第8期学術情報委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成27年7月31日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 学術情報のオープン化について
  2. その他

4.出席者

委員

西尾主査、羽入主査代理、相田委員、逸村委員、井上委員、岡部委員、加藤委員、北森委員、喜連川委員、久門委員、高木委員、竹内委員、辻委員、美馬委員

文部科学省

(科学官)美濃科学官
(学術調査官)市瀬学術調査官
(事務局)常盤研究振興局長、安藤大臣官房審議官、岸本科学技術・学術政策局次長、榎本参事官(情報担当)、渡邊学術基盤整備室長、松本学術基盤整備室参事官補佐

5.議事録

【西尾主査】  それでは時間になりましたので、ただいまから第4回学術情報委員会を開催いたします。
 暑い中、御参集いただきまして、誠にありがとうございました。
 それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【松本学術基盤整備室参事官補佐】  それでは、お手元の議事次第に基づきまして配付資料の確認をさせていただきます。
 本日の配付資料ですけれども、資料1、学術情報のオープン化の推進について(中間まとめ案)、資料2、内閣府報告書と学術情報委員会中間まとめ(案)における事項別対照表、資料3、今後の学術情報委員会の日程についてでございます。そのほか、参考資料と机上資料を用意しております。
 不足等ありましたら、事務局まで申し出ていただければと思います。
 以上でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。資料等にもし不備等ありましたら、連絡を頂ければと思います。
 それでは審議に入らせていただきますが。まず、資料1、学術情報のオープン化の推進について中間まとめ(案)、さらに、資料2に基づきまして、事務局から説明をお願いいたします。
【渡邊学術基盤整備室長】  それでは、資料1、学術情報のオープン化の推進について(中間まとめ案)を御覧いただきたいと思います。
 まず、1として検討の背景でございます。公的研究資金を用いた研究成果、論文、研究データ等を指すわけでありますが、これについてはオープンアクセス、オープンデータの取組が諸外国で顕著となっているということで、次の丸でございます、研究成果のオープン化の取組について、3行ほど飛ばしますが、従来のオープンアクセスの概念から研究成果の利活用、さらには、研究の過程そのもののオープン化へと研究の在り方等が変化しているということを示しています。
 次の丸でありますが、このような認識のもとでオープン化に係る基本的方策について検討を進めて、その要点を取りまとめたということでございます。
 2の基本的考え方でありますが、まず、学術研究等の成果については、共通の知的資産として共有されることが望ましいということを示した上で、研究成果は公開し、広く利活用されることを基本理念として共有する必要があるということであります。なお、研究成果の公開ということでございますが、これは脚注の3を御覧いただきたいと思いますけれども、研究の成果としての論文や研究データ等を、インターネット上で公表し、合法的な用途で利用することを障壁無しで許可することを意味するというふうに定義しております。
 戻っていただきまして、最後の丸ですが、研究成果の利活用を促進するということの意義について触れてございます。分野を超えた新たな知見の創出、効率的な研究の推進、あるいは研究成果の理解の促進等について記述させていただいております。
 1枚めくっていただきまして、2ページの最初の丸でございますが、これらの意義を踏まえということで、公的研究資金による研究成果の内、論文及びエビデンスとしての研究データは原則公開とするということを記述しております。その上で、特に論文のエビデンスとしての研究データについては、研究資金配分機関が国際的な動向等を踏まえ、あるいは研究分野の特性等を踏まえて、公開の進め方、公開するデータの範囲、管理方策について示していく必要があるとしております。
 次に、3の研究成果の公開に当たっての基本的事項ということで、論文の話とエビデンスデータの話がございます。
 まず、(1)で論文のオープンアクセスについての取組であります。この論文のオープンアクセスについては、第5期科学技術基本計画期間中に原則公開とすることを実行するべく、研究資金配分機関は実施方針を定め、研究者等への周知を含めて計画的に取組を取り進める必要があるということで記述してございます。
 次に、(2)の論文のエビデンスとしてのデータの公開については、まず、研究データの多様性について記述してございます。最初の段落のところは、いわば総論的に幾つかの分野がありますということでございます。第2段落目からは個別の分野の例示ということで、例えばライフサイエンス分野においては以前からデータ共有や利活用の取組が行われており、更なる促進が期待される中で課題があることも指摘されているということで、この課題については脚注の7でございますけれども、前回の委員会の審議の中で指摘された課題について整理を行っております。
 次に、2ページの一番下の丸でありますけれども、このような分野の状況、あるいはデータの多様性を踏まえた形で、公開及び共有すべきデータの範囲については、国際的な動向や原則公開とする趣旨を踏まえた上で、学協会での検討、あるいは学術会議の研究者コミュニティでコンセンサスを形成していく必要があるというふうに記述してございます。
 3ページを御覧いただきますと、脚注の8でございますけれども、日本学術会議においては、このオープンサイエンスの取組に関する検討会で現在審議を継続して行っているという状況がございます。9月以降、取りまとめに入るという予定を伺っております。
 3ページの頭のところに戻っていただきまして、その考え方を踏まえつつ、研究資金配分機関がデータの公開について推奨していくことが望ましいとしております。なお、この項についても、脚注の9を御覧いただきたいと思いますが、国の支援により統合データベースを整備しているライフサイエンス等の分野については、データの集積と利活用を促進する観点から、データの公開について一層推奨する必要があるということで記述してございます。
 次に、3ページの二つ目の丸になりますが、機密保持等の観点から公開に制限がある場合など、公開適用対象外として考えるべきであるとしております。なお、特に公開対象外とするデータについて、研究の必要性等から、もう少し例示する必要があるのではないかということで、この辺も御意見を賜れればと思っております。
 次に、データへのアクセス、あるいはデータの利用について、個人のプライバシーの保護等の観点から制限事項を設ける必要があるということでございます。
 次に、データの蓄積・管理に関してでございますが、研究資金配分機関は助成する研究プロジェクト等の規模に応じ、この必要性に応じて助成の申請時にデータ管理計画の提出を求めるということを規定してございます。
 次に、データの公開方法でありますが、これについては分野別の公的なデータベース、あるいは学協会で整備されているリポジトリがある場合は、これらに登載することにより進めることが妥当であるということで、まず、このことを基本と考えてはどうかということでございます。なお、公的なデータベースがない分野については、大学等のリポジトリを活用するという方針でどうかということで記述をさせていただいております。
 次に、4ページでございますが、研究データの利活用の促進に係る事項として、許諾ルールの明示について触れております。公開される研究データには、権利関係を明らかにした上で利活用を促進する観点から、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスなどの利用ルールを付する必要があるということでございます。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスについては、脚注の13を御覧いただければと思います。
 また、研究データの引用については、研究データの利用者は、論文などの引用と同じく引用元を明らかにする義務があるというふうに規定した上で、この引用により、研究データ作成者の業績として評価することを大学等において共通に認識し、実行していく必要があるということを示しております。
 また、このデータの引用と関連しますが、データの引用、流通、利活用という観点からは、論文、あるいはデータセットにデジタル識別子を付けて管理していくということが求められます。この活動については、ジャパンリンクセンターの活動を推進する必要があるということで、ジャパンリンクセンターについては脚注の14に説明がございます。
 次に、4の大学等に期待する取組ということでございますが、大学等においては、論文、研究データ等の管理規則を定める、これによって研究成果の散逸等を防止する必要があるということでございます。なお、その際ということで、最後の行に書いておりますけれども、研究者の異動や退職に当たっての扱いについても検討しておく必要があるということであります。
 次の丸については、先ほど申し上げましたデータ等にデジタル識別子を付与する取組について、ジャパンリンクセンターの活動と連携することが望まれるということであります。
 最後の丸ですが、技術職員、あるいはリサーチ・アドミニストレーター、大学図書館職員等を中心としたデータ管理体制を構築する必要があるということと、同時に今、不足していると言われておりますデータサイエンティストの育成システムを検討し、推進することが望まれるということについて言及しております。
 次に、5ページでございますけれども、最初の丸で、特に大学図書館については、今まで機関リポジトリの構築を進めてきた経験等から、研究成果の利活用推進の取組に役割を果たすということが期待されております。このため、関連する大学の研究科等において人材育成プロジェクトを開発し、実践的に取り組んでいくことが求められるとしております。
 次に、5のオープン化に係る基盤整備等についてでございますが、論文のオープンアクセスに係る基盤整備については、機関リポジトリをセルフアーカイブ、いわゆるグリーンOAの基盤として更に拡充する、あるいはオープンアクセスジャーナルの育成に努めていく方法が妥当であるということでございます。
 それと、次の丸ですが、これは電子ジャーナル出版のプラットフォームでありますJ-STAGEについては、国際的な存在感の向上を図る必要があるということを記述してございます。
 また、次の丸で学協会についてですが、主には論文の教育現場等での利活用を促進する観点から、著作権ポリシーを策定し、明示する必要があるということであります。この著作権ポリシーについては、調査によって約半数の学会において明示がされていないというようなこともございますので、ここに記述させていただいております。
 次に、(2)のデータ公開に係る基盤整備等についてでございますが、最初の丸は大学等におけるデータの保管・共有に係る基盤整備ということで、アカデミッククラウドの活用を図る必要があるとしております。なお、このアカデミッククラウドについては、国立情報学研究所と大学等が連携し進めることが求められるということでございます。
 次の丸ですが、これについては各データベース、あるいはリポジトリ等に登載されるデータセットの横断的な検索・利活用を可能とするための基盤の整備が必要であるということについて言及しております。
 最後の丸については、学協会において共同して日本発のデータジャーナルを構築することが望まれるとしております。その際の観点としては、データジャーナル、いわゆるプラットフォームにデータを集積させる視点が重要であるということについて示してございます。
 資料1は以上でございます。
 資料2については、左側に内閣府の報告書で示された主な事項、観点について記述してございます。それに対して、今ほど説明申し上げました中間まとめ(案)において、どのような記述、あるいはどのような具体的な内容について書いているかということを示したものでございます。主には、この委員会の審議内容を反映したものということで、下線部について御覧いただければと考えております。具体の説明は重複しますので省略させていただきます。
 説明は以上でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、まず資料1、それから我々のこの委員会の審議が内閣府の報告書をベースにしながら、それを補完する、あるいはより内容的に付け加える等の議論を行ってきた経緯がありますので、それについては資料2を見ていただきながら本日の審議を行いたいと考えております。中間まとめ(案)については、9月の本委員会でもう1回、最終的に議論すると考えてよろしいでしょうか。
【渡邊学術基盤整備室長】  はい、そのように考えております。
【西尾主査】  今日頂いた御意見等を更に反映した中間まとめ(案)として、次回までに改訂版を作成いただくということを前提にして御意見を頂ければと思います。まずは1ページの1の検討の背景、それから同じく1ページの中間あたりからございます2の基本的考え方、それが2ページの上のところまで書かれていますが、まず、これらの1と2を議論いただくということで進めたいと思います。
 御意見等、ございますでしょうか。はい、岡部先生。
【岡部委員】  2ページ目の最初で、これらの意義を踏まえのところですけれども、主語が研究資金配分機関になっていまして、それに対して国際的な動向や戦略性及び研究分野の特性等を踏まえて、公開の進め方や公開するデータの範囲及び管理方策等について示していく必要があるということで、研究資金配分機関が主体的にそういうことを示すという、かなり踏み込んだ書き方になっているように感じました。オープンサイエンスは、本来は研究者、あるいは所属の大学、学協会、コミュニティでそういう指針を決めて、研究資金配分機関はオープンサイエンスを支えるというか推奨していく形だと思うんですけれども、研究資金配分機関が進め方や公開の範囲について決めるというふうに断定していまして、それが適切な場合ももちろんあると思うんですけれども、ある意味、研究資金配分機関の示したガイドラインが研究者の分野と合わないということもあり得ると思いますので、ここはある程度、慎重に、お金で縛るような形にならないように少し御配慮いただけるといいかと思いました。
 以上です。
【西尾主査】  事務局、いかがでしょうか。
【渡邊学術基盤整備室長】  ここで研究資金配分機関とさせていただいたのは、御指摘のように一律に基準を適用するようなやり方はなじまないのではないかということがございますので、後の方で触れていますが、学協会、あるいは日本学術会議でのコンセンサス、こういったものをやはり踏まえる必要があるだろうということは前提としております。ここのところは、どちらかというと諸外国で見られるように研究資金配分機関がオープンアクセスポリシーというような形で、どういうデータについては公開しましょう、どういうデータについては非公開にしましょう、あるいはここに公開の進め方と書いていますのは、例えば分野別なのか、段階的にやるのかとか、そういった公開のプロセスにおいて研究資金配分機関がポリシー等で示すといったようなことを念頭に書かせていただいているということでございまして、どういったデータを公開すべきかといった根本的な話については、やはり研究者コミュニティの理解が必要であろうというふうには考えております。
【岡部委員】  この文言が独り歩きしないようにもう少し加筆した方がいいのではないかということで、今申し上げました。
【西尾主査】  羽入先生、どうぞ。
【羽入主査代理】  今、主査がおっしゃった範囲をもしかしたら超えるかもしれないんですけれども、背景が外国の動きにあるような印象を与えるように思えまして、近年、諸外国で顕著になっているので、とするよりも、むしろ、2番目の丸を先に持ってくる方がいいのではと個人的には思いました。
 それから、1、2に限らないことかもしれませんが、「望ましい」というのと「必要がある」というのと「期待される」というような、少し態度が引けているような感じが全体的にします。誰が誰に望むのか、誰が誰に期待するのか、誰が必要とされているのかというようなことをもう少し明確にする必要があるのではないかという印象を受けています。
 先ほど岡部先生がおっしゃったことに含まれているのかもしれませんけれども、研究者に望まれることというか、研究者がなすべきことと、学協会なり、あるいは学術会議なり、アカデミックな組織がなすべきこと、大学を含めた機関がなすこと、それから国がなすことという、何段階かに分けてといいますか、その区別がなされて記される方が読み手としては読みやすいのではないかと思いました。
 全体的なことにまで触れてしまって申し訳ございませんが、とりあえず以上です。
【西尾主査】  羽入先生の御意見には、大きく言いますと三つの観点があったと思います。背景の記述の1番目の丸と2番目の丸については、2番目の丸の方がより重要なのではないかということ。もう少し積極性を持った記述が望ましいのではないかということ。それから誰が何をするのかということの主語をより明確にしていくということ、の三つだったと思います。それらについて、次回に向けて改善をお願いいたします。よろしいですか。
【渡邊学術基盤整備室長】  はい、分かりました。
【西尾主査】  美馬先生、どうぞ。
【美馬委員】  3点ございます。
 1点目は、岡部委員の意見をサポートします。先ほどのお答えでは後の方を読めば、それは書いてあるということでしたが、こういったものは先に書いておくべきだと思います。ですから、本来は研究資金配分機関が策定していくということではなくて、研究者側から、そのコミュニティからが望ましいということです。そこで2ページ目の一番上の丸の最後の2行の、方策等について示していく必要があるということよりは、支援していく、つまり、広くいろいろな分野から、例えば取りまとめていく、それを支援していくというようなニュアンスが伝わればと思いました。
 2点目は、羽入委員もおっしゃいましたけれども、誰に対して何を望むのかということが余りはっきりしない。例えば、5ページ目の最後の方で、(2)のデータ公開に係る基盤整備等についてというところは、どういった機関に何が望まれるのかというのをはっきり書く必要があると思います。5ページ目の(2)の一つ目の丸のところでは大学等、次の丸が科学技術振興機構や国立情報学研究所、三つ目の丸は二つのことが混じっています。三つ目の丸の最初は学協会に対して望んでいて、後半は多分、日本学術振興会に対して言っていることが一つの丸の中に混じっているということが、やはり分かりにくくしているのではないかと思いました。ですから、書き方としてはどこに対して何をというのをちゃんと分けて書くということ。
 それから3点目、これが最後ですけれども、今回、新しい用語というか、説明が必要な用語がいっぱい出てきて、下に脚注で付いています。このページにどうしても書いておく必要があるものは脚注でいいと思いますが、最後の方に用語集、あるいは説明としてまとめておいた方が、もう少し十分な説明ができるのではないかと思いました。
 以上です。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 今の1番目、3番目の件は、事務局の方でどうかよろしくお願いいたします。2番目の点は、美馬先生の方からは5ページのことでおっしゃられましたけれども、要は羽入先生もおっしゃられたとおり、全体の中で誰がどこにどういうことを要望しているのか、どうすべきなのだということに関する記述が明確でないということです。この意見は、今、対象にしている1、2を含めて、全体的な意見として捉えていただければと思います。事務局、よろしいですか。
【渡邊学術基盤整備室長】  はい、分かりました。
【西尾主査】  それと、最後の方で用語集的なものをまとめていただくということも何とぞよろしくお願いいたします。
 ほかにございますか。喜連川先生、どうぞ。
【喜連川委員】  これは羽入先生が冒頭おっしゃったことにも関連するのかもしれないんですけれども、目的のところで効果的に研究を推進しイノベーションの創出につなげることを目指したというようなことになっているんですが、やはりもう少しはっきり、要するにライフサイエンス分野ですと、再現可能なものは大体半分くらいしかないというようなことは製薬メーカーなどは幾らでも言っているわけで、その辺をもう少し健全にするといいますか、そういう話と、重複研究を減らすことによって研究資金を効率的に活用するということと、それから他人のデータや結果をより機動的に使うことによって研究を促進するということなど、もう少し目的をはっきり書いた方がいいのではないかと感じます。特に日本の国情においても研究費というのは、もう予算を増やすことは困難ですので、そこが大きなドライバーであるというのは明確にしておいた方がいいだろうという気がいたしました。
 それから、研究の過程そのものをオープンにするということまで言及されているんですけれども、ここまで書いていいのかというのはまだよく分からないといいますか。研究のアウトカムに対して、そのエビデンスを出しましょうというところまでは合意されていると思うんですけれども、そのプロセス全部を出すということまで後の方で言っていることにはつながっていないので、一番最初の導入部でここまで言っていいのかが少し気になるところです。
 それから、これはトップタイトルが学術情報のオープン化なので、少し領域を超えるのかもしれないんですけれども、データをオープンにするか、オープンにしないかは別として、そのデータはきっちりとっていきましょうという話はどこかであるべきではないかという気がします。その上で、諸般のいろいろな検討をすることによって、ここはオープンにするのはやめましょうという話になるわけなんですけれども、そもそもとっていなかったら、オープンにしようがないわけですから、その部分をどんなふうに記載しておくかというのが非常に重要になると思います。加えて、研究者側にこのまま与えられたときに、どう動けばいいのかというところもやはり考えておかなくてはいけなくて、100万人か1,000万人に一人しか出ないような小保方さんのために、疑惑が生じないようにするためにアディショナルな負担を研究者に強いることというのは、どう考えても、科学の進歩という観点からは損失の方が大きいわけです。ここで言うデータをどの程度までのデータと言うのかというような話について、今後検討していくというようなことを入れておく必要があろうかと存じます。そうしないと余りにも漠然としていて、現実にどう動けばいいかというところが実際には非常に不透明になってくるのではないかという気がしています。目的は、とにもかくにも研究者の負担を小さくするということにしないといけないのではないかと思っております。
 以上です。
【西尾主査】  まず、なぜデータをこういう形でオープンにしていくのかということの重要性に関しては、もう少し明確に書いておく必要があるのではないかということで、喜連川先生が3点のことをおっしゃられました。このあたりは事務局の方としてもよろしいですか。
【渡邊学術基盤整備室長】  はい。
【西尾主査】  二つ目の問題は結構重要で、研究の過程までオープンにするのかということに関して、現在、中間まとめ(案)においてはその記述があるのですけれども、どうでしょうか。
 どうぞ、北森先生。
【北森委員】  私も正に同じところを発言しようと思っていたところでありまして、オープンサイエンス全体の話の中で学術情報のオープン化というのがどこを示しているのかということをやはりどこかで明確にする必要があろうかと思います。実験の結果得られたデータを意味しているのか、あるいは論文にサプリメンタルとして付けるべきデータのことを意味しているのかということも、実は全体の中でははっきりしていません。今、喜連川先生から御指摘があったのは、過程で得られたデータまでオープンにするということですね。そこのところはやはり研究の進め方、その他というのは研究者で皆違ってくるし、場合によってはやり直すというようなこともあり得るわけなので、研究過程そのもののオープン化というよりは、この文章は多分、信頼性のことを言っているんだろうと思いますので、信頼性を担保するための一つの方策というくらいの位置付けでないと、全てをオープンにしますというのは、やや危険な要素を含んでいるのではというふうに思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 今、北森先生からおっしゃっていただきましたように、過程で得られたデータ全てをオープンにすることによって、研究の過程も、ある程度トレースできてしまうことになります。この委員会としてオープンにする、しないという議論に関しては、オープンにするところまでは行わないというスタンスでよろしいでしょうか。御反対はございませんでしょうか。
 羽入先生、どうぞ。
【羽入主査代理】  全く反対ということではないんですけれども、今日配っていただいた参考資料の5ページに、第5期科学技術基本計画中間まとめ(案)の過程かもしれませんけれども、ここに一つ目のポツで論文及び論文のエビデンスとしての研究データについては、原則公開とし、ということと、それから、二つ目のポツでは、意図が少し書かれておりますが、今、主査がおっしゃったような方向にする場合に、同時にこの基本計画の表現や考え方についての整合性をとっておく必要があるのではないかというふうに思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 参考資料5ページの論文及び論文のエビデンスとしての研究データに関する記述について、それが研究のプロセスそのものまでもオープンにしていくという解釈になるのかどうなのか、これについてどうですか。
 北森先生、どうぞ。
【北森委員】  先ほどの研究の過程ということになりますと、過程を全てオープンにするということになると、往々にして起こり得るのは、何か実験をして得られたデータがあって、そのデータに対して、このデータで大丈夫なのかという議論が研究室で行われ、そして不適切な場合には実験条件そのものを変えて、もう一度とり直して、そしてある論理に沿うような学術的な知見を得ていくというのが研究のプロセスであろうと思います。したがいまして、何度も何度もやり返すというプロセス全てをオープンにするということと、ここに書いてある論文及び論文のエビデンスとしての研究データということは異なるものであるというふうに研究現場では理解すべきだと思います。
【西尾主査】  今、北森先生からおっしゃっていただいたことからすれば、我々が打ち出そうとしている方向性について、ある程度、内閣府での議論との整合性は保てると考えますが、よろしいでしょうか。
 喜連川先生が先ほどおっしゃっていただいたのは、データはとにかく蓄積しておくということでした。しかし、それをどこまでオープンにするかということとは別だということですね。ですから、データに関しては、今後、各研究機関等において、その過程で得られたデータ、今、北森先生がおっしゃった意味でのプロセスにおけるデータについては、機関の中でそれを蓄積しておくことは、何か問合せがあった場合に、それを明示することができ、機関としての責任を果たす観点からも要請されることだと考えます。ただし、それをオープンにしていく過程においては、論文を書く上での、プロセスそのものに関するデータ、ある種の限られた一番大事なところのデータ、例えば、プロセスの最後に得られるデータなのかもしれませんが、そういうものに関してはオープンにしていくべきだという、喜連川先生の御意見がありました。したがって、どこのところで線を引くのかというところは議論になるということでよろしいでしょうか。
 喜連川先生、どうぞ。
【喜連川委員】  私の研究分野はコンピューターサイエンスなので、実際の実験をなされている先生方の感覚と少し違うかもしれないんですけれども、電子工学の先生といろいろ話しますと、結局、とるデータや実験データは非常に大きく、その中から論文になるデータというのはほんの一部でしかないわけで、ほとんどの残りは、データとしては意味があるかもしれないんですけれども、論文に帰結するところとは直接関係ない。論文になるところが事前に全部分かりながら研究をしている人なんて、ほとんどいないわけで、結果論として必要なものだけを載せましょうという話だけを書いても、どういうふうにこれをシステムとして組めばよいか、放っておくとどうしてよいか分からないということになる可能性があるのではないかと思いコメントをさせていただきました。
【西尾主査】  竹内先生、今のことと関連してということでよろしいですか。どうぞ。
【竹内委員】  多分、今、議論されている事柄というのは3ページの真ん中より少し上にありますデータの蓄積・管理と書いてあることではないかと思います。ここではデータ管理計画の提出等を求めるといったことが書かれているわけですけれども、この部分をもっときちんと書き込んでおかないと、先ほど喜連川先生がおっしゃった、あるいは西尾先生がおっしゃったアカウンタビリティーという問題も保証されないということなのではないかと思います。
 2ページに戻りますと、注5のところにデータの公開及び利活用を促進するためには、まずデータが適切に保管されることが重要であるという脚注があるわけでございまして、この脚注と3ページに書かれているデータの蓄積・管理の部分というのをきちんとリンクさせて明確に述べるというのが、この中間まとめでは必要だろうと思います。とりわけ、この点に関しては、ここに書かれている内容よりも、更に踏み込んだデータ管理計画の義務化のようなことまで本来は言うべきではないかと思います。と申しますのは、既にNational Science Foundationは2011年から助成に対して、データ管理計画の提出を求めているはずで、これは明らかに国際的な流れとしてそうなっていると思いますので、我が国においても、その方向で議論を進めるべきではないかと思います。
 以上です。
【西尾主査】  どうも貴重な意見をありがとうございました。
 そうしましたら、中間まとめで書くべきこととして、いわゆるデータそのものを蓄積しておくことは、今後、いろいろな観点からも重要だということはこの委員会として合意が得られたと考えます。そのことを明記した上で、どこまでをオープンにするかということに関しては、また別の観点からの議論が必要です。そのことに関して、論文を最終的に公表していく上での最もキーとなるデータをどのように書けばよろしいでしょうか、北森先生。
【北森委員】  それは正に参考資料の5ページに書いてある、論文及び論文のエビデンスとしての研究データという文言をそのまま頂いてもよろしいのではないかと思います。
【西尾主査】  まず、この委員会としてもその書きぶりをベースにするということでよろしいでしょうか。
【加藤委員】  論文と論文に関係するエビデンスのデータをオープンにするということは、多分、衆目の一致するところではないかと思います。今、喜連川先生と竹内先生がおっしゃった中で、データ管理計画に基づいてデータそのものを蓄積していくという、シェアリングしていくということをきちんとやっていかないといけない。その中には研究者コミュニティとして、ここをオープンにした方がより研究が促進するというような、それは、例えば失敗データの中にあるかもしれません。5月に細野先生が約1,000種類の超伝導のデータをオープンにしましたけれども、そういうものがあって次の研究が進むということもありますので、論文に関係するデータ以外の研究データについては、原則公開というよりも、研究者コミュニティの方で判断をお任せしながら、コミュニティの中の研究が進むものについてはオープンにしていくべきだというふうに考えております。
【西尾主査】  今の先生の御意見で、今後、我々はこの議論の方向付けを非常に明確にできると思います。どうもありがとうございました。
 更に留意すべきこととして、喜連川先生がおっしゃられたように、とにかく大事なことは研究者側に負担がかからないことだと考えます。先ほど来のようなことを明記していった場合でも、研究者にとって負担がかからない範ちゅうであるということで、特段問題はないでしょうか。研究のプロセスは自らを守るためにもきっちり蓄積しておく。ただし、オープンにするものとしては、論文及び論文のエビデンスとしての研究データであるというような書き方で、特段大きな負担にはならないと考えてよろしいですか。
 はい、岡部先生どうぞ。
【岡部委員】  少し先走るかもしれませんけど、次の2ページですね、3の(2)の論文のエビデンスとしてのデータの公開というところで、まず、研究データの多様性ということで、そもそもエビデンスとしてのデータ、そしてそれを公開するということは、コミュニティによって全然違うということが書かれてあります。どこまで公開するか、あるいはどういう形で公開するかというのは、コミュニティで考えていくべき、国際的な状況も踏まえながらやることで、むしろ、我が国がそれに対して国際的な状況より一歩進んだ取組をすることはいいことかもしれませんけれども、かけ離れたことをさせられるようなことにならないために、ここのところで研究データの多様性について書いてあるんですけれども、それを学術コミュニティで決めるというところ、そしてそれが先ほどのエビデンスのデータの話につながるというところが読んでいて、少しつながりが弱いと思いますので、そこは検討をお願いしたいと思います。
【西尾主査】  分かりました。それは多分、1と2のところでどこまでのものを公開するのかということをきっちり明記して、その上で、エビデンスとしてのデータの公開ということに関してはコミュニティの多様性があるということをしっかりと記述することが大切だと考えます。これは加藤委員からもおっしゃっていただいたことともつながると思います。この辺の流れが弱いと思いますので、今後明記していくことにしたいと思います。
 はい、加藤委員、どうぞ。今、岡部先生もおっしゃいましたので、もう3に関わるところまで言及していただいて結構です。
【加藤委員】  アメリカの大学のデータで、義務化の方針を決めてやったときと、図書館の方でオープン化に対する支援を表明して動き始めたときで、実は義務化してもほとんどオープン化のパーセンテージは増えなかったけれども、図書館が義務化のためにリポジトリへの登録をサポートしたことによって、かなりオープン化のパーセンテージが上がったというようなこともございますので、先ほど北森先生もおっしゃったように、研究者の負担を少なくするための支援というのは、やはり必要ではないかというふうに思います。一部は研究のファンディング機関であったり、あるいは大学の図書館であったり、教育機関のリポジトリに関係するところで、やはり研究者の支援を記述しておいた方がいいのではないかと思います。
【西尾主査】  これは個々の機関でもそうですけれども、国全体としても負担を少なくするということに関して、何らかの方策を考えていく必要があるということを明文化しておくということかと思います。
 そうしましたら、辻委員、どうぞ。
【辻委員】  研究データの多様性のところなんですけれども、こちらの文章の中で丸の一つ目で、同時にデータを公開する必要性が必ずしも高くない分野や知的財産などの観点からデータの公開がなじまない分野もあるというふうに言い切ってしまっているんですけれども、これは先ほど来の、例えばコミュニティでいろいろと決めていくのではないかという議論もございます中で、こういうふうに言い切ってしまうのはどうかという気が少しいたしまして、実際のところ、少しレベル感があるというようなところが、その下の例示でも書かれてございます。マテリアルズ・インフォマティクスのあたりもそうですし、それから人文学分野における記述もそうですけれども、一定のところでは何らかの次の策が練られているということを例示として挙げられておりますので、余りなじまない分野もあるというふうに言い切ってしまうのはよろしくないのではないかと思いました。
 以上です。
【西尾主査】  ありがとうございます。
 前回までの議論と今回のところで、我々の委員会として、ある分野を対象としてデータの公開に関して、具体的なある種のテンプレート的なものを提示しておきたいという意向がありました。一方で、各々の研究コミュニティの立場などを無視してというか、上からの目線でこうすべきだということを書くべきなのかどうなのかということは非常に迷っていたところです。結局、今のところでは、該当コミュニティでいろいろ議論していただき、我々はそれをベースに、その議論の流れを注視しながら、この委員会の最終まとめに反映していくということになろうかと考えます。特に、そういうものが学術会議等でまとめられていくようであれば、そこと連携して文部科学省としてもその方向性、あるいは具体的な内容について、最終報告には盛り込むというような流れもあり得るかと思いまして、現在のところはコミュニティにおける議論に託した形になっております。
 そのような流れの中で、なじまない分野があると書いてしまいますと、我々としてはオープン化ということを進めようということをこの委員会では従前より謳(うた)っているのに反して、少し消極的なメッセージになってしまうというおそれが一方であります。ですから、今、辻委員からおっしゃっていただいたように、この委員会としてはデータのオープン化ということを、今後、科学の進展のためにも推進していきたいということがうまく伝わるような形で書いていきたいと思います。どうもありがとうございました。
 喜連川委員、どうぞ。
【喜連川委員】  御指摘は非常にごもっともですので、なじまない分野もあるというよりも、公開がなじまないデータもあるというくらいの表現にされるといいと思いました。
【西尾主査】  非常に重要なポイントですね。分かりました。
【喜連川委員】   それともう一つ、先ほどNational Science Foundationの話が竹内先生からあったかと思いますけれども、決してNational Science Foundationがそれほど進んでいるわけではないと理解しています。すなわち、旗を上げても、みんなが動きだすには相当時間がかかるので、義務というような感じのトーンよりも、一歩一歩進めていくみたいな表現をどこかに入れておくのがいいのではないかというのが一つでございます。
 あともう一つ、これは高木先生がむしろ専門なので、是非教えていただきたいんですけれども、アルツハイマー等でいろんな実験データが出たときに、例えばOSが変わる、プロセッサーが変わるというので、原則、プログラムに依存しているわけなんですが、その精度が1、2パーセントくらい違うことは結構たくさんあると思います。
 何が言いたいかというと、実はデータそのものが重要なのではなくて、ほとんどの場合、2次生産物としてのプログラムを通った後のデータを我々は見ている。そうすると、そのコードはどうするのかという話は、実はデリケートで、余りはっきり触れられていません。コンピューターサイエンスの場合は、特にデータマイニングというような領域、最近で言いますとデータアナリティクスという言葉になっているんですけれども、まず、コードを公開するというのは、ややリラクタントになっています。特にアメリカの先生は、ほとんどそれで企業を興していますので、コードを出した瞬間に、そもそもコンピタンスがなくなるみたいな話がある。しかし、科学になりますと、コードがプレシジョンを担保していることになる。ここで書くのはどれくらいが妥当なのか高木先生にお伺いしたいところなんですけれども、現実には1次データなのか2次データなのか、その辺の議論というのもどこかの段階でやらないといけないと思っております。
【西尾主査】  高木先生、いかがですか。
【高木委員】  今、喜連川先生がおっしゃった件はごもっともでございまして、実は日本学術会議のオープンサイエンスの取組に関する検討委員会でもそういうところも少し議論したと思いますが、確かにデータの再現性とか、そういうことを見ていく場合は、やはりどういうバージョンのデータベースやソフトウェアを使ったかということをきちんと書かないと、なかなかそれの再利用なり再現性ということは難しくなると思いますので、そういう意味では、そういうツールなり、ソフトウェア、データベースも含めたバージョンなりというものをうまく並行して管理していかないと、議論は現実には難しいと思います。ただ、ライフサイエンスの場合、少し違うのは、多くのソフトウェアは基本的にフリーで出回っているものが多く、余り有償のものを使わないという傾向がありますので、今、喜連川先生が御心配になった点について、ライフサイエンスの場合は少し楽になっている面はあるかと思います。
【喜連川委員】  少し心配なのは、データもそうなんですけれども、通常の論文の場合は印刷することでフィックスされます。しかし、リポジトリに入っているデータですと、間違っていることは幾らでもあるので、検索をし直して修正しますみたいなこともどんどん生じてくると思います。要するにバージョン管理をしていかなければいけない。ソフトウェアというのはものすごいスピードでバージョンアップをしていきますので、実験した人が悪いのか、プログラムを作った人が悪いのかというのは、犯人を見つけるようでいけないんですけれども、多分、インディペンデントボディーがやるわけですね。そうすると、どっちの責任なのかみたいな話がうまく機能するようなエコシステムを裏側で動かしておかないと、実質的に意味が出ないというようなことを申し上げておきます。オープン、クローズというのはまた別問題だと思います。
【西尾主査】  おっしゃるとおりだと思います。
【北森委員】  今の議論が、正に先ほどの研究プロセスを全部載せるのかという議論に相当するところであって、データ全てを載せていくというのはどういうバージョンなのか、あるいはバージョンが変わったらデータを変えていけるのかというようなことも含めて、やはりそれはどこかで議論しておかないといけないのではないかと思います。
【西尾主査】  分かりました。
 岡部先生、あるいは美濃先生、プログラムそのものということも含めて何か御意見はないですか。逸村先生、どうぞ。
【逸村委員】  要するに、これが論文の裏付けとしての研究データとしてのフィックスの度合いだと思います。そういう意味では、データの利活用というところは先ほど喜連川先生もおっしゃっていましたけれども、バージョン管理をいかにきちんとするか。それに関して、やはり一定のガイドラインや作業的なプロトコルを決めてやっておくしかないと思いますが、それをやることも含めたオープンデータというふうに理解しております。
【西尾主査】  我々が認識を新たにしなければならないのは、データだけきっちり蓄積をしておいても、それで十分でないということですね。つまり、そのデータをもとに、プロセスを再現してみようと思ったときに、データを獲得したときのバージョンのソフトウェアがもうないということになると、データそのものをもう一回使って再現するということもできないことになります。そこで、精度の高い再現ができるためにどういうことをしておくべきなのかというようなことをきっちり明記しているようなまとめというのは余りないと思いますので、そういうことの認識を中間まとめに明記するということが大事であると考えます。
 何かこれに関して、こういう方法がありますというような御意見はないでしょうか。これは大事なことだと思います。相田先生、よろしいですか。その後、逸村先生。
【相田委員】  分野によって違うとは思うんですけれども、プログラムというのは使ったプログラムのバージョンというか、少なくとも何月何日版を使ったということは記載できるはずかと思います。論文のデータだったら、そういうものは当然、記載すると思うので、それを同時に記載するということをすれば、大部分の場合は、先ほど言われたようなことは何とかなるのではないかと思います。
 それともう1点、1ページ目の先ほど問題になっていた部分で、研究の過程そのもののオープン化へのところで、新たな手法が生じつつあることを示しているという、新たな手法というのは具体的にはどういうことを意味しているんでしょうか。今、言われていたようなプログラムがというようなことと関係していたのでしょうか。
【西尾主査】  事務局、どうぞ。
【渡邊学術基盤整備室長】  これは一般的に言われていますデータ駆動科学的な話で、データから新たな成果を上げていくというような新たな分野の中でもいろいろあると思いますけれども、そういった手法が取り入れられてきているというような意味合いで記述しております。
【相田委員】  ビッグデータを使って何かを解析してとか、そういうイメージですか。
【渡邊学術基盤整備室長】  はい。
【相田委員】  そうすると、ビッグデータを解析するにしても、解析するいろんなバージョンがあるので、それをちゃんと明記することが同時に必要だということにつながるのでしょうか。
【西尾主査】  今、相田先生から言っていただいたところについて、中間まとめを改訂する段階で明記しておきたいと思いますので。
 逸村先生、どうぞ。
【逸村委員】  今言っている一連の議論というのは、一番分かりやすいところで5ページの最後の日本発のデータジャーナルを構築するという話がありますが、ここでどのようなデータジャーナルを構築するのか。それに至るまでは4のあちこちで書かれております、アカデミッククラウドのフォーマットの標準化やシステム開発、あるいは人材育成、これは全部絡む話でして、今の1、2の議論ではこのくらいにとどめて、実際に細かいストラクチャーを決めるのは更に先の話だということかと思います。
【西尾主査】  先生、先に行うということでよろしいですか。
【逸村委員】  先でというか、先で議論しましょうということです。
【西尾主査】 分かりました、そういう意味ですね。
 そうしましたら、大学等に対する取組ということや、オープン化に関する基盤整備等についてのところも含めて、時間のこともございますので、全般を通しての意見を頂くということでよろしいですか。
 そうしましたら、井上先生、どうぞ。
【井上委員】  2ページの3の(2)で論文のエビデンスとしてのデータの公開のところで、知的財産に関して専門なものですから申し上げますと、喜連川先生がおっしゃったように、知的財産の観点から公開がなじまないのは分野としての特性というよりデータとしての特性だと思います。もちろん、一般的に産学連携が進んで知財化が図られている分野というのもありますが、やはりデータ単位で見た方がいいと思います。ほかで挙げられている例は分野ごとのいろんな研究そのものの特性が挙げられているので、ここで知的財産を挙げるのは少し唐突な感じがいたします。
 3ページの一つ目の丸、機密保持等の観点から公開に制限がある場合、それから二つ目の丸、個人のプライバシー保護の次の財産的価値のある成果物の保護の観点からというところが、営業秘密的なものと特許的なものも含めた知的財産関連の話になっているので、その意味でも、2ページで「知的財産の観点から」という文言は入れる必要はないと思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。では、今のところ、そういう形でまとめていきます。どうもありがとうございました。
 北森先生。
【北森委員】  2ページの公開の対象データのところなんですが、公開及び共有すべきデータの範囲について、そこの中ほどに学協会で研究上の必要性を考慮した検討を行いとあるのですが、これは一つの学協会で済むような研究であれば、この文言でいいと思うんですが、最近の先端研究は非常に学際的になっていて、一つの学協会で収まらない部分も非常にあるということと、それから研究が萌芽的(ほうがてき)な場合には、学協会そのものが見当たらないというところもあり得るわけですので、ここはややフレキシブルに書いておいた方がいいのではないかと思います。
【西尾主査】  何か御提案ございますか。
【北森委員】  学協会「等」とか、あとは公開及び共有すべきデータの範囲「及びその方法など」についてはとか。
【西尾主査】  非常に適切な御意見、ありがとうございました。
 では、久門委員、それから竹内先生。
【久門委員】  先ほどから話題になっているデータの公開になじまないという部分の文言です。ここには出す必要性がない情報という話と、出すこと自体が好ましくない情報という二つのことが書かれています。出すことが好ましくないという部分は井上委員の方からおっしゃられたとおりだと思います。一方、必要性のない情報という部分は、必要性があるとかないとかいう恣意的な運用を可能にしてしまうので、要らないのではないかと思います。そうすると、この文章は、ほとんどなくなってしまう感じになるかと思うんですけれども。
【西尾主査】  3ページの(2)の1番目の丸に関しては、今まで頂きました貴重な意見をもとに全面的に書き直してみたいと思います。要は、例えば、天文学や素粒子物理学などのような、いわゆるビジネス等に即座に関わってこない分野のデータと、ライフサイエンス分野のように非常に大きなビジネス展開につながる分野について、ここで何とか分野として区別しておこうというようなことが背景にあって、現在のような文章になっていますが、今後、書き直しをさせていただきますので、どうかよろしくお願いします。
 竹内先生、どうぞ。
【竹内委員】  3全体に係るんですけれども、共有と公開という言葉がどうもよく理解できません。公開というとパブリッシュということだと思うんですけれども、共有といった場合は、限定された集団の中での共有ということだと思うんですね。それが全体として適切に使い分けられていないような気が何となくしておりまして、先ほど来、何を公開するのかという議論はコミュニティに委ねるという話がございましたけれども、どの範囲で共有していくのか、これも2次的に見れば公開ということかもしれませんけれども、それについてもコミュニティで明確に議論して決めていくのだということを、きちんと書いておく方がよろしいのではないかと思いました。
 以上です。
【西尾主査】  事務局で共有と公開ということをどういう観点で使い分けているかお答えできますか。
【渡邊学術基盤整備室長】  一義的には利活用の観点で共有を図るということを全面にするということが必要ではないかと思っております。公開しましょうということを言って、それは共有のためにという流れで書いておりますので、公開、共有をそこまで厳密に書き分けているということではございません。
【西尾主査】  竹内先生、その辺はどういう視点で書いたらよいか、御提案ございますか。
【竹内委員】  共有という場合はコミュニティの中だけというか、比較的限られた小さな集団、例えば研究者集団でいいと思うんですけれども、公開といった場合には例えばビジネスの利用とか、そういったことまで含めて視野に入れて、不特定多数が使えるというイメージで書き分ける方がよろしいのではないかと思いました。
【西尾主査】  分かりました。
 どうぞ、喜連川先生。
【喜連川委員】  日本にOpen Data Instituteが来たときにかなりはっきり言っていたんですけれども、ピュアオープンなデータというのは、やはり全体感からしたときに必ずしも多くありません。共有という言い方は少し分かりづらいかもしれないんですけれども、原則、使う人をイグザミンして、この人だったら渡していいと。例えば、現行法の中ですと、現在、気象庁が持っているデータというのは国交省が持っていることになるわけなんですけれども、過去は全然、外に出せなかったわけです。それを大学に出すときにも、この人には研究的な成果が期待できるから、だから出しましょうというのがだんだん進んできている。ヘルスケアもそうです。一般に誰でもいいからオープンという話とは大分違うわけです。しかし、国家として見ると、これをどこに対するメッセージとするかですけれども、なるべくいろいろなデータを一定程度の人の中でも利活用を進めていくべきであるということを非常に強く我々は発信した方がいいと思うのです。ですから、ここでの共有という言葉のトーンは、そういうセンスで区別しながら適切に使えば、非常にいいことになると思います。
【西尾主査】  分かりました。
 高木先生、それから美馬先生。今の共有と公開ということで少し焦点を絞りたいのですが、それに関してのことということでお願いします。
【高木委員】  正式にどういう定義が、どこで行われているのか分かりませんけれども、私の理解しているところでは、共有は自分がそのデータに関してコントロールを外す。公開は自分がコントロールを持ったまま人に見せるというような意味で、イノベーションにつなげるのは共有だというふうに私は理解しています。
【西尾主査】  喜連川先生、どうでしょう。よろしいですか。
【喜連川委員】  ガバナントデータをフリーで使わせているアメリカでもイノベーションが出ているように、今、オープンでイノベーションが出ていますので、その定義をここに持ってきてしまうと、少しややこしいことになるかもしれませんけれども、おっしゃられていることは、それほど私と違っているとは思いません。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 美馬先生。
【美馬委員】  公開と共有ということですが、先ほど共有はあるコミュニティの中でというお話がありました。利活用、イノベーションということであれば、この議論の最初の頃にあったと思いますが、例えば人文科学系のデータを異分野で共有することによって新たな観点などが分野を超えて生まれるということもあるのではないかと思いました。ですから、共有するということと、ほかの分野の人も利活用するということが含まれるということと、公開については、先ほど研究のプロセス、あるいはデータがきちんとしたものであるという、公開をしていくというのは透明性ということで、それを保証するという意味も含まれるのではないかと思いました。
 以上です。
【西尾主査】  そうしましたら、共有と公開に関しては先に美馬先生がおっしゃっていただきましたように、中間まとめの最後の用語集のところで、共有と公開をこの中間まとめにおいてはどのように位置付けているのかということを明記しておきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 ほかに大学等に期待する取組のこと等も含めまして、また、逸村先生がおっしゃっていただきましたように、データジャーナルというのをどう考えるのかということについても、まだ今後議論があるかと思うのですが。相田先生、どうぞ。
【相田委員】  4ページの大学等に期待する取組の部分なんですけれども、最初の丸の大学等においては何々を講ずる必要がある、それから何々について検討しておく必要があるという文章になっています。主語は大学が検討するという意味だと読めるんですけれども、それぞれの大学でそういう規則を一々検討するということは、想定できないのではないかと思うのですが。やはり日本全体でそういう規則は、少なくとも原案をどこかで決めて、それをそれぞれの大学で規定の中に落とし込んでいくというようなイメージだと思うんですけれども、これはそういうふうに書いてあるのでしょうか。どういうデータをとっておくとか、それぞれのコミュニティで考える。つまり、ある意味、横軸だと思うんですね。どういうデータをとっておくとか、どういうところまでとっておくというのは、それぞれのコミュニティが考えるという議論だったんですけど、そのデータをどうやって本当に規則の中に落とし込んでいくかといったら、今度、縦軸になりますよね。そうすると、それはそれぞれの大学が個々に検討するのだと大変なことになると思うので、日本としての統一見解というのがどこかにあって、それに基づいた規則を作るという意味なのでしょうか。そう読めないのですが。
【西尾主査】  この点について、渡邊室長、まずお答えください。
【渡邊学術基盤整備室長】  この意味は、大学においてもいわゆるデータの保管なり保全をどうするかということは必要であろうということで、主体は大学で決めていただくと。大学の研究活動の中で生まれるデータについては、大学で一義的には決めていただく、そういう意味での規則という観点で書いています。
 もう一つ、これは利活用の観点とは全く異なるんですが、データを研究成果の証拠として一定期間、保管しなければいけないという一方の流れがありますので、そういう意味においては、大学においてデータの保管をどうするか、あるいはどれくらいの年限、保存しなければいけないかということについては、既に取組として始まっているという前提がございます。観点は違うんですけれども、いずれにしても、大学においてデータについて適切に管理できる規定を置いていただきたいという趣旨で書いてございます。
【西尾主査】  この間気づいたのですけれども、国立大学に関してはデータの保管をするようにという連絡が来ていませんか。研究プロセスに応じたデータ等に関して、それを管理するようにという連絡、あるいは通達が来ていて、我々の大学の評議会の中で注意喚起がなされました。ですから、公開のことはともかく、データを蓄積して管理しておくようにという要請は国立大学に対して来ていると思うのですけれども。
【渡邊学術基盤整備室長】  いわゆる研究の不正防止という観点でのガイドラインというのがこの4月から施行されておりますので、それに基づく要請ということではないかと思います。
【西尾主査】  ここのところは、そういうことも含めたことと考えてよろしいのでしょうか。
【渡邊学術基盤整備室長】  直接的には利活用という前向きの話をさせていただいているわけですけれども、そのために保全をということが前提になるという意味合いで、大学においての期待する取組ということで位置付けさせていただいております。
【相田委員】  そうなんですか。つまり、論文を書いたら10年間データをとっておかないといけないとか、その話がここに書かれているということなんですか。つまり、大学等に期待する取組のところでは、国立大学に対するデータ管理に関する要請プラスアルファのことが書いてあるような気がしたんですけれども、基本的には注意事項がここに書いてあるという位置付けということでよろしいでしょうか。
【渡邊学術基盤整備室長】  先ほど申しました不正防止のためのデータの保管という話はガイドラインでございますけれども、ここの利活用を進めるために保全して、どういうものを公開するか、非公開にするかといった観点でのガイドラインもありませんので、飽くまで保全をしておくという観点でのガイドラインが先に出ているということでございます。データの保管という観点で、今、大学で決めているものがあるとすれば、その規定と合わせていくのか、あるいは一方で利活用の観点からまた別のものとするのかというのは、それはまた規定の置き方としてはあり得るかと思います。
【西尾主査】  分かりました。
 相田先生、何か目的とするところが微妙に違うように思います。ここで言っているのは研究成果のデータの利活用という観点から、とにかく喜連川先生がおっしゃっていただいたように、まずは蓄積しておくことが大事であり、そういうことに関して各機関としては御配慮くださいという注意喚起です。一方、今、大学等に来ているのは、どちらかというと研究プロセスにおける問題性を後で問われたときに、それに対してきっちり応えるためのエビデンスとしてデータをとっておくようにという意味での要請がなされています。けれども、ここの委員会としては、むしろ、利活用という観点も含めてデータを保存しておくことが大事であるということを強調したいということでよろしいですか。
【渡邊学術基盤整備室長】  はい。
【西尾主査】  はい、どうぞ。
【加藤委員】  大学のお話と少し関係しますけれども、研究成果の公開に当たって基本的事項ということで3のところですけれども、研究資金配分機関については記述してありますが、最近のニュースでは、例えば京都大学がオープンアクセス方針を採択したということが出ていまして、その中では京都大学の教員が生み出した論文等の研究成果については機関リポジトリの中でインターネットで原則公開することを教員の義務とするオープンアクセス方針を採択しているということです。ですから、これに関しては、研究資金配分機関だけではなくて、当然、教員の方々が所属する大学もそういう方向に向かっていくのではないかということで、大学についてもこの中に記述するべきではないかと思いました。
 それから、もう1点、研究開発機関については取組を進める必要があるということで記述してありますけれども、何々すべきであるくらいの表現で記述してもよろしいのではないでしょうか。
【西尾主査】  分かりました。すべきであるということでどうでしょうか。
 美濃先生、この辺で京都大学の話を是非お伺いしたいのですが。
【美濃科学官】  エビデンスデータの利活用というところの話ですけれども、京都大学でも、完全にエビデンスだからDVDに書いて保存しておいた方がいいという議論が一方で進んでいるわけです。公開は簡単なんですけれども、研究者がエビデンスとして残すということと、利活用できるようにして公開しようということ、ここの間のギャップはすごく大きいんですね。したがって、公開しましょうと言われると、反発が出るような気がします。持っているデータを自分たちのために残しておきましょう、それを公開しましょうくらいまではいいでしょうと、エビデンスだから公開してもいいでしょうと、その辺までは言えるんですけれども、活用されるかどうか分からないものに対して、利活用できるような形で公開しましょうというと、そこにかける作業というのが、メタデータを付けたり、自分の論文のいろいろなコンテクストを全部説明しなければいけないという話になるのではないかと思うんですね。だから、その辺りをどう考えるのかということが一番気になっているところなんですが。
【西尾主査】  分かりました。
 喜連川先生、どうぞ。
【喜連川委員】  その議論がありましたので、先ほど申し上げましたように、原則、研究者が研究のスピードを落とすような足かせになることだけは絶対にすべきではないことが大切です。これは過去で言いますと、サーベンス・オクスリー法が制定されたときに、コンプライアンスが厳しくなり企業活動が非常に下がったわけです。ですから、コンプライアンスのためにやることはない。つまり、繰り返しになりますが、小保方さんは100万人か1,000万人に1人しか出てこないわけですから、そういう人がいたからというので、大学の先生を信じないという原則に立って何かシステムを作るということは、絶対やるべきではないということです。
 かつ、そのときに、リプロデューサブルにするということと不正というのは全然違うわけですので、結果があったとき、ほかの人が興味を持ち再実験してみようと思ったときに、それが再現できるようにしておくことは、これは研究者として、そこまでは置いておきましょうという話はこれまでいいと。美濃先生がおっしゃっているのは、その結果をほかの人が利用できるんですかというところになったとき、これは私は美濃先生と同じで大分次元が違ってくると思います。つまり、実はそのデータセットが価値を持つ、つまり、データ以上にアクセスシブルにするというところに、知的財産が発生するくらいのところに持っていきますと、それはコミュニティなりインスティテュートなりにとって物すごく大きなアセットになるわけです。ここは義務としてやらせるというよりは、もう十分モティベートされた空間に入りますので、その議論をこの中で丼勘定で一緒にやり始めると、少し話がずれてきてしまうかもしれないという気がして、まずは論文を出す限りにおいてはリプロデューサブルにしましょう。そのためのデータとプログラムくらいまでは出しましょうというところに線を引くというのが自然なところではないかと思っています。
【西尾主査】  非常に明確なコメント、ありがとうございました。そこから更に一歩踏み込むということになると、加藤委員が先ほどおっしゃいましたように、コミュニティの中でオープン化に関する共通の認識を得ていただくことが求められると考えます。その過程で出てくるかもしれませんけれども、美濃先生のギャップというところにおいては、この委員会の原則として、今、喜連川先生がおっしゃったところまでで一応の線引きをしておくということでよろしいですか。
 美馬先生、どうぞ。
【美馬委員】  すみません。とても基本的なことを一度、ここで確認させていただきたいと思います。研究で得られたデータは誰のものなのか、そして、論文になったときのデータ、つまり、4ページの4の丸の一つ目に大学等においてはデータの保管や管理責任が必要だと書かれています。データの保管や管理責任というのは、エビデンスの確保の義務は研究者本人にあるとしても、それは大学の管理責任というか、ここで大学がこういうものを定めてやる必要があるということなのでしょうか。もう一度、ここで確認させてください。
【西尾主査】  もう一度、渡邊室長から御説明をお願いします。
【渡邊学術基盤整備室長】  ここでデータの管理規定を定めというのは、繰り返しで恐縮ですけれども、データをまず保管、保全しましょうと。先ほど来の御議論で出ておりますけれども、それは公開を前提にきっちり保全しましょうということであります。そこから何を公開するのか、何を非公開とするのかというのはまた別の判断があるということです。
【美馬委員】  まずは研究者本人ですよね、それは。本人がデータを管理するのは当然のことで、研究成果で得られたものは本人のものですが、大学のもとで行われたものであれば、大学に義務が生じるということですか。
【西尾主査】  大学として規則を決めるのだとしたら、そのデータは大学のものとして考えるのでしょうか、ということですか。要は、データが誰のものかということをおっしゃっていると考えてよろしいですか。
【渡邊学術基盤整備室長】  そこはできれば井上先生、すみません。
【井上委員】  今の御指摘いただいたところを見ますと、確かに、論文、研究データ等の研究成果の管理と書いてあります。論文の方もこの文章ではよく分からないところがあります。理科系の研究ですと、普通、例えば学会に論文を投稿すると、学協会に権利、著作権は帰属することになっています。そうなると、ここで言う「管理」というのは一体どのようなことを想定しているのかよく分からないのです。著作権のような知的財産としての管理を意味していると考えると意味が通じなくなってしまうので、文脈としてはそういう意味ではないんだろうという気はするんですが、どういう意味なのでしょうか。渡邊室長に御説明いただければ。
【西尾主査】  管理という意味をどう考えるかなのですが。
【渡邊学術基盤整備室長】  ここで管理と書きましたのは、大学にあるリポジトリならリポジトリに保管しておくという意味での管理で、そのデータ所有権は誰にあるのかということについてまで、ここの管理という意味合いの中で言及しているということではありません。
【井上委員】  例えばリポジトリに論文を登録するというときに、著作権者である学協会がどういうポリシーをとっているかによって条件が変わってくるというのは今までも議論があったところだと思いますけれども、大学側で管理をしようと思っても、自由にできない場合もあり得るということになっています。データについても多分、同じような問題は生じ得るんだと思いますけれども。
【西尾主査】  どうぞ、逸村先生。
【逸村委員】  その辺を私は調べておりまして、まだ途中段階ですが、基本的にはデータを要求する、つまり、論文が査読を通って何かに載るときにはどこかオープンなところに保管をするようにという、それはどこまで義務化されているのか微妙なんですけれども。実際、更にそれがどこで保管されているかというのを見ると、海外の場合は多いのはFigshareですね。ジャーナルの規定を見ると分野ごとに差異があります。一般に論文は著作権の同意書を書くことによって、雑誌なり、学会なりに帰属すると。データに関してはどこか。ですから、国立遺伝学研究所でも別にそれは構わないという。基本的にはオープンにするというのが現状だということです。ですから、大学がデータリポジトリを作れば、ここで公開されているという実質的な担保があれば、それでオーケイというのが現状のようです。
【井上委員】  そうすると、外的な状況に依存しているわけでして、大学側が主体的に方針を決めたところで、それが実現できるとは限らないことになります。また、学術コミュニティによって状況は異なっていて、理科系と人文社会はもちろん全然違うということもあろうと思います。
【西尾主査】  どうも貴重な議論、ありがとうございました。
 久門委員、今のことに関しての御意見ですか。どうぞ。
【久門委員】  管理という言葉に関していろいろと御意見が分かれているのだと思いますが、これは管理ではなくて保存なのではないかと思います。管理といいますと、権利の管理も含めて誰に出していいかとか、そういうことを行うということを含みますが、この後ろに書かれているのは散逸、消滅、損壊を防止することであり、これはすなわちデータを保全しなさいということであって、マネージという管理ではないと思いますが、その辺りいかがでしょうか。
【西尾主査】  井上先生、どうぞ。
【井上委員】  保存ということになった場合、データには著作権はないと思いますけれども、論文も含めて考えた場合、著作権があるものについては「保存」すること自体が著作権法上の「複製」行為に当たるというようなことになってしまうので、大学が著作権を持っていない場合には、自分の判断だけで「管理」することができないということはあると思います。
【西尾主査】  いずれにしろ、ここの書きぶりに関してはいろいろな観点からの解釈ができてしまうということがありますので、今、頂いた意見を踏まえて、再度、事務局の方で検討をよろしくお願いいたします。
【渡邊学術基盤整備室長】  整理させていただきます。
【西尾主査】  喜連川先生、どうぞ。
【喜連川委員】  今の時代からすると、誰もデータを持ちたくないんです。持った瞬間に情報漏えいのリスクを受けて、なくしてしまったではないかとか、みんなから文句を言われますので、ここは余り責任を追及するよりも、もっと温かい表現にしておくことがすごく重要です。
 それから、先ほど久門委員のおっしゃった管理ではないというのは、それはFigshareを見ても分かりますように、明らかにリトリーバブルにするという意味では、もう少しアッパー系のファンクションを入れないと、そもそも意味がないです。先ほど相田委員からも大学がどうなるのですか、大学がどれくらいやればいいのですかという話がありましたが、実はここには書いていない、裏には山のように曖昧な部分があるわけです。つまり、データを置いておくといったときに、本当にそれに必要なデータだけなのか、データをとるといっても、幾らでもとれるんです。例えば、京都大学や九州大学で学生がどういうふうに学びを進めているかという学習記録というのを全部とっているわけですけれども、どれくらい丁寧にとるかというのは、もう胸先三寸みたいなもので、全部とろうと思いますと、全部とらないものに比べると100倍も1,000倍もの差があります。つまり、データに対してどれくらい投資をするのか。ここまでとろうというのは大学にとって負担になってきますので、そういう意味で言いますと、今、この議論をするには、余りにも早過ぎるということから、温かい感覚で記載をされた方がいいのではないかと思っています。
【西尾主査】  喜連川先生、非常に温かいコメント、ありがとうございます。
 北森先生、どうぞ。
【北森委員】  同じ意味かもしれませんが、別の表現として、データを全てということになると、実験機器が出してきた電気信号としてのデータを幾ら羅列しても、ほとんど何の価値もないわけで、そういったものまで全部、収容するのかということにもなりかねないわけですね。価値あるデータというのは、一体、どこを言うのか。知的財産として価値あるデータというのも、やはりコミュニティによって全然違うんですね。実験状況も何も記載していないデータが独り歩きしても、ほとんど何の意味もないわけですね。だから、ここで対象としているデータがどういうデータなのかということに関しても、やはり先ほどの1と2の議論に振り戻してしまうわけなんですが、どういうデータを残すべきかということをどこかで明示しておかないと、全てということになると、リポジトリそのものがデータで爆発してしまうようなことにもなりかねないというふうに思います。
【喜連川委員】  そこが先ほど申し上げた大学のポリシーにすごく関わるのです。これは学術会議でオープンデータの議論があったんですけれども、皆さん、御存じかと思いますけれども、こういう意味で一番たくさんのデータを持っているのはシュランベルジャーです。シュランベルジャーは石油が出てくるまでのホールプロセスの中のデータを今までは全部とっていました。でも、もうデータがエクスプロードしてしまったので、石油が出始める直前のところからのデータしか残さない、それ以外は捨てることにしましたという話を聞きました。ところが、そのデータというのは地球の地質学を研究している人にとってみれば、とても重要なもので、それをシュランベルジャーから頂いて、ものすごく研究の価値になっていたわけです。こういうポテンシャル価値をどう大学が判断するかというのは非常に難しい問題で、答えがあるわけではないと思うのです。これからみんなでいろいろ考えていく、少し違うかもしれないですけれども、先生もおっしゃったように、電気シグナルというのが、似たような事例かと思い御紹介しました。
【北森委員】  そのシュランベルジャーが持っていたデータというのは価値のあるしっかりしたデータで、どういう条件でとっているというのがあって、地質学のような別の学問分野で利用価値があったという御指摘ですね。ですから、そういったものであれば価値あるデータなんですが、特に実験分野の研究室から日常出てくるデータとなると、これは計測器がただ単に電気信号としてはじき出しているものもあるわけですので、それも全部とっておくということになると、価値としてはいかがなものかなというふうに思います。
【西尾主査】  今、喜連川先生、北森先生からいろいろと言っていただいていることは、今後、むしろどういうデータをきっちりと格納しておくのかということの議論が、各大学においても、大学の方針としても重要な議論になっていくのではないかということだと思います。そのような議論がより重要になってきているという、方向性に関することの記述をここですることが大事ではないかと考えます。
 それでは、井上先生、羽入先生ということで。
【井上委員】  今のことに少し関連するのですが、誰がデータの管理等の責務を負う主体になるかということを考えた場合、2ページの下の方ですと、学術コミュニティをコンセンサスで、学協会が責務を負うようにするということも想定され得るわけですが、大学単位の方がいいものなのでしょうか。研究者は異動もしますし、大学の本部が個々の研究分野を理解しているとは限らないとしたら、大学を管理の責任主体にするのが合理的なのか、私は文系なものですから、その辺の感覚が分からないのですがどうなのでしょうか。
【西尾主査】  先ほど学協会ということに関しては北森先生の方から、これは大学の場合もあり得るので、学協会等にすべきだというコメントがありましたけれども、そういうことも含めまして、ここの記述と最後の大学における取組、そこら辺がうまく整合性がとれるように考えていきます。どうもありがとうございました。
【羽入主査代理】  今、井上委員がおっしゃったことと関連していると思うんですけれども、「大学等」の「等」が何を意味するのかというのが少し気になっています。もしかしたら大学に対する期待と、研究コミュニティに対する期待というのが含まれるのかと思うんですが、ただ、ここに研究コミュニティに対してということを余り明らかに書いていないことが一つ、気になりました。
 あと一つです。ここの2番目、3番目、4番目の丸というのは人材育成にも関係しているんですけれども、データサイエンティストを育成する必要があるということが3番目の丸に書いてあって、4番目にはリポジトリで進めましょうということになっていて、そのために図書館職員等を対象に人材育成を、となっています。ですが、今回議論している内容は図書館職員の域を超えていると思うんですね。データサイエンティストの育成やこういったオープンデータに対する扱いをするということは。したがって、先ほどから議論がございますように、ここでどういう取組を具体的にするということの内容と、それからどの組織がそれを担うのかということを少し書き分けた方がいいような気がいたしました。
【西尾主査】  そうしましたら、4の大学等に期待する取組に関して、従来からの大学の図書館職員に求めているいろいろな要求内容が、最近ではどんどん変わってきていると思いますので、そういうことも踏まえた改訂をしていただくことも大事です。ここの大学等という記述と先ほどの学協会等というようなところの記述に関して、もう一度、全体的に双方照らし合わせながら一貫性が保てるように再度考えていくことが大事かと思いますので、そこら辺を練り直したいと思います。
 岡部先生、どうぞ。
【岡部委員】  大学等については、現状のバージョンでは2の基本的考え方の1番目の丸で、大学及び研究機関を以下、「大学等」と定義していますので、ここの定義がいいのかということになると思います。
【西尾主査】  分かりました。貴重なコメント、ありがとうございました。
 さて、逸村先生が先ほど後で議論すべきということでおっしゃられたことですが、5ページの最後の丸のところで、日本発のデータジャーナルということが書かれているということに関して、具体的にそれを今後どのように進めるのかとか、という意味での御質問と考えてよろしいですか。何か御意見ございますか。
【逸村委員】  既に途中でいろいろ議論があったことを含めて、どのようなものをどのようにするのがデータジャーナルであるのかということをきちんとやるということだと思います。先ほど喜連川先生がFigshareの話をされていましたけれども、あるいは、サイエンティックデータという、いわゆるデータジャーナルと呼ばれているものを単にまねするのか、それとももっと踏み込んだもの、踏み込んでも何でやるかというのはいろいろ議論はありますけれども、要はいわゆる論文ジャーナルがほとんど海外に負けてしまったという議論がありますが、それに対抗するものとしてのデータジャーナルなのかデータリポジトリなのか、あるいはそれの総体なのかというのも議論の対象になるかと思いますが、そこら辺をどう考えるかということだと思います。
【西尾主査】  今、逸村先生から御提起いただいた問題に対して、ここで議論し尽くすというのはなかなかできないと思いますけれども、こういう方向があるのではないかとか、日本発だとしたらこういう可能性も考えられるのではないかとか、何か御提案や御意見ございませんか。
 北森先生、どうぞ。
【北森委員】  最初のこの会でも申し上げたかもしれませんが、論文に関してはやはり伝統という強みが欧米の学会にありますので、どうしてもよい研究成果がそちらの方に行くと。そのときに、データも含めて全部、そちらの方に行ってしまっていいのかというのが、そもそものこうした議論のきっかけになっているのではないかというふうに思います。前々回くらいのときにも申し上げたと思いますが、これは逆に我が国にとっては、このデータをしっかりつかんでおくということが今の状況に対して打開策になる可能性もないわけではない。それは学術的なパワーバランスという意味ではあるんですが。そのときに大事なのは、やはり海外に既に存在している巨大学会が持っているデータベース、あるいは海外の出版社で持っているデータベースに全て流れてしまうということに対して、それに対抗するという意味ではなくて、それと協力関係を講じていくような、そういったポリシーが一つ必要なのではないかというふうに思います。そういうことがここでは盛り込まれていないので、例えば海外プラットフォームとの協力、そのための取組を支援するという、これはハードネゴシエーションになるのはもう見えていますので、そういった場合の活動、それから取引に相当すると思いますが、そのときに準備すべき資金等、そういったものの可能性をここに書いておいた方がいいのではないかというふうに思います。
【西尾主査】  逸村先生、どうぞ。
【逸村委員】  今の北森先生の案に賛成です。加えて、これはむしろ、先の学術情報委員会の話なんでしょうけれども、早い話がPLOS ONEをはじめとするオープンアクセスゴールドジャーナルですね。これは今、明らかにArticle Processing Chargeをとるというビジネスモデルの成功でどんどんシェアを増やしていると。数年の内に20パーセントを超えるであろうと言われていますけれども、それの受皿としての、要するにPLOS ONEが典型ですけれども、データを公開せよということが査読オーケイになるとついてまいりますので、そういう受皿としての可能性もあるということも書き加えていただければと思います。
【西尾主査】  はい、どうもありがとうございました。
 美馬先生、どうぞ。
【美馬委員】  私がここに期待するのは、人文系のもの、日本語のものですね。特に今、ライフサイエンス等は海外に大きなものが出ていってしまっている状況の中にあって、人文系の日本語のデータが今回、公開、それこそ共有されることになると、異分野のところから学際的な研究で更に進むのではないか、そういった可能性をここでは挙げておくのがいいのではないかと思いました。
【西尾主査】  はい、どうもありがとうございました。
 竹内先生、どうぞ。
【竹内委員】  先ほど来、議論されておりますデータジャーナルについては、私もデータジャーナルにこだわるというよりも、むしろ、データをきちんと保存していくためのプラットフォームの整備ということにむしろ重点を置くべきであって、その中で国際的なアカデミアにおける日本の存在感の明示ということが極めて重要なのではないかというふうに思います。
 それから、今、美馬先生からも御指摘があった人文系のことを考えますと、そのためのデータというのは、例えば古典籍のデジタル化したようなものも当然、研究データとして扱われるということになりますけれども、そうしますと、単に保管ということよりも永続的なアクセスをきちんと保証するメカニズムというのが非常に大事になってくると思いますので、今回の中間まとめの中には、アーカイビングという言葉が出てこないんですけれども、その点は是非入れていただく方がよいのではないかと思います。
【西尾主査】  分かりました。せっかくデータジャーナルを作ったとしても、それが持続していくことが非常に大切です。アカデミッククラウドの問題も含めてプラットフォームをきっちり作ることの中で、そういった課題も含めてトータルに考える必要があるということだと思います。
【喜連川委員】  私は今、竹内先生がおっしゃったことに大賛成で、実はデータジャーナルとは何なのかとかいうことで見てみましても、結局、データのディスクリプションとポインタが書いてあるというだけの話なんです。当面はああいうジャーナルというのは意味があるのかもしれないんですけれども、どう考えてもイベンチュアルにはデータを持っている、そのプレイスの方の価値観というものが圧倒的、つまり、そこがエボルビングしてデータのクオリティーを上げていきますので、データジャーナルよりも、そちら側のサイトの方の重要性が多くなるだろうというのが1点です。
 先ほど羽入先生がデータサイエンティスト等で、これはもう図書館職員の能力を超えますというお話をされたところなんですけれども、ここで非常に重要な、今、世の中のシフトはどこに起きているかといいますと、データサイエンティストというのは世の中的にはデータを解析する人というふうに見られています。データ解析屋とデータホルダー、つまり、データを持っている人とどっちが強いかというと、もう解析屋のパワーというのはどんどん落ちてきています。これは微妙なんですけれども、データを持っている人の数の方が圧倒的に少ないんです。解析サービスをする人の方が圧倒的に多いので、サービスをする人がいろいろデータホルダーのところに寄っていくというのが今のビジネスモデルになっています。そうすると、今のビジネスはどうなっているかというと、解析屋がデータを持っている人をいかに買収するかという動きになっています。次にどうなるかといいますと、データホルダーが一番パワーを持つのは何かというと、やはりデータのキュレーションなんです。このキュレーションは、実は私は図書館職員の方の今までのきっちり物事を進めるというスキルが非常に役に立つのではないかという気がして、そういうことと、先ほど竹内先生がおっしゃったことと相通ずるものがあるのではないかと思うんですけれども、日本がプラットフォーマーとしてきっちりとデータを維持、そしてアーカイブもしていくということが、ひいては日本のプレゼンスに非常に大きく向上するのではないかと思っております。
【西尾主査】  非常に貴重な御意見、ありがとうございました。
 羽入先生、どうぞ。
【羽入主査代理】  一言だけ。今のお話の続きで、最後に基盤整備について書いてあって、それは国立情報学研究所や、それから科学技術振興機構などが求められている、望まれるというふうに書いてあるんですが、それに対して、国が支援するということを是非入れていただきたいというふうに思います。
【西尾主査】  これは重要なことだと思いますので、是非よろしくお願いいたします。
 それでは、加藤委員、井上先生。お時間が来ていますので、できましたら短くお願いします。
【加藤委員】  今のデータジャーナルに関してですが、データジャーナルというのは、先ほどのデータをアーカイブする話、それからエビデンスとしてデータを保管保全する話と少し違っておりまして、是非使ってほしいというデータがこのデータジャーナルに登録されることになります。そのときに、今の学協会の単位ではなくて、もっと広い範囲のある分野の単位でそれを動かしていくことが想定されます。学協会単位ではなく複数の学協会が連携していくという、バーチャル的な学協会の形になるかもしれません。研究分野の単位で、有用なデータの利活用に向けて、積極的な意思を持っている研究者の方のデータを出版できるようにするというところに意味があるのではないかと考えております。いわゆるエビデンスとしてのデータをオープンにするということと目的が違っていると考えております。是非このデータを利用してくださいということになりますと、それに対する引用サイテーションを評価する等、その他を含めて、データを出す方に対するメリットも出てくると考えられます。また、そのデータを利用する研究者に対しても、それを利用することが成果になってくるというところを目指していくためにも、私は必要ではないかと思っております。
【西尾主査】  はい、ありがとうございました。
 井上先生、最後ということで。
【井上委員】  簡単に申し上げます。
 全体の構成を見ると例えば、学協会、研究コミュニティに期待する、大学に期待する、研究資金配分機関に求めるといった、国以外の主体に任せるというタイプの記述が多く目につきます。もちろん、それぞれのステークホルダーの主体性に任せるということは非常に重要なので、国が上から目線で介入しすぎるのは良くないという趣旨だと思うんですが、国以外の主体に任せた後、個々の条項について、国がどういう形でそれを支援していくつもりなのか、上から目線ではなく、優しいまなざしで支援する必要があるのではないかという気がいたします。つまり、この文書が国の施策を明確に打ち出したものにした方がいいのではないかと思います。
 あともう1点だけ、細かい話なので細かく述べませんけれども、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス等について、4ページの脚注のところに説明がありますが、少し気になる記述等があるので、後で事務局と御相談したいと思います。
【西尾主査】  井上先生が最初におっしゃっていただいたことは、先ほど羽入先生がおっしゃっていただいたことも含めて、本中間まとめが、国の施策上、いろいろな場面で有効に使っていただくことが大事だと思いますので、事務局とおっしゃっていただいた点を詰めていきたいと思います。
 まだまだ御意見が多々あるかと思いますけれども、時間が来てしまっております。今日、本当に多くの貴重な御意見、コメントを頂きましてありがとうございました。次回が9月11日でございますので、本日の御意見等をいろいろ勘案、反映し、中間まとめの案を改定して、できましたら9月11日の段階で案が取れるような形で議論を進めたいと思っております。
 常盤局長、何か御意見ございませんか。
【常盤研究振興局長】  ありがとうございます。
 今、いろいろな御意見を頂きまして、私どもも実はこれをいろいろ事務局として整理をしているときに、例えば分野ごとの違いであるとか、あるいは用語の意味や定義であるとか、そういうことについて、まだまだ共通認識を持ちきれていない部分もあるのではないかというふうに思っております。そういう意味で、なかなか国としての確たる方向性みたいなものは出しにくいところがありますので、やはりここにいらっしゃる先生方にいろいろ今日のような形での御助言を頂くことによって、徐々に精度を高め、熟度を高めていって、そしてまた国としてどういう形での支援をさせていただければいいのかということも含めて、議論を高めて、そして、深めていければいいというふうに考えておりますので、是非温かいまなざしで更にいろいろ御助言を頂ければと思っております。
 よろしくお願いいたします。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、事務局から連絡事項があればお願いいたします。
【松本学術基盤整備室参事官補佐】  本日の議事録については、各委員に御確認していただいた上で公開とさせていただきます。
 次回は11日ですが、時間は午前10時から12時、場所は本日と同じ3F1特別会議室でございます。それ以降の予定については、また改めて日程調整をさせていただきたいと思っております。
 以上でございます。
【西尾主査】  それでは、貴重な議論、ありがとうございました。
 これにて閉会とさせていただきます。
── 了 ──

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