資料1-1 大強度陽子加速器施設評価作業部会(第1回)の議事録

【大榊専門職】  それでは定刻になりましたので、ただいまから第1回大強度陽子加速器施設評価作業部会を開催いたします。
 本日は、皆様お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。本委員会の事務局を担当させていただきます文部科学省科学技術・学術政策局量子研究推進室の大榊と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 作業部会の開会に当たりまして、松尾大臣官房審議官より一言挨拶いただければと思います。よろしくお願いします。
【松尾審議官】  どうも、皆様、こんにちは。ただいま御紹介いただきました文部科学省官房審議官の松尾でございます。私自身は1月にこちらに着任させていただきまして、担当させていただくことになりました。よろしくお願いいたします。
 今日は本当にお忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。今回は5年に一度ということで、大強度陽子加速器施設、J-PARCの評価をしていただくということでございます。前回の評価にて御指摘いただいたいろいろな点がございます。研究開発の充実、強化、それから人材育成の問題、それから共用の問題等々ございますので、それらについて、これまでの進捗と、また改めて御評価を頂きたいと思っています。また、経営の面でありますとか、いろいろな新しい面も社会事情として出てきてございますので、そういった点も合わせて、しかるべき評価をいただければ有り難いと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【大榊専門職】  それでは、事務局より配布資料の確認をいたします。配布資料でございますが、資料の頭にございますように、資料1から5までを配布しておりますのと、参考資料として参考資料1-1から1-8、並びに参考資料2を配布しておりますので、もし落丁、乱丁、抜け等ございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。
 また、各机上に、作業部会のドッチファイルを置かせていただいております。こちらにつきましては、平成19年以前の作業部会の報告書等を綴(と)じておりますので、必要に応じて御参照いただければと思います。
 それでは、まず本委員会の設置経緯及び趣旨につきまして、簡単に御説明させていただきます。参考資料1-1、1-2、1-3、1-4、1-5を御覧いただければと思います。参考資料1-1から御説明させていただきます。
 まず、大強度陽子加速器施設評価作業部会につきまして、設置の経緯を簡単に御紹介させていただきます。文部科学省においては、研究開発プログラムにつきまして、大型の研究開発プログラムは5年ごとを目安に中間評価を実施するということになっており、前回の中間評価が平成24年の6月でございましたので、おおよそ5年が経過しているということです。前回の評価における指摘事項への対応状況ですとか、今後の課題と方向性ですとか、そういったものにつきまして検討を行うこととして作業部会を設置させていただいたところでございます。
 設置の形態でございますけれども、3つの委員会と部会の下に合同で設置することとしてございます。参考資料1-5の図にございますように、原子力科学技術委員会、それから量子科学技術委員会、それから学術分科会研究環境基盤部会、この3つの委員会の下に作業部会として設置されているものです。こちらにつきましては、参考資料1-2、1-3、1-4にございますように、それぞれの委員会及び部会で設置について御了解を頂いているところでございます。
 それから、本作業部会の委員につきまして、資料1を御覧いただければと思います。大強度陽子加速器施設評価作業部会の委員名簿を付けております。本日は、この委員の皆様のうち9名の委員に出席いただいております。御出席の委員の皆様につきまして、順にお名前を呼ばせていただきますので、簡単に御所属と御専門を御紹介いただければと思います。
 まず、順番に。石切山委員でございます。
【石切山委員】  東レリサーチセンターの石切山でございます。よろしくお願いいたします。親会社が東レですので、その関連材料の分析というのが主に専門でございます。よろしくお願いします。
【大榊専門職】  ありがとうございます。
 続きまして、長我部委員でございます。
【長我部委員】  日立製作所の長我部と申します。私は電子顕微鏡を中心とした計測一般が専門でございます。よろしくお願いします。
【大榊専門職】  ありがとうございます。
 続きまして、熊谷委員でございます。
【熊谷委員】  熊谷です。今、東北大学の多元研の仕事をしておりまして、専門は加速器全体です。よろしくお願いします。
【大榊専門職】  ありがとうございます。
 続きまして、福山委員でございます。
【福山委員】  東京理科大学の福山です。専門は物性物理で、最近では物質材料から材料科学に至る研究に関与しております。よろしくお願いします。
【大榊専門職】  ありがとうございます。
 続きまして、久保委員でございます。
【久保委員】  国際基督教大学の久保でございます。私、専門は放射化学、放射性物質の化学でして、今はJ-PARCの物質・生命科学実験施設で主にミュオンを中心に実験をしております。
【大榊専門職】  ありがとうございます。
 続きまして、住吉委員でございます。
【住吉委員】  首都大学東京の住吉です。専門は素粒子の実験を行っております。よろしくお願いいたします。
【大榊専門職】  ありがとうございます。
 続きまして、高梨委員でございます。
【高梨委員】  立命館大学の高梨と申します。イノベーションマネジメント、特に標準化ですとか知財関係を専門にさせていただいております。よろしくお願いします。
【大榊専門職】  ありがとうございます。
 続きまして、田村委員でございます。
【田村委員】  東北大学理学研究科の田村と申します。よろしくお願いします。専門は原子核物理、ハドロン物理の実験です。
【大榊専門職】  ありがとうございます。
 続きまして、山縣委員でございます。
【山縣委員】  熊本大学の山縣といいます。たんぱく質の立体構造の研究をしております。よろしくお願いします。
【大榊専門職】  ありがとうございます。
 今、御紹介させていただいた委員の皆様のほか、本日御欠席をされておりますが、菊池委員、鬼柳委員、横山委員が就任されておりますので、御紹介させていただきます。
 それから、J-PARCセンターの出席者につきましても御紹介させていただきます。
 齊藤センター長でございます。
【齊藤センター長】  齊藤です。どうぞよろしくお願いします。
【大榊専門職】  続きまして、二川副センター長でございます。
【二川副センター長】  二川です。どうぞよろしくお願いいたします。
【大榊専門職】  続きまして、冒頭挨拶のありました松尾審議官のほか、文部科学省からの出席者を紹介させていただきます。室長の西山は今不在にしており、申し訳ございませんが、ほかの出席者を紹介させていただきます。
 研究振興局基礎研究振興課素粒子・原子核研究推進室長の轟でございます。
【轟室長】  轟です。どうぞよろしくお願いいたします。
【大榊専門職】  同じく研究振興局学術機関課連携推進専門官の藤川でございます。
【藤川専門官】  藤川でございます。よろしくお願いします。
【大榊専門職】  研究開発局原子力課専門官の小林でございます。
【小林専門官】  小林です。よろしくお願いします。
【大榊専門職】  また、上部委員会の運営規則に基づきまして、量子科学技術委員会の雨宮主査、原子力科学技術委員会の山口主査、それから研究環境基盤部会の稲永部会長からそれぞれ、菊池委員が本作業部会の主査として指名されております。また、菊池主査は本日御欠席でございますが、同じく上部委員会の運営規則によりまして、主査不在の場合は、主査があらかじめ指名する者がその職務を代理することとなっており、菊池主査から主査代理として福山委員が指名されております。
 以降の議事につきましては、福山主査代理に進行をお願いいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【福山主査代理】  以上のような経緯で、本日代理を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。国の研究開発にとって非常に重要なテーマですので、是非率直かつ活発な意見交換をいただけるようにお願いいたします。どうぞ御協力よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議事に入らせていただきます。まず、作業部会の運営規則に基づいて、この会議は公開という形で進めさせていただきます。御了承ください。
 続いて、本作業部会の運営規則等について、これは事務局の方から御説明をよろしくお願いいたします。
【大榊専門職】  それでは、資料2、大強度陽子加速器施設評価作業部会運営規則の(案)につきまして、御説明させていただきます。
 資料2と合わせまして、参考資料1-6から1-8を御覧いただければと思います。本作業部会の運営規則でございますが、第1条のとおり、それぞれの上部委員会、部会に定めるもののほか、この規則に定めるところによるとしており、具体的に第2条の方から御説明させていただきます。資料2の第2条を御覧いただければと思います。
 議事につきましては、当該作業部会に属する委員等の過半数が出席しなければ会議を開くことができないとされております。本日は9名御出席をいただいておりますので、委員会の開催ができることとなっております。
 それから、委員等の欠席についてですが、第3条にございますように代理人の作業部会への出席はできないとされております。また、作業部会を欠席する委員であっても、作業部会の主査を通じて書面により意見を提出することができるとされております。
 それから、会議の公開についてですが、第4条にございますように、個別利害に直結する事項に係る案件、又は調査の円滑な実施に影響の生じるものとして非公開とすることが適当であると認められるものを除きましては、原則公開とさせていただいております。
 また、合わせまして、議事録の公開でございますけれども、作業部会の主査は、作業部会の会議の議事録を作成し、これを公表するものとするとし、本作業部会終了後に委員の皆様に御確認をいただいた上で、ウエブサイト等で公表する形をとらせていただきたいと思います。
 以上でございますが、運営規則につきまして説明をさせていただいたところでございます。
【福山主査代理】  どうもありがとうございました。
 資料2に基づいて、本部会の運営規則の(案)の御説明がございました。あくまでも、これは案でございます。この席で、皆様、御異論ございませんか。特段問題が起こるような文言はないと思いますけれども、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【福山主査代理】  御意見がなければ、御承認いただいたものとさせていただき、資料2の案を取ることにいたします。
 それでは、次の議題に入りたいと思います。大強度陽子加速器施設J-PARCの概要及び現状について、センター長から御説明をお願いいたします。どうぞよろしく。
【齊藤センター長】  改めまして、齊藤です。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、このスライド(資料3(1)-(6))を使って説明させていただきたいと思います。
 こちらはJ-PARCの俯瞰(ふかん)図でありまして、東海村というところ、しかも、海岸に近いところに、こういう形で我々の施設があります。こちらの施設は、次のスライドでも詳しく御説明しますけれども、2つの法人、日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が共同で設置して、共同で運営しているものでございます。
 2つの違うミッションを持った研究機構がいかにしてJ-PARCという施設を作ったのかということですけれども、基本的に大強度の陽子ビームを使って、様々な二次粒子を生み出して、ここに書いてあるパイ中間子とか、K中間子、中性子、ミュオンといったものを作り出して、それを使って物質科学、生命科学及び原子力工学、さらには原子核・素粒子物理という非常に広範な対象を研究分野としまして、しかも、基礎研究から産業応用までという非常に幅広い研究を行う施設として作られたわけであります。
 したがって、連携研究機関というのは非常に多岐にわたっておりまして、東大、京大、東北大をはじめ、多くの研究機関に関わっていただいておりますし、国外の研究機関としましても、47研究機関が関わっているところであります。
 再びこちらが鳥瞰(ちょうかん)図になりますけれども(資料3(1) 2ページ目上段)、この加速器施設の一番の始まりは、線形加速器と言われるものでありまして、LINACと我々呼んでおりますが、こちらの加速器で陽子を、正確にはHマイナスという水素に電子を1個付けたものですけれども、それを400MeVまで加速することになります。こちらを小さいおむすび型の加速器で3GeVというところまで、陽子の質量の3倍ぐらいのエネルギーまで加速するわけですね。こちらを1メガワットで取り出すというのが設計出力ですけれども、現在のところ、0.4メガワットという、設計出力の40%のパワーで取り出すことが可能になっています。
 こちらのビームはほとんどが物質・生命科学実験施設というところで使われておりまして、そこでは、後ほど見ていきますけれども、中性子やミュオンという粒子を使った物質・生命科学の研究が行われています。残りの数%のビームを、この大きいおむすび型の加速器で更に10倍程度、30GeVというエネルギーまで加速しまして、そこで実験を行っています。
 1つは、速い取り出しというのですけれども、パルスのまま取り出す。そういう取り出し方で行う研究としてニュートリノ実験を行っております。こちらは神岡(スーパーカミオカンデ)に向けてニュートリノビームを撃つという形で、ニュートリノ振動という現象を精査する実験を行っています。こちらは設計出力が0.75メガワットなのですけれども、現在のところ0.48メガワットというところまで持っていっておりまして、設計出力の約6割のところまでパフォーマンスとして持っていっているということになります。
 一方、もう一つのビームの取り出し方がありまして、加速器の中で加速しているのはパルス状のビームなのですけれども、それを取り出すときにうまい共鳴状態を作りまして、DC的にビームを取り出すテクニックというのがございます。それが遅い取り出しという形でハドロン実験施設というところに緩やかにビームを取り出す方法として行われています。こちらの出力期待値としましては0.1メガワット程度なのですけれども、非常に最先端のテクニックで、ビームをかんなで削るように取り出していくため、パワーを上げるのは簡単ではないのですけれども、0.1メガワットというところまで持っていけば世界一のパフォーマンスということになっております。こちらにつきましても、我々は今、50%程度の出力でビームを出すことができております。
 なぜ、そもそも大強度が必要なのかということなのですけれども、こちらは言わずもがなですけれども、大強度で実験を行うことというのは、短時間で高統計を集めることができます。高統計を集めることができるので、より精密な測定が短時間でできますし、よりまれな現象の発見もできますし、より多くの物質研究が行えるので、したがって、新しい発見にもつながると我々は信じているわけです。
 したがって、世界中のファシリティーがハイパワーを目指しておりまして、こちらの横軸はエネルギーで、縦軸が電流なので(2ページ目下段)、したがって掛け算がビームパワーです。こちらの矢印(図中の紫色の矢印)の方向に進んでいくと、ハイパワーということになるわけですけれども、多くの施設が今のところ、この1メガワット界隈(かいわい)のところを目指しているわけです。J-PARCが非常に特筆的なのは、1メガワット級の加速器を2つ持っている。そこで広範な研究をカバーしているという点であります。
 広範であるということを何度も繰り返しているので、1ページにまとめるのは非常に難しいのですが、無理矢理(やり)1ページに押し込めたというのがこのページであります(3ページ目上段)。J-PARCで展開するサイエンスでありますが、J-PARCでは、宇宙の始まりと物質の起源に迫ると。これは特にニュートリノ振動、あとはクォークやミュオンの精密測定実験。そして核力や強い相互作用の理解を深めるという形で宇宙の始まりからどういうふうに物質が出来上がってきたのかというところについての知見を深めることができます。
 一方、物質・生命科学実験施設においては、中性子とミュオンを使いまして、多様な物質と生命の起源に迫るということを目指しています。特に水素やリチウムなど、軽い原子核に感度の高い中性子を用いた実験で、例えばエネルギー材料である電池とか、ソフトマター、生命関係の研究も行うことができますし、超伝導や磁性などのハードマターといった研究なども行うことができます。
 さらに、このミュオンというのは、特に質量が小さいためにということなのですけれども、物質の中に入れてあげますと、棒磁石としての性質が非常に顕著に表れます。したがって、マイクロ磁性プローブとして大きく活躍することができるわけですけれども、それを用いまして、物質構造の研究を新たな局面から深めることができる。さらに、ミュオンは基礎物理にも非常に大きく貢献しているということを、これからこのレビューの中でも見ていくことになります。
 更に産業利用ですが、個々の利用もたくさんあるわけですけれども、最近特にハイライトされていますのは、SPring-8やフォトンファクトリーといった放射光の施設と、あとはスーパーコンピューター「京」を用いたモデリング、こういうものを連携させて、非常に精密な研究につなげていくということが一つのトレンドになっておりまして、こちらの中からも非常に大きな成果が上がってきております。
 さらに、最終的にこの核変換技術というものがあります。福島のこともありまして、特に我々としては、我々の周辺技術を活用していく中で、大きな人類の問題の解決に貢献していく必要があるのではないかということで、このR&Dを続けているわけであります。
これらを絵にしたのがこのスライドになります(3ページ目下段)。特に中性子やミュオンでたんぱく質の問題にもアプローチしますし、こちらにタイヤの絵がありますのは、先ほど申し上げた放射光と中性子とスーパーコンピューター「京」を用いて、特に成果が上がったエリアであります。もちろん我々の生活に欠かせないリチウムバッテリーにつきましても、充放電過程をしっかり調べるというところでも非常に役に立っておりますし、一方で、地球がどういうふうに出来上がってきたのかという問題にアプローチすることによって、特に地球上の生命の起源というところにも、我々の研究は関連していると見ることができます。
 さらに、ニュートリノで宇宙と物質の起源に迫るというところですが、J-PARCではニュートリノと反ニュートリノの両方を生成しております。これらの振る舞いが同じなのかどうか、これが違っているということが、実は物質の起源ということに大きくつながっているというお話を後ほどさせていただきます。
 あと、ハドロンというのは、田村委員の御専門のエリアでございますけれども、強い相互作用をする粒子を全てハドロンと呼びます。この強い相互作用の理解を深めていく、我々の体や全ての物質を構成する多様な原子核というものは強い相互作用なくしては、実はできていないわけですから、そういう意味におきましても、このハドロンの理解を深めるということは、実は我々自身を含む物質をよく知るということにつながっていくと思います。さらに、核変換技術の開発研究というところです。
 産業利用ですけれども(4ページ目上段)、我々、よく産業利用と学術研究というのは社会を前進させる両輪であると申しておりますが、更にこれを実感する状況がどんどん最近生まれていると感じています。特に産業利用におもねった学術研究ではなく、学術研究の中から産業利用がまさにどんどん生まれてきている。産業利用の中から学術の研究のテーマが生まれてくるという形になってきていると現場にいて非常に感じるところであります。こういうことを通して、社会を未来に加速するということができればと考えているわけです。
 それでは、分野ごとに、もう少し説明してまいりたいと思います(資料3(2) 1ページ目上段)。
 素粒子・原子核物理というところですけれども、こちらは「宇宙の始まりと物質の起源に迫る」というテーマに挑んでおります。先ほど申し上げましたように、このニュートリノビームでは、ニュートリノビームと反ニュートリノビームをスーパーカミオカンデに送っております。そこまでニュートリノが届く中で、振動現象というものを精査していると。あと、このハドロン実験施設というところで、パイ中間子、K中間子を用いて、強い相互作用の在り方というものを非常に精密に調べるということが行われていますし、更にミュオン、こちらは物質生命科学実験施設で使われているミュオンと全く同じミュオンでございますが、はたまた最近では、ピラミッドのトモグラフィーなどを行っている、あのミュオンと全く同じミュオンでございますが、こちらの基礎的な、基本的な組成を調べていくと、素粒子の標準模型を破るような現象、つまり新しい物理法則にアプローチできるといった研究も行っています。
 更に、物質・生命科学実験施設というのは、もともと物質・生命科学のために作られたものでございますけれども、そこを用いて基礎研究が行えるという提案もございます。中性子はメインターゲットで生成されておりますし、その上流では、ミュオンがたくさん作られていますので、当然のことながら、ニュートリノがたくさんそこで湧き上がっているわけです。それらを無駄にする必要はないというわけでありまして、それらを徹底的に使った研究ということも始まりつつあります。
 そこでもやはり我々が必要とするのは大強度ビームであります。これは横軸が年度で縦軸がビームパワーですけれども(1ページ目下段)、徐々にビームパワーが上がってきているという状況が見てとれると思います。特に陽子加速器というのは、一旦ビームをロスして加速器にぶつかってしまうと、いろいろなところが放射化してしまいます。そうすると、その放射化したところをメンテナンスすることができにくくなってしまう。したがって徐々に強度を上げていく。その中でテクノロジーを磨くということが非常に重要でありまして、オペレーションを始めて10年になりますけれども、ようやく5割程度のパフォーマンスに今到達しているところであります。こちらは我々だけが特に遅いということではなく、世界的に見ましても、ハドロンの施設というのは、こういうものであるというところであります。その中で、これだけ徐々に上げてきているというのは、我々の加速器チームの高い実力であると、我々としても誇りに思っているところであります。
 さて、ニュートリノ実験なのですけれども(2ページ目上段)、T2K実験のゴールというのは、特にニュートリノと反ニュートリノの振る舞いは同じなのかという問題なのですが、素粒子物理学の大きなテーマの問題点、これから解明しなければいけない課題の1つとしまして、物質の起源というテーマであります。宇宙が始まったときには、物質と反物質が全く同じ数作られたはずです。ところが、我々の周りは今、物質に満ちあふれていて、反物質というものは消えてなくなってしまったかのように思えるわけです。その反物質が消えるかもしれないという消える理由を一部説明しているのが、いわゆる小林・益川理論というものでございます。こちらは、実はクォークというセクターにおいて、粒子と反粒子、物質と反物質の非対称性があるということを説明しておりまして、ノーベル賞を受賞されていますけれども、我々は、実はそれだけではもう10桁ぐらい、非対称性が足りないということを知っているわけです。したがって、クォークセクター以外に、もっともっと非対称性があるということで、例えばニュートリノに非対称性があれば、それは大きく物質の起源となり得るということで、研究を深めているところであります。
 御存じのように、天然のニュートリノ、つまり大気ニュートリノを使いまして、振動現象というものを確立して、梶田先生がノーベル賞を取られたのは記憶に新しいところです。
 前回の中間評価以降、今のノーベル賞も含めて多くの成果が上がっております(2ページ目下段)。1つはT2K実験で初めて東海から送っているミュー型ニュートリノが電子型ニュートリノに代わるという現象を確立させていただきました。これはもともと梶田先生がノーベル賞を受賞したときの研究と非常に密接に関連しているわけですけれども、大気ニュートリノを使って行われた研究を、我々は加速器を使って、よりクオリティーのよく分かったビームを使って、更に電子型ニュートリノに変換したところを捉えるという。その変換したところを捉えるという意味において、大きく確度の高い研究に持ち込んだわけであります。
 さらに、2016年、世界で初めてニュートリノのCP「対称性の破れ」が90%の確率で存在するということを発表することができました。今は95%まで高まっている状況です。T2K実験というのは非常に引きの強い実験でありまして、期待しているところの中でも、最大値のところに測定値が現れる傾向にあるように思っています。 そのように大きな成果を上げる中で、こちらにおります素核ディビジョン長の小林隆氏も、京都大学の中家剛氏と一緒に仁科記念賞というものを受けております。
 あとは、前副センター長の西川公一郎先生がブレークスルー賞という、こちらは世界のIT企業家たちが作った基礎物理学賞がありまして、そちらの方も、与えられています。
 さらに、西川先生はポンテコルボ賞というものも受けておりまして、我々としても非常に誇りに思うところでございます。
 さらに、企業との関連で言いますと、特にこの浜松ホトニクスというところは、我々が、ある意味でいつもお世話になっているところでありますが、一緒に光子を測定するMPPCというものを開発させていただきまして、これを世界で初めて大量に採用して実用化に大きく貢献したという成果もございます。
 一方、ハドロン実験施設におきましては(3ページ目上段)、このようにビームラインがございまして、1つの実験施設で1本のビームから多岐なビームを取り出すことによって、多くの物理をカバーすることができます。1つは、ストレンジネス核物理というエリアです。原子核よりも10倍以上密度が高いという状況が、中性子星の中で実現されていると考えられているわけですけれども、そういう非常に高密度な中では、どういう現象が起こるのかということをつぶさに解いていくことができるというわけであります。この中性子星というのは、どんどん圧縮していくと、そのまま重力崩壊してしまう、ブラックホールになってしまうわけですけれども、例えば簡単にブラックホールができるような状況であれば、我々の周りはブラックホールだらけになってしまうわけですね。ですので、我々がこういう良いバランスの中にいる理由というものを知る意味でも、実はこのストレンジネス核物理というのは非常に重要なテーマであります。
 一方、小林・益川理論を超えるような、粒子・反粒子の非対称性、CPバイオレーションですけれども、それを探そうというKOTOという実験がございまして、それがKロング(KL)というビームラインで行われております。さらに、ミュオンが電子に変換する実験。先ほどミュー型のニュートリノが電子型のニュートリノに変換する現象ということについては御紹介したわけですが、実際、ミュオンが電子に変換するという現象はまだ未発見でありまして、それを発見しようというのが、このCOMETというビームラインになります。こういう多岐にわたる実験を1つの施設でできるというのが、ハドロン実験施設の特徴であります。
 前回の中間評価以降の主な成果ですけれども(3ページ目下段)、1つは原子核の荷電対称性というものは、ラムダ粒子という第三種を入れることで大きく破れるという現象について御説明します。
 原子核の中では中性子と陽子が非常に同等に機能するということが分かっているために、それを表す言葉として荷電対称性というものが存在します。つまり陽子をそこに置いておくのと、中性子を置いておくというのは、実は反応においては類似性が高い。それをシンメトリー(対称性)というわけですけれども、そこにラムダ粒子というもう一つ、第三種を導入すると、大きくシンメトリーが破れると。一見すると、同じように聞こえるのですけれども、このラムダ粒子というのは第三種でありまして、全く等価なシステムにラムダ粒子をぽんと入れてやると、大きくアシンメトリー(非対称性)が出てきてしまうという現象を新たに発見することができました。こちらは実はそちらにおられます東北大学の田村先生がリードして上げられた成果でございまして、‘PHYSICAL REVIEW LETTERSのEditor’s Suggestionに選ばれています。
 他にも、我々の周りには無いタイプのハドロンというものを、この加速器を使って実現していくというテーマがどんどん行われています。この2つの陽子が束縛された新しい形態というのは、実は我々のこの地上にあるよりも高密度状態を生むという予測もありまして、そういう意味でも中性子星の中にある現象を、この地上において再現することができるかもしれないというタイプの実験を行っております。
 ただ、こちらで我々として御報告しないといけないのは(4ページ目上段)、このハドロン実験施設において、平成25年に、もう4年前になりますけれども、こちらの方で異常なビームを取り出したことで標的を溶融・蒸発させてしまいまして、それによって多くの方々に御迷惑をお掛けするということになってしまったわけです。通常、ビームは非常に安定的にDCビームのように取り出されているわけですけれども、そこに非常にシャープなビームが間違って行ってしまうと。そういうことがあると、この標的(金)の冷却能力が追いつかずに、一気に溶融してしまうのです。したがって、実は標的を開けてみますと、実際に穴が開いていまして、後ろに金のスプレーが飛び出ているという状況が見てとれました。そのようなことがありまして、これは非常に良くなかったと我々は考えておりますが、事態の把握や報告が遅れたという事態がございました。
 こちらに細かく書いておりますけれども、例えば規制庁に報告し、もちろん監督官庁、文部科学大臣にも御報告申し上げて、更に住民の方々の不信を解いて、施設の意義を御理解いただくという形で、何とか運転再開にこぎ着けることができたというわけであります。
 この過程で我々は施設の安全というものを一段高く取り上げることにいたしまして、それまではこういう実験施設と横並びであった安全ディビジョンのランクを1つ上げました(4ページ目下段)。そこに特に安全を専門的に見る副センター長というものを配置しまして、その元で安全ディビジョンを運営すると。それぞれの施設が安全に責任を持つわけですけれども、その過程で様々な助言を安全ディビジョンに頂きながら、それぞれの施設を安全に運営すると。さらに、我々が独善に陥らないように、外部の有識者や専門家の御意見も頂くという構造を取り入れたというのが新しいところであります。
 そのようなことを地域の住民の方々に説明している写真がこれです(5ページ目上段)。この事件を通して、遅かったとは思うのですけれども、我々の研究というのは本当に社会に支えられているということを強く再認識した次第であります。
 そうした安全への意識が決して風化しないようにということで、我々は、毎年、安全文化醸成研修会という名前で研修会を開かせていただいておりまして、「J-PARC安全の日」というのも制定させていただきました。この日はJ-PARCとして安全関係のプログラムを最優先するということにしていまして、例えばセミナーがあるとか、何とかという形で安全関係のプログラムを行わないということがないように、いかに重要な方々が視察に来られても、この日はJ-PARCの安全を中心にやるということになっているわけであります。
 そこで、今年はちょっと趣向を変えて、安全文化醸成研修会というところでは、「ディズニーリゾートで大事にされているSAFETY」、一見、我々のような実験施設とディズニーリゾートというのは違うように思えるわけですけれども、でも、一分の隙(すき)もあってはいけない、少しの間違いもあってはいけないということは非常に共通した部分でありますし、それを支えるスタッフの精神性というのも、我々としては非常に学ぶところが大きかったと思います。こういうことを通して、我々としては、まずスタッフの安全意識を継続的に高めていきたいと考えております。
 もう一つは、請負業者ですね。我々が幾ら頑張っていても、請負業者や多様なユーザーも来ますので、そういう人たちに我々の安全意識というものが理解してもらえなければ全く意味がありませんので、そういうところにも大きく我々としては踏み出しているという状況であります。
 さらに、加速器施設というのは、我々のところだけではございませんので、いろいろな加速器を持った人たちが、普段起こっている、いろいろな心配な問題があるわけですけれども、そういう失敗談を腹を割って話せるような研究会というものもやっております。これも定例化しておりますが、失敗談に基づいて、我々が、共に学ぶという姿勢を続けていきたいと思っています。
 では、物質・生命科学というところに入っていきたいと思います(資料3(3))。こちらの施設では、主に、多様な物質と生命の起源に迫るということで、研究を行っているわけです(1ページ目上段)。
 ここには取り上げておりませんが、JRR-3Mという原子炉を基盤にした施設もございますが、こちらの方は残念ながら震災以降、止まっておりまして、そちらとの連携というのは今のところ再起動できていないわけですけれども、MLFと呼びますが、物質・生命科学実験施設からは、中性子ビームとミュオンビーム、この2つを使ってどんどん成果が上がっているという状況であります。
 このMLFというのが物質・生命科学研究という点においてどういう位置づけであるかということなのですけれども、中性子は原子核に直接反応することができるという利点があります。あと、ミュオンというものがございます。放射光、陽電子といった、言わばスタンダードと化している物質・生命の研究ツールというものと対比してみますと、放射光はこのように電子雲に対して敏感なわけですね(1ページ目下段)。したがって、原子番号の大きい原子に対しては、放射光の方が非常に有利なわけです。一方、水素のように一個しか電子がないものについては、放射光は不得意と言わざるを得ません。そこで中性子が活躍するというわけであります。さらに、水素に対する敏感性という意味では、ミュオンは水素の同位体のように機能するということもございまして、そういう意味でも水素的な機能を引き出していくというところにおいては、J-PARCの物質研究というのは非常にすぐれていると言えるのではないかと思います。そういう意味で、従来の放射光や陽電子というものと、中性子、ミュオンというのは相補的な関係にあるということであります。
 J-PARCは、KEKから70キロぐらいの距離にございまして、1時間ぐらいの運転でたどり着くことができます。ですので、この4つの非常に重要なプローブを1か所に近い場所で手にしているというところは、J-PARCの拠点が物質・生命科学拠点として機能する意味においても、非常に重要な事実であると考えています。
 こちらでは中性子の標的を中心に23本のビームを取り出すことが可能であります(2ページ目上段)。そのうち、今、20本が稼働しておりまして、1台が建設中という状況です。それぞれ小角散乱とか、偏極した中性子を使えるような装置とか、高温・高圧というような非常に過酷な、極端な状況を作り出すことができる装置というのもございまして、それらを用いて多種多様な研究が行われているというわけであります。
 こちらのビームパワーは(2ページ目下段)、400キロワットというラインがございますけれども、順調にずっと上がってきたというわけではなくて、様々な障害があったということが、ここでも見てとれるわけですが、1つは東日本大震災でございます。このときには、文科省様の深い御理解の元、10か月以内にファシリティーを何とか立ち上げることができました。その後、ハドロン実験施設の事故によりましてビームを止めてしまうことになるわけですけれども、こちらもほぼ1年の間に何とかMLFは再稼働することができたわけです。
 ところが、残念ながら標的が水漏れを起こしてしまいまして、この500キロワットというところまでトライアルした途端にそれが2回起こってしまったために、ユーザーには非常に大きな御迷惑をお掛けしてしまいました。ほぼ1年に近い期間、施設を止めてしまうことになりまして、J-PARCとしては大いに信頼を失墜することになってしまったわけです。その後、我々は一度、しゃがんで、しっかり安定的に施設を運営するところから始めようということで、200キロワットというところで安定的に運転するということから始めました。ここで90%以上の稼働率を実現しようということをテーマにしまして、それを実際に実現して、その後、新標的の納入まで寿命を延ばすために150キロワットに落とした方がいいということもございまして、ここまで落としたわけです。その後、新しい標的を導入しまして、今は300キロワットから400キロワットというところにビームパワーを上げていっています。そして、十分な経験を積んだ上で、4月からは500キロワット、つまりデザイン設計値の50%というところまで持っていく予定にしています。
 そのための技術開発なのですけれども、特に1メガワットの高出力運転のためには、水銀標的、標的が水銀でございますけれども、それに対して発生する様々な問題点を解決するという技術を開発してまいりました(3ページ目上段)。1つは圧力波を緩和する技術の開発に成功しているという点でございます。これは陽子ビームを水銀に導入しますと、中で圧力波が発生して伝搬していく中で、衝撃波のように容器の内部をえぐってしまうピッティングという現象があるます。そのピッティングという現象によってえぐられた表面がこちらで、こういうふうになってしまいますと、水銀は当然漏れてしまいますし、困った状態になります。我々はこういう状態に至る前にこの問題を解決しようということで、ヘリウムのマイクロバブルを入れるというテクニックを、こちらの副センター長の二川を中心に開発しました。これが見事に今のところ問題を減らすことに大きく貢献しているというわけでありまして、気泡の注入によって圧力波を3分の1程度に低減できているという状況であります。
 ほかにも、陽子ビームの形を調整、ビームを広げるということなのですが、そういう平坦(へいたん)化によって発熱のエリアを拡大することによって、1か所にストレスが掛からないようにという工夫もしてございます。
 次のページでは、更に我々の標的の技術開発の経緯をお示しています(3ページ目下段)。現在、我々が導入している標的容器というのは、特にビームによって発する熱がストレスを生むエリアのところを完全一体成形にしています。といいますのは、今まで起きた水漏れというのは、こういう熱応力が発生しやすい場所で溶接ラインが残っていて、その溶接ラインも、溶接の過程で最後に残ってしまった部分という形になってしまっていたために、非常に脆弱(ぜいじゃく)なパートがそこに残っていたわけですね。ですので、若干、熱ものに懲りてなますを吹く的なアプローチではありますが、一体成形にして、そのような不具合が二度と起こらないという状況を確立したというのが現在の標的になっています。将来的には、溶接ラインを完全に無くした形で標的容器を作っていこうという技術開発をしておりまして、こちらもある程度、目途が立っているという状況であります。
 次に、気泡注入によって緩和する圧力波の問題ですけれども、こちらもどんどんこれを増やしていくことを検証していきたい。さらに、耐久性の向上を目指すような研究を続けていきたいということで、特にここでは照射後の材料試験、ポスト・イラディエーション・エグザミネーションというのですけれども、こういうものをしっかり現場でできるような施設を作り上げてデータを取っていこうと考えています。
 中性子実験の装置の発展と現状ということですけれども(4ページ目上段)、これは同じモーターを非偏極の中性子と偏極した中性子で見てみたということなのですが、非偏極の中性子で見ると、ただ単にモーターの影が見えるだけなのですけれども、偏極した中性子を使って見ますと、その磁場分布というのが分かります。すると、そこでどういうふうに非効率なことが起こっているのかということを洗い出すことができます。そういう意味において、この磁場の可視化は非常に画期的な成果を上げております。他にも、充放電過程のリチウムバッテリーにおいて何が起こっているのかということを、大強度ならではの特徴を使って調べることができております。このように大強度を生かした研究というのが、我々が当初考えていたものよりもどんどん発展的に出てきていると考えられると思います。
 ほかにも、低温・高温の機器の整備とか(4ページ目下段)、中性子偏極装置の開発と実用化、あとはパルスマグネットの開発、また、重水素化ラボ等々の運用ということでやっております。
 他にも、デバイスの開発ということも行っておりまして(5ページ目上段)、世界初となる個別読み出し型のガス2次元型の検出器の開発に成功したり、検出器においても、どんどん研究を進めているところであります。また、集光・偏極デバイスとして新たなデバイスの開発、特に中性子の偏極ミラーの開発というのは、こちらでも非常に大きく役に立っているところであります。
 それらとは独立に、先ほど申し上げた標的を用いてビーム強度がどういうふうに上がっていく予定なのかということなのですけれども、これは横軸が年度でございまして(5ページ目下段)、現在、我々は400キロワットで運転しているというところをお示ししたところであります。4月からはいろいろな評価の元に、500キロワット運転というものを夏前まで続けまして、夏には、また新しいターゲットを導入して、こちらは半無拘束型というところで、より一層、ボルトの数とか、そういうものが減って、一様なものができるということになります。それを用いて1メガワットを狙うと我々は考えているわけです。
 更に、将来の標的というものもデザインが進んでおりまして、どんどん無拘束型というものに引っ張っていく形で、出力1メガワットに安定的に到達できると考えているところであります。
 中性子標的の上流にはミュオンの標的がございまして、グラファイトのターゲットを使って4本のビームラインを取り出すことが可能になっています(資料3(4) 1ページ目上段)。そのうち、今のところ3本が運転されておりまして、ほとんどの実験は、このDラインと、あとはSラインというところで行われています。Uラインは今のところ開発状態にございますが、だんだん、超低速ミュオンという世界的にも非常にユニークなビームが強度を上げつつあるという状況であります。Hラインというところでは、基礎物理を展開することになっているのですけれども、予算の関係で、今のところ残念ながら、まだ保留状態というところになっています。
 そこでの研究成果を4枚ほど上げております(1ページ目下段)。1つはミュオンスピン回転法という確立したテクニックの一つでございますが、試料への打ち込みの深さを変えることで、そこでの磁性の状態を研究することができます。それを使って、例えば超低速ミュオンで酸化銅の1層ずつの電子状態が分かるというような研究を行ったと。これによって、実際にスピンが回転している状態が見えます。スピンが回転しているということは、どれだけ磁場があるのかということを見ることができます。そのような研究をここでやることができる。
 あとは、ミューマイナスを使って、非接触、非破壊で物質を調べるということができまして、これは例えば、はやぶさ2が持ち帰る微少なサンプルにつきましても、非破壊で調べることができるということを実証しつつありまして、あとはサンプルを待つのみという状況にこぎ着けています。
 ミュオンを使った基礎物理というのは、こちらでも展開されておりまして、これはミュオンと陽子の違いを明らかにするものといっていいかと思うのですけれども、ミュオニウムというミュープラスの周りに電子が束縛された状態の分光を行うことによって、基本的な物理量を測定するという実験も進行中であります。
 それらを実現するために、このミュオンの回転標的というものが今活躍しています(2ページ目上段)。これは回転することによって熱応力が1か所に局所化しないことを担保するものであり、これを実際に導入しまして、継続的に運転できるという状況であります。
 更にミュオンは、今、Hラインというところがまだできていないわけですけれども、将来的にここを開発していって、1つは透過型ミュオン顕微鏡というもの、1つはg-2/EDMというもの、こちらは実は素粒子の標準模型から大きくずれた現象としてg-2は知られておりまして、それを精査するための研究を行うビームラインがここにできようとしているわけです(2ページ目下段)。予算次第というところです。
 MLFの主な研究成果ですけれども(3ページ目上段)、たくさんあるのですが、その中からこれらを選ばせていただきました。時系列ではありませんが、平成29年には、昨年ですけれども、夏にシリコンを使わない太陽電池の設計に道筋を付けたということで、多くの新聞にも取り上げていただいたところであります。あとは充放電しているリチウム電池の内部挙動の解析に成功したということで、こちらも中性子を使った研究であります。また、セメントの光照射で現れる光誘起伝導の起源の解明という、こちらはミュオンを使った研究になっております。あと、超イオン伝導体を発見して、全固体セラミックス電池を開発したということで、これは大分大きく取り上げられまして、中性子を用いた研究でございます。
 あと、何度か出ていますタイヤですけれども、住友ゴムが「ADVANCED 4D NANO DESIGN」というフレームワークを作ってくれまして、これはSPring-8とJ-PARC及びスーパーコンピューター「京」を協奏的に使いまして、そこからタイヤに最も適した素材を開発していくというフレームワークを確立したという話であります。
 あとは、超伝導物質に新しい磁気相、アンチフェロマグネティックフェーズ2という、この領域なのですけれども、これを発見したということで、これは中性子とミュオンの両方を協奏的に使いまして、発見することができたという新しい現象になります。
 これらの成果を上げてきたところでございますが、次に、核変換のR&Dについても御説明したいと思います(資料3(5) 1ページ目上下段)。
 核変換は我々のところでテスト実験ファシリティー、TEFと呼んでおりますけれども、この実験施設の技術設計書という、いわゆるテクニカルデザインレポートと呼んでおりますけれども、それを取りまとめました。日本語で500ページ以上あるところですけれども、今、それの鋭意英訳中でございますが、こちらにつきましては、有識者に既に何遍かレビューしていただきまして、非常によくできているという評価を頂いております。こちらを完成することによって、我々がいつでも予算に対して準備ができているという状況を作り上げていこうというところであります。更に基礎技術の開発としまして、鉛ビスマスの取扱い技術の開発でありますとか、あとはレーザー荷電変換技術、これもビームをいかに安定的に取り出すことができるかということに関する研究。ほかにもADS用加速器の研究開発ということを今後も行っていきたいと考えています。
 これらを支えますのが施設でございまして、施設の中でも、我々が特に重要なパフォーマンス・インディケーターと思っていますのは、Availability(稼働率)ということでございます(2ページ目上段)。要するに、ユーザーにお約束したビームタイムのうち、どれだけ我々がきちんと出すことができたかというところです。MLFにおきましては、標的に不具合があったときに、そこを何とか、2度とこういったことがないようにということで、90%以上は出そうというところに目標を掲げたところです。ビームパワーとしては200キロワットに下げたわけですけれども、その時点で我々は93%以上を到達することができるようになりました。今、300キロワット、400キロワットとしてビームパワーを上げてきていますけれども、このAvailabilityをきちんと高い値に保ったままビームパワーを上げていくということを目指しているところであります。
 ニュートリノ、ハドロンにおきましても、特に高い値を目指して、貴重なビームタイムというのをいかに有効にユーザーに使っていただくかというところにおきまして、このAvailabilityというのは非常に重要なKPI(Key Performance Indicator)になっていると感じています。
 それを支えていただいているのがJ-PARCの予算なわけです(2ページ目下段)。建設予算が上の方に書いてありまして、下の方に運営経費が書いてあります。全体としては上向きであるわけですけれども、我々もオペレーション開始から、10年たちまして、運転の効率化もどんどん進めているところではございます。文科省にはいつも深い御理解を頂いており、大きくサポートしていただいているところでありますが、これがもう少し拡大すれば、それに合わせて、更に成果を出していけると我々としては考えています。
 外部への発信ですけれども(3ページ目上段)、これも非常に重要でありまして、ハローサイエンスという形で、イオン東海のフードコートというところで始めました。一般の方々に非常に近いところに立って、近い目線で我々のサイエンスをお話ししていくということも行っておりますし、テレビの取材への対応ということも行っていくということで、何本か既に行っているところであります。
 あとは、海外施設との連携というのがございまして、『CERN Courier』という非常に有名な機関紙がございますが、そういうところとも連携して、あとInteractions.orgという世界的な広報のフレームワークがあるのですけれども、そういうところにも貢献しているところであります。
 両機構の広報室との連携というのも非常に重要なテーマでありまして、特に親機構の広報室との連携という形で、我々は常に強い連携をとりながら広報をさせていただいているところであります。
 それで、これはお手元の資料に無いですけれども、今日『Newton』の4月号が発売されまして、そこでは当初の予定を上回って14ページだったと思いますが、14ページにわたってJ-PARCが紹介されております。運転が始まって10年という時間が経っていますけれども、ますます成果を上げることが期待されるという内容になっております。今日は別刷りをお持ちできなかったので、次回持ってこられたらと思っているところです。
 各施設の進捗についてまとめますけれども(資料3(6) 1ページ目下段)、加速器につきましては、問題としましては0.75メガワットの早期実現ということが非常に重要であるという上に、将来計画をきちんと作って実現していくということも重要でありまして、そういう意味において、我々は1メガワットというところにとどまらず、Multi-MWという計画も策定して、あとは好機を待つという状況を作り出しています。
 ニュートリノにつきましては(2ページ目上段)、こちらの方は既にいろいろな成果が上がってきていますけれども、CPの制限、CPの対称性がどれだけ破れているか、粒子、反粒子の非対称性というものはどれだけあるのかということにつきます。どんどん発見レベルを高めているというところですけれども、今のところ95%の確率でCPバイオレーションがあると言えるというところまで来ていますけれども、それを何とかもっともっと統計的な有意性が上がるというところに持っていきたいというわけであります。
 その中で、実はニュートリノ将来計画というのが非常に重要でございまして、これは文科省様の方でロードマップ2017というところでも、ハイパーカミオカンデにつきまして、それと関連するJ-PARCのアップグレード、それを取り上げていただいたところではございますけれども、J-PARCの親機関でありますKEKの方でも、これを最優先項目として進めさせていただいているところであります。
 さらに、ハドロン施設では(2ページ目下段)、将来計画というものを何とか進めていくこともあるのですけれども、その前に、まず事故からの回復がありました。その後、どんどん結果が出始めてきているというところでございますので、これを続けて将来計画を実現していけるとしていきたいと思っています。
 MLFの方では(3ページ目上段)、成果創出を加速するべしということで、各方面から御指導いただきながら努力を続けているところで、確かに成果創出は加速しつつあると言えると思うのです。高いインパクトファクターの雑誌にもどんどん出てきているのも事実ですし、あとは実際に、研究成果を関連研究機関からのプレスリリースとしてお伝えする機会も大分増えていると考えています。
 それを継続的に進めていくためには、まずは施設を強化して、これは継続的にビームが安定的に出るということを確保するとともに、試料環境を更に強める、あとは開発環境を強めていく、更に産業利用を深めながら将来計画もきちんともっとやっていくというところであります。
 こういうことを我々が全部自分たちでできるわけでは当然ありませんので、様々なところと連携関係を深めていくことにしておりまして、国内との連携という意味において、大阪大学や京都大学のJ-PARC分室というものを作ってもらって、そこでの共同活動というものも行っています(3ページ目下段)。また、茨城大学の方ではJ-PARCを中心にした専攻を作っていただきまして、102名の学生がJ-PARCの講義を受けて演習をしなければ、卒業できないという専攻になっております。
 あと、海外の研究機関とも連携を深めておりまして、最近ではESSとの協力というものを深めておるところであります。これは、協力のリニューアルのときに、両首相の前で覚書を交換するということができました。したがって、両国にも随分認識されたプロジェクトになっているところでございます。
 一方で、産業界との連携という意味においては、何遍も出てくる住友ゴム様ですけれども、こちらではフェローシップを創設していただいて、今2人目を雇おうとしているところです。そういう形で産業界との連携を、広げるだけでなくて、更に深めていくというところを行っているところであります。
 以上、まとめますけれども(4ページ目上段)、J-PARCは、世界でもユニークな2つの1メガワット級の大強度陽子加速器を擁する多目的研究施設であります。そこで、ニュートリノ実験施設では、480キロワットというところで設計値の63%、MLFでは400キロワットというところで設計値の40%、ハドロン実験施設では目標値の50%というところでビームパワーを出しております。かつ、成果を上げつつあるというところであります。
 大強度の二次粒子を用いて、素粒子・原子核科学、物質・生命科学、原子力工学のフロンティアを牽引(けんいん)していくということを我々に任されていると考えておりまして、顕著な研究成果も得られつつあり、社会への発信も進みつつあると考えているところです。
 更に安定に稼働する施設を目指すことによって、技術の成熟度を高めているというのが現状でございまして、もちろん将来計画の策定も進んでいるという状況であります。
 施設運営の改善を通して、更に成果を創出して、人類への貢献を更に深めることを目指していきたいと考えているのがJ-PARCの現在でございます。
 以上、手短ではありますが、御説明させていただきました。
【福山主査代理】  ありがとうございました。いろいろな側面についての御紹介がございました。
 しばらく時間をとって、自由に御議論ください。御質問、コメント、どうぞ。実に多岐にわたっております。どんなことでも結構です。御意見、御質問。どうぞ。
【熊谷委員】  まだビーム性能が所定の値にはなっていないわけですが、これも時間が掛かるとは思うのですが、もう一つ、装置、機器を追加しないとパワーが上がっていかないのか、今のままで単に調整すれば上がるのか、どちらなのでしょうか。
【齊藤センター長】  非常によい質問をしていただいたと思うのですけど、Main Ringの方につきましては、これは実は設計値に到達するには電源を変えて、繰り返しの周波数を上げていくということをしないと、その設計値に到達しないという状況になっておりまして、こちらは、実は技術開発は進んでおって、準備はできているという状況であります。
 一方、3GeVリングの方は、ほぼ1メガワット運転というところは、ビームの方は準備ができておりまして、あと多少、RFについてパワーの投入をしなければいけないというところではございますが、基本的に技術的には準備ができているという状況です。ただ、一方で、標的がやはりちゃんと受けられなければいけないわけで、それがむしろ現在のパワーをリミットしているというところです。
【熊谷委員】  これ、マグネットの電源の繰り返しを上げるということは、ある意味ではライン、その後の電力系統にフリッカー等が出ちゃうわけで、その対策というのはそれなりに取れているのですか。それとも、電源を改造するときに、それを一式全部やってしまうという。
【齊藤センター長】  一式全部やってしまうということです。
【熊谷委員】  そのときに、RFは台数としては十分あるのですか。
【齊藤センター長】  RFは、どんどん作り続けているところもあるのですけれども、台数としては十分なだけ確保するということです。
【熊谷委員】  これ、安定に運転できないと利用者としては非常に困りますよね。
【齊藤センター長】  そうですね。もちろん安定に運転できるに足るだけのRFと、あと今回の、新しい電源でキャパシタバンクを使うわけですけれども、そこで従来よりも安定的なパワーが、しかも非常に高い安定性で、つまり今までは10のマイナス5乗レベルでのゆらぎがあったわけですけれども、それが10のマイナス6乗、7乗レベルの、非常に低減されたレベルでの安定性をもって電流を供給することができるということになっています。
【熊谷委員】  多分ハイパワーにすればするほど、アパーチャに対する余裕度がどんどんなくなるわけですよね、基本的に。
【齊藤センター長】  そうですね。
【熊谷委員】  今は50%ということは、口径の面積でいって50%のところにビームが入っているようなもので、だから、これからが勝負だと思うのですが、そこのところは結構緻密に、いろんなものを積み上げないといかないような気がするのですが。
【齊藤センター長】  1つ、我々が非常に注意深くにやっているところではあるのですけれども、1つ拠り所としているのは、いわゆるチューンダイヤグラムというベータトロンオシレーションのワーキングポイントですよね。それにおいて、我々はビームの運転に基づくモデルを持っておりまして、それに基づくシミュレーションを詳細に行っていくと、非常に安定的にオペレートできるワーキングポイントが幾つか見つかっておりまして、そういう意味においても、幾つかチューニングノブがあって大強度を実現できると考えているところです。
【熊谷委員】  あともう1つ。遅い取り出しで50キロワット達成ということですが、これ、目標100キロワット以上ということがあるのですが、この取り出しに関する何か課題というのは当然ありますよね、静電セプタムのところとか。
【齊藤センター長】  これは非常に大きな課題でして、実は今日お見せしている稼働率では表れていなかったのですけれども、去年の5月にエレクトリックセプタムのワイヤーが切れたものが電極に当たってしまいまして、電圧が掛からない状態になってしまって、ほぼ1か月失ったのですけれども、取り出しにおける問題点の1つとしまして、必ずビームが物質を横切らなければいけないという問題点があります。それは、やはり今後も問題点であり続けるということで、具体的にはまだアイデアがないわけですけど、何かリボンレス、要するに物質じゃなくても電界の境界を作り得るような、少なくともビームが出ている間はということですね、というような何かテクニックがない限り、これを超えていくのは非常に難しいのではないかなと感じているところであります。これは、何かブレークスルーが必要なエリアだと思っています。
【熊谷委員】  それともう一つ、中性子ターゲットのところですけど、例えばアメリカのSNSだと、年間で何台か予防交換して行っているということを聞くのですが、今、J-PARCで、もしそれをやろうとすると、そういう放射化したものがどんどん溜まっていくことになるのですよね。今のうちはいいのだけど。
【齊藤センター長】  もう、でも限界に来ておりまして。
【熊谷委員】  それ、どういうふうに今後対応をとろうとしているのか。
【齊藤センター長】  そのために、1つは、まず置き場所としまして、新しい施設を今作りました。そちらの方に移動して保管するということで進めております。
 あと、もう一つは、これは誤解のないように丁寧に言うつもりですけれども、壊すことはとても重要でして、その経験から学んでいるのがSNSなのですね。彼らは、どんどん壊してどんどん変えているという中で知見を積んでいるわけです。ですので、我々も安全に壊して、安全に早くリプレースすると。
【熊谷委員】  壊して分析して、それをリワークしてということですよね。それがないと、単に溜まっていくだけということになりかねないので、そこら辺は長期的な展望とかビジョンで対応していただきたいなとは思うのですけどね。
【齊藤センター長】  それを進めるフレームワークとしては、国際コラボレーションのRaDIATEというものがあるのですが、我々はそこにも参加して、今、特に二川副センター長が非常に専門的な知識を大きく、リーダーシップを強く発揮していただいていますので、ここは世界中と協力しながら進めているところだと言えると思うのです。そこで重要なのは、Post Irradiation Examination(照射後検査)ですね。照射してダメージしたものをきちんと検証できる、そういう施設がとても重要になるというところです。
【福山主査代理】  他にいかがでしょうか。今の熊谷委員の御質問に関連して、確かに、現時点で予定されたフルパワーに比べて、数十%、50%、リングによって少し違います。ということは、これは研究施設、ビームが出てくるのを使って何ぼの施設なのですけれども、まだ建設の途上という要素もある。つまりJ-PARCの予算推移を見たときに、建設のところと運営のところが分かれているのですけれども、運営のところにいかない、まだ建設、さっきの電源の問題等々、それからターゲットの問題、ここら辺は運営ではなくて、むしろ建設途上の課題ということは、これからこの図で、建設に関しての予算も当然かなり必要になってくる。仮に、それと関連してですが、今度、下の運営というオペレーションという観点からだと、これは大変な電力を食う、フルパワーになったときの電力対応の問題と、現状、やはりかなり顕著な差が出てくるのではないかと。それを今度は運営費の予算の傾き全体に影響するのではないか。素朴にお金の観点で、上と下の区分けと、これからフルパワーを目指して、フルパワーになったときにどういうビジョン、スコープをお持ちなのでしょうか。
【齊藤センター長】  1つは、まず建設期かどうかという点でございますけれども、我々は、まだまだ建設を進めていくというような種類の、大きな建設を抱えているわけではない。
【福山主査代理】  確かにそこはスケールが違いますね。
【齊藤センター長】  とは思うのですけれども、でも、おっしゃっていただいたように、例えば標的をまだどんどん積み上げていかなければいけないとか、他にも先ほど来申し上げているPost Irradiation Examinationがきちんとできるようになって一人前みたいなところもございますので、そういう意味でいうと、まだ整備した方が、よりよい運転に向かえるという点を抱えているという意味においては、建設も一部残っているという言い方も当たっているのかもしれません。
 でも、既にオペレーションし始めてから10年経っていますし、したがって、走りながら改善していくという状況に立っていると考えていますので、ここはいかにも結果を出しながら、皆さんの御意見を得ながら、このファシリティーを前に進めていきたいと思っているところです。
 ビームパワー等々で電力も掛かるのではないかということでございますが、ビームローディングの部分というのは、全て比例するわけではないので、全部上がるわけではないですけど、やはり運転を効率化する中で、電気代をきちんと生み出していかないといけない状況に立っているということは、我々、本当に切々と感じておりまして、電気代が大きな割合なのですね。
【福山主査代理】  ですよね。電気代、大変ですよね。
【齊藤センター長】  僕も石油の相場を見るようになるとは全く思いませんでしたけど、原油価格の大体3か月から4か月遅れて反映するのが電気代、従量料金なのですね。ですので、先が読めないというわけでもないのですけれども、いずれにしても、使わないことに越したことはなく、あと計画的な利用というのが非常に重要なのです。休むときは一気に休むとかいうように、時間をとっていく必要があります。そういう意味でのオペレーションの効率を上げていくということは、今後も続けていきたいと考えております。
【熊谷委員】  こういう、例えばMLFですね、ハドロン関係だとか、Main Ringの方は学術関係ですので、多少年間で長期停止期間があっても、ユーザーの方はそう文句は言わないとは思うのですが、中性子とかミュオンとかそういうところは、ほとんど年間、通年運転してちょうだいよと。1か月も2か月も止まっちゃ困るよという要望があるのだと思うのですが。
【福山主査代理】  要望があるというか、非常に強い。
【齊藤センター長】  非常に強いです。
【熊谷委員】  強いですよね。その辺はどうお考えなのですか。
【齊藤センター長】  我々も、まずは9サイクル運転というところで、これはある意味で施設の仕様ですので、今のところ御理解も頂きながら、8サイクル運転をサポートしていただいているところですけれども、これはまず何とか9サイクル運転に持っていきたいと。9サイクル運転に持っていった後は、あと残りのほぼ3か月どうするかというところなのですけど、これは、こういう施設のある程度宿命かもしれませんが、メンテナンスが結構占めるところもありまして、今3か月の間は、相当複雑にメンテナンススケジュールが集中的に入っているというのが現状なのですね。
【熊谷委員】  現状はそうですよね。どこの加速器もそうだと思うのですが、通年運転を前提にした機器の設計思想というのがあるのだと思います。学術の場合は、長期停止期間にメンテナンスするのだというふうに掛かっているわけ、そういう前提で物を作っています。だから、J-PARCで、もし通年運転をするということを前提にするのだとすると、少なくともラピッドサイクルの3GeVのリングは、そういう発想、思想で物事をいろいろな機器を作り直していくというのか、改変していくということが重要になると思います。
 しかも、この高強度な装置で、放射線損傷に関して、どういう間隔で発生するのか、最初の想定は20年とか何かあるのだと思うのですが、本当にそのとおりなのかどうかというのは、検証しないといけないですよね。どこかで放射線損傷のことが非常に深刻になると、その装置は動かない。動かないということは、3GeVのリングが動かない、その後ろもないということになってしまいますよね。その辺はどうお考えなのですか。例えば、今10年たったから、放射線の損傷がどの程度進んでいるかとか、そういうのを定期的にチェックするようなことはされているのですか。
【齊藤センター長】  はい。それは定期的に測定して、それが予想とどれぐらい合っているかというところについても検証しているところですけれども、それは今のところ、従来のデザインから大きく掛け離れたものではないというふうに考えていますが。
【熊谷委員】  ずれていない。
【齊藤センター長】  でも、起こりつつあることとしまして、例えば予期しなかったところでの制御のエラーとか、こういうのはだんだん見え始めていますし、10年たって壊れかけているものというのがだんだん見えてきているので、異常検知を前もってできるようなシステムというのを、我々は今、構築しつつあるのですけれども、そういう形で問題に何とか事前に対処していきたいと思います。おっしゃるように、放射化が進んでしまうと手を付けにくい状況にどうしてもなってしまいますので、そういう形にならないように、やはり先回りして問題を洗い出すべく、これは毎回のメンテナンスのときに、非常によく、いろいろなところを検証しながら、我々のモデルと合っているのかどうかということを検証していく必要があるのだろうと思っています。
【熊谷委員】  SPring-8の経験でいうと、一番問題なのが水なのです。いわゆる水というのは、普通は何にもしないはずの水なのだけれども、非常に放射線の高いところの水というのは、単純な水ではないというふうになって、いろいろな金属を腐食させたり損傷させたりします。加速器って、大体水でいろいろな機器を冷却しています。その中というのはほとんど分からない、何か取り出して切って、切り刻んでということをしない限り。だから、表だけ見ていて放射線損傷がないからいいやと思っていると、ある時期にそういうことが、日本の工業技術というのは再現性がすごくいいので、壊れるときには一遍に壊れるのですよね。
【齊藤センター長】  そうなのです。どうもそれに近いことが起こっているかもしれないなと思うのはあるのです。思い当たるところはありますので。
【熊谷委員】  だから、そこはちょっと注意された方がいいかなとは思います。
【齊藤センター長】  実際、冷却系というのは本当に重要で、我々が抱えている問題、起こっている問題の、結構な割合は冷却系で起こっています。特に今、熊谷委員におっしゃっていただいた冷却水の問題ですけれども、やはり冷却水もいろいろなタイプがありまして、純度にしても何にしても。その中で、我々は、これはどうも変なものが混じっているなというのは大分分かってきた。そういうところは、どんどん交換しながら適切なものに変えていくということはやり始めているところです。冷却は本当に重要なパートだと思って、我々は注意を払っているところです。
【福山主査代理】  今の水の問題、水が放射化されたときにどういう新たな機能を持つ水になるかって、これはそれで科学的に面白いけれども。
【熊谷委員】  科学的に非常に面白い話です。
【福山主査代理】  同時に、これは大変施設にとって悩ましい。
 ほかに御意見いかがでしょうか。
【田村委員】  Main Ringの強度アップのための電源の更新の話なのですけれども、更新の予算が最初付いたというので良かったなと思っていたのですが、何かそれがその後止まっているというか、なかなか予算が厳しいということで、技術的には解決している話で、単なる予算の話だと僕は理解しているのですけれども、それで要するに、特にニュートリノが、CPの破れがかなりはっきりしてきて、それで本当に次のノーベル賞が狙えるような成果がまさに出つつあるところで、今アメリカとすごく熾烈(しれつ)な競争にあると思うのですけれども、このままでいくと、そちらに負けてしまうのではないかという気もするのですが、その辺はどういう状況なのでしょうか。
【齊藤センター長】  これは、本当に文科省さんの方でも、我々の電源のニーズについては非常に強く御理解いただいて、あらゆる側面からサポートしていただいているところであるのですけれども、なかなか最後の予算のところに結び付いていないというところは残念ながらあります。ですので、我々としましても、今どういうふうにこれに手を掛けていくかというところを内部で非常に議論を深めているところです。端的に言いますと、ビームタイムを止めてでも、そういう電源に手を掛けるのかどうかというところです。
 我々ユーザー施設として、ビームというのはとても重要なものでして、これが全ての成果を生み出す源泉ですから、単純にビームを止めますなどということは、簡単にはできない。一方で、このまま淡々と統計を上げていっても、もはや海外の実験に伍(ご)していけないという状況が生まれるとすれば、これは少し休んででも、施設を改良して、どんどん統計を更に加速度的にためるということをした方が得な場合もあるわけです。
 ここは、一方で、これもまた非常に重要な問題をはらんでいまして、国際的にはいろいろな大学や研究機関が参加されているために、継続的にビームが出て、それによって成果が継続的に出てくるということに依拠しているシナリオでもあるわけです。それは、大学の先生方は皆さんいつもお考えだと思いますけれども、定期的に博士を出していかなければいけないし、それによって国からの予算をもらっているということもございますので、ビームを出し続けるということは、実はいろいろな側面からの要求でもあるわけです。それをどういうふうに施設の強化に結び付けていこうかというところは、本当に悩ましいところでございまして、各方面と相談しながら、まだ最終的な答えを我々は持っていないですけれども、平成30年度の実行予算の組み方としまして具体的に考えていきたいと、もう既に考えているところでして、これは大分、我々としましても、特にMain Ringに関してはKEKの機構長も、眠れない夜が続いているという状況であります。今日も帰った後、少しそういうことを議論することになっていますし、今週、何度か議論することになっていますけれども、施設の強化なのかビームタイムなのかということですね。
 これは、多くのコミュニティーに支えられている施設だからこそ、簡単にこっちだというふうに言うことのできない問題だなと考えているところです。
【福山主査代理】  悩ましいですね。
【齊藤センター長】  悩ましいです。
【福山主査代理】  まだいろいろ御質問、コメント等、当然おありだと思います。ですけれども、今日のセンター長のお話を基に全て理解するというのはできないことなので、これから何回かある委員会で、随時テーマについての理解を深めていただくということで、とりあえずここで止めさせていただきたいと思います。御質問等々、お聞きになりたいことがあったらメモしておいていただいて、次回、次々回、将来の委員会で言及していただければと思います。
 次の課題に移りたいと思います。今回の中間評価にあたっての主な論点について、これは事務局の方から御説明をお願いいたします。
【大榊専門職】  それでは、資料4-1、4-2につきまして御説明させていただきます。主に資料4-1の文章の方を御説明させていただきますが、資料4-2は資料4-1をビジュアル化したものでございますので、併せて御覧いただければと思います。
 それでは、資料4-1につきまして御説明させていただきます。大強度陽子加速器施設(J-PARC)中間評価にあたっての主な論点についての案でございます。これは、前回のJ-PARC中間評価での御指摘事項と、それから今後の課題案について、考えられるものを事務局であらかじめ整理したものでございます。
 まず、内容について簡単に御説明させていただきます。1ページ目、J-PARCの概要といたしまして、全体J-PARCの主な経緯、目的、施設概要、予算等について基礎的な事項を書かせていただいているところでございます。
 おめくりいただきまして、2ページのところでございます。先ほどセンター長からも現状について御説明がありましたけれども、運転実績等について書かせていただいているところでございまして、J-PARCの概要の今後の課題案というところを御覧いただければと思います。こうしたような課題案が挙げられるのではないかということで、J-PARCは、安定的な施設運営に向けて技術の成熟度を高めている段階であるということで、所期の目標達成に向けた着実な取組を推進する。それから、安定運転の達成を見越した先見的な取組を開始していく時期であるとしております。国及びJ-PARCは、これを前提とした予算の確保、環境整備に取り組むべきではないかという課題を案として挙げさせていただいているところでございます。
 それから、3ページに参りまして、前回、平成24年6月の中間評価の主な指摘事項に対する対応といたしまして、(1)に研究能力の更なる向上というところを挙げさせていただいております。前回の御指摘では、今後の課題といたしまして、トップダウン型の研究開発、産業界との連携、効果的な広報、大規模先端施設との有機的な連携・活用が重要であるとされております。
 それから、加速器・ニュートリノにつきましてはビーム強度の増強、それから中性子、ミュオン、ハドロン、核変換、それから施設整備につきましても、それぞれ、前回御指摘を頂いているところでございます。
 前回の御指摘の中で、今後の方向性といたしまして、共用法に基づく共用を促進し、イノベーション促進と国際競争力及び産業競争力の強化に貢献する。また、国民の信頼と支持を得ていくために、様々な関係機関が情報発信と広報活動について、さらなる工夫と強化を図るべきという御指摘がございました。
 それにつきまして、下の方に対応状況というのをそれぞれ記載させていただいております。対応状況につきまして、個別のところは割愛させていただきますが、項目で申し上げますと、トップダウン型の研究開発、産業界との連携、おめくりいただいて4ページ中段でございますが、効果的な広報、それから大規模先端施設との有機的な連携・活用、イノベーション創出と国際競争力につきまして、それぞれ現状を記載させていただいているところでございます。
 5ページでございますが、今後の課題案について考えられる点を挙げさせていただいております。これは、特にMLFについての課題でございますけれども、社会・産業が抱える重要課題についてソリューションを提供する大型共用研究施設として、最大限利活用を進めていくことが重要である。そのために、「組織」対「組織」の本格的産学連携を進めていくことが重要ではないかという課題が挙げられるかと思います。
 それから、情報発信と広報活動につきましては、費用対効果の高い研究プロモーションを行っていくべきではないかという点を挙げさせていただきました。
 また、学術利用に関し高い研究成果を創出していくために、IR、すなわち論文分析を含めた研究力分析、ベンチマークによる組織内評価を行って、課題審査等に生かしていくべきではないかという点を挙げさせていただいております。
 続きまして、加速器とニュートリノのビーム強度の増強でございます。加速器出力の増強につきましては記載のとおりでございますけれども、今後の課題といたしまして、MLFについては、安全運転を第一としつつ、1メガワットを着実に目指していくべき。それから、ニュートリノ、ハドロンにおいても、目標強度の早期実現を目指すべきではないかとしております。ニュートリノ、ハドロンにつきましては、そのために必要な措置についても引き続き、取り組むべきではないかという案を書かせていただいているところでございます。
 また、中性子でございますけれども、幾つか細かく御指摘を頂いておりまして、おめくりいただいて6ページに、今後の課題案といたしまして、一貫した分析サービスの提供、メールインサービスや随時受付課題制度など、利用者のニーズを踏まえつつ、MLF全体として対応を検討していくべきではないかという案を挙げさせていただきました。
 生命科学分野の装置整備等につきましても、現状と今後の課題案を書かせていただいてございまして、今後の課題案としては、中長期的なニーズや代替測定手段等の状況も踏まえて、改めて必要性を検討するべきではないかという案を書かせていただいているところです。
 ミュオンでございますが、先ほどセンター長からも少しお話がありましたが、新規ラインの波及効果の明瞭化といたしまして、今後の課題案としまして、学術・産業のニーズを踏まえた装置整備の優先順位を明確にしつつ、当面、Sライン・Hラインの整備に向けた取組を進めていくべきではないかといったような案を挙げさせていただいたところでございます。
 ハドロンでございます。ビームラインの効率的整備の検討としまして、現状を書かせていただいてございます。今後の課題案としましては、上記ミュオンと同じでございますが、優先順位を明確にしつつ、ビームラインの効率的な整備を進めていくべきではないかという案を書かせていただいたところでございます。
 7ページでございます。核変換につきましては、先ほど、同じくセンター長から御説明ありましたとおり、TEF-Tの技術設計報告書の取りまとめが出されているところでございまして、要素技術検証のための研究開発等を実施してございます。また、工学規模実証の在り方についても検討が進められているということで、今後の課題案につきましては、基礎研究や技術蓄積の観点から着実に実施することが重要であるが、より合理的かつ効率的な進め方についても検討するべきではないかという案を示させていただいているところでございます。
 施設整備につきましては現状のみ記載しておりまして、整備は完了してございますので、こういった書き方とさせていただいております。
 (2)でございます。教育及び研究者育成の役割についてということで、前回の御指摘につきましては、今後の課題として、さらなる人材育成が課題である。それから、今後の方向性としては、研究者養成・若手人材の育成の強化が挙げられたところでございます。
 (1)のときと同じく、対応状況について書かせていただくとともに、今後の課題案について記載しており、8ページをおめくりいただいて、研究者養成・若手人材の育成につきましては、今後の課題案といたしまして、中性子利用研究に携わる若手・社会人研究者のみならず、これまで中性子利用を行っていない研究者に対しても、積極的に教育の機会を提供していくべきではないかという案を挙げさせていただいたところでございます。
 (3)でございます。国際研究拠点化の役割につきまして、前回の中間評価で、今後の課題としまして、さらなる常駐外国人研究者の受入れ、生活支援等に係る地元自治体との連携・協力、海外からの非公開利用の取扱い基準の検討などが課題であると指摘を受けております。同じく、前回の指摘におきまして、今後の方向性として、世界トップレベルの研究開発とそれを支える環境の整備を強力にするとされております。
 その対応状況につきまして、それぞれ、常駐外国人の受入れと、生活支援に係る地元自治体との連携・協力について記載させていただいております。9ページでございますけれども、海外からの非公開利用の取扱い基準の検討の状況、それから世界トップレベルの研究開発とそれを支える環境の整備ということで、今回は細かく御紹介いたしませんが、それぞれ進捗がなされているところでございます。
 今後の課題案といたしまして、真の国際研究拠点となるために、常駐の外国人研究者を増やす一層の努力が必要ではないかという点が挙げられるのではないかと思っております。また、J-PARCへのアクセス環境の改善などの検討を進めるべきではないかという点も記載したところでございます。
 (4)でございますが、中性子線施設の共用の促進の役割についての御指摘も頂いてございます。今後の課題としまして、細かくは読み上げませんけれども、利用者支援等の充実・強化や潜在的利用者の掘り起こし等について課題が指摘されたところでございまして、今後の方向性につきましては、共用法に基づく供用の促進、それからイノベーション創出と国際競争力、産業競争力の強化に貢献していくことが重要であるとされております。
 おめくりいただいて10ページでございますが、同じように、対応状況、利用者支援の充実・強化、潜在的利用者の掘り起こし、ビームラインの有効活用、JRR-3との一体的な利用、産学連携ビームラインの整備も含めて状況を記載させていただいてございまして、今後の課題案としまして、産業界も含めた利用ニーズに即した課題審査を行えるような仕組みを一層改善していくべきではないか。また、費用対効果のより高い潜在的利用者の掘り起こしの仕組みを検討するべきではないか。また、ほかの中性子源との連携などにより、さらなる利用者の開拓に努めるべきではないか。また、これと別に今議論が進んでございますけれども、軟X線向けの次世代放射光施設の検討が進められているところでございますが、この整備に係る検討も踏まえまして、これまで共用ビームライン単位で行ってきた整備、運用を、ビームタイム、すなわち利用時間で分けるといったような考え方を、J-PARCに取り入れ、効果的な運転を検討するべきではないかという点も書かせていただいたところでございます。
 最後、11ページでございます。今までが前回の御指摘事項でございまして、それへの対応と今後の課題案を書かせていただいたところでございますが、3ポツの新たな論点についてということで、今後の論点案を幾つか示させていただいたところでございまして、経営的視点の導入というのを1つ論点として挙げさせていただきました。論点としまして、四角書きの中にございますように、施設の運営に経営的な視点を取り入れて、最先端の研究成果を持続的に創出していくための環境の計画的な維持、高度化を行うといったような取組が必要ではないかということを挙げさせていただきました。また、限られた資金や人員を効果的に活用するため、MLFの一体的な運用を進めていくべきではないかという点も記載しているところでございます。
 また、先ほど少しさわりがありましたけれども、本格的産学連携の実施としまして、J-PARCを産学連携のプラットフォームとして最大限活用することとしまして、本格的産学連携を実施していくような仕組みを導入するべきではないか。また、先ほどもお話しさせていただきました軟X線向けの次世代放射光施設、この検討状況も踏まえまして、利用料金の設定の再検討、すなわちニーズに合わせた柔軟化ですとか、利用料金の見直しとかいったものも必要ではないかという論点を挙げさせていただいたところでございます。
 冒頭お話しさせていただきましたとおり、この資料は、前回の指摘事項と今後の課題案について、事務局であらかじめ整理したものでございまして、今後こういった大まかな論点の整理に従って、2回目、3回目と、作業部会において詳細を御議論いただければよいのではないかと考えているところでございます。
 また、論点につきまして過不足等ありましたら、御審議の中等で御意見を頂きたいと思いますが、大まかな論点の方向性について、もし本案で御了解を頂けるようでありましたら、これをベースに報告書を作成していくという流れにしたいと思ってございますので、この点について御審議を頂ければと思います。
 以上でございます。
【福山主査代理】  ありがとうございました。前回の中間評価で話題になったこと、コメントを踏まえて、今回どういうことにフォーカスするかということの整理でございます。最後に、新たな論点も加わっておりますけれども、よろしいですかね。これは、これからの作業を進めていくうちに各項目で深掘りをすることになるかと思います。
【高梨委員】  1つ、よろしいですか。
【福山主査代理】  どうぞ。
【高梨委員】  これをまとめて計評の分科会の方へ出す、提出されるのですよね。そのときに、フォーマットがあるはずなのですけれども、そのフォーマットで問われている、例えば有効性だとか効率性だとか、ありますよね。ああいうところに出てくる指標、例えば有効性の指標はこういうもので測る、だったら、そういうのを整理しながら、いわゆるアウトプットを見据えた状態で議論をしていった方が恐らくいいかと思います。今は我々のというか、この部会の議論をまとめたような感じになってしまっているので、そこは少し感じました。
 これ、いつまでに提出するのですか。中間報告をいつまでに提出するのですか。
【大榊専門職】  スケジュールにつきましては、今のところですと、5回まで御議論いただいて、5月の下旬には報告書と中間評価の評価票を作成いたしまして、その後の計評分科会の方に上げていくという手続にしたいと思ってございます。特段お尻が決まっているというものではありませんが、おおむね5年ごとに評価するということでございますので、余り遅くならないように、評価報告書と中間評価を計評に上げていきたいと考えているところでございます。
【高梨委員】  分かりました。であるならば、そんなに長くしてもあれだと思うので、この部会の最後にお話しされるスケジュールを考えても、結構詰めてやってしまいたいという意図が見えるので、そうなるとやはりアウトプットのイメージを持ちながらやった方がいいかと思います。
【大榊専門職】  ありがとうございます。よく検討させていただきます。
【福山主査代理】  そうですね。これからの議論で、最終的に何をメッセージとして残すか、何をそのときの補強データとして記述するか。それを意識しながら各項目、ピックアップとその深掘りの仕方を工夫すると、確かにそれはそうですね。
 今お話しになったこれからのスケジュールに関しても、続けて今御説明いただけますか。それを踏まえて。
【大榊専門職】  はい。では、資料5を御覧いただければと思います。
 J-PARCの中間評価作業部会の今後の予定について記載させていただいてございます。本日、第1回を行いまして、第2回は3月の下旬頃を予定してございますが、前回の中間評価の主な指摘事項に対する対応というのをまず御審議を頂くこととし、研究能力の更なる向上について第2回で御議論いただければと考えてございます。
 それから、第3回、4月の中旬でございますが、それぞれ前回の議論を一度振り返って、つまり、第2回の議論を一度振り返った上で、前回中間評価の指摘事項に対する対応として、(2)から(4)までの項目について御審議を頂ければよいのではないかと考えております。
 それから、4月の下旬頃を予定してございますが、J-PARCの現地の調査を行っていただければと思ってございます。現地に実際に行って、装置の状況ですとか、研究開発の動向というのを実際に御覧いただければと考えております。
 それから、第4回は5月中旬頃の予定で、報告書の素案についても、このあたりで御審議を頂ければと考えております。
 最後、第5回でございますが、5月の下旬に報告書と、それから先ほど先生から御指摘ありましたとおり、中間評価の票につきましても、この第5回のところで御審議を頂ければよいのではないかと考えているところでございます。
 簡単でございますが、以上です。
【福山主査代理】  ということです。これがこの委員会のこれからのスケジュールとターゲット、今の御説明を伺って、先ほどの今回の論点に関して、何か御意見、御質問はございますか。いかがでしょう。確かにこういう会合、せっかく皆様、経験お持ちの方が貴重な時間を使われて意見交換をする。それが将来きちんとうまく使われるように、みんなのためになるようなドキュメントになる、そのためにどういうレポートが一番効率的か、何が書いてあればいいか。その書いてあることの内容をどういう形で補強するか、確かにそれが必要で、絶えずテーマに関して深掘りするときに、出口というか、その先の使われ方を意識しながら議論すると効率的かもしれませんね。そういうことを踏まえて、ここに書いてあるスケジュール及びテーマ、今日の段階でよろしいでしょうか。
【住吉委員】  やはり国際的なよく似た施設があるので、それとの比較というのはどこかで入れないと、先ほど後れているとおっしゃっていたのだけれども、どれぐらい競争があって後れているのかとか、そういう観点も入れていかないと。頑張っていますと言っても、全然国際的に後れているのでは話にならないと思いますので、どこかでそういう資料も頂けるといいなと思いますので、よろしくお願いします。
【福山主査代理】  それは、当然どこかの段階でかなり緻密な議論があるかと思いますので、期待します。やっぱりこれは研究施設なので、いい成果が出てくるためにどうするかと、そこが肝なので。
 ほかに何か御意見、全体をごらんいただいて。確かにJ-PARC、造るのに大変な多額の経費、税金が使われている。毎年大変な運転経費が掛かっている。それを考えると、社会にどういう責任の果たし方をするかというのは、これからの数回の委員会の中で議論の根底に置かなければいけないことかと思います。
 今日の段階ではこれでよろしいですか。特に御意見、御提案がなければ、この案というのを取ってよろしいですか。
 では、そういうことにさせていただきます。
【石切山委員】  次回はもう決まっているのでしょうか、次回の日程は。
【福山主査代理】  これからのこと、事務局の方から。
【事務局(鬼柳)】  メールでご連絡させていただいておりますが、3月29日の午前中を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。
【大榊専門職】  日程調整等につきましては、また御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
【福山主査代理】  事務局でいろいろ御説明されること、よろしいですか。必要なことを言っていただけますか。
【大榊専門職】  事務的な内容について、少し説明させていただきます。
 本日の資料につきまして、後日、文部科学省のウエブサイトに公表させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 また、本日の会議の議事録につきましては、委員の皆様に御確認いただいた上で、文部科学省のウエブサイトに掲載させていただければと思います。
 また、もし不要な資料、それからドッチファイル等につきましては、机上に置いたままにしていただければと思います。
 また事務的で申し訳ありませんが、手続書類等につきまして、御提出がまだの方につきましては、旅費手続関係の書類、押印いただいていない方とか、お帰りの際に受付まで御連絡頂ければと思います。
 以上でございます。
【福山主査代理】  ありがとうございました。
 以上で今日予定しておりました御意見を伺う事項は全て終わりました。事務局、よろしいですね。残っていませんね。御協力ありがとうございました。
 それでは、これをもちまして閉会とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――



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