第9期学術情報委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成29年10月18日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 電子化の進展を踏まえた学術情報流通基盤の整備と大学図書館機能の強化等について
  2. その他

4.出席者

委員

喜連川主査、引原主査代理、赤木委員、安藤委員、家委員、逸村委員、井上委員、岡部委員、五味委員、竹内委員、辻委員、永原委員、美馬委員

文部科学省

(科学官)相澤科学官
(学術調査官)小山学術調査官
(事務局)関研究振興局長、板倉大臣官房審議官(研究振興局担当)、原参事官(情報担当)、丸山学術基盤整備室長、玉井学術基盤整備室参事官補佐

オブザーバー

安達国立情報学研究所副所長

5.議事録

【喜連川主査】    それでは、定刻になりましたので、ただいまから第5回の学術情報委員会を開催したく存じます。
  本日の委員会は、お手元に端末がございますように、ペーパーレスにトライするということであります。
  さて、少し間が空いてしまいましたが、前々回と前回に関しましては、オープンサイエンスを中心的な議題として取り上げさせていただきまして、かなり深い議論をさせていただけたのではないかと思います。ここで今回はトピックスを大学図書館に移しまして、以前、この委員会の中でもとりわけ竹内先生から御示唆頂いた国立大学図書館協会ビジョンの2020につきまして、この後、御紹介を頂いた後、大学図書館機能の強化・高度化の観点から意見交換をさせていただければと思います。本日も前回に引き続き、国立情報学研究所(NII)の安達副所長にオブザーバーとして出席頂いております。
  それでは初めに、事務局から配付資料の確認と傍聴者の状況を御報告お願いいたします。
【玉井学術基盤整備室参事官補佐】    今ほど主査からも御発言ございましたように、本日の委員会はペーパーレスで開催をしたいと考えております。お席に資料閲覧用の端末を御用意しておりますので、こちらで資料の御確認をお願いいたします。
  なお、この端末の電源をオフにしてしまいますと端末内のファイルが消去されてしまいますので、開催中は点灯のままでお願いしたいと思います。
  また、操作については、お手元に操作方法の案内を御用意しておりますけれども、御不明点等ありましたら、係の者にお申し出いただければと思います。
  また、機能にございますマーカーメモ等については、この端末の方に残していただけましたら、こちらで保存した上で、メールで資料とともにお送りさせていただきます。
  また、端末の不具合等ございましたら、交換いたしますので、事務局までお声掛けください。
  そうしましたら、その端末の方の議事次第というところ、上の方にタブがございまして、次第、資料1、資料2と続いておりますけれども、その議事次第の下の方に配付資料ということで資料1から5ということで御用意しております。タブの方にありますように、資料1から5が連なっておれば大丈夫ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
  また、本日の登録人数については、26名の方の傍聴登録を頂いております。その傍聴席については閲覧用端末の貸出しはないんですけれども、どうしてもという方には、数部、紙の資料等御用意ありますので、お申し出いただければと思います。
  以上です。
【喜連川主査】    どうもありがとうございます。
  それでは、審議に入ります前に、事務局から御用意頂いた資料について紹介頂きたいと思います。
【丸山学術基盤整備室長】    それでは、事務局で御用意いたしました資料、順次御説明させていただきたいと思います。
  まず、資料1でございます。お開きいただければと思います。こちら、一番頭にも書いてございますように、前回第4回における主な意見をまとめたものでございます。冒頭、主査の方から御発言ございましたけれども、本日は大学図書館のトピックを中心に御議論を頂く予定でございますので、詳細な説明は次回以降にさせていただきますけれども、ポイントのみ御紹介したいと思います。
  最初の1.「オープンサイエンスの検討に向けた論点」というところでございますが、一つ目の丸に、分野別の特色あるいは特徴をマトリックスで整理し、指標のようなものは示せるとよいのではないかといったような御意見。
  それから、その次の二つ目の丸ですけれども、データをオープンにするのは研究者にとって非常に煩わしくて、ポジティブなインセンティブを付加するのか、あるいはネガティブなインセンティブを付するのかと、その辺りの基本的な合意が必要ではないかと。仮にネガティブなものを導入するのであれば、相当な説得力を要するのではないかといった御意見がございました。
  三つ飛ばしまして、オープンアクセスやオープンサイエンスのイメージは個人によって異なると。その先に見えるイメージがある程度共有できていないと議論が散発的になるのではないかと。幾つか共有できるイメージを創ると議論が前進するように思うといったような御意見がございました。
  それから、次ページの2ページ目をお開きいただきたいと思います。
  2ページ目を開いていただきまして、上から三つ目ですが、オープンデータに対応しなかった場合、あるいはこの流れに乗り遅れた場合に、具体的にどのようなリスクが考えられるのかが分かりにくいと。議論がなかなか進まない一つのファクターではないかといったような御意見がございました。
  それから、二つ下に、イギリスがキーワードで、イギリスにおいてオープンサイエンスとは何なのかという議論が10年前に行われていたということで、現在ではそのデータを集めていくという段階に入っていると。日本では、議論と施策形成の両方を同時に進める必要があり、併せて先行しているところとの連携等、データを守っていくのかなどを議論する必要があるといったような御意見がございました。
  それから、少し下へ飛ばせてもらいまして、一番下に2.「オープンサイエンスの推進にかかるポイント」というところがございます。この頭のところで、研究者に対する新しいエコサイクル、これをどう生み出すのかが重要で、そのためにはICT技術者と各研究ドメインの科学者との対話が重要な観点になってくると思うという御意見がございました。
  それから、3ページに飛んでいただきまして、3ページの一番頭でございますけれども、ほかの分野で必ずしも同様の方法論が通じるとも限らず、混沌(こんとん)としている中で統一された結論を出すのは相当難しいと思うが、一歩一歩、領域バイ領域で挑戦をしていくということをエンカレッジするようなメッセージが重要ではないかと。
  それから、その下でございますけれども、啓蒙(けいもう)はともかく、どのようなベネフィットがもたらされるのかというところが多分に大きく、まずは動機付けをしないと始まらないのではないかという御意見。
  それから、その下に、オープンサイエンスが進んでいる研究領域では研究者が自発的に取り組むなど陰の立て役者が存在する一方で、そのような人はデータ管理やソフトウエア開発はすれども、なかなか論文が書けないということで評価がなかなかされていないと。オープンサイエンスに寄与している人は日本でも確実に存在しているので、まずはそういう人を認識して、認めるということが、キャリアパスになるのではないかというふうな御意見がございました。
  それから最後、今のところからですと四つ目の丸ですけれども、サイエンスは、オリジナリティーやノベリティーのみで進展しているのではなくて、その二番手で様々なデータを出している、いわゆるフォロワーの人たちも重要であり、実用化に向けてはそれが非常に大きな資産になってくるという御意見がございました。
  それから、4ページ目に3.「研究分野における特色、課題等」、それから、その次に4.「海外の取組、海外との関係等」という項目がございますけれども、こちらについては本日は御紹介の省略をさせていただきたいと思います。
  それで、ちょっと関連しまして、資料番号が飛んで大変申し訳ないんですけれども、資料3番をお開きいただきたいと思います。
  それから、ちょっと電子化が間に合わなくて電子媒体ではなく紙で机上に置かせていただきましたが、先月の9月27日から28日にかけましてイタリアのトリノにおいてG7の科学大臣会合がございました。日本からは原山優子総合科学技術・イノベーション会議常勤議員が代理として出席をしてございます。この会議の概要が紹介されておりますので、御説明を少しさせていただきたいと思います。
  この会合では、このペーパーにもございますように、次世代産業革命によって社会・経済が大きく変化する中での科学技術・イノベーションの役割などについて、研究とイノベーションのための人材育成、あるいは未来の技術とイノベーションを推進するための研究の役割、また、その資金メカニズム、大規模研究施設の国際的共同利用の促進状況などのテーマによって議論がなされております。
  会合では特に、三つ目の丸にありますけれども、官民資源を組み合わせた研究への財政支援の在り方について検討するワーキンググループの新設が合意されたほか、オープンサイエンスに関しましては、このワーキンググループが日本と欧州の共同が事務局を務める形で動いてまいりましたけれども、このオープンな研究エコシステムに資するインセンティブあるいは研究データの最適利用のためのインフラの検討に注力して活動を継続するということで、次回の大臣会合において、各国の取組や優良事例について報告することなどが合意されたと聞いてございます。
  資料としては、今、パソコンの画面にございます資料3がコミュニケでございます。
  なお、Annexとして4のみ付けてございますけれども、オープンサイエンスのワーキンググループのサマリーレポートを一緒に添付してございますので、ごらんいただければと思っております。
  それから、矢継ぎ早で申し訳ございませんけれども、本日の大学図書館関連の御議論に資するために、資料2といたしまして、これまでのこの委員会における主な意見で、大学図書館機能の強化関連部分について抜粋をしております。こちらを少し御紹介したいと思います。
  まず一つ目のポツで、「大学図書館機能の強化」という観点でございますが、大学図書館のベースラインというような視点で御議論ございました。
  一つ目の丸のところにありますように、大学図書館の次のステップをどう考えるのかと。大学図書館がベースラインとして何を維持しつつ、新たにどのような役割を果たしていくべきかが重要で、その際、オープンサイエンスの動きにどう取り組んでいくかについて明確にしていくべきという御意見がございました。
  一つ飛ばしていただきまして、三つ目の丸でございますけれども、大学図書館サービスの再定義や役割が激変し、新たな役割が求められている部分の議論を重点的に行うべきではないかというような御意見。
  それから、また二つ飛ばして、大学図書館も分野ごとに業務が大きく異なっている点には留意する必要があると。医学系ではビブリオメトリクスを活用した論文引用の傾向調査などを行う一方で、人文学系では伝統的な古典籍整理の作業なども行われているということであります。
  その下でございますけれども、自然科学系を中心に、雑誌や論文の検索はネットワークを通じて行えるようになるなど、大学図書館の物理的な意味合いが変化しているという御意見がございました。
  それから最後の丸ですけれども、大学図書館に期待される研究支援、教育支援、学術資料の継続的な維持管理という三つの大きな役割について、どの部分にフォーカスしていくべきか検討が必要であるという御意見がございました。
  それから、その下に括弧でパラグラフを分けてございますけれども、資料の利用把握、分析といったような観点では、限られた資料費の効果的・効率的な使用という観点から、図書資料の利用把握などの取組が重要であると。
  その下の丸ですけれども、ジャーナルのうち、どういうものが活用されているか、どの雑誌に誰が投稿し、誰がどれだけ引用しているかなどを分析・評価し、どこに資源を集中させるべきか、研究の多様性確保のためにどういう雑誌が必要かというようなことを把握、共有すべきであるという御意見がございました。
  それから、研究支援の機能あるいはリサーチコモンズといったような観点からは、最初の丸でございますけれども、大学図書館における教育支援の方向感は一応定まった感があり、今後は研究に大学図書館がどう関わるべきなのかをはっきりさせるべきであるという御意見がございました。
  それから、ページを進めていただきまして2ページ目でございますが、よろしいでしょうか。二つ丸を飛ばして三つ目の丸でございますけれども、リサーチコモンズを検討する流れは、総論はともかく、個々の大学図書館の具体的な取組という観点からは、各大学の規模と構成分野に関係してくるのではないかと。
  それから、その次の丸ですけれども、リサーチコモンズのベースラインについて、大学の特性に応じた方策、戦略などをタイプ別に示すことができれば、大学図書館の取り組むべき目標が見えやすくなると思うというような御意見。
  それから、その下の丸でございますけれども、イノベーションという観点では、違う分野の研究者同士の出会いが重要で、大学図書館がキュレーション的な役割を果たしていくことも重要ではないかという御意見がございました。
  それから、一つ飛ばしまして、研究開発のためには情報基盤の整備が必要であり、データベースやリポジトリ構築の先には、研究者にサービスを提供するプラットフォームを研究者と一緒に作っていくという形が考えられるという御意見もございました。
  それから、2.としてその下に「機関リポジトリの機能強化」という項目を付けさせていただいております。
  まず、機関リポジトリの効果という観点では、機関リポジトリの効果として、英語で作成されたコンテンツは、紙であれば見向きもされないようなものでも、リポジトリに登載されると、サーチエンジンを通じて世界中からアクセスがあるといったような御意見。
  それから、一つ飛ばしまして、括弧が変わりますけれども、機関リポジトリの活用という観点では、二つ目の丸、機関リポジトリの利活用の方向性を大学の規模や分野構成を踏まえた幾つかの類型として示していくことが考えられるという御意見。
  それから、この2ページ目の最後の丸でございますけれども、機関リポジトリは、データセットが増えたとしても活用されなければ手間が掛かるばかりで意味がなく、これらを評価するための基準や指標の設定が重要ではないかという御意見。
  それから、その次の丸でございますけれども、大学の知的資産を機関リポジトリに収集することのみならず、出口のメトリクスをどうするのかというところも非常に重要で、大学ごとの方策はもとより、我が国としてどういう方向で進めばよいのかについてのフレームワークを示すべきという御意見がございました。
  それから、機関ではなくて、今度は分野別リポジトリという観点の議論もございました。
  一つ目のところに、リポジトリは、機関という枠組みにおいて進歩してきているが、分野ごとの特性や強みなどにも考慮した取組を検討すべきではないかと。
  それから、その下の丸でございますが、分野のニーズを踏まえた分野リポジトリを具現化するには、学協会や大学、大学図書館が協働していくことが重要で、その先には異なる分野同士のシナジー効果も期待されるのではないかと。
  それから最後になりますけれども、括弧で情報発信機能というところがございます。
  二つ目の丸でございますけれども、大学における広報関係業務は脆弱(ぜいじゃく)な体制にあり、研究発信能力を大学図書館の機能として定義付けられれば、大学図書館が大きく変わっていくきっかけになるのではないかという御意見。
  それから、その次でございますが、大学図書館のミッションの比重を学術成果の閲覧支援から機関リポジトリを介した研究情報発信に移していくということも論点の一つではないかと。
  それから、その一つ下でございますけれども、大学図書館が、知の創出や共有を行う側にとどまらず、発信する側にあるというビジョンを持つことは大変重要な視点であるということ。
  それから、ちょっと観点が変わりますけれども、一つ飛ばしまして、情報発信に関連して、研究者識別子であるORCIDの活用により、大学間異動や姓の変更などに関わらず研究者の検索が可能となるなど、有用性が高まるのではないか。さらに、機関内の研究者同士のつながりや研究の近接性、他機関の研究者との関係性などの分析も可能となるという御意見がございました。
  ごくごく簡単ではございますけれども、これまでの1回目から4回目の議論の中で出ました大学図書館関連の意見を少し抜粋して御紹介をさせていただきました。
  事務局からの御説明は以上でございます。
【喜連川主査】    大変ありがとうございました。
  それでは、これから国立大学図書館協会ビジョン2020について御紹介を協会の副会長もお務めになっています引原委員に御説明頂きまして、その後は意見交換を行いたいと思います。
  それでは、引原先生、よろしくお願いいたします。
【引原主査代理】    今、御紹介頂きました引原でございますけれども、最初に申し上げたいのは、本日、国立大学図書館協会の会長であります東京大学附属図書館長の久留島先生の御都合が悪くて、私が代理ということで御説明することになります。協会の御指示でございますので、丁寧にそのまま説明したいと思うのですけど、私のことですから言葉が荒れるかもしれません。そのときはお許しいただければと思います。よろしくお願いします。
  まず、表紙のページのビジョン2020でございますが、2020というのは2020年のことで、これは、2020年までに達成するという目標年度の意味ではなく、各大学が第4期の中期目標・中期計画の策定に入る時期に同期させて、戦略を見直すための資料を提供するということを意図しております。ですので、この2020というタイミングというのは非常に重要なものだと認識しております。
  ページを繰っていただき、国立大学図書館協会とはそこに書いてあるとおり国立大学及び共同利用機関も含めたものに放送大学を加えたものの附属図書館の組織でございます。以後、国立大学図書館協会=国大図協という呼び方をするかもしれませんので、よろしくお願いします。
  設置の目的は相互利用ということが主体になるわけですけれども、国立大学の図書館の連携と協力によって図書館機能を向上していきたいということが協会としての大きな目標でございます。今まで国立大学図書館協会は学術情報流通の発展にかなり寄与してきております。ですので、この国立大学図書館協会というのが単なる集まりの団体ではなく、各国立大学の図書館を通じた学術情報の流通への貢献は、多大なものだとこれまで評価されております。
  事業は、そこに書いてある1番から4番でございます。これらの事業は、もちろん文部科学省様、それからNII等の御指導を受けながらやっているということも申し上げないといけないことだと思います。
  協会の組織はその次のページにございます。組織の構成は特に大きな問題ではないと思いますが、東ブロックと西ブロックを置きまして、各地区に十幾つ程度の大学図書館で連携をしながら、まず地域の連携を深め、それから西ブロック、東ブロック、そして全国という積み上げの形をとっております。
  次のページを見ていただきますと、これはロゴマークです。これは、せっかく図書館協会ビジョンを作るので、何かマークを作って打って出ましょうということだったかと思います。これは今年度の6月の総会で決められたマークでございます。
  これはさて置きまして、まず、ビジョン策定の背景でございます。先ほど申し上げましたが、国立大学の図書館、それから国立大学研究所も含めた図書館ですけれども、学術審議会の答申に従って――1980年の答申がございますけれども、「今後における学術情報システムの在り方」という指針に従って発展してきたわけです。ところが国立大学の法人化後に図書館の状況が一変しました。特に、これまで答申に従って全体として動いてきた集団であった図書館群というのか、大学と一緒に動いてきた図書館なんですけれども、それが法人化後、個々の大学のビジョンあるいは個々の大学の方針に従ってばらばらの状態になってしまいました。このため、法人化後更に、国立大学が、次の展開に持っていくためにはどうあるべきかというのがかなり難しい状況になってきたということが背景にございます。それには、情報系を含めた技術とか、それから制度の問題も大きく関わってきております。これは丁寧に言えばそうなんですけれども、はっきり言って、国立大学の図書館が護送船団で動けなくなったということだと思っていただければいいかと思います。そのためこの変化に応じてどういうふうに動いたらいいかということだったんです。図書館自身が、図書館を造るというハード的な施設への要求から、転換のためにソフトへの展開、システム・コンテンツを含めたソフトへの展開にまだ踏み切れない状況になってしまいました。そのはざまのところでどうしたらいいか分からなくて逡巡(しゅんじゅん)してしまっているというのが現状だったと思います。そこに、この委員会でも審議されておりますSINET等のインフラが整備されてきた中で、今後どういうふうにそこに載せていくかという点が課題になっていたということが背景にございます。
  そのためには、大学図書館、大学だけじゃなくて大学図書館群なんですけれども、その組織が今のままでいいのか、あるいは多層的な努力をして、更に横串を引いていくというような組織の改革というのも必要になるのか、ということがあるのですが、そこまではまだ踏み込めないので、そのためには何をしていくかということをビジョンとしてまとめていくということであったかと思います。
  次のページをごらんいただきますと経緯がございます。2015年の11月にビジョン策定への着手をしまして、2016年6月に総会において議論の後、採択されております。
  基本理念は次のページにまとめておりまして、ここはもう書いてあるとおりですが、読ませていただきます。「大学図書館は、今日の社会における知識基盤として、記録媒体の如何(いかん)を問わず、知識、情報、データへの障壁なきアクセスを可能にし、それらを活用し、新たな知識、情報、データの生産を促す環境を提供することによって、大学における教育研究の進展とともに社会における知の共有や創出の実現に貢献する」とあります。これは別に国立大学に限ったことではなくて、当然ながら図書館全体の話でございます。当然、国立大学図書館も、図書館という組織、その世界の一部分集合にすぎませんので、これは図書館としての理念を書いていると御理解頂ければと思います。
  これを国立大学として今後どう実現していくかというのが次のページにございます。三つの重点領域と、それから戦略目標を設定しております。国立大学図書館協会が、各大学がこの三つの戦略に対して、他大学がやっていることをそのまま移してくるのではなくて、各大学はその特色に応じて自分たちがやれることを前に出していくと、そういうことをお願いすると言う意味です。例えば、先ほどのこれまでのまとめにもございましたけれども、ラーニングコモンズというのが行き渡りました、という話がございました。他の大学がラーニングコモンズを導入するとうまくいったという例で、ほかが導入していくと行き渡るわけです。あまねく行き渡るのはいいんですが、各大学には特色があるわけで、それが行き渡ることが果たしていいかどうかというのはやっぱり別の問題であります。ですから、特色を生かした達成ということをこの三つの領域でそれぞれがやってくださいというのが考え方になっております。2020年というのは先ほど申し上げた年度でございます。
  三つの領域というのはその次のページにございまして、知の共有、知の創出、新しい人材、この三つを設定してございます。この三つですから、各大学は、得意な分野といっても、全部得意ですと言われたらそれをやればいいわけですけれども、やはり今は人的資源もかなり下がってきておりますので、そういう意味では、全ての大学を同じようなやり方でこの三つを運営していくというのは非常に難しいことだというのは容易に想像されます。
  まず、細かい話になりますけれど、次の知の共有のところから入りたいと思います。蔵書を超えた知識や情報の共有って、これはもう今では当たり前のことのように思われます。それを進めないといけないということになります。そのために方策として何をするかということなんですが、この背景には当然ながら、御存じのように電子ジャーナルの問題というのはこの中には含まれていますけれども、単に電子ジャーナルだけの問題ではなくて、リポジトリ、その他のインフラを使ってどのように共有していったらいいかというのを更に先を見越してやっていくための検討をしていただきたいというものでございます。
  次に、これだけ見るとよく分からないので、次の目標を見ていただいたらいいかと思います。目標1として、「教育研究成果の発信あるいはオープン化と保存」というものを目標に置いております。まず一つ目のチェックが入っていますけれども、これはオープンアクセスの普及を狙うということでございます。その次の長期的な保存というのは、学術情報のアーカイブをどうするかというのを知の共有として打って出る、方向性を決めるというものでございます。
  次のページの目標2は、出版された資料の整備と利用ということでございますが、これは、先ほど言ってしまいましたけど、電子ジャーナル、電子ブックの問題、それからリソースの問題を適切に整備するということと、それから、長期的な利用を可能にするためにバックナンバー等をそろえていくというのをやっぱり緊急のためにはやっていかないといけないということでやるのだと。ただ、これは各大学の図書館がやるわけではなくて、ある大学の図書館はここの分野が強いというのであれば、それが全体に提供するような形というのをとらなければ、これはとてもじゃないですけど、日本全体としてやっていけないわけです。
  次に目標3でございますけれども、これは知識や情報の発見可能性の向上でございます。これはディスカバリーシステムというような言葉がございますが、いろいろなデータベースとかリポジトリに入れられたデータを基に、次のステップを踏めるような発見的なシステム、データマイニングも含めて、そういうシステムの構築というのが重要になるということでございます。
  これが重点領域1の内容でございますが、これでは具体的にどうするんだという話になります。こんな抽象的な言葉だけ並べても各大学の図書館は動けません。そこで次のページに京都大学の事例として示させていただいております。これが必ずしも全てをやっているわけではないんですが、ほかの大学のことを言いますと支障がありますので、京都大学のことであれば言っても怒られないだろうと思いますので、ここに書かせていただいております。
  まず、オープンアクセス推進事業というのがございまして、これ、2016年から進めております。オープンアクセスポリシーを出してそれで終わりではなく、その次のステップとして、オープンアクセスポリシーを始まりとして次の戦略をどう打つかということを考えて事業を進めているわけです。学内的にはオープンアクセスの方針説明と。要するに、若い先生方にオープンアクセスとは何ぞや、というところからきちんと説明しないといけない。年齢のいかれた研究者の方々は研究費もたくさん持たれていますので、ゴールドオープンアクセスというのを全然気になさらないわけですけれども、若い先生方は経費がないわけです。そういう中でオープンアクセスにしていくということはやはり普及させていかないといけなくて、学生、大学院生のレベルから普及させて、今、若い研究者まで説明を受けるというふうになっています。ですから、うちの大学、京都大学の場合、若い先生方は、学位論文は当たり前ですけれども、自分の論文のオープンアクセスをグリーンでやっていくというのが常識的になりつつあります。それから、そのオープンアクセスのツールとしては、機関リポジトリの「KURENAI」を使っています。もう一つは、理系の場合は割とリポジトリで済ませてしまうケースが多いんですが、人社系の方々は、学術情報、学位論文を含めて余りオープンにされたがりません。それは、学位論文にしてみると、その後、本を出版したいとか、あるいは長い間掛けて蓄積しているデータというものがありますから、途中だけぽっと出していくだけでは駄目なわけです。ですから、人社系の場合は別の考え方が必要だろうと思いまして、現在は人社系の支援のために資料の電子化と国際基準IIIF(トリプル・アイ・エフ)によるデータの発信という方向に京都大学の図書館機構としては動いております。例えば、今までほとんど見ることができなかった医学史関係の資料で富士川文庫というのがありますけれども、それをオープンにすることによって――これは大学の資金と国文学研究資料館と両方の資金で進めているものですけれども、そういう資料をオープンにすることによって、医学関係の資料の研究者に提供して、人社系との融合の分野で展開を図るということを進めています。あと、朝鮮古文献の資料ですが、これは高麗大学と協力しながらやっておりまして、日本に残って――東京大学も幾つかありましたし、慶應義塾大学にもたしかあったのではないかと思うんですけれども、高麗大学との協力の下で文献を電子化して公開していくということをやっております。
  2番目としては、基盤的電子ジャーナルの選定活動ですが、これは前から申し上げていますけれども、電子ジャーナル、例えばエルゼビアですと、どれだけこのパッケージの中のジャーナルが使われているかどうかということを、データをもって把握するという作業をしております。二千数百タイトルある中で京都大学としてどれだけ使われているか、要するに引用されている論文がどれだけどこに出ているかを全部把握するような作業をしておりまして、本当にうちの大学として必要なものはどうかということが分かります。これは要するに、要らないジャーナルを支えるということが今後はできないであろうということも想定して、選定作業というのを進めているという意味です。要するに、そこで浮いてきたお金をほかに提供することによって、ほかのデータをきちんとサポートしていくというための作業でございます。
  あとは、研究データの保存・発信機能を持つ新図書館の設計です。これは桂キャンパスというキャンパスがございまして、これにエリア連携図書館を今作っております。学内の全図書館の機能の見直しを含めて重点・重複機能を整理しながら、発信機能を持った図書館を作るという方向で進めております。
  これが重点戦略1の例だと思っていただければと思います。
  2番目でございますが、知の創出でございますが、これは新たな知を紡ぐ場の提供ということで、これまでやはり箱物主義ということで、箱として図書館を造ればコミュニケーションの場ができるという、そういう考え方であったんですけれども、これからは、旧来の箱、館の壁を超えてその場を拡張するというものです。バーチャルな世界まで広げていこうと、仮想空間まで広げていこうということを知の創出のテーマにしております。
  これの目標は次にございまして、その場の拡大・提供なんですけれども、コミュニケーションの場を提供するというのは、確かにラーニングコモンズ、それからリサーチコモンズ、さっき言葉がありましたが、それで代表されると思います。ラーニングコモンズというのは、学生と教員の協業というか、どちらかというと初学者教育用の場であったと思います。それに対してリサーチコモンズというのは、研究者と教員というのか、研究者同士あるいは研究者と教員がリサーチの場を作るというものになるかと思います。更にその先といいますと、スカラリーコモンズという言葉もありますが。アカデミアというか、研究者のコミュニティの場を作るということにつながっていくことになるかと思います。そういう場を図書館を中心に作ることに努力する、それも目標にするということを打っております。
  次ですが、場の提供方法。これは同じように、社会に開かれた知の創出というのはオープン化が前提になっておりますので、そのオープン化を前提とした場の社会への提供方法はどうあるべきか、という点を考えるというのが一つの目標になっております。
  実際はといいますと、またうちの大学の例で申し訳ないんですが、京都大学の事例2というのが次のページにございます。リサーチコモンズとオープンラボ、これは今申し上げました新しい図書館の設計の中で検討し、実験をしていこうと考えております。
  2番目の全学共通教育の情報リテラシー教育の継続、これは昔からどこの大学でもやられていると思いますが、情報リテラシー教育の中で今後はデータ科学との接点というのも重要になってくると思いますので、そういうところもリテラシー教育の中で入れ込んで、ラーニングコモンズからリサーチコモンズへの流れの中で教育に対応するということも考えております。
  それから3番目は京都府立図書館との相互協力、これは地域との連携ということでございますけれども、これは何をしているかというと、相互に貸借するというのは当然ですが、デリバリーのシステムとか協力研究関係のデータの相互共有というものを実際に始めております。
  4番目ですけれども、貴重資料の電子化と展示会の開催と。これは地域への展開のためにやっております。ジョサイア・コンドルの建築図面あるいは中井家文書の二条城関係の資料などを、これも図面をTIFF、IIIFのフォーマットに載せて公開するということをやっております。ジョサイア・コンドルの図面に関して言えば、これ、三菱地所にかなりほかのものがございますが、それを共有することによって日本にある図面が全部出てくるということも期待しております。ですから、場所、場所に固定するのではなく、ネットを介してそれらが共有されるということです。本当に必要なものは現物を見ないといけないということは当然あります。ですけれども、その前段階としてこういう資料を共有化するというのは重要なことだと判断しております。
  次、重点戦略3でございますが、新しい人材でございます。新しい人材、これはなかなか難しい問題ではございます。図書館関係の職員の定員の削減というのが、非常に厳しい状況が各大学で生まれております。はっきり言って、旧帝大系、RU11の大学は割とまだ人がたくさんいらっしゃって、今までどおりの仕事ができたかもしれませんが、多くの大学、地方の大学はやはり人がもういなくなってしまい、そこを維持すること自体が困難になっています。そこに総合大学としての機能を全て持たせるというのは、これはもう不可能に近いであろうというわけです。図書系職員といいながら一般の事務系職員の場合もございますし、運営のトップは教務の方であったりとか、いろいろもう運営上支障を来しているというのが現実でございます。ですから、各大学が自分ができることを提供しながら、ほかから提供してもらえるような形というのが、やはりこれは組替えをしながらもやらないといけないのではないかというようなことがあります。そのために、多様な知を維持していくためには、やはりそれらの大学の図書館も維持していかないといけませんので、制度を整備する必要があるであろうというのが、ここで書かれていることの私なりの解釈でございます。
  重点3のその次の目標ですけれども、新たな人材の参画というのは、これは要するに、人が減っていますから、今までどおりの人ではなくて、ほかの方々をやはり加えていかないといけないという意味です。要するに、図書館の分野を研究対象にしていただくということが一つ重要なのではないだろうかと考えられます。キュレーションというふうに人を持っていきますと、一般の仕事をどこかに外注するということが必要になるかもしれませんが、単にそういうことじゃなくて、今までの仕事の能力を生かしつつ、キュレーションを含め、新しい仕事に展開できるような流れを作ってあげるということが重要であろうと考えています。これはですから、国立大学図書館全体として考えていくことであろうと思われます。
  2番目の職員の資質向上に関しては、これは今申し上げたことに尽きると思います。
  その次に、実際には京都大学で何をしているかです。また繰り返しになって申し訳ないんですけれども、実際にはオープンアクセスに関する専任研究者の雇用ということをやっております。新たに雇用するということなんですが、一般職員の雇用ではなくて、図書系職員の雇用でもなく、重点戦略の定員の予算確保の中で研究者を雇用しております。この方は、個人のことになるので余り詳しくは申し上げませんが、現実には海外で研究をされてきて学位を取られて着任された先生でございます。ですので、特にディスカバリーシステム系あるいは教示システムというんでしょうか、新しい教育のためのこういう文献がありますよというのが提示できるようなシステムを開発しているような先生を採用することで、新しい展開を図ろうとしています。これによって、図書系職員の方々がエンカレッジされる、あるいは新しい分野を見いだすということが、今、可能になりつつあります。あとは、URAとの共同によるサービスと研修会、これは最近いろんな大学でやられ始めていますが、これを引き続きやっております。それから、学内プログラム等による図書系職員の海外派遣です。これは大学だけではなくて、NIIに御支援頂きましてCERNに派遣しました。これは論文の名寄せの経験を積んでいただくということが主体だったと思いますが、そういうことをやっていただく研修のために1年間、CERNに行っていただきました。英国の大学図書館などには一般の研修を受けに送っております。大学の中にそういう資金がございまして、そういうものを利用しながらやっております。これが実際の話なわけです。
  今申し上げた京都大学の例というのは、要するに、自分ができるところからやってくださいということの例として出しているわけですが、それをやりながら、全体として得られた情報を他に提供していくという流れを作っていくのが国立大学図書館協会のやるべきことであると思われます。
  実現に向けては、次のページにございますけれども、これは協会の中にある委員会、それからコンソーシアムとしてJUSTICEがございますが、設置母体がいろいろございますので、国立大学図書館協会が得た情報を他の図書館、国公私ですね、図書館にも相互に連携を図りながら提供する、あるいは提供していただくという流れを作っていくことによって、大学間の連携の枠組みというのを確立していくということが重要であろうというのが、ここにうたっていることでございます。当然ながら、海外との連携というのも必要なことでございます。
  実現に向けてということで、組織に関しては細かく書いてございますけれども、それはまた時間があるときにお読みいただければと思います。旧来の委員会を再編いたしまして、次のステップが踏めるために何をすべきかということを検討する委員会というのを作っております。活動に関しては、まだ1年なので余り成果は出てございませんけれども、次の理事会あるいは来年度の総会に向けてこれから動き出していくというところでございます。各大学においては、このビジョンによって目標が見えやすくなったということで、自分たちができることをステップ踏んでいくということが今とられつつあります。特に私どもが属しています近畿地区のグループでは、この目標に応じて年2回集まるんですけれども、そのときに、この目標に対してどこまで何をやりましたというのを提示されるようになりました。それまでは、何か図書館でこんな催物がありますよという情報提示だったんですけれども、目標に対して自分たちはこういう手法でこういうことをやったということを提示されるようになったということは、非常によいことだと思っております。
  最後になります。最後のページになるかと思いますが、それぞれの大学のミッションあるいは中期目標というのは、これはいろいろそれぞれの大学のある姿だと思うんですけれども、その戦略目標に対して図書館を通じた学術情報をどのように入れ込んでいただくかというのは非常に重要なことだと思います。それはやはり図書館を中心に発信していかなければ、これはいずれ大学のミッションの中で消えてしまいかねないと思っております。ですので、国立大学図書館協会としましては、こういうビジョンのガイドラインというか、方向性を示すことによって、各大学図書館が自分たちはこうするんだというのを訴えていただくということを求めて、まとめさせていただいたものでございます。ただ、そうやっていきますと、ばらばらな動きになってしまいますので、その大きな方向付けだけはここで示させていただいた。その最後はどこを目指すかというのはそれぞれあると思いますので、手法論として出せたと思っています。その手法論と最後の各大学の目標をうまく連携していくというのが、これからの次のビジョンの先のステップになるかと思っております。
  雑駁(ざっぱく)ではございますが、以上が今お手元にある資料です。もう一つ、机上配付がございまして、「国立大学図書館機能の強化と革新に向けて」というものがございます。これは、色刷りで出しておりますけれども、今申し上げたことが箇条書きされているというものでございます。会員館というリストもございますので、御確認頂ければと思います。
  以上でございます。
【喜連川主査】    引原先生、どうもありがとうございました。現状の我が国の国立大学の図書館はどういうことを御検討になってきたかということが、とりわけこのトランスペアレンシーよりも引原先生の追加的な説明によって、非常に分かりやすくお伺いできたかと思いますが、これを、どのように議論をするかということなんですけれども……。
【引原主査代理】    このビジョンをまとめるに当たって、指名すると何ですが、竹内先生もかなり御意見頂いておりますので、私が言ったのが間違っているとか、まだ言い足りないというところを御指摘頂くのが重要かと思います。
【喜連川主査】    ああ、そうか。それでは、まず発信サイドですね、そういう意味では。
【引原主査代理】    はい。
【喜連川主査】    竹内先生、ちょっと補足ございましたら、是非よろしくお願いいたします。
【竹内委員】    竹内でございます。先ほどの引原先生の御説明は、大変的確であったと思います。1点だけ、ひょっとすると引原先生と私の感じ方の違いかもしれませんが、先ほど御言及があったように、個々の大学図書館が各大学のミッションの中でどのように図書館としての機能を発揮し、そしてその存在を明確に示していくかということはもちろんですが、それと同時に、これまで大学図書館、とりわけ国立大学図書館が横の連携において、先ほど引原先生は護送船団という言い方をされましたけれども、このようなまとまりがあることを基礎に非常に大きな機能を果たしてきたということについては、やはり再確認をしておく必要があるのではないかと思っております。この横のつながりというものを生かしつつ、図書館として残していくべきものを集約化するなり、あるいは効率化するなりということをしていかなければ、各大学図書館はもうやっていけないというのは、先ほど引原先生の言葉にあったとおりでして、私ども千葉大学の規模のところでもその辺りはかなりきつくなっておりますので、私どもより小規模の大学ということになれば、もはやにっちもさっちもいかないというのが現状なのではないかと思っております。
【喜連川主査】    ありがとうございます。オープンサイエンスの前回までの議論の場合は、世の中にないものに対して今後どういうディレクションで我が国が戦略を立てていくかということが大きな課題で、いろんな御意見を頂いたわけですけれども、学術情報委員会として、今お出しいただいたビジョンを議論するとすると、どういう方向感での議論が有益でしょうか。図書館協会にとっても良い方向の形になるのが良いと感じます。比較的、基本理念はそれほどドキッとすることはないように感じまして、また、ビジョンはこれまでなかったとも伺っております……。
【引原主査代理】    そうです、そうです。
【喜連川主査】    ないのも不思議なところではありますが、改めてお作りいただいて、特に「記録媒体の如何(いかん)を問わず」など、非常に上手におまとめになられていると感じましたが、あえて議論するまでもないところも多々あろうかと思うんですが、どの辺を本委員会として議論していくのが一番よろしいでしょうか。
【引原主査代理】    よろしいですか。
【喜連川主査】    はい。
【引原主査代理】    今、委員長からお話ありましたけれども、図書館協会としてはこれで動いていくだろうと思うんですね。ただ、情報インフラとの関係で、最初のときだったと思うんですけど、SINETと図書館との関係ですね、コンテンツをどういうふうに運用していくかということをうまく図書館を使いながら道筋をつけていくというのが一つの論点かなと思います。
  あと一つは、発信といいながら、やはり前回もありましたけれども、日本の研究データをどう守っていくかというときに、図書館というのが戦略になるか、ならないか、あるいは、そこにもっと機能を載せるかどうかというのは重要な論点になるんじゃないかなと思います。多くは、各大学の情報系の先生方がインフラ整備をしてくださっているんですけど、そのコンテンツに関しては図書館というケースが非常に多いんです。その点分離が今後の運営、戦略の中でスムーズじゃないんじゃないかと思います。まだうまくいってないんじゃないかと思われるんです。その点は議論の一つになるんじゃないかなと思います。
【喜連川主査】    最初のポイントは、SINETとおっしゃいましたが、いわゆるデジタルインフラとどう関わってくるかという意味では、2番目も比較的そういう色合いが非常に強いという視点から、一言で言うと、従来の図書館がどんどんデジタライゼーションが進んでいく中で、今後の方向感を10年先ぐらいのを見たとしたら、どういうふうに考えていくべきかというのが多分大きなポイントだということですね。分かりました。
  ちょっと口火を切るという意味で、最初ずっとお伺いしていたときに、やっぱりグローバル感というのが余りないという感じがいたしまして、例えば、22ページですけど、海外派遣研修という記載がありますが、日本の図書館に対して海外から研修に来るというのがあるのかどうかというのが、つまり、図書館のコンピタンスをグローバルに見ると、海外から研修に来るようなものを国家として作っていくというのが、やっぱり図書館のプレゼンスを非常に分かりやすくするための一つの方法かもしれないと感じますが、ピラミッドのうちのどのレベルを、先ほど竹内先生がおっしゃったみたいに、本当に大変な大学もたくさんおありになるという、その視点と、もう一つは、オフェンスかディフェンスかという意味でいうと、オフェンスサイドの話も少し配慮があってもいいのかなという気が致しましたが、いかがでしょうか?
【引原主査代理】    私が言ってよろしいですか。日本の大学の持っている例えば資源というか、資産という意味では、アジア系の資料というのは非常に大きいわけですけれども、それに対する海外からの要求というのは当然あります。ですから、受け入れている側、例えばアメリカだったら、これはワシントン大学とかミシガン大学の辺りから、アジア系の資料の扱いの研修とか、そういうものを定期的とは言いませんけど、受け入れて、こちらから逆に向こうに行って別のもの、向こうで作業してくるというようなことも当然やっているわけです。やっている大学はございます。ですから、日本の大学が全体に持っている例えばアジア系ですけど、アジア系の資料に関する統一的な考え方ということを示していければ、受け入れていくという事例は当然あります。アジア系というのは何も日本だけじゃなくて、東アジア、朝鮮、中国に関しても日本に資料は多いです。ですから、そういうものを扱っていくというのが得意な分野じゃないのかなと思います。
【赤木委員】    発言よろしいですか、追加で。
【喜連川主査】    はい、どうぞ。
【赤木委員】    追加させていただきます。主査がお話になったような形で外国の大学図書館員を国内の図書館において研修目的で受け入れるというケースも、小規模ですが継続的にございます。もちろん、大規模なプログラムがあるとか、そういうことではございませんけれども、ございます。それから、例えばヨーロッパの日本関係の古典籍をテーマにしてヨーロッパのライブラリアンが集合研修しているようなところに、私どもからヨーロッパの図書館に研修に行っている者が、そこではレクチャラーになって指導するとか、その種の相互の交流はございますので、全くやってないとか研修先に滞在しているだけとかということではないということです。
【喜連川主査】    ありがとうございます。グローバルな視点がかなり本質的かなと思いましたので伺いました。引原先生からは、論点として見たときには、このデジタル化の波と図書館をどう考えるかということ。それでは、美馬先生、どうぞ。
【美馬委員】    引原先生の御報告で1点お伺いしたいことがあります。重点領域の新しい人材というところです。質問というよりは、ここで議論すべきかどうか分からないのですが、図書館の今後の方向性が変わってきたときに、こちらの方向に行くべきだこうだという理想をここで話すのはいいと思います。しかし、今雇っている人たちの連続的な移行というのも考えていかなければならない問題だと思います。つまり、今働いている図書館の人たち。そうすると、例えば先ほどの京大の例だと、新しいオープンアクセスに関する専任研究者を雇用できたということですが、多くの大学ではなかなかそういうことがうまくいかないと。そうすると、異なる役割の人を今後採用していける場合にはいいですが、今いる人たちをどういうふうに移行していくのか。そのときに、例えば、ここの委員会の範囲は超えているかもしれませんが、司書の資格要件みたいなものが、そもそも大学の図書館って司書資格を持ってなくてもいいということでしたが、その資格まで踏み込んで変えていくことを考えるのか、あるいは、異なる役割の人を順々に入れ替えていくのかというところについては何か、大学図書館協会では議論されているんでしょうか。
【引原主査代理】    ありがとうございます。今の御質問に関しては、まだ十分な議論は当然このビジョンができてからはされてないんですけれども、ただ、その前から国立大学図書館協会の中で人の育成をどうしていくかというのは大きな課題になっておりまして、先ほど美馬先生がおっしゃったように、京大は人が雇えていいですねって、それが記録に残っちゃうわけですけれども、ただ、うちでたまたま雇うことができましたが、その人材って非常に貴重な人材なわけですね。ですから、講習会というのはその先生を通じて関西でやったり、東でやったりというようなこともやって共有化するということが重要だと思っています。それがやっぱり図書館という横につながった世界でのうまいやり方じゃないかなと思っています。それは国立大学だけじゃなくて私立大学との連携、関西等が一緒にやって、人を介してお互いにプロジェクトをやりとりして、データも共有してチェックするようなことまでやっていますので、ある人を基点にすると、そういうつながりができて、コミュニティが出来上がるというのが重要じゃないかなと思っています。
【美馬委員】    でも、今働いている図書館の人たちは一般的に本が好きで、資料を収集して、保存して、そういうことだと思って入ってきたのに、話が違うみたいな感じにはなっていくのは、それはしようがないことなのでしょうか。なかなかそこの壁は厚い気がする。
【引原主査代理】    それに対する発言はもっと危険だと思うんですけれども……。
【美馬委員】    ごめんなさい。
【引原主査代理】    確かに、ある年齢以上の方々で本が好きでという、昔の仕事を踏襲してという方々も多いです。ですから、その方々に無理やり違う部署に移ってやりなさいということは、これはもう不可能に近いと思いますし、ただ、その業務の在り方というのを改善していって時間のスペースを作っていくということは重要なことだと思っていますので、それは各大学はやらないといけないことだと思います。外注に出されるというのもそういうことだと思うんですね。新しい分野に行くということは、若い方は割とスムーズに行かれます。特にラーニングコモンズ系の話が進んだときに、教務系の部署に着くということは余りいとわない方も増えて、要するに、講義したりされるからです。そういうのも、パーマネントじゃなくて数年行って経験して帰ってくるということは非常に良いことなので、大学によってはそういう流れを作っていらっしゃるところというのもございます。ですから、それもできるところからということになると思うんですけど、学内的な人の流れというのが少しずつあるようになっているというふうにも聞いていますが、おっしゃるように、そうじゃないケースの方が非常に多いという。
【美馬委員】    ありがとうございました。
【喜連川主査】    ありがとうございました。
  それでは、何か他の御意見。井上先生、お願いします。
【井上委員】    私、知的財産法が専門なので伺いたいのですが、大学図書館の役割が変化しつつある、知の共有・創出、発信が重要になってくるというお話でした。知的財産法は知を独占させることを可能とする制度であり、図書館が新たな取組をしようとすれば著作権と衝突が生ずる可能性もあります。大学の図書館が知財の問題にどのような形で関与していこうとしているのかということを伺いたいと思います。
  例えば、大学において、他人の著作物を含む教材を作成し授業で使うとき、紙ベースであれば授業で教材をコピーして配ることはできるという著作権の権利制限規定があります。しかし、ICT活用で広く教材を共有しようとすると、著作権法上問題になります。現在著作権法を改正してICTを活用した教材利用を認める一方、補償金の支払義務を課す制度の導入が検討されていますが、教材を広く共有するというところまでは今回の改正ではカバーされないということになっています。教育、研究教育の成果を共有していく場合には、著作権法上の権利処理が必要になってきます。こうした問題には、図書館が主体的に取り組まれるのか、それとも、大学の中で、教務ですとか、あるいは各教員が個別に取り組むということにするのか聞かせていただきたいと思います。また、これからの著作権制度の在り方について、知の共有ですとか知の発信ということとの関連で図書館や大学がどのような立場をとるのか、そして関連の政策の形成過程にどのようにコミットしていくということも重要になると思います。大学という組織の中でどのような部署がその役割を担うのか伺いたいということです。
【引原主査代理】    御質問ありがとうございます。非常に難しいポイントをつかれてしまいましたが、おっしゃるように、独占というものをベースとした知財の関係の法律があるわけですけれども、オープン化というのは全く逆の方向へ向いているわけですね。フェーズが幾つかあると思うんですけど、先ほどの大学がオープンアクセスにしてオープンにしていくものというのは、研究に関してはグリーンなものという考え方ですね。問題はデータの方だと思います。データに関しては、多分著作権法はひっかからないわけですけれども、逆にそれがあるために独占されてしまう危険性もあるということがございます。ですから、それは図書館で扱われるものではないと私は思っていまして、内閣府の方でも議論はしていましたけれども、そこは何の結論も出てないと思います。ですから、図書館で扱う知的財産法に関するものというのは、ジャーナルに関するもの、あるいはオープン化していくコンテンツに関するものというふうに限定して考えていくべきだと思います。その中で、もともとオープンにしている画像とかは、それはオープンにしていく。できないものもまだあるわけですね。それはダークにアーカイブしていっています。いつかそれが保証されたときにオープンにしていくときを待って、蓄積している。多分その考え方は研究データについても使えるかもしれないと思っています。
  一番重要な御指摘であったのは教育関係なんですが、これは私より実は竹内先生の方が詳しくて、竹内先生に御発言していただきたいなと思っています。大学間でやっていらっしゃるもの、お願いしたいと思います。
【喜連川主査】    竹内先生、お願いします。
【竹内委員】    この種の議論の場で井上先生とお目にかかったことがありますので、御存じかと思いますけれども、現在、CLR(大学学習資源コンソーシアム)という名前のコンソーシアムが活動をしておりまして、21大学がメンバーとなっております。これは、先ほど井上先生から御指摘のあったような課題を踏まえ、高等教育の現場においていかにしたら著作物を自由に使えるような環境を構築できるか、ということを考えるための大学間のコンソーシアムでございまして、基本的には、有償でもいいのでライセンスによってそれを実現しようという立場です。先ほど御紹介ありましたように、権利制限を補償金制度の導入によって実現するということと似たような考え方で、法制度の議論の方が一歩進んだというところかと思います。ただ、今回の法改正で実現しようとしていることは、eラーニング環境での異時送信に関する部分に限定されているわけでして、先ほど井上先生からもお話があったような様々な共有でありますとか、あるいはそれ以外の様々な利用に関しては、どのように利用の環境を整備していくかという方策については、まだ明確な方針というか、具体的な動きというのは出ていないというのが現状だろうと思います。
  私個人の考えですけれども、補償金のような制度でかたが付くのであれば、もう金銭で片付けるしかないのではないかと思います。そうすると学生一人当たり幾らという話が出てくるわけですけれども、北米の事例などを参考にしながら考えていけば、研究大学であれば一人当たり十数ドルといった補償金を支払うことによって、大学という場において著作物を利用するということに関してほぼストレスなくといいましょうか、これが問題のある利用なのかどうかということを考えることなく教育現場で著作物を利用できるというような状況を作ることができると考えております。
  先ほどの井上先生の御質問は、これを一体誰がやるのかというところにポイントがあるのだろうと思いますけれども、私どものコンソーシアムに御参加頂いている大学についていえば、必ずしも全てが図書館を代表者として出しているというわけでは決してなくて、大学の中でeラーニングを主たる責任として担っていらっしゃる組織の方が参加されているというケースもあります。ですので、そのような役割を担うのは図書館でもいいし、あるいはそれ以外の全学的な教育センターのようなところでもいいのではないかと思いますけれども、ただ、全体の印象としては、このようなことについて一定程度以上の専門知識を持っている人材というのが大学には非常に乏しいということがあると思います。ですので、先ほどの国立大学図書館協会の新しい人材というところにも出てきた問題と関係しますが、著作権と申しますか、あるいは知的財産と申した方がいいかもしれませんけれども、その辺りについてもやはり専門的な知識を持っている方というのを図書館でなくてもいいので、大学の中に必ず持つというような方向性は必要なのではないかと思っております。
  ただ、こういう議論をしていきますと、だんだん図書館員が何でもできる人になってしまいます。それは無理な話ですので、人材の問題を考えるときには、既存の図書館員が様々な専門的知識を持っているのは事実で、それを最大限生かすことができる環境というのもあるわけですけれども、やはりこれからの考え方としては、図書館員という大ざっぱなくくりをするのではなくて、ある特定の領域に強い人材、それは北米の場合でしたら何とかライブラリアンというふうに呼ばれるわけですけれども、そういう人材の集団の形成を図書館という場でも考えていくということが非常に重要だと思います。
【喜連川主査】    よろしいでしょうか。東京大学でも、大学総合教育研究センターがコピーライトを取り扱っていると思います。
【井上委員】    図書館がやらねばならないとは限りませんが、大学として対応する必要があるという趣旨です。教育目的での利用について補償金制度が導入されると、先ほどおっしゃったように、学生一人当たり幾らといった補償金の額についての交渉が権利者側と始まるわけです。また教材共有についてのライセンスについても、集中管理団体を通じてワンストップで包括的なライセンスが得られるようにするという話になってくると思いますが、ジャーナル問題のようなシビアな問題がでてきます。大学側には専門家がいるわけでもなく、担当部署も不明となると交渉力が弱く、危うい状況になるおそれがあります。大学としてどういう形で著作権問題に対応していくのかということをしっかり考えていただく必要があるだろうと思います。きょうの図書館の話からは少し離れてしまうかもしれません。
【喜連川主査】    そうですね。
【井上委員】    失礼いたしました。
【喜連川主査】    これは、コピーライトという雑誌に、教育の近未来と著作権というタイトルで文部科学省自身がアーティクルを出しておられますので、それはまた別の場で多分議論をさせていただくのがよろしいのではないかなと思います。
  ただ、いみじくも、美馬先生がおっしゃったことも井上先生がおっしゃったこともかなり共通項がありまして、それは、オープンサイエンスのとがった人材というものを京都大学が雇用したときに、それを図書館全体で共有できるようにすべきではないかと。井上先生がおっしゃった知財の問題も、非常に複雑な交渉ができる人材は、大学それぞれにいるということはほぼ不可能なので、つまり、分野がダイバーシファイしてきて、どんどん広がっていくときに、これは非常にまたデリケートな表現なんですが、冒頭、引原先生から、法人化の前と法人化の後といったときに、プライバタイゼーションそのものは余り異議を唱えることではないのかもしれないんですけど、そこから生まれる若干の不具合というものが出ていることは認めざるを得なく、大学群水平に共通項でやるものを競争原理の中に入れてしまうと、非常にコストが高くなってきてしまっているということが判明したということと整理できます。ではそのコストをどうやって下げるかというところに、引原先生もおっしゃったようにデジタル化技術によって横串に共通化し、そこでセービングをかけつつ、独自色をその余剰分から生み出すという流れをみんな何となくイメージ感としては描きながら、ということになってくるんじゃないかなと思います。
【引原主査代理】    それはそうです。
【喜連川主査】    資料に書いてはおられません。
【引原主査代理】    私が付け足した分はビジョンそのものに書いてあるわけではなくて、これ、まとめる過程で竹内先生、私も含めて議論させていただいた中で、やっぱりそういうイメージを持ちながら書いています。ただ、旧来の図書館が当然あるわけですから、そこに対して否定するわけではなくて、どうやってそこに軟着陸していくかという意味で割とソフトな書き回しになっていると思います。
【喜連川主査】    ソフトな書き回しをアンソフトな表現で御紹介頂いたということだと思いますが。
【引原主査代理】    ですから、私に代理をさせたのが間違いだというふうに思うわけですけど。
【喜連川主査】    ここの場としましては、腹を割った議論をすることも必要かと存じます。つまり、2、3年後の話じゃなくて10年先を見ようと考えますと、やはり方向感はそういうところに行かざるを得ないのかなという気が非常に強くする次第で、そういう視点でも何か御意見ありましたら。先生、お願いいたします。
【逸村委員】    今、人材の話及びその後の協力・連携の話といいますと、今回、ここには出てこなかったんですけれども、国立大学図書館を中心に、それこそ20世紀の頃からの文部省、文部科学省の方でいろいろ御支援頂いていますが、大体20代後半から30代前半の図書館員をターゲットとして3日間ほどやる短期講習というものと、あと、かつては3週間、今は2週間になりましたけど、夏休み中に40名ほど、これは筑波大学が文部科学省の支援を受けてやっている長期講習という研修制度があります。特に長期研修ですと40名ほどが2週間、缶詰とまでは言いませんけれども、それでやるので、その後、そのグループが、当然、今こういう御時世ですので、横の連携を持っていろいろな作業をしていると。この具体的な例、例えば機関リポジトリが2005年頃からスタートしたのを支えていったDRF(ダーフ)の活動、現在のJPCOARにもつながるようなことはやっていました。そういう意味では、これは図書館員個々人のボランタリーなグラスルーツ的な活動だったんですけれども、非常に役に立っていたと。やっぱりその中には井上先生が御指摘になったオープンエデュケーションとかそういうことに詳しい者もいて、そうすると、メーリングリストとかに質問を投げ付けると、割とすぐに回答が返る。そういう活動はありました。恐らくそこら辺の活動というのは、先ほどから何回も出ていますが、人材が縮小している中で、やはり知識を持っている者が知識を共有化させると。割と図書館員というのはそういうことを全然苦にしない。自分が知っていることを人に教えて、その代わり人の教えることを自分にも教えてよという社会はあるので、そこら辺をICTを活用して今後もそれなりに、私の立場からするとエンカレッジするという、あるいはうち、筑波大学情報学群知識情報・図書館学類及び大学院図書館情報メディア研究科の話になりますけれども、筑波大学の卒業生で全国の国公私の大学図書館に毎年数名ずつ送り込んでいますので、そこら辺の個人的なネットワークもICTを活用していろんな学校で生かせるのではないかと考えておりますし、それをエンカレッジしないといけないというのは、筑波大学のうちの教育組織としての卒業生への対応の一つと考えております。
【喜連川主査】    多分、御紹介いただいた比較的草の根的なアクティビティーを清らかなお気持ちでやられていることはたくさんあると思われますが、本当は協会がそういうものをもっと強く方向感として打ち出すようなことも考えられるのではないでしょうか。
【引原主査代理】    はい。その人材育成に関しては、やはり共通で全体として育てていかないといけないという議論はあって、NIIでの研修であるとか、西で京都大学で研修するとかいうのは今までもやっていて、それを今度は大学の図書館は引き受けて続けていくというようなこともやっているわけです。ですから、きちんと共通の土壌の中で育てていくということは当然ながらやっているわけですが、次のステップのためにどう踏んでいくかというところがまだ描けてないと思うんですね。それは今このビジョンを出したところから、これから始めないといけないんですけど、各大学でどこが得意な部分がありますかということを考えていただいているという状況になっているんじゃないでしょうか。だから、筑波大学の場合も今まで流れがありますから、そういう教育をやっていただいて、九州大学も今コースを作ってやっておられますので、そこで伸びていって底辺を作っていくという流れがあります。その上に今度、何を載せていくかということだと思うんですね。人が育った先に、彼らが目標とする、あるいは挑むものを作ってあげないと、これは新しいものにはならないだろうと思います。
【喜連川主査】    ただ、何か逆の地図を作った方がいいのかなという気も致します。リサーチとエデュケーションの将来のデジタルマップのようなものが描けたとして、そのどのポーションを図書館が担っていくことになるのだろうかという議論があろうかと。今朝も米国の研究者が来られていてお話ししておりましたが、アメリカはナショナル・リサーチ・プラットフォームという言い方をしております。そもそも研究のプラットフォーム全体像をどう考えるべきかをデザインしているようです。一言で言うと極度なバーチャライゼーションをして、そこからスライシングしながら導出し、さらに、それぞれの研究のワークフローというものを定式化する中でITをもっと潤滑剤としてうまく使うみたいなイメージです。「ロードマップはありますか?」とか伺ったのですが、「まだない」とのことでした。逆に言うと、日本が未来像を描くことができればすばらしいかと。今おられる方々の慣性の部分をかなり強く御意識になりながらお作りになったとすると、逆サイドのものを1回作ってみてというのは悪くないと感じる次第です。過激でしょうか。
【美馬委員】    こういう新しい職種というか、職能が必要とされるときに、私、前やっていたサイエンス・コミュニケーションとかサイエンス・コミュニケーターをどうするという話があります。そのときに考えていたのは、人材の流動化とコミュニティの醸成ということなんですね。大学教員の場合は自分で転職しますよね、どこか何かいいところがあれば。そういう形で、例えばサイエンス・コミュニケーションの場合はサイエンス・コミュニケーション協会みたいなものを作って、国立科学博物館だとか日本科学未来館とかではコミュニケーター養成講座のようなものを作って、そこが認証するみたいな、認定するような制度を作りました。この人はこういう講座を受けてこういうことができるようになったということで、どこかに就職してからも、またそういう人たちがいろいろ、さっきのすばらしい京大の人がどこかまた移っていくと、そうやって広がっていくのではないかなというふうにはちょっと思いました。
【喜連川主査】    今、世の中で、80%の職がなくなると言われており、それほど心配することもないのではと感じます。ここではこんな人材が欲しいって言っているんですね。だから職があるわけですよね。AIではできない職があるわけですから、放っておいてもそこに人が流動するのではないかと思うのですが。
【引原主査代理】    図書館としては、やはり新しいポストというのは作れない状況にあると思うんですね、職員としては。ですから、昔は図書館だけで孤立してやっていてもそれなりに動いたと思うんですが、今、やはりお若い研究者あるいは教員の方々のエフォートの幾つかをとって、図書館というものの中で活動していただけるような場を作ることによって人が育つような気がするんです。
  きのう、国立国会図書館の関西館に、休みをとっていたので遊びに行っていたんですけれども、あそこも自動書庫で人が関与しなくても上まで出てくるって最初は作っておられたんですけど、まどろっこしくて人の方が早いというのがあって、だんだんシステムが本当に自動書庫から出てくるところだけ、あとは人が運んでいるような状態になっている。だから、IT化といっても、まだシステムとしてこなれてない部分が結構あって、やはり人によるサポートというのがまだ生きている分野というのが多いようにきのう思いました。
【喜連川主査】    多いです、多いです。
【引原主査代理】    ですから、そこは生きる部分を活用していくという考え方もあると思うんですけど、今、言いたいことは……。
【喜連川主査】    おっしゃいたいことは何でしょう。
【引原主査代理】    言いたいことはですね、私としては、図書館の従来の仕事の定型的な部分というのは外注に出してもいいだろうと思っています。それで、外注に出すことが、皆さんお金のことばっかり言われるんですけど、そうではなくて、定型の仕事の方は外注に出したら確実な部分は確実に責任を持ってもらえるということなんです。それに対して図書館職員というのはやっぱりクリエイティブな部分というのにシフトできるように体制をとるというのがベストだと思っています。
【喜連川主査】    そういうのがこの中に書かれていると良いと思います。
【逸村委員】    ちょっと話を変えさせていただきますが、筑波大学には大学院共通科目という、大学院生が何をとっても単位になると、修了単位に認められると。上限4単位とか、それは研究科によりますが、その中で、私は学術情報流通、タイトルとしては「研究者のための学術情報流通論」というタイトルで全研究科の院生に対して2単位という授業をやっております。情報リテラシーの部分と、正に学術情報流通の特に評価の視点で、いろんな院生が当然来るわけですので、人社系から医学系までたくさん来ると、みんなそれぞれしょってくるわけですね。一応、院生でそういう内容に関心を持っているので、各研究室でやっている生産がどういうふうに評価されるのかというのを披露してもらって、それを基に議論すると。それによって評価というのは実はいろんなやり方があるし、先ほど出てきているいろいろな法的な側面というのも実はあるんだと。筑波大学の事情なのかもしれませんが、恐らくよそも同じでしょうけれども、大学院から筑波に来るという院生は相当数いますので、学部のときにいた大学の学術情報流通、ネットワークも図書館もこういうふうに動いていた。ところが、筑波はこうだということに最初ショックを受けるわけですよ。特に、言い方は何ですけれども、非常に情報環境の厳しい大学から移ってきた学生は、「ここは天国みたいだ」とか最初は言うんですよね。ところが、すぐ、今度はまだ更に上があったり、筑波でも買ってないものは幾らもありますからという、そこら辺で突然壁にぶち当たると。そういう学術情報に関する知的な基盤みたいなものを大学図書館界が協力して、どういうふうにしたらいいのかちょっとよく分かりませんが、モジュール化して、こういうところをこう教えるみたいな、そういう機能を持てないかと。それに関しては、やっぱり図書館側が、大学図書館が動くのがよいのではないかなと思うんですが、いかがなものでしょうと。
【喜連川主査】    それはすばらしいですよね。
【引原主査代理】    よくそういう議論のときに私はいつも言うんですけど、日本が目標としているシステムというのが皆さんまちまちなんです。ヨーロッパ型のシステム、アメリカ一国のシステムであったりとかいうんですけど、日本の国立大学の規模からいえば、カリフォルニア州のCAシステムと、それからステートユニバーシティーのシステムと、それからコミュニティカレッジのシステムですか、その三つが横に並んであるんですが、そのシステムの規模感が同じじゃないかなと思っています。研究大学のシステムと教育大学のシステム、その中でCAのシステムはCDLというか、デジタルライブラリのシステムを作っていて、それで横串で通しているんですね。ライブラリアンはその大学間で異動して回る。全く同じだと思うんですね。だから、自分たちが持っていこうとする目標を国レベルに置き過ぎているんじゃないかな、日本の図書館自身が。例えばアメリカ全体と同じぐらいに持っていこうとかいうような考え方というのは、ちょっと違うんじゃないかなと思うことがあるんです。もう少し我々の規模に合った効率のよいシステムを目標に置いて、そこにやっていかないと、図書館職員の人たちも、イギリスは行くわ、オーストラリア行くわ、アメリカ行くわというような感じでまちまちの状態で意見がばらばらになっているのではないかなというように思うことがあります。
【喜連川主査】    今の御指摘は、そういうこともあるけれども、パッケージ化して、共通的なものをなるべく効率化するためのエデュケーショナルなものも含めてという御示唆で。
【逸村委員】    いわゆるオープンエデュケーションのネタとしては割といいので、だけど、これは筑波の学生だからなのかもしれないけど、余りに知らないんですよね、自分たちの環境そのものも。ましてオープンアクセスなんていっても、知っている学生はもちろんいるんですけど、知らない学生は知らないと。いや、言い方は何ですけど、京大から来た学生はよく知っていて、あ、やっぱりそういうの習っているんだとか思ったりはするんですけど、にしても、学術の底上げをするために、やっぱり大学院生に対してのその手の能力を高める何かは欲しいなというのは、毎年、忙しいんだけど、意地でも続けている理由はそういうところにあります。
【喜連川主査】    だから、効率化は二つのイシューがあると思うんですね。とにかくもうもたなくなっていると。今おられる方の構図はちょっと横に置いておいて、とにかく長い日本の道のりをこれから見たときに、支えることがやっぱりしんどくなっているという事実のときに、どう効率化するかという話と、何を新しいターゲット領域にして、そこにみんなで向かっていくのかと。さっき私がAIでしようがなくなりますよと言ったときに、必ず出る職というのは何かというと、引原先生がおっしゃったデータですね。これからデータの産業はもう腐るほど出てきます。そういう意味で、大学がリサーチのデータ基盤をきっちり作るというのは非常に時代にマッチしているところで、そういう意味のところの方向感をクリアにしていけばいいんじゃないかなという気が個人的にはしているんですけれども。先生。
【安藤委員】    私は図書館の業務から少し離れて、研究の方からここに参加させていただいているというような理解をしています。そうすると、先ほど引原先生の御説明にもあったけど、例えばURAと一緒に研修するというような話もありましたが、議論がすごくURAの方と似ているのは、URAというのも、名前は文部科学省は一生懸命それを盛んにしようとして、今、事務と教員の間に第3の職という格好で位置付けて育てようとしているんですけど、今、日本全国でたしかまだ900人ぐらいじゃないでしょうかね、規模が。そのところで人材育成していくときに、当然ですけれども、一つの大学ではせいぜい数十人しかいませんので、そこだけで育てるというのはキャリアパスの意味でも非常に難しい。やっぱり横をつながなくちゃいけないと。最初はもちろん日本の中なんですけれども、今、一生懸命やっているところなんですね。
  今、お話を伺っている図書館の業務、その中にはもちろん旧来の業務があるし、その中でITががーっと入ってきて、慣れてない人もたくさんいらっしゃるときに、キャリアパスも作らなくちゃいけないという議論と、私、理解したんですけど、今、どのぐらいの規模になりますかね。我々が今対象にしているのは、国立大学にやるとすると90とかという大学でこういうふうな対象になる方、あるいはもし私学も含めて学術と図書館業務というので考えたときに、どのぐらいになるのかということが少し頭に入ると、人材育成というのはやっぱりそういうことをやらないと強化条件結構大きいんですよね。どのぐらいのものでしょうか。
【喜連川主査】    図書館員の総数を先生は聞かれていると思っていいですか。
【安藤委員】    まずそうですね。
【引原主査代理】    これは逸村先生の方が詳しいですよ。
【安藤委員】    先ほどお話を伺っていても、例えば京大の例とか筑波の例とかでも、数人がそういう研修を受けて、これを広めていくというのは非常に大切な話なんですけれども、少しやっぱりシステムとして全体像をつかまえて議論することが、特に海外との比較の話もするときには、必要であるという気がしました。
  もう一つ、すごく重要だなと思ったのは、図書館の業務として旧来のものに、ある意味でいえば情報発信が加わるというお話をされました。これからどんどん増えていくんじゃないかと。大学における情報発信というと、研究大学強化促進事業、RU11の集まりでも話題になりますのは、研究支援の専門職であるURAの方の役割として、IRと組み合わせて大学固有の情報発信をすることがある、事業の後半の5年間はそうなりますよ、ということが強く言われているんですね。ですから、情報発信という点では、日本の大学、満足しているところはないと思います。日本の大学の存在感、国際競争力を挙げるには、論文の数が減る問題を解決するという基本的な対策のほかに、情報発信不足を改善する必要が指摘されています。例えば、サイテーションもなかなか上がらないことにつながっています。そういう意味で情報発信、広報活動が不足していると認識している大学はたくさんあるんですね。情報発信・広報などをやろうとするときには、確かに図書館の方がデータとか論文などのソースに一番近いところにいる訳です。我々の大学も各種のデータベースを扱っているのは図書館の方々である場合が多い、実際に教員の研究情報を入力したりすることもあります。そこの方々がデータの管理と広報戦略を主要な担務としてやるということは、多分大学や研究の方にとってすごく頼られる専門職としての存在となるかなという気がしました。なお、情報発信は、各大学がやっぱり固有の情報を競争的に手法をとるんだと思うんですけれども、逆に、従来のジャーナル保有などは共通的な要素が多い業務でありますから、日本で一つそういう機能を有する機関があればいいのかなと素人的には思います。学協会や大学も含めて、引原先生がちょっとおっしゃいましたが、分野ごとの分担という話もありましたが。つまり、情報発信の方はかなり大学の独自色が出るのかなと思いますが、アーカイビングについては各大学が独自である必要が本当にあるのかどうかですね。ただ、日本はたしか大学リポジトリの中身として、ジャーナル論文の再掲よりも研究所報告とか普通学外に出てないものが多いとの報告がありましたので、それらはもちろん独自なものの情報発信です。でも、例えば昔で言うと、学位論文が100%国立国会図書館にアーカイブされ世界からアクセスできるように一元管理されていれば、別に各大学の図書館でやる必要も全然ないなという気がしました。
【丸山学術基盤整備室長】    先生、済みません。
【喜連川主査】    どうぞ。
【丸山学術基盤整備室長】    今、統計の話がちょっと出ましたのであれですが、国立大学の図書館の職員の総数は、いろんな取り方がありますけれども、約1,500人というふうにイメージしていただければ。
【逸村委員】    ちょっと細かいのを今見付けたので、ざっと申しますと、一応、昨年の5月の時点で国立大学図書館の専任職員は1,617ですね。臨時がフルタイム換算で2,087と。公立・私立を合わせると、国公私立全部合わせると、昨年の5月ですが、4,999という、5,000を切ったと、そういう数字が昨年。ただ、これは年々減り続けています。で、一応、臨時も申しますと5,715で、フルタイム換算のようですから、トータルで1万714と。もちろん、この中には庶務系というか、総務系というか、図書館員というよりは一般大学職員の方もあるかと思います。
【安藤委員】    5,000人ですか。
【逸村委員】    はい。
【喜連川主査】    安藤先生、よろしいですか。かなりのヒューマンリソースにはなっているので、そこを何かうまく動かすことを議論できればいいと思いますね。
【竹内委員】    確かにそれなりの数の方が現状でもいると思いますけれども、ただ、大学の設置形態、つまり国立・公立・私立の違いによって職員制度は随分大きく変わってきてしまっているので、一律にカウントするのはやや無理があるかと思います。私の理解しているところでは、まだ図書系職員と言われる人たちが明確に残っているのは今や国立大学だけで、私立大学、公立大学の場合には基本的にはその他の職員と同じというか、図書館、教務あるいは会計といったような部署を異動で回っているタイプの方が、その一つの職場として図書館で働くという状況にあると理解すべきかと思います。専門職的な仕事をより強化していくという方向を考えたときに、もともとのリソースとしてある人材のプールは、もはや国立大学にいる1,500人程度しかいないというふうに考えるべきで、その人たちに対して次のステップをどのように見せていくのかというのが課題になるのではないかと思います。
【喜連川主査】    その辺は、むしろ先生の協会でもうちょっと数字を整理していただいてもいいのかもしれないですね。
【竹内委員】    続けて発言させていただいてよろしいでしょうか。
【喜連川主査】    はい。
【竹内委員】    先ほど、ビジョンの在り方と、それから10年先、もっと20年先を見越した図書館の在り方ということがございましたけれども、今回のこのビジョンに現状の整理という側面があるのは事実であります。過激な10年後、20年後というのは、必ずしも明示されておりません。
  先ほど引原先生のプレゼンの最初にございましたけれども、法人化による、あえて言えば負の側面といった部分というのを、我々図書館というのがこれまで横のつながりを維持してきた中でいかに乗り越えていけるかというところに一つのポイントがあったと思います。またそこが大きなポイントでしたので、先ほど喜連川先生もおっしゃったような10年後、20年後先の画期的なビジョンというふうにはなっていないと御理解頂ければと思います。
【喜連川主査】    でも、ビジョンというのはやっぱりフォワードロックですよね。
【竹内委員】    それはそうです。
【喜連川主査】    先生、どうぞ。
【赤木委員】    ちょっと私の問題意識でお話ししたいのですが、それは安藤先生が今御指摘のように、いわゆる研究広報に対して図書館がどう関わるかということです。それから、きょう、引原先生から御紹介があった京都大学の事例で、これは知の共有の部分のところで、要するにデータの保存に並んで、発信機能を持つ新図書館にかかわって指摘します。私は、学術情報を――これは学術情報について、これまでこの委員会で議論されている生の研究データをどのように保存して取り扱うか、今ひとつは成果物をどうするかという問題の2つがあると思います。私は成果物の部分で、メタデータをしっかりやって、学術情報の国際的な流通に乗りやすくするということを、図書館の仕事として取り組むことが非常に重要ではないかと、以前から問題意識として持っております。このことは余り議論されてないように思います。アーカイブ資料でもやはりそうでありまして、1点1点のアーカイブ資料にも目録情報のルールがあり、それが学術情報の流通ルートの中に乗ってくることが重要であると思います。総体的にみて我が国の論文の生産数が少なくなっていることについての懸念はもとより重大ですが、他方で、やはり流通が悪いとデータ化されていても気付かれないケースがあると思います。発信機能の重要性はもちろんですが、発信機能を十全に働かせるためのメタデータ的なところを強化していくことも図書館の重要な機能ではないかと強く今感じておるので、発言させていただきました。
【喜連川主査】    どうもありがとうございます。安藤先生にも御指摘頂いた正に発信の部分をと思うんですが、余り強くは書かれていないんですけど、引原先生からごらんになって、ここで言う発信というのをまずどんなふうに捉えればいいのかというところも含めて、ちょっと御紹介を頂けると有り難いんですけど。
【引原主査代理】    京都大学の事例ということだけで申し上げざるを得ないんですけど、国立大学図書館協会としてどういう方向性を持たせているというわけでは当然ないわけです。ただ、現在、研究データの保存に関しては、図書館だけではなくて、岡部先生のおられるメディアセンターあるいは情報環境機構、大学全体の機構ですね、それと連携しながら、まず保存に関しては先ほどダークアーカイブと申し上げましたけれども、オープンにするかしないかは別として保存していく。その中で、ある時期を経たもの、あるいは公的なものとして京都大学、パブリックなデータとして出していくべきものというのを考えていかないといけない。ただ、そのデータは既に出ているものも研究所とかにございまして、それを全国に横に展開するような形で出していく。それはワンストップでどこからでもそのデータに入ってくるような形というのがまずアピールする機能だと思います。それが発信機能というのはちょっと違って、保存したものに関して見えるという機能なんですけれども、研究データの発信機能という意味では、もっと使っていただくように、今、理系の部分では特にジオサイエンスとか宇宙関係のデータというのは各大学で使えるようにはなっているんですが、大学としてそこにリンクをきちんと張ってないんです。研究所あるいは研究室のサーバーだったりする。そういうまちまちな状態というのをやっぱり大学としてはきちんと整理していかないといけないとは思っています。
  その上で、パブリックなデータとして認定を受けないといけない。これはなぜこれを書いているかといいますと、Springer Natureが既にパブリックなデータベースというのは何か、というのを定義していて、そこになければ研究データとして認めないというのを言ってきているわけですね。これはデータをとられてしまうということは昔から言っていると思うんですけれども、それに相当するものを日本ではやっぱり作っていかないといけない。それはNIIも一応やっていただいていて、どういうふうにするかというのは議論させていただいているんですけれども、そこまで待っていられないわけですね、はっきり言って。できるのを待っているわけじゃなくて、できたらそこに移せばいいわけですけれども、我々としてどういう状態かというのを把握して出していくということはやっぱり重要なことだとは思っています。データに関してはそういうことです。それが御質問の答えになっているかどうか分かりませんけれども。
【赤木委員】    それはよく分かります。私どものような社会科学系だと、アメリカであればUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)を例にとれば、あなたの業績をWeb of Scienceから採りますか、Google Scholarから採りますかと、それぞれの研究者自身の業績が採録されやすいデータベースを選択して、そこから図書館が研究者情報を構築してどんどん流通させることを図書館がファシリテートしていますので、そういうようなアイデアも含めて考えるべきであろうと感じています。
【喜連川主査】    ああ、そういうことですか。
【赤木委員】    要するに、研究者に選ばせるわけですよ。「あなた、Web of Scienceから採りますか?  それともGoogle Scholarから採りますか?」、もう1個何だっけな。理系の人だと、Scopusじゃなくて……。
【逸村委員】    Scopusです。
【赤木委員】    Scopusか。何かチョイスできるんですね。「僕、Google」とか何かやって、そうして流通するということになると、そのレベルのことを申し上げています。ナショナルな競争力を保持する施策というよりも、どちらかというとそれ以前の問題で、既に出たものがもっともっと流通するのは、学術情報の国際的な流通経路に載せられやすいような方策を考えないといけないんじゃないかということで、それはやはり図書館は得意だと思うんですね。そういう趣旨の問題意識です。
【喜連川主査】    そのときの先生がおっしゃったメタデータというのは何でしょう、乗っけちゃえば、もうそれでしまいじゃないんですか。
【赤木委員】    やっぱりこれは逸村先生辺りに詳しく御説明いただければと思いますが。基本的には、国際的な標準がございます。例えばアーカイブ資料だったらダブリン・コアだとか、それから図書だとMARC21でしたっけ、そうした目録データ標準がアメリカ中心に成立していますので、それを無視して独自の道を行くのは難しいだろうと私は感じています。
【喜連川主査】    論文じゃなくて図書ですよね。本ですよね。
【赤木委員】    でも、e-journalの流通もあります。
【逸村委員】    雑誌論文等であればDOIとかそういうふうになりますし、それを人で、先ほども出ましたけど、ORCIDとリンク付けてという、そういう格好から展開されます。
【喜連川主査】    もっと何かナラティブなメタデータのことかなと思っていたので、ちょっとお伺いした次第です。やっぱり一定程度議論する中で問題の本質的なところというのが少しずつ深掘りすることができたかなと思っております。この後また文部科学省の情報参事官付の方々といろいろ御相談をしながら、この問題をどんなふうに考えていくかという、安藤先生から頂きましたように、図書館自身が何を、という方向感と同時に、大学の中で図書館にこれをしてほしいという期待感も併せて議論していくという、この二つでしょうか。それとやっぱり、先ほど申し上げましたように、全体のフローの中で研究のスタイルそのものが非常に大きくシフトしており、図書館は、ここを僕たちやってみるのがいいかな、みたいなところの図柄を何か具体的に――字だけしかないので、大変図書館らしいんですけれども、もうちょっと何かスケマティックに描いた資料とかいうのを……。
【引原主査代理】    作るようにということですね。
【喜連川主査】    副会長に申し上げたらすっと出てくるかどうか分からないんですが。
【引原主査代理】    いや、そんなのはすぐには出ないですけれども、それはもうおっしゃるとおりで、イメージがつかめないというのは当然ありますよね。
【喜連川主査】    ですよね。
【引原主査代理】    私、絵で描いた方がいいといつも言うんですけれども、やっぱりそれはかなり個性が出てしまいますので、国大図協の方でそういうものが見えやすいものというふうにちょっと提案をさせていただきたいように思います。
【喜連川主査】    一私人として、引原先生と竹内先生に前の世界をちょっと描いていただいてもいいのかもしれないですね。
  ということで、きょうは図書館の分野を御議論させていただきました。若干もたもたしたところもあって誠に申し訳ないところではありますけれども、いろんな御意見、貴重な御意見を頂きまして、大変ありがとうございました。改めて事務局で整理をさせていただければと思います。
  それでは、事務局から御連絡等ありましたらお願いいたします。
【玉井学術基盤整備室参事官補佐】    本日の会合の議事録については、いつもと同じように、各委員の皆様に御確認頂いた上で公開ということにさせていただきたいと思っております。
  また、資料5のタブをクリックいただければと思いますけれども、次回、第6回ということで12月13日(水曜日)、きょうと同じ15時から17時の時間帯で、場所も本日と同じこの文部科学省3F1特別会議室で第6回の会議を予定しております。
  年明け以降の日程については、この後、追ってメールで伺いをお送りさせていただきますので、御回答の方、よろしくお願いいたします。
  事務局からは以上です。
【喜連川主査】    それでは、本日、これで閉会とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。


――了――

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麻沼、齊藤
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メールアドレス:jyogaku@mext.go.jp(コピーして利用される際には全角@マークを半角@に変えて御利用ください)

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