人文学・社会科学特別委員会(第11回) 議事録

1.日時

令和4年5月27日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 人文学・社会科学に関連する指標に関するヒアリング
  2. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、勝委員、小長谷委員、白波瀬委員、須藤委員、井野瀬委員、尾上委員、加藤委員、神谷委員、岸村委員、小林委員、新福委員、戸田山委員、山本委員、後藤委員、田口委員
(科学官)
木津科学官、森口科学官、恒吉科学官

文部科学省

河村学術企画室長、二瓶学術企画室長補佐

5.議事録

【城山主査】  それでは、定刻となりましたので、ただいまより第11回人文学・社会科学特別委員会を開催いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、本日の委員会のオンライン開催に当たり、事務局からの注意事項及び本日の出席状況について御報告いただければと思います。よろしくお願いします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】  事務局でございます。
 本日はオンラインでの開催となります。事前にお送りしておりますマニュアルに記載のとおり、御発言の際には「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、指名を受けましたら、マイクをオンにし、必ずお名前を言っていただいた上で、ゆっくり御発言いただければと思います。なお、主査以外の皆様におかれましては、御発言されるとき以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 機材の不具合等ございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。
 また、本日は、仲委員、飯島委員が御欠席でございます。18名中16名の御出席をいただいておりまして、定足数を満たしておりますことを御報告いたします。
 また、本日はヒアリングということで、国立情報学研究所の大波様、科学技術振興機構の中島様、立教大学の加藤様に御出席をいただいております。
 また、本日の会議は傍聴者を登録の上、公開としております。
 以上でございます。
 
【城山主査】  ありがとうございます。それでは、配付資料の確認を事務局からお願いいたします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】  本日、資料につきましては、事前に電子媒体にてお送りさせていただいております。本日の主な議題に係る資料に関しましては、議事次第のとおり、資料1から資料4としてお配りしております。御確認の上、資料等不足ございましたら、事務局までお知らせ願います。
 以上でございます。
 
【城山主査】  それでは、議事のほうに移りたいと思います。
 まずは議題1の人文学・社会科学に関連する指標に関するヒアリングについてであります。最初は、国立情報学研究所の大波様より御説明いただければと思います。
 それでは、大波様、よろしくお願いいたします。
 
【大波特任准教授(国立情報学研究所)】  よろしくお願いいたします。国立情報学研究所(NII)の大波と申します。画面を共有します。
 それでは、国立情報学研究所のほうの提供しております、CiNii及びCiNii Researchの取組について、人文学・社会科学研究成果の情報の抽出という観点から御説明させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 まず初めに、昔から使われております、国立情報学研究所の書誌情報検索サービス、CiNii Booksについて御説明いたします。
 もともと、国立情報学研究所のほうでは多様な学術コンテンツを提供しておりまして、様々な学術出版社さんであるとか、JSTさん、NDLさん、その他たくさんの学協会さんから、論文ですとか書誌の情報を収集させていただいておりまして、それをここの画面に示しますような多様なサービスとかウェブの場所において、それを見てきてもらうということを作業として行っておりました。
 その一方で、書誌の情報、特にCiNii Booksという書誌情報検索サービスの中で、特に集約しておりまして、2011年11月頃から、全国の図書館の書誌情報を探すサービスとして、たくさんのデータ量を中に含みながら提供しているということをやっておりました。
 実際にCiNii Booksと検索してアクセスしていただきますと、このような、下に示す感じで、1冊1冊の本の書誌情報であるとか、著者情報及びその本が所蔵されている大学図書館の情報などが一覧で見られるというものになっておりまして、特に、大学図書館であるとか、日本の様々な図書館さんのポータルのサービスとしてもお使いいただいております。
 また、CiNii Booksにつきましては、図書について詳しく調査する調査研究の方であるとか、内部の、大学の中でそういった図書について一律に情報を収集したいみたいな専門的な使い方をする方向けに多様なオプションを備えておりまして、例えば、地域別のフィルターでありますとか、こういった書き出しのフォーマットを多数そろえておりまして、それによって機械可読が十分できるように処理できるようなフォーマットでデータを取り出したりであるとか、また、検索されている著者の関連する情報を右側に出して、そこからさらなる関連情報を引き出していくとか、そういった使い方を様々にできるように備えております。
 そのような、過去から、昔から使われておりますCiNii Booksの書誌情報などの検索をさらに発展して、現在公開しているのが、学術情報検索基盤、CiNii Researchと呼ばれるものでございます。
 既存の知識基盤環境といいますのは、今申し上げましたCiNii Booksであったり、論文を探すためのCiNii Articlesと呼ばれるものであったり、CiNii Dissertationsと呼ばれる博士論文の検索基盤であったり、NIIの中で様々なサービスを提供していたんですけれども、そういったものに含まれるリソースというのがばらばらに存在しているために、ユーザーにとっては別々の基盤から探さなければいけなかったり、また、内部ではこのように真ん中で関連しているはずの研究関連リソースは、もっとシームレスに使いたいという需要があったものの、ユーザーにとっては基盤をまたいでいろんなところから見なければいけないということで、情報の統一性とか、人文学や社会科学の情報でもそうだと考えられているんですけれども、論文ですとか図書とか、様々な情報が一律に見えたほうがよいという中で、まだ統一化されておりませんでした。
 そこで、NIIの中のほうでは、こういった関連リソースに対して、エンティティ間の関連性、エンティティと呼びますのは、データの一つ一つ、レコードのようなものとお考えいただければとは思うんですけれども、そういったデータの一つ一つには、引用関係であるとか親子関係、同一関係、時空間情報といった、何らかのつながりを持っているものでして、そういったものを何につながっているというものを内部に新たに情報を記述して、つなげていく作業を行いました。そのようにして、ばらばらに存在していたデータやエンティティを      、関係性を介して一本化いたしまして、統合していくということをやっております。
 その結果、新しくCiNii Researchというサービス名でサービスをスタートいたしまして、こちらからは、多様な情報を簡単にアクセスできるような、イージーアクセスと呼んでおりますけれども、サービス一本化をして検索できるようにし、なおかつ内部では、関係性の情報を様々に記述しており、その関係性を起点としてデータ統合を行い、どんどん芋づる式にデータを検索して発見していくことができる、ディープサーチができるようなものとして提供することができています。
 このような、新しい基盤として今申し上げましたが、CiNii Researchというもので近年、NIIの中で新しくサービスを提供し始めたというところでございます。全体的には、この画面で示しますように、2,000万件以上という非常に大きなデータ量を持ち、研究データや論文情報だけではなく、書誌情報、プロジェクトデータなど、様々な情報を一律に検索できるようにしており、先ほど言いましたディープなサーチができるようになっているというものの動作になっております。
 これを例えば、研究者さん、人文学、理学に関係なくというところではあるんですけれども、論文や研究データやプロジェクトデータも一律に検索することができ、それ以外の図書館員であるとか調査担当者の方も、これらをまとめて見ることができるという動作になっております。
 このような、データを検索するための統合的な基盤というのは、国立情報学研究所内部で大規模に進めているところでして、今申し上げたような、検索するためのCiNii Researchと、進行中のデータの管理をするためのデータ管理基盤、そして論文などにアウトプットするときに新しく登録するためのリポジトリでありますデータ公開基盤といった、大規模な研究データ管理基盤として3つのものを軸としまして、大学さんであるとか、様々な研究に携わっている方にお使いいただけるように、大規模な整備を行っているという状況です。
 こういった、大規模な学術情報をNIIの中で統合的にお見せしているんですけれども、その中のCiNii Researchにつきましては、特に多様なものを備えております。先ほども説明いたしたんですけれども、こちらに示しますようなインターフェースで、トップページは、例えばGoogleのような非常にシンプルな画面になっているんですけれども、そこから、論文、博士論文、研究プロジェクト、研究データ、書誌といった多様なところへ簡単にアクセスできるように、学術基盤として備えているというところでございます。
 こういった内部に含まれる情報も、増えているという状況なんですけれども、このデータを特に今回の、人文学・社会科学特別委員会さんのほうで御検討されている人文学系のデータはどのように含まれているかというところにつきましては、少し飛ばさせていただきます。
 内部での情報の高度化ということを行ってはいるんですけれども、実際には、一般的な検索エンジンと同様に、多様な情報にテキスト一致の検索で飛ぶことができるという話をこちらのほうでしているんですが、すみません、こちらのほうはダイレクトに説明する必要はございませんでした。見てのとおりの結果でございます。
 ちょっとこちらのほうまで行かせていただきまして、私どもの提供しておりますCiNiiと呼ばれるサービスの利用者の属性を最近、アンケートなどの結果を基に分析いたしておりまして、その中でどのような属性の方がCiNiiにアクセスしてきているかということを調査したのがこちらの結果になります。
 その中で、職業で区切ったアンケートの結果では、一番多いのは学部生であり、それに続くのが大学教員や大学院生、図書館員、研究員、技術員などとなっておりまして、これはつまり、学術・研究機関を中心に、多くの方がCiNiiを使っていただいているという状況でございました。
 さらに、こちらの学術機関の方が、どのような専門の方がCiNiiを使ってくださっているかということを確認したところ、この図、すみません、ヒートマップ的には見にくいところがありまして、ちょっと青いドットのほうが相関性が高いということを示す統計分析の結果なんですけれども、これで何が言いたいかといいますと、CiNiiを利用している、先ほどの学部生、大学教員、そして大学院生は、人文学・社会科学との相関性や専門性と強い相関関係を持っているということが確認されました。つまり、現在のCiNiiサービスというのは、主に人社系の機関所属者をメインユーザーとして対応しているということでございます。
 そのような、人文学・社会科学の分野の皆様にお使いいただけるように、CiNiiとしてはどのような内容ができるかということをこちらで御説明させていただきます。例えば、CiNiiの中で詳細検索というオプションがございまして、その中で、例えば所属機関が横浜国立大学で、出版年は2016年といった形で検索しますと、検査結果に68件と出てきまして、図書のリストが出てきます。
 こういった形で、私どもとしましては、人文学・社会科学の研究者の皆様には、学術成果として図書も多く出しているということを聞いておりまして、ほかの基盤では、そういった図書の情報とか論文よりも、登録されている情報ですとか、カバーし切れない範囲もあるということを聞いておりまして、そういった図書の情報をNDLさんの御協力であったり、また、私どもが収集している科研費の研究成果として登録されている書籍などを、内部のエンティティとして保持するようにしまして、よりたくさんの成果を図書として内部から検索することができるというふうになっております。
 さらに、特に社会科学や人文学の分野に区切って情報を成果として発見したいという需要にお応えいたしまして、我々の検索サービスの中のほうでそのような分類も可能であるということをこちらで御説明しています。
 例えば、こちらに、高橋徹氏という、ちょっと固有名詞になってしまっているんですけれども、実はこの同姓同名の方が研究者としては非常に多く登録されておりまして、全国では50名以上いるということが分かっております。普通に高橋徹様のお名前でそのまま検索してしまうと、全員の成果が混ざって表示されて、どれがどの大学の高橋先生のものであるかということが非常に見分けにくいという状況になっておりました。
 そこで、例えば、どこの分野の書籍をアウトプットして出しているかということを調べるためには、図書の分野を日本十進分類と言われる、国内で指定された分類方法がございまして、そちらの分類コードを入力することで、例えばここに、物理学は42番とありますけれども、42番から始まる分類コードの本を、2019年から2022年の最近とされている高橋徹様は、著者の名前のほうはあるかというふうに検索すると、結果としてこのように、1件の『ベーシック物理学』という本が出てきて、ああ、この物理学の専門の高橋徹さんだったら見分けられるぞというふうに、内部でいろいろうまく処理して使うことができるというものにもなっております。
 こういった、様々な同姓同名の先生がいたり、分野ごとに区切ったりといったことで、特に人文学・社会科学の分野でも、必要な書籍のアウトプットであるとか、プロジェクトで作られた本であるとか、そういったものを国立情報学研究所のCiNii Researchのほうから取れるようになってきているという状況でございます。
 その一方、CiNii Researchはまだ2020年に出たばかりのサービスでして、現在も成長中というところなんですけれども、さらに内部のデータの高度化を進めるために、KAKENのデータベースであるとか、JSTさんから公開されているresearchmapのデータであるとか、あまり研究してはいなかったんですけれども、博士論文を探すCiNii Dissertationsであるとか、そういった内部的な情報を高度に組み合わせまして、特に今年度なんですけれども、研究者の人名統合をさらに高度化させようとしております。
 これによって、人文学や社会科学で、この先生が特に出している論文情報のリストであるとか、図書の情報のリストであるとか、そういったものをスムーズに出していけるようにするという準備をしておりますので、今後そういった需要がありましたらお使いいただけると考えております。
 以上、下のほうは参考情報ですので、ここまでとさせていただきます。こちらで発表を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見等ありましたら、手を挙げるのボタンで挙手いただければ幸いです。では最初、神谷先生、お願いします。
 
【神谷委員】  非常に有益なものであるということはよく分かりましたが、私にとって一番関心があるのは、論文及び書籍が海外のものとリンクしているかということが重要です。私の分野ですと、日本のものだけあっても、役に立たないということはありませんけども、文献のごく一部にすぎないので、海外のものとどの程度連関しているのかというのが第1点。
 第2点として、私は、Google Scholarをよく使うのですが、Google Scholarと比較しまして、もちろんデータとか科研費との関連などGoogle Scholarにないものもありますけども、そういったもの以外に、Google Scholarと比べてどの程度の優位性があるのかということを伺いたいと。
 さらに言いますと、もし海外の書籍や論文等の連関が今、薄いということであれば、今後どのようにしていく御予定があるのか。この点を伺いたいと思います。
 
【城山主査】  大波様、よろしくお願いします。
 
【大波特任准教授(国立情報学研究所)】  ありがとうございます。まず、海外との連関がいかほどかというお話なんですけれども、こちらで御説明に沿う内容はダイレクトにちょっと示せなくて申し訳ないですけれども、内部に、こちらにあるCrossrefであるとか、DataCiteと呼ばれる海外の情報のデータベースを保持しておりますので、まずそこから情報をつないで、海外のデータも成果として見られるように整備しております。ですので、網羅的ではないにせよ、まずは海外の論文をかなりの量が見せられるようになってきておりまして、そちらのほうで対応できるというふうに考えております。
 続きまして、Google Scholarと比べてどうかというお話なんですけれども、Google Scholarのほうのデータもかなりあって、あれは、やはり取得している範囲がかなり広めに取っていたり、何かブログで勝手に登録しているものであるとか、様々な出版社でばらばらに置いてあるものもかなり広く取ってきているということで、重複などもかなりあるというふうに確認しております。
 Google Scholarはたくさんのデータをそうやって集めるけれども、玉石混交でとにかく置かれているというもので、とにかく量が多く欲しいという人にはお勧めでして、逆に、じゃあこちらのCiNii Researchはどうなのかといいますと、そういった重複が削除、内部でがんがんするようにしていることと、やはりどこ由来のデータであるのかという、由来の情報をはっきり持っていまして、ある程度信頼がおけるソースをきちんと、研究者としてずっと永続性が担保されるような相手から取ってくるということを意識して、品質の高い情報を出すということをやっております。
 なので、どちらかというと、玉石混交のGoogle Scholarと、ある程度品質が保証されたCiNii Researchとしてお使いいただけると、使い分けていただけるのかなと考えております。
 3番目の海外情報との連携は、今後も引き続きつなげていく予定でして、いろいろと、こちらの最後のほうにやっていたんですが、海外の研究データ基盤というのが日本国内では今固まっていつつあるんですけれども、例えば韓国だったらdataon、ドイツだったらCORE、ヨーロッパだったらOpenAIREというふうに、それぞれの国ごとに同じようなデータ基盤が出来つつあり、それぞれが相互にデータを提供していくという体制になりつつありますので、今年度以降CiNii Researchでもこちらとつなげて、より深い海外のデータが調整していけるように設定しておりますという状況です。お答えになっていますでしょうか。
 
【神谷委員】  はい、回答になっています。よく分かりました。ありがとうございました。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 それでは、続いて小林委員、よろしくお願いします。
 
【小林委員】  小林です。どうもありがとうございます。NIIは次のSINETではデータ基盤のほうもおやりになるということなので、非常に貴重な内容になっていると思います。
 3点質問したいと思います。
 1点目は、人文・社会科学の研究業績の量というのはいろな形で従来からも分かるのですが、一番懸案になっている質をどういうふうに見るのかということになります。私は今、御紹介いただいたのを使ってみたのですけど、その引用関係について、例えば、著書の本文中で引用している注とかそういうものが、ここで必ずしも分からなかったのですが、引用関係というのはどこまで明らかにされているものなのかというところになります。
 頂いたこれでいうと8ページになると思いますが、エンティティ間の関係性で引用関係というようなことで出てきているのですが、これでいろなものの引用数がそれぞれ分かるのかなと思ったのですが、必ずしもそうではなかったような印象なのですが。
 2点目ですが、私の分野でいうとかなり偏りは当然あるわけで、あまりKAKENは要らないというわけではないでしょうが、例えば政治思想とか政治史とか、あるいは法律でも法制史みたいなの分野だとあまり出てこないというような、分野の偏りがあるように思うのですけど、この辺は今後どのように補正をされていくのかという点です。
 3点目ですが、データというのは非常に希少なところなのですが、いわゆるJDCat、人社の、これ見ると、人文・社会データインフラストラクチャーの6つくらいの拠点を通してでないと登録できないということに物すごくバイアスがあると思うのです。ですから、大阪商大、一橋の経済研、慶応のパネルデータ、東大の社研とか史料編纂所と。そうすると、内閣府以外の省庁のデータほとんど入ってこないとか、あるいは京都大学はたくさんいろんな調査やっているのですけど、全然出てこないとか。
 これ、何で6つの拠点を通さないとNIIは受け付けないのかというのはよく分からない。それは、もうこれだけのデータですから、別にそういうところを通さなくても、誰もが自由に登録するようにすれば、一気にデータ基盤というのは広がってくると思うのです。
 例えば京大の人にとっては、何で自分のデータを東大の社研を通して登録しなくてはいけないのかというのは多分なかなか理解できないと思うのですが、この点、もう少し、SINETの次でデータ基盤充実させるのであれば、この辺はどういうお考えでいらっしゃるのかお尋ねできればと思います。
 以上です。
 
【大波特任准教授(国立情報学研究所)】  ありがとうございます。
 それでは、まず1つ目の御質問で、人文学の情報に関する量的面だけではなく質的な情報をどのように担保していくかという御確認だったんですけれども、質というのはどういうところを示すかという考え方にもよるところはあるんですけれども、まず、私どものNIIの中のほうでは、そういったデータを入れるときに、雑多なそのままデータをテキストとして入れるわけではなくて、内部に含まれるメタデータの項目に分けて、結構、人の目で見てより分けて、ここは著者名だ、ここは抄録だ、ここはページ数だみたいなところをかなり細かくチェックしております。
 そのチェックする基準というのは、こちらの画面で示しておりますJPCOARスキーマという基準の設定となっておりまして、そういったところにヒットしたものを入れていただくということで、全体のデータ間の比較などもしやすくなっておりますし、これに沿ったデータが内部で全部そろっているということは一つの質を示す内容になるのではないかと考えております。
 
【小林委員】  お尋ねしたのは、エンティティ間の関係性の引用関係、これをどういうふうに注視されていらっしゃるのかということなのですが。
 
【大波特任准教授(国立情報学研究所)】  失礼しました。JPCOARスキーマの今、申し上げた内容から引用関係取ってきてはいるんですけれども、書籍などは特に取れてないというのは事実でございます。その辺りすごく悩ましいところでして、何とかしたいと考えております。引用関係情報を、例えば著者の方にダイレクトに登録してもらったら、もちろん完璧なものができるんですけれども、それはちょっと、もちろん難しい面もあって、だとしたらNIIのほうでそういったものを、内部にOCRをかけてデータを全部取り出すかとか、そういった動きになってくるんですけれども、それもちょっと先が見えないというところで、非常に重要な御視点だと思っておりますので、弊所の中でも引き続き引用情報をもっとリッチにしていくという観点では改善していきたいと考えております。ありがとうございます。
 すみません。こちらのほうではこういう回答とさせていただきまして、2つ目の質問のほうに移らせていただきます。
 内部に含まれているデータに関する偏りがあるというところにつきましては、御指摘のとおりでして、内部のほうのデータがまだリッチではない、先ほどの最後のほうで示しました、データ量が豊富なものをつくりたいと考えているんですけれども、どうしても、これから少しずつ、海外の研究データ基盤であるとか、分野別データ基盤というところに手を広げていって、どんどんカバーしていく範囲を広げていきたいと考えております。
 それによって、できるだけ偏りをなくすという動きをしていくということと、3番目の質問のところにそのままシフトしていくんですけれども、特に人社系である場合、データカタログであるJDCatさん、現在既に接続させていただいて、内容に入れているところであるんですけれども、そういったところがまた、ここは実はNIIとJSPSさんのほうのプロジェクトでつくっている基盤の一つなんですけれども、そういったところに入れてあるデータが、期間が限られていて、すごく狭まっているというお話でした。
 JDCatさんのほうでも、そういった偏りがないように手を広げていくということを今、動こうとしているというところなんですけれども、CiNii Researchはさらにその先というか下流のほうにありますので、JDCatをどうこうするかというよりも、我々としては、様々な人社系のデータである場合は、国語研さんであるとか、立教大学のRUDAさんにもちょっと御協力いただいて、そういった社会科学調査データなどを情報としていただいたりしておりまして、さらに我々としては、もともと入れている、研究データとして入っている機関リポジトリからのデータを全国から受け取っておりまして、そこであれば個々の大学さんそれぞれの中でつくられたデータを、先ほど申し上げましたJPCOARスキーマにヒットをさせていただいて、IDをつけて流すということもできますので、そういったところで、全国から統合的にデータを集めていくことで偏りを減らして、あと、ちょっとJDCatさんだけに寄った人社系のデータになってしまっているところを、そういった偏りもなく全般的に取れるようにしていきたいというふうに考えております。
 お答えになっておりますでしょうか。
 
【小林委員】  ありがとうございました。
 
【城山主査】  それでは、続いて山本委員、お願いします。
 
【山本委員】  山本です。私は、過去10年のアンケートで出てきたユーザーについてお伺いします。
 1つは、人社系の方がメインユーザーというこの理由としては、論文が日本のものということで、自然科学系だと使いづらいものになっているのかなというような質問です。
 もう一つは、学部生が多いということで、これは人数的に当然圧倒的に多いですし、卒業研究をスタートした段階などで、まず使い始めるというケースが多いのかなと想像するんですが、この理由についてお願いいたします。
 
【大波特任准教授(国立情報学研究所)】  ありがとうございます。CiNiiのこの利用者属性についてちょっと、因果関係的なところではそもそも、昔から提供しておりますCiNii Articlesなどの論文検索基盤は日本語論文をメインにして提供していたというところがありまして、そのときに、やはり日本語論文がアウトプットとして多い人社系の皆様が使っていたという因果関係が、どっちが先かというところは、すみません、私の説明がちょっと混乱をさせるようなところもあったかと思うんですけれども、そういった関係性があって結果としてそうなっているという状況でございます。
 その一方で、先ほど神谷先生のほうから御質問あったように、英語の論文であるとか、英語のアウトプットもすごく重要だというところを認識しつつありまして、近年のCiNii Researchでは英語の情報を増やしていっているというところもございますので、過去10年は実際こうだったんですけれども、今後はちょっと英語のコンテンツも増やして、自然科学の人たちにも多くリーチできるような動きもしていきたいと考えております。
 それと、卒研生が多く使われているのではというお話も、そのとおりでございます。CiNiiがやはり、全国の大学図書館さんと特に密にやり取りをさせていただいて、サービス使っていただき、その需要にお応えしようとしているという動きをずっとやっておりまして、その結果として大学の図書館さんのほうで、在学生に、論文検索基盤といえばCiNiiとして、説明会をよく行っていただいたりしておりますので、恐らくまず最初に論文を探そうとしたときに、学部生などはCiNiiを使ってみようということをやっていただいて、卒研生の方が最初に卒業論文を書くのにちょっと使っていただいているという例が非常に多く散見されております。
 事実としてはそういうふうになっていて、じゃあ大学院生とかもうちょっとハイレベルな、研究者とか専門性を持つ方になってくると違ってくるのかと言われると、それは結局、やはり分野によって違っていて、自然科学系の中でも生物学のほうだとアメリカのPubMedとか、完全にその研究の中心がどこにあるということを理解されると、ちょっとCiNiiがメインではないのではないかという考え方もされると思っておりまして、その辺りはやはり一番適した基盤を選ばざるを得ないと思っております。
 その一方で、CiNiiは日本国産の検索の基盤として、やはり日本人に一番使いやすいようにリーチしていかなければいけないということも考えておりますので、そういった、分野ごとの重要であるとか、研究のレベルごとの需要、そういったものに幅広くリーチできるように、現在も発展を続けたいと考えております。よろしいでしょうか。
 
【山本委員】  ありがとうございました。
 
【城山主査】  それでは、尾上委員、お願いいたします。
 
【尾上委員】  ありがとうございます。CiNiiについては、研究や図書館の担当としてもぜひプロモートをどんどんしていきたいなと思っております。
 1点でお伺いしたいんですけども、学術機関リポジトリとの連携状況というところなんですが、これ、NIIさんとして考えたときには、十分だと思われているか、もっともっとやっていかないとというところなのかという点。
 あとは、その機関リポジトリとの連携において、分野間では学系としてどういうところがまだ足らないとか、あるいは比較的、平均的かとか、そういう情報がもしあれば教えていただければと思います。
 
【大波特任准教授(国立情報学研究所)】  ありがとうございます。学術機関リポジトリについて、もっとリッチにしていくべきというところがありまして、すみません、先ほどJDCatについて御質問いただいた小林委員の質問からちょっと抜けてしまっていたところがあるんですけれども、JDCatは人文系の方で今、データを登録するのに使われているというのは、実は機関リポジトリのほうでは、JPCOARスキーマというスキーマを使っていると言いましたけど、JPCOARスキーマは十分その分野ごとの独自のメタデータを入れるのに、枠が十分ではないというふうに考えておりまして、そういったところで機関リポジトリではなくJDCatに入れて、CiNii Researchに最終的に検索させるようにしようという、ちょっと機関リポジトリを避けられてしまった背景がございました。
 そういった分野ごとの事情であるとか、スキーマの至らないというところを機関リポジトリとしては改善していって、幅広い分野のところをできるだけ入れるようにするという取組をしております。
 とはいえなんですけど、どうしても分野ごとの事情というのは本当に多様でございまして、人文・社会科学の中でもそれぞれ様々な事情というか、データの項目の考え方があると思いましたので、それはそれとして分野別のリポジトリなどを適宜つくっていただいて、それをCiNii Researchとしては幅広く集約していくという活動をしてカバーしていくというふうにしていきたいと考えております。
 なので、御質問の機関リポジトリに対する発展性の話と、あと連携をどうするかという話、ちょっとまとめてしてしまったんですけれども、そういった形で機関リポジトリだけではなく、分野ごとの状況にも対応しつつ、日本国内の全てのリポジトリがカバーできるような動きができればよいと思っております。
 以上です。
 
【尾上委員】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 1点だけ私からもお伺いしたいんですけども、人社系の場合、著書というのは重要な業績の発表形態になって、そこをどうカバーするかという一つ大きな課題なわけですが、そのとき、先ほど小林委員とのやり取りであったように、引用関係、著書については、まだちょっと限定的だという、一つの課題だというのは分かったんですが、例えば、共著書のようなものをどのぐらいきちっとカバーできているのかあたりはどうなんでしょうか。
 例えば、KAKENの業績登録からいけば当然、共著書で、1章を分担して書いたみたいなものを業績として登録するので入ってくると思うんですが、他方、図書館の司書的な登録から入っていくと、多分、編者は入れるのだけども、本当に中の各章の著者までとか、その題目までちゃんと入れているかとかいうと、結構そこもカバレッジがなかなか難しいのかなという気もするんですが、その辺りどんな感じなのか、ちょっと御教示いただければと思います。
 
【大波特任准教授(国立情報学研究所)】  ありがとうございます。この著者の情報につきましては、正確にはちょっとこちらに出てないんですけれども、いわゆるNACSIS-CATと呼ばれる、書誌情報の収集基盤を全国の大学さんと協力してつくっておりまして、そこを経由したデータをこちらのNIIのほうで扱わせていただいているというところでございます。
 それぞれのNACSIS-CATに入れるためのデータというのは、結局、大学の図書館、図書館員さんが章ごとの著者であるとか、詳しい情報を目で見て入れているということを聞いておりまして、それが非常に長い間続いていることから、かなりたくみの技といいますか、機械的には見られないところもそれによってデータを収集できているということを図書館員の方から聞いております。
 ただ、やはり網羅性というか、機械可読性みたいな厳密性はそこにあるわけではなくて、その辺りの情報を、本当にそれでよいのかというところは、我々と、ひょっとしたら文部科学省さんも含めてどういうやり方がよいのか、日本の出版界全てを巻き込む話なのかもしれないですけれども、そういったところのデータの改善というところをよりよくしていくべきだというふうに思っております。よろしいでしょうか。
 
【城山主査】  大波様、どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  それでは、次の御報告に進みたいと思います。
 次に、J-STAGEの取組について、科学技術振興機構の中島様から御説明いただければと思います。それでは、よろしくお願いいたします。
 
【中島情報基盤事業部長(科学技術振興機構)】  よろしくお願いいたします。画面を共有させていただきます。
 科学技術振興機構(JST)情報基盤事業部長の中島と申します。本日は、J-STAGEについて御紹介させていただくお時間いただきまして、ありがとうございます。
 最初に、J-STAGEがどういうものかというサービスの概要を御説明させていただいた上で、今回いただいたテーマで、JST、J-STAGEが研究評価に対してどういったデータを提供できるのかということを少し調査いたしましたので、その内容を御紹介いたします。
 まず、最初にJ-STAGE、どういうものかということですけれども、一言で申しますと、学術ジャーナルを出版するためのプラットフォームになります。国内で刊行される科学技術、人文・社会科学分野も含む逐次刊行物の発信、流通促進及びオープンアクセスを推進するとしております。
 JSTの多くの事業では、従来科学技術といったときには、人文科学のみに係るものを除くという形で、その範囲を指定していたんですけれども、実はこの情報事業に関しては、人文・社会科学も含んだ形で、従来サービスを行ってまいりましたので、ここで収録している情報も過去からこの分野のものを含んでおります。
 来歴を示しております。1999年にサービスを開始いたしまして、都度都度必要な機能を実装してまいりました。右にありますように、主に査読付論文誌を中心に登載していたんですけれども、下から3行目ぐらいにあります、2015年11月に登載コンテンツ拡大をいたしまして、査読付論文誌以外のコンテンツも載せられるような形にサービスを変更いたしました。
 時を同じくして、NIIさんの電子図書館事業、NII-ELSが終了しまして、そこに掲載されていたジャーナルの多くが、その終了した後の登載先にJ-STAGEを選んだということもありまして、ここでは数多く、人文・社会学系のジャーナルがありましたので、そういった分野のジャーナルがここで増えたということもございます。
 2017年にJ-STAGE全誌に新インターフェースを適用しまして、そのインターフェースは現在まで使われているというものでございます。
 先ほど触れました登載対象コンテンツですけれども、原著論文を主たる記事としているジャーナルのほかに、研究報告・技術報告、会議論文・要旨集、解説誌・一般情報誌、その他と、学術に関するものを広く登載することが可能となっております。
 J-STAGEの運用体制ですけれども、コンテンツとシステムの提供に役割が分かれております。コンテンツ、つまりジャーナルとそこから発行される論文、記事については、学会等の発行機関の役割となっています。こちらには記事データの作成とか登載とかというところを書いておりますけれども、この前には、実際には投稿を受け付けて、査読をして、編集委員会で受理するかどうかというのを判断されて、その判断されたものが記事データとなって作成され、本文、PDFも含めて作成されたものがJ-STAGEに載るという体制になっています。
 JSTの役割としましては、J-STAGEシステムを企画・運営・管理し、サービスの提供を行うというものになります。外部機関との連携や発行機関へのサポートといったソフト的な業務も含まれております。
 どういった機関がJ-STAGEを使えるかということですけれども、こちらにある4点が条件になっています。発行期間が日本の団体であること、または科学技術刊行物の発行拠点、編集拠点、連絡拠点、その他の発行に係る主要な拠点が日本に存在すること。2番目が、継続的に科学技術刊行物を発行し、これを電子化してJ-STAGEに登載する体制及びJ-STAGEのシステムを利用する動作環境が整っていること。科学技術刊行物の発行の主たる目的の一つが営利目的ではないこと。これはJ-STAGE、システムを使うこと自体が無料ですので、こういった条件を入れております。また、オープンアクセスの実現に積極的に取り組めることとしておりますので、かなり発行機関側の負担というのも依然として大きいということにはなるかと思います。
 こちらがJ-STAGEのトップ画面になります。いわゆるオンラインジャーナルプラットフォームの一般的な仕組みというふうに思っておりますけれども、このシステムの中に各ジャーナルがぶら下がっており、そのジャーナルの下にまた各記事がぶら下がっているという構成になっております。
 トップページからは、どういったジャーナルがあるかというのが一覧できたり検索できたり、また記事についても検索することが可能になっています。この真ん中あたりに書いてございますとおり、現在、3,000以上の資料、それから500万以上の記事が登載されております。
 こちらは資料のトップ画面です。それぞれジャーナルのトップ画面を持っておりまして、そこでどういった資料なのかと、発行機関がどういう機関なのかということを説明するページもございますし、トップには最新号の目次が表示されておりまして、巻号一覧については、巻号一覧を開きますと、そこで過去の号がざっと並んでいて見えるという構成になっています。
 このメニューの左から2番目に早期公開とありますけれども、こういった印刷される前の早期のオンラインの状態でパブリッシュできるといった機能も備えてございます。また、月間のアクセス数ランキング、このジャーナルの中でどの記事が人気があったかといったようなことも見ることが可能になっております。また、ジャーナルによってはこのようにImpact Factorを表示されているというところもございます。
 今まで説明した機能は無料なんですけれども、その他オプションサービスとしまして有料で提供しているものもございます。1つが投稿審査システムで、これはJSTが開発したものではなくて、外部のよく使われている商用のサービスをJSTが契約しまして、一部のジャーナルに安価で提供しております。それから、Similarity Checkという、論文の剽窃検知をすることができるツールですけれども、こちらも提供をしております。
 また、システムとは別に、ジャーナルの品質を強化するための取組というのも行っておりまして、ジャーナルコンサルティングを受けたいジャーナルについて公募をしまして、公募に手を挙げられた学協会とともに、海外のコンサルティング会社ですね、出版のコンサルティングを専門としている会社に助言を受けるというような仕組みもございます。
 世界の標準に照らして、信頼できるジャーナルと判断されるような形になっているか、主には、最初に始めるのは投稿規定のチェックですとか、ウェブサイトで十分な情報が提供されているかですとかというところから始まりまして、経営戦略、ブランディングに関する助言、あとはオープンアクセスジャーナルに移行するためにはどうしたらいいかというような助言等々を受けることが可能となっております。
 外部サービスとの連携ですけれども、J-STAGEは一次情報ですので、ユーザーに来ていただいて読んでもらうということが目的になりますので、書誌データとのメタデータを外部のサービスに提供して、外部からの流入を図るということを行っております。
 全分野に対応した文献データベースですとか、ディスカバリーサービス、分野別のディスカバリーサービス、また、ほかの国のサービス等々、様々なサービスと連携を行っておりまして、先ほどのCiNiiもその一つですし、また、Google Web Search、Google Scholar等との連携も行っております。
 こちらにファクトデータを示しておりますけれども、発行機関数は、使われている機関が今、2,000機関以上、また、登載誌数も3,500誌以上、記事数については500万記事以上となっておりまして、常に増え続けているという状態でございます。
 右下に登載誌数の分類を示しておりますけれども、人文学・社会科学系も非常に多く1,383です。3,500のうちの1,383は人文学・社会学系の分野をつけております。ただし、これはジャーナルに投稿するための分類である意味が大きいところでございますので、ジャーナルの側はその分野の、この分野であれば投稿を受け付けるといった観点でこの分類をつけているかと思います。ですので、重複が可能ですので、学際的なところも含んだジャーナルの数になっているというふうに考えております。
 ダウンロード数も非常に大きな数となっておりまして、昨年度は4億ダウンロードがありました。ここ10年、ずっと上がっていたんですけれども、少し昨年度は減っておりますが、依然としてかなり多い、世界的にもこのプラットフォームとしては大きいプラットフォームというふうに認識しております。また、海外からも多く使われておりまして、3分の1は海外からのダウンロードになっております。また、オープンアクセスプラットフォームということで、9割以上の95%の記事が認証なしで閲覧することが可能です。
 J-STAGE Dataという新しいサービスを2020年に開始しました。オープンサイエンスの昨今の流れを受けまして、論文の根拠データについて単体で登載することができる。従来は論文の付録として登載されていたものを、データ個々で活用できるような形に、活用しやすいような形に、また閲覧もされるような形になるように別サービスとしてリポジトリを立ち上げたものです。
 まだちょっと数的には少ないんですけれども、順調に利用数、閲覧数とも上がっています。また、自然科学系だけではなくて人文学・社会科学系についても使えるプラットフォームと思っておりまして、こちらで赤で示しておりますのは、そういった社会学系に関連するような分野のジャーナルがあるということを示しております。
 ここからは、J-STAGEでデータをどのように抽出できるかという試みを行いましたので、御紹介となります。まず、様々な分野のジャーナルがあるところを人文・社会学系の資料に限定をいたしました。ただ、先ほど申し上げたように、分野は複数の分野が一つのジャーナルについておりますので、そこはちょっと扱いが難しいところになります。また、論文種別は問わないとしております。この下に示しておりますのは、学術会議の学会名鑑のジャーナルとどれぐらい重なっているかというところで、半分ぐらい、半分弱、重なっておりますけど、ちょっと参考までに示しております。
 J-STAGEの分野といいますのは、人文学・社会科学系についてはあまり細かい分類がございません。こちらにある7分類になっています。ですので、これが使えるかどうかということは一つのポイントになってくるかと思います。
 先ほど申し上げた、自然科学分野との重複もございますので、その自然科学分野に該当するものを除外したらどうなるかといいますと、総数942誌とこの表の右に書いておりますけれども、依然として1,000誌ぐらいはあるというものでございます。先ほど触れました学会名鑑の分野ですと、もうちょっとこれが細かい分野も持っているようですので、その重複しているジャーナルについては、学会名鑑の分野を使った分析も可能かと思います。
 どういう情報を収録しているかですが、これは一つの記事に対してつくられる記事画面、右に示しておりますけれども、ここに全文のPDFがリンクされていますが、まず、このメタデータが見られる記事画面が表示されます。
 必須項目としましては、タイトル、巻・号・開始ページ、発行年等ですけれども、非必須項目として、著者名、所属機関、抄録、引用文献、著者キーワード、言語、ファンド情報、DOI等がございます。
 著者名、所属機関は通常ついておりますけれども、システム的にはこの著者が全部入っているかとかということはチェックが不可能ですので、全部入っているかとか、発行機関さんが入れているかどうかというのに関わっていきます。あと、DOIについては、J-STAGEに載っている記事については全てDOIがついております。
 引用情報も、先ほど示しましたとおり非必須情報になっていますので、そのPDFの全文PDFに入っている引用情報が全てこちらに入っているか、メタデータとして登録されているかといいますと、それも発行機関次第となっています。データを出してみて眺めてみたんですけれども、記事が多くて引用情報がないというのは、ほぼ大会要旨集ですとか、そういったものでした。
 本当に本文を見ても、もう引用情報がない、注記がなされているが引用情報がないというような分野もあるようですので、必ずしもデータの品質というわけではないんですけれども、引用情報がある記事とない記事というのはありました。2019年から2021年で調べてみますと、記事約4万件ありまして、そのうち引用文献が30万件、うち3万3,000件程度が書籍となっていました。
 こちらの右に示しておりますように、引用文献はこのリンクがついてクリックすると原文に飛べるという機能がありますけれども、これがついた記事が約8万6,000件。これは、私どもはDOI等の仕組みを使っておりまして、DOIが同定できるとこのリンクがつくんですけども、まだまだこれが多くないという状況です。
 DOIはJ-STAGEの場合は、Japan Link Centerという、日本のJSTがほかの機関と協力して運営しているDOI登録機関がありますが、これと、右にありますCrossrefという世界のグローバルな商用出版社が使っているDOI登録の機関、このデータベース両方を使っていますので、このリンクについてはこの両方のデータベースを検索しています。ですので、カバー率はかなり高いと考えておりますけれども、また、この書誌分析が難しいということもありまして、リンクのつき具合というのがそれほど多くない状況になります。
 この仕組みを使って、被引用の関係も登録できるんですけれども、もともと同定ができている率があまり高くないということもあって、被引用の関係もちょっと不十分な状態にはなっています。Cited byというのが各記事に、被引用が発見された場合にはつくんですけれども、これが、例えばGoogle Scholarとか比べますと、数が少ないような状況にはなっていると思います。
 被引用につきましては、先ほど御説明したようなことでデータは取れるんですけれども、数としてはこういった抜けがあるような状況かと認識しています。
 また、言語種別についても調べましたが、ほとんどこの青いところが日本語ですので、ほとんどは日本語でございました。
 著者所属機関についても、こういった表の右にあるような形で全て、当然ながら持っていますが、標準化された形ではないので、分析するにはかなり手数はかかるかなというふうに思っております。
 最後に、このデータを使えるかどうかについて、コンテンツは学協会のものですので、全て何でも使えるというわけではないんですけれども、国等で研究・調査・分析をする場合には使えるというふうになっているので、あまりハードルが高いとは考えておりません。
 まとめになりますけれども、J-STAGEはジャーナル出版プラットフォームとしてつくられていることから、分析の目的としては必ずしも適した形式にはなっていない面もありますけれども、コンテンツの品質、またカバー率についてはかなり大きな利点あるデータベースというふうに考えております。
 また、御説明したようにデータ品質が発行機関のデータ入力内容によってきますので、その評価に使われる場合には、使われるということを認識共有されて、データの入力をエンカレッジするような仕組みがあるとよろしいかと思います。また、被引用については、ちょっとまだ課題が大きいので、ほかのデータベースとの併用が現実的かというふうに考えております。
 御説明は以上になります。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、御質問、御意見等いただければと思いますが、勝委員、お願いいたします。
 
【勝委員】  御説明、大変ありがとうございました。非常によく実態が分かりました。
 1点伺いたいのは、先ほどのその附属データのところで、海外からのアクセスがかなり増えているということで、何ページでしょうか、overseasからのダウンロード。これ全て電子化されたROMそのものが出てくるということだと思うのですけれども、特にoverseasからのダウンロード数は、どういった分野に集中しているのか、またどのような国からなのか。海外にはいろいろなデータベースがあって、それこそ電子化されて抽出できるものたくさんあると思うのですけれども、あえてこちらでダウンロードしているというのはどういう目的があるのかということを少し教えていただければと思います。それから先ほどCiNiiの話があって、特にCiNiiが機関リポジトリと連携しているということだと思うのですが、どこの図書館にもあるということで学部生が多いという話があったんですが、やはりそこと比較して、そのJ-STAGEの大きな目的、これは最後にまとめていただいたんですけれども、最後、そこの部分の確認をさせていただければというふうに思います。
 以上、2点お伺いできればと思います。
 
【中島情報基盤事業部長(科学技術振興機構)】  ありがとうございます。ダウンロードがどの分野かというのは、申し訳ありません、ちょっと正確な数字として今お見せすることはできないのですが、まずは、英文誌がかなりあります。3,500誌のうち500誌程度は英文誌でございますので、その英文の論文を見に来るユーザーというのはまずいるかと思います。
 ただ、特に中国の方と会話したときには、最近翻訳ソフト等も進化していますので、翻訳をして読むという形の使い方をされていることもあったので、日本語文献については特に、日本固有の分野の論文については翻訳をしても読むというユーザーは一定数おられるというふうに認識をしております。
 それから、ユーザーについてなんですけれども、これも、J-STAGEは登録なしで見ることができますので正確なところは分からないんですが、ユーザーのアンケート等を見ますと、研究者はもちろんおりますけれども、一般の方にもかなり見られているということは分かっております。
 以上です。
 
【勝委員】  そうしますと、このoverseasからのダウンロードというのは、日本語の文献で人文・社会科学もある程度占めているということであるとすると、やはりそういったものを日本の知として世界に発信する意味では非常に重要なのではないかと思いました。ありがとうございました。
 以上でございます。
 
【中島情報基盤事業部長(科学技術振興機構)】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  続いて、小林委員、お願いします。
 
【小林委員】  よろしくお願いします。私、J-STAGE3のときに、学会誌を選定する委員会の委員長をしておりましたので、非常にそのときのことで気になることがあるのですが、当時はやはり工学系のジャーナルについて中国からのアクセスが非常に多くて、新しいものが何か発展すると、さっと来て、結局それと似たような論文が向こうで出るということがありました。それは今でもあるのかないのか。やはり文化が違うみたいで、自分が読んで理解したものは自分のアイデア・考えだから必ずしもそれは引用をつけなくてもいいという文化が、今でも実は人社でもあるのですが、その問題は解決しているのかどうか伺いたいという点です。
 それから、スライドの19枚目になりますが、人社の分野分けですが、御参考いただけるのは学術会議の第一部、これが人文・社会になりますが、10の分野別委員会があります。それは一つの基準になっていますので、ここですと多分ないのが、地域研究というのが分野別委員会ではあるのですが、それがない。一方で、経済学・経営学は分かれています。法学と政治学も分かれています。ですから、学術会議の第一部の分野別委員会プラス学術会議の第一部の分野別でもし抜けているものがあるとしたら芸術学がないので、それは別途、人社に入れるかどうかというのがありますが、ぜひそれはひとつ御参考にいただければと思います。
 著書はないと思うのですけど、これ抜けますと、実はかなり先ほどのCiNiiと重複をしているところが随分あるような気がするのですが、これは今後、随分、増やしていく中で、コストもかかっていく意味で、NIIさんとはどういうようなすみ分けをされていかれるのか、その辺どのように今話し合っていらっしゃるのか、伺えればと思います。というのは、NIIのほうがSINETでいろんな形の要望をされていらっしゃるので、どこまでこちらと切り分けるところ、大体決まっているところ、ぜひ、個人的にも伺っておきたいところです。よろしくお願いします。
 
【中島情報基盤事業部長(科学技術振興機構)】  ありがとうございます。J-STAGEにも御助言等いただきましてありがとうございました。
 最初の、例えば中国等でどのように使われているか、ジャーナルの品質等のお話ですけれども、こちらは、オープンアクセス、オープンサイエンスがかなり進展してきていますので、これが世界で見られるということは普通のことになってきているかと思います。それが見て使われることについては、使う側の問題、研究者側の問題ですので、プラットフォーム側の使命とは少し離れたところにあるというふうに私どもは考えています。
 ただ、ジャーナルの品質については、こういったオープンサイエンスの進展と並行して、Predatory Journal等の問題もあったこともあり、品質についてはかなり強化が必要だという認識も高まってきていると思います。私どもで取り組んでいるそのジャーナルコンサルティングも、ジャーナル品質の強化のための一つの取組ですし、このジャーナルコンサルティングの出口の一つとして、DOAJという、Directory of Open Access Journalsという、オープンアクセスジャーナルのホワイトリストのようなものがあるんですけれども、そこに載せるということも行っておりまして、そのジャーナルが信頼に足り得るものなのかというのを見える化するような状況になってきたときに、きちんとそういった条件を満たして、かつオープンにしていくというのは時流の流れとして進んでいるかというふうに考えております。
 次の、コメントをいただきました分野の件については、参考にさせていただきます。ありがとうございます。私どもでも、学会名鑑は学術会議で運営されていますので、その分野に近いと思うんですけれども、参考にさせていただいて。ちょっと分野を変えることになりますと、発行機関のほうにも影響がありますので、少し慎重に進めていく必要がある面もあると思いますけれども、ありがとうございます。
 それと、NIIとのサービスの切り分けなんですけれども、J-STAGEに関しましては、こちらは一次情報のプラットフォームですので、役割分担が違うといいますか、CiNiiで検索されて、その結果がJ-STAGEであるときにはJ-STAGEに飛んできて本文は見られるということになりますので、そこは重なるところはないかと思います。
 一方で、JSTで運営しております情報サービスの中にはメタデータのサービスもありますので、その辺りの使い分けにつきましては、よく見るとコンテンツが違いますので、それぞれ存在している意味はあるというふうに考えておりますけれども、重なっている部分が大きくなってきたときに今後どうしていくかというのは、私どもも文科省さんとも協議をして、開始しなければといった状況でございます。
 以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、後藤委員、お願いします。
 
【後藤委員】  後藤でございます。御発表ありがとうございました。
 最後の、やはり分析に使うにはもちろんそれぞれ目的が違いますので、その際には様々なものをうまく取り合わせて、かつデータの特性みたいなのを考えなければならないというのもよく理解できました。ありがとうございます。
 その上で一つ質問ですけれども、今日触れられた、今日はJ-STAGEということでしたのでやられておりませんでしたけども、最近でいきますとプレプリントサーバーであるJxiv、あちらのほうのメタデータはJ-STAGEと同じようなメタデータを使われているのかということと、人社でのJxivの実際の利用状況がもしお分かりになるようでしたら教えていただければと思います。
 以上です。
 
【中島情報基盤事業部長(科学技術振興機構)】  御質問ありがとうございます。JxivはちょっとJ-STAGEとはまた別のサービスということで運営しておりますので、今日御紹介しなかったんですけれども、メタデータにつきましては、ちょっと別の形になっております。といいますのは、Jxivはもともと海外で開発されたプラットフォームを使っておりまして、それを使うことによって低コストで早く立ち上げることができたんですけれども、そのもともとあったメタデータを使っておりますので、J-STAGEとは別の形になっています。ただそれも当然、その学術ジャーナルの分野で一般的なメタデータを備えているものでございます。
 投稿につきましては、ざっとなんですけれども、半分くらいは人社の投稿かというふうに思っています。必ずしも重ならないんですけれども、日本語と英語で投稿できるんですけれども、半分ぐらいが日本語の投稿ということで、日本のコミュニティーに関心の高い記事が投稿されているというふうに拝見しております。
 
【後藤委員】  ごめんなさい。1つだけ追加で。その上で、今、実際に私もJxiv確認をさせていただいているんですけども、そのメタデータの中では引用等も、そのデータとして入れることができるという理解でよろしいでしょうか。
 
【中島情報基盤事業部長(科学技術振興機構)】  そうですね。引用も表示されておりますので、入れることができます。ただ、見ていますと、あまりきれいな形で入れていないものが多いですので、ちょっとカウントする時には難しいかと。
 
【後藤委員】  分かりました。まず、その確認だけということで、ありがとうございました。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 私からも若干お伺いさせていただければと思うんですけども、一つは、今回はこの委員会としては評価としてどう使えるかという観点を少し考えたいということで言うと、ある種の包括性みたいなのが大事だと思うんですが、基本的にはJ-STAGEさんの場合には発行機関とJSTさんの役割分担というのがあって、基本的には、発行機関のほうがまず編集も含めて作業するということだと思うんですけども、私自身、自分が関わっている学会、すごく狭いのでローカルな話かもしれませんが、結局これをどうするかといったときに、結構その学会ごとの運営方針みたいな話と絡んできて、例えば人社系だけだと発行媒体、商業出版と連携しているような場合もあって。そういったときに、発行してすぐ公開しちゃうと、多分商業出版も当然降りるということになるので、それがなかなか難しいとか。そうすると、じゃあ、何年遡ったら公開できるのか。2年ぐらいが一つ、何となく感じかなという気もするんですが、じゃあ2年にするのか、例えば10年にするのかとか、結構そこのバリエーションは多分個々の学会の判断になってくるんだと思うんです。そうすると、その業績としての包括的なものが載るかどうかという点でいうと、なかなか難しい面があるのかなというのが1点です。
 2点目は、すごく大きい、若干とんちんかんな話なのかもしれないですが、多分こういうプラットフォームをJSTさんが提供していただくというのは、学術の発展にとってすごくいいことだと思うんですけれども、他方、海外だとこの種の機能を民間の出版社がやっているわけですよね。だからそういうものを、日本の場合にある程度公的機関が関与してやるということの説明とか、あるいは、日本の中の商業出版社は必ずしも関心はないので多分スルーだと思うんですけども、その海外との関係なんかのときに、何かそこが議論になるとか、あるいは読んだときにやや日本語はカバレッジされてないので、そこをきちんとやる意味があるんだというディフェンドのロジックとか、その辺の議論が何かされているのかどうかということについて、もし何かあれば教えていただければと思います。
 
【中島情報基盤事業部長(科学技術振興機構)】  御質問ありがとうございます。まず、網羅性、分析に使うときに網羅性はどうかということですけれども、私どもJST、J-STAGE担当としまして、オープンアクセスにしてくださいというお願いはしておりますが、御指摘のように学会のメリットですとか運営の財政的な問題ですとかで、すぐにオープンできないという場合もあるのは現実的にございます。
 一つの解決策としては、メタデータだけはとにかく即時載せていただくと。それで、中に、全文はある一定時間、1年ですとか2年ですとかいうエンバーゴ期間を経てから公開するというパターンも最近取られていまして、メタデータを載せていただくと会員にだけ見ることができますが、例えばこの分析に使うので国等がそれを別途抽出して使うというときには、データとしては載ってきますので、一つはそれが解決策になるかというふうには思っております。
 それから、国がこのプラットフォームを運営することの意義ですけれども、私どもの理解では、日本は学会の在り方というのが他国と少し違っているところもあるというふうには考えております。小規模の学会が多数あり、細分化していて、財政基盤が必ずしも強くないところも多いといったときに、国がこのプラットフォームを提供することで電子ジャーナル化することができると。
 冒頭に申し上げたように、かなりプラットフォームとしても世界的に見ても大きなものですので、それはこのJ-STAGEがあったので多数の学会誌がオンライン化できたということは、役割の大きさとしてはあるかと思っています。
 海外、欧米は巨大な出版社がプラットフォームを提供しているんですけれども、J-STAGE以外には南米のプラットフォームですとか、SciELOと呼ばれていますけれども、あと最近EU圏でも、ナショナルジャーナルのプラットフォームというのがパイロットとして立ち上がるというような動きもありまして、そのローカルな言語でジャーナルを出版するということの重要性も見直されているというふうに見ております。
 オープンアクセスの観点からいいますと、ゴールドオープンアクセスという著者が記事掲載費用を払うというパターンのほかに、最近ダイヤモンドオープンアクセスといって、著者にも閲覧者にも費用負担させず、例えば国ですとかプロジェクトですとかが費用を負担する形でのオープンアクセスというものの推進という動きも見られていまして、そういう意味で、必ずしも特殊な形ではなくて、これも望ましい形の一つであるというふうな流れになってきていると思っています。
 以上となります。
 
【城山主査】  どうも御丁寧にありがとうございました。
 それでは、時間を過ぎていますので、ここまでさせていただきたいと思います。中島様、どうもありがとうございました。
 
【中島情報基盤事業部長(科学技術振興機構)】  ありがとうございました。
 
【城山主査】  次に、芸術系分野の特質を踏まえた研究指標ということで、立教大学の加藤様から御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【加藤教授(立教大学)】  皆様こんにちは。立教大学の加藤磨珠枝と申します。本日は、学術企画室の河村室長をはじめ、御担当の皆様に貴重な機会を与えていただきましたことをまずは御礼申し上げます。
 それでは、画面共有させていただきます。それでは、発表を始めます。
 今回は科学技術基本法の改正に伴い、第6期科学技術イノベーション基本計画において人文・社会科学の一部をなす芸術系分野の特質を踏まえた研究指標について、論点開示を行うという御依頼を受けましたので、その点について御報告をさせていただきます。報告時間が15分となっておりますので、本日は、以下の3つの構成に絞ってお話を進めます。
 まず第1に、学術企画室から共有していただいた本委員会の過去の資料に基づいた分析とそれについてのコメント、第2に、芸術系の分野の特質を踏まえた指標の在り方、第3のまとめとして、今後の基本的な考え方への提言とさせていただきます。
 さて、本議論の前提となる科学技術イノベーション基本計画については、皆様よく御存じのように、科学技術の振興のみならず、社会的価値を生み出す人文・社会科学の知と自然科学の知の融合による総合知により、人間や社会の総合的理解と課題解決に資する政策を目指すと明言されています。
 こうした基本姿勢は、芸術分野の歴史において新奇なことではなく、科学と芸術の親密な関係は過去に数多くの実例があります。例えば、今お見せしているように、イタリアルネッサンスを代表するレオナルド・ダ・ヴィンチが偉大な芸術家であると同時に、多分野にわたる研究者として、御覧のような解剖学、医学はもちろん、遠近法研究のために、物理学の一部門である光学――これは光の学問ですけれども――や数学、さらに自然観察を通じた気象学や天文学、また土木工事に関わる技術、武器製造に至るまで能力を発揮したのは有名なエピソードです。今お見せしている図版の下の右側のこれは、2013年に解剖学のイギリス人の科学者が研究した、レオナルドのデッサンがいかに信憑性があるかということを論じた論文からの一図版です。
 そのほかにも、ピタゴラス、ケブラー、ダーウィンなど歴史に名を残す科学者が普遍的な美を意識することで、時代の転換を及ぼすほどの新発見をもたらしたことも有名で、これから、20世紀のドイツのバウハウスが主たるスローガンとして科学技術と芸術の統合を挙げたことを想起する方もおられるかもしれません。
 科学と芸術は、今や予想もつかない対話の局面へと向かっています。これからの若手研究者が自身の研究に感性の豊かさや新しい価値観を取り入れて活躍していくためにも、芸術分野の発展は不可欠であると思われます。これは私が芸術分野に属する研究者であるがゆえに申し上げていることでは決してなく、これまでの歴史、人類の歴史を踏まえた、言わば国際水準の考え方であるということも付け加えさせてください。
 こうした前提を確認した上で、これまで本特別委員会にて共有された過去の資料を拝見したところ、この芸術分野への資料が十分ではないのではないかと疑問を持つようになりました。
 1、過去の資料を踏まえた分析・コメントとして、まず、議論の出発点として、人文学・社会科学における芸術分野の位置づけについて確認させてください。国内の学術研究領域において芸術系は、人文学・社会科学の付随的、おまけのような、あるいは異質な存在として認識されているため、全体構想段階で前提とされていないということがしばしばあります。
 海外においては、芸術系は人文学・社会科学と並び立つ重要な領域として、名称においても概念化されています。例えば、英米やカナダ、オーストラリアなどでは、科学技術、工学、数学と対をなす学問として用いられている名称においても、人文・芸術・社会科学という呼称が、Humanities Arts and Social Sciences、これを頭文字を取ってHASSとも言われますが、この市民のHASS意識と地域レベルでの正しい認識、高いコミュニティー活動、さらに文化関与には一定の関係があると言われています。
 2020年には、イギリスにおいて、人文・芸術・社会科学を表すHASSの頭文字をSHAPEとして、すなわちSocial Sciences,Humanities and the Arts for People and the Economyと改名し、教育、社会、経済におけるこれらの科目の重要性を強調するという動きもあります。
 芸術系の活動の特性において、あえて思いついたことを述べますと、大学などの教育・研究機関での活動だけでは可視化されにくいジャンルが存在するということ。
 公私の美術館やギャラリー、劇場などの文化施設に加え、特定の都市を舞台とする芸術祭、公共空間、さらにサイバー空間も含めて、多様な空間が創作活動のフィールドとなり得るということ。
 また、芸術そのものの特徴ゆえに、論文、書籍といった半恒久的な成果だけではなく、会場での展示、演奏、公演といった、その時間表現を含むテンポラリーな、言わばはかないものも含み得るということ。
 さらに芸術作品の創作において、作品の創作そのものに加えて、それを維持し、またドキュメンテーションするという記録、画像なども対象になり得るということ。
 こうして、新たな創造だけではなく、過去の芸術・文化財の保存、維持管理も、今日の重要な課題となり得るという、こういった様々な視点を考慮する必要があります。
 上記の特性を考慮した上で、研究活動の成果を評価する指標について考える必要があると言えるでしょう。
 この今お見せしている資料は、今年の1月28日に本委員会の資料として共有された人文学・社会科学に関連するモニタリング指標に関する論点を再掲したものです。ここでは、1の論点の背景と、2の人文学・社会科学特別委員会で検討する論点等が非常に細かく考えられておりますが、特に論点の背景などを拝見しましても、今回提示された論点において、学術論文、ジャーナルの質の違い、書籍の重要性など、学問上の指摘は多々ありますが、芸術分野についての視点がほぼ完全に抜け落ちていると言わざるを得ません。
 その一方で、2のこの検討する論点において、②の人文学・社会科学の特性に応じた多角的なモニタリング指標をどのように設定するか、あるいは、③の国際的通用性をどのように図るべきかという視点を考えるならば、この研究評価システムで着目されている社会的インパクトの多様性について、芸術分野は看過できないと申し上げることができるでしょう。
 今お見せしているスライドは、今年の1月28日の本委員会において、林隆之氏の御発表で用いられたスライド、これからお見せする3枚のスライドは林隆之氏の資料から転載したものですが、ここにおいても指摘されておられますように、研究評価・研究成果の測定における分野の違いをどのようにするかというのは、重要な課題として指摘されているわけです。
 2つ目のポツでしょうか、そこを見ましても、多様性を踏まえた評価設計をすべきという指摘をここではあえて強調させてください。
 これらを踏まえて、2番目の論点として、芸術系の具体的な指標例について、現状を踏まえて、海外の動向に目を向けてみたいと思います。
 ②、ここではオーストラリアにおける例と、イギリスにおける研究成果の分類を林先生は挙げてくださいましたが、まず、上のオーストラリアにおいては、左側の伝統的研究成果と右側の非伝統的研究成果というふうに二分されておりまして、こちらの右側の非伝統的研究成果のほうには、はっきりと、オリジナルな創造的作品、創造的作品の実演、記録や表示された創造的作品、監督や実施された公開展示会やイベント等々、先ほど私が芸術表現の特質として述べたものを前提とした研究成果の基準が盛り込まれていることがお分かりいただけると思います。
 また、下の段の英国における分類におきましても、例えば、Lの部分、A、B、C、Rと、上部はここまで既に皆様が御議論くださっている媒体ですが、例えば物理的な人工物に含まれる美術品・工芸品、装置や製品、あるいは展示・実演といったものなど、またさらにデジタルの人工物などをも含め、芸術を意識した分類というのが、やはり英国においても明確に盛り込まれているということがお分かりいただけるかと思います。
 もう一つ、フランスの例も御紹介しましょう。フランスにおいてはやはり、1、2といったこの著作物、雑誌に続くような形で、9番目のところの、この特定学問分野固有のその他の成果物の中に、明確に芸術作品、舞台演出、映画及びドキュメンタリー作品、そして展示等に加えて、ここに、先ほどちょっと忘れましたけど、この音楽的なものも含め、ここには、著作物の中にはもちろん展覧会カタログ等も含まれておりますけれども、こうしたものは5のデジタル成果物や、7番の教育活動の成果物などの今日的手法も評価に組み込まれていることがお分かりいただけます。
 最後にオランダに関しましては、これは細かいので言いませんが、オランダにおいては国家計画として2011年に、既存のものでは不十分と考えられたオランダの国が、人文科学の研究の質を判断する評価ツールとして、王立芸術科学アカデミーに開発を求めて、同アカデミーが人文科学のためのシンプルで明確かつ効果的な指標体系の策定を目指して設置した報告などもあります。
 ここでは、オランダにおきましては、そもそもが、科学、名称からも分かりますように、Royal Academy of Arts and Sciencesという形で芸術と科学が一体化した形の機関にこうしたものを評価の策定を求めるという前提があることも指摘しておきたいと思います。
 このような形でまとめますと、3番、まとめと「基本的な考え方」への提言としまして、芸術系には、その表現の特質を踏まえた独自のアウトプットの手法が想定されることから、それらを見える化して評価するためには、独自の指標設定が必要であるということ。
 2番目の項目、これまでの人文学・社会科学の指標に関する論点では、この点がほとんど考慮されることがなかったために、可能であればできるだけ早い段階で、今回示した海外と同様の独自の枠組みを設け、詳細について議論することが望ましいのではないか。そうしないと、芸術はこれまでと同様に、日本国内においては、おまけ、付け足しのような存在になり、その存在的ポテンシャルを発揮できないと思われます。
 考えられる問題点として、芸術系の評価というのが私的な美的体験によると考える者もいるでしょうから、この定量指標の客観的エビデンスをどのように担保するのかというのも重要な問題となってくると思います。
 美術系に関する指標、活動の可視化の具体案として、これはあくまでも思いつきですが、芸術発表の場や作品所蔵先の検証というのは、客観的な評価基準の重要な意味を持つと思います。他分野のジャーナルランクのようなものに当たります。例として、国内外の美術館やギャラリーなど、由緒ある国際美術展への出品など、それについての展覧会評などなど。
 また、もう一つの活動の視覚化として、アート・ドキュメンテーションのデジタル化など、様々な試みの評価法というのは、文化庁のアートプラットフォーム事業内容なども参考になるのではないでしょうか。
 今年の4月から文化庁が始動したアート・コミュニケーションセンター、これは仮の名称ですからまだ決定ではないんですが、こうしたところにおいては、施策の一環として、芸術の芸術的・学術的価値、経済的価値、社会的価値をバランスよく向上させ、評価させるための活動というのが始まっております。
 今回の報告では、総合知の基本的な考え方として、芸術を人文学・社会科学と並ぶ重要な柱の一つとして捉え、言語化する意味について、さらに芸術的特質を踏まえた上で、研究評価システムを再構築する必要性について述べました。具体案については、今後の検討課題として簡単な指針を示しました。
 具体策として挙げられることとしては、欧米の、さきに簡単に紹介しました事例から、芸術の特質を踏まえたよりよい研究評価を取り入れること。2、現代社会における芸術の役割を理解し、学術研究の分野にも精通する専門家の意見に耳を傾けること。3、国内における新たな活動とネットワークを構築して、教育、医療、福祉、ビジネス、観光など多様な社会連帯の推進によって芸術の社会的価値の向上を目指すことが挙げられると思います。
 以上で私の発表を終わらせていただきます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、御質問等いただければと思いますがいかがでしょうか。じゃあ、白波瀬委員、お願いします。
 
【白波瀬委員】  大変有意義な御報告ありがとうございました。前の2つの報告とも若干関連するんですけれども、やはり芸術分野のということなんですが、これは芸術というある意味での新しい融合分野、非常に重要な一つの研究対象としての芸術を通して、逆に今までのカテゴリーを含む見方を変えてもいいんじゃないかという重要な報告と、私は理解いたしました。
 もともとが結局評価としてどういうふうにこういうようなデータを使っていくかということであるんですけれども、日本はもともとArts and Sciencesという言葉自体もあるんですけど、その訳語がやっぱり日本的なコンテクストの中で議論されているように思うんです。
 そういう意味では、人文学・社会科学というもの自体も、例えば私の専門の社会学もどっちに入るんですかとかというのを、心理学がどっちですかとかいろいろ、やっぱり国とかカテゴリーの理解の仕方によって違うと思うんです。
 ですから、ここで逆に言えば、今、加藤先生が御報告された芸術分野のということになるとすごく特別になっちゃうんですけど、私はやっぱり非常に王道的なところでまず一つの専門分野というか、一番明らかに見えるのがアプローチ、ですから先生だと西洋美術史というのが多分一つのディシプリンになると思うんですけれども、そのディシプリンの中のアプローチ自体がいろいろな隣接分野を組み込んだ形で進んでいくというところがあって、もう一つはやっぱり対象、つまり、ここでは芸術という一つの対象で、社会学なんかでも芸術から見て、あるいは文学でもとか、そういうことは共通するので、対象の問題と、あと今日見えてきたのは媒体、いろんなところでその研究成果をどういう形で発信するのかという、大きな3つの柱があると思うんです。
 そこのところで、今までのデータをつくるという、前の2つの御報告があったみたいに、そのデータをどうつくり込んでいくのかというところに、今の考え方、加藤先生の一つの新しい分野での不十分なところを組み込みながらそのデータをつくっていただくということと、そのデータをどう使って評価するのか、これは一律では決められないので、そういう意味では、ちょっと質問というよりも意見になりますけども、私はそういうように理解をいたしました。大変ありがとうございました。
 
【城山主査】  ありがとうございました。加藤先生、レスポンスは何かございますでしょうか。
 
【加藤教授(立教大学)】  大変貴重な御意見ありがとうございます。まさに私も考えているとおりのことでございまして、今回そこを分かっていただきたくて、とてもうれしいです。
 今おっしゃったような動きというのは、本当にまだもう始まったばかりという状況で、先ほど少し口頭で御紹介しましたが、文化庁のアートプラットフォーム事業でありますとか、今年の4月から国の機関として設置されましたアート・コミュニケーションセンターという、国立近代美術館の横に初めてできたばかりで、まだ始動したばかりなんですが、そこでこれからそういったことを具体的につくっていくという段階だというふうに私は伺っております。
 
【城山主査】  ありがとうございました。では、新福委員、お願いします。
 
【新福委員】  貴重な御発表、どうもありがとうございます。大変勉強になりました。
 私が実は若手研究者と一緒に行っているGlobal Young Academyという活動の一環で、今回総会を日本で開催するのですけれども、そのテーマに「感性と理性のリバランス」というトピックを取り上げております。
 自然科学系の研究者においては、論文、論文、論文というふうになってしまっていて、理性的に論文を発出していく、合理的に進めていくというところがすごく強くなっているんですが、そこにやはり今回パンデミックで、一般市民に広く科学的な成果を発表していくとか、そういった部分においては感性を非常に求められるといいますか、科学者というのは理性的な部分と感性的な部分を上手に合わせ持っておかなければならないんじゃないかと思わされるところがたくさんありました。
 この美術系の分野におかれましては、たくさん作品を作ったり、そういったところで感性が育てられているのかなというふうに思うんですけれども、我々ほかの分野の研究者もこの技術的、芸術的な取組ですとか感性を育てていくというところ、今後行っていきたい部分でもあるので、もしそういった取組や、いい手段がございましたら教えていただきたいなと思った次第です。お願いいたします。
 
【加藤教授(立教大学)】  御質問ありがとうございます。取組と申しますと、いろいろ恐らく過去の取組あると思うんですが、例えばですが、アメリカのマサチューセッツ工科大学はそれにかなり先駆けで、1985年に設立されましたメディアラボというのがございまして、そこで初期から、音楽・美術・デザインに関する研究と、こうした理系のものを結びつけた様々なものが数多く行われています。
 こういった機関などを参考にしてみるなども、まずは習うより見て、外の環境を見て、どんなものが出てくるか。日本においてもいろいろ今、試み等、東京大学とかでも始まっておりますので、そうした意識をつないでいく様々な部分をつないでいくというのが重要ではないかなというふうに考えております。
 
【城山主査】  ありがとうございました。それでは、岸村委員、お願いします。
 
【岸村委員】  ありがとうございます。岸村です。私も先ほど新福先生から紹介のあったGlobal Young Academyの国際会議、一緒に運営しているんで、そのちょっと補足的なコメントになるんですけども、私もその芸術と科学をつなぐようなイベントオーガナイズもその中でしているんですが、いわゆるその従来的な科学の活動というのは、おおよそ説得するためにエビデンスを積んで、それでもって表現していく活動だというふうに私は捉えていますが、その中で必ずしも言いたいことがあって表現したりしなきゃいけない中で、エビデンスが積み切れない場合というのが結構あったと思います。それはコロナのときでもそうですし、一般的に科学コミュニケーションとして捉えられていることかもしれませんが、そういう中でも的確な表現をしたり、何か創作をしていって、皆さんに知らしめていくような活動ができるのが芸術の特徴だとすると、やはり科学と芸術は非常に補完的な役割を持っているんじゃないかなというふうに思ったりもしています。
 ただ、それでコメントだけなんですけども、そういった中で、見方を変える、いわゆる従来的な科学を人々にうまく伝えていく科学コミュニケーションの活動も、何か適切に評価されなきゃいけないんじゃないのかなということを、先生の御発表を通じて改めて思ったということです。芸術もそうですし、科学コミュケーションのような活動も、やはりある種の業績としてきちんと位置づけていくことも、より大事なことなのかなと思いました。
 以上、コメントです。面白い御発表、どうもありがとうございました。
 
【加藤教授(立教大学)】  ありがとうございます。私も本当、そう思いますね。そういったことも十分評価されるべきだと思いますし、まさに、現代社会の人々が幸福に暮らすという、そういった意味を目指す、その最終目的においてもとても重要ではないかなというふうに考えております。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 じゃあ、私からも一言、むしろコメントのような感じですが、述べさせていただければと思います。
 最初にお話しいただいたように、恐らくこの委員会の検討の中で明示的に、アートの分野というのは対象にしてなかったというところがあって、そこがすごく大事だというのはおっしゃるとおりだと思います。
 他方、やはり伺っていて思ったのは、恐らくここで今回提起された問題というのは、まさにその、アートももちろん大事なんですが、その人社一般として考えなきゃいけない話というのを提起していただいたんだろうなと思います。
 つまり、必ずしも論文だけじゃない形でのアウトプットの形態というのが大事だ、それは必ずしも書籍にとどまるものではなくてという、ここはまさに人社自身、ある種の啓蒙的機能が大事だとかも含めていろんなことを、いろんなアウトプットをまさにやっていかなきゃいけないという話なので、そういう意味ではある種、その人社で抱えている課題の最先端のフロンティアみたいな話をしていただいたのかなという気がいたしました。
 その中で、今日、最後のほうで少しお話しされましたけど、ある種の社会的インパクトみたいな、例えば教育だとか医療だとか福祉に関するインパクト等も含めて考えていく必要があるという、多分この辺りもまさに前線的な話になっていて、例えば、ちょっと私は接点があったので言うと、博物館法の改正みたいな話で、単なる社会教育じゃなくてもっと社会に出ていろんなインパクトについて考えましょうみたいな話がありますけれども、そういうのもまさに人社一般に問われている話でもありますし、さらに言えば、科学技術も含めて総合知というからには多分、そういうことに関与せざるを得ない話だと思うので、そういう意味ではかなりフロンティアの話をしていただいたのかなと思います。
 そういう意味では、人社全体の議論の中にも、今日、問題提起いただいたようなことをぜひ今後入れていければいいのではないかなというふうに思っています。
 一つだけ、逆にお伺いしたいのは、そのときに例えば、これも人社の話も出てくるんですが、そのローカルなコンテクストが大事だという部分ですね。これは日本語でやるということも大事だということにもつながっていくんです。そういう話と、やっぱり、ある種のオーディエンスというか課題設定というのはグローバルに普遍的なものだという両側面が多分あって、そのバランスをどう取っていくのかというのが一つの重要な論点なんですけども、そういう問題というのはアートの世界だとどういう形で議論されているのかとか、もしあれば一言教えていただければなと思いました。
 すみません。よろしくお願いします。
 
【加藤教授(立教大学)】  まず初めに、的確に全体をおまとめくださってありがとうございます。
 あと、2つ目の御質問については、すごくいろんな階層で、このグローバルと国際的なものというのは起きておりますので、なかなか一言でまとめるというのがまず難しいです。例えば、作品の発表とか公演等を考えますと、芸術作品などを考えれば、言葉を介さないコミュニケーションのツールでもありますので、そういった意味では非常にダイレクトにグローバルなものとのコンタクトを有することが可能であります。が、それを一つの社会のものとして見せるためには様々なシステムが必要になりますので、そうすると日本の国内にあるシステムというのは非常にローカルなものが多々あって、うまく接続していない部分もある。ただ、それで、全部ローカルというものでもないので、どの部分にというか、論点をもう少し絞り込んでからでないと、なかなか私、お答えしかねるという感じで、すみません。
 
【城山主査】  分かりました。どうもありがとうございます。
 それでは、加藤委員、お願いします。
 
【加藤委員】  加藤です。私、筑波大学ですけれども、筑波大学は芸術の分野を持っていて、たまたま人事担当もやっているものですから、芸術と体育という、他大学にはあまりない分野を持っていて、人事任用とかをやるんですけども。
 それで、芸術を見ていると、そこから上がってくる書類には、コンテストがありますよね、芸術の分野における。大変、芸術の先生でファインアートの分野、インダストリアルデザインのほうもそうだと思いますけれども、大概多くの受賞歴のある方が多くて、芸術の分野で、その賞の特質もいろいろかと思いますが、その中で、それなりに有名な人を採っているということがいつもコメントされて、みんなで議論するんですけれども。体育は、それが、どういう大会で勝っているかという、一番トップはオリンピックでということはありますけれども。
 意外と、今回、御発表が、人文におけるというので言語化ということとかなりリンクしたお話になっていることは私もよく理解しているんですけど、その研究事業ということに関しては、芸術系の中においてはコンテストみたいなもので、いわゆる有名な賞を受賞するようなことで評価されるということで、これは実は、私自身は理科系、情報工学系なんですけども、工学系のほうでも、理科系のほうでは著名ジャーナル、著名コンファレンスに通るということが一つの指標になっていて、そこは結構似たような。
 ですから、意外と芸術とか体育も、どういう、ある意味でのその分野においてグローバルな評価を受けたかということで、それが研究指標となって、そこについてはかなり客観的な議論ができるようになっていて、意外とみんなで議論していても、あるその合意に達するようなことができるようになっているみたいであるなという気がいたすんですけれども、これは質問というよりはコメントというか、そういうふうになっていますねという一つのコメントなんですけれども。
 
【加藤教授(立教大学)】  ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。まさに、どのジャーナルに掲載されるかというのは、芸術そして美術、音楽ともに、どういったところで受賞するか、あるいはどのような場で発表の場が与えられるか、発表したことに対して、例えば展評や公演会評のように、どういった評が後に加えられるか等々を比較して、同じように言える、評価することは十分可能なので、それらを基準として取り入れるというのはいいのではないかなと私も具体的に考えております。
 
【加藤委員】  議論ポイントとしては、人文学・社会科学全般のほうが評価が難しくて、そういう意味では。つまり、芸術とか体育というのは見える化が甚だしく見える化されていて、しかも評価がある意味パブリックに出されるようなところもあるので、それで、選ぶ人たちの審査員というのはある限られた人たちで、実際にはコミュニティーが抱える問題みたいなこともあるんじゃないかなと想像はするんですけれども、公の上にさらされた状態で、芸術分野も体育分野も評価される中でやると。芸術のほうはパブリックに見える化されているので、評価、研究指標が意外と据えやすいかもしれなくて、むしろ人文・社会科学のほうが困難を抱えているような気がするというコメントでございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございます。加藤先生、何かございますか。
 
【加藤教授(立教大学)】  それについて一言だけ申し上げたいんですけれども、今、パブリックに関しての評価が簡単だというふうに、スポーツ・芸術についておっしゃいましたが、世界的にぬきんでたほどの人物であればそうだと思うんですが、恐らく、たくさんのアーティストやスポーツマンがいる中で、そうしたぬきんでたものだけを相手にしていることはできないと思うんです。
 今おっしゃった人文・社会における難しさというのは、裾野をどこまでで捉えるかというので、今、加藤先生がお話しになっていた芸術のところは、本当にトップの一部分だけを見ておっしゃっている。一方で、人文・社会のほうは裾野を広く見ておっしゃっているような気が私はしました。
 
【加藤委員】  私のコメントですけれども、例えば、でも、その裾野は大学教員くらいの、日本の大学教員ということに関しては、大体、仮に世界トップでなくても、日本のトップのほうであるならば、私たち工学部員もそうなんだけれども、世界でトップではないかもしれないけど、日本の中ではそれなりに見えているということはあり得るので、それはそれで、ある種の最適な構造を持っているというか、世界レベル、日本レベルというところで、その裾野をすごく広いところまで持っていくとどんどん難しくなっていくということは承知はしていますけれども、国内の、例えば大学の教員を評価するぐらいのところであるならば、研究事業の評価を割と見える化されているんじゃないかという印象を、個人的に思っておりますけれども。
 
【加藤教授(立教大学)】  人文も芸術系に関しても、評価の難しさというところでは、ある程度どちらもあるのではないかなというふうに、ぬきんでた、突出した成果を持っている方と、その段階のどこで線を引くかというのは、いろいろ難しい問題だと、今でも思っています。すみません。
 
【城山主査】  面白い論点かと思いますが、今日はここまでということでお願いします。
 それでは、井野瀬委員、お願いします。
 
【井野瀬委員】  時間が来ているようなので、本当に短くです。非常に刺激的な御報告ありがとうございました。評価が難しいというようなこと、先ほどからの論点もそうなんですけども、人文学・社会科学もそうですし、それから芸術学もそうで、評価が難しいがゆえに、どうしてもそのモデルを欧米に求めがちなところがあるように私は思うんです。それをこの何年もかけて議論しながら、脱欧米の目線、あるいは脱欧米評価ということをやってきたわけですが、それを芸術系の分野ではどのようなことを考えられているのか。だからこそ、人文学・社会科学の議論に芸術系の議論を入れると、さらに何が見えてくるというか、難しいところをちょっと光が差すのかなという辺り、少しヒントをいただけるとありがたいなと思います。
 
【加藤教授(立教大学)】  貴重な御指摘ありがとうございます。私も、今日発表しているときに、例に挙げるものが欧米ばかりなので、自分でも実は嫌だったんですが、限られた時間で分かりやすくというところでしたので、ああならざるを得なかったというところがございまして。そもそもその芸術という言葉が日本に輸入されたものが、外来の意識を通じた、明治初期という状況でございまして、我々の概念、学問の概念そのものがどうしても欧米中心にならざるを得ないということがまず最初にあります。
 ただ、もうそういったことを言っているといつまでたっても抜け出せないので、今、井野瀬先生がおっしゃってくださったような、日本ならではのということを考えますと、やはり芸術の分野には工芸も含めて非常に長い伝統がございまして、人間国宝であるとか、様々な技術、伝統というものが今日にまで伝えられております。そうしたものも、まさにそれはほとんど学問の机上には上がらないんですが、実はとっても重要な要素なんです。ですから、そうしたものも本当は含めて、私は芸術という形で世界感を構築していただけるととてもうれしいなというふうに考えております。
 
【井野瀬委員】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  どうも活発に御議論いただきまして、ありがとうございました。
 すみません。既に時間を超えているのですが、最後に事務局のほうから、前回の学術分科会においてどういう意見があったのか、ごく簡単に御紹介いただいて、あと、今日まだ御発言いただいてない委員の方で、ぜひということがあれば、ごくごく短くで恐縮ですが、何か一言いただければというふうに思います。
 それでは、事務局のほうからお願いできますでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  学術企画室長の河村でございます。時間もありませんので簡単でございますが、資料4として用意させていただきました。
 特に3ページ以降は、これまでの人文学・社会科学特別委員会の意見をまとめたものでございますが、これは4月12日の学術分科会におきまして、城山主査から御報告いただきました。そのときに、下にございますが、2ページにあるとおり、5つの点の御意見というものがございました。引用の関係、やはり論文もしっかり見ていくべきだ、総合知に関する発信の関係というような、いろんな点につきまして意見がございました。
 このようなものを踏まえまして、今後、さらなる御意見をいただければと思って用意させていただきました資料でございます。
 以上でございます。
 
【城山主査】  ありがとうございます。全体を通しまして、何か委員の先生方からございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本日の議論はここまでとさせていただきます。
 それでは最後に、事務局から連絡事項等ありましたら、よろしくお願いいたします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】  本日はありがとうございました。
 次回の委員会の日程につきましては、改めて日程調整の上、御連絡をいたします。
 また、本日の議事録につきましては、後日、メールにてお送りいたしますので、御確認をお願いいたします。
 以上で終了となります。御退席の際には、画面下のバッテンのボタンから御退席いただければと思います。ありがとうございました。
 
【城山主査】  それでは、皆さん、どうもありがとうございました。これにて終了とさせていただきます。

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