資料2-6 「海外学術調査」の発展的見直しの意義・必要性(案)

1.現行制度の概要

〇 「海外学術調査」は、「基盤研究(A・B)」の「審査区分」として設けられているものであり、国外の特定地域におけるフィールド調査等を伴う研究を別枠で支援する仕組みとなっている。
(参考:「基盤研究(B)」には、「一般」「特設分野」「海外学術調査」の3つの「審査区分」が存在)

<応募・採択状況(平成28年度)>


基盤研究(A)

基盤研究(B)

応募件数

223件

1,038件

採択件数(採択率)

46件(21%)

203件(20%)

平均配分額(初年度分)

936万円

428万円

<参考>制度の沿革
昭和38年「海外学術研究」創設(※当時、外国旅費が使用可能な唯一の種目)
平成元年「国際学術研究」に改組
平成11年「国際学術研究」廃止(※基盤研究種目における外国旅費の使用可能化)
→ 海外でのフィールド調査に関する急激な変化への配慮の必要性から「海外学術調査」を新設

2.見直しの方向性

(学術の動向、今日的課題を踏まえた対応の必要性)

〇 学術の動向に照らせば、今日、国際的な共同研究、ネットワーク形成は全分野を通じた普遍的な重要性を持ち、日本の科学技術・学術政策上の重要課題の一つ。「海外学術調査」の成果(例:国際共著論文割合は3割程度)を踏まえるならば、こうした国際化の推進に特化した目的の制度の充実が強く望まれる。

(現行制度の特異性)

〇 一方、現行制度は、研究対象・方法を「フィールド調査、観測又は資料収集」に限定しており、全分野の振興を趣旨とする科研費において特異な制度となっている(応募件数は1,300件程度)。前述の学術の動向・課題を踏まえるならば、研究対象・方法の一般化を図り、競争的環境の下でより有効な支援を行うことが本来の在り方である(「フィールド調査、観測又は資料収集」を行う研究は当然に含まれる)。

(補助金制度の制約)

〇 現行制度は、補助金によるため、海外との会計年度の違い等が支障となりうる。国際化を推進する他の主要制度(「国際共同研究加速基金」)との均衡上も、基金による仕組みに改めることが適当である。

(長期派遣の補完の必要性)

〇 現在、「国際共同研究加速基金」においては、国際共同研究の基盤を強化する観点から、「国際共同研究強化」制度があるが、これは、半年~1年程度という長期の派遣を重点支援するものである。こうした派遣形態に限らず、より多様かつ柔軟な海外活動を認める仕組みを充実させることにより、海外研究者との連携強化を加速させ、実践する層の厚みを増すことが期待される。

(若手育成、成果創出・発信の促進)

〇 見直しに伴い、若手研究者層の参画を義務化するといった仕組みを入れることにより、国際共同研究の基盤を中長期的に維持・発展させることが可能となる。また、研究成果の国際発信を求めることにより、海外研究者との連携をより進めていくことが期待される。こうした見直しを行うことにより、他の研究種目・制度と相まって、現下の政策課題への対応がいっそう効果的に推進される。


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