学術の基本問題に関する特別委員会(第7期)(第10回) 議事録

1.日時

平成26年10月22日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省15階特別会議室

3.議題

  1. 学術政策の推進方策に関する総合的な審議について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
西尾主査、小安主査代理、安西委員、甲斐委員、佐藤委員、高橋委員、柘植委員、羽入委員、平野委員、伊藤委員、亀山委員、金田委員、鈴村委員、武市委員
(科学官)
加藤科学官、小磯科学官、杉山科学官、德宿科学官、中村科学官、美濃科学官、山田科学官、米田科学官

文部科学省

常盤研究振興局長、山脇研究振興局審議官、木村学術機関課長、鈴木参事官(情報担当)、森高等教育企画課長、中野学術企画室長

5.議事録

【西尾主査】
 おはようございます。ただいまより第10回科学技術・学術審議会学術分科会 学術の基本問題に関する特別委員会を開催いたします。
 今回は、前半に私立大学から見た学術研究における課題、後半には最終報告に向けた審議をしたいと思います。
 本日は、私立大学の観点から御意見を伺うため、日本私立大学団体連合会副会長をお務めで、また関西大学学長でもいらっしゃいます楠見晴重先生にお越しいただいております。本日、御多忙のところ、どうもありがとうございました。

【楠見副会長】
 よろしくお願いいたします。

【西尾主査】
 それでは、審議に入る前に、まず事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【中野学術企画室長】
 失礼いたします。
 本日、事務局に遅れてまいる者がございます。あらかじめおわび申し上げます。
 配付資料でございますが、お手元の議事次第の配付資料一覧にございますとおり、資料1から4、そして参考資料1から3ということでお配りをさせていただいております。また、机上資料といたしまして、資料の一番下に「これまでの意見のまとめ(全体版)」というものも併せてお配りをさせていただいております。また、いつものとおりでございますが、お手元にグレーのファイルで、本特別委員会のこれまでの資料をつづったものがございます。本日、後半で最終報告に向けた御議論を頂きますが、5月におまとめいただきました中間報告のところには附箋を付しておりますので、必要に応じて御覧いただければと思います。
 欠落等がございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。
 以上でございます。

【西尾主査】
 ありがとうございました。
 それでは、審議に移りたいと思います。まず、前半は私立大学から見た学術研究の課題等について、楠見副会長から15分程度で御説明いただきたいと思います。楠見副会長は、所用のため11時頃、御退席予定となっておりますので、御発表の後、11時頃まで意見交換、質疑を含めた自由討論の時間とさせていただきます。
 それでは、早速でございますが、楠見副会長より15分程度で説明をお願いいたします。

【楠見副会長】
 皆さん、おはようございます。私立大学の立場から、学術研究の推進方策に関する総合的な観点でお呼びいただきまして、どうもありがとうございます。また、平成26年5月に取りまとめられました中間報告につきまして、貴分科会の御努力を多として敬意を表したいと思っております。
 それでは、内容の詳細、15分程度ということでございますので、御説明をさせていただきたいと思います。事前に配付していただいております資料1に大まかにまとめておりますが、これに基づいて説明をさせていただきたいと思います。
 まず、1番目として、失われる日本の強み-危機に立つ我が国の学術研究ということでございます。政府によります科学技術、あるいは学術研究活動への投資というのは、科学技術創造立国実現のための非常に重要な柱であり、またイノベーションの創出を通じて国力増進の源泉であるということ、これはもうまぎれもない事実でございます。さらに、アジアをはじめ世界をけん引するリーダーとして国際的な重要な役割を果たすためには、「人財」の育成と科学技術の振興こそが国家戦略として最重要課題であると思っております。
 そして、持続可能なイノベーションの源泉としての学術研究ということを鑑みまして、今、全体として日本の少子化問題等ございますけれども、国家という枠組みを超えた人類が直面する諸問題の解決に対しても、やはり科学技術政策の関与というのは不可避となっておるのが実情だと思っております。
 こういう問題を、特に日本が世界をリードしていくためには、やはり活力にあふれた新しい多様な価値を創造できる自立した「人財」が多く必要である、あるいは社会基盤全体のレベルアップを図る「人財」育成と、我が国の産業競争力を強化するためには、科学技術の研究開発を進める研究「人財」の育成と両輪をもって、学術研究の推進を図るべきであると思っております。
 また、今回の中間報告にうたっておられます持続可能なイノベーションの創出をし続けるためには、基礎研究における科学的発見や発明と、その成果を具体的にイノベーションへとつなげていく実用化のための環境整備が必要であると思っております。
 現状と直面する課題というのは、もう中間報告でも述べておられますが、公財政支出のOECD加盟国の平均が対GDP比1.1%であるのに対しまして、我が国は0.5%、加盟国中の最下位であるということがございます。少なくともOECD加盟国平均までに達するように、早期に科学技術関係経費を含めた高等教育関係経費の量的拡充が達成され、それとともに質的拡充へ踏み出すべきであると思っております。
 また、我が国の大学生約8割と、これは学部学生でございますが、大学教員の約6割が私立大学を占めておるわけですけれども、やはり私立大学に対しての学術研究を活発に進めていっていただきたい、そういう方策は必要かと思っております。学術研究を行うには、幅広い「人財」と、量的、質的の両方を拡充していかないと、学術研究を推進していく源泉にならないと思っております。特に、現状を先ほど申しましたが、私立大学と国立大学との間には、研究費、あるいは大学院を中心とした教育研究環境の格差が厳然とあり、この格差が競争的資金の獲得実績に直接的な影響をもたらしていることは、強く認識されるべきであると思っております。
 私立大学としては、前から述べておりますけれども、国の財政的支援を今の支援から、できれば全額補助を早期に実現したいと思っております。
 例えば、我が国の研究費配分上位10番目の大学の研究費が、トップ大学の10%の研究費まで減少してしまうのに対して、アメリカではおおむね100大学でやっと同様の額まで減少するという、今、非常に偏った傾向があるのではないかと思っております。一部の頂上を引き上げるだけではなく、やはり視野の広い研究開発投資を行い、視野の多くを担っている私立大学の潜在的研究力を活用し、多様性の確保に努めることが21世紀における科学技術振興のために極めて重要であると思っております。とりわけ収入の多くを学生の授業料に依拠せざるを得ない私立大学の研究活動に対しては、国による積極的な投資が更に拡充されるべきであると思っております。
 また、基礎研究の段階からイノベーション創出までつなぐ研究活動に果たす公共投資の役割は非常に大きく、これらの研究活動を中核的に担う大学に対して公共投資の拡充が幅広く図られるべきであると思っております。
 学術研究が社会における役割を十分発揮するためには、我が国の科学技術が一層の飛躍をするためには、もちろん理工系、あるいは医学、そういう理系とともに、人文・社会科学を含めた諸科学の調和ある発展がますます重要であると思っております。こういう点でも、私立大学の役割は非常に大きいものと考えております。
 また、研究者の自由な発想に基づく研究活動がなければ、多分、真のイノベーション創出は継続し得ないと思っています。視野の広い学術研究に対する振興支援と重点的投資とのバランスの取れた政策が必要であり、科学技術研究補助金をはじめ、広範な基礎研究への果敢で継続性のある公共投資が不可欠であると考えております。
 そういう面でも、是非、多くの学術研究分野で活躍する私立大学の意見をより有効に反映し、学術界の総力を結集する体制で取り組んでいく必要があるかと思っております。是非、私立大学の大型公共施設の利用人数、あるいは日本学術振興会の大学院博士課程在学者を対象とする特別研究員の採用人数、やはりこれは国立大学と比べ格段の格差が存在するということ。また、公募の共同利用の不均衡の是正、あるいは利用しやすい環境整備、具体的には宿泊設備の整備や交通費等の物質的補助を含む私立大学研究者の大型プロジェクト参画への配慮、大学院学生の補助を含む参画への配慮等、サポート体制の充実を図り、私立大学研究者が利用しやすいシステムの確立が不可欠であると思っています。
 さらには、教育のための学生支援の重要性がありますが、大学院に対する「人財」を供給する学部段階、特に初年度、あるいは低学年次における教育の充実は欠かせないと思っております。
 また、大学教育に対する積極的な投資がなければ、我が国の未来を支える質・量ともに豊かな科学技術「人財」層の形成は不可能であると思っております。要は、「人財」育成を国の主要な政策の根幹に据える必要があるかと思っています。
 教育、あるいは研究に対しては大学全体ですけれども、特に今の課題は、これは中間報告にも述べられておりますけれども、博士課程の充実策をしっかりとこれからやっていく必要があるのではないか。現状は、当然、皆さん御存じのように、日本人の学生というのはなかなか博士課程には進まない。特に、社会科学系の博士課程の現状というのは、留学生が主で、日本人学生は余り進んでいないという現状がございます。そういう面でも、博士課程の充実を是非そこでお願いしたいと思っております。
 やはり研究というのは、大学院の修士ではなくて博士課程が中心である。これはもう世界の常識でございます。そういう面でも、博士「人財」の充実策を早急にやる必要があるのではないか。それと、現状、博士課程にどうして進まないかという具体的施策を考えて、特に博士課程の「人財」の有効活用策がやはり日本には欠けているのではないかと思っております。これは、国公私立問わず大きな課題かと思っております。
 そういう面では、省庁間を超えて博士課程の有効活用、これは産官、もちろん学も入りますから、しっかりとした対応がどうしても必要になってくるのではないか。具体的には、日本人の学生が博士課程に進まない状況に鑑みて、この優遇策はどこかで取る必要があるのではないかと思っております。
 また、最近、地方創生と今の政権が申しておりますけれども、地方の大学というのは私立大学が結構多いわけでございますが、地域創生に係るところはやはり地方の大学が核となる、あるいは、そこの学術研究に対して研究費支援、そういう制度創出が望まれるのではないかと思っております。私立大学は、地域貢献の潜在力を有するところが多々あるということも留意すべきであると思っております。
 政府による研究開発投資は、先ほど申し上げたように、是非積極的に投資を高め、あるいは有効に活用していただきたいと思っております。
 また、科研費用などの間接経費の充実というのは、大学の基礎体力の充実にとって非常に重要であるが、プロジェクト前に間接経費を付ける方式から、総額を機関への直接一括交付とする方が安定的であり、大学の研究環境整備には適当であると思っております。
 「人財」の女子学生、あるいは女性教員の比率は、今現在、国立大学よりも私立大学の方が非常に高い状況になっておりますが、これを一層支援する施策が必要であると考えております。
 全国の大規模利用研究施設への私立大学の利用促進策も必要であります。現状、全国共同利用を私立大学でも、特に社会科学系になっておりますけれども、これを継続利用する部分で国立大学と大きく違っているのは、継続利用になると半額のみが補助され、あと半額はその大学が持つような組織になっております。全国共同利用であれば、やはり国立大学と同じような形にしていただきたいと思っております。
 私立大学に対して、あるいは国公私立関係なしにオールジャパン体制、これは中間報告にも載っておりますけれども、研究・学術「人財」のスマートグリッド化の実現を目指していくことを是非提案したいと思っております。
 以上、こういうことを行うにも、やはり財政基盤の問題から、私立大学の体力は国立、公立に比べて著しく劣る現状を改善することが急務であると考えております。
 また、無期雇用を展望できる仕組み作り、あるいは学術コミュニティ、あるいは社会総体としての研究者の活用方策が検討されるべきであると思っております。
 これは私立大学特有の問題でございますけれども、教員組合との関係がございます。優秀な研究者、教員を見分け、若手研究者の発展可能性を評価し、処遇するためには、その役割を明確にするとともに、大学教員に対して企業労働者とは異なる位置付けが必要かと考えております。
 今後、我が国の学術研究、「人財」育成、及びその社会への還元の流れを抜本的に向上させるためには、これまでのような国公私立とは異なる区分での大学政策の考え方が必要になると思っています。
 私立大学は我が国の学術研究の大きな部分の一翼を担っており、その発展に寄与する十分な潜在力と意欲を有しているということをここで強調しておきたいと思っております。
 以上でございます。

【西尾主査】
 楠見副会長、どうもありがとうございました。
 それでは、議論に入りたいと思います。御発表への質問、意見等も含めまして、自由に御発言をお願いいたします。
 はい、どうぞ。

【伊藤委員】
 すみません。まず、基本的なことをお伺いしたいんですけれども、今、大学生8割、大学の教員6割とおっしゃいましたけれども、日本国として全体で何人の大学生がいて、8割はどのくらいか、それから大学院生は。なぜこういうことを言うかと申しますと、ほかの部会等で、これから10年の間に17万人ほど学生が減っていくだろう。ということは、2,000人級の大学の約80校分が消えていくというようなことになりかねない。そういうことを考えるために、その17万人というのが、今、どのぐらいの割合になっているのかを知りたいためにお聞きしております。

【楠見副会長】
 具体的な人数、正確な人数はちょっと把握しておりませんけれども、私立大学は約575校あります。国立大学は、今、86校でしたか。あと、公立が200校ぐらいありますけれども、私立大学の学部生レベルの学生が約80%を占めておるということでございます。

【伊藤委員】
 トータルで何人ぐらいいるんですか。

【楠見副会長】
 トータルは、ちょっと申し訳ないですが。

【中野学術企画室長】
 事務局で調べます。

【伊藤委員】
 調べてください。よろしくお願いします。

【楠見副会長】
 大学院になりますと、また比率が変わってきます。多分、国立大学の方がかなり……。

【伊藤委員】
 ここの8割というのが、どういうデータベースに基づいているのかを知りたいためにお聞き申し上げました。いずれにせよ幾つかの表が欲しいので、もしありましたらお教えください。

【西尾主査】
 事務局の方で、どうか御対応をよろしくお願いします。
 柘植先生、どうぞ。

【柘植委員】
 柘植でございます。二つ、一つはコメントで、一つ質問でございます。
 私立大学の科学技術創造立国・日本への貢献ということを考えるときに、二つ視点が要ると思います。一つは、全国700校近く私立大学はあるんですけれども、その私立大学の役割は、やはり理系、文系も含めて、科学技術、私、リベラルアーツと言っているんですけれども、こういう国民全体が持つべきものの素養を育てるという、文系、理系も含めて育てる、その使命を持っている私学の役割、その現状をどう強くするかという視点が要ると思います。必ずしも理工系だけの教科ではない。二つ目は、やはり理工系、今日のこの提言は私は非常に大事だと。
 二つ目の問題については、私はやはり流れとしては、特にアメリカの理工系はほとんど私学が引っ張っているわけです。多分、21世紀の後半は日本もそうなっていくのではないかと、私は予感がしています。国立は怒るかもしれませんが。その中で、2番目の質問なんですけれども、6ページの下から二つ目の黒丸に私学特有の問題と書いてあります。大学教員に対して企業労働者とは異なる位置付けと書いてあるんですけれども、アメリカの現在の私学における大学教員、研究者も含めて、それからアメリカを支えているイノベーション企業のイノベーターを含めた労働者と対比したときに、日本の現状はどうあるべきかということで、この位置付けが異なるという説明が必要ではないかと思います。ちょっとそこら辺、説明していただけないでしょうか。

【楠見副会長】
 今の御質問でございますけれども、最初のところはコメントでよろしいですかね。先ほども述べましたが、私立大学は、今、全体としてはやはり文系が多い状況になっておりますので、文系の教員も含めて私立大学を有効に生かしていただきたい。社会科学系とか、人文科学系も、やはりそこが重要になってくるのではないかと思っております。
 2番目、大学教員に対して企業労働者との異なる位置付けが必要であるというのは、私立大学は教員組合を持っているんです。この教員組合があると、どうしても組合との折衝というのがあって、えてして企業の労働者と同じような立場になる可能性があるので、実際にはいろいろな雇用形態とか、現状、もうそうなっておりますけれども、あるいは、これから年俸制とか言う話になってくると、やはり柔軟性というのが大事になってくると思います。アメリカについてはちょっと書いていないんですけれども、割合、自由に教員が異動したり、そういうことがありますけれども、どうしても私学はこの関係があるために自由に異動が、少し制限されているようなところがあるのではないか。そういうことをここでちょっと述べておるわけです。だから、これは非常に難しい問題なんですけれども、大学というか、私立大学は教員組合との関係がどうしてもそういうことを逆に妨げるような方向になっているところがあると、そういうことでございます。

【西尾主査】
 柘植先生、今の件、よろしいですか。
 では、佐藤委員。

【佐藤委員】
 楠見先生、貴重な御意見ありがとうございます。私、自然科学研究機構という大学共同利用機関法人の長をしておりますので、先生の御意見の中で、例えば4ページの一番上、大型共同利用施設のこと、また6ページの4番目の黒丸のところでしょうか、大規模共同利用施設への私立大学の利用促進ということが書いてございます。私たち大学共同利用機関法人としては、私学の先生にいろいろな施設を本当に使っていただきたいと思っているわけで、我々としても努力はしているつもりなんですけれども、基本的に共同利用するときは、ある部分では競争のところがありまして、申請に基づいて研究の施設によって選ぶこともございます。私学の先生、大変授業が忙しい中で頑張って使われておりますが、実際、我々としては、どのような改良をすれば、更に私学の先生方に使っていただけるのかということをお聞きしたいと思います。
 ただ、私たちは、普通、利用負担金を取るということはありませんけれども、やはりいろいろな共同施設がありますので、使いにくいとかいうこともあるのではないかと思います。大学共同利用機関法人に関しては、ほとんどお金を頂くようなことはありませんし、また、最初に書かれたような施設の共用という点も、例えば化学系のいろいろな装置の共同利用も自由に、互いに大学が連携して使えるようにしております。どのような改良があればいいとお考えでございましょうか。

【楠見副会長】
 4ページにも少し述べておりますけれども、今、採用の人数が格段に違っているというのは、余り言いたくないですけれども、やはり国立大学の方の研究者を少し優遇している面があるのではないか。これは結果としてですね。もう一つは、宿泊施設の整備、あるいは交通費等の物質的補助を、私立大学研究者に対してもやはり配慮をお願いできないか。それが研究者にできない場合は、ちょっとこちらもためらうようなところがある。実際に応募したいんだけれども、制度面でためらうようなところがあって、そういうところも一つ補助していただけると、割に私立大学の研究者がそういうところへ応募しやすくなってくるのではないか。そういう面で、少しここで述べさせていただいているんですが。

【佐藤委員】
 私立が少ないのは承知の上なんですけれども、実際、博士課程で博士を取る数の割合などを考えますと、やはり私学で学位を取れる人数は、少なくとも理工系では大分少ないわけです。研究者を出す度合い、私学は少ないわけです。共同利用の応募をするためにはやはり研究時間が必要ですし、私学として先生方に研究のインセンティブを与えるようなことをお願いできれば、私たちはいいと思うんですが。私たちは、審査は本当に平等にやっておりますし、差別ということは絶対ありませんので、どうすればよろしいのか。

【楠見副会長】
 是非お願いしたいのは、そういう大型共同利用施設の研究者の方々が私立大学と連携を結んで、そういう方が私立大学の大学院の教育研究にも携わっていただける、あるいは私立大学の研究者がそういうところへ行って、お互いに連携するような方策をもっと活発にできるように、あるいは、そういう制度がもう少しきちんとできるのであれば、それぞれお互いにメリットが出てきて、共同利用ができやすいのではないか。そういう面もありますので、実は一部やっているところもあるんですけれども、それをもう少し活発にすることによって、お互い相乗的な効果が生まれてくるのではないか。そういう制度も是非よろしくお願いしたいと思っています。

【佐藤委員】
 もう1点ですけれども、国立大学、大学共同利用機関は、最近、年俸制も多く導入し、人材の交流、大学間の交流に随分努力しようとしておりますけれども、私学の場合、もちろん国立大学と人材の交流、我々の大学共同利用機関法人とも交流があって当然だと思います。人材の交流に関して、年俸制なども含めて何か努力をされていれば、教えていただければと思います。

【楠見副会長】
 これは私立大学全てではなくて、やはりそこが非常に進んでいる私立大学と、そうではないところがあって、年俸制を実際に取り入れているところも、多分、これは外国人教員に対しての年俸制で、全体としてはその辺は進んでいないと思います。だから、そこはこれから整備して、そういう面でももう少しうまく私立大学としては整備しながら、国立との、こういう共同利用研究施設とうまくコラボレーションできればと思っております。その辺は、私立大学はこれからもっと整備をしていかなければいけないと、そう思っております。

【西尾主査】
 甲斐先生、今のことに関連しての御意見ですか。

【甲斐委員】
 ちょっと関連して。

【西尾主査】
 それでは、甲斐先生どうぞ。

【甲斐委員】
 どうもありがとうございます。私立大学の日本における重要性というのは非常に大事だと思いますので、こういう提言を頂けるのは有り難いと思います。大変いいことが書いてあるんですが、その中で、事実のどういうところに基づいて、どういうことを望まれているのか、ちょっと分かりにくいところが何点かあります。
 今のことに関係しますけれども、国立大学共同利用機関が使いにくいというような御意見でしたが、その基になっているところは、4ページの一番上にも一番下にも書いてあるんですけれども、日本学術振興会の特別研究員の採用率が私立大学は明らかに低い、これが基になっていますよね。ここがまず一つ気になったんですけれども、日本学術振興会のDCとかPDの審査というのは、ものすごく公平に、公正にやられておりまして、国立を優遇して私立を落とすなんていうことは全くないです。全く公正に行われています。私も審査をやったことがあるんですけれども、まず申請数が私立の方は少ないように感じるんです。ですから、採用率と言われるんでしたら、私立はどのぐらいなのに何%、国立はどのぐらいなのに何%、だから違うということを出されたらいいと思います。現実に、ボーダーに並んだら、私学は余りないので、むしろ有利なんですよ。珍しい大学から出されているから、是非採りましょうという議論が巻き起こるぐらいなんです。ですから、もっと出されたらいいと本当に思うんです。出されてないというのが1点だと思います。
 それで、その文脈に「大きな差がある現状に鑑みると、私立大学への援助の増加」となっているんです。では、何を援助すればいいかというのが具体的に見えなくて、すぐ続いて共同利用機関の利用の仕方を、利便性を上げよということではなくて、もっとほかにあるのではないかという感じがしたんです。どういうことを望まれているのかを具体的に教えていただいた方が考えやすいかなと思います。いかがでしょうか。

【楠見副会長】
 実は、これは安西先生のところなんですけれども、日本学術振興会の採用者の名簿というのが公表されておりまして、そのデータに基づいて人数を、26年度の特別研究員の採用状況は全部で約2,500名なんですけれども、そのデータに基づくと、国立大学が2,030、私学が270という状況がありましたので、例えばPDでいくと63%が国立、ドクターの1年生でいくと89%、2年生にいくと85%が国立で採用されている。その結果に基づいて、この文章を書いたものです。

【甲斐委員】
 申請数は関係ないですね。

【楠見副会長】
 申請数までは、ちょっとそこは載っていなかったもので、日本学術振興会のデータからこういうことを書いたということです。

【甲斐委員】
 全員は申請してないんですよね。

【楠見副会長】
 ひょっとしたら、余り申請していないかも分かりません。

【甲斐委員】
 そこが問題。

【楠見副会長】
 その辺のところは、正直言いまして、ちょっとつかみ切れていません。

【西尾主査】
 甲斐先生おっしゃいましたように、ここに書かれている文脈の裏に何か、こういう形の支援とかが必要ではないかということに対する御意見はございますか。

【楠見副会長】
 私立大学の現状は、博士課程に進まないというのは、人数が少ないというのは、やはり学費なんです。国立に比べると、やはり私学は、社会科学系や人文科学系の差はそれほどでもないですけれども、特に理工系の差というのが、例えば私学は1年間で120万円から150万円、国立の場合は50万円少しでしょうか。それと、奨学金のところも私学は少し少ないような感じがします。そこの部分を何とか、実質、後期課程の学費をゼロにしている私立大学もあるんですけれども、それは本当にレアなケースで、やはりそこの部分の差が国立と私学の一番苦しいというか、闘うことがなかなかできない。そこを何とかもう少しうまくしていただけると、博士課程にも私立大学の学生が進むような状況が出てくるのではないかと思っております。私は、学費が一番大きいかなと思います。

【西尾主査】
 甲斐先生、続きはよろしいですか。
 では、羽入先生、お待たせしてすみませんでした。

【羽入委員】
 いいえ。ありがとうございます。
 ただいまの御発表を伺いまして、国立大学と大変似たような苦境にあるというように、私は全体的には感じました。先ほどの柘植先生の御質問と少し関係しますが、人材の育成が最重要課題であると、そして科学技術立国を支える人材であるというような御意見でいらっしゃいまして、それは本当に全くそうだと思います。そのときに人文・社会科学系の話を少し出されました。人文・社会科学系の博士課程の人材の活用が進まない、あるいは進学がなされていということは、国立大学でも同じ状況もあるかと思うんですけれども、それはどういうところに原因があると私立大学としてはお考えでいらっしゃるか。あるいは、どういうことをクリアすると、人文・社会科学系の博士課程の人材が育成されやすい、あるいは活躍されやすいか。何かお考えがあったら、教えていただきたいと思います。

【楠見副会長】
 これは、多分、日本社会の構造そのものだと思うんですけれども、人文・社会、あるいは社会科学系の大学院に進学すると、ほとんど研究者しか行けていない。もっとたくさん行ったら、あるいは企業がそういう「人財」を幅広く活用できるようなシステムが日本にはまだないのではないか。そこをもっと、まだ理工系はマスターへ進むと企業等が結構採用しますけれども、社会科学系というのは余り採用がない。企業の方から聞くと、学部と大学院を採っても余り変わらない、極端に言えば大学院を採る方が少しマイナスのような感じと、そういうことを言う企業経営者もおります。そこのシステムを、大学院は高度「人財」とともに研究者養成をやると思うんですけれども、その高度「人財」のところが外国と違って進んでいない。今、社会科学系、特に経済とか、そういうところは留学生が多いんです。留学生は何で来るかといったら、当然、御存じだと思いますけれども、国に帰ったらそれなりの処遇があるわけです。給料が高い、あるいはポストがそういうところにある。日本の場合は、それができていないというのが一番大きなところではないかと思っております。

【羽入委員】
 ありがとうございます。つまり、受入れ側の問題が大きいというお考えでいらっしゃるんでしょうか。

【楠見副会長】
 そこがやはり大きいかと思っております。

【羽入委員】
 それから、一つ小さいことで、「人財」の「財」という字は、私学団体連合会は常にこういう字を統一的にお書きになっていらっしゃるんでしょうか。

【楠見副会長】
 「財」は、やはり人ですから、人を育てるというのは財産ですよね。だから、この字をあえて使っているということです。

【羽入委員】
 「材」も物だけということではないのですが。ちょっと確認したくて。

【西尾主査】
 羽入先生、よろしいですか。

【羽入委員】
 はい、結構です。

【西尾主査】
 伊藤先生、どうぞ。

【伊藤委員】
 データベースの件で。これも文部科学省で調べていただければと思うんですけれども、例えば日本学術会議の提言「我が国の研究力強化に資する若手研究人材雇用制度について」でも議論したのですけれども、常勤の職に就く年齢が大変高くなってきています。私立大学で常勤の職にいわゆる承継ポジションに入る年が大体35歳より上というようなことを聞いたこともあります。完全なデータではないので、そこら辺の本当の値を知りたい。つまり、私立大学でいわゆるテニュアポジションに入れる人と、今の国立大学でテニュアポジションに入れるのと差があるように聞いたことがあるのです。そこら辺のところはどうなっているのか。もし、テニュアポジションに入るのが遅いとなると、なかなかそちらの方に、例えば学生も行かない、若い人もなかなか高等人材が行けない。そういうような問題を抱えているのかどうか分かりたいので、もしよかったら、そのデータを調べていただければと思います。

【楠見副会長】
 テニュアポジションについては、余り格差があるとは私自身は思っていないんですね。公募などあると同じようになるので、ただ、私、データはないので、それは是非よろしくお願いしたいと思います。

【伊藤委員】
 同じでしたら、また。

【西尾主査】
 ほかに、御意見等ございませんか。

【小安主査代理】
 昔、安西先生が苦労されていたのを知っていて、こういうことを安西先生の前で聞くのは聞きにくいのですけれども、6ページに財政基盤の問題で体力がということが書かれております。この部分に関しては、常にアメリカの私立大学と日本の私立大学が比べられると思いますが、体力を付けるために、どういう仕組みを作るかを少し提案されるといかがかなと思いながら、これを読んでおりました。私立大学団体連合会の中で、そういうお話をされることはあると思いますが、何かそういうことがあれば、ちょっとお教えいただけないでしょうか。

【楠見副会長】
 この件に関しましては、私立大学としては国に対しても、政府に対しても常に要望しているというか、やはり公財政の部分の差が大き過ぎる。国立は86校で運営費交付金が1兆2,000億円、私立大学の補助金は500校以上あって3,300億円、だから私立大学に通わせている親は税金で2重に投資しなくてはいけない。いつでしたか、私立大学も公共財として認められているんですけれども、そこを早期に半額まで補助するべきだという提言もされているんだけれども、いまだにそれができていない。まず、できるだけ早くそこを解消していただきたい。常にそういうことを言っております。

【小安主査代理】
 現在、国立大学であっても、とにかく自助努力を求められているような時代になってきておりますので、そういう点では私立大学の方が先を行っている部分があってもいいのではないかとも思いますが、いかがでしょうか。

【楠見副会長】
 一つは、私立大学はやはり寄附税制が、今は国立大学の方で要望されていますけれども、これをできるだけうまく、もっと活用したい。4割還付されるので、現にそれを積極的に活用、我々の大学もそうなんですけれども、ただ寄附文化というのは、アメリカ、あるいはヨーロッパに比べて日本はなかなか難しい。ちょっと前までは企業自身が非常に苦しんでいましたから、最近は企業に寄附をしていただけるような風潮は多少出てきたと思うんですけれども、それをもう少しうまくこちらとしても活用したいと思っております。

【小安主査代理】
 ありがとうございます。

【西尾主査】
 高橋委員、どうぞ。

【高橋委員】
 いろいろな御提言ありがとうございます。
 今、出てきていない議論の一つに、教員が私立大学、教員にとって魅力的な私立大学、それから人材交流ですね。私は生命科学なんですが、ちょっと話を聞きますと、国立大学でも今は非常にポジションが厳しい時代になっていまして、私立大学の教授に移ったというような同僚もたくさんおります。もちろん、国立も私立もいいだけでもなく、悪いだけでもなく、そこでいろいろお話を聞きますと、私立ならではの問題もいろいろあると思いますが、国立にはない魅力が多々あると思って感心して聞くことがあるんです。
 何を申し上げたいかといいますと、恐らく2点あると思います。人材交流で、実質的に教員の質を向上させるために、私立ならではの御努力といいますか、あるいは国立も共通だと思いますが、どういうことが考えられるか議論なされているかということ。それから、いろいろなポジションを探している若者たちに魅力を発信する。先ほど小安先生がおっしゃったのも、やはり我々、大学人は努力をしなければいけない時代にありまして、そういうことをどれだけなさっているかというか、どれだけ今後のビジョンとして描いているか。そういう地道な努力によって、学生の質も上がり、研究意欲も上がると私自身は思っているんですが、その2点について、何か御意見、あるいは御要望等ありましたら、お願いできればと思います。

【西尾主査】
 高橋委員からの二つの点に関しての御意見をよろしくお願いいたします。

【楠見副会長】
 一つ、私立大学の教員の国立にない魅力でしょうか、ここは全体的にどう言えるか。我々の大学にも、国立大学から移ってこられた先生が結構おられるんですけれども、まず第1におっしゃるのは、やはり給料が上がったということです。

【高橋委員】
 それ、いいですよね。

【楠見副会長】
 全部ではないんですけれども、それをおっしゃる方がおられます。ただ、その分、処遇がいいというわけではなくて、やはり見る学生も実際には多いんです。国立に比べると、1人の先生がたくさんの学生を見なければいけない。あるいは、大規模な授業をやる必要も出てくる可能性があります。そういう面で、我々としては相殺はされているのではないかと思っているんですけれども、そういうことをおっしゃいます。
 もう一つ、私立大学はやはり経営をやらなければいけないので、研究に特化した教員ポストというのがなかなかないんですね。作っておられるところもあるかと思うんですけれども、そういうのは本当に少ないです。だから、そういうところは逆に言えば、もう少し何らかの公的な支援があれば、私立大学でも十分研究できますので、そういうポストが作れると私立大学としても非常に有り難いと思っております。

【高橋委員】
 今のに関連してよろしいですか。

【西尾主査】
 どうぞ。

【高橋委員】
 ありがとうございます。私は、昔、私立で教べんを執ったこともありますし、それなりに分かっているつもりなんですけれども、何かの機会、文部科学省の方にもお願いしたいんですが、やはり人材交流、別に国立がいい、私立がどうとか言うつもりは全くありませんで、私は呼応することが重要だと思っております。ちょっと言い方は変かもしれませんけれども、ある大学、あるいは全体で、助教、准教、教授と待っていたらそのままポジションが上がるというようなことがどれだけまだ残っているのか。国立大学でも昔はこういうことがたくさんあったわけですが、ちょっと旧態依然としたものがどれだけ残っているのか。それから、国立なり、ほかの私立から若手がどんどん入ったのが実際に数値で出ますと、ちょっとこの動向もつかみやすいのではないかと思っています。実力のある若者がどんどん来て、そして先ほどから出ております科研費など、ごめんなさい、ちょっと話が戻るかもしれませんけれども、私が小耳に挟んだところによりますと、ある私立大学は科研費の申請がほとんどないんだと。それではやはりよろしくないわけで、そういうことも全部一緒になって、どんどんとエネルギッシュな活力が、そういうものにとにかく出そうじゃないかというところで競争的資金も取ってこられる、間接経費も上がるということでは、人材交流は非常にキーポイントだと思います。そこら辺での何か御提言が将来的にまた頂ければと思いますので、よろしくお願いいたします。

【西尾主査】
 楠見先生、人材交流に関して何かコメントとかございませんでしょうか。

【楠見副会長】
 やはり先ほども少しありましたけれども、流動性を高めるということが私立大学の場合は、これはちょっと改良しないといけないんですけれども、どうしても教員組合との関係とかがあって、先ほどちょっと申し上げたように、ここがネックになっているところがあります。この部分がもう少し何かうまく、労働者ではなく、その面を解消すると、もっと「人財」交流がうまくできるのではないか。

【高橋委員】
 それ、国立も一緒なんじゃないかな。

【西尾主査】
 そういう組織制度的なことも多分にあるのですね。分かりました。
 はい、どうぞ。

【中野学術企画室長】
 先ほどの伊藤先生からの学生数等の御質問でございます。口頭で恐縮ですが、データを申し上げます。
 まず、学部生でございますが、全国で、国公私全体で255万2,051人、国立が44万7,339人、17.5%ぐらいかと思います。公立が12万8,878人、5%ぐらいです。私立大学が197万5,834人、77.4%という数字でございます。なお、修士、博士になりますと、やはり国立がだんだん多くなってくるということで、修士が全体で15万9,929人いるところ、国立が9万3,403人、58.4%、公立が1万514人、6.6%、私立が5万6,012人、35%、国立が58%、私立が35%です。博士になりますと、7万3,703人という全体の中で、国立が5万686人、69%、公立が4,789人、6.5%、私立が1万8,228人、25%という数字でございます。
 すみません、またメール等でお送りをさせていただければと思います。

【伊藤委員】
 ありがとうございます。

【西尾主査】
 データの提供を頂き、どうもありがとうございました。
 それでは、安西先生、どうぞ。

【安西委員】
 まず日本学術振興会の方から申し上げますと、日本学術振興会の特別研究員の審査については甲斐委員の言われるとおりで、全く公平、公正に行っております。私立大学の在り方につきましては、私もいろいろ経験がありまして、日本私立大学団体連合会にも長い間携わりましたが、楠見先生が言われたような学費の問題や競争的資金への申請を支援する職員数の問題もありまして、やはり国立大学と比べて私立大学のサポート体制は非常に薄くなっていざるを得ないような、経営の問題もあってそういう状況があると思います。
 人材交流については、国立大学と私立大学で年金体制が違うという面もありまして、動くと損するということは随分あると思います。そのことは、やはり現実には大きな課題でございます。
 それから、私学助成につきましては、私が元いた大学では、年間予算のうち私学助成の占める割合というのは約8%でございまして、その中でどういうパフォーマンスを出すかというのは、やはり国立大学とは違った努力が必要だということは申し上げておいてよろしいのではないかと思います。
 年俸制につきましては、私の知っている限りでは、私立大学にあって国立大学にないものとして、選択定年制は、実際、国立大学にはほとんどないと思います。
 そのようなことが細かくはあもりますが、私が申し上げたいのは、私立大学が苦労していること、国立大学が苦労していることは多々あるのに、お互いに、私立大学は自由があっていいではないか、国立大学はあんなに予算があるのにどうしてもっと欲しがるのか、というように見ている面が強いように感じます。学術研究、人材育成、教育を本当に大学が一丸となって進めるためにはそこを乗り越えないといけないので、文部科学省主導ではなくても、これからの大学が本当に具体的にどうしたらいいのかということを一緒に語り合うようになっていただきたいと思います。
 私立大学も、楠見先生はじめ大変努力をしておられて、ここに書いてある大学共同利用機関につきましてもやはり楠見先生のおっしゃるような面というのは、なかなか言葉にはならないですが、あるようにも思います。ただ、国立大学にも苦労がありますので、是非垣根を超えて、語り合っていただけるとうれしいと思っております。

【西尾主査】
 羽入先生、国大協の立場から何か御意見ございませんでしょうか。

【羽入委員】
 そのこともあって、先ほどちょっと御質問させていただいたんですけれども、自然科学系と人文・社会科学系、どちらも持っている大学という機関において、それをどういうようにバランスを取っていくかということなど、今、国立大学協会で議論し始めておりますので、是非御一緒に議論させていただく機会があればと思います。

【亀山委員】
 よろしいですか。

【西尾主査】
 どうぞ。

【亀山委員】
 飽くまで補足的な発言です。私は、今、私立大学の学長を務めておりますが、2年前までは国立大学の学長を務めておりましたので、幾つか申し上げたいことがあるんですが、例えば選択定年制の問題については東京外国語大学時代に、もう5年前に導入しております。ただ、現に私たちの大学が経験していることを述べますと、毎年、15名から20名の教員の入れ替わりがあるんですね。その際に、ほとんどが65歳で定年になられた先生、優れた先生方の雇用というところに傾きつつあります。それぞれの先生方は、やはり名前も地位も、また研究業績もあるということで、大学のアピールに非常に役に立つ。逆に若い人を採用するといずれ人件費が徐々にかさ上げされていき、最終的に1,000万円とか1,200万円となれば、将来的に財政を圧迫する可能性があるということで、できるだけ65歳から70歳までの間の、人件費を抑えられる教員の確保ということが最優先になります。
 あと、大学院全体の問題ですが、私学の経営からすると、少人数教育が求められる大学院はある意味お荷物のところがあって、やはり多くの資力といいましょうか、それをできるだけ学部教育に投入しようという基本的な流れがあります。とりわけ人文系の場合には、いわば添え物のような形をとってしまうということは極めて残念ですが、必然だと思っておりますし、また、私自身、学部教育にこそが私学の使命があるのかもしれないと思っています。私学が研究を志向するというのは、一部の限られた大学であると思われます。
 また、領域的な問題でいうと、やはり今、グローバル人材育成といったようなことで、とにもかくにも英語人材にものすごく需要があって、いわゆる英語以外の、つまり学問全体を底上げするような専門性を持った教員の採用というのが、本当に不可能に近くなってきているんですね。ですから、当然のことながら、英語でも、英語教育学といったところは本当に引く手あまたで、つい先日も、東北大学の高度教養教育・学生支援機構というところから先生方が見えられて、英語教育の優秀な方を採りたいのでどなたか紹介していただけませんかと相談を持ちかけられたほどでした。そうすると、特に英語以外のディシプリンを志向した先生方は、本当に若い人が全く職がなくなってしまう。また、65歳の優れた、そういう団塊世代のパワーが今もますます生きてきているということがあって、ここしばらくは、とりわけ英語以外では、若い人に研究者のポストが回る可能性は余りないのだろうというのが状況だと認識しております。

【西尾主査】
 どうもありがとうございました。議論はいろいろと尽きないところでございますけれども、お時間がそろそろ来ております。楠見副会長、最後に、こういうことは是非言っておきたいとか、何かございませんでしょうか。

【楠見副会長】
 皆さんの中間報告でも当然書いておりますけれども、これは国公私立関係なしに、先ほど申し上げたように、研究は博士課程が世界標準ですので、やはり博士課程の充実、それと「人財」を生かす、ここが日本にとっては一番大きいところではないかと。実際には機能していない状況ですね。だから、それは別に分野問わず、博士課程の充実を、場合によっては文科だけでなくて、ほかの省庁も一緒に考えて、それをやらないと、多分日本の科学技術立国とかいうものはできないんじゃないかと、そう思っておりますので、是非よろしくお願いしたいと思います。

【西尾主査】
 どうも貴重な御意見、ありがとうございました。
 それで、議論は尽きないところですけれども、予定の時間となっております。楠見副会長、本日は御多忙のところ、この委員会に御参加いただきまして、また貴重な御発表等、また質疑等にもお答えいただきまして、本当にありがとうございました。心よりお礼申し上げます。

【楠見副会長】
 どうもありがとうございました。

【西尾主査】
 それでは、次の議題に移らせていただきます。
 中間報告をまとめて以来、本委員会におきまして様々な立場の方々から御意見を伺ってきたことなどを踏まえ、最終報告に向けて、新たに盛り込むべき点について議論したいと思います。最終報告に向けた主な論点案について、これまでのヒアリング等を踏まえて、事務局に取りまとめいただいておりますので、まず事務局より簡単に説明を頂きます。その後、意見交換・質疑を含めた自由討論とさせていただきます。なお、自由討論はおおむね50分間程度とさせていただきたく思っております。
 それでは、まず事務局より資料2等を基に御説明をお願いいたします。

【中野学術企画室長】
 失礼いたします。資料2といたしまして、「最終報告」に向けた主な論点(案)というたたき台のようなものでございますが、用意させていただきました。それから、これの基になるものといたしまして、3-1、3-2とありますけれども、まず3-2を御覧いただきたいと思います。
 これまで5月に学術研究の推進方策に関する総合的な審議についての中間報告をおまとめいただいた後、各界の様々な関係者の方からヒアリング等を重ねてまいりました。第6回以降、国際的な視点、人文学・社会科学の視点、地方の視点、若手の視点、それから前回、産業界の視点、そして、すみません、今日の議論は入っておりませんけれども、私立大学の視点ということで御意見を伺ったということと、加えまして、事務局の方で中間報告を様々な方に御説明をさせていただいて、御意見を頂戴しております。それについては、本日、机上配付ということで、これまでの意見まとめ(全体版)と、かなり大部になっておりますけれども、お配りしておりまして、机上配付資料の最後のページに、これまで御意見等を頂きました方の一覧を載せさせていただいております。その中で、中間報告についてサポートいただく御意見等もたくさんございましたけれども、事務局の判断で恐縮ですけれども、中間報告では少し弱かった視点というのがあるんじゃないかということで頂いた意見をピックアップしたものが資料3-1でございます。
 それで、こういった御意見を基に、資料2といたしまして、主な論点の案を作成させていただきました。資料2を御紹介させていただきたいと思います。まず、柱書きのところですけれども、基本的にここの特別委員会でかなり御審議いただきました中間報告というのがございますので、最終報告はその方向を踏襲してはどうかと。ただ、それに加えて、それ以降の議論ですとか、ヒアリングでの御意見等を踏まえて、またもちろん、ほかの関係の部会等での審議が深まっている部分もございますので、加筆をしていってはどうかということでございます。
 まず1点目といたしまして、国際のヒアリングとも関係しますけれども、国際的な学術ネットワークへの積極的な参画ということで、アカデミーの世界的な動きについて、様々な動きが進んでいる中で、そういった動きに日本がなかなか参画できていないという御意見がございました。こういった動きに日本の学術界もより積極的に参画し、国際社会へ発信・貢献していくことを期待するということと、国・政府においても、そういった動向を踏まえて振興施策の実施や、学術研究にふさわしい指標に基づく分析、発信をしていくことが必要であるといった趣旨のことを少し補強してはどうかということでございます。
 2点目に、人文学・社会科学の振興でございます。中間報告におきましても、当然、人文学・社会科学も視野に置いた全体の御提言を頂いたところでございますが、人文学・社会科学の特殊性というのもございますので、あらゆる学問・文化・人間の根幹・基盤となる知を創出する学問分野としてのサイエンスの在り方、評価の在り方などを含めまして、そういったことを人文学・社会科学として示して、実践していく必要があるのだということ。それから、「特に」というところは、前期の学術分科会のまとめにありました現代社会が内包する課題に向き合うといったことも引き続き期待されているのではないかということを書かせていただいております。
 それから3点目ですけれども、学術研究の地域再生への貢献ということで、地域の様々な課題に対して、各地域の大学を通じて、地域社会・経済を活性化する多様な人材の育成・供給はもとより、地元企業等との連携による革新的技術の創造や、文理融合の研究による地域資源の活用など、学術研究が地域の再生に貢献し得るんだという、この役割を少し補強してはどうか。
 また、ヒアリングの際にも御意見がありました地方の大学と都市部の大学との間の人材の流動化ということをより進めることは、研究者育成という観点からも、地域活性化という観点からも有益であるといったことを書いてはどうかということでございます。
 それから、4点目の大学と産業界の対話の必要性、これは前回、産業界の方との意見交換もございましたけれども、学術研究により創出された知を更に発展させ、経済的、社会的、公共的価値に具体的に結び付けていくために、大学と産業界の情報共有の場を充実させて、双方が積極的にコミュニケーションを取る必要があるということでございます。
 それから裏面に行っていただきまして、施設設備の共有ということでございます。これは、これに特化した議論はしておりませんが、いろいろな方から施設設備の共有、共同利用の重要性ということを御意見として頂戴しております。当然、大学共同利用機関ですとか共同利用・共同研究拠点というところで、主に大型のものについては進んでいるわけですけれども、中規模のものを含めてまだまだ無駄があるんじゃないかという御意見がございました。施設設備の共同利用は、日本全体の資源の有効活用・効率化や研究者交流の促進等の観点から非常に有益であるため、積極的に推進していく必要があるということでございます。
 それから最後ですけれども、改革の実現化に向けた具体的方策ということで、この中間報告について、かなり御賛同の御意見を頂いてはいるんですけれども、考え方はそのとおりだけど、いかに実現していくのか、実践していくのかということが重要という御意見が何人かの方からございました。学術研究の挑戦性、総合性、融合性、国際性という中間報告の方向ですけれども、それを高め、社会の負託に応えるため、国と学術界双方が本報告書を踏まえた方策を具体的に推進していく仕組みのようなものが必要でしょうし、そのフォローアップを行っていくことが必要ということでございます。
 これは、飽くまでたたき台でございますので、これ以外の観点もございましょうし、観点として挙げさせていただいたこともかなり抽象的な書きぶりになっております。これをたたき台に御議論いただければと思います。
 併せまして、本日、参考資料といたしまして、何点か最近の動きの関連の資料をお配りしております。こういった外の関係の動きも踏まえての御議論ということになると思いますので、簡単に紹介させていただきます。
 まず、参考資料1は、皆様御案内のノーベル物理学賞ということで、この特別委員会でも話題になっておりました赤﨑先生をはじめ、3人の日本人の方がノーベル物理学賞を受賞されたということで、これは報道発表の資料を3枚ほど付けていますけれども、その後のページにポンチ絵のようなものを付けておりますが、まさにこちらで御審議いただいております研究者の自由な発想に基づく学術研究がイノベーション創出の源泉になったという好事例かと思いますので、こういったことも事務局の方で様々なところでの御説明に使わせていただいているところでございます。
 それから、参考資料2は、産業競争力会議の関係の動きでございます。昨日、産業競争力会議の下に設けられております新陳代謝・イノベーションワーキンググループというものがございますが、これは成長戦略の、まだ弱い点をもう少し補強するという観点のワーキンググループの一つでございます。そちらの第1回がございまして、大学改革とイノベーションというのがテーマになってございます。文科省ですとか熊本大学の学長等の御発表もありましたけれども、1枚おめくりいただきまして、資料1-1といたしまして、このワーキングの主査からの、これは主査の個人ペーパーだと思いますけれども、論点ペーパーというものが示されてございます。
 いろいろ書いておりますけれども、4/22ページのところから検討課題というのがあって、論点が何点か挙げられております。大ざっぱに申しますと、主に大学の機能分化というのをより一層進めて、グローバルに競争する世界水準の研究大学を特定研究大学と指定して、様々な制度的な法的措置も含めた検討をするということですとか、地域イノベーションの参謀となる拠点大学の形成、それから三つの類型に機能分化という話がございますが、その類型ごとの評価指標を確立し、更にそれを運営費交付金に反映するといったこと。そして、6/22ページのところでは、本特別委員会の議論にもあったことですけれども、競争的資金の改革ということで科研費の話も触れられてございます。もちろんこれを運営費交付金、基盤的経費と一体として改革するということでございます。それから論点6といたしまして、これも研究環境基盤部会の方でも御議論いただいております大学共同利用機関や附置研究所等の研究拠点改革、ミッションの再定義をして、大学改革と一体的に研究拠点改革を進めるべきではないかといった視点。それから、論点7として、地域オープン・イノベーションという、全部で七つの論点が挙げられております。
 スケジュールというのが7/22ページにありますように、3回ないし4回ワーキングを開催し、来年1月に基本的な考え方を取りまとめるといった流れになってございます。
 参考資料2は以上でございます。
 それから参考資料3でございますが、これは科学技術・学術審議会の総会の直下に置かれております総合政策特別委員会の前回の配付資料の一部でございます。御案内のように、第5期科学技術基本計画に向けた全体の議論をしていただいているということで、学術の話はインプットをさせていただいているということでございますが、前回、第4回の総合政策特別委員会で、オープン・イノベーション時代、グローバル時代における研究開発、成果活用・社会実装の在り方についてというテーマの議論が、かなり広いテーマですけれども、ございまして、その中で基礎研究についても触れられています。
 基本的考え方が1ページ以下にございます。様々な社会状況を踏まえて、スライドの3ページのところですけれども、第5期に向けて、下の方、卓越した知識・技術を持続的に創出できるよう、イノベーションの源泉を強化するということ。その中では、人材の話ですとか、イノベーションの源泉たる学術研究・基礎研究の強化ということも書かれてございます。
 それとともに、イノベーションを担う民間セクター等々ということで、新しいイノベーション・システムの構築という2本の柱が立てられているということで、それに沿ってスライドの4以下に具体的取組ということで、イノベーションの源泉の方では、学術研究・基礎研究について、科学技術イノベーションにおける役割を十分に発揮できるよう、その改革と強化を図るといったことが記載されているところでございます。この総合政策特別委員会の議論は継続して続いておりまして、年内ぐらいに中間まとめというふうに聞いております。
 事務局からの説明が長くなって恐縮です。以上でございます。

【西尾主査】
 どうもありがとうございました。事務局から今後、追加的に記述すべき事項であるとか、またこの委員会の審議内容と何らかの形で関連して産業競争力会議での議論が参考資料2のような形でなされていること、さらに、第5期の科学技術基本計画に関する議論が現在進展している中で、ここの委員会で議論していることと関連したこととして、どういうことがあるのかということについて説明を頂きました。
 そういう周辺事情も含めまして、この委員会における最終まとめをどのようにインパクトある形でまとめていくべきかについて、皆様と議論を行いたいと思っております。
 それでは、事務局からの説明への御質問、御意見等も含めまして、自由に御発言を頂ければと思いますが、どうかよろしくお願いいたします。
 平野先生、どうぞ。

【平野委員】
 私は、事務局がまとめてくださった論点資料の2について、基本的にはこれは是非、議論の中で今後詰めて入れていかなきゃいけないと、思うわけでありますが、特に昨今の動きを見ておりますと、大学と産業界の対話といいますか、もうちょっと言い換えますと、あちこちで重要とはいえ、似たような会議がいっぱい動いていますので、それがどこでどういうふうに機能してくるのかというのは全く見えないというのが大変心配していることであります。
 この委員会が1番で、ここの意見を聞けと言うつもりは毛頭ありませんし、そういうつもりではなく、あるいは対じするんだというつもりも全くないんですが、どこかで、ここの1ページ目の最後に言われているように、例えばそこの一部が産業界の方からの意見が強いとしたら、当然、この方々との対話を更にしなければいけないと思っております。
 先日も貴重なお話を伺ったんですが、個人的には、一部の内容については大変危惧する内容も含まれておりまして、相互がきちっと腹を割って、中の実情を理解し合わないと、お互いが批判したまま終わるんではないかと、どちらも徒労に終わるのではないかと心配します。現場の方で理解をしないで、それで改革につなげて動かない限りは、それは実を結ばないわけでありますから、そういうことも含めて調整をし、あるいは議論をしていく場が必要であると思っております。
 一つ、大企業が悪いとは何も思っておりませんし、大企業は非常に大きく貢献をされておりますが、以前から申し上げておりますように、学術そのものを大変大事にしてくれて、そして産業まで結び付けてくれている、言ってみれば、昔ベンチャー的な部分から出て成功している企業もたくさん日本の中にあるわけでありまして、そういう方々のところが日本の中枢の有識者会議等々に余り出ていないというのは、私はずっとお願いを言っておるんですが、大変残念であります。そういう方の話も是非聞いていただきたい。
 特別、今回のノーベル物理学賞の研究を苦労されながら実用化した豊田合成の話を聞いてくれということも強調するつもりは全くありません。しかし、私はずっと昔から近くにいて知る限りは、全く基盤がないところで、あの赤﨑先生の仕事の一番基礎の段階のところで研究者が是非ということで社長さんにお話をし、基盤がないところからあそこまで立ち上げておられる、こういう、何を基にして企業が動いているのかというところもやはり知っておきたいと思いますし、そういう企業が更に多く、増えていただきたいと思います。
 長くなって申し訳ありませんが、一昨日、アメリカから帰ってきたんですが、たまたま学会の後、前から招へいされていたワシントン大学に行きました。学術的な議論が中心でしたが、大学教授たちが起業化をする、そのキャピタル支援者との議論の場にも出るように依頼されたので参加しました。これまでもある程度は理解はしておりましたが、ここの基礎の段階から、もうきちっと応援をし始めるのだということについては、改めて彼らが学術の基盤のところを大事にしながら、草の根のところから参画されてくるんだというのも大変うれしいといいますか、大きく差があるなと思いながら感じてきたところです。
 ちょっと長くなりました。

【西尾主査】
 ありがとうございました。柘植先生、どうぞ。

【柘植委員】
 柘植です。二つ申し上げます。一つは、資料2の「最終報告」に向けた論点の中で、資料4のメッシュで、資料4は学術の基本問題に関する特別委員会の概要(ポイント)、これはかなり今までの議論がよく盛り込まれたファインメッシュの内容、これがよく盛り込まれた上でのプラスの加筆というふうに理解しています。是非とも資料4の中を盛り込んでいただきたい。
 特に私が重視していますのは、科学技術・学術審議会の領域を少し超えた高等教育の部分ですね。今日は高等教育企画課長が来てくれていますけれども、高等教育の、特に博士課程教育の抜本的改革という言葉は慎重さが要るかもしれません。そういうところまで踏み込んでいる画期的な報告になることを期待しています。
 危惧していますのは、参考資料3で、我々の上位の方の総合政策特別委員会の配付資料が出ているんですけれども、これを見ますと、人材育成の件では随所に触れているんですけれども、博士課程教育、あるいは教育効果の世界レベル化という横串的な施策のものがないんですね。それぞれの中には埋め込まれているんですけれども、博士課程教育の世界レベル化とか、そういう横串的なものの、これは実際はやろうとすると、この中に埋め込まれている研究とイノベーションへの参加とか、それから博士課程の経済的な支援とか、私に言わせると、四位一体的なプログラムの独立したプログラムが必要になってくると思うんです。多分これは高等教育局との合作になると思うんです。多分これに書くのは公式にははばかられるようなものだから出てきていないんだと思うんですが、あえて私はスタンドアローンでここに出すべきだと思うんです、高等教育局との合作でですね。それが非常に気になります。ここを書くか書かないかは、今までの報告と、画期的な報告とのグレードが全然違うということです。
 もう1点だけ、今日、ぱっと配りました日経の話です。

【西尾主査】
 新聞の記事を皆様に机上配付しております。

【柘植委員】
 これは、大学と産業界の対話の必要性についての非常に悪い例として私は配付しました。日経新聞の10月4日の、文部科学省は50億円を計画して、理工系の博士課程人材ですかね、これ、即戦力を育成するということを報道しているわけです。これは、私は産業人のOBとして、産業界は即戦力を育成してくださいと期待、要求しているとは思えません。長期的に、特には博士課程の産業界に期待しているのは、やがてイノベーティブな素質を持って、やがてリーダーになってくれる素養を持って社会に出てくれる、そういう人を期待しているという、一言で言うと、言うならば、鉄は熱いうちに打って社会に出してくださいと、こういうことだと思うので、決して即戦力を持って出してくださいって誰が言っているんだろうかと、逆に文部科学省はメディアにこういうふうに誤解を与えるような50億の計画を伝えているんだろうかと。まさに資料2の大学と産業界の対話の必要性というの、これ、私は驚がくしました。
 ですから、これは本当に、現状、こういう誤解を受けている、まさに大学と産業界の会話の、まだ不徹底といいますか、これの事例だなと思って、今日配付しました。
 以上です。

【西尾主査】
 どうもありがとうございました。平野先生、柘植先生の御意見を伺いますと、やはり、大学と産業界の対話というところが非常に気掛かりです。このことに関して最終まとめの中で、今後のあるべき方向性とか、現在、早々に行うべきこととかについて、もう少し強力に記述することが重要だと思います。
 森課長の方から、柘植先生からの御意見に対しての回答は何かございますか。

【森高等教育企画課長】
 この日経新聞の報道のは、来年度の予算要求で、50億円で理工系プロフェッショナル教育推進事業というのを要求しておりまして、これの報道だと思います。これについては、即戦力の養成ということを特に挙げているわけではなくて、どちらかというと、大学と産業界が協働して教育プログラムを作ってくださいということで、教育内容をどういうふうに組んでいくか、それから実務家教員の派遣を産業界からしていただくとか、あるいはインターンシップの提供先を出していただくとか、そういった、大学と産業界が協働して、高度技術開発人材、それから経営戦略人材、理工系と言っていますけれども、経営戦略人材、そういった分野での、教育の、高度な職業人養成という面もありますけれども、産業界との協働の中での新たなプログラム、そういうものを提案していただいて、それを公募して、それに対して支援をしていこうという、そういう要求でございまして、そういった大学の教育内容を、大学教育の改善のために産業界と協力して取り組んでいく。そういうものを新たに支援していこうかと、そういうような予算の内容ではございます。

【柘植委員】
 一言だけ。

【西尾主査】
 どうぞ。

【柘植委員】
 森課長、是非留意してほしいのは、私も産業経験者で、産業人もそんなにレベルが高いわけではありませんで、人材開発課長なんかは、本音は即戦力の人材が欲しいなどというので、この具体的なプログラムに対してくちばしを挟むんです。ですから是非、そういうのに流されることなく、企業トップの連中の意見を優先するようにして、政策をきちんと指導していただきたい。是非とも、それをちゃんとメディアに、政策はきちんとそういう形で、長期的視線でやっているんだということは、随所、メディアにも流していただきたい、お願いします。

【西尾主査】
 中野室長、どうぞ。

【中野学術企画室長】
 事務的なことで恐縮ですけれども、柘植先生の御発言の1点目の、人材の観点からのドクターの世界レベル化といったことが抜けているというお話だったんですけれども、すみません、これは事務局の方で、総合政策特別委員会の第4回、前回の配付資料をお配りしておりますけれども、その前の回に、人材ということで特化して議論をしていただいたことがございまして、そこでは当然、高等教育の観点も含めて議論がなされておりますので、後ほどその資料も御提供させていただければと思います。総合政策特別委員会は、文部科学省全体で高等教育局長も参加してやっておりますので、後ほどメールでお送りさせていただければと思います。

【柘植委員】
 そうですか、安心しました。

【西尾主査】
 どうもありがとうございました。
 そうしましたら、森課長には柘植委員のおっしゃっているようなことを、是非、今後御配慮いただければと思います。博士課程教育リーディングプログラムにしても、単に即戦力よりも、イノベーションを今後本当に創起していくような、教養も備えたリーダー人材を育てるという方向性を出していますので、そこがぶれていくことが気掛かりです。どうかよろしくお願いいたします。

【森高等教育企画課長】
 中教審の大学分科会大学院部会で、今後の大学院の在り方、振興策について議論を始めているところでございまして、この学術分科会の中間報告も御紹介して、それで議論をしてございます。ですので、こちらの学術分科会の議論の状況等も、その大学院部会の方では適宜御紹介しながら議論を進めていくようにしたいとは思っております。

【西尾主査】
 どうもありがとうございました。ほかに御意見はございませんでしょうか。
 武市先生、どうぞ。

【武市委員】
 この資料2はこれまで議論してきた内容を簡潔におまとめいただいているので非常にいいと思います。1点だけ述べさせていただきます。これまでのお話の中にも、人材が、大学等における生産物、つまり結果としての人材という結果を見ている、つまり成果として見ているということになっています。研究の成果の部分についても、レビューを受けた論文という結果という指標で見たときのことが書かれていますが、実際に学術研究を進める上での質の問題、あるいはその質全体を高めるという観点を置くべきではないかと思います。もちろんこれは施策とか、改革の実現化というときに、何かの指標があるかということをいわれると、質はどうかということがあります。現時点では、これは個人的な印象ですが、大学教育、あるいは研究で、本当に質が確保できているのか。そういう質を、人文学・社会科学の振興も含めてですけれども、現時点で、すぐに結果が見えるようなものでなくても、学術としての研究を維持していく必要性があるということについて、また、基礎研究もそうかもしれません。そういったことを、何らかの形で強く訴えるというのが、今、我々に求められていることではないかという気がいたします。

【西尾主査】
 先生、それは質の保証という観点でございますか。

【武市委員】
 質といっていいかどうかですけれども、例えば、研究の質をどう図るかというようなこと。これにはいろいろな側面があると思いますけれども、それを単にビブリオメトリックスでやればいいとか、そんな話ではなくて、各大学人あるいは科学者のコミュニティが、自分たちの研究の質をどう担保するかということだと思います。それによって、人材もきちんとした人材を育成できるという、その根幹的なところが大事であるというふうな位置付けが必要であろうという気がいたします。

【西尾主査】
 分かりました。鈴村先生、どうぞ。

【鈴村委員】
 武市先生がおっしゃった大事な点を、私なりに少しパラフレーズさせていただきます。研究指導の適格性の評価に際しては、結果として生み出される研究成果も当然重要ですが、若い研究者を育成して、研究者として離陸させ、成熟させていく指導の技法、指導のプロセスそれ自体の固有の意義を見過ごしてはいけないと思います。実際、短期的な研究成果に視野を絞って学び、研究の作法を緻密に学んでいない研究者は、研究者としてのアリバイ作りにも似た短期的な成果を上げ、とりあえずファーストステップを踏んで次の段階に進んだ途端に、すぐ息切れしてしまう危険性があるのです。研究者は、長い時間的視野を体得して、自らの研究のシーズの発見とその長期的成熟に徹底的にこだわること、持続する志を高く維持して、少々の挫折にもめげずに自分の研究プログラムの成熟に賭けるきょう持を持つべきことを、研究の作法として学ぶ必要があると私は思います。このような研究の作法の世代間継承にこそ、優れた研究指導の要諦があるのだと思うのです。研究者養成に関する提言においては、このような観点にも御配慮いただきたいと思います。

【西尾主査】
 どうもありがとうございました。
 高橋先生、どうぞ。

【高橋委員】
 今のことに関連して、私も似たような、あるいは違う、それこそリフレーズさせていただきますが、今回もノーベル賞が出まして、非常にうれしいことなんですけれども、ノーベル賞が出るたびに、その方々は同じことを言われるんですね。やはり自由な環境で、のびのびと考えているからこういうことができたんだと。何回そういうことをおっしゃっても、それが施策に反映されないのは一体どういうことかということです。
 今回、もう一度改めて考えて、文言はともかく、私は日本が育んだ非常にすばらしい研究環境、これが失われてしまった。それを是非とも回復する、こういうことを言うと守りと思われるかもしれませんが、いけいけどんどんのままで、研究がうまくいくはずがないと。そういうことをもう少し真摯に捉えて、そのことを全面的に主張するということを取り入れるべきかと思います。それは、具体的にはどういうことかというと、ここに書いていることも全てすばらしいんですが、ありますかね、研究者の、私なんかは大学ですけれども、大学、研究者、教員の徹底的な研究環境の整備がないと、学生の教育もできませんし、幾らプロジェクトを頂いても、うまいこと回らないということがあります。
 ちょっと恥さらしのようなことになるかもしれませんが、京都大学の理学研究科は、確かにお金はたくさん来ていると思われるかもしれません。リーディング大学院を持って、SGUも来て、そして現状はどうなっているかというと、我々教員は研究ができない環境になっているわけです。あれもやれ、これもやれ、それで学部は持っておりますし、実習もやります。一生懸命、24時間へとへとになって働いて、論文1本読めてないじゃないかという、これ、ちょっとオフレコですけどね、でも、これが現実なんです。こんな、何とかせい、あれせいとかいって、もう、これ以上やったら教員が死んでいきます。だから、我々といいますか、もちろん京大だけではなく、優れた研究者を殺すなと、死んだら何もできません、この内容。ということを、うまく文言を整えてください。私はその文言は得意ではありませんので、それは中野さんにお任せしますということですね、いつものように。
 先ほど、武市先生が言われたことこそが重要で、今、やはりいけいけどんどんで、質より量みたいな、その方が、対財務省にはアピーリングかもしれませんが、ここは非常に危なくて、私たち研究者は、絶対的に量より質を取らなければいけない。何が起こっても、たとえお金が来なくても質を確保しなければいけない。これが随所に表れておかないと、やはり本末転倒。我々研究者が研究できない状況を作って、日本に未来があるのかといえば、あるわけがないですよね。そういうところこそ、せっかくこれだけ議論して、私は、これを入れてほしいではなくてむしろ前面に出すべきじゃないかと。こういうときに蒸し返すようで申し訳ないのですが、武市先生、鈴村先生の意見を受けて、ちょっと勇気を持って言いました。よろしくお願いします。

【西尾主査】
 高橋先生、どうもありがとうございました。
 今回、中間報告に追記していくに当たって、高橋先生がおっしゃったことは全体的にもう少し強化して書いていただくことが本当に重要に思いますので、是非ともお願いします。
 金田先生、どうぞ。

【金田委員】
 今の御議論に大賛成で、それに加えてもう一つ、とどめを刺させていただきたいのですが、はっきり言いまして、例えば人文系の場合に、現在の博士課程前期・後期というシステムでの5年ですね。博士後期だけでいうと3年ですが、それで学位を書かせると、書くことはできるんですけれども、その学位に関わる論点以外のところでは役に立つ人材を育てる期間としては極めて短いんです。ですから、現実には役に立たない研究者を再生産しているという状態になっちゃうんです。極端な言い方をいたしますと。
 ですから、そこの部分も含めて、例えば現実に3年間で、私は余り世界中を知っているわけではないのですけれども、イギリスとかアメリカの場合だけでいいますと、人文系で、3年間で学位を取っている人というのは極めて少なくて、3年間ほどで学位の提出資格があって、後はフィールドへ行ったり、いろいろなところで研究して、5年から7、8年の間くらいに出すというのが一般的だと、私の認識では思っているんですけれども、ともかくそういう制度的なプロセスも含めて、余りに性急に学位を、形としての学位論文の作成を求め過ぎているのではないか。特に人文系の場合にはそう思います。

【西尾主査】
 どうもありがとうございました。
 平野先生、どうぞ。

【平野委員】
 すいません、今、柘植先生から責任あったものとして修正を求めた方がいいと言われましたので、発言させてください。ノーベル賞うんぬんで言うつもりはありませんけれども、今の資料、これ、文部科学省資料という報道発表というものなのですが、この資料についてであります。

【西尾主査】
 参考資料の1ですね。

【平野委員】
 先ほどから柘植先生に、責任者の1人であるから言えと言われているのですが、私も是非言いたいと思います。
 それは、今のお話に続くようなことでありますが、この資料の一番最後の絵であります。文部科学省で作成というのが、全体では間違いではありませんけれども、時間軸と、ここにあるところの国を含めた支援が、これではよく見えていない。是非、いろいろな方に説明をしていただくためには、大学等における研究というところですが、これをやるところでは運営費交付金、あの時代はというのか、私の若い頃も、おかげさまで、今と比べてまあまあよかったと思うのですが、科研費に申請する前段階で芽出しをして確かめておくような費用に使用する分がありました。申請をする研究費では、まだ取れない段階のもので、チャレンジできました。
 それに加えて、続いてきたのが科研費の重要なサポートであります。でも、この辺りは赤﨑先生とずっと前からよくお話をしましたが、1人荒野を行くがごとし、という時代であっても少ない中でアイデアと努力で続けられたとも思います。余り自分のことを言ってはいけないのですが、総長になったときに先生たちの御尽力の足跡を学生たちに学んでもらい、独創研究のメッカにしたいと考えて、赤﨑先生の御快諾を得て赤﨑記念研究館を建設しました。その研究館の1階には先生方の研究の足跡が分かるような実験装置や試料、また各種のデータがあります。まさにこの研究が、そのデュアルサポートの重要なところでありました。
 その次に科研費が付き、後の方の段階で、先ほどお話をした豊田合成の方々が一緒になって動いてくれたのが新技術開発事業団による実用化のための支援であります。ここまで来るのに、すごく基本的な部分があったわけでありまして、これは是非、先ほど私が言った学術の一番根っこ、大事なところにすごい時間が掛かっている隠れた部分でもあります。この図には写真がありますから、余り時間軸をとれないのですが、前の方の時間軸がすごく長いところですので、ここを是非分かるように、この絵では右片方へ寄ってしまうから難しいのですが、せめて、下の説明ででも、それを入れていただければ、国の基本を支える、これまでの御努力が皆さんによく分かるのではないか、と思います。よろしく。

【西尾主査】
 どうもありがとうございました。
 常盤局長、どうぞ。

【常盤研究振興局長】
 すみません、全く平野先生おっしゃるとおりです。今回の赤﨑先生のノーベル賞に至る経緯、まず、一番基本的なスタートのところは、やはり当たり校費ですね、当時は国立大学時代ですから。赤﨑先生が始められた当時は非常に難問であり、かつ、ほかの人とは違う道をいっていた。こういう独自性、独創性を発揮されたものについて、当時の国立学校の当たり校費というのが、とても機能したということはあると思います。
 その次のステップとして、科学研究費補助金で応援をさせていただいた。そして、本当に実用化に近い段階で、豊田合成さんとの共同研究で、そこに資金が投入されたという経緯がございます。その点について、ちょうど今日も、実は天野先生が大臣に表敬をされたときに、濵口先生の方からも、そういう基本的なところについてのお話もございました。我々もこれから、いろいろ説明をするときに、赤﨑先生のそういう基盤的な経費からスタートして、そこが非常に重要なのだということも含めて、しっかりと説明していきたいと考えております。

【西尾主査】
 常磐局長、力強いお言葉をどうもありがとうございました。是非その方向でお願いします。

【小安主査代理】
 せっかくそうおっしゃっていただいたのでしたら、先ほど高橋さんがおっしゃったように、ノーベル賞が出ると、その年はこういう議論ですごく盛り上がるのですが、2年ぐらいするとまた同じ議論を始めなきゃいけないというのが非常に残念です。あるいは、毎年誰かがノーベル賞を取れという話なのかも知れませんが……。ここはやはり、今おっしゃっていただいたことを続けていただくことがどうしても必要なので、よろしくお願いいたします。

【西尾主査】
 常盤局長、どうぞ。

【常盤研究振興局長】
 実はそのこともお話ししたいなと思っていたのですけれども。高橋先生がおっしゃったように自由な研究環境、今日も、天野先生も、自由にやらせてもらった、とてもいい環境の中で仕事をさせていただいたということをおっしゃっていましたけれども、その自由な環境をどうやって、今の、非常に出口志向の、成果を求めるような環境の中で、自由な環境というものを我々がどうやって確保していくのかということは非常に大きなテーマだというふうに、我々の中でも議論をしております。
 例えば、今回の最終報告に向けた検討資料の中でも、やはりどうしても国際化にどう対応するのかとか、地域にどう貢献するのかとか、産業界とどう絡んでいくのかという、大学の外的なものとの関係での対応関係をどうやって、我々、対応していくのかというところがどうしても議論になってしまうのですけれども。本当は、それだけではなくて、科学自体に内在する部分というんですか、そこの部分について、自由な環境の中で、先生方が日々苦闘していることの中に、科学の新しい芽が出てきているのだとか、そういうところのプレゼンが、我々、必ずしも十分できてないのかなという感じがあります。この部会で、是非、これから更に御議論いただきたいのは、特に今、科学自体が随分変化しているのだと思うのです。従来、ずっと専門分化してきたものが、ライフにしてもナノにしても、分子・原子レベルでの、非常に融合的な領域にどんどん展開しているということで、分化してきたものが融合していくような、科学自体の進展の中で、そこに貢献していくためには自由な環境が必要なのだというような部分のプレゼンが、これまで弱かったのかなという感じがあるので、外的な要素への対応だけではなくて、科学自体の内在的な発展に向けて先生方が苦闘していることへの支援というのが実はとても重要で、そういう部分での飛躍こそが、結果として社会に対しても大きな貢献につながるんだというようなところを、我々はもっと説明しなければいけないのかなということを、今の御議論を聞いていて感じた次第です。

【西尾主査】
 本当に貴重なコメントをどうもありがとうございました。
 安西先生、どうぞ。

【安西委員】
 今、常盤局長も先生方もおっしゃったとおりで、日本学術振興会の場合には、世界の学術振興機関の長との会合が頻繁にありまして、そういう中で見ておりますと、日本、アメリカ、イギリス、ドイツの4か国が世界の学術をリードしていて、やはりその4か国がイノベーション、科学技術もリードしていく、今そういう状況にありますが、御存じのとおり、日本の場合には国際共同研究等々の素地が相対的に非常に弱ってきている、という状況もあります。前から国力の源と申し上げておりますのは、今言われたような、研究者にとっての非常に自由かっ達な環境が維持されて、それをよしとする素地があるのが、今申し上げた4か国だということであります。その中で、日本がやはりその4か国の中に入ったままでいかないと、いわゆる科学技術の技術開発の方までが弱っていくことは目に見えていると思われます。
 中国、韓国がノーベル賞になかなか手が届かないのは、今言われていたような、研究の自由な環境が非常に大きな素地になっていると思いますので、今までの議論でも積み重ねられておりますけれども、精神論だけだとなかなか突破できない面もありますので、今申し上げたようなことを踏まえて、やはり力の源というのが、今おっしゃっておられたようなことにあるのだということは、是非うたっていただければ有り難いと思います。

【西尾主査】
 どうもありがとうございました。
 では、高橋先生、最後のまとめということで、どうぞ。

【高橋委員】
 私が言うとまとまらないんですけれども、一つ持論がありまして、要するに我々のような大学の研究者、教員に事務作業ばかりやらせるということこそが税金の無駄遣いの最たる例であると、こういうことを訴えていきたい。文科省も財務省には、税金のばらまき的な無駄遣いをやめろというのであれば、まずそれをやめるべきである。餅は餅屋であって、研究者に頭を使わせない日本国は、納税者の皆さんにとって極めて申し訳ないということです。
 これもちょっとオフレコかもしれませんけれども、もう一つは、この前の経済界の方々の議論を聞きまして、ちょっと身の毛がよだったことがあります。それは、徹底的に選択と集中をして投資をしようと、この考え方は絶対に受け入れるべきではないと私は思います。しかし、なぜそういうことになっているのかということを私ながらに考えてみたのですが、もしかしたら、いまだに大学の先生は、1日のうち1時間だけ講義して、その後釣りにでも行って、ぼーっと小説でも読んでるのと違うかという、そういうことを考えている人がまだいてるんじゃないかと、これはちょっと受け入れられない。
 でも、一方で、もしかしたらそういう方もおられるかもしれない。だから今の例で、釣りをしながら自分は研究をやっているんだと言っている人がいるとしたら、それと、本当に頭をぎりぎり使っている人たちを分けて、私たちは学術論を展開したいと思います。だから、この前は、柘植先生には申し訳ないんですけれども、どちらかというと工学的な議論に終始しましたから、私は余り出る幕がなかったのですが、本当の基礎研究、工学でも理学も、部局はどうでもいいんですが、本当の基礎研究にいかに税金を集中投資するかという、この論理はあってもいいんじゃないかと思います。それはイノベーションで、経済がどうとかというのとは全く違う次元の議論であると、そこをちょっと、示せましたかね、私。

【西尾主査】
 安西先生、高橋先生、どうもありがとうございました。
 議論も尽きないのですけれども、予定の時間となっております。今日は、資料2で示しました、最終報告に向けた主な論点(案)に対して、どういう形で最終報告をより強化するということに関して、いろいろと貴重な意見を頂くことができました。御意見の方向性としては、大筋、まとまっているのではないかと思いますので、事務局の方でいろいろ御検討いただき、修正案を作成いただくことにいたしますので、何とぞよろしくお願いいたします。
 もし本日、御意見等で言い尽くせないことがあるということでございましたら、最終まとめの段階に進んでいきますので、来週、28日火曜日までに、事務局にメールで御意見を御提出いただければと思います。次回は、本日頂いた意見も踏まえまして、最終報告の取りまとめに向けた報告書の修正案について審議を行いたいと考えております。委員の皆様には適宜、メール等により御相談させていただきますので、御協力のほどを何とぞよろしくお願いいたします。
 それでは、今後のスケジュール等について事務局より説明をお願いいたします。

【中野学術企画室長】
 次回の特別委員会につきましては、改めて事務局より御案内をさせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

【西尾主査】
 本日は活発な御議論をどうもありがとうございました。本日の会議はこれで終了させていただきます。皆様、どうもありがとうございました。

 

―― 了 ――

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