第10期研究費部会(第6回) 議事録

1.日時

令和元年11月19日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 関連事業の有識者等との意見交換(戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)、国際交流事業)
  2. その他

4.出席者

委員

甲斐委員,栗原委員,西尾委員,井関委員,大野委員,城山委員,竹山委員,中村委員,山本委員,上田委員,竹沢委員,中野委員

文部科学省

村田研究振興局長,増子大臣官房審議官,原振興企画課長,梶山学術研究助成課長,岡本学術研究助成課企画室長,中塚学術研究助成課企画室室長補佐,金子基礎研究振興課基礎研究推進室長,新田科学技術・学術戦略官付国際戦略室長,他関係官

オブザーバー

永井自治医科大学長,観山広島大学特任教授,小川日本経済団体連合会産業技術本部統括主幹,松本名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所事務部門長,岸本日本学術振興会学術システム研究センター副所長,永原日本学術振興会学術システム研究センター副所長,西村日本学術振興会学術システム研究センター副所長

5.議事録

【西尾部会長】
  皆さん,おはようございます。それでは,お時間となりましたので,ただいまより,第10期第6回の研究費部会を開催いたします。
 前回御議論いただいたとおり,科研費を中心とした学術研究を支える研究費制度の総合的観点からの検討を進めるため,本日及び次回の2回にわたって関連事業の現状を伺い,意見交換を行います。本日は,戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)及び国際交流事業に関する有識者の方々に御出席いただいておりますので,事務局から御紹介をお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)に関する有識者として,基礎研究振興部会から自治医科大学長,永井良三委員,広島大学特任教授,観山正見委員,また,部会担当課から,研究振興局基礎研究振興課基礎研究推進室の金子忠利室長にお越しいただいております。
 また,国際交流事業に関する有識者といたしまして,国際戦略委員会から日本経済団体連合会産業技術本部統括主幹の小川尚子委員,及び,名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所特任教授・事務部門長の松本剛委員,また,委員会の担当課から,科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官,新田浩史戦略官に御出席いただいております。
【西尾部会長】
 本日は,御多忙のところをこの会に御出席いただきまして,本当にどうもありがとうございました。心より御礼申し上げます。
次に,事務局から配布資料の確認をお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
  本部会はペーパーレス会議として実施させていただきますので,資料については,基本的に机上のタブレット端末で御参照いただければと思います。ただ,机上配布資料といたしまして,前回と同様の各種のデータにつきましては机上にお配りしてございます。本体の資料について,個々の資料名の読み上げはいたしませんが,資料の欠落等がある場合や,タブレット端末の操作方法等について御不明な点がある場合には,事務局までお申し付けください。
 

(1)関連事業の有識者等との意見交換(戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)、国際交流事業)

【西尾部会長】
  それでは,意見交換に入ります。最初に関連事業の有識者等との意見交換の進め方及び科研費の現状等について,事務局から説明をお願いいたします。
【岡本企画室長】
 それでは,説明を申し上げます。まず,資料1をお開きください。関係事業の有識者等との意見交換の進め方についてでございます。
 まず初めに時間配分でございます。科研費の現状等について10分ほど御説明させていただいた後,10時15分頃から戦略的創造研究推進事業についての意見交換ということで考えております。説明は15分,意見35分,全体で50分を予定しております。その後,11時5分頃から国際交流事業について,同様に全体で50分ほどの意見交換を予定しております。
次に,意見交換時の論点の例でございますが,戦略的創造研究推進事業につきましては,今後の科研費と戦略的創造研究推進事業の連携のための取組,また,戦略的創造研究推進事業を効果的に実施するために科研費に期待すること,また科研費の効果をより一層高めるために戦略的創造研究推進事業に期待することなどを考えております。
二つ目の国際交流事業につきましては,学術の振興のために国際交流事業が果たす役割と取組,また,国際交流事業を効果的に実施するために科研費に期待すること,科研費の効果をより一層高めるために国際交流事業に期待することを考えております。
 次が意見交換時の留意点ということでございまして,3点ほど留意していただきたいことがございます。一つ目が,各事業の枠にとどまらず,全体を俯瞰した議論を行いたいということがございますので,「現行制度ではできないから他事業に期待する」ということではなく,現行では難しい点についても,全体としてあるべきファンディングの姿にするために,自制度として及び科研費としてどういう検討をすべきか,また,関係事業でどういう協力ができるかということに留意していただきたいと思います。
 二つ目が,事業の棲み分けよりも,全体として多様な学術を支えるためにどうしたらよいかという点に御留意いただきたいと思います。
 三つ目が,分野の違いを考慮すべき点,例えば国際共著論文,また他分野・他事業との連携等にも御留意いただきたいということで,この3点につきまして,意見交換時に御留意いただきたいと思っております。
 次に資料2をお開きください。まず,科研費について,全体での共有ということで資料を御説明させていただきます。
 2ページ目に審議会の下に設置されている関係部会ということで,簡単な組織図がございます。審議会の下に戦略的基礎研究推進事業であれば基礎研究振興部会,また国際交流事業であれば国際戦略委員会がございまして,本日有識者の方に御出席いただいております。その下には科研費に関する二つの部会を設けております。
次が科研費の概要についてでございますが,4ページ目に科研費とはとございますが,ポイントは3点ほど,全ての分野が対象になっている競争的資金であること,ピアレビューにより助成対象を選定していること,独創的・先駆的な研究に対して助成しているものであるということでございます。
 次が科研費の位置付けということでございますが,様々な研究費がございますけれども,科研費につきましては競争的資金であって,かつ研究者の自由な発想に基づく学術研究を支援するものであるという位置付けでございます。
 次が研究費マップでございます。文部科学省の競争的資金について,試案としてプロットしたものであるということで,各資金がカバーする主要な研究領域の範囲を概念的に示したもので,科研費につきましては学術研究,さらには基礎研究,応用研究などをカバーするもの。その上には戦略研究ということでJSTが行っている,今回意見交換を行っていただきます戦略的創造研究推進事業などがあり,さらには要請研究ということで,文部科学省,AMEDなどで実施している事業があるという図でございます。
 次が研究種目の一覧でございます。研究の発展段階,さらには研究費の規模などによって様々な研究種目を設けているのが科研費でございます。特に,本日は国際交流事業について御議論いただきますが,下の方には国際共同研究加速基金というものがございます。平成27年度に設けたものでございまして,比較的新しい種目でございますけれども,これにつきましては,現在国際共同研究強化の(A)と(B)というものがございまして,(A)につきましては,科研費に採択された研究者が半年から1年程度海外の大学や研究機関で行う国際共同研究を支援し,また,(B)につきましては,複数の日本側研究者と海外の研究機関に所属する研究者との共同研究を支援するというものでございます。
 国際活動支援班は,現在は新学術領域研究の総括班に組み込んで公募しております。帰国発展研究は,海外の日本人研究者の帰国後に予定される研究を支援するもの,こういうものが国際共同研究を支援する種目として科研費の中にはございます。
次のページが国際共同研究加速基金の種目について,更に詳しく説明しているものでございます。27年度に設けた後,30年度に若干の改善などを行っております。例えば国際共同研究強化(A)であれば,年齢要件の引き下げ,36歳から32歳にしているということ。また,帰国発展研究については応募要件を変更したりしているということがございます。
 次が科研費の予算額と配分状況の推移ということでございます。令和元年度は2,372億円ということで,対前年度,補正を除きますと86億円の増ということで,大きく予算額が増えているところでございます。それに伴いまして,右側にあります採択件数,採択率,こちらも近年低下傾向がございましたけれども,大きく採択率も伸びているという状況がございます。
 次の研究種目別の応募状況の大きな特徴といたしましては,基盤研究(C)の応募件数が伸びてきている。一方,その他の種目につきましてはそれほど大きな伸びはないという傾向がございます。
 次が,科研費改革の趣旨についてでございます。科研費改革の概要ということで次のスライドがありますが,三つの柱がございまして,審査システムの見直し,これにつきましては,従来の分科細目表を現在の審査区分表に変えて,大きく審査のやり方も変えております。
 また,二つ目が研究種目・枠組みの見直しということで,挑戦的萌芽研究の見直し,また若手研究の見直し,特別推進研究の見直しなどを行っております。
 三つ目が柔軟かつ適正な研究費使用の促進ということで,現在この科研費改革を進めているということでございます。
この科研費改革に関するスライドがたくさんございますが,時間の関係上,飛ばさせていただいて,説明内容の三つ目,概算要求の関係が19ページからございます。20ページ目が今回要求しております概算要求の状況で,2,556億8,600万円の要求ということで,新興・融合領域の開拓の強化と若手研究者への重点支援を2つの柱として要求しております。
 概算要求関係の資料が続きまして,最後に今後の科研費制度の論点の例というものがございます。24ページ目をご覧ください。前期の第9期研究費部会における審議のまとめ,今後の検討課題というものが4点ございます。このうち,本日の意見交換につきましては4番目の科研費を中心とした学術研究を支える研究費制度の総合的観点からの検討ということで三つの文章がございますが,「そのため」で始まる一番最後のところでございます。科研費が研究費全体の中で果たすべき役割やそれを踏まえた制度の改善点について,その他の審議会・部会等と連携しつつ,学術研究を支える研究費等の在り方に関連する幅広い議論を踏まえながら,総合的観点から検討していく必要があるということで意見交換を行うということでございます。
 最後のページが今後の科研費制度の論点の例ということで,前回の研究費部会のときにもお示しさせていただいたものです。一つ目が他事業との意見交換を踏まえて議論するべきことということで,学術研究を取り巻く現状を踏まえた科研費における種目のバランスの在り方ということで,若手支援,大型種目の在り方について,また将来的に目指す科研費予算額の規模についてでございます。二つ目が若手研究者支援の在り方,三つ目が科研費における望ましい国際共同研究支援の在り方を論点としてあげております。
 また,その他の論点として4点ほどあるということでございます。
 続きまして,参考資料2をご覧いただければと思います。参考資料2は,資金配分機関が協調して実施すべき事項に係る方針ということで,本年10月11日資金配分機関,これは五つの資金配分機関になります。JST,JSPS,NEDO,AMED,NAROの五つの資金配分機関,それと所管関係府省が申し合わせたというものでございまして,目的の最後の「上記を踏まえて」という文章の最後のところでございますが,「5つの資金配分機関について,研究資金の特性に留意しつつ以下の事項を協調して実施することにより,統合イノベーション戦略の取組を推進する」ということになっております。
 資金配分機関が協調して実施すべき事項として大きく三つに分けておりまして,Aがすぐに対応するものということで,定期的な会合の開催,また資金配分機関の連携の推進などがございます。
 Bが統合イノベーション戦略2019に記載し取り組むもの。
 そして,次のページがCで,今後具体的に検討していくべきものということで,研究課題の分析,複数の研究費制度による共用設備の購入などがございます。これらにつきましては,最後の今後の予定にございますけれども,これらの事項について検討を進め,可能なものから順次実施していくということが方針として決められているということでございます。
 次が参考資料3をご覧ください。こちらは前回の研究費部会でも御紹介させていただきました研究力強化・若手研究者支援総合パッケージの検討についてということで,本日の議論の関係では4ページ目をご覧いただければと思います。4ページ目に施策の方向性ということで,人材,資金,環境の三位一体改革を進めるということが書かれておりまして,次の5ページ目に,基礎研究の強化に向けた競争的研究費の一体的見直しということで,改革案では,競争的研究費の全体最適の実現ということで,各ファンディングエージェンシーのミッションに応じた最適なファンディング,また,優秀な若手や研究支援人材の安定と自立の確保ということが現在挙げられているということでございます。
 最後に,机上配布資料をお配りしております。前回もお配りしておりますけれども,最後にA4で競争的資金の予算額の推移を新たに付けております。競争的資金全体の状況,また科研費や戦略事業がどれくらいの割合かが分かる図となっております。
 資料の説明は以上になります。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。学術研究を支える競争的資金としての科研費に関する説明をしていただきました。この段階で御質問等はございませんでしょうか。よろしいですか。
 それでは,これからは研究のタイプを学術研究,戦略研究,要請研究という三つのタイプに分けた場合の戦略研究を支えております戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)について,担当課より御説明をお願いします。会場が広いですので,できるだけマイクを有効に使って御説明いただけますとありがたく思います。
【金子基礎研究推進室長】
  ありがとうございます。戦略的創造研究推進事業を担当しております金子と申します。本日は,このような機会を頂きまして,誠にありがとうございます。各事業の枠にとらわれず,全体を俯瞰した上で議論を進めるということで,極めて重要な論点からの場でこのような御説明をできることをありがたく感じているところでございます。
 戦略事業でございますけれども,本部会の先生方も,いろいろな形で携わっていただいている方が多くいらっしゃいまして,若干復習的な部分があろうかと思いますけれども,その点は御容赦いただければと思います。
 資料3をご覧いただければと思います。2ページ目でございます。御案内のとおり,戦略事業はJSTで実施しているところでございますけれども,JSTの業務は非常に広い分野でございまして,必ずしも戦略事業,ファンディングの機能のみではなく,一番上をご覧いただけますと研究開発戦略センター,いわゆるCRDSに代表されるようなシンクタンク機能があるということ。中ほどにブルーで書いてございますけれども,こういった様々なファンディングがあり,そのうち特に左上に戦略事業があるということで,左下には産学連携の事業があるというところでございます。さらには下でございますけれども,理解増進の活動でございますとか人材育成の活動がありまして,JST全体で1,000億円強の予算規模でございます。私が担当しているところの事業は赤字で書いてございますが,そのうちの10分の4ほど,424億円程度の規模であるという全体像の御紹介でございます。
 続きまして,スライドの3ページ目をご覧いただければと思います。戦略事業の位置付けということで,改めてでございますけれども,イノベーションの源泉たる戦略的な基礎研究を支えるものであると。何より,まずこの事業は基礎研究を支えるものであるという位置付けでございまして,左下に図がありますけれども,科研費に代表されるボトムアップ型のものに対して国が戦略目標を決めてトップダウンで基礎研究を支えるものという位置付けでございます。
 4ページ目,事業の概要でございますけれども,右上を御覧いただきますと,予算規模は要求ベースで457億円程度でございます。
 中ほどに事業の代表的なプログラムを書いてございますが,まず一つにはCRESTがございます。これはいわゆるチーム型の研究活動を支援するタイプのものでございますけれども,研究支援期間は5年半,5年半トータルの1チーム当たりの総額が1.5から5億円程度。続きまして,さきがけ,特に若手などを中心とする個人の研究を支援するタイプでございますけれども,研究期間は3年半,総額で1人当たり3,000から4,000万円程度。さらには,その右隣のACT-X,これは最近創設されたプログラムでございまして,ドクター取得後8年未満の若手を,スモールサイズでありますけれども支援しようというものでございます。そして,一番右手にございますけれども,最も歴史が古く,1981年にスタートしたERATOというもので構成されているというところでございます。
続きまして,5ページ目でございますけれども,特徴・強みということで,トップダウンによる目標設定で,研究総括などを中心とするいわゆるバーチャルネットワーク型の研究所として機能していると。あるいは卓越した目利きということで,真に挑戦的で創造性のある研究者や研究課題を発掘しようと。さらには,特にさきがけなどに代表されるように様々な幅広い分野の方々に参画していただいて,領域会議を通じてネットワーク形成,あるいは異分野融合なども喚起しようという特徴もあるということでございます。四つ目の特徴として機動性・柔軟性ということで,領域ごとに研究総括の裁量によっていろいろな研究計画の変更であったり,そういったものを研究途上でも裁量制で柔軟性を持って運用するというのが一つの大きな特徴であるということでございます。
 続きまして,6ページ目は予算推移ということで,歴史的な経緯等を含めて,先ほど申し上げたとおりスタートは昭和56年,1981年でございますけれども,40年弱の歴史があるということでございます。
 続きまして7ページ目でございますけれども,しっかりとJSTに置かれた研究主監会議による全体のマネジメントの下で,個々の研究領域には研究総括,領域アドバイザーで構成されて公募・採択あるいは評価等々を行っているというスキームでございます。
 8ページ目は選考・評価の観点でございますが,詳細な説明は割愛させていただきます。
 続きまして9ページ目でございますけれども,スケジュールの概要を書いてございます。年間のスケジュールとしては4月に公募して,夏にセレクションが行われて10月1日に研究開始というような年間スケジュールでやっているという御紹介でございます。
 10ページ以降,最近のトピックということで,ごく簡単に御紹介申し上げたいと思いますけれども,基礎研究振興部会で戦略事業についてどのような方向で改革すべきかということをしっかり御議論いただいて取りまとめいただいたものですけれども,まず申し上げたいのは11ページ目であります。戦略事業の意義というのは,我が国を支えるためには何よりもこういった事業が必要であり,それを国がしっかり支援すべきだということなどを整理していただきました。
 12ページ目でありますけれども,具体的な改革の方向性ということで3ポツとして書いてございますけれども,何より新興・融合領域の開拓が重要ということで,その中においては戦略目標,国が定めるところの戦略目標というのは大くくり化して,創意工夫のあるアイデアを喚起しようというところを整理していただきました。
 さらには13ページ目でありますけれども,若手研究者の支援強化ということで,こちらについてもしっかり強化すべきであるというようなことでありますとか,中ほどに書いてございますが,まさに事業間の他施策との連携強化,しっかりFA間の情報共有の強化を図ったり,連携を強化すべきというところを整理していただきました。
 さらにはマネジメントサイクルの高度化ということを,この13ページ目に書いてございますけれども,戦略事業につきましては大きく三つの役割を担っている者がおります。すなわち,戦略目標を決めるところの行政機関としての文部科学省,さらには事業を運営するJSTの職員,さらには領域運営を行っていただく研究総括あるいはアドバイザーの三層構造からなっております。これが極めて密接にインタラクションすることによって事業というのがより効率化していくだろうというような方向性で整理しているところでございます。さらに,13ページの一番最後でございますけれども,もろもろのところで研究時間をしっかり確保するべき必要性等が出てきていますので,運営のグッドプラクティスを蓄積するとともに,提出書類の簡素化を一層図っていくということで整理しているところでございます。
 時間も限られておりますので,私からはここまでにいたしまして,最後に一つだけ御紹介したいと思いますけれども,16ページ目でございます。科研費との連携に向けてということで,これまでに実施していることと,今後更に強化するとすればということで整理してございますが,あくまでも事務的に整理したものでございますので,本日の御議論の中でこういった観点から一層考えていければと思います。
 私の説明は以上にさせていただきたいと思います。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 本日の意見交換では,今後の科研費と戦略的創造研究推進事業の連携のための取組や,科研費事業と戦略的創造研究推進事業をお互いに効果的に実施するための取組などについて議論を深めたいと思っておりますので,そのような観点より,基礎研究振興部会の永井先生,観山先生から補足説明や御意見等がございましたら,是非お願いしたいと思います。また,栗原委員におかれましては,この基礎研究振興部会長を務めておられますので,補足等がございましたらお願いいたします。
まず,永井先生,お願いいたします。
【永井自治医科大学長】
 私は基礎研究振興部会のメンバーで,JST CRDSのライフサイエンス臨床医学ユニットの上席フェローを数年間務めております。この戦略創造事業というのは,科研費の世界とはまた少し違って,トップダウン的なところもありますけれども,同時に基礎研究も推進していく面があります。また,最近はアンダーワンルーフということがよく言われ,WPIがそれを目指していますが,それに対して,戦略研究はバーチャル研究所を,アクティブな研究者,しかも領域横断性の優れた研究者を選んで,総括が研究所長のようになってインタラクティブにするかということも目指しています。もちろん全てそれができるわけではないんですけれども,私自身,動的恒常性というCRESTを7年間担当させていただいて,かなりその点を心掛けてきました。ですから,総括次第ではトップダウン的な視点も入るのですが,ショウジョウバエとか基礎研究をうまくチームに入れて想定外の成果を目指すという特徴があります。そういう意味ではバーチャル研究所としては非常にユニークな位置付けになるのではないかと思います。
 ただ問題点としては,さきがけの場合には30倍ぐらいの競争率になることがあります。余りにも競争率が高い,これは一つには間口を広くしている課題でそういうことが起こります。幅広くいろいろな研究を取る場合には誰でも応募できますから,高い近くになってしまうことがあります。また,さきがけが30倍ぐらい,CRESTは5倍から10倍ぐらいの競争率になります。どういう提案を採択するかは,かなり総括とアドバイザーに依存します。幅広く構えるか,あるいは焦点を絞るかについての議論はこれから一つ課題かと思います。
 個人的には幅広く構えて領域横断,かなり広い領域で取ってインタラクティブにさせるバーチャル研究所としての位置付けは,戦略事業では非常に重要と思います。
 それと,もう一つの批判として,出口に向かい過ぎているのではないかということもよく聞きます。それは,私は総括次第だと思います。プログラムはそこまで出口ということを言っているわけではないので,総括の考え方次第でできるだけ横断性を持たせるという指導は非常に重要と思います。
 いずれにしましても,科学が変貌していますので,メカニズム論だけではなくて,実現的な問題にもいかに対応するかということをバランスよく進める役割をこの戦略事業が担っているということと,今度スタートするACT-Xは,そういう意味では非常に若い人たちを奨励するとてもよい企画だと考えています。
 以上です。
【西尾部会長】
 観山先生,お願いいたします。
【観山広島大学特任教授】
 戦略的創造研究事業及び科研費というのは,研究をサポートする競争的資金として非常に重要だと思っておりますが,私が部会で随分強調したことは,こういう競争的経費が新しい分野をいかに創造できるかという点も重要なファンクションではないかと思っております。ちょっと私に近いところで言いますと,今年話題になったのは例えばブラックホールの画像を撮ったというものですが,あれは天文学の成果というよりは,統計学との融合によって良い成果が出たという結果であります。この研究は科研費の大型科研費でスパースモデリングの研究という大型の研究の採択があったので,それの共同研究の結果なのですが,その中心メンバーの統数研の池田さんに聞くと,例えば米国では2000年ぐらいからそういう統計学とほかの分野との融合に関して資金が出ていたというようなことを聞きました。既存のいろいろな研究,優れた研究者にサポートしていくというのは非常に競争的経費の重要なファンクションだと思うんですけども,競争的経費を使って新たな分野をどうやって創っていくか,チャレンジしていくかというインセンティブにもこういう資金が必要ではないかということであります。戦略的創造事業ではそのことも考えて,先ほども金子さんからありましたけれども,一つの分野を割と絞って公募するのではなくて,割と幅広に公募して,その中で新たな分野を創造するところをサポートしていきたいということとか,例えば今,永井先生からありましたネットワーク型という,違う分野の研究者を融合して作るという仕組みも随分重要じゃないかと思います。
 ただ,その戦略的創造研究事業を少し離れて,先ほど申しましたように競争的経費の役割としては,新分野を創造するためには何らかの仕組みを作っておかないといけないと思います。これは科研費,戦略的創造研究も同じなのですけれども,三つの観点を私は考えておりまして,一つは公募の在り方です。競争的経費というのは自分のメジャーな分野で経費を獲得していくというのが一番簡単ですので,そういう分野に申請するわけですが,チャレンジしたい,違う分野と一緒にやりたいという部分は,なかなかそういう項目の募集があっても動機付けが難しいですよね。ですから,そこに対して重複して応募できるような形を一つは考えるべきではないかということです。2番目は審査の在り方です。具体的にはなかなか難しいですけど,審査員の目利きの力だと思うんです。よく各分野からすばらしい先生が集まって総合領域とかを審査するのですけれども,そうではなくて,新しい分野を創るというある種の経験だとか,そういう方を集めてこないと,なかなか目利きという形では難しいのではないかということです。3番目は評価の在り方。つまり,学際的研究というのは,ある種科研費なり,CRESTなどに採択されても,そう簡単に成果が出るものではないということを十分考えておかないといけないと思います。何かのきざしとか,それから新たな方向性を創り出す課題をどういうふうに見付けたかというところで評価しないといけないと思います。せいぜい長いとしても5年間の中でどれぐらいのことができたかというのはなかなか難しいかなと思っています。公募審査評価の在り方として,日本はこれだけいろいろな競争的経費が展開されていますけれども,新しい分野を創っていかないと,国際的な中でなかなか,埋没はしないかもしれませんけども,日本発の新たなパラダイムを創るためには相当重要な項目で,科研費や戦略的創造研究に私はすごく期待しているところでございます。
 ありがとうございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 では,栗原先生,できましたら簡潔にお願いします。
【栗原委員】
 今,金子室長や,お二人の先生から御紹介があったようなところが全体なのですけれども,基礎研究振興部会で審議させていただいた検討の様子について,少し追加説明させていただきたいと思います。
 今回,このような検討を行ったのは研究力向上改革2019の議論を受けてということで,研究力強化や,研究人材強化という観点から検討を行ったところです。今,まとめについては金子室長からも御紹介いただいたとおりですが,特に新しい分野や融合分野を創るという点では,社会的な要請に応え,新たな知の開拓をするというトップダウン型の戦略事業というのは非常に重要ということで,全ての委員が今後の強化が必要ということで一致いたしました。
 最近は戦略目標が少し細かくなり過ぎているのではないかという意見もあり,特に戦略目標の大くくり化は,例えば思いがけない提案,トップダウン型で目標を検討するときには想定していなかったような思いがけない提案を喚起するというような意味とか,今,研究の変化が非常に速いので,想定よりはずっと展開が速い。そのようなことに対応するためにも大くくり化は必要だということで,この点を特に強く主張するような検討結果となっています。
 さきがけについては,非常にすばらしいという意見がどの委員からも出ましたが,さきがけの3年の研究期間が終了した後,その研究をどのように展開していくのか,それが支援できているかということが課題ではないかという点がまとめの意見です。戦略の中での接続を検討いただきたいとしておりますが,そういう意味ではこういうようなトップダウン型のプログラムで多くの成果が出た後,科研費によっても支えていただいているということは研究開発の中での役割として非常に大事だと感じています。
先ほどの戦略目標の大くくり化ということもですが,やはり大事なのは質の高い戦略目標を設定いただくということではないかということで,今回いろいろな具体的な検討の形についても議論しました。
 これも先生方からも,金子さんからも御指摘されているところですけれども,戦略目標の設定から研究総括が領域運営するまでというのは,本当に複数の階層があって,実際にいい事業の推進をしていただくためにはバーチャルラボラトリーということが特色なんですけども,単に1足す1が2になるのではなくて,3,4,5となるような運営をしていただきたいということで,JSTにマネジメントの高度化,これはいろいろな意味での実践の積み重ねと,いい実践の共有とか,様々な形が具体的には議論されておりますけれども,そのような点を最後に関係者にお願いしたいという形で今回の検討のまとめとなっています。
 以上です。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 永井先生,観山先生,栗原先生,本当に貴重な御意見,ありがとうございました。
 それでは,意見交換に移ります。岡本室長から最初に本日の会議の趣旨を説明いただいておりますので,その趣旨に沿った形で御意見等をいただければと思います。国際交流事業に関する先生方におかれても,御遠慮なく御意見等をいただければと思います。何かございますでしょうか。中村先生。
【中村委員】
 中村です。以前に研究主監をやっておりましたので,もう10年前ですかね,その当時のことは大分知っているつもりです。
 二つ質問があります。一つはお金の件なんですけど,科研費の場合には総額2,000億円だとしたら間接経費3割ということで,先生方には7割が来るわけですよね。JSTは戦略創造事業に400億円のお金を取っているとなっていますけども,この400億円は科研費と違ってJSTが経費の上前をはねていますよね。400億円という予算が戦略創造にあるんだったら,そのうち幾らお金が研究者に来ているのか,是非教えてほしいんです。CREST研究者の事務量が多いというのは,要はJSTの事務方が仕事を作り過ぎなんだと思うんですよね。現状の働き方では,JSTの事務が働けば働くほど,どんどん研究者の仕事が来る。逆に,JST事務が働いて,研究者の仕事を減らして欲しい,さらにJSTの事務経費を減らして研究費に回して欲しい.事務の働きが本当に全体にとって役に立っているかどうかを是非,お金の面から知りたいんです。それが最初の質問です。
 2番目の方は,ここにJSTの戦略目標の決定の仕方が出ています。エビデンス・アンケート結果などでいろいろ調べた後,文部科学省が決める。ですから,このやり方で選ばれる戦略目標は,今芽吹きつつある先端的テーマではなく,すでに皆がよく知っている,つまり周回遅れのテーマになるわけです,みんなやっているから我々もやりましょうの精神。この戦略目標設定のやり方をしているJSTには,本当の最先端はできないというところから議論が始まらなくちゃいけないと思います。それなら本当の最先端はどこが見つけるか。それが科研費なんですよ。何の芽もないところからなんだか分からないような研究テーマを科研費で出してきて,それをJSTがポンと拾い上げるということが大切だと思います。これは先生方も同じ御意見だと思うんですけど,エビデンス・アンケートで調べてというアプローチのほかに,科研費の成果を活かすための,何か新しいやり方を考え出す事が必要だと思うんです。科研費で出てきたテーマが国の戦略目標に合っているならば取り上げるというようなJSTの体制が必要なのではないかと思います。
 最後に,CRESTの戦略目標実施期間は5年で,そもそも継続性がない。5年ごとにテーマがぐるぐる変わる。ある戦略目標が実施されると,あとは当分,何年も同じテーマは回ってこないわけです。ですから,それがさっきのさきがけの問題と同じなんで,CRESTやさきがけで拾い上げても,同じ研究テーマは当分出てきませんから,せっかく育った人や成果がそのまま立ち枯れてしてしまう。これは実は現行科研費の特別推進の採択方針や科研費の重複申請禁止のルールと似ていて,研究費は一人一回一種目,一回研究費を取った人は続けて研究費を配らない,色々な人にグルグルとお金を回すという文化が日本に定着しつつあるというのではないかと懸念します。これでは折角育てた芽や木に水をやらずに枯らしている,ということに皆が気がつく必要があります.良い研究は継続的に支援される,努力している研究者は必ず報われる,という仕組みをどこかで担保しないといけないんだと思うんです。継続部分が,そもそも国立大学のいわゆる校費だったんです。昔は継続的支援があったわけですけども,そういう校費もなくなった。科研費の方も継続支援,重点支援を嫌う雰囲気が出てきて,JSTはもともと継続支援なしの方針ですから,日本全体が細切れ支援ばかりになって研究者の層が薄くなってしまった。JSTの方も細切れテーマは止めて,幅広く継続的に支援する体制を作る必要がある考えています。
 以上です。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 今のことについてお答えいただけますか。よろしくお願いいたします。
【金子基礎研究推進室長】
 ありがとうございます。事務的な側面から,私でまず答えられる範囲についてお答え申し上げたいと思います。
 まず,実際の現場の研究者の方にどの程度の規模で行っているか,金額の面から理解したいというお話です。詳しくは別途資料で整理したいと思いますけれども,間接経費については3割という大原則でやってございます。そのほかに共通経費ということで会議開催経費でありますとか,領域会議とかそういった経費がございますけど,そこについては改めて整理して御報告したいと思います。
 また,事務作業の負担軽減というか,研究時間の確保ということでございますが,その点は今回の議論でも,私どもも十分注意して,重要な点と理解して,先ほど御紹介しましたけれども,可能な限り事務負担は必要最小限に,関わりについては低減するということで,そういった意味でもコンプライアンス上とか,経理の適切な管理上,どうしても必要な部分を見極めて,少しでも不必要なものはやめたいという方向で鋭意やっていますので,そういった議論がありましたという御紹介です。
 また,周回遅れになるんじゃないかという御指摘でありますけれども,そこについては,まさにこの部会で御議論いただいているように,個々の事業で全ての学術を支えられるわけではなくて,まさに研究ファンドとしての多様性も一方で重要かなと,一つの事業を担当する立場から思ってございます。戦略事業でできる部分,できない部分が当然あろうかと思いますけど,できる部分については,一つはトップダウンというこの事業の一番のフィロソフィーを支える部分でもって国が戦略的にやるというところでありますので,そこと,中村先生がおっしゃる部分の兼ね合いにつきましては,可能な限り大くくり化して個々の優れたアイデアをいかに引き出せるかというところが最大のポイントかなと思っていますので,そこは引き続き意を用いてやっていきたいと考えてございます。
 私からはとりあえず以上です。
【西尾部会長】
 今,中村先生から御質問いただいたところで一番重要な点が科研費と戦略経費をつなぐというところだと思います。その場合に,戦略目標の設定が結構キーになるのではないかと考えております。かねてから戦略目標をどのようなプロセスで決定するのかということで,その透明性も含めていろいろと議論されてきました。その辺りに関して,できましたら永井先生や観山先生から,中村先生のおっしゃったコメントに対しまして何か御意見等をいただけるとありがたいです。
【永井自治医科大学長】
 戦略目標はJST CRDSのスタッフがかなり広範な方々に意見を聞いています。恐らく数十人に上ると思います。それからワークショップを2回,場合によっては3回開催して方向性を決めますが,学術振興会の担当者との議論はないように思います。実際,研究者は課題を切り分けて両方にいますし,戦略研究は科研費の領域をいかに越えて横断的に行くかということで情報を集めています。科学技術振興機構と振興会の間の交流というのは,確かに一つ御指摘のような問題はあろうかと思います。ただ,さきがけを獲得した方は非常に有望な若手ですけど,その中でも卓越した成果を上げた方に対しては最近PRIMEというのがあります。これで継続を図れるということで,そこにつなげた方は相当恵まれた研究環境にあると思います。
 ただ,競争率が非常に高いということで,全員にチャンスがあるわけではないという問題があると思います。
【西尾部会長】
 多分,JSTでなさっているいろいろなデータの分析が,中村先生がおっしゃるように今までのことをベースにした分析なんですね。それに対して,科研費というのは自らの発想で今までのことにとらわれずに多様な研究課題の申請がなされています。戦略研究において,過去のテーマではなく,新たなトレンドをうまく生かし切れないかというところに問題があるのではないかと思うんですけれど…。
【永井自治医科大学長】
 戦略研究という以上は,どうしてもトップダウン的な目線になるので,そこはもう本質的にある程度は避けられないと思います。問題はやはり運用だと思います。それはもう目利きである総括がいかにインタラクティブにして新しい研究を生み出すかというところに懸けるわけです。枠組みの全く分からないものを切り開こうというのは,なかなか文部科学省に通りませんし,説明し切れませんので。ある程度目標を立てつつ,インタラクティブにして想定外の成果を生み出す。そういう意味で総括の役割が非常に重要です。総括はそのぐらいのビジョンを持っていないといけないわけです。
【西尾部会長】
 中村先生,今のお答えにつきましてどう思われますか。
【中村委員】
 私もそのとおりだと思います。昨今の戦略目標の設定が狭くなり過ぎたので,私が申し上げたようなことになってしまったのかと思います。大くくり化すると,5年ごとに戦略目標を変えるというやり方はそのままでも,実はいろいろな人が拾えるんだと思うんです。CRESTが始まったことの戦略目標の幅はすごく広かったんですよ。ところが最近随分と狭くなってしまった,また大くくり化されればいい人が採れ,そして育つのではないかと思います。
【永井自治医科大学長】
 狭いように見えても,実際は運用で広くできるわけです。そういう意味で総括が非常に重要なんですね。一方で,例えば新学術のようなものに出しても通らないものが結構あるんです,これは新学術じゃないだろうと言われる。そうすると,むしろそれは戦略研究の方で引き取って想定外を目指したということも実際にありました。人間の頭で考えることというのはなかなか難しくて,私はむしろ動かしながら想定外を目指すということが非常に重要ではないかと思います。
【中村委員】
  よろしいですか。
【西尾部会長】
 どうぞ。
【中村委員】
  今,ここにある書き物が,やっぱり昔と同じ書きぶりなのが気になるところです。書き物の上で,アンケートとエビデンスベースで決める,と書かれるとまた昔どおりになってしまう,永井先生がおっしゃるとおりなってしまうので,文科省として新しい考え方を考えていただいて事務的な文言に反映させていただく方がいいんじゃないかと思うんです。そうしたらパッと変わると思います。
【永井自治医科大学長】
 これはJSTで全部決められるわけじゃないんですね。やっぱり説明して焦点を絞って,いろいろな人を納得させないといけない。ただ,そのとおりにやるとまさに型にはまってしまう,あるいは狭過ぎるということで,そういう意味では,繰り返しになりますが,私は総括の力量が極めて重要だと思います。
【西尾部会長】
 今御指摘いただきました文言の書きぶり等のことは,対応をお願いします。
ほかに御意見がある方がおられると思いますので,どうぞ。
【中野委員】
  すみません。バーチャルラボラトリーという考え方は非常にすばらしいと思うんですが,一方,問題としては継続性というのがあって,支援が終わった後に,特に若手ですよね,その資金で雇われた人をどう安定させるか,更に発展させるかというところが非常に問題なんですが,そういう場合にリアルなラボ,既にポストを持っているいろいろな研究所であったり,大学であったりとかとの連携というのはどう考えられているのか。あるいは,こうやって新分野とか融合分野という新しい分野を創ってきたときに,その人たちのポストを作っていかないと,せっかくそこに投資しても続かないですよね。そこのところはどういうふうに工夫されているのかということを聞きたいです。
【金子基礎研究推進室長】
 継続性の話ですけれども,そこはこの制度だけではちょっと限界があるのかなと感じてございます。率直なところ,このファンドとしても継続的な部分についての重要性はいろいろなところで御指摘がありますので,そういった制度,予算要求等々やってございますけれども,ほかの制度とも併せて全体としてうまくいくようにするという,そういう視点のアプローチではなかろうかと思います。
【西尾部会長】
  論点としてお願いしたいのは,科研費と戦略経費の二つの事業をお互い効果的にどのようにうまく連携を取りながら実施していくのかという,そのようなことを是非とも今日は議論したいと思っております。その点はどうか念頭に置いていただければと思います。
 今の件ですか,はい。
【中野委員】
 今の件です。尻切れトンボみたいになってしまうので,科研費も同じ問題を抱えていると思うんです,特に大型の科研費というのは。だからこういうところはいろいろな事業が連携して,同じ方法で解決するということもあり得るんじゃないかなと思います。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 そうしましたら,城山先生,どうぞ。
【城山委員】
  私も人文社会科学の観点から少し別の切り口で少し意見を申し上げさせていただければと思うんですけども,私自身,基礎研究振興部会の議論にも参加させていただき,あと個別にはさきがけのアドバイザーのようなこともやらせていただいた感想でもあるんですけども,ある種のバーチャルラボだとか融合的な研究を,短期的評価のプレッシャーを余り受けずにやっていく場があるというのは,すごくうらやましいなというのが正直な感想としてございます。
 もちろん,研究開発という大枠のなかに,人社の話が入るか,入らないかという話はあるんですが,学術としてどう発展していくかというときに,もちろんオールマイティではないにしろ,あるプロセスの中である種の目利きたる総括の下でバーチャルラボのようなものがあったり,そこでかなり異分野の人たちがいろいろコミュニケーションして長期的にいろいろなことを考えるヒントになるようなことは人社の場合にも必要で,何らかの形でこういうメカニズムという学習された経験を活かしていけるとすごくいいのではないかなと思いました。
 そのときに,恐らく方向性というのは二つぐらいあって,一つは戦略の方のテーマの中でも社会科学に近いところというのは,実は過去のものを見るとあって,例えば社会の数理モデル化みたいなことを,たしか2回ぐらい議論され,設定されたことがあって,そういうのをうまく生かしていく,あるいは広げていくということもあるかもしれないですし,それから,これは別途,学術分科会の中で人社の特別委員会で議論させていただきましたけれども,例えば少し現代の課題について分野横断的に,かつ学術的にも革新的なものをやっていこうと,そういうスキームを作ろうという議論をしているわけですが,多分そういうものを支えるガバナンスといいますか,メカニズムを考えるときに,今,さきがけ等で経験されているものというのは,いろいろな意味で参考になるんだと思います。もちろんそこでいろいろなプログラムオフィサー的なサポートの,プラス面とマイナス面というのが恐らくあって,また議論になっている手続面でのいろいろなマイナスもあるのかもしれませんが,私の感じとすると,そういうところをきちっとサポートするようなものというのもあることが必要なのかなという気がします。既存の科研費の中でも,例えば特設分野のようなところでは規模が小さいものであっても年に1回集まるみたいなことで少しそういう工夫はされていますが,今までの科研費の枠の中だとかなりそういうサポートは限界があるのかなという気もしますので,そういうことも含めて人社の振興のサポートのメカニズムの在り方というのも,こういうさきがけ等の経験を踏まえて検討していく必要があるのかなという感じを持っております。
 以上です。
【西尾部会長】
 貴重なコメント,どうもありがとうございました。
 どうぞ。
【永井自治医科大学長】
 継続性という意味ではポストの問題は,先ほどのお話でありましたけれども,多くの問題を含んでいます。同じところに研究者がずっといてもマイナス面が出るわけです。例えば旧帝大で研究成果が上がっても,そこにポストを用意して,そこにまた固まっていくということは,これは必ずしも望ましいことではなくて,研究者あるいは研究界としてはそういう優れた人が動きながらダイナミックにいろいろな人材をリクルートしていく仕組みが必要なわけです。そういう意味では,当然大学改革ということになりますが,またそういう大学改革を促すようなファンディング,例えば動いた人を支援するとか,人件費をそこに付けてあげるとか,そういうことで,ファンディングで大学改革を進める必要があると思います。
【西尾部会長】
 研究振興局としては,今の件は非常に大事なことだと思いますので,是非よろしくお願いいたします。
【村田研究振興局長】
 ありがとうございます。手短に。まさに今,永井先生のお話のとおり,研究費改革,研究力向上の改革は今年打ち出させていただきましたけど,そこのポイントは大学改革と一体として考えていくということで,これは我々も高等局とも連携しながら改革の在り方というのを考えていきたいと思っておりますので,引き続き御指導をお願いいたします。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 先ほど来のお話を聞いていますと,戦略研究において間口を広くというか,大くくりした場合に,科研費で行っているキュリオシティー・ドリブンの研究も十分に推進できる状況であると考えてもよろしいのでしょうか。
【永井自治医科大学長】
 狭いところに,あるいは出口だけとかいうのは,決してJSTの趣旨ではありません。そこは総括が考えればよいわけです。総括がアドバイザーを選び,その人たちが申請の採択を決めます。ですから,総括の役割が極めて大きいということです。
【西尾部会長】
 そうなると,本当に科研費と戦略経費の相違をどう捉えていけばよいか。是非とも両輪として必要だと考えるのですけども,いかがでしょうか。
【永井自治医科大学長】
 私自身が総括をしている課題では,例えば出口に向かうといっても,そう簡単にはいきませんので,行きそうな人は入れておくわけです。そして極めて基礎的な人も入れておくきます。チームをデザインしてインタラクションを考えればよいわけです。
【西尾部会長】
 はい,どうぞ。
【山本委員】
 私は,科研費とこの戦略的創造研究推進事業というのはコンプリメンタリーであるべきだと思います。つまり,いろいろな視点があるからこそいろいろな研究が拾える。つまり,トップダウンのやり方であるからこそ拾える研究もあり,逆に完全なキュリオシティー・ドリブンの研究も拾われる,それは額でもなく,基礎でもなく,研究の方法です。私はある面,学問の自由につながることだと思う。それを担保するにはいろいろなやり方がある方がよくて,それらが協力し合うということは非常にいいことだと思います。だけれど,制度的に交ぜてしまうと,あるいは同じ方向に行こうとすると,それは非常に逆に研究者としての間口を狭めるものだと私は思います。
【西尾部会長】
 観山先生,コメントをいただけますでしょうか,どうぞ。
【観山広島大学特任教授】
 皆さんがおっしゃることと同感ですけど,私はまだ新米ですので,1期目で部会にいるわけなんですが,両システムの情報交換,こういう今日も非常に貴重な資料,統計的資料が出てきますけども,もう少し個別の,例えば科研費で言うと基盤(C)とかというのもカテゴリーはすごく件数がたくさんありますので,そこでは無理だと思うんですけども,特別推進だとか,それからこちらで言うとCRESTとかそういうことで少し秀でた研究みたいなものを,ある意味で少し情報交換があってもいいのかなと。それが例えば継続性みたいな,継続ありきではないと思うんですけども,特に戦略の方はある種トップダウン的な性格が強いですので,ピアレビューよりは継続性ということもあり得るかと思います。すばらしい研究に対して継続性ということもある程度動きやすい面もあろうかと思いますので,もう少し種々に情報交換が必要なのではないかと思います。
【西尾部会長】
 非常に貴重な御提案,ありがとうございます。今後考えていきたいと思います。
上田委員,どうぞ。
【上田委員】
 今の件に関連するのですけども,連携と,あと研究の継続性という,予算も含めてその観点で見たときに,科研費はおっしゃるようにボトムアップに個人のキュリオシティーで出るものなので,独創的なテーマも多いと思うのですけども,そこでも成果が出たものと出ないものがあって,出ないから悪いというわけじゃないんですが,出たときに,これがもっと大きな戦略に展開できるかということを検討してみるのもありかと思います。先ほどのエビデンスだとかアンケートとかで戦略を考えるというのも重要ですけれども,科研費で出てきた何か萌芽的な重要な研究をちゃんと見て,場合によってはそれらを融合できないかとか,そういうことを戦略目標にも入れるというような,何かそういう施策も具体的に取り入れると連携も進むし,場合によってはその科研をやった人たちが,あるいはCRESTとかそういうところにも推薦できるようなことかもしれません。そういうふうにすると研究の継続性も出るかもしれないので,そういう連携を具体的文言に入れて,アンケートだけじゃなくて,科研費からの延長みたいなものも入れるというようなことを入れればいいかなと思います。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。永原先生,上田委員がおっしゃった科研費と戦略経費とのつながりに関する意見を聞かれて,JSPSとしてはどう思われますでしょうか。
【永原JSPS学術システム研究センター副所長】
 山本委員が御指摘されましたように,それぞれの事業が同じタイプではないということは,むしろ逆に明確にしておくことが,研究者にとっても研究費制度全体としてもよいのではないかと思います。つまり,科研費はボトムアップ以外にはありえないわけで,JSTの事業の方に逆に大きく自由度を持たせて科研費と同じようになってしまったら,外から見たら同じようなものとなり,要らないだろう,統合しろと言われるだけのことです。したがって,戦略は戦略で適正に戦略を決めてやることが,やる側もやりやすいし,成果の切り分けも明確になります。研究者としては自由度が欲しいというのはありますが,永井先生のお話ですと総括の方の力量とか,課題設定が大変とのことでして,そこを是非努力していただくことが重要と思います。それに当たり情報交換が必要という御指摘もありますが,継続性担保のためというのは,少しおかしなことかと思います。ボトムアップでやっている研究と戦略的にやる研究で,もしかしたらトップの人,リーダーは同じかもしれない,同じ組織に属しているかもしれません。だからといって,別々の事業で継続性を担保するという制度を作ってしまうと,全ての研究が科研費から戦略に向かわなくてはいけないことになってしまいます。しかしそれが可能な研究内容と,可能でない研究内容があるので,継続性についてそれはそれぞれの制度の中で何らかの仕組みがあった方がよいのではないかと思います。
 特別推進研究に関しましては予算が非常に乏しく,基盤(C)等のニーズも高く,そのために現状では,科研費改革においては1人1回きりということになり,これに対して多くの批判を頂いているわけですけれど,予算的な余裕ができれば一部の人に継続も可能にすることができますし,若い人に参入していただくこととも可能となるので,その方向を目指すほうが望ましいと思います。異なる制度間で継続をというのは,予算を配る立場から,あるいは全く外部からは望ましいかもしれませんけれども,研究者,研究サイドから考えると無理が生じるのではないかと思います。
以上です。
【西尾部会長】
 貴重な御意見をいただきまして,どうもありがとうございます。
【甲斐委員】
 皆さんのおっしゃることはすごくリーズナブルだと思います。山本先生もおっしゃったように,この2つの制度が補完的にあるべきだと私も思います。無理にJSTの方のプロジェクトにキュリオシティー・ドリブンを入れていくとか,基礎研究の芽をなんていうふうに言うと,違いが分からなくなって,二つは合併すべきだということになっちゃいます。そうではなくて,本当のキュリオシティー・ドリブンできた科研費制度,まだまだ問題はありますけど膨大な申請数をしっかり審査する制度まで作り上げていて,これはこれですごくいい制度と思うんです。一方で,戦略から来たトップダウンもあっていいと思います。私も両方の審査員を努めた経験からすると,両方必要と思います。下から上がってきた本当に学問としておもしろいものだけではなくて,日本として戦略的に進めるべき領域や,例えば優れているけれど高額な機械が必要で科研費からは無理な場合とか,レベル的にちょっと世界より遅れているけど,日本が世界と肩を並べて最先端研究を推進していくためには,今ここは絶対に押す必要があるとか,そういうのをJSTの方で採択することがあって,それはすばらしいと私は思うんです。
 継続性の担保というお話しが出ましたが,それもやり方によってできると思うんです。そういうものも取ってほしい。科研費で下から上がってきたのを審査していると,本当にいいけれども,財政的理由から採択できないのがあるんですよ。そのすばらしい研究と,トップダウンでの研究を比べると,科研費の方を取ってあげたらと思う場合もありました。我が国の学術発展のためにはこちらの方がいいんじゃないかというのもあるので,私は審査制度とか研究領域を決める際などにも互いに少し話し合った方がいいのかなと思います。全ての情報交換じゃなくても良いので。
 先ほどから,研究総括がすごい力を持っていらっしゃるという話がありました。その方は伯楽であってすばらしい方なのだろうと思います。しかし,遠くから見ている,多くのボトムアップだけをやっている平の研究者達からは,周回遅れの先生もおられるのではないかと思われることもあります。すばらしくエスタブリッシュしていらっしゃいますけれども,もうちょっと古いという先生はいらして,その方がどこまで引っ張っていっちゃうのかと疑問を感じてしまうこともあるんですね。そういう批判は知るべきだと思うんです。すばらしい総括も確かにいらっしゃって,その領域を大きく引き上げてくれるんですけど,そうでない場合もある。あと,トップダウンといいますけど,トップって何だろうと,それは政府なのかと。そのプロジェクトを決めたり,総括を決めたりする過程でアンケートをされていると聞きますが,意外と一定のコミュニティでの意見なんですよ。それは,科研費を審査するボトムアップの審査員集団から見ると,ちょっと首をかしげるときもあるんです。人数が多いといったって,ある特定の人たちでやっているというふうに見られる場合もあります。
 だから,総括にそれほどの力を持たせるんであれば,その審査制度も少し検討しなおしてほしいと思います。総括の決め方も,トップダウンのテーマの決め方も,審査員の決め方もです。総括が全ての審査員を決められるなら,プロジェクトの方向性は決まってしまいますから。永井先生のようにいろいろなテーマや研究者を拾ってくださる先生であればいいですけど,そうじゃない先生は確かにいらっしゃいますよね。だから,そういうことを少し考えて,そこら辺のところは情報交換してもいいのかなと思うんです。
【永井自治医科大学長】
 実際に我々もかなり広く意見を求めて,かなりアカデミアから推薦を受けて来るんですね。
【甲斐委員】
 それは存じ上げています。
【永井自治医科大学長】
 そういう意味で,総括の選び方もそうですし,教育ですね,こういうところは一体化して議論する必要があるだろうと思います。
【西尾部会長】
 本議題に関しての最後の御意見として栗原先生,どうぞ。
【栗原委員】
 今いろいろ御意見が出たところは,我々の検討の中でもいろいろ意見が出たところに重なっておりまして,特に最後の運営のところは非常に重要だと思い,マネジメント強化,高度化ということを申し上げたところです。ただ,マネジメントの高度化も,余り単純な言葉に直してしまうと,何か非常に決まり切ったものになってしまうので,これはJSTの運営側の能力をより上げてほしいというような言葉になっておりまして,領域の総括の選び方から運営について,もう少しJST側が意見を言えるようないい具体的例が提示できるようなこともあってもいいのではないかと。逆に総括が神様ではないのではないかというような意見も出ておりますが,もちろん非常にすばらしい総括の方もいらっしゃるわけで,そういう場合の,どのような運営がよかったのかというものが少しでも言葉になれば,それを蓄積してほしいということを申し上げているところです。
 また,トップダウンとボトムアップについては,必ずしもトップダウンがキュリオシティー・ドリブンでないとも言い切れないと思うので,非常にシンボリックには,例えばナノテクとか,環境とか,情報とかという戦略テーマのもとで非常に研究が推進されたと思うんですけども,それはまだ研究者コミュニティの中にそういうテーマがそれほど広がっていないときにどういうことができるかというのを問い掛けるというような意味でも非常に重要だったと,そういう役目を戦略は負っていたと思います。また,さきがけについては,すばらしい若手を見付けて育成するという意味であれば,より大くくりな初期の頃のような枠組みですね。例えば「構造と機能」というような禅問答みたいな領域のときもあったので,そういうことも大事ではないかと思います。このあたりは単純な言葉にしてしまうと運営の高度性ということと必ずしも相入れないところがあるので,それは永井先生が繰り返しトップダウンとおっしゃって,領域総括の重要性と,目利きとおっしゃっていることと重なると思いますが,ただそれを目利き力にとどめずに,できるだけJSTの皆さんには具体的な形で説明できるような,そういうことを希望したいというのが我々の部会の意見でした。
 あともう一つ。さきがけは給与も支払うことができて,従来ですと博士の学位を取得したばかりの人がポストがない場合に,どうしてもこの研究をやりたいからといって提案してきたようなこともありました。そういう意味で間口を非常に広く開けているというところも必要だと思うので,科研費に比べても間口の広さというのはあると思うので,そこが相補的に人材育成とか,意欲のある人たちをうまく汲み上げるというようなところで,うまく機能するといいと思っています。
【西尾部会長】
 それでは,今日御意見を伺った中で,永井先生からお話しいただきましたように,実際の運用のところでいろいろなバラエティがあるということは,我々としてきっちりと認識することが大切に思います。そのうえで,科研費と戦略経費が本来持つ特徴は我々がきっちりと捉えておくことが肝要であると考えます。そういう中で,観山先生がおっしゃいましたように,科研費と戦略経費の事業同士のいろいろな交流があってもよいのではないか,ということも含めて,今後,双方の事業をより有機的に動かしていきたいと思います。
【永井自治医科大学長】
 やはりそのためには人材育成なのですね。我々も相当広く総括の人材を求めています。これは日本のアカデミアとしてどういう科学を目指すか,どういう人材を育成するか,そこの層を厚くするということも,これは我々に課せられているところです。
【西尾部会長】
 分かりました。それは両事業で一緒にやっていくということですね。
それでは,貴重な御意見,どうもありがとうございました。事務局において取りまとめをお願いいたします。
 続きまして,国際交流事業について,担当課より御説明を願います。時間が限られてますので,簡潔にお願いいたします。
【新田国際戦略室長】
 国際の方は,多分もう少し抽象的な話になるかと思います。
 資料4でございますが,まず,今,現状はどうやって行っているかということで,現行の第5期の基本計画から国際関係の分を抜粋させていただきました。国際というのは,一つはそもそも日本というのが国際的にしっかりとした存在感を示す必要があるという基本的な考え方があって,そこの部分,特に我々は学術・科学技術の部分で一種の尊敬を得ているという部分があると,そこをしっかり生かしていきたいという思いがあります。
 さらに3ページ目ですけれども,世界の研究ネットワークの一角に日本が入ることによって,しっかりと学術情報が入ってくると,そういう環境の中で,それは日本の研究力の向上にもつながるということ。そういうことを達成するために,特に国際共同研究というのを戦略的に進める必要があるというのが今の考え方で,本日は特に国際交流の中でも,この国際共同研究という部分に焦点を当てて御説明させていただきたいと思っております。
 次が,国際共同研究の階層という,4ページ目でございますが,これは一般的に確立した考え方ではないのですが,我々が議論する上で整理してみたんですけれども,左側の方に3階層という形があって,第3階層,第2階層,第1階層というのがございます。この第3階層というのは,どちらかというと例えば二つの国が国際共同研究するときに両方のファンディングエージェンシーからお金が入ってくるようなもの。第2階層のものというのは,どちらかのファンディングエージェンシーがサポートしているもの。先ほど例に挙げました科研費の国際共同研究加速基金というのは,どちらかというとこの第2階層になります。それから第1階層,これはファンディングエージェンシーの資金ということではないのですけど,普段の研究活動の中から自然に情報交換したりとか,場合によってはセミナーを共同開催したりとか,そういう自然に学術の中で行われている,そういうような協力というのもあるということで,これらは全て大事なんですが,国の施策としてどこに力を入れるかというと,ここの第3階層というのが非常に重要ではないかというのが我々の頭の作りになっております。
 後ほど述べますけど,第3階層というのは,きちっとやればやるほど準備に非常に時間が掛かるんです。それが右側の図ですけれども,非常にティピカルなやり方ですとどういうふうに行うかというのがこの右側の図になっていますが,まずは両方の国の政府間で,この分野の協力というのがお互いの国にとって重要だというような合意をいたします。その合意ができたら,その分野の中で具体的にどういうところを掘り下げるといい研究ができるかということ,これを今度はそれぞれの国のファンディングエージェンシーが相互で相談していただいて,ここで具体的なテーマを設定すると。そしてこのテーマに基づいて実際に課題の公募というのを行いまして,そうすると,今度は公募を見たそれぞれの国の研究者が,では,このテーマの中で我々は共同して何ができるかということを議論するという,高い層でそれぞれ議論,政府レベルでも議論して,ファンディングエージェンシーレベルでも議論して,さらに研究者レベルでも議論すると,そういうような流れの中で共同研究というのを行っていくと,これが典型的な第3階層の研究の進め方ということです。
 結構準備に時間が掛かります。そうすると,これはちょっとおもしろい効果がありまして,せっかくここまで準備して採択されませんでしたと。でも,ここまで議論してきたことを無駄にするのはもったいないよねということで,じゃあ,第2階層で研究できないかとか,ないしは,ファンディングエージェンシーのお金がなくても何らかの形で第1階層の研究ができないかとか,要はせっかく議論してきたことを何らかの形で生かそうというインセンティブが働くということもあるので,この第3階層を推すことによって自然と国際共同研究自体のパイが広がっていくという考え方をしております。
 今申し上げたのを,今度は時間のフレームというのを見ながらというのが5の図ですけれども,まず情報収集して,省庁間で調整して,ファンディングエージェンシー同士で協議して公募して,それで審査もそれぞれが行って,場合によっては合同審査を行ってということで採択していくわけですけど,こうやって見ていただくと年の単位で時間が掛かってしまうんですね。ですから,ジョイントコール,共同公募をきちっとやろうとするとそれなりに時間が掛かる,かなり大掛かりな話になってしまうということをここで一言御紹介したいと思います。
 次の国際動向ですが,これは米国,ドイツ,中国,EU,フランスのデータでございますけれども,このどれを見ても分かりますが,国際共同研究というもののパイというのは明らかに各国で増やそうとしています。これは一つの国の中で研究を行っているよりも,ほかの国の,いわゆる異なる情報,価値観を持っている,そういうところと刺激し合いながら研究することが一定の生産性の向上をもたらすと各国が考えていて,ある程度国際共同のパイを増やそうとしているのが全体の動向になっております。
その中で昨今,例えば米国ですとトランプさんの発言で非常に政策が頻繁にと変わるとか,EUに関しましては,イギリスのまさにEUを出ようとすることで,実はこれからのEUの学術研究と協力というのはどうなっていくかというのが非常に不透明なわけです。その中で日本というのは約束したことはきちっと守って,研究するといえばちゃんとしっかりそこで共同研究するという意味において非常に信頼を得ている,要は安定的なパートナーとして非常に評価されているというのが日本の位置付けだと我々は考えています。
 ただ他方で,安定はしているんですがパイが非常に小さい。ですから,他のアメリカとかEUのように国際共同研究のパイが大きくあるわけではないので,研究したい国,一緒に組みたいと思っている方々は多いんですが,そのデマンドに対してサプライが十分でないというのが日本の,今国際共同研究における状況だと考えてございます。
 これは英国の方が,黄色の部分ですけれども,日本と英国の研究というのを調べました。そうしますと,国際共著論文,各国のほかの国との共同研究に比べて,日本との間は非常に質が高いと,ただ数が少ないと。だからここを伸ばせば質の高い研究がもっと増えるのではないかというような言い方をイギリスはしてきたりもしています。
 次の7ページが,我々が今担当しています事業の一覧でございます。JSTの事業,AMEDの事業,それからJSPSの事業ということでございまして,先ほどからトップダウンという言葉が出てきましたけど,上二つが今までの議論でいえばトップダウン型,政策ドリブン型の施策でありまして,最後のJSPSでやっていただいているここが,言ってみればボトムアップないしはキュリオシティー・ドリブンの部分ということで,現在はこのようなプログラムが国際共同研究と銘打って走っているものでございます。
その中で特に代表的なものとして,SICORPを御紹介させていただきたいと思います。これは今JSTのポンチ絵になっていますけど,AMEDも同じスキームで医療の分野でやっております。先ほど御説明しました3階層で言いますと,第3階層のそれぞれの国のファンディングエージェンシーが資金を出す形の共同研究でございます。
 それで,中ほどにいろいろなタイプ,サイズ感,規模感に応じて幾つかのメニューが用意されておりますけれども,その中央あたりにあるとおりに,まず国のレベルで分野について合意して,JSTが相手国機関と調整し,そして最後,大学や研究機関が研究を行うという流れは,今御説明した典型的な第3階層の研究のやり方を踏襲しているものでございまして,これまでの成果としては,下に書いてあるようにフランスとの共同研究,ドイツ,それからヴィシェグラード4か国と,これはちょっと特徴的ですけれども,アメリカとかフランスとかイギリスとか研究のパイが大きい場合は,そことのバイの関係というのは作りやすいんですが,少し小さい国だと,必ずしも毎年いい玉が出てくるとは限らないですし,その分野で本当に強い研究者がいるか分からないという場合は,バイという言葉は使っていますけど,こういうふうに例えばチェコ,ハンガリー,ポーランド,スロバキアという四つの国を一つの固まりとみなして,そことの間で共同研究をするみたいなことも実はやって工夫している,こういうところによって大国でないところに対しても共同研究というスキームがうまく成り立つようにという工夫をしております。
 このSICORPですけれども,簡単に公募時期とか審査方法,それから審査の観点というのをその次に付けさせていただきました。この中で一番特徴的なのは公募時期,これは一律に決まっておりません。結局相手の国との交渉,調整ということによりますので,ここの部分は組んだ相手の国によってかなり大きく変わります。ですので,このあたりが柔軟に運営できないと,国際共同研究の,特に第3階層の国際共同研究,ジョイントコールというのは,実は非常にやりにくいという事情がございます。
そして審査方法,一応原則はそれぞれのファンディングエージェンシーが審査して採択すると,共同で採択するというやり方。
それで審査の観点は,大体どこも同じだと思いますけれども事業の趣旨,目標,対象分野,それから研究の意義,体制がしっかりしているか,計画がきちっとしているか,それから独創性,それから国際的優位性があるか,あとは,ここにははっきり書かれていませんけど,それぞれの国のいいところをうまく生かしたシナジー効果がしっかりと出ているか,そういうあたりを評価して採択するという流れになっております。
 最後,もう一つ御説明したいのが,これは科研費の世界からはちょっと離れるとは思うのですけれども,最近の国際共同研究というか国際協力の流れの中で,SDGsというものが非常に多く出ております。SDGsというのは,要は最終的には社会実装を目指して,社会を平等に,平等にという言い方はちょっと誤解がありますけど,ターゲットをしっかりと決めて,そこに向かって社会を変えていこうという動きの中で,科学技術の果たす役割は非常に大きいということで,STI for SDGsというのが一つのキーワードになっています。このSATREPSというのは,そういう地球規模の課題を解決するのに共同研究のスキームを取っています。ただ,組む相手が新興国,途上国であって,しかもそこの部分というのは,場合によっては研究インフラが十分にできていない。そこの部分が実はODAのお金,技術協力のお金を入れて,そこで共同研究というものを実施しているという,ちょっと特徴的な事業でありますので,この機会に一つ御紹介させていただきました。
 こういうのが基本的な,今現在行っている国際共同研究の流れと施策の簡単な御紹介でございますが,今回,令和元年6月21日に,今度は6期の科学技術基本計画に向けた提言ということで,国際戦略委員会の方で提言をまとめさせていただきました。
後ろの方に,11ページ,12ページにポイント,それからその次,13ページから本文を付けておりますけれども,この委員会での議論の一番大きなポイントというのは,先ほど申し上げましたように冒頭の1番目の段落ですけれども,日本が今,質の高い,相対的に安定したプレーヤーとみなされているということは,これは一つ大きなチャンスであると考えております。他方で,これも皆さん御存じの話だと思いますけれども,論文の数ですとか,それから特に被引用数,10%,1%と言われている,ああいう質の高いと言われている論文の数の相対的な国際的な順位が少し下がっているという状況にありまして,この段階では国際共同研究の方にしっかりと力を入れていかなくてはいけないということがポイントで,そのために国際共同研究の推進ということで,我が国の研究力向上の鍵でありという,2の1ポツですけれども,であり,そして国際予算の拡充をしっかりと行っていく必要があるということを言っております。
 それから科学技術外交とか,先ほど言ったSDGsの重要性ということについて触れておりますが,そこのところは割愛させていただきます。
 以上でございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,小川委員から何か補足がございましたらお願いいたします。
【小川日本経済団体連合会産業技術本部統括主幹】
 産業界の立場からということで,産業界は,よく出口に近いところに政府のお金を付けろと言っているとか,基礎研究軽視だとか批判を受けるところではありますが,そうではないということを,まず簡単に申し上げたいと思います。
 今年の2月に政府研究開発投資に関する提言を公表しておりますが,私どもはSociety5.0の実現を最重要課題に掲げておりまして,それは最先端の技術をよりよい社会を創るために活用していくということが中心になります。そういうことで研究開発は非常に重要だと思っておりますし,その中である程度もう形になっていて,これから実装につなげていくという部分,それを戦略的にやっていくという部分については,産業界,企業も積極的に投資していかなくてはいけないと思っておりますし,例えば自動運転ですとか蓄電池といったそのような研究については,企業も既に多くの投資を行っております。
 他方で,先ほどから先生方から数々の御発言のありました想定外のところからどのようなものが生まれてくるか分からない,新しいものを生み出していくという,私どもは創発的な研究と呼んでおりますけれども,そうしたものも非常に重要だと思っております。ただ,こういうところに萌芽の段階から企業が投資していくというのは難しいので,政府の研究開発投資については,この後者の方に重点的に投資すべきであるということを提言の中で明確にしました。この文脈の中で,科研費は非常に重要な役割を果たされると思っておりまして,大きく期待しているということも書かせていただきました。
 その上で,本日のテーマである国際化についてです。私どもは,非連続的な,破壊的なイノベーションというものは多様性から生まれると考えております。これは企業の現場でも日々感じていることでございまして,従来の大企業の,日本人のみ,男性のみ,終身雇用で,同じ組織の中でずっと過ごしてきた同じような学歴の人たち,こういう集団の中からはなかなか変化に対応した新しいものというのは生まれてこないということを,本当に実感しております。
 それで企業としてもオープンイノベーション,あるいは人員構成の見直し,いろいろな組織の改革,そういったものを今,日々進めているところでございます。恐らく,アカデミアについても同じであろうと思います。年齢の多様性,性別の多様性,国籍,人種の多様性,分野の多様性,経歴の多様性,そういったものが新しいものを生み出していくときに非常に重要なのではないかと思っております。科研費の改革の中でも,若手に重点的に支援をされているといったようなお取組は,この観点から非常に評価できると思っております。
 国際化というときに,これは国際戦略委員会でも議論したのですが,よく日本の優れた技術で世界に,海外に貢献していくと,そういう文脈で語られることが多ございます。これももちろん非常に重要なことであると思っております。ただ他方で,先ほどの多様性からイノベーションが生まれるということ,これは日本のイノベーション創出力を高めて,それをもって日本が世界に貢献しつつ,日本も成長していく,そういう成長戦略として多様性を確保していく,そのための国際化という捉え方が非常に重要ではないかと私は思っております。
 最先端の研究を行って高く評価されている世界の大学や研究機関というのは,例えばアメリカでアメリカ人が頑張っているわけではなくて,世界中から様々な国籍の方々が,トップレベルの方々が集まってくるのでレベルが高いのだろうと思います。本当に水準の高い方々は,ビジネスマンもそうですけれども自分の両親の国,自分が生まれた国,育った国,勉強した国,働いている国が様々でございまして,もはや何人というくくりはないのではないかと思うことすらございます。そうした方々が日本にも世界中から集まってきて,もちろん日本の方々も頑張って成功のプラットフォームになるような,そういう国に日本はなるべきだと思っております。他国の国際化戦略には,必ずこのような視点が含まれていまして,単に国際貢献ということではなくて,自国の成長,競争力向上に資するための国際戦略ということが明確に打ち出されていますので,日本の国際化を考えるときにも,是非その視点を忘れないでいただきたいと思います。
 ですので,科研費その他研究費につきましても,国際共同研究もその文脈で非常に重要だと思うんですけれども,むしろあらゆる研究について国内とか国際という枠組みを設けずに,このような多様性の確保ということを視点に入れていただければありがたいと思います。そのときには,もちろん研究費の問題だけではなくて,研究環境ですとか生活環境といったことと併せて整備する必要があろうかと思いますし,安全保障の観点からの技術流出の防止といったようなことも併せて手当していただく必要があろうと思っております。
 以上でございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,松本先生,何か補足的な説明がございましたらお願いいたします。
【松本名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所事務部門長】
 WPI事業拠点の事務部門長をやっている観点からも一つお話しさせていただくと,かなりのことは今,お話にあったところとかぶるのでかなり割愛させていただきますが,基本的には国際化の予算というのは,科研費とかで出てきたような研究を更に国際展開するという側面がかなり大きい。利用する側としては多分そういう側面が多いのかなと思います。実際に基礎研究の中でいろいろな国際化が,先ほど説明があったように海外との連携が必要であればそれができるような制度が整ってきていますので,それをもっと大きく発展させる,国際化というか,国際共同研究ですね,あるいはそういった事業に持っていく,そういったところの観点でお金が必要になったときに,こういったものに申請してできるという制度が整っているということが大事だと考えています。
そういう意味で,本当はポテンシャル的に,先ほどのJSTの話と,それから科研費の関係とも似ているんですけど,情報ですよね,科研費の中で国際研究をやっているもの,やっていないものみたいなもののデータがあるといいなというのを思っていまして,単純に欄を作って国際共同研究をやっていますか,あるいはそういう可能性がありますか,みたいなコメントの欄を作ってもいいと思うんですけど,国際のところがそういったものを拾っていくというのも必要かなと思っています。僕らも最初の頃は,アフリカと今いろいろな研究をやっているんですけども,そこの研究のネタを個別に研究者がやっているときにはそれほど注目されていなかったのが,今はWPIという枠組みの中で注目されるようになって,それが非常に伸びたというのはあります。なので,そういう意味で眠っている研究のネタ,国際化に持っていけるようなネタがたくさんあるんじゃないかなという感じは非常にしています。
 あと,研究費という観点から外れますけども,先進国で国際共同研究をやる分には余り何の問題もなく,本当に研究者レベルで研究をやって,いろいろなプログラムがあって,それを支援する仕組みがあると思うんですが,先ほどのアフリカの問題とか,発展途上国と何かをやろうと思ったときに非常に大変なんです。事情があってアフリカのケニアに行かなければいけなくなったことが先月ぐらいにあったんですけど,まず行くだけで大変。行って,現地でサポートがなければ危なくてどうにも動けない,危険の問題とかそういうこともたくさんあって,そういったところの支援をする仕組みというのは非常に必要で,そういう意味ではURAのこともこの部会で議論されているようですけれども,研究を支援する仕組み,あるいは研究を支援できる人材,そういったものの育成の事業というのも国際化とリンクして必要ではないかと考えています。
 ありがとうございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,これから国際関連事業のことにつきまして議論をいたしたいと思います。永井先生,観山先生もどうぞ議論に加わっていただければと思いますので,どうかよろしくお願いいたします。
【竹沢委員】
 大きく2点ございます。1点目ですが,先ほどの御提案の第1層,第2層,第3層というのは斬新な案だと思いますが,実際には第3層はかなり時間が掛かりますし,人文社会科学系でどのぐらいのテーマが拾われるのかということも気になります。実際問題としては人と人がつながっての国際共同研究なので,トップダウンでどれだけうまくいくか。今,私もフランスとしていますが,これは先進国じゃないとだめでしょうけれども,スタートアップ程度のお金を持っている人同士がそれぞれ50/50で出し合って,組織立てもあって,それを申請する,だからテーマはボトムアップだけれども,組織としてはトップからのサポートがあるというやり方もありうるのではないかと思います。
 一部の国公大学の研究者が占めるべきではないと私も思うのですが,海外の人と話すと,誰とするかもありますが,どこの大学とするかということも実際には強く意識される。それが現実だと思います。そうすると,例えば一部の大学に所属する研究者に固定させないために全国共同利用・共同研究機関というシステムがあるわけで,組織としては永続性のあるものが望ましいけども,そこにいろいろな大学の研究者に入ってもらうという形で可能ではないかと思います。
 二点目は,これも前から言っていることですが,今非常にたくさんの海外の研究者が招聘外国人制度とか,客員教授制度でいらっしゃるけれども,その成果については,もちろん出しておられる方もいらっしゃるけれども,全体的に見てコストパフォーマンスがどうなのか一度見てみてもいいのではないかと思うのです。シンポジウムでもよく報告書が出版されますが,海外でも出版するという完全に50/50の関係をもっと築けないかと。ハーバードへ行ったときにつくづく思いましたのは,私の関連分野の教員がたくさんの論文を出しているけれども,よく見てみるとかなり多くが共著なんです。その共著を誰としているかというと,中国から若手が一年来ている,その人と毎週会って教員はアドバイスするだけ,最後には見るけどという,そういう客員制度のあり方もあると思います。今,これだけ日本が好きで,日本にいらしゃる研究者がいるのですから,それを国際共著論文,国際共同研究にもっとつなげていくもう少し違う仕組みを考える必要があるんじゃないかと思います。
 最後にもう一つだけですけれども,人文学・社会科学系の中で,特に人文学に対する評価が,もちろん納得するときもありますけれども,時々首をかしげざるを得ないときがあります。例えば全国共同利用研で,人文学系だけが一箇所も国際共同利用研に認定されなかった。それから科研費の評価に関しても人文系についてはそうした傾向があると思わざるを得ないことが色々と重なってあります。質・量ともに国際的に発信している場合でも,特定の狭い指標で,これに合っていないからという評価が一つや二つでなくあるように思います。この評価の在り方に関しても,国際共同事業を推進していくためには見直しが必要ではないかと思います。
【西尾部会長】
 まず,新田室長,国際関係で何かお答えいただくことはございますか。
【新田国際戦略室長】
 今所属する機関の問題というのは一つポイントとしてありまして,おっしゃるように大学利用機関はかなりしっかりと評価を得ている機関があって,そことまさに国際共同利用機関と組みたいというような話も最近非常に多く聞かれておりまして,おっしゃるようにそういうところを一つの窓口にして共同研究を進めていくというのは,当然にある話だろうと思っております。
それから人文学の評価は,私は分からないのですが,別の文脈で一つありまして,先ほどSTI for SDGsという話をさせていただいきましたが,SDGsになると社会実装ということが非常に重要になってきて,そうしますと科学技術だけでは決して解決できない問題があります。そこのところにしっかりと人文の方が入り込んでいって人文の知識を使わないと,結局プロジェクトとして成り立たないというところがあって,今の御質問の論点と実は違うのですけれども,人文社会というのは非常に重要になってきているということは,国際共同研究の関係者の中では非常に最近そういう意識が高まっているということを一言追加させていただければと思います。
【西尾部会長】
 評価の件で,事務局から何かコメントをいただけますか。今後の対応でもよいのですけれども。
【梶山学術研究助成課長】
 人文社会学関係の科研費の評価に関しては,先生が御承知のようにそれぞれの学問におけるピアレビューがされていると考えます。それを他の分野と併せ検討して,どちらが勝っていくか,どちらが採択されるかというところのお話なのじゃないかと思いますけれども,必ずしも論文だけの数でというような評価というものではないのではないかと考えております。
【西尾部会長】
 今の先生から頂いた御質問に対して,何かコメントをいただけるような方はおられませんか。重要な観点をいくつかおっしゃっていただいたと思うのですけど。どうでしょうか。
【栗原委員】
 私は先日までJSPSの国際委員会の委員をさせていただていましたが,いろいろなプログラムにおいて,領域を併せて審査するということがあり,理工系の課題を押しのけて社会学とか,人文学の課題が採択されたこともありますので,特にそういうバイアスはないと理解しています。どちらかというと委員は医学,農学も含めて理工系の委員の方が多いわけですけども,全般的にはそういうバランスという点は非常にケアされていたと私は理解しています。
【竹沢委員】
 今日のテーマとの関係で申せば,世界共同利用研究所に人文学系の研究所が一つも採択されなかったということは,人文学の国際化と無関係の話ではないと思っています。
【西尾部会長】
 どうでしょうか。中野先生,どうぞ。
【中野委員】
 国際共同研究というのは,我々の分野でもよくしているんですが,実はカナダとしておりまして,カナダの例なんですが,CFI(Canada Foundation for Innovation)という名前が付いているんですが,イノベーションだけじゃなくて基本研究全ての分野を網羅していまして,特徴は,国外からのいろいろな資金であるとか,いろいろな資金の投入があったら,それに対してマッチングファンド形式でお金が出る。国際共同研究に対しても他国から,それは科研費でも何でもいいんですけどそういう資金が入ってきたら,それによって国際研究のための資金がカナダから下りるというマッチングファンドがあります。これはボトムアップで出てきた国際共同研究を組織レベル,組織対組織の国際共同研究にするのに物すごく役立っているんです。非常に戦略的にそういうのものがカナダでは行われています。日本でもいろいろ国際共同研究があるんですが,それを支援するマッチングファンド的なものはほとんどなくて,だから研究者レベルで間に合っている場合はいいんだけど,それを次に組織レベルにしてもっと継続して永続的に発展させていくといったときにそれができないというか,なかなかそういう方法がない。WPIは非常に優れたシステムでそれができているので,もともとは研究者レベルの国際共同研究だったのが組織レベルになって,それによって花開くということがいろいろなところで起こっているんですけれど,そういうことをもう少しこちらの資金で強化できないか。だから国際共同研究のボトムアップの分は科研費でいろいろできるんだけども,それが大きくなってきたときに,海外からの投資を呼び込むためのマッチングファンド的な資金というものをそちらの方で作っていただけないかという質問です。
【西尾部会長】
 新田室長,今のお話はどうでしょうか。先ほどおっしゃった観点は,国際関連事業については,科研費をはじめ,いろいろなファンドを連携させながら進めていくのが今後の方向だというのが御結論と考えてよろしいですか。
【新田国際戦略室長】
 はい。だから,すごく極論の話を言えば,例えば今の国内プログラムと言われている中でも,その中で実は国際共同研究というのは実はやっているとか,CRESTなんかは確か,先ほどの説明には出なかったかもしれませんけど,でも実際にはCRESTに応募して国際共同研究をやっていたりして,必ずしも国際プログラムというものがなければできないというものではないと考えているんです。そこは多分運用とかで少し工夫するというようなこともいろいろと様々なプログラムの中で御検討いただけると,我々としては非常に正しいと思っています。ただ,今おっしゃったようなスキームというのは,すみません,一つだけ確かそういうのがあったというのを覚えていたのですけど,今,手元に資料がなくて。全く制度がないということでは多分ないと思うのですが,分野とかそういう切り口での施策みたいな形になって,多分おっしゃっているイメージはまた違うものかなとも思うので,そこは……。
【中野委員】
 全く分野は限定する必要はないと思うんです。
【新田国際戦略室長】
 ですよね。
【中野委員】
 いや,だから日本はこれから少子高齢化で人も減っていくし,それからお金もどんどん足りなくなるかもしれないと。そういったときに海外からのコントリビューションというか貢献を大きくしていって基礎科学,それから出口に近い研究とかそういうものをいろいろ発展させようと思うと,呼び水になるというか,日本に投資するというインセンティブを与えないとなかなか難しいんじゃないかというのが質問の意図です。だから,いろいろと国際共同研究に対するプログラムはあって,上手くいくのもあるんですけど,それが大きく発展するという次の段階に行く施策というか,そういう事業というものがまだまだ足りないんじゃないかというのが質問の意図です。
【西尾部会長】
 では,中村先生,竹山先生,城山先生,どうぞ。
【中村委員】
 大きく見て,国際共同研究の究極目標というのは有為の人材を我が国に呼び込むということです。共同研究といっても,見ず知らずの人とはやる訳ではありません。お互い実力のほどを知った人と実施し,あわよくば日本に教授として来て貰うことを目的に行うわけです。そうすると二つの問題が浮かび上がる。一つはどうやって最初の関係を作るか。最初のステップがポスドクです。そう考えるとJSPSのポスドクの給料が今や安過ぎる,もう何十年も同じ給料です。もう中国だっていいポスドクだと800万円ぐらい貰っていますから,いい人は日本なんかへは来ないです。アメリカもヨーロッパも給料は日本より遥かに良い。昔はJSPSのポスドクはお金もあって,プレステージもありましたけども,今や国際的に見たらもう最悪という感じですよね。日本の長期デフレ状態のせいです。次は,もう一歩踏み込んで外国から教授を採ってくることになります。今,経団連の方もおっしゃったように,我々の大学でも外国人材を呼びたいわけですけども,呼びたいと思う先生だと給料は3倍ぐらい払わないと来ない。そもそも日本で横並びの給与体系を会社が率先してぶち壊し,そして大学もぶち壊していかない限り,一方的に外国に人材をとられるだけで相互に人事交流するなんていうことは夢のまた夢です。最後の一点。最初に新田さんがおっしゃったように,国際共同研究の予算が余りに少な過ぎるので,全体に対するインパクトがゼロです。予算を何百億円というレベルにしないと,議論するに値する事業にはならないと思います。
 以上です。
【西尾部会長】
 ありがとうございます。コスト的な面で非常に重要な点を御指摘いただいたと思います。海外から卓越した研究者を呼ぼうとした場合,日本の今の給与の状況ではなかなか来てもらえない。それと,これは文部科学省でも是非考えていただきたいこととして,国際共同事業に対する国の予算が余りにも貧弱過ぎるということをおっしゃっていただいたのだと思います。
 どうぞ。
【竹山委員】
 国際共同事業も長く行われていますが,いくつかのミッションがあるかと思います。諸外国,第三国の発展に寄与するというODAを目的としたもの,一方,自国の国力向上に資することを目的とするものもあります。現在の国際共同の評価として,国際共著論文が最終目的のように議論されがちですが,それは重要かもしれませんが,過程であって本当のアウトカムが見えにくいと思います。それをよく考えて国際共同の設定が必要だと考えます。多額の研究費を投入しているにもかかわらず,論文以外の評価軸があいまいのまま,その先の議論は進まないかと思います。例えば,企業のグローバルな連携では,非常にシビアなアウトカムを設定されているかと思います。それができて初めて,連携が成立すると思います。「STI for SDGs」が盛んに議論されますが,具現化するためにもグローバル化,多様化の必然性がありますが,同時に技術流出のリスクも存在します。連携相手国によっては,分野設定も重要な課題かと思います。
 いろいろ考えることは多いかと思いますが,まずは文部科学省が,評価軸を今後どのように考えるかを聞かせていただきたいと思います。
【西尾部会長】
 それでは,最後に城山委員,どうぞ。
【城山委員】
 今触れた点に関して幾つかのコメントなんですけども,一つは,今日の最初の新田室長の御報告は3層構造の中の第3層のところにかなり注目されていたと思うんですが,やり取りの中であったことは第2層の話の実態というのをきちっと評価する必要があるんじゃないかということかなと思います。例えば御発表いただいた資料でも6ページあたりの国際比較は,海外が第2層,第3層で,第2層も含めて増やしていますという話になっていて,じゃあ,日本でどうだということになると,例えば科研費の中に国際的なものがどのぐらいあるのか,研究協力者に海外が入っているかとか,そもそも外国の人が日本の研究機関にいて申請しているものがどのぐらいあるかだとか,あるいは海外の人を呼んでいるのかとか,定義をどうするかと,すごく難しいですけども,多分きちっとその数字を取って評価する必要があるんだろうというのが一つだろうと思います。
 もう一つは,国際性があるからそのまま良いという話には多分ならないと,評価との関係をどうするかという点があったのかなと思います。例えば,これは前に竹沢先生のお話にありましたけれども,海外から人を呼んだけれども,ただ呼んだだけだと多分意味はなくて,ちゃんと発信しなきゃいけない。発信も,今のお話だと単に共著論文だけじゃなくて,何かプラスアルファも必要かもしれない。じゃあ,国際性というものが本当に国際頭脳循環に入ってインパクトを持っているかどうかというところには,多分いろいろな媒介変数があるので,そこは丁寧に評価する必要があるというのが2点目だったかなと思います。
 3点目はすごくラフな話なんですけども,まさに一定のリソースが必要なときに,多分今日議論になった科研費にしろ,戦略創造にしろ,リソースが限られている中で,新たなリソースをどうやって開拓するかというのは重要な話で,STI for SDGsだったり,科学技術外交だったり,そうすると,ある意味では外務省予算的なところにある種研究開発的なものをどうやって埋め込んでいけるのか,どうやって開拓していくのかという,若干利己利益主義的発想ですけども,そういう発想も多分必要で,私が聞いたことがあるのは,イギリスでは結構そういうことをかなりODAの予算を使ってやっているという話があり,それがODAとしていいかどうかというのは実は別問題なわけですが,ただし他方,研究費の観点からはそうやって枠を拡大していかないと,なかなか十分なリソースが得られないという観点での整理が必要なのかなと思いました。
 以上です。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 まだまだいろいろ御意見を伺いたいんですけれども,もう時間が来てしまいましたので今日の議論はここまでにさせていただいて,今日出ました意見を何とか事務局でうまくまとめていただければと思います。
 観山先生,永井先生,小川委員,松本先生,今日はどうもありがとうございました。
 それでは,今後2回の研究費部会では,大学の基盤的経費及び若手研究者育成関連事業について有識者との意見交換を行いますので,各会出席者との調整については,事務局で何卒よろしくお願いします。
 なお,事務局から報告事項があるということですので,よろしくお願いいたします。
 

(2)その他

【梶山学術研究助成課長】
 もう本当に御参考でございます。参考資料1をご覧ください。今,次期の科学技術基本計画の策定に向かいまして,科学技術・学術審議会において,総合政策特別委員会というところで議論されております。このような中で全体の次期の計画に向けて議論されているということ,中身は紹介しませんので,これをちょっとご覧くださいということだけを本日は報告させていただければと思います。
 以上でございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。是非御参照いただければと思います。
 最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 次回の研究費部会は1月21日,次々回の研究費部会は1月29日を予定してございます。いずれも午前中でございますが,特に29日の方は9時半からと少し早くなっておりますので,御留意いただければと思います。正式な御案内は後日,改めてさせていただきます。
 なお,本日の配布資料につきましては後ほどメールでお送りいたしますので,タブレット端末は切らずにそのままでお願いいたします。
 以上でございます。
【西尾部会長】
 それでは,今日,二つの大きなテーマについて皆様方から積極的な,また貴重な御意見,コメントをいただきまして誠にありがとうございました。本日の研究費部会はこれで終了いたします。どうかよろしくお願いいたします。
 

お問合せ先

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