第9期研究費部会(第1回) 議事録

1.日時

平成29年4月24日(月曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省15F特別会議室

3.議題

  1. 部会長及び部会長代理の選任について
  2. 基礎科学力の強化に関するタスクフォース等について
  3. 科研費をめぐる政策動向について
  4. 第9期研究費部会における検討課題及び議論の進め方について
  5. その他

4.出席者

委員

甲斐委員,栗原委員,白波瀬委員,西尾委員,小川委員,小安委員,城山委員,鍋倉委員,山本委員,上田委員,竹沢委員,橋本委員

文部科学省

関研究振興局長,渡辺振興企画課長,鈴木学術研究助成課長,石田学術研究助成課企画室長,他関係官

5.議事録

(1)部会長及び部会長代理の選任について

事務局より資料2-1から2-4に基づき説明があった後,委員の互選により,西尾委員が部会長として選出された。その後,西尾委員により甲斐委員が部会長代理に指名された。

(2)基礎科学力の強化に関するタスクフォース等について

【西尾部会長】
  それでは,基礎科学力の強化に関するタスクフォース等について審議をしてまいりたいと思います。昨年の秋以降,文部科学省において基礎科学力の強化に関するタスクフォースや,研究力強化に向けた研究拠点の在り方に関する懇談会が設置され,基礎科学力,研究力の強化等について検討が行われてきました。
  これらについては,本部会の審議内容とも大きく関わる内容であるため,検討内容について事務局より説明をお願いいたします。
【山口学術企画室長】
  学術企画室長の山口でございます。それでは,資料3,順次,概略という形になりますが説明させていただきます。まず,資料3-1と3-2の2点につきましては,いずれも先ほど,本日公表したばかりのものでございます。資料3-1につきましては,本体25ページ以降に経緯の記載がございます。大隅先生のノーベル賞受賞決定などを契機としまして,他の大臣政務官を座長として,研究者目線に立つことに努めながら,ヒアリングも行いつつ議論をまとめたものでございます。
  なお,本タスクフォースで検討対象とした研究の範囲や定義について念のため確認いたしますと,本体ですと,1ページ目から2ページ目に記載がございます。それを図示したものが27ページのポンチ絵,青の点線に囲まれた部分でございまして,学術研究を中心としつつも,いわゆる目的基礎等も含んだ基礎研究ということになります。
  それでは,資料3-1の最初のポンチ絵5ページ分が概要となってございますので,そちらをごらんください。概要1ページ目は背景の整理でございます。近時の論文指標での質量,両面での傾向に象徴される現状を踏まえまして,もとより密接不可分ではございますが,3つの危機ということで,端的には研究費や研究時間の問題,もう一つは若手の問題,3つ目は拠点という切り口で基本的に整理してございます。その上で,財政状況も厳しい折,大隅先生も指摘されておりましたが,日本では文化としての側面の醸成もなお根本的な問題の1つとしてあるということで,問題意識をつなげてございます。
  次ページ以降が,以上の4つの問題意識に対応した取組の方向性と主な対応策となっております。
  それでは,概要2ページ目にお移りください。こちらでは,チャレンジを継続的に支えるという趣旨でございまして,基盤的な部分の拡充はもとよりでございますが,左の方でございます。いわば命綱とも現状言われております科研費につきまして,量の面,採択率とともに質問の面でも独立ですとか,国際対応などを含む形での若手支援の改革などについて検討してございます。
  また,中央ですが,戦略的な基礎研究におきまして,産業界との早期からの関わり方に係るファンディング改革ですとか,そのプロセスを通じての若手育成機能の充実についても記してございます。さらに,対応策の右側の部分でございますが,現場で必要以上の事務負担の一因と指摘されております国立大学等でのいわゆるローカルルール,過剰な事務負担部分についての合理化の促進などを,対応策として掲げているところでございます。
  次に,概要3ページ目の方にお移りください。ここでは,さっきのものとかぶるところもございますが,若手が研究者としての道を目指せるようにという総合的なサポートということでございまして,1つには,左側でございますが,博士課程の学生などが早い段階から様々な経験,共同研究などを通じて積む機会を一層支援していくこと。
  あるいは,中央ですと,負担軽減ということで研究支援体制強化のために,設備等の共用化ですとか,技術スタッフ等の一元化,これを研究室とか小さい単位ではなくて,もう少し大きい単位で進めていくこと。さらに,クロスアポイントメント,あるいはシニアも含めた人材の流動化の促進等について触れてございます。
  そして,右側になりますが,関係審議会で連携した形で研究人材の育成,そして活躍促進の方策を検討していくといったことなどを主な記載事項として掲げてございます。
  続きまして,概要4ページ目をごらんください。拠点ということでございますが,右上の図が象徴的なわけでございますけれども,日本のトップクラスの研究拠点におきましてはパフォーマンス,相当程度よいわけでございますが,波及効果については限定的であること,そのためネットワーク化など横展開を図っていくこととともに,弱体化が著しいトップに次ぐ層の厚みを増すという問題意識。そして,それらを基盤的に支えるビッグデータ時代に対応したインフラの充実などを掲げてございます。
  特にこの真ん中の部分でございますが,特定の研究分野でというくだりにつきましては,別途先行して――同時並行の形になりますが,研究拠点の懇談会の中で柱の1つとして検討を進めてまいりました。
  それが,資料3-2になりまして,59ページ以降を一度ごらんいただけますでしょうか。概要や審議経過がそちらにございます。趣旨といたしましては,各機関自身のコミットメント,システム改革ですとか関連拠点との連携,そういったこととともに,国といたしましても,既存の施策でのノウハウ,例えば世界トップレジュメの研究拠点への支援手法成果の活用など,有機的な連携の下で,でございますが,規模が小さいながらも,当該分野で我が国を牽引(けんいん)するような,全国に存在しておりますいわばニッチトップに改めて光を当てるということで,人材流動化ですとか,新領域の創出の側面も含めまして,イノベーションの源である多様で卓越した知の基盤の強化を図りたいという趣旨でございます。
  続きまして,概要の5ページ目の方にお戻りください。資料3-1の方でございます。以上を踏まえつつ,国民,社会の関心がノーベル賞受賞時など,瞬間風速だけで終わってしまいませんように,大人にも,子供にも科学を身近に感じてもらおうということで,例えば観光ですとか,地域振興ですとか,そういったことなども少し念頭に置きながら,科学の名所百選などというものを例えば創設してはどうかなど,いわゆる科学コミュニケーションの活動を更に推進すること。
  そしてまた,寄附については,なかなか制度名はもとよりですが,文化としてグッド・プラクティスというものの収集も大切だというのがございます。例えば山中先生もクラウドファンディング,自らマラソンをするという形を通じて集めておられるようなものもございます。科学を,そしてまた寄附を文化として育んでいけますよう,あらゆる方面からいろいろな検討をしてまいりたいと考えております。
  なお,本まとめの全体の性格でございますが,お手数で恐縮でございますが,本体の23ページをごらんください。概要ペーパーで説明いたしましたが,ここには例示として記載があるだけで全部で80項目ございまして,中長期的な課題として取り組む項目等もございます。課題の性格に応じまして,平成30年度概算要求をはじめ,具体的な検討を更に進めていくこととしてございます。
  いわば当面の緊急的なアクションプランとしてのもので,今後更に具体的に検討を進めていくに当たりましては,各方面から更に御意見を頂戴しながら改善に生かしてまいりますし,また,進捗状況のフォローアップもしてまいる所存でございます。
  本研究費部会におかれましても,引き続き御意見等を賜りますとともに,科研費改革はじめ所要の検討をよろしくお願い申し上げたいと存じます。
  次に,資料3-3をごらんください。去る3月に中教審に諮問されました内容でございます。高等教育の将来構想についてということです。第4次産業革命ですとか,本格的な人口減少社会等の状況変化を踏まえまして,4つほど主な検討事項がございますが,特に3番目と4番目でございます。
  3番目といたしまして,今後の高等教育全体の規模ですとか,分野別・産業別の人材育成の需要なども踏まえ,地方などにおける高等教育の質の確保のための構造改革の在り方について,1つ諮問されてございます。
  また,4番目といたしまして,主として教育の観点からということではございますが,学生への経済的支援ですとか,教育研究を支える基盤的経費,競争的資金の充実,その配分の在り方についても検討することとされてございます。特に人材育成の側面ですとか,人件費,研究費の確保ですとか,教育研究,密接不可分でございますので,検討状況を注視しつつ必要な連携を図ってまいりたいと存じます。
  最後に2点,先週末に開催されました第29回総合科学技術イノベーション会議,CSTIでの検討状況について御報告申し上げます。まず,資料3-4のマル1をごらんください。全体,大部でございますが,科学技術イノベーション総合戦略2017の素案が提示されたところでございます。詳細は避けますが,さきに説明申し上げました基礎科学力タスクフォースでの議論なども事実上,一定打ち込んでいる格好となってございます。
  1枚おめくりいただきまして,概要の裏側に第4章というところがございます。本文では70ページあたりから90ページあたりにかけてなんでございますが,3つの基盤的な力ということで,人材,知,資金という切り口で整理がされておりますので,また御覧くださいませ。
  続きまして,資料3-4のマル2の方の資料をごらんください。平成30年度予算編成に向けまして,Society5.0関連施策を重視すると。そうしたプロセスを通じながら,第5期科学技術基本計画で掲げられております対GDP比1%という政府の研究開発投資目標を目指す,そして所要の額が確保されるよう努めるという方針が決定されたところでございます。これに伴う予算の規模感といたしましては,裏面のページに参考ということで書いてございますが,近年,3.5兆円前後で毎年の科学技術関係予算,当初予算ベースでございますが,推移しておりましたが,平成32年度までに4.4兆にまで増やしていくことを想定しているということになるところでございます。
  簡単でございますが,ひとまず以上でございます。
【西尾部会長】
  どうもありがとうございました。ここまでの説明につきまして,御質問等ございましたら,何なりとおっしゃっていただければと思います。特にタスクフォースの検討のまとめに関する資料3-1の2ページ目のところで,科研費改革の推進というところがございます。左側の方ですけれども,ここに各項目がございますが,赤色の丸は,直ちに取り組むべき事項を示します。白抜きの黒い丸は平成30年度以降,速やかに取り組むべき事項ということでございます。新規採択率30%の達成であるとか,科研費若手支援プランの実行については,直ちに取り組むべきものとして特に重要視されております。
  例えば,このタスクフォースの検討結果が今後どのように生かされていくのかというような御質問でも構いませんが,今,山口室長の方から御説明いただきました資料3-1から3-4のマル2までのことにつきまして,御質問等ありましたらどうぞ。
【白波瀬委員】
  ありがとうございました。質問としては,この部会としては少々越境しているかもしれません。もっとも内容的には大変充実しておりまして,基金に対応してどうするかという論点も極めて明確に提示されているとは思います。
  ただ私の方で少し違和感を持ったのは,この寄附の促進というくだりですね。文科省の方から,フォーラムにおいて寄附を積極的に促すに当たって,どういう仕組みというか,立て付けで展開されようとしているのかという点です。もちろん,財源そのものが不足してきて,いろいろなところから積極的に様々な財を取り込むという意味では望ましいというか,正当なやり方だというのは理解できます。繰り返しになりますが,このあたりはどのようにお考えなのか,もう少し御説明いただけますと幸いです。
【西尾部会長】
  事務局,どうぞ。
【山口学術企画室長】
  1つには,現状でやっている施策ということなのですが,本体の90ページに寄附フォーラムというのはどんなことをやっているかという資料がございます。グッド・プラクティスの共有,どういう配慮,あるいは手続をすることで現行の制度の中でも,制度の問題でなくてやれるのかですとか,あるいは寄附するがわの立場ですとか。文化ということでございますので,トップダウンでというのはなじまないところもあるかもしれませんが,逆にポテンヒットのままでは進まないということもありますので,1つにはそういうことをきっかけにしたいと考えております。
【西尾部会長】
  今の回答で,白波瀬先生,よろしいですか。
【白波瀬委員】
  はい,取りあえずは。
【西尾部会長】
  甲斐先生,どうぞ。
【甲斐委員】
  2ページ目の最後に,取組の方向性の中で,基盤的研究費の適切な措置に向けた基盤的経費や,それから競争的研究費の助成規模の拡充に努めるというのは,要するに運営費交付金が一番上に12%減少とあって,それも拡充に努めるというふうに読めるのですが,すごい提言を出していただいたなと思いました。
  しかし,その下の,対応策の矢印の下には,どれがそれに当たるのかよくわからないのですが。科研費に関しては書いてありますけれども,基盤的経費の拡充はどのような方策を考えようと提言されたのでしょうか。
【西尾部会長】
  事務局,どうぞ。
【山口学術企画室長】
  正直申し上げますと,少々痛いところでございます。なかなか全体のパイの中で,先ほど最後の資料の方の説明でも少し触れましたが,政府全体として重要性ということでGDP比をしっかり集めていこうという議論もございます。そういった中で,こうすればというものはなかなか簡単にはないのですが,この部分,触れないわけにまいりません,本当に基盤的な部分ですので。これに対応した具体策という,各論敵な施策としては余り書いてございません。
  ただ,そこは総合的に,例えば個人研究費の額とか,使われ方とか,側面的なところの支援というのもあると思いますし,全体として現場の負担軽減ですとか,若手研究者の声を踏まえていくですとか,そういうことを併せて総合的に今回は捉えていると,お捉えいただければと思います。
【甲斐委員】
  すなわち方策は書いていないということですね。対応策の具体例は。
【関研究振興局長】
  基盤的経費の拡充ということについては,この報告の議論のまとめとして,基本的なところとしておいております。ただ,基盤的経費,運営費交付金でありますとか,あるいは私学助成等については,それぞれのこれまで取組もしながら,例えば今年度,国立大学の運営費交付金については25億円の増ということで,これまでずっと削減をされてきたところを,いろいろ工夫しながら増に努めているということでありますので,それを引き続き努力していくということでございます。
  具体的施策として挙げているところは,むしろ質の面での充実というところを,ここの科研費の改革にいたしましても,当然,新規採択率30%達成に向けてというところは入っているわけですが,そういった量とともに質的な面での内容について,より挑戦をしていけるような内容での今,科研費改革を進めていく中での取組でありますとか,あるいは国際性といった面からのいろいろな取組でありますとかいうこと。
  それから,戦略的な基礎研究の推進に係る経費については,今JSTのファンディング改革も議論しておりますので,そういった方向性について記載をさせていただいていると,そういうことでございます。
【甲斐委員】
  局長,ありがとうございました。ただ,後半は全部競争的資金の方であって,基盤的経費ではないですね。そういう科研費などJSPSが出しているものに対して充実させるというのは,すごく今までもここでも議論されてきましたし,一生懸命やろうとしている。それが盛り込まれたのは,我々もその方向性に沿っていてよいと思うのです。
  ここに基盤的経費を書き込んでくれた,私はすばらしいと思ったので,それに対しての具体的な対策というのが一つもないというのはちょっと寂しい。ただ,書いてくださった以上,これを確認して,是非とも拡充する方向を入れていただけたらと思います。飽くまでデュアルサポートで,本当に科研費などの競争的資金だけではどうしようもないところがたくさんあるのですね。ですから,是非お願いしたいと思います。
【西尾部会長】
  今,甲斐委員から言っていただきました点,これは非常に重要な点です。学術分科会等でも議論されてきたところですが,基盤的な経費の維持,拡充ということが日本の学術研究振興の鍵であるということに関しては共通の認識が得られているところです。この部会においても研究費に関して議論する観点からは,議論の対象にするという方向でよろしいでしょうか。
  ただし,今後,基盤的経費に関して具体的にどのようにして維持拡充をさせるかということについては,相当知恵を絞っていく必要があると思います。そういう点,ここには具体的には書けないにしても,今後非常に重要な点として捉えていただいているという解釈でよろしいですね。
【小安委員】
  今御紹介いただいた資料3-4のマル1,CSTIのところを読んでいたところ,ここにもやはり基盤的経費の改革というのが85ページに出てきますが,ここを見ても何もするとは書いていません。人件費割合が増加しているとしか書いていない。これは運営費交付金を減らしてきたから相対的に増えているのですが,そこは書かずに何が書いてあるかというと,政府以外からの外部資金を獲得せよ,あとは効率化せよということしか書いていません。こういうところに,もう少しポジティブなことを書いていただくようにしていただかないと,なかなか政府全体としては基盤的経費の改革の方向に動かないのではないかなと思います。これを読んでいると結構大変だなという印象を持ちます。
  科研費のことも書いてありますが,これは文科省がこれまで言ってきたことをそのままここに書いてあるだけで,何かそれをサポートするような書き方は見当たりません。こういう大方針のところにどうやって打ち込んでいくかがとても大事だと思います。何となく読んでいるとネガティブになります。以上です。
【西尾部会長】
  貴重なコメント,ありがとうございました。今おっしゃったことは,非常に重要な点であり,何らかの形で打開していかなければならない問題だと思います。事務局の方でどうかよろしくお願いいたします。
【上田委員】
  今の議論に関連するのですけれども,この概要の2ページ目,運営交付金が以前から非常によく議論に乗りますけれども,過去12年間,12%減少と。右側の個人研究費の規模の比較というところで,赤の部分,大きく減っていると。これ,数字だけ見るとこういうことなのですけれども,一方,資料3-3を見ると,人口減というのが2005年から2016年,約10年ちょっとで1割強減っているわけです,18歳人口ということもあって。
  なので,大学定員という観点も,例えば1つあるのかなと。かつ,もう一つは,取れる人ばかりが取っていて,多くの人は取れなくなっているということもあるのかなと。だから,もう少し分析を正確にしないと,丸めて減少,減少と言われても,それでは,交付金を回復するのかといったときに,1人当たりの研究者に対する手当てというか,そういう分析は準備できているのかなと。要するに人口はどんどん減っていますから,全体に運営交付金も減っていくのは,一方では自然な感じもする。少し統計の丸め方が,そういう意味では正確でないような印象を持ちました。
【西尾部会長】
  今の御意見について,事務局から何かコメントございますか。
【鈴木学術研究助成課長】
  どの時間軸で見るかということもあるかと思います。ここ近年の10年余りの減少というのは,正に18歳人口は比較的120万辺りで安定し,学生数のマスの部分でシュリンクしているわけではない中で減ってきていると。ただ,先々においては,長期的に見て,もちろん人口減になりますので,そうした場合どうするかという議論を,1つ,この中教審の方では正に大学,高等教育の規模ということを今回論点に入れているというのは,正にこれからのこととしてやろうとしているということですので,そういう意味では研究費等の問題もそれは連動してまいりますので,タスクフォースの中でも今後,研究者の研究人材育成プランのようなものを検討,審議しようというのが,この科学技術・学術審議会の中での人材委員会というところでこれから議論するということを予定しております。
  そういった意味で,将来の展望を持ちながら,どういうマスとしての量を考えていくかという議論も,これから更にエビデンスをしっかりやっていこうと考えております。
【西尾部会長】
  上田委員のおっしゃったことに関しては,先進諸国で人口減ということが起こっているような状況の中で,例えば大学院の博士後期課程の学生数が本当に減っていっているのは日本だけで,他の国は増加しています。
  私は,知識集約型の社会へのパラダイムシフトがどんどん進むときに,国の人口が減っているからといって,国家としての高等教育機関の学生数を単純にスケールダウンしてよいのかということは,慎重であるべきと考えます。むしろ,今後の社会のパラダイムの中で,日本がどうのように存在感を発揮するかというときには,逆により強化しなければならない面もあると思います。
【上田委員】
  おっしゃるとおりで,私も単純に減らすという意見ではなくて,その面も議論しなければいけないということです。
【西尾部会長】
  分かりました。ほかに御意見ないでしょうか。はい,どうぞ。
【竹沢委員】
  まだ初回でございまして,感想程度にすぎませんけれども,資料3-1の最初のページ,この共著論文のグラフを興味深く聞いておりました。これを見ると,国内論文の数自体がそんなにイギリスやドイツと違うわけではないけれども,2国間とか多国間の共著論文が少ないという,これは当面の1つの課題かと思います。
  これも,これから議論されていくのでしょうが,私のすごく限られた海外での経験から言うと――教授の方が国外からビジティングで来ている客員教員とか,若手,ポストドクあるいは大学院生と――その中に留学生も含まれているわけですけれども-,1年なら1年,あるいは半年なら半年の間に,共著論文を書くということが常態化している。それが日本の中では,特に文系では,やりにくい文化的土壌がある。
  精神的なバリア,例えば若手の院生の論文に指導こそすれ,自分の名前を連ねるということに対して,多くの人が抵抗を持っていると思うのですけれども,その辺の意識改革からしていくと。このことについても,私もアメリカにブラジルから来ていらっしゃった准教授の先生と1回話したことがありますけれども,自分がデータの分析もほとんどやっている。でも結局自分が書いても誰も引用しないと。しかし,有名な先生と共著で,最後に彼がポリッシュしたら,とてもすばらしい論文になって,引用されると。
  それは,ウィン・ウィンの関係なのだと。理系の先生方はもう既になさっているでしょうけれども,こういうことが多分日本の学術界でも,特に人文科学でウィンウィンの関係で根付いていけば,こういうことが改革につながっていくのではないかと感じております。以上です。
【西尾部会長】
  御意見ありがとうございました。今の御意見等について,何か御質問とかございますか。

  それでは,今日の議論では,基盤経費のところが具体的な施策が書かれていないということについての御意見を頂きました。そのことについては,文部科学省の方で更に対応していくということで,どうかよろしくお願いいたします。
  御報告いただきましたタスクフォースのまとめを受けまして,近々の科研費改革を具体的にどのように進めていくのか,また,中長期的な課題にどう対応していくのかは,今後,この部会にて議論していくことになると思います。今回のタスクフォースのまとめというものが,今後のいろいろな議論の上でも有効に機能するものとして我々は対処していきたいと考えております。科研費の枠にとどまらない課題については,学術分科会等において議論することになりますけれども,部会長としまして,本部会での意見が適切に反映されるように,私としては努めてまいります。どうかよろしくお願いいたします。

(3)科研費をめぐる政策動向について

【西尾部会長】
  それでは,次に科研費をめぐる政策動向についてということで,第8期において取りまとめた提言内容を含めた科研費改革の取組状況等について,事務局より説明をお願いいたします。
【石田企画室長】
  それでは,御説明いたします。
  まず資料4-1でございます。本部会で集中的に前期から御審議いただいているところでございますけれども,科研費改革の取組状況についてというタイトルが付いた資料でございます。
  まず,3ページ目をごらんいただけますでしょうか。こちら,一般的な科研費の紹介,概要ペーパーでございます。一番上の箱の部分については,既に御案内のことと思います。新規応募,約10万件に対して,現状,採択は約2.7万件というものでございます。新規,継続合わせまして,年間約7.5万件の研究課題を支援しているという制度でございます。
  科研費の位置づけについては省略をさせていただきます。
  左下のグラフは,科研費の応募・採択件数,採択率の推移のグラフでございます。新規の応募件数というのは,年々右肩上がりで増え続けているところでございます。平成28年度は10万件を突破したというのが,前期の議論でもかなり話題に上ったところでございます。応募件数に対して,新規採択件数はこの緑色の棒グラフでございます。折れ線グラフで採択率の推移を表しますと,このようになるということでございます。
  対しまして,右側にございますのは科研費の予算額の推移でございます。これ,予算額というのは平成23年度から基金を導入した研究種目というのが一部ございまして,複数年度分の予算を一括措置されているところもございますので一概に比較はできないのでございますけれども,推移はこのようになっているということでございます。平成29年度は2,284億円というものでございまして,各年度における助成額というのは大体同じような金額で推移しているというのは近年の状況でございます。
  スライドの4ページ目をごらんいただけますでしょうか。こちら,科研費事業の研究種目でございます。構造で示しているところでございますが,各研究種目,いろいろな研究の進展状況,規模等に勘案して,いろいろなメニューがございます。各研究種目における新規の採択率というのを丸囲みで示させていただいているところでございます。
  5ページ目をごらんいただけますでしょうか。それらを総括しました配分結果でございます。左側に応募件数に対して採択件数,右側は分野別の採択件数でございます。
  その下,6ページ目をごらんいただけますでしょうか。課題当たりの平均配分額,これは直接経費でございますが,その推移を示したものでございます。ごらんいただいてお分かりのとおり,平均の配分額というのが漸減傾向にあるというところが御確認いただけるかと思います。こちらについても,前期,かなり問題意識を持って御議論いただいたところでございます。それを充足率,採択された方が応募いただいた金額に対して,平均するとどのような充足がされたかというところでございます。28年度はアベレージで70.5%という結果でございました。
  次のページ,7ページ目は年齢別の応募・採択の状況でございます。
  8枚目に移ります。こちらはよく議論に活用されるのですが,科研費が関与した論文の質と,我が国の論文産出構造というものでございます。要約いたしますと,科研費の関与論文におけるトップ10%論文の割合というのは,ここに出てくる調査では10%を超えているということでございます。科研費が関与しない論文よりもかなり高い割合を占めているということでございまして,科研費関与論文というのは我が国の論文産出構造を牽引(けんいん)していると言えるのではないかということで,このような説明をこれまでさせていただいてきたところでございます。これらの背景となりますデータでございます。
  続きまして,10ページ以降が科研費改革の進展に関する内容でございます。10枚目のスライドは沿革でございます。この沿革で一番上に出てまいりますのは,平成26年8月の研究費部会での提言,我が国の学術研究の振興と科研費改革についてという提言を頂いたことがございます。
  さらに,平成27年1月には学術分科会において,学術研究の総合的な推進方策についてという最終報告を頂いたところでございます。この中では,学術の現代的要請を提唱いただいたところでございます。その後,幾つかの変遷を経まして,平成29年1月には,こちらの学術分科会での議論を踏まえまして,最終的に文部科学省科研費改革の実施方針の改定というものが行われまして,現状に至っているところでございます。
  11枚目のスライドをごらんいただけますでしょうか。こちら,科研費改革の見通しで,とりわけ審査システム・研究種目の見直し等に着目したものでございまして,既に経過が示されているところでございます。今現在は平成29年度でございまして,この秋の公募,審査システム改革2018の本格導入に向けて準備が行われているところでございます。その他,研究種目の見直し等も並行して図られているところでございます。
  12枚目のスライドでございます。こちらは昨年,研究費部会で提言を頂いた内容でございます。科研費による挑戦的な研究に対する支援強化についてというものでございます。1.の箱の中,丸の1個目をごらんいただきますと,我が国の学術研究にとって,新たな知の開拓に挑む「挑戦性」の追求が最重要課題であるという前提の下に,かなり精力的に御議論いただいたところでございます。
  それら,様々な角度から御議論いただいた結果として,学術研究を支える唯一の競争的資金である科研費によって,学術の枠組みの変革・転換を指向する挑戦的な研究を積極的に支援していくべきであるということで,これらについては審査システム改革との一体的な見直しを推進すべきであるという提言を頂いたところでございます。
  具体的な内容といたしましては,1個1個の説明は省略させていただきますけれども,左側から,まず研究種目の体系の見直し,真ん中のところ,(1)番として「挑戦的萌芽(ほうが)研究」の見直し,御議論を踏まえ,「挑戦的研究」の新設というものを御提言いただいたところでございます。さらに右側,(2)番,「若手研究」の見直しと,さらには「特別推進研究」の見直しと,これらについても併せて御提言いただいたところでございます。
  下段に3.がございます。今後の検討課題といたしまして,例えば「新学術領域研究」の見直し等についても更に検討すべきであるということが,引き続き検討すべき内容として残っているところでございます。
  13枚目のスライド,先ほど来申し上げております挑戦的な研究に対する支援強化の御議論の中で,採択率と充足率との関係というものを御議論いただいたところでございます。これ,現状を図示したものでございますけれども,応募の件数が右肩上がりで増え続ける中で,採択率を一定程度維持しようとすると,どうしても先ほど来申し上げておりますように,配分額のところを薄く,薄く削っていかざるを得ないという状況にも遭遇するわけでございます。
  それを解消するためには,予算の増というものが1つ考えられるわけでございますけれども,これも先ほど述べましたように,近年なかなか難しい状況にあるということでございます。この図というのは,採択率を考慮しつつも,一定程度やはり平均充足率を併せて考えていかなければいけないということで,研究種目それぞれに応じた採択率と充足率のイメージ,その中で必要な水準の確保というものを審議会で御議論を頂いて,提示いただいたという図でございます。
  14枚目のスライドにございますのは,若手支援プランというものでございます。今般,若手研究の見直し等について御議論いただいた中で,若手育成のための各種プランというのをパッケージ化して,総合的に推進していくべきではないかという提言も頂いたところでございまして,これは1表の中で各ツールをどのような相互関係にあるのかということも踏まえて,理解を深めていただきやすくするものとして示したものでございます。
  ここに掲げられている内容については,既に投入,運営が始まったものもあれば,今後,予算の拡充と併せて引き続き取り組んでいかなければならない事柄もございます。
  1枚おめくりいただきまして15枚目,16枚目でございます。15枚目のスライドというのは,今年の予算編成後のスライドでございまして,先ほど触れましたけれども,平成29年度予算額は,2,284億円を措置できたところでございます。左側にその中でのトピック的な取組といたしまして,挑戦的な研究の強化・充実というもの,さらには,2)若手研究者の独立支援の試行,こういったものを併せ取り組むことによって,予算が形作られているというところで御理解いただきたいところでございます。
  その下段,16枚目のスライドでございます。こちらは,どちらかというと科研費補助金審査部会の審議事項が主でございますけれども,「審査システム改革2018」の概要というものでございます。こちらについては説明を省略させていただきます。
  この18枚目のスライド以降が,さらに当面の目標・課題等のスライドになっております。このページ以降に,政府方針であるとか,さらには,先ほど御説明のありました基礎科学力タスクフォースの報告書における科研費関係の記載事項等々を挙げております。こちらの18枚目以降については次の議題で説明をさせていただこうと思いますので,ここは飛ばさせていただきます。
  さらに資料4-2をお手元に御用意いただけますでしょうか。4-2が科研費改革の実施方針というもので,学術分科会での御議論を経まして,先ほど御紹介しましたように,本年1月27日に最終改定が行われたものでございます。この方針にのっとって科研費改革は実施していくのだという立て付けになっているところでございます。
  この資料では1点だけ,1の改革の基本的考え方を確認的にお目通しいただきたいと思います。丸の1個目,これまでの類似の制度改正の成果と課題を踏まえ,学術の現代的要請により的確に対応し,政策目標に留意しつつ,成果創出の最大化を図るため,科研費の基本的な構造をはじめとする抜本的な改革を行うとされているところでございます。各種検討に当たっては,こうした基本的な考え方を踏まえながら進めていただくというわけでございます。
  続きまして,資料4-3でございます。資料4-3というのが,これは科研費改革に関連する事項というもので,「科研費に関する御意見・御要望受付窓口」受け付け状況関連の資料でございます。実は前期の審議会で,やはり様々な研究者からの御意見をしっかりと受けとめて,科研費改革にも必要に応じて反映させていくべきであるという議論が行われました。こちらは,日本学術振興会に科研費の御意見・御要望受付窓口というものを昨年11月から設けまして,本年3月までの間に約200件の御意見を賜ったところでございます。
  それぞれについては幾つかに類型化できるわけでございまして,できるだけ早期にお答えできるものはお答えし,即答できないようなもの,例えば予算の大幅な増が伴うようなものとか,科研費の制度の立て付けそのものを大幅に見直さなければいけないような事柄などについては,こちらの研究費部会,ないしは科研費補助金審査部会にフィードバックして議論を頂いた上で,できる限りの御回答をしていくという流れで考えていきたいと思っているところでございます。
  最後に,資料4-4をお目通しいただけますでしょうか。こちらは海外における研究費政策とファンディング・システムの状況に関する調査報告書というものでございます。3枚ほど紙をめくっていただきますと,ページ番号1というところがございます。「はじめに」という記述がございます。本報告は,海外のファンディング・エージェンシーの最新の動向に関して,学術振興会に寄せられた調査依頼を受けて,学術振興会の中で学術システム研究センターが実施した調査研究の報告であるというものでございます。
  具体的には,ファンディング・エージェンシーにおける挑戦性,社会的インパクトの取扱い等についてかなり精密に調査を頂いた内容のレポートでございます。こちらについては,本研究費部会に本来は詳細の説明を踏まえて御紹介いただき,報告ということに代えさせていただくところでございますけれども,本日は誠に恐縮ですが,時間の関係もございまして,そのような報告を頂いたという御紹介をさせていただくにとどめさせていただくところでございます。
  もし何か御質問等がございましたら,本日は学術振興会から回答を頂くことも可能でございますので,今後の審議にこのレポートについても御活用いただきたいということで,御紹介をさせていただいたところでございます。
  以上でございます。
【西尾部会長】
  御説明ありがとうございました。今御説明いただきました内容は,第8期のこの研究費部会等において審議をし,それをまとめ,今後の方針として出したものです。本日は,第9期の本委員会の第1回でございますので,新たに委員になられた方もいらっしゃいます。そのような状況を踏まえて,今,石田室長の方から簡潔に御説明を頂いたところです。
  今の内容につきまして何か御質問等ありましたら,よろしくお願いいたします。ございませんでしょうか。どうぞ。
【小安委員】
  簡単な質問なのですが,資料4-1の6ページにある充足率のデータですが,これは具体的に種目は何なのでしょうか。下を見ても,科学研究費の主要種目について集計としか書いてありませんが。
【西尾部会長】
  石田室長,どうぞ。
【石田企画室長】
  主要種目としておりますのが,先生方,よく御存じの基盤研究,若手研究,挑戦的萌芽(ほうが)研究,さらには新学術領域研究等と,あと若干の研究種目が含まれておりますけれども,それらの合計でございます。この中には,例えば研究成果公開促進費であるとか,そのあたりは含まれない。大学の先生方が一般に活用される研究費の集計でございます。
【小安委員】
  例えば基盤でいえば基盤のCから基盤のSまで全部足して,単純に件数で割ったという,そういう意味ですか。
【石田企画室長】
  はい,そのとおりでございます。
【西尾部会長】
  ほかに御質問等ございますか。どうぞ。
【鈴木学術研究助成課長】
  関連して。個別の種目の充足率に関しましては,同じくこの資料の後の13ページで,個別種目ごとの充足率,採択率というのが表記されておりますので,そちらの方,内訳はごらんいただければと思います。
【西尾部会長】
  橋本先生,いかがですか。
【橋本委員】
  科研費の応募は増えているというのが,最初の3ページのところにございますけれども,年齢別の構成というのはどういうふうになっているのか。例えば,大学院の博士課程に進む人の数は少しずつ減ってきているという状況かと思います。そうすると,若手研究者のもとになるところは細まっているという中で,全体の応募率,応募の数が増えてきているということは,どの層が増えているかということも1つ,興味があるところなのですけれども。
  研究者は相対的に減っているのではないかと思うのですが,それに対して応募件数が増えてきているということはどう考えるかということです。これ以外に,もうなくなってきたから増えているのだと言うこともできるかもしれません。そうすると,どの年齢層が増加傾向が強いのかということも重要になります。
  それから,6ページのところの非常に大ざっぱなお話ですけれども,平均で約200万ということは,これは年間の金額だと思ってよろしいですね。そうすると,採択率が30%を割っているというと,3分の2の方が応募したがもらえていないことになりますから,全部平均してしまうと,1人当たり60万ちょっとが科研費から研究者に対して配分されているということになるのですね。
  それと,各機関からのサポートも減りつつあるという中で,これが50万以下だとしますと,合計で100万ぐらいというのが現状かと思います。その辺のところの詳細な中身というのは,分析されていると思ってよろしいのでしょうか。
【西尾部会長】
  どうでしょうか,現状で結構ですので。
【鈴木学術研究助成課長】
  大まかな年齢別の現状の構成についてはこの資料の7ページでございますが,その他の若手に関しましては,お配りしておりますこの昨年12月のレポート,白表紙の冊子でございますが,この69ページ以降は,若手研究に関しての御議論を頂いた際に用いた基礎データでございますので,御参照いただければと思います。
  今,御指摘の点で全て網羅的に御回答しにくいところがございますが,研究者の数という意味で言いますと,たしか全体としては,近年若手研究者全体は横ばいのような数字の動き方で,ただ,年齢構成的にはかなり高齢化が全体としては進んでいると。若手のシェアが落ちてきているということがあると。そうした中で,採択率を見ると,若手の方は比較的アベレージよりは検討されているという傾向が,総じてはあるということはございます。
【橋本委員】
  その辺のところを少し吟味しないといけないかと思うのですけれども,日本全体で数の問題と質の問題,それも変換していかなくてはいけなかろうと思うのです。国際共著論文の問題もありますし,研究者の基本的な考え方というか,態度というか,論文の発表の仕方も含めて,質の変換も進めなくてはいけないということです。
  それと,最初にお話がありました,全体の人数の問題でいうと,日本の人口が減っていく中で研究者の割合がどのぐらいが目指すところかということも問題です。
  また,研究者というのは,どういう人を研究者と呼ぶかということも考えなくてはいけない。科研費だけが全てかというのもありますけれども,その辺,少し精密に考える必要があるかなという気がします。以上です。
【西尾部会長】
  橋本先生から,特に日本における研究者の規模に関して,どのぐらいが国力を支えていく上で適切か。そのような議論も必要ではないかということを従前からしばしば御提案いただいております。その辺りは,先ほどおっしゃったように人材委員会の方でいろいろ議論なされているということなのでしょうか。
【鈴木学術研究助成課長】
  今回の基礎科学力強化のタスクフォースでも,その中で若手研究人材育成プランというものを策定しようということがうたわれておりますので,近々そういった議論を人材委員会の方でスタートさせると。私どもの聞いているところでは,中間的なまとめを,できれば年内にと聞いていたので,まずはエビデンスをしっかりと御指摘のような点を含め,まとめていくと聞いております。
【西尾部会長】
  そのような委員会で出てきた議論の中間まとめ等を,こちらの部会で受けて,橋本先生がおっしゃっているような課題に対しての,今後の部会での科研費のデザインに生かしていくということは重要かと思いますので,何とぞよろしくお願いします。
  それと同時に,量と同時に質の問題を橋本先生から御指摘いただきましたが,その問題を議論するにはエビデンスとなるデータを更に分析していく必要があるのではないかと思いますので,その点もよろしくお願いいたします。

(4)第9期研究費部会における検討課題及び議論の進め方について

【西尾部会長】
  それでは,次の議題ですが,先ほど説明いただきました第8期の審議結果等のことも振り返りながら,第9期のことを議論させていただきたく思います。本部会の当面の検討課題と審議の進め方の案を事務局に準備していただいておりますので,それについて説明を頂きまして,その後,自由討論を行いたいと思いますので,資料の5の説明をよろしくお願いいたします。
【石田企画室長】
  それでは,資料5-1から5-3をお手元に御用意いただけますでしょうか。今部会長から御紹介のありましたように,私どもからの提案でございます。5-1でございます。第9期の本部会の当面の審議事項について(案)というものでございます。
  前期の研究費部会の提言に基づく科研費改革の推進方策について,先ほど説明のありました「基礎科学力の強化に関するタスクフォース」のまとめ,さらには日本学術振興会の窓口で受け付けた意見・要望を踏まえ,当面,以下の事項を中心に審議を行っていただいてはどうかと考えているところでございます。
  こちら,ひし形が4つ,特に本部会に関係の深いものとして挙げられているところでございます。もちろん,これにとどまらず御議論を頂く必要がある事項もあるかもしれません。1点目,「科研費若手支援プラン」推進の在り方というもの。特に前期の審議会では,「若手研究A」の「基盤研究」体系への統合というものを御提言いただいたようなことがございます。
  2点目,大型研究種目の在り方。こちら,若干口頭で触れましたが,「新学術領域研究」の見直し,「特別推進研究」の見直しに伴う対応等,こういったことを引き続き御議論いただいてはどうかと考えているところでございます。
  3点目,応募機会の多様化・柔軟化の在り方に関すること。これは,いろいろ私ども聞き及ぶところで,やはり挑戦性というものが阻害と言うと言い過ぎかもしれませんけれども,挑戦性そのものが損なわれるような状況に陥っているようなことはないかという背景事情を踏まえて,挑戦を促すための取組,さらには前期もかなり濃密に御議論を頂きました重複制限の在り方,こういったことを中心に御議論を頂いてはどうかということ。
  4点目が国際化の推進の在り方ということで,現行制度で申しますと「国際共同研究加速基金」というものがございますけれども,これのフォローアップを踏まえた制度改善方策等々について御議論を頂いてはどうかと考えているところでございます。
  先ほどの資料の4-1にもう一度戻っていただけますでしょうか。資料4-1で,後の議題にと送ったところを説明させていただきます。スライドでいいますと,18ページ以降でございます。これは,大きなタイトル,当面の目標・課題というものでございます。先ほど私どもから当面の審議事項として提案させていただいた内容に大まかに沿う形で,スライドを整理しているところでございます。
  18ページのスライドが,まず政府方針でございます。御案内の第5期の科学技術基本計画,閣議決定内容の具体的記述でございますけれども,この中に赤い文字のところに,科研費に関する記述がたくさんございます。科研費について,審査システムの見直し,種目,枠組みの見直し等々を行うということ。その際,国際共同研究の促進を図るとともに,研究者が新たな課題を積極的に探索し,挑戦することを可能とする支援を強化するということなどが具体的な政府方針として掲げられているところでございます。こうした質的な向上を目指すような改善に向けた取組というのは,政府全体で求められているということでございます。
  さらには,下から2行目,このような改革を進め,新規採択率30%の目標を目指しつつ,充実強化を図るというふうにされているところでございます。
  1枚おめくりいただけますでしょうか。こちらは科研費だけではないですけれども,同基本計画における目標値というのが幾つかの指標で掲げられているところでございます。そのそれぞれが重要なことでございますけれども,とりわけ3番目の論文数というところ,トップ10論文数の割合が政府全体で10%となることを目指すという方針がございます。ということを,頭の片隅に置いて進めていただければ有り難いと考えているところです。
  さらに,この下段,20枚目のスライドでございます。基礎科学力タスクフォース報告書の抜粋で,科研費関連施策について,でございます。(1)の取組の方向性のところ,1行目の後段,より自由かつ大胆な挑戦を行うことができるよう,関連事業の質的な改革を進めるということでございまして,科研費に関する記述がこれから先出てくるわけでございます。
  具体的な施策といたしまして,マル1,知のブレークスルーを目指した科研費改革の推進という内容がございます。いろいろな事柄が方向性として示されているところです。まず,直ちに取り組むべき事項については,これまでの議論を踏まえた内容を実装していくことが中心であろうかと思います。
  さらには,平成30年度以降,速やかに取り組むべき事項。これらについては,この夏の概算要求に密接に関わりを持ってくる可能性がある事項であろうかと思います。1個目の丸については,採択率向上の重点種目として基盤研究B・C,若手研究を位置づけて,その充実を図るという方向性。
  2個目の丸については,若手研究者による海外での新たな課題探索を支援するグローバルチャレンジファンド(仮称)の創設,これは国際共同研究加速基金の発展的見直しについて検討するということ。
  3個目の丸,現行の種目体系の下,研究上の挑戦を促進する観点から,応募機会の多様化・柔軟化を図ることに関連する記述,こういったことを検討していく必要があるということで,私どもはこれらを踏まえて本研究費部会でも御議論を深めていただきたいと考えているところです。
  さらに,その下段には中長期的な課題というのも掲げられています。
  スライド21です。こちらは科研費に対する研究者のニーズでございます。これは,昨年,前期の審議会で議論の材料にしていただきました,個人研究費等の実態に関するアンケートの中で問うた内容でございます。この中の設問では,科研費の採択率目標30%の達成を1番目に望む。その他,ボトムアップ型の研究費の予算増,さらには科研費の補助金研究種目の基金化を望む。これらの順にニーズが高いという結果であったということで御紹介しているところでございます。
  22枚目のスライド,こちらも前期の研究費部会で御議論いただいた内容でございます。応募件数が少しずつ増え続けている。それに対して,予算の増というのはなかなか困難な状況が続いている。これらの状況を踏まえていきますと,今後,採択率の推計というのはどのように変化していくかということを図示したものでございます。徐々に採択率が下がっていく傾向が考えられるということでございます。
  1枚めくっていただきまして,それらを踏まえて科研費に対する需要はどのように推計すべきかということを御議論いただいた内容でございます。これは,前期の研究費部会で御議論いただいた内容ですけれども,少なめに見積もった応募件数の伸び率というのが上のAの方,Bの方は近年の伸びがより顕著になったときをベースにしたものでございます。上だけを御参照いただいたとしても,応募件数が毎年1.3%ずつ伸びた場合に,採択率,現状維持とした場合にどれぐらいの予算が必要なのかということを推計したものでございます。さらに,ほかの指標で見ていくと,もっともっと予算が必要だという,単純試算ですけれども,こういったことも念頭に置きながら御議論を深めていただきたいと思います。
  次に,24枚目のスライドでございます。これは科研費の応募件数増加への対応についてということで,第8期,前期に学術分科会の研究費部会,審査部会,双方で御議論いただいた内容のまとめでございます。2のところをごらんいただきたいのですが,赤い文字,大学等の組織的な取組の具体的な在り方については,各機関の自主的な判断によるべきであるが,研究者の自由な発想を尊重する学術研究の本旨を踏まえた適切な対応を期待するというおまとめを頂いたところでございます。
  昨今の各大学における科研費の応募に対する考え方等について,科研費の審査そのものへの影響をも考慮した場合に,どのように捉えるべきなのかと幅広に御議論いただいた内容でございますけれども,第8期における考え方としては,こちらに示されたような内容で議論が取りあえず終結したということでございます。こういった内容についても,引き続き御議論いただく必要があろうかと考えているところでございます。
  ここから先が具体的な内容でございます。25枚目のスライド,若手研究Aの見直し。前期の研究費部会では,若手研究の新規募集,新規公募停止等々について御議論いただいたところですが,こうした取扱い,基盤研究の体系に取り込んでいくに当たってどのように考えるべきなのかというのは,この夏の概算要求に向けて御示唆を頂きたいところでございます。
  さらには,26枚目のスライド,若手研究者等の独立基盤形成支援の試行について。これは,この春に公募を開始するべく準備を進めているところでございますが,この試行の状況を踏まえた検討というのは,今期の審議会で更に議論を深めていただきたいと考えているところでございます。
  1枚おめくりいただいて,27枚目のスライドでございます。こちら,新学術領域研究の見直しに関することでございます。2個目の丸のところに,科研費審査部会で現状の制度の成果であるとか課題について問題提起いただいているところでございます。こうした内容を踏まえて,今後,本種目の見直しという議論を進めていただきたいと考えているところでございます。
  特別推進研究の見直しは次のスライドにございますけれども,こちらについても引き続き御検討いただく内容が残っているところです。こういうものについて見直しのポイントの2個目にございます,研究者の一世一代の挑戦を支援する,助成対象の新陳代謝を促進するということで,基本的には1回限りの受給可能にするというふうに改められているところですけれども,そうした状況を踏まえた御議論というのを更に深めていただこうと考えているところでございます。
  29枚目のスライドですけれども,こちらは重複制限の見直しに関することです。説明は割愛しますけれども,前期の研究費部会でも,本来,重複制限とは何なのかという本質に立ち返った御議論を頂いたところでございます。基本的には重複制限則というのは緩和していくべきだというのが総意でございましたけれども,しかしながら,応募件数増というものから出てくる審査の困難さということで現状のルールは決まっているわけですけれども,これも挑戦性を担保するためにどのような在り方が望ましいのかという御議論をしていただきたいと考えているところでございます。
  最後に,国際共同研究加速基金の概要というのが載っております。この上の箱,3個目の黒丸でございます。基礎科学力タスクフォースにおいても,このグローバルチャレンジファンドの創設を検討するという方向性が示されているところでございまして,国際共同研究強化の現状制度の検証,並びに見直し方策について御議論いただいてはどうかと考えているところでございます。
  説明,長くなりましたけれども,これが資料5-1に示したような柱,ないしは各論の検討いただきたい項目でございます。
  次に資料5-2でございます。科研費改革の推進体制ということで,こちらも御提案でございます。学術分科会の下に研究費部会と科学研究費補助金審査部会という2つの部会がございます。それぞれ諸表に沿って様々な審議事項,あるわけでございます。前期もそうでございましたが,この双方の調査審議には横断的な事項もかなり多いわけでございます。そうしたことで考えた場合に,それぞれの部会の下に改革のワーキング,作業部会というものを設けていただきまして,横断的な課題を中心に機動的に検討を進めていただいてはどうか。
  それぞれの部会が独立して審議を進めていただく方法もありますけれども,それらを更に横断的,かつ円滑に進めていただくために,作業部会,ワーキンググループというものを設置していただいてはどうかと考えたところでございます。
  資料5-3にございますのは,その具体的な提案でございます。実はこの3月に開催されました科学研究費補助金審査部会において,同様の提案をさせていただいたところ,この設置は必要ではないかという方向で御承認いただいたところでございます。今般改めて,本日,研究費部会においても同じ内容をお諮りさせていただくものでございます。双方の部会の下に科研費改革に関する作業部会というものを設置するという方向で御検討いただいてはどうかというものでございます。趣旨等々については,こちらの1,2,3に書いてある内容のとおりでございます。
  資料5-4でございます。仮にこの作業部会の設置をお認めいただいた暁にはということも含めて,でございますけれども,本日が研究費部会第1回でございます。しかしながら,いろいろな審議事項がございまして,7月頃までにこの作業部会で精力的に具体的課題に対する方向性の御示唆というものを御検討いただきたいと考えているところでございます。
  そうして集中的に御審議いただいた内容を踏まえ,7月に第2回の研究費部会を開催する前提でスケジュール感を考えてはどうかと考えております。7月に一旦御報告いただき,そこで一旦研究費部会としての御検討,軌道修正等を御指示いただきまして,更に検討を深め,8月の第3回の研究費部会で報告いただいた内容を基に,この夏,概算要求であるとか,あるいは来年度の公募の具体的内容に反映させる内容というのを審議決定いただいてはどうかということで考えているところでございます。
  具体的に審議いただきたい内容から,スケジュール感も含めまして一気に御提案申し上げるのは甚だ恐縮でございますけれども,こうした背景事情等も踏まえて御議論を賜りたいと思うところでございます。よろしくお願いいたします。
【西尾部会長】
  石田室長,ありがとうございました。今,説明がありましたように,本部会としても資料5-3のとおり,両部会の下に合同の作業部会を設ける方針について提案がありました。審議する案件等の重要性を考えた場合に,作業部会というのは非常に有効に機能するものと考えておりますけれども,何か問題等ございますでしょうか。
【山本委員】
  山本でございます。前回の昨年行われた挑戦のワーキングのときもそうだったのですけれども,やはり実施主体である学術振興会との連携は非常に重要で,幾らこちらでいろいろ議論しても空中戦になりますので,是非オブザーバー参加をしていただければと。よろしくお願いします。
【西尾部会長】
  今のこと,よろしいでしょうか。
【石田企画室長】
  ありがとうございます。今頂いた御意見も当然のことながら踏まえまして,私どもとしては,腹案としては日本学術振興会の科研費関係の検討に携わっていただいている先生にオブザーバー参加いただくということで,より有効な議論を深めていただきたいと考えております。
【西尾部会長】
  私としても,是非そうしていただけたらと思っております。
  それでは,作業部会を設けるということでよろしいでしょうか。
      (「異議なし」の声あり)
【西尾部会長】
  ありがとうございます。作業部会の委員については部会長が指名することとなっておりますので,当方で検討したいと思っております
  今お話がありましたように,例えば資料5-1のところで4つのひし形があるのですけれども,それらの内容を先ほどの作業部会等で深く審議いただき,その審議結果を受けてこの部会で議論し,最終的に来年度の概算要求に向かっていくということになります。ですから,例えば先ほど来提示されています採択率30%を何とか実現しようとしますと,現在の科研費が2,300億に約300億上乗せすることが必要になります。
  ということは,この4つのひし形の項目をベースにどういう戦いをしていくのかということをいろいろ審議していただくことになります。そういう意味で,来年度に向けての増額要求の要が4つの項目ですけれども,これらの4つの項目で十分なのか,あるいは,もっと別のことがあるのではないかということも含めまして,是非御意見を頂ければと思うのですけれども,いかがでしょうか。
  山本先生,どうですか。
【山本委員】
  4つとも全部大事な項目ですが,これだけを4か月か3か月ぐらいの期間であれもこれも全部丁寧にというのは,やはりかなり難しいでしょうと思います。むしろ,逆に,これは是非やってほしいと,重点的に検討する項目をピンポイントで絞っていただいた方が,あるいは絞った方がいいと思います。
  幾つかについては既に伴う対応等については,かなりいろいろな現場での案も作られていると思いますので,むしろ,そういうものよりは,新学術であるだとか,重複制限であるとか,本質的に関わる部分というのはやはりもう少し時間を取るようにされてはいかがでしょう。
【西尾部会長】
  非常に貴重な御意見でございます。焦点を絞ってということで,新学術領域であるとか,重複制限のことなどが重要なのではないかということで御意見を頂きました。
  ほかにどうでしょうか。
【鍋倉委員】
  この部会で議論すべきことや振興会等に依頼することを明確化することが必要です。 また,我が国の研究の現状について,日本以外の国の論文数や質の伸びと比較し,研究力の伸びが低下している結果になっている。 この10年間,日本以外の欧米やアジア等の多くの国において 研究力の評価に用いた指標が伸びている。これは,この10年間の日本の研究システム・環境自体の問題である可能性があり,この10年間我が国において変化した研究環境に加えて,他の国の研究環境・システムについて十分に調査を行い,長期的な視野に立った改革を行う必要があると思われる。
【西尾部会長】
  どうもありがとうございました。海外との比較,ベンチマーキングする中で,日本の科研費制度そのものに関して,新たな方向性も含めて,大局的な議論もきっちりしておくべきではないかということだと思います。
  甲斐先生,どうぞ。
【甲斐委員】
  ちょっと違う視点でお願いします。ここにあるひし形の項目は全部重要だと思いますし,山本委員の言うように,一つ一つ丁寧にやっていたのでは大変だろうから,重点を置いてという意見も賛成です。ただ,ここはワーキングができますので,その部分にはかなり深化した議論及び対応ができると思います。
  ほかの部会で議論できないこと,つまり研究費部会という名前の付いている本部会でしかできないと私が思っていることは,我が国における競争的資金支援の在り方を包括的に議論することです。それは,この部会でしかできないと思うのです。毎年この議論を出すと,局長がどうぞと言ってくださっているので発言させていただきます。この研究費部会は学術分科会の下にあるから,対象は科研費のみになります。でも,先ほどみたいに基盤経費が出てきて,ほかの競争的資金との兼ね合いを考慮せねばならないことがよくあり,結局は研究の競争力に全部関係してくるんですね。それなのに科研費だけしか議論できない。そうすると,何でもかんでも科研費の中で解決策を見つけるというおかしな議論になってきてしまいます。
  先ほどの若手の自立支援などは,「本来は大学が行うべきであるが」という枕言葉を必ずつけながら,でも,科研費で何とかしましょう,などという議論をこの部会でしなければいけない。これは本末転倒で,おかしいんですね。それは大学に投げるべきです。先ほどの基盤経費の強化とあるのも,若手支援の,最初の独立のときの基盤を作ることぐらいは,運営費交付金として別枠でとってくれたら良いことと考えられます。
  それでも,全て科研費内で,と方向生を議論しているから,科研費改革がゆがんだものになってきている。何でもかんでもになって,それでお金が少ないとか,採択件数がどうのとか,そういう苦しい議論を強いられているわけです。ですから,議論時間も限られているとは思うのですけれども,「我が国の競争的資金の支援の在り方」のような項目を一つだけ入れていただきたい。ここでしかできませんので。
  この部会で発言しても,駄目,つまり他の資金の改革には届かないとよく言われるのですが,それでも,ここに議事録として残しておくことは大事ではないかなと思うのです。どこかで使っていただく,研究費部会でこんなことも言っていましたというのを残しておく。我々は研究を支える資金全体について我々の考えを述べる場がここしかないので,ほかの競争的資金も含めて,可能であれば基盤的経費も含めて,全体の研究資金の在り方というのについて,大学の有識者と言われている人たちが議論できるような場としてここを使わせていただけないかと思います。
【西尾部会長】
  関局長,いかがですか。
【関研究振興局長】
  いろいろ関連する,また,非常に深く基本的な御議論かと思います。直ちにというのがなかなか難しいところもあるかもしれません。そういった議論をきちっと,この先を見据えてしていくことも重要かと思いますので,そこはまた御相談させていただければと思います。
【橋本委員】
  ちょっとよろしいですか。
【西尾部会長】
  どうぞ。
【橋本委員】
  関連してなのですけれども,今日の最初の話にあった基礎科学力強化というのがありますね。これの施策を見ると,コミュニケーション,科学コミュニケーションということが出ています。それもそうなのですけれども,科学研究費,これが一番基礎科学力,自由な発想による研究を振興する,応援するということで,ここをとにかくどんと増やしてしまうのが本当は一番分かりやすくていいだろうと思います。
  要するに,国はこの基礎科学力の強化を本当に考えているんだぞということです。やっていることをコミュニケーションで宣伝するよりは,本気が見えるようにする。その意味で,科研費が何をやっているかというのは非常に大事だと思います。それから,若い人が研究者になってからのことを今やっていますけれども,研究者になったらこうなるんだということが分かるというのも非常に大事だと思うのです。
  一度は研究者になることを考えてみたら,と言えるようなことが制度的にあると非常にいいので,基礎科学力関係の施策と連動する形で考えるというのも大事ではないかと思います。是非,そういうことも話ができればと。
【西尾部会長】
  どうもありがとうございました。そうしましたら,小川委員,それから,竹沢委員。少し短めにどうぞ。
【小川委員】
  それでは,短めに。ありがとうございます。この部会で話し合うべきことは,科研費の非常に詳しく御説明いただいたやり方というか,方式についてだということは分かったのですけれども,いろいろな種目の中で,どれも採択率と充足率とのせめぎ合いということは避けられない運営であります。
  限られたファンドの中で効果的な方策をとる必要があるとは思うのですが,ちょっとここの研究費部会の主眼ではないかもしれませんけれども,別なファンディングの例で,例えばクラウドファンディングの例などが最初の頃にちょっとお話があったんですけれども,何かそういうものも並行してやっていくということで,社会的なインパクトを強めたり,国民の関心を呼んだり,リテラシーを科学に対して高めるということにも貢献しますし,そのことは科研費にとっても絶対マイナスにはならないことです。今の採択率・充足率のせめぎ合いのところとはまた別な形での支援が発展すると思いますので,是非そういうようなことも並行して進めていけたらということを,私は思いました。以上です。
【西尾部会長】
  どうもありがとうございました。次に,竹沢先生。
【竹沢委員】
  では,簡潔に2点。先ほどの甲斐委員と橋本委員が御発言なさったこととも関係するのですけれども,1点目は,リサーチというか,研究者,大学の教員や,研究所のスタッフ等をサポートするリサーチ・アドミニストレーターのようなものの層,日本はそれが非常に薄い。先ほどの議論にありましたけれども,年々研究時間が少なくなっている中で,コンピューター相手にとか,いろいろなことを教員自身がしなければいけなかったり,入試も海外に比べて非常に負担が多かったりということで,このリサーチと事務の間に立つ人たちの雇用ということを,それぞれの大学だけではなくて,もう少し国全体として考えるということが生産性のアップになるのではないかと思います。
  それからもう一つ,先ほど国際共同研究加速基金の話と,それから基礎科学力に関する御発言がありました。これも是非議事録に残しておいていただきたいのですけれども,やはり人文基礎科学というのも非常に重要です。これについては,以前の文科省のステートメントが出されたときに諸外国からメールを頂きました。今の文明国で人文科学を低下させるとは,削減するとは何事かというメールが,本当にいろいろなところから来たのです。
  一部誤解があったにせよ,人文科学がすぐに成果の見えないものでも非常に重要であるということは,議事録に残しておいていただきたいと思います。以上です。
【西尾部会長】
  貴重な御指摘,ありがとうございました。栗原先生,どうぞ。
【栗原委員】
  1つは,非常に細かいことなのですけれども,基礎科学力タスクフォースの報告書から科研費の方にも,平成30年以降には取り込むべき意向で,国際共同研究加速基金の見直しのものに,このグローバルチャレンジファンドの目的として,海外での新たな課題探索を支援すると書いてあるのですけれども,研究課題は外に探しにいくものではなく,自分で考え出すものだと思うので,これはミスリーディングだと思います。
  この裏にあること,状態,状況は非常によく分かります。新しい研究動向を捉えるというのは非常に大事ですし,場合によれば,幅広い経験というのは新しい研究課題を生み出すことにつながります。また,場合によると,外国に行って日本で学べないテクニックを学ぶということも具体的にはあると思うので,そういうことがこの言葉に集約されてしまっているのだと思います。けれども,これが何かすると,課題はどこかに見つけに行くんだとなるのは,ちょっと逆行すると思うので,意見を申し上げさせていただきたいと思います。
  それから,もう一点,基礎科学力の向上について,大変大部なものをまとめていただいたことをお礼申し上げたいです。これ,具体的にやることというのが幅広く提案されているのですが,1つは,やっぱり科研費のようなものが大事だということを強く言っていくことは非常に大事だと思います。
  あと,もう一つですけれども,知を尊重してくれる社会を創るためにはどうしたらいいのかというのを,やはりできれば高校前の教育の段階からもうちょっと何とかならないのかなと,いつでも思っております。サイエンスもありますし,人文もありますけれども,私は高校ですごく早い段階に理系,文系を分けて,受験を目標に教育するということにも非常に抵抗があります。そういうのも含めて,何か社会全体に知を尊重する風潮をもう少し,今日はちょっと幅広い意見を言わせていただいてもいいのであれば,是非プロモーションしていくようには,やはり教育だと思うので,何かそういうところにつないでいただければと思います。
【西尾部会長】
  栗原先生,本当に貴重な御意見,どうもありがとうございました。大事なことだと思います。
  まだまだ議論していかなければならない状況ではございますけれども,時間がもう来ております。そこで,甲斐委員がおっしゃった件に関しましては,この作業部会が科研費のみならず基盤経費も含めた研究費全体についてどこまで議論の対象としていくのかについて,甲斐先生の御意向を踏まえつつ,是非,事務局の方で御検討いただきたくお願いします。
  今後,作業部会が非常に大きな役割を果たしていくことになりますけれども,夏頃までに一定の議論をまとめていただきまして,その結果を部会に報告いただくということで今後進めたいと思っております。タイミング的には来年度の概算要求に有効に活(い)かせるように配慮したく考えております。
  また,先ほど来,山本先生がおっしゃったことは非常に大事だと思いますので,日本学術振興会の方々にも作業部会での審議に関しまして何とぞよろしくお願いします。

(5)その他

【西尾部会長】
  最後になりましたが,科研費改革説明会の実施方針案について,事務局より簡単に御説明いただけませんでしょうか。
【石田企画室長】
  資料6を用意させていただいております。簡単に申し上げます。科研費改革説明会というものを実施したいと思っております。趣旨・目的のところにございますように,科研費改革の趣旨・目的等の全体像でありますとか,当面の審査システム,研究種目の見直しの概要を説明するとともに,来年度の公募に向けた適切な対応を促すということ。さらには,科研費改革への学会をはじめとする各界の理解・協力を増進するということを狙いといたしまして,このような説明会を開催したいと思っております。
  昨年の審査システム改革に関する説明は東京地区1か所だけでしたけれども,今回はいろいろな物理的な制約もありまして,難しいところではありますけれども,6月に関東・関西の2か所で開催したいと考えているところでございます。まだ案の段階でございまして,検討途上でございますけれども,こういった会というものを開きたいと考えているということで,御理解賜りたいと思います。以上でございます。
【西尾部会長】
  それでは,今の方針でよろしいですね。
  さらに,文部科学省と日本学術振興会におきましては,科研費改革の着実な実行のために現場の研究者や大学事務局への周知につきましても併せて進めていただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。
  最後に,事務局より連絡事項をお願いいたします。
【石田企画室長】
  手短に申し上げます。次回の研究費部会でございますけれども,7月頃を考えております。改めて日程調整をさせていただきたいと考えております。
【西尾部会長】
  それでは,本日は貴重な御意見,本当にありがとうございました。今日の会議はこれにて終了いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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