人文学・社会科学特別委員会(第14回) 議事録

1.日時

令和4年10月14日(金曜日)16時00分~18時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 人文学・社会科学に関連する指標について(NISTEP定点調査、オルトメトリクスについて等)
  2. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、勝委員、小長谷委員、須藤委員、仲委員、尾上委員、加藤委員、神谷委員、岸村委員、小林委員、新福委員、山本委員、後藤委員、田口委員
(科学官)
松方科学官、木津科学官、恒吉科学官、松田科学官、渡慶次科学官、外田科学官

文部科学省

河村学術企画室長、二瓶学術企画室長補佐

5.議事録

【二瓶学術企画室長補佐】  定刻となりましたので、委員の皆様、尾上先生だけまだ確認できておりませんけれども、ほぼ予定されている委員の皆様はおそろいでございます。
 城山主査におかれましては、開会いただきたく思いますので、よろしくお願いいたします。
 
【城山主査】  それでは、定刻となりましたので、ただいまより第14回人文学・社会科学特別委員会を開催いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、本日の委員会の開催に当たり、事務局から注意事項と本日の出席状況についての報告がありますので、よろしくお願いします。
 
【二瓶学術企画室長補佐】  本日は、オンラインでの開催となりますので、事前にお送りしておりますマニュアルに記載のとおり、御発言の際には「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、指名を受けましたらマイクをオンにし、お名前を言っていただいた上で、ゆっくり御発言いただければと思います。なお主査以外の委員の皆様は、御発言されるとき以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 機材の不具合等がございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。
 本日は、白波瀬委員、井野瀬委員、戸田山委員、飯島委員は御欠席でございます。また、山本委員につきましては、少し遅れて御参加という御連絡をいただいているところでございます。あと、尾上委員が御出席予定でございますが、現在まだ確認できていないという状況でございます。
 本日出席予定の皆様は18名中14名でございまして、定足数を満たす予定になっておりますことを御報告いたします。
 また、本日は科学技術・学術政策研究所から赤池上席フェロー、伊神センター長、山下主任研究官、林室長に御出席いただいております。また、オブザーバーといたしまして科学技術振興機構の久保田副調査役にも御出席いただいております。
 なお、本日の会議は、傍聴者の登録の上、公開とさせていただいております。
 以上でございます。
 
【城山主査】  それでは、配付資料の確認を事務局からお願いいたします。
 
【二瓶学術企画室長補佐】  本日はオンラインでの開催となりますので、資料は事前に電子媒体にてお送りさせていただいております。本日の主な議題に係る資料に関しましては、次第のとおり資料1から資料3までお配りしております。資料に不足等がございましたら事務局までお知らせください。
 以上でございます。
 
【城山主査】  それでは、議事に移りたいと思います。議題(1)、(2)とございますが、議題に先立ちまして、科学技術・学術政策研究所の赤池上席フェローより一言御挨拶がございます。よろしくお願いします。
 
【NISTEP(赤池)】  NISTEPの上席フェローの赤池でございます。今回は、私どもの研究成果の発表機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
 まさに「総合知」は、CSTIをはじめとしてモニタリングをどうやるかというのが大きな課題となっていて、本委員会でも具体的な宿題をいただいているところでございます。ただ、やっぱり「総合知」を1つの指標というか、捉えるのは非常に難しくて、先日も私どもからRCUKのお取組だとかを御紹介させていただています。「総合知」は両面ありまして、社会課題へのアプローチと、それから人文学・社会科学、自然科学の横の連携、つまり学問としての連携と両面あるのですけども、特に今回は定量的な評価ではなくて、定性的なアンケートによる調査として定点調査の取組をやっています。これもCSTIや人社室なんかとも綿密に調査票の打合せをして、今、初年度に入ったところですので、御紹介したいと思っています。
 もう一つはオルトメトリクスなのですけども、「総合知」のもう一つの側面として社会的な課題にどうアプローチしていくかというところがございます。今までの論文だとか、いわゆる特許だとかのよく使われている指標とは別に、新しい社会との関係、インタラクションにおける測定をどうするかという観点からお話をさせていただきたいと思います。いずれにせよ、もちろんできることも大事なのですけども、これによって測れないところがどういうところなのかということも御考慮いただきながらお聞きいただければありがたいと思います。
 それでは、よろしくお願いいたします。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、まず、議題(1)に入りたいと思いますが、「人文学・社会科学に関する指標について(NISTEP定点調査、オルトメトリクスについて等)」でございます。
 最初に、科学技術・学術政策研究所の山下主任研究官から「NISTEP定点調査2021」について御説明いただきたいと思います。
 それでは、資料1に基づきまして、山下主任研究官、よろしくお願いいたします。
 
【NISTEP(山下)】  ありがとうございます。
 それでは、画面を共有させていただきます。私からは、「NISTEP定点調査2021」について御紹介させていただきます。
 まず、本発表の背景と内容についてですけれども、こちらの委員会で人文学・社会科学の研究成果のモニタリング指標の検討がなされておりまして、学際研究や他分野との共同の含む「総合知」に関する議論が行われていることを承知しております。他方、NISTEP定点調査では、人文学・社会科学部門の研究者を含む回答者を対象に、幅広いトピックについて意識調査をしているという状況がありまして、委員会の事務局からの依頼に基づき、参考情報として調査について御紹介させていただきたいと思います。
 本発表の構成ですけれども、まず、NISTEP定点調査について、回答者・調査票の構成、人文学・社会科学研究者の選定等の部分を中心に御紹介させていただきたいと思います。その上で、定点調査の結果に関して、事務局から御示唆いただきました「総合知」の活用、地域創生、知識に基づいた価値創出、学術研究・基礎研究に関する結果について御紹介させていただくとともに、関連する結果としまして私どもがピックアップしました事項についても御説明させていただきたいと思います。
 こちらのスライドがNISTEP定点調査の全体像を説明したものになります。まず、この調査は、第一線で研究開発に取り組む研究者や有識者への意識調査から、科学技術・イノベーション基本計画中の日本の科学技術やイノベーション創出の状況変化を定性的に把握する調査です。こちらは第6期基本計画期間中の5年間を対象としまして、毎年1回、同一集団に同じアンケート調査を実施しているという特徴がございます。こちらのNISTEP定点調査2021は、第6期期間中の第1回目の調査でして、2021年11月から2022年2月にかけて実施されました。
 左側に移っていただきますと、回答者、調査対象者の枠がございますが、まず、第一線で研究開発に取り組む大学・国研等研究者1,500名の中には、自然科学分野の研究者と、今回のNISTEP定点調査2021から人文学・社会科学の研究者が調査対象者に加わっております。
 その下の有識者800名といいますのは、主にマネジメントに取り組む方ですとか、あるいは企業の代表者、研究開発担当の責任者の方、さらに俯瞰的な視点を持つ者というグループもございますが、こちらは政府の審議会の委員の方ですとか、一定のプログラムのPD、POといった方を対象としております。このような調査対象者を設定している背景としましては、異なる視点を持つ回答者グループに極力同じ内容の質問を行い、結果を比較するというようなところにございます。極力といいますのは、回答者によって質問のスコープが異なる、その方が所属する組織について聞く場合が主に研究者を対象とした場合に対して、有識者の方には組織全体ですとか日本全体を俯瞰した状況を回答してもらうというような特徴がございます。
 右側の図表が質問項目を示したものです。①から⑥のパート、研究人材、研究環境、研究活動及び研究支援、産学官連携及び地域、大学の機能拡張と戦略的経営、科学技術・イノベーションと社会というような構成になっております。最後の6番目の項目は少し広い内容になっておりまして、国際連携もこちらに含んでおります。
 基本的には選択式のアンケートですけれども、一部自由記述の回答で、その回答の背景を探るというようなこともしております。
 こちらが人文学・社会学分野の研究者の選定方法ですけれども、まず対象となる組織・部局を選び、その次に回答者を選定するというような構成になっております。まず、組織・部局の選定ですけれども、アクティブに研究に取り組んでいる研究者を選定するため、科研費(大区分A)の採択数上位の26大学を抽出し、そちらから総務省の科学技術研究調査において、「文学、法学、教育、経済学と、その他人文学・社会科学」に分類されており、かつ20名以上が所属する部局を選定するということをしております。あわせまして、人間文化研究機構の研究所・施設もこちらのカテゴリーの対象となっています。
 選ばれました大学は26大学、そのうちの14大学は国立大学、12大学が私立大学という構成になっておりまして、公立大学は含まれておりません。
 このようにして選ばれました部局の長の方に、この以下の2つの定義を満たす研究者のランダムな選定というものを依頼しております。この定義を満たす方々を、私どもの中では第一線で研究開発に取り組む研究者と呼んでおります。
 なお、調査事務局のキャパシティの制約によりまして、人文学・社会科学の研究者の回答者数はほかの回答者グループの回答者数よりも少なくなっております。それも関係しまして、人文学と社会科学の別に回答者を選定するということはしておりません。
 こちらは人文学・社会科学分野の研究者の回答者属性を示したものです。まず、回答者は全体で93人いらっしゃいます。こちらの職位をまず見ていただきますと、教授クラスの方が41%、准教授クラス37%、助教クラス23%というような形になっています。
 分野に関しましてはこのような構成になっておりますが、その他の部分がやや大きいというような状況になっています。こちらは、便宜的に人間文化研究機構を含めさせていただいております。
 回答者につきましてはこのような状況ですけれども、集計する際には母集団の構成比に従って集計結果を調整しておりますので、この性別ですとか職位別の構成比による影響は出ないというような形になっております。
 一方、こちらは自然科学研究者について結果を示す際に、集計する際のカテゴリーを示したものです。こちらは論文数シェアを用いた大学のグループ分類という形になっておりまして、私どもNISTEPの分析ではしばしば用いられるものです。こちらは第1Gから第4Gまでございまして、それぞれこのようなシェアで設定されております。このような形でグループを分けますと、おおむね回答に傾向が見られるというような状況がこれまで確認されております。
 こちらの自然科学研究者の結果と人文学・社会科学研究者の結果を比較するわけですが、どれを対象として比較するのかというのは単純ではないという状況がございます。まず、人文学・社会科学研究者の回答者は、相対的に研究資金に恵まれているという点では、自然科学研究者の第1G、第2Gに近い可能性がありますが、他方で、論文数シェアを基にした分類というものは、必ずしも人文学・社会科学にはそぐわないのではないかと思われます。ですので、本発表ではこのような制約を踏まえつつ、大学の自然科学研究者全体の回答結果との比較を行うということをしております。
 その次が、集計結果を御覧いただく前に把握していただきたい質問と回答の例と、それを集計した結果をどのようにお示しするかということです。まずは質問項目についてですが、たとえば、研究人材のパートの中にはこのような質問があって、6段階の尺度で「不十分」から「十分」を答えていただくような形になっています。なお、自身にとってなじみのない回答については「分からない」というのも選択していただく形になっています。
 このようにして得られました定性的な結果を定量化するために指数というものを求めております。こちらは、「1」を0ポイント、「6」を10ポイントという形でポイント化しまして、その平均を取るということをしております。その際に母集団の比率に割り戻すことをしており、それがこの母集団推計を実施というところの意味するところです。
 このようにして求められました指数ですけれども、その結果を端的に表現するために、その解釈を整理しております。こちらは全体の指数の分布を基にこのような設定をしておりまして、「十分」との認識は指数5.5以上で晴れマーク、それから「著しく不十分」の指数2.5未満までどんどん天気が変わっていくというような形で結果を示しております。
 では、次のスライドから調査の結果をお示しいたします。まず、「総合知」の活用に関しては、人文学・社会科学研究者の回答では、自然科学研究者全体と比べて相対的に指数が高いという傾向がございます。ただ、こちらのQ604というのは社会的課題に基づいた研究課題の設定時の話で、その下のQ605が研究開発の実施時ですけれども、このフェーズを経ますとやや指数が下がるというような状況がございます。
 また、Q605では、604と比べて「分からない」を選択した回答者の方の比率が高くなっておりまして、課題設定時に比べると研究開発実施時の協働というものは相対的にあまり一般的ではないという状況があるのではないかということが示唆されます。
 この下側のボックスは、このテーマに関連した自由記述の回答から論点をピックアップしたものです。下線が引いてあるものが人文学・社会科学分野の研究者から言及があったものです。こちらでは、異分野連携を促進するには文系と理系とを分けてきた日本の伝統を廃する必要があるとか、全てのテーマや人が「総合知」の推進に適するわけではないといった意見が見られております。
 その次が地域創生に関するものですけれども、こちらの人文学・社会科学の研究者の回答では、いずれの指数でも大学の自然科学研究者全体よりもやや指数が高いというような状況が見てとれました。
 全体では、大学グループで見ますと第2Gから第4Gといいますのが大都市圏以外の大学が含まれる大学ですけれども、そちらのほうで相対的に指数が高い状況で、そちらとおおむね似たような指数の状況であるというような状況です。
 他方、大学の外部の方々からの、特に企業や俯瞰的な視点を持つ者の方々からの指数は低いというような状況がありました。
 こちらの地域創生につきまして、人文学・社会科学研究者からどのような意見が寄せられたかといいますと、教育活動や市町村史の編さん等を通じて地域や行政に貢献しているというような具体例ですとか、地域創生に取り組む上でのリソースを組織的に確保する必要があるのではないかというような意見も見られました。
 関連しまして、知識に基づいた価値創出ですけれども、こちらはいずれの質問でも相対的に人文学・社会科学研究者の指数は低い傾向にあります。こちらは、民間企業との連携というものはあまり活発には行われていないというようなニュアンスの自由記述の回答もございました。
 その背景としまして、知識に基づいた価値創出を促すには、それが評価されることが重要であるとか、研究者が民間企業との連携を進めるためには、こちらも組織的な支援の取組が必要であるというような記述が見られました。
 その次が、学術研究・基礎研究に関する項目です。こちらは、御覧いただきますと分かりますように、いずれも曇りか雨というような指数になっておりまして、全体的に課題が認識されているセクションになります。その中で、人文学・社会科学研究者の結果の特徴を見てみますと、Q303の基礎研究における国際的に突出した成果という指数が低いというような状況があります。
 こちらの背景としての自由記述回答としましては、自由な発想に基づく探索的な研究の実施を可能にするため、運営費交付金等の基盤的研究費の拡充が必要であるとか、使途や使用年度の限定等により、研究費の使いやすさがそがれている、安定的でない研究環境が、研究者の研究テーマの選択の幅を狭めているといった問題意識が示されています。
 こちらのスライドでは基礎研究の枠で国際的に突出した成果を見ておりますが、その次のスライドでは、では、国際的な活動について、人文学・社会科学研究者の方々はどのように認識されているのかというものを整理したものです。こちらは、自然科学分野の研究者と比べますとやや指数が高い傾向にありまして、基礎研究における国際的に突出した成果では指数は低いのですが、こちらではそうではないというような傾向が見られます。
 ただ、課題も認識されておりまして、事務手続等を日本語で行う必要がある点や事務作業が多い点が、外国人研究者の受入れの阻害要因となっているとか、日本の研究費の利用ルールが国際連携を阻害することがあるといった意見が見られています。
 その次に、研究者を目指す若手人材でも人文学・社会科学研究者からの課題が示されています。特に博士号取得者のキャリアパス多様化への環境整備の指数が相対的に低いというような状況があります。
 その背景としましては、学位取得後に任期なしのポジションを得るチャンスを増やさなくては、博士課程学生の将来の失業リスクを増すことになってしまうとか、若手研究者のキャリアパスに関して、アカデミアのみでなく、それ以外のキャリアパスがもう少し太くなることが望ましいというような意見が見られました。
 その次が研究活動の変容、これはICT技術を活用した研究活動の変容です。これは全体的に指数は高くない状況ですけれども、人文学・社会科学研究者の指数も高くはないというような状況です。他方、研究交流や教育等におけるリモート化はコロナ禍を契機にかなり進んだという状況が全体的に示されていまして、指数は高い状況です。
 こちらも、ICT技術の導入に際しては、組織的なサポートなしでは皆が使いこなせるようにならない、組織の環境が新しい技術に対応していないとの課題があるといった組織に関する課題意識が示されています。また、データ公開・共有に関しては、作業増大を通じて研究時間が圧迫されるといった懸念も示されています。
 結果の最後ですけれども、こちらは特に自然科学研究者との指数の差が大きかったものです。上のQ403,Q107というベンチャー企業を通じたというのと、博士号取得者のという質問項目は既に触れさせていただきましたが、こちらは人文学・社会科学研究者の指数が特に低いという状況がありました。
 他方、Q203の競争的資金等の確保、Q112の研究者の業績評価の観点の多様化というところでは指数が高い傾向にあります。これは、競争的資金のほうにつきましては、可能性としましては相対的に自然科学と比べると少ない研究費でできる研究の割合が高いということで評価が高いという可能性がある一方で、今回、調査対象者は相対的に研究資金に恵まれた方を選定しておりますので、その影響が出ている可能性もあると考えております。
 業績評価の観点の多様化につきましては、もともと書籍などの多様な成果が評価されているという人文学・社会科学分野の文化が反映されている可能性があると考えております。
 こちらが、人文学・社会科学研究者にとって答えにくかった質問項目です。やはり産学官連携に関する質問項目ですとか、研究とイノベーションの接続というところに「分からない」を選択した回答者が多い傾向にありました。その他、研究方法の変革や博士課程関連の質問での「分からない」を選んだ方の割合も相対的に高いという状況でした。
 最後に簡単に全体を振り返らせていただきますと、相対的に指数が高かった項目としましては、社会的課題に基づいた研究課題の設定時の異分野の協働、地域創生に資する人材の育成、競争的資金等の確保、研究者の業績評価の観点の多様化というような点がございました。
 自然科学研究者と比較して相対的に指数が低かった項目としましては、基礎研究における国際的に突出した成果、博士号取得者のキャリアパス多様化及び博士課程学生の関連の質問項目、ICT技術に基づく研究方法の変革の進展、ベンチャー企業を通じた知識移転や新たな価値の創出といったところが挙げられます。
 「分からない」を選んだ方が多かった項目としましては、ベンチャーの質問項目、博士号関連の質問項目がございました。
 最後に、こちらの結果につきましての留意点ですけれども、既に申し上げましたとおり科研費の獲得上位校から回答者を選定しているというバイアスがございます。また、回答者数は限定的で、比較には注意が必要だという状況がありますとともに、分野等の属性を区切った分析は現時点では困難な状況です。また、質問項目が自然科学分野の回答者と共通しておりますので、人文学・社会科学において重要な質問項目が欠落している可能性があると考えております。
 以上、私からの説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明について御質問、御意見がございましたら「手を挙げる」ボタンで挙手をいただければと思います。
 小林委員、お願いします。
 
【小林委員】  ありがとうございます。
 まず初めに、NISTEPのこの定点調査に人文学・社会科学研究者を今回から加えていただいたということは非常に感謝しております。回収率も非常に高いので、正確な調査であるというふうに思います。
 1点お尋ねしたいのは、集計結果を調整しているということをおっしゃったのですが、これはウエイトを母集団に合わせて回収サンプルに掛けているという理解でよろしいのかどうかということです。そうなりますと、男女比の問題で、母集団に合わせるとかなり女性の回答を減らすという形になるのですが、そういう理解でよろしいのかどうかということが質問になります。
 あとは、全体として非常に実態をよく表していることだというふうに思います。ただ幾つか人文学・社会科学の立場から説明させていただくと、スライドの9枚目になりますが知識に基づいた価値創出、これが非常に低いということだったのですが、知識に基づいた価値創出という言葉と、自然科学ではこれでいいのだと思うのですが、人文学・社会科学においては民間企業やベンチャーと連携する、しなければ知識に基づいた価値創出にならないということになってしまうのか、ちょっとそこの点が、経済学は別なのかもしれませんが、それ以外で必ずしも民間企業やベンチャーとつながらなくても知識に基づいて価値創出は当然あり得ると思うので、民間、ベンチャーと関わらないから人文学・社会科学は知識に基づいた価値創出をしていないという意味ではないということは御理解いただきたいと思います。
 それから、その次の学術研究・基礎研究のところで、国際的に突出した成果が少ない一方で外国人研究者の受入れをやっているというところになるのですが、これは分野にもよりますが、例えば経済学とか、あるいは国際法とか国際行政学は別だと思いますが、それ以外は制度、事情がかなり違ってきます。例えば法律であれば、英米法と日本の法律はもう根本的に違うものになります。あるいは制度でもかなり違うものになります。そうするとどうしてもドメスティックな研究にならざるを得ない一方で、違う制度の国との研究を比較することで、その制度の違いが何をもたらすのかということを研究するということになる。したがって、この10枚目が悪い一方、11枚目がいいというのはそういうところにあるということで、共通した国際ではないけども、国際比較は重要であると御理解いただければと思います。
 あとは、人材のキャリアパスの多様化なのですが、修士まで行った後は多様にいっています。かなり国家公務員になる者も今は多いです、院試を通して。あるいは国際機関のところであれば、修士を出ていないとそもそも応募できないという国際機関は非常に多いです。ところが、人文学・社会科学では博士まで行くと、もうちょっとどこへ行けばいいんでしょうという、アカデミア以外の世界でなかなか受け入れていただいてないので、多様化を求められたときに、具体的にどういうことを念頭に置いていらっしゃるのかというのを伺えればと思います。
 以上です。よろしくお願いいたします。本当に調査、どうもありがとうございます。
 
【城山主査】  それでは、いかがでしょうか。
 
【NISTEP(山下)】  御質問、コメントありがとうございます。
 まず、こちらの集計のときの調整につきましては、御指摘いただきましたとおりウエイトバックをしたという御理解で正しいです。ですので、女性の回答につきましては圧縮されるというような結果になっているという状況です。
 価値創出のところにつきましては、確かにこちらの質問項目の並びを見ますと、民間企業との連携というものを前提とした質問が並んでいまして、人文学・社会科学での価値創出というのは必ずしも企業との連携を経ないものもあるというのはよく意識したいと思います。
 その次の学術研究・基礎研究につきましては、こちらは背景につき詳細に御説明くださいまして、どうもありがとうございました。こちらについては、この解釈についてはなかなか難しいと考えておりまして、この基礎研究という言葉の意味の捉えられ方がもしかしたら異なるのかというようなことも内部では議論していましたが、今回御説明いただきまして非常にクリアになりました。
 その次の、修士までの卒業者の方のキャリアパスは多様ですが、博士号取得後はなかなか多様でないということに関しては、自由記述の回答を見る限りでは、なかなかどういう形でキャリアパスを太くしていけばいいかというような示唆は得られていない状況で、今後どういうことがあり得るかということについても含めて検討していきたいと考えております。
 私からは以上です。
 
【小林委員】  どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  今のお答えの2つ目の知識に基づく価値創出ですが、これは最後に言われた人文学・社会科学において重要な質問項目が欠落しているという話とも絡むのかもしれませんが、解釈として民間企業との連携だけじゃなくて、例えば出版社だとかメディアと連携してある種の啓蒙的活動をやりますとか、そういうのも含めて対象にするというような形で質問を変えるということも長期的にはあり得るという、そういう理解でよろしいでしょうかね。
 
【NISTEP(山下)】  ありがとうございます。
 こちらにつきましては、長期的にはということでは可能性はございますが、今回、この定点調査につきましては継続調査という制約がございまして、この5年間の間は質問項目を変えることができないというような状況がございます。
 
【城山主査】  だから、そういう意味でいうと、さっき申し上げたように既存の質問の解釈を変えるのではなくて、質問項目が欠落していたので別の質問項目を立てて人社については把握するという、何かそういう形でやるのであれば、これは新規項目なので別に構わないわけですよね。
 
【NISTEP(山下)】  それに関しましては、各年度にそのときの問題意識に基づいて深掘調査というものを2年度以降に実施する、アディショナルな調査票を少し追加するというようなことをしておりまして、そのような中で検討するという可能性もあるかと個人的には考えております。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、新福委員、お願いします。
 
【新福委員】  どうもありがとうございます。
 今のやり取りも、本当にそのとおりなのではないかというようなことでお聞きしていていました。この定点調査をやって経年的な変化というのを見てと理解しましたけれども、こういうふうな形で人文社会系の研究者の活動が広がっていってほしいというような目的がありますでしょうか。そのために、民間企業との連携ですとか、博士卒業後の多様なキャリアについて、モデル事例がもしあったとしたら、そういったものを幅広く周知することでチャレンジしようかなという方が増えるということを狙っていくのかなというのを何となく考えていたのですけども、定点調査のその先にどういったことを目指されているのかというのと、今言ったようなモデル事例の周知というようなことがあるのかということを教えていただきたいです。
 
【城山主査】  よろしくお願いします。
 
【NISTEP(山下)】  ありがとうございます。
 まず、モデル事例につきましては、自由記述の質問で広くどのような事例があるかについても聞いておりますので、そちらから得られたものをぜひよく把握したいと考えております。
 こちらの地域創生のところでは、教育活動や市町村史の編さん等を通じて地域や行政に貢献しているというような、こちらは人文学・社会科学研究者の方の回答から得られた自由記述ですけれども、このような貢献の事例が、モデル事例になり得ると考えております。こちらは、先ほど論点にも出ました企業との連携を経ない価値創出というような文脈でも捉えることができると考えておりまして、このような事例というものを積極的に把握していきたいと考えております。
 こちらの定点調査の先についてですけれども、まず、この定点調査につきましては、あくまで研究者ですとか有識者の方の意識を経年で把握していくということを目指しております。そちらの結果につきましては、適宜政策担当者の方々にもインプットして、議論もし、またそれもその後の調査にフィードバックするというような形で取り組んでおりますので、こちらから得られました結果を基に、ぜひ政策に対して有用な情報をインプットして、今後の人文学・社会科学分野の支援に生かしていきたいと考えております。
 
【城山主査】  赤池さん、関連してでしょうか。
 
【NISTEP(赤池)】  赤池でございます。ちょっと関連して補足させていただきます。
 先ほど山下からも説明しましたとおり、基本計画の5年ごとに大きな改定をして、もともと各項目に対して継続的にというところが非常に強く出ています。それに対して中見出しをつけるとして、こうやってつけているというのが実態のところがございまして、そういう意味では、すごく深い意味での知識ということの表現だとか、例えばここにもありますとおり俯瞰的な視点を持つ方と、これは審議会の先生方とかそういう意味なのですけども、そのくくり方というのは非常に難しいところもございます。この5年に一度のアップデートにつきましては、そのときには配慮させていただければと思っています。
 また、もう一つありましたのは、深掘り調査もございますので、そういうところではもっとフレキシブルなこともできますので、人社ばかりではないのですけども、そこはぜひいろいろなお知恵を積極的に入れて考えていきたいというふうに考えております。
 また、弊所のもともと自然科学系の調査がベースにあって、科学技術予測調査もそうですし、指標などもそうなのですけど、そういう意味では人文学・社会科学の先生方からはちょっと違和感があるところもあるかもしれませんが、そこも努力すべきところだと考えておりますので、徐々に直していきたいというふうに考えております。
 私からの補足は以上でございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 そうしましたら、よろしいでしょうか。最初に小林委員から御発言がありましたように、多分こういうことをやっていただくのはすごく良いことで、かつ今も課題になっている「総合知」だとか地域創生なんかの関係でも、人社系の研究者は意外といろいろなことをやっていると、少なくとも主観的なパーセプションはあるのだということは分かったというのも重要なことかなと思いますので、今後、我々が検討したようなこととある意味では相互補完的な関係もあるかと思いますので、いろいろ連携させていただければと思います。
 では、どうもありがとうございました。
 
【NISTEP(山下)】  ありがとうございました。
 
【城山主査】  それでは、次に、同じく科学技術・学術政策研究所の林室長から、「オルトメトリクスの背景・概要と人文学・社会科学系への応用の可能性」について御説明いただければと思います。
 それでは、資料2に基づきまして、林室長、よろしくお願いいたします。
 
【NISTEP(林)】  御案内、ありがとうございます。NISTEPデータ解析政策研究室長の林です。
 それでは、「オルトメトリクスの背景・概要と人文学・社会科学系への応用の可能性」についてお話しさせていただきます。
 まず、問題意識なのですけれども、既にこの委員会で人文学・社会科学の社会的インパクトはどのように測れるかという議論がされたと伺っております。学術企画室からいただいた当面の見立ては、人文学・社会科学においては、社会的な機能によるインパクトが社会全体への啓発から個別の地域住民の理解増進など、とにかく多様であって多方面であり、研究成果のインパクトとして丁寧に捉えていくべきであるということを鑑みて、現時点では計量的な方法で計測するのは困難であると伺っております。私も全くもってそのとおりだと思います。
 その上で、今回の目的は、今後の可能性、方策として、2010年代より自然科学系の査読付き論文を中心に社会的インパクト計量を試みてきたオルトメトリクスの動静をオープンサイエンスの潮流を踏まえて紹介することで、皆様の議論の参考になるのではないかということでお話しさせていただきます。
 最初に、オープンサイエンス時代の研究評価について、大きな全体の潮流についてお話しさせていただきたいと思います。オープンサイエンスにつきましては、依然いろいろな定義があるのですけれども、昨年12月、私も諮問委員会の委員として参加したユネスコの勧告では、このような形で表現されています。「多言語の科学知識を誰もが自由に利用・アクセス・再利用できるようにし、科学と社会の利益のために共同研究と情報の共有を拡大し、科学知識の創造、評価、伝達の過程を従来の科学界を超えて社会を構成するすべてのアクターに開放するための様々な運動と実践を統合した包括的な概念」ということで、非常に言葉が多く難解なのですけれども、一言で言うとICTの力を使って知識をオープン化することで科学と社会を変えると私はいつも説明させていただいています。
 その上で、オープンサイエンスの話だけで持ち時間が終わってしまわないよう、一足飛びにオープンサイエンス時代の研究評価というのは、あるいはインパクト計量というものは、結局多面性、多次元性を持つ解析ができる時代と御紹介させていただいています。お詳しい方には釈迦に説法になりますが、これまで紙ベースですと論文を数えて、あるいは特許を数えて著者や機関を名寄せをするだけすごく苦労してきた歴史がありました。その作業が進み、一定のデータベース化が進み、その範囲で研究評価に役立てていたのですけれども、今はデジタルネイティブに、しかもウェブ上でフローでコンテンツが流れるようになりましたので、この図にございますように多様な情報源との連携による目的に応じたメトリクスが計測可能になりました。あるいは、一々データをダンプするのではなくて、フローとして処理してその場で可視化する時代になっております。
 こういったネットワーク化された情報源の中で、研究者目線で見ると自身のコンテンツ、あるいは機関のコンテンツがどう見えるかということが非常に大事な世の中になっておりまして、私はこの右下に書いてある論考で、計量書誌学から研究活動計量学のようなものになるというようなお話をさせていただきました。
 それと似たような話なのですけれども、識別子(ID)が整備されることによって研究インパクトが多様化、多次元化しています。具体的には、投稿、査読、出版等の研究活動や、研究者、研究費、研究機関等様々なアイテムにIDがつくことによって、また、それを組み合わせて研究活動そのものの見える化が進んでいる状態です。
 こちらに御紹介しているのはDigital Science社のDimensionsというサービスですけれども、オープンデータを中心にID同士を突合させることによって実際に研究活動を見えるようにしている。一部e-CSTIも実はDimensionsとかエルゼビアさんのデータを使っているわけなのですけれども、研究費に対してどのぐらいの成果があるとかというものが見えるという時代、あるいは査読の貢献が匿名性を担保して見える化するなど、このような多次元化がオープンサイエンス時代の研究インパクト“計量”です。研究“評価”ではありません、研究評価はその先の話と念のために申し上げさせていただいて、ICTの発展によってまず機械が何か今後の研究評価のために役立つ様々なものを数えられるようになっています。
 その識別子なのですけれども、念のために、今までは紙ベースですとインパクトファクターというのはジャーナルベースのメトリクスが中心だったわけですけれども、電子ジャーナル化することによって論文レベルのメトリクスとか著者レベルのメトリクス、著者を集めれば機関、機関を集めれば国のメトリクスになります。それでサンエンスインパクト、スカラリーインパクト以外にも、今回議論になっている社会インパクトということで、大きなものとして、例えば経済的、教育的インパクト、社会インパクトは先ほど冒頭で申し上げたとおり多様で多方面になりますので、それだけでも議論は終わらないかと思います。
 あとは、科学技術行政的にはROI、投資に対する効果というのを見たいということが、繰り返しになりますが、評価につながるインパクト計量ができる時代になっていると考えいただければと思います。
 さて、そのようなオープンサイエンスによる研究インパクト計量が多様化、多次元化する中で、オルトメトリクスというのはどういうものかについて御紹介させていただきます。
 まず、2010年に出されたオルトメトリクスマニフェストと呼ばれているものの解説をこれから行うわけですけれども、それによりますと、主な研究インパクトの計量方法には利用、アクセス数とかダウンロード数、あとピアレビュー、研究者仲間による評価、それからよく中心になる引用、そしてオルトメトリクスがあると。オルトメトリクスは新しいものとして、利用の場合、アクセス数、ダウンロード数は使えそうで使えないというのが今のところの結論と理解しています。簡単に操作できるということと、1アクセスのダウンロードを整えるというのは、論文別、分野別、ジャーナル別に1アクセスの価値を整えるのは非常に難しいという話になっています。ピアレビューは、今現在、質を測る上で最も信頼のあるものでありますけれども、とにかく時間がかかる、コストがかかる、あと最近問題になっているのはバイアスがあるという話です。男女で審査の結果が変わるとか、国籍によって変わるということが起きたりもしています。
 引用に関しては、今現在、定量的に研究インパクトを測る最も信頼性のあるものですけれども、評価(引用)に時間がかかるとか、これはちょっとトートロジーですが、社会におけるインパクトというよりは科学インパクトを中心にしていて、それでも分野やテーマ、論文の種類によっていろいろ異なるといったような課題がある中で、それ以外のオルトメトリクス、オルタナティブメトリクスを考えていきましょうということでこのマニフェストが出ています。
 オルトメトリクスに関して、定義は多少ぶれるのですけれども、私は2013年にこれを啓発として出した論考でこのように紹介しています。論文やデータセットなど様々な研究成果の影響を、現在はソーシャルメディアの反応を中心に定量的に測定するのがメインになっていますが、そういう手法を用いて新しい研究の影響度、インパクトを様々な観点から測定・評価し、被引用数を代替できるか、もしくは補完できるか、その可能性を今追求しているメトリクスとなります。「する」のではなくて、「する可能性がある」という段階だと現在は考えるべきだと思います。この図はは具体的に『PLOS ONE』と呼ばれているジャーナル、ちょっと前のものなので、今の見た目は多少は変わっているかもしれませんが分かりやすいので御紹介さていただくと、電子ジャーナルの閲覧数だけではなく、文献管理ツールとかブックマークで保存された回数、それからツイッター、フェイスブックで共有された回数などが表示されており、今は大手の出版社のジャーナルはほとんどこのようなオルトメトリクスがついているという状況になっております。
 それで、オルトメトリクスを概念的に影響測定範囲の拡大という形で御紹介させていただきますと、引用するという活動は、研究活動における最後の最後の論文を書く前のラストワンマイルの活動であって、その前に論文を見るとか、保存するとか、ブラウズ、何となく見るという話と、興味を持って保存するという活動みたいなものが、こんな単純ではございませんが、こういう3段階ぐらいは容易に分けることができて、それぞれ実は今テクノロジーが数えることが、計量できるようにはなっています。ありていに言えば引用数というのは自分の研究と関連づける活動の計量なのですけども、知識として保存することを計量するとか、興味を持つということを計量できる、観測可能になっているという状況で、その上で、これが評価につなげられるかどうかというのはこれからの話です。
 あともう一つ大事なのは、オルトメトリクスというのは2種類のオルタナティブのルートがあると。どういうことかというと、まず科学者内でのピアレビューや引用による研究インパクトを補完したり代替したりするようなオルタナティブメトリクスの話です。これまでの影響度を補完するオルトメトリクスの話と、これまでのメトリクスでは数えられない社会のインパクトを中心とした新たな指標候補としてのオルトメトリクスと2種類あって、オルトメトリクス自体は多次元に存在していることが、オルトメトリクスの理解を難しくしているのですけれども、いずれせよ、大きく分けるとこの2つのベクトルがあるとお考えいただければと思います。
 オルトメトリクスの特徴をまとめると、広域性・社会性ということで、社会の評判など専門家以外の影響度がソーシャルメディアの影響度を中心に測定可能になりました。補完・代替性ということで、引用以外の手法で、または引用では測りにくい分野の専門家への影響度が把握できる可能性があります。また、即時性・予測可能性ということで、論文公開直後からその影響度を定量的に測定でき、将来予測等に素早く活用可能な可能性を持つということで、具体的にはブログとか、アルファブロガーは日本にはあまりいないのですけれども、英語だとアルファブロガーというちょっと影響度のある人が各ブログに取り上げた論文はその後引用数が多くなるというような結果なども出ていました。
 よくある誤解なのですけれども、オルタナティブメトリクスがあれば、オルトメトリクスがあれば被引用数が要らない世界が来るかというと、そんなことはなくて、被引用数自体は1つの有力な指標であって、それに付加していくものであると考えるべきであります。
 また、一方で物理系の研究者などでは、オルトメトリクスは単にソーシャルメディアの評判、ポピュラリティを示すだけだから無視してよいということをおっしゃる方もいらっしゃるのですけども、分野によって使える可能性は十分あり、人文学・社会科学はその可能性が高さそうだというのが私の感触です。
 その3、オルトメトリクスは研究論文のインパクト計量に使われるということで、それはそうなのですけど、研究成果公開メディア自体を変えること、研究成果公開メディアをオルタネートすることによって数えるメトリクスもオルトメトリクスの定義に入ります。具体的には研究データのインパクト計量がそれに当たります。ということで、非常にメディアも多次元化していく中で多次元のインパクトを数えていきましょうという、非常に複雑な概念構成となっています。
 では、実際のオルトメトリクスの具体例について御紹介させていただきます。主なものが2つあるのですけれども、時間の関係で今回は一番メジャーであるAltmetric.comについて御紹介させていただきます。
 こちらにございますようなメディアに論文が掲載されたときに、DOIベースで言及された回数をカウントしてスコア化しています。具体的なソース源をまとめますと、ソーシャルメディア、マルチメディア、Wikipedia、ブログ、シラバスに取り上げられる、オンラインレファレンス、その他となっています。
 この図は2013年から2020年まで、Altmetric社で、その年で一番Altmetricスコアが高かった論文トップ100みたいなものを流していたものです。これをつらつら眺めてみますと、やっぱり社会的な影響度が高いもの、例えば2020年はCOVID-19に関する論文、2019年はトランプ大統領にフェイクの言葉をしゃべらせるAIみたいな、それに関する技術の論文がトップに来たりとか、私の個人的な主観ですが、マズローの5大欲求に引っかかるようなキーワードが、タイトルやアブストラクトに入っていると上位に行きやすいみたいな話があるわけです。
 このように多様な社会インパクトを一律に並べるのは非常に乱暴であるという議論が前からあって、実は去年からAltmetric社自身もそれを考慮し出しました。これは人文学・社会科学系にとっては当然の流れだと思います。結論的には、まず価値を3つに分けて、その範囲でAltmetricスコアの高い論文を評価するというような形になっているわけですけれども、当然主題分野によってオルトメトリクスも引用と同じで変わります。他にも多くのバリエーションがあって、引用の量だけでなく、引用の速度と期間もオルトメトリクスに影響を与えます。そもそも、たくさんの参照ソースを、単純にどれも1個数えられたら1とカウントすること自体が乱暴だという議論もあって、その辺りをいろいろ考えて当面3つにカテゴライズして表示するような流れになっていて、今は丁寧に後々評価につなげるように活動を拡張しているような状況と理解しています。
 ここでちょっと話を変えさせていただきまして、日本語文献のオルトメトリクスについて紹介します。今筑波大学にいらっしゃる吉田光男先生が、日本語文献のオルトメトリクスということで2013年ぐらいから活動を開始して、2014年にはこちらございます論文を書いております。Ceek Altmetricsというサイトを運営し、こちらにございますような日本のメディア、情報源を中心としたもので論文に言及があったらカウントするということをやられております。
 この図が実際にどのぐらいそもそも学術論文が言及されたかというのが週間で出るとかを表していて、下の図は今回の発表に当たって、吉田氏に作成いただいたものです。先月時点でのCiNii、J-STAGEなどの日本の論文がツイッターでどれだけ言及されているかというのを数えた結果、2020年になって飽和し始めていることが分かっています。この飽和が何を意味するかはちゃんと慎重に議論すべきですけれども、このような形で何か数えることはできる状態になっております。
 具体的な事例として、この論文はCeek.jpの上で高いAltmetricスコア、1万を超えるものに関しては、例えば東日本大震災の津波被害に関して、それが神社とどう関係しているのかといった研究が上に来るということが分かっていて、科学的なものとは何かしら違うインパクトを数えていることは間違いないだろうという流れになっています。
 続いて、吉田さんが、ほかの佐藤さんという図書館情報学の研究者と行った別の研究成果に、人文学・社会科学系のオルトメトリクスの可能性が見えましたので御紹介させていただきます。
 これは2006年から2015年までの少し前の論文なのですけれど、100万本の論文を解析すると、そもそもソーシャルメディアの言及は1~2%なのですが、こちらの表を御覧いただくと、人文社会系の割合が相対的に高いということが分かっています。それもそうかなと、定性的にはそうだろうなということが数字として出始めています。総合系が多いのは、情報系がここに入っているからという話になっているのですけども、いずれにせよ、日本語文献で人文学・社会科学がソーシャルメディア上で言及されるというところを丁寧に追いかけることによって、日本語の人文学・社会科学の研究評価を進めていく土壌はでき始めているのかもしれないという状況にあります。
 それで、その他もろもろの具体的な分野等の事例について、これを1つずつ丁寧にやると時間がかかるのでこの表にまとめさせていただきました。これは言語が英語か日本語か、メディアが査読付き論文か、紀要・モノグラフ・書籍か、研究データか、この分け方もちょっと乱暴なのを承知で御紹介させていただきますと、査読付き論文で英語になっているものに関しては、今のAltmetric.comで既に捕捉可能ですので、具体的には経済、心理学、環境学のようなところの論文は今までAltmetric.comで培ってきたような社会インパクトに関する議論ができるような状況です。
 同様に、J-STAGE、CiNiiの論文を中心に、DOIがついているような日本語文献の論文も同じように一定の社会的インパクトを数えることは可能なのですけれども、詳細は省きますが、そもそもIDの整備が遅れているという状況がありまして、そこをどう改善するかというのが政策的にも課題になっているかと思います。
 人社系にとって大事なのは紀要とかモノグラフ、書籍、今これを1つにまとめること自体に嫌悪感をお持ちになる先生がいらっしゃるのも承知の上で、恐縮ながらまとめさせていただいています。大手出版社や大学出版局を中心に、要はDOI(識別子)がついていてウェブ上にオープンになっていれば、それをカウントするということは可能なのですけれども、査読付き論文と比較するとまだ計量が進んでいないのと、あと、これを数えたときに、じゃあ、この右(モノグラフ等)と左(査読付き論文)のAltmetricスコアが同じだとして、それはどっちがいいみたいな、そんな乱暴な議論もできないので、この辺りをどう比較していくかというのもこれからの話だと思います。
 日本語につきましても同様なのですけれども、繰り返しになりますが識別子の整備と運用が遅れているという状況です。それでも今回の発表に合わせてCeek.jpを見たら、人文系で童話集で1つすごく高いAltmetricスコアのものがあるということがわかり、こういう形で私自身にとっても発見だったのですけれども、こういう形で見える化が進んでいます。
 また、今後、オープンサイエンスは研究データの利活用を中心に政策も取り組んでおり、これも結局モノグラフ同様にDOI等の識別子がついていれば計量できるのです。ただし、そもそも研究データを研究成果公開メディアとしてその分野コミュニティが認めているか、という話がまずあるので、それと一緒にむしろこれから考えてデザインしていくという話になるのかもしれません。こちらも、日本語においてはやはり識別子の整備が非常に重要になっています。
 この部分をまとめますと、研究者コミュニティ内や一般社会で研究成果について言及があったときに、機械が自動で捕捉・分析できる情報基盤整備と運用が重要であるということになります。特に日本はこの整備が相対的に遅れています。その運用の積み重ねから研究評価の議論、その前に研究インパクトの計量が間に入るわけですけれども、それはまだまだこれからつなげていくフェーズにあるというのが私からのメッセージとなります。
 ということで全体をまとめますと、人文学・社会科学系にとってのオルトメトリクスとしては、経済系など、査読付き論文やプレプリントなどある程度定量的な、自然科学系でも定量的な研究評価が一部ですが進んでいるコミュニティの場合は、ソーシャルメディアの反応を中心として一部の社会的インパクトを測る指標としてオルトメトリクスを活用できる可能性があると思います。ただし、引用と同様、その効用と限界を理解して活用する必要があります。
 人文学など、論文以外の研究成果公開メディアのデータを活用したオルトメトリクスの期待は大きいですけれども、依然開発途上にあると言わざるを得ない状況です。
 日本語の研究成果につきましても同様に期待と可能性も高いのですけれども、ベースとなる識別子の整備がまだ不十分で、今の段階で何か数え上げたもので議論するのは非常に危ない状況です。
 むしろ、オープンサイエンスの潮流に従って、人文学・社会科学系にとって最適なデジタルネイティブな研究成果公開メディアはこれから開発されると考えており、(研究者自身のニーズに応じて)ほっておいても開発されると思っているのですけれども、そこにオルトメトリクスをあらかじめ考慮してデザインするという考え方自体が重要な時期ではないかと考えております。なぜならば、テクノロジーはもう既に今日御紹介させていただいたように様々な可能性を与えています。それを研究者コミュニティ側がどう使っていくかという意識、行動の変容が必要であり、釈迦に説法になり恐縮ですけれども、評価するというのは一種の文化構築だと理解しておりますので、そのカルチャーディベロップメントにオープンサイエンスの潮流をいかにうまく取り入れるかということを考えていくことがむしろ研究者として楽しいのではないかと考えており、私も調査研究しているというような状況でございます。
 御説明は以上となります。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、御質問、御意見等いかがでしょうか。
 では、田口委員、お願いします。
 
【田口委員】  11枚目のスライドの辺りで、人文学・社会科学系の研究にオルトメトリクスは比較的有効というか、有効・有益なのではないかとようなお話をなさったかと思うのですが、今回お話の中でも何か所かでそれを示唆するようなこと、例えばSNSで引用数が多いとかそういうお話もあったと思うのですが、人文学・社会科学系にオルトメトリクスが合うと思われる理由について、もうちょっと詳しくお話しいただけたらと思うのですが。
 
【NISTEP(林)】  2点ほど大まかにあるかと思います。1つは、そもそも社会科学が社会そのものを取り扱った研究であるがために、直接割と市民に訴えかけやすいという構造的な話です。文学もそうですね。自然科学ですとどうしても自然の真理の解明というところで数学とか物理になりますと多少市民との距離があって、だからサイエンスコミュニケーションが大事な議論になるわけですけれども、構造的に人文社会学というものは社会的インパクトを測る上で相対的に有利な立ち位置にあるということがあるかと思います。
 もう一つは、やはり言語の関係で日本語のものが多い。実は、これは理工系でも医療とか工学とか土木とか、土着の研究は日本語論文が読まれ、重要であるという議論がございまして、それが読まれないとソーシャルメディアというのは取り上げられないので、日本語であると社会の反応の期待値が高いという、そういう分野は相対的にソーシャルメディアの数を数えられやすいので、数えられやすいものを丁寧に議論すれば評価にうまくつなげられることができるのではないかという形で御紹介させていただきました。
 
【田口委員】  どうもありがとうございます。確かに人文学・社会科学系は非常に社会的な評価というのも難しいかと思うのですけど、オルトメトリクスが非常に有効なんじゃないかなという感じを私も受けました。それに合った新しい形での発表形態ですか、公表形態をつくっていく、そして評価システムをつくっていくというところに何か非常に希望を感じられるような気がいたしました。
 
【NISTEP(林)】  先生には釈迦に説法ですが、それがまさに社会学としてのテーマになっているような状況だと理解しておりまして、私も微力ながらそこを探求しているような状況でございます。
 
【田口委員】  どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  続いて、小林委員、お願いします。
 
【小林委員】  御説明ありがとうございます。本来、人文学・社会科学のほうから自分たちの評価指標をつくらなきゃいけないのですが、こういうような御紹介をいただきましてありがとうございます。
 1点気になりますのは、人文学・社会科学の場合、例えば学会誌などでも全てオープンにはなかなかならなくて、そうすると学会費を払う意味がなくなってしまうということで、どちらかというとパスワードとIDでクローズドにしているところが多いと思うのですが、これはかなり分野によって違うので、本人の努力ではない部分の要素がかなり入ってくる気はしないかというのが1点です。
 もう一点としては、ソーシャルメディアのものもカウントするとなると、例えばコロナとか東日本大震災などを扱ったものはかなり話題になりますが、そうでない基礎的なものというのはあまり話題になりにくいという違い、これも本人の努力以外がかなり要素として入ってきはしないかという懸念があります。
 最後の1点、お尋ねしたいのは、これは数でカウントするとなると、評価側にとってはデータを得やすいという利点がありますが、これは私が誤解しているのかもしれませんが、例えばひどい論文を書いてソーシャルメディアで炎上した場合の量的なものと、いい論文を書いて話題になったものと同じように扱われるのかどうか。つまり量は分かるのですが、ソーシャルメディアにおけるベクトルの違いですね、「炎上」と「いいもの」のベクトルの違いはどういうふうに識別されるのか、あるいは識別しないのか、この点をお尋ねできればと思います。
 
【NISTEP(林)】  3点いただきました。最初の学会誌の議論は、小林先生とはJ-STAGEの委員会とかで御一緒していて、本当に悩ましい問題ではあるかと思います。即効性はないのですけれども、オープンサイエンスの潮流に従えば、公的資金を投じた研究論文はオープンに出せる仕掛け、仕組みをつくる、そのためのビジネスモデルの開発をどうするかという話になります。もう20年ぐらいやっていて進んでいるようで進んでないのですけれども、それを進めていかないと、結局人文学・社会科学が社会に開かれた学問となりづらくなるので、鶏と卵みたいですが、まずはオープンバイデフォルト的にできるかどうかというところが鍵だとは思います。
 あと、3つ目のほうに先お答えすると、ネガティブインパクトが、オルトメトリクスのほうが(相対的に)数えやすいという議論にはなっています。引用もそうなのですけれども、オルトメトリクスのほうが、ウェボメトリクスというか、ありていに言うと人工知能でツイッターの表現をセマンティク、意味的に解析してポジティブかネガティブかということを判断して、おっしゃっているような問題意識を加味した解析をやろうと、もう10年以上やっているのですけれども、まだ決定打が出ていないというのが私の現状の観測です。そこの問題意識は皆さんお持ちなので、ブレークスルーが求められるところだと思っております。
 あと、先生、2番目は何でしたか。
 
【小林委員】  2番目はソーシャルメディアで話題になりやすいというものと、そうじゃないものの違い。
 
【NISTEP(林)】  ですので、Altmetric.comも1軸のランキングはやめているというところは、それとつながる話だと思います。これもありていに言うと研究者コミュニティごとにソーシャルメディアの反応に対しての一定の見解を示すというところから始めざるを得なくて、行政側としてはそれを一律に数えたものを並べて分野別の比較をするということはやらないようにしようという、これは実はインパクトファクターとか被引用数の研究評価論と基本的に同じ姿勢だと思うのですけれども、いわゆる統計的にインパクトを計量したものに対する分析、評価の仕方についてのリテラシーを上げていくということになるのだと思います。おっしゃるとおり、ちらっと言いましたけど、マズローの5大欲求って、要するに食べ物とか住むこととか、そういったもののほうがどうしてもバズり(ネットで受け)やすいということも分かっています。だから使えないかというとそうでもなくて、では何を数えているかの議論が、むしろそれぞれのコミュニティの先生方がどのようにお考えになるのかというのが私自身の興味になっているという、そういう状況でございます。
 以上です。
 
【小林委員】  ありがとうございます。
 1番目だけコメントさせていただくと、人文学・社会科学の学会が、基本的には企業とかそういうところからの収入というのはほとんどないので、会費収入に依存しています。そうなると、先日も私が所属している学会の大会がありましたが、例えばこの報告論文自体もオープンではなくて、会員のみIDとパスワードが配られて、ほかはアクセスできないと。一方で、私は学術会議の仕事をしていたので医学系の学会の大会に随分呼ばれて挨拶することがありましたけど、もう大量に企業さんが出展されていて本当に羨ましいというか、そういうところは多分オープンにできるのだろうなという、人文学・社会科学の学会経営の問題に入ってくると思います。
 
【NISTEP(林)】  その通りで、インフラの議論になります。それがすごく大事で、識別子の整備も、様々にコストがかかりますので、まず数える前の基盤整備(と運用を含む経費の調達)というのが非常に大事になってくるのだと思います。
 
【小林委員】  貴重な問題提起の御紹介、本当にありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 大変ありがたいことなのですが7人の方が手を挙げておられるので、恐縮ですが簡潔にポイントをそれぞれ聞いていただくという形でお願いできればと思います。須藤委員、後藤委員、勝委員、尾上委員、仲委員、神谷委員、加藤委員、この順で、すみません、お願いします。
 では、須藤委員、お願いします。
 
【須藤委員】  ありがとうございます。
 昨日行われた科学技術・学術学審議会の総会でも似たような議論が少し出ていたと思うのですけども、人文社会に限らず自然科学系でも社会課題解決の研究をやっている方というのは、どうしてもインパクトファクターの高い論文というのは書きづらいという話題があって、何か似ているかなと思うのですよ。社会課題の解決を目指しているいい論文を書くより、どちらかというと別の視点で見なきゃいけないんじゃないかと。そういう議論が結構昨日あったと思うのですけども、こういった今日説明してもらったような評価手法というのは、今後もしかしたら使えるのかなという、かなり期待を持って聞くことができました。
 小林先生が言われたような欠点、利点、中身の議論はあまり私はできないのですけども、ぜひこういった方法で社会課題の解決とか人文社会と、そういったところのもう一つの評価軸が国としてある程度研究者の中でも認められてくるような社会になればいいかなと思いました。
 以上です。
 
【NISTEP(林)】  ありがとうございます。おっしゃるとおりで、一言だけコメントさせていただきますと、環境学がこの辺の社会的インパクトを見ていくと、おっしゃるとおり環境学のジャーナルのインパクトファクターは高くないという話ですとか、あとは学際領域、社会課題解決のためには今は学際領域の研究が必要で、でも学際領域のジャーナルは実はインパクトファクターがあまり高くない、要は引用されづらいという構図があることが分かっています。このように、本質的には自然科学系でも全く同じ議論をしており、(先生の問題提起に)私も全く同意です。ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 では、後藤委員、お願いします。
 
【後藤委員】  ありがとうございます。林先生とはいろいろと……。
 
【NISTEP(林)】  いつもお世話になっています。
 
【後藤委員】  はい。いつもお世話になっておりますので、今さらということになりますけども、人文学・社会科学に関するメディアとDOI、つまりメディアに対するIDをきちんと整備していくことの重要性を、今回、林先生のオルトメトリクスの御発表の中で特に指摘されたのだと思っております。
 論文だけではなくて、書籍であるとかそれ以外のものも含めていかにIDをつけていくか、それで把握できるようにしていくかということを考えていくというのを、今回の林先生の御発表を受けて、もう少し考えなければならないといけないなと思ったのが最初の感想です。
 もう一つのほうは、既に小林先生からも御意見をいただいておりますけども、ネガティブなものとポジティブなものというのを、例えば言語解析みたいなもので今後どうやっていくかという辺りは議論が必要かなというのは、やはり感じるところであります。とりわけ、どうしてもツイッターでありますとか、ネガティブなほうが比較的多く言及されやすくなるというような問題点がありますので、そこをどのように解決していくかというのは多分今後の課題だろうと思いますし、むしろ今後言語解析とかが進んでくるとやれるところだと思うので、その辺りができるとかなり進展するのかなというふうに思っております。
 すみません、ちょっと時間もございませんのでほぼコメント的になりますけども、以上でございます。
 
【NISTEP(林)】  ありがとうございます。1点、さっき解説し忘れたのが、実はネガティブインパクトを測っている、私が今捕捉している有力なのは例えば、YouTubeとヤフコメで、「いいね」とサムズアップの両方を押せるようになっているので、簡単ですけど、そういう仕掛けから始めていくのかなと思っております。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 では、勝委員、お願いします。
 
【勝委員】  御説明、大変ありがとうございました。非常に面白い試みだと思います。
 既にいろいろ議論があったように、今までは学術コミュニティだけの評価であったものが、ソーシャルメディアということでかなり評価されるという意味で非常に面白い試みであると思います。
 ただ、これをどのように使っていくかということが非常に重要であって、今先ほど来からの質問にありますように社会的なインパクト、SNSであったりそういったところで評価が高いというのが、それがすなわち全て学術的に評価が高いものではないわけで、インフルエンサーがいたりする場合には評価が歪んでしまうということもあるので、この辺は常に気をつけなくてはいけないのかなと思います。ただ、人文学・社会科学、特に人文学の分野においては、もしかすると学術コミュニティだけの評価ではなくて、こういった社会的な評価というのが非常に重要になるのではないかなというふうには思います。
 こうしたことを踏まえての質問となりますが、例えば海外、英語の文献、英語であるとすれば専門家の評価の数字と、SNS等の数値というのが全て同じ1でカウントされるとするとなると相当SNS等の影響が大きく出てしまいますが、実際はどのぐらいの割合になっているのかご教示いただければと思います。それから、11ページにあるような社会的インパクトというところ、経済的インパクトと教育的インパクトとなっているのいらっしゃるのですけど、ごめんなさい、ページ数はもうちょっと前のところかもしれないのですが、それについてNISTEPさんは社会的インパクトというものをどのように捉えているのか、少し教えていただければと思います。
 
【NISTEP(林)】  ありがとうございます。
 後半の社会的インパクトをNISTEPがどう捉えているかというのは、伊神センター長がお答えになったほうがよろしいのかと思いつつ、私で答えられる範囲でお話しさせていただきます。結局ScopusとかWeb of Scienceで人文社会学として採録しているジャーナル論文のところをまず見るというような、まずそこのデータセットをつくって、それの影響度を数え始めているといったような状況です。と申しますのは、モノグラフとかだと、まずデータを網羅的にコレクトすること自体が非常に難しい状況になっていたりとかして、ニーズは高いのですけれどもなかなか進んでいないというのが私の理解でございます。
 あとは前半の質問に関して、ちょっと質問の趣旨を変えてしまって恐縮ですけれども、結局数えられる何らかのオルトメトリクスを欧米ではどのような使われ方をされ始めているかというと、比較のためではなくて、自分がAltmetricスコアの高い論文が書けたときに、それを研究助成を受けるときのアピールポイントにするような、1だ、100だというのではなくて、非常に高いインパクトを得られました、被引用数で絶対得られないインパクトをこの論文は得ましたとアピールするのに使われているというのが現状です。研究助成団体もオルトメトリクスが高い論文に積極的に助成するというようなことをはっきり書いているところはどこもありません。むしろ、被引用数以外のブローダーインパクトを考慮するというふうに書いてありまして、その中で研究者が数えられるもの、大学ランキングなどもそうですよね、アピールできるものはできるものとして使うみたいな、そういう形で今は使われているというような状況です。ですので、この1に整えたらみたいな補正や平準化の議論をするというよりは、何か数えられたもののうち桁が、ログを取ったら明らかに差があるよねというような桁違いのものをクローズアップしてアピールされているというような状況だと理解しています。
 以上です。
 
【勝委員】  なるほど、分かりました。ありがとうございます。
 
【城山主査】  では、尾上委員、お願いします。
 
【尾上委員】  非常に面白い御紹介、ありがとうございます。
 10ページ目の多面性に僕は共感して、同じような内容だけども、やっぱりちゃんと分かれば専門のところと、あとは一般的な社会的影響度というところというもの、やはり非常に2つの面が出てくるというところが、10ページ目ですけどもいいかなと思っていたのですが、こういう多分分野研究とかによっても大分その影響が変わってくると思うのですが、この2つの専門家による評判、科学者の評判と社会の評判というものは、この分野研究によるその相関性とか独自性みたいなものも含めて、何かそういうことをされている例というのはございますでしょうか。
 
【NISTEP(林)】  全て網羅的にアップデートできていないのですけど、尾上先生のおっしゃっている問題意識、リサーチクエスチョンでいろいろな試みはされています。でも、結局データセットを組み合わせて持ってきて、相関係数で中くらいのが出た、出ないみたいな、そういう論文が今のところは多いです。すなわち、何とかの法則みたいなレベルで因果、しかも因果があるかどうかというのはまた丁寧に議論しなければいけないので、何か世の中に通説となるような、先生がおっしゃったようなデータセットの関係性が出てきたというものは、私はまだ存じ上げていないような状況です。
 ただ、繰り返しになりますが、多様な情報源を目的に応じて使い分ける時代になっていることがこれを難しくさせているのですよね。論文と特許と著書だけ数えていれば、逆にデータセット、変数が固定化されるので、ある意味研究評価はやりやすかったという、何かちょっと皮肉な表現なのですけれども、情報資源が多様化することによってコミュニティやセクターごとにマスカスタマイズができるようになった結果、比較がしづらくなるみたいな、そういう今はカオスな状況に入っております。ここをどう乗り越えるかという、例えば(様々な学部を抱えている)大学内の評価一つとっても、一つの軸で並べられないのでというところをどう解決していくかというのはこれからの、むしろ先生と今後も議論させていただいて、何かやれる手を加えていきたいなと思っているような状況です。
 
【尾上委員】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 では、仲先生、お願いします。
 
【仲委員】  どうもありがとうございます。私も大変希望の持てる指標だと思いました。
 その上で2つ、御質問があるのですけれども、1つは、先ほどもネガティブな、例えば炎上みたいな、真の研究論文の価値を図る上での阻害要因になるようなものについてのお尋ねがあったと思いますけれども、例えばほかにも、経済力をそこにかける、拡散のためにお金をかけるとか、どれぐらいお金がかけられるかみたいなことが反映されるというような、真の研究の価値を測定する上での阻害要因となり得る事柄の検討がどれぐらい行われているのか、というのが一つです。
 もう一つは、こうやってSNS等からも情報を得てということになりますと、研究論文の評価になるのか、あるいは特定のアイデアとかデータとかそういうところの評価になるのか、あるいは研究者の評価ということになるのか、論文の被引用数というのではない形になるので、先ほどの識別子なども重要なのだと思うのですけれども、何が測定の対象になるのかというのを知りたいと思いました。よろしくお願いいたします。
 
【NISTEP(林)】  ありがとうございます。
 まず、これは付録のほうにあるスライドで、時間の関係で割愛させていただいたのですけれども、やはりおっしゃっていただいたような短所、例えば、商業化とかマニピュレーションに操作されやすいということ、あるいはバイアスが引用以上に、御存じのとおりAIが社会を正しくデータサイエンスするとすごいバイアスがかかると、雇用とかいろいろなところで起きているということが起きてしまいます。逆に言うと、研究者コミュニティの中の評価のほうが実は均質で整ったきれいなインパクト計量をやっているのだということを相対的に学ぶような状況でございます。だけれども、何度も繰り返しになるのですが、だから使えないのではなくて、この計量が何を意味しているのか、あるいはこのバイアスはどう補正できる、なくすのは難しいとすれば補正できるかとか、マニピュレーションに対してはノルムというか、引用に関してもノルムというか行動規範的にコントロールしているというのが私の理解ですけれども、そういった啓発活動等々をコミュニティごとにやっていく話となります。その上で標準化できるものは国際的なイニシアチブにして、教育を通して活動と昇華させるというような流れを私としてはビジョンとしては想定し、今はその中途段階にあるという理解でございます。
 あと、どこを評価するのかという御質問は、まさにこのオルトメトリクスのややこしさで、だから(研究費、研究者、論文等の)アイテムが10個あっても、研究費から見て絵を描くのと、研究者から見て絵を描くのとでは全然見え方が変わってきて、ですので、目的が最初に必要になると思います。何のための分析か、何に活用するのかというのが設定され、その分析に必要な変数を固定した後に、ネットワーク化されたデータセットアイテムというのをビジュアライズして議論していくという形になり、自分の視点が揺れやすいすごく悩ましい時代に入っているのだと思っており、繰り返しになりますが、やっぱり目的をしっかり固定すれば、その後は何かしらのカウントができる時代になっているとお考えいただければと思います。
 
【仲委員】  詳しい御説明、ありがとうございました。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 では、神谷先生、お願いします。
 
【神谷委員】  興味深い発表、どうもありがとうございました。
 ソーシャルメディアに言及されているものは人社系が高くて2.4%ということなのですが、私は経済学者ですので、経済学に限って何%かということを第1点として聞きたいのですが、それから第2点として、どのような論文が言及されているのか、要するにアカデミックジャーナルの論文なのか、あるいは新聞、雑誌のようなものなのかということをお伺いしたいと。
 というのは、なぜかといいますと、ソーシャルメディアを経済学などの分野で社会的インパクトを測る指標として使える可能性があるということだったのですが、もし使われますと、アカデミックジャーナルに書くだけでは足りなくて、もし新聞や雑誌でしか言及されないとすれば新聞や雑誌へ書かなくてはいけない。これはもちろんいい意味もあるし、書くのが大変という悪い意味の両方の意味があるのですが、どのような論文が言及されているのかというのをお伺いしたいというのが第1点です。
 第2点は、小林先生の御指摘、要するに学会費を払わせるためには論文は非公開というか、パスワードを入れなくちゃいけないということがありましたけども、御参考までに申し上げますと、私が前に会長やっていた学会では会費をゼロにいたしまして、J-STAGEから発行することにしまして、誰でも自由に見られるというような形を取ることになりました。もちろん小さい学会だからできることであって、全ての学会ではできないと思いますが、小さい学会ではこういう方向もあるかなと思いました。
 以上です。
 
【NISTEP(林)】  ありがとうございます。
 人社系の中の経済系がどうなっているか、もちろん今、私はデータを持ち合わせておらず、先延ばし答弁のようで恐縮なのですけれども、実はこの吉田さんと、このデータが2017年とちょっと古いので、最新のデータを取ろうかという議論を始めております。その中で、先生のおっしゃっていた経済系でそもそもどういう論文がというところも丁寧に見ることができればと思っております。
 釈迦に説法ですけど、私の理解が正しければ、経済系でも数式を駆使して事実上数学のようなモデル論文のようなもののオルトメトリクスというのは正直高くないんじゃないかなとは思っております。でも、それはサイエンスのインパクトは被引用数で価値が高いものとして評価されるべきですし、一方で、すごく乱暴ですけど経営学寄りですごく儲かるような話の論文とかは、実は非常にオルトメトリクスが稼ぎやすいので、それはそれで民間の関心を引いたものとして評価するという形で、経済学の中でも切り分けてその根拠をサポートするデータとしてなっていくのではないかと思います。いずれにせよ、この調査をアップデートする調査の中で、そういったところについても解析していきたいと思っております。
 
【神谷委員】  ありがとうございます。
 1点ですけど、アカデミックジャーナルはもちろん数理的なものと数理的ではないものがあるのですが、数理的ではないものであっても、アカデミックジャーナルだとなかなかソーシャルメディアの言及がないという可能性もありますので、その点も調査していただけると、そうじゃないと、誰でも読めるソーシャルメディアに絶対書かなくちゃいけないと、要するにオルトメトリクスを高くするためにはそうせざるを得なくなりますので、その点もぜひお調べいただければと思います。
 
【NISTEP(林)】  おっしゃるとおりです。それは医療の世界でも同じような議論がございまして、いただいた御示唆を踏まえて解析を進めたいと思います。
 
【神谷委員】  どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  加藤委員、お願いします。
 
【加藤委員】  加藤です。
 前までの議論で大分理解が進んでいるのですけれども、オルトメトリクスが今までと違う観点から、価値や評判のようなものを測ろうとしているということは理解してきています。その上であえて質問なのですけれども、ソーシャルメディアをサンプリング対象とすると、専門家、研究者向けではなくて、一般向けとか実務家向けに書いた方が評価値が上がる気がしますけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。
 
【NISTEP(林)】  そうですね、相対的にはそうなります。
 
【加藤委員】  そうすると、これを例えば人事等の評価で使おうとすると、伝統的な、専門家や研究者コミュニティにおける評価と併せて用いていくことで多角的な評価ができるであろうという考え方が一般的ですかね。
 
【NISTEP(林)】  おっしゃるとおりです。1つ(評価に使える手段としての)カードが増えるということですね。
 
【加藤委員】  分かりました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 活発に御議論をいただいて、いろいろな側面が照らし出されたのではないかなというふうに思いますが、赤池さん、何かありますか。
 
【NISTEP(赤池)】  ちょっとだけ、短く補足させてください。
 まず、今こういう手法というのはまだまだ開発途上のところもあると思うのです。それで、客観的に横に並べて一斉に比較するという使い方はまだまだ難しいと思うところがありまして、例えばこれはESRCで以前やっていたやり方なのですけども、むしろコアな論文だとか書籍とか数えられるものにして、それで例えば研究費の申請のときだとか評価のときにオプショナルな説明要因としてこういうものを入れていくというのを積極的に使っていくというのは、一つの中間的なやり方、ファンディング中の中間的なやり方としてあるんじゃないかというのが一つでございます。
 あともう一点ですけど、先生から御指摘あったとおり識別子、メタデータあるいは書誌データというのは極めて大事でして、私も内閣府でやっている仕事ですが、そういうプラットフォームをやるというのはすごく、これは結構日本は進んでいまして、先ほどJ-STAGEのお話もありましたがJ-STAGEデータ、そのバックデータ、それから、あとNIIのCiNiiだと結構プラットフォームってしっかりしてきていますので、人文学・社会科学においてもそういうところに載せて、検索可能でカウントできるという環境がだんだんコミュニティの中で入っていくと新しいフェーズに行けるのかなというふうに考えているところでございます。
 私からは以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。林室長、また赤池さん、どうもありがとうございます。
 それでは、議題(1)の最後になりますが、実はこれが本題なのですけれども、事務局から「人文学・社会科学研究成果のモニタリング指標について(素案)」ということで御説明いただきたいと思います。前に骨子として御議論いただいたものを、今回は素案として出させていただいて、次は素案の「素」を取るということで、何段階かの第2ステップということになります。恐縮ですが少し時間が延びるかもしれません。よろしくお願いします。
 それでは、河村室長、よろしくお願いします。
 
【河村学術企画室長】  学術企画室長の河村でございます。
 資料3を画面共有しておりますので御覧ください。前回の本委員会における骨子案について、委員の皆様からいただいた御意見及び個別にいただいた御意見などを踏まえ、事務局で修正したものを素案としております。主な修正点は、背景黄色で記載している部分となります。
 2ページを御覧ください。背景黄色の部分ですが、モニタリング指標を検討するに至る経緯として、人社の総合的・計画的な振興と「総合知」の促進を行う上で、特に検討が必要であるということを追記しております。
 3ページを御覧ください。前回いただいたピアレビューの重要性についての御意見に関し、幾つか追記しております。3ページでは、以前の審議会報告書にも記載のあった定量的指標とピアレビューの関係についての記述を追記しております。
 5ページを御覧ください。社会的インパクトの部分ですが、骨子案では今回のモニタリング対象とはしないとしておりました。ただ、社会的インパクトの計測は今後の重要課題であり、引き続き検討が必要であるということから、この部分では事実として、現時点では計量的な手法でモニタリングすることは困難という記載のみに修正しております。
 10ページを御覧ください。モニタリング指標を検討する目的に関し、トレンドやマクロの分析の活用という具体例を追記しております。また、ピアレビューの重要性についても追記しております。
 12ページを御覧ください。モニタリング指標のイメージでございますが、語句の修正、また配置の部分を修正しているというものでございます。
 14ページを御覧ください。今後の課題をまとめた部分となります。まず、書籍に関するデータの充実につきまして、前回いただいた図書館に納入する段階の引用情報のデータ化について追記しております。
 また、社会的インパクトについては、先ほど御説明いたしました観点の修正や、前回いただいた社会の動向に対応した緊急企画のような強みを適切に捉えることを追記しております。
 さらに、モニタリングの充実に向けたデータの測定というところについて、新たに記載しているところでございます。前回いただいた「総合知」の観点で、他分野との連携のモニタリングの重要性、今後の論文等の発表の際の登録の工夫とそのデータ化、そしてさらに多様な影響を指標化する手段として先ほど御説明のありましたオルトメトリクスの活用を検討の対象として追記しているところでございます。
 15ページを御覧ください。国際性の向上について、前回の御意見を踏まえまして、国際的な認知度の向上、海外からのアクセスの向上などを追記しております。
 素案につきましての修正点は以上となります。
 続きまして、参考資料にも追加している部分がありますので御説明いたします。
 26ページを御覧ください。JSTに御協力いただきまして、J-STAGEに収録されている資料について、人社関係のデータをいただき、一部事務局で編集いたしました。
 27ページを御覧ください。今回の分析に当たり、人社関係としては、自然科学分野にも属しているものは除外しております。また、実際の資料の発行年とJ-STAGEの登載時期にずれがあるという場合もありますので、記事数や引用、アクセスなどが発行された年で計測できないケースがあるといった留意点がある、そういったデータになっております。
 28ページを御覧ください。各分野のジャーナルとそれ以外、英文や和文を整理した表となっております。
 29ページを御覧ください。分野別の記事数の推移の棒グラフとなっております。人社系全体の記事のうち、他分野と比較して心理学や教育学が占める割合が大きいことが分かります。また、いずれの分野もおおむね記事数は横ばいとなっておりますが、発行年が直近になると少なくなってきております。これは先ほど御説明したように、既に発行した資料のJ-STAGEへの登載を調整している可能性が考えられるところでございます。
 30ページを御覧ください。1記事当たりの被引用数の推移というものでございます。この表ですが、例えば一番左の2004年の数字は、2004年に発行された資料が、実際にJ-STAGEに登載された時期は違う可能性はありますが、2022年9月時点で18年間のトータルでどれぐらい引用されたかを示しております。おおむね被引用数について、発行年による差は大きくないというところですが、発行年が直近になると少なくなっていっているということを示しております。
 31ページを御覧ください。アクセス数に関する表でございます。各分野の資料のうち、記事数の多い7から14資料を対象に、2022年4月から9月の期間の総アクセス数と、それを記事数で割り算した1記事当たりのアクセス数を示しております。悉皆ではなくて抽出となっておりますので、米印で記載しておりますが、収録開始年の部分は、1900年代前半の収録開始が最も古い資料から、2000年代前半の最も新しい資料など、複数の資料が対象となっているものでございます。
 32ページを御覧ください。1記事当たりのアクセス数として、特に2019年から2021年に発行された資料についてのグラフとなっております。対象は先ほどと同じで、記事数の多い7から14資料を対象として、2022年4月1日から2022年9月28日の期間における1記事当たりのアクセス数となっております。多くの分野で、直近に発行された記事のほうが、アクセス数が多くなっております。
 委員の皆様の御議論の参考といたしまして、JSTに御協力いただきまして作成いたしました。本日はJSTの御担当の方も同席いただいておりますので、御質問等がございましたらよろしくお願いいたします。
 事務局からの説明は以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、今御説明のありました内容に関しまして、御質問、御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 後藤委員、お願いします。
 
【後藤委員】  後藤でございます。修正の提示、それから参考資料の追加につきまして、誠にありがとうございます。
 最後のJ-STAGEの参考資料につきましては、まだこれは本当に何かデータを取り始めたばかりだなという印象をまず強く持っております。ただ、それでもこのようなデータを取り始めるということに大きな意味があると思っておりまして、これまで分からなかったようなものが少しずつ見えてくるのかなと思っております。とりわけ引用が、過去どれぐらいのものを引用されているかという話は、以前に私の報告でもさせていただきましたけれども、その辺りのものが、例えばJ-STAGEのデータで今後何かうまく見つけることができるかとか、あとはアクセス数とかも含めて今後の経年変化みたいなことをうまく追いかけていくことによって、より分かるものというのが出てくる可能性があるというふうに思っております。まずは取り始めたということ自体、このようなデータを把握できるようになったということは非常に大きな意味を持つのかなというふうに思っております。私としては、まずはそのようなコメントになりますけども申し上げておきたいと思います。
 また、修正のほうにつきましても、ピアレビューの辺りにつきまして前回の委員会の御意見をいろいろ配慮いただいているかなと思いますので、ピアレビューの重要性というところと、一方でいかに適切に計量していくかというところの重要性という辺りのバランスをうまく取るような形で今後も御調整いただけるといいのかなと思っております。
 すみません、コメントですが以上でございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 河村室長、何かレスポンスはございますか。
 
【河村学術企画室長】  今回はJSTにも大変限られた時間で出していただいたデータでございます。引き続きいろいろとまた御相談させていただきたいと思っております。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 では、神谷先生、お願いします。
 
【神谷委員】  13ページにありますように、これまでの検討を踏まえ、以下のような指標についてモニタリングしたらどうかということで4つ並んでいるのですが、一応私の理解を確認したいのですが、取りあえずこういったものをモニタリングして、さらにそこに書いてあるその他、他分野との連携状況の把握、新領域を含む研究動向の把握をやると、さらにその次のページのいろいろな問題点、いろいろな今後の課題があるので、これについては、どういう指標を使うかは検討していくということなのだと理解しましたが、まず、それでよいかということを確認したいのが1点です。
 第2点として、最初の国際ジャーナル論文、国内ジャーナル論文等、プレプリント、書籍なのですが、こう書いてあっても、じゃあ、国際ジャーナル論文の定義は一体何なのかと、もちろん国内ジャーナル論文もそうですね、これはどう定義されているかというのが第2点です。特に国際ジャーナル論文に関しましても、いわゆるハゲタカジャーナル、要するにお金を払えば必ず載せてくれるようなジャーナルもあるわけですし、こういったものを排除するのか、しないのか、そもそもできないのかと、この点について伺いたいと思います。
 以上です。
 
【城山主査】  いかがでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  まず、1点目でございますが、P13及び14に記載している意味については、先生御指摘のとおりでございます。
 ただ、その上2点目、国際ジャーナル論文の定義、そこはまだ煮詰め切れてないというのが正直なところでございまして、先ほどからもありますが発表媒体、プラットフォームがどこまでデジタル化されているのかということも含めまして、どこまで把握できるのかという問題も裏にあると思っておりまして、これから検討というか御相談、調整ということで、かっちりとした定義になるのか、あくまで方向性にとどまるのかはまだ見えないのですが、そこは詰めていきたいと考えております。
 以上でございます。
 
【神谷委員】  どうもありがとうございます。繰り返しですが、ハゲタカジャーナルとかは非常に研究者は嫌う傾向がありますので、そういった点もぜひ御考慮いただきたいと思います。
 以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。
 では、後藤委員、お願いします。
 
【後藤委員】  どなたもおられないようですので一言。
 ハゲタカジャーナルに関しましては、恐らくいわゆるネガティブリストというか、これはそのようなリストが国際的にも出ていると思いますので、その辺りを参考にしていただければというふうに思います。
 すみません、先ほどの補足というか、以上でございます。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 あと、今日御出席いただいてまだ御発言いただいてないのは、多分小長谷先生、岸村先生と山本先生かなと思うのですが、もし何かございましたら、いかがでしょうか。
 
【岸村委員】  では、せっかくなので。
 
【城山主査】  では、最初に岸村委員。
 
【岸村委員】  先ほど須藤委員からもありましたけど、私は理工系の人間なので、理工系・自然科学系でも共通する問題があるというのは何か明記されておくと、今後発展的な議論をする際にもいいことがあるかなとちょっと思いました。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 小長谷先生。
 
【小長谷委員】  ありがとうございます。
 先ほど、多様であればもう物差しとして機能しなくなるというご指摘がありましたが、それは基本的にはいいことじゃないかと思います。物差しがたくさんあることが学問の本当の豊かさなので。複数の物差し同士は比較できないという形でも構わないんじゃないかなと思います。
 それから、モニタリングするのも大事なことなのですけど、人文学・社会科学は特に日本語で書かれることも多いので、日本語で書かれた論文が国際的に読まれることを目指すことというのが、結局は一番大事な学術の国際化になるんじゃないかと思います。海外も含めてどれだけ広く利用されるかということのために何をすればいいかというふうに、ちょっとスタンスが今とは違うのですけど、そこを見失わないでいてほしいなというふうに思いました。
 
【城山主査】  ありがとうございました。後者のほうですが、御主張としては、要するに国内論文、日本語で書かれた論文の数を若干ネガティブにモニタリングするというのではなくて、逆に言うと、日本語で書かれていても、それが海外でどのぐらい読まれたかみたいなところに指標をむしろ持っていって、そういうところを伸ばすような形でモニタリングしたほうがいいという、そういうことでしょうか。
 
【小長谷委員】  そうですね。学術にはもともと国境はないのですし、ああいうソーシャルメディアも本来的には国境のないメディアなわけですから、そっちへ向かって測ることも広げていかないと、わざわざ内向きに向かって調べてインセンティブを向けるといったら、それはもう本末転倒になってしまいますよね。日本語の論文がたくさん読まれるためには、少なくともタイトルとキーワードとアブストラクト、この3点セットだけでも英語にしておけば、検索に必ず引っかかってきて、検索で発見されれば、もうAIで何語でも読めるわけです。
 例えば、私のところにはお問合せがあるんです。この間はシベリアのシャーマンの衣装に紋章がついていて、その家紋がどの家のものか分からないから研究者にコンタクトしているけれども、返事がないと言うのです。その家紋の研究者というのは、個人で家紋を好きで調べている方でした。素人でも私たちなら船の紋章と蕪の紋章だということが分かるので、それは「FUNEMON」と「KABURAMON」と、ローマ字で検索してください、すぐヒットするからと伝えました。ローマ字にして検索できるようにだけインストラクトすると、海外の方がちゃんと欲しいデータのところへ行き着けるわけです。ちょっとした導入で日本の研究というのはどんどんリファーされるように仕向けることはできます。
モニタリングの真の目的である学術の振興を考えれば、そういうことをお願いしたいなって思いました。
 
【城山主査】  ありがとうございます。これは入り口のところもちょっと書いていただいたのですが、多分モニタリングということ自身はいろいろな側面を潜在的にモニタリングできるので、その際、何をモニタリングするかというのが多分重要な選択になるのだと思うのです。例えば、今小長谷先生がおっしゃったことで言うと、モニタリング指標のイメージところ、12ページあたりですか、研究力の柱で、例えば研究活動の国際化進展度で測りたいというときに、今小長谷先生がおっしゃっていただいたように、例えばアブストラクトをきちっと英語にしているものの比率というのをちゃんとモニタリングを見るというのもあり得るのだと思います。
 
【小長谷委員】  そうそう、いいですね。
 
【城山主査】  逆に言うと、何をモニタリングするかというのは、結局何をしたいかという話と密接に連関してくるので、多分そういうところまで視野を広げてモニタリングの対象を考えるということが必要なのだと思うのです。
 取りあえずは、今回は研究成果に関連するモニタリングというところに若干限定しているところがあるので、むしろそこは、より広げて、研究成果がどのぐらい読まれているかだとか、読まれるための工夫をどのぐらいしているのかという観点でのモニタリングというのもあり得るので、その辺りは多分長期的には柔軟に考える必要があるのだと思うのです。今回はあくまでも第1ステップでこういうところを対象にしていますということを多分皆さんに認識していただくということなのかなということを、伺って思いました。
 加藤先生、いかがですか。
 
【加藤委員】  今の議論を聞いていて思ったのですが、今は機械翻訳の精度は90%か95%まで来ているような気がするので、最初から精度は100%でないのは承知の上で、日本語論文を発信する側がまとめて機械翻訳を作って置いておいて、海外から見つけてもらえるようにするという手もありなのかな、そういう時代なのかな、ということを思いました。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 山本委員、お願いします。
 
【山本委員】  山本です。
 すみません、後半から参加したので詳しくは聞けなかったのですけども、論文だけでない多様な物差しというのはとても興味を持ちました。扱いは難しいし、いい点、悪い点がたくさんあると思うのですけども、一般社会において人社系の研究がいろいろ話題になっているねと、上がっているねと、みんなで応援しなきゃねという、そういうように社会が受ける印象でのプラス効果というのがその研究の評価、研究者にとっての評価とは違う面ですけれども、そちらのほうのプラスを期待したいなと思っています。
 以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 ほかに何か特に御発言されたい方はいらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。すみません、かなり最後はちょっと急いでいただいたような感じになっていますけども、それでは、議題(1)については以上とさせていただきます。
 最後に、その他事項ということで一応項目は立てておりますが、何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 そうしましたら、今日最後にお話しいただいた、これはまだ素案という段階ですので、今日の御議論も踏まえて、この「素」を取った案を多分出させていただくと。全体の流れとしては、これは議論の中でも神谷先生のところで御確認いただいたことですけども、当初やれることは限定されているのだけれども、いろいろな広がりがあるので、そういうことについてはきちんと今後は考えていくという、多分そういう手順なり方向性は最後のほうで示すという、そういう流れになるかなと思いますが、また個別の御議論はいろいろコメントいただければと思います。
 それでは、最後に事務局から連絡事項等がございましたらよろしくお願いします。
 
【二瓶学術企画室長補佐】  本日は活発な御議論ありがとうございました。
 次回の人文学・社会科学特別委員会の日程につきましては、改めて日程調整の上、御連絡させていただきます。
 また、本日の議事録につきましては、後日メールにてお送りいたしますので御確認をお願いいたします。
 御退席の際は画面下の赤色、バツのボタンから御退席ください。
 本日は誠にありがとうございました。
 
【城山主査】  それでは、これで閉会させていただきます。どうもありがとうございました。
 

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