございます。
 以上でございます。
 
【中野委員】  分かりました。どうもありがとうございます。
 
【大野分科会長】  それでは、武内委員、お願いします。
 
【武内委員】  ありがとうございます。ファンドレイジングについて質問させていただきたいと思います。
 10兆円ファンドということで、基金について、これから数年かけて取り組んでいかれるという方向性は大変賛成でございます。
 一方で、私自身、もう大分前になりますけれども、当時の小宮山総長と一緒にイェール大学を訪問して、そういうことについてヒアリングをしたことがあるのですが、非常に驚いたのが、ファンドレイジングのための施設、ビルができていて、そこはファンドレイジングの人たちが、みんな集まっていると。言わばプロ的な形のファンドレイザーという人が指名されていて、そういう人たちが基金を運用していくということになっていて、大変驚いたことがあります。
 その後、東京大学の状況を見ましても、この頂いた表のとおりで、なかなか、そのレベルには達していないということは非常に大きな課題であると思いますけれども、基金ができたからファンドレイジングでお金が回っていくかというと、私はちょっとそういう意味で、少し不安な点があります。例えば、教員出身の方が運用業務担当理事になるというような従来型の形なのか、そこはもう全く違うような人材を発掘するのかという、この辺りが一つ大事な点じゃないかと思うのですが、そういうことについてお考えがあれば、お聞かせいただきたいと思います。
 以上です。
 
【大野分科会長】  お願いします。
 
【坂本審議官】  研究振興局担当審議官の坂本です。非常に重要な御指摘ありがとうございます。
 まず、ファンドレイジング、今、御指摘ありました点につきましては、もうアメリカとの比較で見ると、やはりファンドレイザー、あるいはそのファンドマネジャーのコミュニティというものの規模、それからクオリティーに相当差があるということを我々も勉強させていただいております。
 そういったコミュニティの形成というものは徐々に日本でも行われているということですが、この10兆円ファンドにしましても、JSTが運用主体になりますけれども、農林中金から喜田さんという理事をお迎えし、この資産運用、ファンド運用の専門家の組織をJSTに形成し、そこがこれからこういった大学独自でファンドをつくっていこうとする、そういった大学とも連携しながら、人材の育成とノウハウの蓄積を進めていくということで、大学を資金面で助成するということもセットでやっていくということが必要になっております。そういった体制を、今、我々はつくりつつあるというふうに御理解をいただけると思います。
 ぜひとも先生方にも、各大学で、例えば、ファンドレイザーのコミュニティもできていて、相当頑張ってらっしゃる方いらっしゃると思いますが、我々政府の取組と、皆さん、つながっていく。それを我々政府、あるいはJSTも取り組んでまいりますけれども、ぜひ、先生方からも、各大学、研究機関で頑張られているファンドレイザー、あるいはファンドマネジャーの方々ともブリッジというものをお願いできればありがたいと思います。
 以上です。
 
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 大分手が挙がっておりますので、すぐに次の御質問、御発言に行きたいと思います。
 仲委員、お願いします。
 
【仲委員】  御説明、どうもありがとうございました。
 2つ御質問があるんですけれども、1つは、この卓越研究大学というのは、部局ごとではなくて、丸ごとになっていく、選抜されていくということになるんでしょうかという御質問です。
 かつて、それぞれの地方の大学も、特色を持って、その大学の特色を生かしていくという方針があったと思うんですけれども、この卓越研究大学にすると、丸ごと、その大学ごとという形になっていってしまうんじゃないかなというふうに思ったのが1つです。
 それから、第2の質問は、規模感といいますか、大体何校ぐらいが、この卓越研究大学になるような予算が、お金があるのか。
 先ほどの5ページ目でしたっけ。東京大学が190億で、その隣にあったオックスフォードは8,200億で、ハーバード大学4.5兆とかって書いてあっても、この段階で今200倍とか、もうすごい差があるわけですけれども、これから行う卓越研究大学化をしていくということで、このギャップは埋まるものなのか、その規模感を教えていただきたくて手を挙げました。よろしくお願いします。
 
【大野分科会長】  ありがとうございます。いかがでしょうか。事務局、お願いします。
 
【黒沼大学研究基盤整備課長】  お答え申し上げます。
 まず先に規模感を申し上げますと、これを検討した総合科学技術・イノベーション会議の2月1日の決定によりますと、「数校」という表現で、数校に対して年間数百億の支援を行っていくことを目指すと言われております。
 10兆円ファンドの運用の目標としては、年間3,000億という目標を示しておりますが、最初のうちから運用が3,000億出てくるということではございませんで、徐々に徐々に運用益を積み上げながら、運用開始から5年ぐらいで、その規模を目指していくという状況ですので、最初から数校をいきなり採用できるかというと、そういうことではないと思っておりますので、その運用益の状況を見ながら徐々に採用していくことにはなろうかと思っております。
 ただ、いずれにしましても、数兆と190億の比較について先ほど御指摘いただきましたけれども、年間当たりの事業規模でいきますと、数百億から千億ぐらいの差ということですので、そこを埋めていくことが必要だろうと思っておりまして、そうすると1校当たりそれぐらいの規模での支援をしていく。となると、運用益が仮に3,000億出てきたとしても、やはり数校が限界になってくるかなということでございます。
 それから指定の仕方ですけれども、部局ごとではなく大学ごとというのは御指摘のとおりでございます。どの強みを伸ばしていくのかというのを、国が一本釣りで、この分野だけ伸ばしていくというふうに選ぶわけではなくて、どの強みを伸ばしていくのかも大学のほうで計画を立てていただいて、そこに対して支援をしていくということでございます。言ってみれば、大学のほうのマネジメントに任せて、どこを伸ばしてどこに投資するのか計画を立てていただくところも含めての支援の仕組みだと理解をしているところでございます。
 以上でございます。
 
【仲委員】  どうもありがとうございました。そういう卓越のところに院生がだんだんだんだん集まってくるということを考えると、中核になるほうの大学も、卓越に選ばれないほうの大学も、支援がやっぱりおろそかになってしまってはいけないなというふうに強く思うところです。
 以上です。ありがとうございました。
 
【大野分科会長】  ありがとうございました。それがパッケージの役割かと思います。
 続きまして、観山委員、お願いします。
 
【観山委員】  とにかく、この10兆円ファンドというのをつくっていただいたということは、すごいことでございまして、初めから3,000億なんて無理でしょうけれども、数百億のお金が学術に投入されるということは非常に重要なことだと思います。非常に喜ばしいことだと思います。
 そこで思うのですが、その拠点、選ばれた大学に対して、このお金をどういうふうに使えるのかというのが重要で、今まで様々な政策があったわけですが、今回、人材育成・社会実装、研究というふうにテーマは言われていますけれども、あまり細かく縛ってしまうと、結局、お金を使うために労力がかかって、先生方の研究時間をかえって取ってしまうというような経費では、なかなかうまくいかないと思うんですよね。
 なので、先程事務局が言われた、大学に任せて、そして結果で判断するというような形でないと、今までのいろんな政策考えると、いくつかのものでは、研究以外のところにたくさん時間を取られて、研究時間をかえって少なくしてしまうという部分もあったのではないかと思うんですね。
 それから、やっぱり今までの中で、WPIというのは、1つ非常にうまくいった。これは物にかけるのではなくて、基本的に人を集めることに集中したわけですね。1つは、外国人も含めて、非常にいい人を集めてきた、集められたということです。それからリーダーシップというか、拠点長がほとんど全部決めて、所員は会議なんかほとんどなくて済んだと聞いています。とにかく研究時間を圧倒的に増やしていくということ重要です。また、特に外国からの優秀な研究者呼べると、給料も高いですが、呼んでくるということが非常に重要だと思います。
 それから、3番目として、大学をファンドで支援するわけですけれども、そこの大学に行っていたお金というのは、ほかに回せるわけですので、私はある意味で、それが大学それぞれを伸ばすということと、大学間というか、共同利用、共同研究って、やっぱり非常に重要だと思います。共同利用・共同研究拠点や大学共同利用機関は、日本がよくつくった、いいアイデアなので、そこに支援をするのが良いと思います。多様な大学が、研究テーマでつなげる実績や、そういう仕組みを持っていますので、活用すると良いと思います。新たにつくるとすると、非常に負荷がかかりますので、さっき言ったような研究以外に時間使うことになりかねません。もう今、つくられているわけなので、そこをぜひ活用していただきたいということを思います。
 以上です。
 
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。事務局、いかがでしょうか。
 
【黒沼大学研究基盤整備課長】  ありがとうございます。
 9ページをお開きいただけますでしょうか。
 先ほど説明を飛ばしてしまったところに、ファンドのお金をどう使えるのかというスライドが実は載っておりまして、このページの一番下の四角になりますけれども、イ、ロ、ハ、ニ、ホと書いているところが、今回のファンドの支援によって使えるお金の使途でございます。
 研究環境の整備・充実、若手研究者の活躍に資する活動、研究者あるいは技術者の確保、技術者育成に資する活動、研究成果活用のための環境整備と書いてありますけれども、まさに御指摘いただいたような外国の大学との給与・処遇の差ですとか、海外の研究者を呼んでくるときの御家族の支援など、そういった費用にも使えるよう、研究者の確保のための費用が盛り込まれているところでございます。さらには研究支援者、技術者の確保という形で書いていますけれども、先ほどのファンドレイジングもそうですけれども、そういったバックヤードの人材、バックヤードという言葉はよくないかもしれませんけれども、そういった部門部門で活躍される方々の人材の確保についても必要な資金を投入できる形にしていこうと思っています。
 また、細かく使途を決めるというよりは、計画全体を出していただいて、それを見ていくと。制度設計はこれからになりますけれども、なるべく使い勝手がよくなるような形に設計をしていきたいと思っているところでございます。
 
【観山委員】  ぜひ、よろしくお願いします。
 
【大野分科会長】  よろしいでしょうか。今、3点の御質問についてお答えになったということですね。
 改めて申し上げるまでもないかもしれませんけれども、今、2つのスキームがあって、1つはファンド数校、そして振興パッケージ、こちらは様々なプログラムの集積になっています。観山先生がおっしゃられた研究時間を確保するという意味では、ファンドは現時点で、非常にはっきりしつつあると思っています。つまりオーバーヘッドが少ないと期待されます。一方で、振興パッケージのほうは様々なプログラムの集積であって、こちらは、まだそこまで整備ができていません。プログラムの集積というところから、いかに研究者の研究時間の拡大というものを、その中に組み込んでいくのかが、これからの課題になると、私個人は思っています。
 それでは、山本委員、お願いいたします。
 
【山本佳世子委員】  山本です。
 私、地域の中核大学のパッケージに絡んで、STEAM教育を中心とした人材の育成という言葉が出てくる、そこの点についてお伺いします。
 今までであれば、産学連携や地域活性化の人材育成ということが出ていたのに対して、このSTEAM教育によるSTEAMの人材育成という、どういう意図があるのか理解していないので、お願いいたします。
 これはデータサイエンスのことであったり、第6期で言っている文理融合みたいなのがあるのかなと思ったり、また、理系女性の活躍推進で、小・中からSTEAM教育をすると、女性が頑張って増えるんじゃないかという切り口もあると思いますし、この辺りを少し教えていただければと思います。
 
【寺門科学技術・学術総括官】  寺門でございます。
 先生の御質問ですが、おっしゃるとおりでございまして、今の現行の科学技術・イノベーション基本計画においても、そのSTEAM人材ということが掲げられてございます。まさに今言ったように、イノベーション人材を養成するに当たって、STEAM、それぞれの分野についての専門人材を、いかに、高等教育だけでなくても、初等・中等教育の段階から、いかにして養成していくのかというのが重要になってございまして、そういう観点から、この切り口で、地域の中核の大学の中においても、そういった人材育成にも配慮した形で競争的資金というものの活用を図っていく、そういう視点が大切じゃないかということで、そこに入ってございまして、大方の理解というか、概ねの理解は、先生がおまとめいただいたような、そういう思想が通底しているというふうに御理解いただければというふうに存じます。
 以上でございます。
 
【山本佳世子委員】  ありがとうございました。
 
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、長谷山委員、お願いいたします。
 
【長谷山委員】  長谷山でございます。
 ファンドのほうの国際卓越研究大学の関連のことについて、質問なんですけれども、どういう大学を支援していこうかというところ、ポンチ絵を拝見していますと、年間の事業規模や財務規模が3%程度成長していくとか、自己資金の拡充ということがございますが、これはそういう形の実績を上げた大学について、ファンドから支援をしていくということなのかどうかということです。
 というのは、このアイデアが出てきた最初の頃は、まずそのファンドから支援をしていって、そして独り立ちできるようになったら、その大学として、いろいろな形で自己資金の獲得とか、そういう基金の拡大とかで、その3%を続けていって、頑張ってくださいというような、そんなようなアイデアだったような記憶があるんですね。
 ですので、そうではなくて、今日拝見したポンチ絵のような、まずは自己で成長してください。そうすれば支援するということなのかどうか、1点、伺いたいと思います。
 それから、2点ございまして、2点目は、運用の持続性、安定性の担保というものが非常に重要で、大学にしろファンドにしろ、3%の運用の成長、それを続けていくというのは至難の業だと思います。そうすると、例えば、ある年には3%、3,000億円あるから、翌年は、その3,000億の果実で数校応援しましょう。次の年、その運用がうまくいきませんでしたと。市場の変化によって、大分今年は減ったので、それじゃあ、減らしますというふうに単純にされると、継続性を持った事業というのは、大学はもう計画できなくなるわけですね。だから、その辺、例えば、もう持続的にこれを支援しようとしたもので、次の年度、ファンドの運用が減ったら、その分を補塡するという考えがあるのかどうかですね。お金の算段。そうではなくて、減ったら、もうそこまでなんですと、大学のほうでプロジェクト、研究教育を縮小するとか、自己努力をしてくださいということなのか、この2点について伺いたいと思います。
 
【大野分科会長】  いかがでしょうか。
 
【黒沼大学研究基盤整備課長】  ありがとうございます。
 まず、自己資金獲得が先なのか、支援が先なのかというような、言い換えれば、そういうお話かなとも受け取ったのですけれども、総合科学技術・イノベーション会議の2月1日の決定では、自己資金とマッチングで支援をしていくということが言われております。
 と申し上げましたのも、先ほど諸外国の大学が基金を独自に積み上げているということでしたけれども、そこはやはり自己資金、卒業生からの寄附など外部の資金を獲得する努力をされて、これだけ積み上げてきた歴史がございます。それについては我が国の大学でも同様の努力はしていかなければならないだろうというのが、まず1点ございます。
 ただ、それだけで諸外国の大学が3%成長しているわけではなくて、資産運用の利益も含めて3%成長しているわけですので、我が国も自己資金獲得とファンドからの支援を入れて、合わせて事業規模を拡大して、その結果、3%の成長を目指すというのが姿でございます。自己資金だけで3%成長することを求めているわけではないと理解しているところでございます。
 また、その詳細につきましては、法律が成立した後の基本方針で認定基準のようなものを定めていくことになろうかと思っておりますので、そこまでに議論して、詳細を定めていきたいと思っております。
 それから、2点目の持続性、安定性のお話がございましたけれども、大学ファンドからの支援につきましては、毎年助成額が大きく波があるというようなことでは大学の計画が成り立たないというのは御指摘のとおりかと思いますので、我々のほうでは、運用益が一定以上上がったときでも、上限額を設定して、余った分はためておいて、運用益がそんなに上がらなかった年にも安定した額になるように、運用益が上がったから一気に配るということではなくて、長期的に安定的に配れるように、そこを計算しながらやっていきたいと思っているところでございます。
 以上でございます。
 
【大野分科会長】  ありがとうございます。よろしゅうございますね。
 
【長谷山委員】  分かりました。ありがとうございました。
 
【大野分科会長】  それでは、続きまして、山本智委員、お願いします。
 
【山本智委員】  大学ファンドにしましても、パッケージのプログラムにしましても、大学を支援するという形になっておりますことは、大学の自己改革を促しながら成長を目指すという考え方において、私としては理解できると思います。
 ただ、若干ちょっと気になりますのは、それらの横串にする部分が本当は要らないでしょうかという気は、ちょっとしております。
 というのは、どうしてかというと、例えば、大学院生、これは実は研究力の非常に重要なエンジンになります。それに対する支援が大学ごとにばらばらであるという現状というのは、究極的に、一種、教育の平等みたいなところにもあるし、それから一種、やはり人材確保というのを広く行うという観点でいいんだろうかという気はしているんです。SPringとか、いろんなプログラムを、実際、実施されてはおるんですけれども、やはりまだまだ足りないという感じはします。
 この大学院生支援というところを、各大学に任せているのか、それとも、やはりある程度、横串貫いて行うかというところは、政策としては両方の考え方あると思うんですけれども、その辺、お考えがあれば、教えていただければと思います。
 
【寺門科学技術・学術総括官】  寺門でございます。山本智先生、大変貴重な御指摘ありがとうございます。
 実は説明を端折ってしまったんですが、資料1のページでいうと33ページの概念図があるのですが、御高承のとおりでございまして、大学ファンドの世界に伍する研究大学のまとめのCSTIの報告書があるんですが、大学ファンドから、一番、この黄色の右端にございます博士の支援についても、CSTIの報告によれば、恒常的になれば200億円を、大学、トップ大学だけではなくて、全体、まさに先生のお言葉から横串で通すということが提言されています。
 先生方の御尽力もありまして、博士課程の継続支援拡充をしていますが、やはりこのファンドのこういった支援を契機に、従来から行われている様々なドクターへの支援についても改めて検討を深めていって、よりキャリアパスを明確にした上で、我が国の研究を下支えしてくれる博士学生をどう確保していくのかについても、引き続き先生の御意見いただきながら、充実してまいりたい、検討してまいりたいと思っているところでございます。
【山本智委員】  よろしくお願いします。ありがとうございました。
 
【大野分科会長】  ありがとうございました。
 少し時間が気になってまいりましたので、今、手が挙がっている4名の委員の皆様、須藤委員、勝委員、中山委員、岸村委員までで、まずは一旦区切らせていただきたいと思います。
 それでは、須藤委員、お願いいたします。
 
【須藤委員】  ありがとうございます。
 ちょうど今出ている、このスライドですけれども、これが今日のお話の全体像を、よくまとまっているなと思って見ていたんですけれども、上の世界と伍する研究大学、ファンドのほうですけど、これは置いておいて、その下の3つが、その特色をうまく整理されているなという気がしました。
 聞きたいことは、文科省の中で、今までいろんな地域、中核の大学に対する取組というのを、過去10年ぐらい、いろいろやってこられていると思うんですけれども、その辺を少しまとめたほうがいいんじゃないかというような意見が、かなり前から出ていまして、今、例えば、共創の場の支援のプログラム、COI-NEXTみたいな形で、いろんなプログラムを整理されていると思います。そういった一環で、これが出ているんだと思うんですけれども、今回のお話は、やっぱり大学が中心になっているんですけれども、特に地域の中核大学の支援ということになると、大学だけではなくて、やっぱり自治体との連携が当然必要になってくると思いますし、場合によっては地域の経済界との連携も必要になってくると思うんですけれども、その辺が、この3つのところに少しずつ入っているような気がするんですけど、支援はあくまで大学に限定している話ですよね。これは金額的には。一方で、内閣府は同じような取組をやられていると思うんです。まち・ひと・しごとのほうで。そちらはどっちかというと自治体を中心として、大学と自治体と産業界が連携したところに補助金を出すような事業をやられていると思うんですけど、その辺の区分けといいますか、あくまで今回のお話は大学だけに集中的に出すのか、もうちょっと範囲を広げて、自治体とか、そういうところにも広げたほうが、効果が出るような気がするんですけど、文科省として、なかなか大学以外にも出すというのは難しいような気がするので、その辺のお考えを教えていただければと思います。
 
【寺門科学技術・学術総括官】  端的に、ありがとうございます。
 26ページの図、もう一度、御覧いただければと思うのですが、これも説明はしょりましたが、小さく、予算の大宗を占めるのは文科省です。ただ、今、先生おっしゃったように、内閣府の予算ですとか、こういうものをCSTIが今回取りまとめたがゆえに、オール霞が関の関係する予算、競争的な資金が入っています。
 ただ、改めて先生おっしゃってくださいましたように、各省連携を取りつつも、どういう形で、これまで予算というのが使えたかという検証をさらに深めていくというのが、まさに改訂に当たっての重要なポイントと思ってございますので、先生の御指摘いただきながら、大野主査の下の強化委員会で、先生の御指摘を踏まえて改訂に生かしていきたいと思っているところでございます。
 
【須藤委員】  ありがとうございます。先ほどの33ページですか。あの絵、非常に分かりやすいので、それを使って、うまく発展させていただければと思います。
 
【寺門科学技術・学術総括官】  分かりました。
 
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、勝委員、お願いいたします。
 
【勝委員】  ありがとうございます。
 今までの議論で、概ね非常にクリアになったんですけれども、特に大学ファンドと、それから特定の大学になると思われる国際卓越研究大学制度についてお伺いしたいと思います。国際卓越研究大学は数校ということで、限られた数の大学になると。それはそれでいいと思うのですが、それぞれの裁量性というものも重視すると。その場合に、モニタリング、すなわち事後評価や、政策効果の評価は非常に重要になると思うのですけれども、例えば、研究成果等については成果がでるにはかなり長い時間がかかりますし、業務については大学の自主性に任せるというところもあると思うので、この辺については、どういうイメージを持たれているのか。例えば、財務戦略で3%成長という定量的なものを考えていこうとされているのか、ここについてまず1点、確認をさせていただければと思います。
 それから、もう一点としては、今回、大学ファンドと、それからパッケージということで、非常にダイナミックな動きがあるというのは理解できるのですが、それだけではなくて、社会における研究者、あるいは博士人材の位置づけというものを再度考えていく必要があるのではないかと思います。
 先ほどの御質問で、9ページにあるような国際卓越研究大学で、人への投資をするということはよく分かったのですけれども、任期なしポジションであるとか、そういった安定的なポジションを拡充していくとか、あるいは企業等の研究者、あるいは国際的な流動化をさらに進めるであるとか、あるいは企業においても、研究人材の待遇をもっとよくするとか、そういった大きな社会の中での博士人材のあり方というものを考えていかないと、真の意味での研究力強化にはなっていかないのではないかなと思うので、この辺も、ぜひ御配慮いただければと思います。
 以上でございます。
 
【大野分科会長】  ありがとうございます。いかがでしょうか。
 
【黒沼大学研究基盤整備課長】  では、1点目につきまして、大学研究力基盤整備課のほうからお答えいたします。
 モニタリングでございますけれども、今のところ客観的な指標に基づいて定期的に報告を受けて、それで、例えば、事業成長についても、どのくらい事業規模が広がっているかというのを、毎年モニタリングすることを予定しております。
 ただ、それをどの段階で評価するかについては、例えば、事業成長といいましょうか、収入については、大きくどんと寄附があった年とか、キャピタルゲインがあった年とかでは膨らみますし、そうでない年はそうでもないと、もちろん波がありますので、毎年判断するということではなくて、ある程度の期間で見ていかなければならないと思っています。それも短い期間ではなくて、既存の事業とかに比べてそれなりの期間を考えなきゃいけないと思っているところでございます。
 研究力についても同様に、論文数といった、どの指標を使うかまだはっきり決めておりませんで、基本方針とかで決めていくことになろうかと思いますが、そういった指標で見ていきながらということになるかと思っています。
 以上です。
 
【寺門科学技術・学術総括官】  2点目の博士人材については、勝先生のまさにおっしゃるとおりでございますので、経済的支援の拡充と併せて、やはりキャリアパスを明確にしていくということについて、様々な改革を進め、また、経済界の方にも、さらに御理解いただけるように、様々な働きかけ等を強化して、フォローアップをしていきたいと思います。ありがとうございます。
 
【大野分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、中山委員、お願いいたします。
 
【中山委員】  今回、10兆円ファンドが考えられて、非常に大きなインパクトを今後与えると思います。
 まず、世界に伍する研究大学、国際卓越研究大学に選ばれたところと、そうでないところの格差というものが、大学院の支援等も各大学でできるところと、そうでないところというように、起こる可能性があると危惧しております。
 この資料の15ページですかね。多様な研究大学群の形成に向けてということで考えられております、互いが切磋琢磨できる、いい関係を構築するということで書かれてはおりますけれども、若手の博士課程レベルの大学院生が、どちらの大学で研究するか、若手の研究者が、どこにおいて研究するかということにおいて、総合振興パッケージのほうで、しっかり研究環境を整備するという観点についても配慮されるべきではないかと思いますが、その点について、この格差が生まれない、そして頭脳の循環ができる、人材が流動的に動くというような、そういうダイナミックな研究、多様な研究大学群の形成ということを目指してほしいと思いますけれども、この点について、文科省のお考え、そして意気込み等をお聞かせいただければと思います。
 
【黒沼大学研究基盤整備課長】  ありがとうございます。御指摘の点、本当におっしゃるとおりだと思っております。
 ただ、大学間の格差という点に着目しますと、国内の格差だけ着目していると、今までそういった向きもございましたけれども、その間に海外のトップ大学との格差というのは、ものすごく広がってきている状況があると。今回は、そこに着目しているわけでございます。
 大学院生が、その先のポスト、研究の場を選ぼうかというときに、ぱっと見ると海外大学の処遇が全く国内と違っているという状況が出てきている。国内での頭脳循環どころか、世界に出ていってもう帰ってこない、そういった状況も生じかねないことになっておりますので、その世界のトップ大学も含めた頭脳循環、そういった視点で捉えていかなきゃいけないと思っているところでございます。
 ただ、その上で、トップ大学と海外のトップ大学の格差を埋めるだけではなくて、国内の中堅層についても同様に、それぞれの若手人材が活躍できるような研究拠点をつくっていく支援というのも、併せて両にらみで狙っていきたいと考えているところでございます。
 
【中山委員】  総合パッケージが、どのぐらいの予算規模になるかというようなことも大きなファクターだと思うんですよね。これまで支援されている、いろんな取組を並べてあるだけでは、なかなか新しいことができないというような、時間がかかるというようなこともありますので、しっかり総合振興パッケージで、多様な研究大学網をつくって、世界と伍する研究大学といい関係をつくるということは、しっかりお考えいただきたいと思います。
 以上です。
 
【黒沼大学研究基盤整備課長】  その点はしっかり踏まえて検討してまいりたいと思います。
 
【大野分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、岸村委員、お願いいたします。
 
【岸村委員】  ありがとうございます。
 ちょうど今、出ていた話と関連してますけれども、この世界と伍する研究大学と地方大学の格差という話、例えば、地方大学から世界と伍する研究大学に栄転するような研究者が出たときに、移籍金のようなものを出したりして、そういうところの格差を少し補塡したり、地方大学側にインセンティブをつけるというようなこともできたら面白いのかなと個人的には思ったりしています。スポーツとかでは、よくあることだと思うので。
 もう一つは、博士人材に関して、勝先生の2つ目の質問とほとんど同じだったので、ちょっとコメントですけれども、やはり博士人材の社会での活用につながるような施策であるとうれしいなと思っていて、よくある話ですが、社長さんや行政にも博士人材とか大学院生が少ないという話もあります。特に人・社系の人材で博士を持っている人少ないという話もありますので、そこの支援にもつながるようだとよいかなと思っています。
 それで、また先ほど、博士の支援のお金ですね。それが200億円ですか。コンスタントに計上していただけると、これはすばらしいことだと思うんですが、今、SPRING(注:次世代研究者挑戦的研究プログラム; JSTの事業)のような事業が走っていますけれども、これもやっぱり時限つきですし、例えば、三、四年おきに、また新しい教育プログラムを提案して、何か上乗せしていくような仕組みとしてずっと続いていくのか、あるいは学振ですね。JSPSの特別研究員の枠を拡充して、制度的にシンプルにしながら、博士人材の支援を可能にしていくのか、この辺りの方針について、何かありましたら教えてください。
 
【大野分科会長】  事務局、よろしくお願いします。
 
【寺門科学技術・学術総括官】  博士人材についてだけ、最初でございますね。3点目の御指摘の点ですが、そういったお声を、先生以外からも、様々な関係者からお聞きします。今後、その優秀な博士人材をいかに確保して、活躍していく場については、先生の御指摘踏まえて、関係部署で、また審議官の御意見いただきながら、関係、検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。
 以上です。
 
【黒沼大学研究基盤整備課長】  1点目の研究者の移籍の点等につきましては、直接的には、研究者との契約をつくっていくかという世界の話かとは思いますけれども、加えて業界の慣習をどうつくっていくか。私もスポーツ庁におりましたので、移籍金の世界は非常に好きというか、なじみのある世界でございますけれども、個別球団との契約だけではなくて、業界全体でそういう慣行をつくっていっていると思うので、その移籍金のようなものが日本国内だけでつくれるのか、それとも世界の頭脳循環の中で同様の仕組みをつくっていくのか、そこら辺の話にもなっていくのかなと感じた次第でございます。すいません、所掌外でございますので、ちょっと正確ではないかもしれません。恐縮でございます。
 漏れているところございましたでしょうか。大丈夫ですか。
 
【大野分科会長】  岸村委員、よろしゅうございますか。
 
【岸村委員】  移籍金というか、もし、どこか議論されているなら、また、そういうようなのも続けていただければと思います。ありがとうございます。
 
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、ここで一旦切りたいと思います。後で時間があれば、また御質問を受けたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、2番目の議題に入ります。第11期学術分科会の各部会の検討状況についてということで、御報告をいただきたいと思います。
 まず、研究環境基盤部会について、黒沼課長より御報告をお願いします。
 
【黒沼大学研究基盤整備課長】  ありがとうございます。では、御報告申し上げます。
 研究環境基盤部会の中には幾つか作業部会があるわけでございますけれども、まず、大学共同利用機関につきましては、以前、活動状況の評価などを行っていただきまして、この分科会にも御報告申し上げたところですけれども、大学共同利用機関の機構を超えた連合体を立ち上げて、連携を進めるべきという御報告をいただいたところでございます。
 それに基づいて、連合体はこの3月に立ち上がっておりますけれども、その連合体の検討状況を、聴取したところでございます。連合体による人材育成、あるいは機構を超えた、研究分野を超えた連携の取組などについて状況報告がされたところでございます。
 それから2点目、共同利用・共同研究拠点については、国立については、第3期中期目標期間における期末評価、それから第4期中期目標期間についての認定の審議を行ったところでございます。
 それから、公私立の共同利用・共同研究拠点についても、今年度の認定などについての審議が行われたところでございます。
 それから、学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会につきましては、大規模学術フロンティア促進事業、大体10年の期間で、支援する事業のスパンを決めておりますけれども、その10年の期間が終了する事業である「すばる」「SINET」につきまして、その年次計画終了に伴う評価と、今年度から始まる計画についての評価を行ったところでございます。
 そのほか、毎年の予算について御審議いただいておりますけれども、運営費交付金の配分について御審議を賜ったところでございます。
 そういった検討状況でございます。
 以上でございます。
 
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 各部会、それぞれ話題があると思いますので、ここで、まず今、黒沼課長から御報告いただいた件に関して、何か御質問、あるいは御意見があれば、お受けしたいと思いますけど、いかがでしょうか。資料2-1研究環境基盤部会の5点について御報告をいただきました。
 尾上委員、お願いいたします。
 
【尾上委員】  尾上でございます。ありがとうございます。
 最初のこのアライアンスの話に関係してなんですけれども、これは、ここの4法人と、総研大というところも含めて、いろいろ検討いただいて、非常にそれすごいなと思っているんですが、一般の共同利用をするような大学から見ると、何か、どういうようなメリットっておかしいですけど、効果が期待できるかとか、何かございましたら、教えていただければと思います。
 
【黒沼大学研究基盤整備課長】  ありがとうございます。
 御案内のように、大学共同利用機関は、研究分野ごとに設置されているわけですけれども、その大学共同利用機関が分野を超えて、新しい分野連携のようなことを始めていくということになりますと、今まで大学の枠を超えた取り組みをしようと思っても、その分野の受皿がなかったところについて、大学共同利用機関法人が新たに受皿となってくる可能性は、今後のお話として出てこようかと思っております。
 そのほか、機構を超えて、職員の共同の研修活動とかやっておりますけれども、例えば分析ですとか、機器の整備とか、そういった研修については、大学のほうにも、もちろんメリットは今後出てくる可能性はあろうかと思っております。
 いずれにしましても、その4機構のほうで、どのようなメリットが生かせるのか、これから広報活動を企画していくということですので、その中で、また模索されていくのではないかと考えております。
 
【尾上委員】  ありがとうございます。
 
【大野分科会長】  ありがとうございます。いかがでしょうか。他にはよろしゅうございますか。
 それでは、続いて、研究費部会について、永田課長から御報告をお願いいたします。
 
永田学術研究推進課長】  学術研究推進課長、永田でございます。
 それでは、私のほうでは研究費部会について御報告させていただきたいと思います。
 研究費部会では、前期、第10期の研究費部会において取りまとめられました第6期科学技術・イノベーション計画に向けた科研費の改善・充実につきまして、こちらのほうをまとめたわけですけれども、それを踏まえて、科研費制度のさらなる改善に向けて審議が行われております。
 今回、部会での審議を踏まえまして、科研費による国際共同研究の強化並びに若手研究者の人材育成の観点から、令和3年度補正予算におきまして、新たな種目として、国際先導研究を創設したところでございます。
 本種目につきましては、日本のトップレベル研究者が率いる研究チームによる海外トップレベル研究チームとの国際共同研究の支援と、世界と戦える優秀な若手研究者の育成を目的としておりまして、先月、3月18日に、日本学術振興会におきまして公募が開始されたところでございます。
 また、若手研究者支援の充実の観点から、若手研究者の挑戦の機会を増やして、研究者としてのステップアップの可能性を高めるということで、令和5年度の科研費の応募より、若手研究者向けの研究種目であります若手研究、こちらの2回目の応募と挑戦研究の開拓、こちらの重複応募、さらには受給制限を緩和するということを決めたところでございます。
 また、その他としまして、中長期的な課題として、基礎研究の在り方や審査負担の軽減等による持続可能な審査システムの構築に向けた検討を行っているところでございます。
 今後、研究費部会におきましては、引き続き研究活動の国際化の推進や若手研究者支援のさらなる充実等、科研費制度の改善について御審議を賜りたいと考えてございます。
 研究費部会については以上でございます。
 
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 今の御報告に関して、何か御質問、あるいは御意見ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、続きまして、科学研究費補助金審査部会から、科学研究費補助金審査部会長の福田委員より御報告をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
 
【福田委員】  それでは、福田のほうから説明をさせていただきます。
 主な今回のやったことというのは、そこに書いてございますように、科学研究費補助の事業の審査区分表の改正等について決定したということで、資料が2-2にございますので、そちらを見ていただければと思います。
 初めの7ページが、その審査区分表の改正についての概要をまとめてございます。ここを見ていただければ大体分かっていただけるということで、これを使って説明をさせていただきたいと思います。
 まず、2ページ目を御覧ください。ここに書いてございますが、これは科学研究費においては、応募や審査に必要になります大・中・小区分からなる審査区分表というのを定めてございます。現在のこの審査区分表は、平成30年に、これまでの系・分野・分科・細目表、これを廃止いたしまして、新たに策定したものでございます。
 この区分表は、学術研究の動向を把握しながら、5年程度で定期的な見直しを行うことにしておりますが、今回は、その初めての改正ということになります。
 次は3ページ目を御覧ください。これは経緯でございますが、まず、見直しに当たりまして、平成30年の8月に科学研究費補助金審査部会におきまして、審査区分表の見直しの基本的な考え方を決定いたしました。この考え方を基に、日本学術振興会に検討を依頼いたしました。
 日本学術振興会のほうでは、それを検討していただきまして、その検討案をつくっていただきました。この検討案につきまして審査部会のほうで議論を行うとともに、パブコメを通して、広く研究者、国民の皆様からの意見を聴取することにいたしました。
 この研究者、国民の皆様からの意見をさらに日本学術振興会、それから科学研究費の補助金審査部会で検討いたしまして、それも取り入れる形でまとめたものが、令和5年度科研費から適用することにいたします審査区分表の見直しということになります。
 4ページを御覧ください。この4ページは、その審査区分表の見直しについての具体的な内容の大枠を記載しております。
 この審査区分表には大区分、中区分、小区分がございますが、この体制、この枠組みは維持することにして、その上で306の小区分のうち96の小区分の内容の例について見直しを行うことにいたしました。それが見直しの主な内容となってございます。
 それでは、6ページを御覧ください。6ページは、それに加えまして、より公正な審査と、それから大くくり化を進めるという観点から、基盤(B)において、著しく応募件数が少ない状況にありました一部の小区分について、他の小区分と合同で審査を行うことにいたしました。令和5年度の科研費においては、49の小区分を対象に合同審査を行うということにしてございます。
 概要は以上でございますが、詳細につきましては、7ページ以降にございます、科学研究費助成事業「審査区分表」の改正等についてを御覧いただければというふうに、以上でございます。
 
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 いかがでしょうか。何か御質問、あるいは御意見ございますでしょうか。
 よろしゅうございますか。どうもありがとうございました。
 それでは、最後になりますが、人文学・社会科学特別委員会について、委員会の主査の城山委員より御報告をお願いいたします。
 
【城山委員】  それでは、城山のほうから、人文学・社会科学特別委員会における検討状況について、御説明させていただければと思います。
 次のページ、お願いいたします。資料の2-3でございます。
 この検討のバックグラウンドでありますけれども、第6期の科学技術・イノベーション基本計画におきまして、人文・社会科学についても言及されているということがベースにあります。人文・社会科学を含めた厚みのある「知」の蓄積というのが、イノベーションの創出のためにも重要だという、そういう基本認識が述べられ、具体的に人・社の役割として、これは(1)の(b)のところにありますけれども、新しい価値観や社会の在り方を提示・探究するということと、それから自然科学の知と連携・協働して、いわゆる「総合知」をつくるという、そういう2つの側面において、役割が規定されているわけであります。その2つの側面ですね。人・社として、厚みのある研究を進めるということと、それから自然科学の知と融合した「総合知」を活用すると、創出すると、この2つが目的に掲げられているわけであります。
 そういたしますと、この目的を達成する、できているかということを考えるためにも、当然、評価指標の話ということが重要になりまして、(c)のところでありますけれども、人文・社会科学、あるいは人文・社会科学も関与する「総合知」に関する指標の検討が必要だということが述べられているというのがバックグラウンドでございます。
 次のページをお願いいたします。
 ただ、この人社の評価の問題というのは、これまでにも論じられてきた問題であります。この論点の背景というところには、平成30年に出されました人文学・社会科学振興の在り方に関するワーキンググループからの抜粋が書かれていますけれども、既に幾つかのことが指摘をされているということがあります。
 例えば、上から申しますと、自然科学だと論文というのが大事なわけですけれども、人文・社会科学だと、書籍だとかブックチャッパーというのも重要な成果発表の手段ですよと。
 それから、2つ目でありますけれども、論文をジャーナルに載っけるということが、自然科学であれば当然重要なわけですが、社会科学・人文学の課題というのは、かなりコンテクストに依存する部分があって、例えば、その地域だとか日本なりに即した課題設定ということが重要だとすると、そういうものは国際的な共通な関心事項をもってのジャーナルと必ずしも適合しないということもあり、そういう意味でいうと、どこに載っけるのが適切かということも、分野によっては、いろいろ状況が異なり得るということがあります。そういった側面も人・社の場合には考慮すべきだというのが、2つ目、3つ目、4つ目のポツの部分の趣旨であります。
 他方、人文・社会科学においても、社会に対してどう貢献するのか、「経済的価値も含め」と書いてありますけれども、もちろん、これに限られるわけではないわけですが、社会的な価値というものを発信することが大事だ、こういうことは既に言われていたところであります。
 それをベースに、今回の特別委員会におきましては、2ポツでありますけれども、そもそも、モニタリング指標を設定するとなると、それはそもそも何を目的にするかということが前提になるので、その目的と連関させる形でモニタリング指標の在り方について考える。その際に、人文学・社会科学の特性をどう考えるかだとか、ローカルなコンテクストが、場合によっては重要だとはいえ、国際的な通用性というのも大事なので、そういうことをどう検討すべきかということが基本的な宿題として設定をされたと理解をしております。
 その上で、どういうことを行ってきたかというのが次の4ページでありますけれども、これまでに2回のヒアリングを実施してきたというのが主たる活動であります。
 例えば、1月28日には、海外における方法の例、あるいは日本における試行の話について検討いたしました。時間がありませんので詳しく述べませんが、次の5ページのところに書いてありますけれども、例えば、ノルウェーモデルと言われますけれども、ノルウェーにおいては、論文だけではなくて本、あるいは本のチャプターをどうやって評価するかだとか、あるいはピアレビューというものを、どういうふうに位置づけるかということについても一定の検討がなされていて、そういうことが日本において使えるかどうか、こういうことが議論をされたところであります。
 ノルウェーの場合、書籍も入れるわけですが、アカデミックに重要な書籍というのを、ある程度、重みづけするような仕組みがあるわけですが、そういうことが日本で可能かどうかというようなことが一つの論点でありました。
 あるいは、社会的インパクトですね。単に論文として出されたか、どれだけサイテーションされたかだけではなくて、アウトカム、あるいはインパクトとして、社会的な側面をどういうふうに評価するのか、そういうことが問題提起されたわけであります。
 それから、次の2つ目のプレゼンテーションにおきましては、これは会計士さん等に御報告いただいたわけですけれども、例えば、人・社の世界において、これは社会的インパクトの話と重なってきますけれども、その成果や活動の多様性というのを、どういうふうに可視化していくのか。単に論文の出版ではなくて、社会的な普及ですね。リセミネーションみたいなことをどう評価するかということが重要で、ある意味では、これは人文学・社会科学においては、元からある種の世の中に対する啓蒙的機能ということがあるので、実際に果たしてきた機能でもあるわけですが、そういったものをどう指標化するのかといったようなこと。
 あるいは最後の科学技術と社会の指標ということに関して言うと、これは必ずしも人・社ということではなくて、科学技術が社会に入ったときに、どういう社会的インパクトを与えるかというようなことで、その適切さみたいなことをどうやって評価するかという、こういうことがリスポンシブル・リサーチ・アンド・イノベーションなどの文脈で議論されているわけですが、そういったものが参考にならないか、そういうような議論がされたわけであります。
 それから、3月28日の2回目の会合におきましては、後藤先生、それから加藤先生から問題提起いただいたわけですけれども、日本で実際に、人・社の領域において、評価というのはどういう形で可能かということを、実験的に人間文化研究機構のデータを用いて試みていただいた、その報告というのは後藤先生の報告であります。
 そこの中でも、やはりブックチャプターがかなり重要だということ、あるいはSCOPUSのような手法だと、かかってくる部分が極めて限定的になるといったようなことが示されたわけです。ただ、できないということだけでは前向きにはいきませんので、そういう中で、現在可能な第三者データ等を用いて、どうやってデータプラットフォームがつくれるかといった、そういうことについて問題提起をいただいて、議論いたしました。
 それから、加藤先生は、これは筑波大学における試みですけれども、例えば、新しい研究評価指標の試みですね。IMDと言っておりましたけれども、例えば、著者の国籍のダイバーシティーだとか、あるいは著者の所属機関のダイバーシティー等で評価をするようなことで、一定の評価が人社についてもできないかという、そういう試みについても御紹介をいただいたということであります。
 2ページ進んで、主な意見のところに行っていただければと思います。
 今、どういう議論をしているかということの概略は御紹介いたしましたけれども、個別の意見は、6ページ、7ページに書かれているとおりであります。
 若干御紹介させていただくと、書籍についても、論文のように引用を見るということも意味があるだろうけれども、書籍への引用というのは、なかなかデータが取れないという、こういう問題ですね。あるいは競争資金が取れたということを一つの評価として使うことができるかどうかという、こういう論点ですね。それから、社会的インパクトの一つになりますけれども、政策提言だとか社会の実際のルールづくりなどに貢献するというようなことを、どうやって指標化できるかという、そういう問題もあるだろうということ。それから、一番下でありますけれども、先ほども後藤先生の御報告との関連でも申しましたけれども、なかなかデータに限定があるということは確かですが、その中でできることを、データを積み上げて整備していくということが重要じゃないかという、そういう議論であります。
 それから、次の7ページの冒頭部分でありますけれども、これは結構重要なポイントかと思いますけれども、結局、この分野の発展のために、どういう方向に持っていきたいのかという議論を前提としないと、指標の議論はできないということだと思います。これは人・社の中でも分野によって違うだろうと思いますけれども、国際的な競争性のあるジャーナルに論文を書くということを目的にするのであれば、当然、それを指標として用いるということになりますが、他方、ある種の社会的なインパクトだとか、ローカルなコミュニティ、あるいは日本社会といったところにフィードバックする、課題設定をするということが目的であるんだとすると、若干違った指標の工夫というのが、恐らく必要になってくるだろうと思います。ただ、これは何を学術的な評価とし、何を社会的インパクトの評価にするかの切り分けの問題でもあるので、その辺りを詰めていくということが重要なのだろうと思います。
 それから、3つ目のマル、ポツですけれども、これノルウェーモデルで申しましたように、書籍も評価に入れるということは、もちろんデータの課題はありますけれども、力業で当然可能ではありますが、ただ、そのときに、学術書とそうでない書籍を分けられるかというと、日本の場合には、一般的な出版社が学術書も出しているという側面もあり、なかなかここは難しいということが言われたということであります。
 それから、最後の部分ですけれども、結局は多様性と標準化のバランスが大事だということですね。そういうローカルコンテクストにおける役割を評価するというようなことと、ある程度、国際的な通用可能性のある評価を、どういった形でバランスさせていくか、そういうことが重要だという、そういうようなことが議論されているというところが現状であります。
 まだ、こういう形で問題提起を整理している段階でありますけれども、これをまとめていくということが人・社の評価にとっても大事でしょうし、恐らく人・社を一部連携相手として取り込んでいる総合知にとっても、社会的インパクトも含め、こういう考慮事項ということが評価の際に重要になっているのではないかという、そういうことではないかというふうに思います。
 以上で私からの御報告とさせていただきます。よろしく御審議いただければ幸いです。
 
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 この、今、御報告いただきました人文学・社会科学特別委員会からのものについては、総合知の関係もありますし、文理を問わず非常に重要な問題提起、あるいは課題となっていますので、少し時間を取って議論、御質問を受けたいと思います。
 早速、幾つか御発言の手が挙がっていますので、順番にお話しいただければと思います。
 まず、小林委員、お願いいたします。
 
【小林委員】  ありがとうございます。
 まず、人文・社会科学で、その評価の基準は明確につくる必要があると思います。今まで、やはりつくらない、あるいはないことに甘えていた部分が、私はあるのではないかと思います。
 社会に対して貢献したかどうか、この価値の部分は少し置いておきたいと思います。何をもって社会の貢献かは、もう意見が分かれてしまいますので、憲法学者の護憲の論文が貢献したのか、改憲の論文が貢献したのか、もうこれだけで意見は絶対にまとまらないですから、それは置いておいて、まず、書籍は業績に加える必要があります。これは別にノルウェーの問題ではなくて、私は法学系ですが、アメリカでもPh.D.取った後、ポスドクで3年ぐらい教えながら、その間に、書籍として、博士号を論文をパブリッシュできるかどうか、これが次の就職につながります。いくらジャーナルに論文出していても、パブリッシュできなかったら、テニュアは取れないです。ですから、これはもう当たり前なことだと思います。
 それを各機関から、いい書籍かどうかを推薦してもらうというのは、これはまた難しいことだろうと思います。あまりにも人によって価値観は違ってきます。ですから、やはり、それぞれの分野のメジャーなジャーナルに、どれくらいその本が引用されたのか、それはカウントできます。ですから、全てをカウントしようとするから、それはもうデータがないという話で行き止まってしまうので、例えば、経済学だったら年報の経済学とか、政治学だったら、年報政治学と。要するに、日本経済学会、日本社会学会、日本政治学会とか、アンブレラの学会があります。そこが出している、例えば、ジャーナルに、どれぐらい出ているか。あるいはアメリカのAPSRでも何でもいいですけれども、そういうところでカウントは不可能なことではないと思います。いずれにせよ、各分野ごとに、そのトップパブリッシャー的なもののランクをつくるということが、一つ、重要だろうと思います。
 2番目ですが、論文をどうするのか。実は私はソウル大学と台湾の大学の研究もしていますが、そういう国では、もう随分昔からやっているんですね。ですから、ソーシャル・サイエンス、要するにインパクトファクターがついていればSSCI、Social Science Citation Indexでカウントできますが、そうでなくても、韓国ならKSSCI、それから中国、台湾だったらCSSCIという基準をつくって、そこで実際に給料も変わってきます。
 去年、私が指導教諭をしていて博士号取ったのが中国で初任給480万ですが、SSCIだと、1本160万円上乗せになります。CSSCIだと1本60万円上乗せになります。たしか、彼は3本ぐらいCSSCIで書いて、給料が倍になっていますが、給料は置いておいて、要するに、JSSCIみたいなものをつくって、まず研究のきちんと競争、あるいはそれに対する評価。給料に反映しなくてもいいですけれども、そういうことをやらないと、何となく教育だけやって、教授会出て、UCRだけやっていれば済んでしまうでは、私はもう話にならないと思います。
 あと、IMDというスライドの5枚目ですが、ちょっとこれは私、理解できなかったのですが、国際的なジャーナルの編集委員と、幾つも今やっていますけれども、やっぱり海外のトップのジャーナルほど、実は著者はほとんどG20の国に集約されています。ちょっと、2番手、3番手より、もっと下になってくると、結局、いろんな国から多様性で入っていきます。そうすると、多様性と質は本当につながるのか、じゃあ、つながらないとしたら、この多様性を図る意味はどこにあるのか、これはぜひお尋ねしたいところです。
 以上です。
 
【大野分科会長】  ありがとうございます。城山先生から、まずは御発言をいただけますでしょうか。
 
【城山委員】  直接的な御質問があったのは、最後のIMDの話で、課題としては、まさに小林先生からいただいたようなことがあるんだろうと思います。あくまでも、これは加藤先生からも御説明いただけましたけれども、一つの指標で、端的に言うと、既往のような単一機関で単一国籍が書いているようなものと、そうでないものを、どう差別化するかという問題意識が出てきたものでありますので、まさに多様であればいいのかというと、じゃあ、クオリティーとの関係で、どう評価すべきかというのは当然ある疑問だろうと思います。そういう意味で、あくまでもワン・オブ・ゼムということかと思います。
 それから、最初におっしゃられた大きな方向性として、恐らく評価は必要だろうということは、その情報の限界はあるとしても、大きな方向性としては、かなり委員会のメンバーの中では共有されていた方向ではないかなと思います。
 そういう中で、今、1つ目におっしゃっていただいた、書籍を評価するときに、その書籍同士の引用ではなくて、多分、ジャーナルへの引用というところから入っていくというのは、これは一つのプラクティカルな解だと思いますので、そういうことも含めて、今後、検討させていただくことになるんだろうなと思っています。どうもありがとうございました。
 
【大野分科会長】  ありがとうございました。
 続きまして、長谷山委員、お願いいたします。
 
【長谷山委員】  ありがとうございます。
 この人・社系の研究力を向上させるために評価指標を考えていこうと、これは大変よいことだと思うんです。ただ、その目指すところと、それから、この委員会がつくられるきっかけになった、人文・社会科学が重要であると、この論議が始まった頃の出発点の理念といいますか、ちょっと確認したいと思うんですね。
 と申しますのは、この科学技術・学術審議会、科学技術を振興しよう、我が国でイノベーションを起こそうと、どうしたらいいかということで始まったわけです。ともすれば、そこでは自然科学系、理系の研究力をどう評価していくかというような意見といいますか、議論が出ていました。
 そのときに、本当にイノベーションを起こしていくなら、いわゆる自然科学系の研究だけを振興しても、それはうまくいかないので、まさに人文・社会、自然科学という次元とは別の、科学と人文学が対立するのではなくて共同するような、そういう動きをつくっていかないと、本当の科学技術・イノベーションにならないだろうと、これが出発点だったと思うんです。
 そういう意味で、そうはいっても、とにかく人文・社会系の力を伸ばそうじゃないか、評価手法が必要だ、この議論は分かるんですけれども、そこから進んで、まさに総合知をつくる、そういう科学や人文学、あるいは人文・社会、自然科学が共同して総合知をつくろうと、これを後押しするような仕組みをつくり、また、その総合知が生み出されていく、それを評価し、その実績を社会に発信していく、そういうような仕組みを同時に考えていかないと、ちょっと議論が変な方向に行ってしまうんじゃないかなということを感じましたので、これは感想です。申し上げました。
 
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 城山委員、何か御発言ございますか。
 
【城山委員】  はい。御指摘どうもありがとうございます。まさに今日の御紹介の初めにも、第6期科学技術・イノベーション基本計画から入ったということがあって、そういう意味では、科学技術のほうに若干寄り過ぎるというリスクがあるんではないかという側面はあるのだろうと思います。
 ただ、この最初のところで申し上げたように、多分、恐らく今回のこの科学技術・イノベーション基本計画の特徴の一つというのは、従来も、いわゆる例えば科学技術を入れていくときに、ELSIと言われるような、社会に入れていくときに、最終段階で、いろんな倫理とか社会的課題が大事ですねという、そういう話ももちろんあるんですけれども、それだけではなくて、むしろ社会にとっては新しい価値観や社会の在り方を提示するというのが重要な人・社の機能であって、そこも含めて明示的に書かれているというのが、多分、大事な点なのだろうと思います。逆に言うと、そういう側面を、きちんとどうやって評価していくかということも含めて、多分、考える必要があるんだろうという御示唆だろうと思います。
 そういう意味でいうと、これは小林先生の1つ目のコメントとも絡んでくるんですが、社会的側面は置いておくとしてという形でおっしゃいましたけれども、もちろん、まずアカデミックなレリバンスをどう図るかということがベースではありますが、やはり人・社系の話を評価するときに、一定程度、社会的側面というものをどう評価するかということが、やはり必要になってくるのだろうと思います。
 それは先ほどの例でいえば、護憲か改憲かではありませんが、どちらの政策が取られたかというよりかは、ある意味では、社会での健全な議論を、ある種、促す上で、どう寄与したのかみたいな、そういうタイプのことを、きちんとある程度認識するような仕組みが必要なのかなと思います。だから、そういうことも含めて議論することが必要ではないか、そういう御示唆ではないかというふうに私としては受け止めさせていただきました。ありがとうございます。
 
【長谷山委員】  城山先生、もう少しだけよろしいですか。
 
【大野分科会長】  時間がまだもう少しございますので、どうぞ。
 
【長谷山委員】  申し訳ありません。よく分かりました。
 要するに、この問題が出て議論になってから、途中でコロナ禍になり、その中で、テクノロジーがどんどん発達していく、それが必ずしも人間のためになっていないぞと。いやいや、やっぱりテクノロジーというのは、人間と、これからむしろ協力して、それで人類の幸福だとかいうような議論も出ましたし、そういうオンラインで、いろいろインターネットを通じて、悪い情報もよい情報も出るとか、そういうことがなってきて、やっぱりそうした科学技術の問題を考えていくときに、科学と人文学が融合的に協力して考えていく、そういう意味での総合知が必要だという文脈だと思うんですね。ですから、そのことをはっきり意識して、それぞれの分科会で議論したことが最終的にうまく合致して、全体として、総合知をどう生み出していくか、それをどう評価して、どういうふうに発信するかという方向につながっていく、そういうふうになるといいなという希望でございます。
 よく分かりました。ありがとうございます。
 
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、新福委員、お願いいたします。
 
【新福委員】  私もこの議論に参加しておりましたので、質問というより、そこから考えたことになります。
 この議論というのは、分野において適切な評価がされるということはどういうことかという、非常に重要な議論だと思っておりまして、先ほど大野先生もおっしゃっておりましたように、人文・社会科学に限らず、自然科学分野に分類される分野でも、コンテクストによる影響が非常に大きい分野においては重要な議論なのではないかと思っております。
 私自身が臨床、医療、保健、看護といった分野におりますので、この分野も、どの地域で、どの組織で、どの施設で提供されるケアなのかというところで非常にコンテクストに影響を受けます。
 そうしたときに、国際ジャーナルに日本で取ったデータを出したとしても、これは日本のものでしょう。もっと国際的に関連性のある論文を出しなさいというような理由で、エディターに返されてしまうようなことがあったりします。でも、例えば、ヨーロッパの2国分のデータで出されると、それは、じゃあ、国際的だといって受け入れられたりする。でも、人口規模でいうと、ヨーロッパの2国より、よっぽど日本のほうが大きな規模でやっているデータであることもあります。それで、なかなか、そういったジャーナルにおけるルールですとか、どういったものが選ばれるのかというのが、ちょっと日本に不利なように働いている部分もあったりするので、そこも含めて、どういうふうに国際的に競争力を高めていくかという部分を考えていかなきゃいけないと同時に、また、その分野では、何が適切な評価になるのかというところを、人文・社会科学だけに限らず、コンテクストに影響を受ける自然科学の分野においても、今後、議論を深めていかなきゃならないと思います。やはり今、総合知というものが議論されている時代ですので、ますます多様な分野の適切な評価の発展が求められると思っております。
 以上です。
 
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 城山委員からの御発言は、もうよろしいですか。
 
【城山委員】  結構です。まさにこういうことを議論してきたということだと思います。
 
【大野分科会長】  いわゆる理系・文系を超えて、非常に共通項の多い議論をしていただいていると思います。学術分科会としても、これはきちんと取り上げて議論をすべきだと、ますます強く思うようになりました。
 武内委員、お願いいたします。
 
【武内委員】  ちょっと視点を変えてということなのですが、これは日本だけの問題ではなくて、世界で見ると、英語圏以外の国で、母国の言葉と、それから英語での論文発表というのを、どうバランスを取るか。そういう中で、特に人文・社会科学系の学問の振興をうまく図っていくかというような問題になるのではないかと思います。
 そのような観点からすると、例えばですけれども、自然科学と社会科学が統合されて、ISCという組織ができました。今、学術会議では、国際学術会議という名称にしておりますけれども、これは大変快挙で、東北大学の副学長の小谷先生が次期会長に選出されました。それから、東大の白波瀬先生は国連大学のほうも兼務されていますが、現時点では財務担当の副会長に選出されたという、そういう日本のコントリビューションが非常に大きくなっているのですが、そういう中で見ていますと、やや社会科学系が取り込まれているというような状況もあるのではないかということも危惧しております。これはISCには人文科学が入っていないということで、また、これを一つの課題だというふうに認識していますけれど、いずれにしても自然科学と社会科学の融合というのを、どうやって、ただ単に取り込まれるということではなくて、本当の意味での融合、そして社会科学の持つ地域性だとか多様性というようなことを考慮していくことができるのかという、ある種の国際的な課題だという捉え方も、あってもいいのではないかなと思いましたので、発言させていただきました。
 以上です。
 
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 白波瀬先生はこの分科会の委員ではございますが、今日は御欠席です。
 城山先生、いかがでしょうか。
 
【城山委員】  バランスをどう考えるかというのは、大変重要な御指摘だと思います。
 御紹介しませんでしたけれども、委員会の議論の中でも、ライデン声明ですかね。そういうところで、優れた地域研究をどうやって守っていくかという、これは国際的に議論されたことだというふうに伺っていますし、そういう文脈の中でも議論を展開させていけるといいかなと思っています。どうもありがとうございました。
 
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。御発言、あるいは御質問よろしいでしょうか。
 どうもありがとうございました。この議題に関しましては、次回の科学技術・学術審議会の総会で、本分科会の活動としてまとめて、分科会長として、私から御報告をさせていただきたいと思います。
 少し時間があるようですが、これまで議題の1、あるいは2で。幾つかお手が挙がっていましたので、早速、お願いしたいと思います。
 まずは尾辻委員、お願いいたします。
 
【尾辻委員】  臨時委員の尾辻でございます。ありがとうございます。
 第11期学術分科会の各部会との検討状況についての御報告の中で、研究費部会につきまして、永田課長様から御報告をいただいた件ですが、国際共同研究、それから若手研究者支援の充実ということで、今回、国際先導研究事業が新規に科研費の中で発足することになったことは誠に喜ばしいことで、これまでの文科省様はじめ、関係の皆様には本当にお礼を申し上げる限りでございますけれども、今、この学術振興会のほうでも、審査の体制等も増員をいただけることとなり、大変充実が図られるところでございます。
 一方で、この国際先導事業の予算につきましては、補正予算で認められたということで、単年度限りで、今はお認めいただいていることと承知してございます。ですので、ぜひとも継続的に、2年目、3年目の運営実施ができますように、単年度の予算としての確保を引き続き図ってまいっていただきますように、文科省はじめ、関係の皆様には、ぜひお願いしたいところでございます。
 私からは以上でございます。
 
【大野分科会長】  永田課長、何かございますか。
 
【永田学術研究推進課長】  尾辻先生、どうも御意見ありがとうございます。
 私どもも当初予算で当初は要求して、定常化を図ってまいりたいと考えておったところでございますけれども、今回、令和3年度の補正予算で予算措置していただけたというところでございます。
 ただし、やはり1回限りで終わらせないように、引き続いてできるような方策を我々も考えていきたいと思ってございますので、なかなか確約はできないんですけれども、そういう方向で私どもも検討してまいりたいと思ってございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【尾辻委員】  ありがとうございます。ぜひとも、よろしくお願いいたします。
 
【大野分科会長】  どうぞよろしくお願いします。
 それでは、神谷委員、お願いいたします。
 
【神谷委員】  それでは、大学ファンドについてお伺いしたいのですが、これまで、過去に頂いた資料では、国際卓越研究大学のほうも大学ファンドに出資すると、こういう理解をしていたのですが、今日頂いた資料では、私が見た範囲では、特にそれについては触れられていなかったように思うのですが、この制度は、まだ生きているのでしょうかというのが、まず第1点です。
 もし、生きているとすれば、各大学からどの程度の額の出資をすることを前提としているのかというのをお伺いしたいと思います。
 
【大野分科会長】  これは黒沼課長ですか。
 
【黒沼大学研究基盤整備課長】  ありがとうございます。
 各大学からの出資金というのは、昨年度成立しました科学技術振興機構法の一部改正で大学ファンドをつくったときに、確かにそのような資料をお配りしておりまして、その資料は今でも使われております。
 ただ、どのような形で、それを制度設計するかというのは、まだ詳細が決まっておりません。ファンドから支援を受けたお金をすぐ使うのではなく、どこかにしばらくためておくためのスキームとして使うのかとか、いろいろな御意見ございますので、これからちょっと夏から秋にかけての基本方針などで具体化を図っていきたいと思っております。
 まだ、すいません、詳細が決まっていなくて、情報提供できませんことをおわび申し上げます。
 
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、井関委員、お願いします。
 
【井関委員】  ありがとうございます。臨時委員の井関です。
 1つ、小さな質問なのですが、1番の項目につきまして、資料の12ページに、いわゆる大学ランキングが低下し、諸外国と比較して、日本で一極集中型になりかけているという懸念が強まっているということで、下の左ですね、そこに例が出ていると思うのですが、これを見ていると、日本とイギリスはほぼ似ているのかなと、ふっと思いまして、ドイツは大分ランキングがばらけているかなと思います。これはそのように受け取ってよろしいのかということと、あともう一つ、アメリカですと、このばらけ度合いというのはどういうふうになっているのかを教えていただけますでしょうか。左下の、この上から多分ランキングで、赤がすごくよくて、次がオレンジ、水色となっているんですよね。それぞれの項目について、どの大学がいいというようなところに赤がついているのだと思いますが、日本とイギリスは意外と実は似ているのではないか。ドイツはややばらけているかなというふうに、この表というか図を見て思ったのですが、これで認識として正しいのかということと、あとはアメリカではどのような状況になっているかをお伺いしたいなと思いました。
 
【大野分科会長】  これも黒沼課長でしょうか。
 
【黒沼大学研究基盤整備課長】  ありがとうございます。
 イギリスは、確かにこの左下の表を見ていると差が分かりにくいところではございますけれども、別の資料で、論文数を横並べした別途の資料がありまして、今日は御用意していないのですが、大学研究力強化委員会第1回で配られた資料では、やはりイギリスについても、上位層の次に続く層の論文数が日本の大学に比べても多いという別のグラフがございます。別途、後ほど資料提供させていただければと思います。
 他方で、アメリカについては、研究力強化委員会では資料を出しておりませんので、またちょっとお調べをしてみたいと思っております。申し訳ありません。
 
【井関委員】  いえいえ、とんでもございません。ぜひ、そういった資料もあると、もう少し客観視ができるのかなと思いまして、質問させていただきました。ありがとうございます。
 
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、加藤委員、お願いいたします。
 
【加藤委員】  臨時委員、加藤でございます。ここではマクロ的なのコメントをしておいたほうがいいんじゃないかと思って、大所高所的なコメントをさせていただきます。
 前半で出ていた大学研究力強化の出たスライドの4ページで、高度人材の獲得競争への遅れというのが出ていて、これ見ながら、ちょっとショッキングだなと思いました。アメリカ等は順調に上がっている。中国は最近になって急激に増えている。日本は下がっている。日本だけ右肩下がりに下がっていて、つまり博士号取得者が年々減り続けているという現象です。私も大学におりますので、直感に合うと申しますか、大学院の博士に行く魅力、モチベーションが維持できていないか、むしろ下がっているかもしれないというのを感じているところがあります。自分が博士に進学したとき、あるいは子どものときに博士になるのが夢だったかもしれないですけれども、今の若い人、そうでもなくなっているかもしれなくて。
 申し上げたいのは、今日の議論で、10兆円ファンドだとか、大学改革で世界に遅れを取るなという観点は、それはそれで私も大変結構で賛成なのですが、実は大学の改革だけではなくて、社会構造で、博士号を取った人達が社会で活躍するという社会をつくるように社会を導いていかないと。大学を強化することにより、若い人と一緒に盛り上がりたいと思うわけですけれども、一生懸命育成して、若い力を盛り上げても、その若い力を社会で生かし切れない可能性があって、だから社会ぐるみで研究力なり技術力を上げていくということが必要であろうと思います。そういう観点を、ぜひ、国で議論するときに持っていただく必要があるのではないかと思います。
 以上でございます。
 
【大野分科会長】  ありがとうございます。重要なポイントだと思います。
 人口が減っていく一方で知識集約型の社会に大きく移行しているわけですから、こういう高度人材というのを、国内プラス、グローバルに集めて、わが国で非常に活発に活動していくということは重要ではないかと私自身は考えています。加藤委員のおっしゃること、よく分かります。
 よろしゅうございますかね。他に何か御発言ございますでしょうか。あと、まだ御発言いただいていない委員もいらっしゃるようですけれども、いかがですか。小長谷委員、あるいは原田委員、何か御発言ございますか。
 
【小長谷委員】  小長谷です。特にありません。いろいろ聞かせていただきまして、ありがとうございました。
 
【原田委員】  ありがとうございます。原田です。
 先ほど人文・社会科学の議論の中で、検討する論点が、今回、人文・社会科学に関連するモニタリング指標に非常に集中・特化した議論・論点に関する御報告をいただいたのかなと思ったんですけれども、例えば、私が関連するようなプロジェクト等では、例えば、気候変動ですとか、あるいは極地域の課題を解決するためには、もう自然科学だけの推進では駄目で、人文・社会科学と連携しながらプロジェクトを進めていくということが当たり前になってきているんですね。その中で一緒に共通の課題解決をしていくために、それぞれが共創、共創というのは、共同でつくり上げていくということなんですけれども、そういう方向の研究がどんどん進んでいます。
 ですので、例えば気候変動、それから、ある社会課題を両方の視点で解決に取り組んでいるようなプロジェクト等の成功例なども、こういった議論の中に取り込んでいただいて、単独の人文・社会科学の成果の指標を追求するのみではなくて、協働して、どういうふうに最終的に社会実装に持っていくことができたかとか、そういったような視点でこの分野の評価の形というのも模索していただけるといいのかなと思いました。
 以上です。
 
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 城山委員、何か御発言ございますか。
 
【城山委員】  どうもありがとうございました。
 まさに途中でも大野先生からもお話しいただいていましたように、これは必ずしも人・社だけの話ではなくて、まさに連携して、総合知、どうつくっていくかというときの評価指標の話でもあると思いますし、かつ、その評価指標という最後だけの議論ではなくて、プロセスを含めて、どう考えていくかということが重要な要素だと思います。
 評価との関係でいっても、単に定量的なものではなくて、ある種のいい意味でのケースみたいなものをどう語っていくかという、ある種のナラティブみたいなものも評価の中身としても重要だということもあるので、そういう意味でも、いい例をきちんと言葉に残すやり方を考えるということは、評価という観点でも重要ではないかなと思います。ありがとうございました。
 
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 もし、御発言がないようでしたら本日の分科会は、これで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 最後に、事務局から連絡事項がございましたら、お願いします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】  ありがとうございました。
 次回の学術分科会の日程につきまして、日程調整の上、改めて御連絡をさせていただきたいと考えております。
 また、本日の議事録につきましては、後日、メールにてお送りいたしますので、御確認をお願いいたします。
 御退席の際は、画面下の赤色バッテンのボタンから御退席ください。
 事務局からは以上でございます。ありがとうございました。
 
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。それでは、これで閉会とさせていただきます。どうも今日はありがとうございました。

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