第9期学術情報委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成29年5月31日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

東海大学校友会館「富士の間」

3.議題

  1. 電子化の進展を踏まえた学術情報流通基盤の整備と大学図書館機能の強化等について
  2. その他

4.出席者

委員

喜連川主査、引原主査代理、赤木委員、安藤委員、逸村委員、井上委員、岡部委員、北森委員、五味委員、竹内委員、谷藤委員、辻委員、永原委員、美馬委員

文部科学省

(科学官)相澤科学官
(学術調査官)小山学術調査官、越前学術調査官
(事務局)原参事官(情報担当)、丸山学術基盤整備室長、玉井学術基盤整備室参事官補佐

オブザーバー

安達国立情報学研究所副所長

5.議事録

【喜連川主査】    おはようございます。時間になりましたので、ただいまから第2回の学術情報委員会を開催したいと思います。
  前回は今期の1回目の委員会ということで、今後の学術情報流通や基盤整備に関しましての課題、方策について自由に御議論を頂戴いたしましたが、全体として見ますと、特定の事項に御意見がかなり集中したということを感じなくもありませんので、本日は、前回御意見が少なかった部分も含めて、一通り御意見を頂ければと思っております。
  前回御欠席でした井上委員、北森委員におかれましては、一言御挨拶を頂ければと思いますが。
【井上委員】    一橋大学の井上でございます。前期からの引き続きでございます。よろしくお願いいたします。前回の審議事項に関しての発言は後ほどということですよね。
【喜連川主査】    いや、どうぞ何でもおっしゃってください。
【井上委員】    前回の議事録を拝見しますと、議論が集中していたオープンサイエンスについていえば、やはり分野によって相当状況が違うと思います。前回は材料の関係と天文の例を挙げて相当な違いがあるという指摘がありましたが、様々な分野についてどういう状況にあるのか、もう少し網羅的に調べたものがあるでしょうか。どの分野でどういう状況にあるのか、どういう類型化ができるのかということを見ていかないと、全体を見通した議論ができません。そういったデータといいますか、エビデンスがあれば示していただきたいと思いました。
  以上です。
【喜連川主査】    どうもありがとうございます。
  北森先生、お願いします。
【北森委員】    東京大学の北森です。よろしくお願いいたします。
  私も、前回から引き続いて2期目でお世話になります。イギリスの王立化学会、RSC、Royal Society of Chemistryで10年以上論文の出版関係に携わってきていますので、そういう意味では、現場から声をお届けするのが私の役目かと心得ています。
  Royal Society、我々ケミストリーの分野では、あと、アメリカ化学会、ACS、この二つのところにハイインパクトファクターのジャーナルが集中していて、国費でなされた研究でいい成果が出れば、そちらに論文が行く。それだけじゃなくて、そういう巨大学会が、データジャーナルを戦略的にもう10年以上、戦術も含めて既に実施する体制にきているので、今後は論文だけじゃなくてデータもそっちへ行ってしまう。そうすると、国費でなされた研究の大半の成果がそちらに吸い上げられ、しかも、審査している間は一切出てこない。その間にビッグデータマイニングでいろいろなデータの解析もできるだろう。
  一方、我が国の論文誌の投稿者は半数どころか、7割、8割が海外。これからの国からの論文が多い。そうなると、我が国の国費でなされた研究は外に行き、そして、我が国の論文の出版は外のこれからの国の、ある意味手助けということも含めて出されます。こうした学術情報の流れというのは、大局的に見ると、どうしたらいいのかということをこの辺で少し考えないといけないんじゃないかと思っております。
  以上です。
【喜連川主査】    どうもありがとうございました。それに加えまして、国立情報学研究所(NII)の安達副所長にはオブザーバーとして御出席頂くことにしております。よろしくお願いします。
【安達国立情報学研究所副所長】    よろしくお願いいたします。
【喜連川主査】    では、初めに、事務局から配布資料の確認と傍聴者の状況の報告をお願いいたします。
【玉井学術基盤整備室参事官補佐】    資料については、ダブルクリップで留めたものを机の上に置かせていただいておりますけれども、次第に資料の一覧を載せております。資料といたしまして、資料1から5までを御用意しております。資料2、資料4については、それぞれ枝番が付きまして、2-1、2-2、4-1、4-2となっておりますけれども、また、参考資料として二つお付けしております。万が一過不足等ございましたら、事務局にお申し付けください。
  また、本日の傍聴登録ですけれども、28名の方に御登録頂いております。なお、報道関係の御登録はございません。
  以上です。
【喜連川主査】    ありがとうございます。それでは、審議に入りたいと思います。
  まずは、事務局から、前回の委員会におけます主な意見について説明をお願いいたします。
【丸山学術基盤整備室長】    学術基盤整備室長をしております丸山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、前回の振り返りを含めまして、今、井上委員からも少しコメントがございましたけれども、私から前回の主な意見を御紹介したいと思います。資料1をごらんいただきたいと思います。
  まず1ページ目でございますが、丸の三つ目、学術情報流通に係る諸課題や基盤整備の関連で、論文のオープンアクセスという観点については、分野によってジャーナルの状況は異なるということで、学会自らが取り組んでいるもの、あるいは海外の大手出版社をプラットフォームとしているものなどがあり、どのようなビジネスモデルとして持続可能であるのかが課題であるといったようなこと。
  さらにその次、オープンアクセスはいまだプロセスに乗り切れていないものもあるのではないか。ゴールドスタイルはコストが研究費を圧迫するということで、研究自体を阻害している現状もある。一方で、そういうことをサポートしていくことによって発信力を我が国として高める方向性もあるのではないかといった御意見。
  一つ飛ばしまして、前回一番御意見の多かったオープンデータに関連してございますけれども、それの二つ目でございますが、オープンアクセスとは異なるレベルの話ではないかと。オープンデータは、分野による研究のスタイルの違いもあり、どの段階でどこまでのデータをどう出していくのかということはかなりデリケートな問題で、各分野の研究スタイル等を踏まえて議論が必要ではないかといったような御意見を頂いております。
  2ページ目に参りまして、一番上でございますが、一方で、オープンサイエンスとオープンアクセスは異なるとの意見もあるけれども、オープンアクセスの論文と、それに関連するデータは基本的には分離できない現状から言えば、オープンデータがなければオープンアクセス自体が成り立たない。他方で、データ自体も公認されたものである必要があり、非常に重層的な課題ではないかといったような御意見。
  次のところですが、オープンデータに関して、現在の日本の立ち位置を考えたときに、どのような方向に進むことで日本自体が強くなるのか、あるいは、国際的なプレゼンスが得られるかといったような視点に立って、さらには、産業界と大学が非常に良いパートナーシップを作れるような議論が大事であるといったようなこと。
  ただ、上から3番目、今の議論のように、オープン化に疑念を持つ研究者はかなりいるけれども、それはデータを公開することのインセンティブ、さらには、データがほかの人に利用されて、先に論文化されてしまうことを避けたいといったような意識も働くように思うと。データ公開が個々の研究者にとってプラスに働くといったような面も重要ではないかといった御意見。
  それから、次の丸ですけれども、データというものは死蔵するものではなく、公開することによって科学に寄与するとした上で、そのことがきちんと研究者の評価にもつながる仕組みが重要ではないかといったようなこと。
  さらに、企業との共同研究、非常に利害等が絡むわけでございますけれども、全て非公開の扱いということであると、社会的な視点からはやや違和感があるのではないか。どのあたりから公開可能なのかの線引きも重要であるといったような御意見。
  それから、一つ飛びまして、海外の大手出版社に論文の流通権を握られているような現状の中で、次のフェーズとして、データが狙われているのではないか。明確なポリシーを出していかないと、商業主義に論文もデータもとられて何も残らないことになりかねず、データを守りながら使っていくという戦略も重要であるといったようなこと。
  次の丸でございますけれども、データをポジティブに使いたい、利用したいと思わせる設計が大事ではないか。
  その次の丸ですけれども、研究に掛かったコストを回収していく意識は非常に重要であって、論文やデータを何らかの形でお金に換えて、それによって情報公開の仕組みを運営していくビジネスモデルを検討して、海外にアピールしていくような戦略が重要ではないかといったようなこと。
  2ページ目、最後の丸ですけれども、行政データの情報流通については、プラットフォームのようなものができると動き始めるのではないか。その先に、研究に活用するといったようなフェーズを構築することが重要で、非常に良い例、グッドプラクティスが出てくれば取組が促進されるのではないかといったような御意見。
  3ページ目に参りまして、一つ飛ばして二つ目の丸でございますけれども、データを公開するといったときに、生データのままでは活用ができず、データ処理のソフトなども含めて公開されなければ意味がない場合もある。そのあたりの仕組みについても議論する必要があるというようなお話がございました。
  それから、機関リポジトリの機能強化という視点に関しましては、オープンアクセスへの対応として、機関リポジトリの活用は方策の一つではあるけれども、設置機関は多いものの、中身を見ると論文掲載数は非常に少ないという現状にある。その原因はどこにあるのか、また、海外の状況はどうなっているのかという御質問がございました。これについては別に資料を御用意しておりますので、後ほど御説明したいと思います。
  次の丸ですが、機関リポジトリはオープン化の流れの中で、その限界が見えつつあると。機能強化を検討するにおいては、国全体の利益を考えながら深掘りをしていく必要もあるのではないかという御意見。
  一方で、ジャーナルの掲載は非常に少ないとはいうものの、かつてはごく一部のための存在であった紀要論文が多数掲載されて、サーチエンジンあるいはディスカバリーサービスで検索できるようになり、大学においては、授業の流れの中で学生に活用されるという効果も近年出てきているといったようなこと。
  それから、リポジトリについて、インフラ整備と運用体制はほぼ着実に進歩してきているけれども、蓄積をするだけではなく、今後は使えるようにする、という必要性は皆に共有されているのではないかと。また、機関という枠組みにとらわれずに、分野ごとの特性や強みなどにも考慮して取組を検討すべきではないかといったような御意見。
  それから、ある機関の強い分野とそのほかの機関の強い分野が合わさったシナジー効果というものがリポジトリの先にあるのではないか。分野リポジトリとも言うべきものが当該分野のニーズを取り出して具体化するために、学協会、あるいは大学図書館、大学自体が協働していくことが重要であるということ。
  リポジトリの関連、最後の丸ですけれども、機関リポジトリが縦糸だとすると、分野リポジトリは横糸のようなもので、それらを統合的に議論しながらどう進めていくべきかについては検討すべきではないかといったようなことがございました。
  それから、本日、できれば集中して御議論をお願いしたい部分ではございますけれども、コンテンツの電子化等を背景とした大学図書館機能の強化といった観点でございますけれども、3ページ目の一番下、大学図書館機能そのものは本質的に変わっていないんだろうけれども、今日は従来のように、紙の資料を集めて活用できるようにすればよいというものではない、次のステップとして大学図書館をどう考えていくのかというところに来ているのではないかという御意見。
  4ページ目に参りまして、最初の丸でございますが、中ほど、多様な大学図書館が存在する中で、ベースラインとして何を維持して、どのような役割を果たしていくべきかという点、あるいは、オープンサイエンスの流れの中で先進的な機能にどう取り組んでいくべきかという二つの点について明確にすべきということ。
  その次の丸ですが、多くの大学図書館職員は従来のベースで仕事をしており、新たな形にシフトしていくためには、このベースラインの部分をどう維持し、さらに、その上で新たな展開にどう対応していくかが課題であると。その際に、多くの図書館で認識されているベースラインそのものが本当に妥当なのかどうかも確認する必要があるのではないかという御意見。
  それから、IT化がどんどん進む中で、大学図書館の今までのサービスの再定義、関連して、役割が激変している部分の議論を重点的に行う必要があるのではないかということ。
  その次の丸ですが、アクティブラーニングのフェーズは一応収束に向かいつつあって、次は世界的に見てもリサーチコモンズ、すなわち研究に対してどのように大学図書館が貢献するかというフェーズに移りつつあるという御意見。
  それから、大学図書館が、ある種のコーディネーター的な役割を果たしていくことが重要になってくるのではないか。このような機能も含めて、大学図書館の次の時代の役割というようなものを議論してはどうかと。
  それから、一部の進んだ図書館だけが先進的な取組を行うということではなくて、多くの大学図書館でコンセンサスが得られ、一定程度のサービスが提供できるレベルのベースライン、これを明確に示す必要があるのではないか。
  先ほどにもありましたが、行政データのアクセスのアプローチといったようなものは、大学図書館であればどこでもできるということで、そういう取組自体が今日の大学図書館のベースラインであると発信することも必要ではないかということ。
  それから、その次の丸ですが、様々な取組を行う中で順調に機能した例としては、例えば、遺跡リポジトリのような、これまで余り流通していなかった研究資源を大学図書館がプラットフォームを提供することで広く使えるようになったものがあると。このような活動をより一般化した言葉にして、これからの大学図書館機能の新しい活動の方向性として発信し、必要な資源を投入していくことが重要ではないか。
  一つ飛ばして最後の丸でございますけれども、イノベーションということで考えれば、違う分野の研究者が出会えるようにするために、データの見せ方という点に注力する方向性も考えられ、何かキュレーション的な機能も重要ではないかといったような御意見がございました。
  かいつまんでの御説明でお聞き苦しい点があったかとも思いますけれども、前回の振り返りということで御紹介をいたしました。
  以上でございます。
【喜連川主査】    大変ありがとうございます。非常に上手におまとめいただけているので、こんなにすばらしい論点を全部カバーしたんだなというのが、改めて皆様のパーティシペーションに感謝したいところですが、見ていただきますと分かりますように、やはり前半部分がちょっと多くなりまして、コンテンツと大学図書館機能の強化の部分の議論は若干希薄でありましたことから、本日はその部分をまず順次御意見を頂いた後に、お時間がありましたら、学術情報流通に関わる諸課題や基盤整備にもう一度戻りまして議論を進めたいと思います。
  それでは、この議論に先立ちまして、事務局で御用意頂いている資料につきまして御説明頂けますでしょうか。
【丸山学術基盤整備室長】    引き続き失礼いたします。今期、この委員会におきましては、これで確定ではございませんけれども、前回の会議にお出しさせていただきました審議事項の案というもの、参考資料1できょうお付けしてございますけれども、大きく分けて三つの論点があるのかなということで考えています。今、喜連川主査からも申し上げました、学術情報流通の基盤整備の関連と、大学図書館に関連した機能強化の話、ネットワーク等々の情報基盤の強化というような観点がございますが、まずは、大学図書館の機能強化関連についての資料を御説明したいと思います。
  資料2-1をごらんいただきたいと思います。この資料は、図書館資料費の状況の資料でございます。本年の3月末に私どもから公表いたしました学術情報基盤実態調査という調査がございます。この結果によれば、四角の中でございますけれども、平成27年度の実績でございますが、図書館資料費のうち、特に電子ジャーナルに係る経費が295億円となっています。全体資料の約4割を占めている状況でございます。一方で、紙媒体の資料に係る経費は340億円ということです。
  左下のグラフをごらんいただきたいと思いますが、図書館資料費の推移と内訳を表してございます。これを見ますと、その傾向、これ、ほとんど説明不要かとも思いますけれども、電子ジャーナルの割合が順次伸びてきていると。電子ジャーナルと電子書籍等も含めた電子的な資料の割合が過半数を占めるに至っているわけであります。
  一方で、資料2-2をごらんいただきたいと思いますが、図書館の業務の関連に多少焦点を当てたものでございます。電子化に伴って図書館業務がどう変化をしてきたかといったもののイメージでございますけれども、特にこの資料はジャーナルを一応フォーカスしてございますが、ジャーナルに関して、大学図書館の業務を大まかに、一番左、「冊子体」と書いてあるところがありますが、九つの役割、選定、契約、目録、受入れうんぬんといったようなことで分けて、ジャーナルが電子化されるに伴って図書館の業務がどう変化するのか、していったのかということを示したイメージでございます。色分けは、濃い色は業務としてマスト、色のない部分は必要性が非常に低くなったもの、必要なくなったもの、途中の色は一部残っているであろう業務を表しています。
  紙媒体、冊子体の時代は、選定から保存まで、全体の業務が図書館の業務としてマストであったわけでありますけれども、電子ジャーナル化、電子化されるに従いまして、選定、契約、目録といったところは残るものの、ネットを通じて見られるということで、入ってくることもあり、受入れのところはなくなるのではないか。あるいは、支払等は残るものの、供用、相互貸借という観点は一部にとどまるのではないか。製本、保存はもう必要ないといったようなことに移行してきているということでございます。
  それが2000年前後だと思いますけれども、電子ジャーナルがビッグディールと言われる、包括的購読契約に全体として移行する流れがございましたが、ビッグディールに移ってまいりますと、タイトル数という意味では非常に網羅的に見ることができるといったようなことを背景として、選定の部分とか目録の作成の部分とかいうものも一部にとどまる。それから、相互貸借の部分は多少残るものの、全体としては白い部分が目立ってくるような形に移行してくると。要は、この資料で見ていただきたいのは、電子化に伴っていくと、大学図書館の中で行われる業務自体が少し変遷をしてくるというか、必要なもの、必要でなくなったものが明確に見えてくるといったようなことが見えるのかなと考えてございます。
  それから、もう一つ、資料を御用意してございますけれども、資料3でございます。実は機関リポジトリは、学術情報流通の枠組みのカテゴリーに今入っているのでございますけれども、大学図書館との関わりでは、運用自体、図書館が主体ということもありますので、大学図書館機能の強化という観点でも非常に関連が強いのかなということで御用意いたしました。
  また、先ほど、前回の主な意見のところでも申し上げましたけれども、きょう、家委員が御欠席でございますので、またここはフォローを差し上げたいと思いますけれども、家委員から御質問を頂いた件でもございますので、それにお答えするという観点で資料を御用意させていただいております。
  日本において、機関リポジトリの構築機関数という意味でいけば、ずっと右肩上がりで来ていて、29年3月末で681という数字が挙げられております。グラフを見てもらいますと、そんなに極端な増ではないんですけれども、平成24年に、ぽんと数が、90、100近く増えているフェーズがございますけれども、これはNIIでJAIRO Cloudというサービスを開始したことがポイントになっているのかなとも思っております。その中で、数は681ということであるわけでございますが、登載されている中身はどういうものがあるのかというものを右のグラフで示しております。
  全体として見ると、先ほど申し上げたように、紀要論文がかなりの割合を占めています。割合的には、28年度ベースで56%という数字が出ております。それから、学術雑誌論文に関しては28年ベースで22%。実は、26年と27年は、このヤマブキ色の部分でございますけれども、それぞれが全体の15%ぐらいを占めていて、そういう意味では、28年度は7%増でございますので、伸び方としてはかなり、例年というか、歴年に比べると多いのかなという感じがいたしますけれども、全体として見るとその程度にとどまっているということでございます。
  世界でも機関リポジトリがかなり普及してございますので、そことの比較で見てみたいと思いますが、左下の部分でございますが、まず数の比較で申し上げますと、日本は681ということで飛び抜けて多いわけでございます。2位がアメリカの469、3位がイギリスの252。以下、ドイツ、スペイン、フランス、イタリアになっています。イタリアまでの七つの国で、全体として世界の51%のリポジトリ数を占めるということで、先進国が引っ張っている形になっているのかなと思います。
  2ページ目をおめくりいただきますと、各国の状況を多少比較した形の資料になっています。ここは主要5か国、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスを比較したものでございます。
  まず、リポジトリの中に登載されているコンテンツの件数という観点から見ると、3,000万ぐらいですか、アメリカとドイツが飛び抜けて多いほかは、日本は一番下ではありますけれども、イギリス、フランスと、少し桁の違う形になっております。アメリカ、ドイツがコンテンツ数では飛び抜けていることが言えるのかなと思います。
  右側のコンテンツの構成を見てみますと、これは国ごとに多少特徴が出ておりまして、日本は紀要論文が非常に多いという話は先ほど申し上げて、ここにも表してございますけれども、アメリカなどは、どちらかというと、その他の分類でございますけれども、音声とか映像とか調査資料、ソフトウエア等がかなりのものを占めている。それから、イギリスが逆に学術雑誌の論文が40%以上を占めている状況にあります。
  また、ドイツは、データセットと呼ばれているものが20%以上を占めるといったような状況で、フランスにおいては、どちらかというと教材が30%以上の割合で登載がなされるということで、各国、それぞれの特徴を持った運用がされている状況にございます。
  3ページ目でございますけれども、これは2ページ目と関連がございますが、全コンテンツ当たりの雑誌論文の登録率、2ページのコンテンツ構成のうち論文のみに特出しした資料でございますけれども、全体として、前回の御質問で、なぜ日本はなかなか進まないのかといったような御質問がございましたが、機関リポジトリにおける学術雑誌論文の登載が進まない原因としては、既にジャーナルで公表している論文の再登載となるため、研究者のインセンティブが必ずしも高くないといったような御指摘、あるいは、学協会の著作権ポリシーが定まっていない場合が多いといったようなことが、過去のこの委員会の御議論の中でも指摘がなされているところであります。機関リポジトリの現状ということで、資料を御説明いたしました。
  図書館の関連は以上でございます。
【喜連川主査】    ありがとうございました。
  それでは、ただいま御説明を頂きました資料のほか、参考資料1、これは最後にある資料でしょうか。これはこれまでの審議の流れについての説明でございますけれども、今期の審議事項案も御参照頂きながら御議論をお願いできればと思います。
  議論の流れといたしましては、まず、大学図書館の機能強化、これは前回、少なかったと思いますので、まず、そこについて御発言をお願いできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。図書館をよく使っておられる方と、今となっては余り行ってない方とおられると思うんですけど、受入れが本屋さんから来て、図書館に入れて、インデックスを作って、どこの棚にありますというのを言って、そこを取ってきて渡すのが供用。電子になれば、当然その部分が圧倒的に楽になるということで、逆に言うと、上から九つのプロセスの中で、本当はどれぐらい、それぞれが仕事のポーションとして大きいのかというのも何かあれば。竹内先生がにこっとされておられますけれども、多分、貸し出すところって結構お忙しく、私も区の図書館によく行くんですけれども、非常にビジーにされておられるんじゃないかと思うんですけど、そんなことを少し感じました。
  後半の機関リポジトリの件に関しましては、やっぱり件数も分かったようで実は分からないようなところがあったり、じゃ、ボリュームにすればいいかというと、さっきの映像が入ると全部になってしまったりと、なかなか難しいところはありますけれども、いずれにしても、数千万というところからしますと、日本とか、あるいはイギリスとかフランスは、アメリカ、ドイツに比べるとやや少ないことは否めないかなというところで、この辺の改善のようなものも必要になってくるかなということが感じられますが、この程度の前振りをすれば。
  はい、先生、よろしくお願いします。
【逸村委員】    大学図書館の話ですので、竹内先生と目が合っちゃったので、私から。
  資料2-2の、今、喜連川さんから、冊子体から有料電子ジャーナルで包括的購読契約、いわゆるビッグディールという流れがありました。冊子体の頃の話をしてもしようがないんですけれども、このときは選定というのも、有料電子ジャーナルの頃までは必要でした。つまり、限られた予算で何を買うかということに関して、古いことを覚えていらっしゃる方は、お金がこれだけあり、この雑誌を買うか買わないかそういう議論を毎年していていました。これが現在の包括的購読契約選定においては、いわゆるビッグディール、エルゼビアとかシュプリンガー・ネイチャーとか、それに関しては、まとめ買いをしてしまう。ただし、そのお金は、従来の紙で払っていたものプラス若干という、その程度のことで読めるようにする。要は、出版社としては、サーバーにアクセスしてもらえばそれでいいわけで、印刷とかそういう手間を一気に省くし、継続して契約してもらうことの方が重要という、2000年当時の国立大学図書館協議会、その後の私立大学図書館のバルク、そしてJUSTICEの交渉で現在に至っています。
  ただ、値上がりが常に続いていて、円のレートの問題等々、先ほど、資料もありましたけれども、消費税等々のことで、最近、どこの大学も苦しくなっているという、そういう話ですが、とにかく選ばないで済む選び方は当時としては画期的だったと思います。
  あと、業務量だけ言うと、受入れというのが大変でして、週刊誌が毎週届くんだというのは、当時の郵便事情では結構危なかったです。そういうわけで、昔の大学図書館の書庫に行かれても、「欠号」という名前の、何号か欠けているというのはあるかと思います。あれは、届いてからなくなった場合と、初めから着かなかったという二種類あります。で、着かないのを追っ掛けるとか、そんなような仕事が仕事量としては大変でした。
  先ほどのビッグディール契約で、大手の大学図書館、研究所ですと、それこそ数万タイトル、契約できるようになって、それまではビッグディール契約がなし遂げられるまでは、大きな大学図書館でも1万タイトルあるかないかでした。ということで、研究者が多く利用できるようになったということで研究環境がよくなったのが2000年代でした。ただ、これが、先ほど申し上げましたように、その後、値上がり等々で非常に苦しんでいるという、そういう話です。
【喜連川主査】    ありがとうございます。より丁寧な御説明を頂いたと思うんですけれども、今後の図書館機能の強化という面で見たときに、今、先生が御説明頂いたような変化の中で、この委員会として図書館を今後どうしていくべきかということの議論の論点が少しあると有り難いと思うんですけれども。
【逸村委員】    その点に関しては、それこそ引原先生や竹内先生の方がお詳しいんですが、外部者が言った方がいいんでしょう。昨年の6月に国立大学図書館協会で、国立大学図書館協会ビジョン2020というものを打ち出しました。そこで基本理念として、「今日の社会における知識基盤として、記録媒体のいかんを問わず、知識、情報、データへの障壁なきアクセスを可能にし、それらを活用し、新たな知識、情報、データの生産を促す環境を提供することによって、大学における教育研究の進展とともに、社会における知の共有や創出の実現に貢献する」と。もうそのままでして、そういうビジョンを掲げて、それを基に具体的なことを議論、施策、あるいは各大学図書館が努力をしようではないかという、そういうことを打ち出しています。要するに、ビジョン先行で、あと、具体的な施策に関しては、みんなで当事者意識をもって議論していこう、と。
  図書館のいいところは、協力し合って、何も損することがないんですね。自分のところだけが独自にやるメリットはないので、そういう面でも、このようなビジョンを掲げて新しいものを目指すことになります。あと、重点領域として、知の共有、知の創出、新しい人材、知の共有、創出のための人材の構築等々が掲げられておりまして、今はここら辺の話から進んでいくのかなとは思っております。
【喜連川主査】    それは、どこかに入っていますか。
【丸山学術基盤整備室長】    本日は御用意ございませんが、図書館の議論を深掘りするときに、今、逸村先生からもありましたけれども、6月に国立大学図書館協会が取りまとめておりますので、国大図協の関係の方々にお越しいただくなどで、少し詳細な内容を御説明頂いてはどうかと考えています。
  内容的には、今、逸村先生、御説明していただきましたけれども、基本理念を定めた後には、重点領域、何を重点に図書館として取り組んでいくかといったようなことで三つの視点、繰り返しになりますけれども、知の共有と知の創出、新しい人材という観点で整理がなされ、図書館としてこれに全力で取り組む必要があるようなまとめになってございます。
【喜連川主査】    ありがとうございます。
  辻委員、どうぞよろしくお願いします。
【辻委員】    大学図書館に関しては余り詳しくないものですから、企業の研究所に勤めているという経験からお話をさせていただきます。企業の研究所とはいっても、小さいながらも図書館を持っておりまして、今、どんなふうになっているかというところなんですけれども、こちらの「図書館資料費の推移及び内訳」というところでグラフがございますけれども、企業の図書館でも、結局、予算の中でやり繰りをしなければいけないことから、絶対的な予算額はそんなに大きな変動なくずっと来ていますと。その中で、先ほど来からお話に出てきているように、電子ジャーナル等の占める割合がどんどん大きくなって、それができるだけ絞れるところは絞りながら、工夫しながらやっているという状況です。
  ただ、そうした中で、図書館業務自体もいろいろと、貸出し等の手間は減ってきている一方で、どういう方向に今流れを変えようとしているかというと、例えば、図書館の人たちがいろいろな議論の場を提供するというか、今、こんなトピックスで新しい議論の場を持ちたいと思っていますという人たちが集えるような場所の提供というようなものであったり、あるいは、何か新しいトピックスが生じたときに、それを関係する研究分野の人たちに投げ掛けるみたいなことをやり始めております。
  前回の議論の中でも、図書館業務がキュレーション的な役割があってはどうかみたいな話等もございましたけれども、何かそういった、従来の図書館業務の中には入ってきてないような話かもしれませんけれども、そういった観点もあるのかなと思って、お話をさせていただきました。
  以上です。
【喜連川主査】    ありがとうございます。
  どうぞ。
【赤木委員】    赤木でございます。図書館業務に関して、一つ念頭に置いた方がいいと思っておりますのは、総合的な観点から図書館の在り方を検討することは必要なことではあるけども、それがそれぞれの大学図書館の取り組むべきプログラムに必ずしもつながっていかないような気が私はしております。率直に申し上げて、例えばメディカルのライブラリーと社会科学とか人文学のライブラリーでは、同じ図書館といっても全く仕事は違ってきているように思います。
  もちろん図書館によって取組方の濃淡はあると思いますが、メディカルは事実上、ビブリオメトリックに基づいた手法で、いろいろなアプリケーションを使って、引用の傾向を調べたりすることまで研究者とともに取り組んでいるケースもあります。他方、人文学では伝統的な古典籍のケアを取り扱っている図書館員もいます。そうなりますと、将来に向かって、図書館が大学の学術研究機能を支えていくのは、もちろんその基盤においては共通のものがあると思いますが、領域によって仕事の中身が著しく違ってきているという現実もこれはやはり押さえておかねばならないと思います。余りに広範な議論をしても、図書館が取り組むべきプログラムまで見通せないのではないかと強く感じております。そのことだけは申し上げておきたいと思います。
【喜連川主査】    ありがとうございます。冒頭、井上委員から、データについても同様な御意見があったことと、要するに、学問のダイバーシティーが広くなってきているところで、共通的な議論をすることそのものが若干難しくなっており、一定程度インディビジュアライゼーションしないと意味がないというような時代に入ってきているのかもしれないですね。大変貴重な御指摘をありがとうございます。
  竹内先生、たしか、逸村先生が目が合ってしまったとおっしゃっていましたが。
【竹内委員】    先ほど説明がございました資料2-2というのは、資料の電子化と図書館業務の関連ということですけれども、この資料は気を付けて見る必要があるのではないかと私は思っております。これは恐らく個々の図書館における業務という観点で見たときに、何が業務として残っていて、一方何が重視されていないかということを説明しているものと思います。例えば、ここで出てきている保存の話は、電子になってしまえば個々の図書館では考えなくていいというような方向がこの資料で示されているかと思いますが、とはいえ、誰かがきちんと保存していかなければ、電子的な資料は、気が付いたときにはないことが十分あるわけであって、前回から私が繰り返し申し上げているとおり、個々の図書館として何にどう取り組むかということと、図書館が横のネットワークを生かして総体として取り組んでいくべきことは何か、とりわけ、国レベルできちんと取り組まなければならないことは何かということをやはり明確にした上で議論をしておかないと、保存なんていうことは抜けてしまう可能性があるのではないかと思います。それでは具合が悪いのではないでしょうか。
  また、電子ジャーナルになって、しかもビッグディールであれば選定の手間が省けるという御発言が先ほど逸村先生からございましたけれども、図書館にはいかに限られた資料費を効率的に使うかということが逆に非常に強く求められるようになっておりますので、この資料には含まれておりませんけれども、利用のモニターをどれだけきちんとできるかといった新たな業務も生じているのではないかと思います。
  それが先ほどの説明に対するコメントでして、そういったことも踏まえて大学図書館の機能強化についてどういうふうに考えればいいのかということですが、先ほど逸村先生から御紹介頂きました国立大学図書館ビジョン2020というのは抽象的で、トップダウン的に大きなフレームワークを見せていきながら、各大学図書館がそれぞれのミッションに合わせて具体的に何をやるべきかを考えるというような枠組みを持っております。
  先ほど赤木先生から御指摘があったように、分野によって図書館に期待することが様々に違うというのは全くそのとおりで、これはもう一歩突っ込んで言えば、大学によってそれぞれ違うということになっていくのではないかと思います。しかしながら、これも前回の議論の繰り返しになりますが、我が国の学術研究を支える基盤としての大学図書館がきちんとやっていかなければならないことについてのコンセンサスはやはり必要なのではないかと思っておりまして、そのことについて、ここできちんと議論をしていただければと思っております。
  前回の意見をまとめたものが資料1としてございましたけれども、大学図書館機能の強化の中で大きく論じられてきた方向性は、研究に対して大学図書館がこれからどのように貢献していくのかということにあったのではないかと考えております。たしか引原先生の御発言だったと思いますけれども、学習に関する部分については、アクティブラーニングをキーワードとして、これを支える基盤としての大学図書館がどのような機能を持つべきかということについては、平成25年8月に出ております「学習環境充実のための学術情報基盤の整備について」という、この黄色い報告書がございますけれども、これに相当詳細に述べられて、それ以降、我が国の大学図書館は総体としてアクティブラーニングを支えるための大学図書館環境の整備にまい進をしてきたと総括できるだろうと思っております。
  そうであるとすれば、今我々がここで議論すべき次の大きな課題は、やはり研究に関して大学図書館はどうするかということではないかと思っております。先ほど御発言のあった赤木先生の慶應義塾大学でも、最近、非常に魅力的なデジタルアーカイブが公開されております。これが従来のデジタルアーカイブと大きく違っているのは、各機関がそれぞれ独自の方式でやるのではなくて、国際標準にのっとったアーカイビングをされたという点にあると考えております。
  国際標準にのっとったアーカイビングの意義はどこにあるかということですが、これは作られたコンテンツをベースとして多様な比較研究に道を開いたことになるのではないかと考えます。つまり、これまでのデジタル化というのが、言ってみれば、非常に狭い範囲で、とにかくまずデジタル化する、そして、それがどう使われるかということには若干考慮が行き届かないというようなところであったのを乗り越えて、研究のためのアーカイビングの新しいフェーズが開かれてきているのではないかと思っております。そういった観点も含めた大学図書館の新たな機能は、十分議論の対象となり得るのではないかと考えるところです。
【喜連川主査】    ありがとうございます。極めてクリアに論点を御整理頂いたかと思います。私も、先ほどのビジョンのお話をお伺いしたときに、共有と創出と人材育成と。共有と創出というのは、ある意味で言うと、今までなかったのかというと、多分今までもそれが基本的な大きな目的であったことですので、それをどう具現化するかという意味では、教育は一応方向感が定まったので、これから、よりクリアに研究というものに焦点を絞って、大学図書館が何をしていけばいいのかということをはっきりさせておくことが必要であろうと。正におっしゃるとおりだと思います。
  美馬先生、どうぞよろしくお願いします。
【美馬委員】    資料3の話に言及してもよろしいでしょうか。今は別ですか。
【喜連川主査】    どうぞよろしくお願いします。
【美馬委員】    今、竹内さんの説明で、やっぱり個々の図書館として取り組むことと国レベルで取り組むこと、両方のことがあるのはとてもすっきりしてよろしいかと思います。その上で、今までラーニングコモンズというところでは議論してきて、この次がリサーチコモンズだ、つまり、それは大学の本来の目的である教育、研究、もう一つ、それが社会貢献につながっていくという大学の使命の大もとにつながっているものだと思います。
  その上で、個々の図書館として取り組むべきことの中には、大学の規模と分野というものがあると思います。そうすると、資料3で出てきました機関リポジトリの話なんですが、この資料の2ページ目では、件数とコンテンツ構成が国によってかなり違っているというところを見ていると、そもそも機関リポジトリの目的は何であるのかということを考えると、一つは、オープンアクセス化に寄与するということですね。もう一つは、出版されないもの、あるいは失われやすいものを確保して保存して公開していくということです。そうすると、日本がこのように紀要論文、各大学個別に持っている紀要論文をこういった形で公開していくのはとても納得できますし、逆に、学術論文などは、先ほども出ましたが、ほかで公表されていますし、著作権などの問題もあって、なかなか進まない。それよりは、今言った前者の方、出版されないもの、失われやすいものをどんどん公開していくという、この方向をもう少し打ち出していくのもありじゃないかなと思います。
  その上では、2ページ目にあるプレゼンなどとか、その他というところですよね。先ほどの御説明では、音声とかソフトウエアとか映像ということでした。これらは、教材と併せて考えると、その時々のいろいろな先生方の講演会とかプレゼン資料とか教材とかeラーニングとかMOOCsの、そういったものを大学オリジナルな、機関のオリジナルなものとしてやっていくというものがあるんじゃないかと思いました。
  そういった上で、例えば、ここの委員会で今後できることとすれば、こういう機関リポジトリの利用ややっていく方向があるというのを、幾つかの類型、規模とか分野によって知らせていくというのもあるんじゃないかと思いました。
  以上です。
【喜連川主査】    なるほど。きょうは家先生がたまたま御欠席……、逆に言いますと、御欠席がお一人しかいないという、すばらしく魅力的な委員会なんですが、その議論、家先生もおられるときに、もう一度触れさせていただくのを事務局の方でも考えて頂いております。美馬先生、非常にすばらしい視点を御発案頂いたと思います。
  引原先生、お願いします。
【引原主査代理】    引原でございます。皆様方にいろんな御意見を頂いた中で、一つ申し上げたいことがあります。機関リポジトリなんですけれども、現状、把握がございますが、リポジトリの紀要が多いというのは、私、日本独特の文化だと思っています。各学会あるいは学術団体が研究会とか、非公式か公式か分かりませんけど、ちょっとアングラな感じの会議を持たれて、それをきちんと資料にされていくというのが日本の文化として結構あるんですね。海外を見ますと、そういうのがなくて、もともとはヨーロッパとかあったんですけれども、そういうのが全部出版系に取られてしまって、資料も残らなくなってしまった。だから、紀要そのものがないんではないかと、今、思われます。
  そこが日本の面白いところで、経済学の先生もおられますけれども、通信学会でも研究会が主体で動いていて、そこから論文が出てくるような、そういう文化があるわけですけれども、そこが大きな違いですが、一通りそういうものが紀要としても、大学なんかでは上がり終わったんではないかなと思っています。京都大学でもそれに関する研究者の講究録というのがもう全部上がりましたし。ですから、今まで出てこなかったのが出てきた流れの結果としてこれがあるんじゃないかと思います。
  もう一つは、機関リポジトリの世界ランキング、ランキングにするのは余り好きじゃないんですけど、世界ランキングってございまして、スペインのある大学が団体としてやっているんですけれども、これは企業のリポジトリも含めて、あるいは公的機関のリポジトリも含めてランキングをしているんですけれども、ここ数年、評価基準が変わっています。京都大学、ずっと1番で来ているんですけれども、途中で海洋研究開発機構かどっか1回抜かされているんですが、そういうのがどんどん下がっていく傾向があります。
  それは、評価基準が変わってきていまして、今まで内容がリッチだった、出てきてないものが出てきたというものから、だんだんデータが使えるようなとか、あるいは論文が載っているんじゃなくて、先ほど、竹内先生からお話がありましたけど、画像系のものも含めた研究資料としての評価とか、スタンスが変わってきているんですね。だから、リポジトリに対する要求も変わってきているんだろうなと見るべきであって、それが全体の流れとしてある中で、赤木先生が領域によって違うとおっしゃったことも、そこ、縦にまたありまして、これも非常に縦、横に流れとしてあるんだろうなと思っておりまして、リポジトリの話と先ほどの図書館の今後の方向性の問題は非常にリンクしているものであろうと私は思っております。ですので、今の2点、ちょっと別の観点から申し上げさせていただきました。
【喜連川主査】    逸村先生、よろしくお願いします。
【逸村委員】    機関リポジトリのコンテンツの利用についてなんですが、以前、同志社大学の佐藤翔先生と一緒に調べたりしていました。いたんですけれども、機関リポジトリのコンテンツは大変よく使われるんですね。京都大学の講究録もそうですし、紀要に関しましても、英語が付いているとより一層という格好です。日本語論文については、前回も述べましたように、日本の学生がよく使うようになりました。サーチエンジンあるいはCiNii Articlesの普及の影響と思います。
  また、英語で書いてあると、それこそ以前ありましたけど、北海道大学の紀要で、英語でシェークスピアの『ロミオとジュリエット』でも、「ジュリエットの精神的成長について」という、紙の時代だったら誰が読んだんだというようなものが世界中からアクセスが来るんですね。多分そういう課題を世界共通であちこちでやっているんだと。そういうところでも、アカウンタビリティーというか、役に立っているということは指摘できます。本当に世の中、何でこんなことを調べるんだというようなことを世界中の人はよく調べていて、その中で、やっぱり機関リポジトリが世界的によく使われているということは言えます。
【喜連川主査】    ありがとうございます。多分、おっしゃっていますのは、シェークスピアのも、実はばらばらにあったかもしれないのが、機関リポジトリに入れることによってランキングレートが上がるんですね。それによって検索がしやすくなってくるところが、機関リポジトリはデジタル時代にあるというところではかなり大きな効果を生んでいるんじゃないかということでしょうか。
  ほかに御意見ございますでしょうか。これまでに頂いた御議論としては、竹内先生からまとめていただきましたように、図書館として研究的なケイパビリティーというもの、サービス能力はどんなふうに今後整理していくのがいいのだろう。2点目は、機関リポジトリというものが、これも図書館の作業に強く関わっていると思うんですけれども、世界比較をしていく中で、どう発展をさせていくのがいいだろうかという、この2点について随分深いインサイトを頂いたかと思いますけれども、まだ御意見頂いてない先生。
  岡部先生、お願いします。
【岡部委員】    まず、資料2-2に関して。先ほど、竹内先生からも御指摘ありましたけど、これをぱっと見ると、図書が電子化されて、図書館の職員はどんどん仕事が減るんだなと、ナイーブに、図書館職員は数が少なくてもいいじゃないか、あるいは、別の仕事をしてもいいんじゃないかというふうに読めてしまうんですが、これは、すごくミスリーディングではないか。私も図書館の現場には詳しくはございませんけれど、現場の仕事がそんなに減っているわけではなくて、大学の図書館だと、例えば、学生の参考書のような図書の貸出し業務とかは従来と何も変わってないですし、ここの部分は、有料雑誌の値段が減ったからといって、それに掛かる手間が、値段が減った分だけ減っているわけじゃないというところは、注意しておかないと、おかしな議論になりかねない。そこはこの資料を見て思いました。
  それで、オープンアクセスの話に戻らせていただきたいんですが、最初にオープンアクセスがプロセスに乗り切れてないという話がありました。これは去年、第8期のときから随分議論がありまして、ゴールドOAは出版社にお金をどんどん取られて研究費を圧迫するということで、日本はグリーンOAでいきましょうということでやってきたんですね。特に学術雑誌をグリーンOA化する。それをセルフアーカイブでやると、研究者も手間が掛かるし、あるいは継続性も担保されないということで、日本では機関リポジトリを推奨しようとしてやってきたわけです。そういう意味では、土台は既にできていると思います。
  ただ、その割に学術雑誌の登録率が上がってこないというのは、やはりこれは資料3の3ページ目にございますけれども、研究者のインセンティブが必ずしも高くない。これはそのとおりだと思いますし、やはり研究者にとってはかなり手間なんですね。実際登録する、この学会は著作権どうだったっけ、あるいはPDFの形をこの形にしたり、いろんな手間が掛かるということで、それを、ある程度強制力のある形でやらない限り進まないだろうと思います。
  それに関して、京都大学、引原先生の前で私が言うのも気が引けるんですけれど、京都大学ではそれを義務化して、かつ図書館職員がそれをある程度サポートするというモデルを、これは第8期の委員会の最後で引原先生に御紹介頂きましたけど、そういうモデルでやってきました。ですから、それが一つの方向の可能性だと思うんですけれども、この委員会としてそういう方向を推していくのかというところは、一つ御検討頂きたいと思います。
  もっと申しますと、従来の図書館というのは、研究者にどんなデータを持ってくるか。要するに、研究者がデータを閲覧する、論文、学術研究成果を閲覧するところの手助けだったのに対して、機関リポジトリの仕事、あるいは先ほど赤木先生がおっしゃった、サイテーションを上げるための努力みたいなこと、要するに、研究者の情報発信をサポートするというところに、そのミッションを移していくのかなというところが議論の一つの論点になるんじゃないかと思います。
  以上です。
【喜連川主査】    研究者の情報発信は、機関リポジトリに入れることをエンフォースすることによって随分状況が改善するという、そういうことですか。
【岡部委員】    少なくとも機関リポジトリというのは、研究者が情報発信するのをサポートするためにやっていると私は理解しています。
【喜連川主査】    その辺もちょっと議論をする必要があると思います……。ビジョンとして、知の創出、共有というところが図書館ビジョンの中にあったと理解しているんですけれども、発信側というところになると、またちょっと違います。もちろんそれは非常に重要な側面だと思います。この辺は一度整理してもいいかもしれないですね。
  井上先生、お願いいたします。
【井上委員】    私も、図書館のことはそれほど詳しくないんですけれども、図書委員を大学でやっていたときの経験から言いますと、とにかく財源が限られている。電子ジャーナルの非常に大きな負担を考えると、書籍を買えないという状況になっています。こういう場できちんとしたフレームワークですとかベースラインのようなものを出していただくと図書館が財源を確保するための一つの支えになるのかなとも思います。
  それはさておき、きょうの資料の話に戻りますと、資料3で「機関リポジトリの現状」ということで幾つかグラフがあります。これらのデータは、どこまで機関リポジトリの整備が進んでいるかを示すためのエビデンスとして示されていると思います。しかし、例えば、国別の機関リポジトリの数の上限は、その国で研究機関あるいは大学の数によって決まります。日本は欧州諸国に比べて大学の数は多いと思いますから、必然的に機関リポジトリの数は多くなりやすいという構図になります。日本の機関リポジトリの数が世界一だということが、データとしてどのような意味をもつのかやや疑問に思いました。
  そのほか、登録データ数の推移ですとか、登録データの性質による分類ですとか、こういうことも参考にはなりますが、何を目的関数として、それを評価するために何を指標とするのか、いろいろ考えなければいけないと思います。
  私は、行政データのオープンデータ戦略に関わっているのですが、こちらも初期段階では、各省がポータルサイトに掲載しているデータセットの数をKPIにしていました。しかし、データセットが幾ら増えても、実際にそれが社会問題の解決につながるような利用がされてなければ、手間が掛かるばかりで何の益もないわけですし、手間を掛けようという行政のインセンティブも湧かないということになります。そこで、オープン化したデータが社会課題の解決にいかに利用されたかということを評価基準、評価指標にしていかなきゃいけないと。機関リポジトリに関しても、測定するのは難しいのは確かなんですが、アウトカムを意識してやる必要があろうと思います。
【喜連川主査】    非常にすばらしい御提案だと思います。
  それでは、北森先生、お願いします。
【北森委員】    似たような意見かもしれないんですが、最初に図書館業務の2-2の資料を拝見したときには、正に時代を反映しているデータでと思いました。我々、東京大学では、中央図書館の大改修、増設をしているんですが、「文系図書館」とも呼んでいます。ちょっと学内事情は置いておいて、役割の重要な部分が資料保存。今後、文系の研究に供する資料はしっかり取っておくという、そういう意味の図書館ということだと理解しています。それは、資料館としての機能です。理科系の方は、逆に契約さえしておいていただければ、供用という部分では、検索を使ってダウンロードする非常にシンプルな使い方になってきている。
  昔は、我々が現場でばりばりにやっている頃、今もちょっとはやっていますけれども、昔やっている頃は、誰かいなければ、探しに行く場所は図書館。あそこに行けば、暇があれば、みんな、雑誌を見て、必要な論文を探しに行くというのが当たり前のように行われていました。それがもう図書館には行かない。自分のコンピューターで全てできてしまうという。そういうことを考えると、図書館の物理的な存在そのものが時代とともに変わってきてしまっているというのは明らかですね。
  では、その中で我々が図書館にどういうことを期待しているのかということと、それから、大学が図書館にどういう機能を持ってもらうかということは、それを踏まえた上の議論だろうと思うんです。一方で、機関リポジトリのデータを見ると、非常に面白いと私も思います。例えば、3の資料の2ページ目に、絶対数とそれの割合が示されているんですが、これ、紀要、学術論文、学位論文、データセットです。恐らくパラメーターとしてここで取り上げたものに関しては、日本を見れば、確かに割合が多い。だけど、このパラメーターで見ると、ほかのところはもうその他ばっかりになっちゃっていて、このパラメーターでは余り出てこないということは、もう明らかに機関リポジトリの役割が違うことを示しているわけで、むしろ緑色の「その他」の部分がどうなのかということの方が情報としては重要ではないかなという気がします。
  特にアメリカの図書館、これも是非調べていただきたいんですが、アメリカの大学は、御存じのように、企業体、経営体としての機能を強く持っていますので、自分たちの大学をいかによく見せられるかという情報発信に物すごく労力もお金も掛けている。そういうときに、では、図書館から出ているのか、機関リポジトリというのはどういう役割を持っているのか、そういうこともしっかり調べないと、なかなかこの中身が見えてこないような気がします。
  MITなんかは、論文が出ると、ここに載せるのと同時に、外国の著名な研究者からコメントを、リポジトリに載せると同時に、それに対するコメントまで要求して載せるというような、そんなこともやっていますし、イギリスの方は、伝統のブランディングで、自分たちの雑誌に出した場合には、必ず自国の雑誌の人が載せろというようなことも積極的にやっている。そのように、いろいろ戦略的にやっていますので、中身について、これ、非常に貴重なデータだと思いますので、もう少し突っ込んでいただけると有り難いかと思います。
【喜連川主査】    非常に的を射た御指摘を頂きました。これは、調べられますか。私も、緑がマジョリティーになっており、デコンポジションそのものが意味がないという御指摘です。
【丸山学術基盤整備室長】    この資料は実は、欄外にもございますけれども、NIIの御協力を得まして、「BASE」と呼ばれているデータベースを基に、急きょ作成していただいた資料でございますが、どういったデータの取り方ができるのか、あるいは分析が可能なのかといった点、御相談いたしまして、もう少し詳細なデータが出せるようであれば、また御紹介したいと思います。申し訳ありません。
【喜連川主査】    どうぞ。
【五味委員】    正に2ページのリポジトリの状況、各国でかなり違うのは非常に興味深いところなんですが、今回、もし調べていただけるのであるとすると、どういうふうに各国がこの裏で、こういうふうになっているのは、多分何か理由があると思いますので、そのあたり、どんなふうに各国がこれを使おうとしているのかという背景と、あと、もう一つは、誰がこれをメーンで利用されて、各国それぞれ、メーンの利用者というのはどういう……、企業なのか研究者なのか、そういったところも、調べられるのであれば、是非調べていただけると、よりこの背景を分析しやすくなるかなと思いました。
【喜連川主査】    答えが分かっていますか?
【逸村委員】    BASEという、このデータベースを検索してもらうと、簡単に出てくるんですけれども、というわけで、今、ちょっと見ていますが、全部で1億件余り、ここでは探すことができてというのは、これは全部ですから、国別に細かく見れば出てくるんですけれども、本当に様々なものがあります。
  例えば、アーティクル(論文)が当然一番多いというわけですが、そのほかにも、オーディオとかバチェラーシーセス(卒業論文)、ほかブック(図書)、ブックパート(図書の一部)、カンファレンスオブジェクト(会議資料)、コースマテリアル(教材)なんていうもの、全て数百万件。あと、データセットというのも数百万件等々あります。あと、デザテーション(博士論文)ですね。レクチャー(講義録)とかマニュスクリプト(文書)なんかもたくさんあるわけで、そこら辺は国別に調べていただければ簡単に出るかと思います。
  先ほどの喜連川先生のお話の中で、機関リポジトリと情報発信という話が出ました。このBASEを見ていただいても分かるんですが、やっぱりこれはORCID、これも必ず議論になるかと思いますが、要するに、研究者のIDを全部付けてしまうという、そういうことで、それによって、機関リポジトリですと、大学を移動してしまうとどうするんだとかそういうこともありますし、あと、結婚して姓が変わる。それこそ、今、国際結婚とかそういうようなこともあるので、そういうときも全部一義的に探せる。そういう意味では、情報発信をというと、谷藤さんがやっているところでお話しいただければと思いますが。
【喜連川主査】    済みません、美馬先生の御発言、遅れていますが、谷藤委員。
【谷藤委員】    機関リポジトリの情報発信という側面について、物質・材料研究機構での例を御紹介したいと思います。機関リポジトリが蓄積のみにならず、利活用駆動型であることが求められる時代になったと思います。これは、インターネットやコンピューターの処理速度が速くなり、情報のストレージ環境も大容量になる研究環境の変化ともつながっています。全体として、情報を発信し情報を活用する、という時代にある訳です。そのために情報をマーケティングすることも必要になりました。そういう意味で、明らかに図書館員に求められる、あるいは期待される役割も、機関リポジトリの役割は変わりましたし、更に重要になったとも言えます。
  物材機構の場合は、その意味での情報発信の需要は非常に高く、発信や利用することに重きを置いた機能装備が必要で、その一つが今、逸村先生が触れられたORCIDです。ORCIDは、研究に関わった人を同定するための識別子として、今のところ世界では唯一に網羅性、柔軟性があり、また市場性も期待できる仕上がりにサービスとして熟成してきました。機関リポジトリはORCIDを採用して、職員や学生番号とマッピングすることで人を(外部からも)同定することが可能になります。機関リポジトリと一言で言っても、その中の自機関の職員単位の情報発信もさることながら、人のつながりとか研究の近接性、機関内外の共同研究をした人との関係にも展開して分析することができます。そういう意味の、よりイノバティブな、それこそイノバティブなリポジトリの将来を切り開くためのツールやチャンスがいろいろそろい始めてきている、可能になってきているという点が重要です。
  このチャンスにアンテナをはり、どういうところに研究資金や人があって、どのような成果と結びついているのか、といった可視化も可能になるでしょう。物材機構におけるORCIDの機関採用を通して、今までとは違う次元の関心を引き出したように思いますし、それらをカタチにする役割として図書館員が必要なのではないかというのが、ORCIDを採用したことで強く感じたことです。
【喜連川主査】    よろしいですか。ちょっと議論がいろんなところに移ってきているかと思うんですけれども、各大学で機関リポジトリのログ解析といいますか、どういう利用をされる方があるんだというポイントは結構重要じゃないかと思います。それは余り義務付けてないのかもしれないんですけど、今後考える上で、利用形態も非常に重要ですね。コンテンツのディストリビューションと利用形態のディストリビューションが根源的に直交軸になっておりますので、これはNIIが外形的に調べるといっても多分調べられないので、大学サイドさんに少し御協力をお願いしながら現状把握をすることも必要かなと、今、お伺いしていて感じました。
  どうぞ。
【引原主査代理】    今、喜連川先生がおっしゃった件に関係して、ひょっとしたら話が飛んじゃうかもしれませんけれども、電子ジャーナルの価格の問題というのがあって、実際、ビッグディールで、パッケージで買って何でも見られるという状態になっているんですけど、現在、本当に使われているのがどういう雑誌なのかと。どこに誰が投稿しているか、誰がどれだけ引用しているかというのを学内で今調査をしております。
  要するに、出版社がパッケージとして売ってきたのは、本当に我々の大学として要るのかということをきちんと見るという評価をしようとしています。それをしなければ、今度、我々がどこに研究を集中していくかが分からないですし、本当に重要な広範囲な多様性をサポートするためには、どういう雑誌をキープすればいいかというのも分からなくなる。パッケージだけ買っていれば何とかなるだろうというのは、やっぱり大学として、主体としてよくないわけで、そういうデータを機関が持っていくのは重要なんじゃないかと思っています。
  特にAPC(Article Processing Charge)みたいに、今、お金を払っていますから、誰がどこを出しているかもよく分かりますし、インパクトファクターの高いところも分かりますから、そういうのはいいんですけれども、落ちてしまう部分が結構あると思うんですね。そのためには、各機関がそれをきちんとサポートしていくのが重要だと思いますので、今後そういうデータが共用化できればいいんではないかというのが一つあります。
  それは、ジャーナルが高い、高いと言うのはいいんですけれども、本当に使うだけの価値があるのかどうかという判断を各機関がやっていないという危惧がありまして、そこに機関リポジトリがうまく乗ってくれば、別の発信表現もあるのかもしれないと思いました。
【喜連川主査】    これ、正に学術基盤の根幹をどう作るかという話になってきますね。
  井上先生、いかがでしょうか。
【井上委員】    政策の立案には基礎的なデータが必要と思うのですが、各国、それぞれ大学の果たす役割、規模も違っているというお話が出てきました。諸外国では、それぞれ大学の図書館がどのぐらいの予算で運営されているのでしょうか。そうしたデータも教えていただきたいと思いました。日本の大学の図書館と、先進的な取組をしている諸外国の図書館とで、予算規模が全く違うということになると、日本では参考にすることはできないということになります。
【喜連川主査】    この辺は多分、キュリオシティにどんどんなってしまい、文部科学省は調査会社じゃないので、そこまでは多分難しいかと思います…、分かりますか。
【丸山学術基盤整備室長】    済みません、即答はできないんですが、どんな統計があって、どういう調べ方ができるのか研究してみたいと思います。
【喜連川主査】    国立はできるけど、私立は少なくともできないでしょうね。
【逸村委員】    具体的にはどのような……。
【井上委員】    先ほど、北森先生から、海外の大学での取組について伺いましたが、どのくらいの予算規模なのかと思いまして。
【喜連川主査】    気持ちは分かるんですけど。
【逸村委員】    いわゆる海外の研究大学はかなり公開されているんですが、言っちゃうと、資料費なんて日本は、よく言われますけれども、桁が違うとまでは言わないですけど、やっぱり有名大学は皆さん、数十億円規模をお持ちですし、それでもお金は厳しいと、以前、イエール大学の図書館長は日本にいらしたときに話を聞いたぐらいです。ですから、やっぱり構造が違うのは事実ですが、日本が厳しい状況にあるのは間違いありません。
【喜連川主査】    美馬先生、お待たせいたしました。済みません。
【美馬委員】    どなたか状況が分かれば、お答えいただけるとうれしいなと思ったのは、多分、前の前の期のときでしたっけ、電子ジャーナルが予算としてかなり大きなものを占めるようになってきていて、それって考えてみれば、だから、予算をいっぱい付けろというのは、どんどん、どんどん国費というか、全体の予算が外に出ていくわけで、研究者は学会に登録するにもお金が掛かって、投稿するときにもお金が掛かって、それを調べるライブラリーでもお金が掛かって、何重にもそれが取られていてということがありましたよね。それがどんどん我々の研究費とか全体規模からいくと、それが多くなってきていると。その場合に、じゃ、それって小さい大学なら特にそうですけれども、どこまでを誰が持つのかといったときに、海外の大手のところとは、日本のどこかの窓口が契約して、それをみんなが使えるようになって、そういう経費を削減できないかとか有効利用できないかという話が昔あったと思うんですけど、結局それは無理だということなんですかね。
【喜連川主査】    それは、安達先生がJUSTICEというアクティビティーを。
【安達国立情報学研究所副所長】    まず、コストが増えるということは、出版社の説明としては、年4%から5%の割合で論文数が増えているということのためのようです。特に最近の統計を見ると、BRICs各国が猛烈に論文を書くようになっています。「APC」という言葉があるように、もし費用が論文の数に比例するならば出版社の言うことが正しいわけですが、一方紙の時代から電子化することによって大幅にコストダウンがあるだろうという予感があり、費用が下がるべきだという考えももっともでしょう。
  結局、そのような中でオープンアクセスが広がっています。日本の論文数は今、ほとんど増えてはいないのですが、研究者は世界中の論文を読む必要があります。それに対応していくためには、今のまま増える論文を日本が買い続けていくというモデルは非常に苦しい。恐らく諸外国もそういう状況になっていると思います。
  さて、分野別に随分動向は違うと思いますが、先ほど引原先生が言われたように、ビッグディールの全ての雑誌が読まれるわけではない状況で、一元的に契約してコストを下げられるかというと、それはなかなか難しいのではないかと思います。
  興味深い話として、オランダが今、非常に厳しく出版社とやり合っていまして、電子ジャーナルの契約価格の開示請求に対して、契約額を本当にインターネットで公開してしまいました。それを見ると、我が国は特に高額な支払になっているようには見受けられないという感じはしました。
  ということで、資料購入費を見ると、欧米は日本よりも非常に豊かでうらやましいのですが、電子ジャーナルの高騰に対しては、同じような状況で出版社と交渉していると思います。
  ということで、お答えになっているかどうか分かりませんが。
【喜連川主査】    多分、お答えになっていないかもしれません。
【美馬委員】    各大学が買わなきゃいけないのかという。
【喜連川主査】    そうそう。インディビジュアルじゃなくてグループでやっている努力はしているのかというのが御質問のポイントかと。
【安達国立情報学研究所副所長】    今はしてないと思います。JUSTICEのやり方は、価格交渉はするのですが、契約は個別にやります。そういう意味で、交渉力が、お金をひとつに集めてやるのに比べるに比べて弱いのですが、実際は出版社ごとに必要とする大学の数が違いますので、一元化することはなかなか難しいと思います。ビッグディールをやっている大手の出版社に関しては可能かもしれませんが。
【喜連川主査】    この電子ジャーナルへの対抗基軸の話に関しては、今、学術会議でもやっていますので、この委員会の対象からはちょっと外した方がいいかと思っています。
【竹内委員】  今の美馬先生のお尋ねに関しましては、机上参考資料として置かれております平成26年8月のジャーナル問題に関する検討会というのがございまして、本日御出席の委員の数名もメンバーと参加していらしたと思いますけれども、ここでかなり議論しています。今、美馬先生がおっしゃったようなナショナルサイトライセンスについてはネガティブな議論をしております。と申しますのも、それだけの予算を一体どのように確保するのか、しかも、それが若干足りなくなった場合に、我が国全体に非常に多大な影響が出る可能性もあるので、そういう議論は当面避けるべきではないかという議論をしています。
【美馬委員】    ありがとうございます。
【喜連川主査】    相澤先生、どうぞ。
【相澤科学官】    大学の一構成員としてのコメントです。まず、機関リポジトリの方で言うと、大学の通常の構成員はほとんど機関リポジトリの存在は意識してないというか、知らないのが現状です。学生は卒業論文、修士論文、博士論文を完了したときにその電子化と登録の問合せがあり、それに応じて、ルーチンとして学生の学位論文等は増えていくように思います。紀要論文も多分、ある意味、そこに入っていくようなルーチンがあって、同様な事情で増えていくのだと思います。このために、日本では登録内容に大きな偏りがあるのかと思います。しかし、大半がこの2つのカテゴリであるというのは、期間レポジトリの積極的な利用がされていないということも表しているんじゃないかと思います。
  先ほどお話にあったように、機関レポジトリに入れると、発信能力があって得なんだということが分かれば、それぞれの研究室は、そのように使うでしょう。例えば、数年単位でのプロジェクトのページだとか、膨大に様々なもの持っています。研究室の事情で消えてしまう情報資源をアーカイブとして登録することができれば、この機関リポジトリはとても便利に使えると思ったのが1点であります。
  あと、もう一つ、図書館の機能ということに関しても、先ほど議論がありました。研究者の研究の後方支援のために使うべきだというのは、私も全く賛成であります。研究者支援でも、中でも広報に適しているように思います。現在、大学の広報関係はとても貧弱でありまして、ちょっと関わったことがあるんですが、本部に数人の広報関係の人がいます。その人たちが全ての学部なり研究所も担当して、情報を集めて、それで、冊子などの媒体を作ったりします。それと同時に、各部局に大きいところで1人か2人広報関係の人がいて、そこの人がまた努力をするわけです。そういう部分が図書館の発信能力の中に定義付けられれば、私は図書館の機能はとても大きく変わっていくという気がいたしました。
  以上です。
【喜連川主査】    ありがとうございます。議論をしようと思えば幾らでも議論ができたんだなということが分かるぐらい多様な御意見がいっぱい出てきたかと思いますけれども、もうちょっと言い足りないといいますか、御意見があるようでしたら。
【五味委員】    正に図書館の役割ということで、先ほど逸村先生、竹内先生からもお話があったように、図書館の役割として、研究をしていく中での研究を支援する役割が一番重要かと思いますし、もう一方で、さっきの人材、人を育成、いわゆる大学としての教育としての有効性が非常にあるんだと。また、もう一つ、きょう、私、学んだのは、アセットというんですか、大学が古くから持っているいろんな資料をきちんと継続的に維持管理していくという、その三つが大きな柱なんだろうと思ったんですね。
  それで、どこの部分を電子、電子においては、いずれの分野もきっと電子化されていくことは間違いないと思います。先ほどのリポジトリの各国比較を見ても、フランスは教材というところが非常に多いということもございますので、正にそれは先ほどの教育という視点で見たときには、多分、このリポジトリというのはそういう使われ方をフランスはしようとしているのかなと読み取れるのかと思ったわけです。ですので、研究という視点と教育という視点とアセットという視点で、どこにフォーカスして図書館の役割を強化していくのかというのは、今回の議論の中のフレームとして定めていくのがいいんではないかな。
  先ほど、喜連川さんから最初、今回は研究でいこうということになってまいりますと、そうすると、そこで出てくるのが先ほどの論文、ジャーナル等々の取扱いをどんな形で、基本的には図書館が役割を担っていくのか。そのときの一つの大きな課題が、一つは、先ほどの図書館経費の問題。それと、ジャーナルに関する、大学としての予算をもっと大きく見ますと、多分、APCの話ですとか、ほかも含めて、大学がジャーナルに関わる費用全体をどういうふうに予算分配していくのかというところまで話は広がっていく。その辺をよく整理しないと、ジャーナルのところだけを議論しても、解決案は非常に難しいのかなと思いました。そのあたり、今回、この議論をどこら辺にフォーカスするのか、少し整理した方がいいかなと思いました。
【喜連川主査】    どこの辺にフォーカスするのがいいかを議論した方がいいという発言は比較的簡単にできるんですけれども、どこにフォーカスすべきだという御意見は御発言するのが勇気が要るところで、例えば、今のお話ですと、大学のアセットはあるんですね。アセットを機関リポジトリに集中させるにはどうすればいいか、あるいは、そうした方が本当にいいのかどうかというようなポイントになってくるような気もいたしますし、井上先生から御指摘頂いたみたいに、集めることが目的じゃないというところも一方で非常に重要で、出口のメトリクスをどうするのかということで、引原先生がおっしゃったみたいに、京大の中では、ビッグディールといって、選ばなくても全部購入できることになっちゃったわけですけれども、実際に一体、どれだけの利用至便がなされているのか。これはやっぱり国家として見ますと、各大学の方策ももちろん大切なところではあるわけですけれども、日本国家として、一体現状がどうなっているのかということが一定程度分かるようなフレームワークこそ、我々が今後作っていくことでナショナルポリシーに資すると。
  つまり、こういうハイレベルなポリシーメーキングにするようなものも含めて、これは北森先生も御指摘になったと思うんですけれども、やっぱりグローバルに見たときに、日本がどこに打っていくか。打つための基礎的なデータといいますか、インサイトを生み出すための情報の基盤みたいなものをどう作るかということの方が重要じゃないかという御議論も感じ取ることができたような気がします。そういう意味で、非常に深い御議論が頂けたと思うんですけれども、この中で、問題が相当インターリレートしていますので、どこからを掘り下げるかというのは、皆様も次回までに考えていただくことが重要じゃないかと思いますが、きょう御発言を頂けなかった先生、もし何か御意見がありましたら。
  井上先生。
【井上委員】    きょう、図書館の話で非常に熱い議論を聞かせていただいたんですけれども、私、前回休んでしまったデータの件に関して、補足的なことは発言してもよろしいでしょうか。
【喜連川主査】    はい、どうぞ。よろしくお願いします。
【井上委員】    データに関しては、研究データの適切な保存と利活用を促進するために、機関内外との組織連携やデータの共有、公開についてどのように対応すべきか、ということが今期の審議事項として挙げられております。私は専門が知的財産法という法律ですが、前期も、データの著作権法上の問題ですとか、利活用のルール、データガバナンスの問題について議論がありました。しかし、前期の審議まとめでは、個人的には議論が不十分だったという気持ちでおります。ここ最近、データそのものの経済的な価値に着目をして、しかし、それを囲い込むのではなくて、オープンにしながら、共有して利活用を促進し、新しい価値を創出していくために、どのようなルールが望ましいかということが、各所で議論されています。例えば、不正競争防止法上の保護についても再検討がなされています。リサーチデータに関しても、これからデータの利活用を進めるためのルール作りをどうするのかは非常に重要になってくると思います。
  冒頭で発言しましたように、分野ごとに状況が違うと思いますので、一律にこういうルールでいけということにはなり得ないと思うのですが、データ利用のルールも考えていかないと、データの利活用が進みません。是非検討をしていただければと思っています。
【喜連川主査】    ありがとうございます。これに関しましては、またデータを議論する回を何回か設けさせていただきたいと思いますので、そこで議論を進めたいと思います。
  それでは、時間的にあと少しございますので、文部科学省から御用意頂きました資料を御説明頂きたいと思います。
【丸山学術基盤整備室長】    資料として御用意してございます資料4-1、4-2を順に説明させていただきたいと思います。
  この委員会の検討事項の案として、三つ目に挙げてございます大学における情報基盤の強化という観点でございますけれども、これに関連しまして、今の政府内での議論の動きを御紹介するということでございます。
  一つは、今、喜連川主査からもお話がございました未来投資会議の動向でございますが、資料4-1で御用意させていただきましたのは、東京大学の五神総長がこの会議のメンバーになってございますけれども、5月12日の会議に提出し、御説明をなされた資料でございます。
  「大容量情報ネットワーク・データプラットフォーム融合拠点の形成」ということを御提案されており、特に日本における代表的なネットワークでございますSINET、これの優位性を強調されておられます。
  表面はSINETの概要に近いペーパーでございますけれども、御案内のとおり、先生方、もう既に御承知のとおりかとも思いますが、SINETは28年4月からSINET5というフェーズに入りまして、全国850以上の大学をつないで、各都道府県全てに接続点を設置するということで、100Gbpsの非常に高速なネットワークを実現しているものであります。
  また、海外接続においても、米国、欧州、アジア地域、これらの地域と相互接続がなされる一方で、ごらんいただいているような数字もございますが、一部の回線の強化なども指摘されているところであります。
  裏面に参りますと、中ほどでございますけれども、五神総長からは、SINETが持つ下の五つの優位性を踏まえて、最後、右下にございます箱囲みでございますけれども、こういった環境を企業も含めて有効活用するための強化・拡充プランという御指摘をしていただいてございます。
  特に国際・国内情報通信ネットワークの拡充であるということ、それから、ユーザーとSINETとのラストワンマイルの接続支援が重要ではないかといった御指摘、それから、データプラットフォームの構築などが提案され、本年の、今、政府内で御議論がなされておりますけれども、日本投資戦略2017といったような方向性に向けた検討が行われているということでございます。非常に期待されるネットワークでございますが、今後どう高度化していくのか、拡充していくのかといったあたりの御議論もいずれお願いをしたいと考えてございます。
  それから、もう一つは、今のラストワンマイルとの関連も多少あるわけでございますけれども、学内ネットワークの整備状況ということで資料を御用意させていただきました。また、いずれかのタイミングで、こういうことも含めて、全体としてまた御議論頂く時間を設けさせていただきたいと思いますけれども、本日は資料の御説明だけさせていただきたいと思います。
  学内LANの状況でございますが、資料4-2、表でございますけれども、学内LANを有する大学、776大学あるわけですけれども、通信速度1Gbps以上の回線を整備している大学、1Gbpsといいますと、今はもう家庭にも入ってくるような容量でございますが、こういった大学が全体として694大学、約9割に上ってございます。
  ただ、最後、三つ目のポツで記入してございますけれども、学内LANを5年以上設備更新できていない大学が全体の約6割を占めるということで、これらの更新が課題になっております。
  もう一つは、この学内LANとSINETとをつなぐ対外接続の関係でございますが、これは裏面の2ページでございます。これも対外接続として、通信速度1Gbps以上の回線を整備している大学は65%でございます。こちらも併せてですけれども、やっぱり5年以上の更新ができてない大学が半数以上を占めているということで、SINETの拡充もありますけれども、末端の部分、それをユーザーのところで非常に環境よく使っていただくのにどういった整備が必要なのかといった点も課題として見えてきているのではないかということで御紹介をさせていただいた次第でございます。
  資料の説明は以上でございます。
【喜連川主査】    どうもありがとうございました。これは文部科学省に御用意頂いたわけですけれども、データプラットフォームということが、昨日の未来投資の中でも安倍首相からお言葉が出るようになってきておりまして、先ほどの井上先生のお話のように、データを我が国としてどう切り札にしていくのかというところで、多分、機関リポジトリもナショナルプラットフォームの上に全大学のものを載せてしまって、そこでアクセス環境を見るというようなことをするような時代に入ってくるんじゃないのかなという気が勝手にしております。
  そういう意味で、ここの会議の中で、若干未来も見据えながら、研究を図書館がどんなふうに支援していくのかというところを是非議論できればと思う次第でございまして、井上先生がおっしゃいましたようなアウトカム指標も、一定程度そこで補足できるようなことが実現できればいいのかと個人的には感じたりしています。
  永原先生、にこにこ、お話しされたそうな雰囲気もあるんですが、いかがでしょう。
【永原委員】    いろいろ議論を伺っていまして、今期の審議事項が電子化の進展を踏まえた学術情報流通基盤の整備と大学図書館機能ということで、図書館のことが議論されていましたが、図書館が直接研究を支援していくといいますか、それってやはり非常に難しいというのは、研究は余りに多様ですし、図書館組織は小さいし。だからといって、一般的に資料があればよいのかというと、それはお金との話になってきて、それもできなくて、もっと立ち返ってみますと、今、日本の大学とか基礎的な学問とか全体が非常に危機にさらされていて、いろいろ圧力が強いと。こういう中で、図書館も学術全体を支えるという、研究を支えると言ってしまうとなかなか厳しいんですけれども、それもどういう形でできるかというと、やはりつまるところは情報発信という形に行き着くのかなと。
  もちろん、片方で学生のことですとかという基礎的な、ベーシックにやらなくちゃいけない業務はありますが、それは基本的に大学の図書館の規模ですとか組織系、図書館といっても、私みたいに図書館が数層構造になっているようなところとか様々ですし、人員とかいろんなことがあってできないけれども、情報という形であれば、これはもう共通基盤なので、やはりこの委員会では図書館が共通に、どういう形で情報発信されたか。さっきの機関リポジトリも含めて、どういう形で情報収集と情報発信。
  情報収集も発信も、ただ訳もなくやればいいというものじゃないので、さんざん皆さん御指摘があったように、現状では少なくとも何が使われているかとか、海外の話もありましたけれども、少なくとも国内的にまず、自分たちでできるところから、何が一番ニーズが高いのかとか、いろいろ費用ですとか、使われているって、それは個別にはあると思うんですが、やはり総体として一番発信力が高い部分が何かをもう少しつかまないと、やみくもに情報収集とか発信とかいっても徒労に終わるような気がして。そこをもう少し具体化して、図書館に何か情報提供できる、こういうことをやるべきだという具体的な提案をこの審議会がまとめられていけば、何か役に立つのかなと思いました。
【喜連川主査】    非常に大局的な御意見をありがとうございます。
  安藤先生、最後にいかがでしょうか。
【安藤委員】    きょう、主に図書館の内容の話が多かったので余り発言できませんでした。さっき、お話を伺っていて非常に面白かったのは、機関リポジトリと分野リポジトリという話が出ました。私、研究を担当しているということもあり、学会運営の観点で、つまり分野に近い話になると思いますけれども、例えば、かなり大きな組織、IEEEなどにおける議論ですが、論文でも、オープンにするものとそうじゃない、いわゆる購読とするものを区別して査読基準を変えるということも、実は相当昔に議論がありました。あっと驚きましたが、オープンアクセスとするものは新規性は問わない、新しいカテゴリーを設けるというもので、両者の扱いはいい気な議論となりました。
  今、図書館の業務として情報発信が非常に重要ということですが、大学の立場で言うと、IR機能と結び付けて、これからやらなくちゃいけないという点も、きょう、改めて認識しました。
  オープンとなってあふれる情報のクオリティーに関する議論、きょうは全然なかったのですが、実はこれだけデータが出てくると、論文の不正も含めてクオリティーの議論というのはますます重要になってきます。実は学会ではその役目の査読能力が一番自分たちの責任であり、誇れる能力だろうという議論がずっとあります。クオリティーをコントロールできるのはレビューをする力で、それが学会の最後の価値でもあり、購読料で食っていくというよりは、このクオリティーコントロールの役目を財産として評価、表現していけないと、学会はだんだんなくなっていくぞという理解です。機関が全て情報を裸にして、先ほど引原先生がおっしゃったように、通信学会なんかでも、これまで内部の情報であったものも出す方向です。ある意味で言えば、レビューを受けてないものも、それが知りたいという人はたくさんいますから、そこまで出すことになります。ただし、それは新規性だけじゃなくて、本当に正しいものかどうかという議論は必ず甘くなるんですね。ですから、今後読む人は、それが正しいデータ、正しくないデータかを見分ける力も同時に持たないと、生きていけないと思います。
  その中で図書館に限りますと、我々も視野の狭い議論ではありますが、おととしですか、電子ジャーナル購読に税金が掛かりこれが財政的に非常に大きなインパクトで、購読料の受益者負担に、部局負担に一部変わりました。大学全体で負担をすべきということから、もう受益者負担を導入せざるを得ないとなりました。そうすると、必然的に、どの雑誌がどの部局にどれだけ読まれているかというのを知らなくちゃいけないということで、先ほどのIRなどの話に返っていったんです。そのようなことがここでも議論されたということをきょうは勉強しました。これらの議論も広い場で連携して行わないと、大学も生きていけないし、学会も考え直しをしなくちゃいけないなと感じました。ただし、学会の議論は随分前に一応終わったような気はしていましたけれども、大きな問題はいまだに解決はしていないようです。
  最後に、きょう話題に出ましたけど、日本が生き残るという話も一緒にしなくちゃいけない。それから、先ほどの機関リポジトリのいろんなコンテンツの色分けも面白かったけれども、あそこに「公的資源を用いた研究成果が」という最初の言葉で、この定義にどれだけのものを含める議論を行うのかは重要です。会議の最初に、私、ちょっとおかしな質問をしましたけど、やはり文部科学省が関係するものから始めようということも出てきますが、議論で扱うデータの定義は、既にこれを超えてだんだん広がっていっているんだなというのを痛感しました。
  以上です。
【喜連川主査】    非常にかっ達な御意見並びに御議論、本日も大変ありがとうございました。それでは、また御意見を頂きましたものに関しましては、事務局で整理をさせていただければと思います。
  事務局から御連絡をお願いいたします。
【玉井学術基盤整備室参事官補佐】    時間も来ておりますので、手短に御連絡させていただきます。
  まず、本日の会合の議事録ですけれども、前回同様、各委員の皆様に後刻御確認頂きました上で公開をさせていただきます。
  また、次回以降の日程ですけれども、資料5に記載させていただいておりますけれども、次回については、ちょうど3週間後の6月21日水曜日午後1時から3時ということで予定しております。場所については、また御連絡を差し上げたいと思いますけれども、文部科学省ないし近辺の場所で考えております。
  事務局からは以上です。
【喜連川主査】    ありがとうございました。ちょうど12時1分ということで定刻になりましたので閉会とさせていただきます。本日も御参集ありがとうございました。


――了――

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