人文学・社会科学特別委員会(第20回)議事録

1.日時

令和5年12月22日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 人文学・社会科学における研究データ基盤の整備について③(人材育成)
  2. 共創による課題設定型・プロジェクト型共同研究の推進について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、白波瀬委員、仲委員、井野瀬委員、大橋委員、尾上委員、北本委員、木部委員、治部委員、安田委員、青島委員、後藤委員、田口委員、森田委員、山中委員
(科学官)
恒吉科学官、木津科学官、松田科学官

文部科学省

名子学術企画室長、髙田学術企画室長補佐

5.議事録

【城山主査】  それでは、定刻となりましたので、ただいまより第20回人文学・社会科学特別委員会を開催いたしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 初めに事務局から配付資料の確認及び注意事項をよろしくお願いします。
 
【髙田学術企画室長補佐】  事前に電子媒体でお送りさせていただいておりますが、議事次第に記載のとおり、資料1から資料4をお配りしております。なお、資料1は、前回の委員会における御意見をまとめたものとなります。適宜御参照いただければと思います。
 また、資料2でございますが、一部調査結果のスライド等になりますけれども、調査主体のロゴが抜けている部分がありましたので、こちら、現在、ホームページに載せている資料2につきましては、会議終了後になりますけれども、差し替えさせていただければと思いますので、御留意をお願いいたします。
 資料の不足等ございましたら、事務局までお願いいたします。
 それから、御発言の際は、「手を挙げる」というボタンをクリックしていただき、主査より指名を受けましたら、マイクをオンにしていただきまして、お名前から御発言をお願いできればと思います。終わりましたらミュートにしていただきますようにお願いいたします。不具合ございましたら、マニュアル記載の事務局連絡先まで御連絡をお願いいたします。
 なお、本日の会議でございますが、傍聴者を登録の上、公開といたしております。
 以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、議事のほうに移りたいと思います。
 本日は、7月に中心的に議論をしておりました研究データ基盤の整備並びに課題設定型・プロジェクト型共同研究の推進について、より一段政策的に進めるための議論をしていきたいと考えております。議題の(1)では、「人文学・社会科学における研究データ基盤の整備について3(人材育成)」とということで、ここではデータ基盤をどういうふうに支えていくのかという観点から文教大学の池内先生から御発表いただきたいと思っております。
 それから、議題の(2)「共創による課題設定型・プロジェクト型共同研究の推進について」では、本委員会の専門委員であります田口先生から、異分野融合共同研究の多様な意義や成果の広がりについて発表いただくという予定にしております。
 それでは、まず、議題の1に入りたいと思います。「人文学・社会科学における研究データ基盤の整備について3」ということで、資料の2に基づきまして、池内先生のほうから御発表いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【文教大学(池内)】  文教大学の池内と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 先ほど御案内ありましたように、本日の発表の中心となりますのが、文部科学省科学技術・学術政策研究所、通称NISTEPで実施しました調査結果に基づいておりますので、資料のほうにロゴ等を追加させていただきました。申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、早速発表を進めさせていただきます。本日は、まず、日本の研究者に要求されているデータ公開やデータ管理の状況についてお話しした後で、NISTEPでやりました調査結果から、日本の研究者がそれでは今どれぐらい管理や公開をしていて、どの部分に支援が必要なのかということについて述べさせていただきます。最後に、それでは、支援人材どういうふうに考えていくかということで、検討材料をお示ししたいと思います。よろしくお願いいたします。
 では、まず早速ですが、要求状況ということで、こちらは先生方よくお分かりかと思うのですけれども、公的資金による研究開発によって生み出されたデータについて、しっかりと管理をすること、それから、論文の根拠となったデータを公開することということが進められようとしています。
 政策としてはこの2点が挙げられておりますが、管理して公開するというところがゴールというか目的ではなくて、それによって公開されたデータが再利用されることということが究極の目標というか、一番大事なポイントになるかと思いますので、青字でちょっとつけさせていただきました。
 ということで、こちら、逆順になりますけれども、公開データの再利用から、公開、そして管理について順にお話しいたします。
 まずは、公開データの再利用と期待される効果ということで、本日も後ほどお話があるかと存じますが、研究者同士だけで共有していたデータをもっともっと広く公開していくと、異分野でも新しい研究が進んだりとか、さらには市民への活用というようなことが期待されています。
 FAIR原則というデータを公開するときの標語のようなものがありますけれども、それを発見可能にして、アクセス可能にして、相互運用を可能にして再利用できるようにするといったときに、じゃあ、誰が再利用できるようにするのかというところを一つ考えておくことが重要ではないかと思われます。研究者に使ってもらうのか、それとも市民まで含めるのか、日本の国内だけではなくて、日本語を話さない人にも使ってもらうのか、子供は、AIはということで、どこまでやるかというところで大分管理とか公開の手続なり、やる粒度が変わってくると存じます。
 一例として、人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業、こちらに研究員として昨年度まで関わっておりましたので、その例を御紹介させていただきます。こちらでは、日本の人文学・社会科学のデータを国外、国内両方の研究者に使ってもらうためにということで活動を進めております。
 前期になりますけれども、構築推進事業では5つのデータアーカイブのデータを横断的に日本語でも英語でも検索できるようにし、それを使うためのガイダンスの動画を作成し、研究者向けのデータ共有の手引を作成し、そしてデータの分析ができるツールを作成しました。これで国内と国外の研究者を対象としてデータを共有するときには、これくらいをやったという例としてお示しいたします。
 もう1点、また、ちょっと別の要因になりますけれども、データ公開をしたときの効果ではないですけれども、研究評価にもデータの公開の部分が入ってくる可能性ということで御紹介いたします。
 G7のオープンサイエンス作業部会というところで、研究評価について2年ほど議論がありましたけれども、今までの論文、査読付論文が何本出て、何回引用されたかという研究評価だけではなくて、データの公開とかをはじめとするオープンサイエンスの研究活動、どのように使われたかといったところまで含めて評価するという動きがございます。
 じゃあ、根拠データの公開ということで、「公的資金による学術論文等のオープンアクセスの実現に向けた基本的な考え方」の中では、査読付学術論文の根拠データについて、学術雑誌への掲載後は即時に機関リポジトリ等の情報基盤への掲載を義務づけるということが言われております。
 研究データ管理につきましては、もう少し幅広に、「公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方」の中で、研究開発の過程で生み出される全てのデータについて、データを特定した上でメタデータを付与するということが言われております。
 では、それに対して、今どれぐらい出てきていて、どの部分、支援が必要かということをお話ししていきたいと思います。人材育成についてどの部分に人材を投入したらよいのかということです。
 実際の状況ということで、NISTEPの調査結果を御紹介いたします。NISTEPのほうでは2016年から客員研究官としてデータ公開やデータ管理について、研究者を対象とした質問紙調査を行ってまいりました。2020年からは、機関リポジトリ推進連合、JPCOARの研究機関を対象とした調査に関しても関わることになりまして、その結果と併せて本日御紹介をさせていただきます。
 こちらが調査の一覧です。調査方法といたしましては、科学技術専門家ネットワークといって、産学官の研究者とかマネジャーの方を対象とした質問紙調査です。約1,200の回答を分析したものを御紹介いたします。
 質問項目いろいろございますが、今回、議論になるところのみ御紹介させていただきます。回答者につきまして、人社の回答者は7.1%含まれておりまして、所属としましては、大学の方が約90%となっております。
 まず全体像ですけれども、日本の研究者によるオープンサイエンスの実践状況ということで、論文のオープンアクセスとかプレプリントに比べますと、研究データ公開は、2016年から22年にかけて公開経験を持つ方はあまり増えていない状況です。
 それに関連しまして、データの入手、再利用についてもそれほど増えておりませんが、データマネジメントプランにつきましては、JSTですとかAMED、NEDOの要求もあり、若干増えてきているところです。
 さて、分野別に見ていきますと、人社のデータ入手やデータ公開経験、ちょうど全体平均ぐらいということで、公開のほうは51.8%、入手経験をお持ちの方は70.6%となっております。割と入手はされているのですけれども、入手経験を持つ方の62.9%が何らかの問題があると回答されています。
 具体的には、データごとにフォーマットが異なるとか、利用条件がよく分からない、著作者情報がよく分からないといったような回答がありまして、要は公開するだけではなくて、こういったことがきちんと整備された公開をするということが重要ではないかと考えられます。つまり、再利用を推進するためには、適切なキュレーションを行った上で公開する。そうしないと、せっかく公開しても、研究者による再利用が進まないと考えられます。
 続きまして、データ公開の方法です。政策的には機関リポジトリへの登録と書かれておりますけれども、2016年当初は個人のウェブサイトなどによる公開が多かったのですが、それが相対的には下がってきていて、機関リポジトリの活用が相対的には進んでいる状況です。
 そのために、必要な資源の充足度について、これは2016年度から、人材、時間、資金に関しては不足感が強いまま今に至る感じではありますけれども、ストレージやリポジトリに関してはやや改善の兆しが見られております。
 人社に関しましては、実態の充足感については、全体とあまり変わらず、やはり不足しているという認識が強いのですけれども、公開用のリポジトリにつきましては、やや全体と比べると充足感が強くなっています。
 実際に公開のほうを見てみますと、人社の研究者は割と機関リポジトリで公開しているということで、61.4%、上から2番目となっております。
 データを公開していない理由なんですけれども、こちら見ていきますと、助成機関のポリシーではないからということを特に人社の研究者の方は、32.1%の方がそのように回答されています。これは当然のことで、AMEDとかNEDOということで人社とは少し外れた分野での要求ですので、今後、例えば科研費で全領域において、DMP、データマネジメントプランが要求されるようですと、またここのところが変わっていくかと考えられます。
 もう一つ、公開できない情報が含まれているというのが人社の研究者の方の回答で非常に多くなっているところでもあります。
 根拠データの公開につきましては、助成機関、データマネジメントプランを要求されることによってさらに進む可能性が高いと考えられます。
 ただし、公開できない情報が含まれているという点についてはちょっと留意が必要かと存じます。
 続きまして、今度は管理とかデータマネジメントプランの話になります。国際調査と比較しますと、日本の研究者、助成機関の要求ということを公開理由に挙げる人が少なめです。これがこれからデータマネジメントプランの要求が強くなることによってだんだん上がっていくかと存じます。
 データマネジメントプランの作成経験、人社につきましては、27.1%ということで、少なめ、比較的少なくなっています。
 作成経験があるDMPですけれども、人社に限定しますと、所属機関ですとか、日本学術振興会、科学技術振興機構というところが比較的その中では比率としては高くなっています。
 ただ、DMP、もちろん要求されて、書いて、そしてデータ公開が進むという面はございますが、自由記述などを見ますと、やはり作成に非常にコスト、時間を取られるということは研究者の側の声として出ておりまして、これは人社でも共通のことと考えられます。
 メタデータの共通項目ということで内閣府のほうで挙げている16項目があります。これについて記述が難しい項目について質問をしたところ、一番難しいと言われているのが、管理対象データの利活用とか提供方針を具体的にどう書けばいいかというところが1番、2番目は、特に難しくないという回答も割と多くなっております。
 人社に目を向けますと、利活用・提供方針については、下から2番目、31.4%ということで、31.4%の方は難しいと考えているとも言えますけれども、相対的には割と利活用・提供方針を書ける方が多いのかなと考えられます。
 また、難しい項目はないという意見も人社が一番強く、多く出ておりまして、比較的メタデータを書くという点に関しては、割と人社の研究者の方は書けそうという感触があります。
 ただし、自由記述、こちらもなんですけれども、当然メタデータを書くとなると、時間がかかる、経験がないから、特に初めはノウハウがなくて難しい、自動生成できないかというような意見がございました。
 それでは、研究データ管理を第三者に依頼する意思がありますかということで聞いておるのですけれども、2020年に比べて少し増えて、48.2%の方が誰かにお願いしてもよいと考えていらっしゃるようです。
 依頼意思につきましては、人社については上から2番目ということで、61.1%の方はお任せしてもよいと考えられているようです。
 具体的に何を頼みたいかということなのですが、これが結構難しくて、適切なデータ形式への変換ですとか、データを再利用しやすいように整えるということで、割と専門性の高い項目について依頼したいと考えられているということで、やはりこの部分は専門性の高い人材が必要だと考えられます。
 人社で特徴的なところといたしましては、先ほどの話ともつながるかと存じますが、メタデータの作成ですとか、メタデータ標準を選ぶところに関しては依頼してもよいと考える研究者の方が多いようです。
 じゃあ、実際、どのようなサービスが必要かということで、データのリテラシー支援というのは、機関としてはすごく重要だと考えられているようですが、実践状況としてはあまり行われていないようです。
 一方で、研究者としては、91.3%の方が研究データ管理に関していろいろ知りたいということがあるようです。ここのところにすごくギャップがありまして、たくさんのことを知りたいと思われている。特に人社の研究者の方は、機密情報の処理をどうしたらいいかというところに関心が高いことが分かりました。
 実践状況なのですけれども、機関別に見ますと、大学共同利用機関とか研発(国立研究開発法人)に関してはよく実施がされていますけれども、大学においては2022年時点ではあまり行われておりません。
 ただ一方で、オンライン教材のほうがいろいろと出始めておりますので、こちらをうまく活用してリテラシー支援については進めていくということもできるかと考えております。九州大学ですとか、人社データインフラでも手引のようなものをつくっております。
 管理の現状としましては、まだデータマネジメントプランをつくったことがないという研究者の方が人社においては多い中で、支援へのニーズは高く、しかも割と行いやすい分野であると考えております。
 最後に、では、支援人材ということになります。研究プロセスと研究データ管理サービス、どのような支援が考えられるかということで、サービスを整理したものがこちらの右側になります。
 インフラにつきましては、比較的充足度が高く、機関リポジトリでの公開も進んでおり、そして国立情報学研究所のリサーチデータクラウドのほうの開発も進んでおりますので、そちらでかなりカバーができるかと存じます。
 研究やガイダンスも必要ではありますけれども、オンライン教材が充実してくることで、割と省力化して行うことができるかと思います。
 一方で、データを再利用できる形で整えて、情報をきちんと併せてデータを公開する。ここのところはやはり支援人材が必要ではないかと考えられます。
 国外では既にデータキュレーションということで、かなり手続、プロセスが定型化されておりまして、このようにライフサイクルということで示されているものがあります。こちら、ただ、海外におきましても、データキュレーターが何もかもやってくれるというよりは、研究者ですとか情報支援部門と協力しながらキュレーションの部分を進めています。
 じゃあ、日本ではどうするかということなのですけれども、ライフサイクルに合わせた分担案を、すみません、これは池内が考えたものなのですけれども、図書館や情報技術専門家、そして研究者の方と分担しながらやっていくということが可能かと思われますが、分野の専門家の力というのが非常にいろいろなところで必要となり、しかもここの部分は、今のところ、なかなか専門家という職業としても確立されていないですし、どういう人にお願いすればいいかというところが議論のポイントになるのかなと考えます。
 JPCOAの調査では、ステークホルダーとして名前が研究推進とか協力系の部門が挙がっています。URAの方々が専門性をお持ちという意味では一番近いかと思われますけれども、研究データ管理の仕事というのはまた完全に新しい仕事ということになりますので、どうするのかということは慎重な議論が必要かと考えられます。
 ということで、私からは以上です。どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 このテーマについて、後ほど議論させていただきたいと思いますけれども、議論に先立ちまして、尾上委員が大阪大学において研究データ管理体制の構築と推進に携わってこられたということでありますので、まず尾上先生からコメントをいただければと思います。よろしくお願いします。
 
【尾上委員】  ありがとうございます。尾上でございます。
 本学、国立情報学研究所が実施しています研究データエコシステムの構築の事業において人材育成チームを担当しておりまして、人材育成を主として、研究データ管理体制の構築を各機関でどのように行っていけばよいか、そういうことについて議論しております。
 人材育成のためのカリキュラムの作成やオンライン学習コースの整備、その内容での習熟度などの見える化、そういうことを進めています。現在、基礎編のコースは公開をしております。
 この事業で、理工系や医歯薬系だけじゃなくて、人社系の研究員の方も加わっていただいて、人社系フィールドでの研究データ管理の特徴というのを基礎編の教材にフィードバックして充実化していこうというのを今やっているところでございます。
 人社系の場合だと、フィールドノートなどの研究データ、特に著名な研究者の方が残したものなどを、これまでは図書館や博物館、そういうところが専門的に保存・公開することで、後継の研究者がそれにアクセスして研究が発展してきたという側面がございます。これからはそれらを研究者個人の判断で行っていくことになるために、様々な観点で気をつける必要があると思っております。
 例えばインタビュー結果などの研究データなんていうのは、これは当然個人情報が含まれているんですけども、その他のフィールドノートなどについても、客観的事実だけじゃなくて、例えば現地調査するときのコンタクト先なんていう、非常にプリミティブな個人情報もそのまま含まれていることが多くて、今日のお話とか、あるいはJSPSの手引などにもございますように、研究実施前に行う研究倫理審査で、公開ということ、そういう観点を含めて、このプロセスを経ていく、そういうことが追加的に必要になってくるということになります。
 研究倫理審査等については、各機関で当然体制が出来上がっていると考えているんですけども、それらとのリンクとか、研究データの管理人材というところでの相互理解、そういうところが必要になってくるかなあと思っております。
 NIIの事業では、名古屋大学がルール、ガイドライン整備を担当されておりますので、協力して進めていって、我々はケースごとの注意点、そういうところを多く集積して、それで教材が整備できればなあと思っています。
 また、オープンサイエンスという観点では、これまでと同様に、同一の研究分野の後続研究者がより容易に先人の研究成果を利活用できていくということはもちろんですけども、やはり異分野での利活用、思いがけない参照で新たな知や価値が創出されることへの期待感はあると思っています。
 これは池内先生のプレゼンでも述べられていたデータキュレーションというところでも、より広く拡大したスキルというのが恐らく必要になってくるかなあと思っておりまして、本委員会でも議論されてきた異分野融合のための研究企画支援URA、そういうものなどの考え方をうまく吸い出して、分野を広く俯瞰できるような次世代のデータキュレーター、そういうものを生み出せるような人材育成体制や教材整備、こういうのにはどういうものが必要かということを考えていかなければいけないなと思っております。
 私からは以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの池内先生の御説明、尾上先生からの御発言を基に意見交換をさせていただければと思います。質問、御意見、御自由に御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。
 では、森田先生、よろしくお願いします。
 
【森田委員】  それでは、2点、御質問したいのですけれども、まず1つ目は、先ほど公開できない情報があるというお話がありました。そこで1つは、先ほど尾上先生がおっしゃられたように、個人情報やプライバシーが入っているというのもあると思うのですが、例えばほかにも、1つのデータをベースにして、そこから2つも3つもリサーチが続いていきますよ、なので、今はまだ1個目のリサーチだからまだ公開できません、といった事例も考えられます。さらに、先ほどのフィールドノートとかの例ですと、技術的に公開することはできるのだけど、そうするためには、全部個人情報を消さなければいけないからすごい手数がかかって大変ですよね、だから実質的に難しいといった事例も考えられます。このように、できないということにもいろいろな理由があると思うのですが、アンケートを行うに際して、この点についてほかに動機について調べられたことがあったのかというのがありましたらぜひ教えていただきたいというのが1点です。
 それからもう一つは、メタデータを作成したりとか、データマネジメントをしたりするというときに、例えば、それこそAIを活用するということはできないのでしょうか。今、例えばレフェリーリポートだって、AIが結構いいものを書いてくれるぐらいですし、AIはデータの処理が結構得意ですので、このデータについてメタデータをつくってくださいとChatGPTなどで依頼すると、すぐに適当なものを作ってくれそうな気がするのですが、なかなか人を育てるのも大変なので、AIを活用してそういったところをやっていくという、試みはあるのでしょうかというのがもう一つの質問です。
 以上です。
 
【城山主査】  どうしましょうか。では、最初、池内先生、よろしいでしょうか。
 
【文教大学(池内)】  まず1点目の質問につきまして、公開できない情報というのは本当にいろんなものがありますけれども、人の情報で申し上げますと、まずは例えば共同研究者からの許諾が取れないとか、企業と一緒に研究していて、そちらの関係で難しいということがあったりいたします。
 機密情報、機微の情報、先ほど御紹介がありましたように、個人情報が含まれているとかセンシティブ情報が含まれているというようなことがあります。この話も結構難しくて、どんどんビッグデータになっていきますと、かつては個人が特定できなかった情報が、いろいろな調査情報をつなぎ合わせていくと、個人が後々特定されてしまうようなこともあると聞いております。社会調査データなんかでも、かつては例えば都道府県情報までは含められたけれども、今はそれをやってしまうと、例えば個人が特定されてしまいかねないので、だんだん逆にオープンにできる情報が少なくなってしまうというようなことも起きていると聞いております。
 機微情報は本当にいろいろで、分野にもよりますけれども、例えば特許に関わるとか、そういった事情で公開が難しいというようなことが様々あるというふうにアンケートの自由回答なんかでは出ております。
 もう1点、AIの活用ということなのですけれども、私もそれはすごく期待しているところで、メタデータをAIでつくるというようなことを、進むんじゃないかということは聞いておりますし、恐らく研究レベルでは始めていると存じますけれども、実用に下りてくるまでにはちょっとまだ時間がかかるのではないかなと考えられます。この点は実は北本先生のほうがよく御存じではないかと思うんですけれども。
 基となる論文とかが紐づいていれば、その論文の情報の中から例えばデータに関する記述を拾ってきてうまく整理するということは可能ではないかなと期待はしているんですけれども、今すぐにという意味ではちょっと難しいのかなと思います。この動向はもしどなたか御存じでしたら、補足いただけますと助かります。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 尾上先生、何かございますでしょうか。
 
【尾上委員】  特にないんですけど、先ほど最後のお話なんですけど、もちろんAIで例えばアノテーションであるとかメタデータ生成というのはできるんですけども、ただ、やっぱりオープンサイエンスとかデータ公開というときに、質のレベルの議論というのが、出たものの質のレベルの議論というのはまだまだこれからなのかなあと思っております。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 北本先生、お願いします。
 
【北本委員】  北本です。報告ありがとうございます。先ほど名前が出ましたので、補足したいと思います。まさにAIというか、LLMでメタデータ生成という点について、リポジトリ側の業務としてどのように使えそうかを検討する勉強会を立ち上げようとしています。来年1月にそういった関係者が集まって議論する場をつくろうと思っています。
 その際に、生成できるメタデータとできないメタデータがあります。例えば、データ連携、DOIなどが典型的ですが、データ連携によってメタデータを自動で埋めていく仕組みのほうが有効な場合もあり、データ連携で進める方がよい部分と、AIで進める方がよい部分を仕分けしていこうかなと思っています。
 それから質問です。データリテラシーという言葉が出てきましたが、かなり広い意味に取れると感じます。データリテラシーというときに、どのようなスキルというか、どのような対象を具体的に考えているかということをお聞きしたいです。
 
【文教大学(池内)】  ありがとうございます。画面の共有をさせていただいてもよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。すみません、データリテラシー、特に定義をしなかったのですけれども、こちらで研究データ管理に関して知りたい項目というふうに具体的に挙げたものがここでいうデータリテラシーになります。適切なデータ形式とか、知的財産権やライセンス、データの安全な管理方法など、ここに挙げているものをデータリテラシーとまとめさせていただいております。
 
【北本委員】  この言葉は、どのようなものを指すという定義はあるのでしょうか。
 
【文教大学(池内)】  データリテラシーの定義という意味では、やはり使っている人によっていろいろと異なるところがあります。
 こちらでNISTEPの調査で使ったものは、一応出典に基づいてやってはいるんですけれども、今回JPCOARと一緒に調査を設計するのに当たって、お互いに挙げていた項目をマッシュアップしてというか、一緒にしてやったために、少し出典が違うものも混ざっております。
 
【北本委員】  データリテラシーという言葉でまとめて全体的に重要性を訴えるという点では、非常に使いやすい言葉だと思いました。ありがとうございました。
 
【文教大学(池内)】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 続いて、後藤先生、お願いします。
 
【後藤委員】  後藤でございます。大変分かりやすいお話を大変にありがとうございました。やはり先ほどの池内先生のお話を聞いていると、データのフォーマットの標準化みたいなところは極めて重要なのかなということを改めて感じました。
 標準化という観点から共通性みたいなところを今後どのように考え、特に海外の研究者から見つけてもらうという観点が重要なのかなというのも改めて感じた次第です。
 コメント的な話になってしまいますが、人文学の研究データのデータ管理をするといったときに、研究成果であるいわゆる論文みたいな成果のリポジトリと、例えば私だと日本史学なので、古文書とか資料が根拠資料になってしまうんですね。ただ、恐らく、RDMとかの議論をするときというのは、成果と資料の間、例えば資料から情報を取ってきたときのノートであるとか、ノートというとちょっとプリミティブですけれども、メモであるとか、そのようなものを今後どのように管理していくかというのが結構難しい課題になるのかなと思っております。人文系のところで根拠資料といったときに、古文書なんかを残すというのは当たり前なのでよくやっていると思うんですけど、中間的な部分、私はこれをプロセスデータと呼んだりしますけど、こういうプロセスデータをどういうふうに今後残していくのかなというところは結構重要な課題になるかなと思っております。
 あと、もう一つ。先ほどのデータリテラシーという文脈に関して少し申し上げますと、最近、歴史資料の中でも信頼できるデータというのに何種類かあるんじゃないかと考えております。
 1つは、明らかにその文書の内容自体が存在しなかったり誤りである、いわゆる、偽文書みたいなやつですね、存在しないようなものというのが一つ考えられるだろうと。
 ただ、もう一つは、実際に資料としては存在し文字列自体は正しいのだけど、それを公開すると著しく誤解を招くような内容が含まれているというようなものもあり得るんじゃないかと思っております。
 例えば、ある一方的な情報だけが書かれている資料というのは当然人が書く以上は存在するので、そのような資料を公開して、片方だけが公開されてしまうことによって、著しくそこから誤解を招くようなデータというのもどこかから出てくるんじゃないかと思っております。
 なので、実はこういうデータを公開するときというのは、そもそもそれが真か偽かというレベルのものと、あと、それから、それは真なんだけど、そこから著しく誤解を招くという部分があるんじゃないかと。実はこういうデータの信頼のレベルというのをもう少し今後整理していく必要が、特にやはり人文・社会科学の資料に関しては今後必要なのではないかなと思っております。今後、そのような議論というか、いろいろ考えられるといいのかなと個人的には思っております。もし何かそのような議論とかありましたら教えていただけると幸いです。以上でございます。すいません、長くなりました。
 
【城山主査】  コメントということですが、池内先生のほうでリスポンスあれば、ぜひお願いします。
 
【文教大学(池内)】  ありがとうございます。研究データ利活用協議会というところで今まさにその議論をしておりまして、研究データを公開して使うときに、クオリティーがやっぱり問題になる。じゃあ、どうすればそれを保証できるのか、どこまで保証すれば、何を書けばいいのかというガイドラインをつくることを目指して議論を重ねておりますが、正直申しまして、1年、2年以上議論しているんですけれども、まだまだ煮詰まっていないところです。
 実はそこの議論ではなかなか真偽性の話というのはまだ十分にできておらず、それをどう保証するかというところは、今、私としては新たな視点をいただけたように思いますので、改めてその視点も踏まえて、データの品質表示をどうするかという議論にも含めてまいりたいと思います。
 コメントありがとうございました。
 
【後藤委員】  どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 それでは、仲先生、お願いします。
 
【仲委員】  どうもありがとうございました。大変クリアな御説明ありがとうございます。
 こういうデータ管理が人文・社会系の研究の再現性を確実にするためには必要なのだな、と思いながら伺いました。
 2つ御質問なんですけど、1つ目は、人文・社会科学と心理学が分けて書かれていたので、何か心理学の特殊性があるのでしょうか、というのが1つです。
 それからもう一つは、先ほど古文書のお話も出てきたんですけれども、例えば、何でもいいんですが、仮に、親と子供の遊びの様子を録音・録画して、例えば言語分析をするとか、あるいはアイコンタクトを調べるとか、1つのデータから幾つも論文を書いていこうというような元のデータがあったりする。このデータまでがこういう公開の対象になるのか、あるいはそれをコード化して、あった、なかったとか、1/0とか、何回アイコンタクトがあったとか、そういう記号化したものが対象になるのか。もしも元のデータだとすると、それを基に幾つも論文を書こうと思っているようなときに差し障りがあったりするのかなと思いながら伺っていました。もしも何か見通しがありましたら教えてください。お願いいたします。
 
【文教大学(池内)】  ありがとうございます。ちょっとこちらの調査設計上、心理学が別になってしまっていて恐縮です。心理学につきまして、今回特出しでは出していないのですけれども、研究データ公開が割とここ最近進んでいる分野になっております。やはりデータの研究の再現性の問題が心理学分野では大きく問題として取り上げられたことが背景にはあるのかなと推測をしております。
 データをどこまで公開するのか、それをまださらにいろんな研究をしたいのに公開しなければいけないのかというところについては、やはりそれは研究者、一番初めにデータをとった研究者の方の権利としてきちんと残してもいいという形になるように議論をしておく必要があるかなと思います。
 実は日本の研究者でも海外の研究者でも全く同じなんですけれども、データを出してしまうことで、自分がプライオリティーを失ってしまうこととか、また、そのデータを別の人が使ったときにきちんと引用してもらえないということが一番のデータ公開を妨げる強い要因になっているんです。
 なので、ここのところは、政策的な議論の中できちんと、まだ使う可能性があるデータについては、差し障りのない範囲で公開する、エンバーゴを設けるというようなところをしっかり盛り込んでおくということが重要かなと個人的には考えております。
 コメントありがとうございます。
 
【仲委員】  詳細まで、どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  続きまして、木部先生、お願いします。
 
【木部委員】  どうもありがとうございました。1つお伺いしたいのは、過去のデータのデータベース化と公開についての議論が行われているのかということです。私どもの分野、言語や文化の分野では、過去に撮影された画像だとか、録音だとか、そういうものがたくさんあります。それらは、今、各地の社会が急速に変化している中で失われつつある、そういう文化のデータですが、非常に重要なんですね。そういうのが結構あるんですけれども、今、ちょうど研究者も世代交替の時期で、そういうものを持っていらっしゃる方が退職して、データの行きどころがないということをよく聞くんですね。
 これを私どもは何とかしたいと思っています。昔の調査ですから、個人情報とか、著作権とか、そういう処理がされていませんので、それらを公開することは難しいかもしれませんけども、そういう過去のデータ、貴重なデータについて何か議論されているようなことがあったら教えていただきたいんですけども。
 
【文教大学(池内)】  具体的な議論という意味では、すみません、私のほうではちょっと存じ上げないんですけれども、本当におっしゃるとおり、過去のデータで失われてしまうデータ、退職されるときにどうするかというのは問題にはなっているけれども、その解決策を、さて、どうしようというところに関しては、非常に難しいかと思います。
 そのところは本当に、これから日本の貴重なデータをどうするかというところを考えなければいけないことと、あとは、今後のためにということになるんですけれども、今、まさに作られているデータも、過去のものになっていったときに、個別に例えばデータとかデータベースの形でつくられているものというのは、なかなか、例えば助成が終わってしまうと、公開が止まってしまうとか、どこに行ったか分からなくなってしまうというふうになってしまうので、今後の生み出されるデータというのが、きちんとリポジトリに登録されていて、長期にわたって保存されるという仕組みをまずはつくるというのが大事かと存じます。
 過去のデータに関して、それを整備して分かるようにして長期にわたって保存するためのマンパワーや費用をどうするかというところ、難しく思います。例えば国立国会図書館とか、そういったところももしかしたらプレーヤーになるのかなというふうにちょっと私は実は期待しているところはございますが、すみません、具体的な議論ではないので、もし御存じの方がいらっしゃったらと思います。
 
【木部委員】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  よろしいですかね。
 それでは、山中先生、お願いします。
 
【山中委員】  ありがとうございました。最初のお話で、公開範囲について、研究者だけなのか、一般の方までいくのか、さらに子供まで広げるのか、そういうお話が少しあったと思うのですが、そこのところをもう少し詳しくお話しいただけたらと思います。
 やっぱりどんどん広がるほうが良い公開というふうに評価されるのかということがちょっと気になりました。多分そんなに直線的ではないんでしょうけれど。というのは、個人的なことになりますが、私の専門分野は古典芸能でして、そうすると、今、研究者だけしか読めないような、さっき後藤先生がおっしゃったような原資料の古文書を、そのままの形で公開している分には読める人が少ないので大丈夫なんですが、みんなが読める形で公開すると、家元権を侵す可能性があります。秘伝の書かれている伝書をどんどん公開して、それを一般の市民の人が読んで勉強する分にはいいのかもしれませんが、家元が支配しているはずの役者の人たちがみんな誰でも秘伝が演じられるようになってしまうのは、たぶん問題になると思います。今はぎりぎり読めないところで公開しているので、あるいは論文にしたときにちょっとだけ一部を載せるので許してもらっているところが、もし論文を書くためのデータを全部公開しなくちゃいけなくなると、そもそも許してもらえなくなったりするかもしれません。ちょっとその辺のところ、ケース・バイ・ケースでいいのか、やっぱり可能な限り広くというふうにお考えなのか、お聞かせいただければと思います。
 
【文教大学(池内)】  ありがとうございます。そこのところも、まさに先ほど申し上げた機微情報なんかにも通ずるところがあると感じました。読み取るほうの技術というのがびっくりするぐらい早く進んでおり、今、アプリを使えばくずし字も読めるとか、技術面での進展がすごく速いので、今までだったら読めないはずだったものが明日には読めてしまうかもしれないという状況の中で、公開に慎重になるというのは、これはある種致し方ないというところかと思います。
 やはりそういうところも踏まえて、乱暴に何でもかんでも公開するのがよしということではなくて、そういった事情がやはり分野なりその領域なり資料によってあるということをちゃんと踏まえた上でというのでしょうか、公開の議論は進められるべきかなというふうに改めて今のお話を伺って感じたところです。
 
【山中委員】  ありがとうございました。
 
【文教大学(池内)】  ありがとうございます。
 続いて、青島先生、お願いします。
 
【青島委員】  私も同じような質問なんですけども、要は、どのくらい公開を、研究者の自由度があるかということでして、例えば研究費を取るときに使ったデータを公開しなきゃいけないとなると、例えば私たちで定性データでいろんな企業に話を聞きに行くわけですけど、そのときにこの情報は公開されるかもしれないといって調査を始めると随分制約が出ちゃうんですよね。なので、後々で、ここの範囲は公開になるかもしれないということを相手に確認した上での公開であればいいんですけど、何らか持っていたデータをその後に公開しなければいけないというような前提で例えば研究費を取ってくるとかになると、かなりやりづらいなと思いまして、この辺りについては、結局は最終的には機密に関する範囲とかはかなり研究者の自由度に任されるということで理解はよろしいでしょうか。
 
【文教大学(池内)】  私はお答えする立場にないといいましょうか、内閣府の者とかでは全然ないので、そうですよという立場ではないのですけれども、そこのところは、こういった場で議論を進めていただいて、その議論も、例えば、今であればこの範囲でできるけれども、将来的には変わり得るというところも含めて、こういった特別委員会とかで議論されて、それをフィードバックされるというのが重要なのではないかなというふうに、コメントになりますが、感じた次第です。
 すみません、私からはそのようなコメントとさせてください。
 
【青島委員】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  よろしいでしょうか。
 そうしましたら、後藤委員も手を挙げられているんですが、白波瀬先生が1回目なので、最初白波瀬先生にお伺いして、その後、後藤先生にお伺いできればと思いますので、では、白波瀬先生、お願いします。
 
【白波瀬委員】  よろしくお願いします。大変貴重なお話ありがとうございました。データについては、分野の違いを考慮するのは本当に難しいなといつも思います。そこで、やっぱり何をコアにしてデータ公開かというのは基本的なポイントとなります。私なんかは社会科学ということなので、データ処理という点で理系にちょっと近いところがありまして、全ての人たちが該当データに戻って確認できることを保証し、データそのものの質を管理していくというような流れがあります。それはある意味では体系的に明確に位置づけ整備しやすいところもあります。別の先生からもあったように、内容的にかなり人事に関わるようなデータとか、内容的に秘匿情報が多く含まれるデータもあり、歴史の先生からちょっとお話がありましたけれども、分野によって、貴重なデータを発見し、そのことで史実を明らかにしていく重要な領域もあります。ただ、データ発見そのものにだけ価値をおいてしまうと、共同研究としての広がり難しくそれだけによってアドホックになっていきます。データアクセスという点で、データの種類や作成方法含め、こういうところでの違いをできるだけ集約して、その違いの下に、何の基準軸でこのデータ公開というのをつくるのか、というような大枠のコンセンサスはどこかで持っておいたほうがよいように思います。例えば文系で、特に人文学ということになると、データサイエンスやデータというところでは理解そのものも遅れているところがあって、外の方から見ると、ちょっと内向きじゃないんですかみたいな印象を持たれるような気がします。この辺りは、もちろん人文系とか、社会系というか、文系の責任でもあるところあると思うんですけど、双方向で、決して後ろ向きではなくてというところをうまく打ち出した形でのデータ公開というのがあるといいなというふうに思います。すいません、感想です。よろしくお願いします。
 
【文教大学(池内)】  ありがとうございます。ちょうどこちらの文章にもオープン&クローズ戦略と書かれていますけれども、やはり何を公開して、どこまで公開するのか、そして、何はクローズにしておくのかというある種の戦略というところは、もちろん政策としても考えられると思うんですけれども、やはりコミュニティーなり分野なりで議論をして、それがまた変わっていくというのが、この議論は続けていかなければいけないんだなと感じました。
 ありがとうございました。
 
【城山主査】  それでは、後藤先生、お願いします。
 
【後藤委員】  申し訳ありません。2回目になります。先ほどの青島委員と池内先生のディスカッションにおいて、研究者がオープン&クローズの中で、どれだけしっかり、実際にコンテンツのところでどれだけ関わっていくかというのはかなり重要だと思っています。先日我々のところでも、昭和期の写真ではあったんですけども、比較的古いので、一般的なガイドラインからすると公開できそうな写真でした。しかし、それが秘匿されたお祭りの中の写真を撮っていて、なので、多分これは出すとまずいという写真があったんですね。それは恐らく、その該当のお祭りであるとか、その地域の状況が分からないとそれが出せるか出せないかという判断が難しいという例がありました。
 なので、その観点からしても、やはり研究者が積極的に関わっておくというのは重要かなと思います。
 と同時に、先ほどの裏返しにもなるんです。それは、研究者のほうでやはり、オープンにできるものはオープンにしていくというマインドを持つ必要がある。そういう表裏の関係なのかなとちょっと思いました。
 その辺り、ちょっと、特に、研究者がどう関わっていくかということは重要かなと思いましたので、すいません、2度目ですけども、ちょっと付け加えさせていただきます。以上です。失礼いたしました。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 ほかに何か御意見、御質問等ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 ちょっと最初に申し上げたように、今回こういう議論をさせていただいた1つの契機は、今日もお話ありましたけど、オープンサイエンスみたいなものが理系を中心にかなり議論されてきて仕組みづくりの話までいっているので、その中で、人文・社会系もある程度そういうことを対応せざるを得ないし、ただし、ちゃんとした支援の仕組みがないとなかなか難しいですよという、そういう枠の中で少し議論を始めたところがあるんですけども、多分今日の特に後半の議論を伺っていますと、恐らくある種サポートが必要であるということ以前に、人社が対象にしているような領域においてどういう論理でオープンクローズの戦略の説明をするかという、そこは理系の話に比べて人社の中でもかなり幅が広い話なので、そこのサブスタンスの議論を、まさに研究者の方が中心になってちゃんと議論しないと、サポートメカニズム云々かんぬんの前の段階として行うことが重要なのかなと。その辺りをかなり今日は議論していただいたのかなという感じがしております。
 何かございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 そうしましたら、本日のところは議題の1はここまでということにさせていただいて、また機会を見て議論をさせていただければと思います。
 どうもありがとうございました。
 
【文教大学(池内)】  ありがとうございました。
 
【城山主査】  それでは、2つ目の議題でありますけれども、「共創による課題設定型・プロジェクト型共同研究の推進について」ということに議題を移させていただければと思います。
 まず、こちらは、最初に事務局のほうから、資料3に基づきまして、「人文学・社会科学における『プロジェクト型』・『異分野融合型』共同研究の成果の多様性」ということで、報告、簡単にいただければと思います。
 それでは、名子室長のほうからよろしくお願いいたします。
 
【名子学術企画室長】  それでは、簡単に資料に基づきまして説明をして、次の田口先生のプレゼンのほうにうまくつなげられればと思っております。
 それでは、資料の64ページ以降、まず65ページを御覧いただければと思います。これを挟まさせていただいたのは理由がございまして、いわゆる共同研究にはいろんな方が集まるので当然出てくる成果についてどう評価するのかとか、いろいろ難しいとか、いろんな御意見をいただいておりました。
 そういうこともございまして、先行的にはJSPSのほうでずっと取り組んでおります事業について、そもそも成果ってどんな形で出ているのかとか、そういったことを少しお話ししながら議論を進めればいいかなと思いまして、報告を挟ませていただきました。
 それでは65ページを御覧いただければと思うんですが、JSPSの、先導的人文学・社会科研究推進事業のほう、今、学術共創知ということで、次の新しいフェーズのプログラムを始めているんですが、その前のプロジェクト、こちらは課題設定による先導的人文・社会科学研究推進事業のプログラムを3つ置いております。1つは領域開拓、1つは実社会対応プログラム、もう1つはグローバル展開ということで、実はそれぞれ志向しているところが違いまして、例えば領域開拓ですと、異なる学問分野の研究者の参画を得て、新たな研究領域、またその方法論ですね、新しいテーマを設定したり、方法論自体を改善していくとか、そのような形で学問領域を前進させていこうという、そういったプログラムでございます。
 真ん中が実社会対応プログラムということで、社会的貢献に向けた共同研究を推進すると。ポイントとしては、実務者の参画という形で、研究推進からまた成果発信まで意識した形でチームを組んで研究していくと。
 3つ目、グローバル展開につきましては、国際共同研究を推進する。特に国際的なネットワークを構築して、海外の研究者との対話だったり、グローバルな成果発信だったりを目指すと。
 そういう形でそれぞれテーマを組んでおりまして、それで研究活動が行われておりました。
 次のページ、66ページでございます。こちら簡単に評価の分布とテーマ数を入れたので、あまり評価の話をするとまたあれなんですが、S評価が、「期待以上の成果があった」ということでございます。A、Bの分布、Aが、「研究目的に照らして、期待どおりの成果があった」、Bが「研究目的に照らして、期待どおりではないが一定の成果があった」、Cが「十分な成果があったと言い難い」と、そういった形で分類されておりますが、A、Bの分布が多くございます。ただ、これも結構いろんなチャレンジングな取組をされておりますので、一定の観点に基づいて評価した結果そうなったということでしかないのかなと思います。
 それで次のページでございます。67ページです。簡単に研究概要もかいつまんで少し説明できればと思います。これは領域開拓、実社会対応、グローバル展開、それぞれS・A評価があったものから、世界の多様な広がりを見る上で恣意的に私のほうで選んで説明しておりますので、何か優劣ということを考えての説明ではないことに御留意ください。
 まず領域開拓のところでございます。これは2つ挙げておりますが、1つは、石井先生という方が採択されたプロジェクトでございますけれども、例えば東西の文化差、そういったものを含めた幅広い文化差というのを、例えば遺伝子学的な方法とか、内分泌学的な方法、そういったものを用いながら解明していくと。心理等の専門の先生だと思うんですが、そういった形のいろんな方と、自然科学のいろんな方の知見も借りながら研究していくというタイプのものでございます。
 こちらについて、成果というのは、むしろ学問分野、国際的な発信ということを狙ってということで、例えば論文ですとか、あと学会の講演等でその成果を発信されているといったところが顕著な成果なのかなと思います。
 その下の古澤先生がやっていらっしゃった研究、これは地域社会の災害レジリエンスの強化に向けてということで、これは特定の、ソロモン諸島のほうだったと思いますけれども、そちらのほうで、災害ですとか犯罪被害が起こると。それの発生状況とかをリアルタイムに共有する。また地理的に発生状況を、それも把握して発信すると。そういったことをアプリを使って開発しながら研究していく仕組みということで、こういった情報を現地政府ですとかJICAさんと連携しながら、実際に現地の、こういうのが起きていますよというのを共有することで、例えばリスク回避行動が現地でどうとられているのかとか、しかもそのときに、もともと在来的なそういう情報がリアルタイムに来るわけじゃないと思うんですが、来たときに、実際に現地でどういう行動をされたり合意形成をされているのか。昔の慣習的な行動に従ってどういうことをされているのか。そういったところなんかも実際に分析するというような形で取り組まれた研究でございます。こちらのほうは論文ということもございますし、今申し上げましたとおり、例えばこういうスマートフォンアプリの開発というようなところ、研究ツールになると思うんですが、そういったことをされているというところです。
 真ん中の実社会対応のところですが、こちらも2つございまして、こちら、上が親族内承継、これ事業承継ですね、中小企業さん、零細企業さんのまさに事業承継を親族内で承継するのか、第三者にやっていくのかというところで、こちらは県とか商工会議所と連携して調査データを取ったり、民間のデータを取ったりしながら分析をしていく。出てきた結果を、現地でまさに商工会さんとかと連携して実際の事業者に対してプレゼンをしていくと。これは沖縄県を事例にされていたんですが、そういったような形で、こちら、一定の論文を出しながら、特にこういう発信ですね、実際にそれを当事者として関わっている人たちに発信していくといったところに成果が非常にあったのかなと見ております。
 あとその下、国境観光ということで、これ「地域を創るボーダースタディーズ」ということで、こちらは国境研究で有名なチームでございますけれども、そこで国境研究のプロセスで、例えばこういうものが国境地帯にある。これが観光資源として使えると。発掘して開発できると。で、商品をつくっていくというのを、行政とか、地域のシンクタンク、観光業界と連携しながらやっていくと。研究とこういう実践みたいなものが一体となったような形のプログラムだと思いますが、ポイントとしては、そういった形で実際の観光資源を発掘していくというようなところの成果もありますということでございます。
 あと、グローバル展開でございますが、こちらは上のほうが国際政治学、政治学的な分野だと思いますが、日本の外交をテーマとして、それを分析していくということで、これは国際的な研究ネットワークをつくって、そこに向けて成果を発信していくと。論文ですとか講演。これ、国際共著論文、少なくとも言えるんですが、基本的にほとんどの研究、英語で発信されているというところでございますけれども、また、つくられたデータを国際的な研究グループのところに寄託されたり、日本の機関にも寄託されるといったところを成果として出されております。
 あと、下の「文化遺産保護のための統合的ガバナンス方法論開発ための国際共同研究」ということで、こちら、まさにノートルダム大聖堂ですとか首里城の火災があって、修復する、そういったプロセスなんかを研究されて、その様子をウェブ展覧会という形でお示しして、さらにそこを通じて、さらに実務者も集まったシンポジウムを開催されるというところで、非常に高いインパクトがあったということで、1つは、論文での発信もあるんですが、ウェブ展覧会というような形で示されていると。
 そういう形で、それぞれ、非常に外との発信ですとか、学問的なもの、いろいろあると思うんですが、多様な成果の広がりということで見てとれるかなというところでございます。
 次のページでございます。68ページでございますが、ここでJSPSの事業の分析を簡単に。室のほうのイメージで申し訳ないんですけれども、多様な方向性があるのかなと見ております。例えば、国際的な学術成果を創出していく、国際研究ネットワークを構築していくというようなところの方向性だったり、あとは、もう少し学問の分野の中で、新たなテーマを追求したり、方法論を開発していく。そこにデータ開発、データ構築というのも入るかもしれませんけれども、そういったような次元のもの。
 あとは、下の次元になりますけれども、国際貢献だったり還元ということで、また社会貢献・還元、産学連携といったテーマがありますけれども、そういった形で研究成果を出していくと。
 こういったような非常に多様な成果というのがそこで見れるのかなと思っております。
 これは、要は、狙うとする目的で、どういう戦略で研究を進めていくのか、どういうチームをつくっていくのかとか、そういったところに非常に関わってくると思いますし、また、それをどういう形で支援していくのかというところの支援体制とかにもかなり影響もあるところなのかなと思います。
 そういう意味で、どれがというわけじゃなくて、この中での強弱が、ポートフォリオの中で強弱があったり、もしくは全体を進めるのだとそうかもしれませんし、多様な観点があるのかなと思っているところでございます。
 最後に、69ページでございますが、これは多分似たような議論という意味でなんですが、昔学術分科会で報告を、平成27年にまとめておりますときに、研究の性格による分類というのを一度議論されたことがございます。この議論に関わっていらっしゃった先生もいらっしゃると思うんですけれども、もともと昔研究の性格というのは、基礎、応用、開発ということで、割とリニアモデル的に基礎があって、その先に応用があって開発みたいなことで考えられていたところもあったと思うんですが、むしろそれよりかは、今はそうだと思うんですが、少し全体、いろんな種類の性格の研究があって、ポートフォリオの組み方というような形かと思いますが、そういったところのどこを狙いにしていくのかというところで、研究成果の考え方だとか、チームのつくり方、進め方とか、いろいろ変わってくるというところかなと思っているところでございます。
 雑駁でございますが、少しこういう多様な成果の広がりというところでの議論を深めていただくという観点もございまして、このような説明をさせていただいた次第でございます。
 私のほうから以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。成果の多様性ということはこれまでも議論してきたところかと思いますけれども、JSPSのプログラムに即して具体的にはどういうある種の多様性のバラエティーがあるのかということを少し整理していただいたということかなと思います。
 それでは、続きまして、資料の4に基づきまして田口先生のほうから御発表いただければと思います。よろしくお願いします。
 
【田口委員】  北海道大学の田口です。それでは、私のほうから発表させていただきます。資料を今共有致します。
 それでは、始めたいと思います。私のほうからは、「人社系・脳科学・AIによる異分野融合の可能性」ということで発表致します。北大のCHAINというセンターの取組を中心にお話ししたいと思います。
 私自身のこれまでの研究は、もともとは哲学、特に現象学、フッサールの現象学を研究してきました。右側にあるのがフッサールの写真です。
 その後、日本哲学やエナクティヴ・アプローチといったところに関心を広げてきましたが、その後、2010年ぐらいから、数学者や神経科学者、ロボット研究者といった方々と交流を始めて、彼らとの共同研究が今は自分の研究のかなりの部分を占めるようになってきました。
 そういうような経緯もあって、2019年から北海道大学で設立された人間知・脳・AI研究教育センター(CHAIN)のセンター長を務めておりまして、そこで異分野融合研究の推進に携わっております。今日はそういう観点から少しお話しさせていただきたいと思います。
 まず、北大のCHAINというセンターですけれども、英語名がCenter for Human Nature, Artificial Intelligence, and Neuroscienceとなっており、頭文字をとってCHAINという略称をつけています。
 2019年の7月に設立された北大の中の独立のセンターですが、その設立を主導したのは文学研究院です。そういうわけですので、文系、人文系からのイニシアチブでこういう異分野融合的、学際的なプロジェクトを立ち上げたというものになっています。
 センターの目的ですが、人文社会科学、それから神経科学(あるいは脳科学と言ってもいいですけども)、それから、AI(人工知能)、この3つの大きな分野が交差する地点で学際的・文理融合的な教育研究を行っていくというのがセンターの目的です。
 この3つの分野の交差点のところに「新しい人間知」というものが成立すると我々は考えております。
 背景を少しお話ししたいと思います。最近ChatGPTというのが大きな話題になっていますけれども、人間のような非常に賢い回答を短時間でぱっぱと返してくるわけですね。AIの技術の面から見ると、それ以前のものとそれほど大差ないとも言われますが、それなのになぜここまで話題になったかというと、それはやはり一般市民に近くなったからであろうと。無料で誰でも使えますし、日頃、自分の業務や研究の中で非常に便利に使えるようになったと。
 これはどういうことなのかをもうちょっと考えてみると、実用レベルまで達したAI、生成AIというものは、今後技術発展ももちろん重要なんですが、それ以上に応用とか活用というのが重要になってくる、そういうフェーズに入ってくるんじゃないかと思います。
 技術面では他国の後塵を拝したなどとも言われる日本のAI研究ですけども、応用面で挽回できる可能性もあるのかなと思われます。どのように使うか、どのようにAIを社会に、あるいは人間の生活に組み込んでいくか。こういうところで技術面に劣らない創意工夫が必要になってくるんじゃないかと思います。
 そこでは、やはり人間に近くなってきているわけなので、人間とは何か、人間はどのように考えて、どのように動くのか、こういうことが分かっていないと対応できないと思うんですね。技術的にも、あるいは技術に対する社会の対応という意味でもこういうことが分かっていないと困ると思われます。
 そこで重要になってくるのは人文・社会科学だと思うんですね。人間とは何か、社会とは、人間の生活とは何かと、こういうことを古来深く考えてきたというのは、やはり人文・社会科学につながってくる系譜であろうと。
 生成AIの登場によって文明的な規模で恐らく人間の生き方というのが今後問われてくる。そういう中で人文・社会科学の役割は大きいだろうと思います。
 しかし、もちろん人文・社会科学だけでAIが登場してきたような新しい状況に対応できるわけではないと思うんですね。そこで、AIと脳科学と人文・社会科学が互いに緊密に融合して1つになったような新しい科学というものが必要だろうと。こういうものを集中的に研究・教育しているのが我々のCHAINというセンターになります。
 脳科学とAIというのは、やはり人間を解明するための有力なツールとして浮上してきていると思うんですね。しかし、実験や開発の前提となる考え方に古い哲学のバイアスがかかっていると、見えてくる結果というのも限定されてきてしまう。
 そういうわけで、哲学的なビジョンやアイデア、それと脳科学の知見、AIの工学的手法、こういうものが組み合わさることで、人間とその社会、そして世界の新しい解明が可能になってくるんじゃないか。
 また、そこから新しいAIを生み出すようなアイデアというのも生まれてくる可能性があるかと思います。人間の在り方に倣ったような形で、新しいAIを生み出すアイデアというのが出てくる可能性がある。
 これは非常に新しい分野で、国内でも国外でもまだそれほど実践例はないのかなと思います。個人である程度やっている人もいますけれども、こういうように組織をつくって集中的にやっている例はそれほどないんじゃないかと。
 我々のCHAINというセンターでは、ChatGPTなどが出てきた現状の新しい展開に先立って、2019年からこういう研究に取り組んできています。だんだん成果も認知されてきたかなというところもありまして、グーグル検索などで簡単なワードで検索してみると、割合上のほうに出てくることが増えてきました。
 どういうセンターなのかをもう少し御説明したいと思います。構成メンバー、主要構成員としては、私がセンター長を務めていますが、私は文学研究院が本務で、こちら、兼務という形でセンター長を務めています。副センター長も文学研究院が本務の准教授です。特任准教授として、こちらはセンターの専任ですけども、神経生理学と人工知能の専門家がいて、さらに特任講師として、認知神経科学と現象学・身体性の哲学といったところが専門の研究者がやはり専任で属しています。それから、やはり専任で特任助教、こちらは実験心理学が専門の先生。この辺りの7名ぐらいが中心的なメンバーとしてセンターを動かしています。
 そして、コアメンバーとして5名ほどの教員が文学研究院から加わっていて、こちらも専門はかなり多様な形になっています。
 それから、兼務教員という形で、学内の10の部局から24名の教員が加わっています。部局は文系から理系までかなり幅広い部局の教員が加わっていて、こういう教員を通じて様々な学生がプログラムに応募してきているという状況です。
 事務体制についても少し御紹介すると、センター自体の事務局には特定専門職員が1名と事務補佐員が2名属しています。しかし、この3人だけで全部回っているわけではなくて、主な事務というのは文学研究院の事務部が担っています。会計、教務、庶務といったところですね。センターにのみ固有の事柄についてはセンターの事務員が対応するという形です。
 大型の研究資金、AMEDとかNEDOなど、それから企業との共同研究など、こういうのを我々のセンターではたくさんやっているのですが、文学研究院では(理系と違って)なかなかそのような大型の研究資金を運用するということはこれまで多くなかったので、そのような大型資金に関連する業務を担う事務職員というのも特に専門では置かれていないんですね。そういうわけなので、センターの特定専門職員がこういう契約業務などにかなり関わってやっているという状況です。
 次に、研究も少し御紹介したいと思います。いろいろプロジェクトあるんですが、幾つか御紹介すると、左上の鈴木啓介特任講師のグループでは、VRやARなどを使って認知心理学実験を行っています。人間の現実感や身体感覚、自己感覚とか、こういった辺りを研究しています。
 右上の宮原克典特任講師のグループでは、AIがある種の人工的な主体のような在り方をして、社会の隅々にまで浸透してくるといった時代がもうすぐそこまで迫っている。そういう近未来社会に先立って、倫理とか社会制度などがどのように変わっていったらいいのか、といったテーマを研究しています。
 それから、左下の飯塚博幸特任准教授や私が加わったグループでは、「自他の重ね合わせメカニズム」というものを研究しています。自分と他人を重ね合わせることができるようなAIエージェントの研究です。これは哲学とAIが組み合わさって融合したような研究です。こうした研究が将来的に人間の心が分かるAIといったものの開発につながっていくんじゃないかと考えています。
 それから右下、こちらは吉田正俊特任准教授や宮園健吾准教授のグループで、神経科学、哲学、精神医学が融合したような研究です。何かが「目立つ」という、サリエンスという現象を新しい仕方で学際的に解釈したもので、将来的には精神疾患の原因解明につながってくるような研究だろうと思っています。
 先ほどご紹介した「人工主体の倫理」という研究にはかなり力を入れていまして、JSTのRISTEXであるとか、トヨタ財団とか、こういったところからの資金を得ながらプロジェクトを進めているところです。
 企業連携もかなり進んできておりまして、富士通とスモールリサーチラボという形で共同研究を行っていまして、こちらも継続していく予定です。
 東京エレクトロンとも学術コンサルティングを経て共同研究に移行して、今年度から進めております。
 日立北大ラボというのにも参画しています。
 クロスコンパスというAIスタートアップとは、クロスアポイントメント契約を我々のところの特任講師が結んで(これは北大では初めての試みなのですが)、そういう形で密接に連携しております。
 それから、アラヤというAIスタートアップとも非常に密接に連携していまして、今年度スタートしたリカレント教育にも講師派遣などで参画していただいています。
 ほかにもコニタミノルカといったところと連携しています。
 教育プログラムについて少し御紹介したいと思います。こちらの教育プログラムは2020年にスタートしたもので、北大の全ての大学院から学生を募集しており、1学年20名が参加する特別プログラムです。選抜を行う場合もあって、ここ数年は毎年、希望者が多いので選抜しています。
 こんなふうに(図参照)それぞれの大学院で自分の専門分野を学んでいきます。そして自分の大学院で博士号を取っていくわけですが、それと同時に、専門的研究と並んで学際的な能力をCHAINというプログラム、センターの特別プログラムで受けていくと。並行してやっていきます。最終的に、自分の大学院での博士号取得と同時にCHAINのほうでも修了証を出すという形です。
 こういうふうに3つ柱がありまして、コースワークとサマースクール・ウィンタースクールとインターンシップ。これは後でちょっと説明いたします。
 こういうふうに、M1からD3まで5年で完了できるコースとして設定していますけども、D1からD3までかなりぎゅっと詰めれば3年間でもやれるようになっています。
 コースワークの部分では、必修科目としてCHAINの講師陣によるオムニバス講義もありまして、そしてもう一つの、人間知序論Ⅱという演習講義では、履修生が自分の研究を他分野の人にも分かるように紹介して、そこからネットワーキングも行って、学生間の共同研究などもここから多数生まれています。
 サマースクールとウィンタースクールですが、ウィンタースクールは英語で開催していまして、最先端で活躍中の研究者を国内外から講師に招いて、5日間の集中講義を行います。それと同時に学生による議論と発表という形で、アクティブラーニング形式の活動も含めてやっております。
 比較的履修生の満足度も高くて、右下のようなアンケート結果が出ています。履修生間の部局を超えた学際的な共同研究もたくさん生まれてきています。
 大学院生プログラムのほかにも、学部生にも授業提供をしています。それから今年度からリカレント教育も開始しているというところです。
 参加人数としては、資料の一番右の真ん中あたりにありますけれども、だんだん順調に増えてきていまして、106名ほどが今、プログラムに参加しています。うち文系は57名、理系49名で大体半々ぐらいになっているというところです。
 学生主導の活動も非常に活発で、学生さんが自らいろんな活動を立ち上げてやっています。
 リカレント教育についてもう少し御紹介すると、文科省の「成長分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業」に採択していただいて、今年度、1月から講座をスタートするところです。
 AI倫理と異分野融合と対面の授業というふうに3つやっています。
 これは社会人向けのもので、比較的多くの方々に参加していただけそうな状況です。
 この辺の資料は、文科省のプロジェクトに応募した際のもので、後で御覧いただければと思います。
 企業とも連携しながらやっています。
 アウトリーチ、外部連携についてですが、いろいろな学際的イベントを開催していまして、国際シンポジウムを毎年1回ぐらいやっています。
 それからCHAINセミナーというセミナーシリーズをこれまで35回ぐらい開催して、いろんな分野の方に登壇していただいています。
 国内、海外の連携機関はこのような形で大分いろいろ増えてきました。まだほかにもたくさんの連携機関があります。
 課題・問題についてちょっとだけ申し上げると、CHAINプログラムというのは大学院ではないんですね。自分の大学院で勉強しながら同時に参加する特別プログラムという形です。しかし、中には学際的研究を集中的にやりたいという学生も出てくるんですね。そうするとCHAINの教員のところで研究するということになるんですが、しかし、大学院じゃないので、所属する研究室は自分の大学院で確保しないといけない。どこか自分の居場所が必要なわけです。北大の学生であるというためにはどこかに登録していないといけない。
 しかし、大抵の研究室は、やはり自分のところの学生は自分のところにどちらかというと囲い込みたいような傾向があるので、そうするとなかなかそういう学生さんが自由に学際的研究に集中できないといった問題も生じてきたりということで、この辺りが少し課題になっています。
 ほかに、予算上の課題を申し上げると、外部資金については、小さいセンターとしてはまあまあ獲得できているんですが、光熱費とか施設賃貸料といったところには外部資金の直接経費は使えないので、基盤的な配分経費が少ないなか、こういう基本的な運営経費をどうしたらいいかということでいろいろ苦労しています。しかし、これは全国的な問題かもしれませんので、うちだけに固有の問題ではないかもしれませんが。
 さて、最後に異分野融合研究を推進するにはどうしたらいいかということについて少し私から提言させていただきたいと思います。個人的な経験から、3点ほどポイントを挙げてみます。個人的に転換点になったことは何かを振り返ってみると、人との出会いというのがやっぱり決定的だったなと思います。人脈がまた人脈を呼ぶというような形で広がってきたんですが、その中でもやっぱりハブとなる人物がいる。こういう人が非常に重要な役割を果たしているなと思いました。
 この辺り、後で提言につなげていきたいと思います。
 それから2番目、同じ方向を向いた研究者との出会いというのがやはり非常に決定的で、CHAINというセンターもそれなりにうまくいっているように見えますが、その理由としては、分野が違っても知りたいという知の方向性が似た研究者が集まっているということがあるかなと思います。こういう出会いをどうやってつくっていくかというのがまず大事かなと思います。
 そして3番目、同じ場を共有しながら、自由に知りたいことを追究できるような場が非常に重要だと思います。神戸でISSAサマースクールという、意識の学際的なサマースクールがあったんですけど、2015年のことですか、これが私にとっては非常に重要だったなと思います。ここから非常に多くの異分野融合研究が生まれてきていまして、こういうような学際的に自由にお互いの考え方をすり合わせて、自由に考えを生み出すような場が必要なのかなと思います。
 以上の個人的な経験からこういうようなところがポイントになるかなというのを挙げてみました。
 1つは、人との出会いというのは非常に重要で、人と人とをつなげる活動というのが非常に重要だなと思いました。そういうハブとなるような人物の活動というのをもっともっと適切に評価してサポートしていくべきではないか。これは教員だけでなくて、URAのような方もあり得ると思います。こういう人と人とをつなげる役割を果たすような人たちをどういうふうにサポートして、場合によっては育てていくかというのが1つの課題なのかなと思います。
 そのような人との出会いという意味では、分野とか専門よりもまずは相性のよさ、研究者としての相性のよさといったものを見つけていくのが重要で、違う分野の人でも同じ方向を向いているような人というのはいると思うんですね。そういう気の合う研究者と知り合うと、分野の垣根というようなものはあまり問題ではなくなって、簡単に飛び越えられてしまう、そういうことがあるかと思います。そのような人と人との出会いをどういうふうに実現していくか、それが可能になる場をどのように用意するか、これは制度的にはなかなか難しいところかもしれませんが、このようなところが重要だと思っています。
 次に、2番目、目的に縛られずに一定時間を共有していくような場をどういうふうに確保するか。いついつまでにこういうふうな結果を出さなきゃいけないといった目的に縛られずに、純粋に知ることの喜びを共有できるような、そういう場をどのように確保できるのか。特にそういう場を、形成期の研究者、まだ若手の研究者たちに与えると、特に学際的な交流という形で与えると、そこから飛躍してくる人たちが一定数出てきます。これは、これまでの私自身の経験でもいろいろと目にしてきたところです。本当に若い方の爆発的な起爆力というか、そういうものを見ることができたと思います。
 我々、CHAINというセンターでも意識的にこういう場をつくろうとしています。それによって若い方々がいろいろと非常に積極的に活動しているということがあります。
 異分野融合について申し上げると、違う分野のことを自分で勉強するということも役に立ちますが、1人で全部専門的に研究できる人は一部の天才しかいなくて、普通はできない。
 そこで、ノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんが、「異分野融合の場を生かせば、凡才や素人でもイノベーションや独創を生み出すことができる」ということを言っています。
 これは非常にいい言葉だなと思うんですが、自分1人でできなくてもほかの専門家とつながることができれば、自分の脳が何倍にも拡張したような経験ができる。こういうのは非常に大きな研究のモチベーションになるだろうと思っています。
 最後に幾つかメッセージというか、そういう形でまとめたいと思いますが、もうちょっと1分ぐらい頂ければと思います。
 異分野融合研究というのは重要なんですが、しかし、異分野融合研究自体が目的だということではないと思うんですね。学際的じゃなくてもできる研究は別にそれで問題ない。しかし、何かを本気で知ろうと思うときに1つの分野の知識だけでは足りないということが往々にして出てきます。何でもいいから役に立つ知識であれば使いたいと、こういうときに、こういう知の徹底的な探究というのが目標であるときに、異分野融合研究というのは極めて自然に実現できるものになるのではないか。自分だけでは思いつかなかったような視点や手法というのが他分野の研究者からもたらされるということはよくあると思います。それも他分野のほうでは特に独創的なことではなくてごく普通の手法だったりする。こういうものが異分野間で組み合わさると非常に新しいクリエーションにつながったりするということがあると思います。
 こういう場合に分野と分野とがお見合いみたいに対面していても何も出てこないと思うんですね。それではなかなか異分野融合というのは起こらないでしょう。そうではなくて、あくまで問題というものが中心にあるべきで、解きたい問題があって、あらゆる手段を使ってそれを一緒に解こうよという場合に、異分野間の連携・融合というのは極めて自然に実現されるようになるのではないか。
 人文・社会科学と他分野の連携というのも、「何か連携しましょうよ」という連携ありきではなくて、むしろ問題ありきで、問題解決指向型で進めていくべきなんじゃないかなと私としては考えております。
 ちょっと時間を超過してしまいましたが、以上、私からの発表とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  興味深い御報告どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま御説明いただいた内容を中心に意見交換をしたいと思います。質問、御意見等、どなたからでもいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 では、井野瀬先生、最初お願いします。
 
【井野瀬委員】  非常に興味深い、2つとも、前半のほうの文科省のほうの分析も、そして、今、田口先生のお話も非常に興味深く聞かせていただきました。
 双方に御質問がありますというか、お願いということになるかもしれません。先ほど、資料の67ページでしょうか、課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業の3つの分野における状況の説明がありました。成果の在り方というのが、どうも人文学、私は歴史なので人文学ですけど、社会科学の先生方はもう少し広がりがあるかもしれませんが、やっぱり論文とか著作とか講演とかシンポジウム、ここにある分類に頭の中でちょっと勝手に枠をはめている部分もあるように思うので、今日、多様性ということで書かれている内容は、その他というところにそれぞれの様々な試みというのがあったように思うんですが、こういったその他のところに書かれているものを少し分類というか、項目に例えるようなことができないだろうか。つまり、どういうふうなことをしましたかというときに、あっ、こういうものもあるんだということをあらかじめ、その他に書き込んでもらうという段階から一つ進めて、こういうものもあるんだ、やってみようというようなことを伝えるような意味も含めて、論文、著作、講演、シンポという、本当に昔からあるというか、この成果を超える試みをしていただきたい、あるいはされる計画などについてもしもあれば、多様化ということを見られたということで、室長にお願いできると、ひとつ教えていただけると幸いです。
 それから、田口先生のほうなんですけれども、開発、AIの部分の周回遅れで、今、むしろ気がついて、一緒に、イノベーションだけじゃなくて、倫理とか、ガバナンスとか、人間の知というか、そこの部分を含めて考えていくことが大事だというのは、全く賛成いたします。
 先ほどCHAINの修了証という言葉があったので、大学院所属ということではないのでということで、学位を出せるわけではない。つまり、文学修士とか博士文学というもののプラスアルファの考え方だと思うんですが、そのアルファのところをどのように表現されていって、その表現されたものが広く社会に評価されるのかなというところが、やられていることが広く広まっていく、あるいは人文学そのもの自身がちょっと認識を変えるという意味でも大事だと思うんですけれども、その辺り、プラスアルファをどう表現するのか。学位じゃない分、表現して、プラスアルファを表現し、それが評価されるという、そういう状況について少し教えていただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
 
【城山主査】  それでは、最初、名子室長、お願いできますか。
 
【名子学術企画室長】  失礼いたします。最後ちょっと補足的に言えればよかったんですが、おっしゃるとおり、評価は、実は、その他で私が勝手にまとめたところもあるんですが、結構どう表現されているのかがよく分からないですけど、いろんなところについて書かれたのもあるんですけど、こういうものが多分各プロジェクト結構あって、本当そこをまずちゃんと拾えるだけでもいろんなものが見えてくるかなと思いました。
 そうすると、シンポジウム系はシンポジウムってあるんですけれども、例えばデータをつくったところはきちっとデータセットつくりましたという形で評価に書かれていたりとか、ただ書かれてないところもあります。ホームページもつくってこういうのを公開していますよという言い方もされていれば、されてないのもあります。
 多分そういうところで評価としてどう認識するかというのがやっぱりきちんと整理されてないので、そういう形で、例えばきちっとして上げていくということはあり得ると思いますし、その辺りはJSPSさんのほうにも話をしてみたいなと思っております。
 また、関連してなんですけれども、実は論文とか著作物の書き方も、分野の違いもあると思うんですが、国際論文で出しました、査読つきですとか、査読がなくてこれは紀要ですみたいな分類をきちっと書いている人もいれば、ごちゃっと一体的になっている方もいますし、書籍も単著のものをちゃんと単著として書いて書籍に書いている人もいれば、書籍論文のほうも書籍に書いていたりとか、結構いろいろ基準が、一応フォーマットをある程度示してはいるようなんですが、そういう現状もあるので、そういった辺りをどうきちっとしていくかということで、いろんなところの展開もあるのかなと思っているところでございます。
 すいません、簡略ですが、以上でございます。
 
【井野瀬委員】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。評価の話はまたいずれ我々としてもしなきゃいけないことかと思いますし、そういう意味でいうと、今、井野瀬先生おっしゃっていただいたように、その他のところをまずそれなり類型化してみるというのは1つの入り口なのかなと思います。
 それから、例えば今出ているのでいうと、ファミリービジネスの講演というのは、講演って書いているんだけど、実はむしろいろんな関係者、当事者間の連携づくりに寄与したということなので、多分既存のカテゴリーに入っているものの位置づけみたいなものも、多分そういう新しい枠組みで評価することができるという、そういうようなインプリケーションがあるお話だったのかなと思いました。
 ありがとうございました。
 それでは、田口先生のほうからお願いできますか。
 
【田口委員】  御質問ありがとうございました。こちらのCHAINのプログラムに参加した学生をどういうふうに対外的に可視化していくか、その活動を見せていくかということなんですが、修了証という形で一応このプログラムをちゃんとやりましたよという証明にはしたいと、したいというか、既にそういう修了証を出しているんですけれども、こういう修了証などを履歴書に書けるようになると、例えば人文・社会系の博士課程を終えた後に、必ずしも研究者にならなくても、一般社会に就職する学生をサポートできる面がすごくあるんですね。
 というのは、企業などでも、例えばAI開発をしている企業などでも、プログラミングができるエンジニア的な人だけではやっぱり対応できなくて、むしろ人間についての知識を持った人がすごく必要なんだよと言われます。しかも、人間についての知識に加えて、AI技術についても分かっている、ある程度の基礎知識があるというような人は、結構企業の方々からはのどから手が出るほど欲しかったりするのではないかと思うんですね。
 そういう社会的なニーズがあると思います。例えば「文学院のような人文系の大学院を出ましたが、自分はAIについても知っていますよ」と言っても、自分で何か個人的に勉強しただけでしょうと言われてしまう。そうじゃないんですよ、ちゃんとCHAINという組織でプログラムを受けて一定のサーティフィケーションをもらっているんだと。そういう形で企業などにも見せていけるということがあると思います。
 CHAINではもちろん研究者になる人たちもサポートしていて、こういうところから学際的な研究者が出ていけばいいと思うんですが、そういう人たちは自分でどんどんそういう資質を示していくと思うので、それよりはやはり博士課程を終えてから社会に出ていくような人たちに、文系の人には理系のAIや、あるいはプログラミングや脳科学などの知識がありますよということを示していく。理系の学生たちにとっては、文系的な、「人間」のことも分かっていますよと。こういうことをある程度対外的に示せるように修了証を出してやっているという形です。
 
【井野瀬委員】  キャリアパスを広げるというところにダイレクトにつながってくるという感じですか。
 
【田口委員】  そうですね。そういうふうにしたいと思っていて、実際そういう学生たちも出てきているように思います。
 それからもう1点付け加えたいんですが、企業と共同研究をしているのですが、そういう企業と人材育成の面でも連携していまして、企業との共同研究に参加した学生がその企業に就職していくといったようなルートも考えています。
 そういう形のほか、インターンシップも必ずやるように必修科目になっていますので、必修でインターンシップに出た企業に就職していくとか、それを通じていろいろと就職につなげていくということもルートとして考えています。
 以上です。
 
【井野瀬委員】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 続いて大橋先生、お願いします。
 
【大橋委員】  ありがとうございます。人社系の学術研究の様々な可能性というか、広がりを見せていただいた取組だなと思って大変勉強になった次第です。
 他方で神戸の話も引用していただいていたりとか、いろんな大学で同様の取組というのをされているところがあるかなと思って、そうした中で、1つ、これは田口先生への御質問か事務局かちょっと分かりかねているんですけど、田口先生の取組を質的に捉えるとどうなるかと。質的にといいますか、取組の質を捉えて、その質が向上しているということを見せるためにKPIか何かつくれるといいなと思うんですね。KPIというのは恐らく誰に向けての取組なのかということでKPIは複数つくられると思っていて、今のいただいたやり取りだと、基本的に教育とか、ステークホルダーだったら企業さんとか、あるいはどれだけお金集めてくるとか、そういうところの指標だったと思うんですけど、研究という観点で見たときに、お取組みはどういうふうに捉えられるのか。多分この手の取組でひとつ悩ましいのは、若手の人が異分野融合で直接どっぷり浸かっちゃったときに、なかなか実は研究のアウトプット出すところがないとか、結局のところ、異分野融合って、自分の分野がしっかりあって、たまに異分野のところに出ていくことで自分のそもそもの足元の分野の研究を膨らませていくという人は結構、先ほどノーベル賞の学者も含めていると思うんですけど、異分野にどっぷり浸かっちゃうとなかなかやりづらいなというのが私の印象ではあって、バランスがすごく重要だなという感じも持っていたりするんですけど、そこの辺り、どうお考えなのかというのが1点。
 2点目は、これ、経済・経営の人が入ってないんですけど、私、経済出身なんですけど、実は経済・経営って、自分たちのアカデミックなコミュニティーしっかり持っちゃっているので、なかなかそことどうインタラクトするのかというのを難しく考えていらっしゃる方いるのかなと思っているんですが、ちょっとそこの辺り含めて、もし教えていただけると、参考になります。ありがとうございます。
 
【田口委員】  ありがとうございます。特に若手の方の業績ということに関していうと、我々のCHAINというセンターのプログラムに参加している学生を見ると、学際的な研究に没入してしまった学生というのはむしろものすごく業績を出しているんですね。ちょっと普通の学生ではあり得ないような業績を出していて、例えば1人の学生、哲学分野の学生ですが、今年、学会発表を13回やったというんですね。1か月に1回ぐらい発表しているんですね。論文もどんどん出していると。この学生は、例えばAI分野の学生と共同で論文を出したり、発表したりということをやっていたり、AI倫理とか、そういう応用的な部分でも発表しているんですが、しかし、もとの研究がやっぱりしっかりしているんですね。カント倫理学の研究者なんですけども、もとの研究がしっかりしているがゆえに、一旦火がつくと、学際的な面でものすごい成果が出せるんですね。
 そういう若い人が一定数出てきている。もちろんそういう人ばかりではないので、自分の研究をみっちり、しっかり基礎からつくっていくという、それを中心にしなきゃいけないような学生や、それを中心にしたい学生ももちろんいると思うので、そういう人はそういう人でそれをやっていくべきだと思うんですね。全員が全員異分野融合をやればいいというわけではないと思うので。
 ただ、そういう場所をつくってあげると、中には今申し上げたような学生が出てきて、一定数そういうような極めて活動的な活発な学生が出てくるかなという印象です。そういう学生はどんどん後押ししたいなという、そういう趣旨ですね。
 おっしゃるとおり、異分野融合そのものが目的になってしまうと、どっちつかずの足元がふらふらした研究者ができてしまう可能性があると思うんですね。それはやっぱり避けるべきことだろうと思います。
 ですので、我々としては、あえて大学院にしていないというのは、そういう理由もあるんですね。我々のところは大学院で、最初から学際研究やりますよということで学生を受け入れてしまうと、やはり専門という根っこがなくなってしまうんですよね。そこはやはり根っこをしっかり持ってほしい。
 そういうわけで、それぞれ自分の大学院でみっちりと基礎的な専門研究をやってほしい。その分野で博士号を取らないと我々の修了証も出ないわけですから、1つの分野で専門的に博士号が取れるところまで行けるということは、専門分野でもきちんとした専門的能力を持っているということの証明になりますので、それに加えて学際研究がやれるという人が、本当にそういうものをやっていくという形ですね。
 そうでない場合には、博士号までは一応行けるけど、でも、研究者にはならなくて、社会に出ますよ、就職しますよという人に関しては、ある程度の学際的な知識を身につけてもらって、それでもっていろんな分野の知識を基礎的には持っていますよという形で社会に出ていってもらうという、そんなルートも考えています。
 一応お答えとしては、それぞれの大学院で博士号まで行くことが条件であるというところで、専門知識の地盤というのを確保していると。それにプラスして学際的な能力を身につけるというのが1つのお答えです。
 それから、もう一つ、どういうふうに評価していくのかという御質問があったと思うんですが、そこは確かに非常に難しいところだと思います。一般的な、どれだけお金を集めたかとか、そういうところは評価しやすいところで、我々としても取りあえずそういうところを成果として見せていかざるを得ないところなんですが、本当の成果というのは、それほどそのように目に見えるところには出てこないんですね。むしろ本当の成果というのは、我々、本当にこういう非常にユニークな研究者を集めて密接に共同研究しているというところにあると思っていまして、目に見えない成果がたくさんあるように思っているんですね。
 本当に非常に面白くやっているわけなんです、内部的に。この面白さというのを何とか伝えたいなということで、それぞれの教員が、旧ツイッター、今はXですか、こういうもので発信したり、そういう形でできるだけ面白さを伝えようとしてやっているんですが、一部の人は「何か面白そうなことやっているぞ」ということで惹きつけられてくるような状況があると思います。
 やはりKPIみたいな数値的な評価にはなかなか出にくいんですが、そういうような、目に見えないけれども、非常に重要な土壌づくりのようなところは捨てたくないなと思ってやっているところです。それをどういうふうに数字的に見せていったらいいのかというのは、本当に我々にとっても課題で、ぜひ皆さんのアドバイスなどもいただきたいなと思っているところです。
 以上、お答えとさせていただければと思います。
 
【大橋委員】  ありがとうございます。KPIという単語自体は薄っぺらいかもしれません。田口メソッドといかにシステム化してみんなに植え付けていくのか、そういうイメージでKPIを申し上げたということで。ぜひ経営・経済の人もちょっと引き込んでください。ありがとうございます。
 
【田口委員】  ええ。ぜひそうしたいところで、経営・経済の方々も本当に関わってくるところなので、ぜひ入ってきてもらいたいなと思っているところです。どうもありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。それでは、安田先生、お願いします。
 
【安田委員】  ありがとうございます。大変興味深いお話をありがとうございました。
 ちょっと1点、1つ前の話題なんですけれども、ごめんなさい、言い損ねたのであれなんですが、リポジトリというか、データベースに関してなんですけれども、例えば国立遺伝学研究所とかがやっている遺伝子配列のデータのメタデータとかを集めている場合には、やっぱりポスドクで専門家の方が7人ぐらいついて、常にキュレーションというか、出されたデータをキュレートして、登録者に確認をして、確認をして、1つのちゃんとしたフォーマットにきちんとそろえた状態で入れるということをしていたので、やっぱり私、文系の分野のダイバースした資料というものは、ちょっとまだ想像の域を超えているものもあると思うんですけれども、やはりそれぞれの分野の専門家が、ポスドク以上のレベルの方がついて入れていくことが必要なんじゃないかなということを一つ思いました。
 あと、後半の今のお話、大変ありがとうございました。すごく面白そうで、わくわくするような取組をされているなと思いました。この中で人をつなぐのが非常に大事であり、そういうことができる人がいることが重要であるということなんですけども、やはりこれは、URAの方とかすごくそれが得意な方が来てくださるといいんですけれども、役職にかかわらず、非常に人をつなぐのが上手みたいな人材というのがきっといるんですけれども、むしろそういう人材を育てたりだとか見つけたりするというところで、何か新しい発見、今回の取組で何かあったら教えてほしいなと思うのが1点です。
 あともう一つが、今回コロナも挟んだので結構大変だったんじゃないかなと思うんですけれども、それぞれの大学院を母体として学生さんが来るということだったんですけれども、やはり物理的な場というか、共有の場というのは非常に重要じゃないかなと思っておりまして、そこら辺でどういう工夫をされているのかなというところに非常に興味を持ったので、ぜひ教えていただければと思いました。ありがとうございます。
 
【田口委員】  ありがとうございます。まず、1点目のほうが何でしたっけ。
 
【安田委員】  人と人をつなぐ場合に、いろんな方が、得意な人というのが出てくるといって、それで化学反応が起きるということで。
 
【田口委員】  そうですね。そういう方々はどうやって見つけたらいいかというのは、やっぱりそういうことをやっている人が見つかったら、その人を後押しするという仕方しかないのかなという気もするんですけれども、やはり研究者の中でもそういうのが得意な人とそうでもない人がいると思うんですが、得意な人がそういう活動をしているときに、それを後押しするということがやはり必要なのかなと。
 つまり、それは学問的ないわゆる業績には出てこないことですけれども、業績には出てこなくても、実はものすごく重要な働きをしていると思うんですね。こういう人を何か評価できないのか、もっと評価できないのかなというのが一つあります。
 それはもちろんURAの中にもそういう活動をしていらっしゃる方がいて、それが非常にうまい方というのもいると思うんですね。そういう活動をやはり大学の中でも評価して、もっともっと後押ししていくというのが必要なんじゃないかということが一つあります。
 そういう方を育成するということもやはり非常に重要で、いろんな事例を持ち寄って、お互いに知り合って、そういう事例から学んで、じゃあ、うちではこういうふうにしていこうというような形でそれぞれ工夫していくことができると思うので、そういう事例を持ち寄る場というのも、例えば全国の大学のURAの方々が人社系のいろんなアイデアを持ち寄る会などをやっていらっしゃるみたいですけども、こういうような場でいろんなアイデアを集めてやっていくというのが重要なのかなという気がします。
 あるいはやはり異分野融合をどうするかというようなイベントでも、いろんな形で情報共有していくということが必要で、私も昨日JSTのRISTEXのところで講演させていただいてそういう話をしたんですけれども、そういうような経験を持った人たちがお互いに情報共有していくということが重要かなと思います。
 それから、2点目のところですけれども、確かにコロナを挟んだので、非常にそこは苦労しました。コロナの間は基本的に集まれない状況だったので、なかなか大変だったんですが、コロナがだんだん収まってきて、対面の会を持てるようになってきてから、それから一気に学際的な学生間の交流が進んだという、そういう印象があります。
 秋合宿みたいなものも、ある程度予算を確保できたので、秋合宿やりましょうと学生さんに呼びかけて、自分たちで基本的な企画をやってもらえないかと持ちかけたら、ぜひやりますということで喜んで彼らはやってくれたんですね。
 そういう秋合宿のような場であるとか、それから、学生さんが自主的に読書会であるとか、ランチセミナーと称してランチの時間にそれぞれの研究を紹介する会をやっていたりとか、こういうような形でやはり対面で集まる場ができていって、学際的な交流が一気に進んできたというところがあります。
 それから、我々の授業のほうでもそういう工夫をしていまして、授業の必修科目の1つで、人間知序論Ⅱというのをやっているんですが、そちらでは学生さんがそれぞれ自分の研究を異分野の人にも分かるように紹介する。ポスター発表のような形で、全員が自分の研究を紹介して、その中でお互いに質問したりして意見をすり合わせる中で、結構あなたの研究面白いね、自分のとつながりそうだよという人たちがいたら、一緒に共同研究の提案をしてくださいと。最後に共同研究の提案のプレゼンをやるんですね。
 そのような形でネットワーキングを促しています。そういう中から実際に共同研究につなげて論文を一緒に書いているといったグループもたくさん出てきているんですね。そういった工夫をしています。
 
【安田委員】  ありがとうございます。ちょうど「Nature」の記事で、オンラインではなくて対面で会うことによってイノベーションが起きるみたいな、いい研究ができるという話があったので、非常にそういうところも多面的に取り組まれているのが分かりました。ありがとうございました。
 
【田口委員】  どうもありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 それでは、北本先生、お願いします。
 
【北本委員】  北本です。田口先生の試み、非常に画期的なところがいろいろあって大変感銘を受けました。
 さて、最後のほうについて質問したいと思います。先ほど、人と人の出会いが重要だというお話がありました。ただ、最後のスライドでは問題が中心にあるべきと書いてあり、私自身もまさにそう思います。これは、最初に人ありきなのか、それとも最初に問題ありきなのでしょうか。問題があってそこに人が集まってくるのか、それとも人付き合いから問題が出てくるのか。どのようなパターンが多いのかという点が一つお聞きしたいところです。
 もう一つ、問題といったときに、結局大きな問題でないと異分野融合が起こらない面があるような気がします。要領がいい人ほど、問題を自分で解ける部分問題に落とし込んで、自分で解いてしまうことがよくあります。有名な言葉に、早く行きたいときは1人で行け、遠くに行きたいときはみんなで行け、というのがありますが、みんなで行こうというマインドセットがないと、1人で解ける問題に落とし込んでしまう気がします。そうではなく、みんなでやろうと促しているのでしょうか。以上2点をお聞きしたいです。
 
【田口委員】  どうもありがとうございます。問題が先なのか人が先なのかというのは非常に微妙な問題で、鶏が先か卵が先かというようなところもあるような気がするんですね。
 ただ、どちらかというとやはり問題が先かなという気はしています。問題が先にあって、そこに「ぜひそれを一緒にやろうよ」という人が集まってくると。その中で気の合う人たちも見つかってくるという、そういう筋道がやっぱりどちらかといえば多いだろうし、中心になるべきなのかもしれないというような気がしています。
 私の個人的な経験でいうと、先ほどちょっと発表の中で言及した、神戸であったサマースクールというのは、「意識」を学際的に研究しようというサマースクールだったんですね。「意識」という非常に大きなテーマで、科学にとってはまだ全然達成できていない、解明できていないテーマとしてあると思うんですけれども、こういう大きなテーマがあって、それを一緒にやろうということで人が集まってくるという面はやはり非常に強くあると思います。
 それも一昔前までは「科学者として実績を出したければ意識なんかに手を出すなよ」と例えば神経科学の分野などでは言われていたらしいんですね。全然成果が出ないからということらしいんですけれども、そういうような、なかなか成果が出ないかもしれないような大きな問いにチャレンジするというのは、共同研究、しかも学際的で異分野融合的な共同研究の目標として非常にいいのではないかという気がします。
 すみません、2番目のほうの御質問を、もう一度まとめていただけませんか。
 
【北本委員】  大きな問題に取り組み続けるような、自分で解ける問題に小さくしないで、大きな問題をみんなで一緒に解いていくことを促すようなことはされているのかという質問です。
 
【田口委員】  そうですね。それは我々のCHAINのプログラムでは、最初のオムニバス講義、必修科目のオムニバス講義で、それぞれの教員が学際的な研究を紹介するんですね。自分自身がやっていたり、自分の分野でやられていたりする学際的な異分野融合的な研究を紹介する。それをそれぞれの教員が非常に面白がってやっていますので、実に面白いんだよという形でそれをプレゼンするわけですね。そういうものを見て、ああ、なるほど、こんな研究があるのかと、こんなやり方があるのかというところに気づく学生がいろいろ出てくると。その後で、そういう講義を聞いた後で、今度は自分たちが自分の研究を紹介してほかの分野の学生と交流するようになりますので、そこで自分もやってみようという学生が一定数出てくるというような形になっています。
 そういうやっぱり実例を見せるということが1つのモチベーションにつながってくるのかなという気がしています。
 
【北本委員】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。まだまだいろいろ御議論あるかと思いますので、時間ですので、このぐらいにしたいと思います。
 ちょっと最後に一言だけ、後半の部分について私の感想を申し上げさせていただくと、名子室長に御紹介いただいた前のJSPSのプログラムというのは、領域開拓と実社会の課題対応とそれから国際展開というのは、ある意味では分解したようなスキームになっていて、それに対して、例えば今、現段階で実施している学術知共創プロジェクトとか、あるいは今日の恐らく田口先生の御発表もそうだと思うんですけども、あんまり分解するというよりかは、それらがある意味でいろんな形で有機的につながっているようなタイプのプログラムなのかなという気がいたしました。
 最後のところで問題と目的が違うみたいなこともかなり強調されていましたけども、問題を共有化することによってディシプリンを新しく領域開拓することができるし、そのことによってある意味では企業とも連携できて、そういう意味で実社会課題にも対応する、国際的な連携もやっていくという、伝え方の1つの例を示していただいたのかなと思います。
 そういう意味でいうと、ある意味では、ここ、どこまで我々、意識的にやったかというのは微妙なところもあるんですけども、分解してやるのではなくて統合的にパッケージでやろうということを今、いろんな形で促そうとしていて、田口先生は1つの先行事例ですし、多分JSPSのプログラムの中でいろんなものも試みられていると思うので、ちょっと今後そういうものをより長期的に支援するにはどうしたらいいのかだとか、そこは先ほども少し議論のあった出会いの場の支援みたいな話だったり、URAの役割の話だったり、その辺りにもつなげていきたい。
 ただし、これもやっぱり多分支援の話だけにすると若干矮小化しちゃうので、どういう形がいいのかというのはまた少し今後議論をさせていただけるといいのかなと思いました。
 田口先生、どうもありがとうございました。
 その他また御意見ありましたら事務局のほうにメール等でいろいろいただければと思います。
 それでは、本日の議題は以上となりますので、次回の日程等につきまして事務局から連絡いただければと思います。よろしくお願いします。
 
【髙田学術企画室長補佐】  先生方、どうもありがとうございました。
 次回の本委員会につきましては、既にお知らせしておりますとおり、1月26日、金曜日、15時から開催予定となっておりますので、よろしくお願いいたします。
 また、本日の議事録につきましては、後日メールにてお送りさせていただきますので、御確認のほうよろしくお願いいたします。
 連絡事項は以上となります。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 本日はこれで閉会とさせていただければと思います。皆様、どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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