第8期学術情報委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成27年5月14日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 学術情報のオープン化について
  2. その他

4.出席者

委員

西尾主査、相田委員、逸村委員、井上委員、岡部委員、加藤委員、久門委員、竹内委員、辻委員、美馬委員

文部科学省

(科学官)美濃科学官
(学術調査官)市瀬学術調査官、小山学術調査官
(事務局)常盤研究振興局長、榎本参事官(情報担当)、渡邊学術基盤整備室長、松本学術基盤整備室参事官補佐

5.議事録

【西尾主査】  それでは、皆さんおそろいでございますので、ただいまから第2回の学術情報委員会を開催いたします。
 それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【松本学術基盤整備室参事官補佐】  では、お手元の議事次第に基づきまして、配付資料の確認をさせていただきます。まず、ダブルクリップでとめてある資料ですけれども、資料1、学術情報委員会におけるオープンサイエンスの検討について(案)。それから資料2、オープンアクセスについての審議状況。それから資料3、オープンサイエンスにおけるJST情報事業の取組。それから資料4、今後の学術情報委員会の日程について。それから参考資料としまして、学術情報のオープン化に関する資料集でございます。
 それから、ダブルクリップとは別に、机上参考資料としまして、我が国におけるデータシェアリングの在り方に関する意見という、JSTの科学技術情報委員会の報告書を机上参考資料として準備させていただいております。それから、過去の資料、過去の報告書等についてはドッジファイルで準備させていただいております。以上でございます。不備があれば事務局へお申し出いただければと思います。
【西尾主査】  よろしいですか。資料に関しまして、何か不備がありましたらお知らせいただければと思います。
 それでは、審議に入りたいと思います。それでは、審議事項等について、事務局から説明をお願いいたします。
【渡邊学術基盤整備室長】  失礼いたします。資料1、資料2について説明いたします。
 まず資料1でございますが、これは前回この委員会での御意見を踏まえまして整理をしたペーパーでございます。学術情報委員会におけるオープンサイエンスの検討について(案)ということでございます。
 まず、1番の議論の枠組みについてでございますが、全体の建て付け、フレームといたしましては、内閣府が3月末に、机上に配付してございます我が国におけるオープンサイエンス推進のあり方についてという報告書を出しました。これには全体的な我が国の方針ということが示されておりますが、文部科学省、あるいは大学・研究機関や研究資金配分機関においては、この実効性を上げるための方針、計画を策定するということが前提でございます。それに当たりまして、この委員会では研究成果の公開についての基本的な考え方を整理、検討いただいた上で指針として示すということでございます。中身については、研究成果の公開を推進する意義・基本方針から始まりまして、論文のエビデンスとしてのデータ等の定義、あるいは、後に出てまいります、下記2に関する関係事項といったものが想定されるということでございます。
 それと二つ目の丸ですが、海外の動向、あるいは民間の動向ということがございますので、こういったものを踏まえた公開の在り方について検討する必要があるということでございます。
 それと3点目は、指針には大学・研究機関あるいは研究資金配分機関が取り組むべき内容についても示す必要があるということで、1から3まで例示してございます。なお、米印ですが、このオープンアクセスは従来、主に論文を扱ってまいりました。このオープンアクセスに係る事項については、これまで審議いただいた蓄積がございますので、現状についてレビューした上で必要な事項を検討するということでございます。これは資料2で後ほど御説明いたします。
 大きな2番目の事項ですが、オープンデータに係る取組の具体化ということで、研究データの公開、共有、あるいは保存の体制をどう考えていくのかということで、主に1から6の6点について整理させていただいております。それとこの取組の具体化に当たりましては、学会、あるいは日本学術会議及び各関係省庁との連携が必要であるという論点でございます。
 それと大きな事項の3番目ですが、各研究分野の取扱い。これについては、前回の委員会でも、どのレベルで審議を進めるのかというお話がございました。ここでは具体的な事例に即して検討を進める必要があるだろうということで、典型的にはライフサイエンスの分野を取り上げて、課題あるいは一般化できる事項について整理していった上で、各分野で参照すべき事項について検討を進めてはどうかということで整理させていただいております。
 最後、人文・社会科学におけるオープン化の在り方ですが、これはこの委員会独自の視点ということもございますし、御意見も頂いておりますので、この事項を取り上げてはどうかということで整理させていただいております。
 具体に、2ページ以降を御覧いただきたいと思いますが、今申し上げました事項に沿って整理をしてございます。実線の四角で囲んだ部分については、内閣府が示しました報告書で関連事項を抜粋してございます。次は点線で囲んだ部分が出てまいりますが、これについては各事項において内閣府が示した事柄を参照した上で、事務局において観点なり論点なりを書かせていただいたということでございます。
 具体的に順を追ってまいりたいと思うのですが、1の議論の枠組みのところで、研究成果の公開を推進する意義・基本方針については、点線で表記してございますが、教育に関する観点等についても言及する必要があるのではないかというようなことでございます。それと少し下の方にまいりますが、論文のエビデンスとしてのデータ等の定義・範囲。要するに、どこまで何を公開すべきかというような観点になると思いますが、これについても、定義をしていく必要があるのではないかということでございます。
 それと3ページ目でございますが、海外の動向等を踏まえた公開の在り方ということで、下から二つ目の点線の囲いですが、海外の出版社からのデータジャーナルの刊行、あるいは論文を投稿する際に、出版社からデータの置場として海外の機関を推奨されるというような動きが出ている中で、こういったことにどう対応するのか。あるいは、具体的にはデータの保管場所、公開の仕方などについて、考え方を整理して示していく必要があるのではないかというようなことでございます。
 それと次に、大学等、あるいは研究資金配分機関が取り組むべき内容ということですが、これは4ページまでにわたって幾つか示されてございますが、5ページの一番頭の点線の中でございますけれども、これらの事項については、オープンアクセスに係る大学の現状、あるいは研究者サイドの理解促進の観点も踏まえて、特にどういったことを規定していくべきかというようなことについて整理が必要ではないかというふうに考えております。
 それと、2番のオープンデータの取組の具体化に係る話ですが、1として、データリポジトリやプラットフォームの整備の在り方。これは効率的、効果的な基盤整備の在り方についてどう考えるかということで、ここに例示してございますのは、従来オープンアクセスを巡る支援策という観点で今まで実行してきた事柄がほとんどということですが、要するに保管場所、あるいは保管ルール、あるいは流通手段といったことについてどう考えていくべきかということでございます。
 それと2は、データを公開する際の質や正確性の担保の問題等でございます。技術的な問題も入ってくるかとは思いますが、具体には6ページの中ほどに点線囲みがございますけれども、基本的な考え方としては、ここに示されたものがあるわけですが、これはガイドライン、あるいは大学等で運用していく際に、ブレークダウンした内容を示す必要があるのではないかということでございます。それと3として、データの利活用に係る許諾ルールの明示の問題です。これは観点といたしましては公開、あるいは利活用を促進するという観点から、許諾ルールをどのように規定していくべきかという問題でございます。
 それと7ページにまいりますと、特に5でございますが、いわゆるデータを公開する研究者に対するインセンティブ、あるいは業績等の関係ということでございます。これについては、中ほどの点線にございますように、このインセンティブを高める方策としてどのような事項を規定していくことが適当であるかということでございます。
 それと6で、学協会等におけるデータジャーナル出版の可能性について言及してございます。これまでJSTにおいては、J-STAGEといった電子出版の枠組みを提供してきております。あるいは科研費において、研究成果公開の枠組みで出版事業を支援してきているという状況がございますので、こういうものをデータジャーナル出版につなげていけるような考え方はあるのではないかということでございます。
 それと、一番下の学会等との連携の話でございますが、日本学術会議においては、オープンサイエンスの取組に関する検討委員会というのを4月から立ち上げて、検討を始めております。ここでの検討内容についても留意していく必要があるのではないかということと、それから、各省との連携においては、例えばガイドラインの共有、またリポジトリの整備等に関しましても、統合的な検索システムを整備するとかといった内容での役割分担を考えていく必要があるのではないかということでございます。
 それと最後のページ、8ページでございますが、各分野の取扱いについて。特に最後の丸で、人文・社会科学におけるオープン化の在り方ということでございます。この人社系の学術情報を他の分野との連携、あるいは新たな方法論ということも見据えて、どのような形で活用、位置付けていけるのかといったようなことがテーマになり得るのではないかということでございます。
 資料1は以上で、次に資料2について、オープンアクセスについての審議状況でございます。これまで前身の部会等も含めまして、この委員会の関連でオープンアクセスについては御議論いただいてまいりました。資料2で、主な観点をピックアップいたしまして、これまでの審議でどういうことが言われていたかということと、現状を簡単に示したものでございます。
 まず基本的な考え方のところですが、一番左の欄ですけれども、一つ目の丸の2行目で、特に公的助成を受けた研究成果については、広く利活用されるべきであるという原則的な話をしております。
 次の項目の対象範囲については、ここに例示されておりますが、もともとというか、この議論の中でも対象として研究データというものが一応は想定されていたということでございます。
 それと2ページ目を御覧いただきたいと思いますが、公開についての手段等についてです。特に公表手段については、三つ目の黒丸がございます。ここでは各大学における機関リポジトリ構築を更に拡充するということと、オープンアクセスジャーナルの育成にも努めることが妥当であるということが方向性として示されております。また、その下の黒丸ですが、オープンアクセスジャーナルの育成に関して、先ほど少し申し上げましたが、科研費による充実、あるいは、出版プラットフォームであるJ-STAGE、こういったことの強化が必要であるということを言われております。それと公表手段の最後の黒丸ですが、日本のハイレベルな論文を紹介するためのレビュー誌をJ-STAGEから発信することといったことについても、過去に言及をいただいております。
 これに対しまして、真ん中の欄について、現状がどうであるかということでございますが、この現状については、本日の配付資料で、横長の参考資料で学術情報のオープン化に関する資料というのを配付させていただいております。こちらも参照しながら御覧いただければと思いますが、オープンアクセスジャーナルについては、この参考資料で申し上げますと7ページに、採択状況がございます。ポイントとなる点といたしましては、平成26年度において、国際情報発信強化というカテゴリーでは37件採択されておりますが、この中でいわゆるオープンアクセスジャーナルの支援としては2件という状況でございます。
 それと次の事項で、J-STAGEによる学会誌の電子化支援ということですが、これについては参考資料では8ページでございます。現在、学会誌については、日本の学会のうち約半数の1,000学会が、このJ-STAGEを活用しているという状況にございます。ちなみにこのJ-STAGEの学会誌のうち、9ページになりますが、87%がオープンアクセスという状況ができております。
 続きまして機関リポジトリの状況ですが、これについてはNIIによりまして、リポジトリの構築支援を行っていただいております。参考資料では10ページ以降になりますが、全体の状況といたしましては、11ページにございますように、機関数で申し上げますと526機関、このうちの210機関については、いわゆる共用リポジトリでございますJAIRO Cloudを活用しているという状況でございます。すみません、資料2の機関リポジトリのところの、今説明申し上げました数字が若干古い数字が入っておりますので、最新の状況としましては、参考資料11ページの数字を御覧いただければと思います。大変失礼いたしました。
 続きまして、また資料2の方にお戻りいただきまして、3ページでございます。各機関の役割ということで、研究資金配分機関に対してどのようなことが言われていたかということでございますが、まず一つ目の丸の4行目からですが、支援した研究成果へアクセスできるかを研究者側に報告させるべきであるというようなことがございました。これについては、真ん中の欄に現状が書いてございますが、科研費については平成26年度の研究成果報告書から、研究成果オープンアクセスの状況について記載するというようなことで報告をいただくようにしたということでございます。
 それと審議状況の左の欄の一番下の黒丸でございますけれども、JSTの支援事業や科研費で行われた研究成果としての学術論文について、オープンアクセスの義務化を図るなどというようなことが言われております。これについては、現状としましてJSTの欄の最後のポチで書いてございますが、オープンアクセスに関するJSTの方針については平成25年度に公表されているというような全体の状況がございます。
 駆け足で恐縮ですが、資料1、2の説明は以上でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。後で今御説明いただきました資料をもとに、議論を展開することにしたいと思います。
 それでは、まず、加藤委員からの説明をしてもらいましょうか。それとも、ここで一旦議論した方がよろしいですか。
【渡邊学術基盤整備室長】  もしよろしければ、説明をいただいて、まとめて。
【西尾主査】  そうですね。そうしましたら、特にオープンデータに関わる課題については、JSTにおいても検討を進めていただいておりますので、その課題について加藤委員から御説明をいただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。
【加藤委員】  よろしくお願いいたします。それでは、資料に基づきまして御説明を差し上げたいと思っております。あと、別添の資料で報告書がございますので、この機会ですので報告書の内容、提言についても引用しながら御説明を差し上げたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。
 資料3の2ページ目でございますけれども、オープンサイエンス推進の意義、必要性、これについては内閣府の報告書の中から抜粋しておりますが、基本的にオープンサイエンスに基づいて、データ駆動型の取組が加速するという、新しい研究開発方法に向かっていくという方向と、それに伴い、少なくとも公的研究資金における研究成果として得られた論文、研究データにアクセスを可能とすることが必要であるということが示されてございます。そういう意味でいいますと、オープンサイエンスの推進に必要な要素としまして、論文及び研究報告のオープンアクセスの確保。それから、デジタル化された研究データのシェアリング。その中で、公開できるものについてはオープンアクセスを保証することが一つの大きな要素として必要となってくるわけでございます。
 次のページでございますけれども、オープンアクセスについては、文部科学省の中のジャーナル問題に関する検討会等でも御議論されているということがあり、JSTとして、実は昨年7月から、今後は研究データのシェアリングをテーマに、日本においてどうあるべきかということを論議する科学技術情報委員会で、資料にございますような浜口委員長を含めて、今回委員になっています北森先生も含めた委員の先生方にお集まりいただきまして、報告書をまとめていただいたところでございます。これらについては、昨年10月に第2回の段階で中間報告的なものをおまとめしまして、内閣府等にも御提言を差し上げております。第3回を開催し、報告書をまとめ、各先生方に了解をいただいているということでございますので、第1四半期中にはJSTのホームページ上に掲載したいと考えております。
 研究データのシェアリングに関する提言としまして、4ページにございますような提言1から5ということを出しております。この内容については、机上参考資料の報告書を見ていただいた方がよろしいかと思いますので、まず4ページ目の提言の要旨について少しポイントだけ御説明いたします。
 まず、データシェアリングポリシーを早急に策定すべきであるということでございまして、その中に、特にデータ管理計画書を作成する必要があると。それから、基盤構築に当たりましては、研究費の直接、間接経費から充当できるような仕組みを導入すべきであるといったところ。あるいは、データシェアリングを行うべき分野については、新領域・新分野を対象とする分野について、立ち上げの段階から実施が必要ではないかというような御提言が出ているところでございます。ちなみにデータ管理計画書については、National Science Foundationの記載事項ということで、本文の11ページの一番上の方に参考で入れておりますけれども、1から5番目で、こういう項目を記載した上で、当初の段階でデータ管理プランを出し、それに基づいて研究を行い、それをオープン化するというようなことが進められているという状況でございます。
 それから、提言の2といたしまして、持続的な研究データ基盤を構築すべきであるということでございます。これについても、今現在研究データをうまく流通するような基盤がないということもございますので、この辺をきちんとやるべきであるということ以外にも、研究データの構造化の研究なども推進すべきだというような提言を頂いております。これを受けてJSTの中では、例えばさきがけの方にそういった植物関係のインフォマティックスのファンディング等を立ち上げるといったようなことを検討しているところでございます。
 それから、提言の3と4でございますけれども、これは人材の話でございます。先ほどいろいろ出ておりましたけれども、専門人材の持続的な確保と育成が必要であるということでございます。また、そのためには大学等高等機関における育成等も当然必要でございますけれども、明確なキャリアパスを形成する必要があると。そうでないと人が集まってこないといったようなことも踏まえて、御提言差し上げております。また一方で、それに関しまして、データ研究だとかデータ基盤構築に関わる研究業績について評価をしていただくというようなことを、きちんと評価の枠組みを入れる必要があるだろうということでございます。
 それから、提言の5としまして、データシェアリングを推進する研究コミュニティに対して、国として充実した支援サービスを行うべきであるという提言を行っているところでございます。
 特に15ページのところが、今回の説明の中で参考になりますので御説明いたしますが、提言の5で、国がデータシェアリングを推進する研究コミュニティに対して支援サービスを行うべきであるということで、幾つか提言をしております。その中の5ポツ目でございますけれども、この中で先生方から出た議論の中には、データシェアリングを機会に、いわゆるまだデータなら間に合うというお話が出ておりまして、各学協会においても、海外の学協会と戦略的に協力、連携してグローバル化していく中で、論文に直接関わるデータ、あるいはそういったサプリメンタルデータ等については、我が国の学協会で保存するなど、論文と異なる手段によって、リポジトリの中に入れていくという仕組みを国として確保することが必要ではないかと。ジャーナルのような状況に陥らない前に、データに関してもこの辺のところの支援が重要ではないかというような御提言がされているところでございます。
 資料の中の後ろの方に少しございますが、全体3部作になっております「わが国におけるデータシェアリングのあり方に関する提言」という、ステークホルダーにおけるデータシェアリングの動向というところがございます。これは海外の動向等も示しているところでございますが、その中で6ページ目。ここに海外の研究費におけるデータ共有とすべき対象データはどういう形になっていますかということが記述されているところでございます。
 例えば、Office of Science and Technology Policyにおいては、実験ノートであるとか、論文の原案とか、将来の計画だとか、査読報告書とか、そういうものについては含まないと。それ以外のデータを入れてください。National Institutes of Healthにおいては、研究に関する最終研究データを格納してください。それからNational Science Foundationにおいては、助成によって得られた全ての重要な結果というような言い方。それから、Department of Energyにおいては、機密扱いに分類されない、制限のない、立証するのに必要なデジタルデータを入れてください等々の研究データの役割、これを共有化しなさいというような方向付けがされているところでございます。
 それから、参考までに、全体の研究データ共有ポリシーに関する調査ということがございまして、少しポイントだけ御説明を差し上げます。最初は各海外におけるポリシーの制定の経緯等を示してございます。また、どういうポリシーが制定されているかということについて調査した結果を示しております。それから、海外における国際組織の動向ということで、7ページ目にリサーチデータアライアンスについて記載してございます。これは研究者が集まって、今後の研究者がどういうふうにやっていけばいいかということをやっている国際的な組織でございまして、10ページ目を少し御覧いただくと、ワーキンググループとインタレストグループというところに分かれてございまして、その中で今後こういうデータのサイテーションをどうすべきだとか、あるいは企画をどうするかとか、あるいは分野ごとにどういうデータをどういう形で標準化するかというようなプロジェクトが、研究者が集まって検討されております。まだまだ日本の研究者は、ここに参加していないという状況のようです。
 15ページ目に少し書いてございますが、リサーチデータアライアンスのポイントということで、非常にスピードが速いということで、ワーキンググループを中心に、1年から1年半ぐらいでかなりの部分が同時進行的に進められているということ。それから、波及効果も大きいということ等がございます。これらに対しまして、日本として研究者コミュニティもこの中に参加していく必要があるのではないかということもあり、今、JSTとしてNIIも含めて、いろいろな機関と協力して、このリサーチデータアライアンスの総会を日本で開催し、その中に日本の研究者コミュニティに参加していただくというような仕組み作りをしようということで、今動いているところでございます。
 それから、同じところの23ページ、それから29ページ目の方に、商業出版社におけるデータジャーナルの動向が書いてございます。ただ、これが2014年ぐらいからですので、まだまだこの部分については、日本として取り組む必要があるのではないかというような指摘が提言されているところでございます。
 以上のようなことが、このデータシェアリングに関しまして提言されてございます。そういうことを受けながらオープンアクセスも含めて、JSTとして取り組んでいる事項について、概略の御説明を差し上げたいと考えております。
 もとの資料に戻りまして、5ページ目でございます。先ほど渡邊室長からお話がありました、J-STAGE事業の状況ということでございます。これは平成11年から、国内論文の電子化を促進するということで運用されております。現在、日本の電子ジャーナルのプラットフォームの中核的な基盤となっていると考えております。アーカイブとしては1,800誌近くアーカイブをしておりますけれども、ここで現状について記載してある数字については、現在動いているカレント分のみで評価をさせていただいております。
 まず、国内学協会の中の査読ありの論文のジャーナルが、約2,000ございます。その中の電子化しているものが62%。J-STAGEの登録数としては、その中の約34%が搭載されているという状況でございます。これ以外に、カレント分で見ますと855誌ございます。学術会議の協力研究団体の中で登録されているもの以外の学協会も、実は参加しておりますので、全体のカレント誌としては855となっております。
 その中で、英文誌が222誌ということで、これが国際発信をしているジャーナルだと見ていただいてよろしいのではないかと思っております。全体としまして、アーカイブ誌を含めたシェアとしましては、全体の学協会数2,003に対しまして、J-STAGEの協会数は722でございます。ただ、学協会として搭載していない部分を含めますと、先ほど申しました1,001機関となっております。そういう面でいうと、36%ということでございます。
 それから、昨年NIIの方で発表されましたが、NIIがやっています電子図書館事業について、終了するということでございます。NIIの方も、平成9年からスタートいたしまして428学会、1,400誌について収録をしておりました。今後、J-STAGEがその受皿になった場合、約50%の学会がJ-STAGEに入るということになります。
 J-STAGEの課題といたしまして、有力学会からの要望事項がたくさん出ております。一つは、海外有力誌に匹敵する発信力強化をやってほしい。それから、学会の経営の運営を強化してほしいという要望が強く出ておりまして、これらの要望に応える必要があると考えております。一つ目は、ウェブマーケティングを入れて、それこそインパクトファクター、あるいはより多くアクセスを増やしていくために、最新のウェブの機能をきちんと入れてあげるということで、発信力を強化できると考えております。それから、健全な学会運営に資するための支援として、GOLD OAの場合、最初の投稿料を頂いて学会運営が成り立つわけでございますけれども、Article Processing Chargeという投稿料の対応。それから、GREEN OAと言われている部分にエンバーゴ期間、一定期間後にオープンアクセスする場合、エンバーゴ期間の間の対応ができるというような、いわゆる、学会のビジネスモデルをきちんとサポートしてほしいという御要望が出ているところでございます。
 それから海外、特にアジア諸国との連携を強化したい。それに対してグローバル化をきちんとやってほしいということでございまして、システム上は当然でございますけれども、システム外でもグローバル化を支援するサービスモデルを提供してほしいということでございます。基本的には発信力を高め、現在日本のジャーナルでインパクトファクターを持っているジャーナルが236ほどございますが、そのうちJ-STAGEの収録誌は114誌になります。先ほど申し上げましたように、J-STAGEには、英文誌が222搭載されておりますので、これを倍増するぐらいの形の発信を強化していくということが必要ではないかということで取り組んでいるところでございます。
 それから、次のページ、7ページでございますけれども、NIIと国立国会図書館、物質・材料研究機構の4機関共同で運営しているジャパンリンクセンターという事業がございます。これは国際的なDOIというものを付与する、レジストレーションエージェンシーということで認定された、日本で唯一の機関になります。通常、「DOIとは」に書いてございますけれども、電子データに付与することで、きちんとアクセスを実現するということで、論文についてはこれがデファクトになっております。一方で、データについてもこのDOIを付与することによって、どこに所在があるかということが分かるという状況でございますので、実は次のページ、8ページでございますけれども、研究データにDOIを付与する実証実験のプロジェクトを、昨年の10しております。
 これについては、国立極地研究所等々含めて8機関、9プロジェクトが参加するということで、日本の研究データを非常にたくさん持っている機関が参加していただいていまして、この研究データにDOIを付与するに当たって、どういうポリシーを作っていく必要があるかというところについて、実証実験を進めております。この辺の要件を検討した上で、今後の研究データをシェアリングするための一つのコアの仕組みとして実現していく必要があるのではないかと考えております。
 それから、10ページ目でございます。10ページ目で、ファンディングマネジメントデータシステムということで、JSTの内部においてファンディングした結果の状況をデータベース化いたしまして、それを今後の意思決定支援に使っていこうということで、昨年の6月から内部向けに、サービスを開始したということでございます。内部的にはWeb of Scienceだとか、Scopusだとか、あるいは私どもが扱っているJ-GLOBAL、researchmap等々とリンクをし解析ができるということを進めております。
 一方で、科研費については公開されており、同様に、JSTの研究成果についても公開をしようということで、これは平成27年度の上期を想定しておりますけれども、科研費の公開と同様に開発をしようということで、JSTとNIIと共同で、この公開データベースの構築をしているところでございます。こういうような取組が、科研費とJSTだけでなくて、広く大きくプラットフォームとして作るべきではないかというところも、今から提言したいところでございます。
 それから、次のページ、11ページ目でございますけれども、情報分析基盤の活用ということで、これまで57年間にわたりましてJSTの中で蓄積してきた情報基盤というものがございます。国内外の文献は約3,600万件、特許についても約1,100万件、それから、研究者もほぼこの中で同定しておりまして、約73万人の研究者が同定されて、それと文献、特許等がつながるような仕組みを情報分析基盤として構築しております。総務省で86万人が研究者として登録されているようですが、科学技術関係の研究者で73万人ということで、ほぼ同定されているのではないかと考えております。それらと幾つかのほかのデータベースを組み合わせて、分析ができるというような仕組みを立ち上げたところでございます。
 その中には、NIIと協力いたしまして、NIIの方でこれまでやっておりましたCJPという引用情報を頂いて、私どもの方で補正予算も活用しながら、2007年に遡って国内外の引用情報を整備しております。また、それとScopus、Web of Scienceとリンクすることによりまして、新たな引用情報による評価指標ができると期待をしているところでございます。それに向けて、今準備をしているということでございます。Scopus、Web of Scienceの中だけの引用情報ではなくて、国内文献に含めた引用情報、あるいは産業界の技術報告書からどういう形で引用されているかというようなところも含めて評価することができるのではないかと考えております。
 今回御提案したいということでまとめてございますのが、まずは、オープンアクセスのプラットフォームとして、次期J-STAGE事業を強化すべきということでございます。1、2に記述しましたように、国際発信力の更なる強化、学協会のグローバル化を例えば、学協会の国際シンポジウムを支援する、また、論文にひも付く研究データを連携するため、DOIにより、機関リポジトリとリンクするというのは、J-STAGEにおいて、容易に実現可能ではないかと考えております。
 また、先ほど渡邊室長からもお話がございましたように、昨年のジャーナル問題に関する検討会でも提言しました、日本の優秀なトップクラスの論文を発信すべきところをきちんと査読をして、レビューをつけて、世界に発信するというような必要があるのではないかということで、日本学術振興会の浅島先生等からも指導を受けまして、海外での具体的事例として、例えばイギリスにおけるバーチャルジャーナルとしてはFACULTY of 1000ということで、これはバイオ関係のものでございますけれども、会員が査読をして評価をしたものを発信することで、アクセスが増えて引用がされるというような例。それから、中国におけるFrontrunner5000ということで、中国の論文を含めて、それを英語に変えて発信をするというような動きもあります。それと同じようなことを日本でやるべきではないかと考えております。これはJ-STAGEもその中の一つであって、そのほかのジャーナルについても、日本発のトップクラスの論文をこの中に格納して発信をしていくというような仕組み作りが必要と考えております。
 それから、政府横断的な研究成果の公開についてですが、例えば科研費とJSTの研究成果を連携して見ていくということも、今後必要でございますし、ほかの機関の研究成果、それから省庁を超えた研究成果といったものを一元的に可視化するというようなプラットフォームが必要ではないかと考えております。JSTの情報事業の取組を省庁横断的、機関横断的にうまく横展開ができればと考えております。
 全体としての取組としまして研究プロジェクトの研究データシェアリングを支援していくための施策が必要ではないかと考えております。例えば、データ管理計画書の提出を支援するための施策とか、プロジェクト段階でのキュレーションの仕事に対して、人材を派遣するといったことをきちんと政策として支援する必要があるのではないかと考えております。
 人材の確保ということでは、海外においては図書館の中にこういったデータキュレーションセンターを置いてデータを整備していくというような例も出てきているようでございます。そういった多様な人材、専門人材を研究プロジェクトの中に配置していかないと、なかなか研究データをシェアリングしようと思っても、実際は進まないということでございます。その辺の支援がまず必要と考えております。
 それから、研究データに先ほどDOIを付与するということで、ジャパンリンクセンターを活用して研究データの所在は把握できるようになると思いますが、それらの情報が流通し再利用されていくというためには、情報流通基盤が必要と考えております。
 さらに、論文におけるJ-STAGEの役割と同じような形で、国内にデータジャーナルの機能、データを投稿して、査読して、格納していく機能といったものを持ったプラットフォームが必要と考えております。先ほどのJSTの科学技術情報委員会でも提言されております。
 全体をまとめたのが、次のページの16ページでございますけれども、そういった公募段階でのデータ管理計画書の作成のツールを提供し、その中で例えばe-Radと連携する。あるいは、少なくとも人材がいないという中で、データキュレーションセンター的なところで人材をプールしておいて、人材を派遣して、データを整合して、データを登録していくというような支援策も必要になってくるだろうと考えております。これはオープン化されるデータだけでなく、コミュニティの中でクローズでシェアリングされるケースの両方での支援が必要と考えられます。
 また、オープン化されるデータについては、ジャパンリンクセンターと連携し、DOIの活用を推進していくような施策とともに、データジャーナルのプラットフォームを提供していく施策が喫緊の課題と考えられます。
 時間を超過したようです。申し訳ありません。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。渡邊室長には、今までの議論をいろいろ踏まえまして、資料の1のような形で整理いただきましてどうもありがとうございました。また、加藤委員の方からは、今後の議論について、非常に参考になる、またインパクトのあるお話をいただきまして誠にありがとうございました。
 ここで、短い時間ではございますけれども、渡邊室長の方からの御説明と、加藤委員の方からの御説明に関して、質問等ございましたら挙手いただければと思います。何かございますか。はい、どうぞ。
【竹内委員】  加藤委員から大変詳細な御説明をいただきまして、誠にありがとうございました。先ほど渡邊さんから御説明があった資料1の検討の枠組みの中に出てきていることで私が特に着目していますのは、人文・社会科学分野におけるオープン化の問題ということです。先ほどの加藤委員からの御説明は、JSTという御立場のものであるから人文・社会科学についての言及というのは全くなかったのかなと思うのですが、領域を超えて様々なデータを共有していくという流れの中で、JSTの御立場として、人文・社会科学の領域についてはどういうお考えかということをお聞かせいただければ幸いです。
【加藤委員】  最近は新しいプロジェクトにおいては、人文・社会科学との連携をした研究プロジェクトも発足されておりますので、そういう面では対象になっていると思います。ただ、科学技術振興機構という、科学技術という名前がついているということでございます。あと、J-STAGEについては、11%が人文・社会科学系の学会が入っているということでございますので、J-STAGEについては全て包含した形で対応させていただいているつもりでございます。ただ、なかなか英文誌がないということでもございますので、それはなかなか国際発信にはつながっていないのかもしれません。よろしいでしょうか。
【竹内委員】  ありがとうございました。
【西尾主査】  はい、どうぞ。
【逸村委員】  今の補足質問です。内閣府の方の書類でもそうですし、今回お配りいただいた資料1でも、例えば2ページの最初の目的・意義で、「公的研究資金による研究は」とあるんですけれども、今の人文・社会科学系、特に私立大学が関わってきますと、やはり公的研究資金というのは余り意味があるとは思えないです。私立大学での小さなお金でも、きちんとデータをお作りになっているところは結構あります。加藤委員の御指摘のとおりで、いわゆるマッシュアップによって分野を超えた様々な研究活動、それで地球的課題に当たるというのが増えています。
【西尾主査】  もし何か加藤委員の方から御意見ございましたらどうぞ。よろしいですか。
【加藤委員】  はい。
【西尾主査】  それでは、逸村委員からの貴重なコメントということで承りました。ほかに何か御意見はありますか。どうぞ、井上先生。
【井上委員】  今の逸村委員の意見に賛成です。人文・社会科学、更に教育も含めてこの委員会で扱うのだとすれば、公的資金の投入された研究成果に限定するのは妥当ではないと思います。公的資金が投入されれば、社会への成果還元の要請が強いということがあり、公的資金が導入されている研究についてはコントロールしやすいということもあるのだと思いますが、オープンアクセスの理念からしますと、やはりもっと幅広い設定で議論していく必要があると思います。
 本委員会でサイエンス中心に議論を始めるということであれば、それはそれでよろしいですが、本来扱うべき土俵はもう少し広いのだということを共通の認識としていただきたいと思います。
【西尾主査】  今、お二人の先生方から非常に重要な御指摘を頂きました。そこで、この委員会としては、公的資金にサポートされた研究成果に限定しないということを原則として今後議論を展開するということに関して、反対とかはございませんでしょうか。そうしましたら、この委員会の重要な視点として、今後その考え方を大切にしながら議論していきたいと思っています。
 ほかに渡邊室長と加藤委員の御説明に対しての質問、意見はございませんでしょうか。どうぞ。
【逸村委員】  質問というよりコメントです。あちこちで同じような話が出ているんですが、資料1の7ページの5、データを作成・公開する研究者のインセンティブ及び業績評価への反映と。これに関しては、当然オープンデータというものが成り立った上でということではありますが、商業出版社でありますとか、トムソン・ロイターのデータサイテーションインデックスが既に動き始めておりますし、あと、様々な格好でのデータサイテーションというのが、日本データセンター協会とかあちこちで少し話題になっていますので、それへの目配りをきちっとして、やはりこういう裏方の話にもきちんと目を配るべきだと思います。もう1点。海外で活躍している若い人を採用しようとしました。しかし給料の折り合いがつきませんでした。筑波大学の状況ですが、助教の給与は一定の額が決まっています。先方からは8万ドル以上を要求されました。若手であっても、優秀な人材を確保するにはそれが最低ラインだそうです。その後、イギリスやアメリカのビッグネームに会う機会があるごとに聞くんですが、やはり最低8万ドルという言い方でした。手っ取り早い優秀な人材を海外から持ってこようという計画は、今、頓挫しております。
【西尾主査】  二つ目の事項はなかなか由々(ゆゆ)しきことですね。ですが、ここでその解決策を議論するというのは難しいように思います。
【逸村委員】  まあ、情報提供で。
【西尾主査】  人材という観点から大事なことです。インセンティブに関しましては、加藤委員の御報告の中でも言及されていましたが、後ほど、順を追って議論していきたく思います。
 それでは、お二人の御説明に関しての質問とかコメントということに関してはこれでよろしいですか。はい、どうぞ。
【相田委員】  少し分かりにくかったんですけれども、論文を書くときに、その論文に対して必要なデータを倫理上の問題もあって保存しておくという観点のデータ保存と、それから、データをリポジトリみたいな形でいろいろなところで使うためにとっておくという概念と、どういうふうに関係させるというか、その境目はどういうふうに理解すればいいのかが少し分かりにくかったんですけれども。
【加藤委員】  論文に付随したデータというのがございます。このデータの結果、こういう論文ができたという。論文を保証するというか、そういうデータは論文とともに、きちんとリンクしてオープンにしていくことが要請されております。一方で研究データといった場合には、論文の根拠となるデータ以外のほかのデータもたくさん産出されますが、そういうデータ全体を含めてリポジトリをしていく。中には失敗したデータもあるかもしれません。そういうものを含めて活用していくということも必要なので、研究データと論文に付随したデータとは、違う観点で考える必要があると思います。少なくとも論文に付随したデータについては、オープンにすべきという議論になっているはずです、現状では。
【相田委員】  論文になろうがなるまいが、とにかくデータを公開するという点は分かるんですけれども、その中で論文になったデータというのは、また別の何かひも付けをするということになるんですか。
【加藤委員】  現状、論文に付随するデータについては、何らかの形で、論文にひも付けになっているように思います、現段階では。
【相田委員】  これから議論するのも、そういうような枠組みで考えていけばいいんですか。
【加藤委員】  と思います、はい。
 あと、もう一つ申し上げておけば、データのオープン化は現状、ほとんど進んでないという状況でして、先に申し上げておかなければいけないのは、これは多分内閣府の報告書が出ているのも、まず、公的資金での研究成果については、オープン化すべきという話でございまして、決してオープン化が進んでいるわけではございません。ただ、分野によって、例えば環境の関係のデータだとか、あるいは素粒子研究関係のデータ等、グローバルで全体に研究している分野については既にデータが全部オープン化されているという話でございます。逆に、それ以外の分野はほとんどオープン化されていないということでございます。現実的に、JSTの中の研究データがオープンにされているわけでもございませんし、少なくとも公的資金による研究成果については、まずは、そこからというようなことで、提言が出ていると認識しております。
【西尾主査】  相田先生、よろしいですか。
【相田委員】  はい。
【西尾主査】  そうしましたら、資料1の方に戻りまして、資料の記述に沿って議論を展開するという方式で進めさせていただきたいと思います。どうか御了解ください。
 2ページに議論の枠組みというところがございまして、研究成果の公開を推進する意義・基本方針というところがございます。中ポツから始まるここの部分に関して、何か御意見等ありますでしょうか。教育に関する観点等についても言及する必要があるのではないかというのは、もともとこの委員会で美濃先生をはじめ強く言っていただいたところですが、それ以外にここの部分に関して何か御意見等ございませんでしょうか。どうぞ。
【逸村委員】  屋上屋を架すような言い方になると思うんですが、教育に関する観点も、やはりオープンデータということは、それこそ今、若い元気な技術のある者が、様々なオープンになったデータをマッシュアップして、先ほど申し上げたような様々な課題に取り組めるんだと思うんですね。やっぱりそこら辺は是非強めに書いていただければと思います。
【西尾主査】  事務局の方、今の御発言の件よろしいですか。
【渡邊学術基盤整備室長】  はい。
【西尾主査】  どうも貴重な御意見ありがとうございました。ほかに御意見等ございますか。どうぞ。
【井上委員】  先ほど主査の方から御確認いただいたことですけれども、公的資金の投入された研究成果に限らず幅広にということを、ここで明記しておくべきだと思います。
【西尾主査】  非常に貴重なコメントありがとうございました。そのことに関しましても、ここで明記しておくことにしたいと思います。
 美馬先生、どうぞ。
【美馬委員】  この中で、新たな発見や再利用というのがありますが、分野を超えたとか、それから人文・社会科学の研究にも大きな影響を与えられるとか、そのあたりもあるといいのではないかと思います。
【西尾主査】  はい、どうもありがとうございました。貴重な御意見ありがとうございました。
 ほかにこの部分に関して、もう少しこういうことに言及しておくべきじゃないかとかございませんか。加藤委員には、JSTで議論なさっていることが、本委員会の議論とも結構重なっている部分がありますので、そのようなことについては是非ここでもう一度御提起をいただけたら有り難く思います。
【加藤委員】  はい、分かりました。
【西尾主査】  では、そうしましたら、またもとへ戻っていただくのは一向に構いませんので、次のデータの定義・範囲というところについてはいかがでしょうか。どうぞ。
【岡部委員】  京都大学の岡部です。前回は欠席して、大変申し訳ございませんでした。
 ここでは研究データとして、メタデータ、テキストレコード、イメージ、ビジュアルデータなど多様なデータと書かれているんですが、あくまでデータという枠組みにおさまっています。ただ、我々が今情報処理学会で検討しているのには、ヒューマンインタフェースなんかに関する論文で、コンテンツそのものが論文の評価のエビデンスとして必要であるというケースもあります。例えば、映像であるとか、音楽であるとか、あるいはエンターテイメントの論文であれば、ゲームのプログラムをそのまま走らせてみて、それで査読するというところまで考えています。そういう意味で、もう少しここは広く扱えるようにしておいた方がいいのではないかというのが1点。
 それともう一つは、数値データ的なものであっても、生のデータだけではなくて、それを扱うプログラム、これを一緒に扱わないと、実はエビデンスが検証できないということもあると思うんです。ソフトウェアのオープンソース化ということも併せてここで記述できればいいのではないかと思います。以上です。
【西尾主査】  美濃先生、御意見はございませんでしょうか
【美濃科学官】  プログラムも多分重要なデータだと思うんですね。特に公開すると、データを変えて、プログラムが動くかという評価ができるんですね。我々の分野は特にそうですが。データと同時にプログラムもオープンにする。つまり、データがいろいろ変わっても、そのプログラムがちゃんと動くか、あるいは、同じデータでプログラムの性能比較をする。データはオープンにして初めてエビデンスになるのではないかと思います。エビデンスデータですが、京都大学の中で議論したときに、いろいろな分野の先生がおられて、防災研究所なんかは物をつぶすんですという話があって、そのときのエビデンスデータって何ですか、つぶすものを残しておけというのですかとかいう話がありました。
 したがって、エビデンスデータというときにも、一体何がエビデンスデータなのかというのは、分かりにくいところがあるんですね。この問題も、何か書いておかないといけないかなと。我々のような情報の世界だとデータはこんなのだというのを何となくイメージしているんですが、そういうことができない分野もかなりあるということです。エビデンスとしてのデータというときに、論文を書くときに必要な実験結果を全部残せという話にとられる可能性があるので、このような議論はどこかでやっておかないといけないような気がします。
【西尾主査】  場合によっては必要がないものもある、ということでしょうか。
【美濃科学官】  残せないものもあると。
【西尾主査】  残せないものもあるという意味ですね。
【美濃科学官】  情報として残せるものだけなのかどうかという話ですね。
【西尾主査】  どうぞ。
【逸村委員】  その点は海外のデジタルキュレーションセンター等を調べたところの報告なんですけれども、特に防災研究所であったり、あるいは天体物理等の巨大なデータですね、本当に巨大なデータ。そこは学会等と話をして、そちらで管理してもらうと。それで、メタデータだけを、どういう格好になるか分かりませんが、そこのセンターでは確保してと。というのは、そもそも個々の大学のデータリポジトリで、巨大なデータを管理しきれないし、重複も管理しきれない。あと、何よりも研究者の使い勝手が悪いということになってしまうので、あくまでいわゆるセンターでは、標準的なメタデータと、それほど大きくはなくて任せられるようなデータを扱うと。それで、専門的なデータ、あるいは美濃先生がおっしゃったようなところはなるべく専門的なところ、ヨーロッパですと欧州原子核研究機構とかいろいろそういうのがありますので、というふうに聞いております。まあ、日本はどうするかというのはまた別の問題ですが。
【西尾主査】  美濃先生、どうでしょうか。
【美濃科学官】  私はそういう制度があるなら、それで残した方が、エビデンスとしてはいいと思うのですが、巨大なものになると実際残せないというのは事実なので、どう扱うんだということは、何らかの形で書いておかないといけないという意図です。
【西尾主査】  分かりました。ほかに御意見ございませんか。どうぞ。
【加藤委員】  今のデータの話を申し上げますと、幾つか論文の内容を保証するというか、バリデーションするためのデータというのは基本的に公開という方向だろうと考えております。そういう目的もあって公開するという意味があります。それから、皆さん方が共有してシェアリングすることによって、価値があるデータは当然集めてきて、一部は限定公開になるかもしれませんけれども、公開し続けることによってメリットがあるので公開しましょうという分野もあります。それ以外に、他分野のデータも集めてくることで、それで新しい価値を見つけるというようなことも当然あると考えられます。大体三つの種類があるのではないかということをよく言われております。
【西尾主査】  今の加藤委員の三つの種類ということに関しましては、皆様方、どうでしょうか。どうぞ。
【相田委員】  すみません、その分類自体はとてもそのとおりだと思うんですけれども、それをどうやって判断するかというのは、結構分野によっても違いますし。例えば、宇宙のデータみたいな、一人一人が測定しようと思ったら大変なので、一度測定したものをみんなで活用するというのは分かるような気がします。だけど、例えば卒業実験で、いろいろな学生さんがいろいろな実験をやったのも全部集めた方が将来のためだとかと言い出したら大変なことになりますよね。だから、それをどういうふうにして判断をするんでしょうか。
【西尾主査】  分かりました。どうぞ。
【竹内委員】  先ほどの相田委員の御発言と、今の御発言とも関わってくるんですけれども、データの場合に、研究成果としての論文が出てきて、それをバリデーションするためのデータの公開ということについては、既にいろいろなところで議論がなされていると思います。しかし研究室単位で持っているようなデータになると、そのレベルに関しては、基本的にまだ何の合意もないと思います。
 先ほど加藤委員がおっしゃったかと思いますが、失敗したデータというのは論文に使われなければ埋もれてしまっているわけですけれども、これを同じ分野の方々がいろいろな形で再分析すれば、新たな知見を生む可能性はあるわけです。ただ、さらにその内側に、プライバシーとかその他の問題で、決して外には出てこないようなデータを、各研究機関あるいは研究室単位などではお持ちになっているケースというのもあるはずです。それとて、研究不正等の観点から言えば、研究室としてはきちんと管理しなければならないものだと思います。
 そのような様々な種類のデータと、それの公開の度合い、あるいは共有の度合いについては、まだ基本的な枠組みすら議論されていないと思います。また、どのレベルでどういうふうにやれば、それがうまく使われるのかということについても、分野によって違う可能性もあるし、そしてまた学際的に考えた場合にはどういう方策をとればいいのかということについても、まだ手探りでいろいろなことをやられている段階ではないかと思います。論文のエビデンスとしてのデータ、研究過程やその他のデータの定義・範囲というのは、これは議論としてはかなり広く捉えておくしかないのではないでしょうか。それをどういうふうに使っていくのかといったことやどうしたら我々はそれらを共有し得るのかということを議論する方が、データの定義にこだわってしまうよりも私は意味があるのではないかと思います。
【西尾主査】  どうぞ。
【辻委員】  今の御発言に関してなんですけれども、例えばいろいろな実験で、要するに失敗しました、こういうやり方ではできませんでした、こういうアプローチでは非常に効率が悪かったですというのが、実は非常に重要な研究成果でして。ここで言われている論文のエビデンスとしてのデータという意味と、そうではなくてオープンデータといったときに、次のステップに研究が進むためにいろいろ活用していくという側面もあるものですから、どこまでエビデンスとしてとっておくという意味と、研究を更に一歩進めるために、活用するために広げていくというところを考えますと、どこまでやっていくかというところが議論の範囲になるのではないかと思います。
【西尾主査】  今の御意見についていかがですか。
【相田委員】  例えば、科研費とかで。
【西尾主査】  できましたらマイクをもう少し近づけていただけますか。ありがとうございます。
【相田委員】  すみません。いろいろな、例えば科研費で毎年実績報告書とか書きますけれども、その中でこうやってやったけれども駄目だったと単にそれを書くだけよりは、そういうデータをちゃんと蓄積しておけば、それに基づいてまた次の誰かほかの人が、それならこうしたらどうだろうとほかの全く違う人が見る可能性があるという意味で、活用する意義はすごくあるだろうなとは思いますが。ただ、判断するのは誰だろうなと思うので、これはまた別の機会ですね。
【西尾主査】  そうだと思います。それは、多分、即席には判断できなくて、ある程度の時間がたったときに、これは非常に役に立つのだ、というようなことが分かるようなこともあります。その時点において、これは役立つ、役立たないということの判断まではなかなか難しいのではないか、という気はします。
 どうぞ。
【加藤委員】  JSTの中でも同じような議論がございまして、じゃあどの分野のデータシェアリングを進めるのかという話がありました。それで提言5に書いてございます、データシェアリングを推進する研究コミュニティに対して支援するということで、研究者の皆さん方が共有することに意味があるという分野でないと、それこそほかから手を入れてやりなさいというわけにはいきません。むしろ研究コミュニティの意識がそういう意識に変わってくる時代になってきている。世界的にもいろいろな分野でワーキングができて、標準化ができて、共有されている時代になってきている中で、研究コミュニティの中でそういうことをこれからやっていかなきゃいけないという意識を持っている分野に対して、きちんとそういった仕組みも含めて人も支援するというような形になればと考えております。
【西尾主査】  分かりました。どうぞ。
【久門委員】  今の加藤委員のお話は大変重要だと思っております。というのは、先ほどからお話が出ている天体であるとか、あるいは素粒子系の分野ですと、恐らくデータの解釈の方法、あるいは蓄積の方法というのもコモンセンスとしてなっていて、どこで作ったものであろうと誰でも解釈できるわけです。しかし、例えば先ほどからお話が出ている人文とか社会科学系のものだと、蓄積されたデータが何であって、どう解釈するかということは、データを見ても恐らく全然分からないのではないかと考えられます。そうすると、まず我々として考えなければいけないことは、そういったデータシェアしたいと思うグループなり団体が存在したときに、それをサポートすることによってシェアが円滑に進むようにすることではないかと思います。ただとっておくといっても、無制限にとっておいても恐らくシェアできないのではないかと思いますので、そういった支援する活動というのがかなり重要なのではないかなと思います。
【西尾主査】  久門委員、どうもありがとうございました。非常に貴重な意見だと思います。どうぞ。
【岡部委員】  1点だけ。この、エビデンスのデータではない、研究過程から生じたデータを公開するというのは、ある意味、自分のところでクローズドで持っていたらそこから別の知見が出るかもしれないものを、出してしまったからほかの人にとられるリスクもあるわけですね。したがって、黙っているとなかなか出そうというところまでいかない。それはやはり、それを出すことによって出した人がメリットを受けるような仕組みを作っていかないと難しいだろうと。先ほど加藤委員がおっしゃったように、データサイテーションという形で、論文そのものではなくて、データそのものに対してサイテーションが上がってリスペクトされる、そういう仕組みを作る。あるいは、コミュニティでそういう仕組みを作ったところが支援を受けるような枠組みを作っていく必要があるんじゃないかなと思いました。以上です。
【西尾主査】  岡部先生のお話を伺いますと、今まで論文そのものに関するサイテーションが評価値として用いられてきましたけれども、今度はデータそのものに対して、世界的にどれだけそれを使われているかというサイテーションの度合いが出てくるというのは興味深いことです。新たな展開ですね。
【岡部委員】  あともう一つ、先ほどプログラムのことを申したんですが、データだけではなくて、そのデータを扱うプログラムが、データが変わっても非常に多く使われる。実はそういうケースはあるんですけれども、今、それは単に道具ということで、余りリスペクトされていないんですね。そこもやはり本当にいいものを作った人が評価されるような仕組みを一緒に考えていければなと思います。以上です。
【西尾主査】  我々、情報科学の分野において、あるプログラムの研究・開発を行った場合に、それをどうやって評価するのかということは結構難しい問題だと思います。その一つの回答として、プログラムがどれだけ使われたかを重要な評価尺度と考えると、岡部先生がおっしゃったことは非常に参考になる評価尺度になると考えます。
【井上委員】  先ほども少し出ていたんですけれども、データという言葉のニュアンスといいますか外延の問題で、有体物に関する情報もあり得ると思うんです。例えば、特許の世界ですと、微生物を寄託する制度があり誰もがアクセスできるようにする機関があるわけですけれども、微生物や遺伝資源など、分野によって違うと思うんですけれども、有体物が研究成果のエビデンスとして重要であったり、あるいはそれを利活用することで更にイノベーションが促進されるというようなものもあり得るのではないでしょうか。データという言葉でそういうものをあえて排除するような意味合いで使われるんだとすれば、少し気になるところでございます。狭義のデータにとどまらず、試料、有体物なども含めることは可能なのではないかと思います。そういうものを適切に保存し利活用を進めようというコミュニティがあれば、先ほどの加藤先生のお話であったように支援していくことも考えられると思います。
【西尾主査】  どうでしょう。今、井上先生がおっしゃいましたデータの定義のことは、大きな問題として考えていかなければならないように思います。井上先生がおっしゃっていただきました有体物とか、そういうものまでも我々の議論の対象になり得るのかどうなのかということについて、美濃先生、いかがでしょうか。
【美濃科学官】  情報というのはシェアするのが原則ですね。だから、シェアできるものはみんなでシェアしたらいいと思うんですけれども。問題は、それが本当に必要なときに出てくるかという話だと思うんですね。だから、出す方は幾らでも出せるんだけど、どれだけ見てもらっているのという話のところが、出す方の評価になるわけですよね。したがって、出すのは簡単ですよ、今や自分のホームページでもどこでも上げればいいわけですけれども。それをどう評価して、どういうふうに維持管理していくのということになったときに、どれが有用でというような価値判断を入れてしまうと、その価値判断に漏れたものは消えていくわけですから。
 そうすると、今回一体何を議論したいのかよく分からないんですけれども、大事なものはみんなエビデンスとしては公開しましょう。それはいいんですけれども、それ以外もできるだけ公開しましょうと言ってしまったら、それで終わりの話かなという気がします。それ以上に何があるのかなというと、やはり検索側が本当にうまく動くかというので、公開されたデータが本当に役に立つかという話になるんだと思うんですね。かといって、1箇所に全部集めて検索システムを作りましょうというのは、これは非現実的なので。どうするのかというあたりの方が大事で、何を公開しましょうとかいう議論は、公開したいものを公開したらいいんじゃないですかということで終わりじゃないかなという気がしますが。
【西尾主査】  はい、どうぞ。
【久門委員】  少し否定的な言い方をさせていただきますと、現在、データとして考えられているのは主にデジタルデータであると思います。デジタルデータの特質というのは、アナログデータに比べると劣化することを防ぐことができる。あるいは、コピーとかその他のコストが極めて安い。これに対しまして、先ほどのお話の、微生物のようなものを保管して置いたとしても、あるいは、アナログデータ、例えばフィルムとかそういったものですら、実は保管することに対するコストというのは極めて高いわけです。さらに、1年、10年、100年たったときに、本当に元通りで保管できていることが保証できるかどうかも怪しいというような特質を持ちます。生物であれば、同じ株が本当に今でもあるのかというようなことは全然分からなくなってしまうので、何でもかんでもといってしまうと、公文書館とか考古学館とか、ありとあらゆるものを保管しておくような話になってしまいますので、ここは余りむやみに広げない方がいいのではないかと考えます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。そういう意味では、デジタルデータということでいかがでしょうか。
【逸村委員】  これはさっき加藤委員が小走りで駆け抜けちゃった感じですけれども、わが国におけるデータシェアリングのあり方に関する提言の、ページでいうと真ん中辺にある、いわゆるリサーチデータアライアンスですね。ここが範囲にしているようなもので、日本で受け入れられるもの、あるいは、先ほどの話ですと、じゃあ共有しましょうといったときに手を挙げてくれるところから始めればいいような気がします。それで特に問題があるところは後追いで、今の段階ではやむを得ないのではないかと考えます。かなり丁寧に、JSTの方でお作りいただきましたので。特にリサーチデータアライアンスの幹部なんていうのは、本当に錚々(そうそう)たる人たちが入っていますから、ここら辺がベースでよろしいのではないかと思います。
【西尾主査】  なるほど。どうぞ。
【加藤委員】  よろしいですか。グローバルな意味でのそういった連携とか標準化だとかというのは、こういうリサーチデータアライアンスというような機関を経由しながらコミュニティ自体が活動していく必要があると思います。ただ、ファンディングの話だけしますと、最近のファンディングは領域を超えて、また、さらに、いろいろな企業が入って、大学も複数ある中で一つの方向に向けてプロジェクトを推進していく、戦略的イノベーション創造プログラムでありますとか、革新的研究開発推進プログラムというものが領域を超えながら、研究機関も複数ある中での研究開発プロジェクトが出てきております。そういうプロジェクトについては、スタート段階でそういった研究データを共有していくためには、やっぱり研究のファンディングの段階でデータシェアリングの方向に向けていく必要があります。その後で、最終的に共有する、あるいは公開する、あるいは論文のデータについては公開する、あるいは、このデータはコミュニティの中だけで閉じるというのは後からそれはできる。そういうことで研究プロジェクトが、発足した段階からうまく支援をしていく必要があると考えます。例えば、先ほど幾つかの海外の例で、50万ドルを超えたものについては必ずやるとか、そういう大規模なプロジェクトについては必ず共有化しましょうという方針で実施しているケースもございます。
【逸村委員】  議論が一回りしちゃうんですけれども、そういうわけでこの資料1の最初のところで話が出た、公的研究資金と書いてあるのは、多分最初からそういうプロポーザルがあるから、これが何のデータであるということを意識されていると思うんですけれども。さっきの話の蒸し返しですが、公的研究資金と書いてあるそっちが一人歩きしちゃうので、うまく書き方を考えればと思います。
【西尾主査】  いろいろと貴重な意見をありがとうございました。先ほどの逸村先生からおっしゃっていただいたようなところで、一応、我々の体制とするということでいかがでしょうか。よろしいですか。どうぞ。
【竹内委員】  少し話を戻してしまうようで申し訳ないですが、特に基本姿勢と書かれているところ、2ページ目の実線で囲まれた上から二つ目の箱ですけれども、利活用の促進を拡大するという部分を、やはりきちんと考えていく必要があるのではないかと思います。と申しますのも、論文のオープンアクセスの議論がこれまで10年以上続いておりますが、もともとオープンアクセスというのは単にアクセスをするだけではなくて、アクセスできた成果のリユースについても自由にできるというのが、そもそもの理念だったと思います。ところが、いつの間にか入手の部分だけのオープン化ということで議論がわい小化されてしまっていて、どうもそれが別のいろいろな問題を生んでいるように思います。今回の議論の中で私も発言させていただきましたけれども、教育に関する観点の重要性というのはそこに関わってくると思うんです。ですので、この利活用の促進という部分の重要性を、今一度確認させていただければと思います。
【西尾主査】  ありがとうございました。そのことはこちらで対応を考えます。
 そうしましたら、次に非常に大きな問題なのですけれども、海外の動向及び民間の動向を踏まえた戦略的な公開ということに関して、何か御意見とかコメントとかはありますでしょうか。
【相田委員】  すみません。ここに限らず、ほかのところと全部関係することで、あと30分ぐらいしかないので質問を先にしておこうと思います。こういうとにかくものすごい大きなデータベースになりますし、いろいろ幅広になりますよね。海外に公開するとか、いろいろな戦略的なことが関係してくる。そういうものを大学とか研究機関が取り組むべきとか、そういう言葉が次の項目にはありますけれども、大学とか研究機関が取り組むのではなくて、私はやはり国がやるべきというか、でなかったら、どうしようもないと思うんですけれども。問題点の次の項目には大学が取り組むべき内容のような文言が並んでいるので、この段階で戦略的な公開の在り方というのを先に議論するのは少し問題じゃないかと思うんですけれども。
 つまり、大学や研究機関が実施することが想定されていることが分かっていて議論できるようなものじゃないんじゃないかと思うんですが。そもそも国としてやるべきことであって、大学それぞれ、もちろん協力はどこの大学もやることにはなりますが、大方針は国が出すべきものであって、そういうようなところをちゃんと理解した上で、じゃあここの部分は大学がそれぞれとか、研究者がやらなきゃいけないのでみたいな話にはなると思うんですけれども。なので、少し設定の仕方が分かりにくいなと思います。
【西尾主査】  なるほど。国としての大きな方針が出ていない段階で、この委員会でいろいろ議論して深めていくことは良いことではあるが、結局、最後になると大学に負荷等がかかってきてしまう。それはいかがなものかということですね。
【渡邊学術基盤整備室長】  失礼します。資料1の冒頭でも御説明しましたけれども、国として大方針という観点からは、一応内閣府のこの報告書がベースになっているということです。ここで先ほどお話がございましたように、公開と利活用をどう進めるかということが、この方針の主要な部分ということだろうと思います。ここでの御議論は、公開と利活用を、現場と言うと少し語弊がありますが、一番ユーザーのところまで含めてどうすれば進むのかというような、もう少し掘り下げた視点になるのかなということでございます。
 それで戦略、方針が示されないのに大学に求められることばかりというお話ですけれども、例えば今までのオープンアクセスの御議論についても、リポジトリ構築支援とか、あるいは論文の電子化、電子出版みたいな話については、基盤整備という観点で国が進めますということがあります。それに当たっての考え方は、この委員会等で御議論いただいたものをもとに進めますというような流れできておりますので、オープンデータも、ある意味オープンアクセスの流れの一環として考えた場合に、どういうふうな公開の仕方があるのか、これはコミュニティの立場を踏まえた公開の仕方、あるいは実態を踏まえた公開の仕方があるのかといった点が、御議論いただけるのではないかと思っております。それを後押しする支援策、あるいは基盤整備について国がやるべきという、そういう議論の仕分の仕方があるのではないかということで整理させていただいたということでございます。
【西尾主査】  相田先生、いかがでしょうか。
【相田委員】  すみません。多分こういうようなことが必要なのは当然であって、もうやるだけだと思うんです。やるためにはどういうふうに具体的にやればいいかという、そういう段階にもうきていると思うんです。なので、この場でどういうレベルのことを議論することが求められているのか、私が把握していないだけなのかもしれないんですけれども、いろいろな場で多分同じような議論はなされているので、何をどうしなきゃいけないのかを、ほとんどの人は実は分かっているんじゃないですか。そんなことはないんですかね。
【西尾主査】  本委員会の議論は、内閣府の方から報告書、つまり、審議のまとめが出てきましたのを受けて、その報告書では欠けている視点であるとか、文部科学省としてこの問題を扱っていくときに、より深く掘り下げて議論すべき視点があるのではないかとか、そういうことを一旦きっちりと総合的に補ってみることが重要だと考えております。
その上で、具体的にどこかの分野を対象にして、何らかのオープンサイエンスに関するポリシーとかを議論することが必要だと考えています。ある分野に関してのオープンサイエンスに関するポリシーを本委員会から提案できますと、我が国におけるほかの分野での議論における一つの参照例となり、非常に有効になるのではないかと考えます。私はそのように思っていますが、事務局の方ではそれでよろしいですか。
【渡邊学術基盤整備室長】  はい。今おっしゃっていただいたことでお願いできればと思います。
 すみません、少々補足ですが、ここにいきなり海外の動向という大きな話を設定しているために、議論の視点が定まらないのではないかというようなこともあろうかと思いますが、これは具体的に申し上げますと、いろいろな民間出版社の動きが先行している中で、具体的にこの話が進んだ場合には、例えばリポジトリとか公開のルールをどうしましょうかという、ある程度のコンセンサスがないと全体としての議論の方向性も定まってこないということもございまして、まず大きな枠組みで、こういう動きを認識した中で、とるべき方策というのは何が端的には考えられますかというようなことを御議論いただきたいという趣旨でもございましたので、その点は少々補足させていただきます。
【西尾主査】  どうぞ。竹内先生。
【竹内委員】  この点については、海外の動向、民間の動向と書いてありますけれども、次のように考えるべきではないかと思います。今日、学術情報流通を考えた場合に、出版社といっても基本的には日本国外にある民間出版社が学術情報流通の主たる担い手になっているという事実があって、日本の研究者が、日本の公的資金あるいは別の資金を使って行った研究成果をそこに発表して、それを入手するためにさらにまた日本の大学等が購読費を支出してアクセスしているという状況があるわけです。論文については、それがもう当たり前になってしまっているようなところがあるわけですけれども、データに関しても我々はそれと同じスキームを踏襲するのかということが、ここの丸のところに書かれている内容なのではないかと私なりに理解しています。データに関して、日本としては、あるいは日本のアカデミアとしてはどういう立場をとるのかという議論が、この丸の部分では必要で、その後で、具体的に実現していくために各大学等がどういうことをする必要があるのかという議論になるのではないかと考えています。
【西尾主査】  どうも貴重な御意見ありがとうございました。先ほどは、相田先生から大学への負荷等が増えるのではないか、という懸念が述べられました。しかし、本委員会から、我が国としてこうやっていくべきであって、そのためには関連予算が必要なのではないですかというようなことが出てくれば、それについては研究振興局として概算要求をしていくというような方向の議論になっていくのではないか、と私は思っています。
 美馬先生。
【美馬委員】  これは今後の議論だと思いますが、今日はとても大きな動向の御報告、詳細などがありましたが、皆さん分野も立場も違っていると、イメージしているものが微妙にずれているのではないかと思います。今後は、具体的な何か一つの分野、あるいはそういう例を見ながら、これを他の領域にも作っていこうとするとどういうことが起こるのかというのを、事例として話していくことになると思います。その一番最初の段階としては、現在ある程度できている分野があると思うんですね。先ほど言っていた、国際的に共同で研究しているような天文台とか加速器のところとかは、既にデータを互いに出して共有できるよう管理しているので、まずはそういうところで何が起こっているのかというのを理解する。今後膨大で必要になってくる分野であると考えるのは、ライフサイエンスだと思います。それが具体的な実現段階になっていくと、そこでまた更に大きな枠組みとして、分野を超えた共通の枠組みとして何が必要かというのが見えてくるような気がします。以上です。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。ほかに何か御意見等ございますか。
 あとは、竹内先生から御指摘を頂きましたことなどを、しっかりと捉えていくということにしておけば、議論として取り上げていくべきことは大体網羅されていると考えてよろしいですか。
 そうしましたら、次の大学・研究機関のところで、データ公開に関する実施計画等の作成、それからデータ管理体制の構築ということで、1、2のところに関しまして、何か御意見はないでしょうか。3のところは、また別途にさせていただきます。1、2で御意見等ありますでしょうか。
【相田委員】  すみません。このあたりの実施計画とは、先ほどのJSTの先行してやられていることとか、ほとんどそれに含まれていると思ってよろしいんでしょうか。
【西尾主査】  貴重なコメントありがとうございました。おっしゃるとおりです。
【加藤委員】  この報告書そのものが、内閣府の報告書からとっているものでございまして、前段として、公的研究資金における研究の流れの中でのやるべきこと。ファンディングした部分についてはこういうことでやるべきですよというふうに書いておりまして、多分それはその方向で間違いはないと思っておりますが、先ほど申し上げたように、そういった研究資金における研究だけではなく、ほかのものも含めて、あるいは教育に関係するいろいろなデータの共有化も含めて話をするということになりますと、ここの部分は全く別な項目が委員会の中で出てくるのではないかと思っております。多分これは少なくともファンディングしたものに対しては、このくらいのことはやってほしいという提言だと思います。
【西尾主査】  加藤委員、JSTでファンディングしたものに対しては、ここに書かれていることは、もう進行中であると考えてよろしいですか。
【加藤委員】  はい、そういう方向で考えております。
【西尾主査】  はい。どうぞ。
【相田委員】  すみません。つまり、科研費であれ、JSTのいろいろなファンディングであれ、そういうインプットがあったときに、それに対して何らかの作業をしてアウトプットを出したら、それはもうひも付けられているので、このインプットから出てきたアウトプットに関しては、全てここをひも付けるようなことをすべきなのだというふうなことが、これから始まるという意味ですか。
【西尾主査】  それでよろしいですか、事務局。
【渡邊学術基盤整備室長】  はい。ここで整理させていただいていますのは、例えば大学という観点で見たときには、2にございますデータ管理体制ということが、この実線の囲みの記述というのが、内閣府の検討においてこういうことが求められるというようなことがございますので、これは大学の今の現状、あるいはこういった方向性を見たときに、この委員会として、例えばガイドラインを示すといったようなことが考えられるのではないかと。すなわち、ここで議論したことが、例えば管理規則を作ってきちんと知的生産物を管理するという体制を構築する必要があるのではないかという観点での取組という意味合いになってくると思います。それをこの委員会で議論することを大学に示して、こういう取組を求めていくということがこの項目の中にございます。
 それ以外に、先ほど御議論ありましたように、ファンディングエージェンシーに何を求めるかというような議論も並行してございますので、その辺は重なっている項目もありますので少し分かりにくくて恐縮ですが、そこは整理させていただいて、大学に求めるべきこと、あるいはファンディングエージェンシーに求めることは何があるのかということをここでも御確認いただきたいということでございます。
【西尾主査】  先生として、先ほどの御質問とも関連して、もし結び付いていたとしたら何か困るとか、そういうことがおありで、今の御質問をなされたのでしょうか。
【相田委員】  先ほどのお話とも関係してくるんですけれども、公的研究資金の提言にもよるんですけれども、明らかにあるお金でやった研究費で、その結果はこうだというものと、例えば運営費交付金のように、公的資金には違いないものでやったものと、それから私学だって私学助成があるわけですから、そういう意味では全てが公的資金なんだろうと思うんですけれども。そのときに、例えばファンディングの結果のときには、つまり評価の対象になりますよね。その結果を全てこうやってリポジトリなどに登録しなかったら評価されないということになったら、みんな必死になって登録しようとしますよね。
【西尾主査】  そこですよね。分かります。
【相田委員】  だから、そういう道に多分進んでいくことを意図されているのかなというふうに思います。本当にそれが余りにも極端になったら、やり過ぎはどうかなとも思うんですけれども。
【西尾主査】  はい、どうぞ。
【渡邊学術基盤整備室長】  これはオープンアクセスのときの議論の先ほど資料2で御紹介した中にも実はございまして、オープンアクセスのときには、ファンディングされたものに対しての研究成果の公表は義務化をすべきであるということが書かれているわけです。その切り口でいきますと、オープンデータということを考えた場合も、同じ考え方が出てくるということはあると思います。ただし、それはファンディングエージェンシーが助成するに当たっての条件付けなのか、推奨しますということなのか、幾つかの段階もあり得ると思いますので、それはこの委員会でそうすべきだと言い切れるかどうかというのは、御議論のあるところだと思います。
【西尾主査】  今のところが重要なところでして、要は、科研費とかの競争的資金ではなくて、運営費交付金による成果に対して、オープンデータの対象として考えるべきだということに関しては、この委員会としては結構大事なメッセージになると考えます。
 というのは、先生がおっしゃいますように、運営費交付金に関する研究成果までも強制的にデータ登録を行っていくことは、負荷がかかり大変であるという考え方もあります。ただし、もう一方で、日本の学術研究の高度化を図るとか、国際競争力を強化することを考えた際に、我々、大学の研究者として、貴重な国費を使ったものとしての研究成果であるならば、科研費のような競争的な研究費と同じような形でオープンデータ化をしていくべきだと考えます。
【相田委員】  最近倫理との関係で、研究した結果に関する、論文に関するものは5年とか10年とか保存しておかなきゃいけないという議論が一方でありますよね。それとも非常に強くリンクしていると思っていまして。一つの研究室で、教授がいて、研究グループが形成されているときはいいけれども、5年、10年たっていつかは研究室を解散するわけで。そのときに蓄積したものをどうするのかというのは、それぞれの大学にとってとても大変なことだと思うんです。
【西尾主査】  本と一緒ですね。
【相田委員】  そうですね。ですので、この議論はそれの話とかなりオーバーラップすることで、どうやってデータを管理しておくかということにつながる問題だろうと思っているんです。
【西尾主査】  分かりました。頂きました意見については、本日の議論ですぐに結果を出すということではなくて、本委員会で今後議論を深めていく重要な課題として考えるということでいかがでしょうか。
【岡部委員】  1点だけよろしいですか。今、相田先生がおっしゃったことは非常に大事な視点で、大学のデータが、研究していた研究者に結び付いてしまって、かつその所属機関に結び付いていると、その研究者が研究機関を離れた途端、責任が曖昧になると。本当に亡くなられるケースもあるわけですし。例えば、オープンデータだといっていても、論文は、例えば論文出版社に著作権を譲渡して御本人がいなくなってもずっと残るわけですが、データの場合に一体どれが権利になるのかという場合に、遺族の協力が得られなくなってデータが見られなくなってしまうようなことも心配だという話を、実は情報処理学会の方で検討していたこともありまして。そういう意味で、そういうデータについてきちんと研究者が安心して預けられるような制度を、入れ物だけではなくて考えていくことが必要じゃないかと考えております。
【西尾主査】  従来から本委員会でも議論してきました日本の複数箇所にアカデミッククラウドシステムを構築し、全国の大学等の機関をカバーして、研究成果のみならず、教育に関するいろいろなコンテンツも蓄積していけば、相田先生がおっしゃったように、ある研究者がどこかの大学から移られた場合でも、そのデータそのものはどこかのアカデミッククラウドサイトで生きていきます。そういうような観点からの議論も一方で必要だと考えます。つまり、アカデミッククラウドシステムの構築の必要性を強く打ち出し、関連経費の概算要求をしていくというようなストーリーが重要かと思います。
【相田委員】  すみません。つまり、それは一つの大学の単位でやるようなものではなくて、やっぱり日本全体でそういう方針でやるんだというのが必要だと。
【西尾主査】  そうですね。それはやっぱり公的というか、貴重な税金を使って基盤経費が捻出されて、その経費で大学において知が創出されている。それをどう将来に生かすかという議論としては、日本全体に関する議論になると考えます。
 今日は、もともと最後までいくことを想定していませんでした。あとは、データの保存・公開における図書館の役割・機能のことに関して、何か御意見等ございませんでしょうか。その議論をもって、ちょうど1のところの審議を今日終えることができますので。どうぞ。
【竹内委員】  このデータの保存・公開における図書館等の役割ということは、これまでのオープンアクセスにおける図書館の活動から考えれば、そのような意見が出てくるのは当然と考えます。ただ、今すぐ大学図書館にやってくださいといっても、多分できないです。この中にも書かれておりますけれども、必要な人材の育成ということとペアで議論されるべきものであると考えます。
【西尾主査】  先ほど先生がおっしゃったように、有能な方をヘッドハンティングしようとしてもなかなか難しいというところですね。
【逸村委員】  地道にやるしかないと考えます。一部でリサーチ・アドミニストレーターの方とも話をしたことがあるんですが、リサーチ・アドミニストレーターとそういった多少の技術を持った図書館員とセットで動くとか、それは大学によって状況は異なると思うんですけれども、やはりそういうことが重要であるということを唱道していくことが、ここの委員会としては必要ではないかと考えます。
【西尾主査】  ありがとうございます。美濃先生、どうぞ。
【美濃科学官】  ここにライセンスの話が書いてあります。著作権制度というのが書いてあるのは4ページ目の一番下なんですけれども。アカデミックなものというのは、基本的にライセンス料になじむとは私は思っていません。アカデミックなものは原則オープンであって、そこからライセンス料というような話が出てくるというのは少し違和感があります。著作権制度でも、本を書いた人はそれを売りたいというのが商業的著作権の話です。アカデミックな著作権というのは、自分の書いたものが改変されないというところが一番重要な話であって、それがライセンス料と結び付くというのは少し違和感があるところです。
 それとあと、先ほどのアカデミッククラウドシステムではないですけれども、やっぱり研究者個人がデータを保管するというのではなくて、やはり大学が責任を持って保管するという形が必要であって。それができない小さな大学というのは、JSTだとかNIIだとかが助けるというような制度がいいと思うんですね。そのときに気になるのは、例えばJSTのresearchmapでもそうなんですが、国がやるからといってデータを入れろと言われると、大学がやろうとしていることを邪魔することになるんです。このあたりのところを、国と大学で役割分担をする必要があります。大学がやろうとしているのに、また国が大学の教員にデータを入れろというと、先生から見ると両方に入れなければならないという話になるわけです。
 今回は連携しようとして、JSTに御迷惑をおかけして、1回、大学のシステムにデータを入れたらJSTにも入れられますというような形を作ったんですけれども、やはり教員から見て、データを出す場所は1箇所にするべきです。科研費はこっちに出して、ほかは大学に出せというような話になると、ややこしくて仕方がないわけですね。だから、もう少し整理する必要があるんじゃないかという気がしますので、そのあたりの議論もお願いしたいと思います。
【西尾主査】  最後のところは、やっぱりブレークダウンして考えたときに、データ入力する側からの利便性というのがあると思いますけれども、時間の関係で、次回の委員会等において是非議論できればと考えております。
 それでは、今日1番のところまでで時間が来てしまいますが、事務局、本日はここまででよろしいですよね。
【渡邊学術基盤整備室長】  はい。後段の部分は、また次回にお願いしたいと思います。
【西尾主査】  そうしましたら、本日各委員から頂きました貴重な意見をもとに、今後、事務局でオープンアクセスに関わる指針の原案を作っていただきます。特に本日は、1のところだけの議論で終わりましたので、オープンアクセスに関わる指針の原案を作成いただくことにします。2番目のオープンデータに関わる取組の具体化のところの議論が、まだ進んでいませんので、まずファーストステップの原案を作成いただくということになると思います。今後、更に議論を進めていきまして、全体的な指針の原案を作成した上で、その指針のもとでは、ある研究分野における具体的なポリシーはこうなるのではないかというような議論を展開していきたいと思っています。
 その中で、先ほど来のアカデミッククラウドシステムの必要性は、大学における教育のコンテンツであるとか、研究における知というものを、日本全体で蓄積し、公開していくのかという観点からは非常に大事なものです。そのためのプラットフォームシステムを国全体でどのように構築していくのかということに関しては、予算処置を伴うことですし、また、せっかく強化していただきましたSINETをどう生かすかという観点からも、今後重要な課題になってくると思います。
 今日は、様々な貴重なコメント、御意見を頂き、誠にありがとうございました。事務局から連絡等ございましたらお願いいたします。
【松本学術基盤整備室参事官補佐】  本日の委員会の議事録については、各委員に御確認いただいた上で公開させていただきます。
 次回は、6月24日水曜日、午後1時から3時。場所は本日と同じ3F2特別会議室でございます。次回の内容については、先ほど西尾先生からおっしゃっていただいたとおりでございまして、それに加えてオープンデータの事例として、ライフサイエンス分野の方からの御説明と、その課題について検討していくということを予定しております。また、それ以降の予定については資料4のとおり、7月31日、9月11日となっておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【西尾主査】  私としましては、ライフサイエンスの分野を対象として、具体的なポリシーについて考えてみたいと思っております。
 加藤委員、今日は本当に貴重な説明をいただきましてどうもありがとうございました。
 それでは、これで閉会とさせていただきますが、常盤局長、よろしいですか。
【常盤研究振興局長】  結構です。ありがとうございました。
【西尾主査】  本日は、本当にどうもありがとうございました。
── 了 ──

お問合せ先

研究振興局参事官(情報担当)付学術基盤整備室

佐々木、三石
電話番号:03-6734-4080
ファクシミリ番号:03-6734-4077
メールアドレス:jyogaku@mext.go.jp(コピーして利用される際は全角@マークを半角@マークに変えて御利用ください)

(研究振興局参事官(情報担当)付学術基盤整備室)