人文学・社会科学特別委員会(第12回) 議事録

1.日時

令和4年6月28日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 人文学・社会科学の研究データの共有・利活用の促進について
  2. 人文学・社会科学の学術知共創について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、勝委員、小長谷委員、白波瀬委員、加藤委員、神谷委員、岸村委員、新福委員、山本委員、後藤委員、田口委員
(科学官)
松方科学官、木津科学官、森口科学官、磯科学官、渡慶次科学官、藤森科学官、加藤科学官、外田科学官、近藤科学官

文部科学省

河村学術企画室長、二瓶学術企画室長補佐

5.議事録

【城山主査】  それでは、定刻を過ぎておりますので、ただいまから第12回人文学・社会科学特別委員会を開催いたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 まず、本日の委員会の開催に当たり、事務局から注意事項と本日の出席状況について報告がありますので、よろしくお願いいたします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】  本日はオンラインでの開催となりますので、事前にお送りしておりますマニュアルに記載のとおり、御発言の際には「手を挙げる」ボタンをクリックしていただきまして、指名を受けましてからマイクをオンにし、お名前を言っていただいた上でゆっくり御発言いただければと思います。
 主査以外の皆様は、御発言されるとき以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。機材の不具合等ございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。
 また、本日は須藤委員、仲委員、井野瀬委員、尾上委員、小林委員、戸田山委員、飯島委員が御欠席の御連絡を受けております。白波瀬先生はまだ入られていないですが、参加される予定と聞いております。
 現在の予定では18名中11名の御出席をいただく予定になりまして、定足数を満たす予定でございます。
 また、本日は人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業につきまして、日本学術振興会の廣松様、前田様。また、人文学・社会科学を軸とした学術知共創プロジェクトについて、大阪大学の堂目様、小出様。課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業につきまして、日本学術振興会の盛山様にそれぞれ御出席をいただいております。
 なお、本日の会議は傍聴者を登録の上、公開としております。
 以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 まずは事務局から配付資料の確認を続いてお願いいたします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】  資料につきましては、事前に電子媒体にてお送りさせていただいております。本日の主な議題に係る資料につきましては、議事次第のとおり、資料1-1から資料3としてお配りしております。資料等不足がございましたら事務局までお願いいたします。
 
【城山主査】  それでは、議事のほうに移りたいと思います。
 まず議題の1ですけれども、人文学・社会科学の研究データの共有・利活用の促進についてということであります。
 まず、今回の検討の背景につきまして、事務局のほうから御説明いただければと思います。よろしくお願いします。
 
【河村学術企画室長】  皆様、おはようございます。文部科学省学術企画室長の河村でございます。
 議題1につきまして、本年1月に開催されました本委員会でも御説明したところでございますが、背景、経緯について、改めて御説明させていただきます。
 昨年閣議決定されました第6期の科学技術・イノベーション基本計画におきまして、人文・社会科学の研究データの共用・利活用を促進するデータプラットフォームについて、2022年度までに、我が国における人文・社会科学分野の研究データを一元的に検索できるシステム等の基盤を整備するとともに、それらの進捗等を踏まえた2023年度以降の方向性を定め、その方針に基づき、人文・社会科学のデータプラットフォームのさらなる強化に取り組むとされているところでございます。
 システムの基盤整備につきましては、日本学術振興会様におきまして、人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業にこれまで取り組んでいただいたところでございます。具体的には、人文学・社会科学総合データカタログやオンライン分析ツールなどが開発されたところでございます。
 本日は、日本学術振興会様から、事業について、これまでの成果等を御報告いただきます。それを踏まえまして、2023年度以降の人文・社会科学のデータプラットフォームの方向性、また強化策につきまして、委員の皆様に御議論をいただければと思っております。御意見を踏まえまして、文部科学省としての今後の検討に生かしてまいりたいと考えております。
 なお、配付資料の資料1-2は、昨年7月から本年6月にかけて、日本学術振興会の事業運営委員会が検討されました本事業の成果と今後の展望についての報告書となっております。
 本報告書では、例えばですが、今後の望ましい運営の在り方としてのコンソーシアムによる運営体制への移行や、人文学分野については取り扱う分野を拡充する必要などが記載されております。
 この後、日本学術振興会様からの御説明も踏まえまして、委員の皆様には御議論をいただければと考えております。では、よろしくお願いいたします。
 
【城山主査】  河村室長、どうもありがとうございました。
 今御説明がありましたように、まずはこれまでの事業の進捗について、廣松先生、前田先生のほうからお話を伺い、その上で、今、室長からもお話がありましたように、2023年度からの事業の在り方をどうするかということも考えなければいけないので、これまでの実績も踏まえて今後の在り方についていろいろ御意見を伺いたいという、そういう趣旨でございます。
 ということで、まず日本学術振興会の廣松先生、前田先生から、人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業について御説明をいただきたいと思います。
 資料の1-1、それから1-2が資料になると思います。
 それでは廣松先生、前田先生、よろしくお願いいたします。
 
【JSPS(廣松)】  日本学術振興会、人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進センターの廣松でございます。取りあえず私のほうから、資料の1-1及び1-2を用いて、これまでの活動状況について御報告をいたしたいと思います。
 まず、資料1-1を御覧ください。本事業の背景、それから本事業の取組、具体的な実施体制、実施内容に関しましては、今、室長のほうからも御説明がありましたし、また、ちょうど1年前、正確には昨年の6月21日でございますが、この場で、その時点の活動状況を御報告をしておりますので、そこはちょっと時間の制約もございますので省かせていただいて、スライドの5枚目を御覧ください。
 これが、今までの活動を線表の形にしたものでございますが、その右のほうの、令和3年7月から運用開始というところを御覧いただければと思いますが、この人文学・社会科学総合データカタログ、「JDCat」と通称呼んでおりますが、これに関しましては、昨年の7月に社会科学分野を公開し、運用を開始いたしました。人文学分野に関しましては、昨年の11月に運用を開始しております。
 また、オンライン分析ツール、「JDCat分析ツール」と呼んでおりますが、これはこの4月、令和4年の4月から公開し、現在試験運用を続けております。
 また、人文学・社会科学におけるデータ共有のための手引の策定に関しましては、昨年11月に公開したところでございます。
 ではその次、拠点機関に関しましては、これまでどおり拠点機関としての活動を積極的に行っていただいておりますと同時に、センターを中心にして、講演・報告・執筆活動、あるいはJDCatサロンの開催等を行っております。
 このJDCat及び分析ツールに関しまして、現時点の内容を簡単に御説明申し上げますと、7枚目のスライドでございますが、そこにございますとおり人文学・社会科学総合データカタログ「JDCat」の構築により、拠点機関が提供するデータのメタデータ、これは日本語と英語と両方をそろえておりますが、これがJDCatによって自動収集されることで、拠点機関が提供するデータを一元的に検索できるようになりました。
 このスライドの右下のところにございますが、ちょっと古めで恐縮ですが、本年の3月1日から3月31日までのアクセス数でございますが、JDCatのトップページへのアクセスは306件、それからアイテムの詳細画面のアクセスが3万6,771件という形になっております。
 その次、8枚目は、もし御興味がおありでしたら、このURLにアクセスしていただければと思いますが、このURLにアクセスしたときに出てくる一例でございます。
 右上の「JIPデータベース2015」というのがございますが、これは一橋大学の経済研究所が提供しているJIPデータというものでございまして、これは経済産業省の経済産業研究所(RIETI)との共同研究の成果として出てきたものでございますが、そのデータも今、このJDCatからアクセスできるようになっております。
 続きまして9枚目でございますが、このJDCatに関しましては、以下にございますような仕様と機能を備えております。
 まずデータスキーマに関しましては、これは社会科学分野において、諸外国で標準的に使用されているメタデータスキーマを調査し、それから、日本に合わせたような形でスキーマを作成いたしました。それを人文学分野にも拡張し、海外からハーベストしていただけるような項目を検討した結果でございます。これはJPCOARのメタデータスキーマにもマッピングされております。
 2番目が統制語彙の翻訳・作成でございまして、ここにございますとおりDDI、あるいはCESSDA Topic Classification等で使用されている統制語彙を検討し、分類の必要上、我々JDCatの独自の統制語彙として9項目12品目を作成いたしました。
 その具体例に関しましては、特にデータスキーマに関しましては、参考資料でございますが20枚目、それから21枚目に資料としてつけておりますので、後ほど御覧いただければと思います。
 もう一度9枚目に戻っていただきまして、3番目といたしまして、機能等の決定に関しましては、利用者の利便性の高い検索方法、表示順等の検討を行い、現在、公開し運用しているところでございます。
 具体的に、10枚目でございますが、現在公開されているメタデータの一覧、総数でございますが、御覧いただいているとおり計7,199項目という形になっております。
 そのうち一橋大学の明治初期以降の日本統計年鑑、それから公的統計の調査票様式等がかなり多くなっておりますが、これは、明治15年から帝国統計年鑑として始まった、現在の日本統計年鑑の年単位のものを数えておりますので、こういう通知になっております。
 続きまして11枚目、JDCat分析ツールと呼んでおりますが、これは技術的な支援をお願いをしておりますNII学術情報センターのほうで開発をしていただいたものでございまして、真ん中のJDCat上の「オンライン分析」ボタンをクリックすることで、分析ツールのほうへ直接データを送ることができるような形になっております。
 先ほど申し上げましたとおり、この4月から運用を開始しており、現在、社会科学分野では令和2年から3年度、それから人文学分野では令和3年度以降ですが、大学の講義等で試験運用をしているところでございます。
 この4月に公開をしたわけですが、まだ時間がたっておりませんので、これに関してはもう少し期間を見て評価をしたいというふうに思っております。
 それから次のページは、これがデータ共有のための手引でございまして、昨年の11月に公開をいたしました。いろんなところから、これに対する問合せも来ております。
 これは今後の課題のところでも申し上げますが、取りあえず第1版として出したものでございまして、この改訂等に関しては今後検討すべき課題だというふうに考えております。
 その次、13枚目が、これは広報活動でございまして、左上にございますようなパンフレットを作成し、いろいろなところに配布をして、JDCatだとか、あるいはデータ共有のための手引をいろんな方に知っていただくような広報活動をしております。
 それから右側のJDCatサロンといいますのは、これは今まで、主として拠点機関でこのJDCatの開発に携わっていただいた専門家――技術的な分野の専門家も含めてでございますが、にいろいろ体験談といいましょうか、苦労話も含めてお話を伺い、それを現在インターネット上で公開しておりますので、御興味がおありでしたら御覧いただければと思います。
 その次は、これは言わば参考資料でございますが、現時点、6月15日現在で、JDCatの国別の新規ユーザー数をまとめたものでございます。
 御覧いただきますと、日本というか、日本からの新規ユーザーがかなりの数を占めておりますが、32か国、計3,874のユーザーからアクセスがございました。
 ここまでが言わば活動報告でございますが、その次、結果として、まだ5年たってはおりません、4年目の途中でございますが、我々が考えます本事業がもたらした変化として、本事業の開始前の状況はここに挙がっているようなことでございますが、そういう状況に対して、16枚目でございますが、我々としては、本事業による成果として、複数の研究機関でネットワーク型の体制をつくり、人文学・社会科学両分野をカバーするデータカタログを作成したこと。
 また、研究データを拠点機関に寄託できる体制を整えることで、データの共有が容易になったこと。それから、日本の研究データを無償かつ容易に利用できる環境を整備したこと。それから、人文学・社会科学両分野をカバーし、かつ国内及び海外との相互運用に優れたメタデータをつくることができたというふうに考えております。
 17ページが、その結果として、海外の複数の機関のガイドラインを参考にしつつ、このJDCatを作成したことによって、研究者や大学院生にデータの適切な管理の必要性等を啓発できたというふうに考えております。
 また、無料で、先ほど御紹介いたしましたJDCat分析ツールを提供したことによって、分析環境の保存やデータ及びプログラムの共有が容易になったというふうに考えております。
 その上で、この4年半やってきましたこと、事業の残された課題として、以下4点挙げております。
 まず、分野及びデータの一層の充実でございます。これに関しては、資料1-2の53ページ、ちょっと飛んで恐縮でございますが、ここにもう少し具体的な形で書いております。
 先ほど河村室長からもございましたとおり、現時点では、人文学分野のカバー率は1件だけでございまして、極めて限定的でございます。今後、人文学部分野について取り扱う分野を拡充していくこと。また、社会科学分野についても取り扱うデータの一層の充実が課題であるというふうに感じております。
 それから第2番目に関しましては、さらなるデータの利活用の促進ということで、先ほどの資料1-2の54ページのところでございます。
 JDCat分析ツールは、現在本格運用を行っているわけですが、先ほど申し上げましたとおり、具体的な検証を行うにはまだちょっと時間が足りませんので、その評価はこれからの課題となりますが、本事業終了後もNIIのほうで運用を継続する予定というふうに聞いておりますので、さらなるデータの利活用が促進されることを期待しております。
 それから3番目の、今後残された課題として、利用者のフィードバック等を踏まえた手引の適切な更新ということでございますが、これは先ほどの繰り返しになりますが、取りあえず第1版としてこの手引を公表したわけでございますが、利用者からのフィードバック等を反映しながら、適切な頻度で更新していくことが望ましいというふうに考えております。
 最後に、啓発活動、分野ごとのネットワーク形成、データ公開に関する勉強会・研修会等に関しまして、いろんな形で我々も情報を発信すると同時に、関係者の方々に情報を提供するとともに、その関係者の方々でいろんな形の活動がなされているというふうに聞いております。
 その上で、最後に今後の事業の在り方ということに関しまして、資料1-2の47ページから48ページにかけて御覧いただきたいと思いますが、今後、データインフラに関しましては、共有・利活用をいかに促進していくかが課題であります。
 本事業のこれまでの経験を踏まえますと、ネットワーク型のデータインフラに関しては、人文学・社会科学のデータアーカイブに関わるノウハウや、経験のある機関がリーダーシップを発揮して、データ寄託者やデータユーザーのニーズを酌み取るとともに、自律的に運営されることが望ましいのではないかというふうに考えております。
 その一つの理想的な在り方として考えたのが、御覧いただいておりますコンソーシアム型のものでございます。
 ただ、この事業が来年の3月、今年度で終了するわけですが、その終了後、直ちに先ほど御覧いただいたコンソーシアムのような形に移行するのは、やはりかなり、現状で準備不足等ありますので、恐らく次期のデータインフラの運営例としては、今御覧いただいているような形の、現在のネットワーク型に近い形の運営の在り方というのが現実的ではないかというふうに考えております。
 この辺に関しましては、特別委員会の委員の方々からいろいろ御議論をいただき、御意見を伺うことができればというふうに感じております。
 ちょっと時間がオーバーいたしましたが、私からの報告は以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明等につきまして、御質問あるいは御意見等がありましたら、「手を挙げる」ボタンで挙手をいただきますようによろしくお願いいたします。
 それでは最初に、まず山本委員、よろしくお願いします。
 
【山本委員】  山本です。試験運用のところで、大学の講義などで始めているというところをお伺いします。
 恐らく学生が、特に文系の方って、大学院生など若手研究者として育っていく文系、人社系において、そういった人材が研究準備、卒研の準備でしょうかね、論文の準備などで使えるようにという狙いで、授業でやっているのかというのが一つ。
 それから、学生の反応をもし御存じでしたら。使ってみてどんな反応が出ているかというところを、2つ、お願いいたします。
 
【JSPS(前田)】  聞こえますでしょうか。日本学術振興会研究員、前田のほうから返答させていただきます。
 1点目が、もともとの趣旨は一応研究、これはリサーチインフラストラクチャーとしてやっておりますので、例えばここにデータを共有して、みんなでプログラムを書いてですとか、再現性を補修してというようなことも考えておりますが、一番最初の運用としては、ちょっと取っかかりとして、試験運用は大学の講義で使っていただいたということで、結構、5から10ぐらいの大学の講義などで使っていただきました。
 すみません、それで先生方の反応は分かるんですが、ちょっと学生さんの反応は分からないんですが、先生方の反応は分かっておりまして、これは「R」というプログラムを使うんですが、実はRそれ自体はフリーウエアなんですけど、かなり設定とかが難しいソフトウエアでして、これを個別の学生に設定させるととんでもない手間暇がかかるのに対して、このJDCat分析ツールのほうでやると、一応講師のほうで一元的にいろんな環境をコントロールした形でできますので、その意味では大幅に労力を削減できたというお話は聞いております。
 それと、これは偶然なんですけれども、やはり遠隔で様々な事業をやらざるを得なかった過去2年ぐらいの期間に、その期間においてはこういうツールがあったことで非常に授業の運営は楽になったということは、個別の先生から伺っております。
 これで返答になっておりますでしょうか。
 
【山本委員】  そうしますと、講義から始めたというのは、リサーチインフラとして研究を始める学生の方から、ちょうど人材育成教育を重ねて始めたという意味合いでよろしいですかね、理解は。
 
【JSPS(前田)】  そういう側面もありますが、一番最初にテスト運営をやっているときは、授業でやって、やはり大量に使ってもらうということでいろいろやりやすいということが、いろんな欠点が分かったりしますので、その意味でまず最初に授業で使ってもらったんですけど、もちろん長期的にはそういう学生さんに、例えば卒業研究ですとか、修士課程に行ったときにそれをやはり使っていただきたいということは当然ございます。
 
【山本委員】  なるほど。システムを確認していく上でも、大勢の学生に使っていただくというのももう1つの狙いだったと。
 
【JSPS(前田)】  はい、そういうことでございます。
 
【山本委員】  ありがとうございました。
 
【城山主査】  続きまして神谷先生、お願いします。
 
【神谷委員】  どうも御説明ありがとうございました。分野とデータの充実についてコメントをしたいと思います。
 私、一昨年度まで神戸大学の経済経営研究所におりまして、この研究所には非常に重要なデータがたくさんあります。特に江戸時代の終わりぐらいから明治初期までのいろなデータがありまして、これは一橋大学とは補完関係にあるというふうに考えております。
 神戸大学の研究所は、この5拠点の中に入っておりません。したがって、神戸大学の重要なデータはJDCatに入っていないのかなと思ったのですが、先ほど調べましたら、実は入っておりました。
 理由はなぜかといいますと、一橋大学の経済研究所と提携関係なのですね、神戸大学の研究所は、私が所長のときに提携関係を結んだのですが、それで、提携の一環として一橋大学のほうでJDCatに載せていると、こういう方法を取っているようです。
 ということで、ある程度、拠点以外のところのデータの充実も多少は図られていると思うのですが、しかし、これはあくまでも非常に特殊なケース、要するに提携関係があるためにこうなっているのだと思います。
 なので、今後どのようにしてデータを充実させていくか。まず一つは、どこにどのようなデータがあるかということを調べることが重要ですし、それから、どのようなデータをJDCatに入れていくかということも重要になると思います。
 こういったことを今後どのような形でやっていくのかということをお伺いしたいというのが1点です。
 第2に、先ほどJDCat分析ツールについて山本先生から御質問があって、Rを使うということしたでしたが、Rの設定等が非常に楽になりメリットがあるということでしたが、私は経済学者ですけども、経済学関連の学生にとって、Rとか、あるいはパイソンも使えるようですが、パイソンというのはあまりお手軽なソフトではない。はっきり言って、かなり能力の高い学生は使うかもしれませんが、そうでなければ使わないと私は思います。
 なので、使えるソフトウエアの充実に関しましては、どのような御計画があるかお伺いしたいと思います。
 以上です。
 
【城山主査】  いかがでしょうか。よろしくお願いします。
 
【JSPS(前田)】  すみません、それでは研究員の前田のほうから回答を申し上げます。
 まず最初に分野の充実方法でございますが、神谷先生がおっしゃったとおりでございまして、まだまだ分野、特に、正直申し上げますと諸外国のデータアーカイブといったとき、典型的には社会調査の個票データから出発しておりますので、その分野のデータから、正直申し上げて出発している部分がありまして、そこの点におきましてはある程度充実していると、日本のデータに関しても言えるのかなと思います。
 ただ御指摘のように、社会科学も広い分野ですし、例えば歴史的な統計ですとか、特に江戸時代の経済に関するものですとか、それ以外、私が把握している限りでいいますと、実は教育関係のデータというのがあんまり入っておりませんで、それも把握しております。
 そういうデータをどうやって充実していくかということですね。まず一つは、ちょっとこれ、事業の性格上、全てを公募でやっているという関係がございまして、例えば私が、恣意的というと語弊がありますけど、この分野が足りないからここを行きたいというふうに、なかなか選定できない部分がございまして、その意味でいうと、これは学術振興会はもちろんきちんとやってはいるんですけれども、様々な書類だとか手続の中で公平に選んだ結果、現在の事業になっているという部分がございます。
 ただ、それと同時に、やはり分野を拡充することは大事でございまして、一応これは、繰り返しこの事業の説明を、よそでするときには申し上げてきたんですけれども、このカタログ自体は開かれたものとしてつくるという方針になっておりまして、ですので、意欲がある機関、そして自分たちのデータを載せたいという機関があれば、このJDCatにメタデータをハーベストできるように設計はしてございます。
 ただ、それを現段階では、具体的にどういう機関がどういう条件を満たせばメタデータをJDCatにハーベストできるかというところまで制度設計ができていない状態ですけども、原理的には、特定の機関だけでやればいいなどと考えておりませんので、やっぱり広く開かれたデータを使う以上、多くの方や多くの組織にデータを提供いただきたいと考えております。
 ただ、データを提供するのも、やっぱりデータをきちんと整備してメタデータをつくるのには手間暇がかかりますので、総予算規模の中で一体どういう形で分野なり機関を選定していくかというのは、ちょっと私からはお答えできない部分がありますけど、それはやはり学術的な政策としてきちんと考えながらやっていくべきことかなと考えております。
 2点目に返答させていただきますけど、ソフトウエアの話で、これは恐らく神谷先生が念頭にあるのは、例えばStataですとかそういうソフトウエアのことを念頭を置いておられるのかなと思うんですが、そのこと自体、実は検討したんですけれども、いわゆる商用ソフトウエアで、具体的にStata社には問合せはしていないんですが、こういう形でオープンに使える形で運用するソフトウエアとして、一般的なStataやSPSSは契約条件に合わず、お金を払えばできるかなと思って調べはしたんですが、お金を払ってもどうも出来なさそうということで、現在ではRやパイソンなどのようなフリーウエアだけで運用してございます。これが2点目の回答になります。
 
【神谷委員】  どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございます。
 続きまして後藤委員、お願いします。
 
【後藤委員】  後藤でございます。まずは、JDCatが、順調にデータが増えているというところと、基盤となるリポジトリをつくっておられるというところに、強く敬意を表したいと思います。本当に、実際いろいろ御苦労が多々あると聞いておりますので、何より敬意を表したいと思います。
 その上で、特定の何か組織の立場というよりは、いち人文情報学の研究者、デジタル・ヒューマニティーズの研究者という観点から、この事業というよりはもう少し広めに、議論というかその辺についてお話をさせていただければと思っております。
 まずは、JDCatもそうなのですけども、データセットをこれからどのように増やしていくかというところは、先ほどの議論にあったように結構重要な課題だろうなと思っております。
 手引の作成も、本当に御苦労されているというのはよくよく理解しているんですけども、人文学に関してはこれから、まだコラムという状況だったと思いますので、これからぜひ充実を図っていただければと思います。それから、実際にデータをつくるための実務という観点からいきますと、データ構築過程のモデルであるとか、手引に加えて実際にこのようにやったらできるんですよというモデルみたいなものをつくっていき、それを共有していくというのも重要なのかなと思っております。
 これが本事業の中になるのか、それとももう少し広いところになるのかというのは議論が必要ですが、一般的にはそういうものが多分必要になるかなと考えます。人文学のほうはまだそのようなデータセットをつくっている例というのがあまり多くないので、どうやったらできるのかというようなところを、何かもうちょっと、こうやったらできるんだという分かりやすい例みたいなのが見えてくると、かなりいろいろ、さらにデータを増やしやすくなるのかなと。
 また、これも同じく一つ前の議論につながっていきますが、データを増やすためには恐らく人的・組織的ネットワークの拡大が重要だと思います。データを使うのは、もちろんデータを実際に処理するのは機械ではあるのですが、入力するにしても活用するにしても、最終的にコントロールするのは人なんですよね。
 なので、人的ネットワークと組織間のネットワークというのをさらに増やしていくというのは、まさにコンソーシアムというような話がありましたけど、重要だろうと。
 それがないと結局、いいデータ構築モデルのようなものは増えていかないだろうなと思います。先ほどの議論にもありましたが、広く公募するというだけではやはり難しいので、やはり実際には日頃から繋がることができるネットワークをどう増やしていくかというところのほうがむしろ重要なんだろうなと思っています。
 公募しても、よく分からないとやっぱりみんな怖くて手が出せないということはありますので。そういうところからデータを実際に増やしていくというのが必要かなと。
 あと、もう一つは、汎用的なツールを増やす工夫というのも、これはさらに本事業からもう少し離れた議論になるかもしれないんですけども、データに加えてツールみたいなものも必要かなと思います。
 例えば、ちょっとこれは自分の機構の話になって恐縮ですが、国際日本文化研究センターにおられます関野先生が、実際に時間全体のデータ基盤であるHuTimeというデータ基盤を作っています。これは、本当にもう紀元前のはるか昔から現在に至るまで、1日ごとのデータが全て、和暦や西暦、それ以外にも多様な履歴が全部マッピングできるというような基盤ツールです。情報基盤としては極めて有益なツールであります。このような情報発見のための基盤やツールを作るというのも重要ではないかと思います。
 JDCatも現在、オンラインツールによって、活用側のツールはつくっていますが、情報発見のほうの効果的なツールであるとか枠組みも必要だろうと思います。
 それはJSPSが単体でつくるということではなくて、例えば時間基盤のような、様々な基盤のところのデータとどのように連携していくかという議論が必要なんじゃないかと思います。もっと言うと、これはこの事業だけではなくて、より広い観点からも汎用的なツール、情報発見ツールみたいなもの、特にデータセットを効果的に発見するようなツールの開発や構築というのは重要だと考えます。
 ヨーロッパでは、特に人文学に関しまして、テキストデータを中心に解析ツールについてかなり汎用的なものが、まさにデジタル・ヒューマニティーズの国際会議なんかで提案されるわけです。
 なので、そのような汎用性の高いツールができると、このJDCatに入ったデータを、そういうツールを使って分析ができるようになります。それでさらに、人文学のほうでいうとデジタル・ヒューマニティーズ、社会科学のほうでもさらにコンピューターを使った研究というのが進んでいくのかなと思います。今回は全体の、現時点でのまとめ的な議論の側面もあると思いますので、ちょっと幅広に、私のほうから、このような論点があるのではないかということでお話をさせていただきました。すみません、長くなりました。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。いかがでしょうか。
 
【JSPS(前田)】  すみません、今のは学術振興会に対する御質問であったのか、それとも委員の皆様の間での議論のための問題提起だったのか、念のために。ちょっと私が答えていい問題かよく分かりませんでしたので、後藤先生にお伺いしたいのですが。
 
【後藤委員】  すみません、失礼いたしました。基本的には、全体としては大きく人文社会科学のデジタル基盤そのものの論点提示というところが大きいんですけども、ただ、例えばJDCatのほうで、今お話ししたようなところで何か実際にやろうとしている、されている部分とかがあれば、その辺りについては御説明いただければ幸いです。
 
【JSPS(前田)】  はい。それに関しましては、正直申し上げまして、廣松センター長のほうから説明がありました内容が我々としては精いっぱいでございまして、諸外国の動向ですとかヨーロッパの動向などはもちろん政策動向としては把握しているんですけれども、具体的に着手するには至っておりません。
 例えば、私は社会科学者ですのでどうしても社会調査のほうになってしまうんですけれども、例えばヨーロッパではクエスチョンバンク、世論調査のデータじゃなくて質問文を検索できる大きなシステムがあるんですけども、そういうものもありますし、特に人文学は実質的には東京大学の史料編纂所さんに、いわゆる歴史的な文書のデジタルデータを公開いただいておりますけれども、それ以外に、ヨーロッパのほうではかなり言語に関するデジタル・ヒューマニティーズの研究が進んでいるというのも伺っております。
 その意味でいうとなかなか追いついていない、特に小さな事業でありながら社会科学と人文学を両方カバーしておりますので、その意味では、後藤先生がおっしゃるように足りないことはたくさんあるのも事実でございます。
 ただ、どこがどう足りないかという感覚自体は、こちらには人文の研究員もおりますので、ある程度は把握しております。
 それで、ちょっとこれを私が言うことが許されるかどうか分かりませんが、一つだけ、後藤先生のお話を聞いていて思ったのが、例えば、日本国内を探すと多分、非常に有益なツールを独自に開発している研究者の方が一定数いらっしゃると思うんです。我々がやらなくても。
 その意味でいうと、やはり国全体といいますか、大きな地図といいますか、方針というか大枠みたいなものをどこかで示していただいて、学術振興会のレベルではなくて、その上で、じゃああなたはここをしなさい、あなたの機関はこういうふうにしなさいというすみ分けみたいなことをしていただけると、かなりこちらとしてはやりやすいんですが、現在はむしろ、何か足りないかを探しながらやっているようなところがございまして、その意味でいうとちょっと、守備範囲をどういうふうにやったほうがいいのかというのは、なかなか私どもも苦労していたというのが、一応、そのことだけ申し上げさせていただきます。すみません、長くなりました。
 
【後藤委員】  ありがとうございます。まさに、今できていないというところを、何か責めるというつもりでは全くございません。ここまでできたから、次に何が必要かというところが見えてきたというところもあるのかなと思っております。そういう点では重要な前進かと思いますし、そこからまさに今、前田先生がおっしゃいましたように、多分、日本全国でそのようなツール、すごく有名なところではKH Coderみたいなものもございますけども、様々な汎用的なツールであるとかも、どのように広く共有していくかとか、情報発見できるようにしていくか――ツールそのものの情報発見ですね、この場合は。ツールそのものの情報発見みたいなものをどのようにやっていくかというのは、多分、今後必要になるのかなというのは思った次第です。
 すみません、ちょっと漠然とした質問というかお話で失礼いたしました。ありがとうございました。
 
【城山主査】  ありがとうございました。恐らくこの委員会全体に対するメッセージとしては、ある種コンソーシアム型みたいなものが提示されているわけですが、コンソーシアム型でやるときに、どうやってマッピングをきちっとするんですか、マッピングをした後でどのように役割分担を決めていくんですかという課題があるわけですが、その時にいろんなツールも使える可能性もあるでしょうし、いろいろ仕組みを考えなきゃいけないという、そういうような問題提起をいただいたという、そういう理解でよろしいでしょうか、後藤先生。ありがとうございました。
 では続いて加藤先生、お願いします。
 
【加藤委員】  加藤ですけれども、発表を聞きながら、資料1-2報告書も拝見しながら聞いていたんですけども、ちょっと教えていただきたいと思いまして。
 報告書の18ページ、図10に、XMLみたいなメタデータの記述例がありますけども、データを送信する側は、この書式に従って、XML的なこの書式を準備して、そちらのJDCatのシステムの運営事務局のほうに送るというような運営形態なのですか。
 
【JSPS(前田)】  研究員の前田のほうからお答え申し上げます。実際にはメタデータは、ここに例示してございますXMLの形式で書かれてはおりますが、個別拠点機関のほうで、例えば担当者がXMLエディターを使ってこれを記述しているわけではなく、言わば一応インターフェースを含めて提供しております。ウェブインターフェース上で必要な空欄に文字情報をタイピングしていけば、それをクリックしたらアップロードされるという意味です。
 もう少し敷衍しますと、一応このJDCatのカタログは二重構造になっておりまして、各拠点機関のほうではWECO3、ジャイロクラウドに基づいて――典型的なケースですけど、ローカルなカタログをつくっていただいております。そのローカルなカタログは入力のインターフェースも整っておりまして、基本的に分かりやすいユーザーインターフェースで、必要な情報を手打ちする、あるいは場合によってはエクセルで事前に準備していって一括登録するようなことをいたします。
 そうすると自動的にエクセルのようなメタデータが生成されて、それでローカルなカタログでは検索もできますし、そしてそのローカルなカタログから、今度はJDCatのほうにメタデータが自動的にハーベストされるということになっております。
 説明になっておりますでしょうか。
 
【加藤委員】  前半の話を伺っていると、何かフォーム入力みたいな、ウェブページみたいなもので入力して、一件一件手打ちをして入力するのかなとも思ったのですが。
 
【JSPS(前田)】  はい、そのとおりでございます。そのやり方もできます。
 
【加藤委員】  それ以外に、ローカルにカタログ形式になったデータが沢山、例えば1万件とかあって、それをマッピングをかけながら一括アップロードするということもできるのですか。
 
【JSPS(前田)】  多分、その間に加工プロセスが入ると思いますけど、原理的に一括アップロードはできるようになっております。そんな、1万件手打ちするとかそういうことはございません。
 
【加藤委員】  なるほど。これはいわゆるディレクトリ型の検索システムで、データの正確性を保ちながらやるということで大変ですが、完成した暁には整ったものができていいと思います。その代わりに、データを用意して入力する側が、一件一件の手打ち、もしくはマッピングをすることが必要となる。これに参加しようとすると、その手間をいとわずにやっていただく必要があるというわけですね。
 研究予算とかがあれば、発注するなり、人を雇うなりすることができるけれども、補助金とかが切れて予算がない状態のときに、これをどうやってメンテするかという問題がありますね。
 
【JSPS(前田)】  加藤先生のおっしゃるとおりでございます。それで、このJDCatのメタデータのハーベストの仕組みは、かなり典型的な一番分かりやすい例で説明しておりますけれども、一橋大学と大阪商業大学のほうでは、WECO3、ジャイロクラウドのシステムに乗って、こちらの提供したユーザーインターフェースに基づいて作業していただいているんですけども、東京大学社会科学研究所のほうでは自前のシステムがもともとありましたもので、そちらを改修して、もともとのメタデータをJDCatのメタデータに変換するプログラムをかませて、それを最終的にJDCatのほうに送信するようにシステム改修をしております。
 ですので、おっしゃるようにそのような作業が必要になりますが、逆にこれから始めるというところで、ワープロレベルというかテキストレベルで様々な情報があるけれども、それがまだきちんと制御されていないところに関しましては、一応もうこれでメタデータを入力して、そうしたらカタログにもう載せられますというレディメードのパッケージをつくっているというのも事実でございます。
 私からの説明は以上です。
 
【加藤委員】  私どもの筑波大学の経験でいうと、キャンパス・イン・キャンパスという、他大学との連携を、スーパーグローバル大学事業の関係でやっていて、海外の連携大学から履修科目の表を取り寄せるのですが、その形式を統一するのが大変で、これと同じような問題が発生します。担当者が苦労している様子を近くで見ていて、予算がなくなったときの維持が大変だろうなと想像しながら聞いていました。
 あともう1点。26ページのところに、図14、JDCat分析ツールの分析画面で、JupyterHubの画面が出ていますけれども、これは、このシステムで接続をするとこの画面が立ち上がって、対話的にRのプログラムを実行することができるということを示していますか。
 
【JSPS(前田)】  すみません、私自身はこのツールを試験的には使ったことがあるんですけど、実際に、ちょっと記憶が定かではないんですけど、立ち上げるとジュピターノートブックが立ち上がって、その上でRをインタラクティブに実行できるシステムであると。Rとパイソンをインタラクティブに実行できるシステムであると理解しております。
 
【加藤委員】  そうだとすると、私はたまたまコンピューターサイエンスが専門で、自分自身がプログラマーなので、このコードを読んだり書いたりできますけれども、人文の一般系の方だと、これを書いてもらうことを前提にするのは難しいと思います。だけれども、こういう環境を用意していて、将来的に高水準のライブラリーが整備されたり、GUIがその上に乗っかれば、いろいろと高水準なことができて、プログラミングができない方でも分析して、様々な興味深い研究ができるという、将来性ということではいいかもしれないと思いました。
 ただし、このような環境を用意すると危ないのは、例えばですけども、無限ループのコードを、悪意はなくても間違って書いたりしてしまって、それが止まらなくて困るなんていう問題が発生するかもしれませんね。
 
【JSPS(前田)】  ありがとうございました。その点はちょっと私、技術的なことまで把握できておりませんので、NIIのほうにそういう御指摘をいただいたことを伝えたいと思います。内部的に彼らのほうで、専門家ですから既に対応があるかもしれませんが、確認させていただきます。
 それと1点、ちょっと追加で私のほうから申し上げることは、一個前の論点ですけど、加藤先生がおっしゃったメタデータの規格といいますか仕様を統一するという話ですけれども、今回、社会科学分野、人文学も含めてですけど、一種統一的なメタデータのスキーマを設定した、恐らくこれが今後標準になって、もし日本中の機関でメタデータをつくるときに、このやり方に従えば無理なく相互運用できるという体制はつくったと考えております。
 それで、これは一応、社会科学分野で国際的に一般的に使われているDDIという文法に基づいておりまして、実はJDCatのメタデータを海外のデータ機関にハーベストしてもらうことは、原理的には可能なように、海外機関とも相談しながらつくっております。
 実際にハーベストしてくれるかどうかは別ですけれども、そういうところまでハーベストしていただけるものをつくっておりますし、逆に海外機関と同じような仕様に基づいている場合、一応原理的にはこちらからハーベストできるというものでございます。
 以上です。
 
【加藤委員】  なるほど。もしかしたらこのシステムの、非常に大きな成果の一つは、このJDCatのメタデータスキーマを設定することによって、各大学とか研究機関でデータを準備していく際に、このフォーマットで用意していただくとか、あるいはこのフォーマットを、情報の用語で「キャノニカルフォーム」という言い方があるんですけども、このフォーマットへの変換プラグインみたいなものを用意していただければ、それを各ローカルにため込んだデータをエクスポート/インポートすることが容易になるという、そういう効果が期待されてすばらしいということかもしれないですね。ありがとうございました。
 
【JSPS(前田)】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 ちょっと最後に1点だけ、これ、廣松先生にお伺いする話なのか分からないところもありますけれど、確認させていただきたいんですが、将来構想として、資料1-2の47と48ページの図を示されたと思うんですけども、そういう意味で長期的にはコンソーシアムが想定されており、コンソーシアムの場合には、ある意味は、今議論になっていたような基本的な標準化とかはもうなされているとすると、中核機関みたいなところで無理やり引っ張っていくところは必ずしも不要で、むしろ複数のアクターで連携してやっていけますというのが長期的な姿であるという理解でよいのか。
 ただし短期的には、すぐそうもいかないので、48ページにあるように、引き続き中核機関で引っ張っていくところが必要であるということが一つと、ただ、文章で書かれているところだと48ページの頭あたりで、中核機関、今まではJSPSさんのほうで担われてきたんだけども、なかなかファンディングエージェンシーで時限で担うというのは難しいので、この中核機関の役割をどこか拠点機関が、連携してなのか単独なのか分かりませんが、そういうところが拠点機関の機能とともに中核機関の機能を担うような、何かそういう姿があるのではないかという、そういうのが取りあえずこの委員会報告としては提示されているという、そういう理解でよろしいんでしょうか。確認だけさせていただければと思います。
 
【JSPS(廣松)】  廣松ですが、はい、今、委員長の御理解のとおりでございます。
 コンソーシアム系に関しては、確かに理想形ではあると思うんですが、単に作業分担ということだけではなくて、資金をどういう形で捻出するかという点も大変大きな論点だろうと思います。
 その意味で、この5年間の活動の経験を踏まえて、もし次期あり得るのであれば、やはり図28のような形の、何かしら中核機関の役割を果たす機関が必要であろうという考え方でございます。
 ただ、これまでの経験も踏まえて、現在のような形でJSPSがこの中核機関の役割を次期も継続して行うというのは難しいという判断でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 まだいろいろ議論あるかと思いますが、取りあえずこの論点につきましてはここまでとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 続きまして議題の2ですけれども、人文学・社会科学の学術知共創についてでございます。
 最初に大阪大学の堂目先生、小出先生から、人文学・社会科学を軸とした学術知共創プロジェクトについて御説明いただきたいというふうに思います。
 資料2に基づいてということになるかと思いますが、よろしくお願いいたします。
 では堂目先生、よろしくお願いします。
 
【大阪大学(堂目)】  よろしくお願いします。では報告させていただきます。
 では、資料の2ページ目をお願いします。まず、本事業における問題意識です。
 次のページをお願いします。本事業は、学術と社会が乖離しているのではないかという問題意識の上に立っております。言葉と現実が乖離しているというふうに言ってもいいかもしれません。
 研究者は左上にありますけれども、特に若手研究者なんですが、研究費、ポジション、業績というものを考えながら研究成果を上げていかなくてはなりません。特に、人間とは何か、社会はどうあるべきかということと人文学・社会科学の研究成果が、こういった環境の中で、右側の様々な社会課題の解決というものに十分つながっていないのではないかということです。
 こうした学術と社会の乖離というものを反転させて、一致の動きを起こす。そのためには、学術だけではなくて社会の双方からの参加――下のほうですね、によって共創ネットワークというものを構築し、場づくり、それからチーム構築、そして社会への発信と循環させて、社会に開かれた学術を推進していかなくてはならない。これが問題意識です。
 本事業では、そうした活動を3つの大きなテーマ、将来の人口動態を見据えた社会・人間の在り方、2つ目が分断社会の超克、それから3つ目は新たな人類社会を形成する価値の創造という3つのテーマの下で進めています。
 それぞれの大きなテーマのリーダーは、1つ目が大竹文雄大阪大学感染症教育研究拠点特任教授。分断社会の超克が稲葉圭信大阪大学大学院人間科学研究科教授。それから新しい価値は出口康夫京都大学大学院文学研究科教授です。
 また、本事業は、今映っておりますように、盛山和夫東京大学名誉教授を事業総括者として、その下で年4回ほど開かれます事業運営委員会の指導・助言の下で進めております。
 次のスライドをお願いいたします。本事業は2020年度から始まったわけですけども、これまで10回のワークショップ、それから2回のシンポジウム、そのほか論点整理、記事化、チーム構築、インタビュー等を行ってきましたが、今日は全体というよりも、今年2月に開催されたシンポジウム、それから3月に開催された3回のワークショップ、及び5月に開催されたワークショップを中心に報告させていただきたいと思います。
 次のスライドをお願いいたします。第2回のシンポジウムは、「未来につなぐ知―公共の要としての大学」というテーマで、2月15日に、これはずっとこの事業が始まってからそうですけども、コロナの影響もあってオンラインで開催され、約130名の参加者がありました。
 シンポジウムはパネルディスカッションの形式で行われて、モデレーターは大阪大学社会技術共創研究センター、ELSIセンターですね、の標葉隆馬准教授、パネリストは熊本大学大学院人文・社会科学研究部、石原明子准教授、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の西田亮介准教授、広島大学大学院人間科学研究科の福本江利子特任助教、豊橋技術科学大学建築都市システム学系の大野悠准教授、それから実務家、実社会からは、株式会社メルカリR4Dオペレーションズマネージャーの多湖真琴氏という、全員30代の若い世代の研究者・実務家で行いました。
 次のスライドをお願いします。話題提供では、細かく説明している時間はないんですけども、知識と知恵の生産様式の違いであるとか、社会のアカデミズムに対する不信感の構造。あるいは両者の、社会と特に政策の現場と、それから研究者の間の時間の物差しの違い。それから企業から見たときの連携の効果の見えにくさということなど、学術と社会の様々なずれについての御指摘が話題提供でありました。
 次のスライドをお願いします。これらを受けてパネルディスカッションを行ったんですけども、ここでも様々な意見が出されました。
 今映ってあるとおりですけども、それらは大きく言えば、社会と学術、アカデミアの間の関係だとか意思疎通の問題、間の問題ですね。あるいは、評価制度などの研究活動に関するアカデミア内部の問題。それから、そもそも社会が声なき声をちゃんと聞いているのか、耳を傾けているのか。あるいはそこに関わることが何らかの勢力に加担することになるのではないかという、社会の側の公正さの問題などに分けられると思います。これがシンポジウムの論点です。
 次のスライドをお願いします。3月7日には、「政策と専門知―市民・現場・対応―」というテーマで第7回のワークショップが開催されました。これは人口動態の部門なんですけども、テーマ代表者の大竹先生のモデレーションの下で、東京大学大学院経済研究科の仲田泰祐准教授と、文化人類学医療人類学者の磯野真穂氏に話題提供をいただきました。
 さらに、次のスライドをお願いします。下のほうが一覧ですけども、さらに6人の参加者が加わってディスカッションを行いました。
 次のスライドをお願いします。ワークショップの概要はここに書かれてあるとおりですけども、議論された主な点は、下の論点ですけども、1、善き政策(行動)のために真の探究活動(専門知)がどのように関わることができるのか。それから2番目、時間制約がある中で異なる専門知間の見解をつなげて、一つまたは複数の提案にする方法をどう確立していくか。3番、政策担当者が学術に求める「期待」に向き合うために、専門家の基本的姿勢をどう考えていくか。そして4番目に、専門知を政策に生かすために、現在の日本の構造的な問題も、大竹先生がコロナの分科会にも所属されておりますので、日本の構造的な問題にどう働きかけていくのかということです。これも非常に豊富な論点が、議論がなされましたが、詳細はホームページに掲載しておりますので、どうぞ御覧ください。
 なお、一枚スライドを戻っていただきまして、先ほど紹介しました参加者の方々とは、ワークショップの前からもそうですが、終了後もワークショップの振り返り、それからチーム構築の相談、あるいは他のワークショップをするときの案内などを通じて、関係を維持するように努めております。これは他のワークショップを行ったときも同様です。
 では2枚先に進んでいただきまして、3月17日には「VULNERABILITY―AI・ロボット・サイボーグと“ひと”―」というテーマで第8回のワークショップを開催しました。
 これは新たな価値創造の部門で、テーマ代表者は出口先生ですけども、モデレーターを甲南大学の井野瀬久美恵教授、これは事業委員会のメンバーでもあります、に務めていただき、そして北海道大学人間知・脳・AI研究教育センターの田口茂先生、今日もおいでですけども、それから株式会社KANDO代表取締役の田崎有城氏に話題提供をいただきました。
 次のスライドをお願いします。これも同様に、さらにこういったメンバーに、実務家も含めて5人の参加者を加えてディスカッションを行いました。
 次のスライドをお願いします。バルネラビリティというのは、近年、多くの領域にまたがって使われるキーワードで、傷つきやすさ、可傷性あるいは脆弱性などの訳語が充てられています。
 社会課題の基礎には、必ずといっていいほど人のバルネラビリティ、あるいはモータリティ――死すべき運命ですね、というものが存在して、人文学・社会科学はその本質、バルネラビリティの本質をつまびらかにしていく必要があると言えます。
 このワークショップではそのような意識から、AIやロボット、サイボーグを言わば比較対象において、下の論点ですね、AI・ロボットなどの異質な存在をどのように位置づけていくのか。あるいは2番目に、人の持つバルネラビリティの本質とは何か。それをAIやロボットなどの人工物で解消できるのか。3番目に、技術の発展過程において学問間のコミュニケーションをどのように醸成していくか。こういうことを議論してまいりました。
 なお、後で盛山先生からも報告があるかもしれませんけれども、本部門のテーマ代表者の出口先生の研究チームが、「よりよいスマートWEを目指して―東アジア人文・社会知から価値多層社会へ」を研究課題として、今年度、課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業(学術知共創プログラム)に採択されました。
 次のスライドをお願いいたします。3月22日には「平和へのアプローチ―学問と実践の共創―」というテーマで第9回のワークショップを開催しました。これは分断社会の超克が大きなテーマになっております。稲葉先生が代表者です。
 このワークショップは、実はテーマ設定及び企画の段階から広島大学に関わっていただいて、そしてタイトルを決め、テーマも決めていただいて、そしてモデレーターを広島大学学術院の片桐真理教授と、同じく広島大学の大学院人間社会科学研究科の桑島秀樹教授に務めていただきました。
 そして、広島大学の大学院人間科学研究科の吉田修教授、大阪女学院大学国際・英語学部の奥本京子教授、それから明治学院大学国際平和研究所の米川正子研究員から話題提供をいただきました。
 次のスライドをお願いします。さらにこの6名に割っていただいて、12名でディスカッションをしました。
 どんなことを議論したかというと、その次のスライドをお願いいたします。ちょっと細かいんですけども、下のほう、人類が自分たち全てを殺戮する軍事力を持ってしまった中、平和をどのように構築していったらよいのか。2が、個別性の高い専門知・経験知をいかに平場に出し合い・活かし合う相互補完的なコミュニティーを築いていけるか。それから3番、補完行政や難民支援などの個別的・具体的な取組に対して、学術はどのように応えることができるか。4番、平和や紛争という多義性を持つ言葉を解きほぐしつつ、世界を平和に導く仲保的な役割をどのように果たすことができるか、といったことが論点になりました。
 ロシアのウクライナ侵攻が始まった直後のワークショップでもあり、大変現実味を帯びた、緊張感の中でのワークショップとなりました。
 なお、本ワークショップでの議論を踏まえて、モデレーターを務めていただきました片桐先生と桑島先生は、現在それぞれ「ビジネスと平和」あるいは「心の強靭性を考える」ということをテーマにして、研究チームをつくれないかということを検討していただいております。
 次お願いいたします。第10回のワークショップは、これまで開催された9回のワークショップ、今回の3月のものもそうですけども、これを踏まえつつ、新たな人類社会を形成する価値の創造、それから分断社会の超克、将来の人口動態を見据えた社会・人間の在り方という、そもそもの大きなテーマに立ち返って、そのテーマの代表者が振り返りながら、私もモデレーターとして、そして「いのちを大切にする社会を目指して―学術知と大学の役割」というテーマで5月16日にこうした収録の形で、4人だけで行いました。
 次お願いいたします。ワークショップは、これは命の脆弱さ、先ほどのバルネラビリティを基礎に、こういった新しい価値というものをどう考えるのか、それは何なのか。それから、その価値を実現していくための、2番目、オープンなコミュニティーを形成する上で超克すべき分断というものは何なのか。3番目が、分断を乗り越えるためのコミュニケーションはどうあるべきか。特に日本の政策当局、それから学術あるいは専門家、それから市民との間のコミュニケーションも含めてどうなのかということを議論して、それを踏まえて、学術知、特に人文学・社会科学の知、あるいは大学がこれらの課題にどう応えていくべきなのか。これは根本的な問題ですけれども、これを徹底的に4人で議論しました。
 2時間強のディスカッションになりましたが、それがほぼ編集なしで、動画がホームページ上に公開されておりますので、ぜひ御覧ください。
 最後に、今後の課題なんですけれども、次のスライドをお願いします。
 ワークショップについては、あと3回、第11回から第13回を8月以降に開催する予定で準備を進めております。過去に出された論点、特に一回、10回目で総括のようなこともしたわけですけども、これを踏まえて、もう一度大きなテーマごとに分かれて1回ずつ実施して、ワークショップ後に何かまた集まる場、サロンなどを通じて論点を深め、できれば研究チームの構築につなげたいというふうに考えております。
 シンポジウムに関しては12月以降に開催し、この2年半の事業を総括し、社会に発信する予定です。
 言語化については、予定のものを含めれば全部で13回ワークショップを開催したことになるわけですけども、それで出された論点というものを参考に、目指すべき価値や社会、それらを実現するためコミュニケーションや政策の在り方について論じるとともに、学術や大学が果たすべき役割を言語化、あるいはそういう場をどうやってつくっていったらいいのかということを言語化する予定です。
 ネットワークについては、事業終了後も、これまで協力・支援していただいた組織や個人、これは濃淡といいますか、関係が深いところと割合薄いところはありますが、約100人近くになっております。これを中心に共創の場というものを持ち続け、広げてまいりたいと考えています。
 以上で私の報告を終わります。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、今御説明いただきました内容について、御質問、御意見等いただければと思います。いかがでしょうか。
 では、最初、田口委員、その後小長谷委員の順番でお願いします。
 
【田口委員】  田口です。堂目先生、どうも御説明ありがとうございました。
 私も一度ワークショップに参加させていただきましたけども、非常に活発な議論がなされていて、内容的にも非常に最先端の問題を扱うというもので、極めて意義のあるワークショップだったと思うんですが、しかし他方で、こういうワークショップに対して、1回きりでこういうイベントとして行われて、それで終わってしまって、その後になかなかつながらないという課題があると思うんです。
 一番最後のスライドで、ネットワークの拡大ということについてもお話しされていましたが、堂目先生はおそらく社会ソリューションイニシアティブ、大阪大学SSIで長くそういう、研究者と社会とをつなぐような場の形成といいますか、一番最初のほうのスライドでも、研究者と社会との間で乖離がある、分断があるというお話がありましたけど、そこをつなげていくような場づくりといいますか、表に見えるワークショップだけではなくて持続的に動いていくようなコミュニティーづくりといいますか、そういうものについてもいろいろ御経験や、やられてきたことがあるかと思うんですが、その辺りも含めて、今後の展望などを御説明いただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。
 
【大阪大学(堂目)】  ありがとうございます。田口先生の組織もそうだというふうに、同じような組織だというふうに思いますが、これは一番苦労するところですね。場をどう盛り上げていくかということと、盛り上がって終わりではなくて、だけど無理やり――無理やりというのはあれですが、チームにしてしまうと、これはこれでまたちょっと違うかなと。だけどもこの関係を切れないようにつなげていく。
 今、広島大学とは、小出先生にも入っていただいて通って、そしてサロンというものを通じてつないでいく。それがうまくチームになるかどうかはやってみないと分からないけども、それでもつないでいく。こういうことを丁寧にやっていく必要があります。
 ただ、この事業も少人数で小規模でやっておりますので、もう終わったらスラッグでお互い議論してくださいねとかやってもらっているんですが、ちょっと断ち切れちゃうとか、試行錯誤を繰り返しております。
 だけど、その辺りのデータというのは私のほうで持っておりまして、この事業が終わってもSSIのほうで、これは従来やってきた、サロンだとかワークショップをやっておりますので、そちらのほうで声をかけさせていただく。
 あるいはこの間いろいろな大学と、北海道大学もそうですが、東工大のリベラルアーツともつながりますし、東京大学の未来ビジョンともつながっておりますから、そういった似たような組織ともつながりながら協調してワークショップを開催する。その時にお呼びするとか、またちょっとお話してくださいとか、こういうチームをつくりたいといったときにお声がけさせていただくという形で、これは気長にといいますか、ある程度時間をかけながら醸成していくということが必要かというふうに思っております。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。
 そうしましたら小長谷先生、お願いします。
 
【小長谷委員】  御説明ありがとうございました。場づくりというのはとても御苦労があると思うんです。それでも、学術的にネットワークができるよすがが見えて、いいことだなというふうに伺って聞いておりました。
 今、私は学術振興会にいるものですから、大型科研の枠組みがちゃんとあるのにもかかわらず、人文系の場合は研究者の数に比べてその申込み数がもともと非常に少ないわけです。少ないと、他分野と一律の採択率ですのでほとんど採択されませんから、負のスパイラルが起きる、つまり採択されていないのを見て、誰もまた応募しないというふうになってしまう背景が一方にある中で、こういう地道な活動、労が非常に多いんだけども、こういうことがあることによってチーム編成というのが進んで、いろんな申請の入口へのチャレンジが進めばいいなというふうに伺っておりました。
 実際にそういう傾向はありそうなんでしょうか。先ほど、おっしゃったように無理やりはいけないと思いますけど、全体でチーム編成ができて、大型科研を申請していくというような、そういう流れというのは見られそうかどうか、ちょっと予測をお聞かせ下さい。
 
【大阪大学(堂目)】  これは現実、正直申しましてなかなか難しいと。SSIもそうですけども、この事業でもとにかくそういうことをあまり考えないで、とにかく話題ということで集まりましょうと。盛り上がるんだけれども、それでよかったということで終わってしまう、こういう回もありました。そういうことを狙った回もありましたし、いや、やっぱりチームをつくらなきゃいけないから課題を絞り込んで、もう設定するような形で、チームをつくるんだという形で集めましょうと。
 そうすると、もう最初からそれの議論になってしまって、議論に広がりがない。それだったら別にここでやらなくても、有力なテーマ代表者ですから、その関係で声をかけて科研費Sを取りに行くという場にすればいいと。何かこう、共創の場にならないと。間をどうやって取っていくのか。
 偶然の出会いも含めながら、思ってもみないような人と出会って、自分の知の在り方も変えられながら、その暁に、じゃあ科研費Sの仲間とかそういうのじゃない形でチームをつくって、何か課題に応えていくようなことをちゃんと見つけて、それは誰が音頭を取って、誰がそれをつないでいくのかということが、まだ人文・社会科学系のほうではそういう経験を持っている研究者は少ないし、それをつなぐ人材というものもまだできていないなということは実感しておりますから、成果として、やっぱりSとか何か取らなきゃとやると、そういう場になってしまうので、ちょっといい論点が出てこないという。
 もちろんといいますか、これは悩み続けていますが、しかし、こういうことをやはり繰り返していく、そういう間をどうやって取ってバランスを取っていくかということが大事なんだということを、きちっと場づくりの段階からちゃんと説明して、そういうものとして話題を提供してください、後でつながってくださいということを、登壇者、参加者の方にきちっと説明して、その後も付き合っていく中でチーム構築ができていくのではないか。
 出口先生のところは、もともと出口先生が京都大学で、日立京大ラボというところでやっておられたので、その下地はありましたけれども、この場というところを通じて、新たなメンバーも加えて、このたび採択されたというところでありますが、完全なゼロからのスタートではなかったかもしれませんけれども、一つの成果だというふうに思っております。
 こういったものが、本当は思ってもみない出会いから、ゼロから、白紙の状態から集まってきて、こういった先導的な課題のところに採択されるようなチームにつながっていくということが理想だとは思っております。それは、この事業が終わった後も、そういったところを目指して継続していきたいと思っております。
 
【小長谷委員】  ありがとうございました。先導的な課題だけが出口ではなく、選択肢の単なる一つでしかないので、これからも続けて支援してください。ありがとうございました。
 
【大阪大学(堂目)】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 ちょっと遅れ気味なのですが、お二人手が挙がっていますので、新福先生と白波瀬先生、お二人とのやり取りまでさせていただければと思います。
 ではまず新福先生、よろしくお願いします。
 
【新福委員】  広島大学の新福です。御発表どうもありがとうございました。
 この事業、形成のところから関わっていたので、このようなすばらしいシンポジウム、ワークショップがたくさんなされたということで非常にうれしく拝見しましたところです。
 私の質問は、これは前の先生とも大分重なってしまうんですけれども、やはり共創の場ということで、他分野もしくは異業種、様々な人が集まってチームを形成していくような事業形態でしたが、そういった新しいチームを形成するというのは対面の方が望ましいと思いますが、ちょうどコロナ禍に重なって対面で実施することは難しいような時期もあったかと思います。そういった中で新しいチームを形成していくところの難しさですとか、その中でうまくいったこと、工夫したことがあったらお聞きしたいなというふうに思いました。また、上がってきたテーマが、もともと日本社会における課題ではあったかと思うのですが、平和のことなどは国際的にも非常に重要なテーマが上がってきたのではないかと思います。
 今後、こういったことを日本語だけではなくて国際的に発信していかれるということが良いのではないかというふうにお見受けしたのですが、そういった発展の考え方ですとか、今後そういったことで予定していることがありましたら教えていただけたらと思います。
 
【大阪大学(堂目)】  まず、コロナ禍で、これは採択されたときから、もうこれはリアルというのはなかなか難しいということは分かっておりました。本当は皆さん、人文学・社会科学、セミナーをやると、本番も大事なんだけど、終わった後、それぞれ分かれて、場合によってはちょっと食事をしに行ったりという中で、あれをやろうこれをやろうということが、いろんなアイデアが出てきて、またじゃあ会いましょうと、こういうことが特に必要なんですが、それがやはり、どのワークショップもそうだと思いますが、それがオンラインだとできない。やっぱりリアルの重要さ。
 ですから今度、残り3回は、今の状況であれば、全員じゃないかもしれないんですけれども、できるだけリアルで、最後の3回ぐらいはやってみたいというふうには思っております。
 ただ、オンラインであるから、これもよく言われることですけれども、遠方の方であっても参加していただけるという、そのよさというものはありましたが、全体としてはやはりリアルで、SSIもそうですが、ちゃんとした場所で集まって、いろんな雰囲気もちょっとこう感じながら、言葉の行間を読みながら、雰囲気を読みながらというところ、やっぱり人文学・社会科学は非常に重要なところ、言語化するといっても、その背後にある気持ちとかいうものをちゃんと読み取りながら場づくりをしていくというところは、やっぱりリアルのほうがよいのかなというふうに思っております。
 あとは国際化ですね。これも考えたんですが、オンラインだから国際化も、もしかするとやりやすいのかもしれませんけども、現在のところでは残り3回も、こういった状況ですので、もう一度しっかりと基本的に日本語環境で行いたいと思っております。
 ただ、おっしゃられるとおり、さらにここに外国の、日本の国籍ではない人たちに入ってきていただいて議論するということは、SSIでは当然考えておりますし、テーマとしてはSDGsであるとか、関西であれば万博というようなテーマもありますので、それは引き続き事業終了後、拡張していきたいと思います。実は既にいろいろやっているところもあります。
 ということで、そのような回答でよろしいでしょうか。
 
【新福委員】  ありがとうございました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは白波瀬先生、お願いします。
 
【白波瀬委員】  ありがとうございます。大変、本当に重要な試みであり、これだけのことをされたことに対して敬意を表したいと思います。
 これまで先生方も御指摘はあったので繰り返しになるんですけれども、やはりこれ、つながる、本当は年齢を区切って募集をして、場をつくってあげて、ここまでのことはできたけれどもという、次につなげるというときに、若い人だけに頼るわけにはいかないとか、あと理系と文系でちょっと違うところは、チームをつくるときのモチベーションとか、方法論とか、材料の使い方とか、様々なインフラが違う中で、どういうように――理系と互角にやるということはどうなのかということはまたあるとは思うんですけれども、何かそのモチベーションのつけ方というのも一つ大切かなというふうに、ちょっと考えておりまして、本当はそのためには、実は評価側の問題がすごく文系にはあるのではないかという気もしないではないんですけれども、その評価の側ということと、あともう1つは、落としどころ。
 つまり、仲間をつくるというのは、やっぱり具体に一緒に共著をするとか、何かそういう強いモチベーションというのがあることは、結局何か必要な気もするんですけれども、その辺りのお考え、もしありましたらよろしくお願いいたします。
 
【大阪大学(堂目)】  私もSSIもそうですけれども、この事業でも、自然科学の研究者の方にも来ていただきました。あと実務家、あるいはパブリックセクターの方も。それぞれ知の在り方が違う。個人間も違いますし、分野・専門によっても違うということを改めて知りました。
 特に自然科学というのは、言葉がある程度一致している。「量子」とか「素粒子」とか言えば大体同じものをちゃんと把握して、そこから共通言語で新たなものを発見すると。人文学・社会科学というのは言葉の定義がそれぞれによって違う中で、むしろ言葉の定義をその議論のプロセスの中で明らかにしていく。「こういうことを考えているんだ」ということを。
 そういうのが一緒になって議論すると、はっきり言って、まずは混乱すると。使っている言葉の意味がそれぞれ違うじゃないかというところで。
 だけど、それで終わってしまう場合もあるんですけど、その経験をしていく。この場がなければ恐らくそういう経験はしない。だけど、違うんだということが分かる。これは「融合」と言うけど、とてもじゃないけど簡単には融合できないぞということがまず分かる。
 それがもう、じゃあ自分の専門知をどういうふうに使ったらいいのかという、自分の専門知の近い方ですね、知を使う。知といいますか、プロネーシスといいますか賢了といいますか、これが分かってくるというところに、私はそこに一番、私なんかはモチベーションを感じるというか、自分の専門知の意味づけだとか使い方という、ちょっとメタレベルの違う知が自分の中に入り込んで、それが腑に落ちるというところで、皆さん盛り上がっているのではないかと。驚きと、腑に落ちていくというところ、そういうところがモチベーションで重要なんじゃないかと。
 それがないと、次一緒にやろうと言っても、やっぱ無理やり感が出てしまうし、違和感が残ったままチームになってしまうというので、それぞれの専門知の個性とかいうものは残しながら、だけどその意味づけというものがちゃんとできるようになって、そして何かつながっていけるというのが。
 だから、「融合」という言葉がいいのかどうかとか、今、総合知ということが言われていますけれども、総合知に総合するための知というものがそれぞれの中で発見させられていくプロセス、こういうものが重要なのではないかというふうに、今のところそういうふうに思っております。あと3回やってみて、また新たな発見があるかもしれません。
 よろしいでしょうか。お答えになっていますかね。
 
【白波瀬委員】  ありがとうございました。
 
【大阪大学(堂目)】  あと、評価の問題ですね。これ、若手研究者からシンポジウムでも出ました。なかなか、この世界の中に引っ張ってきても、プロネーシスが得られますよというモチベーションだけでは若手はなかなか来てくれなくて、目に見える結果を出さなきゃいけないというところで、目に見えないものをちゃんと見て評価するシステムが必要だということは、もう繰り返し若手の中から出てきております。付け加えさせていただきます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございます。
 続きまして、最後の議題に移りたいと思いますけれども、日本学術振興会の盛山先生のほうから、課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業について御説明いただければと思います。
 資料3に基づいてということで、よろしくお願いいたします。
 
【JSPS(盛山)】  課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業について、現状と課題を御報告いたします。
 この課題設定の事業は、もともと平成24年、今から10年前になりますが、やはり学術分科会の報告に基づいた、課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業から始まっています。そこではあらかじめ3つのテーマといいますか、「領域開拓」「実社会対応」「グローバル展開」という3つのプログラムが設定されていまして、令和2年度まで、この構図の下で課題を設定し、かつ採択課題を採択してきました。
 その後、平成24年度の報告の言わば後継報告書というものが、現在の特別委員会において、令和2年度及び3年度にかけて、「中間まとめ」とか「審議のまとめ」等でまとめられました。それを受けまして、先ほど堂目先生の御報告がありました大阪大学の事業は令和2年度から発足しておりますが、それから1年遅れまして令和3年度から、学術振興会において課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業の中の学術知共創プログラムという形で発足したという経緯であります。
 これは、「審議のまとめ」にありましたもともとの理念を体現いたしまして、スライドに少し強調してありますように、未来社会が直面するであろう諸問題に有意義な応答をするということを目指しながら、多様な分野の研究者、ステークホルダーを糾合し、かつ人文学・社会科学固有の本質的・根源的な問いを追究する研究というものを推進するということに、大きな柱があります。
 具体的には、その報告「審議のまとめ」で提示されておりました3つの大きなテーマを継承して、3課題を設定しております。
 組織構造について一言申し上げますと、3ページ目になりますが、先ほど来ありますように、私自身が大阪大学のほうの事業総括者という立場でもあるところから、これまでの課題設定によるプログラムと同じ構造で、審査と評価を担当する組織として部会というものを改めて設け、その上の事業委員会は直接的には審査と評価には携わらないという、その分離をきちっと明確に維持して運営しております。
 それから、この事業の全体的な流れですが、昨年度発足したものですけれども、一つずつの採択課題は6年間という長期にわたるものであるところから、既に今年度に関しても採択課題が決まっておりますが、あと実質的な新たな採択は、今年度末といいますか12月ぐらいに提示される公募要領に基づいて、来年の2月ぐらいに締め切られる公募が、最終的な新たな採択課題になります。事業そのものは6年の研究が終わるまで続きますけれども、採択というイベントは今年度で終わるという形になっております。
 それから、過去のこれまでのプログラムに関しましては、まだ実際の研究も遂行されておりますし、終わったものに関しての評価という事業も継続してなされているところであります。
 次のページに行きますが、スケジュールは、ここに書いてあるのはまだ途中まででして、今年度に関しましては、堂目先生からも若干紹介がありましたが、既に採択課題2件が決まっております。今年度は、あと12月に新たな公募を開始するという予定になっております。
 その公募の採択課題等につきましては、このページの真ん中にありますが、昨年度は全部で31研究の応募がありました。そのうち、Bの分断社会の超克について1件、それからCの新たな人類社会を形成する価値の創造について1件という、2件が採択されました。
 今年度は実は3件の採択枠を設けていたのですが、審査に当たった部会の先生の報告によりますと、最終的に採択に値するものとしては2件しかなかったということで、結果としてCの課題に対応するものが2件選ばれました。
 事業委員会はこのほかに、公募要領等を通じてこの事業をどのように研究者コミュニティーに伝えるかについていろいろと工夫をしております。
 その下にありますのが、審査に当たっての主な要素と観点について、最新に検討したことを書きました。そこでのポイントは、人文学・社会科学以外の多様な先生方の参加があまり強調され過ぎますと、それだけに熱心になった研究が出てくるという傾向があるという指摘がありまして、その辺りを明確にしつつも、かつあまりとらわれないということを意識した変更を行っております。
 それ以外に注意したことは、プログラムの趣旨です。これも「審議のまとめ」をベースにしながら事業委員会のほうで独自に工夫したものです。先ほど申しましたように、この事業の一番大きなポイントは、人文学・社会科学に固有の本質的・根源的な問いを追究する研究ということをいかにして応募してもらうかということで、それが分かるように工夫したつもりであります。
 時間の関係上、少し先に飛ばしまして、昨年度採択された課題、2課題が9頁に紹介されております。今年度採択された課題につきましては、出口先生のものと、中村先生のものとが10頁と11頁に紹介されておりますので、御覧ください。
 最後に、今後の検討課題について。少し詳しく申し上げたいと思います。
 12頁に、大きく分けまして、短く3つが挙げてあります。まず公募研究テーマ数が伸び悩んでおります。全体として、昨年度31件、今年度29件というのは、必ずしも多くはありません。結果として、今年度2件しか採択されなかったということの背景には、応募数が必ずしも多くないということが一つあるかと感じております。
 次に、その背景にあると思われるのが、この事業についての研究者コミュニティーでの認知度が必ずしも広くはないかもしれないということです。これは何とかして事業委員会として、広報活動等についても努力しなければいけないと思っております。
 第3に、実は応募してきた課題につきましても、これは私自身はじかに見ておりませんけれども、審査に当たられた先生方からの御報告を聞いておりますと、どうも本事業の趣旨、これは大きく分けまして3点あると思います、つまり、現代的な課題に応えること、それから多様な研究者の糾合を図ること、それから3番目が人文学・社会科学の根源的な問いに答えようとすること。応募される課題の中に、これらの事業の趣旨が、必ずしも十分理解されていない嫌いのあるものがみかけられるという問題があります。
 ほかにも問題があります。この事業は、今は、単に応募を待つだけになっていますけれども、「審議のまとめ」に書かれた趣旨での人文学・社会科学の推進という主要な観点を、いかにして学術コミュニティーの皆さんに広く伝えるか、という課題があります。つまり、この学術知共創という観点からの人文学・社会科学の推進が、人文学・社会科学の諸分野にとって非常に重要なことであるということについて、いかに広く周知・浸透を図っていくか。それが、この事業として大きな課題であるというふうに考えております。
 これにつきまして、先生方からの御意見、あるいはサジェスション等をいただけましたら大変ありがたいと思います。
 以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、御質問、御御意見いただければと思いますが、いかがでしょうか。
 それでは小長谷先生、お願いします。
 
【小長谷委員】  御説明ありがとうございました。JSPSで議論があったので、私もちょっと陪席させていただいていたので、その時の印象を少し付け加えさせていただいてよろしいでしょうか。
 幾つかのプログラムが採択されなかった、予定よりも少なかった理由として、応募の数だけではなくて、やはり質の問題があろうかと思います。
 その質について先生方の御意見を聞いていると、せっかくこれだけチャレンジされていると。しかし、そのスペック、こういう要件を満たしなさいというものがすごくたくさんあり過ぎるために、不十分な点がやや多いと。すなわち、要求要件が多いために満たないものもあったかと思います。
 それに対して先生方が、審査サイドとの対話を通じてプロジェクトをより充実させるような場というのがあってもいいんじゃないかと。せっかくのチャレンジを無にしないために、もともと要求が多いので不十分なところについては審査サイドとの対話を通じたら充実していくんじゃないかと。そういう点ではもったいないと。
 もちろん、それが審査の場による圧力になっちゃいけないので、それだけは留意しなければなりませんが、そういう場づくりになってもいいですねという御意見が、審査の先生方からあったように思われます。付け加えさせていただきました。
 
【城山主査】  盛山先生、何かございますでしょうか。
 
【JSPS(盛山)】  どうもありがとうございます。今の問題は多分、応募の研究の中には、審査の観点の数が非常に多いことにとらわれているものがあるということかと思います。観点の数の多さは、従来の課題設定のプログラムのときからあったものですけれども、科学研究費と比べると、審査の観点の数が多くなっています。数が多いとそれにとらわれてしまって、それを表面的にだけ満たそうとすることに注力してしまうという傾向がありそうだという指摘が、審査にあたった部会の先生からもありました。
 その辺りは少し考えなければいけない。公募要領の工夫というのがまだ可能ですので、これは検討させていただきたいと思います。
 それから、今、小長谷先生がおっしゃった対話ということですが、対話は実は非常に難しい面があります。というのも、まず審査プロセスの中で応募者と対話することは、公正さの面から無理なのですね。ただ一つ可能なのは、今年度中にシンポジウムを秋ぐらいに予定しておりまして、実際に公募を開始する前にシンポジウムを開催したいと思っています。そういう機会を通じて、このプロジェクトが、この事業が何を目指しているのかということがよりはっきりと伝わるような工夫、それは広報活動と一体と思いますけれども、これは努力したいというふうに思っております。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 では岸村先生、お願いします。
 
【岸村委員】  ありがとうございます。今のところと関係するんですけど、今度シンポジウムとかされて説明されて、それはとてもよいことだと思うんですけれども、もともとこのプログラムは、事前の説明会ですとか、何か説明会をビデオで流すとか、そういうのってされていたんでしょうか。
 
【JSPS(盛山)】  すみません、たしかに事前説明会は、必ずしも行っておりませんでした。
 ただ、開始する年のシンポジウムで、シンポジウムの中身そのものは以前のプログラムの研究報告がメインだったのですけれども、その際に、学術振興会の担当課長のほうから、新しい学術知共創プログラムについて簡単な説明はさせていただきました。
 でもそれだけでしたので、広報の件で十分ではなかったという点は少し反省しています。
 
【岸村委員】  そうですね、そういう点では、例えばJSTのプログラムはよく説明会をしっかりやって、質疑応答の時間も設けたりとか、後からビデオを出して質疑を受けたりとかいうこともあるかと思いますので、やはりかなりチャレンジングな取組ですし、意図が伝わりにくい面もあるかもしれないと思いますので、既に2回分蓄積もありますし、結構、発信できることも多いんじゃないかと思いますので、工夫していただくとさらによいものになるかなと思いました。ありがとうございました。
 
【JSPS(盛山)】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  では続いて田口先生、お願いします。
 
【田口委員】  田口と申します。盛山先生、御説明どうもありがとうございました。
 いろいろ満たすべき要件が非常に多過ぎて、どういうふうに対応したらいいのか、応募者がかなり迷ってしまう、困ってしまう、あるいは表面的にだけそれを満たすようなものになってしまうというお話がありましたけれども、満たすべき要件にある程度重みづけをするというか、これとこれとこれは最低限満たしてほしい、あとは努力目標というような形で重みづけをするということは考えられますでしょうか。
 もともと3つ大きなものがあったと思うんですけど、3つのものに関してさえ、例えばグローバル展開に重点を置くパターンとか、あるいは異分野間の融合に重点を置くパターンとか、そういうふうに重点を置いた満たし方というのを提示するとか、そんなようなことは可能でしょうか。
 
【JSPS(盛山)】  そうですね、公募要領の作成段階から、審査の観点をどういうふうに設定しようかというのは、事業委員会のほうで一番大きな検討課題の一つでした。現在の観点はそうした議論の結果として一応まとまったものなのですが、そこでは、やはりいろんな意見といいますか、気をつけなければならない問題の指摘がありました。そして、観点のあいだの優劣、つまり、これは必須だけれどこれはそうでもないというような、観点のあいだの差別化みたいなものを図ると、かえってそれが悪影響するかもしれないという議論になりました。
 そこで、今の公募要領では、そういう区別というか優先順位みたいなものはつけないで、基本的には全てを求めていますよとしながら、同時に、必ずしも全てが含まれてないと駄目ですよとまでは明記しない、としています。つまり、全てを求めているのだけれども、全てないと駄目だとまでは言っていませんし、考えていません。
 ただ、これがうまく伝わっていないところもありまして、何かいい案がありましたら、御意見いただければありがたいと思います。事業委員会のほうでも、今年度、観点の問題を含め、公募要領をあらためて検討するという予定になっております。
 
【田口委員】  先ほど岸村先生の御意見の中にもありましたけれども、やはり事前説明会とかでその辺りのニュアンスが伝わると結構違ってくるのかなと。
 たくさん区別なく挙がっていますけども、全部必ず満たしなさいということではありませんというニュアンスだけでも伝われば、応募側としてはかなりやり方が変わってくるのかなという印象を受けました。ありがとうございました。
 
【JSPS(盛山)】  その辺りは、実はホームページ上でもあまり十分でないかもしれません。ホームページにおいて、事業の趣旨というものが必ずしも分かりやすい文章では書かれていないかもしれないところがありまして、そこも別の文章で何か誘導するような工夫をするとか、いろいろな意見が、この間も事業委員会で出てきましたので、それをベースにしながら検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。
 
【城山主査】  岸村先生。
 
【岸村委員】  すみません、補足でなんですけど、実は私も昨年度の応募で関わった課題もあった経験上、ちょっとコメントなんですけれども、やはりいろんな人を連れ込もうとしてチームメークするのですごく大変で、いつ準備を始めるかというのは結構な問題だと思うんです。だから、なるべく早い段階で説明会とかしていただいて、どのぐらいのチームメークか適正なみたいな目安があると練りやすいと思いますし、先ほどほかの先生のコメントからもありましたけど、やっぱり1回の申請で終わらせるにしてはもったいないつくりになってしまうと思いますので、何かそれが次に生きるような形になると、すごくよいかなと思いました。
 以上です。
 
【JSPS(盛山)】  ありがとうございます。検討させてください。
 
【城山主査】  ありがとうございます。ちょっと私からも一つ二つお伺いできればと思うんですが、一つは、今までも議論があった、プログラムの趣旨が必ずしも理解されていないとか、そこの丁寧な説明をどうやるかという、プロジェクトメーキングの段階の話は一つあると思うんですが、もう一つ、多分この種の課題の場合、プロジェクトを採択した後のフォローアップというか、ハンズオン的なことを、JSPSのプログラムではあるんですけど、多少やるのかどうかということもあるのかなと。
 多分、採択して、それであとは御自由にやってくださいがいいのか、あるいはグループ間、プロジェクト間の交流を促したりだとか、そういう意味で先ほどのシンポジウムは大変よいかと思うんですが、そういう採択後のフォローアップみたいなことの議論がおありになるのか、というのが1つです。
 それからもう1つは、今議論になっていた多様な観点でどこを重視するかというのはいろんな選択肢がありますよというあたりは、多分それこそJSTのさきがけにちょっと関わっていた感じで言うと、ある種のポートフォリオマネジメントみたいなことをやるわけですよね。つまり、同じ性格じゃなくて、これはここがいいから採るとか、こっちはここがいいから採るで、多分それは絶対基準というよりは、ある種全体のバランスが重要みたいなところがあって、そういう要素をどう入れるかってなかなか難しい面もあろうかと思いますけれども、何かそういうことも必要なのかなと。
 これはある意味では、この委員会でそもそもプログラムをつくるときに、社会課題への取組と学際と、それから根源的問いというのは3つ並べているんですが、これは当然トレードオフにもなり得る話なので、何かそこのある種の、どこに重点を置くかというのはいろいろあり得るという、若干そういうポートフォリオマネジメント的な観点というのも必要かなという感じがいたします。
 
【JSPS(盛山)】  ありがとうございます。最初の1点ですが、今のプログラムは6年の研究期間になっておりますので、途中に評価を明確に入れております。これは基盤Sや特推と同じような構造です。
 ただし、単に評価するだけではなくて、これはまだこちらの検討課題なのですが、もう少し事業委員会側からのある種のフィードバックを入れることができないかということは、私自身、個人的には念頭にあります。
 ただ、これはどこまで対象の研究に、言わば介入するかという問題になりますので、事業委員会のほうでは介入の仕方は慎重にしないといけないという側面と、しかしほったらかしもよくないという面と、その両方をどうバランスを取るかという問題を検討しなければなりません。これは、採択した課題についての話ですので、これから検討して進めていきたいと思います。
 2番目の問題は、まさにおっしゃるとおり、これはどういうアルゴリズムでマネジメントできるかというなかなか難しいところがありますので、やはり事業委員会において様々な観点からバランスの取れた研究成果が出てくるように、どう誘導していくかを考えたいと思います。
 ついでに申しますと、事業委員会の中で出てきた案として、この事業としては予算規模等からいって不可能ではあるのですが、もしも他の事業として展開するのであれば、例えば最初に少し多めに採択して、途中で評価をするプロセスの中で、長期的に展開する課題を絞っていくというような、多段階の研究支援システムみたいなものを人文学・社会科学系でも考えてもいいのではないかというような話も出たりしました。これはこの事業の中だけの話ではありませんけれども、人社系を振興する仕方として、いろいろと、また違ったやり方というのを検討することが必要かなと思ったところであります。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。最初の点は、確かに審査の段階は対話は極めて困難かもしれませんが、評価の場合にはある程度、多少は余地があるということかなと思います。
 後者のほうは、多分理系だとステージゲート方式みたいなのも結構やっていたり、多分人社でもフィージビリティースタディを行ったうえで本格プロジェクトを実施するというのもかつてやっていたような気もしますので、何かそういうことが考えられないかということかなと思いました。どうもありがとうございます。
 一応、以上が議題ですが、全体を通して、ぜひこれは言っておきたいみたいなことがございましたらお伺いできればと思いますが、いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。そうしましたら、本日は既に動いているプログラムについて、3つについて現状をお伺いして、基本的にはやられている方向性については皆さんポジティブだったと思います。その上で、さらなる進化が必要だということだったかと思いますので、最後のJSPSのプロジェクトはまだ、まさに継続中でありますし、最初の2つについては一応今年度で終わりになるわけですが、これをどういう形で継承していくのか、予算案件にするのかしないのかは別にして、いろんな形でどうやって継承していくのかというあたりを、少しまた事務局サイドでもお考えいただいて、再度我々として議論させていただくということになるのかなと思います。
 それから、途中、白波瀬先生からありましたが、結局、評価とかモチベーションというのが大事だということだとすると、個々のプログラムの話ではなくて、我々としては前回、前々回に議論していたような評価の話というのが全般的な人社振興のためのインフラとしても大事だということかと思いますので、それについても今後、取りまとめをさせていただければなというふうに思っております。
 それでは最後、事務局のほうから連絡等ございましたら、よろしくお願いします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】  本日は活発な御議論ありがとうございました。最後に事務局から御報告いたします。
 次回の人文学・社会科学特別委員会の日程につきましては、改めて日程調整の上で御連絡をさせていただきたいと考えております。
 また、本日の議事録につきましては後日メールでお送りいたしますので、御確認をお願いいたします。
 以上、事務局からの連絡事項でございます。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 それでは、これで閉会といたします。どうもありがとうございました。

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