人文学・社会科学特別委員会(第3回) 議事録

1.日時

令和元年8月30日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館15階 15F特別会議室
(〒100-8959 東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 共創型プロジェクトについて
  2. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、勝委員、小長谷委員、須藤委員、井野瀬委員、大竹委員、川添委員、岸村委員、喜連川委員、小林傳司委員、小林良彰委員、新福委員、山本委員、盛山委員
(科学官)
頼住科学官

文部科学省

原振興企画課長、前田学術企画室長、藤川学術企画室長補佐

5.議事録

【城山主査】  ただいまより第3回人文学・社会科学特別委員会を開催いたします。
 まずは事務局より配付資料の確認をお願いします。

【藤川学術企画室長補佐】  それでは、確認させていただきます。本日はタブレットPCを御用意しております。ペーパーレス会議で実施したいと思っております。
 本日の配付資料につきましては、配付資料一覧に加えまして、第1回の資料、第2回の資料、前期ワーキングでのまとめの報告書を入れさせていただいております。全ての資料はタブレットPCで御覧いただけるようにしております。操作など御不明な点がございましたら、近くの職員にお声がけください。
 以上です。

【城山主査】  ありがとうございます。
 それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題は、議事次第のとおりでございます。
 まず一つ目でありますけれども、共創型プロジェクトについて、ここで本日はかなりの時間を使わせていただくということになります。本日は、前回以来議論させていただいております共創型プロジェクトについて、事務局案として提示された資料に基づいて御審議いただきたいと思います。
 それでは、事務局から資料の御説明をお願いいたします。

【前田学術企画室長】  それでは、よろしくお願いいたします。タブレット端末の資料、議事次第に基づきまして、資料1がこれまでの人文学・社会科学特別委員会のまとめになっておりますけれども、今回、資料2-1を御覧いただければと思います。前回第2回と、それから1回目の先生方の御議論を踏まえまして、事務局案として中間まとめの案というものを提示させていただいております。これに沿いまして御説明させていただければと思いますけれども、まずタイトルが、前回「共創型プロジェクト」というふうにしてございましたけれども、タイトルが共創型という意味だけではなかなか分かりにくいという御指摘がございましたので、「人文学・社会科学を軸とした学術知統合プロジェクト」というふうにさせていただいております。
 これは、構成としまして、ローマ数字1 の「検討の背景」からローマ数字5 の「継続的な検討の必要性」がございますけれども、まずローマ数字1 の「検討の背景」のところでございます。これは昨年12月の学術分科会のワーキンググループ、人文学・社会科学振興の在り方に関するワーキンググループで取りまとめられました審議のまとめについて述べられたことについて事実関係としてここに記載してございます。
 ここには、直面する克服すべき諸課題というものを大きく2点書かせていただいておりますけれども、三つ目の丸のところで、「こうした諸課題を克服するため、『審議のまとめ』では」ということで、課題克服のための方向性が示されております。
 2ページ目でございますけれども、こうした課題克服という、これまでの議論の経緯、こういったものを踏まえて、本委員会においては、以下、ローマ数字2 からローマ数字5 に示すとおり、事業の目的、それから、大きなテーマの設定、事業の運営体制など、骨格となる基本的事項について検討を行ったところでございます。
 それから、ローマ数字2 が「目的」で、中身に入ってまいりますけれども、一つ目の丸でございますけれども、今回やる事業と既存の競争的資金との関係について簡単に整理しているのがマル1でございます。既存の競争的資金につきましては、科研費の助成事業、それから、戦略的創造研究事業などございますけれども、いずれも研究の実践に対する支援であり、実際の研究体制(研究チーム、研究課題とその実施に望ましい研究支援の在り方)、実施に望ましい研究支援の在り方と申しますのは、研究課題ごとの予算規模でございますとか、予算の研究の期間、それから資金の枠組みというものをイメージしておりますけれども、そういったものの確立、実際の研究体制の確立に至るまでの考察のプロセスに焦点を当てたものではないというのが一つ目の丸でございます。
 他方で、人社の特性、意味や価値を探求し、時に多元的で代替的な見方を提供できるreflective capacity、前回の御議論でもこのワーディングが出てまいりましたけれども、そういった人社ならではの特質、この機能をいかに最大限引き出しながら時代の要請に機動的かつ的確に対応するかというための体制整備がまずは必要ではないかということが二つ目の丸でございます。
 従いまして、二段構えになっておりますけれども、三つ目の丸として、まずは本委員会としては、現状において解決方策が探求されていない、あるいは問題が顕在化していないが、未来社会というものを構想し、人社の知がどのように貢献でき、何をなし得るかということについて考察するプロセスの体系化を試みてはどうかというのが三つ目の丸でございます。
 四つ目の丸としては、その上で具体の研究実践を通じて学術研究の振興、ひいては科学技術イノベーションの創出という取組が求められるというふうにしてございます。
 これら四つの丸を踏まえまして、事業目的として、次のページでございますけれども、1から4で整理しております。
 一つ目が、人社の研究者がイニシアチブを持ちつつ、未来社会の構想に参加するプラットフォーム、すなわち共創の場、そういう場を提供すると。
 それから、二つ目で、その場においては大きなテーマの下で、自然科学の研究者だけではなくて、社会の多様なステークホルダー、産業界とかNGO、マスコミ、行政等も関与する形で知を統合しながら未来の社会課題に向き合うプロセスを体系化すると。
 それから三つ目は、そういったプロセスの中では、それぞれの研究チームが新たな知識基盤を構築することや、若手研究者の参画を得ながら、人社と自然科学の双方のニーズを俯瞰できる人材の育成、又は世代間の協働というものに意識的に取り組むことにより、新たな評価の在り方について検討するというのが三つ目の丸でございます。
 四つ目の丸は、そういったプロセスを通じて、実際の研究体制を基に研究実践を行うというのがマル4でございます。
 三つ目、「大きなテーマ」でございますけれども、今、Society5.0でございますとか、SDGsなど、国レベル、あるいは国際レベルでのテーマ、そこでの考え方も踏まえつつ、前回、先生方からも大きなテーマに関するペーパーを頂きましたけれども、それを基に、以下三つ、事務局の方で作成させていただきました。
 前段の導入部分でございますけれども、現状の諸課題、それに対する取組を踏まえながら、30年~50年先というお話がございましたので、そういった長期的な視座が必要なもので、かつ、人社か中心になって取り組もうとして、以下三つが適当ではないかということでお示ししております。
 一つ目が「将来の人口動態を見据えた社会・人間の在り方」でございますけれども、我が国の高齢社会白書のみならず、国連の報告書、世界人口予測も引用しながら、世界的な人口の高齢化というものを紹介しております。そういった人口動態を見据えながら、いかにして人間中心で多様性のある持続可能な社会を作っていくかについて探求してはどうかというのが一つ目でございます。
 研究課題の例としては、キーワード例としては、Sustainable Societyでございますとか、グローバリゼーション、あるいは、社会保障といったものや人工知能・ロボットというようなものを入れさせていただいております。
 それから、(2)が「分断社会の超克」ということでございます。社会課題解決のためには、多様なステークホルダーの協働が必要なんだけれども、幾つかの分断がその協働を阻害している面があるというのが一つ目の丸でございます。
 そうした分断の構造を捉え直して、乗り越えていくための道筋を示すことがいかにできるかについて探求を行うというのが二つ目の「分断社会の超克」でございます。
 研究課題のキーワード例といたしましては、デモクラシーでございますとか、多文化共生、あるいは社会的包摂、情報科学技術というものを示させていただいております。
 最後に、「新たな世界秩序を形成する価値の創造」でございますけれども、一つ目の丸としては、地球規模での人間社会の価値の見直しと創造というものが進むものであることを前提に、ただ、我が国の明治以降の近代化、それから、戦後日本の平和主義、国際貢献、経済成長というものを振り返りながら、我が国固有の価値、倫理観、強みというものが今後の新たな世界の秩序形成にどういうふうに貢献できるかということを探求してはどうかというのが三つ目でございます。
 研究課題のキーワード例といたしましては、日本らしさでございますとか、多極化、ゲームチェンジャー、あるいはSociety5.0の再定義、気候変動、生命科学技術といったものを挙げさせていただいております。
 四つ目が実施体制でございますけれども、こちら、資料2-2という本事業のスキーム案というポンチ絵を御用意させていただいておりますので、私、この資料2-1を読み上げながら、資料2-2の本事業のスキーム案というものを御説明させていただければと思います。
 資料2-2の本事業のスキーム案で、左斜め上でございますけれども、「実施機関」というものがございます。この事業を誰が回すかということでございますけれども、実施機関としては、研究資金を配分する独立行政法人、すなわちファンディングエージェンシーなのか、あるいは、大学、大学共同利用機関などの学術研究を実施する研究機関のいずれかに委託するということでどうかというふうに考えております。
 その委託された実施機関の中で事業運営委員会というのを設置していただきまして、その中には、先ほどの大きなテーマに関する有識者の方、それから、本委員会の先生方にもお入りいただいて事業運営委員会を構成するということでございます。
 それから、事業運営委員会の役割といたしましては三つございまして、一つが、右斜め上に矢印が出ておりますけれども、共創の場、研究者コミュニティと、それから社会の多様なステークホルダーという、枠囲みが入っていますけれども、この方々に参加していただくための公募を行うというのが一つ目の役割でございます。
 そこで、今回、論点として示させていただいておりますのは、この共創の場に参加をされる研究者の方々、これは個人単位で応募するということでよいのか、あるいは、あらかじめグループ単位で応募してもよいのか、その場合にはどういう要件を設定するのかといったことも一つの論点かと考えております。
 また、先ほど若手研究者ということもございましたけれども、若手の方々をどういうふうにこの公募を通じて確保していくのかということも一つの論点かと思っております。
 それから、事業運営委員会の二つ目の役割でございますけれども、下に行きまして、「任命」という矢印がございますけれども、事業総括者とテーマ代表者を任命していただくという役割でございます。事業総括者は1名、テーマ代表者は、それぞれ三つございますので、3名ということを想定しておりますけれども、ただ、そもそも事業総括者、テーマ代表者というのを事業運営委員会が独自に選考、任命を行うのか、あるいはある程度、本委員会の御意見を踏まえながら、個別の方のお名前、こういう方が適当じゃないかということをリストを作成して、それを事業運営委員会の方にお示しするやり方なのかといったことも論点として記載させていただいております。
 それから、もう一つ、事業運営委員会の役割としては、それぞれ共創の場で、研究代表者、大きなテーマ代表者と、それから事業総括者の中で御議論いただいた研究体制というものの報告を頂いて、それについての指導・助言をするという役割が三つ目の役割てございます。
 それから、事業総括者について想定する者でございますけれども、事業総括者は、人文学・社会科学分野に限らず、各々の分野特性を理解し、相互を結び付けるなどの経験を有する者を想定ということを資料の中に書かせていただいております。それから、事業の総括的責任を担うというのがこの役割でございます。
 それから、最後、テーマ代表者でございますけれども、テーマ代表者は、人文学・社会科学分野に限らず、複数の研究グループが参画するプロジェクトの責任者としての経験を有する者を想定というふうにしてございます。
 それから、テーマ代表者は、それぞれのテーマごとに参加されている研究課題AとかBとかCとかDがございますけれども、それぞれ研究課題のAには研究課題Aの研究課題チーム代表者がおられるというイメージでございますけれども、そういった研究課題チーム代表者同士の意見の集約でございますとか、それについて指導・助言をしていただいて、テーマ全体として予想される成果について責任を担うと申しますか、ウオッチして監督していただくという役割を想定してございます。
 論点としては、テーマ代表者御自身がこの研究実践の中に参加できるかということも一つあろうかと思っていまして、一つは、研究課題AならAに入っていただいている研究者の方々と一緒になって同列に同等のエフォートで研究実践に従事するのか、あるいは、同等ではないんだけれども、テーマ全体をまとめる立場として、研究実践を可能として、そうした関与を貢献として論文著者等になる余地を残すというような案も考えられるかと思っております。
 これがこの全体図の事業スキームの御説明でございます。
 それから、最後に資料2-1でございますけれども、ローマ数字5 として「継続的な検討の必要性」というのを書かせていただいております。ここ、先ほど申し上げました二段構えについて、一つ目の丸に書かせていただいておりまして、二つ目の丸でございますけれども、この二段構えのうち、今回、この構築というプロセスというのは、人文学・社会科学を軸とした学術知の統合を図るための一つのメソッドとして学術界に展開・波及していくことが期待され、また、その後の研究実践につなげていくためにも丁寧に作り上げていく必要があるというのが二つ目の丸でございます。
 その上で、実際の研究実践に移行するに当たっては、個々の研究体制の内容、性質を踏まえながら、本事業による研究支援も含めて、どのような支援方策が適切かどうかについて改めて検討することが求められるというふうにしてございます。
 こちら、以上、資料2-1の説明でございます。それから、今回の参考資料といたしまして、第1回資料、第2回資料、それから報告書というのをタブレット内に入れさせていただいておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 事務局からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【城山主査】  どうもありがとうございました。今日はこの報告書案の大枠について大体固めるということを目的にしたいと思います。そういう意味で申しますと、ローマ数字ローマ数字1 、ローマ数字2 、ローマ数字3 、ローマ数字4 、ローマ数字5 とありますけれども、ローマ数字1 とローマ数字5 は、背景と今後の課題ということで、比較的軽いものかと思いますが、ローマ数字2 、ローマ数字3 、ローマ数字4 のところについて主として御議論していただくということになろうかと思います。恐らくその中も大きく二つに分かれて、一つは、ローマ数字のローマ数字2 とローマ数字3 ですね、この事業の目的をどうするかということと大きなテーマのくくりをどうするかという、前回来かなり議論していただいた部分というのが、3、40分程度少しお話をさせていただいて、それから、恐らく今日かなり新たに詰める必要があると思われるのは、ローマ数字のローマ数字4 の実施体制の部分かと思います。ここには論点という形でも事務局の方で具体的に記していただいていますけれども、ローマ数字4 のところは40分以上恐らく必要かなと思いますので、少しここを長めに重点的に議論したいと思います。
 そういう意味で、大きく前半、後半分けて、恐縮ですが、ローマ数字3 までの部分とローマ数字4 以降の部分ぐらいに分けて御議論を頂ければと思います。
 前回来御議論いただいている目的ローマ数字2 とローマ数字3 のところについて申しますと、今御紹介がありましたけれども、基本的には今回の御提案は、プロジェクト作成プロセスというのをまず第一段として走らせて、プロジェクトの実践プロセスと分けるというのが大きな提案の一つかと思います。とはいえ、ローマ数字ローマ数字2 の最後のマル4に書いていただいたように、その中から必要なものについては当然次のステップとして具体的な研究実践に移るということを念頭に置いているというのが大きな一つ目です。
 それからもう一つの点は、大きなテーマとして、前回の議論等もベースに三つ大きく設定していただいています。それで、キーワードをいろいろ入れていただきましたが、これは包括的なものというよりは、要は、いろんな側面から入り得る、あるいは、理系の観点からも何か取っかかりを得ていただくような言葉を取りあえず入れるということで整理していただいたものだというふうに理解をしています。
 大きくローマ数字ローマ数字2 、ローマ数字3 あたり、あるいはその前提となるあたりからまず御意見、御質問等頂ければと思います。いかがでしょうか。小林先生。

【小林良彰委員】  第1回は出席して、第2回は欠席しましたので、ただ、議事録は拝見をいたしました。今日ちょっと御説明ありませんでしたが、資料1の1ページの最後のところ、「学術の振興を一番の目的としつつ、社会課題にも応える」ということが出発点であったというふうに理解をしておりますが、本日の資料2-1、ローマ数字のローマ数字2 のマル1からマル4、これを見ると、どちらかというと、社会的課題の解決というところはかなり強く書いてあるのですが、肝腎の人文・社会の学術の振興というところをどのように読み取ればいいのかというのが少し私には分からなかったのです。マル2の人文学・社会科学固有の本質的・根源的問いから生じるというところがそうなのかなという気もします。このプログラムのプロジェクトの大きな特徴は、一つは、共創の場の実践だけではなくて作成プロセスから作るというのが一つ。もう一つは、単に社会的課題の解決であれば、いろいろな民間の財団のものがあります。あるいは、科研でも、特別推進ですとかなりそういうところが人社では強調されてきてやっています。重要なのは、社会的課題を解決することが究極的なこのプログラムの目的なのかどうかですね。私は手段だと思っていました、第1回では。それを通して人文学・社会学をどういうふうにパラダイムシフトするのか。従来の人文学・社会学の学術知では解決できない問題を、社会的課題の解決を解明する中を通して、新たな人文学・社会科学の学術知を作ると、ここに目的があると思っていましたので、マル1からマル4のところがもう少しそういうところを強調していただければと思っています。
 以上です。

【城山主査】  どうもありがとうございました。その点、まず事務局の方からいかがでしょうか。

【前田学術企画室長】  ありがとうございます。一つ目の学術の振興をどう捉えるのかという点でございますけれども、先生がおっしゃったように、マル1からマル4の中だと、新たな知識基盤を構築するとか、若手研究者の参加を得ながら、人社、自然双方のニーズでございますとか、ニュアンスとしては入れているつもりでございますけれども、マル1から4のところではなくて、ローマ数字2 の「目的」の2ページ目でございますけれども、その中に、一つは、マル2のところで、人文学・社会科学の取組を支援するというところ、それから、最後、マル4の中で、具体の研究実践を通じて学術研究の振興というものを図っていくんだということで記載してございます。
 ただ、マル1からマル4の中にももう少し明確に学術の振興というのをどう捉えているのかという点と、それから、社会課題というものが解決するということが出口というのは、むしろパラダイムシフトを図って、新たな人社の理論知というものを構成して、これは手段なんだという位置付けについても、また御相談していただきながら考えてみたいと思います。
 以上でございます。

【城山主査】  小林先生御指摘のように、ここは多分委員の先生方、若干ニュアンスの違いがあるかと思いますが、一応両方見るというところは基本的な共通了解かと思いますので、それをどういう表現に置くかというところで、今の事務局からの御提案は、マル1からマル4のところにもうちょっとその側面を入れるということで、例えば私が見た感じですと、マル1のところにそもそも「未来社会の構想に能動的に参加するためのプラットフォーム」となっていますけれども、これはおっしゃったように手段の側面もあるので、だとすると、能動的に参加すると同時に、今後の新たな人文学・社会科学の展開について考えるとか、何かそういう学術の側面の話も何らかの形で表現を入れるということかなと思いますが、そのような感じでよろしいでしょうかね。

【小林良彰委員】  はい。

【城山主査】  どうもありがとうございます。ほかいかがでしょうか。川添先生。

【川添委員】  前回も少し申し上げて、先ほどの御説明で、二段構え、このプロジェクトがそうなっていると。「目的」の1から4でいうと、4のところが最終的に何か具体的な個別の研究も支援をするということですよね。
 僕にとって、表現だけの問題かも分かりませんが、今の小林さんの御意見にも関係するので、マル2のところの表現が、つまり何が目的かというときに、「未来の社会課題に向き合うための考察をする」のではなくて、「考察のプロセスを体系化する」と書いてあるんですね。これが何なのかよく分からないんですよ。「未来課題に向き合うため」というのを入れた方がいいかどうかは別として、人社系の学問そのものについてのリフレクティブな、一種の反省的なことをやるというときに、考察のプロセスを体系化する仕事を共創の場でやるというのが一段目ですね。その結果、具体的な個別課題も支援するというか、やってもらうんだと。だから、それも、僕にはその関係というか、一番目のフェーズで実際何をやるのかということがよくわからない。
 そのことと関係してローマ数字ローマ数字3 の「大きなテーマ」の三つですけれども、僕の理解は、今みたいに二段構えになっていて、最終的に個別の研究をやるんだけれども、それも支援するんだけれども、その三つのテーマでさえ、大きなテーマでさえも、ある種の目的のマル2で書いてあることの反省のためのサンプルにすぎない、この三つは。つまり、人社系がこの三つを、あるいはこの委員会はこの三つが最重要課題だと認定をしているわけじゃないというかな。そんな議論していませんから、ここで。だから、これは一種のメタレベルの人社系の学問の在り方について考える場合のサンプルとして適当だという、そういう位置付けだと僕は理解しているんですけれども、そういうことがよく分からないです、この文章ではね。
 だから、そこのところ、一段目のフェーズの二つの目的が二重化されているという、そこのところをどう理解するのか。特に1番目で何をやるのかですね。これは前回僕が言ったのは、そもそも人社の区別なんていうことはそもそも問題にしなくてもいいのかどうか。そういうことさえ、実は考察のプロセスを体系化するという表現で表されているのかどうなのか分かりませんけれども、要するに、1番目のフェーズが具体的に理解できないんですね。もう少し説明が必要じゃないでしょうか。

【城山主査】  第1フェーズの正確な具体像ということかと思いますが、事務局の方からいかがでしょうか。

【前田学術企画室長】  ありがとうございます。資料2-2が事業のスキームとしてポンチ絵で示しておりますけれども、考察のプロセスは、正に実施機関が存在しまして、それから事業運営委員会の方で共創の場への参加ということを、研究者コミュニティ、社会の多様なステークホルダーを公募して、そこで集まった研究者の方と、それから社会の多様なステークホルダーの方が大きなテーマの下に研究課題というものを作り上げていく。これが正に考察のプロセスという理解でございます。

【川添委員】  体系化というのはどういう意味ですか。

【前田学術企画室長】  こういうものを一つのモデルとして作り上げていこうという意味でございます。

【城山主査】  ちょっと後で触れます。まず一通り説明してください。

【前田学術企画室長】  それから、大きなテーマ1から3は最上級の課題なのかという御指摘でございますけれども、それはもちろん人社の分野というのは幅広いものだというふうに私も理解しておりますけれども、しかし、大きなテーマを考えるときに、Society5.0、要するに、今、国レベルとか、国際レベルのテーマ、そこでの考え方でございますとか、前回の議論でも人口動態というお話とか、分断社会という、分断というキーワードが出されていたと思いますし、新しい価値というものも議論の中ではあったと思います。
 ですので、そういったものを取りまとめたのが1から3でございますので、最上級であるかどうかというのは、事務局としては、そこはどういう判断するかというのは、先生方で御議論いただければと思っております。

【城山主査】  川添先生の御質問との関係で、私の理解は、要するに、社会課題と向き合うためだけなのか、基本的な課題を考えるためなのかとありますが、考察のプロセスをまず1回試行するというのが、来年度のこの三つを例として考えている話で、恐らくこれは1回で終わる話ではなくて、来年度はまずワンセットこれやってみましょうと。恐らく事務局の議論でいうと、そういうプロセスを多分もう1回なり、2、3回回してみるんだと思うんですね。その1回ごとで、それまでの学習に基づいてプロセスを変えていくということもあり得るので、そういうプロセスを実験的に3回ぐらい回して、それを通して、どういうやり方をやったらいいのか、あるいは、どういう点が基本的な点なのかということを、そこから共通理解を作っていくという、それを体系化というふうに言っているという、そういうことなのかなと思います。いかがでしょうか。要は、まずやってみなきゃ何も分からないということなんですけど。

【川添委員】  具体的に言うと、これで、金目の問題でいうと、どういう期間で、プランで、このプロジェクト、目的四つを実現するために、どれぐらいのスパンで考えていて、どういうステップでやるのかという、そういうこととの関連がよく分からないわけですね。だから、1年目、仮にお金が付いた場合に、どこまで1年目で何をやるのかという、そういうことについて、全体のプロジェクトについての具体像というものが持ちにくい。

【城山主査】  恐らくその点は後半の体制のところで議論をする必要もあるのかと思いますが、若干ちょっとこれ、事務局に対する確認にもなりますけれども、どこかに投げるわけですね。こういう事業、委託なのかと思いますが、それは取りあえず来年度これを回してくださいということで投げるのか、例えば体系化ということでいうと、こういうサイクルを何回か回すことになるわけなので、そういうことを何回か回すということを念頭に置いた形で投げるのか。それによって投げられた方も、どういうタイムスパンで何を考えたらいいかということが変わってくるんだと思いますが、その点のところは既に検討されていることはあるわけでしょうか。

【前田学術企画室長】  昨日、文科省の概算要求が、記者、要するにマスコミの方に公開ということになりましたけれども、今回、この事業につきましては、私どもは、これから財政当局と協議が必要でございますけれども、3年間の共創、第1段階の意味でございますけれども、研究実践というのが3年間じゃなくて、学術知統合プロジェクトの中の考察のプロセスを体系化するという意味においては、これを3年間やるという意味でございまして、来年から早々、こういったプロジェクトを開始して、来年の中で、具体的な研究課題までお示しいただいて、その出来上がったものから順次研究実践に移っていただくと。したがって、我々としては、次の概算要求でまたそういう要求が必要なのかどうかというのは、ここで出てきた考察のプロセスでございますとか研究課題を見て考えていきたいと、こういうふうに思っております。

【城山主査】  要するに、ある意味ではこういうサイクルを3回回すということを取りあえずのスキームとしては念頭に置いているということかなと思います。
 では、小林先生。

【小林傳司委員】  川添さんの言うのはよく分かる話で、この三つのテーマがサンプルだという言い方をされて、これが本当に絶対的な大事なテーマだという議論ができてないじゃないかというのが川添さんの指摘。それはそのとおりだとは思うんですが、どこかに出発点を置かないと議論が進まないという現実もあって、それでこのプロセスで今回1年目を考えるんだといったときに、そのプロセスは、このサンプルを改変する作業ですね、別のものに変えるとか、そういうところも含めてのプロセスなのか、それとも、取りあえず仮置きのこの三つのテーマの下で研究をしていくためにどういうやり方をするかということのプロセスを考えるというフェーズに力点があるのかというところは大きな争点で、そこと、それからもう一つは時間軸ですよね。来年1年、といっても実質9月ぐらいまでにある方向性を見せていかないといけないという制約条件の中で、そのあたりをどう設計するかという問題だと思うんですが、私の感覚では、これはやっぱり本質的にはサンプルと考えておかないと、これで固定すると今決めるには、その根拠は非常にまだつらいところがあるだろうということもありますが、さりとて完全にオープンにすると、時間が足らないというジレンマを感じますが、事務局はこのあたり、このサンプルを取りあえずの仮置きで余り変えないでほしいというイメージなのかどうなのかというのは、ちょっと聞くのもきつい質問かもしれませんが、どうですか。

【城山主査】  いかがでしょうか。

【前田学術企画室長】  昨年12月のこの委員会が作られる発端となったワーキンググループの審議のまとめの中で「大きなテーマを設定し」というものがございました。そのため、この大きなテーマを設定するということを人社特別委員会でどういうテーマ設定になるのかということを御議論していただくというのがこの設置目的の一つだったかと思っております。
 従いまして、ある程度大きなテーマというものを示す、それは仮置きなのかというのはありますけれども、示した上で、研究課題、その大きなテーマから派生するアプローチというのは幾つかあろうかと思いますので、そういった研究課題は正に例として今回、飽くまでも一つの側面として書かせていただいておりますけれども、我々としては、大きな研究テーマというのは取りあえずこの三つで来年度の事業を動かしていく必要があるんじゃないかと。必要があるんじゃないかと申しますか、そういう説明を対外的にもさせていただきたいなと思っております。

【城山主査】  これ、どこまで書いているかということでもありますけれども、テーマとして意味を持っているのは太字にしている十数字ぐらいの文字だけで、それが何を意味するかというところは、相当柔軟に解釈できるし、正にそこはそれぞれ実際の中で展開していっていただきたいという、そういう理解なのかなと。
 あとの丸で書いてあるのは、これは背景説明であって、別にテーマの内容ではないわけなので、そういう意味では、かなりこれ自身、柔軟なものだろうと思いますし、今小林先生が言われたような点は、正にこの委員会としてどういうふうにこれを扱ってもらいたいかということを期待するかということなので、そこは何らかの形で書き込むことは十分できるのかなというふうには思います。

【小林傳司委員】  多分そこの理解は共有しておかないと、これから議論がうまくいかない。

【城山主査】  ええ。今の小林先生の御指摘の点は、あとは目的、手段でどんどんいくのではなくて、むしろこの目的自身をある程度再定義したり、いろいろいじってみるということも当然次のプロセスでも必要になるだろうという理解で、そこの理解について、それは違うという方がいるかどうかというあたりはちょっと確認をしておければと思います。では、小林先生。

【小林良彰委員】  別の小林ですけれども、ローマ数字のローマ数字3 のこの5行の最後の「以下のとおり提示する」。川添先生のおっしゃること、非常によく理解できますので、以下のとおり提示、例示するというふうにして、そういう意味で、(1)、(2)、(3)、これはかなり抽象的な大きな書き方ですから、これは基本的にはこれで変えないと。ただ、その後の丸が付いている部分は、共創的な場の作成プロセスの中で、これが出発点としても、多少いろんな方向が広がったり、あるいは縮小したり、変えたりということはあり得ると。
 そういう意味では、表現は例示ですが、両括弧が付いている太字は提示で、その後は例示と、そういう呼び方をすればどうでしょうかということです。

【城山主査】  ちょっとこれは本文というか、議事録に残しておくようなことかなと思いますが、飽くまでここで「提示」と言っているのは、太字になっている三つのキーターム、(1)、(2)、(3)の部分であって、丸の部分は背景事情だったり、例示ですし、キーワードは正に「例」と書いてある話なので、拘束性の高いものではないという、そういう理解で共有しておくかどうかということですね。では、盛山先生。

【盛山委員】  今の御意見について、基本的にそういうまとめ方で大変結構だと了解しているんですが、それは前回の議論でもそういうニュアンスだったと思うんですね。私が申し上げたいのは、それとは別ですが、川添先生の問題提起の中にもう一つあって、それはマル1からマル4の設定では、やはり考察のプロセスというのが前面に出過ぎている。たしかに、当面の課題としてはそれが中心になるのですが、それが前面に出過ぎているが故に、小林先生が最初におっしゃった、学術的な課題、人文学と社会科学がいわばブレークスルーしなければいけない課題というものが必ずしも前面に見えていないのではないかということです。それは多分マル4のところに書かれているつもりなんでしょうが、非常に文章も少ないし、弱いんですね。今書かれているのは、マル4のところでは、人文学・社会科学の学術の「具体の研究実践を行う」というだけになっていて、これがあたかも克服すべき社会的課題を解決しますよという書き方になっているわけです。だから、本当はマル5でも作ってもいいし、マル4を拡充してもいいんですけれども、これ、目的ですからね。目的というのは、研究実践を行うということの中には、人文学・社会科学の一層の発展といいますか、今の状態を乗り越える課題の遂行というのが目的の中に明示的に書かれている必要があるのではないかなと思いました。

【城山主査】  ちょっと確認ですが、個々の研究実践をする段階では当然両方かかってきますというのは今まで議論した点で、恐らく考察のプロセス自身も、別に社会課題に対応するためのプロセスを考察するというだけではなくて、そこの中を通して人文・社会科学の在り方自身をリフレクションするということもこのプロセスの中に入り得るということを明示した方がいいという、そういうことになりますかね。

【盛山委員】  できれば両方にあった方がいいと思います。構成は、さっきおっしゃったように、二段構えですから、特に今回の文章は主に第一段にある意味で焦点が当たっているわけですよね。特にポンチ絵の部分というのは、どういう構造を作るか、これは考察のプロセスを体系化するという話だと思うんですが、しかし、そこで実際に研究課題を遂行してもらう中で、人文学・社会科学の具体的な学術レベルの発展というのが先に見据えられていないといけない。それが、マル1からマル4までの目的と書かれている中の書き方の中ではちょっと文章として弱い。

【城山主査】  そういう意味だと、私ちょっと先ほど申し上げましたけれども、マル1に書いた方がいいのかなという気もするんですね。未来社会の構想に能動的に参画するという、ある種手段だという側面もあるとすると、参加するとともに、人文・社会科学の在り方について考えるというのも目的だという、両方が目的だというふうにしてもいいのではないかという。この点、事務局の方、いかがでしょうか。

【前田学術企画室長】  今先生方から御指摘いただきましたとおり、少し社会課題を見据えるでございますとか、目的でございますので、研究実践を行ったことに何を明示させているのかということが足りないということでございますので、また直して、それから御相談させていただければと思います。

【城山主査】  はい。じゃあ、そこはそのような形で。では、山本先生。

【山本委員】  私の方から、ちょっと分かりにくいなというので、委員の皆さんからもサジェスチョンいただければと思うんですが、ローマ数字3 のテーマについてです。大きな(1)、(2)、(3)で大きなテーマを出して、その中のキーワード例がサンプルだというふうに伺いました。ただ、キーワードを見比べてみると、ますます感じるんですけれども、1と2と3がある意味つながっているといいますか、大きな社会を考えるいろいろなキーワードという意味で言えば全部一緒であって、人文・社会科学というのはそういうものなんだとは思います。けれども、1と2と3、それぞれ違う項目で考えましょうという形で出されたときに、これ、どういうふうに1、2、3、分けて考えるんだろうとちょっと迷うなということが私の悩みといいますか、一つ投げかけます。
 それから、厳しい意見が多い中で、少し前向きにと、発言、一ついたします。題名が「共創型」という余りに大きなイメージよりも、今回の「人文学・社会科学を軸とした学術知統合プロジェクト」というのはいいなというふうに感じました。どちらかというと、目的の方で先ほどから出ている新しい学術を興していくんだという面と、社会につながるところの社会貢献みたいなところを果たす、二つあると思うんですけれども、その両方を盛り込んでいくんだけれども、特に、放っておくと学術知の方が忘れ去られるといいますか、社会ニーズとしてはちょっと後ろになってしまうので、むしろ事業名として前に出すというのはいいのかなと、そんなふうに思いました。これは感想です。

【城山主査】  では、どうぞ須藤先生。

【須藤委員】  私も山本さんと同じことを言おうかなとずっと考えていたんですけれども、三つの大きなテーマというのが書いてあるので、私、最初に聞いたとき、これ、取りあえず置いてあるのかなと思ったんですけれども、この三つで動くとなると、ちょっとレベルが違うことが入っているような気がするんですよね。1とか2というのは確かにここで議論したことなんですけれども、3というのは、その他全部ここにまとめちゃおうというようなふうにもとれますし、1と2も3に入るんじゃないかといかいうような見方もできてしまうので、もしこれを本当に生かして進めるんだったら、もうちょっと分かりやすくしておかないと、この先、いろいろ動いていくときに、いろんな人が迷っちゃうんじゃないかなという気がしました。
 もう1点、山本さんじゃないんですけれども、前向きな捉え方をすると、実は今まで技術系とか企業が入って、いろんな社会課題を想定して、解決の手段というのをいろんなところでいろんな議論をしてきているんですけれども、やっぱり今、前にも言いましたけれども、議論が行き詰まってきていると。それはやっぱり技術屋さんの大学と企業と自治体とベンチャーと金融、金融は技術屋じゃないですが、その辺が一つのエコシステムを組んでいろんな解決を考えてきているから、結局はどこかで行き詰まってしまうんじゃないか。そこにやっぱり人の目線、市民の目線とか、あるいは子供の目線とか、いろいろなものを余り今まで入れてこなかったので、今、我々、いろいろなところで議論しているのは、そういう目を入れないと、今のスーパーシティとかいうやり方ではまずいんじゃないかという議論を盛んにしているんですよね。
 そうすると、これが、目的が二つあると言いましたけど、一つの目的の社会課題の解決の方に対してものすごく我々が期待しているところに一致するのじゃないかなというので、目的が二つ、どっちをやるかという議論は、私はもちろん両方あってもいいと思うんですけれども、その一つの方、社会課題の解決という意味ではものすごく期待するところがあるというふうに考えています。

【城山主査】  若干の整理ですが、お二人にポジティブに言っていただいた面というのは、社会課題の解決と学術知という、両方見ているんだけれども、タイトルはむしろ学術知の方もあり、ある種バランスもとれていて、それはそれでいいのではないかということと、今の須藤委員の言われたことも、仮に社会課題を解決することに寄与するとしても、短期的なことというよりは、むしろ本質的なことを、根本的なことを考えてフィードバックするということが、大事という趣旨かと。

【須藤委員】  そこからやらないと。

【城山主査】  むしろ社会課題の解決に寄与するので、その二つの目的というのは必ずしも、矛盾するというよりかは、むしろ相補う側面があるのではないかという、そういう趣旨ということでしょうかね。というあたりで、大きなローマ数字のローマ数字2 あたりぐらいのところまでは比較的そういう理解をさせていただいて、もう一つの今のお二人から頂いた論点は、むしろローマ数字のローマ数字3 の具体的な在り方で、このテーマの相互の関係とか、特に(3)は若干レベル感が違うんじゃないかというお話なので、ちょっとそのあたりに少し議論を移させていただければと思いますが、今のお二人の御意見を受けていかがでしょうか。では、勝先生。

【勝委員】  今言われた3のところの三つのテーマということで、(3)が少し違うのではないかというような意見もあったわけですけれども、それとの関係でコメントすると、実は日本史の問題を作っていて、山川の教科書をちょっと読み直していたんですけれども、戦後の経済発展で何が一番大きく寄与したかというところで、やはりその当時の人文・社会の振興というのが戦後の日本を形作る上で非常に重要だという記述があって、例えば大塚久雄であるとか、丸山眞男であるとか、そういう新たな学術知というもの、それも大きなパラダイム変換の時代においてそれが非常に大きな役割を持っているんだということ、そこを強調すべきなのかなと。
 やはり今の時代というのは、戦後のポスト冷戦が更にまた終わって、混沌とした時代になっていく中で、やはり日本が中心となって新たな学術知というものを提示していくということが非常に重要であるのではないか。そういったことから考えると、この3というのは、価値の創造という意味では非常に大きなテーマなのではないかなと。これに関連するキーワードが余り当てはまらないというか、キーワードを見ても、余りよく分からないものが羅列されているので、この辺は考えるべきではないかなと思いますし、これから新たにそれを実現する中で、やはりテーマのブラッシュアップというのはもちろん必要になってくるんだろうと思うんですけれども、その意味では、1というのは、むしろここはやはり理系というか、技術的なものが入る余地があるものであるし、2番というもの、これは政治学的なものが非常に大きいのかもしれないんですけれども、3番としては、やはりシステム、これからの世界のシステムはどうなっていくかということを考える上では非常に重要なテーマなのではないかなと思います。特に新たなシステムの構築ということ、倫理学であるとか、あるいは経済学であるとか、そういったものを全て統合したような、そういった新たな学術知というべきものを日本から出していくという意味では非常に重要なのではないかと思います。
 それが1点と、それから、先ほどの議論のところで、マル1からマル4のところの記述なんですけれども、議論になっていたような「考察のプロセスを体系化する」というのがやはり非常に分かりにくい書き方になっているのかなと思うので、先ほど小林先生が言われたように、これをぱっと見た上では、二つの目的というのが余りはっきり見えてこないので、それが浮き立つような形で書くということも必要なのではないかと思います。

【城山主査】  後者の方は、先ほどそういう形で事務局の方で対応していただくということになりましたので。今、(3)のところも一定の位置付けができるのではないかと、そういうお話だったかと思います。いかがでしょうか。

【小林良彰委員】  ローマ数字3 に入る前に1点だけ、ローマ数字2 の方を言うと、コンセプトとしては、共創の場による人文・社会科学の学術知の創造ぐらいの感じで、マル1からマル4までありますけれども、無理にどこか入れるよりも、今のものを一番頭に入れて、マル1からマル4をマル2からマル5にしていただければ、よりクリアになるかなと。

【城山主査】  タイトルをマル1として入れるということですね。

【小林良彰委員】  そういうことですね。それから、ローマ数字3 の方にいきますと、先生のおっしゃるとおり、これ、一つでいいのではないかというのも、正におっしゃるとおりだと思います。ただ、実際に研究をやるといったときに、全部まとめて一つからやると言われても、3年1ラウンドではなかなかそこまでの成果は多分出てこないと思います。
 だから、仮に三つに分かれるとしたら、その三つの間の更なる共創の場、メタな共創の場というのは当然必要だと思うのですけれども、やはり取っかかりとしてはどこかから始めなくてはいけなくて、富士山があるとして、その頂上を目指すのに、山梨から登るか、静岡から登るか、あるいは神奈川から登るかと、それぐらいなことだと思います。
 私は前回休んでいるので、誤解があるかもしれない。パッと見たところ、事務局としては、(1)は、何となく人口問題とか、場合によっては経済学とか、経営学とかですね。人口が減っているのは日本だけではないのです。東アジアは、みんな減っているのです。中国も韓国も台湾も。マーケットが減るので、彼らは全部外へマーケットを求めていくわけです。だから、人口が増えているところのマーケット競争というのが出てくると思うのです。何となくアジアの国際的な産業連関みたいな話も。だから、何となく事務局のイメージとしては、経済学部、経営学部的なところを想定しているのかなと。
 2のところは、どちらかというと社会学とか、法学とか、政治学とか、社会学を含めた法学部的なところなのかなと。
 3のところは、多分これはもう少し議論を煮詰める必要は当然出てくると思います。これは何となく人文学、少し文学部的なところで、それぞれが持っている今やれる学術知では、考えてみると、やはりどこかで限界があって、できなくて、それを超えるところで、両先生がおっしゃるとおり、一つにまとまっていくというところが出てくるということを期待しているということですから、3年と考えると、どこか足場がないとスタートができないので、足場に固執することなく、足場を作り直すことを含めて、こういう形でやっていくというのは一つの考えとしてはあるのではないかなと思います。

【城山主査】  ほかいかがでしょうか。では、喜連川先生。

【喜連川委員】  ちょっと遅参いたしまして、失礼いたします。人文社会の知というお話と課題解決という御議論があったんですけれども、ちょっと理系的発想では、異文化コミュニケーションかもしれないんですけれども、理系では比較的ごくごく自然にやっておりまして、つまり、受けを狙うという表現は適切でないかもしれませんが、御理解していただきやすいようにプロジェクトは書くと。だけど、当然その中では自分たちの知を磨くというのはお作法になっています。よく分からないんですけれども、これから概算要求のプロセスを経ていくんだと理解しているんですけれども、今後、省内、この後財務省とずっとやっていく中で、私ども理系がやりますのは、理系全部を代表しているわけじゃないのでちょっと誤解があるといけませんけれども、いかに財務省協議の中で理解が得られやすいような表現を作るかというのがほぼ全てになってきています。
 これは多分それほど大きな規模ではないとは思うんですけれども、そういう思考回路は大人としてはやらざるを得ないのが普通ではないかなと思いますので、自分たちの知を新しいステージに上げるというのは、それは当然やるというのがいいんじゃないのかなと。
 それから、私も、この三つは、大きなテーマがよく分からないんですけれども、これはどなたがお作りになったことになっているんですかね、この三つの文章は。

【城山主査】  そこから行きますかね。では、事務局の方から。

【前田学術企画室長】  一つ目の「将来人口動態を見据えた社会・人間の在り方」。まず、30年から50年先の長期的視座というのは、社会をデザインするに当たって何年かという御議論の中で、30年から50年ぐらいじゃないかという御発言がございましたね。

【喜連川委員】  ああ、そうですね。僕が言いました。

【前田学術企画室長】  そもそもデザインするとは何かということについては、小長谷先生から100年後の日本をデザインするという資料を頂いていましたので、そういうことをまず前提に置きましょうという趣旨でございます。

【喜連川委員】  だから、いろいろなここでの議論を踏まえてこういうものが出てきたということですね。

【城山主査】  そうですね。

【喜連川委員】  私、先ほど小林先生がおっしゃったことがほぼ全てだなと思っていまして、これも理系的発想で、要するに、やらなきゃいけないことという丸を、ベン図を書いて、やれることというベン図を書いて、そこの真ん中をどうやって作るかというのが通常のプロジェクトのフォーメーションのプロセスなんですけれども、もう一段前のプロセスを丁寧にやって、それでこうしましょうかという、何か先に結論が出ちゃっているところから議論するというのが少し分かりづらくなっているんじゃないのかなというのが正直なところです。
 全然コンテキストが違うんですけれども、昨日、横浜のTICADのユネスコに行かせていただいて、いろいろ議論をお伺いしますと、ああ、なるほどなというか、やっぱり全然彼らが考えている社会観と我々の目線とは相当違うものがあるなというようなことは痛切に感じたりするんですね。
 だから、こういう意味の分断社会の超克という、分断されているとは思っておられないとは思うんですけれども、やっぱりいろんな視点の方々から問題提起をしていただきながら、それをどうやっていくかというのが、考えるというプロセスは、これは私も川添先生と同じで、単なるサンプルなんですけれども、そこをうまくデザインしながら、しかも政府に理解していただけるようなものにするというのが、これ全てなので、パッと出てきちゃっているところに若干違和感があるんじゃないかなという気がします。
 以上です。

【城山主査】  正にこれを詰めることがこの委員会の期待されていた話で、私の理解する限りだと、前回、2回目の議論をする前に先生方にいろいろ個別に出していただいたのがあって、そこでデザインだとか2050とかいうのがあって、個別のいろんなアイデアの中には、何人かの方が分断社会に関わるような話を書かれていたというのもあるんだと思うんですね。それと前回の議論を踏まえてこういうふうな形で出されてきたと。
 確かに三つ目のところは、小林先生が言われたように、人文ベースで何ができるかみたいな話と若干その他諸々というところが入っているところがあって、そこはなかなかトレースしづらいというところはあるんですが、ここを正にどうやるかというのは、ここに期待されていた話ではあるので。若干、もう少し丁寧に設計するべきだというのは、おっしゃるとおりの部分はあるのかなという気は確かにいたします。

【小林良彰委員】  ちょっと一言。一方、予算の策定スケジュールがございますので、概算要求ということを考えると、何もなくてはできませんから、それでは、これは2021年度からという話になってしまうので、事務局としては、来年度からこれをスタートさせたいというと、ある程度のものはできておかないと、折衝、概算要求には入らないということになると、それはこういうものは、いろいろな議論の中を事務局は吸収して、咀嚼して、できているということも、予算スケジュールから言えば、これは理解できることではないかなと。ただ、この後、中身はまだ議論の余地はあるという理解でよろしいのではないでしょうか。

【城山主査】  はい。では、川添先生。

【川添委員】  どう言ったらいいのかな。この三つの具体的な大きなテーマと言われるものについて、僕は余りまじめに考えてこなかったんですけれども、つまり、もっとそれがどういう位置付けのテーマなのかと、先ほどサンプルという言葉を使いましたけれども、そういう位置付けで理解するかどうかの方がずっと重要だと思っていますけれども、そういう角度から見ると、この三つは、少なくとも表現上は、いかにも人社系的。つまり、全然何か新しい学術知をそこから生み出すようなテーマになっていないと思います。
 3番目は特にそうで、このテーマで手を挙げてくださいと言ったときに、なかなか。もっと例えば人間が取り囲んでいる環境という、広い意味での環境の中には、物理的な環境というのは大きいわけですから、あるいは、人工的な環境というのはですね。だから、人間が生きていく上でのそういう人工的な環境をどう考えるかといった問題、あるいは自分が作り出した人工的な環境をどう考えるかという問題は、作り出す側の理工系的な発想とどうつなげるかという、そういうテーマを挙げておかないと、全然新鮮みがないです、この三つは。伝統的な人文・社会の問題であってね。僕のさっきから言っていることは、この三つを考えること自身をテーマにすべきですよね、本当は。

【城山主査】  そこは正にもう一人の小林先生が言われたように、これはきっかけであって。

【川添委員】  でも、それを出すんでしょう。出さなきゃ駄目だと言っているんでしょう。

【城山主査】  出さなきゃいけないし、ただ、一応そこは、正にこの後のローマ数字4 のところの話とも絡んでくるんですけれども、正に理系の観点からこういうことに関してもどう問題提起できるかとか、どういうことを考えてほしいかということ、インプットを得る必要は正にあるわけなんです。それもあるので、幾つか技術系のキータームを入れているというところがあって、例えば分断社会の話も、正に喜連川先生の話じゃないですけれども、情報科学技術みたいな話を入れていて、情報科学技術の中で似た人としかしゃべらなくなるみたいな話から見るとか、人口のところは、人工知能とか、ロボットとか、人以外のそういうものが物理的環境条件に入ってくることをどう考えるかとか、価値の話は、生命技術の話。ただ、そこは正に練られたものでないことは確かですけれども、このメッセージは、そういうことも含めて次のプロセスでは議論していただきたいということなんだろうと思うんですね。だから、そこをもうちょっと今の段階でできることとして膨らませるとすると、何があり得るかですね。ちょっとそのあたりはむしろいろいろお知恵を頂きたいなと思います。

【小林傳司委員】  三つ並べてある前のところの文章がちょっと薄いんですよね。

【城山主査】  そうですね。

【小林傳司委員】  だから、ここでなぜこの三つが、取りあえず仮置きであれ、出したのかということの説明が弱いんですよ。やっぱりある程度現状認識として、取りあえずこういう切り口を置いて、そして新しい学術の在り方に向けて検討するみたいな文章がないと、ポンと三つ出てくるというだけではちょっと寂しいというのがまずあって、ここをどう書くかというのが一つのポイント。
 それから、最初からちょっと気になっていたのは、タイトルを変えましたよね。「学術知統合プロジェクト」となりましたよね。でも、この言葉の説明がないんですよね。「共創」という言葉であったのが全部残っていて、しかし、タイトルだけ「学術知統合」となっているんですよね。これ、統合って何を意味するのかがよく分からなくて、例えば人文と社会科学と自然科学という、そういう解像度の粗いレベルの言葉遣いで何かが統合されるなんていうことを本当に考えるのか。やっぱり歴史的来歴があって、こういった分類にはそれなりの理由があるので、統合という言葉をちょっとイージーに使い過ぎているようにも見えてしまうんですね。しかも、中には何の説明もないので、ちょっとここはもう少し何か工夫をしないと、タイトルと中身の関係がよく分からない、逆に。という気がする。
 そういう意味では、そういうことも踏まえて、目的か、それとも三つの例示のところの頭のところで文章を作らないと、パッと読んだ人が何をやろうとしているかが分かりにくいような気がします。

【城山主査】  また前半に戻っちゃうというところもあるんですが、若干それを避けるとすると、今おっしゃった、ローマ数字のローマ数字3 のところの説明で、社会的な課題であると同時に、かつ、学術知の統合とか、いろんな要素を組み合わせるものを考えるに値する課題としてまずここから入ってみますみたいな、何かそういう文章を入れるということでしょうかね。それが、どこかで聞かれたときには、統合というのは例えばこういうことを意味しているんですというふうに答えられるようになるという。

【小林傳司委員】  最後にね。

【城山主査】  はい。じゃあ、ちょっとそこ、よろしいですかね。そこの文章を工夫していただくと。では、小長谷先生。

【小長谷委員】  テーマについてですけれども、それが川添先生のおっしゃるように、見慣れたテーマですというのは確かですけれども、じゃあ、これに対して我々がいい研究を進められているかというと、やっぱりそれぞれの研究はもうちょっと個別になっていると思います。こんな大きなタイトルのまま科研に出したら通らないですね、大風呂敷ということで。やっぱり大きくくくって、研究のやり方自体を変えた形で、科研の通常のシステムではない形で取り組んでいくということに価値があるので、そういう意味では、見慣れたテーマという1番と2番というのはあってもいいと思います。
 それに対して3番目というのは、見慣れたテーマというよりも、何を指しているか分からないテーマになっているわけですけれど、それはありていに言えば、その他、人文系も是非取り組んでもらいたいというようなことが込められているテーマじゃないかと思います。1番と2番は、どうしても社会科学系なので。だから、人文系の人が入ってもらうような形にするようなメッセージをここへもう少し入れた方がいいのではないかと思います。
 先生がおっしゃった、人間的な環境ということを中心に言うなら、例えばアントロポセンというようなキーワードを入れるとかして、それは地質学で提供された、理系の学者から提示された概念ですけれども、やっぱりそれを研究していくのは人文系が取り組まなくちゃいけないから、橋渡しになるキーワードとしてそういうものを入れといたらいかがかなと思います。

【城山主査】  今の位置付けですが、多分前半の正面から大風呂敷なテーマを設定するという話は、ある意味ではさっきの統合の話とも絡んでくるわけですよね。重要なテーマで、正に関わってくる範囲を正面からつなげていくような大きな骨太のものを作りますというのを書くということで、正に先ほどのまえがきに書く話と絡んできて、それで1と2の話はかなり説明ができますと。
 あとは、むしろ、今おっしゃったのは、(3)のところの表現を変えた方がいいというお話で、少なくとも前半の新たな世界秩序というと、何か国際政治みたいになっちゃう。それよりは、アントロポセン、そういう新しい環境条件みたいな話の言葉にした方がいいのではないかという、そういう工夫ですかね。
 では、盛山先生。

【盛山委員】  今の問題ですけど、(3)はものすごい重要なテーマとして提示されていると思うんですよ。正にさっきから問題になっているように、人文学系といいますか、哲学とか倫理学とかが扱うべき課題をここでやりますよということなので。第1回のときに小林良彰先生からロールズの話が出ていましたけど、つまり、そういうことも含めたことを日本の人文学・社会科学の研究者は本当にやるんだということを設定する場所として設けたい。
 ただ、今の書き方が、確かにちょっと弱いのは事実なんです。だから、世界秩序というよりは、むしろ本当は課題になっているのはどちらかというと科学技術の発達とか、生命倫理とか、環境問題とかから来る問題提起の方が強いわけで、そちらの方から出てきた新しい価値の創造というテーマだということがもう少し明確になるように。そこで、人文学を中心として、やはり我々が頑張らなければいけないんだということが伝わってくるような書き方にしたらいいかなと思います。
 ついでに一つだけ細かい技術的なことで確認したいんですが、(2)の中に、これが本当かどうか私は気になったんですが、2番目の丸の「例えば」の2行目の最後に、アメリカの住民投票に見られるように云々という例が載っているんですが、私の最近の記憶にはないので、いつの事実を指しているのかだけを確認していただいておいた方が安全かなと思います。

【城山主査】  後者は後で事務局に確認していただくということかと思います。ただ、ポイントは、(3)のところの表現で、価値の話が大事だということは皆さん共有しているので、修飾語をどうするかという、小長谷先生の案もありましたが、何かあったら是非頂きたいというのと、一つ目の丸を今の御趣旨だと変えた方がいいという感じでしょうか。

【盛山委員】  丸を付け加えて。

【城山主査】  でもいいかもしれないですし。ここにも一応科学技術だとか気候変動みたいな話は入っていますが、もうちょっとより幅広い環境問題とか。ここ、国家像、人間社会の価値で、両方入っていますけれども、まあまあ、これはこれでいいのかもしれないですね。

【小林傳司委員】  3についてなんですけれども、これ、人新世みたいな議論は当然あると思いますし、19世紀からの巨大な科学技術というものを人文・社会科学的な研究対象にするということ自体は大変重要なわけですね。つまり、科学技術という現象そのものが人類史上すごく大きな営みなわけです。だから、例えば人工物環境が決定的に広がってしまっているとか、それが人新世という言い方で歴史区分にまで入れようかというわけですから、その営みそのものが人文・社会科学の対象になるという観点は当然必要で、そこから様々な環境問題とかも全部出てくるわけです。
 それは一つ目の丸の方ですが、もう一つの方の丸は、これは実は日本でしかできないことなので、つまり、日本の人文・社会科学をセルフリフレクティブに考えるということをやらなくてよろしいかという問いかけを私は言ったつもりなんですね。やっぱりヨーロッパの人たちが、自分たちの人文・社会科学を自分たちが生み出して自分たちが発展させたと素直に言えるのに対して、日本は、じゃ、何なんだということは、やはり反省的に考えるべき部分があって、それが非西洋国であるという言い方になっているわけですが、これは西洋以外の国にとっては共通の普遍的な課題のはずなんです、むしろ、面積的には。
 そういう意味では、人文・社会科学がそれぞれの地域の社会から離れられない形で考察がされるときに、西洋的な人文・社会科学の理論モデルだけでやるというのはどこか限界があるという議論を正面から本当に引き受ける覚悟があるのかどうか。だからといって、日本型人文・社会科学という、そういう懐かしい議論をしようと言っているわけではない。ただ、日本でやることの意味を考えるという、そういうことはやっぱり必要ではないかと。これはJICAなんかも最近そういうふうな議論のプログラムを作ったりもしていますし、JICAでアジアの官僚たちが日本にやってきて、そういうところの教育プログラムで話したこともありますが、やはり彼らが日本を見ている目というのは、西洋を見るときとは違った見方をしています。それに対して応えるような考え方をもっときちっと出してもいいのではないかという、私はそういう問題意識があります。

【城山主査】  ありがとうございました。先ほどどなたかの意見にもありましたが、一つ目の丸は二つに分けた方がいいのかなと。科学技術の19世紀以来の発展、人工物環境に対してどう向き合うかという話と、それから、人新世、アントロポセンという、そういう新しい環境条件の中でどういうふうに人間を考えるのかみたいな話が二つ目であって、三つ目に日本の話を入れておくと。正に小林先生が言われたように、日本における人文・社会の在り方、正面でそれだけ考えるのは結構つらいので、グローバルな上二つを考えるときに、ちゃんと日本という立場を踏まえたものの出し方はできませんかということを期待しつつ、三つ目の丸があるんだという、そういうような位置付けで、ほかも結果的に三つ丸ありますから、ここも三つ丸にしといた方がいいかなと、そういう感じでしょうかね、そうしますと。
 では、山本先生。

【山本委員】  今、どういう内容か伝えるところに地の文としての丸を増やしたりという説明をされていると思います。それに加えて、キーワードのところを、キーワードではなくて、もう少し、一つの案件について1行説明ぐらいにした方がよく伝わるんじゃないかなと思いました。このままのキーワードだと、何となく知っている、見たことあるキーワードばっかりですけれども、例えば車の自動運転によって生じる事故の法的解釈や運転者の心理的何とかの課題についてみたいな文章にすると、あっ、そういうことというのは確かに今までの自然科学だけじゃない問題だよなということが分かるかなと思います。
 アントロポセンのお話についても、余り専門外だと親しい言葉ではないので、それは地質学と環境条件についての何とかについてというようなことを書いた形にすると、なるほど、地の文でこういうふうに言っていたのはこういうふうな具体的な発想で考えようということなんだなと伝わりやすくなるかなと思いました。

【城山主査】  ありがとうございました。2番目の説明がちゃんと必要だというのはそのとおりかと思います。前半のキーワードはどうですか、余り説明にしちゃうと頭を拘束しちゃうところもあって、むしろキーワード同士をどうやってつなげるかのところに頭を使ってほしいとか、ここにあるキーワードと別のキーワードをつなげたら実はこんな大事なことがあるんだよということを刺激したい側面もあるので、余り書き過ぎない方がいいのかなとも思います。ただし他方、さっきの概念の説明と一緒で、もうちょっと説明をしないとこのキーワードが何を意味しているか自体が分からないようなものもあるので、そういうのは正に説明した方がいいのかなという感じもしますけど。では、どうぞ。

【井野瀬委員】  ようやく分かってきましたといいますか。すいません、2回の委員会ともに休んでしまい、私の授業となぜいつもこの会議は重なるのだろうと思っていました。すいません、皆さんの議論を聞いていて、ようやく何がこれまで議論され、この案が出てきたのかが少しずつ分かってきました。多少説明は聞いておりますが、それでも、議論のプロセスを含めて、どういうことが議論されてこれが出てきたかを初めて出席した私が分からないと、研究者のコミュニティというか、これにアプライする学者たちも理解できないと思うのです。研究者が首をかしげるようなこと、それだけは避けるべきだと思います。ですから、言葉を補う云々ことも必要ですね。
 それから、先ほど小長谷さんも少し触れられましたが、科研費とは違う、ある意味テーマを発注する、委託するというか、「やってみない?」という形で投げかけることは、理工系や医学系ではよくあると思うのですが、人社系だと、「余り上から言われたくない」という気持ちに配慮して、今まではむしろ避けられてきたものだと思います。その「やってみない?」がないから、人社系は細分化されてタコツボ化し、未来が見づらくなってきた側面もあると思われるので、「大風呂敷な」委託研究のメリットを生かせればと思います。ただ、「大風呂敷」から自分の研究との関わりを想像させるための仕組みが、川添先生がおっしゃったように、今の提案では新鮮みがなく陳腐に見える。
小林先生が、一つ目の柱は経済、経営、二つ目が法学や政治かとおっしゃったけれども、全てに通底しているのは多分歴史学でしょう。実際、私は明日から二つ目のテーマの歴史学系国際会議に出ます。ほかにも、例えば心理学をやっている人たちがこうしたテーマから何を想像したらいいのかも、今のままではよく見えてこない。だから、研究者たちが見て、「ああ、なるほど、自分がこういう形で関与できるかもしれない」と想像させるようなキーワードが必要です。山本さんがおっしゃった事業説明というのもあるかもしれませんが、事業説明は応募内容を縛ってしまうと私も思います。キーワードの中に、各分野からの知恵を持ち寄れるような言葉があればと思います。小長谷さんが言った人新世もそうですけれども、そういったものを少しずつ入れて、もう少し研究者たちに「これやってみない?」の内容を見やすくする。トップダウンという言葉を使うと抵抗がある人が多いかもしれませんが、良質の、「これやってみない?」と投げかける言葉の品性が欲しい。品性って大事。言葉の品性を保ちながら、広く研究者が自らの関与を想像できる言葉が必要だと思います。
それで言えば、先ほど小林さんが言われたので、ようやく、三つ目の柱の意味が、日本の学術知の発信、例えば、ヨーロッパ近代のいう普遍性、フランス人権宣言がいう普遍性ではないものを模索することなのかと、少し理解しやすくなりましたが、だったら「日本らしさ」という言葉はおかしい。自分が関わることができるというイマジネーションを喚起し、なおかつ、新たなクリエイティビティが見えるような、そういう立て付けにした提案をしないといけないことが分かってきました。

【城山主査】  多分実質的な意味とすると、大きな三つの項目から入りますが、キーワードも大事だということで、キーワードがいろいろな人たちにアピールするようなものとして位置付ける必要があるので、今日多分これを議論し尽くすことは不可能なのですが、それで皆さんの領域で、どういうキーワードを入れるとこういうそれぞれの三つの例示の分野にいろんな人たちを巻き込めるかって、是非考えていただいて、最終文書を固めるには、まだもう1回この委員会もやりますので、そこは事務局とやりとりをしていただくという感じでよろしいですかね。

【前田学術企画室長】  はい。是非具体的な言葉を頂ければと思います。今の御議論も、全然学術知を生み出せないとか、分かりにくいというお話を頂きましたけれども、是非それは先生方の方から、具体的なワードとしていただければ、私の方でもそれを先生方の御理解に添うように構成したいと思いますので。個別と申しますか、御意見を賜れるような形でまた御連絡差し上げたいと思います。

【井野瀬委員】  あと一言だけ。30年から50年先を見通すという点で、この3つの柱の提案は次代を育てることとセットになっていますよね。30年から50年先をにらむ。その未来にフィットしてくる言葉というのは、この場に学術会議若手アカデミーのメンバーが二人いますが、彼らにとって学術的に親しみある言葉というのは、私たちに親しみがある、想像しやすい言葉とは多少違う側面もあるように思います。ですので、そういう差を含めて、若手からの声をたくさん反映していただければと思います。

【城山主査】  ということでよろしくお願いします。では、新福先生。

【新福委員】  ありがとうございます。若手としてというのもありますが、私、この事業を見ていたときに、私自身は共創という言葉はすごく好きで、特に産業界ですとか、NGOとか、いろんな多様なステークホルダーを含むというところも、マル2の目的の中に入っていますが、すごく重要な要素だと思って見ていました。
 今回、まず、テーマが「学術知統合プロジェクト」というふうに変わったときに、民間だとか市民を巻き込んでもよいという部分が薄れてしまったかなというのがまず一つ思ったことと、実際、(1)、(2)、(3)のテーマの中で、じゃあ、どこで市民ですとかほかの方、学者以外の方が入ってこられるのかなというふうに思うと、(2)の分断社会の中のトピックの中で一般市民の方も入ってくるというテーマが幾つかあるのかなというのがちょっとは考えられるんですけれども、今、若手アカデミーの方では、シチズンサイエンスという、一般市民の方が、対象として見るだけではなくて、研究プロセスの中に入ってくるというような科学の在り方、知識を共創するというところをもっともっと推進していきたいと考えていますので、そうしたものももう少し、ここについてだったらシチズンサイエンスできるなというふうに見えやすいと、新しいアプローチができる研究費なんだなというのが見えてくると思うので、そこは入れていきたいなと思いました。

【城山主査】  ありがとうございました。一応マル2の話は残っているので、そこをどう具体的に強調するかということで、これはむしろ後の実施体制のところと絡むんですが、要するに、共創の場の参加を公募するとなったときに、誰がどういう形で提案を出すのか。こういう研究をしたいというのもあり得るし、普通のサイエンスだと自分で研究したいというところもあるんだと思いますが、あるいは、こういう研究をしてほしいでもいいんだと思うんですね。だから、いろんな提案のタイプがあり得て、いわゆる研究プロジェクトを提案するというだけではないですよというところを、具体的にどう仕組みを作って、どう伝えるかというあたりが大きいのかなと思いますので、そういうところで取り入れさせていただくといいのかなと思いました。では、小林先生。

【小林良彰委員】  そろそろローマ数字ローマ数字4 に行くと思うので、その前に2点だけ。1点は、学術知統合というのは、前回のこの委員会で合意された言葉ということだそうで、ちょっと欠席したので分からない。個人的には抵抗はないのですけれども、学術知統合と言われると、価値観の統合を目指しているというふうに受け止められると、かなり強い反発、反対をしてくる方が人社にはいらっしゃる気もします。統合でなければいけないのか、あるいは、学術知創造ではいけないのかです。(3)のテーマが価値の創造になっていますから。創造と言うと、今までのものを超えて何か新しいものを作ると。融合だと、ちょっと古臭いイメージなので、統合だとやっぱりちょっと一つの価値観。だから、シャンタル・ムフなんか絶対反対してくると思うので。そうすると、創造ぐらいが、曖昧で、かつ反対が少ないかなという気はしました。

【城山主査】  事務局、いかがですか。

【前田学術企画室長】  前回、共創型プロジェクトというタイトルでございましたけれども、共創型という意味が分かりにくいという御指摘がございました。それで、そもそも共創という定義自体が、この委員会を作る基になったワーキンググループの報告書にもどこにもないものですから、御議論を踏まえて、私の方で学術知統合、要するに、価値観を同じにするという、そういう趣旨でお示ししたわけじゃないんですけれども、正に学術知を、研究者の方々、人社と自然科学の研究者の方々が議論して研究課題を作っていくという意味においての学術知が集まって新しいものが生み出されると、そういうニュアンスで書いておるつもりでございますので、「統合」という表現にするのか、あるいは「学術を創造する」というのか、それは先生方の御議論でお願いしたいと思います。

【城山主査】  何かこうやっていると「創造」がいいかなという感じもしますけれども、どうですか、何か御議論ありますか。

【盛山委員】  今思いつきですが、学術知共創でいいんじゃないですか?学術知共創プロジェクト。

【前田学術企画室長】  共創というのはどういう意味だというのが。

【盛山委員】  共に創っていく。

【前田学術企画室長】  共に創るということですね。

【盛山委員】  だから、市民の方も入れたり、いろんな分野の方を入れたり。

【城山主査】  要するに、前回の議論が分かりにくいというのは、共創と言ったときには、分野間の話もあるし、理系と文系の話もあるし、社会との共創もあって、どこなんですかという話だったと。そういう意味でいうと、最終的には学術知を一緒に創るという一般での共創ですと。だけれども、そこから社会からのインプットはもちろんあり得るという。一応学術知というものが共創のターゲットだと分かれば、それはそれで一定程度明確になるという言い方はできるんだと思うんですね。小林先生、いかがですか。

【小林良彰委員】  「統合」は避けておいた方が無難かなという気がします。

【城山主査】  確かに強いですね。

【小林傳司委員】  マル3のところでも、「従来の学術評価だけではない新たな評価の在り方について検討する」というようなところまで書いているわけですから、やっぱり「統合」というよりは「共創」の感覚を残した方が我々が最初考えたイメージに近いんじゃないですかね。

【城山主査】  じゃあ、そうすると、学術知共創ぐらいにしておきますか、取りあえず現段階では。
 どうもありがとうございました。そうしましたら、時間も残り30分強になりましたので。その前に。はい。

【喜連川委員】  ローマ数字4 に行く前のラストチャンスと今お伺いしたので。これまた理系の、常識感とずれている発言をしちゃうかもしれないんですけど、理系なので、普通はエクスターナルリファレンスというか、大体世界標準間の中でこれがどういうところにいるのかというのは必ず書かないと怒られちゃうんですけど、例えば私の薄っぺらい知識だけしかないんですが、Horizonの中で一つだけ人文社会が残っていると。あれは大したものじゃないかなと思うんですけれども、それはキュートな名前で、井野瀬先生の御専門の歴史というか、タイムマシーンが残っていると。あれはやっぱり我々から見るとすごく深いなという気がしていて、かつ、ここ、最初の方にプラットフォームと書いてあるんですけれども、このプラットフォームというのは、ここは共創の場と書いてあって、いわゆるプラットフォームがどういうことを意味しているのかよく分からないんですけれども、そういう発展可能な側面とか、海外とのレファレンスとか、そういう議論はどこにもなくてよろしいのかというのがちょっと心配です。

【城山主査】  恐らく一つ丸を作って背景の中に入れといていただいた方がいいかと思います。これも研究実践の方と絡むと思うんですけれども、こういうテーマ作っていくときに、海外とインタラクションしながら作っていくというのが現実的には大事だと思うので、そういう背景にもなるような、今のHorizonでいくか、若干紹介させていただいたIPSP、そのようないう試みがあるので、そういうのを勉強しとくということでしょうかね。ありがとうございました。
 ということで、すいませんが、実施体制のローマ数字ローマ数字4 の方に移らせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 5ページのところですけれども、一つは、先ほど申し上げたような二つ目の丸で、いろんなステークホルダーに参加を公募するといったとき、公募するときの意味が多分みんないろいろ違って、こういった研究をやった方がいいという人、あるいはこういう研究をやりたいという提案もあるだろうし、こういう研究をやってほしいというのもあるだろうし、多分そこは、研究者か、ステークホルダーかによって違ってくるのかなとか、あるいは、研究者が個人なのか、グループもありなのか。ただ、どのような要件を設定する必要があるかとありますが、仮にグループだとしても、閉じたグループというのはここでは多分対象にしていなくて、ここまで組んでこういうことやっているけど、更にこういうところと組んで議論したいとか、そういうある種可塑性のあるグループなのかなと思いますし、そういうことをどう書くかとかですね。
 あと、このプロセス、一番重要なのはテーマ代表者なのかなと思いますけれども、そういう人たちをどうやって選んでいくのか。恐らくこれ、先ほど小林傳司先生の方の話にありましたけれども、来年度の4月にさっと動き始めて、4月から8月ぐらいまでにある程度議論をして、次の概算要求に乗れるようにして、その後更に具体化していくという、かなりスピーディーなプロセスが求められるので、そういう意味でいうと、4月の前にある程度下準備もしておくことも必要なんだと思うんですね。そういう意味で、任命プロセスをどうするかというあたりですね。このあたり、論点というふうに書かれていますけれども、少し皆さんの御意見なり、意識のある種共有化が必要かなと思いますので、御意見いただければと思います。では、小林先生。

【小林良彰委員】  まずこれは、1ラウンド3年というお話でしたが、毎年3年を公募していくのか、それとも3年やって、終わったら次を公募するのかですね。

【城山主査】  要するに、テーマを作っていくのが、3年間3ラウンドやりますと。一つの研究プロジェクトを、これを何年にするかというのは決まっているんでしたっけ。まだそこはこれから要検討なんでしたっけ。

【前田学術企画室長】  ワーキンググループの報告書では少なくとも5年以上と書かれています。

【小林良彰委員】  つまり、これは予算が毎年増えていく話なのか、つまり、新規と継続と両方走っていけるのか、それとも新規が終わらなければ次の新規はできないのか、つまり予算がフラットなのか。これは財政的な制約ですから、最初にはっきりしといた方がいいと思います。

【城山主査】  発想としては、徐々に積み上がっていくということなんだろうなと思いますが、それが予算的にうまくいくかどうかは、我々の交渉能力次第ということなんでしょうけど。

【小林良彰委員】  本論に入りますと、テーマ代表者をどうするかという議論は、正に公募をどうして、どうやって研究チームを作るのかと。そこをまず決めないと、テーマ代表者の役割、権限、決まらないと思うのです。チームで公募した場合何が起きるかというと、同一研究機関に閉じるということは、もともと科研自体そんなことはほとんどなくて、複数の研究機関にまたがっていたりしますから、そういうチームがいろいろ出てくると、実はいろいろ立て付けを、チャレンジングに事務局、ものすごくこれ、チャレンジングなことだと思います。非常に楽しい議論ですが、余り結果として結論は変わらないような、従来の科研と余り実は変わらないような出口になってしまうのではないかなという気がする。これ重要なのは、共創のプロセスを作るというところが事務局のチャレンジングなところなので、個人で出してきて、それをチーム構成、例えばプレゼンしていただくとか、書類選考して残った人にプレゼンしていただいて、それからチーム構成を、全然見ず知らずの人も含めて作っていくというと、多分理想だと思うのです。その理想がうまくいくかどうかが、テーマ代表者にどれだけの権限を持たせるのかということ。つまり、テーマ代表者が研究にも入っていって、統括的にやっていくというふうなところで引っ張っていくのか、それともそうではなくて、いわゆるプログラムオフィサー的になって外から見るのか。多分そこは、公募と、それからチーム編成をどうやるのかということですね。これは理想と現実の狭間でどこで落としどころを設けるのかということになると思います。
 全部個人にしてしまうと、一つ考えられるのは、若手は出してくると思うのです。ある程度の能力のある中堅ぐらいだと、プレゼンして落とされたらかなわんと思いますから、多分出してこないのではないかなという気がするのです。そこをどう見るのかということですね。
 それから、ある程度自由に好きにやっていていいですよではなくて、ある一つの社会的問題を解決するという方向性と新しい学術知を創造するという方向性に引っ張っていかなきゃいけない。そうすると、ある程度の権限がなかったらついてこないですよ。極端に言えば、参加したメンバーは、一つできることは、はい、辞めますと、途中で抜けますということができるわけです。そうでないようにするためにということ。
 だから、最初に議論すべきは、公募をどうするのかということとチーム編成をどうするのか。そこを先に決めた方がいいと思います。

【城山主査】  そのあたりは議論の核だと思います。では、小長谷先生。

【小長谷委員】  今、我々はプロジェクトについて議論していて、これから個別のプログラムをどうやって作っていくかという、プログラムを一つ小さい方の概念として使うわけですね。そうすると、このプログラムのときに、いろいろ応募があって、それをどれか選ぶというふうにしてしまったら、過去の今までのいろんなものと全く同じなので、選択するのではないということがここでの大きな共通の理解になると思います。プログラムを形成するのであると。形成するときに、おっしゃるように、グループ単位でかなり作り込んだもので応募されてきてしまうと、もうそれは実質的には選択プロセスになってしまうので、私も、今おっしゃったように、個人単位で応募するというスタイルに賛成です。ただし、その個人が、自分はこういう人とやってみたいというような中身が、こんな人とこんな形でというふうにいろいろな提案が入っているというのは大きな意義があることだと思います。自分はこういう専門だから、こういう専門の人とやりたいとか、具体的にそれは人の名前が入っていてもいいし、分野で指定でもいいし、作ることに関する応募という、そういう応募をするという形で求めるのがいいんじゃないかなと思います。普通は、全て作り込んだこの私に投資しなさいという形で選択プロセスに入るわけですけれども、そこを全部決まっていないもので提案していただくということがないと、おっしゃるように、ほかのと同じになってしまいます。
 あともう一つは、テーマの依頼があるというのも全然今までと違うところで、普通は俺に投資しろで、選択プロセスに入ってしまうんだけど、こういうテーマをやってもらいたいというふうに、やる研究者じゃなくて、研究の中身に関する応募というか、そういうのがあるというのも非常に画期的だなと思います。
 以上です。

【城山主査】  では、盛山先生。

【盛山委員】  関連して。小長谷先生のおっしゃった中で、つまり、選択するのではなくて形成するんだとおっしゃっているのは、私、非常に重要だと思うんですよ。これは、今までの科研費とかその他の仕組みの中でも、特に人文学・社会科学系に関しては必ずしもうまくできてないところです。今までは、結局応募して出てきたものを評価して採択するか否かを決めるだけで。あとはほったらかしなんですね。途中の評価はあるけれども。ただ、このプロジェクトでは、多分どこかで一緒に作っていくという考えが重要だと思います。こういうテーマをとにかく発展させてくださいという雰囲気で事業委員会の側は構えていないといけなくて、そうすると、どこかで何かアドバイスしたりとか。何て言ったらいいんでしょうね、単に出てきたものをばさっと切るか切らないかというだけではなくて、アドバイスしたり、意見を言ったりするというプロセスが組み込まれる必要があると思うんですね。これは今までにない仕組みなので、これからのプロセス、この検討課題の中で、そこをどういう仕組みをやったら育っていくか。イメージとしては、応募はいっぱい出してもらう。そこで少し絞り込んだ後で、少しインタラクションをしながら具体的な研究課題に組み上げていく。その上でさらに、多少のセレクションはあるかもしれないとか、そういう二段構えとかというような形になるのかなと思いますけど、それをうまく組み込んでいただければと思います。

【城山主査】  確認ですが、アドバイスは、誰がどの段階でやるイメージでしょうかね。正にこれは後で問題になるテーマ代表がかなり総括的な役割を果たすんだと思うんですけれども、その人一人に依存するんじゃなくて、もうちょっと横から口を出した方がいいかもしれなくて、ただ、それは飽くまでアドバイスですと。これでいうと、事業委員会メンバーのような人が、こういうのもどうですかみたいなことを言うというのはあり得て、これは前回、たしか喜連川先生が言われたと思いますが、余りいろんな人に口を出させると話が厄介になるという御経験の話もあったので、ある程度任せた方がいいというところもあり、とはいえ、これは新しい形成プロセス自身の実験なので、多少いろんな声が入るような形の方がいいのかなという感じもしますね。いかがでしょうか。では、岸村先生。

【岸村委員】  共創の場というのは大事だと思うんですけれども、実際そこにどうやって参加するのかというのがいまいちよく分からなくて、先ほどどう公募するかというのもありましたけど、例えば私、参加しようとしたときに、人文系のお作法でプロポーザルを書くのは多分無理なので、こういう疑問があって、一緒に組んでこういうのを実現してほしいというようなときに、じゃあ、そういう人たちはどう応募するのかというのと、まずそれがあった上で、先ほどもちょっとお話がありましたけど、やってほしい研究を持ってくるのでもいいとしたときに、どういうふうに審査して共創の場に参加させるか。その辺を具体的にしないと、応募する方も応募しにくいと思います。

【城山主査】  ちょっと具体的なところまで詰め切れるかというのは問題ですけど、ステークホルダーがこういう問題がありますと持ってくるバージョンもあるし、理系の方が技術研究している中でこういうことがどうも関連していそうなので、こういうことを一緒に考えたいみたいな話。だから、そこは、おっしゃったように、純粋な研究提案というよりかは、こういうテーマがあるんじゃないですかという提案になるんだと思うんですね。だから、少なくともそういうのにオープンにすることは必要だろうということまでは言えて、ただ、実際にそれが出てきたときに、どう審査するかとか、そうはいっても、人数も限られているわけなので、実際議論しようと思うと、そこの詳細はなかなかここでは決め切れないなという。少なくともそういうのに対してオープンにするものがここでいう公募なんだということの概念だけははっきりさせておくということかなと思いますね。ただ、その問題意識はすごく大事なので、何らかの形で次のフェーズにつなげていくようにする必要があるかなと思います。

【岸村委員】  お願いします。ありがとうございます。

【城山主査】  では、大竹先生。

【大竹委員】  私も全く同じことを考えていたのですが、基本的には、テーマを考えていく場なわけです。大きな枠の中でそれぞれの具体的なテーマを考えていくときに、それぞれの人がテーマを持ち寄って考えるという形にするのか、個人として関連の代表のところにまず集まってもらって、具体的なテーマをバックグラウンドのメンバーで話し合ったものを持ってきて議論するというふうに考えるのか。あらかじめこの中でテーマを決めて、提案してもらったものを持ち寄って、それを基にセレクションしていくという方法だと、今までの科研のやり方と変わらないような気もするので、そこのやり方をちょっと整理してもらうと有り難いです。

【城山主査】  そうですね。ある程度テーマを持って提案してくださいといっても、フィックスのテーマだと、選択プロセスになっちゃうので、こういうことが大事ですという、テーマの要素というか、案みたいなやつが出てきて、ただ、何か出してもらわないと選びようがないというところもあるので、出してもらう。ただし、この案をやる、あの案をやらないという判断ではなくて、むしろ出てきたものをベースに議論をして、だったらこういうことを一緒にやると面白そうだよねということを正にテーマ代表の下で議論してもらって決めていくという、そういうイメージなのかなと思うんですけどね。ちょっと曖昧な言い方しかできないと思うんですけどね。

【大竹委員】  ですから、事前のことがすごく大事な気がします。これをアピールして、そして、各研究者コミュニティで何ができるだろうかということを作っていって、それで、そのチームの代表が個人として提案するというようなものをあらかじめ仕込んでおかないと、いい提案というのがコミュニティ全体から出てこないような気もするので、そこは大事かなと思いました。

【城山主査】  ありがとうございました。どうぞ。

【井野瀬委員】  よろしいですか。ローマ数字3 までの柱をどのように書き換えていくのか、キーワードをどう散りばめるかという本日前半の議論とすごく絡んでいると思いますが、テーマ代表者というのは、役割としてはコーディネーター的側面が強いということでしょうか。もう一つ、プロポーザルの様式が従来のものと違ってくる、ということですよね。

【城山主査】  そこは若干ちょっと先ほど小林先生が言われた点と絡んでくるんですが、コーディネーターなんだけれども、単なる管理者ではなくて、マネージャーではなくて、自分も研究に何らかの形では関与をしますと。これは6ページのところのこれの論点で書いているんですけれども、テーマ代表者がどう関与するかというので、同レベルで入るのか、いや、そうじゃなくて、研究の取りまとめはやるので、それに伴う研究はやってもらうという話にするのかというぐらいの幅で、純然たる管理者というか、理系のだと領域総括みたいなのがいますけれども、あれとはちょっと違うのかなという。

【井野瀬委員】  私も、シンポジウムなどで初めて顔を合わせた人たち、異なる分野の人たちの話を絡み合わせて議論を仕切り、新しい問いを考えていく、といったイメージがあります。

【城山主査】  実質的な役割としてはそういう機能が極めて大事なんだろうと思います。

【井野瀬委員】  ということですね。アプライした個人を集めて混成チームのようなものをコーディネートできるような人間、それがテーマ代表者の資質になるという感じですね。

【城山主査】  だと思いますね。

【井野瀬委員】  分かりました。では、それを分かりやすく、かつ、先ほども言ったように、自分の関与が想像できるような、全体の立て付けにすることが重要ですね。

【城山主査】  そうですね。今の書き方だと、6ページの(3)のところで、テーマ代表者は、人文・社会科学に限らず複数の研究グループが参画するプロジェクトの責任者としての経験を有する者、正に司会者ですよね。かつ、さっきも申し上げたように、テーマ代表者も何らかの形で参加するということは。

【井野瀬委員】  それは残しておくということですね。

【城山主査】  ただし、同じレベルか、少し統合的な役割かというところは、これはオプションとして書いてあるというのが今の案ですね。
 小林先生。

【小林良彰委員】  私はテーマ代表者が研究に参加すべきと申し上げたのではなくて、参加するというやり方と参加しないというやり方と二つありますが、どちらにするかは、チーム構成をどうやって作るかによって決まると。
 一つは、別にこれは固執するわけではないのですが、一般的に普通に考えれば、大きなテーマの下でどういう課題を解決したいか。それから、従来の自分の領域の学術知の限界がどこにあるのか。それをどう反省して、どういうふうに変えたいと思うのか。それから、一番重要なのは、自分がそのことに対してどういうコントリビューションができるのかです。何やりたい、興味あるだけで応募してもらっては困るので、コントリビューションができない人に来てもらっても困るので、それを出していただいて、書類選考した上で、最終的に選ぶ数の1.1倍とか1.2倍ぐらいで今度はプレゼンしていただくと。科研だと、審査員対1チームずつ呼ばれますが、そうではなくて、全員でいいと思います。全員でお互いに、だから、1.2倍ぐらいの人が集まって、お互いにディスカッションすると。それをテーマ代表者がコーディネートして、その中でおのずと、少し自分はこれには入らないかなと思うかもしれないし、あるいは、議論の中でもっと創発特性が出てきて、もっとこういうのがあるのかもしれない。場合によっては、応募していない人も、欠けている分野があれば、連れてくるということもやはり認めとかないと、うまくいかないと思うのです。やはり中間管理職が必要なので、そういう人も多分要ると。
 そういう形でやっていって、例えば資金配分もテーマ代表者がやるというと、それなりの権限がありますから、別に入らなくて外にいて評価でもいいと思うのです。それはどこかでやるとなると、誰も言うこと聞かなくなる可能性があるから、中に入ってということになると思うのです。だから、どのみちプログラムオフィサー的な役割になると思うのです。問題は、評価に関わるか、関わらないかです。中に入るなら、評価は別のところでやると。外ならば、評価もやるということです。つまり、評価者としてのテーマ代表者なのか、それとも、プログラムオフィサーとしてのテーマ代表者なのか、どっちを選ぶのかということだと思います。

【城山主査】  ありがとうございます。幾つかの点があるかと思うんですが、一つは、まずプロセスの設計の仕方で案を書いてもらって、もちろん自分のコントリビューションも書いてもらって、選んでやると。そのときに、コントリビューションとしてはこういうことは私は研究としてできますもあるし、こういう問題は持ってこられますというステークホルダーなり、場合によっては理系の研究者としてのコントリビューションもあり得るということと、言われた点で大事なのは、1対1のレビューではなくて、全体で聞いてやるというパターンですね。これは前もお話ししたかもしれませんが、人社プロジェクトの最初のフェーズも同じようなことを多少やりましたけれども、みんなでお互いに聞いた上で、ただし選ぶのは最終的にはテーマ代表者の責任で選びますということですね。
 それから、限定的なテーマを更に限定して、こういう人が欲しいんですという追加公募みたいなもので連れてくる機会も認めるという、この辺まで、今日共有できるかどうかというのが一つで、大きな論点は、テーマ代表者が当事者になるのか、評価者になるのかというところの選択で、テーマ代表者が当事者になった場合には、これでいうと評価者は事業運営委員会ですかね、そっちが最終的にはテーマ代表者も含めて任命もしたし、評価もしますということになるかと思うので、そこが大きな論点かなと思いますが、まず、ミニマムな方からいくと、最初の実質的なプロセスのあたりはどうですか。二つ関連はしてくるんですけどね。どうぞ、勝先生。

【勝委員】  先ほどの資料2-2なんですが、この図のところで、これで見ますと、事業運営委員会というのはかなり大きな役割を担っているというのは分かるんですけど、事業委員会を設置する実施機関というのは、誰が決めることになるのか、この表についての質問なので、もし事務局の方で。

【前田学術企画室長】  そこにつきましては、独法、大学共同利用機関、大学と書いていますけれども、それを公募という形でやるのか、あるいは、ここの御議論で、これは研究資金の配分、要するに、ファンディングエージェンシーがやることが望ましい事業だということであれば、私どもの方から適当な独立行政法人にお願いしに行く、あるいは、そうじゃなくて、やっぱりこれは研究機関としてやることがこの事業として望ましいということであれば、大学共同利用機関など、私どもの方からお願いしに行く。そういうことかと思います。

【勝委員】  この資金自体はいつまでに決めればいいんでしょうか。今議論していることも含めて。

【前田学術企画室長】  今概算要求中ではございますけれども、ただ、何と申しますか、4月から私どもとしては早速これを、来年度ですね、進めてまいりたいと思っていますので、ここで御議論、一定程度頂ければ、内々にはいろいろ物事を進めていきたいと思っています。もちろん事細かい要綱とか、そういうレベルになると、ちょっと事務的なこともありますけれども、次回の9月以降にもそういった御議論も頂いて、中身をもう少し詰めていきたいと思っております。

【城山主査】  恐らく最終的には文科省の方にお任せするということですが、この委員会としてミニマムこれはお願いしたいということがあれば、今回、あるいは次回に御意見を頂くということかなと思います。

【川添委員】  まず確認ですけど、実施機関なるものは一つだけなんですよね。そういうことを想定しているのか。

【前田学術企画室長】  実施機関は一つです。

【川添委員】  だから、実施機関という枠が必要なのかどうか、僕にはよく分からないんですけど、複数こういうものが、共創の場があるということじゃないんですよね。共創の場と呼ばれているものは一つ。

【前田学術企画室長】  全体をマネージする機関はどこかにお願いをすると。ただし、そこのメンバーとして誰が入るかというのは、かなりオープンだと思います。その当該機関にそもそも人がいるかというのもありますし、当該機関の人だけでやるわけではなくて、むしろ多様な人をそこに連れてきてやるということなんだろうと。

【川添委員】  だから、個別の大学とか、ある特定のミッションを持った機関がやるということがいいのかどうか僕にはよく分からない。なぜそういう選択肢を持っておくべきなのかよく分からないんです。そのことが一つ。
 それから、このポンチ絵、2-2は、いわばスタートアップのときにどういうふうにやるかという問題と、共創の場が実際に出来上がって回り始めたときにどういう関係にあるかということがちょっと混乱しているんじゃないかという気もするんですけど。つまり、事業総括者、テーマ代表者というのは、共創の場の中にいるはずですよね、動き出したら。

【城山主査】  そこは正にさっきの小林先生の御議論ですけど、評価者なのか、当事者なのかということですね。

【川添委員】  そうすると、共創の場で、テーマ代表者は、大きなテーマAならAの代表者ですよね。それが共創の場の外にいるなんていうことがあり得るんですか。

【城山主査】  逆に言うと、プロジェクトの単位を何と考えるかなんですが、テーマ全体でプロジェクトと考えれば、当然中ですよね。だけど、そこで出来上がってきたものがプロジェクトで、あとはその人たちに任せて私は管理者に徹しますよというのがありであれば、外であり得るんだけど、そこはなかなか難しいのかなという気は個人的にはしています。

【川添委員】  だから、やっぱり冒頭の話に戻っていて、二重化している、このプロジェクトの目的。つまり、共創の場という新たなやり方で人社系の新たな姿を求めるという、そういうことと、大きなテーマというのは、ある意味では例示的なものだということとの関係ですね。だから、テーマ代表者というのは、そのテーマのもちろん専門家なんでしょうけれども、しかし、もう一つメタレベルで、どういうやり方でやるのがいいのかについて、体系化をやると言ったわけですよね。考察のプロセスの体系化をやるという目的も含まれている。

【城山主査】  だから、そこのミッションは事業全体ですよね。恐らく事業運営委員会のミッションですね、そこは。テーマ代表者は、正にサンプルと言うかどうかは別として、例に従って実際に動かしてみる。あるいは、その中で、大きな研究テーマ自身を微修正していくこともあるかもしれませんと。そういうプロセスを観察しているのは事業運営委員会なので、体系化の話は、ここが見つめ、テーマを動かすことを通して体系化をしなきゃいけない。だから、事業運営委員会も結構ミッション重いですよね、これは。

【川添委員】  何か組織がえらい複雑になり過ぎているような感じがするんですけど、だから、実際動き出したら、共創の場のメンバーが実際上はいろんなステークホルダーの参加をリクルートしたり、実質的には選んだりするということをやるわけでしょう。事業委員会が直接じゃないですよね。だから、少なくとも絵としては何かよく分からないことになっていますよね。

【城山主査】  ちょっと絵で描けるかどうかというのは、そこの共通理解は正に作っておかなきゃいけない話で、一番のポイントは、小林先生が言われたテーマ代表者の立ち位置ですね。

【川添委員】  それから、テーマの位置付けですね。大きなテーマというのがどういう位置付けを持つテーマなのかということですよ。

【城山主査】  喜連川先生。

【喜連川委員】  御参考になるかどうか分かりませんけれども、この間まで一番大きいのはImPACTという内閣府のプロジェクトで、この場合は、エフォートをコントロールしていますね。だから、このパーティシペーションは、マネジメントを4にして、本当の中身のパーティシペーションを1にするとか、そういう20・80ルールとか、そういうコントロールもできると。

【城山主査】  誰に対してですか。

【喜連川委員】  まとめる方。

【城山主査】  まとめる方ですね。テーマ代表者。

【喜連川委員】  まとめる方が、あなたのエネルギー、100を何にするかは別ですけれども、8割ぐらいはマネジメントなんですよと。

【城山主査】  単に研究に参加するかどうかじゃなくて、2割参加するぐらいのイメージですよとか、そういうことですね。

【喜連川委員】  そういうこともあり得るということです。

【城山主査】  ありがとうございます。

【小林傳司委員】  すいません。初年度は研究はしないんですよね。

【城山主査】  研究プロジェクトを作るということですね。

【小林傳司委員】  初年度は研究そのものはしないんですね。

【城山主査】  研究実践はしない。

【小林傳司委員】  研究実践はしないということですね。

【城山主査】  そうそう。

【小林傳司委員】  そうすると、この共創の場というこの絵の中の研究課題A、Bというのは、これも仮置きなのか、これを決めていくという仕事なのであって。

【城山主査】  そうです。

【小林傳司委員】  そうすると、応募する側は、こんな研究を来年度、再来年度以降にやりましょうよというふうに持ってくるという、そういうストーリーですね。

【城山主査】  そういうことですね。

【小林傳司委員】  それを集めて共創の場でもむ。場合によっては、大きなテーマA、B、Cの若干の組替えもあり得ると。

【城山主査】  あり得ると。

【小林傳司委員】  そういう賢人会議みたいなことをやろうというわけ。

【城山主査】  賢人会議なのか、なかなか微妙な話ですが、研究テーマ自身がある種の知財のところもあるので、秘密にしておくことによって自分でまとめて作って出したいと思う人は当然いるので、他方、いろんな人と組んでやりたいなとぼわっと思っている人たちがいたとすると、そういうところに人が来ると。

【小林傳司委員】  出会いの場。

【城山主査】  それ自体、応募があるかどうかは、それが正に実験ですよね。なかなか難しいと思いますが。

【盛山委員】  応募そのものは、例えば学振で特設審査領域とか、今回も課題設定の方でも新しいテーマで設定していますが、私の予想以上にはボトムアップ的なものは出ていますから、今後のプロジェクトの営業努力によって、それは心配しなくたっていいだろうと思います。
 ただ、過去の例を見ていると、いつも実質的なレベルで気になることがあります。ここで今話すことではないんですけれども、それは何かというと、人社系のテーマというのは、それなりに結構大きなテーマで皆さん研究するんですね。ただ、研究した成果が余り出てこない。つまり、研究しましたと。一生懸命ワークショップ開きましたとか、シンポジウムやりましたとか、これに発表しましたとかはあるのですが、本当に、では、どこのポイントでブレークスルーが起こっているかということに関する自覚というのは非常に弱いように思われます。私はこのプロジェクトでは、その点に関しては、やはり徹底的にそこには注意して努力してくださいということを強調するプロジェクトにしていただきたいと思います。

【城山主査】  そこは研究実施のある種のモニタリングをきちっとやるということですね。その辺が、だから、例えば実施機関として学術振興会に任せられるかというあたりとも絡んでくるんだと思いますけどね。

【井野瀬委員】  今の話に一言いいですか。成果というものをどう考えるかというのも、違ってくると思われます。例えば議論に参加していた若手研究者が、どこどこの、古い言い方になりますが、「融合領域」のポストに採用が決まったとか、ここで議論した経験によって自分の研究領域が広がったとか。私は、このプロジェクトでは、共創の場ができるという、場の経験をどう評価するのかに新しい工夫が必要だと思っています。そこからすると、盛山先生がおっしゃった、人社から成果が出ていない、だから厳しくしましょうという御意見とは少し違うと感じました。

【城山主査】  多分盛山先生のお話は、プロジェクトを具体化した上で、研究実践の段階でそこをきちっと見るべきだという話で、今御質問いただいたのは、正に実験的プロセス自身をどう評価するかということも考えなきゃいけないので、それはまたどこかの時点でこの委員会として考えなきゃいけない話だろうと思います。喜連川先生。

【喜連川委員】  これは井野瀬先生が御参加にならなかったときに発言したんですけれども、原則、評価メトリクスは御自身で決めてくださいと。

【井野瀬委員】  自身というのは、アプライしてくる本人のことですか。

【喜連川委員】  アプライしてくる。だから、それに基づいて我々はそのプロジェクトを評価すればいいんですね。つまり、それをテイクするか、テイクしないかというものも含めて。人文社会の場合は、評価軸が非常に難しくていらっしゃるんだと思うんです。ですけど、それをずっと言っているわけにもいかないと思いますので、御自身で、これを私は目標とする。そこをアチーブしたかどうか、それだけをやればいいんじゃないかと思います。

【城山主査】  今の点だけ確認しておくと、これは前回来議論したように、ある種の社会的課題の部分と学術的革新みたいな部分があって、それをどういう比率で自分のプロジェクトを評価してもらいたいかも自分で考えるということですよね。研究実践の段階でですね。そういう仕組みにしたいということで。最初に、須藤先生。

【須藤委員】  今までの議論を聞いていて、産業界って入っているんですけれども、何をするのかなとだんだん分からなくなってきたんですけれども、産業界の研究者が最終的に1年後に研究課題の中に入ってやるというケースが当然あると思って今まで議論に参加してきているんですけれども、評価を自分が決めて、人文系のゴールの設定をすると、今度、産業界の企業の人って入れなくなっちゃいますよね。

【城山主査】  そこは逆に、先ほどの話だと、企業の人がどういうコントリビューションが可能かという点と関連してくると思います。それは必ずしも人文・社会科学的なアカデミックなコントリビューションではなくて、現場の問題を持ってくるのでもいいし、そこはいろんな在り方があり得る。

【須藤委員】  スタートは入れますよね。先ほどから言っている、技術系だけで考えてきたのが駄目なので、いろんな意見を聞きたい、こんなことを聞きたい、こんなことをやるべきだというところまでは参加できると思うんですけれども、その先、じゃあ、やろうとなると、ほとんどアドバイザー的になるのか。

【城山主査】  逆に言うと、恒常的に参加するとなるとどういうやり方があり得るかとか、そこはむしろお知恵を頂きたい。

【須藤委員】  そうですね。ちょっと難しい。行政はあるんですけど、みんな、どうやって最後までコントリビューションしていくのかというのが。最初はいいんですよね、共創の場に参加するのは。そこから先どう行くかというのはちょっと考えなきゃいけないかなと。

【城山主査】  では、簡単にまずお二人の御意見を頂いて。

【小林良彰委員】  評価をどうするかという基準を応募するときに自分で定めてというのは、むしろそういうところで、一律の評価ではないということです。だから、人文の研究者が参加するときはこういうような形で自分はコントリビューションしてこういう成果出しますということだし、産業界の方には全く別の評価軸を出していただいて、その評価軸がいいかどうかを評価すると。また、例えば一般市民グループであれば、また別の評価軸。そういう形で最後まで参加していただけるのではないかと。
 多分今日で議論がまとまるということは難しいと思うので、入り口だけ言うと、実施機関はどう考えても学振しかないのではないかなという気がするのです。やはりかなりチャレンジングなことで、若手にすごくインパクトを与えて、かなり応募出てくると思うのです。というときに、ほかでは対処しきれないのではないかなというのが1点。
 もう1点は、この枠組みが成功したら、この枠組みにとどまらず、もう少し広げて、波及効果というのも考えていいのではないか。という意味でも、学振がどうかなと。
 それから、特定の研究機関だと、どうしても利害関係があります。同じ分野ですから。それは結果的に利益相反がなくても、あるように見られてしまう。これはよくないので、研究機関はやはり研究者ですから、その意味で学振は第三者機関ということですから、このプログラムが評価される上では学振しかないのではないかなと思います。以上です。

【城山主査】  小長谷先生。

【小長谷委員】  今の小林先生の前半部分のところです。評価だけじゃなくて、コントリビューションの意味がもうちょっと広いんだろうと思います。つまり、研究しているということだけじゃなくて、例えば調査対象としての現場を提供するとか、是非うちを対象にしてくださいというのも大きなコントリビューションだと私は思います。

【城山主査】  すいません。タイムマネジメントがよろしくなくて、既に5分、6分過ぎていますが、最後一つ確認しておきたいのは、最初の小林先生の問題提起の点で、私の理解だと、やっぱりテーマ代表者は、少なくとも大きなテーマとして全体をくくって全体としてどう構成するかとか、そこはある種裁量を持ってやってもらわなきゃいけないし、それに伴う研究実践はある程度やらざるを得ないのかなと。そういう意味でいうと、その限りにおいて、被評価者というか、むしろ当事者の側面を持ってもらった方がいいのではないかなと思います。ただし、それは、全部に負うかというと、大きなテーマの中をマネージするというのは、正にそこの責任だけど、個別のテーマは個別の研究課題の人に見てもらうということになるのかなと。これは喜連川先生の言われた4対1ぐらいの比率なのか、その辺はイメージ、もう少し共有化したいと思いますけれども、皆さんの意見を伺っていると、基本的にはそういう感じなのかなと。
 そういう意味でいうと、評価者としては、やはり事業運営委員会がちゃんと評価者として動いていただいて、そこに線を引くということかなという感じがいたしました。
 事業総括者がどういう立場なのかというのは、逆に全く議論していないので、次回あたり、また議論できればなと思いますが。

【盛山委員】  総括者というのはすごい重い存在で、一人でというのは、何かちょっと気になりますね。本当にこんな仕組みって日本であり得るのか、うまくやっていけるのかなというのがありますね。委員会というのは分かるんだけれども。

【城山主査】  逆に、だから、事業総括者というのは、事実上は事業運営委員会の委員長みたいな人で、自分は研究には逆に入らないと。だけど、全体の研究プロセスの評価をしたり、それこそさっきのいろんなレッスンを学んでいくあたりを取りまとめるというのが事業総括者なので、事業総括者とテーマ代表者はかなり性格が違って、むしろ事業総括者は事業運営委員会の中に入っておいていただいた方がいいのかなという感じかなと思います。

【盛山委員】  むしろ事業運営委員会の中での責任者という位置付けでないと難しいんじゃないかなという印象ですね。

【城山主査】  ええ、そうですね。

【小長谷委員】  今のでいいから、そうすると、誤解を招くのが、この図だと、外側に入っちゃっているから。

【城山主査】  そうですね。逆に言うと、テーマ代表者を中に入れて、事業総括者は事業運営委員会の方に入れるという、そういうイメージでいいですね。大きな方向は、そこのあたりの了解は得させていただいたということにして、細かい設計のところも大体共通理解あるかと思いますので、これを文章にして、次回また最終的な議論をさせていただくということかと思います。
 事務局、そのような感じでよろしいでしょうかね。

【盛山委員】  そういう感じです。

【城山主査】  はい。それでは、また事務局の方に戻します。

【藤川学術企画室長補佐】  ありがとうございました。次回は9月19日に開催させていただきます。本日の議論を踏まえまして、中間取りまとめを行いたいと思っております。
 本日の議事録につきましては、後日、メールにてお送りいたしますので、御確認をお願いいたします。
 以上でございます。

【城山主査】  それでは、これで終わりにしたいと思います。どうも長い間ありがとうございました。

―― 了 ――

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