資料1 学術情報委員会における主な意見

1. 学術情報委員会(第6回:平成29年12月13日)

  (1) (国研)農研機構大澤剛士氏による発表(オープンサイエンス推進から得られるインセンティブを考える)

〔意見抜粋〕
○  オープンサイエンスの政策として実際に動いている流れは二つあり、研究論文のオープンアクセス化と、研究データのオープンデータ化である。この二つをいかに良い形で国内における科学技術政策として定着させるかが課題。
○  オープンアクセスに関しては、各教育研究機関の研究成果について、機関リポジトリへの登載が進められている。
○  研究データ公開プラットフォームであるFigshareのようなリポジトリでは、プレプリントという形で、パブリッシュされる前の論文を載せることが可能となっている。また、採択後の論文であるポストプリントを公開する事例もある。
○  研究データ自体をデータペーパーで発表し、それをオープン化することも可能となっている。データペーパーはピアレビューの論文として扱われ、検索も可能。また、データが引用されればサイテーションがカウントされるため、研究者にとって分かりやすい成果になる。
○  ジャーナル価格の高騰に伴い、所属機関において購読可能な雑誌のタイトルが減少している状況もあり、オープンアクセス化した方が被引用数の観点から有利となる場合がある。ただ、ゴールドタイプのオープンアクセスは論文掲載料(APC)の負担が大きく、リポジトリを活用したグリーンタイプが推奨される。
○  様々なデータがオープン化されると、今まで行えなかったような新しい研究が可能になるが、データマネジメントや情報の信頼性の不安などから、そのようなデータをフル活用する手法で研究を進める研究者は、現在のところ大きく増えていない。今後、データ利活用環境の整備が進めば、このような研究手法が拡大し、論文生産性の向上も見込まれるのではないか。
○  データを公開するに当たっては、まずはデータを利用した論文を発表した後のデータ公開が基本である。
○  1度利用したデータを再利用して論文を書くことは少なく、また、研究で取得したデータをすべて論文に使用することもまずないため、それらを公開して他人に託した場合に、別の新しい価値が付加される可能性もあるのではないか。
○  1度研究に使用したデータについて、フォーマットを整形しデータペーパーとして公開したところ、それを利用した研究がすぐに出てきた。結果として自分の被引用数も増え、また、これをきっかけに共同研究の機会も得られた。
○  G8でオープンデータ憲章が合意され、その後官民データ活用推進基本法が成立して、公的機関の研究データをオープン化する政府の方針ができた。これらを背景に、農研機構ではデータベース推進方針が明文化され、オープンデータを柱とした所内研究プロジェクトが開始された。農業環境変動研究センターでは、カタログサイトを作成し、そこに載せたデータはオープンとすることが具体的に進められている。あわせて、オープンにするデータ内容、データペーパーの書き方等をまとめたマニュアル(研究成果オープン化ガイドライン)を作成した。
○  従来、研究データは研究者の個人の資産という認識が当然のものとされてきたため、研究データの公開に積極的な研究者は現状でマイノリティである。他方、そのようなことも背景に、  プロジェクトの終了や研究者のリタイヤとともに研究者の積み重ねてきたデータが行方不明になる例が報告されている。
○  一方で、研究成果のオープン化の方法を具体的に聞いてくる研究者も結構存在する。ルールや手続がオーソライズされた形で出てこないと対応は難しいという方は多いが、実践した具体例を提示すると実施の意向を見せる方は確実に増えている。オープン化の方法がわからず対応できていないサイレントマジョリティを拾っていくことが重要である。
○  既存の研究コミュニティや研究者の考え方を尊重しつつ、なじみやすい政策がトップダウン的に推進されると、オープンサイエンスはより広がるのではないか。
○  オープンサイエンスは、研究者にインセンティブをもたらし得るものであり、既にそれを受けている研究者も存在する。導入に向けたさじ加減は難しいが、興味を持っている人たちを拾いつつ、今の流れを潰さないようにしながら、トップダウンの動きがあっても良いのではないか。

(2) 意見交換

○  インセンティブとトレードオフになるデータマネジメントや稼働等のコストは無視できず、研究者が全て担うとなるとコストベネフィットが悪くなるため、データマネジメントを主に行う専門職が必要ではないか。ただ、分野ごとに置くのは難しいと思われ、ライブラリアンがリポジトリ管理だけではなく、データマネジメントも担うことができれば理想的である。
○  データ共有が最終的にうまくいくためには、データを作成する研究者がインセンティブを持てるかどうかが重要な要素。
○  オープンサイエンスの進展においては学協会がその存在意義を問われている。データは真正性が重要で、学会の存在価値はその認証を与えることにあるのではないか。
○  データは、フォーマット次第で使い勝手が大きく変化する。新しい分野の場合、データ交換のフォーマット自体固まっておらず、またデータだけあっても背景や文書がついていないと役に立たない場合もある。生物多様性の分野では、GBIFが国際フォーマットを説明書付で提案したことが、データ共有を進めた一つの要因ではないか。
○  データの標準化プロセスに日本が関われないままでいると、後で随分ハンデになると思われる。
○  具体的にどうすれば大学図書館職員がデータマネージャーとして機能するのか検討する必要がある。
○  オープンデータ推進のための方策にかかるメリットの一般化は難しいが、データジャーナルの活用は、その規模が大きければ多くの人の目に触れるため、研究者個人としてはメリットがある。他方、横断検索可能なデータリポジトリが存在し、日本語で検索できるのであれば、国内で多くの目に触れる。また、国益的な観点から見れば、データジャーナル類を国内に置いておく方が、メリットが大きいのではないかと思われる。
○  データは、研究者コミュニティ内のみに共有される場合と、産業利用にも公開される場合がある。ライセンスで線引きをする場合の対応は個別的で、目的で分けている。利用許可については、本来的に組織の知財管理部門が選別をすべきであるが、現状では個人依存になっている。
○  データは、研究者本人が納得した後であれば公開しやすいのではないか。データ公開に当たっての一つの戦略として、使わないデータを公開しようというアプローチも有効であると考えられる。

2. これまでの主な意見(「研究成果及びデータを共有するプラットフォームの整備」関係)

○  研究データを研究者が安心・安全に共有できる基盤作りと文化作りが必要。
○  ジャーナルへの論文投稿に伴い、エビデンスとしてのデータを求められることは一般化してきており、それに対応するための手間とプラットフォーム整備が課題。
○  リポジトリというインフラ整備と運用体制はほぼ世界標準に沿って着実に進歩。今後、機関という枠組みにとらわれず、分野ごとの特性や強みなども考慮した整備を検討すべきだ。
○  当該分野のニーズを踏まえた分野リポジトリを具体化するには、学協会、大学、大学図書館が協働していくことが重要。
○  プラットフォームの整備に当たっては、簡便な蓄積・利用に関するユースケース、研究者のインセンティブに裏打ちされたサービス設計が重要。
○  我が国の学協会が発行するジャーナルについても、国内にデータが保管され、利用できる状況にしておくことが必要で、そのためのインフラが適切に整備されていることが国際競争に参加するための条件。

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