第9期研究費部会(第6回) 議事録

1.日時

平成30年7月31日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省13F1-3会議室(東京都千代田区霞が関3丁目2番2号)

3.議題

  1. 新学術領域研究(研究領域提案型)の見直しについて
  2. 平成31年度概算要求に向けて
  3. 科研費制度の改善・充実について
  4. その他

4.出席者

委員

西尾部会長,甲斐部会長代理,栗原委員,小安委員,鍋倉委員,山本委員,射場委員,上田委員,竹沢委員,橋本委員

文部科学省

磯谷研究振興局長,千原大臣官房審議官,梶山学術研究助成課長,岡本学術研究助成課企画室長,他関係官

オブザーバー

盛山学術システム研究センター副所長,永原学術システム研究センター副所長

5.議事録

(1)新学術領域研究(研究領域提案型)の見直しについて

【西尾部会長】 それでは、時間となりましたので、ただいまから第9期第6回の研究費部会を開催いたします。
 まず、事務局に人事異動があったようですので、御紹介願います。
【松本企画室長補佐】 それでは、人事異動の前に、本日、小川委員におかれましては大学の用務が急遽入ったということで、御欠席という連絡が先ほど来ております。それから、研究振興局長と審議官ですけれども、急遽、別件が入りまして、遅れての出席ということになってございます。申し訳ございません。
 それでは、今年度4月1日以降、事務局に人事異動がございましたので、御紹介をさせていただきます。
 千原大臣官房審議官(研究振興局担当)でございます。
 次に、梶山学術研究助成課長でございます。
【梶山学術研究助成課長】 よろしくお願いいたします。
【松本企画室長補佐】 岡本学術研究助成課企画室長でございます。
【岡本企画室長】 よろしくお願いいたします。
【松本企画室長補佐】 辻山課長補佐でございます。
【辻山学術研究助成課長補佐】 よろしくお願いします。
【松本企画室長補佐】 それから、本日出張で不在にしておりますが、二瓶課長補佐でございます。
 以上でございます。
【西尾部会長】 ありがとうございました。
 本日は、新学術領域研究(研究領域提案型)の見直しのほか、来年度概算要求に関する審議をお願いしたいと思います。その後、科研費制度の改善・充実について、今後の取組の報告をお願いしたいと思います。
 なお、本日は日本学術振興会より、盛山、永原、両学術システム研究センター副所長にオブザーバーとして参加いただいております。どうもありがとうございます。
 次に、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【松本企画室長補佐】 本部会につきましては、ペーパーレス会議として実施をさせていただきたいと思っておりますので、資料については基本的にタブレット端末で御参照いただければと思います。個々の資料につきまして読み上げはいたしませんけれども、資料の欠落等、タブレット端末の操作方法について御不明な点がある場合は、事務局までお申し付けいただければと思います。
 それと、机上配付資料としまして、本日、A4横の資料と、科研費100周年のシンポジウムのリーフレットをお配りしてございます。
 以上でございます。
【西尾部会長】 どうもありがとうございました。端末の操作方法等について何か御不明な点がございましたら、遠慮なく事務局の方にお伝えいただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 それでは、初めの議題に入ります。
 昨年7月3日の本部会で取り上げましたが、前期研究費部会において継続検討課題としていた新学術領域研究(研究領域提案型)の見直しについて、現在、小安先生に主査をお務めいただいている科研費改革に関する作業部会において鋭意御議論いただいております。本当にありがとうございます。
 このたび見直しの方向性について案を取りまとめていただきましたので、まずは事務局から説明をお願いしまして、その後、小安委員から補足をしていただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。
【辻山学術研究助成課長補佐】 それでは、資料1-1をごらんください。
 作業部会におきましては、これまで領域型研究への支援について、基盤研究等、他の研究種目では代替・補償し難(がた)いものを明確にし、そもそも領域型研究による支援が必要か否か、原点に立ち返って検討を行っております。その結果、中ほどにございますこれまでの成果として、例えば、研究領域を通じた異分野の研究者との議論により新たなアイデアが創出され、新たな課題・テーマに対し、分野を超え体系的に取り組む体制が構築できたなど、5つの主な成果というものを挙げております。一方、現状の制度の課題や問題意識といたしましては、「現在の新学術領域研究という種目名や、公募要領に対象として記載のある新興・融合領域の創成等のキーワードが、応募者にとって強引な融合研究を検討させ、過度に新規性を意識させているのではないか」や、「領域研究の構成や研究期間の設定に柔軟性がない」「研究の特性に応じた柔軟で機動的な対応が困難になっているのではないか」など、3つの問題点、問題意識というものを整理しております。
 このことから、作業部会では、上記成果が認められていることより、引き続きグループ研究としての領域型研究への支援が必要であるとの結論に至った一方で、上記の課題・問題意識を解決するために、今後の新学術領域研究(研究領域提案型)に関しては、1として目的を見直す、2として学術研究領域の構成を見直す、3として支援規模を見直す、この3点について審議を行って、2ページ目にあるような別紙のとおりにまとめているところでございます。
 まず、別紙1の目的を見直す点に関しましては、学術の体系や方向の変革・転換を先導する学術研究領域で、学問分野に新たな変革や転換をもたらすもの、学問分野において強い先端的な部分の発展をもたらすものを対象とするように目的を見直すとともに、現在の研究種目名を変更するという方向性を示しております。これは、例えば現在の公募要領において、その対象としているものを、1、既存の学問分野の枠に収まらない新興・融合領域の創成を目指すもの、又は2として、当該領域の格段の発展・飛躍的な展開を目指すものとして、2つに分けて公募要領に記載しておりますが、これを1つの、同じものとして並列にまとめるように今後公募要領等に記載してはどうかというものでございます。
 2の「特定領域の特性に応じて、総括班、計画研究及び公募研究の構成を柔軟に設定できることとする」、これについては、現状は総括班、計画研究、公募研究の3つで必ず構成するように公募要領上、要件となっておりますが、これを総括班と計画研究のみの領域も可能とするようなことを検討するようにしてはどうかというところです。
 3、研究領域の規模に応じた適切な審査が可能となるように、応募総額に応じた区分を設ける。その際、挑戦性・緊急性の高い学術研究上の課題への短期的・集中的な取組が可能となるように、領域運営の機動性に配慮し、小規模で実施する区分を設ける。また、評価結果を踏まえ発展させる仕組みを検討する。これについては、例えば現状、1年間当たり1,000万円から3億が、領域における規模として公募要領上記載されておりますが、例えば、基盤研究(A)(B)(C)のように応募区分に応じた区分を設け、又は、挑戦性・緊急性の高い学術研究上の課題に短期的・集中的な取組が可能となるように、現状の制度では5年間という研究期間、領域の設定期間だけなんですが、これに例えば3年間のものを設けることで、短期集中的な取組が可能となるようなことを検討してはどうかと。また、現状、領域の総額というものはあるんですが、一計画研究当たりの総額については特に制限を設けていないので、例えば小規模で実施する区分を設けてはいかがか、研究課題に対する制限を設けることを検討したり、また、3年間で実施されるような領域については、評価結果を踏まえて、延長させたり新たな領域として発展させるというような評価の仕組みを検討するようなことを検討してはいかがということで、3つの方向性としてまとめております。
 また、資料1-2を見ていただければと思いますが、今後の見直しのスケジュール案についてまとめております。本日、見直しの方向性について審議いただき、決定されましたら、今後は引き続き、見直しの方向性に基づいて制度の詳細な設計、具体的な見直し方策について検討を行ってまいります。翌年2月に、次期審議会への引継ぎを踏まえまして、具体的な見直し方策の検討について、新しい審議会の下で、作業部会に要請していただいた上で、翌年6月には、この研究費部会において新学術領域研究の見直しの審議、決定をしていただき、同年9月の公募からは新しい制度で公募を行っていくようなスケジュールを考えております。
 説明は以上になります。
【西尾部会長】 小安主査から補足等ございましたら、よろしくお願いいたします。
【小安委員】 今、事務局から御説明いただいた通りですが、補足します。皆さんご記憶だと思いますが、これまでの科研費改革の流れの中で、科研費の中でも、研究者の自由な発想に基づく種目として基盤研究の種目群を中心に置くわけですが、その横にトランスフォーマティブ・リサーチをキーワードにして、学術変革研究種目群というのを置きました。その中に、特に挑戦性を重要視した挑戦的研究、これにも2カテゴリーを置いたわけですが、新学術領域研究もこの種目群に当たるであろうという整理の下に、今回少し議論をさせていただきました。
 その中で、今、事務局から御説明があったように幾つかの点が浮かんできましたので、今後これらの点に関して議論をさせていただいて、またこちらの方に御報告・御提案させていただこうと、そのように考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【西尾部会長】 どうもありがとうございました。
 説明がありましたように、来年6月に新学術領域研究の見直しを決定して、来年9月の公募開始のときには、その見直し案で公募を掛けるということです。
 きょう審議していただくことは、先ほど3つの柱で今後の改革の方向をお示しいただいておりますけれども、その方向性で問題がないかということ。もう一つは、委員の皆様方から、もう少しこういうことを配慮すべきではないかとか、今後の作業部会の審議に資する、コメントや御意見等があれば申し出ていただきたいということ。以上2点でございます。
 方向性の1のところで、今まで2つに分けて書いてあったものを、「学問分野に新たな変革や転換をもたらすもの、そして学問分野において強い先端的な部分の発展をもたらすもの」と1行で書かれたときに、申請内容がどちらを重視しているのかを推測しながら審査をする必要があるなど、混乱が生じないかどうかというようなあたりはいかがでしょうか。
【小安委員】 それは我々の作業部会でも結構議論になりました。これまでも、新しい領域を作るという提案と、これまで培ってきたものを更に発展させるという提案とで、実際の審査の場で、考え方の統一を図ってきちんと分けて議論することが大変だったというようなことも出てきております。したがって、どういう表現にするのかということも含めてさらに議論が必要だということでは作業部会の中で一致しています。それをどうやっていくかというのは、これからまた議論させていただきたいと思っています。
【西尾部会長】 私としては、新学術領域研究はどちらかというと、最初に書かれている新たな変革や転換というところに重きが置かれてきたと考えますが、当然ながら学術研究としては先端的な研究を展開すべきだということで、それら両方が対等に重要であるというメッセージを出しておられると考えてよろしいでしょうか。
【小安委員】 基本的には、これは全ての要素が入っていると思います。ですからわざわざ2つに分けるということは本来は必要ないのではないでしょうか。やはり学術の体系や方向を変革、転換するというところにかなり重点を置きたいということを議論しています。
【西尾部会長】 甲斐先生、どうぞ。
【甲斐委員】 2のところなんですけど、総括班、計画研究、公募研究の構成を柔軟に設定できるとありますが、公募研究はなくてはならないという原則は変わらないんですか。
【小安委員】 かつて特定のBというのがありましたけれど、あのイメージで、例えば比較的スモールスケールで計画研究のみでスタートして、それを更に次の段階で発展させるというのもあってもいいのではないかという議論をしています。やり方に関してはまだ詳細を詰めているわけではありませんが、そういう議論の中で、今こういう表現が出ているということです。
【甲斐委員】 これからということ。大規模な方には残す方向ですか。
【小安委員】 全てが入っているものもあっていいと思っています。先ほど額の話が出ましたが、例えば、今1,000万から3億といっても、ほとんどが上の方に張り付いています。これからの議論ですが、例えば1,000万から1億と1億から3億みたいな分け方をしたときに、スモールスタートで公募研究がなくて始めるものもあるし、大型のものもあってもいいのではないかということです。そのときの状況に応じて提案する側(がわ)が決められるような仕組みを入れたらどうかというようなことを今議論しています。
【甲斐委員】 分かりました。
【西尾部会長】 ほかに御意見や御質問はございませんでしょうか。
 どうぞ、栗原先生。
【栗原委員】 今の書きぶりだと、変革をもたらすものが従来の新しい領域を作るというもので、次の先端的な展開をするというのが、ある分野の先端的なところを進めるということで、前の2つの考え方は一応書き込まれていると思います。
【小安委員】 現在の議論の段階では、これまでのその流れを全く断ち切っているわけではなくて、引き継いだ形で議論が進んでいるというふうにお考えいただければと思います。
【西尾部会長】 よろしいですか。
【栗原委員】 はい。
【西尾部会長】 どうぞ。
【射場委員】 3の最後の一文の評価結果を踏まえて発展させる仕組みというのは大変いい考えで、私は、多くのプロジェクトがこうあるべきだと思っているのですが、この対象は、その3年間、先ほど事務局の説明だと3年間に選んだものに対して、3年後に発展させるということを議論するというふうな御説明だったと思いますが、もっと長い方、5年のものを、これはいいからもうちょっと延長しましょうみたいな取組も議論の対象になってもいいんじゃないかと思うのですけど。
【小安委員】 ありがとうございます。そういう考え方もあり得ると思うので、議論をさせていただこうと思います。
【西尾部会長】 貴重な御意見をいただき、どうもありがとうございました。
 ほかにございませんか。
 先ほど甲斐先生から御質問のありました公募研究のところですけれども、私は以前、重点領域研究を行いましたときに、計画班というのがあって、その計画班ごとに1課題あるいは2課題の公募研究を募っていました。当初の計画班でカバーできていなかった研究内容を補完するという意味であったと考えます。甲斐先生が質問されていることなのかもしれませんが、この公募研究というのは、計画研究ごとに公募研究を募っていかれるというような感じなのでしょうか。
【小安委員】 それも今、議論をオープンにしているつもりでして、そういう考え方も当然あると思います。今多くの新学術領域研究はそういう形になっていると思いますので、それは1つの姿だとは思います。
【西尾部会長】 現在、非常に重要な見直しをしていただいている段階ですので、御希望とか、こうすべきだという意見をおっしゃっていただきますと、部会の方でそれを反映していただける可能性があります。何かほかに御意見とかございませんか。
【栗原委員】 今のような総括班と計画研究というのは、規模の小さなものを提案することも認めると、余り公募研究のようなものがなじまないのではないかと思います。枠組みについては、今後の議論はあると思うんですけれども、ある程度柔軟性というところとリンクして2のところの考え方が出ていますが、実際に審査するときには、いろいろなバリエーションが出てくると非常に難しくなるので、だんだんに形がそろってくるような気はします。とにかく枠組みとしてはフレキシブルな枠組みがいいのではないかという議論だったと思います。
【小安委員】 確かに、現在の新学術領域研究が始まったときにも、実際に審査をして、一、二年やってみて、こうだったなということが皆さん分かってきたようなところもあったと思います。ですから、どんな場合でも変えたときには恐らくそういうことになって、少しずつアジャストされていくのではないかなというふうに思っています。
【西尾部会長】 どうもありがとうございます。
  どうぞ。
【山本委員】 私はワーキングに入っているので、そこで申し上げているんですけれども、やはり基本的に研究者のニーズには多様性があるので、規模を一概に決めてしまうというのは非常に危ないと実は思っています。だからその辺フレキシブルになるようにするのは大事なことなので、そういう点も含めて御検討いただければと思っています。
【西尾部会長】 重要な視点、どうもありがとうございました。
 学術システム研究センターの方からは、何かコメントとかございませんか。何なりと、どうぞ。
【盛山JSPS学術システム研究センター副所長】 コメントということで、では簡単に、質問させていただきます。
 来年の9月には公募開始という状況ですと、仮に審査システムに学術システム研究センター等が関わるようであれば、どこかのレベルで、特に審査システムに関してはかなり協議させていただく必要があるのではないかと思うので、そのあたりのタイミングをよろしくしたいと思います。
【西尾部会長】 非常に重要な視点をお話しいただき、ありがとうございました。これをどうやって実装していくかというところで、おっしゃっていただいた課題が出てくるかと思います。
 皆さん、ご提示いただいた1、2、3の方向性ということでよろしいですか。
 それでは、新学術領域研究(研究領域提案型)の見直しの方向性につきましては、御提示いただきました案を更に深めていただく、また、その過程で本日いただきました意見等を議論の中で検討いただく、さらに、来年の9月に実際の公募が始まるに当たってどのように実装していくかということも配慮していただくということで、小安先生、どうかよろしくお願いいたします。
【小安委員】 承知いたしました。

(2)平成31年度概算要求に向けて

【西尾部会長】 それでは、次の議題に移ります。
 来年度の概算要求に向けて事務局に考え方を整理いただいておりますので、関連資料を含め、事務局から説明をお願いいたします。
【岡本企画室長】 それでは、資料の説明をさせていただきますけれども、その前に、昨年も同様の資料をこの研究費部会の方で掛けさせていただきまして、それに基づいて30年度概算要求させていただきました。予算として取りまとめて、まだ一部、審査の進んでいるものもありますけれども、ほとんどのものの審査は終了しているところでございます。研究費部会での審議をできるだけ踏まえた形での審査結果ということで、後ほど資料2-3の方でその結果については御報告させていただきたいと思いますので、また引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、資料2-1から2-2、2-3、それと机上配付資料がございます。これらについて御説明をさせていただきます。
 まず、資料2-1でございます。こちらが科研費改革の当面の取組についてということで、31年度概算要求に向けた考え方等をまとめたものでございます。冒頭にございますけれども、現在、科研費改革を進めているところでございまして、この科研費改革には、実施方針があり、平成29年1月に改定したものがございます。また、基礎科学力の強化に関するタスクフォースの議論などのまとめに基づいて、科研費の審査システム改革2018、平成30年度に審査区分表を設けて、審査を1回行っておりますが、そのような見直しを行った上で、本年6月には統合イノベーション戦略等の政府方針が幾つか出されておりますので、これらを踏まえまして、以下の考え方により必要な予算の拡充に努めるということを考えております。
 予算の関係では大きく2つございまして、1つが、中核的研究種目の充実を通じた科研費若手支援プランの実行ということでございます。こちらは30年度にも、このプランに基づいて予算要求しておりますので、引き続きということにはなりますけれども、まだまだ十分でないところがございますので、予算要求をしていくということでございます。
 最初に、制度の根幹である基盤研究種目群を中心にした助成水準の向上を図る。その一環として採択件数に占める若手研究者の割合の増加を図るなど、若手研究者に対する支援の強化に留意しつつ、基盤研究(B)、基盤研究(C)及び若手研究の新規採択率については、政策目標30%の達成を目指す重点種目と位置付け、計画的な向上を図る。その際、大型種目の助成水準の確保にも留意するということでございます。
 特に基盤研究(B)につきましては、研究の高度化と国際競争の激化、学術変革種目群との関係、研究者の独立性の確立、層の厚みの確保の必要性等を踏まえた計画的な拡充を図る。採択課題に係る充足率につきましては、研究種目全体を通じた最低水準70%を確保する。特に相対的低位にある若手研究については、配分額の回復を積極的に図る。
 最後は研究活動スタート支援についてですが、若手研究者を中心に研究活動のスタートを最初に支援し、若手研究や基盤研究へ円滑にステップアップするための重点種目と位置付け、計画的な拡充を図るということでございまして、これが2つの大きな柱の1つでございます。
 もう一つが国際共同研究の推進でございます。国際共同研究加速基金について、海外研究者との共同研究の基盤を強化する観点から、発展的な見直しとともに、応募動向等を踏まえた拡充を図る。特に海外の日本人研究者の帰国に向けた予約採択の仕組み、帰国発展研究については、海外特別研究員の経験者等の優秀な若手研究者が帰国後速やかに活発な研究活動を展開できるよう、応募要件を見直すとともに、応募動向等を踏まえた拡充を図るということを考えております。
 3ポツにありますその他の制度改善、これは予算の要求とは別の制度改善になりますけれども、優秀な若手研究者等が海外渡航によって科研費による研究の継続を断念することがないよう、海外渡航時における科研費の中断・再開制度を導入する制度改善を図ることで、海外での研さんを積み、挑戦する機会の創出を促進するということでございます。
 続きまして、資料2-2をごらんいただければと思います。
 この当面の取組についての考え方をまとめるに当たっての関連資料ということで準備させていただいております。ポイントになるところのみ御説明させていただきます。2ページ目には中核的研究種目の充実を通した科研費若手支援プランの実行ということで、今御説明した4点が書かれておりまして、その後、基盤研究の今日的位置付け・意義を整理させていただいております。この辺は基本的に昨年と同様のものでございます。5ページ目をごらんいただければと思います。
 基盤研究(B)につきましては、特に計画的な拡充を図るとさせていただいておりまして、この基盤(B)を取り巻く状況ということで3点、少し細かめに書かせていただいております。研究の高度化と国際競争の激化という点につきましては、各分野を通じ、技術の高度化、新たな手法の導入、設備等の高度化、国際共同研究や国際発信の普及などを背景に、研究活動に要する経費は増加傾向にある。より大型の支援が一般的な先進国の研究費制度と比較しても、助成上限500万円の基盤(C)に偏る形のままでは、国際競争上、我が国は劣勢とならざるを得ないということ。
 2つ目が学術変革研究種目群との関係ということで、挑戦的研究の開拓というものを新設しております。従来、挑戦的萌芽研究500万まででしたけれども、この開拓を設けたことで、上限額2,000万円までということになっているところでございますので、同程度の助成規模である基盤(B)における支援の重要性が更に高まるということがございます。
 3つ目が研究者の独立性の確立、層の厚みの確保ということで、研究者が研究室の立ち上げ後、真(しん)に独立して研究室を持続的に主宰、運営し、思い切って真理の探究に臨めるようにするためには、若手研究及び基盤(C)級の小規模研究種目による支援のみでは十分と言い難(がた)いということで、少なくとも基盤研究(B)級の支援を充実させることが日本のアクティブな研究者層の厚みを確保し、学術研究の多様性を持続的に支えていく上で欠かせないということで、この基盤(B)については計画的な拡充を図っていきたいというふうに考えております。
 続きまして、7ページ目をごらんいただければと思います。7ページ目は採択率と充足率の関係のイメージという図がございます。今回予算の増を要求するところで、若手研究、また基盤研究(B)(C)とございますが、このイメージは平成30年度の配分結果に基づいて作成しているものでございます。
 まず採択率の点で申し上げますと、採択率30%を超えることを目指すということでは若手研究と基盤研究(C)がございます。現状で言いますと若手研究は31%ございますが、基盤研究(C)は28%ということで、こちらを上げていきたいということがございます。なお、この2種目につきましては充足率、必要な水準の確保ということで、最低70%以上を確保していきたいということで、現状、若手研究64%、基盤研究(C)68%でございますので、ここを上げていきたいということがございます。基盤研究(B)と研究活動スタート支援につきましては採択率30%の達成ということを目指したいと考えております。基盤(B)につきましては26%、研究活動スタート支援は、29年度でございますが25%ということで、まだ30%に達しておりませんので、これを目指した要求をしていきたいというように考えております。
 続きまして、少し飛びますが、11ページをごらんいただければと思います。11ページは研究活動支援の充実についてということでございます。科研費につきましては、小型の研究種目、また国際研究活動加速基金につきましては、基金になっておりまして、この基金をいかに進めていくかということは非常に大きな懸案でございますけれども、今回の予算要求におきましては研究活動スタート支援について基金化を要求していきたいと考えております。一番左側の方にございます、赤の破線で囲んでおりますが、研究活動スタート支援、こちらを基金化する要求をしていきたいと考えております。
 続きまして、2つ目の柱の国際共同研究の推進の関係でございます。13ページには先ほど御説明した2つのことが書かれております。次の14ページをごらんいただければと思います。14ページには、国際共同研究加速基金による国際共同研究の推進ということで整理したものがございますが、真ん中の下の方に現行というところがございます。国際共同研究加速基金は30年度現在、国際共同研究強化(A)、これは平成27年度から始まっております。その下に国際共同研究強化(B)、これは平成30年度からでございまして、それまでの、左側の一番下にある補助金、海外学術調査、基盤研究(A)(B)を発展的に見直しました。そして帰国発展研究という、この3つの区分があるということでございます。これらにつきまして拡充を図っていきたいと考えております。
 特に今回、次の15ページにございますが、帰国発展研究につきまして見直しを考えているところでございます。15ページに、その対象と実績ということでございます。趣旨にありますとおり、海外の研究機関においてすぐれた実績を重ねた独立した研究者が、日本に帰国後すぐに研究を開始できるよう研究費を支援するということで、これまでの科研費とは全く違うスキームで作られているものでございます。また、対象のところ3行目にありますが、採択課題は極めて厳選されたものとする予定で、一番下には、これまで過去3年間の採択実績がございます。一番右側に採択者の年齢がございます。応募者の年齢と比較していただくと分かるかと思いますが、年々、比較的若い方が採択されるようになってきているということでございます。なお、机上配付資料には、実際にこの3年間にどういう方が採択されたかというデータも準備をさせていただいております。
 次の16ページをごらんください。帰国発展研究の見直しの方向性でございますが、まず1つ目が趣旨のところに見え消しで示しております。1行目にありますとおり、すぐれた研究実績を、従来は「重ねた」ということだったんですけれども、ここを「有する」にしたいと思っております。「重ねた」というと、相当実績がないとということで、比較的若いうちにこの応募資格を得た人が応募しにくいような面もあるかと思いますので、すぐれた研究実績を「有する」ということにしてはどうかと思っております。
 それと、一番下に研究期間というところがございますけれども、実際に日本に戻ってきた場合のポストのところでございます。2行目の「また」以下でございますが、日本国内の研究機関に所属、教授、准教授相当というのが現状でございますが、ここを「教授、准教授又はそれに準ずる身分」としてはどうかということで、これによって戻ってくる職が若干幅広になりますので、教授、准教授以外でも戻ってこられるということになると考えております。右側にFAQがございますけれども、少しかみ砕いて、どういうことかということを示してはどうかと思っておりまして、読み上げさせていただきますと、「応募資格として「教授、准教授又はそれに準ずる身分」を明記した趣旨については、海外の第一線で研究を実施し、優れた研究実績を有した独立した研究者を日本に呼び戻すことで、当該研究者を通じた外国人研究者との連携等による日本の研究活動の活性化に資することを期待するものであって、想定される代表的な職名を明示したもの」であるということで、それ以外にも様々な職名があるということでございます。このような変更、見直しをいたしまして、より多くのすぐれた、海外で研究実績を有する方を日本に呼び戻すということをしていきたいと考えております。
 次が、17ページをごらんください。これがその他の制度改善に関わるところでございますが、海外渡航による研究中断に対応する科研費の制度改善についてということで、現状は、科研費が採択されている研究者が、1年を超えるような長期にわたって科研費による研究を実施できなくなった場合は、研究課題を廃止する必要がある。その例外として、研究者が産前産後の休暇や育児休業によって科研費による研究の中断を希望する場合は、研究課題を廃止することなく中断し、育児休業等からの復帰後に再開することができるということでございますので、今後の対応の方向性といたしまして、育児休業等と同様に、海外渡航時における科研費の中断・再開制度を平成31年度から導入して、海外での研さんを積み、挑戦する機会の創出を促進していきたいと思っております。
 以上が資料2-2の説明でございまして、最後が資料2-3の説明でございます。こちらは平成30年度の科研費の審査結果一覧ということで、1枚にまとめたものでございます。
 これまで科研費につきましては、配分結果ということで、研究分野別の状況、また機関種別の状況、これらについては、昨年度は全ての審査が終わった10月に取りまとめをしておりますけれども、科研費は9月から翌年度の公募が開始されますので、各機関において30年度どういう審査結果であったか非常に気になるところであるかと思いますので、既に審査が終了したところにつきまして一覧として、今回、研究費部会で御報告をさせていただくということでございます。
 特徴的なところを幾つか申し上げさせていただきますと、まず特別推進研究、新学術領域研究につきましては、基本的には昨年度と同じような考え方で、採択率というよりも、むしろ採択件数を重視し、ほぼ昨年度と同じようにとっているということでございます。
 基盤研究のところでございますけれども、一番上に基盤研究全体の状況がございます。全体応募件数5万8,300件ほどで、3,500件ほど増えています。採択件数が1万5,825件ということで、採択率は、基盤研究全体では27.1%ですので、昨年度の28.2%と比べると1.1ポイント減っているという状況でございます。ただ、これは種目ごとに特徴がございまして、基盤(S)につきましては、他の大型種目と同様に、採択件数を重視した結果となっております。それと、一番下をごらんください、基盤(C)、ここが4万3,500件余りということで、3,100件ほど応募件数が増えています。全体で3,500件ですので、ほとんどが実は基盤研究(C)のところが応募件数増の要因になっているということでございます。採択件数につきましては昨年度より増えておりますけれども、採択率については27.9%ということで、前年度と比べると1.7ポイントほど減っているということでございます。
 その上の基盤研究(B)でございますが、こちらも500件ほど増えておりまして1万1,500件で、採択件数が2,965件、採択率25.6%ということでございます。基盤研究(B)は、先ほどの来年度の概算要求においても計画的に拡充するということで、特に重視していきたいと思っておりまして、30年度におきまして、基盤研究の他の区分については採択率が下がっておりますが、基盤研究(B)については前年度と比べて上げているということが特徴でございます。
 次の挑戦的研究でございますが、こちらについては採択率は非常に厳しい状況でございますが、種目の特性として、むしろ充足率をきっちりと、研究費を配分していこうというものでございまして、充足率98%、100%に近い充足率にしていくということでこのような結果になっております。
 次の若手研究のところでございます。30年度には若手研究(A)を基盤研究(B)に統合しております。若手研究は2万369件ということで、昨年度の若手研究(B)でございます。参考で29年度の若手研究(A)(B)の審査結果を記載しておりますけれども、若手研究は、若手研究(B)と比較しますと1,000件ほど増えているということでございます。元々、若手研究(A)が昨年度1,800件ほどございました。恐らくこの若手研究(A)に出されていた方は基盤研究(B)に出される方、基盤(C)に出される方、いろいろおられるかと思いますけれども、結果としてはこのような結果になっているということでございます。
 以上が資料2-3の説明でございます。
 資料の説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【西尾部会長】 どうもありがとうございました。
 事務局の人事異動で、千原審議官が来られましたので、一言、お願いいたします。
【千原大臣官房審議官】 千原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【西尾部会長】 御説明どうもありがとうございました。この概算要求の方針で今後、財務当局と折衝をしていただくことになります。学術研究の重要さから、関係予算が減じるようなことがあってはならないと私も非常に強く思っております。それを今後実現する上で、只今御説明いただいたような内容でよいのか、さらに強化するような御意見だとかありませんか。また、最後に説明いただいた資料2-3の結果は、この部会において、科研費のいろいろな種目を考え、応募者の動向をより良い方向に持っていけたらといろいろ考えて、設計してきたのですが、現実はこの資料2-3のようなデータとして申請者の動向が表れ、採択率の結果に繋がっています。その辺りも含めていろいろ御意見や御質問はありませんか。
 どうぞ。
【竹沢委員】 私も作業部会におりまして、10日前ほどに皆さんが発言されたことがもう議題になっている、このスピード感に驚いております。
 帰国発展研究の件なんですけれども、これも作業部会で発言したんですが、こういう優秀な、もう海外で十分実績を上げて、名前を上げられている方に戻っていただいてというのもとても重要なことだと思うんですけれども、今、今後の日本のアカデミアを背負うという観点からすれば、海外で博士号を取りたての若者の人たち、そして今の応募資格条件でポストドクターを除くとか、准教授に準じるという、若い応募者からするとかなりハードルが高いように見えるんですけれども、でも海のものとも山のものともということではなくて、海外では若い人たちへの学会の受賞だとか、それから非常に著名な助成金だとか、いろいろ判断する基準というのは、もう博士論文が終わっている段階だったらあると思うんですね。そういう人たちが帰国してもなかなか職が見付からない、けれども博士、向こうでポスドク、あるいは何らかのポジションを得ているけれども、日本に帰って職を探したいというような人たちが一番確実なネットワークを持っていて、次の5年間の国際共同研究につながると思いますので、ここのハードルを少し下げるということを御配慮いただければと思います。
 それから、採択課題がかなり厳選されたものであるということも少し気になっておりまして、これが人文科学系や社会科学系も十分に配慮されたものであるかということも教えていただければと思います。
 以上です。
【西尾部会長】 どうでしょうか、事務局の方でお答えいただけますか。
【岡本企画室長】 まず帰国発展研究の予算の問題というのが一番大きくて、基金にしているということもございますけれども、ここを今は厳選させていただいております。どこまで広げるかというのは、まさにこれからも継続して議論していく必要があると思いますけれども、まずはこのあたりまで31年度は広げさせていただくというのが1つ、それでまた様子を見た上で考える、あと予算の状況も考える必要があると思います。
 また、一般的な科研費の方としては研究活動スタート支援ということで、額が全然違うんですけれども、外国から戻ってきた方、もちろん国内からもそうですけれども、そういう方の支援というのも一方でありますので、全体の予算を考えながら、そのバランスも考えていく必要があると思っております。
【西尾部会長】 分野についてはどうですか。今、最後におっしゃったところですが。
【岡本企画室長】 科研費は全分野を対象にしていますので、ある程度、採択の規模を大きくできれば、非常に広く分野もカバーできるようになるのではないかと思います。
【西尾部会長】 今の説明でよろしいですか。
 ほかに何か、コメントや御意見はございますか。
 橋本先生、どうぞ。
【橋本委員】 これは数えれば分かることかと思いますが、結局平成30年度で科研費のプロジェクト数というのは、どのくらい増えたのでしょうか。大小取り混ぜてどのくらいの数になっているか。金額もそうですけれども、科研費にサポートされるプロジェクトの数がどのくらいなのかということです。
【岡本企画室長】 まだ審査が終わっていない種目もありますので、最終的にはそういうものも足していく必要があると思います。
【西尾部会長】 できたら概算的にでも分かるとよいのですが。
【岡本企画室長】 今回の資料2-3には合計を出しておりませんけれども、ざっと見たところでも、やはり一番大きいのは基盤研究で3,500件ほど増えていて、一方で挑戦的研究は2,500件ほど減っていますので、その差で1,000件ぐらいは増えているということは1つ言えると思います。
【西尾部会長】 橋本先生、それを受けて何かコメントや御意見はございますか。
【橋本委員】 どう考えるかですが、費用そのものが増えなくてはいけないというのがまずあります。それと、それにサポートされていくつのプロジェクトが動くのかということも重要な指標ではないかと思います。我々のところで今、論文の生産性というようなことを国際比較して調べています。私が前に思っていたのは、日本は研究費の投入額が増えないから論文も増えないのだというふうに思っていたのですが、必ずしもそうでもない。生産性の面でも国際比較でいうと、余りよろしくない。何故なのかというのは、これから考えなくてはいけないのですが、いずれにしても、研究費でサポートされるプロジェクトがまずないと、数が多くないといけない。その辺のところも考えなくてはいけないと思います。
【西尾部会長】 ありがとうございます。我が国の研究力としていかに強化するかというところの基になるデータをいろいろな視点から分析してみる必要があるのではないかという、今の先生のお言葉は非常に重要だと思っております。そういう観点についても、NISTEPなどとも連携しながら、今後進めていかなければならないと思っております。先生、どうもありがとうございます。
 ほかにございますか。どうぞ。
【射場委員】 資料2-2の7ページのイメージグラフなのですが、採択率も充足率も、多ければ多いほどいいと思いますが、この充足率70%、採択率30%に線が引かれていますよね。充足率70%は何となく、それくらいないと思った研究はできないのだろうなと思いますが、採択率の30%を今多くの種目は割り込んでいるわけで、それが一体どんな状況を生んでいて、30%を超えると一体どう変わるのか、そこの根拠がないと、ただ単に上げたいのですかみたいなことになってしまうと思うので、では、この30%は最低限守りたい30%なのか、それで随分改善されるのかとか、そこの説明が要るような気がするのですが。
【西尾部会長】 採択率30%ということに対する根拠というものは、今まであったのでしょうか。事務局から何かコメントいただけますか。
【岡本企画室長】 明確にこういう根拠でというのは、なかなか言いにくいということがあります。新規採択率を30%にすると、継続を合わせると50%以上ぐらいになるので、全体の規模感として、新規を30%にすることで、研究費を必要としている人の半分以上が研究費を得ることができるというのは、過去の議論の中で出されたということはございますけれども、明確に30%にする根拠を示すことはなかなか難しいというのが正直なところです。
【西尾部会長】 どうぞ。
【鍋倉委員】 基盤(C)の応募数がかなり増えている要因について今後調査しなくてはいけないと思いますが、この概算要求という観点では、この応募数が大きく増えているということが目立ちますので、その必要性に基づいて要求していく必要があると思います。
 以上です。
【西尾部会長】 どうもありがとうございました。この委員会で今まで議論したことを踏まえますと、本来は基盤(B)がもう少し伸びることを望んで制度設計を考えてきたのですけれども、基盤(C)がこれだけ増えているということに対しての分析などはなされているのでしょうか。
【岡本企画室長】 基盤(C)が増えていることについては、日本学術振興会でもいろいろと分析をしていただいております。これについてどういうふうに対応していくかは、その分析の結果を見た上で対応策を考えていかなければいけないのではないかと思っております。
【西尾部会長】 そうですね、やはり、どちらかというと申請するときにリスクを考えて基盤(C)の方を選択する傾向が強いという、そのような感じですかね。
【岡本企画室長】 明確なエビデンスを持っているわけではありませんが、いろいろなお話を伺うと、科研費をまず出さなければいけないということがあるようで、いわゆる基盤的経費が減っている中で、大学等で自由な研究をしようとすると、科研費に応募しなければならない。その場合にどこに応募するかというと、一番小さいところで、基盤的な研究費になるところに応募することになり、それで基盤(C)が増えてきている、その傾向がここ数年ずっと続いているということかと思います。
【西尾部会長】 どうもありがとうございました。今、先生からも御指摘ありましたように、実際のこのデータを来年度の概算要求にどう生かしていくのかが、今後、戦略的には非常に重要かと思います。ただし、この委員会で議論しておりますように、チャレンジングに(B)の方に申請いただいて、研究者としてのインディペンデンスを確保していただくということも非常に重要で、その辺りの兼ね合いを今後どう考えてきっちりと要求していくかということを、いろいろ御配慮いただければと思います。
 なお、先ほどの倍率のことで、30%ということに関しては、継続案件も含めて50%ということは、私は説得性があると思いました。我々国際会議に論文を投稿したときに、情報分野ですと採択率10%を切るような難度の高い国際会議があります。そのような場合、査読者のうちの1人でも評価が低いと、採録されなくなります。そうすると、通る論文は、もう非の打ちどころがない論文なんですけど、かえって斬新性が高くない面白くない論文ということがしばしばあります。ところが3分の1ぐらいの倍率ですと、2人が何とか推せば、1人が反対しても採録されることが多くあります。そのような論文には、後で振り返ると、斬新なアイデアが盛り込まれている場合が結構あります。つまり、反対した査読者は、その斬新さが理解できなかった、ということがあります。科研もやはり審査委員の中でいろいろ議論があるのだけれども、3人のうちの2人が賛同すれば通るというようなぐらいの採択パーセントは、健全ではないかという気はします。
 どうぞ。
【上田委員】 今の議論とか30%の議論、全体を通してなんですけれども、例えば基盤(C)が運営費交付金の関係で、担保するという意味もあると思うんですけど、数理系だと余りお金は要らないですよね、ほとんど人件費。だから余り(B)を膨らませて(C)を減らすような単純な動きだと、かえってよくない可能性もあって、これは結局、その30%も全部そうですけど、比率を動かすと、申請件数、あるいは質がどう変わっていくのかをもう少し、数年掛けて分析をした上で議論することも重要だと思います。
【西尾部会長】 やはりこれだけ大学等において配分される基盤的な研究費がどんどん削減されてきますと、科研費を獲得できるか否かということが天と地みたいな感じになって、どうしてもコンサバティブに動く傾向があります。そういうことも踏まえて、上田委員がおっしゃったことを踏まえて、我々の指向していることと現実に起こっていることの両面を踏まえ、基盤研究種目の規模感の妥当性について実データを基に分析するということが重要な時期にも来ているのではないかと思います。その分析は是非とも進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 ほかに御意見等ございますか。どうぞ。
【山本委員】 今の直接の概算要求には余り役に立たないかもしれないですけど、私は最近、やはりどう使われているかというのがすごく気になり始めています。つまり、お金の額とかプロジェクトの数、これはもちろん重要なんですけれども、一方で、例えば論文生産性がどうのこうのという話がある。実際は部分的に、その経費が人件費だとか光熱水費だとか、あるいは基盤的な経費を補?するような形で、プロジェクトのために使えばそれは構わないんですけれども、そういう形に変わっている。そうすると結局、真水の部分が減っているというのが私はものすごく気になり始めています。
 特に割と大きな研究費の方ですね、基盤(A)以上とか、基盤(B)以上かもしれない、それから上のところで、やはりそれがどうなっているかというのをサンプリングしてみる価値はあるような気がしていて、それは、自分たちが今どういうふうな状況に置かれているかということと、それから、それを踏まえて先にどういうアクションを踏むかというところで、割と基本的なことのような気がしています。
 済みません、余分な話かもしれませんが、よろしくお願いします。
【西尾部会長】 大事な観点かと思います。特に、間接経費との兼ね合いをどうするのかという議論が重要かと思います。先生のおっしゃるように、各研究者に渡った経費が実際どう使われているのかという分析は、今後必要かと思っております。貴重なコメント、ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 現時点での採択状況についてのデータは、公開されるのですか。
【岡本企画室長】 部会自体が公開ですので、公開ということになります。
【西尾部会長】 分かりました。この採択状況に関するデータは、来年度の申請をする研究者にとっては1つの指針になっていくと考えております。来年度の概算要求につきましては、本当に予算の厳しい折、大変だと思いますけれど、局長をはじめ、どうかよろしくお願いいたします。日本の科学技術・学術の振興のためには、科研費は重要な基盤でございますので、何とぞ今後の厳しい折衝を何とか乗り越えていただきたく、よろしくお願いいたします。
【磯谷研究振興局長】 なかなか厳しい状況でございますけれども、先生方の御議論を踏まえて、しっかり概算要求していきたいです。また、様々なアドバイスをこれから頂くことになると思いますので、よろしくお願いします。
【西尾部会長】 ありがとうございました。
 前回の科学技術・学術分科会で、大型の科研費に関する記述が気になって、私からも発言させていただきました。今回の概算要求の方針において、大型の科研費に関しても、きっちりとそれを確保していくという記述が数か所にわたってなされておりまして、安堵いたしました。その点も今後よろしくお願いいたします。
 それでは、本日最後の議題に移ります。委員の皆さんには別途、事務局から確認のお願いをさせていただき、既にご覧いただいているかと思いますが、5月18日に、本部会と科学研究費補助金審査部会として、科研費制度運営の適正化を通じた公正・透明な研究活動の実現に向けてという提言を公表しています。また、この提言に加え、今後情報公開の改善・充実方策についても検討されているようですので、まずは事務局から説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。

(3)科研費制度の改善・充実について

【岡本企画室長】 それでは、資料3-1と3-2を御説明させていただきます。
 まず資料3-1でございますが、こちらは既に委員の方々にごらんいただいておりまして、5月18日、本研究費部会、また科研費の審査部会、両部会の名前で公表している資料でございます。科研費制度運営の適正化を通じた公正・透明な研究活動の実現に向けてということで、既に実施しているものもございますけれども、このようなことを、制度運営の適正化を図るという観点で実施していくということでございます。
 1ポツ、適正な審査の実施についてということで、審査に関する透明性の向上ということでございます。審査委員の公表を現行よりも細かい区分により行い、応募研究課題と担当審査委員の対応関係をより明確にすることにより、審査委員の責任感を高めるとともに、審査委員選考の責任意識を高め、審査及び審査委員選考の透明性の一層の向上を図るということでございます。これまで、今は審査区分表になっていますが、分科・細目表のときには、細目ごとに審査委員を公表していましたが、その方がどの種目を担当したかというところまで分かるようにするということで、こちらについては平成30年2月に既に実施しているところでございます。
 次の審査委員の層の充実ですが、現在も審査委員の選考に当たっては、選考する審査委員の年齢構成を考慮しつつ、若手研究者の積極的登用に配慮するよう選考要項に掲げておりますが、更に若手研究者の早期登用を図るなど、今後その実効性をより担保するための方策を検討するということでございます。若手研究者の早期登用により、審査への習熟度を高めた研究者を増やし、審査委員の層の充実を図ることによって、審査委員の新陳代謝の向上に努めるとともに、最新の研究動向や学説動向をより柔軟に反映した審査の実施を図るということでございます。先ほど審査結果を御報告しましたが、応募件数が増えているようなところもございますので、審査委員の方の数、また質を高めていくことも重要でございますので、このような取組をしていくということでございます。
 2つ目が、公正で誠実な研究活動の実施についてということでございまして、研究遂行上の配慮事項の公募要領等での周知でございます。
 日本学術会議が作成している全ての学術分野に共通する基本的な規範である声明「科学者の行動規範」や、日本の学術振興会が作成している研究倫理教育に関する教材「科学の健全な発展のために-誠実な科学者の心得-」の内容のうち、研究者が研究遂行上配慮すべき事項について、公募要領や審査の手引等において改めて周知をさせていただくということでございます。
 もう一つが、研究者の自覚と責任において実施する研究であることの周知ということでございまして、科研費による研究は、研究者の自覚と責任において実施するものであり、研究の実施や研究成果の公表等については、国や資金配分機関の要請に基づくものではなく、その成果に関する見解や責任は研究者個人に帰属されることを周知することでございます。当然のことではありますが、公募要領、また科研費ハンドブック等において改めて周知を図るということで、既に実施している部分もございます。
  資料3-2をごらんいただければと思います。こちらのタイトルは科研費制度の改善・充実に向けてということで、科研費は、今説明しましたことを最近行っていて、これからも行っていきますが、さらに、それ以外に改善していこうと考えているものが1つございます。
 2ページ目をごらんください。最初に書いてございます第5期科学技術基本計画の計画期間を展望し、これまで「科研費改革の実施方針」にのっとり、審査システムの見直しをはじめとする科研費改革を実施してきたということでございます。科研費改革の実施方針について抜粋したものが左側にございます。特に今回、赤字のところについて対応するということで、1つ目は、公正・透明なピアレビューについて、その信頼性の維持・向上のための不断の改善を図るいうこと。不正の防止と不正に対する厳正な対応を期すということ。また、その下、科研費の成果を広く発信していくということで、国民に対する説明責任、非常に重要でございますので、このあたりも対応していく必要があるということです。右側には、研究活動における不正行為への対応等に関するガイドラインということで、こちらは先ほど資料3-1で説明したことに関わることでございます。
 次の3ページ目をごらんいただければと思います。情報公開のさらなる推進と審査の信頼性の維持向上を図るということで、情報公開につきまして、ここにあるような改善・充実を図っていきたいということでございます。
 左側の1ポツ、研究開始時の公開情報の充実ということでございます。1つ目が、これまでは大型研究種目のみ採択研究課題の審査の所見を公表しておりましたが、総合審査方式の導入を契機として、今後は、科学技術・学術審議会等における審議を経た上で、基盤研究(A)及び萌芽的研究についても採択研究課題の審査の所見を公表し、国民が採択研究課題に対する審査委員のコメント等を知ることができるようにするということが1つ。もう一つが、これまでは、科研費データベース(KAKEN)において、交付内定時に採択研究課題名や配分予定額のみを公表しておりましたが、今後は交付決定後速やかに研究の概要についても公表していくということを予定してございます。
 右側の2つ目、研究終了後の公開情報の充実ということでございます。これまで、KAKENにおいて、研究終了後に専門的な研究成果等を記載した研究成果報告書を公表しておりましたが、今後は、研究成果の学術的意義や社会的意義を分かりやすく説明した内容も研究成果報告書に新たに含めることとするということ。3つ目が、ホームページ及びKAKENの改善・充実ということで、振興会のホームページ、またKAKENを改善して、国民の方々が科研費の採択課題の内容、また成果にアクセスしやすい環境を整備していきたいと考えております。
 次の4ページ目に、今御説明いたしました研究開始時の公開情報の充実について、少し細かめに書いてございます。一番上にあります大型研究種目については、公表内容、研究課題名から研究の概要まで6項目あり、これを現在公表しておりますが、30年度から総合審査方式を導入しております基盤研究(A)、挑戦的研究につきましては、赤枠で囲んでございますけれども、現行4つの事柄を公表しておりますが、改善後には審査の所見と研究の概要、赤字で記載しておりますこちらを公表していくことを考えていること。また、2段階書面審査方式については研究の概要の公表を考えております。
 なお、この総合審査方式で改善後公表する審査の所見につきましては審査委員の方が作ることになりますので、審査委員の方の御負担ということもございますので、まずは基盤研究(A)から始めていくことを考えておりまして、今、日本学術振興会と相談をしている状況でございます。
 次の5ページ目については、先ほど資料3-1で御紹介をさせていただいた内容についてまとめております。
 資料の説明は以上です。
【西尾部会長】 どうもありがとうございました。科研費のいろいろな制度改革を毎年進めていただいているわけですけど、今回またこういう形で透明性、公平性を高める観点からの幾つかの改定がなされております。これらのことにつきまして御意見等、いろいろございませんでしょうか。
 どうぞ。
【小安委員】 今回の動きの中で、やはり審査委員の充実ということを是非今後も進めていただきたいと思っています。今回、審査方式の改善は振興会も非常に大変だったと理解していますが、おかげさまで若手が審査の現場に入りやすくなったと思っています。総合審査はもとより、2段階書面審査も、自分のコメントだけでなくて、ほかの方の審査コメントを読んで、それで検討するというような、今までになかった方式を取り入れたことで、要するにどうやって審査すればいいのかということを若手が分かりやすくなったと思います。審査をするというのは、物すごく勉強になります。要するにほかの方がどういうロジックを考えて、それでどういうふうに研究を組み立てているのか、もちろんそこから盗用してはいけませんが、考え方を学ぶ非常にいい現場なのですね。もっと多くの若い人に積極的に審査に加わっていただくことで、多分全体の底上げを図ることができて、それが日本の学術研究を伸ばす重要なきっかけになるのではないかと私は思っていますので、振興会の方でどんどん若手の人を審査委員に選んでいただいて、もっと増やしていただくことが大事かなと思いますので、是非よろしくお願いいたします。
【西尾部会長】 本当に貴重なコメント、どうもありがとうございました。他の方が書かれた申請書を読んで、自分としてどう申請書を書いていったら良いのかとか、研究計画をどう立案していったら良いのかとか、いろいろ学ぶところが多いと思います。そういう観点で、今の小安先生の御意見は非常に貴重だと思います。その上で、今後の改善後のところで審査の所見や研究の概要などの記述については、日本学術振興会の方でもいろいろ対応していただかなければならないと思いますが、永原先生、その辺りについて御意見を頂けると有り難く思いますが。
【永原JSPS学術システム研究センター副所長】 税金を使っている以上、一般に公開していくということは、我々の義務ではあります。ですが、岡本室長がおっしゃいましたように、それには当然、審査委員の負担もその分増加するわけです。採択された以降は、その科研費を獲得した人が、自らの責任で資料を用意すればいいわけですが、数人の委員で議論した審査の結果を一般に出せるような形にするためには、やはり相当な労力が必要です。現状での一番の問題は、応募は自分たちもそれを審査する一員であるというピアレビューのシステムの中にいるのだということがまだ十分に理解されていないことです。採択されなかった多くの人は、学振はけしからんとか審査委員がけしからんというような、第三者的に受け取っておられます。
 それと、現役の研究者は公務が忙しく、時間的な制約のある中で審査をやっているのが現状で、審査委員に審査以上に、更にプラスアルファを課すというのは非常に難しいことです。小安先生がおっしゃったように、基本的には審査委員の拡充をしてゆかなくてはなりません。従来依頼していない若手や、採択経験の乏しい研究者にもやっていただいて、科研費制度そのものを理解していただくという事しか解決策はないと思います。
 特に応募数が増えているのは基盤(C)とか(B)とかですので、それらの種目の審査委員数増加が必要になっていくわけです。大型種目はほとんどコンスタントな状態です。基盤(B)と(C)は小区分という、比較的狭い分野の審査となりますから、そういう意味では若手が審査することも十分に適切です。来年度の科研費の審査委員選びはもうほとんど終了していますけれども、できる限り若手に頑張っていただくという方向で努力をしているところです。
【西尾部会長】 どうもありがとうございました。
 どうぞ。
【竹沢委員】 私も委員の先生方がおっしゃるように、若手がこういうことに関わることによってすごく学ぶことが多いとは思うんですけれども、やはりちょっと留保しなくてはいけない面もあって、1つは、若手が学会から何から、若手、若手といって。それでもう最近、若手と話しても、若手が乱用されていると、いろいろなところで若手という言葉を使って乱用されていると。やはり研究時間が圧倒的に私たちの世代よりも少なくなって、圧迫されているので、どのぐらい若手を採用するかという、やはりバランスというようなことが大事だと思うので、まずそれに配慮する必要があるのではないかということと、それからもう一つは、私たち、私もなんですけれども、こういうことは若手のためになるんだというふうにこちらは思っていても、その意図はほとんど通じない、若手の方はその有り難みは全然分からない。ただ押し付けられただけだと思いがちであって、この辺をどうコミュニケートしていくかという、そのセットで進めないと、非常に圧迫されているという、また不満の蓄積になりかねないので、その辺を考えていく必要があるかと思います。
 以上です。
【西尾部会長】 今おっしゃったことは、必ず両面として出てくる御意見だと思っています。その点を配慮しながらも、先ほど小安先生、永原先生がおっしゃったことをどう実現していくのか、どう生かしていくのかということが重要です。今、先生がおっしゃったコメントについては、配慮していく必要があると思っております。そのことも含めて、どうぞ。
【永原JSPS学術システム研究センター副所長】 一言、もう少し踏み込んで発言をさせていただきたいと思います。
 今、竹沢先生から御指摘のあった、若手が逆に乱用というのは、恐らく竹沢先生のような環境の周辺におられる若手の方であろうと思います。実は、先ほどの科研費の応募数問題に関連しまして、学振の方でもいろいろ、どういうところで応募数が増えているのかという詳細を、かなり詳しく分析しております。
 そうしますと、実は旧帝大みたいな大きなところの応募数は、大半の分野は実はサチっているんですね。実は割と偏って増加があります。大学でいいますと、例えば私立大学で、そういうところから非常に応募数が増えて、もちろんそれに伴って採択数も増えています。ということは、従来そういうところでは多分それほど科研費が必要でなかった方たちが、新たに科研費が必要となって、応募されておられるので、恐らく従来審査委員をお願いしなかったような、非常に研究者の数が少なかったような大学とか地方であるとかが考えられます。したがって、もう少し多様性を持たせる形で審査委員を選んでいくことが可能になるだろうと思います。単に年齢だけの問題ではなくて、多様性の拡大ということは、審査についての全体の層の底上げにつながるだろうと思います。
【竹沢委員】 年齢というよりも、国立、私立とか、そういう多様性。
【永原JSPS学術システム研究センター副所長】 ええ。それから分野ですとか。
【西尾部会長】 分野ですね。本当に貴重な御意見ありがとうございました。これは我が国のいわゆる研究者が、この科研費制度を財産として、コミュニティ全体で更に大きく育て上げていくことが本当に大切なことだと思っております。
 ほかに御意見とか、ございませんか。どうぞ。
【上田委員】 実は今、AIブームというのもあって、機械学習の論文が中国を中心にすごく増えて、レビューが非常に大変になっています。ある国際会議でも、いろいろなトライアルをしています。例えばウイークレビュワー、これはもう採点だけでいいと、コメントは要らないと。ですので9人ぐらいに、1件に対して増やしている。裏で実は二重査読をダミーでしていて、そうしたら50%、採否が入れ替わったと報告されています。とにかく審査の仕方というのもかなり考えないといけませんが、若い人がピアレビューという観点で査読に加担することは非常に重要だと思うんです。これも作業部会で議論があったんですけど、余り論文も出していないようなお年寄りが査読するというのは余りよくない。やはり一線に出ている人が査読すべきかと。
 その際、現在のように質の高い申請書も、低い申請書もすべて同じような審査だと負担が掛かるので、例えば、1次審査では点数だけの簡易な審査として、1次を通った申請書をより詳しく審査するとか。これは1つの案ですけど、何かいろいろ工夫をしないと、件数が増えたときに、大勢にばらまいてしまうと、余り能力の高くない人が変な査読をして、それが結局平均点として審査に悪影響を与えるとよくないので、少し審査の仕方というのを今の時代に合うように変えていく必要もあるのかなと、そこの議論は重要かなと。
【西尾部会長】 永原先生、いかがですか。
【永原JSPS学術システム研究センター副所長】 審査の仕組みについて、学振でもいろいろ検討はしているのですが、今、上田先生がおっしゃった点については、基本的にはピアレビューということを理解していただくためには、応募するだけではなく、審査に大勢が加わっていく、このことが避けて通れないと思っております。理解いただくためには、点数をつけるだけでなく、基盤(C)であっても、全ての課題にきちんと申請書の長所短所についてのコメントを書いてくださいという形でお願いしています。審査員にとってもそれを依頼する学振にしても大変な労力ではあるのですが。
 今上田先生がダミーと今おっしゃった検証はなかなか難しいものがあります。いいか悪いか、科研費の審査は正解のあるものではありません。判断の50%が入れ替わったとしても、それが正しかったのか正しくなかったのか誰にも分かりません。慣れていない人の方がユニークな課題を見付けてくれているのかもしれません。ここの判断は非常に難しく、現状では、学振としては点数をつけるだけというやり方はとらずに、文章で必ずいいところ悪いところを書かせることで、審査委員の層を増やしていくという形で対応しております。
 AIは確かに今の時代の流れで、何らかの形で導入はいたしますが、それはもう少しテクニカルな部分ですね。例えば審査委員を選ぶときに専門性のマッチング等でAIを導入しようとか、できる部分でのAI導入による合理化みたいなことは今後考えてゆこうとしています。しかし審査の中身そのものはまだ少し難しいと考えています。
【上田委員】 点数だけと申し上げたのは、結構ピアレビューで査読する人を増やして、教育も含めて、例えば今まで3件ぐらいのものを6件ぐらいにして、点数だけでやって、かなり点数があるものだけを次のステージに上げるという、閾値(いきち)をかなり下げるという意味であって、最初から点数だけということではなくて、そういう感じで何段階かにして査読を軽くした方が良いという考えです。応募はなるべくエンカレッジし、査読はきちんとやるという意味で。だけれども応募を増やしてきちんと査読をやるとなると当然負担が増えるので、そこを何とかした方が良いという意見です。
【永原JSPS学術システム研究センター副所長】 ありがとうございます。今日の会議でも応募数などの数字が初めて出てまいりましたけれども、学振では、新しい改革をした1年目ということで、その総括を今スタートしたところです。5年間は大きな枠はいじらずとにかくやってみましょうということがここの部会の基本方針ですので、学振としてはその時に向けて問題点の抽出を始めております。審査の仕組みと、審査の方式という非常にプラクティカルな部分も全部含めて今、検討を開始したところで、今後また御助言いただければと思います。
【西尾部会長】 上田委員、その辺りについて、今後、具体的な実現方法等、是非御提案いただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 橋本先生、手を挙げておられたね。
【橋本委員】 そのつもりで見ていなかったので、よく分からないのですけれど、この公表内容で研究代表者というのは当然かと思いますが、共同研究者というか、どういう陣容で組織されているかということも非常に興味のある重要なところかと思います。研究概要の中に入っていれば、それでよいのですが。というのは、特に人事などの資料として考えるときに、どういうコミュニティーでどんなふうに活動しているのかということを知る上では、代表だけでなくて、少なくともこの時点では多分、配分金額は決まっていないと思うのですが、研究費が配分されるという方に関しては名前が出ている方が良いのではないかという気がしますので、検討いただければと思います。
【西尾部会長】 どうでしょうか。
【岡本企画室長】 今考えている研究の概要は研究代表者の方に書いていただくもので、そんなに分量は多くない、数行ぐらいで分かりやすく書いていただくことを考えています。研究分担者までは、現時点においては考えてはおりませんが、公表されるデータはできるだけ多い方がよいと思いますので、引き続き検討させていただきたいと思います。
【西尾部会長】 橋本先生、よろしいですか。
【橋本委員】 はい。
【西尾部会長】 ほかに御意見とか、ございませんか。
 どうぞ。
【鍋倉委員】 資料として、応募者の年齢分布はありますが、審査委員の年齢分布はないのでしょうか。特に基盤(C)は40から47歳が一番多いですね。審査はピアレビューなので、実際に若い人たちが、自分たちがレビューしているという認識をもってもらうためにも、審査委員の年齢分布も示す必要があると思います。科研費は当たったとか外れたとかいう言葉がしばしば聞かれますが、これ自体が問題です。自分たちの仲間がピアレビューしているという認識を持ってもらうためにも、審査の観点からの情報の周知が非常に重要だと思います。
 以上です。
【西尾部会長】 事務局への宿題が次々と増えていきますけど、審査委員の年齢分布等のデータについても、今後、よろしくお願いします。
 ほかにございますか。どうぞ。
【栗原委員】 審査委員が増えていったときに、審査委員のクオリティーの保証のようなものは、大変なことだとは思いますが、多少モニターすることは可能なのでしょうか。
【西尾部会長】 モニターの件いかがでしょうか。
【永原JSPS学術システム研究センター副所長】 はい、現状でやっているのは検証と申しまして、審査委員の書かれたコメントを逐一、全部見ます。それも学振学術システムセンター研究員の専門の近い人が最低2名が目を通して、何かまずい点があれば対応を考えます。
 ただし、先ほど申しましたように、審査の結果は学術に対する考え方の問題ですので、どういう点数であっても、そのことにいい悪いということは評価はしません。研究者が他人の申請をどう評価するかという判断ですので、仮に1人だけすごく異質な、ほかの人がとても高い点を付けているのに1人だけ低い点を付けていることがあっても、そこは検証の対象とはなりません。
 こちらで見ていることは、その審査員が、申請書が本当にオリジナリティーに富んで、計画をきちんと考えて、しかもその人がやれるだけの実績を持っているかというような点をきちんと評価しているかという点です。極端に過去の実績だけとか、この先生は高名な先生だから高い点にするとか、逆に、論文が1つもないからこの人だめみたいな極端なことが、非常に少数ではありますが、そういうことがあった場合には、例えば来年度は審査から外れていただくとか、あるいは、非常に残念ながら、時々、分野の応援団みたいな人というのももちろん研究者の方にいないわけではありませんので、そういう人にははずれていただくというような検討をしています。
【栗原委員】 大変なことをなさっているというのがよく分かりました。
【盛山JSPS学術システム研究センター副所長】 ちょっと追加、よろしいですか。
【西尾部会長】 どうぞ、盛山さん。
【盛山JSPS学術システム研究センター副所長】 ある意味で科研費システムがうまく運営されていくかどうかというのは、本当に審査委員、審査のクオリティーが、本当にいい研究を、どう採択するかと、そこの目の付けどころというのは非常に根幹に関わることなので、審査システムや審査委員のクオリティーは大変重要だと思ってはいるんですね。その点で、ただその一方で、現在既にすぐれた能力を持っている人をピックアップするというだけではなくて、このシステム全体を通じて研究者全体が審査能力をむしろ高めていくというプロセスの中に、この科研の制度全体が動いていくというのが望ましいだろうと思っていまして、今度の新しい制度で総合審査が導入されたりして、比較的それが少しずつ動きつつあると。すぐにうまくいくというわけにはいかない、でもそういう試みを今でも始めておりますし、またいろいろと、そのあたりに関しまして先生方のいい考えがありましたら、是非知らせていただければと思います。
【栗原委員】 総合審査は、意見交換するというのが非常に大事だと思います。
【西尾部会長】 どうもありがとうございました。科研に関しましては、審査委員の中ですばらしい審査をした研究者を毎年表彰されるという制度がございます。ということは、日本学術振興会の方では全ての審査をサーベイされて、その上ですばらしい審査をした研究者を表彰されておられるということだと思います。つまりは、相当な時間を使って審査のレベルということに関しての御評価を頂いているものと思っています。どうもありがとうございます。
 ほかにございますか。どうぞ。
【射場委員】 ちょっと今のお話で、よくない審査をした人に対するフィードバックはされているのですか。
【永原JSPS学術システム研究センター副所長】  そこも大変難しい点ですけれども、現状では、個別では対応はしておりません。ただし来年の審査からは外れていただくという形で対応しています。そこはなかなか難しいところで、議論はありまして、御本人に直接それを伝えるべきという意見と、それは伝えるべきでないという意見の両方があります。統一的にこうすべきというところにはまだ至っておりません。
【射場委員】 内容にもよると思うのですけど、若手の場合は、育てるという意味では、ここを直せばもっとよくなるよみたいな内容もありますよね。だから、そういうのはちょっとフィードバックをした方が、その質を向上させる。そもそもやる気のない、カット・アンド・ペーストばかりしているような審査もあるので、そういう人はもう外れてもらうというのはいいと思うのですが、そこは総合的に考えてもらうといいのかなと。
【永原JSPS学術システム研究センター副所長】  ありがとうございます。
【西尾部会長】 貴重な御意見、どうもありがとうございます。
 ほかにございますか。どうぞ。
【山本委員】 今の件、1つやはり気になるところがあります。これは決してシステム研究センターで犯人捜しをしているわけではない。それはやはりやってはいけないと思います。そうではなくて、余りにもひどいというのに関して、ちょっと外れてもらっているというレベル。だから、知らない人がそういう話を聞きますと、一生懸命調べて摘発しているというふうに思うかもしれないですが、そうではありません。やはり我々は仲間を増やさなければいけない、減らしてはいけないので、やはりコミュニティーの間の信頼感を醸成するということが基本です。そういうつもりで、私も昔そうやっておりました。
【西尾部会長】 どうもありがとうございました。今おっしゃっていただいたことを基本方針として実施いただいているということです。
 ほかにございますか。どうぞ。
【橋本委員】 今のようなことをもう少し宣伝するということが重要ではないかと思うんですね。これだけ真剣にやっているということが判らないと、当たった、外れたという議論がいつまでも続くことになる。
 それからもう1点、今、大学では研究倫理教育というのをやっていますが、これは前にもちょっと申し上げましたけれども、少しタイトルを変えるか何かする必要はあるかと思いますが、研究をする、教育をするというのに併せて、ほかの人の研究をレビューするというのも重要な仕事なんだということを早いうちから一言でも伝えるというのは、重要ではないかと思います。
【西尾部会長】 どうですか、もう少しオープンにするような動きはありますか。
【永原JSPS学術システム研究センター副所長】 学振ではたびたび議論をしている点ですが、問題は、毎年の応募者10万人という膨大な研究者にいかに直接伝えるかという困難です。学振のホームページを見れば、審査の重要性はいろいろ書いてあるわけです。ですが研究者は、実際に自分が応募するときに必要な部分しか読まないわけです。
 ここが非常に難しいため、我々は、科研費説明会ですとか学会など、直接研究者に説明することができる機会にはとにかく積極的に伝えましょうということで、いろいろな取組をしてはいます。ですが、これはなかなか難しくて、経験的には、合議審査の場がもっとも効果的です。実際に来ていただいて議論していただく経験は大変有効で、いくら学振のホームページや学会等で学振学術システム研究センターはこんなことをやっていますというふうにお伝えしても、残念ながら、研究者にはほとんど届きません。やはり実際に経験していただくと、すごく強い実感を持っていただくことができるので、その方たちが自分の周辺に、科研費審査は非常にきちんとやっているというようなことを伝えてくださるという形でしか広まっていかないのかなという印象を非常に強く持っております。
 もちろんその重要性は強く認識して、もう少し学会等や何かでもお伝えしましょうということは、今議論をしている最中です。
【橋本委員】 履歴書にそういうことで貢献しているということを書く人がいないということもあります。だからその辺のところを、やはりみんながそれを尊敬するというか、そういうふうにしないといけない。
【西尾部会長】 日本学術振興会で行われていることを、我々はもっと敬意を表しなければならないということをおっしゃってくださっていると解釈しております。
 ほかにございますか。きょう、甲斐先生は何か御発言はありませんか。
【甲斐委員】 もう十分。
【西尾部会長】 よろしいですか、何か一言。
【甲斐委員】 いや、全然いいと思います。
【西尾部会長】 そうですか。
【甲斐委員】 もし書かせるんだったら、文科省が大学に提出を依頼する実績や評価項目の中に、科研費審査委員歴とか、学振の主任及び専門研究員、あるいは文科省調査官歴などを記入できる欄を1つ付けてあげるだけでいいのではないかと思うんですね。
 大学に来る評価項目は、我々は真剣に見るんですよ。大学の方向性を決めてしまう傾向があるので、必要性が低いのに厳しいような項目は除いて、こういう項目を参考として記載できるようにしていただけると、今度はそっちの方に全員が書くようになると思います。そうすると、普通の履歴書にも自然に書くようになるかなと思います。
【西尾部会長】 ありがとうございます。今日ご参加いただいております学術調査官の方も、大切なお役目を務めていただいておりますことを履歴書には是非書いていただければと思います。
 それでは、非常に重要な、また示唆に富む議論を頂きまして、ありがとうございました。科研費に関しましては、その制度運営において、公正であり透明な運用が実現されていくということが重要です。それを日本学術振興会あるいは文部科学省の方に全ておっかぶせるということではなくて、我々研究者一人一人が、日本学術振興会、文部科学省と一緒になって、我々にとって本当に大切な科研費制度を今後も更に大きく育てていくということが肝心です。どうもありがとうございました。
 最後ですけれども、事務局から1点、説明があるということでございます。よろしくお願いいたします。

(4)その他

【松本企画室長補佐】 科研費100周年記念シンポジウムの御案内でございます。先生方のお手元、机上にお配りしているリーフレットをごらんいただければと思います。
 今年、平成30年は、科研費のルーツであります科学奨励金が創設された大正7年から数えて、ちょうど100年目ということで、このようなシンポジウムを企画してございます。先生方には今週末ぐらいに、個別に招待状をお送りしますので、是非参加を御検討いただければと思ってございます。
 以上でございます。
【西尾部会長】 どうもありがとうございました。科研費制度100周年という節目の年であるということを我々認識すると同時に、それを記念したイベントでございますので、皆様方、どうかお一人でも多くの方が参加いただきますように、よろしくお願いをいたします。
 局長、何かございますか。
【磯谷研究振興局長】 冒頭、別の外せない用事がありましたので、失礼させていただきました。このたびの現職の幹部2名が逮捕されたという、大変遺憾な事態が生じまして、そしてそれによって国民の文部科学行政に対する信頼が著しく損なわれたことについて大変遺憾に思っておりますし、国民、関係者の皆様方に心からおわび申し上げたいと思います。
 この研究費部会の先生方にいろいろ議論をしていただいております科学技術、あるいは学術研究のことに関しまして、我々としてもその事務局として、真摯にこの業務について取り組んでまいりたいと思っております。国民の信頼回復に向けては地道な努力が必要だと思っておりまして、引き続き、この学術研究の推進、振興に関しましては、先生方の御助言を頂きたいと思いますし、我々も全力で取り組んでまいりたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
【西尾部会長】 どうもありがとうございました。
 では、事務局の方。
【松本企画室長補佐】 次回の研究費部会につきましては、改めて日程調整をさせていただいて、御連絡をさせていただきたいと思っております。本日の資料につきましては、後ほどメールでお送りしますので、タブレットの端末は切らず、そのままでお願いいたします。
 以上でございます。
【西尾部会長】 それでは、本日の会議はこれで終了いたしたいと思います。皆様、本当に暑い中参加いただき、貴重な議論を頂きましたこと、心よりお礼申し上げます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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研究振興局学術研究助成課企画室企画係

電話番号:03-5253-4111(内線4092)
メールアドレス:gakjokik@mext.go.jp

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