学術の基本問題に関する特別委員会(第7期)(第11回) 議事録

1.日時

平成26年12月9日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省東館3階講堂

3.議題

  1. 学術政策の推進方策に関する総合的な審議について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
西尾主査、小安主査代理、甲斐委員、佐藤委員、羽入委員、平野委員、伊藤委員、亀山委員、金田委員、鈴村委員、瀧澤委員、武市委員
(科学官)
塩見科学官、高木科学官、中島科学官、山田科学官、米田科学官

文部科学省

常盤研究振興局長、安藤研究振興局審議官、松尾振興企画課長、木村学術機関課長、合田学術研究助成課長、鈴木参事官(情報担当)、佐藤視学官、中野学術企画室長

5.議事録

【西尾主査】  それでは、時間になりましたので、これから第11回の学術の基本問題に関する特別委員会を開催いたしたいと思います。お忙しいところ御参加いただきましてありがとうございます。
 まず、議題に入る前に、文部科学省において異動があったとのことですので、事務局より紹介をお願いいたします。

【中野学術企画室長】  失礼いたします。前回の委員会の後に事務局に異動がございましたので、紹介をさせていただきます。
 11月25日付けで研究振興局担当審議官、また、振興企画課長に異動がございました。研究振興局担当審議官の安藤でございます。

【安藤研究振興局審議官】  安藤でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【中野学術企画室長】  振興企画課長、松尾でございます。

【松尾振興企画課長】  松尾でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。どうかよろしくお願いいたします。
 次に、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【中野学術企画室長】  本日の配付資料でございますが、お手元の議事次第に配付資料一覧がございます。資料1、2、参考資料1、2、3と配付しております。また、資料の一番下になりますけれども、机上配付資料といたしまして、1枚物の羽入先生からの提出資料を配付させていただいております。また、お手元にグレーのファイルで、前回、第10回までの本特別委員会の資料をつづったものを置かせていただいておりますので、適宜御参照いただきたいと思います。
 なお、本日のメインの議題といたしまして、報告書の審議ということでございますが、中間報告につきましては、このファイルの中の附箋を付けている部分に付しておりますので、御参照いただければと思います。
 資料につきまして、欠落等ございましたら、事務局までその都度お申し付けいただければと思います。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。資料等について、特段問題はございませんでしょうか。また、お気付きになりましたらお知らせいただければと思います。
 それでは、審議に移りたいと思います。本日は、最終報告に向けた議論を行う予定ですが、本特別委員会の審議内容にも関係いたします議論が、産業競争力会議、第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会、総合科学技術・イノベーション会議等で行われておりますので、まずこれらの関係会議等の動向について、事務局から簡単に説明いただきます。その後、前回議論いただきました最終報告に向けた論点案に対する御意見を踏まえ、事務局で最終報告案を用意いただいておりますので、その最終報告案について事務局より説明いただき、説明の後に審議の時間とさせていただきます。
 なお、机上配付させていただいておりますが、羽入先生から事前に資料提出がございましたので、事務局からの説明の後、審議の冒頭に羽入先生から資料について御説明いただければと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 それではまず、関係会議等の動向について、参考資料1、2、3として、各関係会議等の資料が配付されております。これらの動向について、事務局より説明いただき、その後、質問等ございましたら御発言いただければと思います。
 では、事務局より説明をお願いいたします。

【中野学術企画室長】  失礼いたします。お手元に参考資料1から3を御用意いただきたいと思います。
 まず、参考資料1でございますが、総合科学技術・イノベーション会議に関係する資料でございます。
 こちらは基本計画専門調査会というものでございまして、1枚おめくりいただきますと、3ページになりますが、28年度から始まる次の第5期の科学技術基本計画の策定のために総合科学技術・イノベーション会議で審議してほしいという諮問が総理より出されておりまして、それを踏まえて、総合科学技術・イノベーション会議の下に基本計画専門調査会というものが設置されたということでございます。
 飛びまして9ページに、その基本計画専門調査会の委員名簿がございまして、総合科学技術・イノベーション会議の有識者議員の先生方のほかに、専門委員としてここに掲げていらっしゃる先生に御参画いただいて、基本計画に向けた審議が始まったということでございます。
 御案内のように、こちらの審議を踏まえて第5期基本計画ということでございますが、それに先立ちまして文部科学省では、科学技術・学術審議会の下に総合政策特別委員会が設置されております。この会議でも何度か御紹介させていただいておりますし、実は本日もこの後、会議が予定されておりますが、文部科学省の中での基本計画に向けた観点はそちらでまとめられます。
 また、それに先立ちまして、この基本問題特別委員会で学術についての考え方をお示しいただいておりまして、5月におまとめいただいた中間報告などを中心に、総合政策特別委員会にインプットしているということでございます。
 ですので、科学技術基本計画に向けて、こちらの御審議が、最終的には総合科学技術・イノベーション会議、基本計画専門調査会にもインプットされ、計画につながっているという運びでございます。
 1枚おめくりいただきますと、11ページに今後の予定というものがございまして、第1回が12月4日にあったわけですけれども、平成27年6月頃に中間的な取りまとめ、そして年内を目途に基本計画専門調査会として答申案を提出し、総合科学技術・イノベーション会議本体で答申決定という予定になっております。
 この第1回につきましては、1ページ目にありますように、これまでの科学技術政策を振り返って、あるいは今後の見通しとあるべき姿について、第5期科学技術基本計画検討に向けた論点についてといったものが資料とともに示されて、御審議がされたと聞いておりますけれども、時間もありませんので、論点についてというところだけざっと御紹介させていただきます。ページで言いますと、35/38、右肩に資料9というところがこの論点についての資料でございます。
 1番から7番まで、「課題達成」型アプローチ、基礎研究力の強化、科学技術イノベーション人材の育成・流動化、研究資金制度の改革、イノベーション・システム改革、社会との関係、戦略的な国際展開ということで、基礎研究面の強化ですとか人材、あるいは新制度改革といった学術分科会にも大変関わりのあるものが論点として挙がっております。
 既に中間報告なども御覧いただいておりますので、研究力の強化と人材というものが一体であるということや、それも含めた全体の話が大学改革とも一体でやらなければならないというところはしっかりインプットされているかと思います。
 以上、参考資料1でございます。
 続きまして、参考資料2を御用意いただきたいと思います。
 こちら、産業競争力会議の下に新陳代謝・イノベーションWGというものが設置されており、10月にその第1回会議がございまして、前回の特別委員会で第1回の資料につきましては御報告をさせていただいたところでございますが、ここで産業競争力と経済成長という観点から大学改革が議論をされているということでございます。
 大きな方向性は、前回お示ししました第1回のワーキンググループで配付された資料でございますが、第3回、11月におきましても、このワーキングの主査からの論点ペーパーが示されておりますので、御確認を頂きたいと思います。今、御確認いただいた資料1というのがそれでございます。
 そこで、第1回のときに申し上げましたとおり、ここで大学改革が議論され、その中で競争的資金との一体改革といったことも議論されておりますけれども、これについて、12月中に文部科学省からの意見を聞く、そして1月ぐらいに方向性、3月ぐらいにまとめといったスケジュール感になっておりまして、それにも関連しまして、本日、参考資料3で国立大学法人の第3期中期目標期間における運営費交付金の改革に向けた検討というものがなされておりますので、こちらにつきましては、高等局の担当官から御説明をさせていただきたいと思います。

【佐藤視学官】  失礼いたします。高等教育局視学官の佐藤と申します。私は教員養成の担当ですが、運営費交付金の方も担当ということで、私の方から御説明をさせていただきます。
 参考資料3に基づいてと思いますが、まず、スケジュールでございますが、御案内のように、国立大学法人は第3期中期目標期間が平成28年度からとなっており、それに向けて運営費交付金の在り方について検討していくということでございまして、これにつきましては、平成27年の年央までに一定の結論を得るということになっています。そういったことで、この検討会を中心に議論をしていくということでございますが、先般、第3回の会議を12月1日に開催いたしまして、そこで、今後議論を進めていく基本的な方向性ということで、論点整理案として資料を提出いたしましたので、それについて御説明させていただければと思っております。これについては、基本的な方向性に沿いながら更に議論を進めていくということでございます。
 それから、あらかじめ申し上げておきますが、この12月1日の検討会の基本的な方向性につきましては、会議で座長預かりというような形になっていますので、今後、委員の御意見も踏まえて、更に修正が加わる可能性があるということをお断り申し上げておきます。
 では、参考資料3でございますが、まず、この検討会におきましてどういったことを検討していくかという検討課題でございますが、これは第1回のときにお配りをした資料でございまして、今回、時間の関係上、詳細は申し上げませんが、ここに示されたような、運営費交付金の配分方法等の仕組み、それから2ページ目でございますが、それを予算配分に反映するための評価等ということで、こういった考えられる論点をお示しして議論を進めてきたところでございます。
 それから、先ほど産業競争力会議の新陳代謝・イノベーションWGの第3回会議の御説明がありましたが、その資料の中にも、運営費交付金の検討会の第2回会議で配られました、年内に方向性を出すに当たって更に議論すべき論点ということでまとめたものもございますので、併せて御参考としていただければと思います。
 3ページ目でございますが、12月1日の検討会でお示しした基本的な方向性、論点整理案でございます。これにつきましては、3ページの下の方でございますが、まず、国立大学につきましては、多様な役割を担っている中で、それぞれの大学が自主的・自律的に改革の取組、あるいは機能強化ということで取組を進めています。そういったいろいろな役割を果たしているという中で、第3期中期目標期間に目指す姿として、赤で囲っていますが、「強み・特色を最大限に生かし、自ら改善・発展する仕組みを構築することにより、持続的な『競争力』を持ち、高い付加価値を生み出す国立大学」を目指していくということで考えているところでございます。
 めくっていただきまして、基本的な考え方というところでございます。まず、運営費交付金は基盤的な経費であるということを前提としつつ、これは第1期からでございますけれども、外部資金の獲得につきましては、それを運営費交付金には反映させない、各大学の増収努力は考慮するという基本的な考え方は維持しつつ、3番目以降のところが第3期に向けて考えているところでございます。
 3番目の丸のところでございますが、まず、機能強化、強み・特色を伸ばしていくという部分を更に後押しをするということで、運営費交付金の一定率につきまして、それを重点支援の方に充てるということでございます。
 それから、4番目のところでございますが、先般、国立大学のガバナンスに関しましても法改正を行ったところでございますが、そういった学長のリーダーシップといったものを予算面で支えていくということで、運営費交付金の中に、学長の裁量により資源再配分を行うような、そういった経費を新たに区分するということでございます。これらによりまして、機能強化の方向性に応じた重点支援を行い、改革の取組を支援しつつ、また、学内においても評価に基づく資源再配分が行われるというような形で取組を更に推進していくということで考えているところでございます。
 下の右隅に3ページと書いているところ、配分の仕組みというところでございます。今回、現在の大学改革促進係数を改めまして、係数A、係数Bと二つの係数を考えているということでございます。係数A、下の図で申しますと黄色の部分でございますが、こちらは機能強化、あるいは政策課題に応じた重点配分というためのいわば財源として、係数Aを考えているということでございます。
 また、係数Bの方につきましては、学長のリーダーシップによる部局の枠を越えた自律的な資源配分を促進するということで、そのための経費ということで考えているところでございます。
 次の4ページと書いているところでございますが、機能強化の方向性に応じた重点支援の仕組みということで、係数Aの部分でございますが、これにつきまして、特に3期中において重点的に取り組んでいくという部分につきまして、3つの予算上の枠組みを設けまして、それに応じて支援を行っていくということでございます。
 国立大学改革プランでは、機能強化の方向性として、世界最高の教育研究の展開拠点、全国的な教育研究拠点、地域活性化の中核的拠点というような形でお示ししているところでございますが、検討会におきましても、なかなかその3つの方向性では収まり切らない部分もあるんではないかという御議論もありましたところで、若干それを変えまして、一つには、地域活性化・特定分野の重点支援を行うということで、地域活性化の中核となりつつ、特定の分野で世界ないし全国的な教育研究を目指していくというところに支援を行っていくもの、それから、特定分野の重点支援ということで、特定の分野で世界ないし全国的な教育研究を目指していくところに支援を行うもの、それから、世界最高水準の教育研究の重点支援ということで、全学的に世界最高水準の教育研究を目指していく、そういったものを支援していく枠組みと、3つの枠組みを用意いたしました。地域活性化・特定分野の重点支援につきましては、改革の取組を行っている大学について、より安定的に取組を進められるように支援をしていく、特定分野の重点支援につきましては、競争的な環境の下、特定分野に応じた研究力強化や人材育成を支援していく、それから、世界最高水準の教育研究の重点支援につきましては、より競争的な環境で、国際的なスタンダードの下で取組を進めていく、それを支援していくというようなことで考えています。
 右に評価指標と書いてございますが、これは飽くまで現在のところでの例示ということで、ここのところにつきましては、これからの議論になろうかと思いますが、各大学に共通のもの、それから、今申し上げた重点支援の枠組みに応じた指標、それから、大学が独自に設ける指標、こういったものを組み合わせて考えていくことになろうかと思っております。
 さらに、これらに加えまして、共通の政策課題等に係る重点支援ということで、水色の「共通の政策課題等」と書いてあるところも引き続き考えていきたいと思っているところでございます。
 この具体的な枠組みにつきましては、様々な議論がございますが、検討会の方でも運営費交付金だけを見るのではなくて、いろいろな状況も見ながら考えていくべきではないか、ということが御意見でございました。例えば競争的資金の検討とか、そういったものが別のところで進められています。そういった状況も踏まえながら、交付金についても検討していく必要があるのではないかということでございます。
 もう一つ、係数Bにつきましては、5ページでございます。こちらにつきましては、学長の裁量による経費として新たな区分を新設いたしまして、学長のビジョンに基づく学内資源再配分の取組、これは必ずしも学部・学科の再編など、そういったものに限られるのではなく、いわゆるヒト、モノ、カネ、スペースの見直し全般が含まれると思いますが、そういったものに対してそれを評価し、支援をしていくというようなことでございます。
 また、これによりまして、学長がリーダーシップを発揮しながら、教育研究組織や学内資源配分等の見直しを不断に行うような仕組みをビルトインしていく、これは検討課題で掲げられたものでございますが、こういった仕組みをビルトインしていってはどうかと考えているところでございます。
 また、この係数Bについては、3期中に段階的に引き上げていくこともあり得るのではないかということで考えております。
 いずれにいたしましても、基本的なルールにつきましては、今後更に検討していくことになろうかと思います。
 最後に、6ページのところでございますが、評価と配分への反映の方法ということでございまして、先ほどの係数A、機能強化の方向性に応じた重点支援につきましては、年度ごとにその進捗状況でございますとか、そういったものも含めて評価をしながら反映させていくことを考えております。また、学長の裁量の係数Bの部分につきましては、なかなか年度ごとに評価というのも難しい面もあろうかと思っております。6年間、中期目標期間全体を通じて取組を進めていく中で、2、3年ぐらいでの中間評価といったものを経た上で、6年全体を通して評価をしていく必要があるのではないかと考えております。
 いずれにいたしましても、この基本的な方向性に沿いながら、1月以降も引き続き議論を進めていくということでございます。
 ただし、先ほど御説明がありましたけれども、年内に、産業競争力会議のワーキンググループの方に報告をするということになっておりますので、これをベースといたしまして、運営費交付金については御報告を申し上げることになろうかと考えているところでございます。
 以上でございます。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、今、事務局より説明いただいた件につきまして、御質問等ございましたらお願いいたします。
 どうぞ。

【小安主査代理】  先ほどの参考資料2の産業競争力会議 新陳代謝・イノベーションWGの5ページのところで、特定研究大学と卓越大学院ということが書かれておりますが、これはどういう使い分けをしているのかというのがよく分かりません。これは、どう解釈なされているのか、教えていただけませんか。

【佐藤視学官】  こちらにつきましては、産業競争力会議の方でお示しされたものでございますが、特に研究大学の支援ということで、グローバルに競争する世界水準の研究大学、あるいは、卓越して教育研究を行う大学院について更に支援を行っていくという枠組みとしてこういったものが考えられるのではないかということで、御提案といいますか、お示しをされているということでございまして、これにつきましては、それぞれ今どういったものが考えられるかということで、私どもといたしましても検討を行っているところでございます。

【小安主査代理】  必ずしも同じものじゃなくて、別のプログラムを考えているという、そんなイメージでしょうか。

【佐藤視学官】  そうですね。特定研究大学の方は、大学としてそういった枠組みというか、そういったものが考えられないかということでございます。
 卓越大学院の方は、どちらかというと、分野において、大学院や研究機関等々も含めて、そういった枠組みとして考えられるのではないかということで示されているというふうに理解しております。

【西尾主査】  どうぞ。

【中野学術企画室長】  ちょっと事務的な補足ですけれども、本日、参考資料2について、すいません、ちょっと説明を省略しましたが、グレーのファイル、前回の第10回のインデックスの中ほどですが、参考資料2といたしまして、同じワーキンググループの第1回の資料がございます。第10回に参考資料2というのがありまして、その3ページからが、一番ベースになります、第1回で示されたワーキングの主査の論点ということで、その中の4ページの中ほどに、論点1、グローバルに競争する世界水準の研究大学の形成というのがございます。この1段落目に入っておりますのが、世界と互角にうんぬんということで、世界水準の研究大学を特定研究大学として特定すべきではないかということになっております。また、1段落飛ばしまして3段落目の方に卓越大学院というのが出てきまして、特定研究大学を中心としてとは書いておりますけれども、それに限るものではなく、卓越した博士課程コースということで書かれてございます。

【小安主査代理】  分かりました。そうすると、今日頂いた資料で見ると、幾つか言いたいことがあります。参考資料1の19ページに、かなりきちんと、大学が運営費交付金の削減とそれによって非常に資金確保が難しくなるというようなことが記載されており、先ほど御紹介のあった36ページでは、大学が研究開発法人に対する運営費交付金と競争性のある研究資金との望ましい関係と、デュアルサポートをどう考えていくかという論点はあぶり出されていると思います。それがどういう方向に向くかということが多分一番大事なことであって、そうやって見て、最後の運営費交付金の見直しの部分を見ると、非常に細かく評価ということをやることになっています。これ、トータルとして、運営費交付金が毎年減り続けるということが変わらないのかどうかという点が、この資料を読んでもよく分からないのです。結局のところ、最終的に重点配分を続けていって、大学全体の体力もどんどんどんどん落ちていく方向に行くのでしょうか。それから、最後を見ると、毎年評価すると言っているのですけども、この毎年の評価がどれだけ今、教員の時間、いわば資源の無駄遣いになっているかという議論がさんざんここでもあったと思います。そういうことに関して、どういうふうに対処していくかという観点が余り入っていない気がするのですが、そこはどうなっているのか教えてください。

【佐藤視学官】  ありがとうございます。まず、交付金全体のいわば総額につきましては、予算折衝といいますか、そういったことも含めての議論であろうかと思っております。
 そういった意味で、今回の検討会におきましては、まず前提として、総額をどうするかは別として、どういう配分を行うかという配分ルールについて検討しているということでございますので、検討会として初めに、増えるとか減るとか、そういったもので議論をしているところではまずはないということでございます。
 また、先ほどの評価の問題につきましては、やはり御指摘のような点があろうかと思います。今回の議論の中でも、まだ具体的な部分を議論できていないものですから、なかなかイメージがわきにくいところがあろうかと思いますが、先ほど申し上げました5ページのところですが、こういった客観的な評価指標に基づいて、その進捗状況を見ていくということが考えられるのではないか、そのための評価指標につきましては、各大学の方でお考えいただいて、我が大学としてはこういった方向性でいくということから評価指標を選択といいますか、組み合わせていただいて、それに基づいて、いわば進捗管理と申しますか、そういったことを行いながら取組を進めていくというようなイメージで考えているところでございます。

【西尾主査】  今の御質問と重ねてなのですが、参考資料3の4ページの3つ目の丸なのですけれど、「運営費交付金の一定率を削減し」と書いてあるのですが、これは1.3%の効率化係数で削減した上に、更に運営費交付金の一定率を削減するということが前提なのですか。

【佐藤視学官】  実は、検討会でも同様の議論があったところでございまして、ちょっとこれは誤解を生む表現だったのかなと思っておりますが、再配分といいますか、重点支援を行うためのものとして、この一定率の係数を掛けるということでございます。飽くまで全体の額を、一定率削減していくというような意味合いのものではないということでございますので、御理解いただければと思います。

【甲斐委員】  今のお答えなんですけど、それは4ページの下の段、A大学の例の黄色いところに、小さく「ルールとして一旦削減」とありますよね。つまり、係数Aをとるために、全体から一律、1回削減して、それぞれの機能強化の方向性を審議して少し戻すと。ということは、これ100%戻るわけではない大学がいっぱい出るということですよね。そうすると、かなりの削減。
 だから、これは大学側にとっては結構大きな決定なので、そういう意味ではございません、ではなくて、一旦削減ですよね。そうすると、これは大きな変更だと思うんですけど、それは一旦削減してしまうということで決まっていくんでしょうか。

【佐藤視学官】  そういう意味で申し上げますと削減ということになりますが、先ほど申し上げたように、全体の額は別として、ルールとしてどう配分を考えるかということでございますので、右のところに、ちょっと見にくいんですが、緑の点線で上下の矢印が付いたところがあろうかと思いますが、各大学にとっては、その評価に基づいて、メリハリといいますか、そういったものが生じてくるということになろうかと思っております。

【甲斐委員】  すいません、そのメリハリというのは、上がる大学もあるけれど、下がる大学もあるということですよね。

【佐藤視学官】  はい。

【伊藤委員】  よろしいですか。

【西尾主査】  どうぞ。

【伊藤委員】  聞かせていただきたいと思うんですが、この削減は、1年1年同率だとは一つも書いてありませんね。確認です。

【佐藤視学官】  具体的な数字はこれからだと思っておりますが、私どもとしてイメージしているのは、係数Aの方は毎年一定率といったものをイメージしております。係数Bの方については、先ほど申し上げましたように、段階的に引き上げていくこともあり得るのではないかと思っているところでございます。

【伊藤委員】  分かりました。どうもありがとうございます。ということは、相当、深掘りがあるというふうに考えておいた方がよろしいですね。そういうふうに考えたいと思います。

【西尾主査】  平野先生、どうぞ。

【平野委員】  今御質問があったところに関わるところですが、そこが私も心配なところです。もしこういう形がずっと進んでいきますと、私は以前から学術分科会等でもお話ししたと思うんですが、大変心配なのは、最近もう既に起こっているような、地方の大学において、せっかくぴかぴかと光る研究者グループがありながら、大学として取り上げようがなくなって、研究グループへの支援が切れてくるということです。私は、日本の国においては大変憂慮すべき状況だと心配して発言も続けているんですが、残念ながら、各大学の方針となっていますから、大学の方針に逆らえませんが、それは大学ごととはいえ、是非、拠点的になるような大学においては、きちっとどこかと連携をとりながら動いてくださいとお願いしたく思います。やはりきちっと連携経費なりで補助、支援をしないと、小グループで輝いていてもそのうちに全部潰れると思うんです。
 残念ながら、このような支援については、総合科学技術・イノベーションのところでも何も書いていない。国はどう思っているのかなというのが心配であります。
 以上。

【西尾主査】  鈴村先生、どうぞ。

【鈴村委員】  平野先生の論点とも多少重複しますが、全体として非常に気掛かりな点を1点だけお尋ねします。
 学長のリーダーシップや学長の裁量を切り札に、方向付けを作りやすい大学改革の仕組みを設計して、遅々とした大学改革の促進を意図しておられるように思います。大学改革の必要性は我々も強調してきたところであり、多くの学長が卓越した見識とリーダーシップの持ち主であることにも異論はありません。とはいえ、学術の幾つかの分野では、非常に優れた先駆的な研究であっても所属機関では光が当たらず、細々とした資金面での助成しか得られないままに、意志強固な研究者の高い志に根差した頑張りによって長期的には卓越した研究成果が世界的な認知に結び付いた例が少なくありません。選択と集中に導く学術体制に傾斜を強める政策の影の側面として、長期的な学術の知の飛躍の芽を摘み取ることがあってはならないと思います。この観点に立てば、運営費交付金のようなささやかな助成であれ、当該機関の主流に位置しない研究に対しても、最低限の下支え措置が保障されていることが、学術振興の健全な仕組みの必要条件であると思います。こうした観点をどのように考えられるのか、伺いたいと思います。

【西尾主査】  羽入先生、必ずコメントがおありだと思っていましたので。

【羽入委員】  ここでの議論のテーマではないのではないかというふうに思って、今、参考資料という位置付けで伺っておりましたので、特にお話しするつもりはなかったんですけれども、今、委員の方々がおっしゃったとおり、これでは大学が立ち行かなくなる状況を明らかに示している。これは別の場で私は随分申し上げてまいりましたけれども、そういう状況にあるということだけは認識していただきたいというふうに思います。

【西尾主査】  亀山先生、どうぞ。
 時間が超過しておりますけど、重要な問題ですので、是非御意見を頂ければと思います。

【亀山委員】  学長の裁量による経費配分、経費の配分が学長のリーダーシップにかかっているということですが、実際、それぞれの大学の集団の中では、自制というものがおのずから働くんですね。逆に、学長の裁量ということをしっかり言わないと、本当に大学は組織として前に進まなくなっているという現実がある。ですから、大学全体としてバランス感覚がある、そうした共通理解の中での学長の裁量ということが言われているという認識も持った方がいいと思うんです。学長の裁量というと、すぐに独裁だ、ディクテイターシップだという批判が出てきますが、そういう見方は極めて観念的です。どこの大学であっても、学長の裁量というものがある種のバランス感覚の中で実現されているという事実があることは認識した方がいいと思います。

【西尾主査】  鈴村先生、どうぞ。

【鈴村委員】  補足的な発言です。亀山先生の御発言の主旨は十分承知していますが、それでもなお、強い意志を持ってあえて非主流の研究にまい進する優れた研究者に対して、最低限の研究基盤を提供する枠組みを堅持する必要性は、どのように強調しても足りないほどだと私は申し上げたかったのです。

【小安主査代理】  それでいうと、資料3の4ページの配分の仕組みの中で、係数Aが、「機能強化や政策課題に応じた」と書いてありますが、大学の中に政策課題に応じた動きなどというものを入れるのは、自殺行為ではないかと思っています。具体的にはどういうことを言いたいのか教えてください。

【佐藤視学官】  ありがとうございます。御指摘も踏まえて、また今後の議論にもつなげていきたいと思いますが、まず、全体の額の点につきましては、やはり基盤的な経費ということで、私ども最大限の努力をしていきたいというふうには思っているところでございます。
 その上で、今回お示ししたものにつきましては、一定率の部分につきまして、重点支援を行っていくための仕組みということで考えているところでございます。もちろん、大学は多様な役割を担っているという中で、3期中に特にこの重点支援により伸ばしていく部分について考えていくということでございます。
 また、例えば3割を配分に回すというような案も別途出ていますけれども、それはなかなか難しいのではないか、とりにくいのではないかと考えております。その中で、この枠組みにおいてどういった重点支援の在り方が考えられるのかということで検討を進めているところでございます。
 それから、先ほど御質問のございました政策課題の部分でございますが、こちらは説明がちょっと足りなかったかもしれませんけれども、ここで考えておりますのは、先ほど4ページでお示ししました3つの予算上の枠組みには限らない、共通の大学全体として進めなければいけないというような、具体例を申し上げると議論に枠をはめるようで難しいところがあるんですが、この機能強化の方向性に関わらず進めていく必要があるのではないかというものがあった場合、それを支援していくということで考えているものでございます。
 それから、ここでは交付金の議論を行っているわけでございますが、先ほど御質問のありました特定研究大学、あるいは卓越大学院といったものは、これから検討していくところでまだ具体的にお示しできていないのですが、例えば分野によって飛び出ている部分といいますか、そういったものについては、この交付金の支援の枠組みとは別に、例えば卓越大学院として支援をしていくとか、そういったことも考え得るのではないかと思っているところでございます。

【西尾主査】  金田先生、どうぞ。

【金田委員】  先ほどから話が既に出ているんですが、私も類似の疑問を持っているんですが、もう一度改めて申し上げておきたいんですが、参考資料3の6ページのところに、要するに、毎年評価をして、それで予算に反映するようなシステムを考えていますよね。これは既に疲弊している研究システムを崩壊させる議論というふうに受けとめているんですが、これは本当に、何かすぐ役に立つように見えて、結局みんな潰すということだけになると思うんです。そこが非常に気になります。それをちょっとうまく言えないんですけれども、申し上げておきたいと思います。

【西尾主査】  時間が来てしまっておりますので、特段、更なる質問などはよろしいですか。これまでに頂きました御意見は、学術研究の重要さを守るという観点からも貴重な御意見だと思います。
 鈴村委員がおっしゃっていただきましたように、今回のノーベル物理学賞の青色LEDにしても、もともとは当たり校費、つまり、研究室の基盤経費から出発しているもので、そのような経費がきっちり担保されていない限りにおいて、日本の科学技術イノベーションにもつながっていかないと思います。是非とも本日出ました意見を深くお考えいただければと思います。何とぞよろしくお願いいたします。

【佐藤視学官】  いろいろと大変貴重な御意見を頂きましてありがとうございました。検討会では引き続き1月以降も議論を進めていくことになります。今後の検討につなげていけましたらと思っているところでございます。
 今日はありがとうございます。

【西尾主査】  それでは、次の議題に移らせていただきます。最終報告案についてということで、まず、最終報告案について事務局から説明いただきたいと思います。説明の後に審議の時間とさせていただきます。
 それでは、資料1について、事務局より説明をお願いいたします。

【中野学術企画室長】  失礼いたします。配付資料1といたしまして、最終報告の案をお示ししております。これは、前回までの審議でもありましたように、5月におまとめいただきました中間報告でかなり踏み込んだことまで言っていただいておりましたので、その骨組みを基本にしつつ、これまでのヒアリング、あるいは委員会の外での御意見なども踏まえて、補強すべきところは補強するというようなことで前回御審議いただいたことと承知しております。それを踏まえて文案にしたものでございます。
 事前送付が大変遅くなりまして、大変申し訳ございませんでした。昨日の朝お送りさせていただいたものと、若干の微修正はありますけれど、ほぼ同じものでございます。
 なお、中間報告からの見え消しという形でお示ししておりますけれども、中間報告自体はグレーのファイルの附箋の部分でございますので、必要に応じて御覧いただきたいと思います。
 まず、目次を御覧いただきたいと思いますけれども、中間報告の構成のおさらいを先にさせていただきたいと思います。従来、1から5ということで、今回、6を追加しておりますけれども、まず1番目に、失われる日本の強み-危機に立つ我が国の学術研究-ということで、学術研究が現在、非常に危機的な状況に立って、それは日本の強みの喪失にもつながるという危機感を示している部分が第1章。そして第2章として、持続可能なイノベーションの源泉としての学術研究について論じ、3章で社会における学術研究の様々な役割について整理いただき、4章で我が国の学術研究の現状と直面する課題、そして最後に第5章で、そういった課題を克服して、学術研究が社会における役割を十分に果たすためにとして、改革のための基本的な考え方と具体的な取組の方向性を示したという構成でございます。
 順次、1ページの第1章から御説明させていただきたいと思います。
 まず第1章、失われる日本の強みのところでございますが、ここにつきましては、中間報告では、日本においては学術研究により生み出される知恵や人材が強みであり、近年の様々な課題先進国という状況を踏まえますと、ますますその役割が重要になっている。にもかかわらず、近年の学術の現場は疲弊しているという中で、立て直さなければいけないということを書いていた部分でございます。これまでの御意見の中で、どちらかというと、外的な要因に基づく危機ということに加えて、学術研究自体に内在する部分で、学術研究自体が変化しているという中でどういう改革をしなきゃいけないのかという視点を補強すべきだというような御議論があったかと存じます。それを踏まえまして、1ページの下から2番目の丸の赤い部分、また、3ページ辺りにも補強しております。
 まず1ページですけれども、このような社会的な課題の後に位置付けて、「一方」ということで、「現在の研究の最前線では、測定、分析、計算技術の進展等により自然現象や社会現象に関する認識の範囲が急速に拡大しており、情報量の増加、計算科学の飛躍的進歩による情報処理速度の加速、交通・通信ネットワークの進展による伝ぱ・共有の高速化などを背景に、学術研究自体が急速に拡大し、その有様が変化している。生命科学、材料科学など広範な領域で新たな学際的・分野融合的領域が展開するなど、知のフロンティアが急速に拡大するとともに、新たな原理の探求や領域の創出に向けたし烈な国際競争が行われている」ということを記載しております。
 また、それを踏まえまして、3ページでございますが、その前のところで少し、現在の我が国の状況を言ったところですけれども、「現に」ということで、「我が国は、ノーベル賞受賞にも見られるように、化学合成、物性研究、素粒子論などの領域で国際的に存在感を示す研究が継続的に行われているが、その一方で、例えば、国際的に注目されている研究領域への我が国の参画割合が低下傾向にあるなど、国際優位性に陰りが見えている」ということで、この委員会でも御紹介いただきましたサイエンスマップでもその様子が見えているということを例示として挙げております。
 続きまして、第2章、持続可能なイノベーションの源泉としての学術研究。ここは中間報告でもかなり御議論いただきまして、イノベーションの本来的意味、すなわち学術研究による知的・文化的価値の創造の革新があって、それらが社会的・公共的価値につながっていくというところの確認をし、そういった本来的意味にもかかわらず、ともすると、かなり狭い意味でイノベーションという言葉が使われている。そこを本来的意味に返って、持続可能なイノベーションの源泉としての学術研究という視点で振興が必要だといったことが書かれている部分でございます。
 ここでは、今回赤字で示しておりますのは、そういったイノベーションにとって学術が源泉だということは、いわば第4期にも言われていることでございますけれども、イノベーション自体が少し変化しているという、今期特有の視点も入れるべきではないかということで補強をしております。具体的には、4ページのイノベーションの構造の変化というところでございますが、「1.で述べたような知のフロンティアの拡大により、研究の最前線では質の高い知が次々に生み出されており、何が新たな価値につながるのかの予測が困難となっている。迅速な価値創出が求められる今日、基礎研究、応用研究、製品開発と直線的に進展する古典的なリニアモデルのイノベーションは機能しにくくなっている。このため、いわゆる自前主義から、組織内外の知識や技術を活用するオープンイノベーションへの転換が進むとともに、イノベーション創出に向けた研究開発も、基礎研究、応用研究、製品開発が相互に作用しながらスパイラル的に進展していくなど、イノベーション自体の構造が変化している。こうした中で、基礎研究を中心として、イノベーションにおける学術研究の意義は、結果として大きなものとなりつつある」といった項目を追加しております。
 次の、イノベーションをめぐる議論への危惧のところでございますが、こちらはちょっと違う視点ですけれども、イノベーションということについて、本来、不確実性の高い課題に多様な方法等で挑戦するなどから生まれるものであると。にもかかわらず、現在の投資の状況を見ると、選択と集中の観点で行われがちであるということも危惧の一つとして追加をしております。
 それから、3ぽつ目のところは、今の構造変化のところに書きましたオープンイノベーションをちらりとだけ書いている部分ですので、いわば上に移しているということでございます。
 一番下の丸ですけれども、イノベーションにおける学術研究の役割について論じたところですが、「イノベーションにつながる卓越した知の重要な基盤となるのは、学理に関する深い理解に基づく合理的なアプローチ、あるいは新たな学理の探究そのものである」といったことを記載した上で、5ページの一つ目の丸で、「学術研究は、それが基礎的であればあるほど成果を得ることには困難を伴う。研究者には、地道な取組が求められ、深い知的好奇心や自発的な研究態度が不可欠となる」。さらに、人材育成という観点からも、「様々な立場でイノベーションの創出を担う人材は、自ら課題を発見したり未知のものに挑戦したりする態度を備えている必要があり、これらは大学における教育研究活動を通じてかん養されるものである」と入れております。学術研究の特性的なものは、後の章でも出てきますけれども、イノベーションを論じているところで、いかにイノベーションのために学術研究が大切かといったところでも記載しておいた方が良いのではという御意見を頂きましたので、ここで記載をしております。
 それから、次の丸でございますが、読み上げますと、「また、イノベーションの構造が変わる中で学術研究がその源泉としての意義を高めているとはいえ、学術研究の特性に鑑み、公共財としての学術研究に対する社会の理解と公的な支援は不可欠である」ということから、従来ありました、社会にしっかり成果を開いていくというようなことにつなげておりますが、ここは学術研究が重要だということを主張する一方で、学術研究の方もしっかり役割を果たすんだということをバランスをとって追記したところでございます。
 最後の丸のところも少し補強をするということで、「社会的・学問的意義を社会に説明する」と、これは産業界の方からも、非常に複数の方からこの視点は言われておりますので、別のところにも書いてありますけれども、ここでも改めて記載をするということでございます。
 それから、第3章の社会における学術研究の様々な役割でございますが、ここは学術研究の特性、6ページ以下に学術研究の役割として4点まとめたところを、更に国力の源としての学術研究という位置付けをし、その国力の源となるために挑戦性、総合性、融合性、国際性が必要だというようなところを書いているところでございます。
 まず、修正部分ですけれども、6ページの真ん中ほどでございますが、ここは学術研究の特性として計画どおりにいかないとか、セレンディピティーみたいなところ、失敗とされるものがあるということが書いてあるところでございますが、ブレークスルーが生まれることがあるとだけ書かれておりますと、いわば偶然みたいな印象があるという御指摘もありまして、そのブレークスルーの基盤として、「知への熱望と学理に関する深い理解に裏打ちされた知的試行」というのがあるということを明記したところでございます。
 それから、7ページでございますが、学術研究の役割、4つに整理した役割のところでございます。その最後の4つ目のところは、国際社会貢献を書いているところでございますが、ヒアリング等でも、地域の視点ということが少しこの中間報告では抜けていたのではないかという御指摘を踏まえまして、「また」として、「地域社会・経済を活性化する多様な人材の育成・供給及び、地域企業との連携による革新的技術の創造等により地域再生に貢献」ということを追記しております。
 それから、その後、何か所か「独創的」というところが出てくるんですけれども、学術研究に独創性というのがキーワードだということは、これまでも前提だったと思うんですが、そこの独創性のワードを少し出すために、創造性といった部分との用語の統一をさせていただいて、独創性というところが何か所か出てきております。
 それから、8ページの下から、4章の我が国の学術研究の現状と直面する課題のところでございますが、ここは9ページ以下、これまで我が国の強みを形成してきた学術研究、一方で、9ページの下のところは、厳しい見方もあり、その背景の課題があるといったところでございます。
 厳しい見方のところで、10ページで、様々な厳しい見方、厳しい指摘が外からあるというところで、これらの指摘等の中には、必ずしも学術研究についての正しい現状認識に基づいて言えないものがあり、それらを説明していくべきだというところですが、これは外の先生からですけれども、本文のところに科研費、研究費部会等でエビデンスを示していただいたことを書いておりましたが、学術とかこうでというのはちょっとくどいという御指摘がありましたので、注釈に落としております。ここはちょっと御議論いただければと思います。
 それから、最後、消している部分ですけれども、大学ランキングについてちょっと御意見を頂きまして、今ここで、厳しい見方のところに入っていたんですけれども、重要なことということで、第5章の取組のところに移動をさせております。
 それから、次の丸のところは、不正とか倫理のところですけれども、中間報告後のガイドラインも踏まえて追記をしております。
 それから、12ページからが、第5章学術研究が社会における役割を十分に発揮するためにということですけれども、改革のための基本的な考え方では、二つ目の丸に、これも補強というぐらいですけれども、人材育成、人材を作る人を、シニア研究者も含めて、そういう人も育てていかなきゃいけないという御指摘を頂きましたので、シニア研究者の部分での少し補強をしております。
 それから、13ページ、具体的な取組の方向性ですけれども、最初のデュアルサポートシステムの再構築につきましては、5月に再構築ということで報告書に出していただいた後、科研費について8月におまとめいただいた報告の際には、デュアルサポートシステムの現状として、もうかなり機能していないということから、現状からというよりは新しくちゃんと生まれ変わらなければいけないというか、そういった御指摘から「再構築」という言葉を「再生」ということに8月の報告書でしていただいておりましたので、こちらもそれに合わせて再生として修正をしております。
 それから、13ページの下の丸が基盤的経費のところでございますが、大学が基盤的経費を戦略的に配分する、例示として挙げているところで、卓越した大学院の課程の形成というのを挙げていたんですけれども、こちらは先ほど御紹介のありました、産業競争力会議ですとか、あるいは中教審の大学院部会でも議論が進んでおりまして、これは必ずしも基盤的経費のところというよりは、大学院としてしっかり別のところに書いた方がいいのではということで、後ろの人材育成の辺りに移動をさせております。
 それから、あとちょっと細かいですけれども、注釈の12というのを示しておりまして、これは例示として挙げているので、言わずもがなではあるのですが、例示として挙げますと、どこの大学もこれというふうになってしまってもいけないということで、飽くまで例示であり、具体的な取組は各大学において自ら定めていくものであるという注釈12を付けております。
 それから、次の丸は科研費のところでございますが、5月の報告の後、研究費部会を中心にかなり議論が進んでおりますので、15ページ以下、研究費部会あるいは学術分科会の8月の報告を踏まえて、修正をしているところでございます。具体的には、科研費改革に当たってはということで、ここに掲げている4つの不易の部分を堅持しつつ、改革すべきところは改革するということで、5点ほど8月の報告書を踏まえて書いております。
 そういった改革を進めることが必要ということで16ページ、最後には今後、研究費部会の下に設置する作業部会において、具体的な改革案、工程を検討するということを書いております。
 それから、次の項目の若手研究者の育成・活躍促進のところでございますが、17ページは、この丸が若手を自立した研究者としてしっかり支えていくというところを書いているところですけれども、学術分科会ではございませんが、人材委員会での議論を踏まえまして、追記をしております。例えば、競争的資金による任期付き雇用と、任期終了後の基盤的経費や間接経費による雇用を柔軟に組み合わせることにより、一定の育成効果の得られる期間、安定的に雇用する仕組みなどを検討すべきといったことが人材委員会の報告書を踏まえたものでございます。
 それから、17ページの下で大きく消しておりますのは、項目としては残っているんですけれども、18ページ中ほどに大学院の話を入れたことにも伴いまして、記述の順番を整理して、18ページに移動をしております。ここはポスドクですとか、大学院の学生の支援といったことを書いているところでございまして、移動とともに、細かいですけれども、基本計画に掲げる博士課程2割程度が生活費相当額を受給できるようにという目標の早期達成ということも補強して書いております。
 次の丸が、先ほど申し上げた大学院部会との審議状況を踏まえて、移動して少し修正している部分ですけれども、学術研究の推進と優れた研究者の養成の両方を担う優れた大学院において、世界最高水準の教育研究環境を整備していくことも重要である。基盤的経費の配分に当たって配慮すべき事項として先に掲げたことも踏まえつつ、世界で勝てる分野として、これまで強みのある分野のみならず、文理融合による新たな知の創造やロボット、人工知能、ビッグデータ等の融合分野など、これまでの我が国に存在しない分野なども対象に、国内外の優秀な若手研究者や大学院生等が交流・集結できる人材交流・共同研究のハブとなるような世界最高水準の卓越した大学院の形成を進めることが必要であるとしております。
 その次の項目ですが、中間報告のときには多様な人材の活躍促進ということで、女性研究者のことと海外人材のことを書いていた部分でございますが、これは女性研究者ということで、項目としては独立させまして、整理をしているところでございます。なお、細かい修正につきましても、人材委員会の議論を踏まえたものでございます。
 その次の項目ですけれども、人材の関係で、いわゆる研究支援人材の部分が少し落ちていたのではないか。かつ人材委員会の方でも議論が進んでおりますので、そこを追記しております。人材委員会の方で、支援人材というよりも、もう少しポジティブに推進人材にした方がいいんじゃないかという御議論があったということで、少しまだ耳慣れないんですけれども、研究推進に係る人材の充実・育成ということにしております。
 19ページ、次のところですけれども、国際的な学術研究ネットワーク活動の促進というのは、新たに項目としております。従来、海外人材ということで書いていた部分に加えまして、ヒアリング等でも御意見のあったことも踏まえて、国際として少し項目として整理をしております。具体的には、一つ目の丸は人材の中心のところですが、二つ目の丸、また、我が国は、国際共著論文に見る国際比較において、諸外国に比して国際ネットワークへの参加が遅れている。研究者の国際ネットワークの構築に当たっては、個々の研究者が実際に海外の大学等において研究を行うことで人脈を広げ、帰国後も交流を継続することが必要である。このような個人ベースでの取組に加え、大学等機関による海外トップクラスの研究グループとの組織的なネットワーク形成の取組も併せて行っていくことが必要である。例えば、地球規模の課題解決に向けて、共同研究を行うための国際協力による拠点を相手国に設置することにより、国際頭脳循環のハブ機能を発揮し、我が国の「顔が見える」持続的な協力形態により研究の深化、発展を目指す仕組みが求められる。ここは国際委員会の議論も踏まえた記載でございます。
 それから、「さらに」というところですけれども、これはヒアリングの際にも御指摘があった点ですが、様々な国際的な動きに、日本の学術界もより積極的に参加し、国際社会へ発信・貢献していくことが期待されているということ。加えて、グループ・リサーチ・カウンシル等各国の学術研究振興機関間の交流や連携を活用した国際共同研究事業、海外ネットワーク化形成の促進も有効である。そして、ここのところでランキングの話を持ってきております。
 次の共同利用・共同研究の充実等の項目でございますが、これは具体的な中身は、研究環境基盤部会で現在御審議を頂いているところでございますが、まだまさに審議中ということでございまして、中身については、今日基盤部会部会長の濵口先生欠席でいらっしゃいますが、部会の審議を踏まえて、今後修正をさせていただければと思います。
 ただ、1点だけ、21ページのところですけれども、いわゆる大学共同利用機関ですとか、共同利用・共同研究拠点で行われている共同利用だけではなく、それ以外の部分についても、施設、設備等の有効活用が必要だということを、多くの方から、前から言われていることですけれども、今回の中間報告に関するヒアリング等でも御指摘を頂いているところでございます。その点を1点、ここに追記をしてございます。
 次、情報基盤のところは、特に変えておりませんが、21ページの一番下、人文学・社会科学の振興、ここが中間報告にはなかった項目として、追記すべきだという御意見があったところですので、ここは本日御審議を頂ければと思います。人文・社会科学の振興といたしまして、一つ目の丸は、人文学・社会科学の意義といったことを書いている部分でございます。
 1段落目でその意義を述べ、2段落目、グローバル化の一層の加速に伴ってといった辺りは、現在の人文学・社会科学の役割が従来以上に重要性を増しつつあるということを書いた部分でございます。それから、3段落目は、イノベーションとの関係、この報告書全体でもイノベーションということを書いておりますので、イノベーションとの関係でございますが、読み上げますと、また、人文学・社会科学には、新たなものの見方や制度的仕組みの設計と提案により、社会の変革の源泉となるというイノベーションにおける、人文学・社会科学固有の役割に加えて、自然科学の研究成果が生み出すイノベーションを社会的に受容可能なものとする役割も期待されている。なぜならば、人文学・社会科学の学術の知によって的確に補完されない限り、先端的な自然科学の学術の知であっても、人間社会の福祉の改善に寄与することは、必ずしも保証されないからである。個々人によって発想され創出される新たな知が統合されて社会を形成し、その社会的土壌を基盤にして初めて持続的なイノベーションが可能なのであり、そのために人文学・社会科学そして自然科学が総体として熟成し続ける必要があるとしております。
 それから、次の丸は、これまでも我が国の人文学・社会科学が成果を上げてきたということを書いているところでございまして、更に近年の新しい取組を紹介しております。
 その次は、課題を書いているところですが、その一方で、本分科会が平成24年7月にまとめた報告が指摘しているように、我が国の人文学・社会科学には、細分化された専門分野の精緻化に固執する余り、分野を超えた知の統合から生まれる巨視的な視点が弱いこと、国際発信や国際的な学術コミュニティへの参画に必ずしも積極的でない場合があることなどの課題があったことも事実である。今後、人文学・社会科学がより一層科学として成熟度を高め、社会の福祉の改善に貢献していくためには、これまでの知の蓄積を基盤としつつ、現代人間社会に対する鋭利な洞察力に裏打ちされた、新たな知の創造と提供のために、不断の挑戦を続けていく必要があるとしております。
 こういった課題を踏まえて、このためということで、諸学の密接な連携や国際的な学術展開、科研費などの公募方法や審査方針の改善を通して、挑戦的な研究を支援するとともに、最初の諸学の密接な連携や国際的な学術展開、社会的な要請への貢献を実践する共同研究の先導的なモデルを形成することで、人文学・社会科学全体の振興を図っていく必要がある。
 翻って、そのような公的資金による支援や社会の負託に応えるためにも、個々の研究者が自己の研究成果と現代社会に対する貢献の意義をより一層積極的に発信するとともに、人文学・社会科学が担う社会的意義の絶えざる再定義や、教養知への還元を怠ることなく、将来的な展望を広く社会に示していくことに、学術界全体として関わっていくことが必要不可欠である。このような社会との交流の深化は、人文学・社会科学自体の発展にもつながる。
 最後は評価のことですけれども、人文学・社会科学は、人間の思想や行動を研究の対象とすることから、異なる価値観に依拠する研究が、競合しつつ社会の諸側面に補完的な理解の光を当てることに意義を持つという側面も持っている。それだけに、統一的・標準的な枠組みを前提として、客観的・論理的な証明や実証的な証拠立てによって唯一の正解が確立されるものではないこと、ある研究の意義を測る時間的スケールが非常に長く、継続的な研究の蓄積によって成果が価値を有することが多いことなど、自然科学とは必ずしも共通しない特徴を持っている。しかし、人文学・社会科学においても、公共的な組織において行われる学術研究については、それぞれの研究組織や研究者が新たな知の創造に向けて真摯に取り組んでいることへの社会的理解を得るためにも、また研究者自身が自らの研究活動を見直す契機とするためにも、その成果に対する評価の基準を明確にする必要がある。人文学・社会科学の独自の意義を尊重しつつも、その独自の評価基準を可視化することが、今強く求められているとしております。
 それから、最後、学術界のコミットメントのところでございますが、追記しておりますのは、24ページのところは、学術研究は重要なのは分かるけれども、社会的意義というところをという御意見が強くありましたので、ほかのところにも書いておりますが、「研究者一人一人が学術研究の役割を自覚し」といったことを補強しておりますのと、ここの丸は社会との対話のところでございますが、委員会で産業界の方のヒアリングの際に、産業界と学術界の対話、実質的な対話がやはり欠けている、不足しているという御指摘強くありましたので、特に、学術研究を通じて育成された人材や創出された知をより一層効果的に様々な価値に結び付けていくため、産業界との実質的な対話の機会を増やすなど、双方の交流を一層強化することが必要としております。
 それから、最後ですけれども、25ページに新しく6章として、実効性ある取組のためにというものを設けております。中間報告につきまして、様々な方々から書いてある内容についてはすばらしいので、これを是非実践していく、その実践が課題だという御指摘を頂きました。ここで案として書いております。不十分な点もあるかと思いますので、御審議いただければと思います。ここは後書きにしていたところからつなげておりまして、本報告はという部分は、この報告書の説明でございます。その次の段落で、我が国の学術研究が置かれている状況は待ったなしである。学術研究の現代的要請である「挑戦性、総合性、融合性、国際性」を高め、社会の負託に応えるためには、国と学術界双方が本報告の趣旨を理解し、改革を実践することが是が非でも必要である。
 最後にということで、特に、政府には、学術政策、大学政策、科学技術政策が連携して一貫性ある施策を展開し、研究者の自由な発想を保障し、知的創造力を最大限発揮できる環境を確保するよう強く求めたい。また、学術界には、学術研究の現代的要請を踏まえ、これまでの慣習にとらわれず、諸制度の思い切った見直しを行うことにより、学術研究の成果の最大化を図ることが極めて重要であることを認識し、自主性・自律性を基本とする学術界にふさわしいアクションを速やかに起こすことを期待したい。期待ということですので、それを促すためにも、そのような改革の取組を積極的に評価する仕組みの構築が必要であるとしております。
 説明が長くなって恐縮でございます。以上でございます。

【西尾主査】  どうも、中野室長ありがとうございました。
 それでは、続きまして、人文学・社会科学の振興の部分につきまして、羽入先生より机上配付の資料ございますので、御説明をお願いいたします。

【羽入委員】  ありがとうございます。今、中野室長が御説明くださった22ページに関係することではないかと思います。これを提出させていただきましたのは、新たに人文学・社会科学の振興という項目を設けられるということで、それを特に、直接イノベーションに関わらせるということが、人文学・社会科学の記述として必要なのではないかということを少し考えまして、昨日お送りいたしました。どの方に伺っても、人文学・社会科学は重要だというふうにお話しになる。だけど、イノベーションの話になると、それが例えば基盤研究という形で言い換えられていく。基盤研究は、自然科学の基盤研究ということになっていく。その不安定さをもう一度確認しておく必要があるのではないかということもございました。イノベーションの源泉となるということは明らかなのですけれども、翻って、科学技術基本法がどういうものかということから考える必要があるのではないかと思って提出したものです。
 ごく簡単に御説明をさせていただきます。科学技術基本法の目的として記されているのが、我が国における科学技術の水準の向上を図り、もって我が国の経済社会の発展と国民の福祉に向上することであると記されています。同時に、世界の科学技術の進歩と人類社会の持続的な発展に貢献することとなっています。そして、更に振興の方針というのも法律に書かれていますけれども、あえて御説明するまでもないことながら、人間の生活、社会及び自然との調和を図りつつ行わなければならないと書かれています。
 そして、またその範囲について、科学技術という定義は、人文科学のみに係るものを除くと明記されています。その上で、ただ、この法律が人類の持続的な発展を志向する、そのために、自然科学と人文科学との相互の関わり合いが科学技術進歩にとって重要であるということも明記されています。そして、両者の調和のとれた発展に留意しなければならないということも書かれておりまして、科学技術の振興のためには自然科学と人文科学との調和が必要であるということが明確に指摘されています。
 では、この科学技術基本法が目的としているもの、人類社会の持続的な発展に貢献するというためには何が必要なのか。それに関してこの基本法では、更に我が国における科学技術の水準の向上を図り、もって我が国の経済社会の発展と国民の福祉の向上に寄与する。これは言わずもがななことなのですが、ここで人文社会科学としては何が言えるかということを考えたときに、国民の福祉の向上というのは何なのか、そして科学技術の振興のために研究者、技術者の創造性が十分に発揮されるということをいってますが、そのときに研究者や技術者の創造性が十分に発揮される環境というのはどういう環境なのか。これを誰が検証し、そして開発するのかということを考える必要があるのではないかと思いました。
 その下に書いてあるのが、今申し上げたことです。国民の福祉の向上のために何をなすべきか。また、研究者の創造性が十分に発揮されるためにはどのような環境が適切なのか。福祉とは何か、創造性とは何かについても、人文科学、社会科学の研究対象として十分にこれまで研究がなされてきた、そしてこれから研究がなされなければならない分野であると考えます。こうした場面で用いられるこういう概念の意味が明確に分析される必要があるし、そしてその後、それを前提にして、その知見を用いて、科学技術の振興が推進されることによって、人類社会の持続的な発展に貢献するということが期待されるのではないか。これがイノベーションの源泉としての人文・社会科学の役割ではないかということで記させていただきました。それが基本法の最初に書かれている、自然科学、人文科学の相互の関わり合いが科学技術の進歩にとって重要であるということ、両者の調和のとれた発展について留意しなければならないということの理由ではないかということです。
 3ぽつとして書きましたのは、少し具体的に考えて、一つの例を挙げただけです。サイバーセキュリティ基本法というのが先月、成立しましたけれども、この中にも、国際的な法制度の問題が出てきます、法制度を考える際には、文化的背景、歴史的背景というものがあるはずで、そういった知見を誰が提供するのか、またセキュリティをどう守るか、それは人の生活とどう関係するかということについては現実的な知見が必要であるとこの専門家の方々もおっしゃっています。
 こういった例に限らず、イノベーションを創出し変化し続ける社会環境に対して、人文・社会科学の研究の蓄積が極めて有意義であるということを、私たちは認識する必要があるのではないかと思いました。その研究の成果を生かして、更に時代の変化を見極めながら学術研究を振興させて知を蓄積するということが、基本法にある世界の科学技術の進歩と人類社会の持続的な発展に貢献するために必須であるという認識の下に、このまとめが書かれるのが重要なのではないかと思って提出をさせていただいたものです。
 文言としては、既に、中野室長が御説明くださった22ページにほぼ記されているのではないかと思っております。多少の修正は必要かと思いますが、以上でございます。

【西尾主査】  どうも羽入先生、ありがとうございました。貴重な御意見を頂きましたことに、心より御礼申し上げます。
 それでは、時間が相当限られてきてしまっているのですけれども、報告書の案文について、御質問、御意見等がございましたら、御発言いただければと思います。残っております審議時間を考えまして、まず、今日きっちり議論しておかなければならないところとして、人文学・社会科学の振興というところがございますので、まずここに関して御意見を頂くことから進めさせていただきます。
 鈴村先生、どうぞ。

【鈴村委員】  今回、人文学・社会科学に関する一節が追加されるということで、短い期間ではありましたが、可能な限りの修正・加筆を行う機会を頂きました。ほかの委員の御意見と合わせて作成された原案に対して、幾つか改めて提起したい論点があります。
 最初に、自然科学系の方々も人文学・社会科学は重要であるとは言ってくださいますが、多くの場合に冒頭で重要性を指摘しつつ、文書の本論で人文学者・社会科学者の心の琴線に触れる具体案に生かされることはまれだったように思います。例えば、学術の振興という際にも、人文学・社会科学が自然科学と並ぶとともに、相互に補完的な役割を持つことが、具体的に書かれることは非常に少なかったと思います。今回、人文学・社会科学に一節を割いて文書がまとめられることの意義を、私は大いに評価したいと思います。
 このことを申し上げた上で、二つの問題点を指摘したいと思います。第一に、人文学・社会科学の観点に立てば、社会制度の在り方に対する評価は、社会に生きる人々の福祉を基準として行われるべきだということは極めて自然であると思います。羽入先生の御指摘がありましたように、福祉とは何かということ自体が、依然として論点ではあります。しかし、この事実は既に繰り返してテーブルに乗ってきたと思いますので、私はその先の論点に絞って議論したいと思います。イノベーションのように、社会的インパクトが大であるのみならず、時間的にも長期にわたって影響を持つ活動を考える場合には、単に現在世代の福祉のみならず、将来世代の福祉への影響も、視野に収めて考えるべきです。現在世代の福祉のみに焦点を合わせて、遠い将来の福祉の改善に目配りしない近視眼的な政策措置は、長い視野で見るときには脱出が至難なあい路に我々を導く可能性があります。その一方では、確かなシナリオもなくバラ色の将来を描いて、現在世代には更に強くベルトを締めて我慢せよという、かつての社会主義的計画経済をほうふつさせるイノベーションの夢を語るのは、余りにも御都合主義的・非理性的であるというそしりを免れません。人文学と社会科学は、このような議論の場を冷静に設定した上で、学術を推進する政策の制度設計に貢献する義務を負っていると思います。この点は報告書の正当な論点にすべきではないでしょうか。
 第二に、この報告書が人文学・社会科学の振興について書かれたことは大いに評価するにせよ、人文学・社会科学と自然科学が人間の福祉の増進という共通の課題をめぐって相補的な関係にあることが、十分に伝わる書き振りになっていないことが気掛かりです。この点に踏み込んだ記述があれば、人文学・社会科学の学術の知を正当に認識することに貢献できるのみならず、自然科学にとっても先端的・競争的な研究活動が現在世代及び将来世代の福祉の強固な基盤に結実する方向だを備える点で、また公的助成の配分機構の衡平性を保障する仕組みと作法を確立する点で、更に研究活動の倫理的な枠組みを整備する点で、重要な文書となるのではないかと思います。

【西尾主査】  どうも貴重な御意見ありがとうございました。羽入先生のおっしゃっていただいたこととも非常につながるお話だと思います。今、具体的に御提示いただきました点はごもっともな意見ですので、その該当箇所を修正すると同時に、鈴村先生から事務局に対し、ほかの部分に関しても具体的なコメントを頂けるということでございますので、どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 人文学・社会科学に関して、ほかにございますでしょうか。

【羽入委員】  非常に小さいことですけれども、22ページの上から3つ目の段落に、また、人文学・社会科学には、という段落がございます。そこの下から3行目に「個々人によって発想され創出される新たな知が統合されて」とありますが、これは、私の提案ですが、「人文学・社会科学、自然科学の全ての領域で個々人によって発想される新たな知が統合されて社会を形成し」とする方が適切なのではないかと思いました。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。それはごもっともな御意見だと思いますので、反映していきたいと思います。
 ほかにございませんでしょうか。亀山先生、いかがですか。よろしいですか。

【亀山委員】  はい。

【西尾主査】  金田先生、よろしいですか。

【金田委員】  はい。

【西尾主査】  金田先生、どうぞ。

【金田委員】  22ページの、要するに、人文学・社会科学の振興の一つ目の丸の3段落目、最後の段落ですが、なぜならば、というところから、人文学・社会科学の学術の知によって的確に補完されない限りうんぬんというところは、若干面はゆい気もするんですが、ただ、これで一般的な形で理解されるかどうかというのは、ちょっと難しいなと思います。少し文章を考えた方がいいんじゃないかなと思います。

【亀山委員】  一番微妙なところですよね。

【西尾主査】  可能でしたら、先生から具体的にどのように修正したら良いかということの御指摘を頂けると有り難いと思います。
 そうしましたら、人文学・社会科学の振興については鈴村先生が先ほどおっしゃっていただきましたことを反映することにします。亀山先生、金田先生には、大筋は案文どおりということでよろしゅうございますか。

【金田委員】  既に若干の意見をお伝えさせていただいております。

【西尾主査】  分かりました。ありがとうございます。

【小安主査代理】  関連することでいいですか。

【西尾主査】  はい、どうぞ。

【小安主査代理】  関連することで、今の部分ではありませんが、2ぽつの持続的なイノベーションの源泉としての学術研究というところで、構造変化など幾つかの点を出していただいておりますが、ここにも今のようなものをまず出しておいた方が良いのではないかという印象を持ちました。

【西尾主査】  おっしゃるとおりです。そのような修正をいたします。それ以外の全般にわたって御意見等ございましたら、どうぞ。武市先生。

【武市委員】  報告書案を昨日頂きまして、本日のものと違っているかもしれませんが、場所をページ番号で申し上げます。今回、赤文字で示された場所以外のことも含めてですが、細かいところについては後でこれをお渡しするということで、ここでは御議論いただくべきことについて提起させていただきます。
 2ページです。上から4行目辺りから、「特に」で触れられている中に、「博士課程進学者数の減少は深刻であり」とあります。これは既に中間報告でこう書いてあったわけですが、この根拠がここで示されております。下にありますが、例5で、博士課程入学者数の推移として、社会人・留学生を除く数値を学校基本調査を基に書いてあります。しかし、大学院の充実を図るという方向の中では、必ずしも外国人を除く、留学生を除くということではないでそう。社会人、留学生を加えますと、平成26年度のデータでは、1万5,418という数値として挙がっているわけです。私もここで述べようとする意図が分からなくはないのですが、あえてこういうことを書いていいのかというのが一つの議論です。
 それとともに、その下にある「国際的に見た我が国全体の教養の低下は免れない」ということでは、博士課程のことを述べているところで、13ページの上から3行目にも出てくる「国民全体の教養を高める」ということに関連して、教養の低下ということをここで触れるべきかどうかといったことが少し疑問に感じたところです。これまで大学院での研究者のことは必ずしも我が国の二十何歳かの学生を確保するということだけが目的ではなかったはずであるという点です。
 それから、それに類する部分として指摘させていただきたいのは、18ページでございます。これは赤文字で今回新たに示されたところですが、「一方、意欲と能力のある博士課程の学者やポストドクターが研究の道を断念する」というところです。こういうことを書いていいかということです。「断念する」というのは、本来、博士課程の学生やポストドクターが研究者以外の多様な道を選ぶというときに、いわば脱落した者だという認識を持つかのような表現がこういう報告書に適切かどうかということが気になりました。
 それ以外の点について、言葉遣い等に関して申しますと、今回新たなことで、4ページです。イノベーションの構造変化、先ほど話題になったところですが、こういうところで、何か所かに同じようなところが後でも出てまいりますが、「1.で述べたような知のフロンティアの拡大により」というところがあります。「1.」は決して知のフロンティアの拡大を述べたわけではないでしょう。つまり、「失われる日本の強み」というのを述べているのであって、ここにこういう形で引用するのが良いのかどうか。中にそういうことが書いてあるかとは思いますが、ただ、「1.」にはフロンティアという言葉が出てこないのです。ですから、分からなくはないのですが、こういう形での引用がいいかどうか。多分、「知のフロンティア」というのは、先ほどの参考資料等で御説明いただいた総合科学技術会議の報告に出てくるから、そことの関係もあって書かれたのだろうと思います。そういった部分が何か所か出てくるかと思います。
 それと同じようなことですが、赤文字になって改めて出てきた用語に「学理」というのが何か所かにあります。最初は4ページの下の辺りですが、「学理」というのがこれから後も何か所かに出てきます。書いた時点が違うからいろいろ用語も出てくるかもしれませんが、そういったところは少し整理した方がいいのではないかという気がいたします。
 細かいことではありますが、7ページのこれも赤文字のところです。追記された部分ですが、「また、地域社会・経済を活性化する多様な人材の育成・供給」とあります。「供給」は良くないのではないかという印象です。同じようなことが上の方には、「人材の養成・輩出の基盤」という言葉で書かれています。「供給」というのは避けた方がいいのではないかと感じます。こうした事柄を申し上げましたけれども、御議論いただければと思います。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。2ページのところで、社会人・留学生を除くという形でのデータの記載が良いものなのか、社会人のキャリアパスの多様性ということを考える場合に、博士課程に戻ってきて大学院で学ぶことも大事じゃないかということで、この辺いかがしましょうか。

【甲斐委員】  これは併記したらいかがでしょうか。実質的には上がっていますけど、もう日本人学生は上がっていないということも両方知っていただいた方がいいかなと思うので。

【西尾主査】  併記をしていただいてはどうかということでございますので、武市先生が御懸念の件を十分に踏まえた上で併記をさせていただくということで進みたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
 それから、ここのところで、国際的に見た我が国全体の教養の低下ということが博士課程の記述と連動して書かれていることに関しては、ダイレクトにそこにつながっているような書き振りは良くないということですので、これは代案を考えてもらうということでよろしゅうございますか。2ページの第2段落の例3-1の上のところですが。

【亀山委員】  教養というと、かなり基礎教養的なイメージがあるんですが、専門教育の後の教養というのは非常に重要な意味を帯びていて、その意味において、大学院、あるいは博士後期課程においてもそういった教養の育成、かん養というのは非常に重要な意味を帯びていると私に認識しておりまして、それは教養論の一つの流れとしてあると思います。ですから……。

【西尾主査】  ここで書いても問題ない、という御意見ですか。

【亀山委員】  おかしくはないとは思います。ただ文章の書き方の問題ですね。

【西尾主査】  分かりました。そうしましたら、武市先生、この書き振りをいかがいたしましょうか。

【武市委員】  今の御指摘については、私も博士の学生が減少しているのが深刻であることは理解しますが、それによって我が国全体の教養の低下というのはやはり少しおかしいという印象です。

【西尾主査】  分かりました。ここに関しましては、書き振りを考えていただくことにします。ただし、それは懸念材料としてはあり得るということで、その認識の下でこの部分の修正をしていただくことにします。どうぞ。

【金田委員】  そのときに御考慮いただきたいのは、当面のプロセスとしての学位を早急に求めるためにその基盤になる教養というか、基盤になる知的なバックグラウンドが不十分になりがちという要素もあるんじゃないかと思っておりますが、難しいですけど、それもちょっと御考慮いただけたらなと思います。

【西尾主査】  おっしゃることは大切なことだと思いますので、その点も含めて考えてみたいと思います。
 あと、主要な幾つかのことに関して、4ページのところで、1で述べたような知のフロンティアというところの書き振りについては、もう少し考慮してみたいと思います。あと、7ページでの供給という言葉については、委員の皆様方、表現として少し考えるべきだということに関しては、何か御異論ございますか。どうぞ。

【鈴村委員】  この文脈では、単純に「供給」を消しさえすれば、それで良いのではと思います。

【西尾主査】  分かりました。どうもありがとうございます。

【亀山委員】  これ、育成と養成が混じっているので、いずれ文言の統一はしますよね。

【西尾主査】  分かりました。あと、気を付けなければならない言葉として、武市先生の御指摘で学理という言葉がありまして、この言葉が中間報告以降に新たに加えられているということです。何らかの説明を付すことにするのか、いかがいたしましょうか。どうぞ。

【平野委員】  すいません。提案ではないんですが、総会の場でも、学術研究そのものについてどう見るかというような、どういう意味合いを含めるかということも質問があったところですが、この学理もある意味もっと、学術研究まではいいんですが、学理の位置付けはやっぱり難しいなと思うんですが。

【亀山委員】  科学であり学問であり学術研究であり。

【平野委員】  ただ、言葉としては私も理解できないことはないと思いますけれども。

【西尾主査】  平野先生、何か書き換えるとしたら、どういう言葉があるのでしょうか。
 どうぞ、羽入先生。

【羽入委員】  アイデアはないんですけど、何ゆえに学理という言葉をここで使われているのかということをまず伺いたいと思います。2回使われている。いろいろな意味が入っているのかもしれないんですけれども、何がいいんでしょうね。普通だったら学問でしょうか。

【亀山委員】  学問というと、やっぱり弱いんですよね、ここは。

【羽入委員】  そうなんです。でも、学理というと分からなくなっちゃうんです。

【亀山委員】  学術研究だと、非常に狭くなってしまって。

【金田委員】  全く熟しませんから無視していただいてもいいかもしれないんですが、例えば私なんかが仮に書こうとすると、知の方向とか知の本質とか、そういう言い方の方が少し一般的には分かりやすいかなという気もする。学という別のカテゴリーを持ってくるとまたそこで難しくなるので。

【西尾主査】  ただし、「知の重要な基盤となるのは」と書いてありますので。

【金田委員】  そうか。すいません。

【西尾主査】  いえいえ。

【鈴村委員】  よろしいですか。

【西尾主査】  どうぞ。

【鈴村委員】  ほかの箇所にも登場している表現を、できるだけ整合的に使用するのがいいだろうと思います。この観点に立って、前後を修正してつじつまを合わせるとして、既に何度も用いられている《学の理》とか《学術の知》という表現をここでも使用して、「学術の知への熱望と理解に裏打ちされた」とすれば良いのではないかと思います。

【亀山委員】  もう一度。

【鈴村委員】  「学術の知への熱望」という表現を生かすことにして、それを「深い理解に裏打ちされた」に接続すれば、言葉の節約にもなると思います。

【亀山委員】  「学術の知への熱望と深い理解に裏打ちされた」という。

【鈴村委員】  そうそう。

【亀山委員】  いいかもしれませんね。

【西尾主査】  分かりました。どうもありがとうございました。御提案いただいたとおりにいたしたく思いますが、それでよろしいでしょうか。

【小安主査代理】  先ほどの教養のところですけれども。

【西尾主査】  少し待っていただけますか。学理のところを詰めたいと思います。

【小安主査代理】  学理のところ、ごめんなさい。

【西尾主査】  事務局、どうですか。遠慮なくおっしゃってください。

【中野学術企画室長】  御指摘を踏まえて修正の上、また全体の用語のチェックはさせていただきたいと思います。

【西尾主査】  分かりました。それでは、小安先生、どうぞ。

【小安主査代理】  いいですか。7ページの(3)の中に、豊かな教養と高度な専門的知識を備えた人材ということが出てきますが、これを生かすのが一つかなと思って見ていました。確かに我が国全体の教養とか、国民の全体の教養と読めてしまうので、先ほどの部分ですが、ここを生かすとすれば、豊かな教養と高度な専門的知識を備えた人材の輩出が困難になるとともに、国際的に見た我が国の高度知識基盤社会の崩壊と言ってはいけないのかもしれませんが、低下みたいな表現にすると、教養という言葉を使わなくて済むかなと思いました。

【西尾主査】  分かりました。武市先生、どうでしょうか。

【武市委員】  問題点というか、私が十分に理解できなかったところを少し御議論いただいたのですが、ついでに、5ページの上から5行目、これは私の手元のものですから、行数が違うかと思いますが。赤文字で書かれた「学術研究は」で始まるところですが、その次に、「それが基礎的であればあるほど成果を得ることには困難を伴う」というところです。この根拠がどこにあるのかが私には分かりません。感覚的に分かるのですが、断定的にこう書いた以上、根拠が必要ではないかということも御検討いただきたい。

【西尾主査】  そうしましたら、先ほどの教養に関する御意見もこちらで再度検討させていただきたいと思いますし、今の武市先生からの御指摘のエビデンスがどうなのかというところに関しても、書き振りでどう対応するかということで考えていきたいと思います。甲斐先生、佐藤先生、それから瀧澤様から意見を頂いていないのですが、何かございましたら、どうぞ。

【亀山委員】  「しばしば」とか何か入れるとかね。

【佐藤委員】  じゃ、あと1点よろしいですか。

【西尾主査】  どうぞ。

【佐藤委員】  随分議論が進んでいるところですけど、私がちょっと付け加えるべきと思ったのは、19ページ、国際的な学術研究ネットワーク活動の促進ということですけれども、この中で、外国人の研究者の戦略的な受入れや国際的な研究ネットワークうんぬんとあるんですけれども、実際問題として、外国人の研究者に来ていただこうと思ったとき、基本的にそのための環境整備が日本ではできていないんですよね。それが大きなネックで、我々も雇用したいんですけれども、実際彼らにとって魅力的な場になっていないということが大きな問題だと思います。そういう意味で、環境整備ということも入れていただきたいと思います。また実際、WPIではできていることですけれども、職員の方の英語のことですとか、そういうことについて、今後の国際化のために必要であることをちょっと加えていただければと思います。長い文章である必要はないと思いますので。

【西尾主査】  非常に重要なことでございますので、頂きました御意見につきまして、書き込むことを考えたいと思います。どうもありがとうございました。
 甲斐先生。

【甲斐委員】  よく書いていただいたので、余り言うことはないんですけど、気になったのは、18ページから19ページに掛けて、研究推進に係る人材ですか、研究推進人材という新しい言葉が出てきて、これは研究支援人材とは違って書いたという御説明だったんですけど、これで意図されているのは、リサーチ・アドミニストレーターとか、そういうことだけでしょうか。

【中野学術企画室長】  いや、人材委員会での御議論では、リサーチ・アドミニストレーターも含め、技術スタッフも含め、いろいろな……。

【甲斐委員】  例えば理系でいう技術者、テクニシャンは、研究支援人材ですよね。研究推進人材はちょっと違和感があったので、ここに入れるか入れないかは別なんですけど、私は日本ではテクニシャン制度はどんどん崩壊しつつあって、もう大学にはほとんど定員削減のときにそれを減らすという方向で動いたために消滅しかかっているんですよ。研究所によっては頑張って維持しているところもあるんですけど、大学では本当に少なくなっているんです。私はこの制度は真剣に考えるべきであって、日本がテクニシャンのポストというのを尊重していないというか、それはとても重要なポストで、研究に携わった学生たちが、例えばマスターやなんかでやめる学生たちが全員が全員本当の研究者になりたいわけではないんですね。結構実験が好きとか、やっているうちに、いや、テクニシャンの方が面白いという子はいるんですよ。そういう人たちが実際に花開く場が日本にはないんですね。日本には高級テクニシャンというポストがないんですよ。待遇は決してよくないんですね。
 ただ、国際的にはテクニシャンの重要性というのはすごく認識されていて、そういうキャリアパスが一つあっても全然いいと思うんですよ。そういうところに行きたいという若い人が結構たくさんいるんですけど、待遇を見るとやめちゃうということになるので、だから、将来的にはそういうことも含めて議論していただいたらいいなと思っていたので、この支援員というのがリサーチ・アドミニストレーターばかりじゃなくて、そういうのも含まれるのかなと考えていたんですが、この修正案によると、そっちが逆に薄くなっちゃったのかなと心配しますので、もう1回言葉も含めて考えていただけたらなと思います。そういうのを今ここで、ではなくて、議論する余地を残していただきたいと思います。それぐらいです。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。

【武市委員】  今のところでちょっとよろしいでしょうか。気になったのは、14ページの方にも「リサーチ・アドミニストレーターやグローバル担当職員など」という言葉で出てくるので、今のところとグローバル担当職員という言葉の整理をして、専門人材の積極登用、専門人材というところとの関係をきちんと説明できるように整理した方がいいような感じを持っています。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。研究推進人材といいますと、やっぱり研究をまさに推進している方ということと誤解されると思います。実際は、研究推進支援人材なのだと思いますが。

【甲斐委員】  支援の方がいいような気がするんですが。推進人材、研究者そのものも研究推進人材ですよね。

【西尾主査】  武市先生に御指摘いただいた幾つかの言葉に関しては、最終報告に向けて整理をしていきたいと思います。どうもありがとうございました。瀧澤委員、よろしいですか。

【瀧澤委員】  じゃ、せっかく御指名いただきましたので。二つあるんですが、ちょっとまだ考えがまとまっていない部分もありますが、一つはこの期に及んでなのですが、12ページの「学術研究が社会における役割を十分に発揮するために」というタイトルなんですが、その前の4番の8ページから始まるところでは、「我が国の学術研究の現状と直面する課題」ということで、課題をいろいろ挙げていただいて、それを受ける形でその課題を克服するための改革案という位置付けなんですよね。それなのにちょっとタイトルがぼやっとしているのかなというのが感じたところです。
 それからもう一つなんですが、今日の会議の前半のところにも関係すると思うんですが、デュアルサポートシステムの再生のところです。今までどちらかというと、各大学の独自の戦略性ですとか、どういったところに資源を配分していくのかという機能が弱かったために、一律に配分をして、それをあとは、言い方は悪いんですが、野となれ山となれという感じで、各研究者の自由な発想、自由な研究、それ自体は大事なことなんですが、個々人の方々の評価が十分になされないままに資源を配分されていたところがあったと思うんですが、それは今後はもっとより戦略的に、適切なところに適切なお金が回るようにということでやられていくのに、やはり大学の改革とも一体ですけれども、インスティテューショナル・リサーチのようなことを機能強化していく必要があるだろうという視点がここでも入れた方が良いのではないかなと思いました。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。時間が押し迫っておりますので、あとはもう時間がない状況なのですが、最後の実効性ある取組のためにというところに関して、平野先生、この程度の書き振りで良いのか、これでは全然足らないのか、一番大事なところなのでコメントを頂けますでしょうか。

【平野委員】  私、最後に事務局へのお礼と言っては幅ったいですが、よくいろんな意見をここまで全体で入れていただけたと感謝しております。ありがとうございます。加えて今の御質問のところの実効性ある取組については、前も枠の中で皆さんの意見を基に入れていただいていますが、きちっと項出しをして入れてもらったというのは、大変有り難いことだと思っております。
 申し訳ありませんが、お礼とともに一つ加えさせていただきます。前から中野さんにもいろいろお願いしたりしてよく入れていただいたのは、羽入先生の御示唆もあって、人文学・社会科学について、ここでこういう形できちっと入れていただけたのは大変いいことだと思っておりまして、ある意味今度の基本計画の中に忘れられることなく、かなり事務局に御苦労していただいていますが、入れ込んでおいてもらいたいというお願いであります。ありがとうございます。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。それでは、予定の時間となっておりますので、本日はこの辺りとさせていただきたいと思います。委員の皆様方には、まだ追加の御意見等、多々あると思うのですけれども、事務局にメール等で、来週月曜日、15日までに御連絡いただければと思います。また、本日欠席の委員にも御意見を伺いまして、適宜修正を行いたいと思いますが、個々の意見の最終的な取扱いにつきましては、主査であります当方に御一任いただくということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

【西尾主査】  どうもありがとうございます。なお、研究環境基盤部会に関わる項目については、その部会長であられます濵口先生と相談をさせていただきたいと思います。
 それでは、私の方で最終的にまとめたものを本委員会の最終報告案として、来年1月27日の学術分科会に報告して御審議いただきたいと思います。この席にいらっしゃる委員の方々も学術分科会の委員であられる方も多いと思いますので、そこでまたいろいろ意見を頂戴することも可能かと思います。
 なお、本日、最初に事務局より紹介等のありました関連するほかの会議の検討状況の進捗を踏まえまして、今後、最終報告案を議論する状況が生じた場合には、先ほど言いましたように、学術分科会の場でまた審議を頂く予定でございます。委員の皆様におかれましては、お忙しい中にもかかわらず、今年2月から本当に精力的に審議に御参画いただきましたことにつきまして、ここで改めて心より御礼申し上げます。司会の不手際なことから、委員の皆様方には多大な御迷惑をお掛けしたのではないかと思います。何とぞ御容赦を頂きたく思います。私自身、委員の皆様方の御意見を伺う中で本当に多くのことを勉強させていただきました。そのことに関しましても心より御礼申し上げます。どうもありがとうございました。
 それでは、最後に常盤研究振興局長より一言お願いいたしたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

【常盤研究振興局長】  今、西尾主査からもお話がございましたように、学術の基本問題に関する特別委員会は本日で最後の会となりましたので、一言御挨拶を申し上げます。
 まず、委員の皆様方におかれましては、学術研究の推進方策に関しまして、2月から非常に熱心な御議論を頂きまして、大変ありがとうございました。精力的な御審議のおかげで一定の取りまとめをしていただくことができたと考えてございます。この間、メール等による意見提出も含めて、お忙しい中を御協力いただきました。また、本日の会も先生方の御意見をできるだけ多く反映しようということもあってという言い訳をしながら、事前にまとまった資料を送るのが遅れたりして、御迷惑をお掛けしたことについてもおわびを申し上げたいと思っております。
 その中で、学術分科会で平野分科会長から御提案を2月の段階で頂いているわけでございますけれども、やはり現在、学術研究が置かれている状況というのは、本当に待ったなしの状況だと思っております。こうした中、先生方の御審議によりまして、学術研究の本来的役割を再確認いただきますとともに、その役割を十分発揮できるような具体的な取組の方向性というものを取りまとめいただいたと考えてございます。
 今日の会議の冒頭でも、各方面からの学術研究を含む、大学の問題もそうですけれども、非常にいろいろな取り巻く環境についてお話もさせていただいたわけでございますが、学術研究は非常に重要なものであって、それに対して、外の世界からいろいろ言われているからそれに対応するという側面ももちろんあると思うんですけれども、もう一方で、今日の御審議の中にもありましたけれども、学術研究自体が非常に進展をしている、自然科学の世界での進展ももちろんあるでしょうし、人文学・社会科学にとっても、社会の構造がこれだけグローバル化とか、人口減少とか、様々な構造的な問題を抱えている中で、社会科学もその扱う対象の変化というものが急速に進んでいるわけですし、その中で暮らしている人間の生き方もまた変化をしているわけですので、人文学・社会科学もその研究領域・対象というのがどんどん大きく拡大しているということが言えるのではないかと思います。
 そういう意味で、学術研究は重要だ、だけど、社会の変化で財政の問題もあって、環境が悪くなっているので何とかしたいというだけではなくて、何とか学術研究が持っている力をより大きな形で発揮できるような状況を作っていく前向きな部分も含めて、是非これからアピールをしていければと事務局としても思っております。
 そのためには、何といっても学術の世界が社会的に発言するわけですので、論理と証拠に基づいて、しっかりとした立論をして、説得力ある形でしなければいけないわけですので、そういう点を考えますと、こういう形で実際にペーパーとしてまとめていただく、レポートとしてまとめていただくということが、私どもがこれから様々な場面でいろいろ主張していくときにとても有り難いことでございます。是非これをまた生かして、先生方のお力を更にまた今後ともお借りしながら、学術研究の重要性ということについて、各方面に広く理解を得るような努力を重ねていきたいと思っております。
 この報告につきましては、今、主査からお話がございましたように、来年1月の学術分科会での御審議を踏まえて最終報告が取りまとめられるということになりますけれども、文部科学省といたしましても、この報告書を踏まえて、国と学術界が一体となって、学術研究の改革と社会的な理解の獲得ということが進められるように努力を重ねてまいりますので、引き続き先生方の御指導のほどよろしくお願い申し上げたいと思います。誠にありがとうございました。

【西尾主査】  どうも常盤局長、温かいお言葉を頂きまして誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。
 それでは、今後のスケジュール等について、事務局より説明をお願いいたします。

【中野学術企画室長】  どうもありがとうございました。今ありましたように、特別委員会につきましては今回で終了ということでございます。ありがとうございました。先ほど西尾主査からありましたように、御意見につきましては、15日までに頂ければと思います。改めてメールをさせていただきたいと思います。また、何回もありましたが、1月27日の学術分科会で御報告ということですので、そちらの方の御出席もどうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。事務局の方にも本当に多大なる御尽力いただきましたことに対しまして、心より御礼申し上げます。どうもありがとうございました。
 それでは、学術の基本問題に関する特別委員会はこれで終了いたします。本当に委員の皆様にはお忙しい中、大変活発な審議をしていただきましたことに対しまして、改めて御礼申し上げます。心より感謝申し上げます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

 

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