学術分科会(第83回) 議事録

1.日時

令和3年3月24日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 分科会長及び分科会長代理の選出等について(非公開)
  2. 第11 期学術分科会の方向性について意見交換
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
大野分科会長、須藤分科会長代理、勝委員、梶原委員、小長谷委員、白波瀬委員、仲委員、福田委員、観山委員、井関委員、尾辻委員、尾上委員、加藤委員、神谷委員、岸村委員、小林委員、城山委員、武内委員、戸田山委員、中野委員、中山委員、長谷部委員、原田委員、山本佳世子委員
(科学官)
森口科学官、木津科学官、苅部科学官、渡慶次科学官、吉江科学官、磯科学官、黒橋科学官、林科学官、加藤科学官、長壁科学官

文部科学省

松尾文部科学審議官、杉野研究振興局長、菱山科学技術・学術政策研究所長、塩原学術機関課長、先﨑学術研究助成課長、錦学術企画室長、二瓶学術企画室室長補佐

5.議事録

・議事のはじめに委員の互選により、大野委員が分科会長に選任された。
・続いて大野分科会長により、須藤委員が分科会長代理に指名された。
(以上の議事録は、人事に係る案件のため非公開。)
 
【大野分科会長】 それでは、議事を進めたく思います。
まず、事務局から第10期の審議状況や第11期の調査審議事項案について、錦学術企画室長から御説明をお願いいたします。
 
【錦学術企画室長】 よろしくお願いします。資料3-1を御覧いただければと思います。第10期、前期の学術分科会本体とその下の部会や委員会でどういったことを審議してきたかというものをまとめたものでございます。
1点目の学術分科会、これは学術分科会のまさにこの会、親会議のところで何をやってきたかということでございます。2点ございます。
1つは、第6期科学技術基本計画の策定に向けまして、学術研究の意義やその推進の方向性を第6期科学技術基本計画の策定に当たっての学術分科会意見として取りまとめていただきました。これについては、本日、参考資料2として添付してございます。取りまとめていただいて、総合政策特別委員会に報告をしたところでございます。
次、2点目でございます。コロナ禍により社会が大きく変容する中におきまして、今後の学術研究及びこれと密接不可分な情報科学技術の振興の在り方について、情報委員会と連携して検討しまして、合同提言として、「コロナ新時代に向けた今後の学術研究及び情報科学技術の振興方策について(提言)」を取りまとめていただいたところでございます。この部分に関連して、参考資料を用いまして詳細に御説明をしたいと思います。
まず、参考資料7-2をお願いいたします。こちら、近々閣議決定がされる予定の第6期の基本計画でございます。背景を申し上げますと、もう御案内の部分が多いかと思いますけれども、昨年、科学技術基本法の改正が行われたところでございます。法律の名称を科学技術・イノベーション基本法としまして、これまで除外されていた人文・社会科学のみに係るものを、法の対象である科学技術の範囲に位置づけるとともに、イノベーションの創出を柱の一つに据えたところでございます。
この法改正を受けまして、この基本計画の名称は、科学技術・イノベーション基本計画というふうに改められる予定でございます。人文・社会科学の振興が法の対象に加えられた背景としては、これからの政策には、一人一人の価値、地球規模の価値を問うことが求められており、今後は、人文・社会科学の厚みのある知の蓄積を図るとともに、自然科学の知との融合による人間や社会の総合的理解と課題解決に資する総合知の創出・活用が重要となるということでありまして、第6期基本計画もそこを重視して記載されてございます。
この基本計画は、主に3つの柱、社会構造そのものの変革、研究力の抜本的強化、新しい社会を支える人づくり、この3つで構成されております。そのうち、当分科会の所掌と関係が深い2つ目の研究力の抜本的強化の部分は、お開きいただきまして48ページから記載がなされてございます。
この中で、1行目からですけれども、研究者の内在的動機に基づく研究が、人類の繁栄を支えてきたこと。知の蓄積は、それ自体が知的・文化的価値を有するだけでなく、結果として社会課題解決に貢献するイノベーションの創出につながる。こういったことが記載されてございます。その上で、こうした知を育む研究環境には、人材の育成や研究インフラの整備といったものが不可欠であり、国家の基盤的な機能として整備することが必要であると記載されてございます。
次の49ページで現状認識という部分がございます。ここでも5行目からでありますけれども、学術研究の卓越性・多様性こそが価値創造の源泉であり、国家の基盤的機能の一つとして、これらを維持・強化するための研究環境や、人文・社会科学も含んだ総合知を創出・活用する枠組みを整備することが不可欠であるとされてございます。
さらに進みまして51ページ、これも4行目からでありますが、知の創出に向けた取組の中核となる基礎研究・学術研究を強力に推進するというふうにされるとともに、人文・社会科学について、総合的・計画的に振興するとされまして、以下52ページから57ページにかけて、具体的な施策が記載されてございます。
このように、先ほど学術分科会から御意見をいただいたと御報告申し上げましたけれども、そういった御意見については、基本的な部分について反映されていると考えてございます。
次に、学術分科会で御議論いただいた2点目のコロナに関連しての提言の部分でございます。参考資料3でございます。
こちらの提言の概要を簡単に御説明します。Iのところでございます。まず、コロナ禍のような予測困難な事態に対応するには、多様な学術知の確保が最善の策であると。そういった観点から、国は、研究者の自由な発想に基づく学術研究への公的投資を充実し振興を図ること。そして、それを支える情報科学技術への研究開発投資の拡充、研究のデジタル・トランスフォーメーションの推進ということが必要ということでございます。
ここではコロナ新時代という言葉を使っておりますけれども、コロナ新時代において、学術研究は、社会から期待される役割を果たすことが必要ということで、その期待される役割を3点、1点目が、我が国が直面している社会的課題の解決に向けて、学術知を創出・蓄積・提供すること、2点目が、地球規模の課題の解決に向けて、国際社会と連携して貢献すること、3点目が、コロナ新時代を切り開く豊かな教養と高度な専門的知識を備えた人材を育成することというふうにまとめてございます。
こういった認識の下で、IIのところであります。不測の事態においても研究を継続するためのレジリエンスの確保。2点目、コロナ新時代にふさわしい新しい研究様式への転換。3番、研究者の交流と連携の担保。4番、社会の負託への応答。この4つの柱で振興方策を提言いただいたものでございます。
それでは、資料3-1にお戻りいただいて、学術分科会の下の各部会で10期に行っていただいた内容について、御説明申し上げます。
2番の研究環境基盤部会からでございます。全国の研究者に共同利用・共同研究の場を提供する大学共同利用機関、これが4つの法人によって設置されております。この部会では、その大学共同利用機関の検証を行っていただいたところでございます。
4行目からですが、大学共同利用機関の備えるべき要件等について審議を行って、「大学共同利用機関検証ガイドライン」を取りまとめていただきました。このガイドラインを用いまして、各機関の自己検証結果報告書に基づいて外部検証結果の審議を行って、令和3年2月に検証結果を公表いただいたところでございます。参考資料4として、その結果をおつけしてございます。
次の丸のところです。大学の研究所のうち、そのリソースを他の大学の研究者にも提供するなど、一定の基準を満たした研究所を文部科学大臣が共同利用・共同研究拠点として認定してございます。国立大学の共同利用・共同研究拠点につきましては、第4期中期目標期間における推進の在り方について審議を行いまして、拠点のネットワーク化の促進に関して、「今後のネットワーク型共同利用・共同研究拠点の在り方について」を取りまとめていただきました。また、第3期中期目標期間の「期末評価要項」及び第4期中期目標期間の「新規認定に関する要項」を取りまとめていただきました。
次の丸、公私立大学の共同利用・共同研究拠点につきましては、令和3年度からの新規認定に関する審査を行うとともに、既存の拠点につきまして評価を行ったところでございます。
次の丸、学術研究の大型プロジェクトの戦略的・計画的な推進を図るため、大規模学術フロンティア促進事業というものがございますけれども、この既存プロジェクトの進捗管理のための評価を実施していただきました。それとともに、新規プロジェクトの着手に向けまして、ロードマップ2017に掲載されていた、おめくりいただきまして「ハイパーカミオカンデ計画」、2ページです。「ハイパーカミオカンデ計画」について、事前評価を行っていただきました。
また、ロードマップは、大体3年に1回作成することになっておりますが、新たにロードマップ2020を策定するとともに、推進中のプロジェクトのマネジメントの充実を図るために、「大規模学術フロンティア促進事業に係るマネジメント」を決定いただいたところでございます。
3番、研究費部会でございます。1つ目の丸、科研費について、制度改善・設計を要する事項等の審議・検討を行っていただきました。
2つ目の丸から、具体的には、令和2年度及び3年度概算要求の方針や、各種制度改善事項について審議・検討を行ったと。なお、「新学術領域研究」につきましては、発展的に見直して、令和2年度に「学術変革領域研究」が創設されたところでございます。
また、科研費制度の改善点等について総合的な観点から検討を行うため、審議会における部会等の枠を超えまして、関連事業に関係する有識者をお招きしまして、3回にわたる意見交換を実施いたしました。その概要を、「第10期研究費部会における関連事業等の有識者との意見交換のまとめ」として取りまとめたところでございます。
さらに、科研費制度について、中長期的に検討すべき事項等を整理しまして、「第6期科学技術・イノベーション基本計画に向けた科研費の改善・充実について」を取りまとめていただきました。
4点目、人文学・社会科学特別委員会でございます。第9期、2つ前の学術分科会でありますけれども、この学術分科会の下に人文学・社会科学振興の在り方に関するワーキンググループというものを置いておりました。そこが取りまとめました「人文学・社会科学が先導する未来社会の共創に向けて(審議のまとめ)」におきまして、1つは「未来社会を見据えた共創型プロジェクト」、2つ目が「研究データの共同利用のための基盤整備」、この2つの必要性が提言されたところでございます。
次の丸、第10期では、この提言を踏まえて、この2つの提言のうちの1つ目、「未来社会を見据えた共創型プロジェクト」の具体化に向けた検討を行いまして、「人文学・社会科学を軸とした学術知共創プロジェクト(審議のまとめ)」を取りまとめていただいたところでございます。この審議のまとめに基づきまして、令和2年度から人文学・社会科学について、分野の枠を超えた研究者が意見を寄せ合って、現代的課題に関する研究課題ですとか、研究チームを構築するための取組。これを文部科学省から大阪大学に委託して実施していただいているところでございます。令和2年度から3年間の予定で実施をいただいていると。こういった形で具体的な施策として結実しているところでございます。
こちら、資料3-1の御説明でございます。
資料3-2をお願いいたします。第11期、学術分科会の調査審議事項の案でございます。事務局として、以下に掲げる項目について調査審議することとしてはどうかという御提案でございます。
まず、学術政策全体についてという部分でございます。先ほど御説明申し上げましたけれども、第6期の基本計画及びコロナ新時代に向けた提言。これの関係施策の進捗状況の確認や各部会からの報告等を通じまして、学術研究の振興方策について検討を行うということ。
2つ目の丸でございます。2行目からでありますが、自然科学の知と人文学・社会科学の知の融合である総合知の創出・活用。ポストコロナ下における科学技術・イノベーション政策の在り方等について検討を行い、その結果を次回の総会で報告するということでございます。これは先ほど分科会長からも御紹介がありましたけれども、この部分は18日の総会で、会長からこの2点について各分科会等で検討するように要請があったものでございます。次回の総会にその結果を報告するということでございます。具体的な審議の進め方につきましては、改めて分科会長とも御相談して決めていきたいと考えてございます。
次に、大学共同利用機関の在り方についてでございます。大学共同利用機関法人の第4期中期目標期間は令和4年度からでありますが、これに向けまして、現在、各法人及び総合研究大学院大学において検討されている連合体。これは4つの法人と総研大の組織をより一層連携させるための仕組みでありますけれども、この連合体の創設の推進や、第4期中期目標期間における大学共同利用機関の検証の在り方を検討するなど、今後の大学共同利用機関の在り方について、継続的に検討を行うと。
次には共同利用・共同研究拠点及び国際共同利用・共同研究拠点についてでございます。国立大学の共同利用・共同研究につきまして、第3期中期目標期間における期末評価を実施するとともに、令和4年度からの新規認定に係る審議を行うということ。
次に、研究費制度の改善充実につきましては、科研費改革の状況を検証しつつ、制度全体の不断の見直しを図ると。
次の丸の2行目からですが、若手から中堅・シニアまで実力ある研究者が、研究フェーズに応じて切れ目ない支援を受けられるようにするとともに、国際的ネットワークの中で実施すべき研究の支援や、世界をリードし得る若手研究者育成のための取組などについて検討を行うということ。
最後、人文学・社会科学の振興につきましては、先ほど2点の提言のうちの後半の部分、研究データの共同利用のための基盤整備といったものの在り方を検討するとともに、人文学・社会科学分野への期待に応えるために必要な施策の検討を行うとしてございます。この人文学・社会科学の部分につきましては、この課題を検討するために、人文学・社会科学特別委員会を、第10期に引き続き、資料4をおつけしておりますけれども、資料4のとおり、事務局として設置してはどうかと考えておるものでございます。
こちらが資料3-2でございます。
最後、資料3-3は、前回の第82回学術分科会で各先生方から御意見をいただいたものをまとめたものでございます。適宜、御参照いただければと考えております。
私からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
 
【大野分科会長】 錦室長、どうもありがとうございました。
それでは、ただいま事務局から説明のあった内容も踏まえ、第11期学術分科会において議論すべき事項や方向性について、御自由に御意見をいただきたいと思います。
とはいいましても、本日まず第1回目でございますので、御出席の委員の皆様から御発言をいただきたく思います。その意味で、まずはお一人2分程度を目安に御発言をいただくようにお願いします。初回ですので、若干機械的ではございますけれども、まずは名簿順に御意見を伺うこととさせていただいてよろしいでしょうか。その後、時間に余裕があれば、「手を挙げる」ボタンを活用いただいて、さらに御意見を伺えればと思います。
科学官の皆様におかれましては、御意見がございましたらば、その際にお伺いできればと思います。
それでは、まず順番ですので、勝委員、いかがでしょうか。
 
【勝委員】 御指名ありがとうございます。トップバッターになってしまって恐縮でございます。
今、分科会長が言われましたように、やはり今期、非常に我々は今、重要な場面にいるだろうと思います。前期から引き続いて検討する課題もあると思いますし、やはり今の時代にさらに掘り下げるということが必要なんだろうと思います。
幾つかちょっと申し上げたいと思うんですけれども、やはりこの学術研究、新しい基本計画ができたということで、これは非常に大きく期待されるわけですが、研究者の裾野を広げるということ、これをやはりきちんと考えていかなくてはならないのではないかなと。昨年は、概算要求で大学フェローシップ事業というのがありましたけれども、博士課程を魅力的なものにするには、アドホック的な生活費の支援だけではなくて、特に基礎研究については、国立大学の役割あるいは共同利用機関の役割というのは非常に大きいと思いますので、そこでのポジションの在り方というものも考えなくてはいけない。
もう一つは総合知についてで、これは分科会長も先ほどおっしゃっていましたけれども、これを定義するのは非常に難しいだろうと思います。ただ、我々としては、やはり科学技術の発達、特にいろいろな分野で倫理の在り方というものを考えなくてはいけないですし、あるいは情報科学、AIにしても、例えばグーグルの研究者がAIについては機械学習を多用することで、むしろ電力消費が非常に大きくなってしまうというような矛盾を指摘したり、あるいはデジタル化の裏側には必ず個人情報保護の問題というのがあるので、そういったものをやはり総合的に考える必要がある。
この総合知の定義というのは非常に難しいとは思うんですけれども、そういったものは特に人文社会での分科会もありますので、そこで改めて重点的に考えていくということは非常に重要かなと思います。
最後に1点としては、先ほどもお話ありましたけれども、やはりイノベーションの部分が非常に重要で、特に今、脱炭素ということで各国とも相当な予算がそこにつぎ込まれていると。その中でやはり日本の強みというところが非常にあると思うので、社会実装を行っていくというところで、それを支援するような枠組みというものも考えていく必要があると思いました。
以上でございます。ありがとうございます。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。総会においても少し議論になりましたけれども、総合知の在り方というのは、我々がきちんと考えていかなければいけないことだと思います。ありがとうございました。
それでは、続きまして梶原委員、お願いいたします。
 
【梶原委員】 ありがとうございます。先ほど冒頭で御挨拶できず、申し訳ございません。よろしくお願いいたします。
第6期基本計画では新しく総合知という言葉を使って、どのように社会をよくしていくかというところに至っているわけですけれども、科学技術をどのようにイノベーションにつなげるか、全てそこに集約されていると思います。
コロナ禍になり、この1年間、今まで以上に国民が科学技術・イノベーションに非常に期待しているという状況が出てきています。科学技術・イノベーションに対する国民の信頼を得て、今後、社会を変えていかなければならない2つの要素、デジタル化と、脱炭素化で言われているグリーン化について、日本社会の受容性を向上、あるいは転換してまでも進めていく。そのためには総合知の活用が必要だということです。社会に実装されるイノベーションを目指した科学技術の使い方、そこに注力することが重要だと思います。
参考資料3でも、社会の負託への応答ということですとか、社会から期待される学術研究の役割というようなことが書かれておりますけれども、やはりそういった中で、学術研究と政策との関係、あるいは地域社会とか国際社会との関係、そして産業界との関係の在り方といったものが非常に重要になります。そして、総合知を活かすためには学術研究におけるダイバーシティーが重要です。学術そのものの多様性ということもあれば、研究者の多様性、そして多様性だけではなく、インクルーシブであることが非常に重要だと思います。第6期基本計画では、ソサエティー5.0を国民が実感できるようものにする必要があると言っています。そういった意味では、本分科会の議論、学術研究が受け入れられて、大きく飛躍、成長し続けるということが重要なことだと思います。
資料3-2には、研究のデジタル化、データが重要だということが書かれています。人文社会におけるデータ活用がクローズアップされているのですが、そもそも日本ではDXがまだまだ遅れており、トランスフォーメーションを起こすようなデジタルやデータの使い方。また、エビデンスに基づいた科学技術の在り方等を考えることも重要だと思います。学術研究ではデータ重視ということがもちろんあるかと思いますが、今までとは違うデータの使い方や、トランスフォーメーションを起こすような在り方についても検討してはどうかと思います。
ありがとうございます。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。デジタルは全体にかかるはずということと思います。ありがとうございます。
それでは、小長谷委員、お願いいたします。
 
【小長谷委員】 ありがとうございます。
今のこととも関わるんですけれど、資料3-2に挙げていただいたのはみんなそれぞれ大事なことですけれども、1点だけ私から言いたいのは、一番最後にある人文学・社会科学の振興とデータの問題です。ここではデータサイエンスという形で書かれているし、今の御発言もエビデンスが強調されました。エビデンスにもいろいろあって、それ自体が何かを特定しているわけじゃないですけれども、往々にして数値が中心で質的データのほうが取りこぼされるんではないかと危惧しています。
人文学・社会科学の場合、特に人文学の場合は、質的データというのも蓄積されてきたので、これを今日的な新しい未来志向の情報技術で、どのようにオープンサイエンスに資していくかということも大事ではないでしょうか。そのためには、両方の分野にたけている方、すなわち情報技術と質的なデータ、その学問そのものを両方修めていらっしゃるようなデジタルデータアーキビストの育成ということをやっていかないと、学術資源を社会に提供するというところまで広まっていかない、本当のイノベーションになっていかないんじゃないかなと思っていますので、その辺りを御議論いただければありがたいです。
以上です。
 
【大野分科会長】 ありがとうございます。総合知に向けて、質的データの重要性の御指摘をいただきました。
それでは、続きまして白波瀬委員、お願いします。
 
【白波瀬委員】 よろしくお願いいたします。
私からもやはり、総合知、がキーワードになっていると思いますし、この点について一言。もう委員の先生方からも既に言及がありました通り、まさしくコロナ禍にありまして、今までの枠組みでは学術そのものも立ち行かないことは明白です。学術を担う次世代の人たちをどういうふうに全面的にバックアップして、担っていただくか、そういうサーキュラーというか循環をいかにいま、つくっていけるのかを考ていかなければならないと思います。
総合知の中身が、文理融合とか学際とか、歴史的にはいろいろな言葉で語られてきたと思いますけれども、やはりそこをもう少し具体化し、なお積極的なところで社会に具体的に還元できるような枠組みで提示できるというのが求められているように思います。
いずれにいたしましても、日本ではまだ文系・理系というような形で区別があるんですけれども、その一方でやっぱりイノベーションというのは既存の枠組みでは立ち行かないということです。一方、そのそれぞれの分野が非常に精鋭化していますので、専門的な最先端もおろそかにできませんから、そこに乗り遅れないような人材を育成するという観点から、しっかりした専門教育と、なおかつ新しいとがった研究に対して積極的に投資し、支えるような役割が、やっぱり学術分科会としては期待されているのではないかと考えます。
大変微力なんですけれど、文系なんですけれども頑張りたいと思います。よろしくお願いします。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございます。私たちが、総合知というキーワードにいかに魂を入れるかが分科会の作業、ミッションになるかと思います。ありがとうございました。
それでは、続きまして須藤委員、お願いいたします。
 
【須藤委員】 今、白波瀬先生からありましたように、私も同じことを考えていました。この総合知というのは、言うのは簡単なんですけれども、もうここ三、四年ずっと文理融合という言葉を使っていろいろと試みてきたと思うんですけれど、なかなか現実的には本当の融合ができていないような気がします。今回新たにこの言葉を前面に出していただいたのは非常にいいんですけれど、具体的にどうするのかというのが、まだまだ欠けていると本当に思っています。
どちらかというと文系の先生から、今までイノベーションを引っ張ってきた理系のほうに対して、もっともっと強い意見を言っていただかないと、なかなか融合しないのではないかなと思いますので、私としては、私も産業界に席がありますけれども、ぜひ文系の先生方がどんどん強くいろいろな意見を言っていただいて、いろいろな施策の中に反映していかないと、本当に魂が入らないのではないかなという気がします。その辺をぜひお願いしたいと思います。
それからもう一点、第6期の基本計画ができましたけれども、これはできておしまいではなくて、できた後どう動くのかというのをしっかりこの分科会としてもフォローする必要があると思います。学術研究という視点から、第6期の基本計画が着実に計画どおり進んでいるのかどうかということをしっかりフォローする必要があるかなと思っております。
以上です。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。やはり伺えば伺うほど、総合知というものがなかなか難しいテーマだなという実感が湧いてまいります。ありがとうございました。
それでは、続きまして仲委員、お願いいたします。
 
【仲委員】 仲でございます。
私は心理学を専攻しておりまして、総合知と言いますと、人文社会ということになるかと思います。人文社会から貢献できることがあるとすれば、それは人文・社会科学では、「人間」を中心に研究している。それから価値というのがすごく重要で、美しさとか公正さとか、「価値」が重視されるということと、あと「歴史」、何が失敗だったのかとか、こういう成功の陰でどんなことで困っている人たちがいたのかとかいうようなことを明らかにできることかなと思っています。
ですので、研究を進めていく上で「人間」の特性、どういうときに内在的動機づけを人というのは持ちやすいのか、どういうときにそれが失われやすいのか、どういうときに安心して研究ができるのかみたいな、そういう側面を知る。「価値」に関しては、国連の国際人権規約とか子どもの権利条約とか障害者の権利条約とか、そういうところにまで遡って、何が人にとって価値があるかということを見極めていく。そういう側面が必要になってくるのかなと思います。で、「歴史」ですね。特に弱者。あまり目立ってこなかった人に目を向ける。総合知を追求する上で,人文社会はそういう貢献ができるかなと思います。
あと30秒ありますので、もう一つ。さっきの資料の3-2のところなんですけれども、特に私はやっぱり関心を持つのは、切れ目のない研究者に対する支援というふうなことです。期限付とかあるいは研究費が限られている中では、日々の生活に追われて、内在的動機づけを発揮できないと思いますので、ここは具体的に何とかしていければと思うところです。
以上です。どうもありがとうございました。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございます。価値をどう理解して、見せていくかなど、これから重要な論点になると思います。切れ目のない支援はそのとおりです。ありがとうございます。
続きまして観山委員、お願いいたします。
 
【観山委員】 観山でございます。よろしくお願いいたします。
まず、私、前回も最初のときに申したことをもう一回申すことになると思うんですけれども、1つはやっぱり研究力。我が国の研究力の向上という面ですね。やはり相対的にいろいろなデータから、研究力がだんだん劣ってきているというか、ほかの国に比べて埋没しているという状況があって、これは研究者の増加と研究時間の確保というのが非常に重要な観点だと思います。特に博士課程の学生の増加をとにかく確保しないと、研究力、要するに非常に若手で研究時間もたくさんある人たちが本当に減っているということは大きな問題です。文部科学省も随分博士課程の学生のサポートに対して非常に努力していただいていることは、もうありがたいことだと思います。
一方でもう一つは、キャリアパス、出口を確保してあげるということが重要です。委員の中には須藤委員、梶原委員がおられまして、企業の方々にもぜひ検討していただければと思いますけれども、50%以上の博士課程、学位を取った人間は企業に進んでいくというような状況を常態化するべきではないかと思います。米国なんかでもありますように、企業と大学の頭脳循環ということを、ぜひぜひ活発化することが重要だと思います。
それからもう一つ、今の研究力向上という観点もありますけれども、学際研究の推進ということが非常に重要な課題ではないかと思っております。WPIというものが進んでいて、一つのテーマとして学際研究が打ち出されていて非常に成功を収めているという状況を見ますと、学際研究が重要です。これは、世界で新たな日本的なパラダイムをつくり出す原動力ではないかと思います。
その上で、今、大学の中には多数の研究所があります。中には、共同利用・共同研究拠点がありますし、共同利用機関もあります。それらはもちろんコミュニティーに支えられた、ある分野の発展のためにつくられているわけですけれども、ぜひこれからは、さらにその研究所間のネットワークを進めて、そういう研究所間で学際研究が推進できるような状況をつくっていければと思っております。
以上でございます。ありがとうございました。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。研究力の向上、そしてそれを支える人材の育成。我々の分科会の非常に大きな論点といいますか、審議事項と思います。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして井関委員、お願いいたします。
 
【井関委員】 井関でございます。よろしくお願いいたします。
私、言ってみれば生物医療系の研究をしておりますけれども、今の観山委員に続きまして、やはり研究力向上のためにどうしたらいいかといいますと、先生方のこれまでのお話を聞いていますと、研究も非常に多様化、多彩な状況になっております。なかなかお互い理解できない部分というのも出てきていると考えています。
そのような中で、例えば私どもの分野を考えても、いわゆる実験室で実験をするウエットタイプと、実際に出てきたデータにシングルセルで遺伝子発現を見るような、そういう細かなデータをうまく融合させていかないと、さらなる知を上げていくというか、知のレベルを上げていくことができないという状況になっています。
そのようなときに、例えば実験もしてデータの処理もしてというのは非常に大変なことで、若いときにはできるかもしれませんけれども、だんだん1人が幾つもの実験というか研究を行っていくというのは難しいというふうに考えますと、やはり先ほど観山委員がおっしゃっていたように、学際的な研究というんですか。要するにより共同研究を行っていかないと、研究が発展していかない状況になっているのかなと考えます。そのためにはいわゆる博士課程の学生さんが増えなければいけませんし、先ほどから出ているように裾野が広がらないと、共同研究というのも進んでいかないと考えております。
その辺り、本当にいわゆる研究者を増やす。これはもう前期からも出ていたことですけれども、研究をすることが非常に魅力的であるということを若い人たちがそう思ってくれないと、この研究の世界に入ってきてくれないだろうなと。ですから、そういった状況をつくっていく。つくれるような環境をこの分科会というのが用意していくというか、用意するというのは変な言い方ですけれども、そのような方向に持っていく必要があるんじゃないかなと考えております。よろしくお願いいたします。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございます。キャリアパスのお話もありましたが、研究者が魅力的な職業であることは極めて重要と思います。我が国だけがあまり魅力的に見えていないことも、私たちの分科会で審議していくべき必要があるかと思います。ありがとうございました。
尾辻委員、続きましてお願いいたします。
 
【尾辻委員】 ありがとうございます。尾辻でございます。
私からは、参考資料7-2の「諮問第21号「科学技術基本計画について」に対する答申」の中でうたわれております、この「知のフロンティアを開拓し」というところの戦略、目標について、今後の議論で掲げる課題として提示させていただければと思います。その中で、研究者の内在的な動機に基づく研究が人類の知識の領域を開拓し、イノベーションにつながるんだということを掲げておられ、大目標として、多様性や卓越性を持った知を創出し続ける、世界最高水準の研究力を取り戻すんだと。ここが非常に大きなポイントだと思っています。
そういった背景の中で、日本国家として、基礎・基盤を育てるボトムアップの科研費事業。そして、領域を指定してトップダウンで戦略的に進めるJSTを中心としたトップダウンの事業。さらには特に最近10兆円規模の大学のファンドの導入・活用というふうに様々な企画が打って出ていること、大変喜ばしく、重要な観点で応援したいと思っています。
その中で、ボトムアップ研究の我が国の最大のファンディングであります科研費事業について、参考資料5で触れておられるんですけれども、重要なポイントを指摘させていただきたいのは、大学の基盤的経費が、国立大学法人化以降削減されて、いわゆるデュアルサポートの体制が劣化していると。その中で参考資料5の中では、特に4ページ以降ですけれども、基盤研究Cがここのところ長年応募件数が非常に増えてしまって、科研費事業全体に対する予算の割合が大型種目に向けられない点が指摘されています。
前回の公募でやっと初めて削減傾向が見えてまいりましたけれども、長く特別推進研究、基盤研究Sといった、つまり研究者の内在に発した研究を育てるファンドとしての大型種目が、長く予算が伸び悩んできた。ここのところは、ぜひ今後改善する方向として、基盤研究A以上の大型種目にも予算投下をしていく。いわゆるバランスの取れたデュアルサポート体制の回復の上で、バランスの取れた研究開発投資を進めていく点を、議論の中で加えていただければありがたく存じます。
以上でございます。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。デュアルサポートの重要性について、私も大学の現場におりますので、そのとおりだと思いますし、科研費の重要性、さらには具体的な改善方向についても御発言いただきました。どうもありがとうございます。
続きまして尾上委員、お願いいたします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】 事務局です。すみません。尾上先生、所用により退席されておりますので、次の方を御指名願います。
 
【大野分科会長】 それでは、続きまして加藤委員、お願いいたします。
 
【加藤委員】 筑波大学の加藤と申します。2分間ですので、後でまとめやすいように、できるだけ焦点を絞ってしゃべりたいと思っていますけれども。
今度の科学技術計画の中に人文学科学が入るということで、私も大変注目しております。私のバックグラウンドはコンピューターサイエンスで、OSとか分散コンピューティングが専門であります。私、最近、数年前からJSTの中にRISTEX、社会技術研究開発センターというところがあって、一緒に委員を今回やっていらっしゃる城山先生、共同代表をやってらっしゃいますけれども、私、委員としてアドバイザーを務めて、最近文系の方々と一緒に議論する機会をいただいています。その中でいろいろ考えるところもあって、申し上げたいと思います。
先ほど以来、総合知とか文理融合とかは以前から言われているけれども、どうやって具体的にやったらいいかということが話題に何人かの方がされていると思います。私もこの問題意識を持っています。典型的に分かりやすい問題は、AIとか自動運転をする車が事故を起こしたら誰が責任を取るんですかという、簡単な問題ではあるけれども、答えるのが非常に難しい問題がございます。あるいは、直近で起きた問題で、みんなが使っているLINEが、実はデータは全て韓国に置かれていて、中国の技術者がアクセスしていろいろやっているということが分かって、一斉に社会が慌てたという。ちょうど今オンタイムで、リアルタイムで動いているものがあります。
ああいう問題は、例えば今のLINEの問題で言いますと、私、分散コンピューティングとかをやっている立場から言うと、最適化の意味では非常に合理的なことをやっている。あるいはそのこともあってこういうことが起きているんだと思いますけれども、その一方で、ある種の文系的な方がきっと一生懸命考えるのがお得意なような問題、あるいは法律の方とか社会学の方とかが考えるような問題を考えると、実は、それはある段階でもっと早くから、設計の段階から考えなきゃいけなかった問題を孕んでいたんじゃないかと思います。
ヨーロッパにおいては、GDPR等、こういう問題に非常にセンシティブに考えているんです。我が国は、この観点が大分遅れていたんじゃないかなという思いを以前から、RISTEXをやらせていただいたことをきっかけに思っていました。
文理融合とか言いますけれども、以前は何か仲よくやるイメージだったような気がするんですけれど、むしろ今必要なのはぶつかり合いみたいなもので、ぶつかり合いを経て、その後にいわゆるアウフヘーベンというか止揚して、それがさらに次の高み段階に入っていくということを我が国は経験しなくてはいけないんじゃないかなというような思いを強くしているところでございます。
以上、御参考になりましたら。以上でございます。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。テクノロジーなどを含めて、社会から見た価値は何なのかが明示的に問われる時代になったということかと思います。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして神谷委員、お願いいたします。
 
【神谷委員】 神谷でございます。私は経済学者ですが、少し広く取りまして、人文・社会科学の重要性と、それから研究成果の評価方法について、少し意見を述べたいと思います。
人文・社会科学の重要性は、既に総合知に関して何人かの委員の方から指摘されていますので、一部はその確認になるかとは思います。昨今のコロナ問題などで、経済学をはじめといたしまして、人文・社会科学の重要性は広く認識されていることと思います。社会的な重要な問題、例えば新型コロナの問題ですと、自然科学だけでなく人文・社会科学の広い視野が必要ですし、また、いろいろな分野の連携も重要になってまいります。この点、阪大をプラットフォームとして、人文学・社会科学を軸とした学術知共創プロジェクトが始まっているということは高く評価すべきことかと思います。
ここからが今まで皆様が全く言わなかったことだと思いますが、こういった研究は、人文・社会科学(私がよく知っているのは経済学ですが)における研究評価の問題と多少関係してくるかと思っております。というのは、昨今は法人評価など様々な評価がありますが、Web of Science収録ジャーナルに論文が掲載されているか、あるいはインパクトファクターがどのくらい高いかということが重要視されております。社会的に重要な問題を研究いたしますと、自然科学では違うのかもしれませんが、経済学では掲載されないということはないと思いますけれども、必ずしもインパクトが大きいジャーナルに出版されるとは限らないという点がございます。
これをどう評価するかということが問題になってくるかと思います。人文社会系ですと、コロナに限らず、日本に関する研究が非常に重要だと思っております。自然科学でも日本が重要であるという面はあるとは思いますけれども、人文・社会科学系ではより顕著になると思います。一方、各大学、部局、分野で異なるとは思いますけれども、テニュア付与、昇進、昇給などについては、Web of Science収録ジャーナル論文とかインパクトファクターが重視されることが多くなってきております。特に経済学ではそうです。
Web of Science収録ジャーナル論文とかインパクトファクターというのは、文系分野の国際化の面から極めて重要だと考えております。しかし、社会的重要性からは乖離する可能性があると考えております。もちろん社会的に重要な分析をする際、Web of Science収録ジャーナル論文などに掲載された研究の知見、あるいはそこで培われた能力というのは極めて重要になると思います。
ということで、Web of Science収録ジャーナル論文、インパクトファクターなどと社会的重要性といったことを総合的に判断して、バランスが取れた評価をしていく必要があるのではないかと考えております。この点、御検討いただければと思っております。
以上でございます。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございます。研究の評価、あるいは評価一般をどうしていくかは、我々が社会に対するアカウンタビリティーを示す意味でも非常に重要な審議事項に思います。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして岸村委員、お願いいたします。
 
【岸村委員】 岸村です。私から2点ほど述べさせていただきたいと思います。
まずは、私、日本学術会議の若手アカデミーのほうでも仕事をしておりまして、そういう意味で若手の話になります。昨今、様々な施策で若手の支援が行われていることは非常にありがたいことと思っております。しかしながら、ほかの先生方もおっしゃっているように、ゴールとしてはやはり科学者、研究者が、若い層に魅力的な仕事として認知されていくというのが大事だと思います。そこに向けて、まだ改善される点はいろいろあるんではないかと思っています。
例えば若手と申しましても様々なステージがございます。実際には高校生レベル、大学生・大学院生レベル、そして職業科学者として駆け出しのレベル。いろいろあると思いますが、それぞれに対して魅力が感じられるようなサポートというのが今後も大事ですし、これまでもトップの人を育成していくというのもかなり充実していたのかもしれませんが、裾野を支えていくような幅広い人材を育成していけるような形でも御支援いただけるとありがたいと思います。
また、若手だけでなく、私自身はもう中堅に近い年なわけですが、中堅の支援ということでも、研究費ももちろんあるんですが、例えば大学教員としては時間の観点ですとか、例えば制度上、サバティカルのようなものは充実しているところは多いとは思いますが、実際上取れる人というのはかなり少ないというような話もありますので、そこをトータルで社会の仕組みとしてどうしていくのかというのは、ちょっと考えられたらいいなと思います。
もう1点は、地域との関係というお話です。先ほどから総合知という話が出ていますが、実際にそれを活用して、社会課題の解決に生かしていくという意味では、地域における学術の在り方、学術振興というのが大事になると思います。実際には、地域にある大学や高専などの研究教育機関が活性化していくのは非常に大事だと思います。この点についても、若手の観点で考えると、例えば学位を取ってどこかで仕事を得ようというようなときに、なかなか場所は選べないわけですが、それは例えば地域によって大学の力というか活力に差がもし出てしまっているとしたら、それは職としての魅力をそぐことにもなりますし、ぜひ地域格差がないような研究力の強化というようなことも考えていただけるとありがたいと思います。
また、日本全体のことを考えた場合に、日本、実際には大学院進学率はかなり諸外国に比べてあまり高くないという話があります。いわゆる大都市ではない地域においては、平均より低いのではないかということも私自身は思っております。そういったところを解決する意味でも、地域において、大学は常に若い人が集まる活気のある研究の拠点が提供できるはずですが、そういうものがうまく関わっていく仕組みをもう少し考えていかなければいけないですし、それには、恐らく産学連携の観点も大事なんですが、どういう産業と関わっていくのかということですね。大手の企業と産学連携というのはこれまでも相性が良かったのではないかと思うのですが、実際上、日本は中小企業が多いという社会の仕組みになっていますので、こういう方々にも高等教育人材を身近に感じてもらって、そこにも雇用のパスをちゃんとつくるとか。そういったところも手当てできるような施策などが考えられたらいいんじゃないかと思っています。
以上です。ありがとうございました。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。本分科会の審議の背景として、4年制の大学進学率が全国で結構不均一になっているという点を視野に収める必要があるという御指摘だと思います。また、我々にとって時間をどう捻出するのか、個々人の努力に頼らず、研究に割ける時間を生み出す仕組みをどうつくっていくかも極めて重要な御指摘かと思います。ありがとうございました。
続きまして小林委員、お願い申し上げます。
 
【小林委員】 簡潔に何点か申し上げたいと思います。
1点目は、日本の大学が研究者や大学院生にとって魅力があるかどうか。残念ながら私はあまり魅力があるとは思っていません。アメリカとイギリスの4つの大学と日本と行き来していましたので、まず1つ言えることは、大学によって違うかもしれませんが、私の大学の、研究には給料を払っているわけではなくて、教育に払っているという考えです。ですから、いろいろな大きなプロジェクトを取ってきたりしても、教育負担は何も変わりません。
ですから、アメリカのように、私は一定の上限を設けてバイアウトを導入すべきだと思います。ただ、アメリカのように全く授業を持たないというのは少しやり過ぎだと思いますから、1コマなり1.5コマなり上限を設けてやるべきだと思っています。
もう一つ言えることは、中国ではない別の海外の2つの国の大学で現在、客員研究員をしています。その内の1つはソウル大ですが、そうすると論文を書くと、インパクトファクターに応じて1本幾らというお金をくれます。文系ですから大したことありませんが、日本は全くそういうことありません。ですから、全く論文を書くインセンティブが違うわけです。日本の論文数が減ってはいませんが、海外が非常な勢いで増えている。そういうところは、インセンティヴの制度を導入しています。
同じように大学院生にとって、以前であれば育英会から奨学金をもらって、3年以内に常勤に就けば返済しなくてよかったわけです。ですが、今はそうではないわけです。東北大のように、博士課程後期課程は実質無償のようになっているところは模範だと思いますし、Times Higher Educationで東北大が1番ですが、多くのところはやはりそうではない。何百万円も借金を抱えるという先輩を見ていて、博士課程に行きたいと思うかというと、それは思わないです。ですから、日本より人口が半分もない韓国のほうが、実は大学院生の数は日本より多いです。しかも、日本の大学院生の多くが、もう社会人とかが留学生になっています。
2点目で申し上げたいのは、やはり統合的なデータ共有基盤が必要だということです。コロナ新時代を迎えて、データがない国には人は来ません。国内外からもし人を集めたいのでしたら、ネットワークだけではなくてデータ基盤が必要です。例えば、変異ウイルスの確認も含めて、産学官のデータを統合して、共同利用できるセキュアな受皿が必要になるのです。それがないということがやはり日本の大きな問題だと思います。
それと関連して申し上げれば、大規模学術フロンティア促進事業は拡充する必要があります。従来は、ハイパー・カミオカンデのような超大型施設が中心でした。しかし、国立大学や大学共同利用機関の運営費交付金が一頃までずっと削られてきたために、今、何百億ではなくて、数億円あるいは数千万円の機材の更新が滞っているところが多くあります。コロナ新時代なので、ネットワーク型で機材を更新したり老朽化対策をする必要があります。
最後に総合知ですが、私は違う人間が文系と理系で話し合うことも重要ですが、文系の人間が最低限のデータサイエンス教育は受けるべきだと思います。アメリカでは、最初の学期にそれをやらなければいけない大学があります。あるいはミシガン大学であれば、他大学からミシガンの大学院に来ると、シェークスピアの文学が専門であろうと、入学前に集中的にサイエンス教育を受ける機会があります。そのことによって、初めて対話が可能になります。異なる言語同士で話し合っていても、なかなか話は進まないと私は思っています。
以上です。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございます。本学のことをよく御存じで驚きました。博士はやはり職業の入り口なので、ある意味ドクターコースを選択したということは、職業を選択したにほぼ等しく、日本全体としても、政府がそういった考えでサポートをし始めていますので、これはぜひ推し進めていきたいと思っています。
確かに、今おっしゃられた様々なインセンティブのつけ方なども含めて、先ほどの評価にも関係しますけれども、私たちがきちんと考えていかなければいけないことと思います。どうもありがとうございました。
続きまして、城山先生は御退席になられましたか。
 
【錦学術企画室長】 事務局でございます。城山先生は退室されましたけれども、御意見を事務局が預かっておりますので、御紹介をさせていただければと思います。よろしいでしょうか。
 
【大野分科会長】 はい。
 
【錦学術企画室長】 代読させていただきます。
前期において、人文学・社会科学を軸とした学術知共創プロジェクトを構築したことは、単に人文学・社会科学の基盤的な振興というだけではなく、横断的な新たな学術知の共創を試みている点で重要であると思います。これは必ずしも意図していたわけではないと思われますが、第6期科学技術基本計画の総合知の重視の方向性とも重なってきます。
今後、様々な局面で総合知を具体化するプロジェクトが行われると思いますが、これらと学術知共創プロジェクトをつなぐ試みをいろいろと考えることが重要になります。その際、総合知が社会実装局面での総合を重視する傾向にあるのに対して、学術知共創プロジェクトが社会設計の前提となる価値の局面も含めて、新たな知を志向していることを認識することも必要だと思います。
以上でございます。
 
【大野分科会長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして武内委員、お願い申し上げます。
(武内委員、音声トラブル)
 
【大野分科会長】 少し機器の調整をいただく時間を取りたいと思いますので、次の委員の方に御発言をいただきたいと思います。戸田山委員、お願いいたします。
 
【戸田山委員】 戸田山です。
 
【大野分科会長】 よろしくお願いします。
 
【戸田山委員】 こんにちは。
(戸田山委員、音声トラブル)
 
【大野分科会長】 それでは、続いて中野委員からまず御発言をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
 
【中野委員】 中野です。
日本の抱えている問題はいろいろありますが、一番喫緊の課題であり、長期的に見ても問題なのは少子高齢化だと思います。その中で日本がこれからどうしていくかということについては、高度人材の育成が非常に重要で、そのことに大学は貢献していかないといけない。その一環として博士課程の後期課程の充実というものがあると思います。
委員の皆さんが既に御指摘されたように、大学院生の支援とか若手支援は充実してきていますが、それでも人数が増えません。その原因として、学生が先を見ているからだと思います。中堅・シニアになったときに自分がどうなるか想像して見たときになかなか難しそうである。可能なキャリアパスに関しても、アカデミアに残るのは3分の1ですので、残りの3分の2の人生がどれだけ明るいかということが重要になってきます。
キャリアパスを広げていく。あるいは若手だけじゃなくて、シニア・中堅を充実させていくということには原資が要ります。その原資を日本の中だけで賄っていくというのは、もうかなり限界に来ているのではないか。そこを抜本的に解決するのは、限られたパイの再配分ではなかなか難しいんじゃないかという感じはします。
やはり産業界からの貢献であるとか国際貢献というのが充実されないといけない。そのためには、日本の研究の現場というのが魅力的じゃないといけない。そこに研究力の強化であったり、それからイノベーションですね。産業界から見て魅力的というのがつながっているんじゃないかと思います。
国際貢献に関しては、やはり日本で研究がどれだけやりやすいか、日本で研究することが自分たちにとってどれだけ有利かということが、海外の人に分からないといけない。だから、そのための環境整備を戦略的に進めないといけない。それから産学連携に関しても、今まで個人ベースや研究室ベースでやっていた共同研究というものを、大学レベル、あるいはそれを超えた組織対組織のものに大きくしていかないと、やはり現場の魅力は生まれないと思います。
そういうことを戦略的に行っていくことによって、日本の大学・機関が、人材育成において、良い比喩ではないかも知れませんが、ぬか漬けのぬか床のように、そこに集まれば優秀な人たちが自然にどんどん育っていく。そういうふうな環境を整備していくことが重要なんじゃないかと思います。
以上です。
 
【大野分科会長】 ありがとうございます。社会に対しても国際的にも求心力のあるエコシステムを築くべきという御発言かと思います。どうもありがとうございました。
それでは、中山委員、お願い申し上げます。
 
【中山委員】 千葉大学の中山でございます。今回初めて委員として参加させていただきます。
日本の科学技術ということ、それから永続的な発展と研究力の向上ということを考えてみますと、やはり海外の制度との比較も必要ですけれども、日本ならではの仕組みを上手につくっていくと。1900年代後半に随分発展したことを考えますと、日本ならではの制度というものも考えていくべきではないかと思っています。
とはいっても、実際に主役としてそこでやる人たちは研究者です。先生方もおっしゃっていましたように、今回書いてある若手・中堅・シニア、切れ目ない支援というのは、書くのは簡単ですけれど結構難しい問題なんですよね。そこがないと、やはり博士課程に入る学生も、キャリアパスとして先生方がいつも研究費に四苦八苦しているということを見ると、なかなか研究職には行かない。また、博士課程を卒業すると、企業において非常に大きいインセンティブを与えていただければ、アカデミアもしくは企業の中で活躍できる自分の将来のキャリアを考えるということが若い人たちはできるんじゃないかと思います。若手・中堅・シニアの切れ目ない支援というのを、文科省としてはよく考えていただきたいと思います。
もう一つは、地方大学とか私立大学の研究者の人たちの支援ということです。全体を考えますと、やはり裾野を広げるという言い方もありますけれど、研究者の大学間の異動もございますので、大きな旧帝国大学、国研の研究者のみならず、私も千葉大学という地方大学の位置づけの大学にいます。首都圏におりますけれど、地方大学の研究者にも配慮した施策が必要ではないかと。
文理融合、総合知、非常にいい考え方だと思いますが、このことが実現するのは、若手の20代、30代の人が、こういう分野で実績を上げて活躍するということを考えると、20年ぐらいは多分かかるんですよね。それも長い目で支援していくということを、この分科会で提言して、これからサポートを長く続けていくというような方向性が必要ではないかと感じております。
以上です。
 
【大野分科会長】 ありがとうございます。切れ目のない支援の重要性という点を強調していただきました。そのとおりだと思います。その中で、先ほどの御発言にありましたように、評価と切れ目のない支援をどう組み合わせていくのかが重要なポイントになろうかと思います。ありがとうございました。
それでは、続きまして長谷部委員、お願い申し上げます。
 
【長谷部委員】 長谷部です。私、4点意見を言わせていただければと思います。共同利用研、共共拠点、あとは評価と科研費です。
最初に共同利用研ですけれども、第4期に連合体をつくる予定になっております。これまで4機構ができて、機構に研究所が加わることで一番大きなメリットというのは、やっぱり分野間連携がすごく進んだこと、あるいは共同研究がすごく促進されたことだと思います。
ただ、一方で、一緒になることによるスケールメリットの逆なスケールデメリットの問題もかなり顕在化しています。特に小さな研究所、大きなところもそうかな。みんな、それなりのデメリットが出てくる部分もあるので、どうしても施策をつくるときにメリットのほうにばかり目が行きがちなんですが、このデメリットを顕在化させて減らすような施策を考えていくのが、次の連合体では重要かなと思っています。
2点目は、共共拠点なんですが、この共同利用研と共共拠点を連携していくというのは、やっぱり日本の研究力を強化する上では非常に重要だと思っています。ただ、これ、今それぞれ独立にあるところですので、連携するにはやっぱり何らかの制度的なインセンティブが必要かと思います。ですので、共同利用研と共共拠点が共同して何かできるような何らかの制度的なインセンティブを考えていければいいのではないかなと思います。
3点目は、評価の問題なんですが、現在の評価は、どちらかというと短期間で評価されることが多いかと思います。ただ、分野にもよるかと思いますが、例えば、私、生物学を専門にしておりますけれども、大体研究は最初、何か訳の分からないところから始まって、論文になるのって10年ぐらいかかるような気がするんです。なので、例えば毎年年次評価をされると、一体何を評価されているのか。特に若い人たちは、長期的に研究をしているときに、この1年間、何のデータもないということがあるんだけれど、そこで悪い評価をされてしまうと、本当に駄目になってしまうんですね。なので、評価のタームを長くするような施策、例えば過去10年間を評価して、次にチャレンジできるような、長い期間のタームの評価を何とか考えることはできませんでしょうか。
第4点目は科研費システムなんですが、これは運営費交付金が減額になって、今、基盤的な研究、まさしくフィージビリティー的な、萌芽的研究に申請できるよりも以前の、研究者が何か面白いなってやる研究というのをするお金がなくなっている状況だと思います。そういう点で、財政システムの中で運営費交付金を増やすことができないならば、科研費システムの中で、何らかのちょっと緩やかな、しかもタームが長い、3年とか5年ではなくてもう少し長期間の支援。金額はそんなに多くなくていいと思うんですね。そういう費目ができるといいのかなと思います。創発的研究支援事業本当に画期的なシステムだと思いますので、それを拡充するような形で、長いタームで人をサポートできる。そういう科研費システムというのを考えていけたらいいなと考えています。
以上です。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。先ほどの中山委員の御発言とも通じるところがありますけれども、切れ目のない支援。これは時間スケールも考えた上での支援と、そこに併せて使うべき評価、さらには、それらがエコシステムとして魅力的でなければいけない。非常に重要な論点、難しいとは思いますけれども、重要な論点かと思います。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして原田委員、お願いいたします。
 
【原田委員】 原田です。ありがとうございます。皆さん、委員の先生方、やはりもう既に多く言われてきたことばかりしか思い浮かばないんですけれども、私からは、多様な研究分野をいかに推進していけるかという仕組みづくりに関して発言させていただきたいと思います。
平成の時代、例えば選択と集中という言葉で推進された結果、将来のシーズになるかもしれないような分野あるいは研究者が純粋に面白いなと思って取り組んできたような分野が、取りこぼされてきてしまっているのではないかなということを感じておりました。そういうことで、日本が推進する研究分野の多様性が失われることのないような仕組みづくり。これはやはりしっかりと議論していく必要があるかなと思いました。
なぜこう感じたかといいますと、この一、二年のコロナ禍は、非常に大きなインパクトとして、教育界や学術界に影響を及ぼしました。例えばワクチン開発研究ですとか、コロナ下にある経済の打撃による気候変動への影響ですとか、あるいは公衆衛生への正の影響、あるいは負の影響など、こういった研究が世界中から大変多く発信されました。
一方で、日本からのこういう研究の発信が相対的に弱かったのではないかなという印象を受けております。突発的な事象というのはこれからも思いもよらない形でやってくると思いますので、日本からも、こういう機会において機動的に学術界が対応して成果を発信していけるように、体制にゆとりを持つこと、基礎的な研究力、潜在的な研究力というのを保持しておくということが大切だなと思うわけです。従来の業務で汲々とした状況では機動的な対応は困難です。
ということで、先ほどの多様性。分野の多様性の確保ですとか、既に先生方おっしゃっておられますように博士課程の学生の数の確保によって将来の研究に携わる人口を増やす、また、学位取得をしても、全員が望んだアカデミアのポストに就けるわけではありません。産業界も含めた、研究にしっかり打ち込めるような多様なポストをしっかりと確保していくといった、基礎的な研究潜在力を保ち続けられるような政策、仕組みの議論というのが重要ではないかと思います。
以上です。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。コロナで私も同じ印象を持っています。我が国の研究者あるいは研究コミュニティーが、必ずしも機動性が十分発揮できて対応できていたかというと、疑問が残る1年になったと思います。これらも含めて、本分科会の審議の背景に置いておくべきことかと思います。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして山本委員、お願いいたします。
 
【山本佳世子委員】 山本です。私からは、学術の言葉についてちょっと一言、委員の皆様に知っていただきたいなと思ってお伝えしたいと思います。
科学技術と産業をつなぐ新聞の記者として常々気になっているのは、学術研究というと、その世界だけの議論になってしまって、一般社会の人はあまり関係ないという印象を持ってしまうという点です。学術研究の説明として、自由な研究というような言い方もするんですけれども、そういった言葉にすると、ちょっと好き勝手しているんだな、大学の人はといったような、ちょっとマイナスのイメージができてしまって、そうすると予算や評価に過剰な反応が出てしまいますので、使い方が難しいなと思っております。
皆さんが一般の方に説明するチャンスがあったときには、例えば研究者の自発的な関心に基づくものだとか、将来の発展にすごく潜在性があると。今は分からないけれども、どうなるか分からない可能性を秘めているといったような言い方で学術研究を説明されるといいなと思っております。
ただ、今は、委員の皆様がおっしゃったように、総合知ですとか、前期でもこの委員会で基本計画の議論や人文・社会科学のプロジェクトに関わってきて思っていますように、すごく今変わっているところだと思います。そして、特に学術分科会としても、社会に支持されるチャンスといいますか、すごくいいときにあると思います。
ですので、先ほどの言葉の使い方も含めてなんですけれども、学術、学術とまとまってしまうんではなくて、社会に関わっていく学術研究という意識をぜひ持ちながら、今期の議論に参加していきたいなと思っています。
以上です。
 
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。非常に重要なポイントかと思います。私たちも、例えば大学の機関として評価を受けています。それは法的な枠組みの中で実施されており、アカウンタビリティーということで、一括りにされるわけですけれども、いくらそれに注力しても結果としてアカウントされていません。ですので、社会に対しては、国民の期待と信頼という御発言もありましたし、デジタル、カーボンニュートラルというお話もありました。こうした点に成果を出していくことで、基礎研究、学術研究全体への信頼が深まると思います。非常に私としては重要なポイントと思っています。どうもありがとうございました。
それでは戻りまして武内委員、いかがでしょうか。
 
【武内委員】 武内です。ありがとうございます。
前回、私はこの委員会で、アメリカが今、大きく変わっているということを申し上げました。具体的に言うと、ポストコロナからの復興について、これをグリーンリカバリーと組み合わせて大きく展開しているということでございます。ポイントは、そのためには、科学的なエビデンスをはっきりしたものに対してお金をつけていくという基本的な姿勢であります。昨日もアメリカの方とお話をしましたけれども、NSFに対しての期待がどんどんと高まっているということを伺いました。
他方、我が国の状況を考えてみますと、昨年の2050年ネットゼロの総理の宣言、そして今現在、基本計画を見直して、2050年、2030年のマイルストーンを検討中でございますけれども、そこにおいて科学的なエビデンスというのを高めることが必要で、そのことについてきちっとした予算を配置するという姿勢は、必ずしも私は明確でないように思っております。ですから、その点をむしろこの分科会としては積極的に発信すべきじゃないか。これが第1点です。
第2点としては、今のこととも関係しますけれど、脱炭素社会の構築ということになりますと、ややもすると先端科学技術のみが注目されていますけれども、実際には、人々の社会や生活やライフスタイル、価値観といった部分の改善の可能性というのは極めて大きいというのが、私どもの認識でございます。私どもIGESでは、「1.5-Degree Lifestyles」という報告書をヨーロッパの人たちと一緒にまとめました。そういう中では、交通、居住、そして食べ物をどのように変えていくかというようなことが、いわゆるカーボンフットプリントに非常に大きな影響をもたらしているということで、そういった観点からしますと、ここに人文・社会科学の役割と、自然科学、それから科学技術との融合の可能性が、1つ具体的な例としてあるのではないかと申し上げたいと思います。
3つ目です。今、新しく世界的にプラネタリーヘルスという概念が注目されております。このプラネタリーヘルスという概念は、地球環境の限界つまりプラネタリーバウンダリーと、人々の健康、そして、その間にあるような様々なつながりというものをよく理解してこれからの社会の在り方を考えるということで、従来はグローバルな問題と、ソーシャルな問題と、ヒューマン、インディビジュアルな問題というのは別の問題として考えられてきたのですが、これらを統合的に考え、地球の健康が畢竟人々の健康につながるのだという考え方で議論が進んでおります。
今現在、外務省で松本洋一郎外務大臣科学技術顧問を中心に、今年の9月に開催される国連食料システムサミットに向けての日本からの提案をまとめております。そういう中でもプラネタリーヘルスという概念を全面的に押し出していこうではないかと。その中で、アジア的、日本的な価値観といったものも織り込んでいくことによって、ユニークな提案ができるのではないかと言っております。そういうふうな観点です。プラネタリーヘルスは、日本語では地球の健康というふうに言っていますけれども、ちょっと意味は違うように思いますけれども、ぜひこういうことについても御検討いただけるとありがたいと思います。
どうもありがとうございました。以上です。
 
【大野分科会長】 ありがとうございました。プラネタリーヘルスを維持・発展する、あるいは脱炭素社会の実現にも総合知が不可欠との御発言かと思います。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして戸田山委員、いかがでしょうか。
 
【戸田山委員】 戸田山です。
私は哲学者なんですが、情報学研究科という理系(文理融合)部局に長年勤めております。哲学者をやっていますと、人文学に対する社会からの期待を、非常に強く感じております。自動運転車やAI社会に関する倫理問題について一緒に考えてもらいたいとか。最近では、幸せな未来社会をつくるために技術開発をしたい。遠い理想的な未来を描いてからバックキャストしたいのだだけれども、では、幸せって何でしょうかとか、いい社会というのはどういう社会なんでしょうといった問いを、一緒に考えてくださいというふうに、技術者あるいは工学研究者から多くの呼びかけがされています。それに応えるべく頑張るわけですけれども、いかんせん、哲学側では人手不足という状況が生じています。
このように人文・社会科学分野への期待はもう十分あると思っています。むしろそれに応えるための体制といいますか、人材育成が次の課題だと思っています。ちょっとこういうことを言うと乱暴かもしれませんけれども、従来、文学部という組織が文学の研究・教育を担ってきました。そのことの是非も含めて検討し直すべきじゃないかなと思っています。
海外に目を転じたり歴史を遡ってみますと、必ずしも文学部という組織が人文学研究者を育成することは自明のことではないし、唯一の解でもないので、その辺の制度設計、別のやり方を考えてみるというところから、必要な施策の検討は始めたらいいのかなと思っております。
以上です。
 
【大野分科会長】 ありがとうございます。人文学の体制の在り方について、非常に骨太の御意見をいただきました。どうもありがとうございます。
福田委員、後でお入りになられたと思います。いかがでしょうか。
 
【福田委員】 今、東京大学で一連のコロナ関係のシンポジウムの第2弾をやっていまして、第2弾のしょっぱなに私がコーディネートしたニューノーマルにおける大学の可能性と責務というようなシンポジウムをやっていまして、ちょっと遅れて大変申し訳ございません。その中で、実は教育と大学のあるべき教育と(音飛び)いたんですけれども、これまでとコロナ後は、やはり違う状態になるであろうということで、これまでの延長線だけの議論では、そもそも学術の議論はできないのではないかというようなことに、特になりました。
例えば国際化1つに取ってみても、これまでは日本人の場合は海外に行って留学してというような、これが主なスタイルだったのが、もう既にオンラインで世界の人たちと簡単につながれるんだけれど、でも、実際には先ほどのお話もありましたように、日本人がなかなかその輪に入っていなんじゃないかというようなことが実はあったりするんですね。
そうすると、新たな戦略でやっぱり国際化を考えなくちゃいけないんじゃないかとか、あるいはライフスタイルそのものが実はもう変わっていて、テレワークというタイプのスタイルが多分研究者の中にも入ってきていて、そうすると我々の時代のように朝から晩まで大学に行っていて、全ての御飯を大学で食べるみたいな、そういう生活は、もう多分研究者のスタイルではなくなってくる。じゃ、そういう中で新しいスタイルの中で、学術というのは、どこがリアルで、どこがバーチャルでやるのかというようなことを多分考えていかなくちゃいけない時代になっているのではないかと。
一方で、絶対に大学として変わらないものは、やっぱりシーズなんじゃないかという議論にそこでなっています。大学は多様で、キュリオシティドリブンな研究があるからこそいろいろなシーズがあって、それが今回のコロナ禍でも役に立っている。例えば今日議論したのは、うちの井上先生がフサンという薬を治療薬に開発しています。これはまさにそういう中から生まれた、しかも国際協力の中から生まれたそういう技術であって、これ、コロナがこういう状態にならなかったら、きっと二度と日の目を見なかったような研究じゃなかったかと思います。そういうような中で、やっぱりシーズの大切さみたいなことを今日は議論させていただきました。
ポイントとしては、このコロナという事態があって、ある意味ピンチはピンチなんだけれど、逆に例えば国際化という舞台に関しても、日本という島国であっても国際化の中の新しいスタイルで国際化に貢献できるというチャンスなんじゃないかというふうなことは思いました。今回の議論の中に、やはりピンチをチャンスに変えるような学術の在り方を議論できると大変いいなというふうに思っています。
私から以上です。
 
【大野分科会長】 ありがとうございます。ピンチをチャンスに、そして新たなスタイルの国際化があるとのお話をいただきました。
以上で御出席の皆様全てに御発言いただいたと思いますけれども、その認識で間違いはないでしょうか。私はまだ発言していないという委員の方、いらっしゃいませんでしょうか。ほぼ時間となりましたが、もし絶対にこれはもう一回言っておかなければいけないということがございましたら、1件だけ受け付けたいと思いますけれど、いかがでしょうか。
よろしゅうございますか。
それでは、本日の御意見を踏まえて、今後審議を進めていきたいと思います。どうもありがとうございました。
事務局から説明がありましたが、今期の3つの部会に加えて、人文学・社会科学特別委員会を設けることとし、人文学・社会科学に関する審議を行っていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
 
【大野分科会長】 御了承いただいたということで進めさせていただきます。委員会の委員及び主査に関しましては、分科会長が指名することとなっておりますので、委員会に御出席をお願いする委員各位には、それぞれ後日御連絡させていただきます。御多忙と思いますけれども、ぜひ御参加、御協力いただきたいと思います。
それでは、以上で本日の議事を終了させていただきます。
最後に事務局から連絡事項があれば、お願いいたします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】 事務局でございます。次回の学術分科会の日程等につきましては、後日改めて御連絡させていただきます。また、学術分科会運営規則第7条に基づき、分科会の会議の議事録を作成し公表することとなっております。一部非公表となりますが、本日の議事録案につきまして、後日メールで送付いたしますので、御確認をお願いいたします。
以上でございます。
 
【大野分科会長】 ありがとうございました。
それでは、これで閉会いたします。どうも今日はありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)