学術分科会(第27回)・学術研究推進部会(第20回)合同会議 議事録

1.日時

平成20年7月7日(月曜日) 10時30分~12時

2.場所

東海大学校友会館 「朝日・東海・三保」

3.出席者

委員

佐々木分科会長、中西学術研究推進部会長代理、飯野委員、井上孝美委員、樫谷委員、鈴木委員、土居委員、深見委員、三宅委員、有川委員、伊井委員、飯吉委員、家委員、伊賀委員、石委員、岡本委員、甲斐委員、小林委員、巽委員、中村委員、垣生委員、水野委員

(科学官)
喜連川科学官、小山科学官、佐藤科学官、佐谷科学官、城石科学官、深尾科学官、福島科学官、本吉科学官、山内科学官、山岡科学官

文部科学省

徳永研究振興局長、藤嶋政策評価審議官、岩瀬科学技術・学術総括官、伊藤振興企画課長、森学術機関課長、磯谷学術研究助成課長、袖山企画室長、勝野情報課長、坪田科学技術・学術政策局企画官、匂坂国語課長、門岡学術企画室長

4.議事録

【佐々木分科会長】

 それでは、ただいまから科学技術・学術審議会学術分科会(第27回)会合及び学術研究推進部会(第20回)会合を合同で開催いたします。
 議事に入る前に、本日の資料と連絡事項を事務局からお願いします。

【門岡学術企画室長】

 議事次第の2枚目にあるとおり、資料については資料1−1から資料4までご用意させていただいております。欠落等があればお知らせ願います。
 以上です。

【佐々木分科会長】

 それでは議事に入ります。まず、議題1「国語に関する学術研究の推進について」報告(案)の審議をお願いします。
 「国語に関する学術研究の推進について」報告(案)について簡単に申し上げますと、1月31日に開催された学術研究推進部会第18回会合において、同部会の下に国語に関する学術研究の推進に関する委員会を設置して、審議を開始いたしました。これまで4回の審議を経て、去る6月12日に委員会の報告案として取りまとめられたと伺っております。なお、審議の途中経過については、前回4月8日に開催した学術分科会第26回会合及び学術研究推進部会第19回会合においてもご報告いただいております。
 それでは同委員会の主査をお務めいただき委員会の報告案を取りまとめいただいた飯野委員より、本報告案についてご説明いただき、その上で皆様からご意見をいただきたいと思います。
 それでは飯野委員、よろしくご説明をお願いします。

【飯野委員】

 前回4月8日に開催された学術分科会及び学術研究推進部会の合同会議でご審議いただいてから後の状況を、ここでご報告申し上げます。
 国語に関する学術研究の推進に関する委員会の報告案について、4月4日から5月3日まで意見募集を行いました。この意見募集においては個人及び団体を含めて335件のご意見をちょうだいいたしました。
 主なご意見としては、新しい大学共同利用機関でこれまで独立行政法人国立国語研究所が行ってきた日本語教育に関する研究を行うべきであるというものでありました。この点については、新しい大学共同利用機関においても基盤となる調査や研究を通じて日本語教育に一定の貢献を行うことは考えられますが、国の日本語教育政策に直接協力する事業については、学術分科会における検討とは別に政策上の必要性の観点から、その実施主体等について早急に検討することが望まれているところです。
 報告においてはこの趣旨を明確にいたしました。この点を含め、意見募集でのご意見などを踏まえて、委員会としての報告を取りまとめております。
 報告案以後修正された点などについては、事務局から補足説明をお願いします。

【佐々木分科会長】

 それでは事務局からお願いします。

【森学術機関課長】

 ご説明申し上げます。資料1−1と書いてある束になっている資料が、国語に関する学術研究の推進についての資料でございます。
 ご説明いただきましたように、4月の学術分科会において報告書の内容についてはご説明申し上げておりますが、その概要については最初の資料1−1にあるように、現在における国語に関する学術研究の現状と課題を踏まえながら、今後当面重点的に推進すべき研究分野、研究方法について議論がなされたところであって、今後推進する必要のある研究分野として、言語資料の収集・整理といったもののデータベースの構築、それから理論研究、国語の歴史的、地域的、社会的な変異についての研究、あるいは他の外国語等との対照研究を推進するといった研究を進める際には、各大学においていろいろな研究が行われておりますが、そういったものを結集するというようなことで学問全体をさらに発展させていくという観点から、共同研究を推進する必要があるとしております。そういった状況を踏まえて、大学共同利用機関を新たに設置する必要性があるということが示されております。
 大学共同利用機関を設置する際には、現在独立行政法人として国立国語研究所があるけれども、国立国語研究所のこれまでの研究成果をさらに学術研究に生かすという観点から、国立国語研究所を改組・転換をしていくということが適当であり、そして新しい大学共同利用機関については、大学共同利用機関法人である人間文化研究機構のもとに設置することが適当であるとしております。
 なお、その際、今飯野先生からご説明があったように、日本語教育に関する事柄についてどうかということであります。国立国語研究所においては日本語教育を推進していくというところが研究所の設置目的の一つの柱であるわけですが、大学共同利用機関では日本語教育の基盤となる調査研究を行っていくこととなっております。そういったものが一定の日本語教育に対する貢献を果たしていくだろうということがありますが、他方で、いろいろな大学等における研究、取り組みといったものの役割分担にも留意をしていくことが必要であるし、さらには政策的に日本語教育をどう進めていくかということに関しては、日本語教育の政策的な観点から学術分科会とは別途の検討を行っていくということが望ましいということを今回明確にしたところであります。さらには、こういった大学共同利用機関における組織整備の基本的な考え方というようなところで、研究領域、主要事業等について、お示しをしているところであります。
 こういった学術分科会の委員会における検討ということと並行して、この委員会における検討においても、人間文化研究機構における関係者の研究者コミュニティによる検討といったものを踏まえてこの報告はできてきておりますけれども、人間文化研究機構の中には現在この大学共同利用機関の創設のための準備委員会が設置されていて、そこにおいて具体的な組織のあり方について検討がなされているという状況がございます。
 あと、後ろのほうには、この委員会において検討した際の基礎的な資料、現在の言語学の現状、大学共同利用機関の性格等の関係資料、あるいは文化審議会における日本語に関する検討の状況といったものの資料をつけ加えておりますので、適宜ご参照いただければと思います。
 説明は以上です。

【佐々木分科会長】

 それでは、ただいまのご説明を踏まえて、ご意見、ご質問等がありましたらお願いいたします。
 樫谷委員、どうぞ。

【樫谷委員】

 樫谷です。国語のことについて何ら見識を持っているわけではありませんが、一つ国語力の向上というテーマがありますが、国語力というのは何なのか、向上というのは一体どういうことがあった場合に向上したというのかがよくわからない。したがって、こういうことを例えばやったときにほんとうに向上すると言えるのか、その辺もちょっとよく理解できないというのがまず一つと、それから国立国語研究所は独法が改組される形になるのだが、人間文化研究機構のほうに吸収されて、また別の組織をつくろうということなのかもわからない。例えば2ページ目の4の(2)大学と共同利用機関との連携及び大学の役割と書いてあるが、国立国語研究所ではこういうことができなかったということなのでしょうか。できなかった理由というのは、独法ではできないような仕組みになっているのでしょうか、共同利用機関だったらできるということなのでしょうか、その辺もよくわからない。
 まず2点について、ご説明いただけますでしょうか。

【佐々木分科会長】

 何かお答えがあったらどうぞ。

【徳永研究振興局長】

 後段のほうについてお答えをいたしますけれども、一つは国全体の独立行政法人改革の中で国語研究所については廃止をして、これを大学共同利用機関に転換するというような方向が示されたわけです。そういった政府全体の意向を踏まえながらも、また別途の学術をどう進めるかという観点から、学術分科会において議論してきたわけであります。
 特にその中で、今樫谷先生がおっしゃった、そもそも独立行政法人の国立国語研究所のレベルでは、なぜ全国の大学との共同研究・共同利用ができないのかということであります。一つは実態として国語研究所が全国の大学等における国語に関する学術研究をしているところと何か連携協力をするということ自体は、それは熱意さえあれば行えないものではないと思っております。ただ、それはあくまでも全く異なる、即ち大学のほうは学術研究を進め、国語研究所は文化庁の政策に基づいてトップダウン型の研究をしておりますので、これらが事実的に連携協力することが、熱意があれば可能であるということでうあります。
 一方それに対して大学共同利用機関の場合は、初めからこれは一つの大学共同利用機関で研究をするということではなくて、あくまでも全国の同一分野の研究コミュニティに支えられて共同研究をしていく、その拠点として大学共同利用機関の性格が法律上定められている。またそういう法律上の性格を受けて、大学共同利用機関には必ず運営委員会が設けられていて、その運営委員会の半数は学外、大学共同利用機関以外の者、特に研究コミュニティの方が入り、そして具体的な運営についても議論する。またさらに大学共同利用機関の教授、准教授等の人事についても協議を行います。
 さらにその上大学共同利用機関等で毎年公募型の研究を行っておりますが、そういう研究の公募あるいは審査・採択についても学外の運営委員会の方が過半数入っている運営委員会が関与するという形をとっていて、いわば研究コミュニティと一体のものとして運営されることが法律上システムとして規定されているので、当然そういうふうになるとそれは個々人の努力ということではなくて、初めからシステムとして全国の大学との一体的な共同研究ということを行うことが当然可能になってくるし、またそうしなければいけない状況になってくるということであります。

【佐々木分科会長】

 もう一つのほうは。

【森学術機関課長】

 国語力ということですが、資料1−2の報告の1ページ目のところに国語力の向上が求められているということに関しての若干の記述がありますが、国民としての国語の改善は文化庁において政策目標の一つではあるけれども、文部科学省全体とすると、初等中等教育における教育の中で国語科の教育を中心として現在国語力の向上が一つの課題ということであります。
 実際上どういった形で国語力がはかられるのかというのは、なかなか全体というのは難しいところがありますが、一つは読解力という面での初等中等教育におけるいろいろな学力調査といったものは国際的にも調査があるけれども、そういったものの力をつけていくというものもあります。さらには大人も含めた形での国語として、よりよい国語というのをどうやっていくのか。これは一つの政策目標で、その中で一定の役割をこれまで独立行政法人である国立国語研究所が果たしてきたというようなところがあります。
 今後さらに学術研究ということになると、より基礎的なレベルからの言語学からの研究というのも広がってくるし、歴史的な変化、方言等の研究というようなものを含めて、諸外国との外国語との比較においてのより理論的な研究といったものに重点を置きながら、さらにはそういったものの研究成果を全体としての国語力の向上にも役立てることが可能ではないかということであります。

【佐々木分科会長】

 どうぞ。

【樫谷委員】

 今のご説明でも全くわからないのだが、国語力、国語が大変重要な学問であるということは私もよく理解しているが、特に最近国語力がなくなったとよく言われるので、向上しなければいけないというのもよくわかる。
 しかし今みたいな説明では、国語力とは何だというのが非常にあいまいです。あいまいと言っても、では定義をどうするのかと言われてもなかなか難しいかもわからないけれども、例えば初等中等教育で読解力が云々といったら読解力をどの程度上げられるのかということが、具体的にどういうことになったら読解力が上がるのか、読解力をどこからどこまで上げたいのかというのがないと、どういうことをやったらいいかというのはわからないのではないでしょうか。
 それからもう一つは国語研究所から大学共同利用機関に移るということですが、先ほどの局長のお話では国語研究所というのはトップダウンでやってきた。大学共同利用機関というのはそういうものではなくて、それぞれの大学の先生方がやっていらっしゃるのをネットワーク化するということだと思う。しかし、それで国語力の向上ができるのか。むしろトップダウンでやるということも非常に重要なことだと思います。トップダウンで重点的にやらなければいけないということと、それから当然大学の先生方がやっていらっしゃることを支援するということと、これは車の両輪みたいなもので、それを分けてしまって果たして物事が進んでいくと考えてよろしいのでしょうか。

【佐々木分科会長】

 そういうことで何か意見はありますか。どうぞ。

【徳永研究振興局長】

 基本的には国語力の向上というのは文化庁の文化政策審議会の答申の中の言葉であって、国語研究所が廃止されても文化庁の国語政策そのものがなくなるわけではないので、文化庁の幅広い国語政策の中で国語力の向上が図られるものと位置づけられているわけであります。
 具体的には、まず国語力という中には最近の子供たち、あるいは大人も含めて、語彙力の不足、言い回しの単純さとかさまざまな指摘があるわけですが、そういったこと全体については、まず一つ、今使われている国語というものが、よくどういう言葉を使うべきだとか、こういう言葉を使うべきではないのとかいろいろ議論があるが、そもそも国語というのはどういう歴史的変遷をとってどういう形で使われているのか。あるいは各国においても、それぞれの民族的な言葉というのはどういう形で生成発展、成長を遂げているのかというようなことを、きちっと学術的に研究する必要があります。
 さらにそういった学術的成果というのは国語研究、大学共同利用機関たるそういうもの、あるいは大学における研究を踏まえて、さらにそういったことをきちっと国民に対して示していく。その一つはもちろん初等中等教育段階における学校教育できちんとした国語教育を行っていくこと、あるいは大学も含めたさまざまな教育機関で国語力の向上ということを意図した形でのさまざまな教育活動が行われること、さらにその上で、文化庁のほうで今後とも引き続き行われるさまざまな日本語教育に対する働きかけ、あるいは国民の国語意識に関する意識を涵養していこうというさまざまな政策が一体となって行われることによって国語力の向上が図られるということは、文化庁の基本方針としては変わらないわけです。
 ただ、そういう中で、特に国語力の向上という中に、そもそも国語というのはどういうふうな位置づけを持つのか、どういうふうに生成発展してきたのか、あるいは各国と比べてどうなのかというところのベーシックな国語そのものに関する基礎的な研究をきちんとやるべきだ、そういうためにはむしろそういう大学学術界の中でやっていただく、そういう力を活用したほうがいいという判断だと思っております。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございます。それではほかの委員から、何かご発言はありますか。
 石委員、どうぞ。

【石委員】

 まだ機構全体の見直しというか、行き先をどうするかとかまで固まってないのだろうと思うが、名称として国立国語研究所を引き続き使うということである。そうすると一体何が変わるのかと思うのだが、おそらく大学共同利用機関の傘の下に、傘と言ってはおかしいか、いずれにしても入るわけである。これは国の独法化の政策によっておそらくやり玉に上げられたのだろう。1個減らせなんていう話の連携で来たと思うが、そこで逆に人間文化研究機構の側から言うと、研究所という名称のものをすっぽり引き受けて、本体のほうの人間文化研究機構はどうなのか。同じような研究所というのはいっぱいぶら下がっているのか。その辺の仕組みのことをぜひ知りたいと思っているのだが、僕は人間文化研究機構のことを何も知らないものだからこういう議論になるのだが、そもそも人間文化研究機構がどういう形態でそこにうまくマッチするのか。マッチは多分しないのだろうけれども、どうやってうまく接着させるのか。私も別なところで当事者なものだからいろいろ聞きたいので、ちょっと教えていただきたい。

【佐々木分科会長】

 委員からでも事務局からでも、説明をお願いします。

【徳永研究振興局長】

 まず、人間文化研究機構である。人間文化研究機構の組織を見ると、これは国立大学の法人化と同一時期に国立大学法人法という中で大学共同利用機関法人というものが定義されたわけである。それまで20近くあった大学共同利用機関を4つの法人がこれを設置管理するという仕組みに改めたわけであります。その4つの法人のうちの一つが人間文化研究機構であって、具体的にどのような研究所を置いているかというと、歴史的な大阪にある民族学博物館、民博である。それから佐倉のほうにある歴史民俗博物館、いわゆる歴博。それから伊井先生のところの国文学研究資料館。さらに国際日本文化研究センター、いわゆる日文研。もう一つは京都にある総合地球環境学研究所。この4つから成り立っている。
 そういう意味では、確かに比較的近い分野とすれば、きょう委員でご出席の伊井先生のところの国文学資料館が近い分野かもしれないが、ただ伊井先生のところはあくまでも国文学であるから、言語学をベースとする国語学とは性格が異なっている。
 それから何が違うのかというと、国語研究所が単に人間文化研究機構の管理下に引っ越してくるということではありません。あくまでもこれは学術機関たる国立大学法人法に規定されている大学共同利用機関として新たに研究所を設置するわけであるから、先ほど述べたように教員人事についてもこれはきちっとした運営委員会等のもとで行うことになります。したがって、学術的な実績ということをもとに、教授、助教授の審査をすべて当然やり直すことになります。だから教員人事についても一から全部やるということになります。また今回日本語教育については、大学共同利用機関の国語研究所の主たる研究等の業務から除いてあるので、現在の文化庁の国語研究所では日本語教育部門というのはかなりの比重であるが、そういった分野については基本的に継承しないということで成り立っているので、何が違うのかということに対しては以上の2つの点が大きく異なってくるということであります。

【佐々木分科会長】

 伊井委員、何かご要望がありますか。

【伊井委員】

 いえ、特にありません。

【石委員】

 要するに定員とか予算の規模とか、おそらくそれはこれから固めるのだろうけれども、結局そのまま新しいところにそっくりおさまったとすると、今おっしゃった上に国立大学法人があるから中は違うと言うけれど、研究者の意識のこととか事務官の予算管理のこととかというのはおそらく多分変わらないのだろう。変わるのだろうか。

【徳永研究振興局長】

 そこは具体的な教員人事のことであるから文部科学省が行政的に口出しをする事柄ではありませんが、基本的に大学共同利用機関を新たにつくるということになると、今いる方がそのまま移るというようなことではなくて、全部それは教員人事をきちんとやり直すことになると思います。

【佐々木分科会長】

 伊井委員、どうぞ。

【伊井委員】

 今名前が出た人間文化研究機構に所属している国文学研究資料館の伊井です。文科省のもとにあった16の大学共同利用直轄研究所が4つの機構に分かれたうちの人文系が人間文化研究機構で、今局長がおっしゃったように5つの機関で構成されています。第6番目の機関として組織化されようとしているのが国立国語研究所で、文化庁のもとでの行政的な研究所として設置されています。新しく大学共同利用機関の一研究所になっていくため、今もおっしゃったように設置準備委員会を人間文化研究機構のもとに、外部の方も加わってできています。そのもとに、どのような構成、組織にするかという委員会と、具体的に人事をする委員会の2つを設置し、鋭意進めているところです。
 ただ、これから非常に難しくなるのは、現在39人の研究員がいらっしゃるけれども、今局長がおっしゃったように全員が新しい研究所に適合しているかどうかということが問題になるだろうと思います。もし適合しなければ、人事上不都合も生じるし、かといって妥協もできない点もあります。
 さらに国立国語研究所という名称で人間文化研究機構に入ることになるため、既存の5機関とどのように連携研究や共同研究ができるか、あるいは大学との新しい創生のもとに研究が活性化できるかということをこれから鋭意努力していこうと思っております。そして新しい人間文化研究機構として、トータルとして新しい研究をさらに推進していきたいという思いで現在進めているところであります。

【佐々木分科会長】

 三宅委員、どうぞ。

【三宅委員】

 何も知らないで聞くような形になりそうなのですが、草の根から見ていると、実は第2外国語としての日本語教育、日本語を話さない方たちへの日本語教育の研究と、それから国語教育という両方の学会が、自分たちがやっていることというのは基本的には同じことなのではないか。要するに言葉を通じてどう物事を理解し表現していくかという話なので、そこが一緒になってくる動きがかなり大きいと思います。
 そうなってきたことに、例えば国語に関する関連学会という資料が途中のページにあるけれども、それが2ページものになっていて、1ページ目のほうは日本語学会、計量国語学会云々というのがずっと並んでいて、裏を見ると情報処理学会、電子情報通信学会、人工知能学会、日本認知科学会という感じの、ある人から見れば違和感のありそうなものが実は非常に関係していて、こういうものが今出てきています。例えば最後の新しい機構のところには全く国語教育の話が出てこないのです。日本語研究所基本構想という中の基本方針、研究領域というところを見ると、教育であるとか知的活動支援という話は全く出てこないのだけれども、前のほうを見ると非常にそういうところに新たに国語に対する学術研究の推進というものの軸足が移っていくように見えます。
 何となくさっきからの話を伺っていると、かなりほんとうに違うものを新しく入れ込んで、だから今までの国立国語研究所を変えるんだという感じはわかるのだけれども、どこで融合がどういうふうに起きていくのかというのが非常に見えにくいように伺っていますが、こちらの方向で新しくいろいろシフトしていくと考えて、それを一緒に入れ込んでくれるということになるのでしょうか。

【佐々木分科会長】

 伊井委員。

【伊井委員】

 少なくとも閣議決定による限り、今まで文化庁のもとでの国立国語研究所の任務は、半分ぐらいしか継承できないだろうと思います。世界における日本語のあり方、地域言語の諸課題、言語理論的など、行政としての国語問題ではなく、研究としての国語、あるいは日本語を、研究者コミュニティとともに共同研究していくというスタンスが今後は強く出てくることだと思います。
 日本語については、この研究機関だけでではなく、自然科学も人文学も一緒になって考えなければいけない問題で、ここだけではとても対応できない。国語教育の問題、あるいは留学生増にともなう外国人の日本語教育などは文科省全体の問題になってくるのではないかと思います。それらはここでは一応オミットし、世界における日本語の位置づけについて、理論的、空間的、あるいは時間的なものとして研究をしていくというスタンスを今進めているところであります。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございます。
 いろいろご意見をいただきましたが、報告書そのものの具体的な点というよりも、組織の位置というものについていろいろご意見が出たと思っております。したがって私の印象では、第1点としては、やはりこれが従来の独立行政法人とは違う大学共同利用機関の一環をなすものにふさわしいさまざまな条件整備を、科学技術・学術審議会の学術分科会としては非常に大きな関心を持って見るということであって、国語政策そのものは我々がここでテーマとすべきテーマかどうかはいろいろ議論があるわけであって、これは文化庁なり何なりがきちっと、あるいは文部科学省全体として対応すべきテーマとして、皆さんからいろいろなご心配なりご意見をいただいたということだと思います。我々の分科会としては新しい組織を迎えること自体は結構でありますが、それについてはそれにふさわしいような条件整備をぜひ十分やっていただきたいという意見表明があったということを確認して、この報告書を承認したいと思うが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【佐々木分科会長】

 それではそういうことで、これを学術分科会の報告として公表させていただきたいと思います。いろいろ問題そのものが非常に錯綜していて、議論すると幾らでもこれは議論できるかと思いますが、我々の役目からしてそういうことでお願いしたいと思います。
 それでは次の「学術研究の推進体制に関する審議のまとめ−国公私立大学等を通じた共同利用・共同研究の推進−(報告)」について、ご報告とご議論をお願いしたいと思います。
 まず、これは私自身が部会長であるので、最初に私のほうから申し上げさせていただきます。
 研究環境基盤部会では、一昨年12月より国公私立大学を通じた学術研究機関における研究組織のあり方や、国による関与・支援のあり方、学術研究の推進体制の今後のあり方について検討を行ってまいりました。前回の学術分科会で報告したように本年3月に検討内容の報告書(案)を取りまとめ、4月1日から30日間パブリックコメントを実施した。これについては56通のご意見をいただいたところであります。これらの意見を踏まえて、研究環境基盤部会において最終的な審議を行い、報告書「学術研究の推進体制に関する審議のまとめ−国公私立大学等を通じた共同利用・共同研究の推進−(報告)」を5月27日付で取りまとめたところです。お手元の黄色い表紙の冊子がそれであるので、ごらんいただきたいと思います。
 本報告書の概要については25ページにポイントを1枚にまとめているので、そこをごらんいただければ全体をご認識いただけるかと思います。4つの軸を柱としているということ等、おわかりいただけるかと思います。
 今回の報告書では、近年の学術研究を取り巻く状況変化等を踏まえつつも、従来、ともすると国立大学を中心に展開されてきた学術研究組織に関する国の推進施策を国公私立大学を通じた観点から見直して、学術研究の意義やその政策的推進のあり方、学術研究組織の意義やその整備に関する大学と国の役割分担のあり方、国公私立大学を通じた共同利用・共同研究の推進のあり方、学術研究の大型プロジェクトの推進のあり方、学術研究等について基本的な考え方と今後の方向性を示したところであります。
 今後国において、本報告の内容に沿って具体的な措置を講じていただきたいと考えているわけであります。
 審議の過程で大学等から多くのパブリックコメントをいただきました。今回の部会の審議をきっかけに、大学や研究者コミュニティにおいてさまざまな議論がなされることも大変重要な活性化の一つの契機だと考えております。そのようなことを踏まえて、学術研究の一層の発展に向けて充実した取り組みが進められることを期待したいと思っております。
 報告書の内容もさることながら、その後の動き等について、事務局から追加説明をお願いします。森課長、どうぞ。

【森学術機関課長】

 ご説明申し上げます。この報告についてはこれまで学術分科会でも何度か審議の状況についてご報告をし、またご意見をいただいてきたところでありますが、今分科会長からご説明いただいたような概要でございます。
 そのエッセンスは、今佐々木先生からご説明いただいた25ページ目のまとめ、そしてその裏の26ページに「国公私立大学を通じた共同利用・共同研究の推進」という資料があります。これをごらんいただきたいと思いますが、今回この議論というのは、大学等における研究所、研究センター等の研究組織というものに対する国としての支援の仕方、関与の仕方について、改めて検討したわけであります。
 そういった中で基本的な考え方としては、こういった学術研究の組織については各大学において主体的に整備することが原則であるということで、特に国立大学法人においても法人化の趣旨にのっとれば、よりそういった方向が一つあると思います。そういった中で、大学の枠を超えた共同利用・共同研究の拠点となるようなものについては、国全体の学術研究の推進の観点から、国として重点的に整備を推進していこうということであります。
 共同利用・共同研究というのは、ここにあるように関連の研究者が大学の枠を超えて一つの研究の拠点という場を通じて、そこを共同研究の場として研究を進めていくものであります。その際に、その種類によっては大型の研究設備を共同で使っていく、あるいは研究資料、図書といったものを共同で使っていくといったことによって、効果的・効率的に研究を推進していくシステムであるということであります。国としても、この資源配分のあり方からすると、効率的に学術研究を推進するためには有効なシステムであるというような位置づけをしております。
 こういった共同利用・共同研究拠点というのはもともと大学の研究者の方々は自主的にいろいろな形で共同研究を進めているけれども、これは一つのシステムとしてでき上がってきたものということであります。
 そのシステムは真ん中の段の図にありますように、ここのある研究所において、関連の研究者が学外から皆そこに入ってまいります。ここに国公私立大学と書いてありますが、これは大学として入ってくるというよりは、全国の関連の研究者の方々が入ってくるものであります。
 例えば現在も、こういった共同利用・共同研究の位置づけになっている東大の宇宙線研究所というのがありますけれども、そういったところにおいても、専任の研究者は大体今は30名程度であっても、そこには10倍以上の研究者が共同の研究ということで外国人も含めて入ってくるというシステムであります。
 そういった研究所においては運営方法が開かれた運営体制ということをとっているということであって、具体的には運営委員会というものが組織されて、そこには例えば東大の宇宙線研であれば宇宙線研以外の学外の京都大学の先生とか、あるいは東北大の先生とかいった国公私立大学を通じた関連の研究者が入ってきて、そして運営を行っていくというようなシステムということであります。
 こういった共同利用・共同研究を推進していこうということで、今後の方向性として3.のところにありますように、一つは従来国立大学法人化の前の整備としては、国立大学の附置研究所、研究センター、あるいは大学共同利用機関において、そういった共同利用体制ということでとってきて整備をしてきたわけでありますけれども、今後においては国公私立大学を通じた制度というようなものを私立大学等にも拡大して、そういった拠点を置いていこうということであります。
 また、こういった研究組織のあり方においては複数の関連の研究所が連携するような形で、ネットワーク型の研究拠点、複数の研究所が一体とした運営として一つの研究所になるような形で運営といったものも推進していこうということであります。より柔軟な仕組みというものも提案していただこうということであります。
 そういったものについて制度的位置づけを明確化しようと。国立大学法人化の前においては国立学校設置法の体系のもとにおいて、一定の組織法の体系であったけれども根拠があったわけでありますが、今後においては国公私立大学を通じた仕組みとして制度的な位置づけを明確化し、そしてそれに対する国としての重点的な支援ということを図っていこうということが一つの方向であります。
 これが現在の報告書のエッセンスであって、それと関連して国立大学法人における附置研究所に対する国の関与の仕方というものをあわせて、基本的な考え方に沿った形で直していこうということであります。
 これについては次の28ページのところをごらんいただきたいと思いますが、学術研究組織の整備に関する大学と国の役割のところの4つ目の丸のところで、国立大学法人の附置研究所に関して、従来は国立大学法人の中期目標に必ず位置づけるという形で設置認可において国が関与してきたところでありますが、各大学の判断による機動的・弾力的な設置改廃を可能にする観点から、共同利用・共同研究拠点といったものについて国の関与を限定して、それ以外については大学において主体的にそれぞれのあり方を考えていただくというような方向は打ち出しているというところであります。
 この報告を受けて、その後の動きでありますが、一つは共同利用・共同研究拠点の制度的位置づけを明確化するということで、資料2−2をごらんいただきたいと思います。この黄色の束になっているものの後ろについているものでございます。
 こちらで「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案」及び「共同利用・共同研究拠点の認定等に関する規定」ということであって、先ほど申し上げた共同利用・共同研究拠点についての制度的な位置づけを明確化しようということであります。
 こういった大学に附置される研究施設の中で、全国の研究者が共同して利用する拠点といったものについて文部科学大臣の認定を受けることができるというような規定を置いて、それに基づいて認定のための具体的な要件、手続等を定めた告示案であります。
 省令案については3ページ目にあるように、学校教育法の第96条の規定において、大学においては研究所、その他の研究施設を置くことができるという規定がありますが、それを受ける形で、そういった大学に附置される研究施設のうち、研究施設の中において大学の教員その他の者で当該研究施設の目的たる研究と同一の分野の研究に従事する者に利用されるもの、共同研究を行うような研究施設を大学の中には当然置くことができる。その中で学術研究の発展に特に資するものについては、共同利用・共同研究拠点として文部科学大臣の認定を受けることができると規定としてあります。
 それを受けた認定のための規程ですが、4ページ、5ページ、6ページとありますが、内容については報告書の中身において、共同研究拠点たるにふさわしいものはどういったものかという認定の基準を書いてあります。特に第3条のところの認定の基準というところで、重要な点は第3条の2号にあるような研究施設というものがその研究分野において中核的な研究施設であるということが重要な事柄であります。
 そしてまた第4号にあるように、これが先ほどご説明申し上げた運営委員会ということですが、開かれた運営体制をとっているということ。その研究施設外の関連する研究者の方々が入って、そういった研究所における重要な事柄を決定していくというようなものが置かれております。そして第5号にあるように、こういった拠点においては研究課題を広く全国の研究者から募集して、それについての採択を行っていくことになります。そういった際にも、外部の方が入った委員会、そういう議論を踏まえて決定していくというようなことであります。そういったようなことが行われるような体制を整えていく、あるいはそういったものができる運用の実績を持っているというような研究施設の認定を考えているわけであります。
 この認定に関しては文部科学大臣の認定ということでありますが、認定に際しては資料2−3にあるように学術分科会研究環境基盤部会において、学術的な委員会審査の審査基準等にその研究所が合致しているかどうかについて専門的に審査いただくという必要があるので、共同利用・共同研究拠点に関する作業部会の設置を決定しております。
 あと、資料2−2の省令及び規程案については現在パブリックコメント中であって、7月23日までのパブリックコメントの期間がございます。7月末には、パブリックコメントを得た上での省令及び規程を策定したいと考えておりますが、それを受けて各大学から、研究所からの構想を受けて、拠点の認定ということをやってまいりたいと思っております。
 なお、それの関連で資料2−4をごらんいただきたいと思いますが、国立大学法人に関しては、現在の中期計画が平成21年度までであって、平成22年度から新たな中期計画になるということであります。そういった時期に向けて、各研究所、研究センターにおいては今後のあり方をいろいろ検討していただいているという状況があります。
 文部科学省としては、研究環境基盤部会の報告で一定の国としての研究センターに対する関与の仕方という方針を打ち出しましたので、これを受けた検討というのがあります。共同利用・共同研究拠点の認定というようなものを位置づけるかどうかということについて各研究所で検討がなされているので、それを受けた今後の手続というスケジュール(案)をお示ししたのが資料2−4であります。
 これに関して附置研究所あるいは現在共同利用の位置づけになっている研究センターについては、中期計画終了時の評価という中で、大学評価・学位授与機構による研究水準の評価という現況分析が行われております。そういった現況分析の結果というものも活用しつつ申請があったところについての審査を行っていきたいということがあって、そしてまた平成22年度からの新たな中期計画の大学における策定のスケジュールというものをにらんで来年の6月末には遅くともある程度の中期計画の素案ができなければならないだろうということで、ことしの12月ごろをめどに新たに平成22年度から全国共同利用化を図りたいという研究施設についての認定の申請の受け付けをしたいというスケジュール(案)であります。
 なお、この拠点の認定というものは、この省令ができれば随時できるという性格のものですので、決して平成22年度から全部国立大学関係は間に合う必要があるということではないわけであって、それ以後の検討というのもあります。
今回私立大学も含めた形での共同研究拠点への拡大という一つの方向を出しているけれども、人文・社会科学を中心とした研究分野においては、人文・社会科学における共同研究拠点の整備事業ということで新たな予算の3億5,000万円であるけれども事業を始めております。6月末に今回本年度の採択拠点を5つ事業として採択いたしましたけれども、そういった事業を採択されたところについては共同利用・共同研究拠点としての位置づけも検討されているので、それに対する対応を今後進めていきたいということであります。
 以上です。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございます。
 報告そのものもありますが、今後の制度化、審査、その他スケジュール的なことも含めて、あるいは規程の内容についても、何かご意見があれば伺いたいと思います。いかがでしょうか。
 どうぞ、伊賀委員。

【伊賀委員】

 資料2−2の3ページの省令に関するところで1つ質問と1つ意見を申し上げたいと思うが、質問は昭和22年の省令というので附置研究所を規定してあったというのだが、独法化の後というか、附置研究所の位置づけというのは省令から外されたと理解をしていたところであります。これによると、まだそのまま省令に附置研究所が残っていて、それで143条の2に共同利用というものを置くことができるというのを追加するというふうにも見えるのだが、そういう理解なのだろう。
 もう一つは、そこの2項にある学術研究の発展に特に資するものは、共同利用・共同研究として認定を受けることができるという記述があるのだが、これは附置研究所として共同利用・共同研究ではなくて、学術の発展に特に資する研究所がたくさんあるわけなので、この記述が妥当かどうかというのはちょっと疑問に思うところであります。
 以前に共同利用研ということを文部科学省のほうが打ち出されたときに、これはCOEであるということをおっしゃって、つまりすぐれたものと共同利用を同一視したような施策が打たれて、それがやはり附置研究所の中にある種の混乱を招いたというのも実感しているところであります。
 ということで、質問と意見を申し上げたいと思います。

【佐々木分科会長】

 局長、どうぞ。

【徳永研究振興局長】

 まず、これまで国立大学の附置研究所は、平成16年の法人化以前は国立学校設置法施行令に書いてあった。政令に書いてあって、これについて当然そのときに、例えば学部は法律事項、大学院の研究科は政令事項、附属学校あるいは各種の教育附属施設は全部省令事項でした。全部それは国立学校設置法の本法、あるいは施行令、施行規則という意味での政令、省令だったわけです。それらはすべて廃止されております。現在どういう扱いかというと、そのうちで特に学生の入学定員を位置づける教育組織については、国立大学法人の中期計画・中期目標の別表に記載されているということであります。
 それに対して今回学校教育法施行規則ですから、これは国立大学とか何とかではなくて、学校教育法には現在でも大学には附置研究所その他研究施設を置くことができるという規定があります。ただそれは残念ながら、学校教育法レベルでは学術研究に関する規定はこの1条しかないわけであります。例えばほかの教育組織に関しては、大学には学部を置くことを常例とするとか、大学には教授会を置かなければいけないとか、また52条から始まって全部で七十何条までたくさんある中で、附置研究所に関してはたった一つしかない。私が今申し上げた条数は昔の教育基本法改正前の条数で、今はちょっと違っているかもしれないが、そういう中で、今回学校教育法の大学には附置研究所その他附属研究施設を置くことができるという規定を受けた学校教育法の施行規則にこれを書くということであります。
 したがってそこに書いてあるのは、あくまでも全国共同研究・共同利用拠点についてのみ定義をしているわけで、1項と2項の違いというのは、どの大学も自分の持っている附置研究所その他の附属研究施設について、これを同一の分野の研究者に使わせる、要するに全国共同利用になることはできるという可能性を示したところであります。
 ただ、そういうものについて全国の方に使わせるというだけでは文部科学大臣が認定をするようなものではなくて、各大学が決めた全国同一の研究分野の研究者に使わせる、共同利用させるというもののうち特にエクセレンシーのあるものについて、文部科学大臣が共同研究・共同利用拠点として認定していくということであります。したがってそれはCOEとは全く何の関係もない学術システム、大学の学部とか、大学院とか、政令、研究科とか学科を置くというような組織法的な意味での認定であります。したがって一種の大学設置認可というようなものと、ほぼ同じような働きを持つものであります。

【伊賀委員】

 了解しました。

【佐々木分科会長】

 ほかにありますでしょうか。
 中西委員。

【中西委員】

 報告書はこれでいいと思いますが、これを踏まえて、先ほどの大学共同利用機構と附置研究所との関係について伺いたい。大学の附属機関では学生が大学から来るので、それらの学生をうまく教育できると思います。一方、大学共同利用機関を対象にできた総研大では、入学した学生が好きな研究機関を選んで大学院の教育を受けることができるとなっていると思うが、この大学の実情も考える必要があるのではないだろうか。通常の大学のデータはよく目にするが、総研大のデータがもしあるなら教えてほしい。例えば何人ぐらい教育されて、どんなふうに社会に巣立っていっているのかなど、今日でなくてもいいがお見せいただければと思います。

【森学術機関課長】

 今度資料を整えて、ご説明申し上げたいと思う。

【佐々木分科会長】

 家委員、それから鈴木委員。

【家委員】

 資料2−4に今後のスケジュールというのが示されているし、これはいろいろな大学の中の議論、それからコミュニティの議論ということを考えると、かなり当事者にとっては慌ただしいスケジュールという印象を持たざるを得ないところですが、黄色の冊子の77ページのところに今回の共同利用・共同研究拠点のイメージ例というのが3つほどあります。
 それぞれ質問したいところもあるけれども、特にネットワーク型の拠点というイメージで、これをそれぞれの大学の研究センターなり研究機関が拠点になりたいと申請する場合に、ネットワーク全体としての合意というか、コンセンサスがどのくらい求められるのでしょうか。これは大学の利害、それからコミュニティの意見集約ということを考えると、結構大変な作業になるのではないかという印象があります。
 それから認定に当たっては、コミュニティの支持というかコミュニティの要望が一つの条件になっていたかと思いますが、どういったことを想定されているのでしょうか。もし、お聞かせいただければ。

【佐々木分科会長】

 何かお答えできることはありますか。

【徳永研究振興局長】

 とりあえず細かいことは森課長のほうからお答えするが、現在でもこういうことを制度化しているわけではないが、ネットワーク型の一つのプロトタイプというか現在あるものとして、核融合科学研究所を中心とする核融合研究についての双方向共同研究というのがあります。これは資料の次のページ、ちょうど78ページにある。これは私がもともと関与していたので申しますと、この場合核融合科学研究所が大学共同利用機関でありますが、これに参加をしている筑波大学、大阪大学、九州大学、京都大学、それぞれの大学の中期目標・計画のほうに、初めからこれは大学共同利用機関核融合科学研究所を中心とする双方向共同研究に参加するものとして、全国共同利用の研究施設として中期目標に記載されているので、基本的にはネットワークの中心大学だけが何か書いているのではなくて、ネットワークに参加する大学のほうでもそういった一定レベルでの記載をするということになると、当該大学でもきちっと議論があって中期目標等に記載できるようなレベルでないとなかなか難しいのではないか。

【佐々木分科会長】

 森課長。

【森学術機関課長】

 ネットワーク型というのも、この資料に示したのは一つの例として審議会の議論でもお示ししたものではありますが、ネットワーク型の形成というのは、A、B、C、D、Eまで5つは結構多いほうかもしれないが、研究センターが5つまとまって1つの研究所のようになっております。全体が構成して1つの研究所のようなものになっているということであります。実際上A、B、C、D、E、5つを通じた形での運営のため委員会が組織されていたりして、そういったガバナンスの組織がつくられているというようなことであります。そういったものが共同利用・共同研究拠点ということになるということであれば、その5つの研究所、研究センターがまとまった形での、そして学外者を入れた形での委員会ができることになります。そういったものについての研究者コミュニティからの支持ということであります。
 研究者コミュニティということについては、これは審議会の中でも、部会の中でも、具体的に定義をする必要があるかどうかということはかなり議論になりましたが、これは分野によってそれぞれ違うのではないかと思われます。実際上学会といったものが研究者コミュニティとなっているというところもあるし、分野によっては日本学術会議における委員会がそういったものの役割を担っているというところもあります。あるいは関連研究者等がまとまって一つの要望があるというような形態もあろうかということで、それについてはそれぞれの分野によって違うのではないかということがあります。
 これまでも大学共同利用機関であるとか、あるいは附置研究所を共同利用化してくるという過程においては、関連の研究者の方々からの要望があって、それを踏まえて共同利用化をしてきたということがあるので、それについてはそれぞれの分野において適切な形での要望というものをお示しいただくということになるのか、そういったものの様式に乗った形での申請をしていただくということになろうかと思っております。
 ネットワーク型については複数の研究組織がまとまって1つの研究所のような形になっております。申請に当たっては、それを構成するすべての大学研究所から、まとまって申請をいただくという形になるのではないかと思っているところであります。

【佐々木分科会長】

 家委員、いかがでしょうか。

【家委員】

 わかりました。

【佐々木分科会長】

 では、鈴木委員。

【鈴木委員】

 言葉の定義について質問させてもらいたい。きょうの資料を見ると、すべて共同利用・共同研究拠点とある。これは中ポツがアンドなのかオアなのかによって相当中身は変わってくると思う。例えば資料2−2の4ページに拠点の認定の項目があるが、拠点の認定の第3条の5を見ると共同利用・共同研究の課題云々とあり課題を広く全国の関連研究者から募集し、委員会で決めるとある。しかし、ビッグサイエンスでは数百人規模の研究者が1つの研究に参加し、昔のような課題採択のようなことをやっていない。グループ全体で実験を行い、研究課題はグループ内で競争によって決められる。その意味では旧来の共同利用のタイプではないわけである。
 すなわち、中ポツがアンドかオアかによって意味が変わってくると思うけれども、どう考えておられるのでしょうか。

【佐々木分科会長】

 どうぞ。

【森学術機関課長】

 今回共同利用・共同研究拠点という用語を使っているのは、報告書の本文の中でもその推進と書いているけれども、いわゆる学術研究における共同利用については共同研究を行うということが本質にあるということで、議論はなされてきている。そういう意味から、共同利用という言葉だけだと何となくビッグサイエンス等における施設を共同で使い合うというようなイメージにとられるところがありますが、むしろ本質は共同研究を行う場所なのであるということから、共同利用・共同研究拠点という言葉で使っている。私どもとしては、共同利用または共同研究という意味合いではなしに、これは共同利用・共同研究を行う一つの場所であるという意味合いで、この用語を使っているものであります。

【佐々木分科会長】

 どうぞ。

【鈴木委員】

 結構だと思いますが、逆にほんとうの意味の共同利用をやっている例もあります。高価な高性能の電子顕微鏡を持っていて、広く共同利用に開放しています。そこでは数人規模ではあるが常に性能アップのために、全国の研究者のために尽力している研究所も中にある。そういうところはむしろ研究というよりも装置の開発で、全国の研究レベル向上に一生懸命頑張っています。そういうところにも支援が必要と思うがどう考えるのでしょうか。

【佐々木分科会長】

 どうでしょうか。

【徳永研究振興局長】

 例えばバイオリソースなんかについてもいろいろあるけれども、一方で一般的な大学に限らない科学技術全体の世界の中では先端大型施設共用法という法律があって、幅広く産業界や学術のほうにも提供していくというスキームがある。それはそれで今言ったような形で現在は装置に限られているけれども、今後バイオリソースみたいなものもそういうのを適用すべきではないかという考え方があって、いわばインフラを提供するというところについて特別な形で支援をしていこうというのは、国のほうとして一定の考え方を持っております。ただ、あくまでも今回やっているのは学術研究であるから、学術研究である以上、大学がサービスだけに徹しているというようなものが果たしてあるのか、それは果たして学術研究と言えるのか。大学で学術研究としてやっている以上は、そこは必ず研究がなければいけないという前提で私どもは考えております。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございます。
 ほかに、ご注意いただく点等。有川委員、どうぞ。

【有川委員】

 今のことに関してですが、学術情報基盤作業部会というところで議論しているところですが、情報基盤センター等、昔の大型計算機センターなどが、昔のイメージであると共同利用ということで研究ではないではないかというところがあったと思うのですが、議論の中で、そうではなくてやはり共同研究という面があるのだというようなことに大体なりつつあります。まだこれから議論をやっている最中なのだけれども、今鈴木先生がおっしゃったことは非常に気になっていたところだが、共同利用・共同研究というコンセプトで全体の話ができると思っています。

【佐々木分科会長】

 ありがとう。ほかにありますでしょうか。
 それでは、確かにスケジュールが実は大変皆さんご心配だし、我々も非常にそれは審議の過程でも大変タイトだなと思ってはいますが、しかしいろいろなスケジュールを考えるとこれはぎりぎりの線ではないかということで、事務局のほうともそういう話があって、何しろ国立大学というのは法人評価の問題が終わらないことにはなかなか前へ進めないということもあるものだから、こういうことで進めさせていただこうということで、本日出したところであります。ご協力方、よろしくお願いします。
 それでは次に、その他になるが、各部会の審議状況について、お話をいただきたい。必要があれば質疑応答を行いたい。
 まず、学術研究推進部会の審議状況について、お願いします。

【門岡学術企画室長】

 それでは資料3をごらんいただきたいと思います。まず、学術研究推進部会について、ご説明申し上げます。
 推進部会の中で、まず、人文学及び社会科学の振興に関する委員会ですが、平成19年4月に設置されて、人文・社会科学の意義・特性等を明らかにした上で、研究成果の社会還元のあり方とか、社会との関係を踏まえた人文学及び社会科学の振興方策について検討しています。
 昨年ご意見をまとめていただいた中から、今年度から事業を展開することになっているけれども、「近未来の課題解決を目指した実証的社会科学研究推進事業を始めたところです。現在は社会科学にとりあえず一つ区切りをつけて、人文学の振興を中心に審議を進めていて、我が国を代表する研究者の方々からヒアリング等を行っているところです。
 8月中には審議のまとめを行いたいと思っております。9月には学術分科会等にもご報告をさせていただきたいと思っている。ただ、なかなか人文学については苦労しているという状況があります。
 次に、脳科学委員会ですが、脳科学委員会は平成19年10月の文部科学大臣からの諮問を受けて、長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について精力的に審議を行っているところです。本年8月中には、これまでの審議経過を取りまとめ、今後本分科会及び総会等に報告させていただくとともに、第1次答申案の作成に向けてさらに議論を深めていく予定となっております。
 次に、国語に関する学術研究の推進に関する委員会については、先ほどご審議いただいたとおり本日の学術分科会及び学術研究推進部会の了承が得られたところであります。
 次に、アルマ計画評価作業部会であるが、アルマ計画評価作業部会においては日本が担当するアンテナの一部がチリの現地に設置され、初期機能確認試験を実施し、かつ前回の事前評価から3年以上が経過していることから中間評価を実施するため、平成20年4月に評価作業部会が設置された。これまで5月と6月の2回開催され、現在は報告書の骨子案をもとに意見交換を行っているところであります。今後中間評価、報告書の取りまとめに向けて、引き続き審議を行う予定です。
 以上です。

【佐々木分科会長】

 ありがとう。
 次に研究環境基盤部会をお願いします。

【森学術機関課長】

 研究環境基盤部会については、たった今ご説明申し上げたような学術研究の推進体制に関する審議の報告を取りまとめいただき、さらにそれを踏まえた形での共同利用・共同研究拠点に関する作業部会の設置をしたところであります。
 それとともに、学術情報基盤の今後の在り方について、学術情報基盤作業部会を設けて検討がなされており、情報基盤センターの今後の在り方、学術情報ネットワークの整備の在り方等について、現在審議をいただいているところであります。
 以上です。

【佐々木分科会長】

 次に、研究費部会、科学研究費補助金審査部会についてお願いします。

【磯谷学術助成課長】

 学術研究助成課から御説明申し上げる。資料3の2ページ目をお開きいただきたいと思います。両部会についてご報告申し上げます。
 まず、研究費部会である。研究費部会では、昨年8月に「科学研究費補助金において当面講ずべき施策の方向性について(審議のまとめ(その1))」を取りまとめていただいて、その後新しい審議事項について議論をいただいているところであります。審議に当たっては、国公私立大学の関係者あるいは有識者の方たちに来ていただいてヒアリングを行う、あるいは研究費部会のもとに生命科学系の3分野、がん、ゲノム、脳の研究についての今後の支援のあり方について検討いただくためのライフサイエンス作業部会を設けて検討いただくなどの方式をとっております。現在「審議のまとめ(その1)」以降の審議を踏まえて、本年8月ごろを目途に審議のまとめ(その2)を取りまとめるべく議論を進めていただいております。
 参考として、次のページに「参考1」とつけてあるが、ここに現在議論いただいている「審議のまとめ(その2)」の骨子があります。具体的には、科研費等の学術研究助成の充実の方向性、あるいは先ほど申し上げた、がん、ゲノム、脳など生命科学3分野を含めた研究分野の特性に応じた助成のあり方、研究費の不合理な重複・過度の集中を避けるための方策、あるいは国際性の観点からの高度化など科研費において制度改善すべき方策についてなど、ご審議をいただいているところであります。
 以上が研究費部会であって、恐縮であるが2ページ目に戻っていただいて、もう一つの科学研究費補助金審査部会の審議状況であるが、科研費の配分のための審査・評価のうち、文部科学省が担当している新学術領域研究などの研究種目についての審査・評価を行っていただいております。あるいは一部の研究種目について、平成20年度の審査結果の検証、あるいは追跡評価などを行っていただいているし、そのほか審査内容に係る各種改善事項について、ご審議が行われているというところであります。
 以上です。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございます。
 以上お三方からの報告について、何かご質問等ありますでしょうか。
 それでは、またいずれ本分科会でお話を伺う機会があろうかと思いますので、よろしくお願いします。
 そろそろ時間が迫ってまいりましたが、本日は大変貴重なご指摘、ご意見等を伺い、ありがとうございました。ご発言がないようであれば、本日の会議はこのあたりで終わらせていただきたいと思います。
 事務局からの連絡事項があるなら、お願いします。

【門岡学術企画室長】

 次回の学術分科会の予定について、資料4をごらんいただきたいと思う。
 次回の会議については9月5日金曜日を予定しております。正式な開催案内については、追ってご連絡いたします。
 なお、本日の資料については、机上に残していただければ郵送させていただきます。
 以上です。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございます。次回は9月ということで、終了いたします。

── 了 ──

お問合せ先

研究振興局 振興企画課