資料1 学術情報委員会(第9回:平成30年5月16日)における主な意見

1.文部科学省 科学技術 ・学術政策研究所 林上席研究員による発表(オープンサイエンスに関する政策討議と実態調査)

【意見抜粋】
〔政策討議の概要と補足トピック〕
○  政策討議におけるオープンサイエンスの議論では、競争的資金におけるデータ管理や、国立研究開発法人を対象としたデータポリシー策定のガイドラインについて検討が進められている。
○  経済産業省では、平成29年12月に委託研究開発におけるデータマネジメントのガイドラインを策定した。 この中でデータは、委託者が公開するデータをあらかじめ指定する「委託者指定データ」、研究者が管理する「自主管理データ」、「管理しないデータ」の3つに分けられ、あらかじめ委託者側がオープンにするデータを指定することで、データ利活用を促進している。
○  AMED(日本医療研究開発機構)では、平成30年度よりデータマネジメントプランの提出を義務化し、データを管理するデータサイエンティスト等の記載を明示している。
○  JST(科学技術振興機構)、経済産業省、AMEDのデータマネジメントプラン(DMP)における記載項目を比較すると、JSTやAMEDの項目が少なめで、研究者の負担感を減らすためと思われる。項目の多寡は、今後理にかなった形に落ち着いていくと考えられる。


〔オープンサイエンス実態調査の重要性とNISTEPの調査の解説〕
○  G7科学技術大臣会合において、2013年にはじめてオープンリサーチデータが取り上げられ、直近のトリノ会合まで議論が引き継がれている。国際的にオープンサイエンス促進のための指標が求められていることから、NISTEP(科学技術・学術政策研究所)ではオープンサイエンスの実態調査を行い、30~60代の研究者1,398名から回答を得た。
○  データを公開したことのある研究者の半分が、個人や研究室のサイトからの公開と回答していることから、データ公開基盤が脆弱であると考えられる。
○  データを公開しない理由として、時間がない、ニーズがない、実績がない等の回答が多く、データ公開に対する懸念が浮き彫りになった。
○  データ公開にあたり不足しているリソースとして、人材、時間、資金、いずれも不十分という回答が多く、また、データ公開用のリポジトリについては、認知度の低さが現れた。
○  データを公開することの懸念として、引用せずに利用される可能性、先に論文を出版される可能性、機密・プライバシー情報の扱い等が多く指摘された。
○  データを再利用・利活用するためには、適切なデータ形式への変換、再利用しやすいようなデータ整理、適切なメタデータ標準の選択等が指摘された。
○  公開データを入手するための障壁として、利用料金が発生すること、無料であっても利用者登録が求められること、利用条件がわからないこと、データごとに品質やフォーマットが異なること等が指摘された。
○  データリテラシー教育の必要性、具体的には知的財産権やライセンス、データの安全な管理方法、適切なデータ形式について関心が高い。
○  研究データの公開や共有の促すインセンティブとして、データ利活用を促すもの、研究者を守るものの両方が必要である。


2.意見交換


〔政策討議の概要と補足トピック〕
○  委託研究費や科研費などの助成金では、研究者の行動様式や評価基準が異なると推測される。知的好奇心に基づいて得られたデータの価値をどのように共有するか、議論が必要である。
○  国際共同研究を実施する際、海外の機関と国内の機関の間で、データマネジメントプランやポリシーに不整合が生じる可能性がある。大枠として統一すべきとの意見がある一方で、研究者の興味が変遷していくことに鑑み、どこまで統制するのか議論すべき。
○  エンバーゴの期間は、研究機関ごとに決めるのではなく、ガイドラインに設定されている方が実現性において高いのではないか。
○  経済産業省の作成したデータマネジメントのガイドラインを参考に、文部科学省としてもガイドラインを作成していくべき。その際、対象については、組織のみならず、研究者のタイプも分類しながら取り組むとよいのではないか。
○  公開するデータと、自主管理データを研究者一人で管理するのは困難である。データサイエンティストが研究者の相談役として必要なのではないか。


〔オープンサイエンス実態調査の重要性とNISTEPの調査の解説〕
○  アーカイブ的なデータと参照的なデータの基準を決めて、その上で体制をつくっていかないと、オープンにはしたものの利用されないという状況が生じるのではないか。
○  学問分野の分類は日本と海外で異なる。国際的な比較をする際は、国際的な分類に従うことも大事ではないか。
○  研究者が、データを公開することは意味のあることだと思える仕組みを制度以外で考えていくべき。
○  研究データの共有文化を醸成するために、引用の作法を確立すること、データポリシーで免責事項を示すことが必要。
○  研究者にインセンティブとして報酬を付与するかどうかは、研究分野により背景が異なるため、分類して議論すべきである。インセンティブをうまく設計できれば、データ共有がより進む可能性がある。
○  データを公開するにあたり、商用利用される可能性を懸念している研究者は多いが、公開するときは商用利用も良しとすべきではないか。商用利用に対する懸念については、とりまとめの論点として加えるべき。
○  世界的なオープンデータの議論は、アメリカが保守化に加速している一方、ヨーロッパは制度作りを積極的に進めている。この状況の中で日本がどのように取り組んでいくべきか検討すべき。
○  通信分野では、ソフトウェア開発をコミュニティで行い共有する、オープンソースソフトウェア(OSS)が活発化しているので、この動きもオープンサイエンスの参考にすべき。特に、オープンサイエンス実態調査の対象を組織に広げていくとき、このようなコミュニティも対象に含めるべきではないか。
○  オープンサイエンスの便益には、既存の研究を効率化するだけでなく、新しい研究を生み出す可能性がある。そのようなイノベーションを起こしうるコミュニティ形成は、施策としても後押しすべき。また、新しい研究を生み出す枠組みのインセンティブと、既存の枠組みの中で研究データの利活用を推進するインセンティブは、分けて議論すべき。
○  研究助成機関が資金を配るだけではなく、データを配るようになると、論文数が増え、研究が活性化されるのではないか。データを配るような仕組みが作れないか。
○  オープンサイエンスの実現のため、データサイエンティスト以外に多様な人材が必要ではないか。

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